説明

杭頭補強筋ユニット及び杭頭補強方法

【課題】 簡潔な構造で、技能工の熟練を必要とせず合理的な配筋施工が容易かつ正確にでき、効率性及び経済性にも優れた杭頭補強筋ユニット及び杭頭補強方法を提供する。
【解決手段】 外殻が鋼管又は鋼板からなる杭の杭頭部に補強鉄筋を配筋固着することにより杭頭部を補強する杭頭補強筋ユニットであって、鉄筋が杭の外形輪郭より僅かに小さく異なる大きさの相似形に屈曲形成され、前記杭頭部の上面に略同心状に載置される2つの閉鎖型フープと、前記外側閉鎖型フープの外周面に杭頭部を包囲するように略等配され、下端部に設けられた補強鉄筋取付け具を介して立設される複数の補強鉄筋とからなり、前記補強鉄筋取付け具は、補強鉄筋を個別に閉鎖型フープに対して周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付けるように構成され、移動調整された補強鉄筋が杭頭部の外殻に溶接により固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも外殻が鋼管又は鋼板からなる各種の杭を対象とする杭頭補強筋ユニット及び杭頭補強方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼管を主体とする各種の杭、例えば鋼管自体を杭体とする鋼管杭や、鋼管内にコンクリートを充填したSC杭(外殻鋼管付き遠心力コンクリート杭)、鋼管とソイルセメントとの合成鋼管杭等の杭頭部には、補強及び基礎との一体化を図るための杭頭補強筋が配筋されることが一般的に行なわれている。
【0003】
このような代表的な杭頭補強筋構造には次の4例がある。
第1の例の杭頭補強筋構造は、図4に示すように、既製PC杭101の頭部において、予め複数本の杭頭補強筋106の下端を接合リング105に固着してなる杭頭補強ユニット104が、PC杭101の杭頭部の定着プレート103に接合された構成である(例えば、特許文献1)。
【0004】
第2の例の杭頭部構造は、図5に示すように、基礎杭208と基礎杭208の上部開口209を塞ぐ蓋Cと、基礎杭208の上部外周に配設してある基礎定着部材Gとを備え、蓋Cは、基礎杭208の上部開口209を塞ぎ且つ下端Uが上部開口209内に没入する漏斗状の蓋本体201と、蓋本体201の一側部Ta、Laと他側部Tbとの間に架設した補強リブ203、203と、から構成され、基礎定着部材Gは、蓋本体201の外周を囲み且つ基礎杭208の杭頭部を嵌挿可能なリング状をなす補強環205と、補強環205より上方に突出して基礎内に定着する補強筋206とから構成されており、外側に突出する補強リブ203、203の端部214又は/及び215を、補強環205と接合された構成である(例えば、特許文献2)。
【0005】
第3の例の杭頭補強構造は、図6に示すように、外形輪郭が正八角形をなす鋼製の補強リング311を杭頭部に溶接し、補強リング311の外周面に杭頭補強筋302の下端部を接合することにより、杭頭補強筋302を図示しない基礎梁主筋に交叉する状態で配筋されており、補強リング311は周方向に分割した複数の分割リング311aとした構成である。(例えば、特許文献3)。
【0006】
第4の例の杭頭補強構造は、図7に示すように、杭頭に鋼板からなる杭天板413を有し、外殻が鋼管411からなるSC杭等の杭410を対象として、その杭頭部に多数の杭頭補強筋415を図示しない基礎梁主筋と交叉する状態で配筋することで杭頭部を補強するために、杭天板413の上面に外形輪郭が正八角形で鋼製のリングプレート416を溶接し、リングプレート416の上面に杭頭補強筋415の下端を溶接することにより、それら杭頭補強筋415を杭410の外形輪郭にほぼ沿う仮想の正八角形の輪郭を形成するように配列した状態で配筋された構成である。(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】実開平5−16840号公報
【特許文献2】特開2004−360290号公報
【特許文献3】特開2006−46024号公報
【特許文献4】特開特開2006−144355号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の杭頭補強ユニット104では、予め杭頭補強筋106が接合リング105に固着された構成となっているため、杭頭補強筋106がこれと交叉するように格子状に配筋された基礎梁主筋との干渉が不可避であるという問題点がある。
【0008】
また、特許文献2の杭頭部構造においても、予め補強筋206がその下端を内向きに折り曲げて間隔保持部207を形成した状態で補強環205に固着された構成であるため、補強筋206がこれと交叉するように配筋された基礎梁主筋との干渉が不可避であるという問題点がある。
【0009】
また、特許文献3の杭頭部構造においても、予め杭頭補強筋302が補強リング311の外周面に固着された構成であるため、外形輪郭が正八角形の補強リング311を介して配筋される杭頭補強筋302の配列は図示しない基礎梁主筋と平行もしくは45度の角度で交差するものとなることから杭頭補強筋302と基礎梁主筋との干渉を自ずと回避し易くなるとはいえ、依然として杭頭補強筋302がこれと交叉するように格子状に配筋された基礎梁主筋との干渉が不可避であるという問題点がある。
【0010】
一方、特許文献4の杭頭部構造においては、特許文献1〜3におけるような、杭頭補強筋415と基礎梁主筋との干渉問題を回避するよう、予めリングプレート416の上面に杭頭補強筋415の溶接位置の墨出しを行って杭頭補強筋415を順次溶接固着するか、あるいは現場にて杭天板413の上面に溶接したリングプレート416上に杭頭補強筋415を溶接する構成としている。このため、現場にて基礎梁主筋の配筋状態に対して杭頭補強筋415の位置を割り出す墨出しを行う技能工の熟練が不可欠で手間もかかるとともに、その後リングプレート416上に杭頭補強筋415を溶接する場合、溶接作業員の他に杭頭補強筋415をリングプレート416上の墨田し位置に合せて支持する作業者が別途必要となり、コストも嵩む等の問題点がある。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、簡潔な構造で、技能工の熟練を必要とせず杭頭部及び基礎梁主筋に対する位置決めを含む合理的な配筋施工が容易かつ正確にでき、効率性及び経済性にも優れた杭頭補強筋ユニット及び杭頭補強方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1の発明の杭頭補強筋ユニットは、外殻が鋼管又は鋼板からなる杭の杭頭部に補強鉄筋を配筋固着することにより杭頭部を補強する杭頭補強筋ユニットであって、鉄筋が前記杭の外形輪郭に対して僅かに小さく異なる大きさの相似形に屈曲形成され、前記杭頭部の上面に略同心状に載置される2つの閉鎖型フープと、前記外側閉鎖型フープの外周面に杭頭部を包囲するように略等配され、下端部に設けられた補強鉄筋取付け具を介して立設される複数の補強鉄筋とからなり、前記補強鉄筋取付け具は、前記補強鉄筋を個別に前記閉鎖型フープに周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付けるように構成され、前記移動調整された補強鉄筋が前記杭頭部の外殻に溶接により固着されることを特徴とする。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1記載の杭頭補強筋ユニットであって、前記補強鉄筋取付け具のうち、略等配された少なくとも3個は前記閉鎖型フープに対して前記補強鉄筋の周方向の移動が拘束されていることを特徴とする。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2記載の杭頭補強筋ユニットであって、前記補強鉄筋取付け具は、L形に形成され、その直立辺部が前記補強鉄筋の下端部に固着され、下辺部に前記補強鉄筋に直交する方向に伸びる長穴が穿設されて前記2つの閉鎖型フープの上面にまたがって載置されるアングル板と、中間部にナットが固着されるか又はネジ孔が設けられ、前記2つの閉鎖型フープの下部にまたがって載置される底板と、前記アングル板の長穴に挿通され、前記底板のナット又はネジ孔に螺着することにより、前記補強鉄筋を閉鎖型フープに対して周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付けるボルト部材と、からなることを特徴とする。
【0015】
請求項4の発明は、請求項3記載の杭頭補強筋ユニットであって、前記補強鉄筋取付け具の底板が前記閉鎖型フープの下面に溶接により固着されることにより、前記補強鉄筋の周方向移動が拘束されることを特徴とする。
【0016】
請求項5の発明は、請求項4記載の杭頭補強筋ユニットであって、前記閉鎖型フープの下面に固着される補強鉄筋取付け具の底板は、固着されない他の底板より僅かに厚く一体的に又はスペーサを介して構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6の発明の杭頭補強方法は、外殻が鋼管又は鋼板からなる杭の杭頭部に補強鉄筋を配筋固着することにより杭頭部を補強する杭頭補強方法であって、前記杭の外形輪郭に対して僅かに小さく異なる大きさの相似形に屈曲形成された鉄筋からなる2つの閉鎖型フープを前記杭頭部又は模擬杭頭部の上面に略同心状に載置する閉鎖型フープ載置工程と、前記補強鉄筋が個別に前記閉鎖型フープに対して周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付けられるように構成した補強鉄筋取付け具を前記補強鉄筋の下端部に装着する補強鉄筋取付け具装着工程と、前記補強鉄筋取付け具のうち、略等配された少なくとも3個の補強鉄筋取付け具を前記閉鎖型フープに対して前記補強鉄筋の周方向の移動を拘束する補強鉄筋周方向移動拘束工程と、前記複数の補強鉄筋を、前記補強鉄筋取付け具を介して前記外側閉鎖型フープの外周面に杭頭部又は模擬杭頭部を包囲するように略等配立設して仮組みする補強鉄筋仮配筋工程と、前記仮組みされた補強鉄筋を前記補強鉄筋取付け具によりそれぞれ前記杭頭部の外殻に密着させるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように前記閉鎖型フープの周方向及び/又は周に対して直交方向に移動調整する補強鉄筋移動調整工程と、前記移動調整された補強鉄筋を前記杭頭部の外殻に溶接により固着する補強鉄筋固着工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、杭頭補強筋ユニットが補強鉄筋を個別に同心状の2つの閉鎖型フープに対して補強鉄筋取付け具により周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付け、移動調整された補強鉄筋を杭頭部の外殻に溶接により固着する簡潔な構造であるので、補強鉄筋を杭頭部の外殻に密着させることができるとともに、補強鉄筋と交叉するように格子状に配筋される基礎梁主筋との干渉を確実に回避することもできるという合理的な配筋施工が容易に素早く正確にできる。
【0019】
このため、従来の前記諸問題点を改善し、技能工の熟練や補強鉄筋溶接時の補助作業員を必要とせず、効率性及び経済性にも優れた杭頭補強筋ユニットを提供することができるという効果がある。
【0020】
また、杭をハンマーによる打撃式で打込む場合、杭頭部がいびつに変形することがあっても、容易に補強鉄筋を杭頭部の外殻に密着させることができるという効果がある。
【0021】
さらに、杭をスクリュー・打撃式で打込む場合、杭頭部の外殻の1〜4箇所にチャック駒が取付けられており、それを除去することなく、容易に補強鉄筋を杭頭部の外殻に密着させることができるという効果がある。
【0022】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様な効果を有するのに加えて、略等配された少なくとも3個の補強鉄筋取付け具を同心円状の閉鎖型フープに対して補強鉄筋の周方向の移動を拘束するように拘束した状態に保持されるので、拘束した補強鉄筋部を安定的に把持して吊り上げ搬送を行うことができるとともに、その他の補強鉄筋を杭頭部の外殻に密着させるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように移動調整ことができ易くなるという効果がある。
【0023】
請求項3の発明によれば、請求項1又は請求項2の発明と同様な効果を有するのに加えて、補強鉄筋取付け具が補強鉄筋の下端部に固着されたアングル板の長穴にボルト部材を挿通して底板のネジ孔に螺着することにより、補強鉄筋を閉鎖型フープに対して周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付ける簡潔な構成であるため、補強鉄筋を杭頭部の外殻に密着させるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように移動調整することが一層容易になり、技能工の熟練を必要とせず合理的な配筋施工が容易かつ正確にできるという効果がある。
【0024】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明と同様な効果を有するのに加えて、補強鉄筋取付け具の底板を閉鎖型フープの下面に溶接固着することにより、補強鉄筋の周に対し直交方向移動を容易かつ確実に拘束することができるという効果がある。
【0025】
請求項5の発明によれば、請求項4の発明と同様な効果を有するのに加えて、閉鎖型フープの下面に固着される補強鉄筋取付け具の底板が、固着されない他の底板より僅かに厚く構成されているので、固着されない底板と杭頭部又は模擬杭頭部の上面との間に隙間ができるため補強鉄筋取付け具ごと補強鉄筋の周方向移動が一層容易化するという効果を有する。
【0026】
請求項6の発明によれば、杭頭補強筋ユニットを杭の外形輪郭より僅かに小さい2つの閉鎖型フープを杭頭部又は模擬杭頭部の上面に略同心円状に載置し、複数の補強鉄筋を補強鉄筋取付け具により閉鎖型フープの外周面に杭頭部を包囲するように略等配立設し、補強鉄筋取付け具により補強鉄筋を閉鎖型フープの周方向及び/又は周に対して直交方向に移動調整した補強鉄筋を杭頭の外殻に溶接により固着する構成とすることができるので、請求項1の発明と全く同様な効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を図示する実施例により具体的に説明する。
【0028】
図1の(a)は本発明の杭頭補強筋ユニットの平面図、(b)は(a)の側面図、である。
【0029】
本発明の杭頭補強筋ユニット1は、外殻11が鋼管からなり、杭頭に鋼板からなる杭天板12を有するSC杭等の杭10の杭頭部に補強鉄筋2を配筋固着することにより杭頭部を補強する構成であって、鉄筋が杭10の外形輪郭より僅かに小さく異なる径の略同心円状に屈曲形成され、杭天板12の上面に載置される2つの閉鎖型フープ3(3a、3b)と、外側閉鎖型フープ3bの外周面に杭頭部を包囲するように略等配され、下端部に設けられた補強鉄筋取付け具4を介して立設される複数の補強鉄筋2とから概略構成されている。
【0030】
補強鉄筋取付け具4は、詳細については後述するが、補強鉄筋2を個別に閉鎖型フープ3に対して周方向及び/又は径方向に移動調整可能に取付けるように構成され、移動調整された補強鉄筋2が、杭頭部の外殻11に溶接により固着される。
【0031】
このように、杭頭補強筋ユニット1は、補強鉄筋2を個別に同心円状の閉鎖型フープ3に対して補強鉄筋取付け具4により周方向及び/又は径方向に移動調整可能に取付け、移動調整された補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に溶接により固着する簡潔な構造であるので、溶接作業員の他に、補強鉄筋2の位置決め割り出しのための技能工の熟練や外殻11への補強鉄筋2溶接時に補強鉄筋2を支持したりする別途の補助作業員を必要とせず、補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に密着させるとともに、補強鉄筋2と交叉するように格子状に配筋される基礎梁主筋(図示しない)との干渉を確実に回避するという合理的な配筋施工が容易に素早く正確にできる。
【0032】
図2は本発明の杭頭補強筋ユニット1の補強鉄筋2aの周方向移動が拘束された補強鉄筋取付け具4において補強鉄筋2aが杭10に近接する方向に径方向移動調整される状態説明図で、(a)は補強鉄筋2aが杭10から最大限離隔された位置の拡大平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)における補強鉄筋2aが杭10に近接する方向に径方向移動調整中の拡大平面図、(d)は(c)における補強鉄筋2aが杭10に近接した位置の側面図である。
図3は杭頭補強筋ユニット1の径方向及び周方向移動可能な補強鉄筋取付け具4において補強鉄筋2bが杭に近接する方向に径方向移動及び周方向移動調整される状態説明図で、(a)は補強鉄筋2bが杭から最大限離隔された位置の拡大平面図、(b)は(a)における補強鉄筋2bが杭10に近接する方向に径方向移動及び周方向移動調整中の拡大平面図である。
【0033】
補強鉄筋取付け具4は、何れも鋼製からなり、補強鉄筋2(2a、2b)の下端部にL形の直立辺部5aが固着されるとともにL形の下辺部5bに補強鉄筋2に直交する方向に伸びる長穴5cが穿設され、閉鎖型フープ3(3a、3b)の上面に載置されるアングル板5と、中間部にナット8が固着され、2つの閉鎖型フープ3(3a、3b)の下部にまたがり杭天板12の上面に載置される底板7と、アングル板5の長穴5cに挿通され、底板7のナット8に螺着することにより、補強鉄筋2を閉鎖型フープ3に対して周方向及び/又は径方向に移動調整可能に取付けるボルト部材6と、から構成されている。
【0034】
ここで、補強鉄筋2と交叉するように格子状に配筋される基礎梁主筋(図示しない)との干渉を回避するために、図2及び3に示すように、少なくともアングル板5の直立辺部5aは補強鉄筋2の外径以下の寸法幅に抑えることが望ましい。また、通常、補強鉄筋2として異径鉄筋が用いられるが、この場合、異径鉄筋のリブ側にアングル板5が溶接により固着される。これにより、補強鉄筋2と前記基礎梁主筋との干渉を一層回避し易くなる。
【0035】
底板7には、ボルト部材6が螺着するナット8に代えてネジ孔を設けるようにしてもよい。
【0036】
したがって、ボルト部材6を緩めることにより補強鉄筋2を補強鉄筋取付け具4共に閉鎖型フープ3に対して周方向及び/又は径方向に移動調整し、ボルト部材6を締め付けることにより補強鉄筋2を補強鉄筋取付け具4共に閉鎖型フープ3に対して固定することができる。
【0037】
また、底板7を閉鎖型フープ3の下面に溶接により固着することにより、補強鉄筋取付け具4共に補強鉄筋2aの周方向移動を拘束することができる。図1(a)、(b)においては、対抗する2対の計4個の補強鉄筋取付け具4の底板(図示しない)が閉鎖型フープ3の下面に溶接固着され、補強鉄筋2aの周方向移動が拘束されている。したがって、補強鉄筋2aはボルト部材6を緩めることにより杭10及び閉鎖型フープ3の径方向のみの移動が可能となっている。
【0038】
この場合、閉鎖型フープ3の下面に固着される補強鉄筋取付け具4の底板7は、図示しないが、固着されない他の底板7より僅かに厚く一体的に又はスペーサを介して構成されている。これにより、固着されない底板7と杭天板12の上面との間に隙間ができるため補強鉄筋取付け具4ごと補強鉄筋2bの周方向移動が一層容易化する。
【0039】
ここで、ボルト部材6を締め付けることにより補強鉄筋2a及び補強鉄筋取付け具4共に閉鎖型フープ3に対して固定することができる。したがってこの場合、その他の補強鉄筋2bを杭頭部の外殻11に密着させるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように径方向及び円周方向移動調整が行い易くなる。
【0040】
このように、ボルト部材6の頭部を上側に配置することにより、補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に溶接固着した後でボルト部材6を緩めて抜き取ることができ、前記基礎梁主筋との干渉を一層回避し易くなる。逆に、ボルト部材6の先端部を上側に配置するような場合は、アングル板5の上面に突出するボルト先端部を切除する必要があり、手間がかかる。
【0041】
また、周方向移動が拘束される補強鉄筋取付け具4は、等配された少なくとも3個あれば十分であり、これにより、周方向移動が拘束される補強鉄筋2a部を安定的に把持して吊上げ搬送することができる。また、基礎梁主筋に対して周方向移動が拘束される最小限の補強鉄筋2aの干渉を回避するように位置決めすることが容易である。
【0042】
このように、ボルト部材6を緩めたり締め付けたりすることにより、補強鉄筋2を閉鎖型フープ3に対して周方向及び/又は径方向に移動調整可能に取付ける簡潔な構成であるため、補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に密着させるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように移動調整することが一層容易になり、技能工の熟練を必要とせず合理的な配筋施工が容易かつ正確にできる。
【0043】
次に本発明の杭頭補強筋ユニット1による杭頭補強方法は、以下のような手順で行なわれる。
まず、鉄筋を杭10の外形輪郭より僅かに小さい異なる径の2つの略同心円状に屈曲形成された閉鎖型フープ3(3a、3b)を杭天板12の上面に載置する(閉鎖型フープ載置工程)。
【0044】
補強鉄筋2が個別に閉鎖型フープ3に周方向及び/又は径方向に移動調整可能に取付けられるように構成した補強鉄筋取付け具4を補強鉄筋2の下端部に装着する(補強鉄筋取付け具装着工程)。この補強鉄筋取付け具装着工程は、通常、補強鉄筋取付け具4の製作を含み工場内で実施される。
【0045】
その後、複数の補強鉄筋2をその下端部に設けられた補強鉄筋取付け具4を介して外側閉鎖型フープ3bの外周面に杭頭部を包囲するように略等配立設して仮組みする(補強鉄筋仮配筋工程)。
【0046】
略等配された少なくとも3個の補強鉄筋取付け具4の底板7を閉鎖型フープ3の下面に溶接により固着することにより補強鉄筋2aの周方向の移動を拘束する(補強鉄筋周方向移動拘束工程)。この際には、予め補強鉄筋2aを杭頭部の位置に合せるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように底板7を位置決めして閉鎖型フープ3の下面に溶接により固着する。
【0047】
そして、補強鉄筋取付け具4により閉鎖型フープ3に対して補強鉄筋2bを径方向及び円周方向、補強鉄筋2aを径方向にそれぞれ杭頭部の外殻11に密着させるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように個別に移動調整する(補強鉄筋移動調整工程)。
【0048】
最後に、前記移動調整された補強鉄筋2(2a、2b)を杭頭部の外殻11に溶接により固着し、補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に溶接固着した後でボルト部材6を緩めて抜き取り、杭頭補強筋ユニット1が形成される(補強鉄筋固着工程)。この際、ボルト部材6除去と同時に、閉鎖型フープ3の下面に溶接固着されない底板7も除去するようにしてもよい。除去されたボルト部材6あるいは底板7は、別の杭頭補強筋ユニット1に流用することができる。
【0049】
以上の、少なくとも通常工場内で実施される補強鉄筋取付け具装着工程を除く各工程は、杭10の補強施工する現場で行なう前提で説明したが、閉鎖型フープ載置工程では杭天板12の代わりとなる模擬杭天板(図示しない)上に閉鎖型フープ3(3a、3b)を略同心円状に載置し、補強鉄筋仮配筋工程までを前記施工現場以外の工場等において予め実施するようにしてもよい。
【0050】
この場合、仮組み状態の杭頭補強筋ユニット1を現地に搬送し、補強鉄筋取付け具4を閉鎖型フープ3と固定した状態の例えば4本の補強鉄筋2a部を把持して吊り上げ、閉鎖型フープ3部を杭天板12の上面に載置し、以降の前記補強鉄筋移動調整工程及び補強鉄筋固着工程を実施して杭頭補強筋ユニット1が形成される。したがって、工場内等で杭頭補強筋ユニット1の仮組みが一層正確にでき信頼性が向上するとともに、その後の現地での杭頭への上記補強鉄筋固着工程までの工程が、技能工の熟練や補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に溶接する際の補助作業員を必要とせず、一層効率よく短時間に施工できる。
【0051】
なお、実施例における杭10、補強鉄筋2の寸法及び数量については、例えば以下の製作例がある。
杭(SC杭)10の外径は約φ600mm
補強鉄筋径25mmで、長さは975〜1050mm程度
補強鉄筋の数量は18〜28本
杭10の太さは勿論、強度その他の使用条件によりそれぞれ対応した補強鉄筋2の径、長さ及び数量、あるいは閉鎖型フープ3の鉄筋径に設定されるとともに、これら鉄筋の材質も普通鉄線あるいは高強度鉄筋などが採用される。
【0052】
また、平面内円形の杭10の杭頭部を対象とした杭頭補強筋ユニット1について説明したが、円形の他、四角形杭が実際には用いられており、必要に応じて長円形、楕円形、多角形などの各種平面内形状の杭10の杭頭部に合せ、これに対応する各種形状の閉鎖型フープ3を形成して杭頭補強筋ユニット1を構成することも自在にできる。また、杭天板12を有しない杭頭部上に杭頭補強筋ユニット1を構成することも自在にできる。
【0053】
また、杭10をハンマーによる打撃式で打込む場合杭頭部がいびつに変形することがあっても、あるいは、杭10をスクリュー・打撃式で打込む場合杭頭部の外殻11の1〜4箇所にチャック駒が取付けられていても、容易に補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に密着させることができる。
【0054】
このように、本発明によれば、従来の前記諸問題点を改善し、現地における補強鉄筋2の位置決め割り出し等の技能工の熟練や補強鉄筋2を杭頭部の外殻11に溶接する際の補助作業員を必要とせず、効率性及び経済性にも優れた杭頭補強筋ユニット1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(a)は本発明の杭頭補強筋ユニットの平面図、(b)は(a)の側面図である。
【図2】本発明の杭頭補強筋ユニットの周方向移動が拘束された補強鉄筋取付け具において補強鉄筋が杭に近接する方向に径方向移動調整される状態説明図で、(a)は補強鉄筋が杭から最大限離隔された位置の拡大平面図、(b)は(a)の側面図、(c)は(a)における補強鉄筋が杭に近接する方向に径方向移動調整中の拡大平面図、(d)は(c)における補強鉄筋が杭に近接した位置の側面図である。
【図3】本発明の杭頭補強筋ユニットの径方向及び周方向移動可能な補強鉄筋取付け具において補強鉄筋が杭に近接する方向に径方向移動及び周方向移動調整される状態説明図で、(a)は補強鉄筋が杭から最大限離隔された位置の拡大平面図、(b)は(a)における補強鉄筋が杭に近接する方向に径方向移動及び周方向移動調整中の拡大平面図である。
【図4】従来の特許文献1の杭頭補強ユニットの側面図である。
【図5】従来の特許文献2の杭頭部構造の側面図である。
【図6】従来の特許文献3の杭頭補強構造の側面図である。
【図7】従来の特許文献4の杭頭補強構造の側面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 杭頭補強筋ユニット
2、2a、2b 補強鉄筋
3、3a、3b 閉鎖型フープ
4 補強鉄筋取付け具4
5 アングル板
5a 直立辺部
5b 下辺部
5c 長穴
6 ボルト部材
7 底板
8 ナット
10 杭
11 外殻
12 杭天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外殻が鋼管又は鋼板からなる杭の杭頭部に補強鉄筋を配筋固着することにより杭頭部を補強する杭頭補強筋ユニットであって、
鉄筋が前記杭の外形輪郭に対して僅かに小さく異なる大きさの相似形に屈曲形成され、前記杭頭部の上面に略同心状に載置される2つの閉鎖型フープと、
前記外側閉鎖型フープの外周面に杭頭部を包囲するように略等配され、下端部に設けられた補強鉄筋取付け具を介して立設される複数の補強鉄筋とからなり、
前記補強鉄筋取付け具は、前記補強鉄筋を個別に前記閉鎖型フープに周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付けるように構成され、
前記移動調整された補強鉄筋が、前記杭頭部の外殻に溶接により固着されることを特徴とする杭頭補強筋ユニット。
【請求項2】
前記補強鉄筋取付け具のうち、略等配された少なくとも3個は前記閉鎖型フープに対して前記補強鉄筋の周方向の移動が拘束されていることを特徴とする請求項1記載の杭頭補強筋ユニット。
【請求項3】
前記補強鉄筋取付け具は、
L形に形成され、その直立辺部が前記補強鉄筋の下端部に固着され、下辺部に前記補強鉄筋に直交する方向に伸びる長穴が穿設されて前記2つの閉鎖型フープの上面にまたがって載置されるアングル板と、
中間部にナットが固着されるか又はネジ孔が設けられ、前記2つの閉鎖型フープの下部にまたがって前記杭頭部の上面に載置される底板と、
前記アングル板の長穴に挿通され、前記底板のナット又はネジ孔に螺着することにより、前記補強鉄筋を閉鎖型フープに対して周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付けるボルト部材と、からなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の杭頭補強筋ユニット。
【請求項4】
前記補強鉄筋取付け具の底板が前記閉鎖型フープの下面に溶接により固着されることにより、前記補強鉄筋の周方向移動が拘束されることを特徴とする請求項3記載の杭頭補強筋ユニット。
【請求項5】
前記閉鎖型フープの下面に固着される補強鉄筋取付け具の底板は、固着されない他の底板より僅かに厚く一体的に又はスペーサを介して構成されていることを特徴とする請求項4記載の杭頭補強筋ユニット。
【請求項6】
外殻が鋼管又は鋼板からなる杭の杭頭部に補強鉄筋を配筋固着することにより杭頭部を補強する杭頭補強方法であって、
前記杭の外形輪郭に対して僅かに小さく異なる大きさの相似形に屈曲形成された鉄筋からなる2つの閉鎖型フープを前記杭頭部又は模擬杭頭部の上面に略同心状に載置する閉鎖型フープ載置工程と、
前記補強鉄筋が個別に前記閉鎖型フープに対して周方向及び/又は周に対し直交方向に移動調整可能に取付けられるように構成した補強鉄筋取付け具を前記補強鉄筋の下端部に装着する補強鉄筋取付け具装着工程と、
前記補強鉄筋取付け具のうち、略等配された少なくとも3個の補強鉄筋取付け具を前記閉鎖型フープに対して前記補強鉄筋の周方向の移動を拘束する補強鉄筋周方向移動拘束工程と、
前記複数の補強鉄筋を、前記補強鉄筋取付け具を介して前記外側閉鎖型フープの外周面に杭頭部又は模擬杭頭部を包囲するように略等配立設して仮組みする補強鉄筋仮配筋工程と、
前記仮組みされた補強鉄筋を前記補強鉄筋取付け具によりそれぞれ前記杭頭部の外殻に密着させるとともに基礎梁主筋との干渉を回避するように前記閉鎖型フープの周方向及び/又は周に対して直交方向に移動調整する補強鉄筋移動調整工程と、
前記移動調整された補強鉄筋を前記杭頭部の外殻に溶接により固着する補強鉄筋固着工程と、を有することを特徴とする杭頭補強方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−45279(P2008−45279A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−218895(P2006−218895)
【出願日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(592155946)冨士鋼業株式会社 (7)
【Fターム(参考)】