説明

杭頭部の不要物除去容器及び除去装置,並びに不要物除去方法

【課題】杭頭部の不要なコンクリートミルク,生コンクリート,スライム等の不要物を,硬化する前の液状ないしはゲル状の状態において容易に除去することができる除去装置及び除去方法を提供する。
【解決手段】杭基礎の造成時に杭頭部に生じた不要物が存在する空間内に挿入される除去容器10の除去容器本体11の内部に,液状又はゲル状の不要物を導入する回収空間12を形成し,かつ,底部側において前記回収空間12を開放する開口13を設ける。そして,前記開口13を前記回収空間12側で被蓋する,前記回収空間12内に揺動自在に固定された蓋板14を設ける。
この除去容器10を不要物中に沈降させると,不要物はその流入圧力によって前記蓋板を押し上げ,回収空間12内に導入される。その後,この除去容器を引き抜くと,不要物の重量によって前記蓋板14が開口13を閉じ,杭頭部の不要物が存在する空間より不要物を容易に除去することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は杭基礎工事において杭を造成する際に,杭頭部(本明細書に於いて,「杭頭」は,杭の頂部及び頂部近傍を,「杭頭部」を杭頭の内部及び杭頭上の掘削孔内の空間を含む概念として用い,両者を含めて単に,「杭頭部」ということもある。)に発生する不要物を除去するための除去容器,及び前記除去容器を構成要素とする除去装置,並びに前記除去容器を使用した不要物の除去方法に関し,より詳細には,場所打ち杭工法や,埋込杭工法等の,地盤の掘削とコンクリートの打設を伴う杭基礎工事において発生する杭頭部の不要なセメントミルク,スライム,与盛りされた生コンクリート等の不要物を除去するための除去容器及び除去装置,並びに前記不要物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤の掘削とコンクリートの打設を伴う杭基礎工法の一例として,場所打ち杭工法が知られている。
【0003】
この場所打ち杭工法は,地盤を掘削した後に鉄筋かごを挿入し,コンクリートを打設することにより現場で杭を造成する工法であり,ライナープレートやケーシングチューブなどで孔壁を覆うことにより,又は,孔内に注入した水や安定液の圧力によって孔壁を保護しながら支持層までアースオーガ,その他の掘削機を用いた掘削によって地盤の掘削を行った後,鉄筋かごをこの掘削孔内に挿入し,その後,トレーミー管を掘削孔内に挿入して生コンクリート等を注入することで,杭の造成が行われる。
【0004】
このような杭の造成に際し,掘削孔内にコンクリートを打設すると,掘削孔内に残ったスライム等の不純物が比重差によってコンクリート上部に浮き上がり,杭頭部のコンクリートは不純物を多く含むものとなる。
【0005】
そのため,コンクリートの打設時,本来の杭頭部となる位置よりも高い位置までコンクリートを打設する,所謂「与盛り」を行い,この与盛り部分のスライムやコンクリート等を不要物として除去することが行われている。
【0006】
このような杭頭部における不要物の除去は,前述した場所打ち杭工法により杭を造成する場合のみならず,その他の工法,例えば既成杭工法等であっても,地盤の掘削とコンクリートの打設とを伴う杭基礎工事では同様に必要となる場合がある。
【0007】
一例として,既成杭工法のうち,中空杭を使用した埋込工法では,アースオーガ等の掘削機を使用した掘削によって形成された掘削孔内に,セメントミルク等の根固め液,周辺固定液を注入した後に,鋼やコンクリート製の中空杭を挿入し,又は中空杭の挿入後,杭の中空孔を介してセメントミルク等の根固め液を注入することにより,支持層に対する根固め,拡大球根の造成,周辺地盤と中空杭との一体化が行われている。
【0008】
このような既成杭工法によって埋設された中空杭の頭部には,上部に構築される構造体との接合を行うための接合用鉄筋が取り付けられるが,この接合用鉄筋の取り付けは,中空杭の頭部中空空間内に,例えば予め製造しておいた鉄筋かごの下端部分を挿入した後,中空部内にコンクリートを打設することにより行われている〔図13(c)参照〕。
【0009】
しかし,前述したような既成杭工法において,セメントミルクは杭頭部又はこれを越えて充填されることから,杭頭部に前記接合用鉄筋を挿入するための空間が存在せず,このような接合用鉄筋を挿入するための空間を確保する必要がある。
【0010】
そのため,杭頭部の中空空間内に詰まっている硬化前又は硬化後のセメントミルクやスライム等を,不要物として除去する作業が行われている。
【0011】
このような,杭頭部における不要物の一般的な除去方法としては,生コンクリート,セメントミルク,スライム等が硬化した後に,これらの硬化物をハツリ(削り)機によって破砕して除去するか,又は,これらの不要物が硬化する前の未だ柔らかい状態にあるときに,スコップ等を使用して手掘りで除去を行っているのが一般的である。
【0012】
なお,このような,不要物の除去を簡易なものとするための技術として,中空杭を使用した埋込工法において,以下のような方法が提案されている。
【0013】
(1)掘削孔内にセメントミルクの注入前に中空杭を挿入し,この中空杭の内壁に,杭頭部の所定の深さまで段ボール紙等からなる剥離手段を仮着すると共に,この杭頭部の中空内に固化物係止手段を設置した後,中空杭内にその上端位置までセメントミルクを注入し,固化した固化物を固化物係止手段と共に引き抜いて除去する方法(特許文献1参照)。
【0014】
(2) 杭頭部のセメントミルクが硬化する前に,硬化後の強度低下をもたらす高分子有機酸等の処理剤を除去する部分のセメントミルクに添加して,硬化後の除去を容易とするもの(特許文献2参照)。
【0015】
(3)杭頭部に水を注入し,セメントミルクの硬化を遅らせ,その間に除去する方法(特許文献3参照)。
【0016】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開平 7−189243号公報
【特許文献2】特開平11−193524号公報
【特許文献3】特開平 5−230831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
前記従来の杭頭部における不要物の除去方法において,硬化前のコンクリートを手作業によって除去し,又は,ハツリ機で破砕して除去する作業にあっては,作業に多大な労力と時間が費やされる。特に,このような除去作業は,杭の施行後に行われるものであるために,この除去に必要な作業時間をも工期に組み込む必要があり,基礎工事を長期化させる一因となっている。
【0018】
また,除去された不要物は,廃棄のためにコストがかかり,特に硬化後に除去したコンクリートにあっては,工事現場からの搬出に際しても,ある程度の大きさに破砕等を行った後に搬出・廃棄する必要があり,このための作業に多大な労力と費用が費やされることとなる。
【0019】
さらに,コンクリートを除去するためにハツリ機等でコンクリートを破砕する場合には,このハツリ作業の際に杭頭部を破損等するおそれがあり,このような破損が生じれば,造成された杭の強度が低下する。また,除去時,又は除去後にコンクリートを破砕する際に生じる騒音や振動が,作業環境や周辺環境を悪化させるという問題もあり,特に都市部や住宅街にあっては,この種の作業を行うことが困難となっている。
【0020】
前述の特許文献1の開示する不要物の除去方法にあっては,固化物係止手段を杭頭部より抜き取ることで,同時に不要なコンクリートを除去することができることから,杭頭部からの不要物の除去という点のみで評価すれば,労力の軽減が図られていると言えないこともない。
【0021】
しかし,特許文献1に記載の方法にあっては,掘削孔に対する既成杭の挿入後に,セメントミルクを注入する手順で行われる工法に限定され,中空杭の挿入とセメントミルクの注入手順が逆の場合には,この方法を採用することができず,また,場所打ち杭工法においても採用することができない。
【0022】
更に,コンクリートの除去は,コンクリートミルクの硬化後に行うものであるから,産業廃棄物として,これを廃棄するために破砕等の作業が必要である点は,前記従来技術と同様である。
【0023】
また,中空杭内に配置された固化物係止手段は,硬化したコンクリート中に埋設された状態で抜き取られるために,除去したコンクリートと固化物除去手段とを分離して,固化物係止手段を回収するための新たな作業が必要となる。
【0024】
さらに,固化物係止手段を再利用しようとすれば,表面に付着等したコンクリートを除去,掃除等する作業も必要となる等,新たな作業の発生により手間が増大するものとなる。
【0025】
硬化後の強度低下をもたらす処理剤を添加する特許文献2に記載の方法では,硬化したコンクリートの破砕が容易となるものの,破砕や除去等の作業自体を省略することができるものではない。
【0026】
さらに,特許文献3に記載の方法にあっては,水を添加することによりセメントミルクの硬化を遅らせることはできるものの,水の添加による増量により周囲に溢れ出たセメントミルクの処理という新たな作業が必要となる。また,硬化が遅れたセメントミルクを如何にして除去するかの記載はないが,これを既知の方法によって人手によって行うものであれば,作業労力自体の軽減は得られない。
【0027】
そこで,本発明は,上記従来の欠点を解消するためになされたものであり,比較的簡単な構成により,杭頭部の不要なコンクリートミルク,生コンクリート,スライム等の不要物を,硬化する前の液状ないしはゲル状の状態において容易に除去することができる除去容器,この除去容器を構成要素とする除去装置,並びに除去方法を提供することにより,杭の施工工程中に不要物の除去工程を組み込むことにより,工期の短縮を図ることができると共に,不要物を硬化後に除去する場合のように,廃棄に際して破砕等の処理を不要とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
上記目的を達成するために,本発明の杭頭部の不要物除去容器10は,杭基礎の造成時に杭頭部に生じた不要物が存在する杭頭部の空間として画定される掘削孔内あるいは中空杭の前記杭頭の内外周に挿入され,あるいは杭頭端縁上に載置して,前記空間を被覆可能に形成され,内部に液状又はゲル状の前記不要物を導入する回収空間12を備えると共に,底部側において前記回収空間を開放する開口13を備えた除去容器本体11と,
前記開口13を開閉自在に,例えば,前記回収空間12側において被蓋する,前記回収空間12内に取り付けられた蓋板14を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0029】
前記構成の不要物除去容器10において,前記除去容器本体11の上端には把持部及び/又は連結部(継手19)を設けても良く(請求項2),又は,把持部及び/又は連結部(実施形態においてT字杆32)を有し,前記除去容器本体11に対して着脱可能である吊下手段30を設けることができ(請求項3),この連結部として,例えば掘削機のスクリューロッドに連結可能な継手を設けることができる。
【0030】
さらに,本発明の不要物除去装置1は,前記除去容器10と,前記除去容器10の前記回収空間12内に導入された不要物を前記除去容器10より排出する排出補助手段50によって構成されるもので,
前記排出補助手段50が,前記除去容器10を載置可能な基台55と,前記基台55上に前記除去容器10を載置したとき前記除去容器10の前記蓋板14に係合し,好適には前記蓋板14を回収空間12内に押し上げる,係合突起56を備えることを特徴とする(請求項4)。
【0031】
前記構成の不要物除去装置1において,前記排出補助手段50は,更に,前記基台55上に,前記除去容器10の載置位置を規制する位置決め突起57a〜57dを突設したものとすることができる(請求項5)。
【0032】
さらに,前記杭基礎の造成時に杭頭部に載置され,前記杭頭部に生じた不要物が存在する空間内面に近接して外面を嵌合可能な外形を有し,内面に前記除去容器本体11が挿脱自在に嵌装可能な筒矢板60を含む場合には,杭頭の掘削孔の高さが高い場合,掘削孔が軟弱である場合,掘削孔から湧水する場合に好適である(請求項6)。
【0033】
前記筒矢板60の上部及び又は下部に着脱自在の蓋体67,68を設ければ,根切り作業によって杭頭部の損壊等を防ぐことが出来る(請求項7)。
【0034】
また,本発明の杭頭部の不要物除去方法は,杭基礎の造成時に杭頭部に生じた液状又はゲル状の不要物が存在する杭頭部の空間として画定される掘削孔内あるいは中空杭の前記杭頭の内外周に挿入され,あるいは杭頭端縁上に,前記回収空間12を載置して,前記杭頭部の空間を被覆し,前記回収空間底部の蓋板14を前記不要物により開放し,前記回収空間12内に前記不要物を導入し,前記回収空間12を前記杭頭部の空間から抜き取ることにより,前記開口13を被蓋し,前記回収空間12内の不要物を前記杭頭部の空間より除去することを特徴とする(請求項8)。
【0035】
前記杭頭部の不要物除去方法において,更に,前記除去容器10を載置する基台55と,前記基台55上に突設された係合突起56を有する前述の排出補助手段50を準備し,
前記不要物が存在する空間より抜き取った前記除去容器10を,前記基台55の前記係合突起56の形成位置上に載置することにより,前記係合突起56により前記除去容器10の蓋板14を押し上げて前記開口13を開放し,回収された不要物を排出するように構成することもできる(請求項9)。
【0036】
前記杭頭部の空間に前記除去容器本体11を嵌装し,前記開口13を開放し,回収された不要物を排出する工程により,前記不要物を除去した後,前記杭頭部に,該杭頭を被蓋する杭頭蓋体を載置する工程を含む(請求項10)。
【0037】
前記杭頭の空間に前記筒矢板60を載置し,該筒矢板60内に前記除去容器本体11を嵌装し,前記開口を開放し,回収された不要物を排出する工程により,前記不要物を除去した後,前記筒矢板60の上下開口を被蓋して,再度前記杭頭の回収空間12に前記筒矢板60を載置し,その後,前記筒矢板60を前記上下蓋体67,68と共に搬出して除去する工程を付加することが出来る(請求項11)。
【0038】
なお,前記方法により除去対象とする不要物は,既成杭の杭頭部における中空空間内のセメントミルク及び/又は不純物であっても良く(請求項12),又は,場所打ち杭の杭頭部上に与盛りされたコンクリート及び/又は不純物であって良い(請求項13)。
【発明の効果】
【0039】
以上説明した構成により,本発明の杭頭部の不要物除去容器10にあっては,この除去容器10を,例えば中空の規制杭の中空空間内や,場所打ち杭の与盛り部分に所定の深さで挿入した後,引き抜くという極めて簡単な作業により不要なセメントミルクや生コンクリート,スライム等の不要物を除去することができた。
【0040】
また,このような除去作業を,中空の既成杭に対してのみならず,場所打ち杭に対しても行うことができ,地盤の掘削とコンクリートの打設を伴う,不要物の除去が必要となる各種の杭基礎工事に広範に適用することが可能であった。
【0041】
前記除去容器10を移動等させる際に把持する把持部や,クレーン等で吊り下げる際にワイヤやフック等を係止するリング,掘削機のスクリューロッドに連結するための継手等である連結部を備えた除去容器10にあっては,移動や吊り下げ,不要物が存在する空間に対する挿入,抜き取り等を容易に行うことができた。
【0042】
特に,前記把持部や連結部を備えた吊下手段30を,前記除去容器10に対して着脱可能な別部材によって形成したことにより,除去容器10自体の形状を単純且つ,コンパクトなものとすることができ,複数の除去容器10を重ねて収納等できる等の利点がある。
【0043】
また,複数の除去容器10を連続して移動等する場合,一旦,吊下手段30をワイヤやフック等に取り付けてしまえば,除去容器10にこの吊下手段30を着脱することで,個々の除去容器10に対してワイヤ等の取り付け作業が不要となり作業性が向上する。
【0044】
さらに,前記除去容器10に排出補助手段50を組み合わせることによって構成された本発明の不要物除去装置1にあっては,前記除去容器10に回収された不要物を,この排出補助手段50上の所定の位置に載置するのみで,除去容器10内に回収された不要物の排出作業を極めて簡単に行うことができた。
【0045】
従って,例えばこの排出補助手段50を不要物の廃棄位置に配置しておくことで,除去容器10内に回収された不要物を容易に廃棄位置に排出することができ,また,このような排出補助手段50をトラックの荷台やその他の容器内,又は容器上に配置しておくことで,回収された不要物を一箇所にまとめて回収等することが容易である。
【0046】
なお,前述の除去容器10や除去装置1,並びに除去方法によって除去された,杭頭部の不要物である生コンクリート,セメントミルク,スライム等は,いずれも硬化前に除去されたものであるために,廃棄に際して破砕等を行う必要がなく,従って除去に際してハツリ機等で破砕する際に生じる,杭頭部の破損による杭の強度低下や,騒音の問題も生じない。
【0047】
さらに,回収された不要物は,硬化前の液状又はゲル状の状態にあることから,水等の添加により容易に希釈することができ,このようにして希釈した後,直接,又は必要に応じて所定の処理を行った後に排水として廃棄することができる等,廃棄コストの点でも有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0049】
〔除去容器〕
図1〜3において,10は,本発明の除去容器であり,この除去容器10は,杭頭部における不要物が存在する杭頭部の空間として画定される掘削孔内あるいは中空杭の前記杭頭の内外周に挿入され,あるいは杭頭端縁上に載置して,前記空間を被覆可能に形成された除去容器本体11(11a,11b,11c)を有する。
【0050】
ここで,不要物が存在する空間の例としては,対象とする杭が場所打ち杭工法によって造成されるものである場合には,杭頭部となる部分の上部空間であり,従来技術において説明した,「与盛り」されたコンクリート等が存在する部分等がこの空間に該当し,また,中空杭を使用した既成杭工法によって造成される杭基礎の場合には,中空杭の頭部から接続用鉄筋等を挿入するために必要な所定深さの中空部等がこの空間に該当する。
【0051】
図1〜3に示した除去容器10は,これを中空杭を使用した既成杭工法用のものとして構成したもので,ここでは,除去容器本体11を中空杭の中空空間内に挿入可能な直径の円筒状に形成している。
【0052】
もっとも,この除去容器10の除去容器本体11部分の径あるいは形状は,図示のように中空空間内に挿入可能なものあるいは円筒状に限定されず,例えば,使用する既成杭,又は造成する場所打ち杭の形状に対応し,各種の形状に形成することが可能である。
【0053】
この除去容器10の除去容器本体11内には,図2に示すように除去される不要物を回収するための回収空間12が形成されていると共に,この回収空間12の底部側において,不要物をこの除去容器本体11内の回収空間12に導入するための開口13が形成され,更に,この開口13を内側より被蓋する蓋板14が設けられている(図2及び図3参照)。
【0054】
前述の開口13は,除去容器10を杭頭部の不要物が存在する空間内に底部側より前記空間を被覆するよう挿入した際に,液状ないしはゲル状の不要物を導入可能な位置であればいずれの位置に設けても良く,本実施形態にあっては,有底円筒状に形成された前記除去容器本体11の底面にこの開口を形成している。
【0055】
また,前述の蓋板14は,前記開口13を閉塞可能な大きさを有すると共に,前記不要物の流入圧力によって前記開口13を開放可能と成すように前記回収空間12内に揺動可能に固定されており,図示の実施形態にあっては,その一端を除去容器本体11の底板にヒンジ15により固定して,前記開口13の閉塞時,蓋板14が前記開口13を内部より覆うことにより閉塞すると共に,前記ヒンジ15を支点として揺動することにより,底板上で立ち上がり,前記開口13を開放するように構成されている。
【0056】
なお,図示の実施形態にあっては,この蓋板14を片開きの構成としているが,例えば二枚の蓋板を,所謂「観音開き」となるように取り付けても良く,前述したように前記開口13を閉塞し得ると共に,回収空間12内に流入する不要物の流入圧力によって前記開口13を開放可能な構成であれば,如何なる構成としても良い。
【0057】
なお,図2中,Sはストッパであり,前述の蓋板14の開放時,この蓋板14が,90度未満の開放角度となるように蓋板14の揺動範囲を規制する。
【0058】
例えば図2に示す実施形態において,蓋板14の開放角度が90度を超え,その先端(自由端)が除去容器本体11の内壁と接触する迄揺動すると,蓋板14はこの位置で安定して開口13を被蓋する方向に揺動しなくなるおそれがあるが,図2に示すようにストッパSによって蓋板14の開放角を90度未満の位置(本実施形態にあっては85度)で規制することにより,蓋板14は,不要物の導入時の圧力より開放された時に自重により,または,中空杭の中空空間より抜き取る際の不要物の重量により,確実に開口13側に倒れて開口13を塞ぐ。
【0059】
前記除去容器本体11内の回収空間12は,前記除去容器本体11内に不要物が導入された際に,この不要物の導入量に応じて回収空間12内の空気を排出することができるよう,その上方部分が開放されており,本実施形態にあっては,除去容器本体11を円筒体により構成し,この円筒体である除去容器本体11の上端を開口している。
【0060】
以上のように構成された除去容器除去容器本体11の上端には,この除去容器10の吊り下げ等を可能とするための連結部19が設けられている。
【0061】
本実施形態にあっては,円筒体である除去容器本体11の上端開口内に,除去容器本体11の内周間に掛け渡された支持材21を設け,この支持材21に前述の連結部19を設けている。
【0062】
図1,2の実施形態にあっては,前記除去容器本体11の上部開口内周間を直径方向に掛け渡す第1のH型鋼21aと,この第1のH型鋼21aの長さ方向の中央部分と除去容器本体11の内周間に掛け渡された第2及び第3のH型鋼21b,21cによって,平面視において十字状に直交するように前記支持材21を形成し(図1参照),除去容器本体11の上端開口を塞ぐことなく,除去容器本体11上端部の補強と連結部19の取り付けとを可能としている。
【0063】
このように構成された支持材21の中央部分には,前述の連結部19が設けられており,本実施形態にあっては,この連結部19として掘削機のスクリューロッドのジョイント部に使用されている,六角柱状の継手(オス)を固着している。
【0064】
このように連結部19を設けることにより,スクリューロッドの先端に設けられた継手(メス)内に前記連結部19を挿入すると共に,スクリューロッドに設けられた継手(メス)に設けたピン孔と,前記連結具19に設けたピン孔に共に係止ピンを挿入することで,除去容器10を容易にスクリューロッドの先端に取り付けることができる。
【0065】
なお,除去容器10の構成は,図1〜3を参照して説明した構成に限定されず,各種の変更が可能である。このような除去容器10の変更例を,図4及び図5を参照して説明する。
【0066】
図4及び5に示す除去容器10において,下端部分の構成は図1〜3を参照して説明した除去容器10の構成と同様であるが,図4及び5に示す実施形態にあっては,図1〜3では円筒体によって形成されていた除去容器本体11を,更に矩形板11b,リング状部材11cによって高さ方向を延長した形状としている。
【0067】
図示の実施形態にあっては,前記除去容器本体11の約下半分を円筒体11aにより構成すると共に,除去容器10の約上半分を,この円筒体11aの上端周縁より円周方向に等間隔に配置した4枚の矩形板11bと,この矩形板11bの高さ方向の中間部に固着されたリング状部材11cによって構成することで,除去容器本体11の上方部分の側面に回収空間と連通した矩形の窓16を形成し,この窓16を介して回収空間12内の空気を排出可能とした。
【0068】
もっとも,このように回収空間12内の空気を排出可能と成す構成は,図示の実施形態の構成に限定されず,例えば除去容器本体11全体を円筒状部材によって構成し,その上部側面に孔を穿設等することにより形成しても良く,又は,前記除去容器本体11には窓を設けず,図1〜3を参照して説明した除去容器10のように,除去容器本体11の上端を開放するものとしても良く,図4及び5に示す除去容器10では,後述する天板17に,回収空間12内に連通する開口を設けても良い。
【0069】
以上のように構成された除去容器本体11の上端,図示の実施形態にあっては,前述の矩形板11bの上端部には円形の天板17が取り付けられており,本実施形態にあっては,この天板17の径を除去容器本体11よりも大径に形成して,除去容器本体11の上端縁より外周方向にフランジ状に突出させている。
【0070】
このように天板17の周縁を除去容器本体11の外周方向にフランジ状に突出させることにより,この除去容器10を中空杭の杭頭部より前記空間を被覆するよう挿入した際に,前記天板17の突出部分が,例えば中空杭の上端に係止されて,中空杭内に完全に入り込むことが防止される。
【0071】
この天板17には,除去容器10を吊下げ等する際にワイヤ等を取り付けるためのリングや掘削機のスクリューロッドに連結するための継手等である連結部や,作業員が持ち運ぶ際に把持する取手等の把持部を取り付けても良いが,本実施形態にあっては,この除去容器10を吊り下げ可能と成す,後述の吊下手段30を着脱するための係止杆18を固着している。
【0072】
この係止杆18は,本実施形態において断面矩形状の金属杆によって構成したものであり,この金属製の杆状部材を天板17の周縁部分より外周方向に突出するように取り付けて,この突出部分が後述する吊下手段30に設けた係止溝33に噛合されて,吊下手段30と除去容器10とが連結されるように構成されている。
【0073】
なお,図4に示す実施形態にあっては,前記天板17に対する係止杆18の取り付けを180度の等角度で2箇所行っているが,除去容器10のサイズによっては,この係止杆を2つ以上(例えば3又は4個)としても良く,又は4箇所以上に設けても良い。
【0074】
このように,除去容器10に取っ手等の把持部や,ワイヤやフック等を取り付けるためのリング,掘削機のスクリューロッドを連結するための継手等である連結部等を備えた吊下手段30を着脱可能とすることで,除去容器10の上面を,突出部分のない平坦な形状とすることができ,複数の除去容器10を積み重ねて収納等する際に安定性が良く便利であると共に,例えば除去容器10を吊り下げるためのワイヤ等を,一の吊下手段30に取り付けることで,この吊下手段30を吊下対象等とする除去容器10に取り付けることで,各除去容器10に対して個別にワイヤ等を取り付ける作業が不要となる。
【0075】
前述の吊下手段30は,前記除去容器10の把持,又は前記除去容器10に対するワイヤやスクリューロッド等の連結を可能とし,これにより作業員による,又はクレーン等の作業機による除去容器10の移動,昇降等を容易とするために設けたもので,前述したように,例えば除去容器10の天板17等にリングや継手等の連結部や,取っ手等の把持部を直接設けた場合には,この吊下手段30は必ずしも設ける必要はない。
【0076】
この吊下手段30は,図1の実施形態にあっては前記除去容器10の上端部分に被せて使用するもので,天板17部分から除去容器本体11の上端部分を覆う,下向きに開口したキャップ部31と,このキャップ部31の上端に作業者が把持し,又は吊り下げ用のワイヤ等を連結するための把持・連結部が取り付けられており,図示の実施形態にあっては,この把持・連結部として,T字杆32を取り付けているが,例えばこれをリング状の部材などとしても良く,また,図1,2を参照して説明した実施形態同様,スクリューロッドに対する連結を可能と成す継手19を設けても良い。
【0077】
また,前記キャップ部31の側壁には,天板17に取り付けた係止杆18の突出部分と噛合する係止溝33が形成されており,この係止溝33に前記係止杆18が噛合することにより,天板17と吊下手段30とが連結される。
【0078】
本実施形態において,この係止溝33は,前記キャップ部31の下端開口縁より上方に向かって形成された縦溝33aと,この縦溝33aの上端より水平方向に形成された横溝33bより成り,全体として略逆L字型に形成され,このような係止溝33が前記除去容器10に設けた係止杆18に対応する個数,対応する箇所に設けられている。
【0079】
以上のように構成された吊下手段30を,天板17上に配置すると共に,係止溝33の縦溝33aに係止杆18が嵌合するように下降させると,吊下手段30のキャップ部31を天板17に被せることができる。
【0080】
そして,係止杆18が,前記係止溝33の縦溝33aの上端に迄至った時に,吊下手段30を所定角度回転させて,係止杆18を吊下手段30に設けた係止溝33の横溝33b内に嵌合させると,吊下手段30を持ち上げた際,吊下手段30の係止溝33の横溝33b部分に,係止杆18が係止され,吊下手段30による除去容器10の吊り下げが可能となる。
【0081】
この吊下手段30に設けた係止溝33の横溝33b部分には,好ましくは図4に示すように,前記係止杆18の移動を規制する段部34を形成しても良い。
【0082】
なお,既成杭を掘削孔内に挿入する際に,既成杭を吊り下げるために使用する吊下キャップが前記吊下手段30と同様の構成を有するものであるところ,前記吊下手段30として,この既成杭を吊り下げるための吊下キャップを転用するものとしても良い。
【0083】
〔排出補助手段〕
図6〜9中50は,前記除去容器10と共に組み合わせて使用することにより,本発明の除去装置1を構成するもので,この排出補助手段50は,前記除去容器10内に回収された不要物の排出を補助する。
【0084】
この排出補助手段50は,前記除去容器10を載置可能と成す基台55と,この基台55上に立設された係合突起56を備え,除去容器10をこの排出補助手段50の基台55上に載置した際に,係合突起56が前記除去容器10の底部に設けた開口13を被蓋する蓋板14を押し上げて,除去容器10内に収容された不要物の排出を行う。
【0085】
なお,除去容器10自体に回収された不要物の排出を容易とするための手段を設ける場合には,このような排出補助手段を別途設ける必要がなく,例えば,除去容器10の蓋板14に,開口の被蓋時,下向きに突出する係合突起を設ける等して,床面や地面上に除去容器を載置した際に,係合突起の下端が地面や床面等との接触により押し上げられて蓋板14が開くように構成しても良い。
【0086】
図示の実施形態において,排出補助手段50は,H型鋼や角パイプ等を2本平行に配置して構成された脚部51,51の上面間に,同様にH型鋼や角パイプ等からなる3本の横架材52,53,54を架設して前記基台55を形成し,この基台55の横架材52,53,54上に前記除去容器10を載置可能として,横架材間(図示の例では横架材53,54間)に形成された間隔により,不要物の排出空間を確保している。
【0087】
この排出補助手段50には,前記係合突起56が正確に前記蓋板14をここでは押し上げることができるように,排出補助手段50に対する除去容器10の載置位置を規制乃至は誘導するための手段を設けることが好ましく,本実施形態にあっては,基台55の上面より4枚の規制片57a〜57dを突出し,この規制片57a〜57dで囲まれた空間内に除去容器10の底部が配置されるように構成している(図8及び9参照)。
【0088】
なお,前記基台55に設けた符号58で示す部材は,吊下リングであり,本実施形態にあっては,この吊下リング58を前記脚部51,51の長さ方向の両端部のそれぞれ上面に固着することにより,ワイヤ等を取り付け可能として,吊り下げ,移動等を容易に行うことができるように構成している。
【0089】
[杭頭部の不要物除去]
次に,以上のようにして構成された不要物除去装置1(10,50)を使用して,杭頭部の不要物を除去する方法について説明する。なお,以下の実施形態にあっては,中空の既成杭において不要物の除去を行った例を説明するが,場所打ち杭において不要物を除去する場合についても略同様にして行うことが可能である。
【0090】
従来技術において説明したように,基礎杭の施工完了時において,中空杭には杭頭部に至るまでセメントミルクやスライム等が充填された状態にあり,接合用鉄筋を取り付けるために,この部分のセメントミルクやスライムを不要物として除去する必要がある。
【0091】
このような不要物の除去において,前述のコンクリートミルクやスライムが硬化する前の,未だ液状又はゲル状にある時に,杭頭部の中空部内に,前記除去容器10を,その底部側より挿入する。
【0092】
除去容器10の挿入に際し,この除去容器10を連結具19を介してスクリューロッドの先端に取り付け,中空杭の杭頭部における中空空間内に,不要物の除去深さ迄挿入することができるようにする。
【0093】
前記除去容器10の除去容器本体11は,不要物が存在する杭頭部の空間,本実施形態にあっては中空杭の頭部中空空間内に挿入可能なサイズに形成されており,この除去容器10の底部側から中空杭の中空空間内に除去容器10を挿入し,自重により,又は人的,機械的な外力を加えて押し込む等して中空空間内に充填されている不要物中に沈降させる。
【0094】
前述のように,中空杭の中空空間内には,硬化前の,液状又はゲル状のスライムやセメントミルクが充填されているが,この除去容器10の挿入によってスライムやセメントミルクは行き場を失い,前記除去容器10の底板に形成された開口13を被蓋する蓋板14を押し上げて,除去容器10内に形成された回収空間12内に流入する。
【0095】
この回収空間12は,除去容器本体11の上部開口によって大気開放されているため,スライムやセメントミルクの流入量に応じて回収空間12内の空気が放出されて,不要物と置き換わり,回収空間12内に対する不要物の流入が円滑に行われる。
【0096】
このようにして,更に除去容器10を不要物中に沈降させて,中空杭の中空空間内に必要な深さ迄挿入すると,回収すべき不要物がこの除去容器10内に導入される〔図13(a)参照〕。
【0097】
このようにして,除去容器10を所定の深さまで中空杭の中空空間内に挿入し,回収空間12内にスライムやセメントミルク等の除去すべき不要物の導入が完了し,蓋板14に対する不要物の導入圧力が消失すると,ストッパSによって揺動角が90度未満(本実施形態にあっては85度)に規制された蓋板14が自重によって開口13を被蓋する。その後,この除去容器10は,前述の連結部19に連結されたスクリューロッドを介して中空杭の中空空間より抜き取られる。
【0098】
この除去容器10を抜き取ることにより,回収空間12内に導入された不要物は,除去容器10の底板に形成された開口13を介して回収空間外に流出しようとするが,前述のように開口13は蓋板14によって閉ざされており,又は,このような蓋板14により開口13が完全に閉塞されていない場合であっても,不要物の重量によって蓋板14が揺動してこの開口13を完全に閉じる。従って,除去容器10の回収空間12内に導入された不要物は,中空杭の中空空間内に逆流して戻ることができず,除去容器10と共に中空空間から抜き取られ,除去される〔図13(b)〕。
【0099】
例えば,除去容器10の回収空間12の容量に対して,除去すべき不要物の量が多い場合等,杭頭部における不要物の除去が,除去容器の一回の挿入によって完全に除去しきれない場合には,この作業を繰り返し,必要量の不要物を杭頭部より除去する。
【0100】
このようにして,不要物が除去された中空杭の杭頭部の中空空間内には,セメントミルク等が硬化した後に,既知の方法により,例えば鉄筋籠等の下端部を挿入してこの杭頭部の中空空間内に接合用鉄筋を取り付ける〔図13(c)〕。
【0101】
一方,中空杭の前記中空部より抜き取られ,回収空間13内にスライムやセメントミルク等の不要物を回収した除去容器10は,除去容器10内より排出されて廃棄等される。
【0102】
この不要物の排出は,例えば除去容器10を横転させる等,除去容器10の上部開口を介して排出させても良いが,本実施形態にあっては,前記排出補助手段50によって除去容器の底部に設けた開口を被蓋する蓋板14を押し上げ前記開口を開放することにより不要物を排出している。
【0103】
すなわち,前記排出補助手段50上の所定の位置に,不要物を回収した除去容器10を載置すると,排出補助手段50の基台55より突出した係合突起56が,除去容器の底面に形成された開口13を介してこの開口13を被蓋している蓋板14に係合して蓋板14を上方に押し上げる。その結果,未だ液又はゲル状である回収された不要物は,この開口13を介して除去容器10外に排出される〔図13(d)〕。
【0104】
このようにして,不要物を排出した除去容器10は,再度,中空杭の杭頭部に搬送されて中空空間内に挿入され,繰り返し同様の作業に使用される。
【0105】
以上のようにして除去容器10より排出されたスライムやセメントミルク等の不要物は,未だ硬化前の液状又はゲル状の状態にあることから,これを水等で希釈することにより,そのまま,又は必要に応じて所定の処理を行った後,排水として廃棄することも可能である。
【0106】
従って,これらが硬化した後に除去する従来技術に比較して,不要物の破砕や廃棄のための搬送等に要していた多大な労力と費用,時間を大幅に低減することが可能である。
【0107】
図10(A),(B)は,杭頭から地表面までの掘削孔の高さが,例えば2m以上などと高い場合,あるいは,掘削孔の地盤が軟弱である場合,杭頭部の掘削孔地盤から湧水する場合などの施工に好適な筒矢板60に関する。
【0108】
図11〜図12において,この筒矢板60は,ここでは,掘削孔の内周より小径の外形を有する円筒状を成す,断面L字状の上下の枠体61,62間に鉄筋などの保持杆63を挿入し,上下の突出端の螺子部を枠体61,62にナットなどで固定し,上下枠体61,62を連結し,該上下枠体にそれぞれ対向方向に設けたガイド片64,64内に,金属製筒体あるいはボイド管などの筒体70を嵌め込み固定したものである。65は挿入部で,中空杭の杭頭内周に嵌合する外径を有する下部枠体62底縁に突設した中空杭杭頭部への挿入のガイド又は保持のための環状の板片状部材である。図10の実施例では,ボイド管70を上下に重ねて筒矢板60の全長を高くしており,このためジョイント71を介して上下に保持杆63を連結し,この保持杆の適宜位置に環状の支持片72を設け,突設部73上下において,上下のボイド管70を支持している。従って,筒矢板60の全高ないし全長は,杭頭部に対応して任意に設定できる。
【0109】
保持杆63は,筒体70内周に円周を等分割した位置に設けられており,外部からの土圧に抗して,筒矢板60に剛性を付与している。
【0110】
前記杭基礎の造成時に前記杭頭部に生じた不要物が存在する杭頭部ないし杭頭部の掘削孔の空間(回収空間)内面で,中空杭の杭頭に下部を載置するように,筒矢板60を挿入,嵌合して,除去容器10を前記筒矢板の円筒筒体70の内部に必要に応じ,反復して挿入して,上述のように,杭頭部から不要物を順次除去し,筒矢板60を,1週間程度杭頭部を養生した後,掘削孔の空間から搬出する。
【0111】
実際の施工では,その後,前記筒矢板60の上部及び又は下部に,着脱自在の例えば金属製の平板状の上下部の蓋体67,68を設けて,再度前記回収空間に挿入し,根切り作業を行った後,養生後,前記筒矢板60を前記上下部の蓋体67,68と共に搬出して除去する。これにより,根切り作業によって杭頭部の損壊等が生ずることを防ぐことが出来る。
【0112】
なお,杭頭から地表面までの掘削孔の高さが比較的低いとき,あるいは,掘削孔の地盤が軟弱でない場合又は,杭頭部の掘削孔地盤から湧水するおそれのない場合などの施工には,前記筒矢板60の使用には及ばないが,除去容器10により,杭頭部から不要物を順次除去した後,前記杭頭に図示せざる蓋体を載置して,杭頭から地表面までを埋め戻した後,根切りした後,前記蓋体を除去すれば十分である。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】除去容器の一実施形態を示す平面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】除去容器の別の実施形態を示す斜視図。
【図5】図4の除去容器の縦断面図。
【図6】排出補助手段の一実施形態を示す正面図。
【図7】排出補助手段の一実施形態を示す平面図。
【図8】排出補助手段上に除去容器を載置した状態の正面図。
【図9】排出補助手段上に除去容器を載置した状態の平面図。
【図10】(A)は,筒矢板60の全体図,(B)は,部分断面図。
【図11】(A),(B)は,それぞれ筒矢板60の上下枠体を示すもので,同図(A)は上部枠体61の平面図,同図(B)は,下部枠体の底面図。
【図12】上下蓋体67,68及び上部蓋体67の取り付け構造を示す図で,同図(A)は,上部蓋体67の底面図,同図(B)は,上部蓋体67の筒矢板60への取り付け状態を示す部分図,同図(C)は,下部蓋体の平面図である。
【図13】不要物の除去方法の説明図であり,(a)は除去容器の中空杭内に対する挿入工程,(b)は除去容器の中空杭内からの抜き取り工程,(c)は中空杭に対する接続用鉄筋の取り付け工程,(d)は除去容器からの不要物の排出工程を示す。
【符号の説明】
【0114】
1 不要物除去装置
10 除去容器
11 除去容器本体
11a 円筒体
11b 矩形板
11c リング状部材
12 回収空間
13 開口
14 蓋板
15 ヒンジ
16 窓
17 天板
18 係止杆
19 連結部(継手)
21 支持材
21a 第1の支持材
21b 第2の支持材
21c 第3の支持材
30 吊下手段
31 キャップ部
32 T字杆(把持部及び/又は連結部)
33 係止溝
33a 縦溝
33b 横溝
34 段部
50 排出補助手段
51 脚部
52,53,54 横架材
55 基台
56 係合突起
57a〜57d 規制片
58 吊下リング
60 筒矢板
61 上部枠体
62 下部枠体
63 保持杆
64,64 ガイド片
65 挿入部
67 上部蓋体
68 下部蓋体
70 筒体
71 ジョイント
72 支持片
73 突設部
S ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭基礎の造成時に杭頭部に生じた不要物が存在する空間を被覆可能に形成され,内部に液状又はゲル状の前記不要物を導入する回収空間を備えると共に,底部側において前記回収空間を開放する開口を備えた除去容器本体と,前記除去容器本体の前記開口を被蓋する開閉自在の蓋板を備えることを特徴とする杭頭部の不要物除去容器。
【請求項2】
前記除去容器本体の上端に,把持部及び/又は連結部を設けたことを特徴とする請求項1記載の杭頭部の不要物除去容器。
【請求項3】
把持部及び/又は連結部を有し,前記除去容器本体に対して着脱可能である吊下手段を備えることを特徴とする請求項1記載の杭頭部の不要物除去容器。
【請求項4】
杭基礎の造成時に杭頭部に生じた不要物が存在する空間を被覆可能に形成され,内部に液状又はゲル状の前記不要物を導入する回収空間を備えると共に,底部側において前記回収空間を開放する開口を備えた除去容器本体と,前記除去容器本体の前記開口を被蓋する開閉自在の蓋板とから成る不要物除去容器と,
前記除去容器の前記回収空間内に導入された不要物を前記除去容器より排出する排出補助手段から成り,
前記排出補助手段は,
前記除去容器を載置可能な基台と,前記基台上に前記除去容器を載置したとき前記除去容器の前記蓋板に係合して前記開口を開放する係合突起を備えることを特徴とする杭頭部の不要物除去装置。
【請求項5】
前記排出補助手段の前記基台上に,前記除去容器の載置位置を規制する位置決め突起を突設したことを特徴とする請求項4記載の杭頭部の不要物除去装置。
【請求項6】
前記杭基礎の造成時に杭頭部に載置され,前記杭頭部に生じた不要物が存在する空間内面に近接して外面を嵌合可能な外形を有し,内面に前記除去容器本体が挿脱自在に嵌装可能な筒矢板を含むことを特徴とする請求項4記載の杭頭部の不要物除去装置。
【請求項7】
前記筒矢板の上部及び又は下部に着脱自在の蓋体を設けたことを特徴とする請求項6記載の杭頭部の不要物除去装置。
【請求項8】
杭基礎の造成時に杭頭部に生じた液状又はゲル状の不要物が存在する杭頭部の空間として画定される掘削孔内あるいは中空杭の前記杭頭部の空間を回収空間により被覆し,前記回収空間底部の蓋板を前記不要物により開放し,前記回収空間内に前記不要物を導入し,前記不要物を前記杭頭部の空間から抜き取り,前記開口を被蓋し,前記回収空間内の不要物を前記杭頭部の空間より除去することを特徴とする杭頭部の不要物除去方法。
【請求項9】
請求項1記載の除去容器を載置する基台と,前記基台上に突設された係合突起を有する排出補助手段を準備し,
前記不要物が存在する空間より抜き取った前記除去容器を,前記基台の前記係合突起の形成位置上に載置することにより,前記係合突起により前記除去容器の蓋板に係合し前記開口を開放し,回収された不要物を排出することを特徴とする杭頭部の不要物除去方法。
【請求項10】
前記杭頭部の空間に前記除去容器本体を嵌装し,前記開口を開放し,回収された不要物を排出する工程により,前記不要物を除去した後,前記杭頭に,該杭頭を被蓋する杭頭蓋体を載置する工程を含む請求項8又は9記載の杭頭部の不要物除去方法。
【請求項11】
前記杭頭部の空間に前記筒矢板を載置し,該筒矢板内に前記除去容器本体を嵌装し,前記開口を開放し,回収された不要物を排出する工程により,前記不要物を除去した後,前記筒矢板の上下開口を被蓋し,再度前記杭頭部の回収空間に前記筒矢板を載置し,その後,前記筒矢板を前記上下の蓋体と共に杭頭部から搬出する請求項8又は9記載の杭頭部の不要物除去方法。
【請求項12】
前記不要物が,既成杭の杭頭部における中空空間内のセメントミルク及び/又は不純物である請求項8又は9記載の杭頭部の不要物除去方法。
【請求項13】
前記不要物が,場所打ち杭の杭頭部上に与盛りされたコンクリート及び/又は不純物である請求項8又は9記載の杭頭部の不純物除去方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−191871(P2007−191871A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−8799(P2006−8799)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(506019290)株式会社播磨商事 (7)
【出願人】(506019304)
【Fターム(参考)】