説明

架橋剤、それを用いた架橋方法、遺伝子発現調節方法および遺伝子機能調査方法

【課題】二本鎖核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間、特に二本鎖RNA間を架橋する架橋剤、これらの架橋方法、及び目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で制御し得る簡便な遺伝子発現調節方法並びに遺伝子機能調査方法を提供する。
【解決手段】光分解性保護基を両末端に有する架橋剤、これを用いた二本鎖RNAの架橋方法、遺伝子発現調節方法及び遺伝子機能調査方法を提供する。二本鎖核酸間、特に二本鎖RNA間の架橋及び架橋の解除を容易に行うことができ、目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で簡便に且つ高効率に制御することが可能であり、その結果、時期や場所で特異的に発現する遺伝子の機能調査又は/及び同定を行うことが可能となる。また、従来のケージド化合物では抑制することが困難であった二本鎖RNA(siRNA)のRNAi効果を抑制することができ、目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で簡便に制御し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光分解性保護基を両末端に有する架橋剤、それを用いた二本鎖核酸、特に二本鎖RNA等を架橋する方法、および遺伝子発現調節方法並びに遺伝子機能調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遺伝子の機能を解析するための手法として、解析対象の目的遺伝子の発現を調節する様々な方法が提案されている。
なかでも、二本鎖RNA(dsRNA)が相補的な標的mRNAの特異的な分解を促進することにより標的タンパク質の発現を特異的に抑制する現象を利用した、RNA干渉(RNAi)法は、簡便でしかも強力な遺伝子機能阻害法として広く用いられている(非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5等)。
【0003】
一方、標的物質の活性を光で調節できるように設計された、所謂ケージド化合物が種々開発されている。ケージド化合物は、光分解性の保護基からなるものであり、標的物質に結合することによって、標的物質の活性を止めておくことができ(ケージング)、これに光を照射すればケージが外れて標的物質が持っている本来の活性が回復する(アンケージング)という性質を有するものである(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、特許文献1等)。
【0004】
生物学の分野では早くからその特性に注目し、最近、このようなケージド化合物を遺伝子発現の調節に利用する試みが行われている(特許文献2、非特許文献10等)。
この方法は、mRNA(一本鎖)をケージド化合物でケージングし、細胞内に導入後、任意の時期および部位にピンポイントで光等を照射することによって目的のRNAの翻訳(即ちタンパク質の発現)をコンディショナルに誘導する方法である。
【0005】
しかしながら、上記方法は、一本鎖のmRNAにケージド化合物を直接結合させて目的とする遺伝子の発現を抑制するものであり、例えば上記した如きRNAi等において用いられる二本鎖のRNA(siRNA)等の二本鎖のヌクレオチド鎖を架橋することによって、siRNAが有するRNAi効果を抑制して目的とする遺伝子の発現を調節することについての報告は未だなされていない。
【0006】
【非特許文献1】Fire, A. et. al., (1998), Nature 391, 806-811
【非特許文献2】Svobada, P. et al., (2000) Development 127, 4147-4156
【非特許文献3】Elbashir, S. M., Lendeckel, W. and Tuschl, T., (2001) Genes and Dev. 15, 188 -200
【非特許文献4】Zamore, P. D. et al., (2000) Cell, 101, 25 33
【非特許文献5】Bernstein, E. et al., (2001) Nature, 409, 363-366
【非特許文献6】R. S. Givens, C. H. Park, Tetrahedron Lett., 37, 6259-6262 (1996)
【非特許文献7】C. H. Park, R. S. Givens, J. Am. Chem. Soc., 119, 2453-2463 (1997)
【非特許文献8】J. Engels, E. J. Schlaeger, J. Med. Chem. 20, 907 (1977)
【非特許文献9】J. H. Kaplan, G. Forbush III, J. F. Hoffman, Biochemistry 17, 1920-1935 (1978)
【非特許文献10】生化学 第75巻 第9号, pp. 1251-1254, 2003
【特許文献1】WO00/31588
【特許文献2】特開2002-315576号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、二本鎖核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間、特に二本鎖RNA間を架橋する架橋剤、これらの架橋方法、及び目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で制御し得る簡便な遺伝子発現調節方法並びに遺伝子機能調査方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成よりなる。
1.リン酸に結合し得る基を有する光分解性保護基を両末端に有する架橋剤。
2.二本鎖RNAを、RNA鎖のリン酸残基を介して上記1に記載の架橋剤で架橋する方法。
3.上記1に記載の架橋剤を予め結合させた二本鎖RNAに対して、紫外線を照射することを特徴とする遺伝子発現調節方法。
4.以下の工程を含む遺伝子発現調節方法。
(a)上記1に記載の架橋剤と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、及び
(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程。
5.以下の工程を含む遺伝子の機能の調査方法。
(a)上記1に記載の架橋剤と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、
(c)導入された細胞又は生物に紫外線を照射する工程、
(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、及び
(d)工程(c')で発現した遺伝子と対照とを比較する工程。
【0009】
即ち、本発明者等は、従来知られているケージド化合物は、一本鎖のヌクレオチド鎖、特にRNAに結合させて目的とする遺伝子の発現を抑制するには有効であるものの、二本鎖のRNA(siRNA)に結合させてRNAi法を行った場合には、当該siRNAが有するRNAi効果を殆ど抑制することができず、目的とする遺伝子の発現を制御することができないとの知見を得た。
このような状況の下、本発明者らは上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、光分解性保護基を両末端に有する架橋剤を用いて二本鎖RNA(siRNA)を架橋してRNAiを行えば、目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で簡便に且つ高効率に制御し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
尚、このような架橋剤やこれを用いた架橋方法及び遺伝子調製方法は全く行われていないし、このような発想も全く知られていない。
【発明の効果】
【0010】
本発明の架橋剤を用いて二本鎖RNAを架橋することにより、目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で簡便に且つ高効率に制御することが可能であり、その結果、時期や場所で特異的に発現する遺伝子の機能調査又は/及び同定を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1.本発明の化合物
本発明の化合物は、光分解性保護基を両末端に有するものであり、核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間の架橋剤である。
光分解性保護基としては、リン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基等に結合し、光の照射により脱保護反応がおこる基を形成し得る基(以下、脱離基と略記する。)を有する保護基が挙げられ、リン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基に結合し得る基を有するものが好ましく、なかでもリン酸に結合し得る基を有するものが特に好ましい。
また、両末端に結合した光分解性保護基の脱離基は、核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間に結合するのに充分な距離、即ち、二本鎖核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれ、核酸とタンパク質又はポリペプチドのそれぞれ、2つのタンパク質又はポリペプチド(タンパク質間、タンパク質−ポリペプチド間又はポリペプチド間)のそれぞれを架橋し得る距離で、本発明の化合物(架橋剤)の両末端に結合しているのが好ましい。特に、その距離は、二本鎖RNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に結合するのに充分な距離であるのが好ましい。
より具体的には、架橋させる対象物質の種類により異なるため、一概には言えないが、両末端に結合した光分解性保護基の脱離基の距離は、例えば下限が通常8Å以上、好ましくは15Å以上であり、上限が通常100Å以下、好ましくは80Å以下である。
例えば、核酸間(二本鎖DNA、二本鎖RNA又はDNAとRNAとの二本鎖ハイブリッド)を架橋する場合、両末端に結合した光分解性保護基の脱離基の距離は、下限が通常8Å以上、好ましくは15Å以上、より好ましくは25Å以上であり、上限が通常50Å以下、好ましくは35Å以下である。
核酸とタンパク質又はポリペプチドを架橋する場合、或いは2つのタンパク質又はポリペプチドを架橋する場合、両末端に結合した光分解性保護基の脱離基の距離は、下限が通常10Å以上、好ましくは25Å以上であり、上限が通常100Å以上、好ましくは80Å以上である。
【0012】
本発明の化合物としては、具体的には一般式(1)で示されるものである。

〔式中、Q1及びQ2はそれぞれ独立して光分解性保護基を示し、A1及びA2はそれぞれ独立してアルキレン基、―O―、−NR1−、−O−CO−、−CO−O−、−C−O−C−、−NR2−COO−、−OCO−NR2−、−NR3−CO−、−CO−NR3−又は−O−COO−(R1〜R3はそれぞれ独立してH又はアルキル基を示す。)を、T1はアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基、ヘテロ原子を含むアルキレン基、ヘテロ原子を含むアリーレン基又はヘテロ原子を含むアラルキレン基をそれぞれ示す。〕
【0013】
本発明の一般式(1)で示される化合物は、
(a)光分解性保護基:Q1及びQ2
(b)リンカー部:−A1−T1−A2
の2つの構成部分に分けることができる。
【0014】
1−1.光分解性保護基
一般式(1)において、Q1及びQ2で示される光分解性保護基としては、脱離基を有し、光の照射により脱保護反応がおこる保護基が挙げられ、、なかでもリン酸に結合し得る基を有するものが好ましい。
【0015】
より具体的には、下記一般式(3)、(3')、(3'')及び(3''')で示される光分解性保護基が挙げられる。

〔一般式(3)中、Y1、Y2、X1、X2A及びM1の中の1つは、一般式(1)におけるA1又はA2と結合する結合手を表し、残りは下記を表す。
Qは−O−、−NH−、−NCH3−を、Aは水酸基、置換アルコキシ基、非置換アルコキシ基、−OC(O)R11、−NH2、−NHCH3、−NR11R12を、X1及びX2はそれぞれ独立して−H、水酸基、置換アルコキシ基、非置換アルコキシ基、−OC(O)R11基、−NH3基、−NR11R12基、−R11、−F、−Cl、−Br、−I、−COOH、−NO2、−C(=O)NHR11、−CN、−CHO、−C(=O)R11、−SO3Hを、Y1は−H、−Cl、−Br、−I、−C(O)OH、−NO2、−C(O)NHR11、−CN、−C(O)H、−C(O)CH3、ベンゾキサゾール-2-イル基、−ベンゾチアゾール-2-イル、−ベンズイミダゾール-2-イルを、Y2は−H、−C(O)OH、−SO3Hを、M1は−H、−CH3、−NR12R13基、−C(O)NR12R13基、−COOHを、Zは脱離基をそれぞれ示す。また、M2は−H或いはZと共に=N2、=O又は=NNHR11であることを示す。ここで、R11、R12及びR13はそれぞれ独立して炭素数1-20のアルキル基、炭素数2-20のアルケニル基、炭素数2-20のアルキニル基、炭素数1-20のアルコキシ基、炭素数1-20のチオアルコキシ基、炭素数1-20のアルキルスルホニル基、炭素数4-16のアリールスルホニル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基、炭素数3-8のシクロアルキル基、炭素数3-8のシクロアルケニル基、炭素数4-16のアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基から選ばれる置換官能基又は非置換官能基を示し、X1及びA、X2及びA又はX1及びY2は一緒になって−O−(CH2)n−O−基、−C−(CH2)n−O−基、−O−(CH2)n−C−基、−O−(CH2)n−N−基、−N−(CH2)n−O−基、−N−(CH2)n−N−基、−C−(CH2)n−N−基及び−N−(CH2)n−C−基から選ばれる基を形成してもよい。ここで、nは1又は2である。〕
【0016】

〔一般式(3')中、R22〜R25の中の1つは、一般式(1)におけるA1又はA2と結合する結合手を表し、残りは下記を表す。
21は水素原子、−COOH、炭素数1-20のアルキル基、炭素数2-20のアルケニル基、炭素数2-20のアルキニル基、炭素数1-20のアルコキシ基、炭素数1-20のチオアルコキシ基、炭素数1-20のアルキルスルホニル基、炭素数4-16のアリールスルホニル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基、炭素数3-8のシクロアルキル基、炭素数3-8のシクロアルケニル基、炭素数4-16のアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基から選ばれる置換官能基又は非置換官能基を、R22及びR23はそれぞれ独立して炭素数1-20のアルキル基、炭素数2-20のアルケニル基、炭素数2-20のアルキニル基、炭素数1-20のアルコキシ基、炭素数1-20のチオアルコキシ基、炭素数1-20のアルキルスルホニル基、炭素数4-16のアリールスルホニル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基、炭素数3-8のシクロアルキル基、炭素数3-8のシクロアルケニル基、炭素数4-16のアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基から選ばれる置換官能基又は非置換官能基を、R24及びR25は水素原子をそれぞれ示し、R22及びR23は一緒になって−(CH2)n−基を形成してもよく、R23及びR24は一緒になって−(CH2)n−O−基、−(CH2)n−C−基及び−(CH2)n−N−基から選ばれる基を形成してもよく、R22及びR25は一緒になって−O−(CH2)n−基、−C−(CH2)n−基及び−N−(CH2)n−基から選ばれる基を形成してもよい。ここで、nは1又は2である。〕
【0017】

〔一般式(3'')中、R21及びR26〜R29の中の1つは、一般式(1)におけるA1又はA2と結合する結合手を表し、残りは下記を表す。
21は水素原子、−COOH、炭素数1-20のアルキル基、炭素数2-20のアルケニル基、炭素数2-20のアルキニル基、炭素数1-20のアルコキシ基、炭素数1-20のチオアルコキシ基、炭素数1-20のアルキルスルホニル基、炭素数4-16のアリールスルホニル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基、炭素数3-8のシクロアルキル基、炭素数3-8のシクロアルケニル基、炭素数4-16のアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基から選ばれる置換官能基又は非置換官能基を、R26〜R29は水素原子をそれぞれ示し、R27及びR28、R28及びR29又はR27及びR26は、一緒になって−O−(CH2)n−O−基、−C−(CH2)n−O−基、−O−(CH2)n−C−基、−O−(CH2)n−N−基、−N−(CH2)n−O−基、−N−(CH2)n−N−基、−C−(CH2)n−N−基及び−N−(CH2)n−C−基から選ばれる基を形成してもよい。ここで、nは1又は2である。。〕
【0018】

〔一般式(3''')中、R30及びR32〜R35の中の1つは、一般式(1)におけるA1又はA2と結合する結合手を表し、残りは下記を表す。
30は炭素数1-20のアルキル基、炭素数2-20のアルケニル基、炭素数2-20のアルキニル基、炭素数1-20のアルコキシ基、炭素数1-20のチオアルコキシ基、炭素数1-20のアルキルスルホニル基、炭素数4-16のアリールスルホニル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基、炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基、炭素数3-8のシクロアルキル基、炭素数3-8のシクロアルケニル基、炭素数4-16のアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基、炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基から選ばれる置換官能基又は非置換官能基を、R31はハロゲン原子を、R32〜R35は水素原子をそれぞれ示し、R33及びR30は一緒になって−O−(CH2)n−基、−C−(CH2)n−基及び−N−(CH2)n−基から選ばれる基を形成してもよく、R30及びR34は一緒になって−(CH2)n−O−基、−(CH2)n−C−基及び−(CH2)n−N−基から選ばれる基を形成してもよく、R32及びR33は一緒になって−O−(CH2)n−O−基、−C−(CH2)n−O−基、−O−(CH2)n−C−基、−O−(CH2)n−N−基、−N−(CH2)n−O−基、−N−(CH2)n−N−基、−C−(CH2)n−N−基及び−N−(CH2)n−C−基から選ばれる基を形成してもよい。ここで、nは1又は2である。〕
【0019】
一般式(3)においてA、X1及びX2で示される置換アルコキシ基、非置換アルコキシ基のアルコキシ基としては、直鎖状、分枝状又は環状でもよいが、直鎖状のものが好ましく、通常炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1−エチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、ネオヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、ネオノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基、ネオデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec−ウンデシルオキシ基、tert−ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec−ドデシルオキシ基、tert−ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、イソトリデシルオキシ基、sec−トリデシルオキシ基、tert−トリデシルオキシ基、ネオトリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、イソテトラデシルオキシ基、sec−テトラデシルオキシ基、tert−テトラデシルオキシ基、ネオテトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、イソペンタデシルオキシ基、sec−ペンタデシルオキシ基、tert−ペンタデシルオキシ基、ネオペンタデシルオキシ基、n−へキサデシルオキシ基、sec−へキサデシルオキシ基、tert−へキサデシルオキシ基、ネオへキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、イソヘプタデシルオキシ基、sec−ヘプタデシルオキシ基、tert−ヘプタデシルオキシ基、ネオヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、イソオクタデシルオキシ基、sec−オクタデシルオキシ基、tert−オクタデシルオキシ基、ネオオクタデシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基、シクロドデシルオキシ基、シクロウンデシルオキシ基、シクロトリデシルオキシ基、シクロテトラデシルオキシ基、シクロペンタデシルオキシ基、シクロへキサデシルオキシ基、シクロヘプタデシルオキシ基、シクロオクタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
また、置換基としては、例えばカルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等の炭素数1〜4の低級アルキル基、例えばフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、トリフルオロエチル基、トリクロロエチル基、トリブロモエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、ペンタブロモエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ヘプタクロロプロピル基、ノナフルオロブチル基、ノナクロロブチル基、ノナブロモブチル基、ノナヨードブチル基等の炭素数1〜4のハロ低級アルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等の炭素数1〜4の低級アルコキシ基等が挙げられる。
【0021】
一般式(3)においてZで示される脱離基は、リン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基等と結合して、光分解により脱離し得る基となるもの(光の照射により脱保護反応がおこる基を形成し得る基)である。
一般に、脱離基と基質(当該脱離基が結合している化合物)の間の共有結合の電子対と共に基質(当該脱離基が結合している化合物)から脱離する基である。好ましい脱離基としては、電子求引性、芳香族性、共鳴構造又はそれらの組合せの存在によって電子対が安定化される基が挙げられ、例えばハロゲン化物、あるいはカルボン酸塩、炭酸塩、アミド、カーバメート、リン酸塩、スルホン酸塩、アミノ、アリールオキサイド又はチオレート基が結合した基等が挙げられる。
Zで示される脱離基としては、より具体的には、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、置換アリールオキシ基、−NR15R16、−OC(O)R14、−OP(O)R15R16、−OP(O)(OH)R15、−OC(O)NR15R16、−NR15C(O)OR16、−SR14、−NR15C(O)R16、−O3SR14又は−O-NN(O)(NR15R16)が挙げられる。
尚、ここで、R14、R15及びR16はそれぞれ独立して炭素数1-20のアルキル基、炭素数2-20のアルケニル基、炭素数2-20のアルキニル基、炭素数1-20のアルコキシ基、炭素数1-20のチオアルコキシ基、炭素数1-20のアルキルスルホニル基、炭素数4-16のアリールスルホニル基、炭素数2-20のヘテロアルキル基、炭素数2-20のヘテロアルケニル基、炭素数3-8のシクロアルキル基、炭素数3-8のシクロアルケニル基、炭素数4-16のアリール基、炭素数4-16のヘテロアリール基、炭素数2-30のヘテロシクリル基から選ばれる置換官能基又は非置換官能基であり、R15及びR16は一緒になって炭素数1-20のアルキレン基を形成していてもよい。
【0022】
Zで示されるハロゲン原子としては、F、Cl、BrまたはIが挙げられる。
また、アルコキシ基としては、直鎖状、分枝状又は環状でもよいが、直鎖状のものが好ましく、通常炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1−エチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、ネオヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、ネオノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基、ネオデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec−ウンデシルオキシ基、tert−ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec−ドデシルオキシ基、tert−ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、イソトリデシルオキシ基、sec−トリデシルオキシ基、tert−トリデシルオキシ基、ネオトリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、イソテトラデシルオキシ基、sec−テトラデシルオキシ基、tert−テトラデシルオキシ基、ネオテトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、イソペンタデシルオキシ基、sec−ペンタデシルオキシ基、tert−ペンタデシルオキシ基、ネオペンタデシルオキシ基、n−へキサデシルオキシ基、sec−へキサデシルオキシ基、tert−へキサデシルオキシ基、ネオへキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、イソヘプタデシルオキシ基、sec−ヘプタデシルオキシ基、tert−ヘプタデシルオキシ基、ネオヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、イソオクタデシルオキシ基、sec−オクタデシルオキシ基、tert−オクタデシルオキシ基、ネオオクタデシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基、シクロドデシルオキシ基、シクロウンデシルオキシ基、シクロトリデシルオキシ基、シクロテトラデシルオキシ基、シクロペンタデシルオキシ基、シクロへキサデシルオキシ基、シクロヘプタデシルオキシ基、シクロオクタデシルオキシ基等が挙げられる。
Zで示されるアリールオキシ基、置換アリールオキシ基のアリールオキシ基としては、炭素数4-16、好ましくは5-14の芳香族性単環又は縮合多環が挙げられ、具体的には、例えばフェニルオキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、メシチルオキシ基、ナフチルオキシ基、アントリルオキシ基、フェナントリルオキシ基等が挙げられる。
また、置換アリールオキシ基の置換基としては、例えばハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI)、ニトロ基、炭素数1-3のパーフルオロアルキル基(トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基)等が挙げられる。
【0023】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数1-20のアルキル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数1-20のアルキル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数1-20のアルキル基、及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数1-20のアルキル基は、直鎖状又は分枝状でもよいが、直鎖状のものが好ましく、好ましくは炭素数1〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、ネオヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec-ヘプチル基、tert-ヘプチル基、ネオヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、ネオオクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec-ノニル基、tert-ノニル基、ネオノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec-デシル基、tert-デシル基、ネオデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、sec-ウンデシル基、tert-ウンデシル基、ネオウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、sec-ドデシル基、tert-ドデシル基、ネオドデシル基、n−トリデシル基、イソトリデシル基、sec-トリデシル基、tert-トリデシル基、ネオトリデシル基、n−テトラデシル基、イソテトラデシル基、sec-テトラデシル基、tert-テトラデシル基、ネオテトラデシル基、n−ペンタデシル基、イソペンタデシル基、sec-ペンタデシル基、tert-ペンタデシル基、ネオペンタデシル基、n−へキサデシル基、イソへキサデシル基、sec-ヘキサデシル基、tert-へキサデシル基、ネオへキサデシル基、n−ヘプタデシル基、イソヘプタデシル基、sec-ヘプタデシル基、tert-ヘプタデシル基、ネオヘプタデシル基、n−オクタデシル基、イソオクタデシル基、sec-オクタデシル基、tert-オクタデシル基、ネオオクタデシル基、n−ノナデシル基、イソノナデシル基、sec-ノナデシル基、tert-ノナデシル基、ネオノナデシル基、n−イコシル基、イソイコシル基、sec-イコシル基、tert-イコシル基、ネオイコシル基等が挙げられる。
【0024】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数2-20のアルケニル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数2-20のアルケニル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数2-20のアルケニル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数2-20のアルケニル基は、少なくとも1つの二重結合を有する、直鎖状又は分枝状、好ましくは直鎖状の炭化水素基であり、好ましくは炭素数2〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えばエテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、1−メチル−1−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、2−エチル−2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、1−メチル−2−ブテニル、1−メチル−1−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−エチル−2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、2−メチル−3−ブテニル、1−エチル−3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、1−メチル−2−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−ペンテニル、1−メチル−3−ペンテニル、2−メチル−3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−4−ペンテニル、2−メチル−4−ペンテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、ヘプタデセニル、ヘプタデカジエニル、ヘプタデカトリエニル、オクタデセニル、ノナデセニル、エイコセニル等が挙げられる。
【0025】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数2-20のアルキニル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数2-20のアルキニル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数2-20のアルキニル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数2-20のアルキニル基は、少なくとも1つの三重結合を有する、直鎖状、分枝状又は環状、好ましくは直鎖状の脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数2〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えばエチニル基、1−プロピニル、2−プロピニル基、プロパルギル、1−ブチニル基、2−ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、オクチニル基、2−エチルヘキシニル基、デシニル基、ドデシニル基、オクタデシニル基等が挙げられる。
【0026】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数1-20のアルコキシ基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数1-20のアルコキシ基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数1-20のアルコキシ基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数1-20のアルコキシ基は、直鎖状、分枝状又は環状でもよいが、好ましくは直鎖状であり、好ましくは炭素数2〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、1−エチルプロポキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基、sec−ヘキシルオキシ基、tert−ヘキシルオキシ基、ネオヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、1,2−ジメチルブトキシ基、2,2−ジメチルブトキシ基、1−エチルブトキシ基、2−エチルブトキシ基、n−ヘプチルオキシ基、イソヘプチルオキシ基、sec−ヘプチルオキシ基、tert−ヘプチルオキシ基、ネオヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチルオキシ基、tert−オクチルオキシ基、ネオオクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、sec−ノニルオキシ基、tert−ノニルオキシ基、ネオノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、sec−デシルオキシ基、tert−デシルオキシ基、ネオデシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、イソウンデシルオキシ基、sec−ウンデシルオキシ基、tert−ウンデシルオキシ基、ネオウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、イソドデシルオキシ基、sec−ドデシルオキシ基、tert−ドデシルオキシ基、ネオドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、イソトリデシルオキシ基、sec−トリデシルオキシ基、tert−トリデシルオキシ基、ネオトリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、イソテトラデシルオキシ基、sec−テトラデシルオキシ基、tert−テトラデシルオキシ基、ネオテトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、イソペンタデシルオキシ基、sec−ペンタデシルオキシ基、tert−ペンタデシルオキシ基、ネオペンタデシルオキシ基、n−へキサデシルオキシ基、sec−へキサデシルオキシ基、tert−へキサデシルオキシ基、ネオへキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、イソヘプタデシルオキシ基、sec−ヘプタデシルオキシ基、tert−ヘプタデシルオキシ基、ネオヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、イソオクタデシルオキシ基、sec−オクタデシルオキシ基、tert−オクタデシルオキシ基、ネオオクタデシルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロノニルオキシ基、シクロデシルオキシ基、シクロドデシルオキシ基、シクロウンデシルオキシ基、シクロトリデシルオキシ基、シクロテトラデシルオキシ基、シクロペンタデシルオキシ基、シクロへキサデシルオキシ基、シクロヘプタデシルオキシ基、シクロオクタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0027】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数1-20のチオアルコキシ基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数1-20のチオアルコキシ基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数1-20のチオアルコキシ基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数1-20のチオアルコキシ基は、直鎖状、分枝状又は環状でもよいが、好ましくは直鎖状であり、好ましくは炭素数2〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えば具体的には、例えばチオメトキシ基、チオエトキシ基、チオプロポキシ基、チオブトキシ基、チオペンチルオキシ基、チオメチルブトキシ基、チオエチルプロポキシ基、チオヘキシルオキシ基、チオメチルペンチルオキシ基、チオジメチルブトキシ基、チオエチルブトキシ基、チオヘプチルオキシ基、チオオクチルオキシ基、チオノニルオキシ基、チオデシルオキシ基、チオウンデシルオキシ基、チオドデシルオキシ基、チオトリデシルオキシ基、チオテトラデシルオキシ基、チオペンタデシルオキシ基、チオへキサデシルオキシ基、チオヘプタデシルオキシ基、チオオクタデシルオキシ基、チオシクロプロピルオキシ基、チオシクロブチルオキシ基、チオシクロペンチルオキシ基、チオシクロヘキシルオキシ基、チオシクロヘプチルオキシ基、チオシクロオクチルオキシ基、チオシクロノニルオキシ基、チオシクロデシルオキシ基、チオシクロドデシルオキシ基、チオシクロウンデシルオキシ基、チオシクロトリデシルオキシ基、チオシクロテトラデシルオキシ基、チオシクロペンタデシルオキシ基、チオシクロへキサデシルオキシ基、チオシクロヘプタデシルオキシ基、チオシクロオクタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0028】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数1-20のアルキルスルホニル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数1-20のアルキルスルホニル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数1-20のアルキルスルホニル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数1-20のアルキルスルホニル基は、直鎖状、分枝状又は環状でもよいが、好ましくは直鎖状であり、好ましくは炭素数2〜5のものが挙げられる。
具体的には、例えばメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘキシルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基、ノニルスルホニル基、デシルスルホニル基、ウンデシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、トリデシルスルホニル基、テトラデシルスルホニル基、ペンタデシルスルホニル基、へキサデシルスルホニル基、ヘプタデシルスルホニル基、オクタデシルスルホニル基、ノナデシルスルホニル基、イコシルスルホニル基等が挙げられる。
【0029】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数4-16のアリールスルホニル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数4-16のアリールスルホニル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数4-16のアリールスルホニル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数4-16のアリールスルホニル基は、単環又は縮合多環でもよく、好ましくは炭素数5〜14のものが挙げられる。
具体的には、例えばフェニルスルホニル基、トリルスルホニル基、キシリルスルホニル基、メシチルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、アントリルスルホニル基、フェナントリルスルホニル基等が挙げられる。
【0030】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルキル基は、O、S、N及びPから選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を主鎖残基の中に含む、上記した如きアルキル基又は後述のシクロアルキル基であり、直鎖状、分枝状又は環状でもよく、好ましくは炭素及びヘテロ原子の総数が2〜10のものが挙げられる。また、含まれるヘテロ原子の数は、1〜5個である。
【0031】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-20のヘテロアルケニル基は、O、S、N及びPから選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を主鎖残基の中に含む、上記した如きアルケニル基又は後述のシクロアルケニル基であり、直鎖状、分枝状又は環状でもよく、好ましくは炭素及びヘテロ原子の総数が2〜10のものが挙げられる。また、含まれるヘテロ原子の数は、1〜5個である。
【0032】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数3-8のシクロアルキル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数3-8のシクロアルキル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数3-8のシクロアルキル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数3-8のシクロアルキル基としては、好ましくは炭素数5〜14のものが挙げられる。
具体的には、例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0033】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数3-8のシクロアルケニル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数3-8のシクロアルケニル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数3-8のシクロアルケニル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数3-8のシクロアルケニル基は、二重結合を含むシクロアルキル基であり、好ましくは炭素数5〜14のものが挙げられる。
具体的には、例えばシクロペンテニル、メチルシクロペンテニル、シクロヘキセニル、メチルシクロヘキセニル、ジメチルシクロヘキセニル、エチルシクロヘキセニル、ブチルシクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロデセニル、シクロドデセニル基等が挙げられる。
【0034】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素数4-16のアリール基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素数4-16のアリール基、一般式(3'')においてR21で示される炭素数4-16のアリール基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素数4-16のアリール基は、芳香族性単環又は縮合多環であり、好ましくは炭素数5〜14のものが挙げられる。
具体的には、例えばフェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、2,3−キシリル基、2,4−キシリル基、2,5−キシリル基、2,6−キシリル基、3,5−キシリル基、メシチル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられる。
【0035】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基、一般式(3'')においてR21で示される炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素及びヘテロ原子の総数4-16のヘテロアリール基は、O、S、N及びPから選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を環の中に含む、上記した如きアリール基であり、単環又は縮合多環でもよく、好ましくは炭素及びヘテロ原子の総数が5〜14のものが挙げられる。また、含まれるヘテロ原子の数は、1〜5個である。
具体的には、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、アゼピニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,3−オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアジアゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル等の単環、例えば、シンノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、アクリジニル基、イソインドリニル基、ベンゾキサゾリル基(ベンゾキサゾール-2-イル基)、ベンゾチアゾリル基(ベンゾチアゾール-2-イル基)、ベンゾイミダゾリル基(ベンゾイミダゾール-2-イル基)、プテリジニル基等の上記単環と他の環式基が縮環した基等が挙げられる。
【0036】
一般式(3)においてR11〜R16で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基、一般式(3')においてR21〜R23で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基、一般式(3'')においてR21で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基及び一般式(3''')においてR30で示される炭素及びヘテロ原子の総数2-30のヘテロシクリル基は、O、S及びNから選択される少なくとも1個のヘテロ原子を含む、飽和、部分的に不飽和又は芳香族の5〜10員の複素環であり、単環又は縮合多環でもよく、好ましくは炭素及びヘテロ原子の総数が5〜14のものが挙げられる。
具体的には、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、アゼピニル基、ピラゾリル基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、1,2,3−オキサジアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、チアジアゾリル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリジニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピラゾリニル基、ピペリジル基、ピペラジニル等の単環、例えば、シンノリニル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、クロメニル基、キサンテニル基、フェノキサチイニル基、インドリジニル基、イソインドリル基、インドリル基、インダゾリル基、プリニル基、キノリジニル基、イソキノリル基、キノリル基、フタラジニル基、ナフチリジニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、アクリジニル基、イソインドリニル基、ベンゾキサゾリル基(ベンゾキサゾール-2-イル基)、ベンゾチアゾリル基(ベンゾチアゾール-2-イル基)、ベンゾイミダゾリル基(ベンゾイミダゾール-2-イル基)、プテリジニル基等の上記単環と他の環式基が縮環した基等が挙げられる。
【0037】
一般式(3)においてR15及びR16が一緒になって形成される炭素数1-20のアルキレン基は、直鎖状、分枝状或いは環状でもよく、好ましくは炭素数1〜3のものが挙げられる。
具体的には、メチレン基、エチレン基、メチルメチレン基,エチルメチレン基,トリメチレン基、プロピレン基、2−プロピレン基,プロピルメチレン基,イソプロピルメチレン基,ジメチルメチレン基,テトラメチレン基、ブチレン基、2−メチルプロピレン基、ペンタメチレン基、ペンチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、3−メチルトリメチレン基,1−エチルエチレン基,2−エチルエチレン基,エチルメチルエチレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、3−メチルテトラメチレン基,4−メチルテトラメチレン基,1,1−ジメチルトリメチレン基、1,2−ジメチルトリメチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、2−エチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘキシレン基、1−エチルトリメチレン基,ウンデカメチレン基,1−メチルデカメチレン基,1−メチルペンタメチレン基、2−メチルペンタメチレン基、3−メチルペンタメチレン基、1,2−ジメチルテトラメチレン基、1,3−ジメチルテトラメチレン基、2,3−ジメチルテトラメチレン基、1,1−ジメチルテトラメチレン基、1−エチルテトラメチレン基、2−エチルテトラメチレン基、1−エチル−2−メチルトリメチレン基、1−メチルヘキサメチレン基、1−メチルヘプタメチレン基、1−メチルオクタメチレン基、1−メチルノナメチレン基、ヘプタメチレン基、ヘプチレン基、オクタメチレン基、オクチレン基、2−エチルへキシレン基、ノナメチレン基、ノニレン基、デカメチレン基、デシレン基、ヘンデカメチレン基、ドデカメチレン基、トリデカメチレン基,テトラデカメチレン基,ペンタデカメチレン基,ヘキサデカメチレン基,オプタデカメチレン基,オクタデカメチレン基,ノナデカメチレン基,エイコサメチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基等が挙げられ、中でもエチレン基が好ましい。
【0038】
一般式(3''')においてR31で示されるハロゲン原子としては、F、Cl、BrまたはIが挙げられる。
【0039】
本発明において、上記した如き光分解性保護基のうち、一般式(3)で示されるものが好ましく、特に下記一般式(4)及び(5)で示されるものが好ましい。
尚、光分解性保護基であるQ1とQ2は、同じであっても、また異なっていても良い。
【0040】



【0041】
〔式中、Z11はハロゲン原子、イミダゾリル基又は4-ニトロフェノキシ基であり、Q、A、Y1、Y2、M1、M2、X1及びX2は前記と同じである。〕
【0042】
一般式(5)においてZ11で示されるハロゲン原子としては、F、Cl、BrまたはIが挙げられる。
【0043】
上記一般式(3)、(4)及び(5)の化合物としては、Y1、Y2、X1、X2A及びM1の中の1つが一般式(1)におけるA1又は/及びA2と結合する結合手であって、Qが−O−、Aが水酸基、−OCH3又は−OC2H5、X2が−H、Y1が−H、Y2が−H、X1が−Br、Zが−OC(O)−(4-ニトロフェニル)、−OC(O)O−(4-ニトロフェニル)、−NR15C(O)R16、−OC(O)NR15R16、−OP(O)R15R16、−OC(O)Z11又はM2と共に=N2であるものが好ましく、なかでもQが−O−、Aが一般式(1)におけるA1又は/及びA2と結合する結合手、X2が−H、Y1が−H、Y2が−H、X1が−Br、Zが−OC(O)−(4-ニトロフェニル)、−OC(O)O−(4-ニトロフェニル)、−NR15C(O)R16、−OC(O)NR15R16、−OP(O)R15R16、−OC(O)Z11又はM2と共に=N2であるものが特に好ましい。
【0044】
上記した如き本発明の光分解性保護基は、例えばWO00/31588国際公開パンフレット、特開2002-315576号公報、T. Furuta, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA., vol. 96, pp. 1193-1200, February 1999, Chemistry, Neurobiology、R. S. Givens, C. H. Park, Tetrahedron Lett. 37, 6259-6262 (1996)、C. H. Park, R. S. Givens, J. Am. Chem. Soc. 119, 2453-2463 (1997)、J. Engels, E. J. Schlaeger. J. Med. Chem. 20, 907 (1977)、J. H. Kaplan, G. Forbush III, J. F. Hoffman, Biochemistry 17, 1920-1935 (1978)等の記載に準じて適宜合成することができ、また、市販品を用いてもよい。特に上記一般式(3)、(4)及び(5)の化合物は、例えばWO00/31588国際公開パンフレット、特開2002-315576号公報、T. Furuta, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA., vol. 96, pp. 1193-1200, February 1999, Chemistry, Neurobiologyに記載の方法に準じて合成することができる。
【0045】
1−2.リンカー部
一般式(1)において、−A1−T1−A2−で示される構造部分は、Q1及びQ2で示される光分解性保護基を結合するためのリンカー部である。
即ち、当該リンカー部のA1が上記した如き光分解性保護基Q1に結合し、A2が上記した如き光分解性保護基Q2に結合することによって、2つの光分解性保護基Q1とQ2をT1を介して結合した化合物を形成する。
より具体的には、例えば光分解性保護基が一般式(3)である場合には、一般式(3)におけるY1、Y2、X1、X2A及びM1の中のいずれか1つが結合手となって当該部位に、当該リンカーのA1又は/及びA2が結合する。一般式(3)におけるAが結合手となってAの部位に当該リンカー部のA1又は/及びA2が結合するのが好ましい。
光分解性保護基が一般式(3')である場合には、一般式(3')におけるR21、R22、R23、R24及びR25の中のいずれか1つが結合手となって当該部位に、当該リンカー部のA1又は/及びA2が結合する。一般式(3')におけるR23が結合手となってR23の部位に当該リンカー部のA1又は/及びA2が結合するのが好ましい。
光分解性保護基が一般式(3'')である場合には、一般式(3'')におけるR21、R26、R27、R28及びR29の中のいずれか1つが結合手となって当該部位に、当該リンカー部のA1又は/及びA2が結合する。一般式(3'')におけるR28が結合手となってR28の部位に当該リンカー部のA1又は/及びA2が結合するのが好ましい。
光分解性保護基が一般式(3''')である場合には、一般式(3''')におけるR30、R32、R33、R34及びR35の中のいずれか1つが結合手となって当該部位に、当該リンカー部のA1又は/及びA2が結合する。一般式(3''')におけるR30が結合手となってR30の部位に当該リンカーのA1又は/及びA2が結合するのが好ましい。
【0046】
当該リンカーの長さは、両末端に結合したQ1及びQ2が核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間に結合するのに充分な長さ、即ち、二本鎖核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれ、核酸とタンパク質又はポリペプチドのそれぞれ、2つのタンパク質又はポリペプチド(タンパク質間、タンパク質−ポリペプチド間又はポリペプチド間)のそれぞれを架橋し得る長さが好ましい。特に、二本鎖RNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に結合するのに充分な長さであるのが好ましい。
より具体的には、架橋させる対象物質の種類により異なるため、一概には言えないが、リンカー部の長さが、例えば下限が通常2Å以上、好ましくは9Å以上であり、上限が通常94Å以下、好ましくは74Å以下である。
例えば、核酸間(二本鎖DNA、二本鎖RNA又はDNAとRNAとの二本鎖ハイブリッド)を架橋する場合は、リンカー部の長さは、下限が通常2Å以上、好ましくは9Å以上、より好ましくは19Å以上であり、上限が通常44Å以下、好ましくは29Å以下である。
核酸とタンパク質又はポリペプチドを架橋する場合、或いは2つのタンパク質又はポリペプチドを架橋する場合は、リンカー部の長さは、下限が通常4Å以上、好ましくは19Å以上であり、上限が通常94Å以上、好ましくは74Å以上である。
【0047】
1、A2及びT1で示されるアルキレン基は、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜8のものが挙げられる。
具体的には、例えばメチレン基、エチレン基、メチルメチレン基,エチルエチレン基,トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、1−メチルトリメチレン基、2−メチルトリメチレン基、ペンタメチレン基、ペンチレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、2−メチルプロピレン基、2−エチルプロピレン基、1−メチルテトラメチレン基、2−メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルエチレン基,1,2-ジメチルエチレン基,1,3−ジメチルトリメチレン基、2,2−ジメチルトリメチレン基、2−エチルトリメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、2−エチルヘキシレン基、ノナメチレン基、ノニレン基、デカメチレン基、デシレン基、1,4−ジメチルテトラメチレン基、2,3−ジメチルテトラメチレン基、1,2,3−トリメチルトリメチレン基、1,2−ジエチルエチレン基、ヘプタメチレン基、1,5−ジメチルペンタメチレン基、3−エチルペンタメチレン基、オクタメチレン基、1,6−ジメチルヘキサメチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロプロパン−1,2−ジメチレン基、シクロペンタン−1,3−ジメチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジメチレン基、シクロヘキサン−1,4−ジエチレン基、シクロオクタン−1,5−ジメチレン基、アダマンタンジイル基、トリシクロ[5.2.1.02.6]デカンジイル基、ノルボルナンジイル基、メチルノルボルナンジイル基、イソボルナンジイル基、デカリンジイル基等が挙げられる。
【0048】
一般式(1)においてT1で示されるアリーレン基は、単環、縮合多環或いは非縮合多環の何れでもよく、通常炭素数5〜14が挙げられる。
具体的には、例えばフェニレン基、トリル基、キシリル基、メシチル基、ナフチレン基、アントラセンジイル基、フェナントラセンジイル基、ビフェニルジイル基等が挙げられる。
【0049】
一般式(1)においてT1で示されるアラルキレン基は、アルキレン基とアリーレン基とを組み合わせてなる基が挙げられ、直鎖状でも分枝状でもよく、通常炭素数7〜10である。
具体的には、例えば−CH2−C6H4−、−CH2CH2−C6H4−、−CH2−C6H4−CH2−、−CH2CH2−C6H4−CH2−、−CH2CH2CH2−C6H4−、−CH(CH3)−CH2−C6H4−、−CH2CH2CH2CH2−C6H4−、−CH2CH2CH(CH3)−C6H4−等が挙げられる。
【0050】
一般式(1)においてT1で示されるヘテロ原子を含むアルキレン基、ヘテロ原子を含むアリーレン基又はヘテロ原子を含むアラルキレン基は、上記した如きアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基の任意の位置の炭素原子がヘテロ原子を有する二価の基に置換されたもの、換言すれば、上記した如きアルキレン基、アリーレン基及びアラルキレン基の鎖中の任意の位置にヘテロ原子を有する二価の基を含むものであり、且つZで示される脱離基、リン酸、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基等との対する反応活性を有さない若しくは極めて低いものである。ヘテロ原子を有する二価の基としては、例えば窒素原子、硫黄原子、酸素原子等のヘテロ原子を有する、Zで示される脱離基、リン酸、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基等との反応活性を有さない若しくは極めて低い基が挙げられる。具体的には、例えばカルボニル基,チオカルボニル基,イミノ基,マロニル基,−S−,−O−,−N−、
【0051】









等が挙げられる。
【0052】
一般式(1)においてR1、R2及びR3で示されるアルキル基は、アルキル基としては、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜12、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4のものが挙げられる。
具体的には、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、sec−ヘキシル基、tert−ヘキシル基、ネオヘキシル基、n−ヘプチル基、イソヘプチル基、sec−ヘプチル基、tert−ヘプチル基、ネオヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、ネオオクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、sec−ノニル基、tert−ノニル基、ネオノニル基、n−デシル基、イソデシル基、sec−デシル基、tert−デシル基、ネオデシル基、n−ウンデシル基、イソウンデシル基、sec−ウンデシル基、tert−ウンデシル基、ネオウンデシル基、n−ドデシル基、イソドデシル基、sec−ドデシル基、tert−ドデシル基、ネオドデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、シクロウンデシル基、シクロドデシル基等が挙げられる。
【0053】
本発明のリンカー部は、−A1−T1−A2−における主鎖を構成する原子数が下限が通常5個以上、好ましくは7個以上であって、上限が通常80個以下、好ましくは70個以下であるものが好ましい。
【0054】
上記した本発明のリンカー部−A1−T1−A2−は、−A3−(T2−E)p−T3−A4−で示されるものが好ましい。
ここで、A3及びA4はそれぞれ独立してアルキレン基、―O―、−NR1−、−O−CO−、−CO−O−、−C−O−C−、−NR2−COO−、−OCO−NR2−、−NR3−CO−、−CO−NR3−又は−O−COO−(R1〜R3は前記と同じ。)を、T2及びT3はそれぞれ独立してアルキレン基を、Eは結合手、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、−O−CO−又は−CO−O−を示す。また、pは1以上の整数を示し、p個の―(T2−E)―は同じでも異なっていてもよい。
【0055】
3、A4、T2及びT3で示されるアルキレン基は、直鎖状でも分枝状でも或いは環状でもよく、通常炭素数1〜10、好ましくは1〜8のものが挙げられる。その具体例は、上記A1、A2及びT1で示されるアルキレン基と同じである。
【0056】
pは、下限が1以上であり、上限が通常6以下、好ましくは4以下、より好ましくは2以下である。
また、p個の―(T2−E)―は同じでも異なっていてもよいが、A3に結合(隣接)するT2はT3と同じでものであるのが好ましい。
【0057】
上記のリンカー部は、−A3−(T2−E)p−T3−A4−における主鎖を構成する原子数が下限が通常5個以上、好ましくは7個以上であって、上限が通常80個以下、好ましくは70個以下であるものが好ましい。
【0058】
本発明のリンカーとしては、より具体的には下記一般式で示されるものが挙げられる。
【0059】













【0060】
〔式中、R1〜R3は前記した通りであり、mは3以上の整数を示す。ここで、2つのR1はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、2つのR2はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。また、2つのR3はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。〕
尚、mは下限が通常3以上、好ましくは5以上であり、上限が通常78以下、好ましくは68以下である。
【0061】





【0062】
1−3.具体的化合物(架橋剤)
前記した通り、本発明の化合物(架橋剤)は、光分解性保護基がリンカーの両末端に結合してなるものであり、一般式(1)、好ましくは一般式(2)で示される化合物である。
【0063】



【0064】
〔式中、Q1、Q2、A1、A2、A3、A4、T1、T2、T3、E及びpは前記と同じである。〕
【0065】
本発明の化合物(架橋剤)としては、具体的には、例えば下記一般式(6)で示されるものが挙げられる。

〔式中、Q、Y1、Y2、M1、Z、M2、X1、X2、A3、A4、T2、T3、E及びpは前記と同じである。〕
【0066】
また、本発明の化合物(架橋剤)のうち、目的対象物(核酸、タンパク質又はポリペプチド)のリン酸基に結合して目的対象物を架橋するものとしては、例えば下記一般式(7)で示されるものが挙げられる。

〔式中、Q、Y1、Y2、M1、Z11、M2、X1、X2、A3、A4、T2、T3、E及びpは前記と同じである。〕
【0067】
本発明の化合物(架橋剤)のうち、目的対象物(核酸、タンパク質又はポリペプチド)のカルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基に結合して目的対象物を架橋するものとしては、例えば下記一般式(8)で示されるものが挙げられる。

〔式中、Q、Y1、Y2、M1、Z11、M2、X1、X2、A3、A4、T2、T3、E及びpは前記と同じである。〕
【0068】
本発明の化合物(架橋剤)のうち、目的対象物(核酸、タンパク質又はポリペプチド)のリン酸基と、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基とに結合して目的対象物を架橋するもの、即ち、2つの光分解性保護基のうち一方が目的対象物のリン酸基と結合し、他方が目的対象物のカルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基と結合することによって目的対象物を架橋するものとしては、例えば下記一般式(9)で示されるものが挙げられる。

〔式中、Q、Y1、Y2、M1、Z11、M2、X1、X2、A3、A4、T2、T3、E及びpは前記と同じである。〕
【0069】
1−4.本発明の化合物(架橋剤)の合成
一般式(1)で示される本発明の化合物(架橋剤)は、例えば以下の合成スキームに従えば容易に合成することができる。
尚、下記合成スキーム中、Q、Y1、Y2、M1、Z、Z11、M2、X1、X2、R1、R2、R3及びmは前記と同じである。また、下記合成スキームにおいて使用される略称の正式名は下記の通りである。
Et3N:トリエチルアミン
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
【0070】

【0071】

【0072】

(R2がHの場合、例えば上記の合成スキームに従えば合成し得る。)
【0073】

【0074】

【0075】

【0076】

【0077】

【0078】

【0079】

【0080】
2.本発明の架橋方法
本発明の化合物(架橋剤)を用いれば、二本鎖核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間〔即ち、二本鎖核酸のセンス鎖及びアンチセンス鎖のそれぞれ、核酸とタンパク質又はポリペプチドのそれぞれ、2つのタンパク質又はポリペプチド(タンパク質間、タンパク質−ポリペプチド間又はポリペプチド間)のそれぞれ(以下、「本発明に係る複合体」と略記する場合がある。)〕を、容易に架橋することができる。
即ち、本発明の化合物(架橋剤)は、光分解性保護基中に、リン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基等から選ばれる基に結合し得る基を有しているため、本発明に係る複合体を構成する目的対象物(核酸、タンパク質又はポリペプチド)が有するリン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基に結合して本発明に係る複合体を架橋することができる。
換言すれば、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの一方が本発明に係る複合体を形成する一方の目的対象物(核酸、タンパク質又はポリペプチド)のリン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基に結合し、他方の光分解性保護基が他方の目的対象物のリン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基と結合することによって本発明に係る複合体(当該複合体を構成する2つの目的対象物)を架橋することができる。
その結果、本発明に係る複合体(当該複合体を構成する2つの目的対象物)は、そのリン酸残基、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基を介して、本発明の化合物(架橋剤)で、架橋されることとなる。
従って、本発明の架橋方法は、二本鎖核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間を、当該複合体のリン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基を介して上記した如き本発明の化合物(架橋剤)、好ましくは一般式(1)で示される化合物、より好ましくは一般式(2)で示される化合物、更に好ましくは一般式(6)で示される化合物で架橋することを特徴とする。
より具体的には、本発明の架橋方法は、1)本発明に係る複合体(特に二本鎖RNA)を、当該複合体(特に二本鎖RNA)のリン酸残基を介してリン酸に結合し得る基を有する光分解性保護基を両末端に有する架橋剤又は一般式(7)で示される化合物で架橋すること、2)本発明に係る複合体を、当該複合体のリン酸残基と、カルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基とを介して一般式(8)で示される化合物で架橋すること、及び3)本発明に係る複合体を、当該複合体のカルボキシル基、ヒドロキシル基又はアミノ基を介して一般式(9)で示される化合物で架橋することを特徴とする。
【0081】
上記方法において、架橋対象となる二本鎖核酸としては、二本鎖を形成したものであればよく、特に限定されない。
具体的には、例えばプラスミドDNA、ゲノムDNA、PCR等の自体公知の増幅方法で合成された合成DNA、cDNA等のDNA、例えばmRNA、アンチセンスRNA等のRNA、例えばサイクリックヌクレオチド等から選ばれる2つの核酸からなるもの(例えば二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA−RNAハイブリッド等)が挙げられる。なかでも、二本鎖RNAが好ましい。
【0082】
また、架橋対象となるタンパク質としては、上記した如き核酸との複合体を形成し得るもの、又は他のタンパク質或いはポリペプチドと複合体を形成し得るものであればよく、特に限定されない。
具体的には、例NFκB,NFAT,STATなどの転写因子,RNAポリメラーゼ等が挙げられる。
【0083】
架橋対象となるポリペプチドとしては、上記した如き核酸との複合体を形成し得るもの、又は他のポリペプチド或いはタンパク質と複合体を形成し得るものであればよく、特に限定されない。
具体的には、例PKCε V1-2 inhibitor peptide, RGD peptide, Zn finger peptide, leucine zipper peptide, bHLH peptide等が挙げられる。
【0084】
本発明は、上記した如き架橋対象のなかでも、特に二本鎖RNAに対して有用である。
【0085】
本発明の化合物(架橋剤)を用いて、上記した如き本発明に係る複合体を架橋するには、本発明の化合物(架橋剤)と本発明に係る複合体とを、接触させればよい。
本発明の化合物(架橋剤)と本発明に係る複合体とを接触させる方法としては、例えば、本発明の化合物(架橋剤)を含有する溶液と本発明に係る複合体を含有する溶液とを混合し、下限が通常1時間以上、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上であり、上限が36時間以下、好ましくは24時間以下で、下限が通常10℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、上限が通常40℃以下、好ましくは35℃以下、より好ましくは25℃以下で反応させればよい。
尚、上記において使用される本発明の化合物(架橋剤)の使用量は、使用する本発明の化合物(架橋剤)の種類や架橋対象とする本発明に係る複合体の種類により一概に言えないが、下限は通常架橋対象(本発明に係る複合体)1モルに対して1モル以上、好ましくは通常架橋対象(本発明に係る複合体)1モルに対して1モルを超える量であって且つ架橋対象中の架橋し得る反応基(リン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等)の組合せの数の1/4以上、より好ましくは架橋対象中の架橋し得る反応基の組合せの数に対応するモル量である。上限は通常架橋対象中の架橋し得る反応基の組合せの数の10倍のモル量、好ましくは架橋対象中の架橋し得る反応基の組合せの数の5倍のモル量である。
ここで、架橋対象中の架橋し得る反応基の組合せとは、本発明に係る複合体を形成する一方の目的対象物(核酸、タンパク質又はポリペプチド)が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの一方が結合し得る反応基(例えばリン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基)と、本発明に係る複合体を形成する他方の目的対象物(核酸、タンパク質又はポリペプチド)が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの他方が結合し得る反応基(例えばリン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基)との組合せを意味する。
また、架橋対象中の架橋し得る反応基の組合せの数とは、架橋対象が有する、本発明の化合物(架橋剤)が結合し得る上記した如き反応基の総数(全ての組合せの数)であり、換言すれば、本発明に係る複合体を形成する一方の目的対象物が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの一方が結合し得る反応基が結合し得る反応基と、本発明に係る複合体を形成する他方の目的対象物が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの他方が結合し得る反応基のどちらか少ない方の数である。
また、上記において、本発明の化合物(架橋剤)又は/及び本発明に係る複合体を含有させる溶液としては、通常この分野で用いられるものであればよく特に限定されないが、例えば水、DMSO、緩衝液(例えばトリス緩衝液、グッド緩衝液、TE緩衝液、TAE緩衝液、TBE緩衝液、TBS緩衝液等)等が挙げられる。
尚、上記の如くして得られた、本発明の化合物(架橋剤)が結合した本発明に係る複合体は、一般的には、カラムクロマトグラフィー等の自体公知の精製法に供し、未反応の本発明の化合物(架橋剤)を除去し、本発明の化合物(架橋剤)が結合した本発明に係る複合体を精製することが望ましい。
【0086】
尚、本発明には、本発明の化合物(架橋剤)が結合した(によって架橋された)本発明に係る複合体、即ち、本発明の化合物(架橋剤)が結合した(によって架橋された)二本鎖核酸、核酸−タンパク質複合体、核酸−ポリペプチド複合体、2つのタンパク質、タンパク質−ポリペプチド複合体、及び2つのポリペプチドも包含される。
なかでも、本発明の化合物(架橋剤)が結合した(によって架橋された)本発明に係る複合体としては、本発明の化合物(架橋剤)が結合した(によって架橋された)二本鎖核酸が好ましく、特に本発明の化合物(架橋剤)が結合した(によって架橋された)二本鎖RNAが好ましい。尚、本発明の化合物(架橋剤)の好ましい例は上記した通りである。
【0087】
本発明の化合物(架橋剤)が、本発明に係る複合体を架橋することによって、本発明に係る複合体、即ち、二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA−RNAハイブリッド等の二本鎖核酸、核酸−タンパク質複合体、核酸−ポリペプチド複合体、タンパク質複合体、ポリペプチド複合体、又はタンパク質−ポリペプチド複合体が元々有する機能が抑制される。
例えば、本発明に係る複合体が二本鎖DNAである場合には、転写系を有する宿主内において、当該核酸分子の転写が抑制され、その結果、遺伝子の発現が抑制される。
また、本発明に係る複合体が二本鎖RNAである場合には、RNAiにおいて、siRNAが有する相補的な標的mRNAの特異的分解作用が抑制される。
本発明に係る複合体が核酸−タンパク質複合体である場合には、転写系を有する宿主内において,当該核酸分子下流の核酸分子の転写が抑制または活性化され,その結果,遺伝子の発現が抑制または活性化される。
本発明に係る複合体が核酸−ポリペプチド複合体である場合には、転写系を有する宿主内において,当該核酸分子下流の核酸分子の転写が抑制または活性化され,その結果,遺伝子の発現が抑制または活性化される。
本発明に係る複合体がタンパク質複合体である場合には、タンパク質複合体である場合には,細胞内において当該タンパク質の機能が抑制または活性化される。
【0088】
本発明の化合物(架橋剤)によって架橋された本発明に係る複合体に対して、紫外線又は可視光等の光を照射することによって、当該本発明に係る複合体から本発明の化合物(架橋剤)を脱離させることができる。これにより、当該本発明に係る複合体の機能抑制を解除することができる。
即ち、本発明の化合物(架橋剤)により架橋された本発明に係る複合体は、当該複合体が元々有する機能が抑制されているが、光を照射することにより本発明に係る複合体と本発明の化合物(架橋剤)との結合がはずれるため〔本発明の化合物(架橋剤)による架橋がはずれるため〕、当該複合体の機能が回復する。
【0089】
本発明において照射される光とは、波長がX線より長く、1〜900nm程度の波長範囲の電磁波を意味する。なかでも、長波長側の、例えば、350〜400nmの範囲の光が好ましく、更に好ましくは、波長が365±6nm程度の光である。
また、当該光の照射時間としては、使用される本発明の化合物(架橋剤)の種類や架橋対象の本発明に係る複合体の種類等により異なるため一概には言えないが、照射時間が長いと核酸分子に突然変異を誘発したり、本発明の化合物(架橋剤)によって架橋された本発明に係る複合体を導入する細胞又は生物を損傷する虞があり、逆に照射時間が短いと本発明の化合物(架橋剤)を充分に脱離させられない虞がある。具体的には、例えば4 mJ/cm2sの光を下限が1分以上であり、上限が通常10分以下、好ましくは3分以下照射するか、或いは、376 mJ/cm2sの光を下限が通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上であり、上限が通常30秒以下、好ましくは10秒以下照射すればよい。
【0090】
上述したように、本発明の化合物(架橋剤)及びそれを用いた架橋方法によれば、各種機能を有する本発明に係る複合体(二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA−RNAハイブリッド等の二本鎖核酸、核酸−タンパク質複合体、核酸−ポリペプチド複合体、タンパク質複合体、ポリペプチド複合体、又はタンパク質−ポリペプチド複合体)の機能を抑制することができる。
更に、本発明の化合物(架橋剤)で架橋された本発明に係る複合体に対して光を照射することによって、抑制されていた本発明に係る複合体の機能を、任意の時期と場所で回復すること、換言すれば、任意の時期と場所で本発明に係る複合体の機能を制御することができる。
例えば、二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA−RNAハイブリッド等の二本鎖核酸、核酸−タンパク質複合体、核酸−ポリペプチド複合体、タンパク質複合体、ポリペプチド複合体、又はタンパク質−ポリペプチド複合体が有する未知の機能を任意の時期で特異的に発現させたり、任意の場所で特異的に発現させたり、又は任意の時期及び場所で特異的に発現させることが可能となる。
本発明の化合物(架橋剤)及びそれを用いた架橋方法は、上記した如き用途以外にも使用できる。
例えば、In vivo、in vitro等で形成された本発明に係る複合体(二本鎖DNA、二本鎖RNA、DNA−RNAハイブリッド等の二本鎖核酸、核酸−タンパク質複合体、核酸−ポリペプチド複合体、タンパク質複合体、ポリペプチド複合体、又はタンパク質−ポリペプチド複合体)を本発明の化合物(架橋剤)で架橋し、架橋された複合体を単離した後に当該複合体に光を照射すれば、当該複合体を構成する各成分(核酸鎖、タンパク質、ポリペプチド)を、変化させることなく、その機能を保持させたまま、単離することができる。従って、この方法によれば、複合体を構成する成分を明らかにするだけでなく、各構成成分の機能が保持されているので、細胞・組織・生体内等の複合体の形成作用(各構成成分の相互作用)やその機能の解析等に極めて有用である。
また、例えば、本発明に係る複合体が薬効を有する場合(例えばRNAiを利用した所謂RNAi医薬品等)には、当該複合体を本発明の化合物(架橋剤)で架橋してその薬効を抑制しておき、架橋された複合体を細胞・組織・生体内等に投与した後、光を照射することにより、抑制されていた薬効を回復させて病気の治療等を行うことができる。この方法によれば、光照射の範囲や時間をコントロールすることにより、目的とする特定の部位(病巣等)に特異的に薬効を生じさせたり、任意の時期(時間)に薬効を生じさせることが可能となる。
【0091】
3.本発明の遺伝子発現調節方法
本発明の化合物(架橋剤)及びそれを用いた架橋方法は、上述したような種々の用途に使用することができるが、特に、二本鎖RNAを用いたRNAi法に有用である。
【0092】
本発明の遺伝子発現調節方法は、上記した如き本発明の化合物(架橋剤)を予め結合させた二本鎖RNAに対して、光を照射することを特徴とする。
即ち、先ず、二本鎖RNAに本発明の化合物(架橋剤)を結合させることによって、換言すれば、二本鎖RNAを本発明の化合物(架橋剤)で架橋することによって、二本鎖RNAの遺伝子発現阻害作用(当該二本鎖RNAと相補的な標的mRNAの分解作用)を抑制することができる。即ち、本発明の化合物(架橋剤)を所定の遺伝子(標的mRNA)に対する二本鎖RNA(siRNA)に結合させて二本鎖RNA(siRNA)を架橋することによって、細胞又は生物内における当該遺伝子(標的mRNA)を発現させることができる。次いで、本発明の化合物(架橋剤)で架橋された二本鎖RNAに対して光を照射することによって、当該複合体から本発明の化合物(架橋剤)を脱離させ、抑制されていた二本鎖RNAの遺伝子発現阻害作用(当該二本鎖RNAと相補的な標的mRNAの分解作用)を回復させることができ、その結果、当該遺伝子(標的mRNA)の発現を抑制することができる。これにより、特定の遺伝子(標的mRNA)の発現を任意の時期と場所で調節(制御)することができる。
【0093】
本発明の遺伝子発現調節方法は、例えば二本鎖RNAを用いたRNAi法等の二本鎖RNAを用いた自体公知の遺伝子発現調節方法において、使用される二本鎖RNAを予め本発明の化合物(架橋剤)で架橋し、遺伝子の発現調節を行う際、即ち遺伝子の発現を抑制する際に当該本発明の化合物(架橋剤)で架橋された二本鎖RNAに対して光を照射する以外は、自体公知の方法に従って実施すれば良く、使用される材料、試薬類等も自体公知の方法で用いられているものを使用すればよい。
【0094】
本発明の遺伝子発現調節方法は、具体的には以下の工程(a)〜(c)を含むものである。
(a)本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、及び
(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程。
【0095】
3−1.二本鎖RNA架橋工程〔工程(a)〕
(1)二本鎖RNA
本発明の方法で用いられる二本鎖RNAは、RNAiを媒介し得るもの(RNAiを生じる能力を有するもの)、即ち、当該二本鎖RNAが相補的な標的mRNAの特異的な分解を促進することにより標的タンパク質の発現を特異的に抑制する現象を引き起こすもの(標的mRNAを分解する能力を有するもの)であれば良く、各種細胞、生物、組織等の天然物から抽出したRNA、合成RNA、組み換えRNA等何れも使用可能である。
尚、二本鎖RNAを構成するリボヌクレオチドは、例えば天然に存在しない核酸塩基を含むリボヌクレオチド(例えば、5−(2−アミノ)プロピルウリジン、5−ブロモウリジン等の5位置で修飾されたウリジンまたはシチジン、例えば8−ブロモグアノシン等の8位で修飾されたアデノシンおよびグアノシン、例えば7−デアザ−アデノシン等のデアザヌクレオチド、例えばN6−メチルアデノシン等のO−およびN−アルキル化ヌクレオチド)、糖修飾リボヌクレオチド(例えばH、OR、ハロゲン原子、SH、SR41、NH、NHR41、NR41またはCNからなる群より選択される基で糖の2'OH基が置換されたものであって、R41は、C〜Cアルキル、アルケニルまたはアルキニルであり、ハロゲン原子は、F、Cl、BrまたはIであるもの)、骨格鎖修飾リボヌクレオチド(例えば、隣接するリボヌクレオチドを結合するホスホエステル基を、例えばホスホチオエート基の修飾基で置換したもの)、及びこれらを組み合わせたリボヌクレオチド等を含んでいてもよい。
また、本発明の方法で用いられる二本鎖RNAの配列は、標的mRNAに対し十分な同一性を有していなければならない。好ましくは、この配列は、二本鎖RNAの二本鎖部分における標的mRNAに対して、少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも85%、特に好ましくは100%の同一性を有するものである。
当該二本鎖RNAの長さは、RNAiを媒介し得る(RNAiを生じる能力を有する)長さであれば良く、特に限定されない。具体的には、各RNA鎖が、下限が通常19塩基長以上、好ましくは20塩基長以上、より好ましくは25塩基長以上、上限が通常1500塩基長以下、好ましくは1000塩基長以下、より好ましくは500塩基長以下である。尚、二本鎖RNAが導入される細胞又は生物が動物である場合には、好ましくは上限が30塩基長以下、より好ましくは27塩基長以下である。
このような二本鎖RNAとしては、例えば特表2003-529374号、特表2004-526422号、特表2002-516112号、特開2004-261002号等に記載されたものが挙げられる。
【0096】
上記した如き二本鎖RNAは、通常この分野で用いられている自体公知の方法〔例えば特表2003-529374号、特表2004-526422号、特表2002-516112号、特開2004-261002号等〕により得ることができ、また、市販のキットを用いても得ることができる。
【0097】
二本鎖RNAは、一般的には、適当な溶媒に下限が通常1μM以上、好ましくは10μM以上、より好ましくは20μM以上であり、上限が通常100μM以下、好ましくは50μM以下、より好ましくは30μM以下の濃度の二本鎖RNA含有溶液として調製される。
【0098】
(2)本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとの接触
本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋するには、例えば、本発明の化合物(架橋剤)を含有する溶液と二本鎖RNAを含有する溶液とを混合し、下限が通常1時間以上、好ましくは4時間以上、より好ましくは8時間以上であり、上限が36時間以下、好ましくは24時間以下で、下限が通常10℃以上、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上であり、上限が通常40℃以下、好ましくは35℃以下、より好ましくは25℃以下で反応させればよい。
尚、上記方法において使用される本発明の化合物(架橋剤)としては、リン酸に結合し得る基を有する光分解性保護基を両末端に有する架橋剤が好ましく、一般式(7)で示される化合物(架橋剤)が特に好ましい。
上記において使用される本発明の化合物(架橋剤)の使用量は、使用する本発明の化合物(架橋剤)の種類等により一概に言えないが、下限は通常架橋対象である二本鎖RNA1モルに対して1モル以上、好ましくは二本鎖RNA1モルに対して1モルを超える量であって且つ二本鎖RNA中の架橋し得る反応基(リン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基等)の組合せの数の1/4以上、より好ましくは二本鎖RNA中の架橋し得る反応基の組合せの数に対応するモル量である。上限は通常二本鎖RNA中の架橋し得る反応基の組合せの数の10倍のモル量、好ましくは二本鎖RNA中の架橋し得る反応基の組合せの数の5倍のモル量である。
ここで、二本鎖RNA中の架橋し得る反応基の組合せとは、二本鎖RNAを形成する一方のRNA鎖が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの一方が結合し得る反応基(例えばリン酸基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基)と、当該二本鎖RNAを形成する他方のRNA鎖が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの他方が結合し得る反応基(例えばリン酸基、ヒドロキシル基及びアミノ基から選ばれる基)との組合せを意味する。
また、二本鎖RNA中の架橋し得る反応基の組合せの数とは、二本鎖RNAが有する、本発明の化合物(架橋剤)が結合し得る上記した如き反応基の総数(全ての組合せの数)であり、換言すれば、二本鎖RNAを形成する一方のRNA鎖が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの一方が結合し得る反応基が結合し得る反応基と、二本鎖を形成する他方のRNA鎖が有する、本発明の化合物(架橋剤)が有する2つの光分解性保護基のうちの他方が結合し得る反応基のどちらか少ない方の数である。
また、上記において、二本鎖RNA又は/及び本発明の化合物(架橋剤)を含有させる溶液(溶媒)としては、通常この分野で用いられるものであればよく特に限定されないが、例えば水、DMSO、緩衝液(例えばトリス緩衝液、グッド緩衝液、TE緩衝液、TAE緩衝液、TBE緩衝液、TBS緩衝液等)等が挙げられる。
尚、上記方法においては、反応液をカラムクロマトグラフィー等の自体公知の精製法に供し、未反応の本発明の化合物(架橋剤)を除去し、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAを精製することが望ましい。
【0099】
3−2.二本鎖RNA導入工程〔工程(b)〕
上記の如くして得られた本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAを細胞又は生物内に導入(トランスフェクト)する。
【0100】
(1)細胞又は生物
本発明において用いられる細胞又は生物としては、照射する光を透過することができ、導入(トランスフェクト)された二本鎖RNAに対して当該光のエネルギーが供給されるものであればよく、特に限定されない。
このような細胞としては、例えば真核細胞又は細胞系、例えば植物細胞又は動物細胞(ヒト、ラット等の哺乳動物細胞、線虫細胞、昆虫細胞等)、例えば胚細胞(発生初期のアフリカツメガエルの胚細胞、ゼブラフィッシュの胚細胞、ショウジョウバエ細胞等)、多能性幹細胞、腫瘍細胞、例えば奇形癌細胞又はウイルス感染細胞、各種生物由来の単一層様の培養細胞等が挙げられる。
生物としては、真核生物、植物又は動物(例えばヒト、ラット等の哺乳動物、線虫、昆虫等)が挙げられる。
【0101】
(2)細胞又は生物への二本鎖RNAの導入
上記した如き細胞又は生物内に本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAを導入(トランスフェクト)する方法としては、自体公知の方法を使用することができる。
このような方法としては、例えばリン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン法、エレクトロポレーションおよびマイクロインジェクション、ウイルス法、カチオンリポソーム〔例えばTfx50(Promega)、リポフェクトアミン2000(Life Technologies)等〕を用いる方法等が挙げられる(Graham, F.L.およびvan der Eb, A.J.(1973)Virol. 52, 456、McCutchan, J.H.およびPagano, J.S.(1968)J. Natl. Cancer Inst. 41, 351、Chu, G.ら(1987)Nucl. Acids Res. 15, 1311、Fraley, Rら(1980)J. Biol. Chem. 255, 10431、Capechi, M.R.(1980)Cell 22, 479、Felgner, P.L.ら(1987), Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84, 7413)。
上記した如き自体公知の方法に従って、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAを細胞又は生物内に容易に導入(トランスフェクト)することができ、また、市販のトランスフェクション用キットを用いても容易に行うことができる。
【0102】
本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物内においては、本発明の化合物(架橋剤)によって、二本鎖RNAが本来有しているRNAiを媒介し得る能力(RNAiを生じる能力)、即ち、当該二本鎖RNAが相補的な標的mRNAの特異的な分解を促進することにより標的タンパク質の発現を特異的に抑制する現象を引き起こす能力(標的mRNAを分解する能力)が抑制されており、二本鎖RNAが導入されていない状態(通常の状態)と同様の遺伝子(当該二本鎖RNAと相補的な標的mRNA)が発現していることとなる。
【0103】
3−3.光照射工程〔工程(c)〕
次いで、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物に光を照射することによって、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAから本発明の化合物(架橋剤)を脱離させる。
即ち、本発明の化合物(架橋剤)が結合することにより抑制されていた二本鎖RNAの遺伝子発現阻害作用(当該二本鎖RNAと相補的な標的mRNAの分解作用)を、光の照射により本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとの結合をはずして回復させ、当該遺伝子(標的mRNA)の発現を抑制する。
【0104】
(1)光の照射
使用される光は、前述と同様であり、1〜900nm程度の波長範囲の電磁波、好ましくは長波長側の、例えば、350〜400nmの範囲の光、更に好ましくは、波長が365±6nm程度の光である。
また、当該光の照射時間も前述と同様であり、具体的には、例えば4mJ/cm2sの光を下限が1分以上であり、上限が通常10分以下、好ましくは3分以下照射するか、或いは、376mJ/cm2sの光を下限が通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上であり、上限が通常30秒以下、好ましくは10秒以下照射すればよい。尚、照射時間が長いと二本鎖RNAに突然変異を誘発したり、本発明の化合物(架橋剤)によって架橋された二本鎖RNAを導入する細胞又は生物を損傷する虞があり、逆に照射時間が短いと本発明の化合物(架橋剤)を充分に脱離させられない虞があるので注意が必要である。
【0105】
光の照射は、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物の全部(全体)でも、また、その一部であってもよい。
光を本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物の全部(全体)又は一部に照射することによって、当該細胞又は生物の全部(全体)又は一部における遺伝子の発現を抑制するができる。
尚、当該細胞又は生物の全部(全体)に光を照射する場合には、光源、光照射手段(例えば水銀灯等の紫外線照射手段等)に対して当該細胞又は生物を対向させればよい。これにより、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物の全体において目的遺伝子(標的遺伝子)の発現を抑制することができる。
また、当該細胞又は生物の一部に光を照射する場合には、光源、光照射手段(例えば水銀灯等の紫外線照射手段等)から出射した光を、対物レンズ等を含む光学系によりスポット光とし、当該細胞又は生物の所定の領域のみに光スポットを照射すればよい。これにより、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物における所定の領域のみで(標的遺伝子)の発現を抑制することができる。
【0106】
上記したように、本発明の工程(a)〜(c)を行うことにより、特定の遺伝子(標的mRNA)の発現を任意の時期と場所で調節(制御)することができる。
即ち、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAがその細胞内又は生物内に存在していても、その二本鎖RNAに相補的な標的mRNA(標的遺伝子)の発現は抑制されておらず、その後における所望の時期又は/及び場所に、光を照射することによって当該遺伝子の発現を特異的に抑制することができる。
尚、特定の標的遺伝子(標的mRNA)の発現は、光照射後の、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物を、常法に従って当該細胞又は生物が成育し得る適当な条件下で培養又は生育して当該細胞又は生物中の遺伝子を発現させる際に、光照射によって本発明の化合物(架橋剤)が外れた二本鎖RNAの作用による当該細胞又は生物内で生じるRNAi効果により抑制される。
従って、本発明の工程(a)〜(c)を含む遺伝子発現調節方法は、工程(c)の後に、更に工程(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、を含むものが好ましい。
【0107】
4.本発明の遺伝子機能調査方法
上記した如き方法において、光照射の前後における本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物中の遺伝子の発現を比較することにより、遺伝子の機能の解析、特定、同定等を行うことができる。
従って、本発明の遺伝子機能調査方法は、(a)本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程、(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、及び(d)工程(c')で発現した遺伝子と対照とを比較する工程、を含むことを特徴とする。
【0108】
本発明において、対照とは、架橋された二本鎖RNAが光照射によって当該二本鎖RNA(光照射によって本発明の化合物(架橋剤)が脱離した二本鎖RNA)の作用により生じるRNAi効果によって発現が抑制される遺伝子(標的遺伝子)と同じ遺伝子、即ち、当該二本鎖RNAと相補的な標的mRNAを有する細胞又は生物における、当該二本鎖RNAにより実質的に発現が抑制されていない当該遺伝子を意味する。
このような対照としては、例えば(i)架橋された二本鎖RNAが導入された細胞又は生物であって、光照射されていない細胞又は生物において発現された遺伝子(架橋された二本鎖RNAが導入された細胞又は生物と同種のものであって、架橋された二本鎖RNAが導入されているが光が照射されていない当該細胞又は生物において発現された遺伝子、光が照射される細胞又は生物における光照射前の当該細胞又は生物において発現された遺伝子等)、(ii)架橋された二本鎖RNAが導入された細胞又は生物と同種のものであって、架橋された二本鎖RNAが導入されていない細胞又は生物において発現された遺伝子、(iii)架橋された二本鎖RNAが導入された細胞又は生物であって、光が照射される細胞又は生物における、光照射されていない部分(領域)において発現された遺伝子等が挙げられる。
尚、これらの対照は、単独で用いても良いが、適宜組み合わせて用いても良い。
【0109】
本発明において、工程(c')で発現した遺伝子と対照との比較は、例えば光照射後の本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物と対照の細胞又は生物における、標的遺伝子(二本鎖RNAと相補的な標的mRNA)の発現の増減(発現量)又は発現の有無、標的遺伝子(標的mRNA)の発現産物(タンパク質等)の増減(タンパク質量)又は発現産物(タンパク質等)の有無標的遺伝子(標的mRNA)の発現で生じる表現型等を、自体公知の方法に従い測定、観察し、その結果を比較することにより行う。
尚、本発明において、遺伝子を発現させるには、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物又は/及び対照の細胞又は生物を、常法に従って当該細胞又は生物が成育し得る適当な条件下で培養又は生育して当該細胞又は生物中の遺伝子を発現させればよい。
【0110】
本発明の遺伝子機能調査方法は、具体的には例えば以下の工程(a)〜(d)を含むものが挙げられる。
(a)本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、
(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程、
(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、
(c'')導入された細胞又は生物に光を照射せずに、当該細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、及び
(d)工程(c')で発現した遺伝子と工程(c'')で発現した遺伝子とを比較する工程。
尚、工程(c)における光照射される細胞又は生物と、工程(c'')における光照射されない細胞又は生物とは、同一のもの〔一つ(群)の細胞・個体〕であっても、同種のもの〔異なる細胞・個体〕であってもよいが、一般的には、これらは同種のものであって異なる細胞・個体である。
【0111】
その他の具体例としては、例えば以下の工程(a)〜(d)を含むものが挙げられる。
(a)本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、
(b')光を照射する前に、導入された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、
(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程、
(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、及び
(d)工程(b')で発現した遺伝子と工程(c')で発現した遺伝子とを比較する工程。
尚、工程(b')における細胞又は生物と、工程(c')における細胞又は生物とは、同一のもの〔一つ(群)の細胞・個体〕である。
【0112】
その他の具体例としては、例えば以下の工程(a)〜(d)を含むものが挙げられる。
(a)本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、
(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程、
(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、
(c'')架橋された二本鎖RNAが導入されていない細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、及び
(d)工程(b')で発現した遺伝子と工程(c')で発現した遺伝子とを比較する工程。
尚、工程(c'')における細胞又は生物は、工程(b)において架橋された二本鎖RNAが導入された細胞又は生物と同種のもの〔異なる細胞・個体〕、即ち、同種のものであって異なる細胞・個体である。
【0113】
尚、上記方法において、使用される本発明の化合物(架橋剤)、二本鎖RNA、本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとの接触方法、架橋された二本鎖RNAを導入する細胞又は生物、当該細胞又は生物へ架橋された二本鎖RNAを導入する方法、光、光の照射方法、細胞又は生物中の遺伝子を発現させる方法、これら構成要件の好ましい態様、具体例等は前記と同様である。
【0114】
また、前記した如く、本発明の遺伝子機能調査方法においても、光の照射は、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物の全部(全体)でも、また、その一部であってもよい。当該細胞又は生物の一部に光を照射することにより、本発明の化合物(架橋剤)が結合した二本鎖RNAが導入された細胞又は生物における所定の領域のみでの遺伝子の機能を調査することができる。
このような場合の具体例としては、例えば以下の工程(a)〜(d)を含むものが挙げられる。
(a)本発明の化合物(架橋剤)と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、
(c)導入された細胞又は生物の所定の領域に光を照射する工程、
(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、及び
(d)工程(b')で発現した光が照射された領域における遺伝子と光が照射されていない領域における遺伝子とを比較する工程。
尚、上記における細胞又は生物は、一つ(群)の細胞・個体である。
【0115】
5.本発明のキット
本発明のキットは、上記した如き本発明の架橋方法、遺伝子発現調節方法又は遺伝子機能調査方法を実施するために使用されるものである。
このようなキットとしては、少なくとも先述した如き本発明の化合物(架橋剤)、好ましくは一般式(1)で示される化合物、より好ましくは一般式(2)で示される化合物、更に好ましくは一般式(6)で示される化合物、特に好ましくは一般式(7)で示される化合物、一般式(8)で示される化合物及び一般式(9)で示される化合物から選ばれる1つの化合物、最も好ましくは一般式(7)で示される化合物を含んでなるものである。
これら構成要件の好ましい態様と具体例は上で述べた通りである。
【0116】
更に、上記以外の試薬類を加えて、本発明のキットとすることもできる。このような試薬類としては、例えば二本鎖RNAを細胞又は生物に導入するためのトランスフェクション用試薬等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
また、前述した如き本発明の架橋方法、遺伝子発現調節方法又は遺伝子機能調査方法での使用のための説明書等を含ませておいても良い。当該「説明書」とは、本発明の方法における特徴・原理・操作手順等が文章又は図表等により実質的に記載されている当該キットの取り扱い説明書、添付文書、或いはパンフレット(リーフレット)等を意味する。
【0118】
本発明の方法は、例えば以下のような効果を奏する。
(1)配列が知られている標的遺伝子のmRNA(標的mRNA)を破壊することにより、その遺伝子の機能を探索することができるので、標的遺伝子の機能解析に有効である。
(2)未知遺伝子(例えば疾患関連遺伝子)の探索や候補標的遺伝子の絞り込み等に有効である。
(3)遺伝子の機能と当該遺伝子が発現していない状態での表現型の迅速な解析が可能である。
(4)病気を治療するためのRNAiを利用した所謂RNAi医薬品の開発にも使用できる。特に本発明によれば組織又は部位特異的に薬効を生じさせることが可能なRNAi医薬品を開発し得る。
【0119】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより何等限定されるものではない。
【実施例】
【0120】
実施例1 グルタル酸 ビス(6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル)エステル(Pentanedioic acid bis(6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen-7-yl) ester)(本発明の化合物1)の合成

【0121】
10 ml ナスフラスコに、24.9 mg (0.0898 mmol)の6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ジアゾメチルクマリン、ジクロロメタン 1 ml、トリエチルアミン 17.4μl(0.1078 mmol),グルタリルクロライド 5.726 μl(0.0449 mmol)を入れ、室温で1日間攪拌した。その後、クロロホルムで希釈し、有機層を蒸留水で洗い、反応を停止させた。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、本発明の化合物1の粗成生物を得た(0.2753 mg ,0.0418 mmol,yield 93%,黄色固体)。
尚、6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ジアゾメチルクマリンは、WO00/31588国際公開パンフレットに記載の方法に準じて合成した。
1H NMR (270 MHz,DMSO-d6)
δ2.21(2H,q,H3’)、2.89(4H,t,2H2’,2H4’)、6.00(H,S,−CH =N)、6.73(H,S,H3)、7.54(H,S,H8)、8.23(H,S,H5)
【0122】
実施例2 グルタル酸 (6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン)-7-イル 2-[4-(6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イルオキシカルボニル)ブチリルオキシ]エチル エステル(Pentanedioic acid (6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen)-7-yl 2-[4-(6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen-7-yloxycarbonyl)butyryloxy]ethyl ester)(本発明の化合物2)の合成
【0123】
(1)グルタル酸 モノ〔2-(4-カルボキシブチリルオキシ)エチル〕エステル(Pentanedioic acid mono[2-(4-carboxybutyryloxy)ethyl] ester)(化合物1)の合成

【0124】
50 ml ナスフラスコに、無水グルタル酸 2.5668 g (22.496 mmol)、ジクロロメタン 20 ml、エチレングリコール 564.5 μl (10.12 mmol),トリエチルアミン 3.245 ml (23.28 mmol)を順次加え、室温で2時間攪拌後、40℃で18.5時間攪拌した。その後、イオン交換樹脂〔ダウケミカル社製、Dowex1×2(50-100メッシュ)〕4.1907 g,9.7724 g,1.4920 gを3回に分けて加え、1回目添加後にジクロロメタンで濾過し、2回目添加後にジクロロメタンで、3回目添加後にメタノールでそれぞれ濾過した。次いで、溶媒を除去し、化合物1の粗生成物を得た(3.036 g,10.46 mmol, 93% yield from 1H NMR)。
1H NMR(270 MHz,CDCl3)
δ1.97(4H,tt,2H3’,2H10’)、2.43(4H,t,2H2’,2H11’, J=7.3Hz)、2.47(4H,t,2H4’,2H9’,J=7.3Hz)、4.31(4H,S,2H6’,2H7’)
【0125】
(2)4-クロロカルボニル酪酸 〔2-(4-クロロカルボニルブチリルオキシ)エチル〕エステル(4-chlorocarbonylbutyric acid [2-(4-chlorocarbonylbutyryloxy)ethyl] ester)(化合物2)の合成

【0126】
100 ml ナスフラスコに、268.8 mg(0.9260 mmol)の上記(1)で得られた化合物1、チオニルクロライド 168.8 μl(2.3151 mmol)、DMF 1dropを加え、70〜80℃で2時間攪拌した。その後、チオニルクロライド 、DMF、HClを除去し、1H NMRから化合物2の粗生成物を得た(296.9 g,0.9075 mmol,98 %,白色固体)。
1H NMR(270 MHz,CDCl3)
δ2.05(4H,tt,2H3’,2H10’)、2.45(4H,t,2H2’,2H11’, J=7.3Hz)、2.75(4H,t,2H4’,2H9’,J=7.3Hz)、4.31(4H,S,2H6’,2H7’)
【0127】
(3)グルタル酸 (6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン)-7-イル 2-[4-(6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イルオキシカルボニル)ブチリルオキシ]エチル エステル(Pentanedioic acid (6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen)-7-yl 2-[4-(6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen-7-yloxycarbonyl)butyryloxy]ethyl ester)(本発明の化合物2)の合成

【0128】
10 ml ナスフラスコに、61.6 mg (0.219 mmol)の6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ジアゾメチルクマリン、ジクロロメタン 3 mlを加えた。この溶液にトリエチルアミン 33.6μl(0.241 mmol),上記(2)で得られた化合物2 33.5 μg(0.0991 mmol)を入れ、室温で1日間攪拌した。その後、クロロホルムで希釈し、有機層を蒸留水で洗い、反応を停止させた。硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、本発明の化合物2の粗生成物を得た(82.4 mg, 0.101 mmol,yield 92%,黄色固体)。
尚、6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ジアゾメチルクマリンは、WO00/31588国際公開パンフレットに記載の方法に準じて合成した。
1H NMR (270 MHz,DMSO-d6)
δ2.05(4H,tt,2H3’,2H10’)、2.45(4H,t,2H2’,2H11’, J=7.3Hz)、2.75(4H,t,2H4’,2H9’,J=7.3Hz)、4.31(4H,S,2H6’,2H7’)、5.95(H,S,−CH=N)、6.69(H,S,H3)、7.45(H,S,H8)、8.17(H,S,H5)
【0129】
実施例3 3,3-ジメチルグルタル酸 (6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン)-7-イル 2-[4-(6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イルオキシカルボニル)-3,3-ジメチルブチリルオキシ]エチル エステル(3,3-dimethylpentanedioic acid (6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen)-7-yl 2-[4-(6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen-7-yloxycarbonyl)-3,3-dimethylbutyryloxy]ethyl ester)(本発明の化合物3)の合成
【0130】
(1)3,3-ジメチルグルタル酸 モノ〔2-(4-カルボキシ-3,3-ジメチルブチリルオキシ)エチル〕エステル(3,3-dimethylpentanedioic acid mono[2-(4-carboxy-3,3-dimethylbutyryloxy)ethyl] ester)(化合物3)の合成

【0131】
50 ml ナスフラスコに、無水ジメチルグルタル酸 4.3785 g (30.799 mmol)を入れ、ジクロロメタン 20 ml、エチレングリコール 837.0 μl (15.00 mmol),トリエチルアミン 4.939 ml (35.42 mmol)を順次加え、室温で2時間攪拌後、40℃で24時間攪拌した。その後、室温に戻し、イオン交換樹脂〔ダウケミカル社製、Dowex1×2(50-100メッシュ)〕6 gを加え、ジクロロメタンで濾過した。次いで、溶媒を除去し、化合物3の粗生成物を得た(4.5085 g ,13.009 mmol, 88% yield from 1H NMR)。
1H NMR(270 MHz,CDCl3)
δ=1.15(12H,s,3’−2CH3,10’−2CH3)、2.48(4H,s,2H2’,2H11)、2.51(4H,s,2H4’,2H9’)、4.28(4H,s,2H6’,2H7’)
【0132】
(2)4-クロロカルボニル-3,3-ジメチル酪酸 〔2-(4-クロロカルボニル-3,3-ジメチルブチリルオキシ)エチル〕エステル(4-chlorocarbonyl-3,3-dimethylbutyric acid [2-(4-chlorocarbonyl-3,3-dimethylbutyryloxy)ethyl] ester)(化合物4)の合成

【0133】
100 ml ナスフラスコに、299.7 mg(0.9260 mmol)の上記(1)で得られた化合物3、チオニルクロライド158 μl(2.3151 mmol)、DMF 1dropを加え、70〜80℃で2時間攪拌した。その後、チオニルクロライド、DMF、HClを除去し、化合物4の粗生成物を得た(309.1 mg ,13.009 mmol, 88% yield from 1H NMR)。
1H NMR(270 MHz,CDCl3)
δ=1.15(12H,s,3’-2CH3,10’-2CH3)、2.47(4H,s,2H2’,2H11’)、3.15(4H,s,2H4’,2H9’)、4.29(4H,s,2H6’,2H7’)
【0134】
(3)3,3-ジメチルグルタル酸 (6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン)-7-イル 2-[4-(6-ブロモ-4-ジアゾメチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イルオキシカルボニル)-3,3-ジメチルブチリルオキシ]エチル エステル(3,3-dimethylpentanedioic acid (6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen)-7-yl 2-[4-(6-bromo-4-diazomethyl-2-oxo-2H-chromen-7-yloxycarbonyl)-3,3-dimethylbutyryloxy]ethyl ester)(本発明の化合物3)の合成

【0135】
10 ml ナスフラスコに、28.27 mg(0.0737 mmol)の上記(2)で得られた化合物4、ジクロロメタン 1 ml、トリエチルアミン 33.9 μl(0.243 mmol)、6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ジアゾメチルクマリン62.2 mg(0.2213 mmol)を加え、40 ℃で24時間攪拌した。その後、室温に戻し、水を1 ml加え、クロロホルムとジクロロメタンで交互に抽出し、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、本発明の化合物3の粗生成物を得た(55.5 mg ,0.0636 mmol, 87% yield from 1H NMR)。
尚、6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ジアゾメチルクマリンは、WO00/31588国際公開パンフレットに記載の方法に準じて合成した。
1H NMR(270 MHz,DMSO)
δ= 1.08 (12H,s,3'−2CH3 and 10'−2CH3)、2.68 (4H,s,H2' and H11')、3.22 (4H,s,H4' and H9')、4.19 (4H,s,H6' and H7')、5.85 (H,s,−CH=N)、6.60 (H,s,H3)、7.30 (H,s,H8)、8.06 (H,s,H5)
【0136】
実施例4 本発明の化合物による二本鎖RNAの架橋
本発明の化合物が二本鎖RNAを架橋するか否かについて確認した。
(1)架橋剤溶液
実施例3で得られた本発明の化合物3を21.1 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを架橋剤溶液とした。
(2)試料
下表1の組成となるように、架橋剤溶液若しくはDMSOと、siRNA(二本鎖RNA)溶液(20μM siRNA含有TE干渉液)とを混合し、8時間遮光条件で静置した。これらの試料のうち、試料No.5及び6については、Southern N.E. Ultraviolet社製 Rayonet Photochemical Reactor 装置を用いて3分間UV(350nm)を照射した。
その後、各試料に5%ホルムアミド 2μlを加え、試料No.2、4及び6については、これを65℃で15分間加熱した後、10分間氷中で静置したものを試料とした。
尚、siRNAはGFPをターゲットとする下記の塩基配列からなる22 bpのもの(QIAGEN社製)を使用した。
5'- GCAAGCUGACCCUGAAGUUCAU-3'
3'-GCCGUUCGACUGGGACUUCAAG -5'
【0137】
【表1】

【0138】
(3)電気泳動
上記(2)で得られた各試料に、2μlのサンプルバッファー(グリセリン 3ml、O.5M EDTA-HCl水溶液(pH8.0) 0.1ml及び精製水6.9mlを混合して調製したもの)を加え混合した後、BIO CRAFT社製のMODEL BE-211電気泳動装置、20%ポリアクリルアミドゲル及び×1 TBEバッファーを用いて、7mA(定電流)で1時間電気泳動した。
その後、当該ゲルをSYBR GOLD(Molecular Probes社製)で染色し、トランスイルミネーター(フナコシ社製)で観察した。
【0139】
(4)結果
結果を図1に示す。尚、図中のレーンNo.1は試料No.6を用いた場合の結果を、レーンNo.2は試料No.4を用いた場合の結果を、レーンNo.3は試料No.5を用いた場合の結果を、レーンNo.4は試料No.3を用いた場合の結果を、レーンNo.5は試料No.2を用いた場合の結果を、レーンNo.6は試料No.1を用いた場合の結果をそれぞれ示し、「dsRNA→」は二本鎖RNAの泳動位置を、また、「ssRNA→」は一本鎖RNAの泳動位置をそれぞれ示す。
【0140】
図1から明らかなように、レーンNo.5及び6の結果から、本発明の化合物(架橋剤)と反応させていない二本鎖RNA(siRNA)(レーンNo.5:試料No.2)は熱変性に耐えられず、一本鎖に解離していることが判る。これに対して、本発明の化合物(架橋剤)と反応させた二本鎖RNA(siRNA)(レーンNo.2:試料No.4)は、UVを照射しなければ熱変性させたにもかかわらず二本鎖を保っていることが、本発明の化合物(架橋剤)と反応させた後、UVを照射し、更に加熱したもの(レーンNo.1:試料No.6)は一本鎖に解離していることがそれぞれ判る。
以上のことから、本発明の化合物(架橋剤)は二本鎖RNA(siRNA)を架橋し、UVを照射することによりその架橋が外れることが明らかであり、更に、この架橋によって、二本鎖RNAの熱安定性が高まることが判る。
【0141】
実施例5 本発明の化合物によるRNAi効果抑制能力の確認
(1)試薬
・HeLa細胞(American Type Culture Collection (ATCC, Rockville, MD))
・DMEM培地(日水製薬(株)製、ダルベッコ改変イーグル培地ニッスイ2)
・Opti-MEM培地(GIBCO社製)
・トリプシン溶液(2.5mgトリプシン含有0.38mg/ml EDTA水溶液:GIBCO社製)
・リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)
・pEGFP-N1ベクター溶液
pEGFP-N1ベクター(CLONTEC社製、BD Living colors)が1714μg/mlとなるようにTE緩衝液に溶解したものを使用した。
・pDsRed2-N1ベクター溶液
pDsRed2-N1ベクター(CLONTEC社製、BD Living colors)が1612μg/mlとなるようにTE緩衝液に溶解したものを使用した。
・siRNA溶液:
下記の配列からなる二本鎖RNA(EGFP遺伝子を標的としたもの)を200nMの濃度となるように水に溶解したものを使用した。
5'- GCAAGCUGACCCUGAAGUUCAU-3'
3'-GCCGUUCGACUGGGACUUCAAG -5'
・架橋剤溶液:
実施例1〜3で得られた本発明の化合物1〜3を、それぞれ4 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを架橋剤溶液とした。
【0142】
(2)トランスフェクション用Hela細胞の調製
24穴プレートに3×104 個/wellとなるようにHeLa細胞(Hela細胞及び10% FBS含有DMEM培地 500 μl)をまいた。24時間後に、古い培地を除去し、Hela細胞をPBS(−)溶液で洗浄した後、当該PBS(−)溶液を除去し、1wellあたり10% FBS含有DMEM培地 500 μlを加えた。これをトランスフェクション用Hela細胞プレートとした。
【0143】
(3)トランスフェクション用試料の調製
i)siRNAの架橋
下表2に示すように、架橋剤溶液 0.2μl及びsiRNA溶液 0.20μlを混合し、8時間遮光条件で静置した。これらのうち、No.2、4及び6については、Southern N.E. Ultraviolet社製 Rayonet Photochemical Reactor装置を用いて3分間UV(350nm)を照射した。
【0144】
【表2】

【0145】
ii)試料の調製
下表3に示すように、Opti-MEM培地 90μl、pRGFPベクター溶液 0.36μl、pDsRedベクター溶液 0.60μl及び上記i)で調製した反応液 0.40μlを混合し、15分間静置し、これをトランスフェクション用試料とした。
また、i)で調製した反応液の代わりに、siRNA溶液(本発明の化合物で架橋されていない二本鎖RNA) 0.20μlを用いて上記と同様の操作を行ったものを対照試料とした。
尚、ここで、pEGFP 0.36 μl中には617 ngのpEGFPが、pDsRed 0.60μl中には985 ngのpDsRedが、200nM siRNA 0.20 μl中には62.6 pgのsiRNAがそれぞれ含有している。
【0146】
【表3】

【0147】
(4)トランスフェクション
Opti-MEM培地 9.2μlにリポフェクトアミン2000 0.8μlを加えて10分間静置した。
次いで、これと、上記ii)で得られたトランスフェクション用試料を混合し、20分間静置した。
得られた混合液を、上記(2)で調製したトランスフェクション用Hela細胞プレートに加え、CO2インキュベーター(NAPCO社製、Automatic CO2 Incubators 5400)を用いて、37℃で48時間で培養した。
【0148】
(5)結果
培養後、細胞の透過像、EGFP及びDsRedの蛍光像の観察を行った。
Meta Morph解析ソフト(Meta Imaging Software社製)を用いて、EGFP及びDsRedそれぞれの蛍光エリアのトータル面積を求め、EGFP/DsRed比を求めた。
その結果を図2に示す。
尚、図2は、当該解析ソフトを用いて一定面積あたりのEGFP発現細胞の面積とDsRed発現細胞の面積をカウントし、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とし、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【0149】
図2の結果から明らかなように、本発明の化合物は何れもsiRNAと結合することによって、siRNAのRNAi効果を抑制し得ること、更に、UVの照射によってそのRNAi抑制を回復し得ることが判る。なかでも本発明の化合物2及び3はRNAi効果の抑制作用が高く、その作用は本発明の化合物3が最も高いことが判る。
【0150】
実施例6 本発明の化合物とsiRNAとの反応時間の検討
(1)試薬
架橋剤溶液として、実施例3で得られた本発明の化合物3を4 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを使用した以外は、実施例5と同じものを使用した。
【0151】
(2)トランスフェクション用Hela細胞の調製
実施例5と同じ方法で調製した。
【0152】
(3)トランスフェクション用試料の調製
i)siRNAの架橋
架橋剤溶液 0.2μl及びsiRNA溶液 0.20μlを混合し、0時間、1時間、2時間、4時間、8時間又は24時間遮光条件で静置した。
【0153】
ii)試料の調製
下表4に示すように、Opti-MEM培地 90μl、pRGFPベクター溶液 0.36μl、pDsRedベクター溶液 0.60μl及び上記i)で調製した反応液 0.40μlを混合し、15分間静置し、これをトランスフェクション用試料とした。
また、i)で調製した反応液の代わりに、siRNA溶液(本発明の化合物で架橋されていない二本鎖RNA) 0.20μlを用いて上記と同様の操作を行ったものを対照試料とした。
尚、ここで、pEGFP 0.36 μl中には617 ngのpEGFPが、pDsRed 0.60μl中には985 ngのpDsRedが、200nM siRNA 0.20 μl中には62.6 pgのsiRNAがそれぞれ含有している。
【0154】
【表4】

【0155】
(4)トランスフェクション
実施例5と同様に行った。
【0156】
(5)結果
培養後、細胞の透過像、EGFP及びDsRedの蛍光像の観察を行った。
Meta Morph解析ソフト(Meta Imaging Software社製)を用いて、EGFP及びDsRedそれぞれの蛍光エリアのトータル面積を求め、EGFP/DsRed比を求めた。
その結果を図3に示す。
尚、図3は、当該解析ソフトを用いて一定面積あたりのEGFP発現細胞の面積とDsRed発現細胞の面積をカウントし、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とし、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【0157】
図3の結果から明らかなように、siRNAによりEGFPの発現は9.0 %まで抑制されることが判った。また、siRNAと本発明の化合物3との反応時間が短いと反応が進まず、siRNAを充分に架橋できないこと、更に、反応時間8時間と24時間の間では有意差が認められないことから、siRNAと本発明の化合物3との反応時間は8時間前後でプラトーに達することが判った。
【0158】
実施例7 本発明の化合物の有効性の確認
(1)光分解性保護基
(a):本発明の化合物3
(b):3,3-ジメチルグルタル酸 ビス(6-ブロモ-4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン)-7-イル 2-[4-(6-ブロモ-4-メチル-2-オキソ-2H-クロメン-7-イル オキシカルボニル)-3,3-ジメチルブチリルオキシ]エチル エステル(3,3-Dimethylpentanedioic acid (6-bromo-4-methyl-2-oxo-2H-chromen)-7-yl 2-[4-(6-bromo-4-methyl-2-oxo-2H-chromen-7-yloxycarbonyl)-3,3-dimethylbutyryloxy]ethyl ester)(以下、bis-Bhc-CH3と略記する。)

【0159】
6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンを用いた以外は実施例3の方法に従って合成した。
尚、6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-メチルクマリンは、T. Furuta, H. Takeuchi, M. Isozaki, Y. Takahashi, M. Sugimoto, M. Kanehara, T. Watanabe, K. Noguchi, T. M. Dore, M. Iwamura, R. Y. Tsien, Bhc-cNMPs as either water-soluble or membrane-permeant photo-releasable cyclic nucleotides for both one and two-photon excitation, ChemBioChem, 5, 1119-1128 (2004) に記載の方法に準じて合成した。
1H NMR (CD3OD) δ 2.13 (4h, quintet, J=7.3 Hz), 2.41 (6H, s), 2.55 (4H, t, J=7.3 Hz), 2.76 (4H, t, J=7.3 Hz), 4.34 (4H, s), 6.29 (2H, s), 7.15 (2H, s), 7.81 (2H, s); 13C NMR (DMSO-d6) δ 18.65 (q), 19.75 (t), 32.81 (t), 32.95 (t), 62.24 (t), 111.56 (s), 112.57 (d), 115.46 (d), 119.45 (d), 150.17 (s), 150.81 (s), 153.02 (s), 159.68 (s), 169.92 (s), 172.43 (s); IR (ATR) 2953, 1770, 1727, 1396, 1384, 1360, 1147, 1114
【0160】
(c):6-ブロモ-7-ヒドロキシ-4-ジアゾメチルクマリン(以下、Bhc-diazoと略記する。)
WO00/31588国際公開パンフレットに記載の方法に準じて合成した。

【0161】
(2)試薬
架橋剤溶液として、以下のものを使用した以外は実施例5と同じものを使用した。
・本発明化合物3含有架橋剤溶液
実施例3で得られた本発明の化合物3を4 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを使用した。
・bis-Bhc-CH3含有架橋剤溶液
bis-Bhc-CH3を4 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを使用した。
・Bhc-diazo含有架橋剤溶液
Bhc-diazoを8 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを使用した。
【0162】
(3)トランスフェクション用Hela細胞の調製
実施例5と同じ方法で調製した。
(4)トランスフェクション用試料の調製
i)siRNAの架橋
下表5に示すように、架橋剤溶液 0.2μl及びsiRNA溶液 0.20μlを混合し、8時間遮光条件で静置した。これらのうち、No.2、4及び6については、Southern N.E. Ultraviolet社製 Rayonet Photochemical Reactor 装置を用いて3分間UV(350nm)を照射した。
【0163】
【表5】

【0164】
ii)試料の調製
下表6に示すように、Opti-MEM培地 90μl、pRGFPベクター溶液 0.36μl、pDsRedベクター溶液 0.60μl及び上記i)で調製した反応液 0.40μlを混合し、15分間静置し、これをトランスフェクション用試料とした。
また、i)で調製した反応液の代わりに、siRNA溶液(本発明の化合物で架橋されていない二本鎖RNA) 0.20μlを用いて上記と同様の操作を行ったものを対照試料とした。
尚、ここで、pEGFP 0.36 μl中には617 ngのpEGFPが、pDsRed 0.60μl中には985 ngのpDsRedが、200nM siRNA 0.20 μl中には62.6 pgのsiRNAがそれぞれ含有している。
【0165】
【表6】

【0166】
(5)トランスフェクション
実施例5と同様に行った。
【0167】
(6)結果
培養後、細胞の透過像、EGFP及びDsRedの蛍光像の観察を行った。
Meta Morph解析ソフト(Meta Imaging Software社製)を用いて、EGFP及びDsRedそれぞれの蛍光エリアのトータル面積を求め、EGFP/DsRed比を求めた。
その結果を図4に示す。
尚、図4は、当該解析ソフトを用いて一定面積あたりのEGFP発現細胞の面積とDsRed発現細胞の面積をカウントし、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とし、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【0168】
図4から明らかなように、本発明の化合物3は、UV照射を行わなければsiRNA作用を抑制することができ、UV照射によってその抑制が回復することが判る。これに対して、bis-Bhc-CH3は、siRNAと共有結合し得るアゾ基の代わりにメチル基を有しているため、siRNAに結合することができず、UV照射の前後にかかわらず、siRNAの作用を殆ど抑制し得ないことが判る。また、Bhc-diazoは、siRNAと共有結合し得るアゾ基を有しているものの、リンカー部分を有していないので、siRNAの二本鎖を架橋することができず、siRNAの作用を殆ど抑制し得ないことが判る。
以上のことから、siRNAの作用を抑制するためには、光分解性保護基は二本鎖RNAに結合し得る基を有するものであって、且つ、2つの光分解性保護基が二本鎖RNAを架橋し得るようにリンカー部分の両末端に配置された構造を有していることが重要であることが判る。
【0169】
実施例8 in cellでの検討
(1)試薬
実施例6と同じものを使用した。
【0170】
(2)トランスフェクション用Hela細胞の調製
24穴プレートに5×103 個/wellとなるようにHeLa細胞(Hela細胞及び10% FBS含有DMEM 500 μl)をまいた。24時間後に、古い培地を除去し、Hela細胞をPBS(−)溶液で洗浄した後、当該PBS(−)溶液を除去し、1wellあたり10% FBS含有DMEM 500 μlを加えた。これをトランスフェクション用Hela細胞プレートとした。
【0171】
(3)トランスフェクション用試料の調製
i)siRNAの架橋
架橋剤溶液 0.2μl及びsiRNA溶液 0.20μlを混合し、8時間遮光条件で静置した。
ii)試料の調製
下表7に示すように、Opti-MEM培地 90μl、pRGFPベクター溶液 0.36μl、pDsRedベクター溶液 0.60μl及び上記i)で調製した反応液 0.40μlを混合し、15分間静置し、これをトランスフェクション用試料とした。
また、i)で調製した反応液の代わりに、siRNA溶液(本発明の化合物で架橋されていない二本鎖RNA) 0.20μlを用いて上記と同様の操作を行ったものを対照試料とした。
尚、ここで、pEGFP 0.36 μl中には617 ngのpEGFPが、pDsRed 0.60μl中には985 ngのpDsRedが、200nM siRNA 0.20 μl中には62.6 pgのsiRNAがそれぞれ含有している。
【0172】
【表7】

【0173】
(4)トランスフェクション
Opti-MEM培地 9.2μlにリポフェクトアミン2000 0.8μlを加えて10分間静置した。
次いで、これと、上記ii)で得られたトランスフェクション用試料を混合し、20分間静置した。
得られた混合液を、上記(2)で調製したトランスフェクション用Hela細胞プレートに加え、CO2インキュベーター(NAPCO社製、Automatic CO2 Incubators 5400)を用いて、37℃で6時間で培養した。
【0174】
(5)UV照射
培養後、培地を除去し、Hela細胞をPBS(−)溶液で洗浄した後、当該PBS(−)溶液を除去し、1wellあたりOpti-MEM培地 500 μlを加えた。次いで、wellの中央にオリンパス(株)社製、倒立型蛍光顕微鏡IX71(対物レンズ:UPLAPO×10)を用いて1秒間UV(335-385nm)を照射した。
UV照射後、Opti-MEM培地を除去し、1wellあたり10% FBS含有DMEM 500 μlを加え、CO2インキュベーター(NAPCO社製、Automatic CO2 Incubators 5400)を用いて、37℃で42時間で培養した。
【0175】
(6)結果
培養後、細胞の透過像、EGFP及びDsRedの蛍光像の観察を行った。
Meta Morph解析ソフト(Meta Imaging Software社製)を用いて、EGFP及びDsRedそれぞれの蛍光エリアのトータル面積を求め、EGFP/DsRed比を求めた。
その結果を図5に示す。
尚、図5は、当該解析ソフトを用いて一定面積あたりのEGFP発現細胞の面積とDsRed発現細胞の面積をカウントし、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とし、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
また、本発明の化合物3を用いた場合のEGFP及びDsRedの蛍光像の観察を行った結果を図6に示す。
【0176】
図5及び6から明らかなように、UV未照射部分では本発明の化合物3によるsiRNAの架橋が解除されず、siRNAのRNAi効果が抑制されているが、一方、UV照射部分では本発明の化合物3によるsiRNAの架橋が解除され、siRNAのRNAi効果が回復していることが判る。
以上のことから、UV照射部位を絞って、局所的に照射することにより、任意の場所で特異的に本発明の化合物によるsiRNAの架橋を解除することができること、即ち、任意の場所で特異的に遺伝子の発現を抑制し得ることが判る。
【0177】
実施例9 本発明の化合物(架橋剤)と光照射がRNAiに与える影響の確認
本発明の化合物と反応させたsiRNAを導入したものは、EGFPのみトランスフェクションしたものに比べ、発現量が低い。この原因を探るため、本発明の化合物が原因でトランスフェクション効率を低下させているためなのか、あるいはsiRNAをトランスフェクションすることですでにトランスフェクションの効率が低下するのかを確認した。
【0178】
(1)試薬
架橋剤溶液として、実施例3で得られた本発明の化合物3を4 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを使用し、siRNAの他にコントロールsiRNAとして下記の配列から鳴る二本鎖RNA(ルシフェラーゼを標的としたもの)を200nMの濃度となるように水に溶解したコントロールsiRNA溶液を使用した以外は、実施例5と同じものを使用した。
5'- UUCUCCGAACGUGUCACGUdTdT-3'
3'-dTdTAAGAGGCUUGCACAGUGCA -5'
【0179】
(2)トランスフェクション用Hela細胞の調製
実施例5と同じ方法で調製した。
【0180】
(3)トランスフェクション用試料の調製
i)siRNAの架橋
下表8に示すように、架橋剤溶液 0.2μl及びsiRNA溶液 0.20μl又はコントロールsiRNA溶液0.20μlを混合し、8時間遮光条件で静置した。
【0181】
【表8】

【0182】
ii)試料の調製
下表9に示すように、Opti-MEM培地 90μl、pRGFPベクター溶液 0.36μl、pDsRedベクター溶液 0.60μl及び上記i)で調製した反応液 0.40μlを混合し、15分間静置し、これをトランスフェクション用試料とした。
また、i)で調製した反応液の代わりに、siRNA溶液(本発明の化合物で架橋されていない二本鎖RNA) 0.20μl又はコントロールsiRNA溶液(本発明の化合物で架橋されていない二本鎖RNA) 0.20μlを用いて上記と同様の操作を行ったものを対照試料とした。
尚、ここで、pEGFP 0.36 μl中には617 ngのpEGFPが、pDsRed 0.60μl中には985 ngのpDsRedが、200nM siRNA 0.20 μl中には62.6 pgのsiRNAがそれぞれ含有している。
【0183】
【表9】

【0184】
(4)トランスフェクション
Opti-MEM培地 9.2μlにリポフェクトアミン2000 0.8μlを加えて10分間静置した。
次いで、これと、上記ii)で得られたトランスフェクション用試料又は対照試料とを混合し、20分間静置した。
得られた混合液を、上記(2)で調製したトランスフェクション用Hela細胞プレートに加え、CO2インキュベーター(NAPCO社製、Automatic CO2 Incubators 5400)を用いて、37℃で6時間で培養した。
【0185】
(5)UV照射
培養後、培地を除去し、Hela細胞をPBS(−)溶液で洗浄した後、当該PBS(−)溶液を除去し、1wellあたりOpti-MEM培地 500 μlを加えた。次いで、トランスフェクション用試料dが導入されたHela細胞及びトランスフェクション用試料fが導入されたHela細胞をそれぞれ培養したwellにオリンパス(株)社製、倒立型蛍光顕微鏡IX71(対物レンズ:UPLAPO×10)を用いて1秒間UV(335-385nm)を照射した。
UV照射後、Opti-MEM培地を除去し、1wellあたり10% FBS含有DMEM 500 μlを加え、CO2インキュベーター(NAPCO社製、Automatic CO2 Incubators 5400)を用いて、37℃で42時間で培養した。
【0186】
(6)結果
培養後、細胞の透過像、EGFP及びDsRedの蛍光像の観察を行った。
Meta Morph解析ソフト(Meta Imaging Software社製)を用いて、EGFP及びDsRedそれぞれの蛍光エリアのトータル面積を求め、EGFP/DsRed比を求めた。
その結果を図7に示す。
尚、図7は、当該解析ソフトを用いて一定面積あたりのEGFP発現細胞の面積とDsRed発現細胞の面積をカウントし、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とし、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【0187】
図7から明らかなように、コントロールsiRNAのみをトランスフェクトした場合の発現率と、コントロールsiRNAを本発明の化合物3で架橋した場合の発現率は同程度であることが判る。このことから、発現量の低下は、本発明の化合物やsiRNAのトランスフェクト自体によるトランスフェクション効率の低下に起因するものではないこと、即ち、SiRNAが特異的に効果を示すこと、トランスフェクションの効率はsiRNA、さらに本発明の化合物によって低下しないことが確認できた。
【0188】
実施例10 本発明の化合物3による内因性遺伝子の光制御の検討
(1)試薬
・HeLa細胞(American Type Culture Collection (ATCC, Rockville, MD))
・DMEM培地(日水製薬(株)製、ダルベッコ改変イーグル培地ニッスイ2)
・Opti-MEM培地(GIBCO社製)
・トリプシン溶液(2.5mgトリプシン含有0.38mg/ml EDTA水溶液:GIBCO社製)
・リポフェクトアミン2000(Invitrogen社製)
・siRNA溶液:
下記の配列からなる二本鎖RNA(Lamin B1遺伝子を標的としたもの)を20nMの濃度となるように水に溶解したものを使用した。
5'- CGCGCUUGGUAGAGGUGGAdTdT-3'
3'-dTdTGCGCGAACCAUCUCCACCU -5'
・架橋剤溶液:
実施例3で得られた本発明の化合物3を40 μMの濃度となるようにDMSO溶液に溶解したものを架橋剤溶液とした。
【0189】
(2)トランスフェクション用Hela細胞の調製
24穴プレートに1×103 個/wellとなるようにHeLa細胞(Hela細胞及び10% FBS含有DMEM 500 μl)をまいた。24時間後に、古い培地を除去し、Hela細胞をPBS(−)溶液で洗浄した後、当該PBS(−)溶液を除去し、1wellあたり10% FBS含有DMEM 500 μlを加えた。これをトランスフェクション用Hela細胞プレートとした。
【0190】
(3)トランスフェクション用試料の調製
i)siRNAの架橋
架橋剤溶液 4.6μl及びsiRNA溶液 0.46μlを混合し、8時間遮光条件で静置した。
ii)試料の調製
下表10に示すように、Opti-MEM培地 90μl及び上記i)で調製した反応液 5.06μlを混合し、15分間静置し、これをトランスフェクション用試料とした。
また、i)で調製した反応液の代わりに、siRNA溶液(本発明の化合物で架橋されていない二本鎖RNA) 0.46μlを用いて上記と同様の操作を行ったものを対照試料とした。
尚、ここで、20nM siRNA 0.46 μl中には62.6 pgのsiRNAが含有している。
【0191】
【表10】

【0192】
(4)トランスフェクション
実施例8と同様に行った。
【0193】
(5)UV照射
実施例8と同様に行った。
【0194】
(6)結果
培養後、ウエスタンブロット法により、各試料におけるLamnin B1タンパク質量を定量した。
各試料におけるLamin B1タンパク質をウエスタンブロットした結果、及びコントロールとして各試料におけるβ-actinタンパク質をウエスタンブロットした結果を併せて図8に示す。尚、図中のレーンNo.1は試料No.1を用いた場合の結果を、レーンNo.2は試料No.2を用いた場合の結果を、レーンNo.3は試料No.3を用いた場合の結果を、レーンNo.4はsiRNA及び本発明の化合物3が導入されておらず且つUVが照射されていないHela細胞を用いた場合の結果をそれぞれ示す。
また、ウエスタンブロットの結果から、各試料におけるLamnin B1タンパク質量を定量した。
その結果を図9に示す。尚、図9は、siRNAのみをトランスフェクションしたもののLamnin B1タンパク質量を100 %とし、各試料におけるLamnin B1タンパク質量を相対値で示したものである。
【0195】
図8および図9の結果から明らかなように、siRNAの対照ではない遺伝子であるβ-actinはsiRNAの有無、本発明の化合物3の有無及びUV照射の有無にかかわらず何れの場合もその遺伝子が発現されているのが判る。一方、siRNAの対照であるLamin B1は、その発現がsiRNAによって12%まで抑制されること(レーンNo.3)、本発明の化合物3がsiRNAと結合することによってsiRNAのRNAi効果を抑制し得ること(レーンNo.2)、更にUVの照射によって本発明の化合物3によるRNAi抑制が回復し得ること(レーンNo.1)が判る。
以上のことから、本発明の化合物(架橋剤)を用いることによって、外部から導入して過剰発現した遺伝子だけでなく、内因性遺伝子の発現も光照射の有無により制御し得ることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明は、二本鎖核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間、特に二本鎖RNA間を架橋する架橋剤、これらの架橋方法、及び遺伝子発現調節方法並びに遺伝子機能調査方法を提供するものである。
本発明によれば、二本鎖核酸間、核酸−タンパク質又はポリペプチド間、或いはタンパク質又はポリペプチド間、特に二本鎖RNA間の架橋及び架橋の解除を容易に行うことができ、目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で制御し得る。また、従来のケージド化合物では抑制することが困難であった二本鎖RNA(siRNA)のRNAi効果を抑制することができ、目的遺伝子の発現を任意の時期と場所で簡便に制御し得る。
【図面の簡単な説明】
【0197】
【図1】実施例4で得られた、各試料の電気泳動の結果を示す。
【図2】実施例5で得られた、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とした場合の、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【図3】実施例6で得られた、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とした場合の、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【図4】実施例7で得られた、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とした場合の、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【図5】実施例8で得られた、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とした場合の、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【図6】実施例8で得られた、細胞におけるEGFP及びDsRedの蛍光像の観察を行った結果を示す。
【図7】実施例9で得られた、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とした場合の、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。
【図8】実施例10で得られた、ウエスタンブロットの結果を示す。
【図9】実施例10で得られた、EGFPとDsRedをコトランスフェクションした際の発現比率を100 %とした場合の、各試料におけるEGFPの発現量を相対値で示したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸に結合し得る基を有する光分解性保護基を両末端に有する架橋剤。
【請求項2】
両末端に結合した光分解性保護基の、リン酸基と結合して光照射により脱保護反応を生じ得る基を形成し得る基のそれぞれが二本鎖RNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖に結合するのに充分な距離を有するように保持されている請求項1に記載の架橋剤。
【請求項3】
当該距離が、8Å〜50Åである請求項1又は2に記載の架橋剤。
【請求項4】
二本鎖RNAを、RNA鎖のリン酸残基を介して請求項1〜3の何れかに記載の架橋剤で架橋する方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れかに記載の架橋剤を予め結合させた二本鎖RNAに対して、光を照射することを特徴とする遺伝子発現調節方法。
【請求項6】
以下の工程を含む遺伝子発現調節方法。
(a)請求項1〜3の何れかに記載の架橋剤と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、及び
(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程。
【請求項7】
前記(c)の工程の次に、(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、を含む請求項6に記載の遺伝子発現調節方法。
【請求項8】
光が、導入された細胞又は生物の所定の領域に照射される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を含む遺伝子の機能の調査方法。
(a)請求項1〜3の何れかに記載の架橋剤と二本鎖RNAとを接触させて、二本鎖RNAを架橋する工程、
(b)架橋された二本鎖RNAを細胞又は生物に導入する工程、
(c)導入された細胞又は生物に光を照射する工程、
(c')光照射された細胞又は生物中の遺伝子を発現させる工程、及び
(d)工程(c')で発現した遺伝子と対照とを比較する工程。
【請求項10】
光が、導入された細胞又は生物の所定の領域に照射される、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−238795(P2006−238795A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−58923(P2005−58923)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(000252300)和光純薬工業株式会社 (105)
【Fターム(参考)】