杭類の打込み兼引抜き具
【課題】 本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、如何なる長さの杭や支柱であっても作業のしやすい高さの任意の一点を両側面から直接挟むことにより、杭類の長手方向に打ち込みあるいは引き抜くときに作用点に過剰な力が集中することがなく支柱を損傷させない杭類の打込み兼引抜き具を提供しようとするものである。
【解決手段】 本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、杭等の両側面の夫々の1以上の位置に当接する当接面を有し、該当接面が弧状あるいは平面状に形成された一対の当接部材1と、前記杭等の両側に当接部材を当接したとき、両翼方向に延設され、それぞれの基端が夫々の当接部材に取り付けられ、他端が把持部として形成された一対の把持竿2と、前記当接部材の一側の側部に基端が固着あるいは回動自在に取り付けられ、先端が互いに回動自在あるいは回動自在かつ着脱自在に取り付けられた一対の連結部材3と、を有することを特徴とする。
【解決手段】 本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、杭等の両側面の夫々の1以上の位置に当接する当接面を有し、該当接面が弧状あるいは平面状に形成された一対の当接部材1と、前記杭等の両側に当接部材を当接したとき、両翼方向に延設され、それぞれの基端が夫々の当接部材に取り付けられ、他端が把持部として形成された一対の把持竿2と、前記当接部材の一側の側部に基端が固着あるいは回動自在に取り付けられ、先端が互いに回動自在あるいは回動自在かつ着脱自在に取り付けられた一対の連結部材3と、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭や支柱などの杭類を打込むことができ、かつ、引抜くこともできる杭類の打込み兼引抜き具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭打ち具として特開平11−293673号文献(特許文献1)、実開平06−035329号文献(特許文献2)、実登3060122号文献(特許文献3)などがあった。これらの文献のものは、筒状あるいは有底の筒状に形成された重りを杭の頭部から挿入し、杭の長さ方向に上下動させることにより地中に杭を打ち込むものであるが、杭や支柱を引き抜くことはできなかった。
【0003】
また、特開2004−092258号文献(特許文献4)、特開2002−348871号文献(特許文献5)、特開2001−032278号文献(特許文献6)など梃子の原理を使って杭を引き抜くものが多数出願されていたが、杭を打ち込む機能はなかった。
【特許文献1】特開平11−293673号文献
【特許文献2】実開平06−035329号文献
【特許文献3】実登3060122号文献
【特許文献4】特開2004−092258号文献
【特許文献5】特開2002−348871号文献
【特許文献6】特開2001−032278号文献
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3の筒状あるいは有底の筒状の重りによる一群の文献のものは、長さが150cm程度以下の杭や支柱を農耕地など比較的軟らかい地面に打ち込むときは、持ち運びも操作も簡単で使い勝手がよいものである。しかしながら、農耕地にくね(生け垣)、柵などを作るために200cmを越えるような長い支柱を使いたいときは、この長い支柱を農耕地に立てた状態で支柱の頭部から筒状あるいは有底の筒状の重りを挿入するためには、踏み台など他の物品を使わないと一人では作業ができなかった。そして、踏み台などの上での作業は、足元が不安定で作業が難しかった。
【0005】
また、近年、農耕地で支柱、くね、柵などに使われる支柱は、肉厚1mm程度以下の金属パイプを合成樹脂被膜で覆ったものが多用されており、これらの支柱は、手で簡単に折れる程度の強度しかないものが多い。特許文献4〜6の梃子の原理を使った杭抜き具で、農耕地に打ち込んだ支柱を引き抜こうとすると、支柱抜き作業時に支柱が円弧状方向に引き抜かれるため引き抜き抵抗力が強く作用すると共に、同杭抜き具の複数の作用点が支柱の外周の上下異なる位置に当接し、さらに、杭抜き具側の作用点に力が一点に集中するためこの作用点から支柱が折れやすかった。
【0006】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、如何なる長さの支柱であっても作業のしやすい高さの支柱の任意の一点を両側面から直接挟むことにより、支柱の長手方向に打ち込みあるいは引き抜くときに作用点に過剰な力が集中することがなく支柱を損傷させない杭類の打込み兼引抜き具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、杭類の対向する両側面の夫々に当接する当接面を備えた一対の当接部材と、該当接部材に延設され前記杭類の長さ方向と交差する方向に延びる一対の把持竿と、該把持竿を当接部材側で結合し、該結合部を中心に把持竿を回動することによって前記一対の当接部材間の距離が変更可能となるように前記一対の当接部材を連結する連結部材と、を有することを特徴としている。
【0008】
この杭類の打込み兼引抜き具は、前記連結部材が、当接部材の両側部に取り付けられた二対の連結部材であり、該二対の連結部材のうちの一対の連結部材の基部が前記当接部材に回動自在に取り付けられ、該回動自在な一対の連結部材の一方の先端に係止部を有し、該係止部に着脱自在に係止される係止受部が他方の連結部材の先端に取り付けられ、前記係止受部と係止部が、回動自在に係止する構成としたり、前記一対の当接部材が杭等の外周に当接する当接面に弾性体が取り付けられあるいは付着されている構成としたりすることができる。
【0009】
また、上記杭類の打込み兼引抜き具は、前記一対の把持竿のそれぞれの基端部に先端が分岐された分岐部材を有し、該分岐部材の内側に当接部材を取り付けた一対の当接部材保持部材と、該当接部材保持部材の分岐部材の先端に先端方向に延設した二対の連結部材と、該二対の連結部材のうちのそれぞれの一対の連結部材の一方の連結部材に取り付けた係止受部と、該係止受部に着脱自在に係止され、他方の連結部材に取り付けられた係止部と、を有し、該係止受部に係止部材を係止して連結すると回動自在となるように構成したり、前記当接部材保持部材の分岐部材が、平行に形成され、該当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に、コ状に曲折し、央部を当接部とした板材からなる当接部材の平行な両端部を回動自在に取り付けた構成にしたりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、杭の両側面の夫々の1以上の位置に当接する当接面を有し、該当接面が弧状あるいは平面状に形成された一対の当接部材と、前記杭の両側に当接部材を当接したとき、両翼方向に延設され、それぞれの基端が夫々の当接部材に取り付けられ、他端が把持部として形成された一対の把持竿と、前記当接部材の一側の側部に基端が固着あるいは回動自在に取り付けられ、先端が互いに回動自在あるいは回動自在かつ着脱自在に取り付けられた一対の連結部材と、を有している。従って、一対の当接部材の片側は、開放されているから、例え2m、3mという長い杭や支柱(以下杭と言う)であってもその杭の任意の位置の両側から一対の当接部材により直接杭を挟むことができるので、杭抜き、杭打ち作業が楽な上に作業効率が高い。また、当接部材が杭に当接する位置が、杭の一点の両側であり、杭抜き、杭打ち作業が杭の長手方向の作業であるから、杭にかかる梃子の作用が極めて少ないので、杭への無用な負荷がかからず、杭が損傷され辛い。さらに、一対の当接部材の当接面が弧状に形成されている場合は、当接部材が杭に当接するときの負荷が柔らかであるから、杭を傷つけない。あるいは、当接部材の当接面が平面状に形成されている場合は、それぞれの当接部材と杭の当接する部分が、点ではなく線であるから杭への負荷が分散されるので、さらに杭の損傷が少なくなるなどの効果がある。
【0011】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、前記連結部材が、当接部材の両側部に取り付けられた二対の連結部材であり、該二対の連結部材のうちの他側の一対の連結部材の基部が当接部材の他側に回動自在に取り付けられ、該回動自在な連結部材の一方の先端に係止受部を有し、該係止受部に着脱自在に係止される係止部が他方の連結部材の先端に取り付けられ、該係止受部に係止した係止部材が、回動自在である。したがって、係止した係止受部と係止部材を解除してこの両連結部材を回動すると、回動した連結部材側が開放され前記実施例と同様な作用効果が得られる。
【0012】
また、杭類の打込み兼引抜き具は、前記一対の当接部材が杭あるいは支柱の外周に当接する当接面に弾性体が取り付けられあるいは付着されているから、当接部材が当接した杭の外周が弾性体によって保護されることとなるので、杭への負荷が軽減され損傷を軽減できる。
【0013】
次の杭類の打込み兼引抜き具は、 前記一対の把持竿のそれぞれの基端部に先端が分岐された分岐部材を有し、該分岐部材の内側に当接部材を取り付けた一対の当接部材保持部材と、該当接部材保持部材の分岐部材の先端に先端方向に延設した二対の連結部材と、該二対の連結部材のうちのそれぞれの一対の連結部材の一方の連結部材に取り付けた係止受部と、該係止受部に着脱自在に係止され、他方の連結部材に取り付けられた係止部と、を有し、該係止受部に係止部材を係止して連結すると回動自在となっている。したがって、それぞれの連結部材の係止した係止受部と係止部材を解除すると、杭類の打込み兼引抜き具が中央部で2体に分割されるから、分割されそれぞれの当接部材を杭の両側から杭の外周に当接した後、連結部材の係止受部と係止部材を係止して、前述の作用を行えるので、上例と同様の効果が得られる。
【0014】
最後の杭類の打込み兼引抜き具は、前記当接部材保持部材の分岐部材が、平行に形成され、該当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に、コ状に曲折し、央部を当接部とした板材からなる当接部材の平行な両端部を回動自在に取り付けられている。したがって、前記作用効果に加え、当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に当接部材の平行な両端部が回動自在に取り付けられているので、板材からなる当接部材の当接部を杭の外周の両側に当接させると、当接部と杭の外周は点接触ではなく、必ず線接触するから、杭への負荷が分散され、杭の損傷が大幅に軽減された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1の平面図と図2の縦断面図に示すように、本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、一対の円柱状の当接部材1を備えており、この当接部材1は杭あるいは支柱(以下杭と略称する)Aを両側から挟んで当接するためのものである。当接部材1により杭Aを両側から挟んだ状態で、一対の当接部材1の両軸心を結ぶ線の延伸方向の両翼に向って延設され、端部が把持部2aとして形成されている把持竿2を取り付ける。上記一対の当接部材1のそれぞれの一側の側部に連結部材3を取り付ける。この連結部材3は、杭Aの両側を当接部材1で挟んだときの杭Aの上方に向って折れ曲げられて固定した状態で図示しているが、連結部材3の基部を当接部材1に回動自在に取付けたものであっても良い。一対の連結部材3の両先端は、軸4により回動自在に取り付けてある。
【0016】
上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、先ず始めに、把持竿2の両端の把持部2aを両手で握り、一対の当接部材1の開放されている側(連結部材3を取り付けてない側)から杭Aの任意の位置を挟むように挿入して杭Aの両側に当接部材1を当接させる。続いて、把持竿2の両端の把持部2aを押し下げると、杭Aは先端から地中に押し込められる。この作業は、人力によることを想定しているから、当然、耕された農耕地のような軟らかい土地にのみ使用できる杭類の打込み兼引抜き具であり、限定するものではないが、杭Aとして想定しているものは、直径30mm程度以下で肉厚1mm程度の金属パイプ(強度が低く潰れやすい)に合成樹脂被膜を被着した杭Aである。
【0017】
以上、農耕地に杭Aを押し込むときの方法であるが、農耕地に立設された杭Aを引き抜くときは、上記杭類の打込み兼引抜き具を上下反対にして当接部材1により杭Aの両側を挟み、把持竿2の両端の把持部2aを上方に引き上げれば良い。杭Aを農耕地に押し込むときも引き抜くときも、把持竿2の両端の把持部2aを緩めて当接部材1により挟んだ杭Aの位置を簡単に変更できるから、どんなに長い杭であっても、作業者が常に作業のしやすい位置で杭類の打込み兼引抜き具を操作できる。
【0018】
図3の平面図と図4の縦断面図は、本発明の第2の実施例を示す図である。この第2実施例は、第1実施例と共通する部分が多いので、第1実施例との相違点を中心に説明する(以下説明する実施例においても全て同様である)。本実施例では、一対の把持竿2のそれぞれの基端部にコ状に曲折された板材からなる当接部材保持体6の底部6aを取り付けている。そして、当接部材5は、コ状に曲折された板材の対向する平行部6b間に架設された細い軸5aと、その外周に取り付けたゴムや合成樹脂からなる弾性体5bとから構成される。
【0019】
図では、当接部材5を細い軸5aの外周に厚い弾性体5bを取り付けている。しかし、太い軸の外周に肉厚の薄い弾性体を被着したり、当接部材5が杭Aの外周に当接する部分にのみ弾性体を取り付けることもできる。
【0020】
この両当接部材保持体6の平行部6bの一側に前記実施例と同様に連結部材3を取り付ける。図では、当接部材保持体6と連結部材3を別体で形成した後、当接部材保持体6の一側の平行部6bに連結部材3を取り付けているが、一方の平行部6bを長くしてかつ曲折させて連結部材3とすることもできる。前記実施例と同様に連結部材3の先端は、軸4により回動自在に結合されている。上記それぞれの当接部材保持体6の平行部6bの内側に当接部材5を取り付ける。取付け方は、軸5aの一端を当接部材保持体6の平行部6bと連結部材3に連通してカシメたり軸5aの端部にネジ溝を設けてナットで螺着するなどの手段で取り付ける。符号7は、スペーサーである。上記構成の杭類の打込み兼引抜き具の作用効果は、前記実施例と同様なので省記した。
【0021】
図5は本発明の第3実施例を示す図で、図6は本発明の第4実施例を示す図である。図5に示す第3実施例では、杭Aの外周に当接する当接部材を半円柱形の当接部材8としている。また、図6に示す第4実施例では、開口部が広い断面台形状の切欠溝9aを円周上に有する鼓形の当接部材9としている。図示しないが、この円周上の切欠溝の断面をV字状やU字状などの切欠溝とするもできる。このように外周に切欠溝9aを形成した当接部材9とすることにより杭Aの外周の両側のそれぞれの複数点と当接部材9を当接させることができる。この結果、前記各実施例では、当接部材1,5,8と杭Aの両側の一点が接触し、その一点に圧力が集中していたが、当接部材9の外周に切欠溝9aを形成することにより当接部材9が杭Aの両側の複数点と接触することになり杭Aへの圧力が分散され、杭の損傷が軽減した。その余の作用効果は前記実施例と同様である。
【0022】
図1、図2の実施例では、当接部材1の片側にのみ先端が回動自在に連結された連結部材3を取り付けたが、図7、図8に示す第5実施例では、当接部材1に構成の異なる連結部材12をねじ11等により取り付けたものである。以下詳述する。前記一対の当接部材1のそれぞれの一側の側部には、図1、図2で説明したと同様の先端を回動自在に連結した連結部材3を取り付けている。この一対の当接部材1のそれぞれの他側の側部には、基部をそれぞれの当接部材1の他側の側部に取り付け、先端を着脱自在かつ回動自在に連結できる連結部材12を取り付ける。この一方の連結部材12の先端には、係止受部として先端が拡大した脱落防止部13aを備えた係止受部13が取り付けてある。この係止受部13は円柱の両側を平行に削り取った形状となっている。他方の連結部材12の先端には、この係止受部13に係止される係止部14としての切欠溝14aと孔14bが連結部材12の先端に設けてある。この切欠溝14aは、連結部材12の基部を中心とした円弧状に形成され、切欠溝14aより広い孔14bが連設されており、係止受部としての係止受部13が切欠溝14aを通って孔14bに挿入され後、係止受部13を回動すると抜けなくなる。なお、係止受部13と係止部14は、図示したものに拘るものではなく、両連結部材12を回動自在かつ着脱自在に連結でき、作業中に外れない構造であれば、如何なる構成であっても良い。
【0023】
上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、当接部材1の他側の連結部材12の先端の係止受部13と係止部14を解除した状態で把持竿2の把持部2aを握り、両当接部材1により杭Aの任意の外周を挟み、しかる後、この他側の連結部材12を回動しながら係止受部13と係止部14を係止させた上で、図1、図2の場合と同様に把持竿2の把持部2aを押し下げれば、杭Aは先端から地中に挿入される。杭Aを引き抜くときは、杭類の打込み兼引抜き具を上下逆転させた状態で、前述の操作を行った後、把持竿2の把持部2aを引き上げればよい。上記作業が終わったら、前述の説明と逆の順序で杭類の打込み兼引抜き具を操作すれば、杭Aから杭類の打込み兼引抜き具を取り外せる。
【0024】
図9、図10の実施例は、本発明の第6実施例の図で、杭類の打込み兼引抜き具を中央で分割し、杭抜き、杭打ち作業時に左右の連結部材を回動自在に連結して使う例である。一対の把持竿2の基部に平行部6b,6bを有し先端が連結部材15,16であるコ状の当接部材保持体6の底部6aを取り付ける。両当接部材保持体6の平行部6bの内側に円柱状の当接部材5を取り付ける(図では、当接部材5を細い軸5aの外周に弾性体5bを取付けた例を図示した。また、当接部材保持体6の平行部6bと連結部材16をくの字状に図示しているが、真直ぐな棒状であっても良い)。この一方の当接部材保持体6の連結部材15の先端に係止受部として先端が拡大した脱落防止部13aを備え、長径と短径を有する係止受部13が取り付けられている。他方の当接部材保持体6の連結部材16の先端には、係止受部13の短径が通過できるが、長径は通過できない切欠溝17aを有し、この切欠溝17aより広く係止受部13が回動できる孔17bを備えた係止部17を設ける。図では、切欠溝17aを連結部材16の先端で連結部材16の延伸方向に開口しているが、この開口方向は、任意である。また、図では、片方の当接部材保持体6の2つの平行部6bの先端に係止受部13と係止部17を取り付けているが、片方の平行部6bの2つの連結部材15,16の2つの先端に係止受部13を、他方の平行部6bの2つの連結部材15,16の2つの先端に係止部17を取り付けることもできる。なお、前記実施例で説明したように、係止受部13と係止部17は、図示したものに拘るものではなく、両連結部材15,16を回動自在かつ着脱自在に連結でき、作業中に外れない構造であれば、如何なる構成であっても良い。
【0025】
図11、図12の第7実施例は、前記杭類の打込み兼引抜き具をさらに改良したものである。前記一対の当接部材保持部材6の平行部6bのそれぞれの内側に、1枚の板材をコ状に曲折し、央部を当接部18aとした当接部材18の平行な両端部18bをそれぞれ軸19により回動自在に取り付ける。この当接部材18の平行な両端部18bの何れか一方あるいは両方の先端と、前記当接部材保持部材6の底部6aとの間は、当接部材18が所定角度を超えて回動すると、当接部材18の平行な両端部18bの何れかの位置が当接部材保持部材6の底部6aの内側に当接してそれ以上回動できない間隔で隔てられている(この回動範囲の規制手段は、当接部材保持部材6の上下に当接部材18側に折返した突起を設けたり、軸19と同心円状の切欠溝を当接部材18の平行な両端部18bに設け、この切欠溝に挿入される突起を当接部材保持部材6の内側に突設するなど他の様々な手段が取れる)。当接部材18の当接部18a中央には、断面V字型(あるいは断面台形方など)の溝20を設ける。当接部材保持部材6の平行部6bのそれぞれの先端に斜め上方に向って連結部材21を突設する。それぞれの連結部材21の先端には、前記実施例と同様の係止受部材として先端に拡大した脱落防止部22aを備え、長径と短径を有する突起22と、この突起22の短径が通過できる溝23aと突起22の長径が回動できる孔23bが連設された係止部23を設ける。
【0026】
上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、連結部材21の係止受部材としての突起22と、この突起22を係止する係止部23を解除した状態で当接部材18を杭Aの両側面に当接しながら係止受部材として突起22と係止部23を連結し、把持竿2の端部の把持部2aを押し下げると農耕地に立てた杭Aが先端から地中に押し込められる。杭Aが地中に押し込められたら押し下げていた把持部2aを緩め、突起22と係止部23を解除すると、杭類の打込み兼引抜き具が左右に分解される。この杭類の打込み兼引抜き具を上下逆にして当接部材18を杭Aの両側面に当接しながら係止受部材として突起22と係止部23を連結し、把持竿2の端部の把持部2aを引き上げれば、農耕地に立設されている杭Aを引き抜くことができる。
【0027】
前述の杭類の打込み兼引抜き具は、当接部材1,5,8が全て円柱あるいは半円柱であったため当接部材1,5,8と杭Aの外周が点接触していた。したがって、杭Aの外周が当接部材1,5,8から受ける負荷が一点に集中しており、このため杭Aがこの接触点で損傷しやすかった。しかしながら、上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、板材をコ状に曲折した当接部材18と杭Aの外周が点接触ではなく線接触するので、杭Aの受ける負荷が分散されるから杭Aの損傷を減らすことができる。また、当接部材Aの底部中央にV型溝20を設けた場合、接触線が2本すなわち複数の点接触となるから杭Aの受ける負荷がさらに分散されますます杭Aの外周の受ける負荷が軽減することになり損傷を激減することができる。このV型溝20が台形状の溝である場合は、杭Aの両側の面と当接部材18のV型溝20の底面・V型溝20の両斜面の3箇所で線接触することになるので、杭Aの受ける負荷がさらに分散されますます杭Aの損傷が減ることになる。
【0028】
尚、本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、上記実施例で説明したそれぞれの構成を必要に応じて組合わせて実施できると共に、本発明の要旨の範囲内において種々変更を加えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、耕された農耕地を始め、比較的軟らかい土地に、人力で杭や支柱を打ち込んだり、その杭や支柱によりくねや棚を作ったり、それらの杭や支柱を引き抜くときに使う軽量簡易な手道具である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第1実施例を示す要部平面図である。
【図2】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第1実施例を示す要部縦断面図である。
【図3】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第2実施例を示す要部平面図である。
【図4】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第2実施例を示す要部縦断面図である。
【図5】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第3実施例を示す要部縦断面図である。
【図6】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第4実施例を示す要部平面図である。
【図7】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第5実施例を示す要部平面図である。
【図8】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第5実施例を示す要部縦断面図である。
【図9】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第6実施例を示す要部平面図である。
【図10】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第6実施例を示す要部縦断面図である。
【図11】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第7実施例を示す要部平面図である。
【図12】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第7実施例を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
A 杭
1 当接部材
2 把持竿
2a 把持部
3 連結部材
4 軸
5 当接部材
5a 細い軸
5b 弾性体
6 当接部材保持体
6a 底部
6b 平行部
8 半円柱形の当接部材
9 当接部材
9a 断面台形状の切欠溝
11 ねじ
12 連結部材
13 突起
13a 脱落防止部
14 係止部
14a 切欠溝
14b 孔
15 連結部材
16 連結部材
17 係止部
17a 切欠溝
17b 孔
18 当接部材
18a 当接部
18b 平行な両端部
19 軸
20 断面V字型の溝
21 連結部材
22 長径と短径を有する突起
22a 脱落防止部
23 係止部
23a 溝
23b 孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭や支柱などの杭類を打込むことができ、かつ、引抜くこともできる杭類の打込み兼引抜き具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、杭打ち具として特開平11−293673号文献(特許文献1)、実開平06−035329号文献(特許文献2)、実登3060122号文献(特許文献3)などがあった。これらの文献のものは、筒状あるいは有底の筒状に形成された重りを杭の頭部から挿入し、杭の長さ方向に上下動させることにより地中に杭を打ち込むものであるが、杭や支柱を引き抜くことはできなかった。
【0003】
また、特開2004−092258号文献(特許文献4)、特開2002−348871号文献(特許文献5)、特開2001−032278号文献(特許文献6)など梃子の原理を使って杭を引き抜くものが多数出願されていたが、杭を打ち込む機能はなかった。
【特許文献1】特開平11−293673号文献
【特許文献2】実開平06−035329号文献
【特許文献3】実登3060122号文献
【特許文献4】特開2004−092258号文献
【特許文献5】特開2002−348871号文献
【特許文献6】特開2001−032278号文献
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3の筒状あるいは有底の筒状の重りによる一群の文献のものは、長さが150cm程度以下の杭や支柱を農耕地など比較的軟らかい地面に打ち込むときは、持ち運びも操作も簡単で使い勝手がよいものである。しかしながら、農耕地にくね(生け垣)、柵などを作るために200cmを越えるような長い支柱を使いたいときは、この長い支柱を農耕地に立てた状態で支柱の頭部から筒状あるいは有底の筒状の重りを挿入するためには、踏み台など他の物品を使わないと一人では作業ができなかった。そして、踏み台などの上での作業は、足元が不安定で作業が難しかった。
【0005】
また、近年、農耕地で支柱、くね、柵などに使われる支柱は、肉厚1mm程度以下の金属パイプを合成樹脂被膜で覆ったものが多用されており、これらの支柱は、手で簡単に折れる程度の強度しかないものが多い。特許文献4〜6の梃子の原理を使った杭抜き具で、農耕地に打ち込んだ支柱を引き抜こうとすると、支柱抜き作業時に支柱が円弧状方向に引き抜かれるため引き抜き抵抗力が強く作用すると共に、同杭抜き具の複数の作用点が支柱の外周の上下異なる位置に当接し、さらに、杭抜き具側の作用点に力が一点に集中するためこの作用点から支柱が折れやすかった。
【0006】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、如何なる長さの支柱であっても作業のしやすい高さの支柱の任意の一点を両側面から直接挟むことにより、支柱の長手方向に打ち込みあるいは引き抜くときに作用点に過剰な力が集中することがなく支柱を損傷させない杭類の打込み兼引抜き具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、杭類の対向する両側面の夫々に当接する当接面を備えた一対の当接部材と、該当接部材に延設され前記杭類の長さ方向と交差する方向に延びる一対の把持竿と、該把持竿を当接部材側で結合し、該結合部を中心に把持竿を回動することによって前記一対の当接部材間の距離が変更可能となるように前記一対の当接部材を連結する連結部材と、を有することを特徴としている。
【0008】
この杭類の打込み兼引抜き具は、前記連結部材が、当接部材の両側部に取り付けられた二対の連結部材であり、該二対の連結部材のうちの一対の連結部材の基部が前記当接部材に回動自在に取り付けられ、該回動自在な一対の連結部材の一方の先端に係止部を有し、該係止部に着脱自在に係止される係止受部が他方の連結部材の先端に取り付けられ、前記係止受部と係止部が、回動自在に係止する構成としたり、前記一対の当接部材が杭等の外周に当接する当接面に弾性体が取り付けられあるいは付着されている構成としたりすることができる。
【0009】
また、上記杭類の打込み兼引抜き具は、前記一対の把持竿のそれぞれの基端部に先端が分岐された分岐部材を有し、該分岐部材の内側に当接部材を取り付けた一対の当接部材保持部材と、該当接部材保持部材の分岐部材の先端に先端方向に延設した二対の連結部材と、該二対の連結部材のうちのそれぞれの一対の連結部材の一方の連結部材に取り付けた係止受部と、該係止受部に着脱自在に係止され、他方の連結部材に取り付けられた係止部と、を有し、該係止受部に係止部材を係止して連結すると回動自在となるように構成したり、前記当接部材保持部材の分岐部材が、平行に形成され、該当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に、コ状に曲折し、央部を当接部とした板材からなる当接部材の平行な両端部を回動自在に取り付けた構成にしたりすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、杭の両側面の夫々の1以上の位置に当接する当接面を有し、該当接面が弧状あるいは平面状に形成された一対の当接部材と、前記杭の両側に当接部材を当接したとき、両翼方向に延設され、それぞれの基端が夫々の当接部材に取り付けられ、他端が把持部として形成された一対の把持竿と、前記当接部材の一側の側部に基端が固着あるいは回動自在に取り付けられ、先端が互いに回動自在あるいは回動自在かつ着脱自在に取り付けられた一対の連結部材と、を有している。従って、一対の当接部材の片側は、開放されているから、例え2m、3mという長い杭や支柱(以下杭と言う)であってもその杭の任意の位置の両側から一対の当接部材により直接杭を挟むことができるので、杭抜き、杭打ち作業が楽な上に作業効率が高い。また、当接部材が杭に当接する位置が、杭の一点の両側であり、杭抜き、杭打ち作業が杭の長手方向の作業であるから、杭にかかる梃子の作用が極めて少ないので、杭への無用な負荷がかからず、杭が損傷され辛い。さらに、一対の当接部材の当接面が弧状に形成されている場合は、当接部材が杭に当接するときの負荷が柔らかであるから、杭を傷つけない。あるいは、当接部材の当接面が平面状に形成されている場合は、それぞれの当接部材と杭の当接する部分が、点ではなく線であるから杭への負荷が分散されるので、さらに杭の損傷が少なくなるなどの効果がある。
【0011】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、前記連結部材が、当接部材の両側部に取り付けられた二対の連結部材であり、該二対の連結部材のうちの他側の一対の連結部材の基部が当接部材の他側に回動自在に取り付けられ、該回動自在な連結部材の一方の先端に係止受部を有し、該係止受部に着脱自在に係止される係止部が他方の連結部材の先端に取り付けられ、該係止受部に係止した係止部材が、回動自在である。したがって、係止した係止受部と係止部材を解除してこの両連結部材を回動すると、回動した連結部材側が開放され前記実施例と同様な作用効果が得られる。
【0012】
また、杭類の打込み兼引抜き具は、前記一対の当接部材が杭あるいは支柱の外周に当接する当接面に弾性体が取り付けられあるいは付着されているから、当接部材が当接した杭の外周が弾性体によって保護されることとなるので、杭への負荷が軽減され損傷を軽減できる。
【0013】
次の杭類の打込み兼引抜き具は、 前記一対の把持竿のそれぞれの基端部に先端が分岐された分岐部材を有し、該分岐部材の内側に当接部材を取り付けた一対の当接部材保持部材と、該当接部材保持部材の分岐部材の先端に先端方向に延設した二対の連結部材と、該二対の連結部材のうちのそれぞれの一対の連結部材の一方の連結部材に取り付けた係止受部と、該係止受部に着脱自在に係止され、他方の連結部材に取り付けられた係止部と、を有し、該係止受部に係止部材を係止して連結すると回動自在となっている。したがって、それぞれの連結部材の係止した係止受部と係止部材を解除すると、杭類の打込み兼引抜き具が中央部で2体に分割されるから、分割されそれぞれの当接部材を杭の両側から杭の外周に当接した後、連結部材の係止受部と係止部材を係止して、前述の作用を行えるので、上例と同様の効果が得られる。
【0014】
最後の杭類の打込み兼引抜き具は、前記当接部材保持部材の分岐部材が、平行に形成され、該当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に、コ状に曲折し、央部を当接部とした板材からなる当接部材の平行な両端部を回動自在に取り付けられている。したがって、前記作用効果に加え、当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に当接部材の平行な両端部が回動自在に取り付けられているので、板材からなる当接部材の当接部を杭の外周の両側に当接させると、当接部と杭の外周は点接触ではなく、必ず線接触するから、杭への負荷が分散され、杭の損傷が大幅に軽減された。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1の平面図と図2の縦断面図に示すように、本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、一対の円柱状の当接部材1を備えており、この当接部材1は杭あるいは支柱(以下杭と略称する)Aを両側から挟んで当接するためのものである。当接部材1により杭Aを両側から挟んだ状態で、一対の当接部材1の両軸心を結ぶ線の延伸方向の両翼に向って延設され、端部が把持部2aとして形成されている把持竿2を取り付ける。上記一対の当接部材1のそれぞれの一側の側部に連結部材3を取り付ける。この連結部材3は、杭Aの両側を当接部材1で挟んだときの杭Aの上方に向って折れ曲げられて固定した状態で図示しているが、連結部材3の基部を当接部材1に回動自在に取付けたものであっても良い。一対の連結部材3の両先端は、軸4により回動自在に取り付けてある。
【0016】
上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、先ず始めに、把持竿2の両端の把持部2aを両手で握り、一対の当接部材1の開放されている側(連結部材3を取り付けてない側)から杭Aの任意の位置を挟むように挿入して杭Aの両側に当接部材1を当接させる。続いて、把持竿2の両端の把持部2aを押し下げると、杭Aは先端から地中に押し込められる。この作業は、人力によることを想定しているから、当然、耕された農耕地のような軟らかい土地にのみ使用できる杭類の打込み兼引抜き具であり、限定するものではないが、杭Aとして想定しているものは、直径30mm程度以下で肉厚1mm程度の金属パイプ(強度が低く潰れやすい)に合成樹脂被膜を被着した杭Aである。
【0017】
以上、農耕地に杭Aを押し込むときの方法であるが、農耕地に立設された杭Aを引き抜くときは、上記杭類の打込み兼引抜き具を上下反対にして当接部材1により杭Aの両側を挟み、把持竿2の両端の把持部2aを上方に引き上げれば良い。杭Aを農耕地に押し込むときも引き抜くときも、把持竿2の両端の把持部2aを緩めて当接部材1により挟んだ杭Aの位置を簡単に変更できるから、どんなに長い杭であっても、作業者が常に作業のしやすい位置で杭類の打込み兼引抜き具を操作できる。
【0018】
図3の平面図と図4の縦断面図は、本発明の第2の実施例を示す図である。この第2実施例は、第1実施例と共通する部分が多いので、第1実施例との相違点を中心に説明する(以下説明する実施例においても全て同様である)。本実施例では、一対の把持竿2のそれぞれの基端部にコ状に曲折された板材からなる当接部材保持体6の底部6aを取り付けている。そして、当接部材5は、コ状に曲折された板材の対向する平行部6b間に架設された細い軸5aと、その外周に取り付けたゴムや合成樹脂からなる弾性体5bとから構成される。
【0019】
図では、当接部材5を細い軸5aの外周に厚い弾性体5bを取り付けている。しかし、太い軸の外周に肉厚の薄い弾性体を被着したり、当接部材5が杭Aの外周に当接する部分にのみ弾性体を取り付けることもできる。
【0020】
この両当接部材保持体6の平行部6bの一側に前記実施例と同様に連結部材3を取り付ける。図では、当接部材保持体6と連結部材3を別体で形成した後、当接部材保持体6の一側の平行部6bに連結部材3を取り付けているが、一方の平行部6bを長くしてかつ曲折させて連結部材3とすることもできる。前記実施例と同様に連結部材3の先端は、軸4により回動自在に結合されている。上記それぞれの当接部材保持体6の平行部6bの内側に当接部材5を取り付ける。取付け方は、軸5aの一端を当接部材保持体6の平行部6bと連結部材3に連通してカシメたり軸5aの端部にネジ溝を設けてナットで螺着するなどの手段で取り付ける。符号7は、スペーサーである。上記構成の杭類の打込み兼引抜き具の作用効果は、前記実施例と同様なので省記した。
【0021】
図5は本発明の第3実施例を示す図で、図6は本発明の第4実施例を示す図である。図5に示す第3実施例では、杭Aの外周に当接する当接部材を半円柱形の当接部材8としている。また、図6に示す第4実施例では、開口部が広い断面台形状の切欠溝9aを円周上に有する鼓形の当接部材9としている。図示しないが、この円周上の切欠溝の断面をV字状やU字状などの切欠溝とするもできる。このように外周に切欠溝9aを形成した当接部材9とすることにより杭Aの外周の両側のそれぞれの複数点と当接部材9を当接させることができる。この結果、前記各実施例では、当接部材1,5,8と杭Aの両側の一点が接触し、その一点に圧力が集中していたが、当接部材9の外周に切欠溝9aを形成することにより当接部材9が杭Aの両側の複数点と接触することになり杭Aへの圧力が分散され、杭の損傷が軽減した。その余の作用効果は前記実施例と同様である。
【0022】
図1、図2の実施例では、当接部材1の片側にのみ先端が回動自在に連結された連結部材3を取り付けたが、図7、図8に示す第5実施例では、当接部材1に構成の異なる連結部材12をねじ11等により取り付けたものである。以下詳述する。前記一対の当接部材1のそれぞれの一側の側部には、図1、図2で説明したと同様の先端を回動自在に連結した連結部材3を取り付けている。この一対の当接部材1のそれぞれの他側の側部には、基部をそれぞれの当接部材1の他側の側部に取り付け、先端を着脱自在かつ回動自在に連結できる連結部材12を取り付ける。この一方の連結部材12の先端には、係止受部として先端が拡大した脱落防止部13aを備えた係止受部13が取り付けてある。この係止受部13は円柱の両側を平行に削り取った形状となっている。他方の連結部材12の先端には、この係止受部13に係止される係止部14としての切欠溝14aと孔14bが連結部材12の先端に設けてある。この切欠溝14aは、連結部材12の基部を中心とした円弧状に形成され、切欠溝14aより広い孔14bが連設されており、係止受部としての係止受部13が切欠溝14aを通って孔14bに挿入され後、係止受部13を回動すると抜けなくなる。なお、係止受部13と係止部14は、図示したものに拘るものではなく、両連結部材12を回動自在かつ着脱自在に連結でき、作業中に外れない構造であれば、如何なる構成であっても良い。
【0023】
上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、当接部材1の他側の連結部材12の先端の係止受部13と係止部14を解除した状態で把持竿2の把持部2aを握り、両当接部材1により杭Aの任意の外周を挟み、しかる後、この他側の連結部材12を回動しながら係止受部13と係止部14を係止させた上で、図1、図2の場合と同様に把持竿2の把持部2aを押し下げれば、杭Aは先端から地中に挿入される。杭Aを引き抜くときは、杭類の打込み兼引抜き具を上下逆転させた状態で、前述の操作を行った後、把持竿2の把持部2aを引き上げればよい。上記作業が終わったら、前述の説明と逆の順序で杭類の打込み兼引抜き具を操作すれば、杭Aから杭類の打込み兼引抜き具を取り外せる。
【0024】
図9、図10の実施例は、本発明の第6実施例の図で、杭類の打込み兼引抜き具を中央で分割し、杭抜き、杭打ち作業時に左右の連結部材を回動自在に連結して使う例である。一対の把持竿2の基部に平行部6b,6bを有し先端が連結部材15,16であるコ状の当接部材保持体6の底部6aを取り付ける。両当接部材保持体6の平行部6bの内側に円柱状の当接部材5を取り付ける(図では、当接部材5を細い軸5aの外周に弾性体5bを取付けた例を図示した。また、当接部材保持体6の平行部6bと連結部材16をくの字状に図示しているが、真直ぐな棒状であっても良い)。この一方の当接部材保持体6の連結部材15の先端に係止受部として先端が拡大した脱落防止部13aを備え、長径と短径を有する係止受部13が取り付けられている。他方の当接部材保持体6の連結部材16の先端には、係止受部13の短径が通過できるが、長径は通過できない切欠溝17aを有し、この切欠溝17aより広く係止受部13が回動できる孔17bを備えた係止部17を設ける。図では、切欠溝17aを連結部材16の先端で連結部材16の延伸方向に開口しているが、この開口方向は、任意である。また、図では、片方の当接部材保持体6の2つの平行部6bの先端に係止受部13と係止部17を取り付けているが、片方の平行部6bの2つの連結部材15,16の2つの先端に係止受部13を、他方の平行部6bの2つの連結部材15,16の2つの先端に係止部17を取り付けることもできる。なお、前記実施例で説明したように、係止受部13と係止部17は、図示したものに拘るものではなく、両連結部材15,16を回動自在かつ着脱自在に連結でき、作業中に外れない構造であれば、如何なる構成であっても良い。
【0025】
図11、図12の第7実施例は、前記杭類の打込み兼引抜き具をさらに改良したものである。前記一対の当接部材保持部材6の平行部6bのそれぞれの内側に、1枚の板材をコ状に曲折し、央部を当接部18aとした当接部材18の平行な両端部18bをそれぞれ軸19により回動自在に取り付ける。この当接部材18の平行な両端部18bの何れか一方あるいは両方の先端と、前記当接部材保持部材6の底部6aとの間は、当接部材18が所定角度を超えて回動すると、当接部材18の平行な両端部18bの何れかの位置が当接部材保持部材6の底部6aの内側に当接してそれ以上回動できない間隔で隔てられている(この回動範囲の規制手段は、当接部材保持部材6の上下に当接部材18側に折返した突起を設けたり、軸19と同心円状の切欠溝を当接部材18の平行な両端部18bに設け、この切欠溝に挿入される突起を当接部材保持部材6の内側に突設するなど他の様々な手段が取れる)。当接部材18の当接部18a中央には、断面V字型(あるいは断面台形方など)の溝20を設ける。当接部材保持部材6の平行部6bのそれぞれの先端に斜め上方に向って連結部材21を突設する。それぞれの連結部材21の先端には、前記実施例と同様の係止受部材として先端に拡大した脱落防止部22aを備え、長径と短径を有する突起22と、この突起22の短径が通過できる溝23aと突起22の長径が回動できる孔23bが連設された係止部23を設ける。
【0026】
上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、連結部材21の係止受部材としての突起22と、この突起22を係止する係止部23を解除した状態で当接部材18を杭Aの両側面に当接しながら係止受部材として突起22と係止部23を連結し、把持竿2の端部の把持部2aを押し下げると農耕地に立てた杭Aが先端から地中に押し込められる。杭Aが地中に押し込められたら押し下げていた把持部2aを緩め、突起22と係止部23を解除すると、杭類の打込み兼引抜き具が左右に分解される。この杭類の打込み兼引抜き具を上下逆にして当接部材18を杭Aの両側面に当接しながら係止受部材として突起22と係止部23を連結し、把持竿2の端部の把持部2aを引き上げれば、農耕地に立設されている杭Aを引き抜くことができる。
【0027】
前述の杭類の打込み兼引抜き具は、当接部材1,5,8が全て円柱あるいは半円柱であったため当接部材1,5,8と杭Aの外周が点接触していた。したがって、杭Aの外周が当接部材1,5,8から受ける負荷が一点に集中しており、このため杭Aがこの接触点で損傷しやすかった。しかしながら、上記構成の杭類の打込み兼引抜き具は、板材をコ状に曲折した当接部材18と杭Aの外周が点接触ではなく線接触するので、杭Aの受ける負荷が分散されるから杭Aの損傷を減らすことができる。また、当接部材Aの底部中央にV型溝20を設けた場合、接触線が2本すなわち複数の点接触となるから杭Aの受ける負荷がさらに分散されますます杭Aの外周の受ける負荷が軽減することになり損傷を激減することができる。このV型溝20が台形状の溝である場合は、杭Aの両側の面と当接部材18のV型溝20の底面・V型溝20の両斜面の3箇所で線接触することになるので、杭Aの受ける負荷がさらに分散されますます杭Aの損傷が減ることになる。
【0028】
尚、本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、上記実施例で説明したそれぞれの構成を必要に応じて組合わせて実施できると共に、本発明の要旨の範囲内において種々変更を加えることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明の杭類の打込み兼引抜き具は、耕された農耕地を始め、比較的軟らかい土地に、人力で杭や支柱を打ち込んだり、その杭や支柱によりくねや棚を作ったり、それらの杭や支柱を引き抜くときに使う軽量簡易な手道具である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第1実施例を示す要部平面図である。
【図2】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第1実施例を示す要部縦断面図である。
【図3】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第2実施例を示す要部平面図である。
【図4】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第2実施例を示す要部縦断面図である。
【図5】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第3実施例を示す要部縦断面図である。
【図6】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第4実施例を示す要部平面図である。
【図7】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第5実施例を示す要部平面図である。
【図8】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第5実施例を示す要部縦断面図である。
【図9】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第6実施例を示す要部平面図である。
【図10】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第6実施例を示す要部縦断面図である。
【図11】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第7実施例を示す要部平面図である。
【図12】本発明の杭類の打込み兼引抜き具の第7実施例を示す要部縦断面図である。
【符号の説明】
【0031】
A 杭
1 当接部材
2 把持竿
2a 把持部
3 連結部材
4 軸
5 当接部材
5a 細い軸
5b 弾性体
6 当接部材保持体
6a 底部
6b 平行部
8 半円柱形の当接部材
9 当接部材
9a 断面台形状の切欠溝
11 ねじ
12 連結部材
13 突起
13a 脱落防止部
14 係止部
14a 切欠溝
14b 孔
15 連結部材
16 連結部材
17 係止部
17a 切欠溝
17b 孔
18 当接部材
18a 当接部
18b 平行な両端部
19 軸
20 断面V字型の溝
21 連結部材
22 長径と短径を有する突起
22a 脱落防止部
23 係止部
23a 溝
23b 孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭類の対向する両側面の夫々に当接する当接面を備えた一対の当接部材と、
該当接部材に延設され前記杭類の長さ方向と交差する方向に延びる一対の把持竿と、
該把持竿を当接部材側で結合し、該結合部を中心に把持竿を回動することによって前記一対の当接部材間の距離が変更可能となるように前記一対の当接部材を連結する連結部材と、
を有することを特徴とする杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項2】
前記連結部材が、当接部材の両側部に取り付けられた二対の連結部材であり、該二対の連結部材のうちの一対の連結部材の基部が前記当接部材に回動自在に取り付けられ、該回動自在な一対の連結部材の一方の先端に係止部を有し、該係止部に着脱自在に係止される係止受部が他方の連結部材の先端に取り付けられ、前記係止受部と係止部が、回動自在に係止することを特徴とする請求項1に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項3】
前記一対の当接部材が杭等の外周に当接する当接面に弾性体が取り付けられあるいは付着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項4】
前記一対の把持竿のそれぞれの基端部に先端が分岐された分岐部材を有し、該分岐部材の内側に当接部材を取り付けた一対の当接部材保持部材と、
該当接部材保持部材の分岐部材の先端に先端方向に延設した二対の連結部材と、
該二対の連結部材のうちのそれぞれの一対の連結部材の一方の連結部材に取り付けた係止受部と、
該係止受部に着脱自在に係止され、他方の連結部材に取り付けられた係止部と、
を有し、
該係止受部に係止部材を係止して連結すると回動自在となることを特徴とする請求項1ないし3のうち1項に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項5】
前記当接部材保持部材の分岐部材が、平行に形成され、
該当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に、コ状に曲折し、央部を当接部とした板材からなる当接部材の平行な両端部を回動自在に取り付けたことを特徴とする請求項4に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項1】
杭類の対向する両側面の夫々に当接する当接面を備えた一対の当接部材と、
該当接部材に延設され前記杭類の長さ方向と交差する方向に延びる一対の把持竿と、
該把持竿を当接部材側で結合し、該結合部を中心に把持竿を回動することによって前記一対の当接部材間の距離が変更可能となるように前記一対の当接部材を連結する連結部材と、
を有することを特徴とする杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項2】
前記連結部材が、当接部材の両側部に取り付けられた二対の連結部材であり、該二対の連結部材のうちの一対の連結部材の基部が前記当接部材に回動自在に取り付けられ、該回動自在な一対の連結部材の一方の先端に係止部を有し、該係止部に着脱自在に係止される係止受部が他方の連結部材の先端に取り付けられ、前記係止受部と係止部が、回動自在に係止することを特徴とする請求項1に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項3】
前記一対の当接部材が杭等の外周に当接する当接面に弾性体が取り付けられあるいは付着されていることを特徴とする請求項1または2に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項4】
前記一対の把持竿のそれぞれの基端部に先端が分岐された分岐部材を有し、該分岐部材の内側に当接部材を取り付けた一対の当接部材保持部材と、
該当接部材保持部材の分岐部材の先端に先端方向に延設した二対の連結部材と、
該二対の連結部材のうちのそれぞれの一対の連結部材の一方の連結部材に取り付けた係止受部と、
該係止受部に着脱自在に係止され、他方の連結部材に取り付けられた係止部と、
を有し、
該係止受部に係止部材を係止して連結すると回動自在となることを特徴とする請求項1ないし3のうち1項に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【請求項5】
前記当接部材保持部材の分岐部材が、平行に形成され、
該当接部材保持部材の平行な分岐部材の内側に、コ状に曲折し、央部を当接部とした板材からなる当接部材の平行な両端部を回動自在に取り付けたことを特徴とする請求項4に記載の杭類の打込み兼引抜き具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−156825(P2008−156825A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343649(P2006−343649)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(390025955)株式会社小林工具製作所 (10)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(390025955)株式会社小林工具製作所 (10)
【Fターム(参考)】
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