説明

板材用取付金具、板材の取付構造および取付方法

【課題】板材の取付位置を前後方向に調整できるとともに、調整後、板材の取付位置を確実かつ強固に固定することが可能な板材用取付金具、板材の取付構造および取付方法を提供することを目的とする。
【解決手段】垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付けるための板材用取付金具1であり、前記下地材2の表面に固定される第1取付金具10と、この第1取付金具10に引っ掛けられるとともに、前記板材3の裏面側に固定される第2取付金具20と、前記第1取付金具10に対する第2取付金具20の引掛位置を前後に調整する位置調整手段とからなる。また、この板材用取付金具1を用いた板材3の取付構造および取付方法。これにより、第2取付金具を、下地材側に後退、または下地材側とは反対の方向に前進させることができ、さらに、第2取付金具を、前後方向に移動しないように固定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直に立設された下地材に、この下地材の表面を覆う板材を取り付けるための板材用取付金具と、この板材用取付金具を用いる板材の取付構造および取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物の外壁を施工する際に、外部に面する構造用合板の表面を下地材にして、この下地材に、外装材等の壁用面材を取り付ける場合がある。その方法として、下地材の表面に受け金物を取り付けるとともに、壁用面材の裏面に掛け金物を取り付け、掛け金物を受け金物に掛けることによって、壁用面材を下地材に取り付ける技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このような受け金物および掛け金物の技術は、外装材等の壁用面材だけでなく、例えば外壁面に取り付けられる看板や、店舗等で使用される姿見、壁に沿って設置される絵画の額や本棚等、様々なものに適用することが可能である。つまり、板状に形成されたもの(以下、板材)を、下地材に取り付ける際に好適である。
【特許文献1】特開2004−300720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に記載のような受け金物および掛け金物の技術を採用した場合、これら受け金物および掛け金物の間にはガタツキ防止材がセットされており、板材である壁用面材が、下地材に対して接近・離反方向においてガタ無く取り付けられているため、下地材に対して、板材を前後方向に位置調整できない場合があった。
また、受け金物を掛け金物に掛ける構造であるため、受け金物を確実に固定できない場合があった。
【0005】
本発明の課題は、板材の取付位置を前後方向に調整できるとともに、調整後、板材の取付位置を確実かつ強固に固定することが可能な板材用取付金具、板材の取付構造および取付方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば図1〜図6に示すように、垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付けるための板材用取付金具1において、
前記下地材2の表面に固定される第1取付金具10と、この第1取付金具10に引っ掛けられるとともに、前記板材3の裏面側に固定される第2取付金具20と、前記第1取付金具10に対する第2取付金具20の引掛位置を前後に調整する位置調整手段とからなり、
前記第1取付金具10は、前記下地材2の表面に固定される固定板部11と、この固定板部11の一端から前方に突出するとともに、前記第2取付金具20が引っ掛けられる引掛板部12と、この引掛板部12の突端から前記固定板部11に平行する方向に突出する平行板部13とを備えており、
前記第2取付金具20は、前記第1取付金具10の固定板部11と平行板部13との間に、これら固定板部11および平行板部13と平行に差し入れられる差入板部21と、この差入板部21の上端部から前記第1取付金具10の引掛板部12の上端部を通過するように突出して設けられるとともに、前記板材3の裏面側に固定される引掛固定部22とを備えており、
前記位置調整手段は、前記平行板部13に形成される第1ネジ孔30と、この第1ネジ孔30に螺合するとともに、先端が、前記第2取付金具20の差入板部21の表面に当接する第1調整ネジ31とからなる第1調整手段と、
前記平行板部13に形成されるネジ挿通孔40と、このネジ挿通孔40と対向して前記第2取付金具20の差入板部21に形成される第2ネジ孔41と、前記ネジ挿通孔40に挿通されるとともに、前記第2ネジ孔41に螺合する第2調整ネジ42とからなる第2調整手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、前記第1調整ネジ31を、前記平行板部13に形成される第1ネジ孔30に螺合させてから締め付けることによって、この第1調整ネジ31の先端で、前記第2取付金具20の差入板部21を前記下地材2側に押すことができるので、前記第2取付金具20が裏面側に固定された前記板材3を、前記下地材2側に後退させることができる。
一方、前記第2調整ネジ42を、前記平行板部13に形成されるネジ挿通孔40に挿通するとともに、前記差入板部21に形成される第2ネジ孔41に螺合させてから締め付けることによって、前記第2取付金具20の差入板部21を、前記固定板部11側から前記平行板部13側へと引き寄せることができるので、前記第2取付金具20が裏面側に固定された前記板材3を、前記下地材2側とは反対の方向に前進させることができる。
これによって、前記差入板部21を前後方向に移動させて、この差入板部21の引掛位置を前後方向に調整することができるので、前記板材3を前後方向に位置調整することができる。
また、このように、前記第1調整ネジ31を締め付けるとともに、前記第2調整ネジ42を締め付けることによって、前記第2取付金具20の差入板部21を前後方向の相反する方向に移動させようとすることができるので、この差入板部21が前後方向に移動しないように固定することができる。
したがって、前記第1調整ネジ31および第2調整ネジ42の一方を締め付けて前記板材3を前進または後退させて位置調整が終わった後に、これら第1調整ネジ31および第2調整ネジ42の他方を締め付けることによって、前記板材3の取付位置を確実かつ強固に固定することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば図6に示すように、請求項1に記載の板材用取付金具1において、
前記第2調整ネジ42は、棒状の本体軸部42aと、この本体軸部42aの基端部に設けられる頭部42bとを備えており、
前記本体軸部42aの基端部側は円柱状に形成されており、この本体軸部42aの外周面の先端側には、前記第2ネジ孔41に螺合する螺旋状のネジ山が形成されていることを特徴とする
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記本体軸部42aの基端部側は円柱状に形成されているので、この本体軸部42aの円柱状の基端部は、前記ネジ挿通孔40に対して、このネジ挿通孔40に螺合せず、このネジ挿通孔40に沿って前後方向に移動可能に遊挿されることとなる。したがって、前記円柱状の基端部が前記ネジ挿通孔40に沿って前後方向に移動できる範囲を、前記第1調整ネジ31の先端で、前記第2取付金具20の差入板部21を前記下地材2側に押して移動させる際の移動可能範囲とすることができる。
また、前記本体軸部42aの外周面の先端側には、前記第2ネジ孔41に螺合する螺旋状のネジ山が形成されているので、この本体軸部42aの先端を、前記差入板部21の第2ネジ孔41に確実に螺合させることができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、例えば図1に示すように、請求項1に記載の板材用取付金具1を用いて、垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付けてなる板材3の取付構造であって、
前記下地材2に、前記板材3に隣り合うようにして板材3が取り付けられており、これら隣り合う板材3,3間に目地部3aが形成されており、
前記第1取付金具10および第2取付金具20は、前記第1ネジ孔30と、ネジ挿通孔40および第2ネジ孔41とが、前記目地部3aの底部に位置するようにして、前記下地材2の表面および板材3の裏面側にそれぞれ固定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、前記第1ネジ孔30と、ネジ挿通孔40および第2ネジ孔41とは、前記目地部3aの底部に位置しているので、この目地部3aから工具を挿入して、前記第1調整ネジ31および第2調整ネジ42を締め付ける作業や緩める作業を行うことができる。これによって、位置調整後に前記板材3を固定する際に固定しやすく、前記板材3を取り外す際に取り外しやすい。
【0012】
請求項4に記載の発明は、例えば図1〜図6に示すように、請求項1に記載の板材用取付金具1を用いて、垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付ける板材3の取付方法であって、
前記下地材2の表面に、前記第1取付金具10の固定板部11を固定し、前記板材3の裏面側に、前記第2取付金具20の引掛固定部22を固定し、
前記板材3を、前記第2取付金具20を、前記第1取付金具10に引っ掛けることによって、前記下地材2の表面に取り付け、
前記第1調整ネジ31を、前記第1取付金具10の平行板部13の第1ネジ孔30に螺合させて、この第1調整ネジ31の先端を、前記第2取付金具20の差入板部21の表面に当接させ、さらに、前記第2調整ネジ42を、前記平行板部13のネジ挿通孔40に挿通するとともに、前記差入板部21の第2ネジ孔41に螺合させ、
その後、前記差入板部21を、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって前記下地材2側に後退させ、この差入板部21の後退を所定の位置で止めた後、この差入板部21に、前記第2調整ネジ42を締め付けることによって、この差入板部21を前方に引き寄せる力を加えることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、前記差入板部21を、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって前記下地材2側に後退させることで、前記板材3を、前記下地材2側に後退させることができる。そして、前記差入板部21の後退を所定の位置で止めた後、この差入板部21に、前記第2調整ネジ42を締め付けることによって、この差入板部21を前方に引き寄せる力を加えることで、前記差入板部21を前後方向の相反する方向に移動させようとすることができるので、この差入板部21が前後方向に移動しないように固定することができる。
したがって、前記第1調整ネジ31を締め付けて前記板材3を後退させて位置調整が終わった後に、前記第2調整ネジ42を締め付けることによって、前記板材3の取付位置を確実かつ強固に固定することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば図1〜図6に示すように、請求項1に記載の板材用取付金具1を用いて、垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付ける板材3の取付方法であって、
前記下地材2の表面に、前記第1取付金具10の固定板部11を固定し、前記板材3の裏面側に、前記第2取付金具20の引掛固定部22を固定し、
前記板材3を、前記第2取付金具20を、前記第1取付金具10に引っ掛けることによって、前記下地材2の表面に取り付け、
前記第2調整ネジ42を、前記平行板部13のネジ挿通孔40に挿通するとともに、前記差入板部21の第2ネジ孔41に螺合させ、さらに、前記第1調整ネジ31を、前記第1取付金具10の平行板部13の第1ネジ孔30に螺合させるとともに、この第1調整ネジ31の先端と、前記第2取付金具20の差入板部21の表面との間に所定の隙間を形成しておき、
その後、前記差入板部21を、前記第2調整ネジ20を締め付けることによって前記下地材2側とは反対の方向に前進させ、この差入板部21の前進を所定の位置で止めた後、この差入板部21に、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって、この差入板部21を後方に押す力を加えることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、前記差入板部21を、前記第2調整ネジ20を締め付けることによって前記下地材2側とは反対の方向に前進させることで、前記板材3を、前記下地材2側とは反対の方向に前進させることができる。そして、前記差入板部21の前進を所定の位置で止めた後、この差入板部21に、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって、この差入板部21を後方に押す力を加えることで、前記差入板部21を前後方向の相反する方向に移動させようとすることができるので、この差入板部21が前後方向に移動しないように固定することができる。
したがって、前記第2調整ネジ42を締め付けて前記板材3を前進させて位置調整が終わった後に、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって、前記板材3の取付位置を確実かつ強固に固定することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、第1調整ネジを、平行板部に形成される第1ネジ孔に螺合させてから締め付けることによって、この第1調整ネジの先端で、第2取付金具の差入板部を下地材側に押すことができるので、第2取付金具が裏面側に固定された板材を、下地材側に後退させることができる。
一方、第2調整ネジを、平行板部に形成されるネジ挿通孔に挿通するとともに、差入板部に形成される第2ネジ孔に螺合させてから締め付けることによって、第2取付金具の差入板部を、固定板部側から平行板部側へと引き寄せることができるので、第2取付金具が裏面側に固定された板材を、下地材側とは反対の方向に前進させることができる。
これによって、差入板部を前後方向に移動させて、この差入板部の引掛位置を前後方向に調整することができるので、板材を前後方向に位置調整することができる。
また、このように、第1調整ネジを締め付けるとともに、第2調整ネジを締め付けることによって、第2取付金具の差入板部を前後方向の相反する方向に移動させようとすることができるので、この差入板部が前後方向に移動しないように固定することができる。
したがって、第1調整ネジおよび第2調整ネジの一方を締め付けて板材を前進または後退させて位置調整が終わった後に、これら第1調整ネジおよび第2調整ネジの他方を締め付けることによって、板材の取付位置を確実かつ強固に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
本実施の形態の板材用取付金具は、図1〜図6に示すように、垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付けるためのものであり、前記下地材2の表面に固定される第1取付金具10と、この第1取付金具10に引っ掛けられるとともに、前記板材3の裏面側に固定される第2取付金具20と、前記第1取付金具10に対する第2取付金具20の引掛位置を前後に調整する位置調整手段とからなる。
【0019】
なお、前記板材3には、この板材3の裏面から突出するとともに、後述する第2取付金具20の引掛固定部22が固定される被固定金具4が埋設されている。この被固定金具4には、この被固定金具4と引掛固定部22とを連結する止着材4bを挿通するための挿通孔4aが形成されている。
【0020】
本実施の形態の第1取付金具10および第2取付金具20は、いずれも同種の金属からなる。また、前記第1取付金具10は、図2に示すように、上下反転可能な形状であるため、前記板材1の両側端部に取り付けできる。
一方、前記第2取付金具20は、図3に示すように、上下反転可能な形状とはなっていないので、左側端部用のものと右側端部用のものとが用いられ、これら左側端部用の第2取付金具20と右側端部用の第2取付金具20は、左右対称で構成されることとなる。
【0021】
前記第1取付金具10は、図2(a)〜(c)に示すように、前記下地材2の表面に固定される固定板部11と、この固定板部11の一端から前方に突出するとともに、前記第2取付金具20が引っ掛けられる引掛板部12と、この引掛板部12の突端から前記固定板部11に平行する方向に突出する平行板部13とを備えている。
【0022】
前記固定板部11は、矩形板状に形成されており、上端部および下端部に、この固定板部11を前記下地材2の表面に固定する止着材11bを挿通させるための挿通孔11aが形成されている。
【0023】
前記引掛板部12は、前記固定板部11の一端から前方に突出するものであり、少なくとも後述する第2取付金具20の差入板部21が差入可能な寸法を確保できる程度に突出している。
【0024】
前記平行板部13は、前記引掛板部12の突端から前記固定板部11に平行する方向に突出するものであり、上端部に、後述する第1ネジ孔30が形成され、下端部に、後述するネジ挿通孔40が形成されている。
【0025】
そして、これら固定板部11、引掛板部12および平行板部13は、一体的に形成されるとともに、図2(a)に示すように、平断面視において略コ字状となるように形成されている。
【0026】
一方、前記第2取付金具20は、図3(a)〜(c)に示すように、前記第1取付金具10の固定板部11と平行板部13との間に、これら固定板部11および平行板部13と平行に差し入れられる差入板部21と、この差入板部21の上端部から前記第1取付金具10の引掛板部12の上端部を通過するように突出して設けられるとともに、前記板材3の裏面側に固定される引掛固定部22とを備えている。
【0027】
前記差入板部21は矩形板状に形成されており、この差入板部21には、この差入板部21を前記固定板部11と平行板部13との間に差し入れた際に、前記平行板部13に形成されたネジ挿通孔40と対向する位置に、後述する第2ネジ孔41が形成されている。
【0028】
前記引掛固定部22は、図3(c)に示すように、上板部22aと側板部22bとを備えることによって、正面視において逆L字状に形成されている。前記側板部22bには、前記被固定金具4の挿通孔4aに対応して挿通孔22cが形成されており、これら挿通孔4a,22cの双方に止着材4bが挿通されるようになっている。なお、この止着材4bの先端にはナット4cが設けられ、前記被固定金具4と前記側板部22bとを強固に連結できるようになっている。
また、前記上板部22aには、前記側板部22bとは反対の位置に前記差入板部21が設けられている。
【0029】
また、前記上板部22aおよび側板部22bとで形成される角部には、前記差入板部21に隣り合うようにして補助板部23が設けられている。
また、前記差入板部21と補助板部23との間には、図3(c)に示すように、隙間が形成されており、前記第2取付金具20が、前記第1取付金具10に引っ掛けられる際は、この隙間に、前記第1取付金具10の引掛板部12が位置することとなる。そして、前記引掛板部12の上端部に、前記隙間の上部に位置する上板部22aの下面が当接することとなる。
【0030】
また、本実施の形態の位置調整手段は、図1〜図6に示すように、前記平行板部13に形成される第1ネジ孔30と、この第1ネジ孔30に螺合するとともに、先端が、前記第2取付金具20の差入板部21の表面に当接する第1調整ネジ31とからなる第1調整手段と、前記平行板部13に形成されるネジ挿通孔40と、このネジ挿通孔40と対向して前記第2取付金具20の差入板部21に形成される第2ネジ孔41と、前記ネジ挿通孔40に挿通されるとともに、前記第2ネジ孔41に螺合する第2調整ネジ42とからなる第2調整手段とを備えている。
【0031】
前記第1調整ネジ31の外周面には、図4および図6に示すように、前記第1ネジ孔30に螺合する螺旋状のネジ山が形成されている。したがって、この第1調整ネジ31は、この第1調整ネジ31を締め付ける方向に回転させることによって、前記第1ネジ孔30に対して深くねじ込まれるようになっている。
【0032】
前記第2調整ネジ42は、図6に示すように、棒状の本体軸部42aと、この本体軸部42aの基端部に設けられる頭部42bとを備えている。
前記本体軸部42aの基端部側は円柱状に形成されており、この本体軸部42aの外周面の先端側には、前記第2ネジ孔41に螺合する螺旋状のネジ山が形成されている。したがって、この本体軸部42aの先端を、前記差入板部21の第2ネジ孔41に確実に螺合させることができる。また、この第2調整ネジ42は、この第2調整ネジ42を締め付ける方向に回転させることによって、前記第2ネジ孔41に対して深くねじ込まれるようになっている。
【0033】
また、前記本体軸部42aの基端部側は円柱状に形成されているので、この本体軸部42aの円柱状の基端部は、前記ネジ挿通孔40に対して、このネジ挿通孔40に螺合せず、このネジ挿通孔40に沿って前後方向に移動可能に遊挿されることとなる。したがって、前記円柱状の基端部が前記ネジ挿通孔40に沿って前後方向に移動できる範囲を、前記第1調整ネジ31の先端で、前記第2取付金具20の差入板部21を前記下地材2側に押して移動させる際の移動可能範囲とすることができる。
【0034】
なお、前記第1ネジ孔30および第2ネジ孔41の内周面には、それぞれ前記第1調整ネジ31および第2調整ネジ42の外周面に形成されたネジ山と螺合する螺旋状のネジ山が形成されている。この時、この内周面のネジ山は、前記第1ネジ孔30および第2ネジ孔41自体に形成されるものとしてもよいし、これら第1ネジ孔30および第2ネジ孔41に対応して設けられる溶接ナット30aおよび溶接ナット41aの内周面に形成されるものとしてもよい。前記溶接ナット30aは、前記平行板部13に設けられており、前記溶接ナット41aは、前記差入板部21に設けられている。
【0035】
また、前記ネジ挿通孔40と、このネジ挿通孔40に対応して前記平行板部13に設けられる溶接ナット40aは、双方の内周面にネジ山が形成されていない形態としてもよいし、これらネジ挿通孔40と溶接ナット40aのうち、少なくとも一方の内周面にネジ山が形成される形態としてもよい。
なお、この少なくとも一方の内周面にネジ山が形成される形態を採用する場合における前記第2調整ネジ42は、この第2調整ネジ42の本体軸部42aの先端のネジ山が、前記ネジ挿通孔40および溶接ナット40aの少なくとも一方の内周面に形成されたネジ山と螺合可能であるとともに、前記第2調整ネジ42の本体軸部42aの円柱状の基端部が、前記ネジ挿通孔40および溶接ナット40aに対して遊挿可能となるように構成されている。
【0036】
また、前記溶接ナット41aが設けれた差入板部21は、前記固定板部11から、前記平行板部13の溶接ナット30a,40aまでの間が前後方向に移動可能な移動範囲となっている。前記溶接ナット30a,40a,41aを用いない場合は、前記差入板部21の移動範囲をさらに広げることができる。
【0037】
次に、板材用取付金具1を用いて、垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付けてなる板材3の取付構造について説明する。
【0038】
ここで、本実施の形態の下地材2は、建物の壁を構成する壁パネルであり、この壁パネルは、複数の芯材が矩形枠状に組み立てられるとともに、この矩形枠の内部に補強芯材2aが縦横に組まれて枠体とされ、さらに、この枠体内にグラスウール等の断熱材が充填された状態で、前記枠体の表裏両面に合板等の面材2bが貼着されたものである。
なお、本実施の形態において、前記第1取付金具10の固定板部11は、前記補強芯材2aに固定されている。
【0039】
また、本実施の形態の板材3は、前記面材2bの表面を覆うように取り付けられる外装材である。しかし、これに限られるものではなく、これら下地材2および板材3の関係を、例えば外壁面に取り付けられる看板や、店舗等で使用される姿見、壁に沿って設置される絵画の額や本棚等、様々なものに適用することが可能であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0040】
前記下地材2には、図1に示すように、前記板材3に隣り合うようにして板材3が取り付けられており、これら隣り合う板材3,3間に目地部3aが形成されている。
また、前記下地材2である壁パネルには、前記板材3である外装材が取り付けられる面とは反対の面に、内装材2cが貼り付けられている。
【0041】
そして、前記第1取付金具10および第2取付金具20は、前記第1ネジ孔30と、ネジ挿通孔40および第2ネジ孔41とが、前記目地部3aの底部に位置するようにして、前記下地材2の表面および板材3の裏面側にそれぞれ固定されている。
【0042】
すなわち、前記被固定金具4は、前記板材3の両側端部に設けられており、この被固定金具4に連結される前記第2取付金具20は、この第2取付金具20の差入板部21に形成された前記第2ネジ孔41が前記目地部3aの底部に位置するようにして、前記板材3の裏面側に固定されている。つまり、この第2取付金具20の一部は、前記目地部3aから露出した状態となっている。
また、このように前記第2ネジ孔41が前記目地部3aの底部に位置しているので、この第2ネジ孔41に対向するネジ挿通孔40も、前記目地部3aの底部に位置することとなる。つまり、このネジ挿通孔40が形成された平行板部13を備える前記第1取付金具10の一部は、前記目地部3aから露出した状態となっている。
【0043】
そして、このように前記第1ネジ孔30と、ネジ挿通孔40および第2ネジ孔41とは、前記目地部3aの底部に位置しているので、この目地部3aから工具を挿入して、前記第1調整ネジ31および第2調整ネジ42を締め付ける作業や緩める作業を行うことができる。これによって、位置調整後に前記板材3を固定する際に固定しやすく、前記板材3を取り外す際に取り外しやすい。
【0044】
なお、前記板材3,3同士を隣り合わせて前記下地材2に取り付ける際は、これら板材3,3の隣り合う側端部に設けられた板材用取付金具1が、前記目地部3aの長さ方向に沿って交互に設けられることとなる。これによって、これら隣り合う板材3,3のを前記下地材2に取り付けるための板材用取付金具1が互いにぶつかり合わないので、これら隣り合う板材3,3間の目地部3aの幅寸法を狭めながら、これら板材3,3を、前記下地材2に対して確実に取り付けることができる。
【0045】
次に、板材用取付金具1を用いて、垂直に立設された下地材2に、この下地材2の表面を覆う板材3を取り付ける板材3の取付方法について説明する。
【0046】
まず、図4に示すように、前記下地材2の表面に、前記第1取付金具10の固定板部11を固定するとともに、前記板材3の裏面側に、前記第2取付金具20の引掛固定部22を固定する。
【0047】
そして、前記板材3を、前記第2取付金具20を、前記第1取付金具10に引っ掛けることによって、前記下地材2の表面に取り付ける。
前記第2取付金具20を前記第1取付金具10に引っ掛ける際は、図5に示すように、前記第2取付金具20の差入板部21を、前記第1取付金具10の固定板部11と平行板部13との間に、これら固定板部11および平行板部13と平行に差し入れるようにして引っ掛ける。
【0048】
続いて、図6(a)に示すように、前記第1調整ネジ31を、前記第1取付金具10の平行板部13の第1ネジ孔30に螺合させて、この第1調整ネジ31の先端を、前記第2取付金具20の差入板部21の表面に当接させる。
さらに、図6(b)に示すように、前記第2調整ネジ42を、前記平行板部13のネジ挿通孔40に挿通するとともに、前記差入板部21の第2ネジ孔41に螺合させる。
【0049】
なお、前記第1調整ネジ31および第2調整ネジ42を、予め前記第1ネジ孔30およびネジ挿通孔40に対して、それぞれ仮止めしておくようにしてもよい。
【0050】
その後、図6(a)の矢印で示すように、前記差入板部21を、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって前記下地材2側に後退させる。このように前記差入板部21を前記下地材2側に後退させることで、前記板材3を、前記下地材2側に後退させることができる。
【0051】
また、この差入板部21の後退を所定の位置で止めた後、図6(b)の矢印で示すように、この差入板部21に、前記第2調整ネジ42を締め付けることによって、この差入板部21を前方に引き寄せる力を加える。
そして、このように前記差入板部21を前方に引き寄せる力を加えることで、前記差入板部21を前後方向の相反する方向に移動させようとすることができるので、この差入板部21が前後方向に移動しないように固定することができる。
したがって、前記第1調整ネジ31を締め付けて前記板材3を後退させて位置調整が終わった後に、前記第2調整ネジ42を締め付けることによって、前記板材3の取付位置を確実かつ強固に固定することができるようになっている。
【0052】
一方、前記板材3を、前記下地材2側とは反対の方向に前進させる際は、前記第2取付金具20を前記第1取付金具10に引っ掛ける手順まで、上述の前記板材3を前記下地材2側に後退させる場合と同様の手順を踏む。
【0053】
続いて、前記第2調整ネジ42を、前記平行板部13のネジ挿通孔40に挿通するとともに、前記差入板部21の第2ネジ孔41に螺合させる。
さらに、前記第1調整ネジ31を、前記第1取付金具10の平行板部13の第1ネジ孔30に螺合させるとともに、この第1調整ネジ31の先端と、前記第2取付金具20の差入板部21の表面との間に所定の隙間を形成しておく。
【0054】
その後、図6(b)の矢印で示すように、前記差入板部21を、前記第2調整ネジ20を締め付けることによって前記下地材2側とは反対の方向に前進させる。このように前記差入板部21を、前記下地材2側とは反対の方向に前進させることで、前記板材3を、前記下地材2側とは反対の方向に前進させることができる。
なお、この時、前記第1調整ネジ31の先端と、前記第2取付金具20の差入板部21の表面との間に形成された所定の隙間は、前記差入板部21を前進させるための移動スペースとなる。
【0055】
また、この差入板部21の前進を所定の位置で止めた後、図6(a)の矢印で示すように、この差入板部21に、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって、この差入板部21を後方に押す力を加える。
そして、このように前記差入板部21を後方に押す力を加えることで、前記差入板部21を前後方向の相反する方向に移動させようとすることができるので、この差入板部21が前後方向に移動しないように固定することができる。
したがって、前記第2調整ネジ42を締め付けて前記板材3を前進させて位置調整が終わった後に、前記第1調整ネジ31を締め付けることによって、前記板材3の取付位置を確実かつ強固に固定することができるようになっている。
【0056】
本実施の形態によれば、前記第1調整ネジ31を、前記平行板部13に形成される第1ネジ孔30に螺合させてから締め付けることによって、この第1調整ネジ31の先端で、前記第2取付金具20の差入板部21を前記下地材2側に押すことができるので、前記第2取付金具20が裏面側に固定された前記板材3を、前記下地材2側に後退させることができる。
一方、前記第2調整ネジ42を、前記平行板部13に形成されるネジ挿通孔40に挿通するとともに、前記差入板部21に形成される第2ネジ孔41に螺合させてから締め付けることによって、前記第2取付金具20の差入板部21を、前記固定板部11側から前記平行板部13側へと引き寄せることができるので、前記第2取付金具20が裏面側に固定された前記板材3を、前記下地材2側とは反対の方向に前進させることができる。
これによって、前記差入板部21を前後方向に移動させて、この差入板部21の引掛位置を前後方向に調整することができるので、前記板材3を前後方向に位置調整することができる。
また、このように、前記第1調整ネジ31を締め付けるとともに、前記第2調整ネジ42を締め付けることによって、前記第2取付金具20の差入板部21を前後方向の相反する方向に移動させようとすることができるので、この差入板部21が前後方向に移動しないように固定することができる。
したがって、前記第1調整ネジ31および第2調整ネジ42の一方を締め付けて前記板材3を前進または後退させて位置調整が終わった後に、これら第1調整ネジ31および第2調整ネジ42の他方を締め付けることによって、前記板材3の取付位置を確実かつ強固に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態に係る板材の取付構造を示す平断面図である。
【図2】本発明の板材用取付金具の第1取付金具を示しており、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図3】本発明の板材用取付金具の第2取付金具を示しており、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は正面図である。
【図4】図2に示す第1取付金具を下地材に固定するとともに、図3に示す第2取付金具を板材に固定する状態を示す平断面図である。
【図5】第2取付金具を第1取付金具に引っ掛ける状態を示す平断面図である。
【図6】第1取付金具に対して第2取付金具が前後方向に移動する際の形態を示す平断面図であり、(a)は後退する際の形態であり、(b)は前進する際の形態である。
【符号の説明】
【0058】
1 板材用取付金具
2 下地材
3 板材
10 第1取付金具
11 固定板部
12 引掛板部
13 平行板部
20 第2取付金具
21 差入板部
22 引掛固定部
30 第1ネジ孔
31 第1調整ネジ
40 ネジ挿通孔
41 第2ネジ孔
42 第2調整ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直に立設された下地材に、この下地材の表面を覆う板材を取り付けるための板材用取付金具において、
前記下地材の表面に固定される第1取付金具と、この第1取付金具に引っ掛けられるとともに、前記板材の裏面側に固定される第2取付金具と、前記第1取付金具に対する第2取付金具の引掛位置を前後に調整する位置調整手段とからなり、
前記第1取付金具は、前記下地材の表面に固定される固定板部と、この固定板部の一端から前方に突出するとともに、前記第2取付金具が引っ掛けられる引掛板部と、この引掛板部の突端から前記固定板部に平行する方向に突出する平行板部とを備えており、
前記第2取付金具は、前記第1取付金具の固定板部と平行板部との間に、これら固定板部および平行板部と平行に差し入れられる差入板部と、この差入板部の上端部から前記第1取付金具の引掛板部の上端部を通過するように突出して設けられるとともに、前記板材の裏面側に固定される引掛固定部とを備えており、
前記位置調整手段は、前記平行板部に形成される第1ネジ孔と、この第1ネジ孔に螺合するとともに、先端が、前記第2取付金具の差入板部の表面に当接する第1調整ネジとからなる第1調整手段と、
前記平行板部に形成されるネジ挿通孔と、このネジ挿通孔と対向して前記第2取付金具の差入板部に形成される第2ネジ孔と、前記ネジ挿通孔に挿通されるとともに、前記第2ネジ孔に螺合する第2調整ネジとからなる第2調整手段とを備えていることを特徴とする板材用取付金具。
【請求項2】
請求項1に記載の板材用取付金具において、
前記第2調整ネジは、棒状の本体軸部と、この本体軸部の基端部に設けられる頭部とを備えており、
前記本体軸部の基端部側は円柱状に形成されており、この本体軸部の外周面の先端側には、前記第2ネジ孔に螺合する螺旋状のネジ山が形成されていることを特徴とする板材用取付金具。
【請求項3】
請求項1に記載の板材用取付金具を用いて、垂直に立設された下地材に、この下地材の表面を覆う板材を取り付けてなる板材の取付構造であって、
前記下地材に、前記板材に隣り合うようにして板材が取り付けられており、これら隣り合う板材間に目地部が形成されており、
前記第1取付金具および第2取付金具は、前記第1ネジ孔と、ネジ挿通孔および第2ネジ孔とが、前記目地部の底部に位置するようにして、前記下地材の表面および板材の裏面側にそれぞれ固定されていることを特徴とする板材の取付構造。
【請求項4】
請求項1に記載の板材用取付金具を用いて、垂直に立設された下地材に、この下地材の表面を覆う板材を取り付ける板材の取付方法であって、
前記下地材の表面に、前記第1取付金具の固定板部を固定し、前記板材の裏面側に、前記第2取付金具の引掛固定部を固定し、
前記板材を、前記第2取付金具を、前記第1取付金具に引っ掛けることによって、前記下地材の表面に取り付け、
前記第1調整ネジを、前記第1取付金具の平行板部の第1ネジ孔に螺合させて、この第1調整ネジの先端を、前記第2取付金具の差入板部の表面に当接させ、さらに、前記第2調整ネジを、前記平行板部のネジ挿通孔に挿通するとともに、前記差入板部の第2ネジ孔に螺合させ、
その後、前記差入板部を、前記第1調整ネジを締め付けることによって前記下地材側に後退させ、この差入板部の後退を所定の位置で止めた後、この差入板部に、前記第2調整ネジを締め付けることによって、この差入板部を前方に引き寄せる力を加えることを特徴とする板材の取付方法。
【請求項5】
請求項1に記載の板材用取付金具を用いて、垂直に立設された下地材に、この下地材の表面を覆う板材を取り付ける板材の取付方法であって、
前記下地材の表面に、前記第1取付金具の固定板部を固定し、前記板材の裏面側に、前記第2取付金具の引掛固定部を固定し、
前記板材を、前記第2取付金具を、前記第1取付金具に引っ掛けることによって、前記下地材の表面に取り付け、
前記第2調整ネジを、前記平行板部のネジ挿通孔に挿通するとともに、前記差入板部の第2ネジ孔に螺合させ、さらに、前記第1調整ネジを、前記第1取付金具の平行板部の第1ネジ孔に螺合させるとともに、この第1調整ネジの先端と、前記第2取付金具の差入板部の表面との間に所定の隙間を形成しておき、
その後、前記差入板部を、前記第2調整ネジを締め付けることによって前記下地材側とは反対の方向に前進させ、この差入板部の前進を所定の位置で止めた後、この差入板部に、前記第1調整ネジを締め付けることによって、この差入板部を後方に押す力を加えることを特徴とする板材の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−221710(P2009−221710A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65913(P2008−65913)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(307042385)ミサワホーム株式会社 (569)
【Fターム(参考)】