説明

板状部材の曲げ方法、及び、曲げ装置

【課題】小型の装置で効率よく板状部材を曲げる曲げ方法、及び、曲げ装置を提供する。
【解決手段】板状部材101の曲げ位置Pから所定の距離l1離れた板状部材101の第1の場所53を押圧する位置に押圧部材10を配置する第1の工程と、押圧部材10で板状部材101を押すとともに、押圧部材10を、曲げ位置Pから第1の場所53までの距離よりも短い距離l3離れ、板状部材101の所望の曲げ方向d1上にある板状部材101の第2の場所54を押圧する位置に押圧部材10を移動する第2の工程と、を有し、押圧部材10の移動方向と、板状部材101の所望の曲げ方向d1の延長線と、で成す角度αが0度より大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状の部材を曲げる方法、及び、曲げる装置にかかり、特に、複数の半導体素子から延出するバスバーを連続して曲げる際に用いる板状部材の曲げ方法、及び、曲げ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばDC/ACインバータユニット等の、パッケージ化された半導体素子から延出されたバスバー(板状部材)は、対応する配線基板の接続用端子に対接させるために、所定の形状に曲げ加工する必要がある。そのため、バスバーを一様で安定した形状に曲げるために、曲げダイと、プレッシャーパッドでバスバーを固定し、この固定されたバスバーをローラによって押圧することで曲げるバスバーの曲げ方法、及び、曲げ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−32294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、複数の半導体素子から延出するバスバーを連続して曲げる際には、作業の効率化を図るために、曲げ装置をロボットに取り付けて、工程を自動化することが考えられる。しかしながら、曲げローラに大きな負荷をかけてバスバーを曲げる必要があり、曲げローラの駆動力が大きくなるため、装置が大型化し、ロボットに取り付けて用いるのは困難という問題がある。
本発明は、上述した従来の技術が有する課題を解消し、小型の装置で効率よく板状部材を曲げる曲げ方法、及び、曲げ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、板状部材の曲げ方法であって、前記板状部材の曲げ位置から所定の距離離れた前記板状部材の第1の場所を押圧する位置に押圧部材を配置する第1の工程と、前記押圧部材で前記板状部材を押すとともに、前記押圧部材を、前記板状部材の所望の曲げ方向上にある前記板状部材の第2の場所を押圧する位置に前記押圧部材を移動する第2の工程と、を有し、前記押圧部材の移動方向と、前記板状部材の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度(α)が0度より大きいことを特徴とする。
この構成によれば、板状部材の曲げ始めでは、曲げ位置から離れた位置を押して、小さい力でも大きな曲げモーメントを発生させることができるため、小さな駆動力で板状部材を効率よく曲げることができ、曲げ装置の小型化を図ることができる。
【0006】
また、本発明は、上記の板状部材の曲げ方法において、前記第2の工程において、前記第2の場所は、前記曲げ位置から前記第1の場所までの距離よりも短い距離離れた場所にあることを特徴とする。
この構成によれば、押圧部材を、板状部材を押しながら曲げ位置に近い場所に移動させることができ、曲げ装置の小型化を図る事ができるとともに、板状部材の曲げ位置の曲げRを小さくすることができる。
【0007】
また、本発明は、上記の板状部材の曲げ方法において、前記第2の工程において、前記押圧部材の移動は、直線的な動作であることを特徴とする。
この構成によれば、押圧部材の動作は直線的であるため、簡易で小型の移動機構を用いて押圧部材を移動させることができ、曲げ装置の小型化を図ることができる。
【0008】
また、本発明は、板状部材の曲げ装置であって、板状部材を曲げ位置で把持する把持爪部と、前記曲げ位置から所定の距離離れた前記板状部材の第1の場所を押圧する位置に配置される押圧部材と、前記板状部材の所望の曲げ方向上にある前記板状部材の第2の場所を押圧する位置に前記押圧部材を移動させる移動手段と、を有し、前記押圧部材の移動方向と、前記板状部材の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度(α)が0度より大きいことを特徴とする。
この構成によれば、板状部材の曲げ始めでは、曲げ位置から離れた位置を押して、小さい力でも大きな曲げモーメントを発生させることができるため、小さな駆動力で板状部材を効率よく曲げることができ、装置の小型化を図ることができる。
【0009】
また、本発明は、上記の板状部材の曲げ装置において、前記第2の場所は、前記曲げ位置から前記第1の場所までの距離よりも短い距離離れた場所にあることを特徴とする。
この構成によれば、押圧部材を、板状部材を押しながら曲げ位置に近い場所に移動させることができ、曲げ装置の小型化を図ることができるとともに、板状部材の曲げ位置の曲げRを小さくすることができる。
【0010】
また、本発明は、上記の板状部材の曲げ装置において、前記移動手段は、前記押圧部材を直線的に移動させることを特徴とする。
この構成によれば、押圧部材の動作は直線的であるため、簡易で小型の移動機構を用いて押圧部材を移動させることができ、曲げ装置の小型化を図ることができる。
【0011】
また、本発明は、上記の板状部材の曲げ装置において、前記把持爪部と、前記押圧部材と、前記移動手段とは、共通の浮動部材上に配設され、前記浮動部材は、前記把持爪部が前記板状部材を把持するときには、浮動状態となり、前記板状部材の位置に倣って移動することを特徴とする。
この構成によれば、板状部材を把持する際には、把持爪部が板状部材の位置に倣って移動するため、板状部材の延出元であるスイッチング素子に負荷がかかるのを防止することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、板状部材の曲げ方法であって、板状部材の曲げ方法であって、前記板状部材の曲げ位置から所定の距離離れた前記板状部材の第1の場所を押圧する位置に押圧部材を配置する第1の工程と、前記押圧部材で前記板状部材を押すとともに、前記押圧部材を、前記板状部材の所望の曲げ方向上にある前記板状部材の第2の場所を押圧する位置に前記押圧部材を移動する第2の工程と、を有し、前記押圧部材の移動方向と、前記板状部材の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度(α)が0度より大きいため、板状部材の曲げ始めでは、曲げ位置から離れた位置を押し、小さい力で大きな曲げモーメントを発生させて小さな駆動力で板状部材を効率よく曲げることができ、装置の小型化を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係る曲げ装置をロボットアームに取り付けた状態を示す斜視図である。
【図2】曲げ装置の構成を示す斜視図である。
【図3】曲げ装置を背面側から視た斜視図である。
【図4】板状部材の曲げ工程における押圧部材の先端の移動過程を示す図であり(A)は曲げ始め、(B)は曲げ途中、(C)は曲げ終わりを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る曲げ装置1をロボットハンド50に取り付けて使用している状態を示す斜視図である。なお、本実施形態において、前後、左右、及び、上下といった方向は、図1に示した方向から曲げ装置1を見た方向に従う。
曲げ装置1は、板状部材を所望の曲げ位置で曲げる際に用いる装置であり、特に複数の半導体素子がパッケージ化された、半導体モジュール100の各半導体素子103より延出したバスバー(板状部材)101を連続して曲げる際に好適に用いることができる。半導体モジュール100は、例えば、ハイブリッド自動車のバッテリーとモータとの間に配設されて、バッテリーのDC電力をAC電力に変換してモータに供給する電力変換装置等に用いることができる。
【0015】
半導体モジュール100は、矩形板状に形成された6つのスイッチング素子(半導体素子)103と、各スイッチング素子103を挟み込むようにして設けられるヒートシンク102とを交互に並べて構成されている。6つのスイッチング素子103は、IGBTやMOSFET等を用いて構成される。半導体モジュール100は、隣り合う二つのスイッチング素子103を直列接続し、直列接続された2つのスイッチング素子103の一端側のノードN1が直流電源の正側に、他端のノードN2が負側に接続され、これにより、2つのスイッチング素子103の接続点N3が交流出力1相分の端子となる。各ノードN1,N2,N3には、バスバー101が接続され、スイッチング素子103は、スイッチング素子103から延出する各バスバー101を曲げて互いに接続されると共に、直流電源3の正側、及び、負側の接続点に接続される。
【0016】
半導体モジュール100には、交流出力1相分の回路ごとに分けて直列接続された2つのスイッチング素子103,103を並列に3組接続して備えられ、三相インバータ回路が構成されている。図示は省略したが、半導体モジュール100には、三相インバータ回路を駆動する電気回路が実装されたプリドライバー基板、及び、三相インバータ回路のスイッチング時における直流電源の電圧変動を抑制し、電圧の跳ね上がり等を平滑する平滑用コンデンサモジュールが設けられる。
【0017】
ところで、半導体モジュール100の各スイッチング素子103のノードN1,N2,N3に接続され、スイッチング素子103から延出するバスバー101は、バスバー101の延出元であるスイッチング素子103に負担をかけることなく曲げる必要がある。また、バスバー101は、スイッチング素子103の各ノードN1,N2,N3の接続を確実にするために、高精度に、つまり、バスバー101の曲げRを小さくして、曲げる必要がある。以下に、半導体モジュール100の各スイッチング素子103から延出するバスバー101を、スイッチング素子103に負荷をかけることなく、高精度に連続して曲げる板状部材101の曲げ方法、及び、曲げ装置1に関して詳述する。
【0018】
曲げ装置1は、図1に示すように、ロボットハンド50の先端51に配設される。曲げ装置1は、第1の曲げ装置1Aと、第1の曲げ装置1Aに対向して設けられた第2の曲げ装置1Bと、を有する。第1の曲げ装置1Aと、第2の曲げ装置1Bとは、それぞれロボットハンド50Aと、ロボットハンド50Bと、の先端51に配設される。第1の曲げ装置1Aは、半導体モジュール100の後ろ側に一列に並ぶノードN1,N2に接続された板状部材101を図中左方向に曲げる。第2の曲げ装置1Bは、半導体モジュール100の前側に一列に並ぶノードN3に接続された板状部材101を1つおきに図中右方向に曲げる。
【0019】
ロボットハンド50A,50Bは、第1の曲げ装置1Aと、第2の曲げ装置1Bと、を対向させたままで、垂直方向の回転軸で回転可能に構成されている。つまり、ロボットハンド50A,50Bを回転させた場合には、第1の曲げ装置1Aが半導体モジュール100の前側に、第2の曲げ装置1Bが半導体モジュール100の後ろ側に配置される。ロボットハンド50A,50Bを回転させて図中前側に配置された第1の曲げ装置1Aは、第2の曲げ装置1Bによって曲げられた板状部材101に重ねるように、残りの板状部材101を図中左側に曲げる。これによって、半導体モジュール100の前側に一列に並ぶノードN3に接続された板状部材101は、隣り合う板状部材101の一方が左側に、他方が右側に曲げられて互いに重ねられて接続される。これによって、隣り合う2つのスイッチング素子103が直列接続される。
【0020】
図2、及び、図3は、曲げ装置1の構成を示す図であり、図2は曲げ装置1を前面側から視た図、図3は、曲げ装置1を背面側(後ろ面側)から視た図である。図2に示すように、曲げ装置1は、板状部材101を押圧して曲げる押圧部材10と、押圧部材10を移動させる移動装置(移動手段)15と、押圧部材10で板状部材101を押圧して曲げる際に板状部材101を、板面の両側から把持する把持部材(把持爪部)20と、を備える。押圧部材10と、移動装置15と、把持部材20とは、共通の浮動部材3上に配設されている。浮動部材3は、スライドガイド24を介してホルダー2に取り付けられ、ホルダー2は、ロボットハンド50の先端51に配設可能に構成されている。
【0021】
スライドガイド24は、レール24Aと、テーブル24Bと、から構成される。スライドガイド24は、レール24Aが、ホルダー2に固定され、テーブル24Bが、レール24Aに案内されて左右に直線的にスライド移動可能に構成されている。テーブル24Bには、浮動部材3が固定される。浮動部材3は、テーブル24Bがレール24Aに対して移動するのに倣って移動し、ホルダー2に対して浮動状態で取り付けられている。
【0022】
把持部材20は、板状部材101を曲げる際に板状部材101を、第1の爪21Aと、第2の爪21Bとで挟持する爪部21を備える。第1の爪21Aは、浮動部材3に固定される。第2の爪21Bは、エアスライドテーブル25を介して浮動部材3に取り付けられている。エアスライドテーブル25は、エアシリンダ22によってスライドテーブル23Bがガイドレール23Aに対して左右に直線的にスライド移動可能に構成される。エアスライドテーブル25は、ガイドレール23Aが浮動部材3に固定され、スライドテーブル23Bには、第2の爪21Bが固定されている。
エアシリンダ22によってスライドテーブル23Bが移動されると、第2の爪21Bが、浮動部材3に固定された第1の爪21Aと、第2の爪21Bと、の間の隙間を広げる、或いは、狭めるように移動する。エアスライドテーブル25は、第1の爪21Aと、第2の爪21Bとの間に板状部材101を挟持していないときには、スライドテーブル23Bが、ガイドレール23Aの作動基端まで戻されて、第1の爪21Aと、第2の爪21Bとの間の隙間が最も広くなるように構成されている。
【0023】
押圧部材10は、移動装置15によって移動可能に浮動部材3に上に配設されている。移動装置15は、スライドベース13と、リニアスライドシリンダ12と、を備える。スライドベース13は、押圧部材10を浮動部材3に略平行に、直線的にスライド移動可能に支持する。押圧部材10は、スライドベース13に案内されて、リニアスライドシリンダ12によって、スライド移動する。押圧部材10は、スライドベース13に、押圧部材10の移動方向と、板状部材101の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度α(図4参照)が、0度より大きくなるように、つまり、水平方向から所定角度(20°程度)傾いた軌道で直線的に移動するように支持される。押圧部材10の先端には、曲げローラ11が回転可能に設けられる。曲げローラ11は、押圧部材10で板状部材101を押圧して曲げる際に、板状部材101の押圧位置に当接するとともに、板状部材101上を転がり、押圧位置を移動させる。
【0024】
曲げ装置1の背面側には、図3に示すように、浮動部材3をホルダー2に対して固定するロック部32が設けられる。ロック部32は、ロックピンシリンダ30と、ロック部材31と、を備える。ロックピンシリンダ30は、ホルダー2に固定され、ロック部材31は、浮動部材3に固定される。ロックピンシリンダ30は、不図示のピン部材をロック部材31に挿抜可能に構成され、ロック部材31には、このピン部材が挿入される、凹部が設けられ、この凹部にピン部材が挿入されることで、浮動部材3がホルダー2に対して位置決めされるとともに、固定されるように構成されている。
【0025】
板状部材101を曲げる際には、まず、曲げ対象となる板状部材101が、把持部材20の第1の爪21Aと、第2の爪21Bと、の間に配置され、かつ、第1の爪21Aに当接するように、ロボットハンド50で、曲げ装置1を移動させる。なお、曲げ装置1は、板状部材101の板面と板状部材101を把持する把持部材20の各爪21A,21B、が互いに平行に配置されるように予め設定されている。
次に、エアシリンダ22によってスライドテーブル23Bを移動させて、第2の爪21Bを板状部材101に押し当てて、第1の爪21Aと、第2の爪21Bとの間に板状部材101を挟持する。続いて、ロック部32で、浮動部材3をホルダー2に対して固定する。
【0026】
この構成によれば、把持部材20で曲げ対象の板状部材101を第1の爪21Aと、第2の爪21Bと、で挟んで把持する際には、把持部材20が配設された浮動部材3が、ホルダー2に対して浮動可能である。そのため、把持部材20は、板状部材101の位置に倣って移動可能であり、板状部材101を把持する際に、板状部材101の延出元であるスイッチング素子103に負荷がかかるのを防止することができる。
【0027】
次に、図4を用いて、板状部材101を曲げ装置1で曲げ方向d1に曲げる工程について説明する。
板状部材101が曲げられる曲げ位置Pは、図4に示すように、把持部材20によって把持された板状部材101の、第1の爪21A、及び、第2の爪21Bの上面近傍に位置するように構成されている。つまり、板状部材101は、押圧部材10で押圧された際に、第1の爪21A、或いは、第2の爪21Bの、板状部材101と当接する面の上端に押し当てられて曲げられるように構成されている。
この構成によれば、第1の爪21Aと、第2の爪21Bと、で板状部材101を挟持し、板状部材101を曲げ方向側の第1の爪21A、或いは、第2の爪21Bに押し当てて曲げることができるため、板状部材101の延出元であるスイッチング素子103に押圧による負荷をかけることなく板状部材101を曲げることができる。
【0028】
押圧部材10は、水平方向から所定角度(20°程度)傾いた軌道で直線的に移動するため、押圧部材10の先端に設けられた曲げローラ11は、図4に示した軌道方向d2に向かって斜めに移動する。曲げローラ11の軌道角度α、つまり、押圧部材10の移動方向d2と、板状部材101の所望の曲げ方向d1の延長線と、で成す角度αは、0度より大きく、水平方向に対して20°程度に設定されていることが望ましい。例えば、曲げローラ11の軌道角度αを大きくした(例えば25°)場合には、板状部材101の曲げが浅くなってしまうため、板状部材101を電気的接続する観点から視て好適ではない。また、角度αを0度より大きくすることで、板状部材101の曲げ位置Pから所定距離l1離れた位置を押圧しながら、曲げローラ11の大きさ(直径)を小型化することができる。
【0029】
板状部材101を曲げる工程は、図4(A)に示すように、板状部材101の押し始めとなる第1の場所51を押圧する位置に、曲げローラ11が当接するように押圧部材10を配置する第1の工程を有する。第1の場所51は、板状部材101の曲げ位置Pから所定距離l1離れた位置に設定されている。次に、第2の工程で、押圧部材10を、スライドベース13に案内させて、リニアスライドシリンダ12でスライド移動させて板状部材101を押圧して曲げる。この時、曲げローラ11は、板状部材101の板面上を回転移動する。
【0030】
押圧部材10は、直線的な動作で、斜めにスライド移動するため、図4(B)に示すように、板状部材101の曲げ位置Pから曲げローラ11までの距離l2は、板状部材101の第1の場所51までの距離l1に比べて徐々に短くなっていく。この構成によれば、押圧部材10を、板状部材101を押しながら曲げ位置Pに近い場所に移動させることができ、曲げ位置Pでの板状部材101の曲げRを小さくすることができ、板状部材101を所望の曲げ位置Pで高精度に曲げることができる。
【0031】
押圧部材10は、図4(C)に示すように、第2の工程で、板状部材101の所望の曲げ方向d1上にある板状部材101の第2の場所54を押圧する位置に押圧部材10を移動させる。第2の場所54は、板状部材101の押し終わり位置であり、板状部材101の曲げ方向d1上で、かつ、曲げ位置Pの略水平方向上にある。曲げ位置Pから第2の場所54までの距離l3は、曲げ位置Pから第1の場所51までの距離l1よりも短い距離離れている。
【0032】
これらの構成によれば、押圧部材10を斜めに直線的にスライド移動させることで、板状部材101の曲げ始めでは、曲げ位置Pから離れた第1の場所53を押圧し、小さな力でも、大きな曲げモーメントを発生させることができ、小さな駆動力で板状部材101を曲げることができる。さらに、曲げローラ11を徐々に曲げ位置Pに近づくように移動させながら板状部材101を押圧して曲げることができるため、曲げ位置Pでの板状部材101の曲げRを小さくすることができる。さらに、曲げ位置Pから板状部材101の押し終わり位置である第2の場所54までの距離を、押し始めの位置である第1の場所53までの距離l1より短くすることができるため、板状部材101の曲げ方向d1への押圧部材10の駆動距離を小さくすることができる。そのため、小型の曲げ装置1で、効率よく板状部材101を曲げることができ、ロボットハンド50に曲げ装置1を取り付けて、効率よく、複数の板状部材101を連続して曲げることができる。
【0033】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態によれば、板状部材101の曲げ位置Pから所定の距離l1離れた板状部材101の第1の場所53を押圧する位置に押圧部材10を配置する第1の工程と、押圧部材10で板状部材101を押すとともに、板状部材101の所望の曲げ方向d1上にある板状部材101の第2の場所54を押圧する位置に押圧部材10を移動する第2の工程と、を有し、前記押圧部材の移動方向と、前記板状部材の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度(α)が0度より大きい。これにより、板状部材101の曲げ始めでは、曲げ位置Pから離れた位置を押すため、小さい力でも大きな曲げモーメントを発生させることができ、小さな駆動力で板状部材101を効率よく曲げることができ、曲げ装置1の小型化を図ることができる。
【0034】
また、本発明を適用した実施形態によれば、第2の工程において、第2の場所54は、曲げ位置Pから第1の場所53までの距離よりも短い距離離れた場所にあるため、押圧部材10を、板状部材101を押しながら曲げ位置Pに近い場所である第2の場所54に移動させることができ、曲げ位置Pでの板状部材101の曲げRを小さくすることができる。
【0035】
また、本発明を適用した実施形態によれば、第2の工程において、押圧部材10の移動は、直線的な動作であるため、押圧部材10を移動させる移動装置15は、例えばリニアスライダー等の簡易で小型な機構のもので良く、曲げ装置1を簡易な構造で、小型なものとすることができる。
【0036】
また、本発明を適用した実施形態によれば、板状部材101を曲げ位置Pで把持する把持爪部20と、曲げ位置Pから所定の距離l1離れた板状部材101の第1の場所53を押圧する位置に配置される押圧部材10と、板状部材101の所望の曲げ方向d1上にある板状部材101の第2の場所54を押圧する位置に押圧部材10を移動させる移動手段15と、を有し、前記押圧部材の移動方向と、前記板状部材の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度(α)が0度より大きい。これにより、板状部材101の曲げ始めでは、曲げ位置Pから離れた位置を押すため、小さい力でも大きな曲げモーメントを発生させることができ、小さな駆動力で板状部材101を効率よく曲げることができ、曲げ装置1の小型化を図ることができる。
【0037】
また、本発明を適用した実施形態によれば、第2の場所は、曲げ位置から第1の場所までの距離よりも短い距離離れた場所にあるため、押圧部材10を、板状部材101を押しながら曲げ位置Pに近い場所である第2の場所54に移動させることができ、曲げ位置Pでの板状部材101の曲げRを小さくすることができる。
【0038】
また、本発明を適用した実施形態によれば、移動手段15は、押圧部材10を直線的に移動させるため、押圧部材10を移動させる移動手段15は、例えばリニアスライダー等の簡易で小型な機構のもので良く、曲げ装置1を簡易な構造で、小型なものとすることができる。
【0039】
また、本発明を適用した実施形態によれば、把持爪部20と、押圧部材10と、移動手段15とは、共通の浮動部材3上に配設され、浮動部材3は、把持爪部20が板状部材101を把持するときには、浮動状態となり、板状部材101の位置に倣って移動する。これにより、板状部材101を把持する際に、板状部材101の延出元であるスイッチング素子103に負荷がかかるのを防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、1A、1B 曲げ装置
3 浮動部材
d1 曲げ方向
l1 所定距離
l3 距離
10 押圧部材
15 移動装置(移動手段)
20 把持部材(把持爪部)
53 第1の場所
54 第2の場所
101 バスバー(板状部材)
P 曲げ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材の曲げ方法であって、
前記板状部材の曲げ位置から所定の距離離れた前記板状部材の第1の場所を押圧する位置に押圧部材を配置する第1の工程と、
前記押圧部材で前記板状部材を押すとともに、前記押圧部材を、前記板状部材の所望の曲げ方向上にある前記板状部材の第2の場所を押圧する位置に前記押圧部材を移動する第2の工程と、
を有し、前記押圧部材の移動方向と、前記板状部材の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度(α)が0度より大きいことを特徴とする板状部材の曲げ方法
【請求項2】
前記第2の工程において、前記第2の場所は、前記曲げ位置から前記第1の場所までの距離よりも短い距離離れた場所にあることを特徴とする請求項1に記載の板状部材の曲げ方法。
【請求項3】
前記第2の工程において、前記押圧部材の移動は、直線的な動作であることを特徴とする請求項1または2に記載の板状部材の曲げ方法。
【請求項4】
板状部材を曲げ位置で把持する把持爪部と、
前記曲げ位置から所定の距離離れた前記板状部材の第1の場所を押圧する位置に配置される押圧部材と、
前記板状部材の所望の曲げ方向上にある前記板状部材の第2の場所を押圧する位置に前記押圧部材を移動させる移動手段と、
を有し、前記押圧部材の移動方向と、前記板状部材の所望の曲げ方向の延長線と、で成す角度(α)が0度より大きいことを特徴とする板状部材の曲げ装置。
【請求項5】
前記第2の場所は、前記曲げ位置から前記第1の場所までの距離よりも短い距離離れた場所にあることを特徴とする請求項4に記載の板状部材の曲げ装置。
【請求項6】
前記移動手段は、前記押圧部材を直線的に移動させることを特徴とする請求項4または5に記載の板状部材の曲げ装置。
【請求項7】
前記把持爪部と、前記押圧部材と、前記移動手段とは、共通の浮動部材上に配設され、
前記浮動部材は、前記把持爪部が前記板状部材を把持するときには、浮動状態となり、前記板状部材の位置に倣って移動することを特徴とする請求項4から6のいずれかに記載の板状部材の曲げ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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