説明

架橋ヒアルロン酸含有組成物およびその製造方法

【課題】 一定のpH、温度において一定以上の粘度平均分子量のヒアルロン酸を生成し、注入に際しては、低い粘度で注射剤に好適な架橋ヒアルロン酸含有組成物およびその製造方法を得ること。
【解決手段】 架橋ヒアルロン酸ゲルを、60℃以下に維持した状態で破砕し、平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸を調整する工程、を含む、粒状架橋ヒアルロン酸を含有する架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法を用いる。または、その生産方法において、架橋ヒアルロン酸含有組成物における架橋ヒアルロン酸含有量を、乾燥重量で1.5〜8w/v%に調整する工程、をさらに含む、生産方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な架橋ヒアルロン酸含有組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒアルロン酸は、脊椎動物の関節液、硝子体などの主成分となっている水溶性の高分子多糖である。関節液や硝子体の有する高い粘弾性は、これら組織中のヒアルロン酸の高い分子量と濃度に起因している。そして、医療や美容形成の分野において、膝関節の治療剤、眼科手術補助剤、皺伸ばし剤など、ヒアルロン酸の粘弾性を利用した注射剤が開発されている。
【0003】
これまでに、ヒアルロン酸の研究に関していくつかの報告が存在し、例えばヒアルロン酸の容量を通常の数倍に増やし、関節に注入する技術が開示(特許文献1)されている。ヒアルロン酸を架橋し、体内での滞留時間を延ばす検討がなされている(特許文献2など)。無機塩を含むヒアルロン酸の水溶液をpH3.5以下に調整し、水溶液を凍結し、次いで解凍することにより中性水溶液に難溶性であり注射器より容易に吐出可能な流動性を有するヒアルロン酸単独で形成された架橋ヒアルロン酸が提案されている(特許文献3)。ヒアルロン酸と、ヒアルロン酸濃度5質量%以上にする水、及びヒアルロン酸のカルボキシル基と等モル以上の酸成分とを共存させ、架橋ヒアルロン酸を形成すること(特許文献4)、およびヒアルロン酸を、冷却しながらヒアルロン酸の濃度が10質量%以上かつ、−10℃〜30℃で保持することにより、医用材料としてより優れた架橋ヒアルロン酸を作成することが開示されている(特許文献5)。ヒアルロン酸の1質量%及び0.1質量%の酸性水溶液を凍結することにより得た架橋ヒアルロン酸スラリーを用いた医用材料、及び化粧料が見出されている(特許文献6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−526747号公報
【特許文献2】特開平7−97401号公報
【特許文献3】WO00/027405号公報
【特許文献4】WO01/057093号公報
【特許文献5】特開2004−149599号公報
【特許文献6】特開2000−230001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記文献記載の従来技術は、以下の点で改善の余地を有していた。
第一に上記文献には、架橋ヒアルロン酸を患部に長時間滞留させるために、患部に多量の架橋ヒアルロン酸を注入する方法が記載されているが、この場合患者に負担がかかる問題があった。また、注射剤としての利便性も良くなかった。
【0006】
第二に上記文献には、患部に長時間滞留させるために調整した、種々の架橋ヒアルロン酸が記載されているが、それだけでは適切な滞留時間を得るには不十分であった。従来の架橋ヒアルロン酸を患者に投与したとしても、疾患が完治する前に架橋ヒアルロン酸がすべて体内で溶解する、又は疾患が完治するのに必要な時期より長く架橋ヒアルロン酸が残留する場合があるために、患者や医師は適切な滞留時間を実現できるヒアルロン酸を必要としている。
【0007】
第三に上記文献の従来技術では、注射剤に含まれる架橋ヒアルロン酸を一定濃度未満に抑える必要があった。なぜならば、一定濃度以上の架橋ヒアルロン酸を含む注射剤は、粘度が高すぎて、細い注射針を通過することが困難であったためである。そしてこのために、架橋ヒアルロン酸を患部に長時間滞留させるために、高濃度の架橋ヒアルロン酸を使用する試みには限界があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、患部への滞留性に優れ、所望の粘度を有する架橋ヒアルロン酸含有組成物、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、架橋ヒアルロン酸ゲルを、60℃以下に維持した状態で破砕し、平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸を調整する工程、を含む粒状架橋ヒアルロン酸を含有する架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法が提供される。
【0010】
この生産方法は、後述する実施例で、患部への滞留性に優れ、所望の粘度を有する架橋ヒアルロン酸含有組成物を生産できることが実証されている。そのためこの生産方法は、注射剤に適した架橋ヒアルロン酸含有組成物を生産できる。
【0011】
また本発明によれば、架橋ヒアルロン酸ゲルを、60℃以下に維持した状態で破砕し、平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸を調整する工程、を含む粒状架橋ヒアルロン酸を含有する架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法で得られる、架橋ヒアルロン酸含有組成物が提供される。
【0012】
また本発明によれば、架橋ヒアルロン酸含有組成物であって、pH7.0、温度37.0℃の10mMリン酸緩衝化生理的食塩水中に浸漬すると30日後に、粘度平均分子量が180万ダルトン以上のヒアルロン酸が生成される特徴を有し、且つ、コーンプレートを使う回転粘度測定法により、温度25℃、せん断速度50 S−1において測定した粘度が、300mPa・s以下である特徴を有する、乾燥重量で1.5〜8w/v%の架橋ヒアルロン酸を含有する、架橋ヒアルロン酸含有組成物及び、架橋ヒアルロン酸含有組成物を含む注射剤が提供される。
【0013】
この架橋ヒアルロン酸含有組成物は、後述する実施例で、患部への滞留性に優れ、所望の粘度を有することが実証されている。そのため、この架橋ヒアルロン酸含有組成物は、注射剤として好適に使用できる。
【0014】
この注射剤は、患部への滞留性に優れ、所望の吐出圧を有することが実証されている。そのためこの注射剤は、関節症治療用等の注射剤として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態に係る破砕装置の主要部の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、架橋ヒアルロン酸含有組成物と他のヒアルロン酸製剤の吐出圧を比較して示した図である。
【図3】図3は、架橋ヒアルロン酸含有組成物と他のヒアルロン酸製剤の疼痛抑制効果を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同様な内容については、繰り返しの煩雑を避けるために、適宜説明を省略する。
【0017】
架橋ヒアルロン酸とは、架橋構造を有するヒアルロン酸を言う。架橋ヒアルロン酸は、ヒアルロン酸中に含まれる一部のカルボキシル基が同一のヒアルロン酸分子の水酸基にエステル結合しているか、別のヒアルロン酸分子の水酸基にエステル結合しているか、あるいはその両方に対してエステル結合しており、三次元網目構造を形成したものである。架橋ヒアルロン酸は、化学的架橋剤や化学的修飾剤等を使用したものでも良いが、好ましくはそれらを使用しないで形成されたものである。エステル結合量は、任意に制御することができるが、導入するエステル結合量は、全カルボキシル基に対して、0.05%以上1.0%以下が好ましい。架橋構造および程度は、架橋ヒアルロン酸をヒアルロン酸分解酵素により部分分解し可溶化し、NMRによって確認することができる。
【0018】
<ヒアルロン酸の酵素分解>
架橋ヒアルロン酸0.03gを0.05M酢酸緩衝液(pH5.0、NaCl0.15M)0.85mlに懸濁する。この架橋ヒアルロン酸懸濁液に、ヒアルロニダーゼ(シグマ アルドリッチ社製、タイプV、約2000単位/mg)3mgを0.05M酢酸緩衝液(pH5.0、NaCl0.15M含有)に溶解させた溶液を加え、37℃で120時間攪拌後、冷却し、酵素分解物溶液を得る。得られた酵素分解物溶液を0.2μmメンブランフィルターで濾過する。濾過後に得られた溶液に対して、5倍容積のエタノールを加えて、オリゴ糖を析出させる。析出物を重水に溶解し、凍結乾燥して回収する。
【0019】
<架橋点成分のNMR測定>
回収したオリゴ糖のH1−NMR測定を行う。化学シフトはTMSを基準物質とする。
【0020】
<架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法>
本実施形態における架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法は、架橋ヒアルロン酸ゲルを、60℃以下に維持した状態で破砕し、平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸を調整する工程を含む、粒状架橋ヒアルロン酸を含有する架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法である。この生産方法で得られる架橋ヒアルロン酸含有組成物は、後述する実施例で、患部に適切な時間滞留することが可能で、注射剤としての好適な粘度を有することが実証されている。また、in vivoで関節の疼痛を緩和することが実証されている。そのため、この生産方法は、架橋ヒアルロン酸を原料とした注射剤の生産のために好適であり、特に関節症治療用の注射剤の生産のために好適である。
【0021】
また上記生産方法において、破砕を行う際の温度が低いほど、得られる架橋ヒアルロン酸含有組成物を注射剤として使用した場合の、患部での滞留時間が長い傾向にある。そのためこの温度は、好ましくは57.5℃以下であり、より好ましくは55℃以下であり、さらに好ましくは52.5℃以下であり、最も好ましくは50℃以下である。また破砕を効率よく行うために、温度は−5℃以上であることが好ましい。
【0022】
また上記生産方法において、平均体積粒径が小さいほど、得られる架橋ヒアルロン酸含有組成物を注射剤として使用した場合の、吐出圧が小さくなる傾向がある。そのため上記平均体積粒径は、好ましくは0.175mm以下であり、より好ましくは0.15mm以下であり、さらに好ましくは0.125mm以下であり、最も好ましくは0.1mm以下である。また吐出後に患部に一定時間滞留するためには、平均体積粒径は1μm以上であることが好ましい。
【0023】
また上記生産方法は、上記架橋ヒアルロン酸含有組成物における架橋ヒアルロン酸含有量を、乾燥重量で1.5〜8w/v%に調整する工程を、さらに含んでいても良い。この場合、架橋ヒアルロン酸含有組成物に含まれる架橋ヒアルロン酸の濃度が高いため、溶媒や患部内において長時間滞留することが可能になる。なお、1.5〜8w/v%に調整するには、例えば、上記生産過程で得られた平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸に対して、任意のバッファーを加え、1.5〜8w/v%に濃度を希釈することで調整することができる。溶媒としては、例えば水、生理食塩水を用いる事ができる。その他の薬学的に許容される水溶液を用いる事ができる。
【0024】
「架橋ヒアルロン酸含有組成物における架橋ヒアルロン酸含有量を、乾燥重量で1.5〜8w/v%」とは、架橋ヒアルロン酸を凍結乾燥し乾燥重量とした場合に、架橋ヒアルロン酸含有組成物全体の容量に対する百分率で、架橋ヒアルロン酸を1.5〜8%を含むことを意味する。例えば、架橋ヒアルロン酸含有組成物1mlの場合、架橋ヒアルロン酸を1.5w/v%含むことは、架橋ヒアルロン酸含有組成物1mlを−20℃、200mTorr以下、20時間以上の条件で凍結乾燥すると、乾燥重量として架橋ヒアルロン酸が15mg得られることを意味する。なお、注射剤に含まれる架橋ヒアルロン酸濃度が高いほど、架橋ヒアルロン酸が患部に滞留しやすい。一方で、注射剤として使用するにはある程度の流動性が必要であるため、その流動性を維持できる程度に低い濃度であることが好ましい。そのため、架橋ヒアルロン酸含有組成物における架橋ヒアルロン酸含有量は、好ましくは、2〜7w/v%であり、最も好ましくは3〜6w/v%である。
【0025】
また上記生産方法における架橋ヒアルロン酸ゲルの生産方法は、生産される架橋ヒアルロン酸含有組成物が所望の特性を維持できる限り特に限定しない。例えば、ヒアルロン酸とヒアルロン酸を除く酸とを混合し、ヒアルロン酸およびヒアルロン酸を除く酸の混合物を調整する工程と、その混合物を凍結後、解凍し、架橋ヒアルロン酸ゲルを調整する工程を含む生産方法で得ることができる。この生産方法は、ヒアルロン酸の純度が高いため特に好ましい。本明細書において「凍結」とは0℃未満の温度で混合物を維持することを意味し、混合物に含まれる水分の一部が固化している状態を含む。上記「凍結」は好ましくは−25℃〜−5℃の間の温度にて、1日〜15日間維持することである。本明細書において「解凍」とは0℃以上の温度で混合物を維持することを意味し、混合物に含まれる水分の一部が液化している状態を含む。また凍結から解凍を行う期間は、−30℃〜25℃の間の温度で、1時間〜20日間のいずれの期間でも行い得る。
【0026】
また架橋ヒアルロン酸ゲルの生産方法は、以下の文献に記載の方法でも生産できる。一部またはすべてのカルボキシ基が同一の多糖鎖または他の多糖鎖のアルコール基でエステル化された、自己架橋エステル結合ヒアルロン酸がEP0341745B1に記載されている。HAの水溶液を酸性に調整し、該水溶液を凍結し、次いで解凍することを少なくとも1回行うことによって生成する自己架橋エステル結合ヒアルロン酸がWO99/10385に記載されている。凍結を行わずとも5%以上の濃度になるようにヒアルロン酸と酸性溶液を混合・該共存状態を保持することで生成する自己架橋エステル結合ヒアルロン酸がWO01/57093に記載されている。
【0027】
また上記生産方法において、架橋ヒアルロン酸ゲルの原料となるヒアルロン酸は、粘度平均分子量が8×10ダルトン以上であっても良い。上記生産方法において、ヒアルロン酸の粘度平均分子量が大きいほど、後に生成される架橋ヒアルロン酸含有組成物が、溶媒や患部内において長時間滞留し易くなる。また、高分子量のものほど架橋ヒアルロン酸を短い反応時間で得やすい。そのため、上記ヒアルロン酸の粘度平均分子量は、好ましくは1.0×10ダルトン以上であり、より1.5×10ダルトン以上であり、より好ましくは1.8×10ダルトン以上であり、さらに好ましくは2.0×10ダルトン以上である。なお、生産性の観点からは、1.0×107ダルトン以下であることが好ましい。
【0028】
本明細書においてヒアルロン酸は、動物組織から抽出したものでも、また発酵法で製造したものでも使用できるが、好ましくは発酵法で製造したものである。ヒアルロン酸としては、そのアルカリ金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムの塩も使用することができる。
【0029】
架橋ヒアルロン酸の粘度平均分子量は、架橋ヒアルロン酸の架橋点を切断し溶解させヒアルロン酸とした後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に検出器として示差屈折率計を使い、分子量分布のピークトップのリテンションタイムから算出することができる。リテンションタイムからの粘度平均分子量の算出には、粘度平均分子量が既知のヒアルロン酸の分子量分布のピークトップのリテンションタイムを用いて作成した検量線を用いる。検量線作成に用いるヒアルロン酸の粘度平均分子量は、ヒアルロン酸を0.2M塩化ナトリウム溶液で溶解し、ウベローデ型粘度計を使用し30℃に於ける流下時間を測定し、得られた還元粘度から極限粘度を算出し、Laurentの式[η]=0.00036×M0.78([η]:極限粘度、M:粘度平均分子量)を用いて算出する。
【0030】
また上記のヒアルロン酸およびヒアルロン酸を除く酸の混合物は、ヒアルロン酸を乾燥重量で15質量%以上含んでいても良い。この混合物中に、ヒアルロン酸が高濃度含有していれば、後に生成される架橋ヒアルロン酸含有組成物に含まれる架橋ヒアルロン酸の濃度も高くなり、架橋ヒアルロン酸含有組成物が溶媒や患部内において長時間滞留し易くなる。そのため、この混合物中にはヒアルロン酸を乾燥重量で、好ましくは16質量%以上、より好ましくは17質量%以上、より好ましくは18質量%以上、より好ましくは19質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、最も好ましくは20.8質量%以上含有することが好ましい。なお、ゲルが形成可能な範囲内であるために、この混合物中のヒアルロン酸の含有量は99質量%以下であることが好ましい。ヒアルロン酸と酸の混合は、酸にヒアルロン酸を混練りすることで調整できる。混合時の温度は、より高品質なヒアルロン酸を維持するために、0℃〜−20℃が好ましい。また低濃度で調整したヒアルロン酸の酸性水溶液を濃縮することでも調整できる。
【0031】
乾燥重量は、次の通りの意味である。すなわち、例えば、2Nの硝酸75gを自公転型混練り装置に入れ、−10℃に冷却しシャーベット状の硝酸凍結物を得て、この硝酸凍結物に粘度平均分子量2.8×10 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末22.5g(水分含量10%)を投入し、−10℃、100rpmで均一なゴム状になるまで1時間練り混ぜた場合、この時のヒアルロン酸ナトリウムの乾燥重量が、20.8質量%となることを言う。[22.5×0.9/(75+22.5)]×100=20.8質量%]
【0032】
また上記のヒアルロン酸を除く酸は特に限定はされず、公知のいずれの酸をも使用することができるが、ヒアルロン酸よりも強い酸であることが好ましい。更に、無機酸であることが好ましい。その中でも、塩酸、硝酸、硫酸が好ましく、ハンドリング等を考慮すると硝酸が特に好ましい。
【0033】
上記のヒアルロン酸を除く酸の量は、限定はしないが、ヒアルロン酸のカルボキシル基と等モル以上の酸成分の量とすることができる。
【0034】
また上記生産方法において架橋ヒアルロン酸ゲルを破砕することは、架橋ヒアルロン酸ゲルを粒子化することを意味する。粒子化するための装置は特に限定しないが、例えば乳化装置が好ましく用いることができる。せん断力を乳化原理とする、高速回転するローターを用いる高速回転型乳化装置や、高圧力を運動エネルギーに変換する高圧式乳化装置、超音波を発振しキャビテーションによりせん断力を与える超音波式などを用いる事ができる。
【0035】
上記生産方法において架橋ヒアルロン酸ゲルを破砕するときには、破砕装置に備え付けられた攪拌羽根のローターによって、上記架橋ヒアルロン酸ゲルと水系溶媒との混合液の水流を作り、その水流によるせん弾力をかけながらスリットを通過させて破砕することが好ましい。なぜならばこの生産方法の場合、架橋点の切断や主鎖の共有結合の切断などの、粒状架橋ヒアルロン酸の物性劣化が生じにくいからである。
【0036】
上記破砕装置としては高速回転型乳化装置を好適に使用できる。この場合、主鎖の共有結合の切断による低分子化を少なくすることができる。
【0037】
図1は、本実施形態における破砕装置の主要部を示す概略図である。破砕装置は、高速回転するローター100とそれを囲むように配置されたスクリーン101から構成され、この間隙を通過する際、高速回転するローター表面の近傍で大きな速度勾配によりせん断力を受ける。上記架橋ヒアルロン酸ゲルと水系溶媒との混合液は、ローター100側へ投入できる。また、スクリーン101はスリット102を有しており、スリットを通過する液体はせん断力を受ける。破砕装置を用い室温以下、好ましくは30℃以下になるよう保ちながら平均体積粒径が0.20mm以下に調製することができる。上記架橋ヒアルロン酸ゲルと水系溶媒との混合液の粒子化する際に生ずる温度上昇については、強制的に冷却することが好ましい。温度は50℃未満に維持することが好ましい。架橋ヒアルロン酸の主鎖の切断が抑制され、架橋ヒアルロン酸の粘度平均分子量の低下を少なくすることができる。破砕中の温度は通常10℃以上50℃未満である。
【0038】
また上記スリット102の形状は特に限定されず、パンチング・ホール、メッシュなど様々な形状のものを含み、特に縦長型のスリットが好ましい。縦長型の場合、スリット102は、スクリーン101とローター100間の間隙で水流を作っている液に、効率的に剪断力を付与し、通過する液体に適切な衝突エネルギーを容易に付与できるためである。
【0039】
スクリーン101の形状はローター100の形状にもよるが、円錘形または円錘台状であることが好ましい。それによって吸液側からの液の供給を効率よくすることができる。
【0040】
スクリーン101のスリットの数は特に限定しないが、上記の生産方法において平均体積粒径が0.2mm以下の粒状ヒアルロン酸を効率的に調整するためには、好ましくは2〜100本であり、より好ましくは3〜50本である。
【0041】
スリット102の幅は特に限定しないが、上記の生産方法において平均体積粒径が0.2mm以下の粒状ヒアルロン酸を効率的に調整するためには、好ましくは10mm以下、より好ましくは5mm以下、さらに好ましくは2.5mm以下、最も好ましくは1.2mm以下である。なおスリット102の幅は、スリット102を溶媒が通過可能な範囲内であるために、0.1mm以上であることが好ましい。
【0042】
ローター100とスクリーン101の間隙の幅は特に限定しないが、好ましくは0.05〜5.0mm、より好ましくは0.1〜2.0mmである。間隙が5.0mm以下であればローター100とスクリーン101間の剪断力が適度に高く、所望の粒径を調整し易い。また0.05mm以上である方が、装置を作製しやすく装置のコストが低く抑えられる。
【0043】
ローター100とスクリーン101は好ましくは同軸上に位置し、より好ましくは垂直状に位置し、ローター100の上部より、架橋ヒアルロン酸ゲルを含む液体を送液し、この液体がローター100、ローター100とスクリーン101との間隙およびスクリーン101を下部方向に通過することにより架橋ヒアルロン酸ゲルが破砕される。
【0044】
破砕装置としては、クレアミクス(エムテクニック社)を用いることができる。クレアミクスは攪拌羽根のローターで架橋ヒアルロン酸ゲルと水系溶媒との混合液の水流を作り、その水流にせん断力をかけながらスリットを通過させて、50℃未満で微粒子化させることができる。平均体積粒径0.2mm以下の粒状ヒアルロン酸を調整する場合の破砕装置は、クレアミクスシングルモーション(CS。エムテクニック社)が好ましい。
【0045】
架橋ヒアルロン酸は、酸との共存後に中和処理して得られたものを破砕することができる。酸との共存後にそのまま、あるいは中和処理後にさらに乾燥させて、架橋ヒアルロン酸の乾燥重量にして、20倍から200倍量の水、あるいは生理食塩水などと混合して破砕することができる。
【0046】
平均体積粒径とは、粒子の全体積を100%として、体積の積算粒度分布曲線を求めたとき、積算体積が50%となる点の粒子径のことである。画像解析法により、規定される。粒度・形状分布測定器PITA−1(セイシン企業製)を用いて測定することができる。
【0047】
<架橋ヒアルロン酸含有組成物>
本発明の他の実施形態は、pH7.0、温度37.0℃の10mMリン酸緩衝化生理的食塩水中に浸漬すると30日後に、粘度平均分子量が180万ダルトン以上のヒアルロン酸が生成される特徴を有し、且つ、コーンプレートを使う回転粘度測定法により、温度25℃、せん断速度50 S-1において測定した粘度が、300mPa・s以下である特徴を有する、乾燥重量で1.5〜8w/v%の架橋ヒアルロン酸を含有する、架橋ヒアルロン酸含有組成物である。この架橋ヒアルロン酸含有組成物は、後述する実施例で、患部に長時間滞留することが可能で、注射剤としての好適な粘度を有することが実証されている。また、in vivoで関節の疼痛を緩和することが実証されている。そのため、この架橋ヒアルロン酸含有組成物は、架橋ヒアルロン酸を原料とした注射剤として使用でき、特に関節症治療用の注射剤として好適である。
【0048】
架橋ヒアルロン酸含有組成物の粘度は、コーンプレートを使う回転粘度測定法により、コーンプレート1.009°(D=49.938mm)を用い、せん断速度50S−1、25℃にて行う。
【0049】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物は、内径0.40mm、針の長さ25mmの注射針をつけた内径0.45cmの注射器における温度25℃、注入速度50mm/minでの吐出圧が、0.8N以下の架橋ヒアルロン酸含有組成物を含む。この吐出圧が低いほど、架橋ヒアルロン酸含有組成物を注射剤として使用したときの医師または患者の負担が少ない。そのため吐出圧は、好ましくは0.75N以下であり、より好ましくは0.70N以下であり、さらに好ましくは0.65N以下であり、最も好ましくは0.60N以下である。また吐出後に患部に一定時間滞留するためには、吐出圧は0.01N以上であることが好ましい。
【0050】
吐出圧を測る方法は、試料を内径0.45cmの注射器に充填し、内径0.40mm、針の長さ25mmの23G注射針をつけ、25±2.0℃にて注入速度50mm/minで注射器を押し出す際にかかる吐出圧を押し出し圧測定機により測定することができる。押し出し圧測定機は、一般的な材料試験で用いられる静的圧縮試験機を用いる。
【0051】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物は、平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸を含んでいても良い。この場合、後述する実施例で、架橋ヒアルロン酸含有組成物を注射剤として使用した場合の吐出圧が低いことが実証されている。この平均体積粒径は、小さいほど吐出圧が小さくなる傾向がある。そのため平均体積粒径は、好ましくは0.175mm以下であり、より好ましくは0.15mm以下であり、さらに好ましくは0.125mm以下であり、最も好ましくは0.1mm以下である。また吐出後に患部に一定時間滞留するためには、平均体積粒径は1μm以上であることが好ましい。
【0052】
上記粒状架橋ヒアルロン酸は、架橋ヒアルロン酸ゲルを60℃以下の温度に維持した状態で破砕して得られた粒状架橋ヒアルロン酸を含む。この場合、後述する実施例で、架橋ヒアルロン酸含有組成物を注射剤として使用した場合の、患部での滞留時間が長いことが実証されている。この破砕を行う際の温度は、低いほど、架橋ヒアルロン酸含有組成物を注射剤として使用した場合の、患部での滞留時間が長い傾向にある。そのためこの温度は、好ましくは57.5℃以下であり、より好ましくは55℃以下であり、さらに好ましくは52.5℃以下であり、最も好ましくは50℃以下である。また破砕を効率よく行うために、温度は−5℃以上であることが好ましい。
【0053】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物は、任意の適当な投与経路で、投与され得る。非経口でなされることが好ましい。また、上記架橋ヒアルロン酸含有組成物は注射剤に調製され得る。後述する実施例において、上記の性質を有する架橋ヒアルロン酸含有組成物をウサギの関節に注射剤として投与すると、7日後においても関節液量の増加が確認されている。また、後述する実施例において得られた架橋ヒアルロン酸含有組成物は、pH7.0、温度37.0℃の10mMリン酸緩衝化生理的食塩水中に浸漬すると30日後に、粘度平均分子量が180万ダルトン以上のヒアルロン酸が生成されることが確認されている。架橋ヒアルロン酸は、生体内のpHや温度により架橋ヒアルロン酸の架橋点が切断され、関節内にヒアルロン酸が生成されると考えられる。即ち、この注射剤は、患部において適切な時間滞留し、また架橋ヒアルロン酸を生成する特性を有する。また、後述の実施例において、関節の疼痛を軽減させることも実証されている。
【0054】
この注射剤は粘度が低いため細い針を備えたシリンジを使用でき、注射による疼痛を軽減することができる。そのため、注射疼痛軽減型注射剤として好適に使用できる。本明細書において注射疼痛軽減型注射剤とは、注射時において、注射針に起因する患者の疼痛を低く抑えることが可能な注射剤のことを意味する。例えば、上記注射疼痛軽減型注射剤は、内径が0.40mmの注射針を備えたシリンジでも低い吐出圧で使用でき、この場合、注射針が細いために、主に静脈注射に使用される内径が0.57mmの注射針を備えたシリンジを使用したときよりも、注射針に起因する疼痛が少ない。また細い針を備えたシリンジを使用できるため、皮下注射剤または皮内注射剤として好適に使用できる。
【0055】
加えて、この注射剤は粘度が低いため、内径が0.40mm以下の注射針を収容できる筒先を備えるプレフィルドシリンジや、内径が0.40mm以下の注射針を備えるプレフィルドシリンジに充填して、使用することができる。プレフィルドシリンジとは、一般的に、注射剤が充填されたシリンジのことを指す。この場合、注射剤を使用する現場で、注射剤をシリンジに充填する工程が省略できるため、より無菌状態を保ちやすく、また効率的に注射剤を投与することができる。注射針を備えるプレフィルドシリンジであれば、注射剤を使用する現場で、注射針をプレフィルドシリンジに装着する工程が省略できるため、より無菌状態を保ちやすく、また効率的に注射剤を投与することができる。
【0056】
この注射剤は患部に適切な時間滞留することができるため、関節症治療用の注射剤として好適に使用できる。
【0057】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物の調製においては、得られた架橋ヒアルロン酸含有組成物を、適切な賦形剤、アジュバント、および/または薬学的に受容可能なキャリアーと混合して、単独で、あるいは他の薬剤と組み合わせることができる。特に好ましく用いられ得るキャリアーには、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、デキストロース、および水等が含まれる。本発明の一実施形態において、薬学的に受容可能なキャリアーは薬学的に不活性である。
【0058】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物の投与は、非経口でなされる場合、筋肉内、皮下などにも行うことができ、特に好ましくは関節腔内などの組織に直接行うことができる。
【0059】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物を含む製剤は、注射剤や液剤などのいずれの形態にもなり得る。また、その剤型に応じ、製剤学的に公知の手法により、適切な賦形剤 ;崩壊剤;結合剤;希釈剤;リン酸、クエン酸、コハク酸、酢酸、および他の有機酸またはそれらの塩のような緩衝剤;等張化剤;防腐剤;湿潤剤;乳化剤;分散剤;安定化剤;溶解補助剤;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド(例えば、ポリアルギニンまたはトリペプチド);タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチン、またはイムノグロブリン);親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン);アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、またはアルギニン);単糖、二糖および他の炭水化物(セルロースまたはその誘導体、グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む);キレート剤(例えば、EDTA);糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール);対イオン(例えば、ナトリウム);および/または非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート、ポロキサマー)、などの医薬品添加物と適宜混合または希釈・溶解することにより調剤することができる。等張性および化学的安定性を増強するこのような物質は、使用された投薬量および濃度においてレシピエントに対して非毒性である。
【0060】
処方および投与のための技術は、例えば、日本薬局方の最新版および最新追補、「REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES」(Maack Publishing Co.、Easton、PA)の最終版に記載されている。
【0061】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物は、ヒアルロン酸が意図する目的を達成するのに有効な量で含有される薬剤であり、「治療的有効量」または「薬理学的有効量」は当業者に十分に認識され、薬理学的結果を生じるために有効な薬剤の量をいう。治療的有効用量の決定は十分に当業者に知られている。
【0062】
治療的有効量とは、投与により疾患の状態を軽減する薬剤の量をいう。治療効果および毒性は、細胞培養または実験動物における標準的な薬学的手順によって決定され得る。用量は、好ましくは、毒性をほとんどまたは全くともなわないLD50を含む循環濃度の範囲内にある。この用量は、使用される投与形態、患者の感受性、および投与経路に依存してこの範囲内で変化する。一例として、複合体の投与量は、年齢その他の患者の条件、疾患の種類、使用する複合体の種類等により適宜選択される。
【0063】
上記架橋ヒアルロン酸含有組成物は、上記の用途に加えて、関節症治療用注入剤、塞栓形成剤、軟質組織注入剤、代用硝子体等に好ましく適用できる。
【0064】
以下に、架橋ヒアルロン酸含有組成物の製造方法の具体例を実施例の態様で示すが、本発明はこれに限定されない。
【実施例】
【0065】
実施例1
2Nの硝酸75gを自公転型混練り装置(プライミクス製)に入れ−10℃に冷却しシャーベット状の硝酸凍結物を得た。硝酸凍結物に粘度平均分子量2.8×10 ダルトンのヒアルロン酸ナトリウムの粉末22.5g(水分含量10%)を投入し、−10℃、100rpmで均一なゴム状になるまで1時間練り混ぜた(ヒアルロン酸ナトリウム20.8質量%)。
【0066】
このヒアルロン酸と硝酸の混合物を−10℃に設定した冷凍庫に入れた。5日後、5℃の純水1Lに投入し一時間おきに純水を交換することを2回繰り返し、さらに5℃、50mMのリン酸緩衝液1Lに投入し一時間おきに50mMのリン酸緩衝液を交換することを5回繰り返し、硝酸が完全に無くなるまで中和洗浄をおこない架橋ヒアルロン酸を得た。
【0067】
中和後、30分間、静置し上清をデカンテーションで除き、沈降した架橋ヒアルロン酸に対して、3倍の重量の50mM リン酸緩衝生理食塩水を加えた。架橋ヒアルロン酸を粒子化するためクレアミクスシングルモーション(CS。エムテクニック製)で、20,000 rpm、50℃未満になるよう冷却しながら10分間および20分間破砕した。クレアミクスのローターは後退角度0℃ローターを使用し、スクリーン上に存在するスリットの巾が1.2mmのものを使用した。粒子径は、粒度・形状分布測定器PITA−1(セイシン企業製)を用い定量した。前処理として架橋ヒアルロン酸をメチレンブルーにより染色(染色液濃度:0.1w/v%以上、染色時間:1分以上)した。PITA−1の測定条件としては、キャリア液は10mM リン酸緩衝化生理食塩水(pH 6.8)を用い、測定粒子数は1500個、対物レンズ2倍で測定した。その結果、得られた粒状架橋ヒアルロン酸の平均体積粒径は10分間の破砕で0.10 mm、20分間の破砕で0.07mmだった。
【0068】
10分間の破砕で得られた架橋ヒアルロン酸破砕液を、5℃、10 mM リン酸緩衝化生理食塩水pH 7.0に投入し一時間おきに10 mM リン酸緩衝化生理食塩水を交換することを2回繰り返した。この溶液中に含まれる架橋ヒアルロン酸含有量を、6 w/v %に調整するため、まず、架橋ヒアルロン酸の濃度を定量した。濃度の定量は、架橋ヒアルロン酸懸濁液50 mgを蒸留水1.55 mlで希釈し、そこに1N 水酸化ナトリウム溶液を0.2 ml添加し、室温にて30分静置することで、架橋ヒアルロン酸のエステル架橋を加水分解し架橋ヒアルロン酸を溶解し、この溶液に1N 塩酸0.2 mlを添加し中和した後、カルバゾール硫酸法により行った。既知濃度のヒアルロン酸(粘度平均分子量190万ダルトン)を標準物質として濃度を計算した。定量結果を基に架橋ヒアルロン酸含有量が、6 w/v %となるように調整し、架橋ヒアルロン酸含有組成物を得た。また同様の手順で、10分間の破砕で得られた架橋ヒアルロン酸破砕液に代えて、20分間の破砕で得られた架橋ヒアルロン酸破砕液を用いて、架橋ヒアルロン酸含有量が、6 w/v %の架橋ヒアルロン酸含有組成物を得た。
【0069】
実施例2
架橋ヒアルロン酸破砕液を、液中に含まれる架橋ヒアルロン酸含有割合が3w/v%になるよう2mMリン酸緩衝化生理的食塩水pH7.4に懸濁して調整する以外は実施例1と同様にして架橋ヒアルロン酸含有組成物を得た。
【0070】
比較例1
実施例1と同様にして架橋ヒアルロン酸を破砕するため、クレアミクスシングルモーション(CS。エムテクニック製)で30℃以下になるよう冷却しながら10、000rpm、積算時間6分間で破砕した。粒子径は、粒度・形状分布測定器PITA−1(セイシン企業社製)により測定し、平均体積粒径は、0.30mmだった。
【0071】
得られた架橋ヒアルロン酸破砕液を実施例1と同様に処理して6w/v%の架橋ヒアルロン酸含有組成物を調製した。
【0072】
比較例2
実施例1と同様にして架橋ヒアルロン酸を破砕するため、クレアミクスシングルモーション(CS。エムテクニック製)で20、000rpm、冷却を行わず20分間で破砕した。架橋ヒアルロン酸の温度は85℃に上昇していた。粒子径は、粒度・形状分布測定器PITA−1(セイシン企業製)により測定し、平均体積粒径は、0.10mmだった。
【0073】
得られた架橋ヒアルロン酸破砕液は実施例1と同様に処理して、6w/v%の架橋ヒアルロン酸含有組成物を調製した。
【0074】
参考例1
ヒアルロン酸関節製剤「スベニール」(商品名、中外製薬社製)
【0075】
参考例2
ヒアルロン酸関節製剤「アルツ」(商品名、生化学工業社製)
【0076】
参考例3
ヒアルロン酸関節製剤「Synvisc」(商品名、ジェンザイムコーポレーション社製)
【0077】
参考例4
ヒアルロン酸関節製剤「Durolane」(商品名、Q−MED社製)
【0078】
参考例5
生理的食塩水「大塚生食注」(商品名、大塚製薬社製)
【0079】
実施例1および2、比較例1および2で得られた架橋ヒアルロン酸含有組成物の特性を、参考例1〜5と共に、評価した。
[架橋ヒアルロン酸含有組成物の粘度測定]
レオメーターMCR300(Physica製)、コーンプレート1.009°(D=49.938mm)を用い、せん断速度1〜100 S-1、25℃にて測定した。実施例1、2及び比較例1の架橋ヒアルロン酸含有組成物、参考例1から5の粘度比較を行った。せん断速度50 S−1での粘度の測定結果を以下に示す。
【0080】
<測定結果>
実施例1(架橋ヒアルロン酸濃度6 w/v%、平均体積粒径0.10mm)の架橋ヒアルロン酸含有組成物は250 mPa・sであった。
【0081】
実施例2(架橋ヒアルロン酸濃度3 w/v%、平均体積粒径0.10mm)の架橋ヒアルロン酸含有組成物は170 mPa・sであった。
【0082】
比較例1(架橋ヒアルロン酸濃度6 w/v%、平均体積粒径0.30mm)の架橋ヒアルロン酸含有組成物は450 mPa・sであった。
【0083】
参考例1(粘度平均分子量200万、ヒアルロン酸濃度1 w/v%)は1,640 mPa・sであった。
【0084】
参考例2(「アルツ」粘度平均分子量 80万、ヒアルロン酸濃度1 w/v%)は650 mPa・sであった。
【0085】
参考例3は1,540 mPa・sであった。
【0086】
参考例4は3,390 mPa・sであった。
【0087】
参考例5は1 mPa・sであった。
【0088】
実施例1の架橋ヒアルロン酸含有組成物は6w/v%の高濃度の架橋ヒアルロン酸を含有するが、それにも関わらず、参考例1の粘度平均分子量80万ダルトン、1w/v%のヒアルロン酸に比べて、せん断速度50 S−1の条件下における粘度が半分以下であった。
【0089】
[架橋ヒアルロン酸含有組成物の吐出圧測定−1]
架橋ヒアルロン酸含有組成物1mlを内径0.45cmの注射器テルモシリンジSS−01T(テルモ社製)につめ、内径0.40mm、針の長さ25mmの注射針テルモ注射針23G×1インチ 0.60×25mm(テルモ社製)をつけた。押し出し圧測定機EZ−TEST(島津製作所社製)を用い、温度25℃で速度50mm/分の吐出条件で、シリンジにかかる圧力を測定した。結果を以下に示す。
【0090】
<測定結果>
実施例1(架橋ヒアルロン酸濃度6w/v%、平均体積粒径0.10mm)の架橋ヒアルロン酸含有組成物は0.30 Nであった。
【0091】
比較例1(架橋ヒアルロン酸濃度6 w/v%、平均体積粒径0.30mm)の架橋ヒアルロン酸含有組成物:測定不能(針詰まりのため定量困難)
【0092】
・参考例1サンプル(「スベニール」粘度平均分子量200万、ヒアルロン酸濃度1 w/v%):1.20 N
【0093】
・参考例2サンプル(「アルツ」粘度平均分子量 80万、ヒアルロン酸濃度1 w/v%):1.10 N
【0094】
・参考例3サンプル(ヒアルロン酸関節製剤「Synvisc」):1.10 N
【0095】
・参考例4サンプル(ヒアルロン酸関節製剤「Durolane」):4.00 N
【0096】
・参考例5サンプル(生理食塩水):0.20 N
【0097】
このように本願発明の架橋ヒアルロン酸を注射剤として用いれば、ヒアルロン酸濃度はスベニールの6倍にも関わらず、吐出圧は低く押さえることができる。
【0098】
[架橋ヒアルロン酸の吐出圧測定−2]
注射針23G(内径0.40mm)より細い24、25、27Gを用い、実施例1サンプル(架橋ヒアルロン酸濃度6w/v%、平均体積粒径0.07mm)、参考例1〜5のサンプル1mlを注射器シリンジ(テルモ製)につめ、同様にしてシリンジにかかる圧力を測定した。その結果を以下の表1および図2に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
このように本願発明の架橋ヒアルロン酸を注射剤として用いれば、ヒアルロン酸濃度はスベニールの6倍にも関わらず、吐出圧が低く、かつ細い針が使用可能であることから、注射時の医者の負担と患者の疼痛を軽減することが示唆される。
【0101】
[架橋ヒアルロン酸の粘度平均分子量および溶出したヒアルロン酸の粘度平均分子量の測定]
<架橋ヒアルロン酸の粘度平均分子量測定>
実施例1(架橋ヒアルロン酸濃度6w/v%、平均体積粒径0.10mm)、実施例2(架橋ヒアルロン酸濃度3w/v%、平均体積粒径0.10mm)、及び比較例2(架橋ヒアルロン酸濃度6 w/v%、平均体積粒径0.10mm)のサンプルについて、架橋ヒアルロン酸に換算して10mg分を、0.1N水酸化ナトリウム溶液1mlに投入し、0℃で30分間静置し、架橋ヒアルロン酸を溶解する。この溶解液に0.1N塩酸1mlを添加し中和し、GPC溶媒で濃度を0.01質量%になるように希釈調製し、0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、GPC装置に0.1ml注入して分子量の測定を行った。
【0102】
<架橋ヒアルロン酸から溶出したヒアルロン酸の粘度平均分子量測定>
生理的食塩水に10mM濃度でリン酸緩衝成分を加え、pH7.4のリン酸緩衝化食塩水を調整した。このリン酸緩衝化生理的食塩水100mlに対して実施例1(架橋ヒアルロン酸濃度6w/v%、平均体積粒径0.10mm)、実施例2(架橋ヒアルロン酸濃度3w/v%、平均体積粒径0.10mm)、及び比較例2(架橋ヒアルロン酸濃度6 w/v%、平均体積粒径0.10mm)のサンプル0.5mlを添加し、架橋ヒアルロン酸が完全に溶解するまで30日間、37.0℃で浸漬した。
【0103】
リン酸緩衝化生理的食塩水中に溶出するヒアルロン酸の分子量は、上澄を0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、GPC装置に0.1ml注入して測定した。
【0104】
<粘度平均分子量の測定法>
ヒアルロン酸の粘度平均分子量は、GPC装置の検出器として示差屈折率計を使い、分子量分布のピークトップのリテンションタイムから算出することができる。GPC装置は、GPCカラムとして昭和電工社製SB806HQを1本、示差屈折率検出器としてShodex社製RI−71Sを使用して、溶媒硝酸ナトリウムの0.2M水溶液、測定温度40℃、流速0.3ml/分で測定した。リテンションタイムからの粘度平均分子量の算出には、粘度平均分子量が既知のヒアルロン酸の分子量分布のピークトップのリテンションタイムを用いて作成した検量線を用いた。検量線作成に用いるヒアルロン酸の粘度平均分子量は、ヒアルロン酸を0.2M塩化ナトリウム溶液で溶解し、ウベローデ型粘度計を使用し30℃に於ける0.2M塩化ナトリウム溶液の流下時間(t)及び試料溶液の流下時間(t)を測定する。t、tより得られた還元粘度ηredから時間0に於ける極限粘度を算出し、Laurentの式[η]=0.00036×M0.78([η]:極限粘度、M:粘度平均分子量)用いて算出した(表2)。
【0105】
<測定結果>
【表2】

【0106】
比較例2は、冷却温度制御を行わなかったため、破砕時に架橋ヒアルロン酸の粘度平均分子量は低下し、架橋ヒアルロン酸から溶出するヒアルロン酸の粘度平均分子量は170万ダルトンと低い。それに対し本願発明の実施例1、2は、破砕時に50℃未満に冷却温度制御することにより架橋ヒアルロン酸から溶出するヒアルロン酸の粘度平均分子量は200万ダルトンと高く保たれることがわかる。
【0107】
[関節中で架橋ヒアルロン酸から溶出したヒアルロン酸の粘度平均分子量測定]
ウサギ(日本白色種 オス)、重量約3kgを麻酔(麻酔組成:ケタミン(4ml)+キシラジン(3ml)+生食(5ml))し、後足両膝に実施例1(架橋ヒアルロン酸濃度6w/v%、平均体積粒径0.10mm)、実施例2(架橋ヒアルロン酸濃度3w/v%、平均体積粒径0.10mm)の懸濁液、及び比較例1(架橋ヒアルロン酸濃度6 w/v%、平均体積粒径0.30mm)のサンプル等を、内径0.45cm のシリンジに23G注射針を用い、投与量 0.1ml/kgで注入した(表3)。
【0108】
注入7日後、麻酔下で安楽死させ膝を切り出し関節液を高粘性用ピペットで回収した。関節液は蒸留水で正確に100倍希釈し、4℃、15,000rpm、10分間で遠心分離した。上澄を0.2μmのメンブランフィルターでろ過した後、GPC装置に0.1ml注入して粘度平均分子量の測定を行った。
【0109】
<測定結果>
【表3】

【0110】
比較例2、参考例1および3は、サンプル非投与と同様に、関節液量30μl、関節液の粘度平均分子量190万ダルトン以上、ヒアルロン酸濃度0.3質量%であるのに対し、実施例1および2の関節液量は200、300μl、関節液の粘度平均分子量190万ダルトン以上、ヒアルロン酸濃度は0.6質量%となった。なお比較例1は、針詰まりが生じ関節への注入が困難だった。実施例1、2の関節液の増量と関節液中のヒアルロン酸濃度の上昇は、本願発明の架橋ヒアルロン酸に由来すると考えられ、本願発明の架橋ヒアルロン酸を注射剤として用いれば、注射して7日後でも、粘度平均分子量190万ダルトン以上のヒアルロン酸の多くが関節液中に保持されることがわかった。
【0111】
[架橋ヒアルロン酸の疼痛抑制効果]
実施例1、実施例2の懸濁液、及び参考例1、5の関節腔内注射による疼痛に及ぼす作用をウサギの膝関節半月板部分切除による実験的変形性関節症を用いて検討した。
【0112】
動物としては、13週齢のKbl:JW(SPF)系ウサギ、雄8羽を用いた。動物を入荷後3〜8日の毎日、評価装置に対する訓化として、動物を小動物用鎮痛評価装置Incapacitance Tester(Linton Instrument製)の本体容器(ホルダー)に入れ5秒間静止させる操作を行った。
【0113】
動物は、可動式ラックに装着したブラケット式金属製金網床ケージ(350W×500D×350H mm)に個別に収容し、温度20±3℃、湿度50±20%、換気回数12〜18回/時間、照明時間800〜20:00(明12時間、暗12時間)の環境下で飼育した。飼料はステンレス製給餌器により実験動物用固型飼料RC4(オリエンタル酵母工業社製)を150 g/dayの制限給餌として与え、飲料水はポリプロピレン製給水瓶(先管ステンレス製)により自由に与えた。
【0114】
変形性関節症モデルの作製(半月板部分切除)
半月板部分切除手術日を術後0日と定義した。14〜15週齢の動物を用い、全群全例について半月板部分切除変形性関節症モデルを作製した。塩酸ケタミン(ケタラール筋注用500mg、三共エール薬品社製)及びキシラジン(スキルペン2%注射液、インターベット社製)の併用麻酔下(大腿部筋肉内注射)でウサギの左膝関節部を除毛し、北島式固定器(夏目製作所社製)に背位固定した。無菌的に膝蓋の外側直下皮膚に約2cmの切開を加え、外側側副靭帯を露呈させた後、この靭帯を切除した.さらに、膝窩筋起始部の腱を切除することにより外側半月板を露呈させ、半月板のほぼ中央部を3.0−4.0 mmに渡り切除した。その後、皮下筋層と皮膚をそれぞれ結節縫合し、アンピシリン(ビクシリンゾル−15%明治、明治製菓社製)約0.2 mlを大腿部筋肉内に注射した。
【0115】
サンプルの注入
半月板部分切除の数時間後、実施例1(架橋ヒアルロン酸濃度6w/v%、平均体積粒径0.10mm)、実施例2(架橋ヒアルロン酸濃度3w/v%、平均体積粒径0.10mm)の懸濁液、及び参考例1、5のサンプルを関節腔内に注入した。
【0116】
疼痛抑制効果の測定方法
両後足重量配分の測定には小動物用鎮痛評価装置Incapacitance Testerを用いた。本装置は本体容器に入れた動物の、左右の脚への重量配分を、容器底面に設置したデュアルチャンネルのセンサーパッドにより、左右それぞれの重量をグラム単位で正確に検出し、その値を試験者が設定した時間にて平均化する。本体容器はウサギ用のものを使用した。測定設定時間は動物の静止状態で5秒とした。
【0117】
動物をウサギ用本体容器(ホルダー)内に移動し、動物の静止状態で測定し(1度目)、次に動物をホルダーから出し、再度入れて静止状態で測定し(2度目)、この操作を再度繰り返した(3度目)。3度測定した両後足重量配分のそれぞれについて、左右重量(荷重)から左後足重量配分比(%)を次式により算出した。
【0118】
3度算出した左後足重量配分比(%)の平均値を、測定1回当たりの左後足重量配分比(%)と定義した。その結果、図3に示すように、実施例1、2の架橋ヒアルロン酸は、比較例1よりも疼痛抑制効果が向上していることがわかった。なお、図3中、*、**は陰性対照群(生理的食塩水投与)と比較して有意差があることを示す。(*:p<0.05、**:p<0.01(t検定))
【0119】
以上の結果より、得られた架橋ヒアルロン酸含有組成物は、患部に適切な時間滞留可能で、所望の粘度を有する架橋ヒアルロン酸含有組成物であった。またこの架橋ヒアルロン酸含有組成物は、in vivoで関節の疼痛を緩和する効果を有していた。そのため、この架橋ヒアルロン酸含有組成物は注射剤に適した性質を有しており、特に関節症治療用の注射剤として好適に使用できる。
【0120】
また、患部に適切な時間滞留可能で、所望の粘度を有する架橋ヒアルロン酸含有組成物を生産するためには、生産工程において、架橋ヒアルロン酸ゲルを一定温度以下に維持した状態で破砕し、平均体積粒径が一定粒径以下の粒状架橋ヒアルロン酸を調整することが、重要であることが示唆された。
【0121】
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0122】
100 ローター、101 スクリーン、102 スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)架橋ヒアルロン酸ゲルを、60℃以下に維持した状態で破砕し、平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸を調整する工程、
を含む、粒状架橋ヒアルロン酸を含有する架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法。
【請求項2】
請求項1に記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法であって、
b)前記架橋ヒアルロン酸含有組成物における架橋ヒアルロン酸含有量を、乾燥重量で1.5〜8w/v%に調整する工程、
をさらに含む、生産方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法であって、
c)ヒアルロン酸とヒアルロン酸を除く酸とを混合し、前記ヒアルロン酸および前記ヒアルロン酸を除く酸の混合物を調整する工程と、
d)前記混合物を凍結後、解凍し、架橋ヒアルロン酸ゲルを調整する工程と、
をさらに含む、生産方法。
【請求項4】
請求項3に記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法であって、
前記工程c)の前記混合物は、前記ヒアルロン酸を乾燥重量で15質量%以上含むことを特徴とする、生産方法。
【請求項5】
請求項3または4記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法であって、
前記工程c)の前記ヒアルロン酸は、粘度平均分子量が1.0×10ダルトン以上であることを特徴とする、生産方法。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかに記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物の生産方法であって、
前記工程a)の前記破砕は、破砕装置に備え付けられた攪拌羽根のローターによって、前記架橋ヒアルロン酸ゲルと水系溶媒との混合液の水流を作り、その水流によるせん弾力をかけながらスリットを通過させて破砕することを特徴とする、生産方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかに記載の生産方法で得られる、架橋ヒアルロン酸含有組成物。
【請求項8】
架橋ヒアルロン酸含有組成物であって、
pH7.0、温度37.0℃の10mMリン酸緩衝化生理的食塩水中に浸漬すると30日後に、粘度平均分子量が180万ダルトン以上のヒアルロン酸が生成される特徴を有し、
且つ、コーンプレートを使う回転粘度測定法により、温度25℃、せん断速度50 S-1において測定した粘度が、300mPa・s以下である特徴を有する、
乾燥重量で1.5〜8w/v%の架橋ヒアルロン酸を含有する、架橋ヒアルロン酸含有組成物。
【請求項9】
内径0.40mm、針の長さ25mmの23Gの注射針をつけた内径0.45cmの注射器における温度25℃、注入速度50mm/minでの吐出圧が、0.8N以下である、
請求項8に記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物。
【請求項10】
平均体積粒径が0.2mm以下の粒状架橋ヒアルロン酸を含む、請求項8または9記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物。
【請求項11】
前記粒状架橋ヒアルロン酸が、架橋ヒアルロン酸ゲルを60℃以下に維持した状態で破砕して得られた粒状架橋ヒアルロン酸である、請求項10に記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物。
【請求項12】
請求項7乃至11いずれかに記載の架橋ヒアルロン酸含有組成物を含む、注射剤。
【請求項13】
注射疼痛軽減型注射剤である、請求項12に記載の注射剤。
【請求項14】
皮下注射剤または皮内注射剤である、請求項12または13記載の注射剤。
【請求項15】
関節症治療用である、請求項12乃至14いずれかに記載の注射剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−41512(P2012−41512A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186669(P2010−186669)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】