説明

板体の取付構造及びこれに用いられる固定ピースと固定ピース受具

【課題】 幕板等の板体の取り付けや交換作業を簡単に行なうことができると共に、取り付け後における板体のガタツキを確実に防止することができる板体の取付構造及びこれに用いられる固定ピースと固定ピース受具を提供する。
【解決手段】 キャビネットの板体取付開口部に板体を嵌合して取り付ける板体の取付構造であって、板体の一辺部には、板体取付開口部の一辺部に開設された止着孔に嵌合係止可能な凸部を形成し、板体の他辺部には、板体取付開口部の他辺部に形成された係止溝に係止可能な鍔部を形成すると共に、上記板体の他辺部側には、弾性を有する固定ピースを回動可能に取り付け、該固定ピースは、板体を板体取付開口部に止着したときに、板体取付開口部の他辺部と板体の他辺部との間に形成される空隙部間に移動させられて、その自由端部が板体取付開口部の他辺部に弾接し、板体をガタツキが発生しない方向に押圧するように配設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、流し台や洗面化粧台等の家具への幕板等の板体の取付構造及びこれに用いられる固定ピースと固定ピース受具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、幕板をキャビネット等で形成される流し台本体に取り付ける場合、特許文献1で示すように、流し台本体の側板側面の前部上部にビスやダボ等の固定具を取り付け、固定具の側面に縦方向の結合片を屈曲して設け、そして背面が平らである幕板を結合片の前面より配設し、幕板が上下左右にずれないように手で支持しながら結合片の裏面からネジ止め固定して幕板を流し台本体に取り付けていた。
【0003】
【特許文献1】特開平6−070823号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記の幕板と結合片の構造では、幕板を取り付けている間中、手で支持していなければならず、幕板が上下左右にずれて取り付け作業が容易にできないという問題と共に、幕板が傷損したり模様替えをする場合、ビス等の固定具の着脱が煩雑であるため、簡単に幕板の交換ができない、という問題を有していた。
【0005】
このような問題を解決する手段としては、幕板の裏面両側にフックを配設し、このフックをキャビネットの板体取付開口部に配設されたバー等に係止して吊持することで、取付作業を簡便化する方法も考えられるが、このような取付方法では、幕板に身体が衝突するたびにガタツキ音が発生する、という問題を有していた。
【0006】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、幕板等の板体の取り付けや交換作業を簡単に行なうことができると共に、取り付け後における板体のガタツキを確実に防止することができる板体の取付構造及びこれに用いられる固定ピースと固定ピース受具を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明にあっては、キャビネットの板体取付開口部に板体を嵌合して取り付ける板体の取付構造であって、板体の一辺部には、板体取付開口部の一辺部に開設された止着孔に嵌合係止可能な凸部を形成し、板体の他辺部には、板体取付開口部の他辺部に形成された係止溝に係止可能な鍔部を形成すると共に、上記板体の他辺部側には、弾性を有する固定ピースを回動可能に取り付け、該固定ピースは、板体を板体取付開口部に止着したときに、板体取付開口部の他辺部と板体の他辺部との間に形成される空隙部間に移動させられて、その自由端部が板体取付開口部の他辺部に弾接し、板体をガタツキが発生しない方向に押圧するように配設したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の発明にあっては、請求項1に記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記固定ピースは、その自由端部が円く形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明にあっては、請求項2に記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記固定ピースは、その自由端部が連続する凹凸で円く形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の発明にあっては、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記固定ピースの自由端部側には、操作具の先端が挿入可能な孔若しくは突起が形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明にあっては、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記固定ピースの下部は、固定ピース受具を介して板体に固定されるように構成されており、上記固定ピースの下部又は固定ピース受具に形成された貫通穴を、固定ピース受具又は固定ピースに形成された突起と嵌合させることで、固定ピースを回動可能に保持することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の発明にあっては、請求項5に記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記固定ピースと固定ピース受具の相対向する面には、クリック用突起とこれが嵌合係止可能な浅いクリック溝を形成し、該クリック溝は、90度の範囲で複数個形成されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の発明にあっては、請求項5又は請求項6のいずれかに記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記固定ピース受具には、固定ピースを略垂直状態及び水平状態に保持するためのストッパが突設されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の発明にあっては、請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記固定ピース受具には、前記板体に開設された位置決め孔に嵌合係止可能な位置決め突起が突設されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の発明にあっては、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記板体の固定ピース及び固定ピース受具の止着面には、板体固定具が取り付けられており、該板体固定具は、側面形状が略コ字状に形成された本体部と、この本体部の上部に形成された棚部と、この棚部から上方に延設された前記鍔部と、上記本体部の下部に突設された凸部と、を有して構成されていることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の発明にあっては、請求項9に記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記本体部の下部には、前記凸部をねじで形成した場合のねじ孔が開設されていることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の発明にあっては、請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の板体の取付構造を技術的前提とし、前記板体は、流し台や洗面台の幕板であることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の発明にあっては、請求項1乃至請求項11の板体の取付構造に用いられる縦長の固定ピースを、少なくともその自由端部を弾性材で形成すると共に、該自由端部を円く形成したことを特徴とする。
【0019】
請求項13に記載の発明にあっては、請求項12に記載の固定ピースを技術的前提とし、前記自由端部が連続する凹凸で円く形成されていることを特徴とする。
【0020】
請求項14に記載の発明にあっては、請求項12又は請求項13のいずれかに記載の固定ピースを技術的前提とし、前記自由端部側には、操作具の先端が挿入可能な孔若しくは突起が形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項15に記載の発明にあっては、請求項12乃至請求項14のいずれかに記載の固定ピースを技術的前提とし、前記固定ピースの下部には、貫通穴又は円柱状の突起が形成されていることを特徴とする。
【0022】
請求項16に記載の発明にあっては、請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の固定ピースを技術的前提とし、前記固定ピースの一面には、クリック用突起又は所要間隔毎に複数個開設されたクリック溝が形成されていることを特徴とする。
【0023】
請求項17に記載の発明にあっては、請求項12乃至請求項16のいずれかに記載の固定ピースの下部を回動可能に保持する固定ピース受具であって、該固定ピース受具には、上記固定ピースの下部に形成された貫通穴又は円柱状の係止突起と嵌合係止可能な円柱状の突起又は貫通穴が形成されていることを特徴とする。
【0024】
請求項18に記載の発明にあっては、請求項17に記載の固定ピース受具を技術的前提とし、前記固定ピース受具の固定ピースと対向する面には、固定ピースに形成されたクリック用突起又はクリック溝と係合する複数個のクリック溝又はクリック用突起が形成されていることを特徴とする。
【0025】
請求項19に記載の発明にあっては、請求項17又は請求項18のいずれかに記載の固定ピースを技術的前提とし、前記固定ピース受具には、固定ピースを略垂直状態及び水平状態に保持するためのストッパが突設されていることを特徴とする。
【0026】
請求項20に記載の発明にあっては、請求項17乃至請求項19のいずれかに記載の固定ピースを技術的前提とし、前記固定ピース受具には、前記板体に開設された位置決め孔に嵌合係止可能な位置決め突起が突設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、請求項1に記載の発明にあっては、キャビネットの板体取付開口部に板体を嵌合して取り付ける板体の取付構造であって、板体の一辺部には、板体取付開口部の一辺部に開設された止着孔に嵌合係止可能な凸部を形成し、板体の他辺部には、板体取付開口部の他辺部に形成された係止溝に係止可能な鍔部を形成すると共に、上記板体の他辺部側には、弾性を有する固定ピースを回動可能に取り付け、該固定ピースは、板体を板体取付開口部に止着したときに、板体取付開口部の他辺部と板体の他辺部との間に形成される空隙部間に移動させられて、その自由端部が板体取付開口部の他辺部に弾接し、板体をガタツキが発生しない方向に押圧するように配設したので、幕板等の板体の取り付けや交換作業を簡単に行なうことができると共に、取り付け後における板体のガタツキを確実に防止することができる。
【0028】
請求項2に記載の発明にあっては、前記固定ピースの自由端部を円く形成したので、板体を確実にガタツキが発生しない方向に押圧することができると共に、空隙部の間隔誤差にも容易に対応させることができる。
【0029】
請求項3に記載の発明にあっては、固定ピースの自由端部を連続する凹凸で円く形成したので、請求項2の効果に加え、固定ピースの板体取付開口部の他辺部への弾接密着度が増加するため、より強い押圧力を得ることができ、板体のガタツキをより確実に防止することができる。
【0030】
請求項4に記載の発明にあっては、固定ピースの自由端部側に、操作具の先端が挿入可能な孔若しくは突起を形成したので、板体を取り付けた後、例えば、先端が細く錐状の工具を孔に挿通し、或は突起に係合させることで、固定ピースを垂直方向へと回動させることができ、或は、取り外す時に、固定ピースを水平方向に回動させることができるので、板体のガタツキ防止作業及び板体の取り外し作業を容易に行なうことができる。
【0031】
請求項5に記載の発明にあっては、前記固定ピースの下部は、固定ピース受具を介して板体に固定されるように構成されており、上記固定ピースの下部又は固定ピース受具に形成された貫通穴を、固定ピース受具又は固定ピースに形成された突起と嵌合させることで、固定ピースを回動可能に保持するように構成したので、固定ピースを一の受部品で確実に回動させることができる。
【0032】
請求項6に記載の発明にあっては、前記固定ピースと固定ピース受具の相対向する面には、クリック用突起とこれが嵌合係止可能な浅いクリック溝を形成し、該クリック溝は、90度の範囲で複数個形成されて構成されているので、段階的な角度で固定ピースを係止することができると共に、固定ピースの弾性力による押圧力が作用しなくなるのを、当該クリック用突起とクリック溝との係合力で防止することができる。
【0033】
請求項7に記載の発明にあっては、前記固定ピース受具には、固定ピースを略垂直状態及び水平状態に保持するためのストッパを突設したので、固定ピースを略90度の小さな範囲で回転させることが可能となり、しかも、垂直状態に保持したときには、上記ストッパによって固定ピースの倒れが規制されるので、より確実な押圧状態を保持することができる。
【0034】
請求項8に記載の発明にあっては、前記固定ピース受具には、前記板体に開設された位置決め孔に嵌合係止可能な位置決め突起が突設されているので、板体の位置決め孔に位置決め突起を嵌合係止するだけで、当該固定ピース受具の位置決めを行なうことができ、また、当該固定ピース受具を1本のビスで板体に固定しても、該固定ピース受具の回転を確実に防止することができるので、固定ピースの保持状態を一定に保持することができる。
【0035】
請求項9に記載の発明にあっては、前記板体の固定ピース及び固定ピース受具の止着面には、板体固定具が取り付けられており、該板体固定具は、側面形状が略コ字状に形成された本体部と、この本体部の上部に形成された棚部と、この棚部から上方に延設された前記鍔部と、上記本体部の下部に突設された凸部と、を有して構成されているので、従来の板体の取付構造のように、多くのビス等を使用して板体を取り付ける必要がなくなり、板体をより簡単に板体取付開口部に止着させることができる。
【0036】
請求項10に記載の発明にあっては、前記本体部の下部にねじ孔を開設し、このねじ孔になべ小ねじ等のねじを着脱自在に螺着して凸部を形成したので、凸部の大きさや突出量を板体取付開口部に形成された止着孔の大きさや深さに対応させて容易に交換し調整することができる。
【0037】
請求項11に記載の発明にあっては、本発明を流し台や洗面台の幕板に適用したので、幕板が傷損した場合や、リフォーム、模様換えを容易に行なうことができる。
【0038】
請求項12に記載の発明にあっては、板体の取付構造に用いられる縦長の固定ピースを、少なくともその自由端部を弾性材で形成すると共に、該自由端部を円く形成したので、板体を確実にガタツキが発生しない方向に押圧することができると共に、空隙部の間隔誤差にも容易に対応させることができる。
【0039】
請求項13に記載の発明にあっては、前記自由端部が連続する凹凸で円く形成されているので、請求項12の効果に加え、固定ピースの板体取付開口部の他辺部への弾接密着度が増加するため、より強い押圧力を得ることができ、板体のガタツキをより確実に防止することができる。
【0040】
請求項14に記載の発明にあっては、前記自由端部側には、操作具の先端が挿入可能な孔若しくは突起を形成したので、板体を取り付けた後、例えば、先端が細く錐状の工具を孔に挿通し、或は突起に係合させることができ、固定ピースを垂直方向へと回動させ、或は、取り外す時に、固定ピースを水平方向に回動させることで、板体のガタツキを確実に防止することができる。
【0041】
請求項15及び請求項17に記載の発明にあっては、固定ピースの下部を回動可能に保持する固定ピース受具であって、該固定ピース受具には、上記固定ピースの下部に形成された貫通穴又は円柱状の係止突起と嵌合係止可能な円柱状の突起又は貫通穴が形成したので、固定ピースを一の受部品で確実に回動させ保持することができる。
【0042】
請求項16及び請求項18に記載の発明にあっては、前記固定ピースの一面には、クリック用突起又は所要間隔毎に複数個開設されたクリック溝を形成すると共に、前記固定ピース受具の固定ピースと対向する面には、固定ピースに形成されたクリック用突起又はクリック溝と係合する複数個のクリック溝又はクリック用突起を形成したので、段階的な角度で固定ピースを係止することができると共に、固定ピースの弾性力による押圧力が作用しなくなるのを、当該クリック用突起とクリック溝との係合力で防止することができる。
【0043】
請求項19に記載の発明にあっては、前記固定ピース受具に、固定ピースを略垂直状態及び水平状態に保持するためのストッパを突設したので、固定ピースを略90度の小さな範囲で回転させることが可能となり、しかも、垂直状態に保持したときには、上記ストッパによって固定ピースの倒れが規制されるので、より確実な押圧状態を保持することができる。
【0044】
請求項20に記載の発明にあっては、前記固定ピース受具には、前記板体に開設された位置決め孔に嵌合係止可能な位置決め突起を突設したので、板体の位置決め孔に位置決め突起を嵌合係止するだけで、当該固定ピース受具の位置決めを行なうことができ、また、当該固定ピース受具を1本のビスで板体に固定しても、該固定ピース受具の回転を確実に防止することができるので、固定ピースの保持状態を一定に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、添付図面に示す発明の実施例1に基づき、この発明を詳細に説明する。
【実施例1】
【0046】
この実施例1は、図1に示すように、この発明を流し台の幕板Mの取り付けに適用した場合を示しており、流し台のキャビネット前面側のベースユニット部1(図11参照)に形成された幕板取付開口部2に幕板Mを嵌合して取り付けるように構成されている。
【0047】
図2に示すように、上記幕板Mの本体11の下辺部10には、上記幕板取付開口部2の下辺部3に開設された止着孔4,4(図11参照)に嵌合係止可能な凸部を構成するなべ小ねじ45,45(図11参照)が着脱自在に螺着されており、また、幕板Mの裏面側には、弾性を有する 固定ピース20を、固定ピース受具30を介して回動可能に取り付け、該固定ピース20は、幕板Mを幕体取付開口部2に止着したときに、幕板取付開口部2の上辺部5と幕板Mの上辺部12との間に形成される空隙部S間に移動させられて、その自由端部21が幕板取付開口部2の上辺部5に弾接し、幕板Mをガタツキが発生しない方向に押圧するように構成されている。
【0048】
固定ピース20は、図3及び図8乃至図9に示すように、ABS樹脂で縦長で弾性を有して形成されており、自由端部21側及び固定端部22側を円く形成すると共に、上記自由端部側21には凹凸23が連続して形成され、該凹凸23の下方には、2つの係止溝孔24が開設され、さらに、上記固定端部側22には貫通穴25が開設され、さらに、該貫通穴25の上部には、半球状のクリック用突起26が突設されている。
【0049】
このように、固定ピース20を弾性を有するABS樹脂で形成し、かつ、上記自由端部21に連続する凹凸23を円く形成することで、固定ピース20の幕板取付開口部2の上辺部5への弾接密着度を増加させることができ、より強い押圧力を得ることができ、幕板Mのガタツキをより確実に防止することができる。
【0050】
また、この実施例1では、固定ピース20の自由端部21側に、操作具(図示せず)の先端が挿入可能な係止溝孔24を形成したので、幕板Mを取り付けた後、先端が細く錐状の工具を係止溝孔24に挿通し、固定ピース20を垂直方向へと回動させ、或は、取り外す時に固定ピース20を水平方向に、小さな力で容易に回動させることができる。
【0051】
一方、上記固定ピース受具30は、図3乃至図7に示すように、正面形状が略1/4円板形状に形成された本体31と、該本体31に開設され上記固定ピース20に形成された貫通穴25と嵌合係止可能なリング状の突起32が形成されており、また、該リング状の突起32の外周側に沿って、0度、45度、90度の位置に浅い3つのクリック溝33,33,33が凹設されている。尚、図中符号34は、リング状の突起33の中心部に開設されたビス孔である。
【0052】
このように、この実施例1にあっては、固定ピース受具30を構成したので、段階的な角度、即ち、水平状態、45度の状態、垂直状態で固定ピース20を係止することができると共に、固定ピース20自体の弾性力による押圧力が作用しなくなるのを、当該クリック用突起26とクリック溝33との係合力で防止することもできる。
【0053】
また、固定ピース受具30には、固定ピース20を略垂直状態及び水平状態に保持するためのストッパ35,36が突設されており、固定ピース20を垂直位置又は水平位置以上に回転しないように規制することができ、しかも、垂直状態に保持したときには、上記クリック係止状態と相俟って、上記ストッパ35によって固定ピース20が水平位置へと回動するのを規制することができるので、より確実な押圧状態を保持することができる。
【0054】
さらに、上記固定ピース受具30には、幕板Mの裏面側に開設された位置決め孔7に嵌合係止可能な位置決め突起37が突設されており、幕板Mの位置決め孔7に当該位置決め突起37を嵌合係止し、上記ビス孔34にビス8を螺装してこれを緊締することで、当該固定ピース受具30の位置決めを行なうことができ、また、当該固定ピース受具30を1本のビス8で幕板Mに固定するときにも、該固定ピース受具30の回転を防止し、簡単に取り付けることができる。尚、固定ピース20の貫通穴25と固定ピース受具30のリング状の突起32は、固定ピース側に突起を、固定ピース受具側に貫通穴を形成して構成しても同様の効果が得られる。
【0055】
このようにして幕板Mの裏面上部両側に固定ピース20を、固定ピース受具30を介して固定した後に、図11に示すように、幕板固定具40,40が取り付けられる。
【0056】
この幕板固定具40は、側面形状が略コ字状に形成された本体部41と、この本体部41の上部に形成された棚部42と、この棚部42から上方に延設された鍔部43と、上記本体部41の下部に突設されたねじ孔44,44と、該ねじ孔44の一方に螺装されるなべ小ねじ45と、から構成されており、このねじ孔44に螺着されたなべ小ねじ45が、本発明の凸部を構成している。また、この幕板固定具40の幕板Mの裏面への取り付けは、本体部41の上下に開設された固定孔46,46にビス47を螺装して固定する。この固定孔46,46は、水平方向に長く形成され、幕板固定具40の水平方向に移動させることで、上記鍔部43と幕板取付開口部2の上辺部5に形成された係止溝6(図15参照)との相対的位置を調整することができるように構成されている。
【0057】
このように、この実施例1では、前記本体部41の下部にねじ孔44,44を開設し、このねじ孔44,44になべ小ねじ45を着脱自在に螺着して凸部を形成したので、凸部の大きさや突出量を、幕板取付開口部2に形成された止着孔4,4の大きさや深さに対応させて容易に交換し調整することができる。
【0058】
このようにして組み立てられた幕板Mを、図12乃至図14に示す。
【0059】
次に、上記のようにして組み立てられた幕板Mを、流し台のキャビネット前面側のベースユニット部1に形成された幕板取付開口部2に取り付ける手順を、図15乃至図20に基いて説明する。尚、図15乃至図20では、実施例1で説明した幕板Mとは異なり、幕板Mの表面側に形成された枠部16に化粧材15を嵌装する場合を例にとり説明するが、この発明にあってはこれに限定されるものではなく、公知の各種幕板、例えば、本体11の表面にコート紙を貼着したものにも適用することができる他、他の板材の取り付けにも適用することができる。また、図中符号Cは天板である。
【0060】
先ず、幕板Mに取り付けられた固定ピース20,20を固定ピース受具30のストッパ36,36に衝合させた状態にセットした後、図15に示すように、幕板固定具40の鍔部43を、ベースユニット部1の幕板取付開口部2の内側部にビス止め固定された平面形状が略L字状の取付金具9,9の奥行側上縁部と幕板取付開口部2の内側上部フレームとの間に形成された係止溝6に、図16に示すように差し込み、この後、幕板Mの下辺部10を上記幕板取付開口部2内に挿入し、幕板Mを垂直状態にセットする。
【0061】
この状態から幕板Mを下方向にスライドさせ、上記幕板取付開口部2の下辺部3に開設された止着孔4,4になべ小ねじ45,45を落とし込み、嵌合係止させる。
【0062】
すると、幕板取付開口部2の上辺部5と幕板Mの上辺部12との間に、図19に示すような空隙部Sが形成されるので、次に、固定ピース20の自由端部21側に開設された係止溝孔24に、操作具(図示せず)の先端を挿入し、固定ピース20を垂直方向へと回動させることで、その自由端部21の凹凸23が幕板取付開口部2の上辺部5に弾接し、幕板Mを下方向に押圧するので、取り付け後における板体のガタツキを確実に防止することができる。勿論、取り外す時に固定ピース20を水平方向に、小さな力で容易に回動させることができる。このように、幕板等の板体の取り付けや交換作業も上記手順だけで非常に簡単に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明で流し台の幕板を取り付けた状態を示す実施例を示す流し台の斜視図である。
【図2】同幕板と幕板固定ピース、幕板固定ピース受具及び幕板固定具の取付状態を示す分解斜視図である。
【図3】同幕板固定ピース及び幕板固定ピース受具の斜視図である。
【図4】同幕板固定ピース受具の正面図である。
【図5】同幕板固定ピース受具の背面図である。
【図6】同幕板固定ピース受具の平面図である。
【図7】同幕板固定ピース受具の右側面図である。
【図8】同幕板固定ピースの正面図である。
【図9】同幕板固定ピースの平面図である。
【図10】同幕板固定ピースの右側面図である。
【図11】同幕板の取付例を示す分解斜視図である。
【図12】同幕板の取付状態を示す正面図である。
【図13】同幕板の取付状態を示す平面図である。
【図14】同幕板の取付状態を示す右側面図である。
【図15】同幕板の取り付け手順を示す説明図である。
【図16】同幕板の取り付け次の手順を示す説明図である。
【図17】同幕板の取り付けさらに次の手順を示す説明図である。
【図18】同幕板の取り付け手順の最終工程を示す説明図である。
【図19】同幕板が取り付けられた状態を示す正面図である。
【図20】要部拡大説明図である。
【符号の説明】
【0064】
M 幕板
1 ベースユニット部
2 幕板取付開口部
3 幕板取付開口部の下辺部
4 止着孔
5 幕板取付開口部の上辺部
6 係止溝
7 位置決め孔
8 ビス
10 幕板の下辺部
11 幕板本体
12 幕板の上辺部
20 固定ピース
21 自由端部
23 凹凸
24 係止溝孔
25 貫通穴
26 クリック用突起
30 固定ピース受具
31 本体
32 突起
33 クリック溝
34 ビス穴
35,36 ストッパ
37 位置決め突起
40 幕板固定具
41 本体部
42 棚部
43 鍔部
44 ねじ孔
45 なべ小ねじ(凸部)
46 固定孔
47 ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットの板体取付開口部に板体を嵌合して取り付ける板体の取付構造であって、板体の一辺部には、板体取付開口部の一辺部に開設された止着孔に嵌合係止可能な凸部を形成し、板体の他辺部には、板体取付開口部の他辺部に形成された係止溝に係止可能な鍔部を形成すると共に、上記板体の他辺部側には、弾性を有する固定ピースを回動可能に取り付け、該固定ピースは、板体を板体取付開口部に止着したときに、板体取付開口部の他辺部と板体の他辺部との間に形成される空隙部間に移動させられて、その自由端部が板体取付開口部の他辺部に弾接し、板体をガタツキが発生しない方向に押圧するように配設したことを特徴とする板体の取付構造。
【請求項2】
前記固定ピースは、その自由端部が円く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の板体の取付構造。
【請求項3】
前記固定ピースは、その自由端部が連続する凹凸で円く形成されていることを特徴とする請求項2に記載の板体の取付構造。
【請求項4】
前記固定ピースの自由端部側には、操作具の先端が挿入可能な孔若しくは突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の板体の取付構造。
【請求項5】
前記固定ピースの下部は、固定ピース受具を介して板体に固定されるように構成されており、上記固定ピースの下部又は固定ピース受具に形成された貫通穴を、固定ピース受具又は固定ピースに形成された突起と嵌合させることで、固定ピースを回動可能に保持することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の板体の取付構造。
【請求項6】
前記固定ピースと固定ピース受具の相対向する面には、クリック用突起とこれが嵌合係止可能な浅いクリック溝を形成し、該クリック溝は、90度の範囲で複数個形成されていることを特徴とする請求項5に記載の板体の取付構造。
【請求項7】
前記固定ピース受具には、固定ピースを略垂直状態及び水平状態に保持するためのストッパが突設されていることを特徴とする請求項5又は請求項6のいずれかに記載の板体の取付構造。
【請求項8】
前記固定ピース受具には、前記板体に開設された位置決め孔に嵌合係止可能な位置決め突起が突設されていることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の板体の取付構造。
【請求項9】
前記板体の固定ピース及び固定ピース受具の止着面には、板体固定具が取り付けられており、該板体固定具は、側面形状が略コ字状に形成された本体部と、この本体部の上部に形成された棚部と、この棚部から上方に延設された前記鍔部と、上記本体部の下部に突設された凸部と、を有して構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の板体の取付構造。
【請求項10】
前記本体部の下部には、前記凸部をねじで形成した場合のねじ孔が開設されていることを特徴とする請求項9に記載の板体の取付構造。
【請求項11】
前記板体は、流し台や洗面台の幕板であることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の板体の取付構造。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11の板体の取付構造に用いられる縦長の固定ピースであって、少なくともその自由端部を弾性材で形成すると共に、該自由端部を円く形成したことを特徴とする固定ピース。
【請求項13】
前記自由端部が連続する凹凸で円く形成されていることを特徴とする請求項12に記載の固定ピース。
【請求項14】
前記自由端部側には、操作具の先端が挿入可能な孔若しくは突起が形成されていることを特徴とする請求項12又は請求項13のいずれかに記載の固定ピース。
【請求項15】
前記固定ピースの下部には、貫通穴又は円柱状の突起が形成されていることを特徴とする請求項12乃至請求項14のいずれかに記載の固定ピース。
【請求項16】
前記固定ピースの一面には、クリック用突起又は所要間隔毎に複数個開設されたクリック溝が形成されていることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれかに記載の固定ピース。
【請求項17】
請求項12乃至請求項16のいずれかに記載の固定ピースの下部を回動可能に保持する固定ピース受具であって、該固定ピース受具には、上記固定ピースの下部に形成された貫通穴又は円柱状の係止突起と嵌合係止可能な円柱状の突起又は貫通穴が形成されていることを特徴とする固定ピース受具。
【請求項18】
前記固定ピース受具の固定ピースと対向する面には、固定ピースに形成されたクリック用突起又はクリック溝と係合する複数個のクリック溝又はクリック用突起が形成されていることを特徴とする請求項17に記載の固定ピース受具。
【請求項19】
前記固定ピース受具には、固定ピースを略垂直状態及び水平状態に保持するためのストッパが突設されていることを特徴とする請求項17又は請求項18のいずれかに記載の固定ピース受具。
【請求項20】
前記固定ピース受具には、前記板体に開設された位置決め孔に嵌合係止可能な位置決め突起が突設されていることを特徴とする請求項17乃至請求項19のいずれかに記載の固定ピース受具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2006−43136(P2006−43136A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228538(P2004−228538)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】