説明

板状物収納容器

【課題】手指で接触することなく、板状物を取り出すことができる板状物収納容器を提供する。
【解決手段】スライド板40が装着された繰り出し部を有する直方体形状のケース本体Aと、弾性支持体が配設された底蓋Bと、直方体形状の筒状胴部にスライド孔が形成された上面部が配設された板状物Dを収納するカートリッジとからなり、底蓋の弾性支持体がカートリッジ内の板状物Dを前記スライド孔側に付勢されるように底蓋Bに装着され、かつスライド板の押出突起がカートリッジの前記スライド孔を貫通して、カートリッジ内の板状物Dの端部に係止するようにケース本体Aに装着され、スライド板40は、ケース本体Aの正面と背面の間を摺動し、スライド板40の摺動によって移動する板状物の繰り出し口35が、ケース本体Aとカートリッジの正面に形成され、かつケース本体の繰り出し口15と対応する位置にカートリッジの繰り出し口35が位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触すると吸湿や破損の恐れがある電極が配設されるバイオセンサーや、接触が危険なメスの刃などの板状物を収納する容器であって、直接手指で接触することなく板状物を一枚ずつ取り出すことができる板状物収納容器、および前記板状物収納容器に好適に使用できるカートリッジ、並びに前記カートリッジの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の診断や予防のために血液内のグルコースを周期的に測定する携帯用測定器が開発され、板状物の両端に電極と血液採取部とが配された板状物が、血糖測定用のバイオセンサーとして開発されている。このようなバイオセンサーの電極が配された端部を上記装置に挿入し、他端の血液採取部に血液を添加して、血糖値を測定することができる。このようなバイオセンサーは、前記血液添加部に予めFADを補因子としてグルコースオキシダーゼが塗工されており、採取した血液に含まれるグルコースと反応してFADH2が発生する。このFADH2を電子伝達媒介体を介して還元状態の電子伝達媒介体とし、その酸化電位を印加して電流を発生させ、この電流を測定して血糖値に換算するというものである。
【0003】
前記バイオセンサーに使用されるグルコースオキシダーゼなどの酵素は、湿度によって活性が低下する場合があり、バイオセンサーの保管には、外気や湿度などを遮断できる気密性が要求される。このため蓋付きの円筒容器に乾燥剤と共にバイオセンサーを収納したものが市販されている。
【0004】
一方、このようなバイオセンサーを収納する容器として、一枚ずつバイオセンサーを取出すことができる容器も開発されている。例えば、ケース内に板状体を収容したカートリッジと弾性体付きの底蓋とを装着し、弾性体の弾発力によってカートリッジ内の板状体に、ケースの繰り出し口側に向かう押圧力を負荷し、カートリッジ内の最上部の板状体にカートリッジの正面方向に向かう繰り出し力を負荷し、繰り出し口から一枚ずつ板状物を引き出す板状体振り出し容器がある(特許文献1)。弾性体によって板状体がカートリッジの最上部に付勢され、最上部に到達した板状物は、繰り出し方向先端よりも後方に寄った部位から、手指による繰り出し力を負荷して順次繰り出ものであり、板状体の先端を手指で摘んだり、手で持ち替えたりする必要もなく、板状体を容器から取り出すことができる、という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−347550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の板状体振り出し容器は、上下開放の直方体形状の筒部材で構成されるカートリッジを使用するものである。カートリッジの筒部材の内壁には水平なフランジが形成され、前記フランジに係止されて乾燥剤が支持され、この乾燥剤の上部にバイオセンサーなどの板状物が載置される構成となっている。カートリッジ内の板状物は、下部に装着された底蓋の弾性体によってカートリッジの最上部に向かって付勢され、前記最上部の板状体を親指の腹部分で押し出して、板状物を一枚ずつ容器の側方へ繰り出すという構成である。板状物を繰り出す際に親指の腹をで押し出すため、上記特許文献1記載の板状体振り出し容器は、板状物に手指を接触させる必要がある。このため、板状物を手指で汚染したり、手指の湿度によって吸湿させ、酵素活性の低下や電極の汚染や破損などを招く恐れがある。
【0007】
また、上記特許文献1記載の板状体振り出し容器では、板状物が、カートリッジの最上部から手指によって繰り出されるため、カートリッジの最上部は全面開放されている。手指に代えて回転ローラを装着する態様もあるが、カートリッジの上端部は全面開放されて容器内に装着される。このため、カートリッジに収納される小片の板状物は、カートリッジの最上部から遺漏し、板状物と手指とが接触して汚染が生じる恐れがある。更に、カートリッジの上端から板状物が遺漏しやすいため、カートリッジの交換作業も容易でない。
【0008】
また、特許文献1記載の板状体振り出し容器に装着するカートリッジは、カートリッジの開放上端部から板状物を収納する構造となっている。バイオセンサーなどは小片であり、カートリッジ上端部からの収納は容易でない。
【0009】
更に、特許文献1記載のカートリッジを販売するには、カートリッジの上端からの内容物の遺漏を防止するため、カートリッジ専用の蓋部を別個調製し、カートリッジに装着する必要がある。
【0010】
上記問題に鑑み、本発明は、手指による接触を回避して板状物を一枚ずつ繰り出すことができる、板状物収納容器を提供することを目的とする。
また、カートリッジの装着が容易な板状物収納容器を提供することを目的とする。
【0011】
更に、板状物の収納が容易なカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、カートリッジ内蔵式の振り出し容器について詳細に検討した結果、板状物を収納するカートリッジとして、筒状胴部に上面部を配設すると、カートリッジの上端からの板状物の遺漏を防止することができ、カートリッジの交換が容易となり、カートリッジを単独で販売する場合にも蓋部の配設を不要とできること、このような上面部にスライド孔を形成し、スライド板の摺動に伴って板状物が容器外へ繰り出せるように構成すれば、板状物に直接接触することなく一枚ずつ取出せること、このため、吸湿しやすい酵素添加センサーや電極が配設されるバイオセンサーや、更には直接接触することが危険なメスなどの収納および取出しに好適であること、このようなカートリッジとして、背面部が一部開放された筒状部材の天面にスライド孔が形成された上面部を配設したものを調製すれば、前記一部開放された背面から内容物を収納することができ、収納後に前記背面を背面部材で固設すれば、内容物の遺漏の無いカートリッジを簡便に製造しうることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
すなわち、本発明は、下面に押出突起が配設されたスライド板が摺動自在に装着された繰り出し部を有する直方体形状のケース本体と、弾性支持体が配設された底蓋と、直方体形状の筒状胴部にスライド孔が形成された上面部が配設された板状物を収納するカートリッジとからなり、前記カートリッジは、前記底蓋の弾性支持体がカートリッジ内の板状物を前記スライド孔側に付勢されるように底蓋に装着され、かつ前記ケース本体のスライド板の押出突起がカートリッジの前記スライド孔を貫通して、カートリッジ内の板状物の端部に係止するようにケース本体に装着され、前記スライド板は、ケース本体の正面と背面の間を摺動するものであり、前記ケース本体とカートリッジとは、前記スライド板の摺動によって移動する板状物の繰り出し口が、前記ケース本体とカートリッジの正面に形成され、かつ前記ケース本体の繰り出し口と対応する位置にカートリッジの繰り出し口が位置することを特徴とする、板状物収納容器を提供するものである。
【0014】
また、本発明は、背面を一部開放した直方体形状の一部背面解放筒状部材と、前記一部背面解放筒状部材に配設されるスライド孔が形成された上面部と、前記一部背面解放筒状部材に装着される背面部材とからなり、前記一部背面解放筒状部材は、正面上端部に板状物の繰り出し口が形成され、かつ内壁に前記一部背面解放筒状部材の底面と平行にフランジが形成され、前記フランジと前記上面部との間に板状物が収納されることを特徴とするカートリッジを提供するものである。
【0015】
また、本発明は、上記カートリッジの製造方法であって、前記一部背面解放筒状部材に前記上面部とを一体に成形し、
前記一部開放した背面から、フランジの上部に内容物を収納し、ついで、前記一部開放した背面を前記背面部材で固設することを特徴とする、カートリッジの製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の板状物収納容器によれば、ケース本体に配設したスライド板を摺動することで、板状物に直接接触することなく板状体を確実に一枚ずつ取出すことができる。このため、カートリッジに収納した板状物の汚染や破損を防止することができる。更に、手指に触れると安全性の点で問題となる、外科用メスの刃などの収納にも好適に使用することができる。
【0017】
本発明のカートリッジは、カートリッジを構成する筒状胴部に上面部が固設されているため、カートリッジを傾けても板状物がカートリッジから遺漏せず、カートリッジの装着を簡便に行うことができる。また、カートリッジの販売に際して、カートリッジ上部からの板状物の遺漏を防止するため、別個の蓋部を調製並びに配設する必要がない。
【0018】
本発明の板状物収納容器は、ケース本体と底蓋とカートリッジとからなり、ケース本体と底蓋とを分離することで簡便にカートリッジを取出すことができる。また、カートリッジには、乾燥剤を収納することができ、湿度によって劣化しやすい板状物の保存に適している。
【0019】
本発明のカートリッジは、背面を開放した一部背面解放筒状部材を使用するため、背面部材を装着する前に板状物をカートリッジ内に背面から収納することができ、板状物の収納が容易である。しかも、背面部材は、嵌合などで簡便に装着できるため、カートリッジの製造を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の板状物収納容器(100)の分解斜視図である。
【図2】本発明の板状物収納容器(100)であり、ケース本体(A)の蓋部を開放した際の外観斜視図である。
【図3】本発明の板状物収納容器(100)の平面図(図3(a))、正面図(図3(b))、側面図(図3(c))である。
【図4】本発明の板状物収納容器(100)において、カートリッジ(C)を交換する際の説明図である。
【図5】本発明で使用するケース本体(A)の平面図(図5(a))、正面図(図5(b))、側面図(図5(c))、背面図(図5(d))である。なお、図5では、蓋部の記載を省略した。
【図6】本発明の板状物収納容器(100)の繰り出し部(13)に装着するスライド板(40)を説明する図である。図6(a)は、スライド板の平面図、図6(b)は断面図、図6(c)は側面断面図である。
【図7】図7は、板状物収納容器(100)の部分断面図である。図7(a)は、板状物(D)の後端にスライド板(40)が配設される態様を、図7(b)は、スライド板(40)を正面方向に摺動させ、板状物(D)をカートリッジ(C)の繰り出し口(35)およびケース本体(A)の繰り出し口(15)から突出させた態様を示す。なお、図7(a)では、スライド板(40)の押出突起(43)の長さ(43L)と、ケース本体(A)の繰り出し部(13)の厚さ(13H)、カートリッジ(C)の上面部の厚さ(33T)と、板状物の厚さ(DT)との関係を説明する。
【図8】図8(a)は、蓋部(19)が配設されたケース本体(A)の平面図であり、図8(b)は、図5(c)に示すケース本体(A)のX−X線断面図、図8(c)は、図5(b)に示すY−Y線断面図である。
【図9】本発明で使用する底蓋(B)を説明する図である。図9(a)は底蓋本体(20)の平面図、図9(b)は、図9(a)のX−X線断面図、図9(c)は図9(a)のY−Y線断面図である。なお、図9(d)は、弾性支持体(21)の概略図である。
【図10】本発明で使用する底蓋本体(20)に好適に装着しうる弾性支持体カバー(23)を説明する図である。図10(a)は弾性支持体カバーの平面図、図10(b)は図10(a)のX−X線断面図、図10(c)は底面図、図10(d)は図10(a)のY−Y線断面図である。
【図11】本発明のカートリッジ(C)を説明する示である。図11(a)は一部背面解放筒状部材(30a)に上面部(33)が一体に形成された態様の平面図、図11(b)は、図11(a)のY−Y線断面図、図11(c)は、図11(a)のX−X線断面図、図11(d)は背面部材(30b)の正面図、図11(e)は背面部材(30b)の側面図、図11(f)は背面部材(30b)の平面図である。
【図12】本発明のカートリッジ(C)を説明する示であり、背面部材(30b)に予め板状物(D)の再挿入口(36)を形成し、このような背面部材(30b)を上面部(33)の上方から底部に向かって挿入する態様を示す図である。
【図13】カートリッジ(C)のフランジ(34)の上部に乾燥剤(E)を、その上部に板状物(D)を収納したカートリッジ(C)を収納した本発明の板状物収納容器(100)を説明する図である。図13(a)は板状物収納容器(100)の平面図である。ただし、便宜のため蓋部(19)の記載を省略した。また、図13(b)は、図13(a)のY−Y線断面図、図13(c)は、図13(a)のX−X線断面図である。
【図14】弾性支持体カバー(23)に形成した凸部(23b)と弾性支持体固定部材(20b)に形成した凸部(20b’)とが係止する態様を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第一は、下面に押出突起が配設されたスライド板が摺動自在に装着された繰り出し部を有する直方体形状のケース本体と、弾性支持体が配設された底蓋と、直方体形状の筒状胴部にスライド孔が形成された上面部が配設された板状物を収納するカートリッジとからなり、前記カートリッジは、前記底蓋の弾性支持体がカートリッジ内の板状物を前記スライド孔側に付勢されるように底蓋に装着され、かつ前記ケース本体のスライド板の押出突起がカートリッジの前記スライド孔を貫通して、カートリッジ内の板状物の端部に係止するようにケース本体に装着され、前記スライド板は、ケース本体の正面と背面の間を摺動するものであり、前記ケース本体とカートリッジとは、前記スライド板の摺動によって移動する板状物の繰り出し口が、前記ケース本体とカートリッジの正面に形成され、かつ前記ケース本体の繰り出し口と対応する位置にカートリッジの繰り出し口が位置することを特徴とする、板状物収納容器である。
【0022】
また、本発明の第二は、背面を一部開放した一部背面解放筒状部材と、前記一部背面解放筒状部材に配設されるスライド孔が形成された上面部と、前記一部背面解放筒状部材に装着される背面部材とからなり、前記一部背面解放筒状部材は、正面上端部に板状物の繰り出し口が形成され、かつ内壁に前記一部背面解放筒状部材の底面と平行にフランジが形成され、前記フランジと前記上面部との間に板状物が収納されることを特徴とするカートリッジである。以下、本発明を詳細に説明する。
【0023】
(1)板状物収納容器
本発明の板状物収納容器の好適な態様の一例を図1の分解斜視図に示す。本発明の板状物収納容器(100)は、スライド板が装着された直方体形状のケース本体(A)と、底蓋(B)と、板状物(D)を収納したカートリッジ(C)とからなる。なお、図1では、板状物(D)の下部に乾燥剤(E)を収納した態様を示す。
【0024】
前記ケース本体(A)は、胴部(10)と、前記胴部(10)の上端に配設された繰り出し部(13)とからなり、スライド板(40)が装着されたものである。図1では、胴部(10)の背面にヒンジ(17)を介して蓋部(19)が配設されている。前記繰り出し部(13)には、ケース本体(A)の正面と背面との間を摺動するスライド板(40)が装着され、前記スライド板(40)は、下面に押出突起(43)が配設され、板状物の後端に係止できる構造となっている。なお、ケース本体(A)の正面には、前記スライド板(40)の摺動によって移動する板状物(D)を容器の外へ排出させるための繰り出し口(15)が形成されている。前記スライド板(40)を正面方向に摺動させると、カートリッジ(C)に内蔵される板状物(D)が、最上段から一枚ずつ、繰り出し部(13)の前記繰り出し口(15)から突出される。
【0025】
底蓋(B)は、底蓋本体(20)にバネなどの弾性支持体(21)が配設される構成である。本発明では、前記弾性支持体(21)には、弾性支持体(21)を上部から被覆する弾性支持体カバー(23)が装着されている。弾性支持体(21)によってカートリッジ(C)内の板状物をカートリッジの上面部に付勢することができる。
【0026】
本発明で使用するカートリッジ(C)は、スライド孔(31)が形成された上面部(33)を有する直方体形状の胴部(30)の内部に板状物(D)や乾燥剤(E)、その他を収納したものである。なお、カートリッジの正面上端には、板状物(D)の繰り出し口(35)が形成され、胴部(30)の底部両端にはつまみ部(37)が形成されている。
【0027】
上記したケース本体(A)、底蓋(B)、カートリッジ(C)によって本発明の板状物収納容器(100)を組み立てるには、ケース本体(A)の下部からカートリッジ(C)を挿入し、次いで、前記カートリッジ(C)の底部に、弾性支持体(21)に弾性支持体カバー(23)を被覆した底蓋(B)を挿入すればよい。底蓋(B)とケース本体(A)とが嵌着して板状物収納容器を組み立てることができる。なお、底蓋本体(20)の正面の外周に突出するつまみ部(25)は、カートリッジ(C)の交換の際に、底蓋(B)とケース本体(A)とを分離する際の手がかりとして使用することができる。
【0028】
このようにして組み立てられた本発明の板状物収納容器(100)の外観斜視図を図2に示す。なお、図2では、板状物(D)がケース本体(A)の前記繰り出し口(15)、並びにカートリッジ(C)の繰り出し口(35)から突出する態様を示した。
【0029】
図3に、本発明の板状物収納容器(100)の平面図(図3(a))、正面図(図3(b))、側面図(図3(c))を示す。なお、便宜のため、側面図(図3(c))は、一部切り欠き透視図とし、更に、カートリッジ(C)内の板状物(D)およびその繰り出し口(35)を一部破線で示した。
【0030】
図3(a)に示すように、本発明の板状物収納容器(100)は、ケース本体(A)の内部にカートリッジ(C)が摺り合うように挿入され、かつケース本体(A)の外周にやや大径の底蓋(B)が装着されている。ケース本体(A)の繰り出し部(13)にはスライド板(40)が装着され、スライド板(40)の押出突起(43)は、収納された板状物(D)の後端に係止している。
【0031】
図3(b)に示すように、ケース本体(A)の底部には底蓋(B)が装着されている。なお、ケース本体(A)の正面には、繰り出し部(13)に板状物の繰り出し口(15)が形成されている。
【0032】
図3(c)に示すように、カートリッジ(C)をケース本体(A)に装着すると、ケース本体(A)の繰り出し部(13)に装着したスライド板(40)の押出突起(43)が、ケース本体(A)の前記繰り出し部(13)およびカートリッジ(C)の上面部のスライド孔(31)を貫通する。これにより、カートリッジ(C)の最上部にある板状物(D)の後端に前記押出突起(43)を係止することができる。なお、カートリッジ(C)の正面にも板状物の繰り出し口(35)が形成されており、スライド板(40)を矢印方向に摺動させると、前記板状物(D)がカートリッジ(C)の繰り出し口およびケース本体(A)の繰り出し口(15)を経て板状物収納容器(100)から突出される。
【0033】
本発明の板状物収納容器(100)は、熱可塑性樹脂の射出成形などで製造することができる。射出成形樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどを好適に使用することができる。なお、板状物収納容器は、透明でも、不透明であっても着色されていてもよい。少なくともケース本体(A)とカートリッジ(C)とが透明部材で調製されている場合には、板状物の残存量が目視できる点で優れる。
【0034】
本発明の板状物収納容器は、後記するように、ケース本体(A)と底蓋(B)とが嵌着でき、かつケース本体(A)の繰り出し部(13)の上部にヒンジ(17)を介して連設させた蓋部(19)を装着すると、板状物収納容器(100)内の外気の流入を低減できる。このため、カートリッジ(C)に乾燥剤を収納した場合には、容器内の湿度を低く維持することができる。また、使用前は、板状物収納容器の外周をガスバリア性包装材で被覆すれば、気密を長期間に亘り維持することができる。また、板状物を収納したカートリッジも同様であり、使用前に、カートリッジ(C)の外周をガスバリア性包装材で被覆すれば気密を長期間に亘り維持することができる。
【0035】
図4に、本発明の板状物収納容器(100)において、カートリッジ(C)を交換する方法を示す。まず、ケース本体(A)の胴部(10)を把持し、底蓋(B)に形成したつまみ部(25)を固定して、前記ケース本体(A)の胴部(10)を矢印(1)の方向に上方に引き抜く。これにより、底蓋(B)とケース本体(A)とが分離される。ついで、ケース本体(A)の底部に見えるカートリッジ(C)の底部のつまみ部(37)を両側から把持して矢印(2)の方向に下方に引き抜けば、カートリッジ(C)をケース本体(A)から引き抜くことができる。
【0036】
なお、図1〜4では、ケース本体(A)にヒンジ(17)を介して蓋部(19)が配設される態様を示したが、これに限定されるものではない。カートリッジ(C)に収納する板状物(D)の特性によって湿度や安全性に問題が無ければ、蓋部(19)は存在しなくてもよく、またケース本体(A)と分離した蓋部を嵌着させてもよい。
【0037】
(2)ケース本体
図5に、本発明で使用するケース本体(A)の平面図(図5(a))、正面図(図5(b))、側面図(図5(c))、背面図(図5(d))を示す。なお、図5では、蓋部の記載を省略した。ケース本体には、スライド板が装着される。
【0038】
(i)ケース本体の外観
ケース本体(A)は、略直方型の胴部(10)と、前記胴部(10)の天面を構成する繰り出し部(13)とからなる。
【0039】
本発明で使用するケース本体(A)は、前記胴部(10)の上部にスライド板(40)が摺動自在に装着される繰り出し部(13)を有する。前記胴部(10)と繰り出し部(13)とは、それぞれ別個に形成した繰り出し部(13)と胴部(10)とを接着その他によって固定するものであってもよく、胴部(10)の上端に繰り出し部(13)を一体に形成したものであってもよい。
【0040】
本発明で使用するケース本体(A)の繰り出し部(13)には、図5(a)に示すように、繰り出し部(13)の天面部から底面部に貫通する開放部(13c)と前記開放部(13c)の終点を構成するストッパ(13d)とが形成されている。この開放部(13c)を介して、装着された後記するスライド板が摺動する。
【0041】
前記繰り出し部(13)は、図5(b)に示す断面視、両側面の上端部(13a)とその下方に形成される凹部(13b)とを有する。スライド板が、これら上端部(13a)および前記凹部(13b)を介して、繰り出し部(13)に装着される。なお、図5(c)に示すように、繰り出し部(13)の前記凹部(13b)は、繰り出し部(13)の後端に貫通しないように形成することが好ましく、これにより、繰り出し部(13)後端からのスライド板の離脱を防止することができる。
【0042】
本発明では、図5(b)に示すように、前記繰り出し部(13)の正面は、繰り出し部(13)の外側と内側が貫通するように開放され、前記正面の開放部は、繰り出し口(15)を形成する。このようにケース本体(A)の正面に形成された繰り出し口(15)は、後記するカートリッジ(C)の繰り出し口(35)よりも大きく調製されることが好ましい。板状物(D)を円滑に容器(100)から繰り出すことができるからである。
【0043】
なお、図5(d)に示すように、繰り出し部(13)の背面にも繰り出し部(13)の外側と内側が貫通する開放部を形成すれば、このような開放部を、誤って繰り出した板状物(D)を再度カートリッジ(C)に戻す際の、板状物(D)の再挿入口(16)として使用することができる。なお、再挿入口(16)も繰り出し口(15)と同様に、後記するカートリッジ(C)の再挿入口(36)よりも大きく調製されることが好ましい。再挿入が容易に行えるからである。
【0044】
前記繰り出し部(13)は、図5(a)に示すように、胴部(10)より幅狭に構成されていることが好ましい。ヒンジ(17)を介して配設される蓋部(19)の内部に前記繰り出し部(13)を収納できるため、蓋部(19)の外周と胴部(10)の外周とを略同一に調整することができ、板状物収納容器(100)を把持する際の手触りを良好に改良することができる。
【0045】
なお、本発明で使用する直方体形状のケース本体(A)の外周は、図5(a)に示すように、角部に丸みが形成されていてもよく、手のひらで把持した際の手触りに優れる。
また、前記胴部(10)は、正面および背面の下端に切り欠き部(10a)が形成されることが好ましい。本発明では、前記図1に示すように、カートリッジ(C)の胴部(30)の下端につまみ部(37)を有するものを好適に使用でき、このようなつまみ部(37)を有する場合でも、ケース本体(A)に切り欠き部(10a)を形成することで、カートリッジ(C)のつまみ部(37)がケース本体(A)からはみ出すことが無く、カートリッジ(C)の収納を容易に行うことができる(図4参照)。
【0046】
更に、ケース本体(A)は、胴部(10)の下部に胴部(10)を一周する環状の凸部(10b)を形成してもよく、このような凸部(10b)を底蓋(B)との嵌着部位として使用することができる。なお、このような凸部(10b)は、底蓋(B)との嵌着部位として機能するばかりでなく、板状物収納容器(100)の内部を気密にする効果を有する。
【0047】
更に、図5(a)〜(d)に示すように、前記繰り出し部(13)の下部には、繰り出し部(13)を一周する環状の凸部(10c)を形成してもよく、この凸部(10c)を蓋部(19)との嵌着部位として使用することができる。
【0048】
(ii)スライド板
図6に、繰り出し部(13)に装着するスライド板(40)を示す。図6(a)は、スライド板(40)の平面図、図6(b)は図6(a)のX−X線断面図、図6(c)は図6(a)のY−Y線断面透視図である。
【0049】
図6(b)に示すように、前記スライド板(40)は、垂下する側部を有する天面部(41)と、押出突起(43)とからなり、前記天面部(41)の側部は、前記押出突起(43)側に彎曲する凸部(41a)とその上方の凹部(41b)とを有する。前記凸部(41a)と凹部(41b)とが、それぞれ繰り出し部(13)の凹部(13b)と上端部(13a)と嵌合し、繰り出し部(13)に摺動自在に装着される。
【0050】
前記スライド板(40)に配設する押出突起(43)は、図6(c)に示すように、スライド板の天面部(41)の中央より後端に形成することが好ましい。繰り出し部(13)の背面近傍に押出突起(43)を位置させることで板状物(D)の後端に押出突起(43)を係止させ、無駄な空間を回避してケース本体(A)をコンパクトに調整することができる。
【0051】
押出突起(43)の長さは、ケース本体(A)にカートリッジ(C)を装着した後に、カートリッジ(C)に収納した最上段の板状物(D)の厚みの略中央に至る必要がある。
図7に板状物収納容器(100)の部分断面図を示す。図7(a)は、板状物(D)の後端にスライド板(40)の押出突起(43)が配設される態様を、図7(b)は、スライド板(40)を正面方向に摺動させ、板状物(D)がカートリッジ(C)の繰り出し口(35)およびケース本体(A)の繰り出し口(15)から突出された態様を示す。
【0052】
図7(a)示すように、押出突起(43)の長さ(43L)は、ケース本体(A)の繰り出し部(13)の高さ(13H)、カートリッジ(C)の上面部の厚さ(33T)、および板状物(D)の厚さ(DT)を勘案して適宜選択することができる。好ましくは、43L=13H+33T+DT×(0.3〜0.9)である。なお、押出突起(43)が板状物(D)の後端に係止するには、摺動前の押出突起(43)の位置は、カートリッジ(C)の部材(30)の背面壁の上にあるように、押出突起(43)の配設位置を調整すればよい。
【0053】
なお、図7(b)に示すように、スライド板(40)は、繰り出し部(13)の開放部(13c)を正面方向に摺動しつつ板状物(D)を繰り出し、ストッパ(13d)の位置で停止する。この状態で板状物収納容器から突出した板状物(D)を、例えば血糖値測定装置に装着し、ついでスライド板(40)を板状物収納装置の背面側に摺動させれば、スライド板(40)の押出突起(43)は、図7(a)の状態に戻り、次の板状物(D)の後端を係止することができる。
【0054】
(iii)蓋部付きケース本体とカートリッジ
図8(a)は、蓋部(19)が配設されたケース本体(A)の平面図であり、図8(b)は、図5(c)に示すケース本体(A)のX−X線断面図、図8(c)は、図5(b)に示すY−Y線断面図である。
【0055】
図8を使用してケース本体(A)とカートリッジ(C)との関係を説明し、併せてケース本体(A)がヒンジを介して蓋部を有する場合を説明する。
本発明では、図8(b)、図8(c)に示すように、ケース本体(A)の胴部(10)には、直方形状の空間が形成され、カートリッジ(C)を挿入できる構成となっている。
【0056】
図8(a)、図8(c)に示すように、繰り出し部(13)の長手方向の中央部には前記開放部(13c)が形成されている。なお、開放部(13c)の全長は、ケース本体(A)に収納されるカートリッジ(C)のスライド孔の全長と略同じ長さに調整される。これにより、スライド板(40)の摺動並びに板状物(D)の繰り出しが可能となる。なお、前記開放部(13c)の幅(13cW)は、カートリッジ(C)の上面部よりも狭く、スライド板(40)に配設する押出突起(43)が貫通でき、かつ摺動自在に移動できる範囲で適宜選択することができる。
【0057】
繰り出し部(13)の正面近傍には、図8(a)、図8(c)に示すようにストッパ(13d)が一体に形成され、前記開放部(13c)の終点となっている。ストッパ(13d)を形成することで、繰り出し部(13)に装着したスライド板(40)の正面部からの離脱を防止することができる。ストッパ(13d)は、少なくとも、スライド板(40)の移動を停止しうる程度の機械的強度を維持できればよく、収納する板状物(D)の種類やサイズに応じて適宜選択することができる。このストッパ(13d)の後端位置は、収納されたカートリッジ(C)のスライド孔の先端位置と略同じになるように調整される。なお、ストッパ(13d)の先端は、繰り出し部(13)の正面先端と同一でもよく、図8(c)に示すように、正面よりやや後ろに下がる位置から開始されるものであってもよい。
【0058】
胴部(10)の背面は、ヒンジ(17)を介して蓋部(19)が一体に形成される。蓋部(19)の内周の下部近傍には、蓋部(19)を一周する凸部(19a’)が形成されることが好ましい。蓋部(19)をケース本体(A)に装着すると、繰り出し部(13)に形成した凸部(10c)の下部に配置され、蓋部(19)の嵌着部位として使用することができる。なお、凸部(19a’)に代えて、前記した凸部(10c)と対向する位置に前記凸部(10c)と嵌合する凹部を形成してもよい。このような凸部(19a’)や凹部は、前記凸部(10c)との嵌着部位として機能するばかりでなく、蓋部(19)内、ひいては板状物収納容器(100)の内部を気密にする効果もある。
【0059】
なお、前記蓋部(19)の正面につまみ部(19a)が形成されていてもよい。蓋部(19)を胴部(10)に嵌着した場合に、前記つまみ部(19a)を介して蓋部(19)を容易に開放することができる。なお、前記つまみ部(19a)は、円弧状であれば手触りに優れる。
【0060】
(3)底蓋
本発明で使用する底蓋(B)は、底蓋本体(20)の内部にカートリッジ(C)内の板状物(D)を付勢する弾性支持体(21)が配されていれば特に制限なく、各種の態様のものを使用することができる。
【0061】
配設される弾性支持体(21)としては、上記目的に沿うものであれば、例えば、ツル巻きバネ、板バネ、エラストマーなどの弾性部材などであってもよい。しかしながら、伸縮力に優れる点でコイル状に巻かれたツル巻きバネを好適に使用することができる。
【0062】
一方、カートリッジ(C)内の板状物(D)を一枚ずつ繰り出すためには、カートリッジ(C)に収納された板状物(D)が、カートリッジ(C)の上面部に向かって水平に付勢されることが好ましい。本発明では、前記弾性支持体(21)に弾性支持体カバー(23)を装着することで、前記弾性支持体(21)の伸張力をカートリッジ(C)の上面部に対して鉛直に発揮させることができる。
【0063】
(i)底蓋本体
本発明で使用する底蓋本体(20)は、板状物収納容器(100)の底部であり、かつ弾性支持体(21)の固定部である。図9に、本発明で好適に使用できる底蓋本体を示す。なお、底蓋本体は、使用する弾性支持体(21)の形状や配設個数に応じて適宜選択することができる。以下、弾性支持体(21)としてツル巻きバネを使用する場合で例示する。図9(a)は底蓋本体(20)の平面図、図9(b)は、図9(a)のX−X線断面図、図9(c)は図9(a)のY−Y線断面図である。なお、図9(d)は、弾性支持体(21)の概略側面図および平面図である。
【0064】
図9(b)、図9(c)に示すように、底蓋本体(20)は、椀形底部(20a)と前記椀形底部(20a)の底面から略鉛直に配設される弾性支持体固定部材(20b)とが一体に形成されたものである。
【0065】
椀形底部(20a)は、ケース本体(A)の底部に装着され、ケース本体(A)の内部にカートリッジ(C)を安定に収納できるものである。その形状やサイズは、ケース本体(A)の底部の形状によって適宜選択することができる。なお、椀形底部(20a)の側面部の内周の上端には、凹部(20a’)が環状に形成されている。この凹部(20a’)を介してケース本体(A)と底蓋(B)とを嵌着することができる。
【0066】
なお、椀形底部(20a)の正面部の上端には、つまみ部(25)が形成されていてもよい。カートリッジ(C)を交換する際に、ケース本体(A)と底蓋(B)とを前記つまみ部(25)を介して容易に分離することができる。つまみ部(25)は、図9(a)に示すように円弧状に形成すると、板状物収納容器を把持した際の手触りが良好である。
【0067】
一方、弾性支持体固定部材(20b)は、配設する弾性支持体(21)を固定できるように、柱状の空間部(22)が形成された板状体である。前記空間部(22)に、例えば、図9(d)に示めすバネなどの弾性支持体(21)を前記空間(22)に挿入し、固定することができる。
【0068】
なお、図9(b)に示すように、前記弾性支持体固定部材(20b)の上端外側には、後記する弾性支持体カバー(23)と係止しうる凸部(20b’)が一対形成されていることが好ましい。弾性支持体カバー(23)と底蓋本体(20)との分離を防止できるからである。
【0069】
(ii)弾性支持体カバー
図10に、前記底蓋本体(20)に好適に装着できる、弾性支持体カバー(23)を示す。図10(a)は弾性支持体カバーの平面図、図10(b)は図10(a)のX−X線断面図、図10(c)は底面図、図10(d)は図10(a)のY−Y線断面図である。
【0070】
この弾性支持体カバー(23)は、前記図1に示すように、弾性支持体(21)を被覆するように装着される。
図10(b)〜図10(d)に示すように、弾性支持体カバー(23)は、天面部から柱状体(23a)が垂下する構成である。前記柱状体(23a)は、底蓋本体(20)に固定されたバネなどの弾性支持体(21)の中央に陥入し、弾性支持体(21)の変形を防止することができる。従って、その数は、弾性支持体(21)と同数である。
【0071】
弾性支持体カバー(23)は、その内周下端に底蓋本体(20)の弾性支持体固定部材(20b)の凸部(20b’)と係止しうる凸部(23b)が形成されている。全ての板状物(D)が繰り出された後であっても、弾性支持体カバー(23)の凸部(23b)と、弾性支持体固定部材(20b)に形成した凸部(20b’)とを係止することで、弾性支持体カバー(23)の底蓋本体(20)からの分離を回避することができる。なお、弾性支持体カバー(23)と弾性支持体固定部材(20b)との係止を可能とするため、弾性支持体カバー(23)の内周の横幅(23L)と、図9(b)に示す前記弾性支持体固定部材(20b)の横幅(20bL)とを適宜調整する。
【0072】
(iii)組立方法
本発明で使用する底蓋(B)を組み立てるには、前記底蓋本体(20)の弾性支持体固定部材(20b)に形成した空間部(22)にバネなどの弾性支持体(21)を挿入する。ついで前記バネの中央空間部に前記柱状体(23a)が貫通するように弾性支持体カバー(23)を被せる。弾性支持体カバー(23)を底蓋本体(20)に向かって押圧し、弾性支持体固定部材(20b)の凸部(20b’)と、弾性支持体カバー(23)の凸部(23b)とを係止し、両者を固定する。
【0073】
これにより、左右に揺動しやすい弾性支持体(21)を略直線状に固定することができる。弾性支持体カバー(23)は、前記弾性支持体固定部材(20b)の外周に沿って移動するため、弾性支持体固定部材(20b)の天面を、カートリッジ(C)の上面部と平行を維持しつつ上面部に向かって移動させることができる。
【0074】
なお、図9、図10では、弾性支持体(21)として2本のバネを装着する態様を示すが、バネに限定されるものではなく、その数も2本に限定されず1本でも、3本以上であってもよい。
【0075】
本発明の板状物収納容器(100)では、前記カートリッジ(C)は、ケース本体(A)および底蓋(B)のいずれとも嵌着箇所を形成しないが、ケース本体(A)の胴部(10)に形成した環状の凸部(10b)と底蓋(B)に形成した凹部(20a’)とが嵌着し、両者によって形成される内部空間に、安定に収納される。
【0076】
(4)カートリッジ
本発明で使用するカートリッジ(C)は、スライド孔(31)が形成された上面部(33)が配設された直方体形状の胴部(30)の内部に、板状物(D)が収納できるものである。前記した底蓋(B)の弾性支持体(21)によってカートリッジ(C)に収納した板状物(D)がカートリッジ(C)の上面部(33)に向かって付勢され、かつ前記ケース本体(A)に配設されたスライド板(40)の押出突起(43)がカートリッジ(C)内の板状物(D)の端部に係止でき、前記スライド板(40)を摺動することで板状物(D)を繰り出し口(35)から繰り出すことができる。
【0077】
一方、板状物(D)を容易に収納するためには、背面を一部開放した一部背面解放筒状部材(30a)と、前記一部背面解放筒状部材(30a)に配設されるスライド孔(31)が形成された上面部(33)と、前記一部背面解放筒状部材(30a)に装着される背面部材(30b)とからなり、前記一部背面解放筒状部材(30a)は、正面上端部に板状物の繰り出し口が形成され、かつ内壁に前記一部背面解放筒状部材の底面と平行にフランジ(34)が形成されたものを好適に使用することができる。前記フランジ(34)を形成することで、前記フランジ(34)と前記上面部(33)との間に板状物(D)、その他を収納することができる。なお、本発明において、「一部背面解放筒状部材に配設されるスライド孔が形成された上面部」とは、一部背面解放筒状部材と上面部とを別個の部材を熱融着などによって固設するものであってもよく、前記一部背面解放筒状部材(30a)とスライド孔が形成された上面部(33)とが一体に形成されるものであってもよい。
【0078】
(i)上面部
図11は、本発明で好適に使用できるカートリッジ(C)の一例を説明する示である。図11(a)は、一部背面解放筒状部材(30a)に上面部(33)が一体に形成された態様の平面図、図11(b)は、図11(a)のY−Y線断面図、図11(c)は、図11(a)のX−X線断面図、図11(d)は背面部材(30b)の正面図、図11(e)は背面部材(30b)の側面図、図11(f)は背面部材(30b)の平面図である。
【0079】
図11(a)に示すように、カートリッジ(C)の一部背面解放筒状部材(30a)に配設される上面部(33)には、カートリッジ(C)の外部から内部に貫通するスライド孔(31)が形成されている。
【0080】
本発明の板状物収納容器(100)では、ケース本体(A)にカートリッジ(C)を収納した場合、ケース本体(A)に装着したスライド板(40)の押出突起(43)がケース本体(A)の繰り出し部(13)の開放部(13c)およびカートリッジ(C)のスライド孔(31)を経て板状物(D)の後端に係止でき、かつ板状物収納容器(100)の正面部に向かって摺動できるように構成されるものである。前記スライド孔(31)のサイズは、ケース本体(A)に装着された際の前記開放部(13c)の位置に対応して適宜調整することが好ましい。好ましくは、このスライド孔(31)の先端部が、ケース本体(A)の繰り出し部(13)の開放部(13c)の先端位置と略同一となるようにする。
【0081】
一方、スライド孔(31)の幅(31W)は、スライド板(40)の押出突起(43)が挿入および移動できる程度広く、かつ収納する板状物(D)の幅よりも狭く調整することが好ましい。これにより、スライド板(40)の摺動を可能とし、かつスライド孔(31)からの板状物(D)の遺漏を回避することができる。
【0082】
(ii)一部背面解放筒状部材
本発明で使用する一部背面解放筒状部材とは、カートリッジ(C)の直方体形状の筒状胴部(30)を構成する部材である。図11(c)に示すように、筒状部材の上端から底部に向かって背面の一部が存在せず、一部背面解放筒状部材(30a)の背面から内部に向かって貫通できる構成のものを意味する。
【0083】
本発明では、一部背面解放筒状部材(30a)の上面に前記上面部(33)を固設し、前記開放された背面に背面部材(30b)を固設すれば、カートリッジ(C)を構成することができる。また、固設する順序を変えて、一部背面解放筒状部材(30a)に背面部材(30b)を固設して直方体形状の筒状胴部(30)を形成し、ついでこの筒状胴部(30)の上面に前記上面部(33)を固設することもできる。なお、本発明で使用するカートリッジ(C)は、図11(b)に示すように一部背面解放筒状部材(30a)と上記上面部(33)とが一体に形成されたものを好適に使用することができる。射出成形により一体成形が可能あり、かつ背面が一部開放されているため、この開放部から板状物(D)などの収納物を挿入することができ、カートリッジ(C)の製造が容易だからである。
【0084】
前記一部背面解放筒状部材(30a)は、カートリッジ(C)を構成するものであり、その形状やサイズは、ケース本体(A)の内周などを勘案して適宜選択することができる。一方、背面の開放部の長さは、収納物の量によって適宜選択することができる。
【0085】
本発明で使用する一部背面解放筒状部材(30a)は、図11(b)、図11(c)に示すように、正面部の上端に、板状物(D)の繰り出し口(35)が形成されている。この高さ(35H)は、収納する板状物(D)の厚さ(DT)に応じて適宜選択することができ、板状物(D)の厚さ(DT)の1倍を超え2倍を下回るように調整すると、板状物(D)を一枚ずつ安定してとりだすことができる。
【0086】
繰り出し口(35)は、ケース本体(A)の繰り出し口(15)と対応する位置にあるように調製することが好ましい。なお、前記したように、ケース本体(A)の繰り出し口(15)はカートリッジ(C)の繰り出し口(35)より大きいため、スライド板(40)の摺動によって繰り出された板状物(D)を、円滑に容器(100)の外に繰り出すことができる。
【0087】
本発明で使用する一部背面解放筒状部材(30a)の内周には、図11(b)に示すように、底部と平行の位置にフランジ(34)が形成されている。このフランジ(34)を介してその上部に板状物(D)を載置することができる。なお、板状物(D)に限定されず、例えば一部背面解放筒状部材(30a)の内周と同型に成型した乾燥剤(E)を前記フランジ(34)の上に載置し、乾燥剤(E)の上部に板状物(D)を積層することもできる。板状物(D)が湿度により劣化しやすい場合に、特に好適である。
【0088】
一部背面解放筒状部材(30a)には、底部両端に略直角に突出させたつまみ部(37)が形成されていることが好ましい。前記図4に示すように、ケース本体(A)からカートリッジ(C)を引き抜く際にこのつまみ部(37)を使用することができ、容易にカートリッジ(C)の交換を行うことができる。
【0089】
一方、一部背面解放筒状部材(30a)に装着する背面部材(30b)は、一部背面解放筒状部材(30a)の開放部に嵌着または接合などによって連結される部材である。
一部背面解放筒状部材(30a)と背面部材(30b)との連結は、嵌着や接合のほかにスライド挿入などのいずれの態様であってもよい。
【0090】
なお、背面部材(30b)を、一部背面解放筒状部材(30a)の上端から空間を形成して装着すると、形成された胴部(30)の背面の上端に空間を形成することができる。本発明では、この背面の空間を、板状物(D)の再挿入口(36)として使用することができる(図11(c)参照)。本発明では、スライド板(40)の摺動によって板状物(D)を一枚ずつ取出す点に特徴があるが、使用者が誤って余分に板状物(D)を取出した場合に、吸湿などの問題を回避するため、板状物収納容器(100)に板状物(D)を再収納したい場合がある。カートリッジ(C)の背面に再挿入口(36)を形成すれば、余分に取出した板状物(D)を再挿入することができる。このような再挿入口(36)の高さ(36H)は、板状物(D)の厚さ(DT)に依存し、好ましくは、板状物(D)の厚さの1倍を超え2倍を下回るように調整する。なお、再挿入口(36)は、予め一部背面解放筒状部材(30a)に設置しておいてもよい。
【0091】
(iii)製造方法
本発明では、前記一部背面解放筒状部材、前記上面部および前記背面部材を使用していずれの方法でカートリッジをしてもよい。
【0092】
一方、予め前記一部背面解放筒状部材に前記上面部とを一体に成形し、前記一部開放した背面から、フランジの上部に内容物を収納し、ついで、前記一部開放した背面を前記背面部材で固設することが好ましい。
【0093】
たとえば、図11(c)に示すように、一部背面解放筒状部材(30a)の背面近傍に、予め、背面部材(30b)を嵌着する嵌着溝(32a)を形成する。一方、図11(d)に示すように、背面部材(30b)に嵌着凸部(32b)を形成する。
【0094】
次いで、予め前記一部背面解放筒状部材に前記上面部とを一体に成形したものの前記開放された背面から、前記フランジ(34)の上部に乾燥剤(E)や板状物(D)を収納する。収納後に、背面部材(30b)を、一部背面解放筒状部材(30a)に向かって矢印方向に押圧すると、前記嵌着溝(32a)と嵌着凸部(32b)とが嵌合または接合し、一部背面解放筒状部材(30a)に背面部材(30b)を配設することができる。なお、一部背面解放筒状部材(30a)と背面部材(30b)とは、嵌着または接合後に更に熱溶着などで固定してもよい。この方法によれば、カートリッジ(C)の上部から板状物(D)を収納する方法と比較して板状物(D)の収納が容易でカートリッジ(C)を簡便に製造することができる。
【0095】
一方、背面部材(30b)の装着方法は上記に限定されず、例えば、図12(a)に示すように、一部背面解放筒状部材(30a)の背面近傍にスライド溝(32a')を形成し、背面部材(30b)にはスライド凸部(32b’)を形成し(図12(b)、(c)参照)、一部背面解放筒状部材(30a)の上部から前記スライド溝(32a’)にスライド凸部(32b’)を下部に向かってスライドして装着させてもよい。この場合、背面部材(30b)に予め板状物(D)再挿入口(36)が形成されるものを使用することもできる。
【0096】
より具体的には、一部背面解放筒状部材(30a)に、背面部材(30b)の厚み分だけ短く調整した上面部(33)を固設し、または一部背面解放筒状部材(30a)とこのような上面部(33)とを一体に形成する。ついで、胴部(30)の前記フランジ(34)の上部に乾燥剤(E)や板状物(D)を一部背面解放筒状部材(30a)の背面から挿入し、挿入後に上面部(33)側から背面部材(30b)を下方にスライドして装着する。なお、スライド装着の後に装着部を熱融着や接着剤などで固定すれば、カートリッジ(C)を取り扱う際に誤って背面部材(30b)が外れて板状物(D)が遺漏する事故などを防止することができる。
【0097】
上記カートリッジ(C)のフランジ(34)の上部に乾燥剤(E)を、前記乾燥剤(E)の上部に板状物(D)を収納したカートリッジ(C)を収納した本発明の板状物収納容器(100)を図13に示す。図13(a)は蓋部(19)を装着しない場合の板状物収納容器(100)の平面図、図13(b)は、図13(a)のY−Y線断面図、図13(c)は、図13(a)のX−X線断面図である。
【0098】
図13(c)に示すように、カートリッジ(C)の上面部(33)のスライド孔(31)の上方にケース本体(A)の繰り出し部(13)の開放部(13c)が配設される。なお、図13(a)に、収納された板状物(D)を破線で示す。
【0099】
図13(b)に示すように、カートリッジ(C)は、その胴部(30)の上面部(33)がケース本体(A)の繰り出し部(13)の下部と重なるようにケース本体(A)の胴部(10)に挿入され、ケース本体(A)の底部に装着された底蓋(B)によって、前記底蓋(B)に配設された弾性支持体ケース(23)によって、カートリッジ(C)内の乾燥剤(E)および板状物(D)を、カートリッジ(C)の上面部(33)に向かって付勢されている。ケース本体(A)にカートリッジ(C)を挿入すると、図13(c)に示すように、スライド板(40)の押出突起(43)が、カートリッジ(C)の最上段の板状物(D)の後端に係止する。スライド板(40)を正面方向に摺動すると、最上段の板状物(D)がカートリッジ(C)の繰り出し口(35)およびケース本体(A)の繰り出し口(15)から容器外に繰り出される。
【0100】
なお、本発明では、カートリッジ(C)の上面部(33)を、ケース本体(A)の繰り出し部(13)の下部に密着して挿入すると、前記繰り出し部(13)に形成した繰り出し口(15)とカートリッジ(C)に形成した繰り出し口(35)の底面が、略同じ高さとなっている。このため、薄層の板状物(D)を収納した場合でも、円滑かつ変形させることなく、ケース本体(A)の繰り出し口(15)およびカートリッジ(C)の繰り出し口(35)から前記板状物(D)を取出すことができる。
【0101】
なお、全ての板状物(D)が繰り出された後は、弾性支持体カバー(23)に形成した凸部(23b)と弾性支持体固定部材(20b)に形成した凸部(20b’)とが係止し、弾性支持体カバー(23)の上方への付勢が停止される。図14に、前記弾性支持体カバー(23)に形成した凸部(23b)と弾性支持体固定部材(20b)に形成した凸部(20b’)とが係止する態様を示す。弾性支持体カバー(23)の上部に乾燥剤(E)のみが残存し、板状物(D)は全てスライド板(40)の摺動によって繰り出されている。スライド板(40)の押出突起(43)は、乾燥剤(E)の後端に係止され、スライド板(40)の摺動が停止されるため、板状物(D)が残存しないことを確認することができる。
【0102】
(5)板状物
本発明の板状物収納容器で繰り出すことができる板状物は、例えば、血糖値センサーなどの医療関係の測定、検査、治療などに使用する医療用センサーチップや、電極があって手で触れないほうがよい板状の検出チップなどの薄板小片状チップ、手で触ると危険な外科手術用メス、その他の替え刃類などの収納に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0103】
10・・・ケース本体の胴部、
10a・・・ケース本体の切り欠き部、
10c・・・ケース本体の胴部に形成した凸部、
13・・・ケース本体の繰り出し部、
13a・・・ケース本体の繰り出し部の上端部、
13b・・・ケース本体の繰り出し部の上端部の下部に形成される凹部、
13c・・・ケース本体の繰り出し部の上端部に形成される開放部、
13d・・・ケース本体の繰り出し部の上端部のストッパ、
15・・・ケース本体の繰り出し口、
16・・・ケース本体の板状物の再挿入口、
17・・・ケース本体のヒンジ、
19・・・ケース本体の蓋部、
19a・・・ケース本体の正面つまみ部、
20・・・底蓋本体、
20a・・・底蓋本体の椀形底部、
20a’・・・底蓋本体に形成された、ケース本体(A)の凸部(10b)と嵌着する凹部、
20b・・・弾性支持体固定部材、
20b’・・・弾性支持体固定部材に形成した凸部、
21・・・弾性支持体、
23・・・弾性支持体カバー、
23b・・・弾性支持体カバーの凸部、
25・・・つまみ部、
30・・・カートリッジの胴部、
30a・・・一部背面解放筒状部材、
30b・・・背面部材、
31・・・スライド孔、
32a・・・一部背面解放筒状部材に形成された背面部材を嵌着する嵌着溝、
32a’・・・スライド溝、
32b・・・背面部材に形成された嵌着凸部、
32b’・・・スライド凸部、
33・・・上面部、
34・・・フランジ、
35・・・板状物の繰り出し口、
36・・・板状物の再挿入口、
37・・・底部のつまみ部、
40・・・スライド板、
41・・・スライド板の天面部、
41a・・・スライド板の押出突起側に彎曲する凸部、
41b・・・スライド板に形成した凸部の上方の凹部、
43・・・押出突起、
100・・・板状物収納容器、
A・・・ケース本体、
B・・・底蓋、
C・・・カートリッジ、
D・・・板状物、
E・・・乾燥剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下面に押出突起が配設されたスライド板が摺動自在に装着された繰り出し部を有する直方体形状のケース本体と、弾性支持体が配設された底蓋と、直方体形状の筒状胴部にスライド孔が形成された上面部が配設された板状物を収納するカートリッジとからなり、
前記カートリッジは、前記底蓋の弾性支持体がカートリッジ内の板状物を前記スライド孔側に付勢されるように底蓋に装着され、かつ前記ケース本体のスライド板の押出突起がカートリッジの前記スライド孔を貫通して、カートリッジ内の板状物の端部に係止するようにケース本体に装着され、
前記スライド板は、ケース本体の正面と背面の間を摺動するものであり、
前記ケース本体とカートリッジとは、前記スライド板の摺動によって移動する板状物の繰り出し口が、前記ケース本体とカートリッジの正面に形成され、かつ前記ケース本体の繰り出し口と対応する位置にカートリッジの繰り出し口が位置することを特徴とする、板状物収納容器。
【請求項2】
背面を一部開放した直方体形状の一部背面解放筒状部材と、前記一部背面解放筒状部材に配設されるスライド孔が形成された上面部と、前記一部背面解放筒状部材に装着される背面部材とからなり、
前記一部背面解放筒状部材は、正面上端部に板状物の繰り出し口が形成され、かつ内壁に前記一部背面解放筒状部材の底面と平行にフランジが形成され、
前記フランジと前記上面部との間に板状物が収納されることを特徴とするカートリッジ。
【請求項3】
請求項2記載のカートリッジの製造方法であって、
前記一部背面解放筒状部材に前記上面部とを一体に成形し、
前記一部開放した背面から、フランジの上部に内容物を収納し、
ついで、前記一部開放した背面を前記背面部材で固設することを特徴とする、カートリッジの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−1256(P2012−1256A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138958(P2010−138958)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】