説明

板状ワーク供給装置

【課題】板状ワークを一枚づつ供給することができる板状ワーク供給装置を提供する。
【解決手段】板状ワークWを起立して搬送する搬送コンベア10と、前記搬送コンベア10で搬送された板状ワークWを回動して取り出す取り出し手段20と、板状ワークWを固定する固定手段30とからなる板状ワーク供給装置であって、前記取り出し手段20は、前記起立する板状ワークWの保持手段21と、前記板状ワークWの保持位置を決定するストップゲージ23と、前記保持手段21およびストップゲージ23が先端に配設され、かつ前記保持した板状ワークWを回動させる回動手段25とからなり、前記固定手段30は、前記位置決めされた板状ワークWに後続する次の板状ワークWを固定および開放する、板状ワーク供給装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整列して起立する板状ワークを一枚づつ次工程に移送する板状ワーク供給装置に関し、より詳細には、密着しやすい板状ワークや嵌合しやすい板状ワークを搬送コンベアに起立して供給し、一枚づつ取り出すことができる、板状ワーク供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回線用基板、メモリカードやリードフレームなどの板状ワークは気密に密着しやすく、分離が困難である。また、複数のサイドプレートを積層した後に一体ロウ付けしてなる熱交換器では、サイドプレートの端部にテーパーが形成されているため、部材が相互に嵌合する場合がある。このような分離性が低い板状ワークを供給するためのワーク供給装置では、二枚どりなどが生じ、生産効率低下の一因となっている。
【0003】
このような二枚どりを回避するものとして、積層されたワークを一枚づつ次工程に供給するワーク供給装置がある(特許文献1)。この装置は、マガジンからワークを取りだし次工程へ移動する吸引移送部と、マガジン外で上端開口部に近接した位置に設置されて、前記マガジン方向へと回転する回転体とからなるワーク供給装置であって、ワークを吸引移送部で前記回転体方向へ移送させ、前記回転体をワーク下方から供給対象ワークの下面より低く該ワークに直接密着した供給対象外ワークの下面より高い位置まで上昇させ、その後、ワークを上方に移動させ、更に回転体を、中央部がマガジン上端開口部と同位置まで上昇させるよう制御したことを特徴とする。板状ワークが積層されて収納されたマガジンの上方から、マガジンの最上部にあるワークをバキュームパットによって吸引し水平移動してワークを取り出し、次工程に供給するものである。
【0004】
一方、上記ワークを収納するために縦長のマガジンを使用すると、ワークの補充をマガジンの交換によって行う場合には、マガジンの入れ替えを行う際にワークの供給作業を停止する必要があり、稼働率が低下する場合がある。
【0005】
このような問題点を解決するものとして、搬送ベルトの外表面に該ベルトの長手方向に沿って等ピッチ間隔で仕切り棒を突設し、隣接する前記仕切り棒で板状ワークを挾持して搬送するコンベアと、水平移動可能に配設され、前記コンベアの終端部において90度旋回されたワークを受けるワーク受台と、前記ワーク受台をワーク供給位置まで移動させる受台移動手段とを備えることを特徴とする板状ワークの供給装置がある(特許文献2)。従来は、搬送ベルトの外表面に該ベルトの長手方向に沿って等ピッチ間隔で仕切り棒を突設したが、コンベア終端部まで搬送されてきたワークは前記仕切り棒の方向が変化する時点でコンベアから落下するため、その直前にコンベアを停止させたり、ついで、多関節ロボットや多軸ローダを使用して、そのワークをコンベアから取出す必要があったことに鑑みてなされたものである。上記によれば、高価な多関節ロボットや多軸ローダが必要ないという。
【0006】
また、カートンの組立装置であって、カートンを載せる平坦な載置面と、前記載置面上に起立した係止部材と、集積装置に集積された平板状の前記カートンの胴部を形成する板材のいずれか1つに吸引ヘッドで吸着して前記載置面上に搬送するカートンの取出手段とを備えるカートンの組立装置がある(特許文献3)。上記装置は、カートンの取出位置に集積装置を配設するものであり、カートンを取り出すカートンの取出手段と、この取出手段によって取り出したカートンを次工程に搬送するコンベアと、このコンベア上に設けられた係止部材とから構成されている。平板なカートンをコンベアに起立して載置し、取出位置に到達したカートンを支持部材で支持し、および取り出すべきカートン列に空気を吹きだしてカートンをばらけさせ、ついでカートンの上部から押圧爪及び押圧板を降下させて取りだすべきカートンの後方のカートンを押さえつけ、押圧爪を降下させてカートン間に差し込み、カートン間に差し込まれた押圧爪を前方へ移動して、カートンを前記支持部材に押圧し、これによって最先端に位置する取り出すべきカートンの位置決めを行い、吸引ヘッドを前記カートンに水平移動して吸着し、吸引ヘッドを上方へ移動してコンベアから取り出すというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−330334号
【特許文献2】特開平10−236644号
【特許文献3】特開平09−240623号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記したように、特許文献1記載の装置は、略直立するマガジンに集積したワークを上部から取り出すものであり、マガジンを使用しながらマガジンへワークを補充することができず、補充マガジンの入れ替え作業が必要となり、稼働率が低下しやすい。
【0009】
また、特許文献2記載の装置は、本来、自動車のフロントガラスを対象とするものであり、起立するワークを搬送するベルトコンベアと、前記コンベアの終端部において90度旋回されたワークを受けるワーク受台と、前記ワーク受台をワーク供給位置まで移動させる受台移動手段とを備えるものであり、装置が大型化する。
【0010】
更に、特許文献3記載の装置は、位置決めのためにカートン間に差し込まれた押圧爪を前方に移動してカートンを支持部材に押圧して位置決めし、ついで吸引ヘッドで吸引し、次いで上方に取り出すものであり、位置決めのために押圧爪を上方から下方に移動し、さらに左右に移動させ、次いで下方から上方に移動させる機構と、吸引ヘッドを上下に移動させる機構とが必要となり、装置が複雑となる。更に、特許文献3記載の装置は、カートンの位置決めを行ってから吸引ヘッドで吸引するため位置決め処理と吸引処理とが2段階になり、処理速度が遅い場合がある。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、相互に嵌合し、その他密着しやすい板状ワークを迅速に一枚づつ供給しうる板状ワーク供給装置を提供するものである。
また、マガジンの取替え時に処理を停止することなく、簡便に板状ワークを装置に供給することができる、板状ワーク供給装置を提供するものである。
【0012】
更に、簡便な機構で稼動しうる、コンパクトな板状ワーク供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、搬送コンベアに板状ワークを起立して載置すれば、容易にコンベア上に板状ワークを補充できるため、ワーク補充時にワーク供給作業を中断する必要がないこと、起立する板状ワークをたとえば垂直方向から90°回動することでを水平方向に載置しうること、この回動に先立ち板状ワークを吸引などで保持し、保持の際に板状ワークの位置決めを行うと、後続の板状ワークの位置も同時に決定できること、このようにして決定された位置で後続の板状ワークを固定すれば、先頭の板状ワークのみを吸引し、一枚づつワークを次工程に供給しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0014】
すなわち本発明は、板状ワークを起立して搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアで搬送された板状ワークを回動して取り出す取り出し手段と、板状ワークを固定する固定手段とからなる板状ワーク供給装置であって、前記取り出し手段は、前記起立する板状ワークの保持手段と、前記板状ワークの保持位置を決定するストップゲージと、前記保持手段およびストップゲージが先端に配設され、かつ前記保持した板状ワークを回動させる回動手段とからなり、前記固定手段は、前記位置決めされた板状ワークに後続する次の板状ワークを固定および開放するものである、板状ワーク供給装置を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、前記取出手段は、前記搬送コンベアで搬送された板状ワークを略垂直方向から水平方向に回動するものである、上記板状ワーク供給装置を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、前記保持手段は、板状ワークを吸引する吸引ヘッドからなることを特徴とする、上記板状ワーク供給装置を提供するものである。
また本発明は、前記搬送コンベアは、前記板状ワークの取出側から板状ワークの補充側に向かって水平から0を超え35°以下の範囲で傾斜することを特徴とする、上記板状ワーク供給装置を提供するものである。
【0017】
また本発明は、前記固定部を開放する工程と、前記板状ワークを保持した前記回動手段が回動して搬送コンベアから前記板状ワークを取り出す工程と、かつ前記搬送コンベアが板状ワークを1枚分搬送する工程とが同期するように制御されていることを特徴とする、上記板状ワーク供給装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、搬送コンベアと取出手段とからなり、前記取出手段は、回動手段の先端に板状ワークの保持手段とストップゲージとを配設したものであり、簡便な機構で装置を構成することができ、かつ2枚どりすることなく1枚づつ板状ワークを取出すことができる。
【0019】
本発明によれば、搬送コンベアに起立して板状ワークを載置するため、搬送コンベアに簡便に板状ワークを載置することができ、縦型マガジンを使用する場合よりも補充作業が容易である。
【0020】
縦型マガジンでは、収納する板状ワークの重量によって下部の板状ワークが変形する場合があるが、本発明では搬送コンベアに板状ワークを起立して載置できるため、上記変形を回避することができる。
【0021】
本発明によれば、処理を中断する必要がなく板状ワークを補充することができるため、縦型マガジンを使用する場合に生じるマガジン切替のための作業停止を回避することができ、効率的な板状ワークの供給を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の板状ワーク供給装置の好適な一例の態様を示す側面図である。
【図2】本発明の板状ワーク供給装置を構成する取出手段の部分側面図である。図2(A)は、アーム(25a)の先端に取り付けパッド(27)が固設され、前記取り付けパッド(27)に保持手段(21)とストップゲージ(23)とが配設される態様を、図2(B)は、保持手段(21)とストップゲージ(23)との高さを説明する図である。
【図3】本発明の板状ワーク供給装置を構成する取出手段の部分正面図である。
【図4】図1の部分拡大図であり、回動手段(25)の回動機構を説明する図であり、アーム(25a)が略垂直に起立する状態を示す図である。
【図5】図1の部分拡大図であり、回動手段(25)の回動機構を説明する図であり、アーム(25a)が略水平方向にある状態を示す図である。
【図6】本発明の板状ワーク供給装置の略正面図であり、取出手段(20)と固定手段(30)近傍を説明する図である。
【図7】本発明の板状ワーク供給装置を構成する取出手段の部分側面図であり、起立する板状ワーク(W1)とストップゲージ(23)との間に、板状ワーク(W)1枚分の間隙(T)を形成して板状ワーク(W1)が固定手段によって固定される状態を説明する図である。
【図8】本発明の板状ワーク供給装置を構成する取出手段の部分側面図であり、図7の状態についで、吸引パッドからなる吸引手段(21)によって起立する板状ワーク(W1)が吸引により保持されかつストップゲージ(23)の位置で吸引が停止して保持される状態を説明する図である。
【図9】本発明の板状ワーク供給装置を構成する取出手段の部分側面図であり、図8の状態についで、吸引パッドからなる吸引手段(21)によって起立する板状ワーク(W1)が吸引により保持され、板状ワーク(W1)に後続する板状ワーク(W2)の位置が定まり、固定手段(30)によって固定される状態を説明する図である。
【図10】本発明の板状ワーク供給装置の好適な一例の態様を示す正面図であり、取出手段(20)の取り付けパッド(27)の受け台(40)が配設される態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、板状ワークを起立して搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアで搬送された板状ワークを回動して取り出す取り出し手段と、板状ワークを固定する固定手段とからなる板状ワーク供給装置であって、前記取り出し手段は、前記起立する板状ワークの保持手段と、前記板状ワークの保持位置を決定するストップゲージと、前記保持手段およびストップゲージが先端に配設され、かつ前記保持した板状ワークを回動させる回動手段とからなり、前記固定手段は、前記位置決めされた板状ワークに後続する次の板状ワークを固定および開放するものである、板状ワーク供給装置である。前記取出手段は、前記搬送コンベアで搬送された板状ワークを略垂直方向から水平方向に回動するものであってもよい。板状ワークの回動方向に限定はなく、搬送ベルトの上に略垂直に起立する板状ワークを約90°回動し、板状ワークを略水平方向に移動させるものであってもよく、搬送ベルトの上に略垂直に起立する板状ワークを略垂直のまま左右に旋回して移動させるものであってもよい。本願では、便宜のため、搬送ベルトの上に略垂直に起立する板状ワークを約90°回動し、板状ワークを略水平方向に移動させるものもので説明する。以下、図面を使用して本発明を説明する。
【0024】
図1は、本発明の板状ワーク供給装置の側面図である。前記搬送コンベア(10)は、搬送ベルト(11)と駆動装置(13)とからなり、前記搬送ベルト(11)の上に起立して載置された板状ワーク(W)は、前記駆動装置(13)によって取出手段(20)側に搬送される。
【0025】
搬送コンベア(10)の先端にある取出手段(20)は、前記起立する板状ワークの保持手段(30)と、前記板状ワーク(W)の保持位置を決定するストップゲージ(23)と、前記保持手段(21)およびストップゲージ(23)が先端に配設され、かつ前記保持した板状ワーク(W)を回動させる回動手段(25)とからなる。アーム(25a)の先端に搬送された板状ワーク(W)を保持する保持手段(21)と前記保持された板状ワーク(W)の保持位置を決定するストップゲージ(23)とが配設され、かつ前記アーム(25a)は、伸縮ロッド(25b)と摺動可能に連設されて回動手段(25)を構成している。前記保持手段(21)およびストップゲージ(23)は、前記伸縮ロッド(25b)の伸縮に伴い略垂直方向から水平方向への約90°の回動を行うことができる。前記アーム(25a)の先端に配設される保持手段(21)によって板状ワーク(W)を引き寄せつつストップゲージ(23)で保持し、前記回動手段(25)によって、保持された板状ワーク(W)を略垂直方向から水平方向に回動し、および搬送する。
【0026】
(1)搬送コンベア
本発明で使用する搬送コンベア(10)は、板状ワーク(W)を起立状態で載置することができる搬送ベルト(11)と、前記搬送ベルト(11)を駆動する駆動機構(13)とからなる。複数の板状ワーク(W)は、仕切などを使用せずに密着した状態で載置することができる。搬送コンベア(10)には、図1に示すように、搬送ベルト(11)に載置した板状ワーク(W)の落下を防止するサイドガイド(15)を更に配設するものであってもよい。
【0027】
前記搬送ベルト(11)の材質やサイズは、載置する板状ワーク(W)が安定して起立しうるものを適宜選択することができる。搬送コンベア(10)の搬送先端部を板状ワーク(W)の取出側(図面、向かって左側)とし、他の端部を補充側(図面、向かって右側)とすれば、補充側に新たに板状ワーク(W)を起立して補充できるため、ワーク供給作業を中断させることがない。
【0028】
本発明では、搬送コンベア(10)の駆動機構(13)は、後記する固定手段(30)による固定及び開放作業、取出手段(20)による板状ワーク(W)の保持および回動作業と同期して板状ワーク(W)を1枚づつ搬送するように制御されている。このような他の機構との同期制御は公知である。
【0029】
また、図1に示すように、搬送ベルト(11)を、前記板状ワークの取出側から補充側に向かって水平方向に対して0を超え35°、より好ましくは10〜25°の角度(θ)で傾斜を形成するものであってもよい。このような傾斜角(θ)によって、起立状態にある板状ワーク(W)が搬送コンベア(10)の補充側に倒れるのを回避することができる。図1では、搬送コンベア(10)の駆動機構(13)が配設される駆動スプロケットと従動スプロケットとの直径を略同一にし、搬送コンベア(10)の全体を傾斜させる態様を示したが、例えば従動スプロケットの直径を駆動スプロケットのそれより大きくすることで搬送ベルト(11)に上記傾斜角(θ)を形成させるものであってもよい。
【0030】
なお、本発明では、搬送ベルト(11)に上記傾斜角(θ)を設けた場合には、搬送ベルト(11)に対して板状ワーク(W)を垂直に起立させても水平に対して垂直にならないため、このような状態を含めて「略垂直」と称する。「略水平」も同義である。

(2)取出手段
本発明で使用する取出手段(20)は、前記搬送コンベア(10)で搬送された板状ワーク(W)を起立した状態で保持し、これを水平方向に回動させて取り出す手段である。本発明で使用する取出手段(20)は、板状ワーク(W)の保持手段(21)と、前記板状ワーク(W)の保持位置を決定するストップゲージ(23)と、前記保持手段およびストップゲージが先端に配設され、かつ前記保持した板状ワークを水平方向に回動させる回動手段(25)とからなる。なお、図1では、回動手段(25)として、アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)とからなるものを示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0031】
図2に本発明で使用しうる取出手段の部分側面図を、図3に部分正面図を例示する。なお、図1〜図3では、保持手段(21)として吸引ヘッドを使用し、回動手段(25)として、アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)とからなるものを示す。
【0032】
本発明で使用する取出手段(20)は、例えば、図2(A)に示すように、アーム(25a)の先端に取り付けパッド(27)が固設され、前記取り付けパッド(27)に保持手段(21)とストップゲージ(23)とが配設される。図2では、ベローズタイプの吸引ヘッドを示し、前記吸引ヘッドは、図示しない真空ポンプによって吸引される。なお、陰圧の程度は、板状ワークの重量その他によって適宜選択することができる。
【0033】
図2(B)に示すように、保持手段(21)の先端は、ストップゲージ(23)の先端より突出している。前記保持手段(21)を構成する吸引ヘッドで板状ワーク(W)を吸引すると、ベローズが収縮して前記ストップゲージ(23)の先端まで板状ワーク(W)を吸引し、これにより吸引による保持位置が決定される。ストップゲージ(23)の高さ(h1)は特に限定されず、好ましくは取り付けパッド(27)の表面から突出すること10〜50mmである。吸引ヘッドと突出高さ(h2)は特に限定はないが、前記ストップゲージ(23)よりも1〜20mm突出するように構成されることが好ましい。
【0034】
保持手段(21)やストップゲージ(23)の数も特に限定はないが、板状ワーク(W)を起立した状態で安定に保持するため、それぞれ3〜10個、より好ましくは4〜6個が配設されることが好ましい。この際、図3に示すように、左右または上下対象に配置されると、板状ワーク(W)の傾きを回避することができる。なお、取り付けパッド(27)のサイズは、板状ワーク(W)の形状にあわせて適宜選択することができる。
【0035】
回動手段(25)は、アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)とからなり、前記図1に示すように、前記アーム(25a)は、搬送コンベア(10)に固設される伸縮ロッド(25b)と摺動可能に連設される。前記アーム(25a)には、伸縮ロッド(25b)との連設部の近傍に突出片(25c)が固設され、前記突出片(25c)は、搬送コンベア(10)に配設された枢軸(19)に枢設される。なお、前記図1に示すように、アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)との連設部の位置をPとすれば、伸縮ロッド(25b)を伸縮すると、前記枢軸(19)を基点として前記P位置がP1やP2に変更することができる。
【0036】
例えば、アーム(25a)が略垂直状態にある場合の前記P位置をP1とし、アーム(25a)が略水平方向にある場合の前記P位置をP2とすれば、前記伸縮ロッド(25b)をP1からP2の位置まで伸縮させると、前記アーム(25a)が前記突出片(25c)を介して前記枢軸(19)を回転軸として水平方向に約90度回転し、板状ワーク(W)を搬送コンベア(10)から取り出すことができる。なお、前記P1では、搬送コンベア(10)の上で起立する板状ワーク(W)がストップゲージ(23)の位置で保持された状態であり、P2とは、前記板状ワーク(W)が搬送コンベア(10)から水平方向に約90度回転した状態となる。図4に前記P位置が図1に示すP1である場合の部分側面図を、図5に、前記P位置が図1に示すP2である場合の部分側面図を示す。
【0037】
このように、アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)との連設部の位置(P)は、P1からP2に伸縮して略垂直に起立する板状ワーク(W)を水平方向に回動させ、位置(P)をP2からP1に伸張することで、水平方向にあるアーム(25a)を略垂直方向に起立させることができ、この動作を板状ワーク(W)の取出し毎に繰り返すことができる。
【0038】
(3)固定手段
本発明で使用する板状ワーク(W)の固定手段は、前記取出手段(20)の保持手段(21)によって保持された板状ワーク(W1)に後続する次の板状ワーク(W2)を固定および開放するものである。このような機能を有するものであれば、いずれに配設されるものであってもよい。具体的には、一対の把持部(31)と前記把持部(31)を開閉する開閉制御部(33)とからなるものを例示することができる。前記図1では、搬送コンベア(10)に開閉制御部(33)が固設され、かつ起立する板状ワーク(W)を固定および開放しうるように、把持部(31)が前記開閉制御部(33)に開閉可能に連設されている。
【0039】
更に、固定手段は、取出手段(20)によって板状ワーク(W1)を保持および回動する際に、後続する次の板状ワーク(W2)を固定することで搬送ベルト(11)に後続する板状ワーク(Wn)を起立状態に保持する機能も有する。このため、固定手段(30)による固定力は、搬送ベルト(11)の傾斜角(θ)にも依存するが、後続する板状ワーク(Wn)の重量に対抗しうる把持力を必要とする。
【0040】
図6に、アーム(25a)が略垂直状態にある場合の本発明の板状ワーク供給装置に配設された固定手段(30)および取出手段(20)の正面略図を示す。搬送ベルト(11)の上部に保持手段(21)とストップゲージ(23)が固設された取り付けパッド(27)が配設され、前記取り付けパッド(27)にアーム(25a)が固設され、前記アーム(25a)は伸縮ロッド(25b)に延設されている。また、取り付けパッド(27)の双方に固定手段を構成する把持部(31)が配設されている。なお、前記把持部(31)は図示しない開閉制御機構によって固定および開放が繰り返される。
【0041】
なお、本発明では、固定手段(30)による板状ワーク(W)の把持による固定と開放とは、板状ワーク(W)の取出しの一枚毎に繰り返して行われる。
(4)操作方法
上記構成の板状ワーク供給装置を使用して、本発明では、板状ワーク(W)を2枚どりすることなく搬送コンベア(10)から取り出すことができる。
【0042】
まず、搬送コンベア(10)に板状ワーク(W)を起立状態で載置し、搬送コンベア(10)の駆動機構(13)を稼動させる。これにより、板状ワーク(W)が取出手段側に移行する。本発明では、搬送コンベア(10)に載置され先頭に起立した状態で載置された板状ワーク(W)から順次、取出手段(20)によって取出される。板状ワーク(W)は以下の手順で一枚づつ取出される。
【0043】
先頭の板状ワーク(W1)を取出す際、取出手段(20)を構成する前記アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)との連設部の位置(P)は図1に示すP1にあり、図4に示すように、前記アーム(25a)は、略直立する状態で待機している。この際、図7の部分側面図に示すように、前記先頭の板状ワーク(W1)とストップゲージ(23)との間には、板状ワーク(W)の厚さ(T)約1枚分の間隙が形成されている。吸引パッドからなる保持手段(21)は作動していない。また、固定手段の把持部(31)によって先頭の板状ワーク(W1)が固定されている。なお、前記図2(b)に示すように、保持手段(21)を構成する吸引パッドの先端は、ストップゲージ(23)より突出しているため、吸引パッドは板状ワーク(W1)と接触していてもよい。
【0044】
前記固定手段の把持部(31)を開放すると、搬送コンベア(10)が板状ワーク(W)1枚分の送りを行い、同時に、吸引パッドからなる保持手段(21)によって先頭の板状ワーク(W1)を前記取り付けパッド(27)側に引き寄せる。取り付けパッド(27)には、ストップゲージ(23)が配設されているため、図8に示すように、前記吸引による保持位置はストップゲージ(23)の先端部に決定される。吸引パッドによる引き寄せ距離は、前記間隙(T)と同じ距離である。ストップゲージ(23)により搬送ベルト(11)の先頭に起立する板状ワーク(W1)の保持位置が決定されると、後続の板状ワーク(W2、W3、・・・Wn)の位置も決定される。なお、搬送コンベア(10)は、固定手段である把持部(31)の開放の後に板状ワーク(W)一枚分の送りを行った後は、搬送を停止している。本発明では、取り付けパッド(27)にストップゲージ(23)を配設することで吸引による保持と同時に板状ワーク(W1)の吸引位置を決定でき、かつ板状ワーク(W1)の位置決めと同時に板状ワーク(W1)に後続する板状ワーク(W2)以降の位置決めを行うことができるため、位置決め工程を1段階で簡便に処理することができる点に特徴がある。
【0045】
ついで、前記開放された把持部(31)が前記開閉機構(33)によって閉鎖し、板状ワーク(W1)に隣接して後続する板状ワーク(W2)の側部を固定する。この態様を図9に示す。搬送コンベア(10)が停止しているため、板状ワーク(W2)を安定して固定することができる。なお、2番目の板状ワーク(W2)が固定手段(30)により固定されたため、前記保持手段(21)は、2枚取りすることなく、先頭の板状ワーク(W1)のみを保持することができる。本発明では、ストップゲージ(23)の配設によって板状ワーク(W1)およびこれに後続する板状ワーク(W2)以降の位置決めを行うことができ、かつ固定手段(30)によって左右から把持するだけで容易に板状ワーク(W2)を固定でき、極めて簡便な機構で位置決めおよび固定を行うことができる点に特徴がある。
【0046】
ついで、回動手段(25)を駆動させる。すなわち、吸引パッドからなる保持手段(21)が板状ワーク(W1)を吸引したまま、前記伸縮ロッド(25b)を伸縮させ、前記アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)との連設部の位置(P)をP1からP2に変化させる。これにより、図5に示すように、前記アーム(25a)が垂直方向から水平方向に約90°回動し、前記起立する板状ワーク(W1)を略水平方向に移動することができる。
【0047】
この状態で前記吸引パッドの吸引を停止することと、容易に取り付けパッド(27)から板状ワーク(W)を回収することができる。
ついで、略水平方向に回動したアーム(25b)を、伸縮ロッド(25b)を前記P2からP1に移動移動させることで略垂直方向に戻すことができる(図4参照)。
【0048】
ついで、上記と同様に繰り返すことで、後続する板状ワーク(W2)を1枚づつ、取出すことができる。
本発明の搬送コンベアの稼動と取出手段の作動、および図面との関係を表1に示す。前記したように、搬送コンベアによる搬送および停止、固定手段による固定および開放、吸引手段による吸引および停止、回動手段による伸縮ロッドの伸張および伸縮は、表1に示すように同期して制御される。具体的には、搬送コンベア(10)をワンウェイクラッチで構成し、板状ワーク(W)を搬送および停止して一枚づつ間欠的に搬送させ、前記搬送および停止作業と連動して固定手段を開閉および固定させる。また、前記搬送コンベアの搬送と同期させて保持手段の例えば、吸引と停止とを同期させ、同様に回動手段による伸縮ロッドの伸縮及び伸張動作を同期させる。
【0049】
【表1】

本発明では、取出手段(25)の取り付けパッド(27)から板状ワーク(W)を取出す方法や装置に限定はないが、例えば、前記取り付けパッド(27)の受け台が形成されると至便である。図10に、このような取り付けパッド(27)の受け台(40)が配設された装置の平面図を示す。前記受け台(40)には、アーム(25a)が回動しうるように切れ込み(41)が形成されている。前記アーム(25a)と伸縮ロッド(25b)との連設部の位置(P)がP2にある場合には、アーム(25a)が水平方向に延びるが、このアーム(25a)の回動は、前記切りこみ(41)によって停止されることがない。取り付けパッド(27)が前記受け台(40)に載置された場合、例えば、他の吸引パッドで吸引して回収することができる。
【0050】
なお、前記したように、本発明における取出手段は、搬送コンベアで搬送された略垂直に起立する板状ワークを水平方向に回動する場合に限定されず、略垂直に起立する板状ワークを左右に旋回する場合であってもよい。例えば、前記アーム(25a)を前記伸縮ロッド(25b)によって左右に旋回しうるように配設することで、略垂直した板状ワーク(W)を旋回させて次工程に供給することができる。このように左右に旋回された板状ワーク(W)は、略垂直したまま、別個の吸引パッドなどで吸引し回収することができる。
【0051】
(5)板状ワーク
本発明の装置によって、2枚どりすることなく1枚づつ取出すことができる板状ワークは、プリント回線用基板、メモリカードやリードフレーム、複数のサイドプレートを積層した後に一体ロウ付けしてなる熱交換器を構成するサイドプレートなどを例示することができる。特に、鏡面であるため相互に密着して分離が困難なディスク状物や、端部にテーパが形成されて嵌合しやすい物品などの2枚どりが発生しやすい板状ワークに好適である。部材には特に限定はなく、金属、プラスチック、陶器、ガラスその他に広く適用することができる。また、このような部材に対応して、保持手段を適宜選択することができる。
【0052】
なお、板状ワークが、熱交換器用のサイドプレートなど、その裏表の形状が同一でない場合、上下や左右が同一でなく、その後の処理において板状ワークの方向性が問題となる場合には、本発明の板状ワーク供給装置において、板状ワークの方向調整機構を配設してもよい。例えば、前記搬送コンベア(10)に起立して載置する板状ワーク(W)の上下を監視するセンサーを所定位置に配設し、上下が異なる場合には板状ワークを90°回転される把持および回転機構を設置することができる。このような装置は、公知である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、分離しづらい板状物を2枚どりすることなく1枚づつ取出すことができ、操作を停止することなく板状物を補充できるため、取り出し効率に優れ、有用である。
【符号の説明】
【0054】
10・・・搬送コンベア、
11・・・搬送ベルト、
13・・・駆動装置、
15・・・搬送ガイド、
20・・・取出手段、
21・・・保持手段、
23・・・ストップゲージ、
25・・・回動手段、
27・・・取り付けパッド、
30・・・固定手段、
31・・・把持部、
33・・・開閉制御部、
40・・・受け台、
41・・・切り込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状ワークを起立して搬送する搬送コンベアと、前記搬送コンベアで搬送された板状ワークを回動して取り出す取り出し手段と、板状ワークを固定する固定手段とからなる板状ワーク供給装置であって、
前記取り出し手段は、
前記起立する板状ワークの保持手段と、
前記板状ワークの保持位置を決定するストップゲージと、
前記保持手段およびストップゲージが先端に配設され、かつ前記保持した板状ワークを回動させる回動手段とからなり、
前記固定手段は、前記位置決めされた板状ワークに後続する次の板状ワークを固定および開放するものである、板状ワーク供給装置。
【請求項2】
前記取出手段は、前記搬送コンベアで搬送された板状ワークを略垂直方向から水平方向に回動するものである、請求項1記載の板状ワーク供給装置。
【請求項3】
前記保持手段は、板状ワークを吸引する吸引ヘッドからなることを特徴とする、請求項1または2記載の板状ワーク供給装置。
【請求項4】
前記搬送コンベアは、前記板状ワークの取出側から板状ワークの補充側に向かって水平から0を超え35°以下の範囲で傾斜することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の板状ワーク供給装置。
【請求項5】
前記固定部を開放する工程と、前記板状ワークを保持した前記回動手段が回動して搬送コンベアから前記板状ワークを取り出す工程と、かつ前記搬送コンベアが板状ワークを1枚分搬送する工程とが同期するように制御されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の板状ワーク供給装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate