説明

板状材料

【課題】プラスターボード、珪酸カルシウム板、及び合板等の木質材料を壁材に用いたときに生じる問題点を解消し、強度面や不燃性等に優れた板状材料を提供する
【解決手段】住宅等の壁材に用いられる板状材料10であって、木質板1の表裏面それぞれにバーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板2,2を貼着し、前記表裏面全体を前記珪酸カルシウム板2,2で被覆する。木質板1として、合板、ストランドボード、MDFとストランドボードの一体型板状体を用いることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅等の壁材に用いられる板状材料に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築における内装壁材等の板状材料としては、以前は、合板や漆喰等が多く使用されていたが、近年では、工業的に大量生産が可能なプラスターボードが多く使用されている。プラスターボードは安価で不燃性もあり、表面平滑性も良好なので壁の下地材として好都合である。
又、不燃建材として珪酸カルシウム板もある。これはプラスターボードに比較して強度面で優れている上に、廃棄時には管理型処分場を必要としない特徴がある。
一方、外装壁下地としては構造用合板を使用する事が一般化している。構造用合板は釘や木ネジの保持力に優れていて、強度も抜群である。特に地震や風水害の多発する我が国の住宅では比較的容易に壁の強度を向上できるので、木造住宅には欠かせない存在となりつつある。又、合板用の木材資源の枯渇が問題となっているので、ストランドボードの1種であるOSB等の木質材料や一部では窯業系建材を使用する場合もある。
【0003】
なお、珪酸カルシウム板の中でも、特にバーミキュライトを混入したものが、湿度調整や消臭効果、ホルムアルデヒドの吸収作用等の点で優れている(例えば、特許文献1参照)。
また、壁材以外の建築材料として、合板と珪酸カルシウム板を複合させた屋根下地材についての発明が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−146718号公報
【特許文献2】特開2000−34809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の壁材として多用されているプラスターボード、珪酸カルシウム板、及び合板等の木質材料は、それぞれ次に示すような欠点を有していた。
【0005】
(1)プラスターボード及び珪酸カルシウム板
<強度>
プラスターボードの主成分である石膏は基本的に脆く、すぐに砕けてしまいやすい。運搬中少しでも乱暴な扱いを行ったり、角部分が軽く接触しただけでも砕けてしまうので、運搬及び施工には細心の注意が必要である。
珪酸カルシウム板はこの点、かなり改善されているが、合板に比較すれば依然として劣っていて、取り扱いには注意が必要である。
<木ネジや釘の保持力>
プラスターボードに木ネジや釘等は打ち込む事はできても抜けやすく、地震対策としての家具類固定金具や手すりの取り付けに際しては、壁材の裏面に柱がある場所に限定される。額や時計といった比較的軽量な小物の固定も、特殊なボード用釘を必要とする。
珪酸カルシウム板はこの点、かなり改善されているが、合板に比較すれば依然として劣っていて、実用的には概ね12ミリ以上の厚さが必要である。
<装飾性>
プラスターボードの表裏面は紙を使用しているが、化粧性に乏しく、居室ではビニルクロス等の仕上げ材が必須である。ところが、ビニルクロスは、耐久性が低く、塩化ビニールを主成分とするプラスチック材料であり、火災時には有毒ガスの発生の恐れがある。また、汚染や破損した場合、部分補修が困難で張り替えざるを得ない場合が多い。
尚、珪酸カルシウム板はそのままでも使用可能で、しかも多少の汚染や損傷はサンドペーパーにて研削すれば除去が可能である。
<廃棄時の対応>
プラスターボードは紙と一体化されていて分離は困難であり、雨水が掛かると有害なガスを発生し、廃水は汚染されるので、これらが理された管理型処分場が必要である。従って、資源としての再利用は極めて困難である。
<ホルムアルデヒド発散>
プラスターボード自体からはホルムアルデヒドの発散は無いが、上に貼着されるビニルクロスの施工に際して使用される接着剤からはホルムアルデヒド発散の恐れがある。又、プラスターボードにはホルムアルデヒド吸収能力は無い。
<不燃性>
プラスターボードは製法上、表裏面に紙を使用しているのでここは燃えるが本体は不燃性である。従って不燃材料に分類される。しかし、強度が低いので火災時に外力が加わった場合、破損してしまう恐れがある。
【0006】
(2)合板等の木質材料
<装飾性>
合板等の木質材料に関しては、化粧単板を貼着すれば装飾性が良好とはなる。しかし、補修は困難である。ビニルクロスを貼着した場合は耐久性が低く、塩化ビニールを主成分とするプラスチック材料であり、火災時には有毒ガスの発生の恐れがある。又、汚染や破損した場合、部分補修が困難で張り替えざるを得ない場合が多い。
<ホルムアルデヒド発散>
合板等の木質材料は接着剤の種類によってはホルムアルデヒドの発生がある。又、単板として使用されている木材の樹種によっては木材自体からのホルムアルデヒド発生が見られる例もある。ホルムアルデヒド発生量の少ない接着剤を用いることが一般化しているが、高価で接着力もやや劣る問題がある。
<不燃性>
合板等の木質材料は木材を原料として使用しているので、可燃性である。実際の火災では燃焼が進行するに従って、炭化層が形成され、これが断熱層となって燃焼速度が低下することが実証されているが、6〜9ミリ程度の薄い合板では、断熱層として役立つ炭化層が形成される以前に焼け落ちて崩壊する可能性が高い。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、プラスターボード、珪酸カルシウム板、及び合板等の木質材料を壁材に用いたときに生じる問題点を解消し、強度面や不燃性等に優れた板状材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、請求項1に係る発明の板状材料は、住宅等の壁材に用いられる板状材料(10)であって、木質板(1)の表裏面それぞれにバーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板(2,2)を貼着し、前記表裏面全体を前記珪酸カルシウム板(2,2)で被覆したことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明の板状材料は、住宅等の壁材に用いられる板状材料(20)であって、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板(2)の表裏面それぞれに木質板(1,1)を貼着し、前記表裏面全体を前記木質板(1,1)で被覆したことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記木質板(1)は、合板(3)であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記木質板(1)は、ストランドボード(4)であることを特徴とする。
ストランドボードは、長方形状の薄い削片(ストランド)を積層し接着して形成された板材である。特に、削片(ストランド)の繊維方向を板材の表裏層と中心層で直交するように配列したOSB(オリエンテッド・ストランド・ボード)を用いることが好ましい。
【0012】
また、請求項5に係る発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記木質板(1)は、MDF(中密度繊維板)とストランドボードの一体型板状体(5)であることを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の記号は、発明を実施するための最良の形態および図面に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
請求項1又は請求項2に記載の発明によれば、木質板の表裏面それぞれに珪酸カルシウム板を貼着し、又は珪酸カルシウム板の表裏面それぞれに木質板を貼着するので、強度の劣る珪酸カルシウム板と、強度の優れた木質板を貼り合わせることにより、壁材として充分な強度を有する板状材料を得る事ができる。
また、珪酸カルシウム板よりも木質板の方が軽いので、同じ厚さの珪酸カルシウム板と比べて、木質板と貼り合わせた方が重量を減少させることができる。
また、珪酸カルシウム板だけでは木ねじや釘の保持力が弱いが、木質板を貼着することにより木ネジや釘の保持力を確保することができる。
また、珪酸カルシウム板も木質板も廃棄処分時には特に管理型処分場は不要であり、長期間かければ分解させて土に返すことができる。
また、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を用いるので、ホルムアルデヒドを吸収分解することができる。
【0015】
また、請求項1に記載の発明によれば、木質板の表裏面全体が珪酸カルシウム板で覆われているので、不燃性に優れる。また装飾を必要とする場所に用いれば、珪酸カルシウム板が外側の面となり、多少の汚染や損傷はサンドペーパーにて研削して除去することができる。
【0016】
また、請求項2に記載の発明によれば、珪酸カルシウム板の表裏面全体が木質板で覆われているので、視覚・触感に優しい。また、表裏の両側が木質板であり、強度面に優れる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、木質板として合板を用いるので、特に強度面で優れた板状材料を得ることができる。
【0018】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、木質板としてストランドボードを用いるので、壁材として充分な強度を確保しつつ木材資源を有効に活用することができる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明によれば、請求項1又は請求項2に記載の発明の作用効果に加えて、木質板としてMDFとストランドボードの一体型板状体を用いるので、壁材として充分な強度を確保しつつ木材資源を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に図1を参照して、本発明の実施形態に係る板状材料について説明する。図1は本実施形態に係る板状材料10を示す断面図である。
板状材料10は、中心層に配置される木質板1と、木質板1の表裏面に接着剤により貼着される珪酸カルシウム板2,2から構成されている。そして、木質板1の表裏面全体が珪酸カルシウム板2,2で覆われている。また、珪酸カルシウム板2には、バーミキュライトが混入されている。
木質板1の厚さ、及び珪酸カルシウム板2の厚さをともに3〜6mmとし、板状材料10全体の厚さを9〜15mmとすれば、取り扱いが容易であり、壁材としての強度的にも問題なく使用が可能である。
【0021】
次に図2を参照して、別の実施形態に係る板状材料について説明する。図2は別の実施形態に係る板状材料20を示す断面図である。
板状材料20は、中心層に配置される珪酸カルシウム板2と、珪酸カルシウム板2の表裏面に接着剤により貼着される木質板1,1から構成されている。そして、珪酸カルシウム板2の表裏面全体が木質板1,1で覆われている。また、珪酸カルシウム板2には、バーミキュライトが混入されている。
珪酸カルシウム板2の厚さ、及び木質板1の厚さをともに3〜6mmとし、板状材料20全体の厚さを9〜15mmとすれば、取り扱いが容易であり、壁材としての強度的にも問題なく使用が可能である。
【0022】
次に図3乃至図5を参照して、上記実施形態における木質板1として用いることのできる木質材料について説明する。木質板1の断面図として、それぞれ図3は合板3、図4はストランドボード4、図5はMDF(中密度繊維板)とストランドボードの一体型板状体5を示している。
なお、木質板1としては他にも、LVL、パーティクルボード、MDF等が使用可能である。
【0023】
合板3は、図3に示すように、単板31,32,33をその繊維方向(木目方向)が交差するように積み重ね、接着剤を塗布して貼り合わせて1枚の板として形成されている。繊維方向を交差させているため、強度が高く伸び縮みが少ない優れた木質材料である。
【0024】
ストランドボード4は、長方形状の薄い削片(ストランド)を積層し接着して形成された木質材料である。ここでストランドボードの中でも、図4に示すように、削片の繊維方向を表裏面のストランド層41,43と中心のストランド層42で直交するように配列したOSB(オリエンテッド・ストランド・ボード)が、合板と同様の効果を示し強度面で優れている。
【0025】
MDF(中密度繊維板)とストランドボードの一体型板状体5は、図5に示すように、表裏面にファイバー層(繊維層)51,53が配置され、中心にストランド層52が配置されている。従って、表裏面はMDFと同様に平滑で硬く、中心部分はストランドボード同様に釘の保持力や強度に優れている。なお、ファイバー層51,53とストランド層52は、別個に板状に製造されてから貼着するのではなく、バラバラの状態で積層され熱圧一体化されることにより製造される。
【0026】
表1乃至表3は、上記実施形態のうち、図1に示すような、木質板1の表裏面に珪酸カルシウム板2を貼着した板状材料10について、その性能をプラスターボード、木質板、珪酸カルシウム板をそれぞれ単独で用いた場合と比較したものである。このうち表1は木質板1として合板3を、表2はストランドボード4を、表3はMDFとストランドボードの一体型板状体5をそれぞれ用いた場合を示したものである。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
表1乃至表3に示すように、板状材料10は、木質板1と珪酸カルシウム板2の欠点を補い合うことにより、優れた性能を発揮することができるようになっている。
【0031】
板状材料10又は板状材料20によれば、木質板1の表裏面それぞれに珪酸カルシウム板2を貼着し、又は珪酸カルシウム板2の表裏面それぞれに木質板1を貼着するので、強度の劣る珪酸カルシウム板2と、強度の優れた木質板1を貼り合わせることにより、壁材として充分な強度を有する板状材料10,20を得る事ができる。通常の取り扱いでは殆ど合板と同等の扱いが可能である。
【0032】
また、珪酸カルシウム板2よりも木質板1の方が軽いので、同じ厚さの珪酸カルシウム板2と比べて、木質板1と貼り合わせた方が重量を減少させることができる。
同じ厚さのバーミキュライト混入珪酸カルシウム板(比重0.9〜1.0)より合板(比重0.5〜0.7)の方が軽いので、例えば比重1.0のバーミキュライト混入珪酸カルシウム板3ミリの両面に比重0.55の合板3ミリを2枚張り合わせた場合は重量が30%減少する。
【0033】
また、珪酸カルシウム板2だけでは木ねじや釘の保持力が弱いが、木質板1を貼着することにより木ネジや釘の保持力を確保することができる。実際の使用においてはほぼ合板と同等の扱いが可能である。また、木質板1の持つ粘り強さの為に、多少の破損やネジの緩みがあっても急激な破壊は生じにくい。
【0034】
また、珪酸カルシウム板2も木質板1も廃棄処分時には特に管理型処分場は不要であり、長期間かければ分解させて土に返すことができるものである。
【0035】
また、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板2を用いるので、ホルムアルデヒドを吸収分解することができる。
ここで、木質板1は製法上、使用する接着剤からホルムアルデヒド発生の恐れが多少残されているが、バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板2はホルムアルデヒドを発散しないばかりでなく、積極的に吸収分解する作用もある。
従って、木質板1と張り合わせた場合には全体としては殆ど発生しないばかりでなく、周辺のホルムアルデヒドを吸収・分解する作用がある。木質板1の製造用接着剤は高価で接着性能も劣る低ホルムアルデヒド接着剤をわざわざ用いなくても、多少ホルムアルデヒドが発生する接着剤でも十分な性能を得ることが可能である。更に、他の家具等から発生するホルムアルデヒドも積極的に吸収・分解が可能である。
【0036】
また、板状材料10によれば、木質板1の表裏面全体が珪酸カルシウム板2で覆われているので、不燃性に優れる。また装飾を必要とする場所に用いれば、珪酸カルシウム板2が外側の面となり、多少の汚染や損傷はサンドペーパーにて研削して除去することができる。
【0037】
また、板状材料20によれば、珪酸カルシウム板2の表裏面全体が木質板1で覆われているので、視覚・触感に優しい。また、表裏の両側が木質板1であり、強度面に優れる。
【0038】
また、木質板1として合板3を用いることにより、特に強度面で優れた板状材料10,20を得ることができる。
また、木質板1としてストランドボード4を用いることにより、壁材として充分な強度を確保しつつ木材資源を有効に活用することができる。
また、木質板1としてMDFとストランドボードの一体型板状体5を用いることにより、壁材として充分な強度を確保しつつ木材資源を有効に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態に係る板状材料を示す断面図である。
【図2】別の実施形態に係る板状材料を示す断面図である。
【図3】合板を示す断面図である。
【図4】ストランドボードを示す断面図である。
【図5】MDFとストランドボードの一体型板状体を示す断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 木質板
2 珪酸カルシウム板
3 合板
4 ストランドボード
5 MDFとストランドボードの一体型板状体
31 単板
32 単板
33 単板
41 ストランド層
42 ストランド層
43 ストランド層
51 ファイバー層
52 ストランド層
53 ファイバー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅等の壁材に用いられる板状材料であって、
木質板の表裏面それぞれにバーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板を貼着し、前記表裏面全体を前記珪酸カルシウム板で被覆したことを特徴とする板状材料。
【請求項2】
住宅等の壁材に用いられる板状材料であって、
バーミキュライトを混入した珪酸カルシウム板の表裏面それぞれに木質板を貼着し、前記表裏面全体を前記木質板で被覆したことを特徴とする板状材料。
【請求項3】
前記木質板は、合板であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板状材料。
【請求項4】
前記木質板は、ストランドボードであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板状材料。
【請求項5】
前記木質板は、MDFとストランドボードの一体型板状体であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の板状材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−348613(P2006−348613A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176999(P2005−176999)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000145437)株式会社ウッドワン (70)
【Fターム(参考)】