説明

板紙の製造方法

【課題】ピッチトラブルや無機スケールトラブルを回避しながら、優れたサイズ性を有する板紙の製造方法を提供する。
【解決手段】炭酸カルシウムを含有する古紙を原料とし板紙を製造するにあたり、(メタ)アクリルアミドポリマーのカチオン変性物と中性サイズ剤と凝結剤の存在下に中性域で板紙を抄紙する。具体的には、カチオン当量1−8meq/gのカチオン変性アクリルアミド系重合体と中性サイズ剤と凝結剤の存在下、炭酸カルシウムを含有する古紙よりpH6.0〜8.5において板紙を製造することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板紙の製造方法に関し、さらに詳しくは、中性域で優れたサイズ度と紙力を備えた板紙を製造できる板紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に古紙から板紙を抄造する場合、硫酸バンドにより抄紙pHを酸性にして製造していた。これは一般的に用いられているロジン系サイズ剤の効果を効率良く得る為である。
【0003】
しかしながら、近年環境問題から抄紙系はクローズ化が進み、硫酸バンドに由来する硫酸イオンの蓄積によるマシンの腐食が問題となった。また、古紙中の炭酸カルシウム含有量が近年増えており、抄紙系のpHが下がり難くそのため硫酸バンドの使用量が増大している。このクローズ化による硫酸イオンの増加と炭酸カルシウム含有量の増加により、硫酸イオンと炭酸カルシウムとの反応物である硫酸カルシウム(石膏)が系内で増加し、これがマシンの工程で析出する事によるスケールトラブルが多発している。
【0004】
現在、板紙の製造において一般的な抄造pHは5〜6.5である。これは上記の問題を回避する為に従来の酸性抄紙から硫酸バンドを減添した為であり、また炭酸カルシウムの含有量が増加したため抄紙pHが上がってきた為でもある。
【0005】
サイズ剤は高pH対応のロジン系サイズ剤が多用されているが効果は充分でなく、古紙中の炭酸カルシウムの含有量が変動するため抄紙pHが変動し、サイズ性が安定しないと言う問題を抱えている。また、クローズ化の進行により硫酸バンドと炭酸カルシウムとの反応により発生するカルシウムイオンが系内に蓄積され、これに伴いロジン系サイズ剤の定着率が落ちてきており、未定着のロジン系サイズ剤が原因となる原料系の発泡トラブルも問題となっている。このカルシウムイオンの蓄積は、アクリルアミド系紙力増強剤の効果も落とす原因となっている。
【0006】
前記した問題を回避するために炭酸カルシウムを含有するパルプスラリーに特定のロジン系エマルジョンサイズ剤と硫酸バンド及びキレート剤の存在下にpH6〜8の中性条件で抄紙し乾燥する方法(例えば、特許文献1参照)、カルシウムイオンを含有するパルプスラリーから紙力強度に優れた板紙を製造する際に使用する紙力増強剤として、従来技術として、N置換基にイオン性を示す原子団を含まず、かつN置換基中に4〜20個の炭素原子を有するN置換(メタ)アクリルアミドを特定量で含有するイオン性の(メタ)アクリルアミド系共重合体(例えば、特許文献2参照)、特定のリン酸基を含有する(メタ)アクリルアミド系重合体(例えば、特許文献3参照)、古紙パルプを含むパルプスラリーに、水溶性リグニンと、紙力増強剤として特定の(メタ)アクリルアミド系共重合体を添加する技術(例えば、特許文献4参照)等が提案されているが、未だその効果は十分でなかった。
【特許文献1】特開2004−190149号公報
【特許文献2】特開平9−209293号公報
【特許文献3】特開平9−324391号公報
【特許文献4】特開2002−194694号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、中性抄紙により炭酸カルシウムを含有するパルプスラリーから板紙を製造することができ、しかも石膏スケールの発生が無く、サイズ効果に優れた板紙の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、(1)ホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体と中性サイズ剤と凝結剤の存在下、炭酸カルシウムを含むパルプスラリーをpH6.0〜8.5で抄紙することを特徴とする板紙の製造方法であり、(2)カチオン変性アクリルアミド系重合体のカチオン当量が1meq/g〜8meq/gであることを特徴とする(1)の板紙の製造方法、(3)中性サイズ剤が置換環状ジカルボン酸無水物及び/又は2−オキセタノンを主成分とするサイズ剤である(1)又は(2)の板紙の製造方法、(4)凝結剤がジアリルアミンと(メタ)アクリルアミドとの共重合体であることを特徴とする(1)〜(3)の板紙の製造方法、(5)パルプスラリーに硫酸バンドをパルプスラリーの固形分に対して1質量%以下の添加を行うことを特徴とする(1)〜(4)の板紙の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法によりピッチトラブルや無機スケールトラブルを回避しながら、優れたサイズ性を有する板紙を製造することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明の技術的構成を詳しく説明する。
まず、本発明の板紙の製造方法が対象とする板紙とはライナー原紙、中芯原紙、紙管原紙、石膏ボード原紙、コート白板、ノーコート白板、チップボール等の板紙である。
【0011】
炭酸カルシウムを含むパルプリーは炭酸カルシウム含有古紙をそのままパルプスラリーとしてもよく、炭酸カルシウムを添加して炭酸カルシウムを含むパルプスラリーとすることができる。炭酸カルシウムは軽質炭酸カルシウムでも重質炭酸カルシウムでもよい。
【0012】
本発明の炭酸カルシウム含有古紙とは、段ボール古紙、雑誌古紙、新聞古紙、上白古紙、オフィス古紙等一般的な古紙を指し、古紙中に炭酸カルシウムを0.5〜20%含有する。炭酸カルシウム含有の由来は、紙その物に炭酸カルシウムが填料として内添された中性紙の場合もあり、また紙のコート層のピグメントとして炭酸カルシウムが使用されているコート紙の場合もある。またこれら炭酸カルシウムを含有する古紙を原料に作られた再生紙に由来する場合もある。
【0013】
カチオン変性アクリルアミド系重合体としては、ホフマン分解反応によりカチオン変性したアクリルアミド系重合体であれば良く、変性前のアクリルアミド重合体としては(メタ)アクリルアミドと共重合可能なノニオンモノマー、カチオンモノマー、アニオンモノマーとの共重合体や、これに架橋性モノマーや連鎖移動剤を併用したものであってもよい。
【0014】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能なノニオンモノマーとしては、アクリルニトリル、(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0015】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能なカチオンモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アリルアミン、ジアリルアミン等のアミノ基を有するビニルモノマー又はそれらの無機酸若しくは有機酸の塩類あるいは第3級アミン基含有ビニルモノマーとメチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン、グリシジルトリメチルアンモニウムクロライド、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級化剤との反応によって得られる第4級アンモニウム基を有するビニルモノマー等が挙げられる。
【0016】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能なアニオンモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸、スチレンスルフォン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、(メタ)アリルスルフォン酸又はそれらのナトリウム、カリウム、アンモニウム塩等のビニルモノマーが挙げられる。
【0017】
本発明において(メタ)アクリルアミドと共重合可能な架橋性ビニルモノマーとしては、メチロールアクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート類、アジピン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル等のジビニルエステル類、エポキシアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ジビニルベンゼン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トエイアリルイソシアヌレート、トリアリルトリメリテート、トリアリルアミン、N,N−ジアリルアクリルアミド、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラアリルピロメリラート、N置換アミド基を有するN,N−ジメチルアクリルアミド等が挙げられる。
【0018】
本発明においてホフマン分解反応によりカチオン変性するアクリルアミド系重合体は前記(メタ)アクリルアミドと共重合可能なモノマーの1種または複数種を共重合させても良いが(メタ)アクリルアミドは総モル%の50%以上である。
【0019】
アクリルアミド系重合体の製造方法としては、従来公知の各種の方法を採用することが出来る。例えば、撹拌機及び窒素ガス導入管を備えた反応容器に、前述のモノマーと水を仕込み、重合開始剤として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリ、アンモニウムハイドロパーオキサイド等の過酸化物、またはそれらの過酸化物と重亜硫酸塩等の還元剤とを組み合わせたレドックス開始剤、あるいは2,2−アゾビス−(2−アミジノプロパン)塩酸塩等の水溶性アゾ系重合開始剤などを加え、また必要に応じてイソプロピルアルコール、アリルアルコール、次亜リン酸ナトリウム、メルカプトエタノール、チオグリコール酸等の重合調整剤又は連鎖移動剤を適宜使用し、反応温度20〜90℃で1〜5時間反応させ、目的とするアクリルアミド系重合体を得ることが出来る。
【0020】
本発明のホフマン分解反応によるカチオン変性は従来と同様の方法を採用すれば良い。例えば、前述のアクリルアミド系重合体の水溶液に次亜ハロゲン酸塩とアルカリ触媒とを添加することにより、アルカリ性領域においてアクリルアミド系重合体と次亜塩素酸塩とを反応せしめ、しかる後に酸を添加してpH3.5〜5.5に調整する方法、塩化コリンの存在下にポリアクリルアミドをホフマン分解反応して調整する方法(例えば、特許文献5参照)、ホフマン分解反応において水酸基を有する第3級アミンと塩化ベンジルあるいはその誘導体との4級反応物を添加して調整する方法(例えば、特許文献6参照)、ホフマン分解反応において安定剤として有機多価アミンを添加して調整する方法(例えば、特許文献7参照)、またはホフマン分解反応において安定剤として特定のカチオン化合物を添加して調整する方法(例えば、特許文献8参照)等を挙げることが出来る。
【特許文献5】特開昭53−109545号公報
【特許文献6】特公昭58−8682号公報
【特許文献7】特公昭60−17322号公報
【特許文献8】特公昭62−45884号公報
【0021】
ホフマン分解反応によりカチオン変性されたアクリルアミド系重合体のカチオン当量は好ましくは1.0meq/g〜8.0meq/gの範囲である。1.0meq/g未満であるとサイズ性の発現効果が弱い場合があり、8.0meq/gを越えたホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体を用いても本発明の効果は頭打ちとなり、分解反応のコストに見合った効果が得られない場合がある。
【0022】
本発明に用いる中性サイズ剤としては、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤、2−オキセタノン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤、カチオン性合成サイズ剤等が挙げられ、これらを単独又は2種以上で用いることができる。これらの中で、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤は、紙の滑りが少なく、サイズ度の立ち上がりが早い、サイズ効果が優れる等の利点があるため、板紙の表層のサイジングを行うには置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤が好ましい。
【0023】
上記置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤はサイズ剤としての有効成分のうち置換環状ジカルボン酸無水物を主成分とするサイズ剤のことであり、置換環状ジカルボン酸無水物は、
一般式(1)

(但し、式(1)中、R1は炭素数5以上のアルキル基、アルケニル基、アラルキル基、またはアラルケニル基、nは2〜3の整数を表わす。)
の基本構造を有する置換環状ジカルボン酸無水物である。
【0024】
具体的にはヘキサデシルコハク酸無水物、オクタデシルコハク酸無水物等のアルキルコハク酸無水物、ヘキサデセニルコハク酸無水物、オクタデセニルコハク酸無水物等のアルケニルコハク酸無水物、及びヘキサデシルグルタル酸無水物、オクタデシルグルタル酸無水物、ヘキサデセニルグルタル酸無水物、オクタデセニルグルタル酸無水物等のアルキルグルタル酸無水物などが挙げられる。
【0025】
これらの置換環状ジカルボン酸無水物は、通常の有機合成法により合成することができ、又、市販品として容易に得ることができるものもある。例えばヘキサデシルコハク酸無水物は、1−ヘキサデセンに無水マレイン酸を付加させることで合成される。
【0026】
前記置換環状ジカルボン酸無水物を従来公知の方法により乳化分散してエマルションの形態で用いることができる。また、その乳化方法としては特に制限はなく、従来周知の方法を適用できる。例えば、界面活性剤を含んだ置換環状ジカルボン酸無水物を水または(イオン性)デンプン糊液で乳化分散せしめる方法、界面活性剤を含まない置換環状ジカルボン酸無水物を界面活性剤の存在下または不存在下に、ポリアクリルアミド系乳化剤、及び/若しくは(イオン性)デンプン糊液の存在下乳化分散せしめる方法などが挙げられる。
【0027】
前記2−オキセタノン系サイズ剤はサイズ剤としての有効成分のうち2−オキセタノン化合物を主成分とするサイズ剤のことであり、2−オキセタノン化合物は、

一般式(2)
(但し、式(2)中のR、Rは、8〜24個の炭素原子を有する同一または異なる飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基を示す。)
の基本構造を有するアルキル及び/又はアルケニルケテンダイマー、及び、
一般式(3)

(但し、式(3)中、n は自然数であり、通常1〜10であり、R及びRは8〜24個の炭素原子を有する同一または異なる飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基であり、Rは4〜40個の炭素原子を有する飽和又は不飽和のアルキル基又はアルケニル基である。)
の基本構造を有するアルキル及び/又はアルケニルケテンマルチマーの総称である。
【0028】
前記2−オキセタノン化合物は、炭素数6から30の飽和または不飽和モノカルボン酸、炭素数6から44の飽和ジカルボン酸または不飽和ジカルボン酸、及びこれらの塩化物、並びにこれらの混合物を原料として製造される。具体的な原料としては、飽和モノカルボン酸としてステアリン酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンタデカン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、及びベヘン酸、これらの酸塩化物、並びにこれらの混合物よりなる群から選択され、不飽和モノカルボン酸としてオレイン酸、リノール酸、ドデセン酸、テトラデセン酸、ヘキサデセン酸、オクタデカジエン酸、オクタデカトリエン酸、エイコセン酸、エイコサテトラエン酸、ドコセン酸及びドコサペンタエン酸、及びこれらの酸塩化物、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される。飽和または不飽和ジカルボン酸としては、具体的にセバシン酸、アゼライン酸、11,10−ドデカンニ酸、ブラジル酸、ドコサンニ酸、及びこれらの酸塩化物、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される。
【0029】
前記2−オキセタノン化合物は、上記の原料を用いて通常の有機合成法により合成することができ、又、市販品として容易に得ることもできるものもある。例えばステアリルケテンダイマーは、ステアリン酸にホスゲン、三塩化リン、塩化チオニルなどの塩素化剤を反応させ、ステアリン酸クロライドにし、次いでトリエチルアミンで脱塩酸処理した後、トリエチルアミン塩酸塩を除去することで得られる。
【0030】
前記2−オキセタノン化合物を従来公知の方法により乳化剤を用い分散してエマルションの形態で用いることができる。分散剤として例えば、カチオン化澱粉やカチオン性ポリマー等のカチオン性分散剤、スルホン酸基若しくは硫酸エステル基およびそれらの塩を有するアニオン性分散剤が挙げられる。これらの分散剤の一種あるいは二種以上混合して用いることができる。また、その乳化方法としては特に制限はなく、従来周知の方法を適用でき、例えば、反転乳化、溶剤乳化、強制乳化などの乳化方法などを用いることができる。
【0031】
上記中性ロジンサイズ剤としては、特に制限はなく、従来公知のものを使用できる。例えば、ロジン系物質として、(A)ロジン類および/または、ロジン類のα,β−不飽和カルボン酸変性ロジン類、(B)ロジン類のエステル化反応により得られるロジンエステル類および/または、前記ロジンエステル類のα,β−不飽和カルボン酸変性ロジンエステル類、を任意に組み合わせて使用することが出来るが、一般に(B)成分の少なくとも1種を含むことが必須条件である。これらロジン系物質を、従来公知の方法で水に乳化分散させたロジンエマルションサイズ剤を使用することができる。
【0032】
本発明に用いる凝結剤としては有機系凝結剤と無機系凝結剤が挙げられる。有機系凝結剤として1種又は2種以上のカチオン性単量体を重合することにより得られるカチオン性重合物、アミン−エピハロヒドリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン変性物、ポリビニルアミン等のカチオン性化合物が挙げられる。
【0033】
本発明に用いられるカチオン性重合物に用いられるカチオン性単量体としては、下記一般式(4)〜(6)で示される化合物、ジアリルアミン類等が挙げられ、これらは単独でも用いられるが2種以上併用することができる。
【0034】
一般式(4)

(但し、式中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、RはH又はメチル基、R、R、R、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、X、Yは同一又は異なるアニオン性基を示す。)
【0035】
前記一般式(4)の具体的なカチオン性単量体としては、2−ヒドロキシ−N,N,N,N′,N′−ペンタメチル−N′−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)−1,3−プロパンジアンモニウムジクロライド、2−ヒドロキシ−N−ベンジル−N,N−ジエチル−N′,N′−ジメチル−N′−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)−1,3−プロパンジアンモニウムジブロマイドなどが挙げられる。
【0036】
一般式(5)

(但し、式中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、RはH又はメチル基、R、Rは同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基を示す。)
【0037】
上記一般式(5)の具体的なカチオン性単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0038】
一般式(6)

(但し、式中、Aは酸素又はNH、nは2〜4の整数、R10はH又はメチル基、R11 、R12は同一又は異なる炭素数1〜3の低級アルキル基、R13は低級アルキル基又はベンジル基、Zはアニオン性基を示す。)
【0039】
上記一般式(6)の具体的なカチオン性単量体としては、上記一般式(5)で示されるカチオン性単量体を適当な4級化剤、例えばアルキルハライド、ジアルキルカーボネート、アルキルトシレート、アルキルメシレート、ジアルキル硫酸、ベンジルハライドなどにより4級化することにより得られ、例えばN−エチル−N,N−ジメチル−(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アンモニウムブロマイド、N−ベンジル−N,N−ジメチル−(3−(メタ)アクリロイルアミノプロピル)アンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0040】
ジアリルアミン類として、ジアリルアミン、ジアリルメチルアミン、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0041】
カチオン性単量体は10モル%以上使用していればよく、その他の共重合モノマーとしてアクリルニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル等の非イオン性単量体、アクリル酸、メタクリル酸などのα、β−不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸などのα、β−不飽和ジカルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの不飽和スルホン酸及びそれらの塩類、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等のアニオン性単量体、従来公知の連鎖移動剤、架橋剤を使用してもよい。
【0042】
本発明に用いられるカチオン性重合物の重合方法としては特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
【0043】
さらには、前記のように一般式(5)のカチオン性単量体を前記4級化剤により4級化してから重合反応を行うのみならず、上記一般式(5)に属するカチオン性単量体等を重合反応させる途中又は重合反応後に上記4級化剤を用いて4級化することもできる。この場合全部を4級化しても良いが、一部を4級化しても良い。
【0044】
本発明に用いられるアミン−エピハロヒドリン樹脂としては、アミン類とエピハロヒドリンを反応させることにより得られる。アミン類として用いることのできるアミンは、分子中に少なくとも1 個のエピハロヒドリンと反応可能なアミノ基を有するアミン類であれば特に制限はないが、第一級アミン類、第二級アミン類、第三級アミン、アルキレンジアミン、ポリアルキレンポリアミン、及びアルカノールアミンからなる群から選択された1種以上のアミンが好ましい。
【0045】
アミンとして例えばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、アリルアミン、n −ブチルアミン、sec −ブチルアミン、tert −ブチルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロオクチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、及びプロピレンジアミン、N,Nジメチルアミノプロピルアミン、1 ,3 −ジアミノシクロヘキシル、1 ,4 −ジアミノシクロヘキシル、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N −メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N ,N −ジエチルエタノールアミン、N ,N −ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0046】
エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン等を使用でき、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。エピハロヒドリンとしてはエピクロロヒドリンが好ましい。
【0047】
本発明に用いられるアミンエピハロヒドリン樹脂の重合方法としては特に制限はなく従来公知の方法を採用できる。
【0048】
無機系凝結剤としてポリ塩化アルミニウム 、ポリアルミニウムシリケートサルフェート、ポリ水酸化アルミニウム等のポリアルミニウム化合物、ポリ硫酸鉄、炭酸ジルコニウムが挙げられる。
【0049】
本発明においてパルプスラリーにカチオン変性アクリルアミド重合体を添加する場合、添加場所は特に制限されないが、抄紙工程の叩解機出口からファンポンプ出口の間に添加するのが好ましい。また1箇所に限らず複数箇所に分割添加することもできる。
【0050】
カチオン変性アクリルアミド重合体の対パルプ添加率は0.02〜3質量%、好ましくは0.05〜1質量%である。0.02質量%未満ではサイズ効果が不十分となる場合があり、3質量%を越えて使用しても効果が頭打ちとなる場合がある。
【0051】
本発明における中性サイズ剤の添加場所は、抄紙工程のミキシングボックスからファンポンプ出口までの混合分散性の良い所が好ましい。
【0052】
中性サイズ剤の添加率は対パルプ0.01〜1質量%、好ましくは0.03〜0.5質量%である。0.01質量%未満ではサイズ効果が十分に発揮されない場合があり、1質量%を越えて使用した場合は効果が頭打ちとなることがある。
【0053】
本発明において炭酸カルシウムを含有した古紙から作られたパルプスラリーに凝結剤を添加する場合、添加場所は特に制限されないが、パルパーからファンポンプ出口の間の混合性の良い場所で添加されるのが好ましい。また、一箇所に限らず複数箇所に分割添加してもよく、1種または2種以上の凝結剤を使用しても良い。
【0054】
凝結剤の対パルプ添加率は0.005〜1質量%、好ましくは0.01〜0.5質量%である。添加率0.005質量%未満では汚れ防止効果が不良となる場合があり、1質量%を超える添加率では抄紙系内のカチオン性が過剰となり、紙力剤の定着が低下する場合がある。
【0055】
本発明の板紙の製造方法は、炭酸カルシウムを含有するパルプスラリーに、前記した特定のカチオン変性アクリルアミド重合体と中性サイズ剤と凝結剤の存在下で、かつpH6.0〜8.5で抄紙することを必須とするものである。これ以外の添加薬品としてカチオン澱粉、両性澱粉、共重合紙力剤等の乾燥紙力剤や、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン樹脂等の湿強度剤等、更に濾水歩留剤等を適宜併用することは何ら差し支え無い。また所定pHにするためにpH調節剤、たとえば苛性アルカリ、炭酸塩等のアルカリ物質や硫酸等の酸性物質を併用することも何ら差し支え無い。
【0056】
硫酸バンドは、パルプ1質量%以下で使用することが好ましく、より好ましくは、使用しないことである。
【0057】
本研究により、板紙の抄紙において、中性域で特定のカチオン変性アクリルアミド重合体と中性サイズ剤と凝結剤の存在下で抄紙することにより、必要とされるサイズ性を維持しながら優れた凝結剤効果が得られる事が明かになった。この中性域における抄紙により、抄紙系内に硫酸イオンやカルシウムイオンの蓄積を最小限に抑えることが可能となり、無機スケールの発生を極力避ける事が出来る。
【0058】
本発明によるホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド重合体が、中性サイズ剤のサイズ効果を効率良く引き出すことができ、サイズ剤の添加量を低く抑えることが可能となる理論的背景は定かではないが、その1級アミノ基の特異的作用が関係していると考えられる。
【0059】
以下、調整例、実施例、比較例により本発明を具体的に説明する。
【0060】
<ホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体の調整例>
調整例H−1
濃度15%のアクリルアミド重合体240gに対し、有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ソーダ30gと48%苛性カリ7gを含むアルカリ性次亜塩素酸ソーダ水溶液を、冷却、攪拌しながら滴下し、滴下終了後さらに60分間25℃に保持して反応を遂行させる。反応終了後、希塩酸で反応液をpH4.5に調整し、ポリマー濃度10%のホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド重合体H−1を得た。このカチオンイオン当量をコロイド滴定より求めたところ1.08meq/gであった。
【0061】
調整例H−2
調整例H−1において有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ソーダ120gと48%苛性カリ24gに変えた以外は調整例H−1と同様に操作してポリマー濃度8%のホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド重合体H−2を得た。このカチオン当量は、4.85meq/gであった。
【0062】
調整例H−3
調整例H−1において有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ソーダ280gと48%苛性カリ56gに変えた以外は調整例H−1と同様に操作してポリマー濃度5%のホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド重合体H−3を得た。このカチオン当量は、7.23meq/gであった。
【0063】
調整例H−4
調整例H−1において有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ソーダ400gと48%苛性カリ80gに変えた以外は調整例H−1と同様に操作してポリマー濃度4%のホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド重合体H−4を得た。このカチオン当量は、9.87meq/gであった。
【0064】
比較調整例H−5
調整例H−1において有効塩素濃度12%の次亜塩素酸ソーダ15gと48%水酸化カリウム水溶液4gに変えた以外は調整例H−1と同様に操作してポリマー濃度10%のホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド重合体H−5を得た。このカチオン当量は、0.47meq/gであった。
【0065】
【表1】

【0066】
<凝結剤>
凝結剤A
凝結剤AC7300(星光PMC株式会社製)を凝結剤Aとして使用する。
【0067】
凝結剤B
(製造例1)
撹拌機、温度計、還流冷却管を付した1リットルの四つ口フラスコに水560部、ジメチルアミノプロピルアミン126.1部を仕込み、撹拌下、エピクロロヒドリン114.1部を40℃を越えないよう1.5時間かけて滴下した後、70℃に昇温し、3時間保温した後冷却して反応を完結させた。得られた反応生成物は固形分濃度30%、粘度350mPa・sの水溶性樹脂であった。これを凝結剤Bとして使用する。
【0068】
凝結剤C
凝結剤AC7304(星光PMC株式会社製)を凝結剤Cとして使用する。
【0069】
凝結剤D
(製造例2)
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を付した1リットル四つ口フラスコに、78%メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド229.6g、イソプロピルアルコール30g、イオン交換水302.08gを仕込んだ。次いで、窒素ガス雰囲気下、60℃に昇温させ、1%V50(和光純薬工業株式会社製)水溶液17.54gを加え、20分で90℃まで昇温させ、その後、80℃で2時間反応させた。得られた反応生成物は固形分30%、粘度3500mPa・sの水溶性樹脂であった。これを凝結剤Dとして使用する。
【0070】
凝結剤E
(製造例3)
撹拌機、温度計、還流冷却管および窒素ガス導入管を付した1リットルの四つ口フラスコにジアリルアミン15.5g(0.16モル)、50%アクリルアミド水溶液34.1g(0.24モル)、イソプロピルアルコール7.7g、イオン交換水171.6gを撹拌機付反応器に仕込み、36%塩酸水溶液にてpHを3.6に調整した。次いで窒素ガスで充分装置内の空気を置換した後、55℃で過硫酸アンモニウム0.12gを添加し、55℃で6時間反応させた。生成物は水を加え、ポリマー成分15%の水溶液として粘度(25℃)が6500 mPa・sであった。これを凝結剤Eとして使用する。
【0071】
凝結剤F
(製造例4)
PAC250A(多木化学株式会社製)を凝結剤Fとして使用する。
【0072】
本発明に使用する凝結剤A〜Fの性状を表2に示す。
【0073】
【表2】

【0074】
<置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤>
置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤AS1532(星光PMC株式会社製)とポリアクリルアミド系乳化剤SP1802(星光PMC株式会社製)を固形分で1:5の割合で混合し、ユニバーサルホモジナイザーで2分間攪拌して得た置換環状ジカルボン酸無水物の水中油型エマルションを水で希釈して得られたものを置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤とする。
【0075】
実施例1
370カナディアン・スタンダード・フリーネスの炭酸カルシウムが含まれている自製段ボール故紙を2.4%のスラリーとし、これに以下各々対パルプ固形分あたり、0.1%の凝結剤E、0.4%のカチオン変性アクリルアミド重合体H−1、0.1%の置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤を順次添加した。抄紙pH7.5で、TAPPIスタンダードシートマシン丸形を用いて、坪量120g/mとなるように抄紙し、343kPaで120秒間プレスした後、ドラムドライヤーを用いて110℃で120秒間乾燥して板紙を得た。
【0076】
実施例2
カチオン変性アクリルアミド重合体H−1の代わりにカチオン変性アクリルアミド重合体H−2を用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0077】
実施例3
カチオン変性アクリルアミド重合体H−1の代わりにカチオン変性アクリルアミド重合体H−3を用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0078】
実施例4
カチオン変性アクリルアミド重合体H−1の代わりにカチオン変性アクリルアミド重合体H−4を用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0079】
実施例5
凝結剤Eの添加後に硫酸バンドを対パルプ0.7%用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0080】
実施例6
置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤の代わりに2−オキセタノン系サイズ剤(AD1604(星光PMC株式会社製))を用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0081】
実施例7
置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤の代わりに中性ロジン系エマルションサイズ剤(CC1404(星光PMC株式会社製))を用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0082】
比較例1
カチオン変性アクリルアミド重合体H−1の代わりに両性共重合型紙力剤(DS4358(星光PMC株式会社製))を用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0083】
比較例2
カチオン変性アクリルアミド重合体H−1を0.4%用いる代わりにカチオン性デンプン(Cato304(日本NSC株式会社製))を1.2%用いる以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0084】
比較例3
カチオン変性アクリルアミド重合体H−1の代わりに両性共重合型紙力剤を用いる以外は上記実施例7と同様にして板紙を得た。
【0085】
比較例4
カチオン変性アクリルアミド重合体H−1の代わりにカチオン性デンプンを用いる以外は上記実施例7と同様にして板紙を得た。
【0086】
比較例5
凝結剤Eを用いない以外は上記実施例1と同様にして板紙を得た。
【0087】
(紙質の評価)
上記実施例により得られた板紙は、温度23℃ 湿度50%の恒温恒湿室に於いて24時間調湿した後、下記測定法に準じて各種紙質の評価を行った。得られた結果を表4に示した。なお、Cobb吸水度のみ、抄紙・乾燥から5分後の測定も実施した。
比破裂強さ :JIS P−8112に準拠
スコットボンド :J.TAPPI No.54−93に準拠
Cobb :JIS P−8140に準拠
滑り角度(静摩擦係数):JIS P−8147に準拠
【0088】
実施例1〜4を対比するとカチオン変性アクリルアミド重合体H−1〜H−4を変えるただけであることからカチオン変性アクリルアミド重合体は、カチオン変性アクリルアミド重合体のカチオン当量の高いほうがサイズ性にとって好ましい傾向を示すが、ある程度のカチオン当量に達するとそれ以上向上効果が得られなることがわかる。
【0089】
実施例1と実施例6と実施例7とを対比すると、中性サイズ剤の種類にかかわらず、サイズ性は同等であることがわかる。また、置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤を用いると滑り角度が低下しないことがわかる。
【0090】
実施例1と比較例1並びに実施例6と比較例3とを対比すると、カチオン変性アクリルアミド重合体H−1を両性共重合紙力剤の代わりに用いると、サイズ性が優れることがわかる。
【0091】
実施例1と比較例2並びに実施例7と比較例4とを対比すると、カチオン変性アクリルアミド重合体H−1をカチオン性デンプンの代わりに用いると、紙力強度及びサイズ性が優れることがわかる。
【0092】
実施例1と比較例5とを対比すると、凝結剤Eを添加することで、紙力及びサイズ性が共に優れることがわかる。
【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
実施例8
300カナディアン・スタンダード・フリーネスの2.5%の炭酸カルシウムが含まれている自製段ボール故紙を2.4%のスラリーとし、これに以下各々対パルプ固形分あたり、0.03%の凝結剤A、0.2%のカチオン変性アクリルアミド重合体H−1、0.2%の置換環状ジカルボン酸無水物系サイズ剤を順次添加した。この内の一部を取り出し濁度を測定した結果を表6に記載した。抄紙pH7.5で、TAPPIスタンダードシートマシン丸形を用いて、坪量150g/mとなるように抄紙し、343kPaで120秒間プレスした後、ドラムドライヤーを用いて110℃で150秒間乾燥して板紙を得た。
【0096】
実施例9〜13
凝結剤Aの種類を表5のように代える以外は実施例8と同様にして板紙を得るとともに実施例8と同様に濁度を測定した結果を表5に記載した。
【0097】
比較例6
凝結剤Aを使用しない以外は実施例8と同様にして板紙を得るとともに実施例8と同様に濁度を測定した結果を表5に記載した。
【0098】
濁度の測定は、全ての薬品添加後のパルプスラリーをNO.5Aのろ紙で吸引ろ過して得られる濾液を検体としてハック社製濁度計2100Pを用いて行った。なお、濁度は値が小さいほど、ろ液中のコロイド状夾雑物が少ないことを示し、マシン汚れも低減すると考えられる。
【0099】
(紙質の評価)
上記実施例により得られた板紙は、温度23℃ 湿度50%の恒温恒湿室に於いて24時間調湿した後、下記測定法に準じて各種紙質の評価を行った。得られた結果を表5に示した。
比破裂強さ :JIS P−8112に準拠
Cobb :JIS P−8140に準拠
【0100】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホフマン分解反応によるカチオン変性アクリルアミド系重合体と中性サイズ剤と凝結剤の存在下、炭酸カルシウムを含むパルプスラリーをpH6.0〜8.5で抄紙することを特徴とする板紙の製造方法。
【請求項2】
カチオン変性アクリルアミド系重合体のカチオン当量が1meq/g〜8meq/gであることを特徴とする請求項1に記載の板紙の製造方法。
【請求項3】
中性サイズ剤が置換環状ジカルボン酸無水物及び/又は2−オキセタノンを主成分とするサイズ剤である請求項1又は2に記載の板紙の製造方法。
【請求項4】
凝結剤がジアリルアミンと(メタ)アクリルアミドとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の板紙の製造方法。
【請求項5】
パルプスラリーに硫酸バンドをパルプスラリーの固形分に対して1質量%以下の添加を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の板紙の製造方法。

【公開番号】特開2006−52506(P2006−52506A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236178(P2004−236178)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【出願人】(000109635)星光PMC株式会社 (102)
【Fターム(参考)】