説明

杭穴根固め部の未固結試料の養生方法及び養生容器

【課題】根固め部と略同一の特殊養生条件で、地上で未固結試料を固化させるので、根固め部に極めて近い圧縮強度を得られる。
【解決手段】地上1から掘削した杭穴2内にセメントミルクを注入して、根固め部3を形成する。根固め部3の充填物の一部を採取して地上1に取り出し、未固化試料3aとして型枠体に入れて養生スペース5内に配置する。特殊養生条件下で養生して温度とその時の時間のデータをとり、「時間−温度」のグラフを作成する。また、根固め部3内の温度も測定して「時間−温度」のグラフを作成する。特殊養生条件は、養生温度や湿度を調節して根固め部3の養生条件と略同一となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、地盤を掘削して形成した杭穴内に既製杭を埋設して基礎杭構造を構成する工法おいて、根固め部の固化強度を推定するための杭穴根固め部の未固結試料の養生方法、およびこの養生方法に最適な養生容器に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤を掘削して形成した杭穴内に既製杭を埋設して基礎杭構造を構成するに際して、支持地盤に形成される根固め部にセメントミルクを注入し、杭穴残留物である泥土と混練してソイルセメントを生成して、既製杭の下端部を根固め部に定着させている。本来的に既製杭で地上構造物の荷重を受けて、支持地盤で支持する支持構造であるが、基礎杭構造に求められる鉛直支持力が大きくなるに連れて、ソイルセメントの固化強度を推定することが施工管理上、重要になっていた。とりわけ、支持地盤周辺の杭穴の根固め部のソイルセメントの強度が重要であった。
【0003】
本来的には、既製杭を埋設して固化した後に、何らかの方法で、根固め部(通常は地上から20m〜50m程度)までボーリングして固化ソイルセメントからコアを採取して、そのコアを地上で通常の4週圧縮強度について試験を行うことがなされていた。コアを採取して試験する場合、それを採取するための機材を改めて調達したり、採取のために時間と場所を拘束したりするなど、工程とコストが加算されることとなる。従って、コア採取に代わる様々な提案がなされている。
【0004】
そのひとつとして、根固め部から未固結のソイルセメントを未固結試料として採取して、地上で固化させ、圧縮強度試験などをおこない根固め部強度の確認をしていた(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献2】特開平7−1439号公報
【特許文献1】特開2010−59619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、固化セメントミルクやソイルセメントの強度を決める要因として、配合(水セメント比、各種添加剤など)、練り混ぜ、施工条件、養生条件(温度、湿度、空気、光など)など様々なものがある。とりわけ、養生条件は重要な要因となっている。
【0007】
しかし、前記未固結試料の圧縮試験をするに際して、試料の強度は養生条件により大きく変化するが、養生の方法については特別な指針も無く、一般的には標準養生で行われることが多いが、現場毎で異なる方法で行われている場合もあった。
【0008】
また、未固結試料の固化強度は、初期養生条件に大きく依存することが分かってきており、養生初期の温度条件などを管理する必要が生じていた。
【0009】
そこで、根固め部に要求される耐力が高まるにつれて、より信頼性の高い圧縮強度の確認をするために、精度の高い養生条件の統一化が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこでこの発明では、養生方法を特定し管理することで、根固め部と略同一といえる強度を確認できる提案をした。
【0011】
すなわち、この発明は、地上から掘削した杭穴底部に、セメントミルクを注入して掘削泥土と置換して根固め部を形成し、あるいはセメントミルクを注入して掘削泥土と撹拌混合して根固め部を形成して、杭穴内に既製杭を沈設して基礎杭を構成する工法において、前記根固め部から未固結試料を採取して、型枠体に格納して、以下のようにして養生することを特徴とする杭穴根固め部の未固結試料の養生方法である。
(1) 前記根固め部内に、温度センサーを配置して、前記根固め部の温度と、基準時刻からの時間を計測し、時間−温度のグラフを作成する。
(2) 前記未固結試料内に温度センサーを配置して、特殊養生の元で、前記未固結試料の温度と前記基準時刻からの時間を計測し、時間−温度のグラフを作成する。
(3) 前記未固結試料の前記特殊養生は、前記根固め部の養生条件と略同一となるように構成し、以下のA〜Fの1つ又は複数を組み合わせて適用する。
A.前記根固め部と養生開始温度を略同一とする。
B.前記根固め部と、時間−温度のグラフの形状が略同一とする。
C.前記根固め部と湿度条件を略同一とする。
D.前記根固め部と、積算温度を略同一とする。
E.前記基準温度からの温度上昇傾向及び/又は温度下降傾向を略同一とする。
【0012】
また、他の発明は、地上から掘削した杭穴底部に、セメントミルクを注入して掘削泥土と置換して根固め部を形成し、あるいはセメントミルクを注入して掘削泥土と撹拌混合して根固め部を形成して、杭穴内に既製杭を沈設して基礎杭を構成する工法において、前記根固め部から未固結試料を採取して、型枠体に格納して、以下のようにして養生することを特徴とする杭穴根固め部の未固結試料の養生方法である。
(1) 予め、根固め部設定条件として、
a.セメントミルク配合
b.根固め部形状
c.地盤性状
の条件毎に、杭穴を掘削して基準根固め部を形成して、前記基準根固め部内に、温度センサーを配置して、前記基準根固め部の温度と、基準時刻からの時間を計測し、前記基準根固め部のデータを取得して、時間−温度のグラフを作成する。
(2) 前記未固結試料内に温度センサーを配置して、特殊養生の元で、前記未固結試料の温度と前記基準時刻からの時間を計測し、時間−温度のグラフを作成する。
(3) 前記未固結試料の前記特殊養生は、前記根固め部設定条件から少なくとも2つの条件が一致した基準根固め部を選定して基準根固め部として、前記基準根固め部の養生条件と略同一となるように構成し、以下のA〜Fの1つ又は複数を組み合わせて適用する。
A.前記基準根固め部と養生開始温度を同一とする。
B.前記基準根固め部と、時間−温度のグラフの形状が略同一とする。
C.前記基準根固め部と湿度条件を略同一とする。
D.前記基準根固め部と、積算温度を略同一とする。
E.前記基準基準温度から温度上昇傾向及び/又は温度下降傾向を略同一とする。
【0013】
また、前記において、未固結試料の養生は、移動可能でかつ密封可能な断熱容器内に該未固結試料を収容し、前記断熱容器は、少なくとも温度及び/又は湿度を調節可能とし、かつ断熱容器内の温度、湿度及び必要な条件を感知するセンサーを内蔵する杭穴根固め部の未固結試料の養生方法である。
【0014】
また、前記において、現場内に生成されるセメントミルク類を任意容器に回収して、回収セメントミルクとして、断熱容器内に前記回収セメントミルクを入れた前記任意容器を設置して、前記回収セメントミルクの反応熱で前記断熱容器内を加温、及び/又は、加湿した杭穴根固め部の未固結試料の養生方法である。
【0015】
また、前記において、未固結試料は採取して型枠体に入れた時点から、少なくとも24時間は採取現場の敷地内又は断熱容器内で所定の養生を行う杭穴根固め部の未固結試料の養生方法である。
【0016】
また、前記において、未固結試料は、前記未固結試料内に含まれるセメントミルクをプラントで作成した時点又はセメントミルクをプラントで作成して杭穴根固め部に注入した時点から、少なくとも24時間は採取現場の敷地内又は断熱容器内で所定の養生を行う杭穴根固め部の未固結試料の養生方法である。
【0017】
また、他の発明は、断熱材料からなる容器本体内の開口に、断熱材料からなる蓋体を被せてなり、以下のように構成したことを特徴とする養生容器である。
(1) 前記容器本体内に、供試体収納部、養生条件設定部を設け、
(2) 前記供試体収納部内に、温度、湿度及び必要な条件を感知するセンサーを設けて、
(3) 前記養生条件設定部に外部からの操作で起動できる加温・加湿装置を設置する。
(4) 前記容器本体又は蓋体に、作業者が肩に掛ける肩掛けベルトを取り付けた。
前記における「型枠体」は、未固結試料の固化後の使用目的に応じて選択する。例えば、圧縮試験などの各試験用では、テストピースの形状・大きさに合わせて構成される。
【0018】
また、前記における「現場内に生成されるセメントミルク類」とは、セメントなどの水硬性材料の反応熱を使用する趣旨で、「地上のプラントで生成したセメントミルク」「施工中に杭穴内から溢れたセメントミルク」「施工に使用するコンクリートやセメントミルク、モルタル、ソイルセメント」「施工中に杭穴内から溢れたセメントミルクを含有した掘削泥土」等を指す。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、根固め部の一部を地上に採取して未固結試料として、実際の根固め部と同様の特殊養生となるように、温度条件などを調整するので、固化した未固結試料は、実際に固化した根固め部と極めて近似した固化物となる。従って、固化した未固結試料を圧縮強度試験などをすれば、根固め部の固化強度を正確に推定できる。
また、予め多数の条件で根固め部を形成して、基準根固め部データを収集しておき、実際に未固結試料を採取する根固め部の構造に近似した基準根固め部データを選択して、特殊養生とすれば、現場で根固め部の温度を計測する手間を省き、同様の効果を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1はこの発明の第1の実施態様を説明する図である。
【図2】図2はこの発明の第2の実施態様を説明する図である。
【図3】図3はこの発明の実施に使用する養生容器で(a)は未固結試料を収容する前の縦断面図、(b)は未固結試料を収容した状態の縦断面図、(c)は未固結試料を収容した状態の横断面図である。
【図4】図4はこの発明の実施に使用する他の養生容器で、未固結試料を収容した状態の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.現場の根固め部で実測する方法(図1)
【0022】
(1) 地上1から掘削ロッドを使用して、杭穴2を掘削し、掘削ロッドを介して杭穴底部にセメントミルクを注入して、掘削泥土と置換して、ほぼセメントミルクからなる根固め部3を形成する。また、根固め部3に求める性能によっては、置換に変えて、セメントミルクと掘削泥土と撹拌混合してソイルセメントを生成して根固め部3とすることもできる。
【0023】
(2) 続いて、掘削ロッドにより、根固め部3の充填物の一部を採取して、掘削ロッドとともに地上1に取り出す。採取した根固め部3の充填部の一部を地上1で、型枠体に入れて、未固化試料3aとする。未固化試料3aは、温度センサーを入れて、養生スペース5内に配置して、特殊養生条件下で養生をする。温度センサーからのデータを表示する温度表示具4を養生スペース5外に設ける(図1)。なお、根固め部3の充填物の一部の採取方法は、掘削ロッドを使用する場合の他、任意であり、掘削ロッドに付属する採取装置や掘削ロッドとは別途の装置を用いることもできる。
以下、所定時間毎に、未固化試料3aの温度を測定し、基準時刻t からの時間を計測する。
【0024】
(3) また、根固め部3内にも温度センサーを設けてあり、根固め部3内の温度センサーの温度表示具4を地上1に設ける。
以下、所定時間毎に、根固め部3の温度を測定し、その時の基準時刻t からの時間を計測する。
【0025】
(4) 以降、根固め部3の温度と未固化試料3aの反応熱の測定は、例えば、30分おきに行い、その時の「時間−温度」のグラフを作成する。
【0026】
(5) 前記特殊養生条件は、根固め部3の養生条件と略同一となるように構成する。
例えば、以下のA〜Fの1つ又は複数を組み合わせて適用する。
【0027】
A.根固め部3と養生開始温度を略同一とする。温度t の時点で、測定した温度が相違する場合には、速やかに養生スペース5内の温度や湿度を高めるなどの処理をして、根固め部3の温度と略同一となるように調節する。
B.根固め部3と、時間−温度のグラフの形状が略同一とする。各測定時刻での温度で、測定した温度が相違する場合には、速やかに養生スペース5内の温度を高めるなどの処理をして、根固め部3の温度と略同一となるように調節する。
C.根固め部3と湿度条件を略同一とする。通常、根固め部2の周囲は地盤で覆われているので、地盤の地下水の状況などにより差はあるが、一般に100%に近い湿度条件となる。
D.根固め部3と、積算温度を略同一とする。各測定時刻での温度は違いが生じても、温度t のからの「時刻−温度」グラフの面積が略同一となるように、養生スペース5内の温度を高めるなどの処理をして、根固め部3の温度と略同一となるように調節する。
E.基準温度3からの温度上昇傾向及び/又は温度下降傾向が、略同一とする。「時刻−温度」グラフは温度t から徐々に上昇してピークを示し、以降徐々に低下するように変化する。従って、この場合には、温度t からピークまでの温度の条件やピーク前後の温度条件に着目して、「上昇」及び/又は「下降」の傾きが略同一となるように、養生スペース5内の温度を高めるなどの処理をして、調節する。従って、この場合には、温度の値自体の高低は問題としない。
【0028】
2.予め基準根固め部で測定してデータを蓄積する方法(図2)
【0029】
前記実施態様では、同じ現場内で、根固め部3の温度と未固結試料3aの温度を同時に測定したが、この実施態様では、予め根固め部の温度を測定しておき、現場では未固結試料3aの温度のみを測定する実施態様である。
【0030】
(1) まず、基準となる根固め部(基準根固め部)3Aでの温度測定について説明する。
地上1から掘削ロッドを使用して、基準杭穴2Aを掘削し、掘削ロッドを介して杭穴底部にセメントミルクを注入して、前記と同様に、置換又は撹拌混合して基準根固め部3Aを形成する。基準根固め部3A内に温度センサーを設けて、基準根固め部3A内の温度センサーの温度表示具4を地上1に設け、所定時間毎に、基準根固め部3Aの温度を測定し、その時の基準時刻t からの時間を計測する(図2(a))。計測時間は例えば、30分おきに行い、その時の「時間−温度」のグラフを作成する。この場合、基準時刻t は、注入するセメントミルクを生成する現場のプラントで、セメントを投入した時点を基準とする。
【0031】
(2) (1)のデータの蓄積は、基準根固め部3Aの以下のような条件で、様々なデータで行う。
a.セメントミルク配合
b.根固め部形状
c.地盤性状・深度
d.必要ならば、埋設する杭種
【0032】
(3) 上記(2)で蓄積したデータのうち、これから現場で構築する杭穴2の根固め部3に合致した
a.セメントミルク配合
b.根固め部形状
c.地盤性状・深度
d.必要ならば、埋設する杭種
に見合う条件のデータを取りだし、基準根固め部3Aデータとして、設定する。
【0033】
(4) 前記実施態様と同様に、地上1から掘削ロッドを使用して、杭穴2を掘削し、掘削ロッドを介して杭穴底部にセメントミルクを注入して、置換又は撹拌混合して根固め部3を形成する。続いて、掘削ロッドにより、根固め部3の充填物の一部を採取して、掘削ロッドともに地上1に取り出し、型枠体に入れて未固化試料3aとする。未固化試料3aは、温度センサーを入れて、養生スペース5内に配置して、特殊養生条件下で養生をする。温度センサーからのデータを表示する温度表示具4を養生スペース5外に設ける(図2(b))。なお、根固め部3の充填物の一部の採取方法は、掘削ロッドを使用する場合の他、任意であり、掘削ロッドに付属する採取装置や掘削ロッドとは別途の装置を用いることもできる。
以下、所定時間毎に、未固化試料3aの温度を測定し、基準時刻t からの時間を計測する。この場合、基準時刻t は、前記基準根固め部3Aと同様に、この現場で、注入するセメントミルクを生成する現場のプラントで、セメントを投入した時点を基準とする。
【0034】
(5) 前記特殊養生条件は、前記実施態様と同様のA〜Fを採用して、選択した基準根固め部3Aの養生条件と略同一となるように構成して、夫々養生スペース内の条件を調節しながら養生する。従って、この実施態様でも、同様に固化した根固め部と同様の強度で、未固化試料を固化させることができる。
【0035】
3.養生スペース5
【0036】
(1) 前記における養生スペース5は、例えば、以下のような移動可能な養生容器10内に、設ける。養生容器10は、現場内(通常地面は泥状態である)で、杭穴周辺で未固結試料3aを収容したならば、すぐに養生を開始するためには、そのまま養生容器10に入れて、養生場所(現場管理事務所内などの床が安定した場所)に移動することが望ましい。よって、養生容器10は作業者1人で容易に持ち運べるような大きさにすると共に、肩掛けベルトを設けることが望ましい。
【0037】
(2) 断熱材料からなる蓋体17で開口を覆うことができ、断熱壁材からなる容器本体11内に、容器本体11の壁より高さが低い中仕切り12を設けて、一側を供試体収納部13、他側を養生条件設定部14とする。また、容器本体11及び蓋体17は、外部からの衝撃をある程度吸収できるような材料(例えば、発泡スチロールなど)を含んだ構成とする。なお、中仕切り12を平面視環状に形成して、中心部と周辺部で、供試体収納部13と養生条件設定部14とを区分けすることもできる(図示していない)。また、供試体収納部13と養生条件設定部14とを区分けせずに容器本体11内に混在させることもできる。
養生条件設定部14は、温度、湿度、圧力等を設定できる各種装置を設置する。例えば、水を入れる中容器15内に電気ヒータ16を設けて、温度及び湿度を調節できる装置を構成する。電気ヒータ16は容器本体11外の熱源18から電力が供給され、熱源18の作動はパソコン19で管理されている。尚、温度・湿度などの養生条件の管理・データの管理は、パソコン19に限らず、外部に設置した又は容器本体11や蓋体17に組み込まれた同様の装置を使用することもできる。
供試体収納部13は、型枠体に格納した未固結試料3aを所定数(例えば、20個程度)並べる広さがあり、供試体収納部13内には、温度、湿度、圧力、水量などのセンサーを設けてあり(図示していない)、センサーの情報は容器本体11外(養生スペース5の外)のパソコン19に接続されて管理される。
【0038】
(3) 以上のようにして養生容器10を構成する(図3)。養生容器10は容器本体11及び蓋体17をクーラーボックス同様の構成にすれば、持ち運びが容易であるので、型枠体に格納した未固結試料3aを生成した後に、直ぐに、容器本体11内に収容できる。とりわけ、未固結試料3aに対して、生成後24時間以内に大きな振動を与えた場合に、未固結試料3aの固化強度の著しい低下を招くことも報告されている。従って生成後24時間以内は、未固結試料3aを現場から移動させずに、現場内で所定の特殊養生を開始できるので、現場にも容易に置けるこの養生容器10は好ましい。
また、前記における生成後24時間以内は、現場(現場敷地内又は現場敷地内に近接して、あるいはその他の場所)のプラントでセメントミルクを生成した後、あるいはプラントで生成したセメントミルクを杭穴の根固め部に注入した後、更には、根固め部のセメントミルクを地上で回収して型枠体に入れた後、のいずれかを状況に応じて選択して、その時点から24時間以内とする。
【0039】
(4) 中容器15内に水20を入れ、熱源18を作動させて、センサーの情報を採取して、養生容器10内を「予め設定した温度・湿度」に近い状態となるように設定しておく。
未固結試料3aを型枠体に入れたならば、蓋体17を開けて、型枠体にいれた未固結試料3aを供試体収納部13内に並べ、蓋体17を閉じて、予め設定した温度・湿度の条件となるように、パソコン19で熱源18を操作する。この発明では、養生条件を根固め部(高湿度、高温、高圧力)とするので、比較的狭い養生容器10内であれば、養生条件を設定し易い。
所定の養生が完了したならば、蓋体17を外して、容器本体11から取り出して、型枠体から固化した未固結試料3aを取り出し、前記同様に取り扱う。
【0040】
(5) 前記において、水を張った中容器15内に電気ヒータ16で水を温めて、養生容器10内の温度・湿度・圧力を調整したが、少なくとも温度・湿度が調節できる装置であれば任意である。
また、前記において、中仕切り12で供試体収容部13と養生条件設定部14とを区分したが、中仕切り12を省略して、供試体収容部13のスペース中に電気ヒータ16等を設置して、養生条件設定部14とすることもできる(図示していない)。
【0041】
(6) また、前記において、大きな発熱量を必要としない養生条件であれば、セメントミルクの固化時の反応熱を利用することもできる(図示していない)。例えば、「地上のプラントで生成したセメントミルク」や「施工中に杭穴内から溢れたセメントミルク」「施工に使用するコンクリートやセメントミルク、モルタル、ソイルセメント」または「施工中に杭穴内から溢れたセメントミルクを含有した掘削泥土」を任意のモルタル容器21に入れて、供試体収容部13のスペース中に、モルタル容器21、21を配置することもできる(図4)。なお、この場合、前記実施例のように、養生条件設定部14にモルタル容器21、21を収容することもできる(図示していない)。なお、この場合に電気ヒータ16を併用することもできる。
また、この場合、「施工中に杭穴内から溢れたセメントミルクを含有した掘削泥土」を使用すれば、廃物利用となるので、好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1 地上
2 杭穴
2A 基準杭穴
3 根固め部
3A 基準根固め部
3a 未固結試料
4 温度表示具
5 養生スペース
10 養生容器
11 容器本体
12 中仕切り
13 供試体収容部
14 養生条件設定部
15 中容器
16 電気ヒータ
17 蓋体
18 熱源
19 パソコン
20 水
21 モルタル容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上から掘削した杭穴底部に、セメントミルクを注入して掘削泥土と置換して根固め部を形成し、あるいはセメントミルクを注入して掘削泥土と撹拌混合して根固め部を形成して、杭穴内に既製杭を沈設して基礎杭を構成する工法において、前記根固め部から未固結試料を採取して、型枠体に格納して、以下のようにして養生することを特徴とする杭穴根固め部の未固結試料の養生方法。
(1) 前記根固め部内に、温度センサーを配置して、前記根固め部の温度と、基準時刻からの時間を計測し、時間−温度のグラフを作成する。
(2) 前記未固結試料内に温度センサーを配置して、特殊養生の元で、前記未固結試料の温度と前記基準時刻からの時間を計測し、時間−温度のグラフを作成する。
(3) 前記未固結試料の前記特殊養生は、前記根固め部の養生条件と略同一となるように構成し、以下のA〜Fの1つ又は複数を組み合わせて適用する。
A.前記根固め部と養生開始温度を略同一とする。
B.前記根固め部と、時間−温度のグラフの形状が略同一とする。
C.前記根固め部と湿度条件を略同一とする。
D.前記根固め部と、積算温度を略同一とする。
E.前記基準温度からの温度上昇傾向及び/又は温度下降傾向を略同一とする。
【請求項2】
地上から掘削した杭穴底部に、セメントミルクを注入して掘削泥土と置換して根固め部を形成し、あるいはセメントミルクを注入して掘削泥土と撹拌混合して根固め部を形成して、杭穴内に既製杭を沈設して基礎杭を構成する工法において、前記根固め部から未固結試料を採取して、型枠体に格納して、以下のようにして養生することを特徴とする杭穴根固め部の未固結試料の養生方法。
(1) 予め、根固め部設定条件として、
a.セメントミルク配合
b.根固め部形状
c.地盤性状
の条件毎に、杭穴を掘削して基準根固め部を形成して、前記基準根固め部内に、温度センサーを配置して、前記基準根固め部の温度と、基準時刻からの時間を計測し、前記基準根固め部のデータを取得して、時間−温度のグラフを作成する。
(2) 前記未固結試料内に温度センサーを配置して、特殊養生の元で、前記未固結試料の温度と前記基準時刻からの時間を計測し、時間−温度のグラフを作成する。
(3) 前記未固結試料の前記特殊養生は、前記根固め部設定条件から少なくとも2つの条件が一致した基準根固め部を選定して基準根固め部として、前記基準根固め部の養生条件と略同一となるように構成し、以下のA〜Fの1つ又は複数を組み合わせて適用する。
A.前記基準根固め部と養生開始温度を同一とする。
B.前記基準根固め部と、時間−温度のグラフの形状が略同一とする。
C.前記基準根固め部と湿度条件を略同一とする。
D.前記基準根固め部と、積算温度を略同一とする。
E.前記基準基準温度から温度上昇傾向及び/又は温度下降傾向を略同一とする。
【請求項3】
未固結試料の養生は、移動可能でかつ密封可能な断熱容器内に該未固結試料を収容し、前記断熱容器は、少なくとも温度及び/又は湿度を調節可能とし、かつ断熱容器内の温度、湿度及び必要な条件を感知するセンサーを内蔵する請求項1または2記載の杭穴根固め部の未固結試料の養生方法。
【請求項4】
現場内に生成されるセメントミルク類を任意容器に回収して、回収セメントミルクとして、断熱容器内に前記回収セメントミルクを入れた前記任意容器を設置して、前記回収セメントミルクの反応熱で前記断熱容器内を加温、及び/又は、加湿した請求項3記載の杭穴根固め部の未固結試料の養生方法。
【請求項5】
未固結試料は採取して型枠体に入れた時点から、少なくとも24時間は採取現場の敷地内又は断熱容器内で所定の養生を行う請求項1〜3のいずれか1項記載の杭穴根固め部の未固結試料の養生方法。
【請求項6】
未固結試料は、前記未固結試料内に含まれるセメントミルクをプラントで作成した時点又はセメントミルクをプラントで作成して杭穴根固め部に注入した時点から、少なくとも24時間は採取現場の敷地内又は断熱容器内で所定の養生を行う請求項1〜3のいずれか1項記載の杭穴根固め部の未固結試料の養生方法。
【請求項7】
断熱材料からなる容器本体内の開口に、断熱材料からなる蓋体を被せてなり、以下のように構成したことを特徴とする養生容器。
(1) 前記容器本体内に、供試体収納部、養生条件設定部を設け、
(2) 前記供試体収納部内に、温度、湿度及び必要な条件を感知するセンサーを設けて、
(3) 前記養生条件設定部に外部からの操作で起動できる加温・加湿装置を設置する。
(4) 前記容器本体又は蓋体に、作業者が肩に掛ける肩掛けベルトを取り付けた。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−220093(P2011−220093A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−153378(P2010−153378)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000176512)三谷セキサン株式会社 (91)
【Fターム(参考)】