説明

果菜自動選別方法及び果菜自動選別装置

【課題】プールコンベア上で果菜が受ける慣性力を小さくし、コンベア上での果菜の転がり等を抑制して、これによる果菜の傷みを防ぎ、詰め込み作業を容易ならしめる果菜自動選別装置及び果菜自動選別方法を提供する。
【解決手段】果菜判別装置4によって判別された果菜1が、当該判別結果に対応するプールコンベア5まで搬送されてくると、この果菜1は果菜キャリア8の上から当該プールコンベア5まで移動し、果菜1が載ったプールコンベア5は、果菜1がプールコンベア5まで移動した速度と同一速度又は略同一速度である載果時速度で果菜1を搬送し、その後前記載果時速度よりも低速である滞留時速度で果菜1を搬送するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、各種果菜をサイズ別、形状別、色別、糖度別といった各種規格(等階級等)別に選別するための自動選別方法及び自動選別装置に関するものであり、特にトマト、リンゴ、桃、梨、茄子、メロン、小玉西瓜などの果菜の選別に適したものである。
【背景技術】
【0002】
果菜を出荷するためには、そのサイズ、形状、色、糖度などの基準に応じて仕分けする必要があり、果菜選別の自動化は従来から進められてきた。現在では、果菜を搬送しながら果菜選別装置で果菜の等階級等を選別し、その結果に基づいて搬送方向側方に配置されたプールコンベアに果菜を送り出す果菜選別方法や果菜選別装置が主流となっている。
【0003】
通常、プールコンベアは複数配置されていて、それぞれ事前に果菜の等階級が定められている。果菜が等階級に合ったプールコンベアまで搬送されてくると、その果菜は当該プールコンベアへと送り込まれる。プールコンベアは通常は静止していて、果菜が送られてくると徐々に果菜の受け入れ空間が無くなってくるので、プールコンベアを例えば手動で運転してプールコンベア上の果菜を搬送し、次の果菜受け入れのための空間を確保していた。
【0004】
本願出願人は、本願に先立ってこのプールコンベアが間欠運転するタイミングを自動制御する機構を開発し、特許文献1にて提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−130741号公報。
【0006】
特許文献1は、停止しているプールコンベアに送り込まれた果菜をセンサーで検知し、所定の果菜数が確認されるとプールコンベアを稼働させて、プールコンベア上に次の果菜を受け入れるための空間を確保し、その後再びプールコンベアは停止するというものである。これによりプールコンベア上の果菜を箱詰めする作業者の前には、常に定量の果菜が送り込まれることとなり箱詰め作業が極めて効率的となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら特許文献1も含め従来のプールコンベアは、果菜を比較的長い時間溜め置いて箱詰めなどの作業時間を十分確保することに主眼が置かれていたことから、コンベアは常時は静止状態を保ち、図7(a)に示すように果菜aが送られてくるタイミングでコンベアが1ストローク長L(通常は次の果菜を受け入れる空間をつくる距離)だけ果菜aを搬送速度Vで搬送し、その後再び静止状態に戻るという、いわゆる間欠運転が基本であった。このように、プールコンベアに載せられた果菜あるいは既にプールコンベア上に載せられた果菜は、1ストローク搬送されるたびに移動し停止することを強いられていた。
【0008】
プールコンベアが果菜を受け入れる間隔すなわち図8(a)に示す待機時間が長ければ、搬送速度Vから停止するまでの減速時間をかせぐことができるため減速時の加速度は小さく(図で示す減速勾配が緩く)なり、果菜が停止するために受ける慣性力を小さくすることができる。しかし、図7(a)で果菜aを受け入れた直後に、連続して図7(b)で果菜bを受け入れることもあり、この場合図8(b)に示すように待機時間が著しく短くなり、その結果減速時の加速度が大きく(図で示す減速勾配が急に)なって果菜は停止するために大きな慣性力を受けることとなる。なお図8(b)は、果菜搬送体の走行速度をV、果菜搬送体上の果菜の間隔をdとすると(図7(b))、待機時間d/Vの間に停止するまで減速して、さらにVまで加速しなければならない状態を示している。
【0009】
プールコンベア上で大きな慣性力を受けた果菜は、コンベア上を転がったり、静止姿勢から転倒したり、場合によってはコンベア上から転落することさえあった。果菜がコンベア上を転がり、あるいは静止姿勢から転倒するとトマトや桃などの果菜は傷むことがあり、また果菜がコンベアから転落すると箱詰め作業が煩雑となる。
本願発明の課題は、プールコンベア上で果菜が受ける慣性力を小さくし、コンベア上での果菜の転がり等を抑制して、これによる果菜の傷みを防ぎ、詰め込み作業を容易ならしめる果菜自動選別装置及び果菜自動選別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の果菜自動選別方法は、無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体の走行により、果菜キャリアの上に載せた果菜を搬送し、搬送中の果菜を果菜判別装置によって判別し、果菜搬送体の側方に設けられたプールコンベアのうちこの判別結果に対応するプールコンベアに果菜を移動させる果菜自動選別方法において、前記果菜判別装置によって判別された果菜が、当該判別結果に対応するプールコンベアまで搬送されてくると、この果菜は果菜キャリアの上から当該プールコンベアまで移動させられて前記プールコンベア上に載せられ、果菜が載ったプールコンベアは、果菜が果菜キャリアの上からプールコンベアまで移動した速度と同一速度又は略同一速度である載果時速度で果菜を搬送し、前記プールコンベアは、前記載果時速度で果菜を所定区間搬送した後、前記載果時速度よりも低速である滞留時速度で果菜を搬送する方法である。
【0011】
この場合、果菜判別装置によって果菜が判別された後、所定時間内にこの果菜と同一の判別結果となった後続果菜の数又は有無を計測してこれを果菜搬送密度とし、前記果菜搬送密度に基づいて、前記果菜の判別結果に対応するプールコンベアの滞留時速度を変速することもできる。
【0012】
本願発明の果菜自動選別装置は、無端走行体に多数の果菜キャリアが設けられた果菜搬送体と、搬送中の果菜を判別可能な果菜判別装置と、果菜搬送体の側方に設けられたプールコンベアを備え、果菜搬送体の走行により果菜キャリアの上に載せた果菜を搬送し、果菜判別装置で判別した判別結果に対応するプールコンベアに当該果菜を移動させ得る果菜自動選別装置において、前記果菜判別装置によって判別された果菜が、当該判別結果に対応するプールコンベアまで搬送されると、この果菜を果菜キャリアの上から当該プールコンベアまで移動させてプールコンベア上に載せ得る移動手段を備え、前記プールコンベアは二以上の速度に変速して果菜を搬送可能であり、果菜がプールコンベアに載ると、前記プールコンベアは果菜が果菜キャリアの上から当該プールコンベアまで移動した速度と同一速度又は略同一速度である載果時速度で運転し、前記載果時速度で果菜を所定区間搬送すると、前記プールコンベアは前記載果時速度よりも低速の滞留時速度で運転するものである。
【0013】
この場合、果菜判別装置によって果菜が判別された後の所定時間内にこの果菜と同一の判別結果となった後続果菜の数又は有無を計測してこれを果菜搬送密度とする計測手段と、この果菜搬送密度に基づいてプールコンベアの滞留時速度を変速させる制御手段とを備え、前記計測手段で計測した果菜搬送密度に応じた滞留時速度で、前記果菜の判別結果に対応するプールコンベアを運転させ得るものとすることもできる。
【0014】
本願発明の果菜自動選別装置は、請求項3又は請求項4記載の果菜自動選別装置において、プールコンベアは、プールコンベアの搬送方向に二以上並べられたベルトコンベアからなり、果菜搬送体に最も接近して配置された第一のベルトコンベアは、果菜キャリアの上から果菜を受け取って下流側に隣接する第二のベルトコンベアに果菜を受け渡し可能であるとともに、載果時速度で運転可能であって、載果時速度で果菜を搬送する所定区間長のコンベア長を有し、第二以降のベルトコンベアは、その下流側にベルトコンベアがある場合にそのベルトコンベアに果菜を受け渡し可能であって、載果時速度及び滞留時速度で運転可能とすることもできる。
【発明の効果】
【0015】
本願発明の果菜自動選別方法及び果菜自動選別装置は次のような効果がある。
(1)プールコンベア上で果菜が受ける慣性力を小さくすることができるので、コンベア上における果菜の転がり等が抑制され、果菜の傷みを防ぎ、詰め込み作業が容易となる。
(2)所定時間内に同一選別結果の果菜が搬送される程度を表す果菜搬送密度に応じて、プールコンベアの運転速度を変速できるので、果菜搬送密度が密となるプールコンベアは高速で搬送して箱詰め作業員を多く投入し、果菜搬送密度が疎となるプールコンベアでは低速で搬送して箱詰め作業を後回しとするなど、多様な箱詰め作業に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の果菜自動選別装置を示す全体平面図。
【図2】果菜キャリアが果菜を送り出す状態を示す詳細平面図。
【図3】(a)は果菜が載り移りを待つ待機状態を示す平面図、(b)は果菜が載り移る状態を示す平面図、(c)は果菜が載果時速度で所定区間長だけ搬送された状態を示す平面図、(d)は再び待機状態となる状態を示す平面図。
【図4】プールコンベアの回転速度の変化を表す説明図。
【図5】果菜搬送密度を定期的に計測する場合のプールコンベアの回転速度の変化を表す説明図。
【図6】本願発明における他の実施例の果菜自動選別装置を示す全体平面図。
【図7】(a)は果菜キャリアが先頭の果菜を送り出す状態を示す平面図、(b)は果菜キャリアが後続の果菜を連続して送り出す状態を示す平面図。
【図8】(a)は待機時間が長い場合の従来プールコンベアの回転速度の変化を表す説明図、(b)は待機時間が短い場合の従来プールコンベアの回転速度の変化を表す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施形態1)
本願発明の果菜自動選別装置及び果菜自動選別方法の第1の実施形態を図に基づいて説明する。図1は、本願発明の果菜自動選別装置の全体平面図である。図に示す帯状の連続体が果菜1(例えばトマト、リンゴ、桃、梨、茄子、メロン、小玉西瓜など)を矢印X方向(図では左から右)に搬送する果菜搬送体2であり、果菜搬送体2の起点側(図の左側)には作業者が果菜1を載置する供給部3が配置され、果菜搬送体2の搬送途中には搬送中の果菜1のサイズ、形状、色、糖度といった等階級を判別する果菜判別装置4が配置されている。また果菜判別装置4が配置される位置よりも終点側(図の右側)には、果菜1が引き渡されるプールコンベア5が配置されている。
【0018】
プールコンベア5は、果菜判別装置4で判別する果菜1の等階級に応じた数のプールコンベアが設けられ、図1では4種類の等階級に応じたプールコンベアが配置されている。例えば第1プールコンベア5aにはLLサイズのトマト、第2プールコンベア5bにはLサイズのトマト、第3プールコンベア5cにはMサイズのトマト、第4プールコンベア5dにはSサイズのトマトがそれぞれ引き渡される。
【0019】
また、第1プールコンベア5aのようにあらかじめ多数の果菜1が送られてくると予想される場合には2つのレーンを設け、送られてくる果菜1が少ないプールコンベアは単独のレーンとすることもできる。送られてくる果菜1が少ないと予想される場合、LサイズとSサイズの果菜1を第2プールコンベア5bに引き渡すなど、2以上の等階級の果菜1を同一のプールコンベアに引き渡すこともできる。ただし、2以上の等階級の果菜1を混在させる場合は、箱詰め作業者が目視して把握できる程度に明確な差がある等階級の果菜1を混在させることが望ましい。
【0020】
図1では、果菜搬送体2の搬送方向右側(図では下側)に、プールコンベア5を配置しているが、プールコンベア5のうち第1プールコンベア5aと第3プールコンベア5cは右側、第2プールコンベア5bと第4プールコンベア5dは左側に配置するなど果菜搬送体2の両側に配置してもよいし、もちろん左側のみに全てのプールコンベア5を配置してもよい。このようにプールコンベア5は、果菜自動選別装置を配置するスペースにあわせて任意に設計することができる。また図1では、プールコンベア5を果菜搬送体2の搬送方向に対して直交方向に配置しているが、これに限らず果菜搬送体2の搬送方向に対して傾けて配置してもよい。
【0021】
果菜搬送体2は、駆動スプロケット6aと従動スプロケット6bに架設された無端状のチェーンである無端走行体7に、果菜キャリア8が搬送方向(矢印X方向)に多数取り付けられたものである。駆動スプロケット6aはモータMの動力により回転し、この回転に伴い無端走行体7が矢印X方向に走行して、果菜キャリア8が搬送される。
図1では、果菜搬送体2が直線区間を循環走行することになるが、これに限らず、平面的に周回するような循環走行とすることもできる。
【0022】
果菜キャリア8は、果菜1を載置するためのものであり、載置した果菜1を安定した状態で搬送するために果菜1の姿勢を固定するための固定支持具(図示しない)を装備することもできる。この果菜キャリア8は、載置した果菜1をプールコンベア5まで送り出すための機能を備えている。具体的には果菜キャリア8をベルトコンベア方式としてベルトの下側に突起を設け、この突起を果菜搬送体2に設けられた案内レールで搬送方向に対して左右方向に案内することで果菜キャリア8のベルトを回動させる。果菜キャリア8上に載せられた果菜1は、果菜キャリア8のベルトの回動に伴い果菜搬送体2の側方にあるプールコンベア5まで送り出される。
なお、この果菜キャリア8のベルトコンベアの回動は前記方法に限らず、果菜キャリア8のそれぞれに駆動モータを設けて回動させてもよいし、果菜キャリア8をベルトコンベア方式とせずにローラーコンベア方式や傾斜方式など従来技術を用いて果菜1をプールコンベア5まで送り出すことができる。
【0023】
果菜キャリア8のベルトコンベアが果菜搬送体2の搬送方向(図2に示すX方向)に対して直交方向(図2に示すY方向)に回動するように果菜キャリア8を配置することもできるが、図2に詳しく示すように、Y方向から搬送方向後方に向けてθ傾いた方向(以下便宜上、「θ方向」という。)に回転するように配置することもできる。この場合、果菜1の動きを果菜キャリア8上で見ると、果菜1はθ方向に速度Vで果菜キャリア8からプールコンベア5へ移動し、果菜1の移動速度VのX方向成分はV×sinθで求められ、Y方向成分はV×cosθで求められる。実際には、果菜1は果菜搬送体2の搬送速度Vで移動しているので、果菜1が移動する方向はX方向の速度値(V−V×sinθ)とX方向の速度値V×cosθからtan−1{(V−V×sinθ)/(V×cosθ)}で求められ、また、果菜1が移動する速度(以下、「載果時速度V」という。)は、V={(V−V×sinθ)+(V×cosθ)1/2で求められる。なお、果菜1のX方向成分V×sinθの速度値(絶対値)が果菜搬送体2の搬送速度Vと同じであれば、果菜1の移動速度のX方向成分はキャンセルされて果菜1はY方向にのみ移動しようとし、果菜1の載果時速度VはVのY方向成分と等しくなり、V=V×cosθで求められる。
【0024】
ベルトコンベア方式の果菜キャリア8のベルト下側に設けた突起を、果菜搬送体2の案内レールで案内させることによって果菜キャリア8のベルトを回動させる場合、果菜1が果菜キャリア8上で移動する速度、つまり果菜キャリア8のベルトが回動する速度Vは、果菜搬送体2の搬送速度Vと案内レールの配置角度に依存する。すなわち、速度Vが大きいほど速度Vも大きくなり、果菜搬送体2の搬送方向(図2に示すX方向)に対する案内レールの配置角度が90°に近づくほど速度Vも大きくなる。一般に、速度Vの値は大きく、図2に示すように案内レール(図2に破線で示す)はX方向に対して90°に近い角度で配置されるので、速度Vも大きな値となる。そのため、プールコンベア5を間欠動作方式とすると果菜1がプールコンベア5上で急に停止することとなり、果菜1には大きな慣性力が作用し、その結果、果菜1がプールコンベア5上を転がるなどの問題が生じていた。本願発明では、後述するようにプールコンベア5に対してきめ細かな制御を行うため、果菜1には大きな慣性力が作用せず、果菜1が転がるなどの問題が改善される。
【0025】
プールコンベア5はベルトコンベアであり、果菜搬送体2の搬送方向に対して直交方向(図2に示すY方向)に配置されていて、同じくY方向に回転して果菜1を搬送する。果菜1も果菜キャリア8上からY方向に移動してプールコンベア5に載り移り、さらにプールコンベア5の上をその軸線に沿って移動する。つまり、果菜1の移動方向とプールコンベア5の回転方向が同じであり、果菜1は円滑にプールコンベア5に載り移ることができて、プールコンベア5上で移動するときも側方に転落するようなことがない。
【0026】
果菜1がプールコンベア5に載り移る際、プールコンベア5は、載果時速度Vと同一速度又は略同一速度(以下、「略等速」という。)で回転する。プールコンベア5が果菜1の載果時速度Vとは大きく異なる速度で回転すると、果菜1がプールコンベア5に載り移る際に慣性力を受けて、コンベア上を転がったり、静止姿勢から転倒したり、コンベア上から転落するおそれがあるが、載果時速度Vと略等速で回転すればこのようなおそれはない。
【0027】
プールコンベア5は、少なくとも果菜1がプールコンベア5に載り移る際には、載果時速度Vと略等速で回転している必要がある。いかなるタイミングであっても果菜1を円滑にプールコンベア5に載り移らせるため、例えば常にプールコンベア5を載果時速度Vと略等速で連続回転させることができる。ただし、この載果時速度Vは前記したように一般的には高速であり、プールコンベア5上の果菜1も高速で搬送されるため、この場合あまり多くの果菜1を溜めることができない。尤も、果菜1がプールコンベア5上を高速で移動しても、箱詰め作業を捌くことのできる作業員が配置されていれば問題ない。
【0028】
プールコンベア5の回転速度は、二以上の速度で回転させることもできる。これを図3(a)〜(d)及び図4に基づいて具体的に説明する。
図3(a)は果菜1の載り移りを待つ待機状態を表し、載果時速度Vよりも低速の滞留時速度V(図4のtで代表される速度)で回転している。
図3(b)は果菜1が載り移るタイミングを表し、このタイミング(図3のtのタイミング)にあわせて載果時速度Vまで加速する。
図3(c)はプールコンベア5が載果時速度Vで果菜1を所定区間長Lだけ搬送したタイミング(図3のtのタイミング)を表す。
図3(d)では再び待機状態となり、滞留時速度V(図4のtで代表される速度)で連続回転している。
【0029】
プールコンベア5が載果時速度Vで果菜1を搬送する所定区間長Lは、当該プールコンベア5が搬送する等階級の果菜1の平均的な大きさ1〜2個分である。もちろん、所定区間長Lは果菜1の1〜2個分に限らず、これより長く、あるいは短く設定することもできる。この所定区間長Lは、第1プールコンベア5a〜第4プールコンベア5d(図1)それぞれで設定され、変速制御装置(図示しない)に事前に記憶させておく。この変速制御装置は、果菜判別装置4の判別結果を受けると該当する第1プールコンベア5a〜第4プールコンベア5dのいずれかを載果時速度Vまで加速させ、当該プールコンベアが所定区間長Lだけ果菜1を搬送する時間が経過すると減速させて滞留時速度Vに戻す。
【0030】
このように、待機状態でもプールコンベア5を回転させることにより、載果時速度Vと滞留時速度Vの速度差を小さくすることができるため、プールコンベア5上の果菜1が受ける慣性力を小さく抑えることができる。そのうえ、待機状態は載果時速度Vよりも低速の滞留時速度Vで回転しているため、プールコンベア5上の果菜1は低速で搬送され、多くの果菜1を溜めることができる。この滞留時速度Vは、高速であるほどプールコンベア5上の果菜1が受ける慣性力は小さくなり、低速であるほどプールコンベア5上に多くの果菜1が溜まることとなるが、その滞留時速度Vの大きさは状況に応じて適宜設計することができる。
【0031】
(実施形態2)
本願発明の果菜自動選別装置及び果菜自動選別方法の第2の実施形態を図に基づいて説明する。本実施形態は、プールコンベア5に載り移る単位時間当たりの果菜1の個数に応じてプールコンベア5の回転速度が変速する場合の実施形態を説明するものであって、基本的構造や動作は実施形態1と共通する。
【0032】
果菜1は、図1に示すように果菜搬送体2の途中に設置された果菜判別装置4で、その等階級が判別される。この果菜判別装置4で判別した等階級は、搬送密度計測装置9に伝送される。この搬送密度計測装置9では、当該果菜1が果菜判別装置4で判別された時刻(あるいは等階級が伝送された時刻)とともに、伝送された等階級を記憶する。この果菜1に関する等階級と果菜判別装置4での判別時刻は、果菜1が果菜判別装置4を通過するたびに搬送密度計測装置9に記憶される。
【0033】
また搬送密度計測装置9は、果菜1ごとにその果菜1が果菜判別装置4で判別された時刻から所定時間(以下、「計測時間」という。)が経過するまでに果菜判別装置4で判別した後続の果菜1の等階級も記憶する。この計測時間は、例えば5個分の後続の果菜1を果菜判別装置4で判別する時間とし、事前に搬送密度計測装置9に記憶させておく。さらに搬送密度計測装置9は、後続5個の果菜1のうち当該果菜1の等階級と同じ等階級と判別された果菜1の個数を計算しその個数を果菜搬送密度として記憶する。この場合の果菜搬送密度は、単位時間あたりに同じ等階級の果菜1がどの程度送られてくるかを表す指標であり、果菜搬送密度の数値が高ければ(果菜搬送密度が密であれば)、その等階級に対応するプールコンベア5には短時間に多くの果菜1が送られることになる。あるいは、搬送密度計測装置9が、後続5個の果菜1のうち当該果菜1の等階級と同じ等階級と判別された果菜1が有るか無いかについて検知し、その有無を果菜搬送密度として記憶することもできる。
【0034】
このように搬送密度計測装置9では、果菜判別装置4で判別された果菜1に関する情報として、当該果菜1の等階級、当該果菜1が判別された時刻、当該果菜1の果菜搬送密度を記憶し、これらの情報をプールコンベア5の回転速度を制御する変速制御装置(図示しない)に伝送する。
【0035】
変速制御装置は、搬送密度計測装置9から送られてきた果菜1の等階級及びその果菜1の判別時刻や、搬送密度計測装置9からそれぞれのプールコンベアまでの距離などの情報をもとに、その果菜1の等階級に対応するプールコンベア5に果菜1が到達する時刻を計算し、その時刻にあわせて当該プールコンベア5の回転速度を載果時速度Vとなるまで加速させる。当該プールコンベアが所定区間長Lだけ果菜1を搬送する時間が経過すると、変速制御装置は当該プールコンベア5の回転速度を減速させて滞留時速度Vに戻す。
【0036】
このとき変速制御装置は、搬送密度計測装置9から送られてきた果菜1の果菜搬送密度に応じて滞留時速度Vを設定しプールコンベア5を回転させる。例えば、当該果菜1の果菜搬送密度が密(同じ等階級有り)であれば、これに対応する対応するプールコンベア5には短時間に多くの果菜1が送られるため滞留時速度Vを比較的高速とし、逆に当該果菜1の果菜搬送密度が疎(同じ等階級無し)であれば、滞留時速度Vを比較的低速とする。このとき、果菜搬送密度が疎であれば後続の果菜1がそのプールコンベア5にはしばらく載り移らないことになるので、載果時速度Vから低速の滞留時速度Vまで十分時間をかけて減速し、加速度を軽減することができる。
もちろん状況に応じて、果菜搬送密度が密のときに滞留時速度Vを低速とし、果菜搬送密度が疎のときに滞留時速度Vを高速とすることもできる。
【0037】
また、滞留時速度Vは高速と低速の2段階に設定するだけでなく、果菜搬送密度に応じて高速、中速、低速など3段階以上で設定するなど適宜設計できる。果菜搬送密度の閾値とこれに対応する滞留時速度Vの関係は、事前に設計し変速制御装置に記憶させておく。なお、果菜搬送密度の閾値とこれに対応する滞留時速度Vの関係を搬送密度計測装置9に記憶させ、搬送密度計測装置9が滞留時速度Vを判断して変速制御装置に伝送してもよい。
【0038】
なお、搬送密度は全ての果菜1に対して計測してもよいし、間隔をあけて定期的に計測してもよい。全ての果菜1に対して搬送密度を計測する場合、搬送密度が密である果菜1が連続して同一プールコンベア5に送られてくることも考えられ、プールコンベア5は十分に減速する時間が得られない。このようなケースでは、滞留時速度Vを載果時速度Vに極めて近い速度とするか、あるいは滞留時速度Vを省略することもできる。
【0039】
図5は、果菜搬送密度が密のときは滞留時速度Vを載果時速度Vと等速とし、果菜搬送密度が疎のときは滞留時速度Vを低速とした場合のプールコンベア5における回転の速度変化を表すグラフである。当初、低速の滞留時速度Vで回転していたプールコンベア5は、計測点1の情報により果菜搬送密度が密の状態となり、該当する果菜1が搬送されてくるとそのプールコンベア5は載果時速度Vまで加速し、果菜1を所定区間長Lだけ搬送した後も載果時速度Vを維持する。次の計測機会である計測点2の情報により果菜搬送密度が疎の状態となり、一旦、載果時速度Vから低速の滞留時速度Vまで減速し、該当する果菜1が搬送されてくるとそのプールコンベア5は再び載果時速度Vまで加速する。果菜搬送密度が疎と判断されている状態なので、今度は果菜1を所定区間長L搬送した後に、低速の滞留時速度Vまで減速し、その状態で回転を続ける。
【0040】
また、それぞれのプールコンベア5に回転灯やサイレンあるいは表示板を設置し、滞留時速度Vが高速となったプールコンベア5を知らせることもできる。これにより、箱詰め作業員がプールコンベア5のレーン数より少ない場合であっても、適宜移動して遅滞なく箱詰め作業ができる。
【0041】
(実施形態2の使用例)
実施形態2における果菜自動選別装置を利用したトマトの自動選別方法の具体的な使用例は、以下に示すとおりである。
まずは、事前準備として以下の作業を実施する。
(1)4列のプールコンベアを設置し、それぞれ第1プールコンベア5aにはLLサイズのトマト、第2プールコンベア5bにはLサイズのトマト、第3プールコンベア5cにはMサイズのトマト、第4プールコンベア5dにはSサイズのトマトがそれぞれ引き渡されるように設定する。
(2)計測時間を、後続のトマト5個分を果菜判別装置4で判別する時間として搬送密度計測装置9に登録し記憶させる。
(3)搬送密度が4個以上であれば滞留時速度Vを高速(載果時速度Vの90%)、搬送密度が2個以上であれば滞留時速度Vを中速(載果時速度Vの60%)、搬送密度が2個未満であれば滞留時速度Vを低速(載果時速度Vの30%)とし、変速制御装置に登録し記憶させる。
(4)所定区間長Lを、それぞれのサイズのトマト1個分として変速制御装置に登録し記憶させる。
上記のような事前準備が整うと、次にトマトの自動選別を実施する。
(5)供給部3(図1)で、作業員がトマトを順に果菜キャリア8に載置していく。
(6)果菜搬送体2によってトマトTが搬送され、搬送途中にある果菜判別装置4によってトマトTのサイズ(ここではLサイズとする)が判別される。
(7)果菜判別装置4は、トマトTがLサイズであること、及びトマトTを判別した時刻を搬送密度計測装置9に伝送し、搬送密度計測装置9はこれらの情報を記憶する。
(8)果菜判別装置4は、引き続きトマトTの後続トマト5個分(トマトT〜トマトT)を判別し、判別結果及び判別時刻を搬送密度計測装置9に記憶させる。
(9)搬送密度計測装置9は、トマトTの判別結果が伝送された時点でトマトTの搬送密度、すなわちトマトT〜トマトTのうちLサイズと判別された個数(ここでは2個とする)を算出し、この搬送密度とトマトTの判別時刻を変速制御装置に伝送する。
(10)変速制御装置は、トマトTがLサイズであることから第2プールコンベア5bにトマトTを引き渡すことを認識し、果菜搬送体2の搬送速度とトマトTの判別時刻や第2プールコンベア5bまでの距離などからトマトTが第2プールコンベア5bに到達する時刻を計算し、この到達時刻に載果時速度Vとなるように第2プールコンベア5bを加速させる。
(11)トマトTが第2プールコンベア5bまで搬送されると、果菜キャリア8の送り出し機能によりトマトTは第2プールコンベア5bへ送り出される。
(12)第2プールコンベア5bは、トマトTを所定区間長L、すなわちLサイズのトマト1個分を搬送する。
(13)変速制御装置は、トマトTの搬送密度が2個であることから滞留時速度Vを中速(載果時速度Vの60%)と判断し、トマトTを所定区間長L(トマト1個分)だけ搬送したところで第2プールコンベア5bを滞留時速度V、すなわち載果時速度Vの60%まで減速させる。
(14)第2プールコンベア5bに配備された作業員により、トマトTが箱詰めされる。
【0042】
(実施形態3)
本願発明の果菜自動選別装置及び果菜自動選別方法の第3の実施形態を図6に基づいて説明する。本実施形態は、プールコンベア5が2以上のベルトコンベアで構成される場合の実施形態を説明するものであって、基本的構造、動作、使用方法は実施形態1、実施形態2と共通する。
【0043】
図6に示すプールコンベア5は、果菜搬送体2に接近している順に第1ベルトコンベア51、第2ベルトコンベア52、第3ベルトコンベア53の3連のベルトコンベアがその搬送方向に直列に並べられて構成されている。3つのベルトコンベアは、全て同じ方向(図6の矢印方向)に果菜1を搬送できるように回転し、互いのベルトコンベア間で円滑に果菜1が引き渡せる程度に接近して配置されている。
【0044】
果菜搬送体に最も接近して配置された第1ベルトコンベア51は、載果時速度Vで回転して果菜1を搬送するもので、所定区間長L(例えば、該当する等階級の果菜1の1〜2個分の長さ)の有効ベルト長を備える。また、第2ベルトコンベア52は滞留時速度Vで回転して果菜1を搬送するもので、さらに第3ベルトコンベア53は第2ベルトコンベア52よりも低速の滞留時速度Vで回転するものである。
【0045】
第2ベルトコンベア52及び第3ベルトコンベア53は、搬送密度計測装置9で計測される果菜搬送密度に応じて、高速の滞留時速度V、中速の滞留時速度V、低速の滞留時速度Vで回転することが可能で、載果時速度Vで回転することもできる。プールコンベア5は、3連のベルトコンベアを並べる場合に限らず、2連あるいは4連以上ベルトコンベアを並べて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明の果菜自動選別装置及び果菜自動選別方法は、果菜の選別に限られず、農産物、海産物等の一次産業品、工業製品のような二次産業品といった各種物品の自動選別に応用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 果菜
2 果菜搬送体
3 供給部
4 果菜判別装置
5 プールコンベア
6a 駆動スプロケット
6b 従動スプロケット
7 無端走行体
8 果菜キャリア
9 搬送密度計測装置
51 第1ベルトコンベア
52 第2ベルトコンベア
53 第3ベルトコンベア
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端走行体に多数の果菜キャリアを備えた果菜搬送体の走行により、果菜キャリアの上に載せた果菜を搬送し、搬送中の果菜を果菜判別装置によって判別し、果菜搬送体の側方に設けられたプールコンベアのうちこの判別結果に対応するプールコンベアに果菜を移動させる果菜自動選別方法において、
前記果菜判別装置によって判別された果菜が、当該判別結果に対応するプールコンベアまで搬送されてくると、この果菜は果菜キャリアの上から当該プールコンベアまで移動させられて前記プールコンベア上に載せられ、
果菜が載ったプールコンベアは、果菜が果菜キャリアの上からプールコンベアまで移動した速度と同一速度又は略同一速度である載果時速度で果菜を搬送し、
前記プールコンベアは、前記載果時速度で果菜を所定区間搬送した後、前記載果時速度よりも低速である滞留時速度で果菜を搬送することを特徴とする果菜自動選別方法。
【請求項2】
請求項1記載の果菜自動選別方法において、
果菜判別装置によって果菜が判別された後、所定時間内にこの果菜と同一の判別結果となった後続果菜の数又は有無を計測してこれを果菜搬送密度とし、
前記果菜搬送密度に基づいて、前記果菜の判別結果に対応するプールコンベアの滞留時速度を変速することを特徴とする果菜自動選別方法。
【請求項3】
無端走行体に多数の果菜キャリアが設けられた果菜搬送体と、搬送中の果菜を判別可能な果菜判別装置と、果菜搬送体の側方に設けられたプールコンベアを備え、果菜搬送体の走行により果菜キャリアの上に載せた果菜を搬送し、果菜判別装置で判別した判別結果に対応するプールコンベアに当該果菜を移動させ得る果菜自動選別装置において、
前記果菜判別装置によって判別された果菜が、当該判別結果に対応するプールコンベアまで搬送されると、この果菜を果菜キャリアの上から当該プールコンベアまで移動させてプールコンベア上に載せ得る移動手段を備え、
前記プールコンベアは二以上の速度に変速して果菜を搬送可能であり、
果菜がプールコンベアに載ると、前記プールコンベアは果菜が果菜キャリアの上から当該プールコンベアまで移動した速度と同一速度又は略同一速度である載果時速度で運転し、
前記載果時速度で果菜を所定区間搬送すると、前記プールコンベアは前記載果時速度よりも低速の滞留時速度で運転することを特徴とする果菜自動選別装置。
【請求項4】
請求項3記載の果菜自動選別装置において、
果菜判別装置によって果菜が判別された後の所定時間内にこの果菜と同一の判別結果となった後続果菜の数又は有無を計測してこれを果菜搬送密度とする計測手段と、この果菜搬送密度に基づいてプールコンベアの滞留時速度を変速させる制御手段とを備え、
前記計測手段で計測した果菜搬送密度に応じた滞留時速度で、前記果菜の判別結果に対応するプールコンベアを運転させ得ることを特徴とする果菜自動選別装置。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の果菜自動選別装置において、
プールコンベアは、プールコンベアの搬送方向に二以上並べられたベルトコンベアからなり、
果菜搬送体に最も接近して配置された第一のベルトコンベアは、果菜キャリアの上から果菜を受け取って下流側に隣接する第二のベルトコンベアに果菜を受け渡し可能であるとともに、載果時速度で運転可能であって、載果時速度で果菜を搬送する所定区間長のコンベア長を有し、
第二以降のベルトコンベアは、その下流側にベルトコンベアがある場合にそのベルトコンベアに果菜を受け渡し可能であって、載果時速度及び滞留時速度で運転可能であることを特徴とする果菜自動選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−102175(P2011−102175A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257944(P2009−257944)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(391017702)日本協同企画株式会社 (19)
【Fターム(参考)】