説明

枚葉輪転印刷機の乾燥装置

【課題】乾燥装置が少なくとも1個の紙送り乾燥シリンダと乾燥シリンダに付設されたドライヤーを有するユニット型枚葉輪転印刷機の乾燥装置において、モジュラー型乾燥装置のための経済的支出を減少させる。
【解決手段】(1)乾燥装置の側壁の寸法並びに紙受渡しシステム及び乾燥シリンダの支点配置を印刷又はニス引き装置に付設された側壁の寸法並びに紙受渡しシステム及び圧胴の支点配置と同じとし、かつ(2)乾燥シリンダを胴体骨組として形成し、単数又は複数の面からなる、圧胴又はニス引きシリンダの半径に相当する曲率半径の外殻面を半径方向腹板を介して上記の胴体骨組に付設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は第1請求項の上位概念に基づくユニット型枚葉輪転印刷機の乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
強力なインキ又はニス乾燥のために少なくとも1個の別個の乾燥装置を排紙装置の前に配置することは、ドイツ特許DE29623064により周知である。そのためにモジュール型に作られた乾燥装置が、標準化された下部構造モジュールにインキ又はニス装置に代わって据え付けられる。この下部モジュールはその手前に配置された印刷又はニス引き装置の基部をも構成する。印刷又はニス引き装置のための下部構造モジュールは圧胴を装備する。印刷精度に対する高度な要求及び印刷又はニス引き工程での負荷に基づき、圧胴は強固な構造と高い製造精度を有する。この解決策の欠点は、乾燥装置のための経済的支出がこのため高いことである。枚葉紙を排紙パイルへ送る最後の印刷装置の後方のドライヤー・モジュールがドイツ特許公開DE19629370A1により周知である。ドライヤー・モジュールは少なくとも1個の固定ドライヤーを有し、2個の回転する搬送部材によってドライヤーのかたわらに枚葉紙が通され、その際搬送方向に第1の搬送部材(回転コンベヤ)は枚葉紙を表面接触なしで自由に導き、第2の搬送部材(受渡し胴)は枚葉紙を湾曲した支持部材の上に導く。支持部材は周方向にくわえ棒の間に配置され、その上に枚葉紙が載る。この解決策の欠点は、このようなモジュールが印刷又はニス引き装置から偏った特殊な配置と搬送部材の構造の関係上、排紙区域でしか使用できないことである。例えば枚葉紙の方向変換の前にニス引きし、又は二重にス引きする場合には、必要なインキ又はニス塗布順序に応じて乾燥装置を方向変換装置の前又はニス引き装置の間に配置することが必要になる。
【特許文献1】ドイツ国実用新案登録公報DE29623064U
【特許文献2】ドイツ国特許公開公報DE19629370A1(特開平10−58653号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで本発明の根底にあるのは、印刷機内の位置に関係なく、任意のあらゆる印刷又はニス引き装置の後に配置することができ、印刷装置モジュールと比較して少額な紙送り手段のための経済的支出で製造することができる汎用可能な乾燥装置を提供する課題である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は本発明に基づき第1請求項の特徴を有する乾燥装置によって解決される。本発明に基づく提案は、枚葉紙が乾燥装置に通して送られるときは、印刷又はニス引き装置の場合のように機械的圧縮荷重を受けないから、乾燥装置での紙送りには費用のかかる圧胴の使用が不要であるという前提に立っている。その代わりに、印刷又はニス引き装置の間の紙送りのために設けられるような標準化された紙受渡しシステム、特に円筒形外殻面又は筒形外被を有する受渡し胴に乾燥装置での紙送りを担当させる。外殻面は圧胴に比して薄肉に形成し、又は金属板で製造することができる。さらに提案の乾燥装置は標準化された側壁を装備する。この側壁は支点の配置及び接続寸法に関して印刷又はニス引き装置の側壁と同様である。本発明は、標準化された紙送り手段と標準化された側壁を使用することにより乾燥装置のために特殊構造が必要でないから、乾燥装置の低廉な設計が得られる利点がある。しかも標準化側壁の使用によって、中間又は再乾燥が必要な場合に、印刷又はニス引き装置の間の任意のあらゆる位置に乾燥装置を配置することが可能である。また複数の乾燥装置を逐次配置することが可能であるから、乾燥装置の配置に高い柔軟性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
枚葉オフセット輪転印刷機の例で本発明を詳述する。
【0006】
図1で明らかなように、例示した枚葉オフセット輪転印刷機は給紙装置1、5個の印刷装置2−6、ニス引き装置7、乾燥装置8及び排紙装置9からなる。枚葉紙は給紙装置1の給紙パイルから取り出され、1枚ずつずり重なり枚葉の流れとして整列され、第1の印刷装置2へ送られる。第1の印刷装置2を通過した後に別の印刷装置3でインキ着けが行われる。次に片面刷りの枚葉紙が方向変換装置Wで方向変換され、印刷してない下側が上側になる。印刷装置4−6で枚葉紙に別の部分印刷画像が被着される。最後にニス引き装置(Lackwerken)7で枚葉紙にニス保護膜が掛けられ、枚葉紙を排紙パイルに排出する前に、少なくとも1個のドライヤーT1を有する乾燥装置8でニス保護膜が乾燥される。被着されるニス膜によっては、排紙区域の紙送り経路に沿って再乾燥が必要になる。そのために排紙装置9の排紙パイルへの紙送り経路に沿って別のドライヤーT2が配置される。印刷装置2−6及びニス引き装置7では枚葉紙が圧胴D2−D7で搬送され、ゴム胴GZ及び圧胴D2−D7からなる印刷又はニス引き区域で印刷される。印刷及びニス引き装置2−7の間に紙受渡しシステム、例えば渡し胴U3又は受渡し胴U5−U8が配置され、前置の装置から後置の装置へ枚葉紙を搬送する。紙受渡しシステムU3、U5−U8の下側に周知のように給紙通路に近接する案内板Bを配置することができる。案内板Bは空気が送り込まれるノズル開口部を有する。片面又は両面印刷に応じて枚葉紙は別様に導かれる。片面印刷した枚葉紙は通常、印刷してない下側を吸気が働く案内板Bの上にすべり接触して緊展され、その場合印刷したての上面となるべく表面接触せずに枚葉紙を案内するために、紙受渡しシステムは筒形外被がまったく無いか(渡し胴U3)又は内側へ折り返されている(受渡し胴U5−U8)。両面印刷の枚葉紙は第1の面の印刷の後に方向変換装置Wで方向変換され、続いて第2の面に印刷される。この場合は方向変換装置Wの後の印刷又はニス引き装置4−7の間で枚葉紙は、外側へ折り返された筒形外被又は胴体骨組に固設され又は着脱可能に配置された円筒形外殻面Mを有する受渡し胴U5−U8で案内され、その際枚葉紙は周知のようにエアクッションにより筒形外被又は外殻面Mの上に置かれ、固定される。紙受渡し胴U5−U8の筒形外被又は外殻面Mのインキをはじく外装又は被覆によって、刷りたての印刷インキ又はニスの裏移りが回避される。
【0007】
枚葉紙は受渡し胴U3、U5−U8で搬送中に、印刷又はニス引き装置2−7の圧胴D2−D7のように機械的負荷を受けないから、受渡し胴の構造はあまり費用がかからない。周知のように紙受渡しシステムU3、U5−U8は軽量又は骨組構造であり又は少なくとも空洞を備えており、その場合胴体骨組−ねじりに対して剛直な軸体及びそれに配置された半径方向腹板(Stege)からなる−が形成され、単数又は複数の面からなる、圧胴又はニス引きシリンダD2−D7の半径に相当する曲率半径の紙送り外殻面Mが胴体骨組に付設される。外殻面Mは胴体骨組に固設し、もしくは着脱又は交換可能に付設することができる。着脱可能な外殻面は例えば旋回可能又は交換可能な筒形外被として形成することができる。そこで本発明の枠内で、枚葉紙が印刷又はニス引き装置2−7の間の搬送と比較して機械的作用でなく、ドライヤーT1の熱的又はその他の放射作用にさらされる乾燥装置8で、このような紙受渡しシステムU3、U5−U8を乾燥シリンダT8としても使用することを提案する。その場合ドライヤーT1と枚葉紙の間の一定間隔を保証するために、外側に配置した筒形外被又は円筒形外殻面Mを有する受渡し胴U8を使用することが好ましい。外殻面Mは単数又は複数の面要素からなることができる。静粛な紙送りのために、筒形外被又は外殻面Mの曲率半径は使用される圧胴D2−D7の半径に相当するならば好都合である。乾燥装置8で費用のかかる圧胴を、外殻面Mを有する安価な乾燥シリンダT8に替えることによって、乾燥装置8の製造のための経済的支出を著しく減少することができる。乾燥装置8での乾燥シリンダT8の使用には別の利点もある。乾燥シリンダ8の胴体骨組の空洞又は隔室構造に基づき、乾燥装置8の排気を改善し、乾燥シリンダT8のために内部冷却システムを使用することが可能になるから、例えば熱に敏感な印刷材料のための印刷材料冷却を改善することができる。印刷機の総重量が減少するから、輸送費が節減される。乾燥シリンダT8の重量が小さいため、小さな駆動動力で済む。乾燥装置8の側部機架は乾燥シリンダT8及び前置の紙受渡しシステム、特に受渡し胴U8のための支点を受ける。側部機架への受渡し胴U8の配置は圧胴D2−D7及び所属の紙受渡しシステムU3、U5−U7の配置に相当するから、乾燥装置8に印刷装置2−7と同じ側壁を使用することができる。従って乾燥装置8の下部構造モジュールは印刷及びニス引き装置2−7の下部構造モジュールと同じものである。こうして装置の接続寸法と紙送りが同じであるから、提案の乾燥装置8を枚葉オフセット輪転印刷機の任意の位置に挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】乾燥装置を有する枚葉オフセット輪転印刷機の概略図を示す。
【符号の説明】
【0009】
1 給紙装置
2〜6 印刷装置
7 ニス引き装置
8 乾燥装置
9 排紙装置
B 案内板
D2−D7 圧胴
GZ ゴム胴
M 外殻面
T1、T2 ドライヤー
T8 乾燥シリンダ
U3 紙受渡しシステム、渡し胴
U5−U8 紙受渡しシステム、受渡し胴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙受渡しシステム(U3、U5−U7)を付設した圧胴(D2−D7)を有する印刷及び/又はニス引き装置(2−7)を備えたユニット型枚葉輪転印刷機における乾燥装置(8)であって、
−乾燥装置が紙送り乾燥シリンダ(T8)及び乾燥シリンダ(T8)に付設された紙受渡しシステム(U8)を備え、
−乾燥シリンダ(T8)に少なくとも1個のドライヤー(T1)が付設され、
−乾燥シリンダ(T8)及び紙受渡しシステム(U8)が乾燥装置(8)の側壁に支承される
乾燥装置において、
−乾燥装置(8)の側壁の寸法並びに紙受渡しシステム(U8)及び乾燥シリンダ(T8)の支点配置が印刷又はニス引き装置(2−7)に付設された側壁の寸法並びに紙受渡しシステム(U3、U5−U7)及び圧胴(D3−D7)の支点配置と同じであり、
−乾燥シリンダ(T8)が紙受渡しシステム(U5−U7)と同様に形成され、単数又は複数の面からなる、圧胴又はニス引きシリンダ(D2−D7)の半径に相当する曲率半径の紙送り外殻面(M)を有し、外殻面(M)が圧胴(D2−D7)に比して薄肉に形成され、少なくとも2個の半径方向腹板を介して回転軸に付設されている
ことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
乾燥シリンダ(T8)が軽量又は骨組構造で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
紙送り外殻面(M)が胴体骨組に固設されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項4】
乾燥シリンダ(T8)がほぼ円筒形の外殻面(M)を有する受渡し胴(U5−U8)として形成されていることを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
紙送り外殻面(M)が胴体骨組に着脱可能に付設されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項6】
紙送り外殻面(M)が胴体骨組に旋回可能に付設された複数の部分面からなることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項7】
紙送り外殻面(M)が胴体骨組に交換可能に付設されていることを特徴とする請求項5に記載の乾燥装置。
【請求項8】
乾燥シリンダ(T8)が筒形外被を備えた受渡し胴(U5−U8)として形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の乾燥装置。
【請求項9】
外殻面(M)が胴板からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の乾燥装置。

【図1】
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【公開番号】特開2007−168442(P2007−168442A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348583(P2006−348583)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(399033108)ケーニッヒ、ウント、バウエル、アクチエンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】KOENIG&BAUER AG
【Fターム(参考)】