説明

架橋結合タンパク質による活性化シグナルの産生を予測するための方法

本発明は、ヒトインターロイキン−21受容体(IL21R)に特異的に結合する、ヒト結合タンパク質およびその抗原結合断片、ならびにその使用を提供する。本発明はさらに、本発明の結合タンパク質がインビボで作動性活性を獲得し得るかどうか、またサイトカインストームを生じさせ得るかどうかを予測する方法を提供する。さらに、本発明は、いくつかのIL21応答性遺伝子の同定に基づいて、抗IL21R結合タンパク質が中和抗IL21R結合タンパク質であるかどうかを決定するための方法を提供する。結合タンパク質は、例えばIL21R活性のアンタゴニストとして作用することができ、それにより、概して免疫応答を、とりわけIL21Rによって仲介される免疫応答を調整する。
【図1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2008年9月23日に出願された米国仮特許出願第61/099,476号の優先権の利益を主張するものであり、前記出願の内容は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれるものである。
【0002】
発明の分野
本発明は、結合タンパク質がインビボで作動性活性を獲得し得るかどうか、またサイトカインストームを生じさせ得るかどうかを予測する方法に関する。これらの方法は、例えば拮抗的結合タンパク質の架橋により生じる、望ましくない作動性活性の予測および予防において有用である。さらに、本発明に関連する研究は、インターロイキン−21受容体(IL21R)、とりわけヒトIL21Rと結合する、結合タンパク質およびその抗原結合断片、ならびに、IL21Rに関連する活性、例えばIL21応答性遺伝子の発現レベルに対するIL21の効果の調節におけるそれらの使用に焦点を当てた。本明細書において開示される結合タンパク質および関連する方法は、IL21Rに関連する障害、例えば炎症性障害、自己免疫疾患、アレルギー、移植拒絶反応、血液の過剰増殖性障害、および他の免疫系の障害の診断および/または治療において有用である。
【背景技術】
【0003】
関連する背景技術
抗原は免疫応答を開始させ、2つの最大のリンパ球集団であるT細胞およびB細胞を活性化させる。抗原に遭遇した後、T細胞は増殖してエフェクター細胞に分化するが、一方、B細胞は増殖して抗体分泌形質細胞に分化する。これらのエフェクター細胞は、リンパ球および他の細胞型によって分泌される小タンパク質(約30kDa未満)であるサイトカインを分泌し、かつ/またはサイトカインに応答する。
【0004】
ヒトIL21は、IL2、IL4、およびIL5に対する配列相同性を示すサイトカインである(Parrish−Novakら(2000)Nature 408:57〜63)。インターロイキンサイトカイン間では配列相同性は低いにも関わらず、サイトカインは、そのファミリーを代表する「4ヘリックスバンドル」構造という共通のフォールディングを共有する。ほとんどのサイトカインは、クラスIまたはクラスIIのサイトカイン受容体のいずれかと結合する。クラスIIのサイトカイン受容体には、IL10およびインターフェロンに対する受容体が含まれるが、クラスIのサイトカイン受容体には、IL2からIL7、IL9、IL11、IL12、IL13、およびIL15、ならびに造血成長因子、レプチン、および成長ホルモンに対する受容体が含まれる(Cosman(1993)Cytokine 5:95〜106)。
【0005】
ヒトIL21Rは、クラスIのサイトカイン受容体である。ヒトIL21およびその受容体(IL21R)をコードするヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、例えば、国際出願公開WO00/053761およびWO01/085792、上記のParrish−Novakら(2000)、ならびにOzakiら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:11439〜44において記載されている。IL21Rは、IL2受容体のβ鎖およびIL4受容体のα鎖に対して最も高い配列相同性を有する(上記のOzakiら(2000))。リガンドの結合の際、IL21Rは、IL2、IL3、IL4、IL7、IL9、IL13、およびIL15に対する受容体複合体によって共有されている、共通のガンマサイトカイン受容体鎖(γc)と会合する(上記のOzakiら(2000)、Asaoら(2001)J.Immunol.167:1〜5)。
【0006】
IL21Rは、リンパ組織内、とりわけ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、樹状細胞(DC)、およびマクロファージにおいて発現し(上記のParrish−Novakら(2000))、それにより、これらの細胞がIL21に応答することが可能になる(LeonardおよびSpolski(2005)Nat.Rev.Immunol.5:688〜98)。IL21Rが広くリンパに分布していることは、IL21が免疫調節において重要な役割を有することを示す。インビトロでの研究により、IL21が、B細胞、CD4T細胞、CD8T細胞、およびNK細胞の機能を有意に調整することが示されている(上記のParrish−Novakら(2000)、Kasaianら(2002)Immunity 16:559〜69)。最近の証拠によると、IL21介在性のシグナル伝達が抗腫瘍活性を有し得ること(Sivakumarら(2004)Immunology 112:177〜82)、およびIL21がマウスにおいて抗原誘発性の喘息を予防し得ること(Shangら(2006)Cell.Immunol.241:66〜74)が示唆される。
【0007】
自己免疫において、IL21遺伝子の破壊および組換えIL21の注入が、実験的自己免疫性重症筋無力症(EAMG)および実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)の進行をそれぞれ調整することが示されている(Kingら(2004)Cell 117:265〜77、Ozakiら(2004)J.Immunol.173:5361〜71、Vollmerら(2005)J.Immunol.174:2696〜2701、Liuら(2006)J.Immunol.176:5247〜54)。これらの実験系において、IL21介在性のシグナル伝達を操作すると、CD8細胞、B細胞、ヘルパーT細胞、およびNK細胞の機能が直接的に改変されることが示唆されている。したがって、IL21介在性のシグナル伝達経路の操作は、IL21に関連する障害、例えば炎症性障害(例えば、肺の炎症(例えば胸膜炎)、慢性閉塞性肺疾患(COPD))、自己免疫疾患、アレルギー、移植拒絶反応、血液の過剰増殖性障害、および他の免疫系障害を、診断、予防、治療、または改善するための効果的な手段であり得る。したがって、IL21Rアンタゴニスト、例えば抗IL21R結合タンパク質は、IL21に関連する障害を治療するための治療薬として作用し得る。
【0008】
抗IL21R療法の通常の治療目的は、IL21介在性の免疫活性化の阻害であるため、抗IL21R結合タンパク質が、たとえ架橋していても、活性化(または作動性)シグナルを伝達しないことを実証することが重要である。架橋した治療用結合タンパク質の作動性潜在能力に関する懸念は、抗CD28抗体であるTGN1412の静脈内投与に応答する、生命に関わる免疫毒性のサイトカインストームによって増している(Suntharalinghamら(2006)N.Engl.J.Med.355:1018〜28)。1種の炎症性カスケードである、このサイトカインストーム応答は、6人の健康な成人男性において治療の数時間以内に観察された。TGN1412の症例における仮説は、抗体がインビボで架橋し、ヒト対象においてサイトカインストーム応答を誘発したというものであった。臨床研究の後に行われた実験により、インビトロでの強い作動性シグナルが架橋TGN1412によって伝達されたが、可溶性TGN1412によっては伝達されなかったことが実証された(Stebbingsら(2007)J.Immunol.179(5):3325〜31)。TGN1412の経験を踏まえると、結合タンパク質、例えば抗体、とりわけ免疫系細胞上の受容体に対する抗体が、インビボで作動性活性を獲得し得るという懸念がある。したがって、活性化シグナルが架橋抗IL21R結合タンパク質によって伝達され得るかどうかを決定することが、非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、本発明の結合タンパク質がインビボで作動性活性を獲得し得るかどうか、またサイトカインストームまたは他の形態の炎症性カスケードを生じさせ得るかどうかを予測する方法を提供する。さらに、本発明は、いくつかのIL21応答性遺伝子の同定に基づいて、抗IL21R結合タンパク質が中和抗IL21R結合タンパク質であるかどうかを決定するための方法を提供する。本発明は、サイトカインストームおよび/またはIL21応答性に関連する遺伝子の組の同定に少なくとも部分的に関連する、いくつかの他の方法を提供する。さらに、インビトロでの架橋結合タンパク質が、IL21によって活性化される任意の遺伝子(例えば、IL21応答性遺伝子)の遺伝子活性化を誘発するかどうかを決定することによって、治療用結合タンパク質が、IL21Rを介して仲介される活性化シグナルを誘発するかどうかを予測する方法が提供される。本明細書において記載される結合タンパク質は、抗体18A5に由来するものであり、この抗体は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,495,085号において開示されている。本明細書において開示される結合タンパク質は、親18A5抗体よりもはるかに優れた程度の、ヒトおよび/またはマウスIL21Rに対する親和性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、治療用結合タンパク質が、第1の哺乳動物対象に投与されるとサイトカインストームを誘発するかどうかを予測する方法であって、治療用結合タンパク質を第2の哺乳動物対象に投与するステップであって、第2の哺乳動物対象が結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象であるステップ、結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象から血液試料を得るステップ、結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを、未処理の第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルと比較するステップを包含し、結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理の第2の哺乳動物対象における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きいことにより、治療用結合タンパク質が第1の哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発することが示される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、第1の哺乳動物対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、治療用結合タンパク質は、抗IL21R結合タンパク質(例えば、AbA〜AbZ)である。特定の実施形態において、第2の哺乳動物対象は、安全性試験用の動物種の1種(例えば、カニクイザル対象)である。いくつかの実施形態において、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子は、IL4、IL2、IL1β、IL12、TNF、IFNγ、IL6、IL8、およびIL10からなる群から選択される。本方法は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、もしくは少なくとも9つ、またはそれ以上のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含し得る。いくつかの実施形態において、結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定する方法は、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のmRNA発現レベルを測定することを包含する。いくつかの実施形態において、この決定は、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のタンパク質発現レベルを測定すること(例えば、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のサイトカイン放出レベルを測定すること)を包含する。
【0011】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、治療用結合タンパク質が哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発するかどうかを予測する方法であって、哺乳動物対象から血液試料を得るステップ、治療用結合タンパク質を血液試料とインキュベートするステップであって、血液試料が結合タンパク質で処理された血液試料であるステップ、結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトイカインストーム遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを、未処理のまたは陰性対照で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルと比較するステップを包含し、結合タンパク質で処理され血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理のまたは陰性対照で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きいことにより、治療用結合タンパク質が哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発することが示される、方法を提供する。いくつかの実施形態において、結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理のまたは陰性対照で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に小さいことにより、治療用結合タンパク質が哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発しないことが示される。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、ヒト対象である。いくつかの実施形態において、哺乳動物対象は、安全性試験用の動物種の1種(例えば、カニクイザル対象)である。本発明のいくつかの実施形態において、血液試料は、精製末梢血単核球(PBMC)試料である。さらなる実施形態において、治療用結合タンパク質は、抗IL21R結合タンパク質であり、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子は、IL4、IL2、IL1β、IL12、TNF、IFNγ、IL6、IL8、およびIL10からなる群から選択され、本方法は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、または少なくとも9個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含する。いくつかの実施形態において、結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定する方法は、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のmRNA発現レベルを測定することを包含する。いくつかの他の実施形態において、この決定は、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のタンパク質発現レベルを測定すること(例えば、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のサイトカイン放出レベルを測定すること)を包含する。
【0012】
少なくとも1つの実施形態において、本発明は、抗IL21R結合タンパク質が中和抗IL21R結合タンパク質であるかどうかを決定する方法であって、対象の第1の血液試料をIL21リガンドと接触させるステップ、IL21リガンドと接触させた第1の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、対象の第2の血液試料を抗IL21R結合タンパク質の存在下でIL21リガンドと接触させるステップ、抗IL21R結合タンパク質の存在下でIL21リガンドと接触させた第2の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の決定された発現レベルを比較するステップを包含し、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルにおける変化が、抗IL21R結合タンパク質が中和結合タンパク質であることを示す、方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、安全性試験用の動物種の1種)である。いくつかの実施形態において、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子は、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21からなる群から選択される。
【0013】
本発明はまた、抗IL21R結合タンパク質が治療用抗IL21R結合タンパク質であるかどうかを決定する方法であって、対象の第1の血液試料をIL21リガンドと接触させるステップ、IL21リガンドと接触させた第1の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、対象の第2の血液試料を抗IL21R結合タンパク質の存在下でIL21リガンドと接触させるステップ、抗IL21R結合タンパク質の存在下でIL21リガンドと接触させた第2の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および少なくとも1個のIL21応答性遺伝子のこれら2つの発現レベルを比較するステップを包含し、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルにおける実質的な変化が、抗IL21R結合タンパク質が治療用結合タンパク質であることを示す、方法を提供する。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物(例えば、ヒト、サル、安全性試験用の動物種の1種)である。いくつかの実施形態において、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子は、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21からなる群から選択される。
【0014】
本発明はまた、抗IL21R結合タンパク質の薬力学的活性を決定する方法であって、対象の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルの調整を検出することを包含する方法を提供する。この方法の少なくとも1つの実施形態において、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルの調整の検出は、抗IL21R結合タンパク質を対象に投与するステップであって、対象が抗IL21R結合タンパク質で処理されるステップ、抗IL21R結合タンパク質で処理された対象の血液試料をIL21リガンドと接触させるステップ、IL21R結合タンパク質で処理された対象のIL21リガンドと接触させた血液試料における少なくとも1個のIL21R応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および少なくとも1個のIL21応答性遺伝子のこの決定された発現レベルを、IL21リガンドと接触させた血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルと比較するステップであって、血液試料が抗IL21R結合タンパク質で処理されていない対象由来であるステップを包含する。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物(例えば、サル、ヒト)である。いくつかの実施形態において、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子は、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21からなる群から選択される。いくつかのさらなる実施形態において、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子は、CD19、GZMB、PRF1、IL2RA、IFNγ、およびIL6から選択される。
【0015】
本発明はまた、IL21Rに関連する障害を有する試験対象を診断する方法であって、健康な対象と比較した、試験対象の血液試料の免疫細胞における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルの差を検出することを包含する方法を提供する。少なくとも1つの実施形態において、本方法は、健康な対象の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、試験対象の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および少なくとも1個のIL21応答性遺伝子のこれらの発現レベルを比較するステップを包含し、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルの差は、試験対象がIL21Rに関連する障害に罹患していることを示す。いくつかの実施形態において、対象は、哺乳動物(例えば、サル、ヒト)である。いくつかの実施形態において、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子は、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21からなる群から選択される。いくつかのさらなる実施形態において、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子は、CD19、GZMB、PRF1、IL2RA、IFNγ、およびIL6から選択される。いくつかの実施形態において、IL21Rに関連する障害は、自己免疫障害、炎症状態、アレルギー、移植拒絶反応、および血液の過剰増殖性障害からなる群から選択される。
【0016】
本発明はまた、インビトロでの架橋結合タンパク質が、IL21によって活性化される任意の遺伝子(すなわち、IL21応答性遺伝子)の遺伝子活性化を誘発するかどうかを決定することによって、治療用結合タンパク質が、IL21Rを介して仲介される活性化シグナルを誘発するかどうかを予測する方法を提供する。
【0017】
本開示のさらなる態様は、一部は本記載において説明され、一部は本記載から明らかとなり、または本発明の実施により知ることができる。本発明は、特許請求の範囲において説明され、具体的に指摘されており、また、本開示は、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0018】
以下の詳細な説明には、本発明の様々な実施形態の代表的な例が含まれ、これは、特許請求されている本発明を制限するものではない。添付の図面は、この明細書の一部を構成するものであり、本記載と共に、実施形態を説明するためだけに機能し、本発明を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療用結合タンパク質が、第1の哺乳動物対象に投与されるとサイトカインストームを誘発するかどうかを予測する方法であって、
(a)治療用結合タンパク質を第2の哺乳動物対象に投与するステップであって、第2の哺乳動物対象が結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象であるステップ、
(b)結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象から血液試料を得るステップ、
(c)結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および
(d)結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを、未処理の第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルと比較するステップ
を包含し、結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理の第2の哺乳動物対象における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きいことにより、治療用結合タンパク質が第1の哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発することが示される、方法。
【請求項2】
第1の哺乳動物対象がヒト対象である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
治療用結合タンパク質が抗IL21R結合タンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
抗IL21R結合タンパク質がAbSである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第2の哺乳動物対象が、安全性試験用の動物種の1種である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
安全性試験用の動物種の1種がカニクイザル対象である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子が、IL4、IL2、IL1β、IL12、TNF、IFNγ、IL6、IL8、およびIL10からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、または少なくとも9個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
9個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定する方法が、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のmRNA発現レベルを測定することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定する方法が、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のタンパク質発現レベルを測定することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のタンパク質発現レベルを測定することが、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のサイトカイン放出レベルを測定することを包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
治療用結合タンパク質が哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発するかどうかを予測する方法であって、
(a)哺乳動物対象から血液試料を得るステップ、
(b)治療用結合タンパク質を血液試料とインキュベートするステップであって、血液試料が結合タンパク質で処理された血液試料であるステップ、
(c)結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトイカインストーム遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および
(d)結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを、未処理のまたは陰性対照で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルと比較するステップ
を包含し、結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理のまたは陰性対照で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きいことにより、治療用結合タンパク質が哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発することが示される、方法。
【請求項14】
哺乳動物対象がヒト対象である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
哺乳動物対象が、安全性試験用の動物種の1種である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
安全性試験用の動物種の1種がカニクイザル対象である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
血液試料が精製末梢血単核球(PBMC)試料である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
治療用結合タンパク質が抗IL21R結合タンパク質である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
抗IL21R結合タンパク質がAbSである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子が、IL4、IL2、IL1β、IL12、TNF、IFNγ、IL6、IL8、およびIL10からなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、または少なくとも9個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項22】
9個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定する方法が、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のmRNA発現レベルを測定することを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項24】
結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定する方法が、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のタンパク質発現レベルを測定することを包含する、請求項13に記載の方法。
【請求項25】
少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のタンパク質発現レベルを測定することが、少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子のサイトカイン放出レベルを測定することを包含する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
抗IL21R結合タンパク質が中和抗IL21R結合タンパク質であるかどうかを決定する方法であって、
(a)対象の第1の血液試料をIL21リガンドと接触させるステップ、
(b)IL21リガンドと接触させた第1の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、
(c)対象の第2の血液試料を抗IL21R結合タンパク質の存在下でIL21リガンドと接触させるステップ、
(d)抗IL21R結合タンパク質の存在下でIL21リガンドと接触させた第2の血液試料における少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および
(e)ステップ(b)および(d)において決定された、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルを比較するステップ
を包含し、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現レベルにおける変化が、抗IL21R結合タンパク質が中和結合タンパク質であることを示す、方法。
【請求項27】
対象が哺乳動物である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
対象がサルである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
対象がヒトである、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
少なくとも1個のIL21応答性遺伝子が、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21からなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
少なくとも1個のIL21応答性遺伝子がIL2RAである、請求項30に記載の方法。

【図1】図1Aは、2時間、4時間、6時間、または24時間のいずれかの時点における異なる濃度のIL21での(X軸)、6つの検査された遺伝子(CD19、GZMB、IFNγ(IFNG)、IL2RA、IL6、およびPRF1)の遺伝子発現の相対定量(RQ、Y軸)を示す図である。図1Bは、異なる濃度のAbS(X軸)で処理した後の、同一の遺伝子のIL21応答の阻害パーセント(Y軸)を表す図である。
【図2】IL21によって誘発される、インビトロでのタンパク質(図2A)シグナルまたはインビトロでのRNA(図2B)シグナルのいずれかを表す図である。図2Aは、1μg/ウェルのTGN1412で処理した後に報告された応答と比較した、33ng/mLのIL21で処理した後の、5人の個別のヒトドナー(X軸)から得られる末梢血単核球(PBMC)におけるTNFタンパク質シグナルまたはIL8タンパク質シグナルのいずれかの程度(Y軸、刺激/対照)を示す図である。図2Bは、様々な遺伝子転写産物(X軸)の遺伝子活性化に対する、抗CD28抗体またはAbSの効果(IgGTM対照に対する比較で表される)(Y軸、平均log倍率変化)を表す図である。
【図3】インビトロでの結合タンパク質(例えば、抗IL21R抗体)介在性のPBMC活性化を試験するためのスキームを表す図である。
【図4】450nmでのO.D.によって測定された(Y軸)、乾燥被覆プレートおよび抗IgG被覆プレートの両方における、表示された濃度(X軸)でのいくつかの被覆抗体の持続性を実証する確認ELISAから得られる結果を表す図である。
【図5】AbSに応じたRNA発現またはサイトカイン放出の上方調節を決定するための、ヒトドナーから得られるPBMCに対する、架橋AbSのインビトロでの試験に用いられる手順を表す図である。
【図6】5人の個別のヒトドナーから得られるPBMCについてのインビトロでの実験における、サイトカイン放出およびRNA発現に対する架橋AbSの効果を表す図である。図6Aは、20時間の時点での、IFNγ放出の誘発(媒質対照と比較した変化として表される、pg/ml、Y軸)に対する、表示された濃度での架橋AbS、IL21(陽性対照)、ならびにIgGTM、IgG1、およびIgGFc(全て陰性対照)(X軸)の効果を表す図である。図6Bは、乾燥被覆プレートにおいてまたは抗IgG被覆プレートに対して行われる実験による、4時間の時点での、様々な表示されたRNAの発現(Y軸、IgGTM対照と比較した倍率変化)に対する、表示された濃度でのAbSまたはIL21の効果を表す図である。
【図7】LPS刺激またはPHA刺激の効果と比較した、カニクイザルの血液におけるIL2RAおよびTNFαの応答に対するIL21刺激の効果(Y軸、刺激されていない血液に対する、RNA濃度の増大)を表す図である。
【図8】カニクイザルの血液に対するエクスビボでの実験における、IgG対照と比較した、IL21で刺激されたIL2RA発現に対する3つの表示された濃度でのAbSの効果(Y軸、相対的なIL2RA発現レベル(RQ))を表す図である。
【図9】未処理のサルと比較した、AbSで処理されたカニクイザルに対するインビボでの実験における、異なる時点での、TNFαおよびIFNγに対するAbSの効果(Y軸、ベースラインと比較したRNA濃度における変化(ベースラインを1と設定する))を表す図である。結果はまた、2時間のインビトロでの実験における、TNFに対するLPS刺激またはPHA刺激の効果と比較される(挿入図)。AおよびBは、2頭の異なるカニクイザルの全血球を用いた実験を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書において開示される抗IL21R結合タンパク質は、IL21活性の潜在的阻害剤として記載されており、IL21に関連する障害を治療するための有望な治療薬となる。抗IL21R結合タンパク質の、限定はしないがそれらの薬物動態学的および薬力学的活性を含む特性は、2009年5月26日に出願された米国特許出願第12/472,237号、および2008年5月23日に出願された米国仮特許出願第61/055,543号において詳細に記載されており、これらの文献の両方は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0021】
具体的には、いくつかの結合タンパク質、例えば、AbSを含む、本明細書において開示されるAbA〜AbZの範囲内のいくつかは、IL21RとのIL21の相互作用を強力に遮断し、それによりIL21経路またはサイトカインストームを誘発することなく、IL21応答性サイトカインまたはIL21応答性遺伝子の発現を調整する。拮抗的結合タンパク質などのタンパク質アンタゴニストが、投与されると有害な免疫反応を誘発するかどうか、例えばサイトカインストームを誘発するかどうかの決定は、現在では、新たな治療薬の開発および試験における、ならびに/または、管理機関(例えば、米国食品医薬品局)による製品の承認の前、最中、および/もしくは後の、潜在的な治療用製品の安全性プロフィールの評価における、重要なステップであることが理解されている。したがって、本発明は、サイトカインストームの誘発に対する、結合タンパク質、例えば抗体、例えば拮抗性抗IL21R抗体の効果を試験するための新規なアッセイを利用する。結果として、AbSおよび他の結合タンパク質は、本明細書において、サイトカインストームの活性化を誘発しないIL21経路の潜在的阻害剤であることが実証され、したがって、これらの結合タンパク質は、有望な治療標的となる。
【0022】
定義
本発明がさらに容易に理解され得るようにするために、特定の用語をまず定義する。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたり、および明細書の他の箇所で説明される。
【0023】
「インターロイキン−21受容体」または「IL21R」などの用語は、IL21リガンドに結合する、MU−1(例えば、米国特許出願第09/569,384号、ならびに米国特許出願公開第2004/0265960号、第2006/0159655号、第2006/0024268号、および第2008/0241098号を参照されたい)、NILR、またはzalphal1(例えば、国際出願公開WO01/085792、上記のParrish−Novakら(2000)、上記のOzakiら(2000)を参照されたい)としても知られている、クラスIのサイトカインファミリー受容体を言う。IL21Rは、IL2受容体およびIL15受容体が共有するβ鎖ならびにIL4受容体α鎖に相同である(上記のOzakiら(2000))。リガンドが結合すると、IL21Rは共通のガンマサイトカイン受容体鎖(γc)と相互作用すること、およびSTAT1およびSTAT3(上記のAsaoら(2001))またはSTAT5(上記のOzakiら(2000))のリン酸化を誘発することが可能である。IL21Rは、広いリンパ組織分布を示す。「インターロイキン−21受容体」または「IL21R」などの用語はまた、ポリペプチド(好ましくは哺乳動物由来のもの、例えばマウスまたはヒトのIL21R)を言うか、または、文脈上必要な場合は、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、IL21(好ましくは哺乳動物由来のIL21、例えばマウスまたはヒトのIL21R)と相互作用することができ、かつ、(1)天然に生じる哺乳動物IL21Rポリペプチドのアミノ酸配列またはその断片、例えば、配列番号2(ヒト−GENBANK(登録商標)(U.S.Dept.of Health and Human Services、Bethesda、MD)アクセッション番号NP_068570に対応する)または配列番号4(マウス−GENBANK(登録商標)アクセッション番号NP_068687に対応する)で示されるアミノ酸配列またはその断片、(2)配列番号2または配列番号4で示されるアミノ酸配列またはその断片に実質的に相同な、例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%相同なアミノ酸配列、(3)天然に生じる哺乳動物IL21Rヌクレオチド配列またはその断片(例えば、配列番号1(ヒト−GENBANK(登録商標)アクセッション番号NM_021798に対応する)または配列番号3(マウス−GENBANK(登録商標)アクセッション番号NM_021887に対応する)またはその断片)によってコードされるアミノ酸配列、(4)配列番号1または配列番号3で示されるヌクレオチド配列またはその断片に実質的に相同な、例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、または99%相同なヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、(5)天然に生じるIL21Rヌクレオチド配列、例えば配列番号1もしくは配列番号3またはその断片に縮重するヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、またはその断片、あるいは(6)ストリンジェントな条件下、例えば高度にストリンジェントな条件下で、前述のヌクレオチド配列の1つにハイブリダイズするヌクレオチド配列、という特徴の少なくとも1つを有するポリヌクレオチドを言う。さらに、他のヒト以外のおよび哺乳動物以外のIL21Rが、開示される方法において有用であると考えられる。
【0024】
「インターロイキン−21」または「IL21」という用語は、IL2、IL4、およびIL15に対する配列相同性を示し(上記のParrish−Novakら(2000))、かつIL21Rに結合するサイトカインを言う。このようなサイトカインは、そのファミリーの代表である「4ヘリックスバンドル」構造への共通のフォールディングを共有する。IL21は、活性化したCD4T細胞において主に発現し、かつ、NK細胞、B細胞、およびT細胞に対する効果を有することが報告されている(上記のParrish−Novakら(2000)、上記のKasaianら(2002))。IL21がIL21Rに結合すると、IL21Rの活性化により、例えば、STAT5シグナル伝達またはSTAT3シグナル伝達が生じる(上記のOzakiら(2000))。「インターロイキン−21」または「IL21」という用語はまた、ポリペプチド(好ましくは哺乳動物由来のもの、例えばマウスまたはヒトのIL21)を言うか、または、文脈上必要な場合は、このようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドであって、IL21R(好ましくは哺乳動物由来のもの、例えばマウスまたはヒトのIL21R)と相互作用することができ、かつ、(1)天然に生じる哺乳動物IL21のアミノ酸配列もしくはその断片、例えば、配列番号212(ヒト)で示されるアミノ酸配列もしくはその断片、(2)配列番号212で示されるアミノ酸配列もしくはその断片に実質的に相同な、例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、もしくは99%相同なアミノ酸配列、(3)天然に生じる哺乳動物IL21ヌクレオチド配列もしくはその断片(例えば、配列番号211(ヒト)もしくはその断片)によってコードされるアミノ酸配列、(4)配列番号211で示されるヌクレオチド配列もしくはその断片に実質的に相同な、例えば、少なくとも85%、90%、95%、98%、もしくは99%相同なヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列、(5)天然に生じるIL21ヌクレオチド配列もしくはその断片に縮重するヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列、または(6)ストリンジェントな条件下、例えば高度にストリンジェントな条件下で、前述のヌクレオチド配列の1つにハイブリダイズするヌクレオチド配列、という特徴の少なくとも1つを有するポリヌクレオチドを言う。
【0025】
「IL21R活性」などの用語(例えば、「IL21Rの活性」、「IL21/IL21R活性」)は、IL21Rの結合の結果として開始または中断される少なくとも1個の細胞プロセスを言う。IL21R活性には、限定はしないが、(1)リガンド、例えばIL21ポリペプチドとの相互作用、例えば結合と、(2)シグナル変換(「シグナル伝達」とも呼ばれ、これは、特定の刺激に応じて生じる細胞内カスケードについて言う)およびシグナル変換分子(例えば、ガンマ鎖(γc)およびJAK1)との会合もしくはその活性化、ならびに/または、STATタンパク質、例えばSTAT5および/もしくはSTAT3のリン酸化および/もしくは活性化の刺激と、(3)免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞、B細胞、マクロファージ、制御性T細胞(Treg)、および巨核球の、増殖、分化、エフェクター細胞機能、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、および/または生存の調整と、(4)IL21応答性の遺伝子またはサイトカインの発現の調整、例えば、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21などの発現レベルに対するIL21の効果の調整とが含まれる。
【0026】
本明細書において用いられる「結合タンパク質」という用語には、抗原、標的タンパク質、もしくはペプチド、または1つもしくは複数のその断片と結合する、あらゆる天然に生じるタンパク質、組換えタンパク質、合成タンパク質、もしくは遺伝子操作されたタンパク質、またはその組合せが含まれる。本発明に関連する結合タンパク質は、抗体を含み得るか、または少なくとも1個の抗体断片に由来し得る。結合タンパク質は、天然に生じるタンパク質、および/または合成によって改変されたタンパク質を含み得る。本発明の結合タンパク質は、抗原またはその断片に結合して、複合体を形成し、生物学的応答を引き起こし得る(例えば、特定の生物学的活性を作動させる、または前記活性に拮抗する)。結合タンパク質は、単離された抗体断片、抗体の重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖および重鎖の可変領域がペプチドリンカーによって繋がれている、組換え一本鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、ならびに超可変領域を模倣するアミノ酸残基からなる最小認識単位を含み得る。結合タンパク質断片はまた、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、Fc、Fd、Fd’、Fv、および抗体の単一可変ドメイン(dAb)などの、抗体の機能的断片を含み得る。結合タンパク質は、二本鎖または一本鎖であってもよく、かつ、単一の結合ドメインまたは複数の結合ドメインを包含し得る。
【0027】
本明細書において用いられる「抗体」という用語は、指定されたタンパク質もしくはペプチドまたはその断片に対して反応性である免疫グロブリンを言う。適切な抗体には、限定はしないが、ヒト抗体、霊長類化抗体、キメラ抗体、モノクローナル抗体、単一特異的抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体、非特異的抗体、二重特異的抗体、複特異的抗体、ヒト化抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、突然変異抗体、グラフト結合抗体(すなわち、他のタンパク質、放射性標識、細胞毒素にコンジュゲートまたは融合している抗体)、およびインビトロで生成した抗体が含まれる。本発明の抗体は、限定はしないが、マウス、ラット、ヒト、ラクダ、ラマ、魚、サメ、ヤギ、ウサギ、ニワトリ、およびウシを含む、あらゆる種に由来し得る。典型的には、抗体は、所定の抗原、例えば、炎症性障害、免疫障害、自己免疫障害、神経変性障害、代謝障害、および/または悪性障害などの障害に関連する抗原(例えば、IL21R)に特異的に結合する。
【0028】
抗体(免疫グロブリン)を包含する結合タンパク質は、典型的には、それぞれがおよそ25kDaの2つの軽(L)鎖と、それぞれがおよそ50kDaの2つの重(H)鎖とからなる、四量体グリコシル化タンパク質である。ラムダ(λ)およびカッパ(κ)と呼ばれる2つのタイプの軽鎖を、抗体において見ることができる。重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは、A、D、E、G、およびM(すなわち、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM)という5つの主要クラスに割り当てることができ、これらのいくつかはさらに、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2に分割され得る。各軽鎖は、N末端の可変(V)ドメイン(V)および定常(C)ドメイン(C)を含む。各重鎖は、N末端のVドメイン(V)、3つまたは4つのCドメイン(C)、およびヒンジ領域を含む。Vに最も近位のCドメインは、C1と称される。VドメインおよびVドメインは、CDRと呼ばれる超可変配列の3つの領域のための足場を形成する、フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、およびFR4)と呼ばれる、比較的保存された配列の4つの領域からなる。CDRは、抗原との抗体の特異的相互作用に関与する残基のほとんどを含有する。CDRは、CDR1、CDR2、およびCDR3と呼ばれる。重鎖上のCDR構成要素は、H1、H2、およびH3と呼ばれ(本明細書においては、それぞれ、CDR H1、CDR H2、およびCDR H3とも呼ばれる)、一方、軽鎖上のCDR構成要素は、L1、L2、およびL3と呼ばれる(本明細書においては、それぞれ、CDR L1、CDR L2、およびCDR L3とも呼ばれる)。
【0029】
CDR3は、典型的には、抗原結合部位内の分子多様性の最大の原因である。CDR H3は、例えば、2アミノ酸残基という短さのこともあり、または、26アミノ酸を超えることもあり得る。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および3次元立体配座が、当技術分野において周知である。抗体の構造の概説については、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual、Harlowら編、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)を参照されたい。当業者には、各サブユニット構造、例えば、C、V、C、V、CDR、および/またはFR構造が、活性断片を包含することが認識され、前記活性断片は、例えば、抗原に結合するV、V、もしくはCDRサブユニットの部分、すなわち抗原結合断片であるか、または、例えば、Fc受容体および/もしくは補体などに結合する、および/もしくはそれを活性化する、Cサブユニットの部分である。CDRは、典型的には、Kabat CDR(Kabatら(第5版、1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91〜3242において記載されている)を言う。抗原結合部位を特徴付けするための別の標準は、例えばChothiaら(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817、およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜38において記載されている、超可変ループを参照することである。さらに別の標準は、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられる「AbM」定義である(全体として、例えば、Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains in:Antibody Engineering(2001)、KontermannおよびDubel編、Springer−Verlag、Heidelbergを参照されたい)。Kabat CDRに関して記載されている実施形態は、代替として、Chothia超可変ループ、またはAbMによって規定されたループに関する類似の記載された関連を用いて実行することができる。
【0030】
アセンブリおよび体細胞突然変異の後の抗体遺伝子の配列は大きく変化しており、これらの変化した遺伝子は、1010個の異なる抗体分子をコードすると推定される(Immunoglobulin Genes、第2版(1995)Jonioら編、Academic Press、San Diego、CA)。
【0031】
「抗原結合ドメイン」および「抗原結合断片」という用語は、結合タンパク質と抗原との間の特異的結合に関与するアミノ酸を包含する、結合タンパク質の一部(すなわち、結合タンパク質断片)を言う。結合タンパク質によって特異的に認識され結合される抗原の部分は、「エピトープ」と呼ばれる。抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖可変領域(V)および重鎖可変領域(V)を包含し得るが、両方を包含している必要はない。Fd断片は、例えば、2つのV領域を有し、また、無傷の抗原結合ドメインの抗原結合機能を保持することが多い。結合タンパク質の抗原結合断片の例には、限定はしないが、(1)Vドメイン、Vドメイン、Cドメイン、およびC1ドメインを有する一価断片である、Fab断片、(2)ジスルフィド架橋によってヒンジ領域で結合している2つのFab断片を有する二価断片である、F(ab’)断片、(3)2つのVドメインおよび1つのC1ドメインを有するFd断片、(4)抗体の単一アームのVドメインおよびVドメインを有するFv断片、(5)Vドメインを有するdAb断片(例えば、Wardら(1989)Nature 341:544〜46を参照されたい)、(6)単離されたCDR、ならびに(7)一本鎖可変断片(scFv)が含まれる。Fab断片は、定常領域間のジスルフィド結合によって共有結合している、V−C1ドメインおよびV−Cドメインからなる。Fv断片はさらに小さく、非共有結合しているVドメインおよびVドメインからなる。Fv断片の2つのドメインであるVおよびVは、別個の遺伝子によってコードされているが、それらは、組換え方法を用いて、それらが一本のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって繋げることができ、このタンパク質鎖において、V領域およびV領域は、対合して一価分子(scFvとして知られている)を形成する(例えば、Birdら(1988)Science 242:423〜26、Hustonら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879〜83を参照されたい)。これは、非共有結合したドメインが解離する傾向にあることを克服するために行われる。合成ポリペプチドリンカーは、(1)VのC末端をVのN末端に連結するか、または(2)VのC末端をVのN末端に連結する。例えば、15merの(GlySer)ペプチドをリンカーとして用いることができるが、他のリンカーも当技術分野において知られている。抗原結合断片は、当業者に知られている従来の技術を用いて得ることができ、断片は、例えば抗体などの無傷の結合タンパク質と同じように、機能について評価される。
【0032】
当業者に知られている多くの方法が、結合タンパク質またはその抗原結合断片を得るために利用可能である。例えば、抗IL21R抗体を含む抗IL21R結合タンパク質を、組換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照されたい)を用いて作製することができる。モノクローナル抗体もまた、既知の方法に従ったハイブリドーマの生成によって作製することができる(例えば、KohlerおよびMilstein(1975)Nature、256:495〜99を参照されたい)。この様式で形成されるハイブリドーマは、次に、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および表面プラズモン共鳴(BIACORE(商標))分析などの標準的な方法を用いてスクリーニングされ、特定の抗原と特異的に結合する抗体を産生する1つまたは複数のハイブリドーマが同定される。特定された抗原のあらゆる形態を、免疫原として、例えば、組換え抗原、天然に生じる形態、そのあらゆる変異体または断片、およびその抗原ペプチドとして用いることができる。
【0033】
抗体を作製する1つの例示的な方法には、タンパク質発現ライブラリー、例えば、ファージディスプレイライブラリーまたはリボソームディスプレイライブラリーのスクリーニングが含まれる。ファージディスプレイは、例えば、米国特許第5,223,409号、Smith(1985)Science 228:1315〜17、Clacksonら(1991)Nature 352:624〜28、Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581〜97、WO92/018619、WO91/017271、WO92/020791、WO92/015679、WO93/001288、WO92/001047、WO92/009690、およびWO90/002809において記載されている。米国出願第12/472,237号において詳細に記載されているように、本発明に関連するいくつかの抗体は、ファージディスプレイ技術によって作製された。
【0034】
ディスプレイライブラリーの使用に加え、特定された抗原を、ヒト以外の動物、例えば、サル、ニワトリ、および齧歯動物(例えば、マウス、ハムスター、およびラット)を免疫化するために用いることができる。1つの実施形態において、ヒト以外の動物は、ヒト免疫グロブリン遺伝子の少なくとも一部を含む。例えば、ヒトIg遺伝子座の大きな断片を用いて、マウス抗体の産生を欠いたマウス株を遺伝子工学的に作製することが可能である。ハイブリドーマ技術を用いて、所望の特異性を有する遺伝子に由来する抗原特異的モノクローナル結合抗体を、作製および選択することができる(例えば、XENOMOUSE(商標)、Greenら(1994)Nat.Genet.7:13〜21、米国特許第7,064,244号、WO96/034096、およびWO96/033735を参照されたい)。
【0035】
別の実施形態において、結合タンパク質は、ヒト以外の動物から得られ、次に当技術分野において知られている組換えDNA技術を用いて修飾された(例えば、キメラ、ヒト化、脱免疫化)、モノクローナル抗体である。キメラ抗体を作製するための様々なアプローチが記載されている(例えば、Morrisonら(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81(21):6851〜55、Takedaら(1985)Nature 314(6010):452〜54、米国特許第4,816,567号、米国特許第4,816,397号、欧州特許公開EP0171496、欧州特許公開EP0173494、および英国特許GB2177096を参照されたい)。
【0036】
ヒト化結合抗体は、例えば、ヒトの重鎖および軽鎖の遺伝子を発現するが内因性マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の遺伝子は発現することができないトランスジェニックマウスを用いて、作製することができる。Winter(米国特許第5,225,539号)は、本明細書において記載されるヒト化結合タンパク質を調製するために用いることができる例示的なCDRグラフト法を記載している。特定のヒト結合タンパク質のCDRの全てを、非ヒトCDRの少なくとも一部で置き換えてもよく、または、CDRのいくつかのみを、非ヒトCDRで置き換えてもよい。所定の抗原に対するヒト化結合タンパク質の結合に必要なCDRの数を置き換えさえすればよい。
【0037】
ヒト化結合タンパク質またはその断片は、抗原の結合に直接的には関与しないFv可変ドメインの配列を、ヒトFv可変ドメインから得られる同等の配列で置き換えることにより生成させることができる。ヒト化結合タンパク質またはその断片を生成させるための例示的な方法は、例えば、Morrison(1985)Science 229:1202〜07、Oiら(1986)BioTechniques 4:214、ならびに米国特許第5,585,089号、第5,693,761号、第5,693,762号、第5,859,205号、および第6,407,213号によって提供されている。これらの方法には、重鎖または軽鎖の少なくとも1つから得られる免疫グロブリンFv可変ドメインの全てまたは一部をコードする核酸配列の単離、操作、および発現が含まれる。このような核酸は、上記のような、所定の標的に対する結合タンパク質、例えば抗体を産生するハイブリドーマ、および他の供給源から得ることができる。ヒト化結合タンパク質分子をコードする組換えDNAは次に、適切な発現ベクター内にクローニングすることができる。
【0038】
特定の実施形態において、ヒト化結合抗体は、保存的な置換、コンセンサス配列の置換、生殖細胞系の置換、および/または復帰突然変異の導入によって最適化される。このような改変された免疫グロブリン分子は、当技術分野において知られているいくつかの技術のいずれかによって作製することができる(例えば、Tengら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:7308〜73、Kozborら(1983)Immunol.Today 4:7279、Olssonら(1982)Meth.Enzymol.92:3〜16、PCT公開WO92/006193、およびEP0239400を参照されたい)。
【0039】
結合タンパク質またはその断片はまた、ヒトT細胞エピトープの特異的欠失によって、または、例えばWO98/052976およびWO00/034317において開示されている方法による「脱免疫化」によって、修飾することができる。簡潔に述べると、抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメインを、MHCクラスIIに結合するペプチドについて分析することができ、これらのペプチドは、潜在的なT細胞エピトープに相当する(WO98/052976およびWO00/034317において定義されている)。潜在的なT細胞エピトープを検出するために、「ペプチドスレッディング」と呼ばれるコンピュータモデリングアプローチを適用することができ、さらに、例えばWO98/052976およびWO00/034317において記載されているように、ヒトMHCクラスII結合ペプチドのデータベースを、V配列およびV配列内に存在するモチーフについて検索することができる。これらのモチーフは、18個の主要なMHCクラスII DRアロタイプのいずれかに結合し、それにより、潜在的なT細胞エピトープを構成する。検出された潜在的なT細胞エピトープは、可変ドメイン内の少数のアミノ酸残基を置換することにより、または単一アミノ酸の置換により、取り除くことができる。典型的には、保存的な置換が行われる。これだけに限られるわけではないが、ヒト生殖細胞系抗体の配列における1つの位置に共通しているアミノ酸を用い得ることが多い。ヒト生殖細胞系の配列は、例えば、Tomlinsonら(1992)J.Mol.Biol.227:776〜98、Cookら(1995)Immunol.Today 16(5):237〜42、Chothiaら(1992)J.Mol.Biol.227:799〜817、およびTomlinsonら(1995)EMBO J.14:4628〜38において開示されている。V BASEディレクトリは、ヒト免疫グロブリン可変領域配列の包括的なディレクトリを提供する(Tomlinsonら、MRC Centre for Protein Engineering、Cambridge、UKによってまとめられている)。これらの配列は、例えばフレームワーク領域およびCDRについての、ヒト配列の供給源として、用いることができる。例えば米国特許第6,300,064号において記載されているように、コンセンサスヒトフレームワーク領域もまた用いることができる。
【0040】
「ヒト結合タンパク質」という用語には、例えば、Kabatら(第5版、1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、U.S.Department of Health and Human Services、NIH Publication No.91〜3242によって記載されているものを含む、当技術分野において知られているヒト生殖細胞系免疫グロブリンの配列に実質的に対応する可変領域および定常領域を有する、結合タンパク質が含まれる。本発明のヒト結合タンパク質(例えばヒト抗体)には、例えばCDRにおいて、とりわけCDR3において、ヒト生殖細胞系免疫グロブリンの配列によってはコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの、ランダムなもしくは部位特異的な突然変異生成によって、またはインビボでの体細胞突然変異によって導入される突然変異)が含まれ得る。ヒト結合タンパク質は、ヒト生殖細胞系免疫グロブリンの配列によってはコードされないアミノ酸残基で置換された、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の位置を有し得る。
【0041】
結合タンパク質の領域、例えば、抗体の定常領域は、抗体の特性を修飾するため(例えば、Fc受容体の結合、抗体のグリコシル化、システイン残基の数、エフェクター細胞機能、または補体機能の1つまたは複数を、増大または低減させるため)に改変、例えば突然変異させることができる。
【0042】
特定の実施形態において、結合タンパク質は、改変された、免疫グロブリンの定常領域またはFc領域を含有し得る。例えば、結合タンパク質は、エフェクター分子の活性、溶解、補体介在性の活性、結合タンパク質のクリアランス、および結合タンパク質の半減期などの、結合タンパク質のいくつかの免疫機能を制御することができる、補体および/またはFc受容体などのエフェクター分子に、さらに強力に結合し得るか、または前記分子に対するさらなる特異性を有し得る。結合タンパク質(例えばIgG抗体)のFc領域に結合する典型的なFc受容体には、限定はしないが、FcγRI、FcγRII、およびFcRnサブクラスの受容体が含まれ、これには、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシングをされた形態が含まれる。Fc受容体は、例えば、RavetchおよびKinet(1991)Annu.Rev.Immunol.9:457〜92、Capelら(1994)Immunomethods 4:25〜34、ならびにde Haasら(1995)J.Lab.Clin.Med.126:330〜41において概説されている。
【0043】
本明細書において用いられる「単一ドメイン結合タンパク質」という用語には、抗原、タンパク質、またはポリペプチドに結合する、あらゆる単一ドメイン結合足場が含まれる。単一ドメイン結合タンパク質には、抗原またはその断片と結合して、複合体を形成し、生物学的応答を引き起こす(例えば、特定の生物学的活性を作動させるかまたは前記活性に拮抗する)、あらゆる天然タンパク質足場、組換えタンパク質足場、合成タンパク質足場、もしくは遺伝子操作されたタンパク質足場、またはその組合せが含まれ得る。単一ドメイン結合タンパク質は、天然に生じるタンパク質もしくは抗体に由来し得るか、または、それらは、合成により作製するかもしくは組換え技術によって作製することができる。本発明の特定の実施形態において、単一ドメイン結合タンパク質には、CDRが単一ドメインポリペプチドの一部である、結合タンパク質が含まれる。例には、限定はしないが、重鎖結合タンパク質、軽鎖を天然に欠いている結合タンパク質、従来の4本鎖抗体に由来する単一ドメイン結合タンパク質、改変された結合タンパク質、および抗体に由来するもの以外の単一ドメイン足場が含まれる。単一ドメイン結合タンパク質には、当技術分野において知られているあらゆるもの、および、あらゆる今後決定されるかまたは知られる単一ドメイン結合タンパク質が含まれる。単一ドメイン結合タンパク質は、限定はしないが、マウス、ラット、ヒト、ラクダ、ラマ、魚、サメ、ヤギ、ウサギ、ニワトリ、およびウシを含むあらゆる種に由来し得る。本発明の1つの態様において、単一ドメイン結合タンパク質は、魚において見られる免疫グロブリンの可変領域、例えば、サメの血清において見られるNovel Antigen Receptor(NAR)として知られている免疫グロブリンアイソタイプに由来する可変領域に由来し得る。NARの可変領域に由来する単一ドメイン結合タンパク質(IgNAR)を作製する方法は、例えば、WO03/014161およびStreltsov(2005)Protein Sci.14:2901〜09において記載されている。
【0044】
単一ドメイン結合タンパク質にはまた、軽鎖を欠いている重鎖抗体として当技術分野において知られている、天然に生じる単一ドメイン結合タンパク質が含まれる。軽鎖を天然に欠いている重鎖抗体に由来するこの可変ドメインは、従来の4本鎖免疫グロブリンのVと区別するために、本明細書においてはVHHまたはナノボディーとして知られる。このようなVHH分子は、ラクダ科の種において、例えば、ラクダ、ラマ、ヒトコブラクダ、アルパカ、およびグアナコにおいて形成される抗体から得ることができ、ラクダ科動物可変ドメインまたはラクダ化可変ドメインと呼ばれることがある(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、Muyldermans(2001)J.Biotechnology 74(4):277〜302を参照されたい)。ラクダ科に含まれる種以外の他の種もまた、軽鎖を天然に欠いている重鎖結合タンパク質を産生し得る。VHH分子は、IgG分子よりも約10倍小さい。それらは単一ポリペプチドであり、非常に安定であり、極端なpHおよび温度の条件に耐える。さらに、それらは、プロテアーゼの作用に対して耐性であり、これは、従来の抗体には当てはまらない。さらに、VHHのインビトロでの発現により、高収量の、適切にフォールディングした機能的VHHが産生される。さらに、ラクダ科動物において生成した結合タンパク質は、抗体ライブラリーを介してインビトロで生成した、またはラクダ科動物以外の哺乳動物の免疫化を介して生成した抗体によって認識されるもの以外のエピトープを認識する(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、WO97/049805およびWO94/004678を参照されたい)。
【0045】
「二重特異的」結合タンパク質または「二官能性」結合タンパク質は、2つの異なる重鎖/軽鎖対および2つの異なる結合部位を有する、人工ハイブリッド結合タンパク質である。二重特異的結合タンパク質は、ハイブリドーマの融合またはFab’断片の結合を含む、様々な方法によって作製することができる(例えば、SongsivilaiおよびLachmann(1990)Clin.Exp.Immunol.79:315〜21、Kostelnyら(1992)J.Immunol.148:1547〜53を参照されたい)。1つの実施形態において、二重特異的結合タンパク質は、免疫グロブリンの定常領域を介して第2の結合ドメインポリペプチドに結合している、Fab’断片などの第1の結合ドメインポリペプチドを包含する。
【0046】
本発明の結合タンパク質はまた、ペプチド模倣体を包含し得る。ペプチド模倣体は、タンパク質の二次構造の要素を模倣するペプチド含有分子である(例えば、参照することによってその全体が本明細書に組み込まれる、Johnsonら、Peptide Turn Mimetics in:Biotechnology and Pharmacy(1993)Pezzutoら編、Chapman and Hall、New Yorkを参照されたい)。ペプチド模倣体の使用の背後にある内在的な根拠は、タンパク質のペプチド骨格が、抗体と抗原との間の分子相互作用などの分子相互作用を容易にするように、アミノ酸側鎖を正しい方向に向けるために主に存在することである。ペプチド模倣体は、天然分子に類似した分子相互作用を可能にすることが予想される。これらの原理は、本明細書において開示される標的化ペプチドの天然の特性の多くを有するが、改変されており潜在的に改良されている特徴を有する、第2世代分子を改変するために用いることができる。
【0047】
結合タンパク質の他の実施形態には、融合タンパク質が含まれる。これらの分子は通常、N末端またはC末端で第2のポリペプチドまたはタンパク質の全てまたは一部に結合している、標的化ペプチド、例えばIL21Rまたは抗IL21R結合タンパク質の、全てまたはほとんどの部分を有する。例えば、融合タンパク質は、他の種から得られるリーダー配列を採用して、異種宿主におけるタンパク質の組換え発現を可能にし得る。別の有用な融合には、融合タンパク質の精製を容易にするための、結合タンパク質エピトープなどの免疫学的に活性なドメインの付加が含まれる。融合結合部に、またはその付近に切断部位を含めると、精製後の外来ポリペプチドの除去が容易になる。他の有用な融合には、酵素から得られる活性部位、グリコシル化ドメイン、細胞標的化シグナル、または膜貫通領域などの、機能的ドメインの連結が含まれる。融合タンパク質に組み込まれ得るタンパク質またはペプチドの例には、限定はしないが、細胞増殖抑制タンパク質、細胞破壊タンパク質、アポトーシス促進物質、抗血管形成物質、ホルモン、サイトカイン、成長因子、ペプチド薬、抗体、抗体のFab断片、抗原、受容体タンパク質、酵素、レクチン、MHCタンパク質、細胞接着タンパク質、および結合タンパク質が含まれる。融合タンパク質を生成する方法は、当業者に周知である。このようなタンパク質は、例えば、二官能性架橋試薬を用いた化学的接着によって、完全融合タンパク質のデノボ合成によって、または標的化ペプチドをコードするDNA配列を第2のペプチドまたはタンパク質をコードするDNA配列に接着させ、その後、無傷な融合タンパク質を発現させることによって、作製することができる。
【0048】
結合タンパク質はまた、免疫グロブリンのヒンジ領域ポリペプチドまたはヒンジ作用領域ポリペプチドに融合されているか、そうでなければそれに接続されている結合ドメインポリペプチドを含む、結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質を含むことができ、これが次に、C1以外の免疫グロブリン重鎖、例えば、IgGおよびIgAのC2領域およびC3領域、またはIgEのC3領域およびC4領域から得られる、1つまたは複数の天然のまたは改変された定常領域を包含する領域に融合されているか、そうでなければそれに接続されている(例えば、より完全な記載については、Ledbetterら、米国特許出願公開第2005/0136049号を参照されたい)。結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質にはさらに、ヒンジ領域ポリペプチドに融合されているか、そうでなければそれに接続されている、天然のまたは改変された免疫グロブリン重鎖C2定常領域ポリペプチド(または、IgEに全体または一部が由来する構築物の場合ではC3)、および、C2定常領域ポリペプチド(または、IgEに全体または一部が由来する構築物の場合ではC3)に融合されているか、そうでなければそれに接続されている、天然のまたは改変された免疫グロブリン重鎖C3定常領域ポリペプチド(または、IgEに全体または一部が由来する構築物の場合ではC4)を含む領域が含まれ得る。典型的には、このような結合ドメイン−免疫グロブリン融合タンパク質は、抗体依存性細胞介在性細胞傷害性、補体結合反応、および/または標的、例えば標的抗原への結合からなる群から選択される、少なくとも1個の免疫学的活性の能力がある。本発明の結合タンパク質は、限定はしないが、マウス、ラット、ヒト、ラクダ、ラマ、魚、サメ、ヤギ、ウサギ、ニワトリ、およびウシを含むあらゆる種に由来し得る。
【0049】
融合タンパク質の1つの実施形態において、標的化ペプチド、例えばIL21Rは、2つの定常領域ドメインおよび1つのヒンジ領域を含有するが可変領域を欠いている、Fc断片などの免疫グロブリン重鎖定常領域と融合される(例えば、参照することにより本明細書に組み込まれる、米国特許第6,018,026号および第5,750,375号を参照されたい)。Fc領域は、天然に生じるFc領域であってもよく、または、特定の質、例えば治療上の質、循環時間、凝集の低減を向上させるために改変されてもよい。Fc領域に融合されたペプチドおよびタンパク質は、典型的に、融合されていない同等物よりもインビボにおいて優れた半減期を示す。さらに、Fc領域への融合により、融合ポリペプチドの二量体化/多量体化が可能になる。
【0050】
さらなる結合タンパク質/抗体の作製技術については、例えば、Antibodies:A Laboratory Manual、Harlowら編、Cold Spring Harbor Laboratory(1988)を参照されたい。本発明は、結合タンパク質または抗体の任意の特定の供給源、作製方法、または他の特別な特徴に限定される必要はない。
【0051】
さらに、当業者であれば、本明細書において記載される結合タンパク質に対する修飾が網羅的ではないこと、および多くの他の修飾が本開示の教示に照らして当業者に明らかとなることが理解されよう。多くの修飾が、例えば米国特許出願第12/472,237号において詳細に記載されている。
【0052】
「中和」という用語は、シグナル伝達経路または抗原、例えばIL21/IL21Rシグナル伝達経路またはIL21R抗原の活性を低減または遮断する、結合タンパク質またはその抗原結合断片(例えば抗体)について言う。本明細書において用いられる「抗生成物抗体」は、外因性タンパク質に応じて形成される抗体、例えば抗IL21R抗体を言う。本明細書において用いられる「中和抗生成物抗体」は、外部から導入されたタンパク質のインビボでの活性を遮断する抗生成物抗体、例えば、抗IL21R抗体を言う。本発明のいくつかの実施形態において、中和抗生成物抗体は、IL21R抗体のインビボでの活性、例えば、IL21R抗体のインビボでの薬力学的(PD)活性(抗IL21R抗体の、IL21応答性サイトカインまたはIL21応答性遺伝子の発現を調整する能力など)を減少させる。
【0053】
「効果的な量」という用語は、IL21R活性を調節して、臨床症状の重症度を改善もしくは低下させるため、または所望の生物学的結果、例えばT細胞および/もしくはB細胞の活性の低減、自己免疫の抑制、移植拒絶反応の抑制を達成するために十分な、投与量または量を言う。
【0054】
IL21Rの活性を「阻害する」、「拮抗する」、「遮断する」、または「中和する」という表現およびその同種の表現は、抗IL21R結合タンパク質と結合することによる、IL21Rの少なくとも1個の活性の低減、阻害、または減少を言い、低減は、同一の結合タンパク質の非存在下でのIL21Rの活性と比較したものである。IL21R活性は、当技術分野において知られている任意の技術を用いて測定することができる。阻害または拮抗は、必ずしもIL21Rの生物学的活性の完全な排除を示すわけではない。活性における低減は、約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、またはそれ以上であり得る。
【0055】
本発明の1つの実施形態において、IL21Rによって仲介される少なくとも1個の活性は、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21について試験された少なくとも1個の条件下で観察されたRNAレベルの有意な上昇を伴う、遺伝子発現に対するIL21のPBMCにおける効果である。試験した培養物下のPBMCにおいて観察された最も強力なIL21依存性RNA応答は、GZMB、IFNγ、IL2RA、PRF1、およびIL6のものであり、より長時間の試験期間ではIL10のものであった。
【0056】
本明細書において用いられる「調整する」という用語は、少なくとも1個のIL21応答性遺伝子の発現の変化などの、あらゆる実質的な増大を言う。当業者であれば、抗IL21R結合タンパク質の非存在下でIL21がIL21応答性遺伝子の発現レベルを上方調節する場合、IL21R活性の阻害により(例えば、抗IL21R結合タンパク質を用いて)IL21応答性遺伝子の発現が遮断または阻害されることが理解されよう。あるいは、抗IL21R結合タンパク質の非存在下でIL21がIL21応答性遺伝子の発現レベルを低減させる場合、IL21R活性の阻害により、IL21応答性遺伝子の発現が回復または増大する。
【0057】
本明細書において用いる場合、「インビトロで生成した結合タンパク質」、例えば「インビトロで生成した抗体」は、可変領域の全てまたは一部(例えば、少なくとも1個のCDR)が、非免疫細胞選択(例えば、インビトロでのファージディスプレイ、タンパク質チップ、または、候補配列を抗原への結合能力について試験することができる任意の他の方法)において生成する、結合タンパク質/抗体を言う。
【0058】
「単離された」という用語は、その天然の環境を実質的に有さない分子を言う。例えば、単離されたタンパク質は、それが由来した元である細胞源または組織源から得られる、細胞材料または他のタンパク質を実質的に有さない。この用語はまた、単離されたタンパク質が医薬組成物のために実質的に純粋であるか、または少なくとも70〜80%(w/w)の純度、少なくとも80〜90%(w/w)の純度、少なくとも90〜95%(w/w)の純度、または少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、もしくは100%(w/w)の純度である調製物を言う。
【0059】
「同一パーセント」または「パーセント同一性」という表現は、少なくとも2個の異なる配列間の類似性を言う。このパーセント同一性は、標準的なアラインメントアルゴリズム、例えば、Altshulら((1990)J.Mol.Biol.215:403〜10)によって記載されているBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)、Needlemanら((1970)J.Mol.Biol.48:444〜53)のアルゴリズム、またはMeyersら((1988)Comput.Appl.Biosci.4:11〜17)のアルゴリズムによって決定することができる。一組のパラメータは、ギャップペナルティー12、ギャップ伸長ペナルティー4、およびフレームシフトギャップペナルティー5の、Blosum 62スコアリングマトリクスであり得る。2つのアミノ酸配列またはヌクレオチド配列間のパーセント同一性はまた、PAM120重み付き残差表、ギャップ長ペナルティー12、およびギャップペナルティー4を用いて、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれているMeyersおよびMiller((1989)CABIOS 4:11〜17)のアルゴリズムを用いて決定することができる。パーセント同一性は、通常、類似の長さの配列を比較することによって計算される。
【0060】
「レパートリー」という用語は、少なくとも1個の免疫グロブリンをコードする少なくとも1個の配列に完全にまたは部分的に由来する、少なくとも1個のヌクレオチド配列を言う。1つまたは複数の配列は、重鎖のV、D、およびJセグメント、ならびに軽鎖のVおよびJセグメントのインビボでの再配列により生成され得る。あるいは、1つまたは複数の配列は、どの再配列が生じるかに応じて、例えばインビトロでの刺激に応じて、細胞から生成され得る。あるいは、1つまたは複数の配列の一部または全ては、DNAスプライシング、ヌクレオチド合成、突然変異生成、または他の方法(例えば、米国特許第5,565,332号を参照されたい)によって得ることができる。レパートリーは、唯一の配列を含み得るか、または、遺伝的に多様なコレクションにおける配列を含む複数の配列を含み得る。
【0061】
「特異的結合」、「特異的に結合する」などの用語は、生理的条件下で比較的安定な複合体を形成する2つの分子について言う。特異的結合は、低い親和性および中度から高度の能力を通常有する非特異的結合とは区別される、高い親和性および低度から中度の能力によって特徴付けされる。典型的には、結合は、会合定数Kaが約10−1−1よりも高い場合に、特異的であると判断される。必要であれば、結合条件を変化させることによって、特異的結合に実質的に影響することなく非特異的結合を低減させることができる。結合タンパク質の濃度、溶液のイオン強度、温度、結合のために与えられる時間、遮断薬(例えば、血清アルブミンまたはミルクカゼイン)の濃度などの、適切な結合条件を、通常の技術を用いて当業者が向上させることができる。実例的な条件は、本明細書において説明されるが、当業者に知られている他の条件は、この発明の範囲内である。
【0062】
本明細書において用いる場合、「ストリンジェント」、「ストリンジェンシー」などの用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄のための条件を説明する。本発明の単離されたポリヌクレオチドは、開示されるポリヌクレオチドをコードする配列と同一のまたは類似の配列を有する核酸を同定および単離するための、ハイブリダイゼーションプローブおよびハイブリダイゼーションプライマーとして用いることができる。したがって、この様式で単離されたポリヌクレオチドは、IL21Rに対する結合タンパク質を作製するため、またはこのような結合タンパク質を発現する細胞を同定するために用いることができる。核酸を同定および単離するためのハイブリダイゼーション法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、サザンハイブリダイゼーション、in situハイブリダイゼーション、およびノーザンハイブリダイゼーションを含み、当業者に周知である。
【0063】
ハイブリダイゼーション反応は、異なるストリンジェンシーの条件下で行うことができる。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーには、あらゆる2つの核酸分子が互いにハイブリダイズする困難性、およびそれらがハイブリダイズしたままとなる条件が含まれる。好ましくは、ハイブリダイズする各ポリヌクレオチドは、低いストリンジェンシー条件下で、より好ましくはストリンジェントな条件下で、最も好ましくは高度にストリンジェントな条件下で、その対応するポリヌクレオチドにハイブリダイズする。ストリンジェントな条件は、当業者に知られており、例えば、Current Protocols in Molecular Biology、John Wiley & Sons、N.Y.(1989)6.3.1〜6.3.6において見ることができる。水性方法および非水性方法の両方がこの参考文献において記載されており、両方を用いることができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の1つの例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーション、その後の、50℃での0.2×SSC/0.1%SDSにおける少なくとも1回の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件はまた、例えば、55℃、60℃、または65℃での0.2×SSC/0.1%SDSにおける、1回または複数回の洗浄で達成される。高度にストリンジェントな条件には、例えば、65℃での0.5Mリン酸ナトリウム/7%SDSにおけるハイブリダイゼーション、その後の、65℃での0.2×SSC/1%SDSでの少なくとも1回の洗浄が含まれる。ストリンジェンシー条件のさらなる例を、以下の表1において示し、この図において、高度にストリンジェントな条件は、少なくとも例えば条件A〜Fと同様にストリンジェントなものであり、ストリンジェントな条件は、少なくとも例えば条件G〜Lと同様にストリンジェントであり、低いストリンジェンシー条件は、少なくとも例えば条件M〜Rと同様にストリンジェントである。
【0064】
【表1−1】
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【0065】
【表1−2】
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【0066】
本発明の単離されたポリヌクレオチドは、開示されるポリヌクレオチドの対立遺伝子変異体をコードする配列を有するDNAを同定および単離するための、ハイブリダイゼーションプローブおよびハイブリダイゼーションプライマーとして用いることができる。対立遺伝子変異体は、開示されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに同一の、またはそれに対する有意な類似性を有するポリペプチドをコードする、開示されるポリヌクレオチドの、天然に生じる別の形態である。好ましくは、対立遺伝子変異体は、開示されるポリヌクレオチドと少なくとも約90%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも約95%の同一性、最も好ましくは、少なくとも約99%の同一性)を有する。本発明の単離されたポリヌクレオチドはまた、開示されるポリヌクレオチドに相同なポリペプチドをコードする配列を有するDNAを同定および単離するための、ハイブリダイゼーションプローブおよびハイブリダイゼーションプライマーとして用いることができる。これらの相同体は、開示されるポリペプチドおよびポリヌクレオチドの種とは異なる種から単離されるか、または同一の種内で単離されるが、開示されるポリヌクレオチドおよびポリペプチドに対する有意な配列類似性を有するポリヌクレオチドおよびポリペプチドである。好ましくは、ポリヌクレオチド相同体は、開示されるポリヌクレオチドと少なくとも約50%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも約75%の同一性、最も好ましくは、少なくとも約90%の同一性)を有する一方で、ポリペプチド相同体は、開示される結合タンパク質/ポリペプチドと少なくとも約30%の配列同一性(より好ましくは、少なくとも約45%の同一性、最も好ましくは、少なくとも約60%の同一性)を有する。好ましくは、開示されるポリヌクレオチドおよびポリペプチド相同体は、哺乳動物種から単離されるものである。本発明の単離されたポリヌクレオチドはさらに、本発明の結合タンパク質を発現する細胞および組織、ならびにそれらが発現する条件を特定するための、ハイブリダイゼーションプローブおよびハイブリダイゼーションプライマーとして用いることができる。
【0067】
「実質的に示されているような」、「実質的に同一な」、および「実質的に相同の」という表現は、関連するアミノ酸配列またはヌクレオチド配列(例えば、1つまたは複数のCDR、1つまたは複数のVドメインまたはVドメイン)が、示されている配列と比較して、同一であるかまたはごくわずかな差を有する(例えば、保存されたアミノ酸置換による)ことを意味する。ごくわずかな差には、特定の領域の5つのアミノ酸からなる配列における1つまたは2つの置換などの、アミノ酸のわずかな変化が含まれる。例えば、抗体の場合では、第2の抗体は同一の特異性を有し、第1の抗体の親和性の少なくとも約50%を有する。
【0068】
本明細書において開示される配列に実質的に同一または相同である配列もまた、この出願の一部である。いくつかの実施形態において、配列同一性は、約85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上であり得る。あるいは、実質的な同一性または相同性は、核酸セグメントが、選択的ハイブリダイゼーション条件(例えば、高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件)下で鎖の相補体にハリブリダイズする場合に存在する。核酸は、細胞全体として、細胞溶解物として、または、部分的に精製されているかもしくは実質的に純粋な形態で存在し得る。
【0069】
「治療薬」などの用語は、医学的障害またはその症状を治療する、またはその治療において役立つ物質である。治療薬には、限定はしないが、抗IL21R結合タンパク質の使用を補完するように免疫細胞または免疫応答を調整する物質が含まれ得る。本発明の1つの実施形態において、治療薬は、治療用結合タンパク質、例えば治療用抗体、例えば抗IL21R抗体である。本発明の別の実施形態において、治療薬は、治療用結合タンパク質、例えば抗IL21Rナノボディーである。治療薬の非限定的な例および使用が、本明細書において記載される。
【0070】
本明細書において用いる場合、抗IL21R結合タンパク質の「治療上効果的な量」は、障害または再発性障害の少なくとも1個の症状を治療する、予防する、治癒する、遅らせる、その重症度を低減させる、および/もしくは改善するため、または、このような治療の非存在下で予想される生存よりも対象の生存を延ばすための、対象(ヒト患者など)に対する単回投与または複数回投与の際に効果的な、結合タンパク質の量を言う。1つの実施形態において、治療上効果的な量は、少なくとも1個のIL21応答性サイトカインまたはIL21応答性遺伝子の発現を調整するために十分な、抗IL21R結合タンパク質の量であり得る。
【0071】
「安全性試験用の動物種」という用語は、所望の生物学的活性を有する結合タンパク質を有し、安全性についての別の哺乳動物種との有効な比較が可能である種を言う。例えば、適切な安全性試験用の動物種は、霊長類動物、例えばカニクイザルであり得る。
【0072】
「治療」という用語は、治療的または予防的な手段を言う。治療は、障害または再発性障害の1つまたは複数の症状を予防する、治癒する、遅らせる、その重症度を低減させる、および/もしくは改善するため、または、このような治療の非存在下で予想される生存よりも対象の生存を延ばすために、医学的障害を有するかまたは最終的にその障害を獲得し得る対象に行われ得る。
【0073】
「サイトカインストーム」という用語は、引き続いて様々なサイトカインのレベルを非常に上昇させる、サイトカインと免疫細胞との間の正のフィードバックループを包含する、深刻なおよび潜在的に致命的な免疫反応をもたらす一連の事象を言う。サイトカインストーム中に誘発されるサイトカインには、例えば、IL4、IL2、IL1β、IL12、TNF、IFNγ、IL6、IL8、およびIL10のうちの1つまたは複数が含まれる。
【0074】
抗IL21R結合タンパク質
本願の開示は、さらに米国出願第12/472,237号(参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる)の開示と併せて、新規な抗原結合断片を包含する新規な抗IL21R結合タンパク質を提供する。この開示はまた、ヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーに由来している新規なCDRを提供する。CDRを坦持させるために通常用いられるタンパク質構造は、天然に生じるCDRに関連する領域にCDRが位置する、抗体の重鎖もしくは軽鎖またはその一部である。可変ドメインの構造および位置は、Kabatら((1991)、上記)において記載されているように決定することができる。
【0075】
本発明に関連する結合タンパク質(およびその抗原結合断片)の実例的な実施形態は、AbA〜AbU、H3〜H6、L1〜L6、L8〜L21、およびL23〜L25として同定される。抗IL21R結合タンパク質のこれらの非限定的な実例的な実施形態のDNA配列およびアミノ酸配列は、配列番号5〜195、213〜229、および239〜248で示される。そのscFv断片、Vドメイン、Vドメイン、およびCDR、ならびにそれらの現在のコードおよびこれまでの呼称を含む、抗IL21R結合タンパク質のいくつかの実例的な実施形態のDNA配列およびアミノ酸配列が、表2Aおよび2Bにおいて示され、米国特許出願第12/472,237号(参照することにより本明細書に組み込まれる)において詳細に記載されている。
【0076】
【表2】
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【0077】
【表3−1】
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【0078】
【表3−2】
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【0079】
本発明は、IL21R、とりわけヒトIL21Rに結合する、単離された結合タンパク質またはその抗原結合断片を含む、任意の数の結合タンパク質に適用することができる。特定の実施形態において、抗IL21R結合タンパク質、例えば抗IL21R抗体は、米国特許出願第12/472,237号(参照することにより本明細書に組み込まれる)において詳細に記載されている、薬物動態学的特徴および薬力学的特徴を含むいくつかの特徴の少なくとも1つを有し得る。例えば、抗IL21R結合タンパク質は、IL21応答性サイトカインもしくはIL21応答性遺伝子の発現を調整することができ、かつ/または、前記タンパク質は、対象、例えばヒトもしくはカニクイザル対象に投与される場合、サイトカインストーム遺伝子を活性化させない可能性がある。
【0080】
抗IL21R結合タンパク質の治療的使用
IL21Rに対するアンタゴニストとして作用する抗IL21R結合タンパク質は、細胞増殖と、サイトカインの発現または分泌と、ケモカインの分泌と、T細胞、B細胞、NK細胞、マクロファージ、または滑膜細胞の細胞溶解活性との1つまたは複数などの、少なくとも1個のIL21R介在性免疫応答を調整するために用いることができる。したがって、開示される結合タンパク質は、免疫細胞または造血細胞(例えば、骨髄系、リンパ系、もしくは赤血球系の細胞、またはその前駆細胞)の活性(例えば、増殖、分化、および/または生存)を阻害するために用いることができ、したがって、例えば、様々な免疫障害、血液の過剰増殖性障害、および急性期反応を治療するために用いることができる。治療され得る免疫障害の例には、限定はしないが、移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、アレルギー(例えば、アトピー性アレルギー)、および自己免疫疾患が含まれる。自己免疫疾患には、糖尿病、関節障害(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、変形性関節症、乾癬性関節炎、および強直性脊髄炎を含む)、脊椎関節症、多発性硬化症、脳脊髄炎、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹様皮膚炎を含む)、乾癬、シェーグレン症候群、IBD(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、喘息(内因性喘息およびアレルギー性喘息を含む)、強皮症、および血管炎が含まれる。
【0081】
抗IL21R結合タンパク質の診断的使用
結合タンパク質はまた、生物学的試料におけるIL21Rの存在を検出するために用いることができる。これらの結合タンパク質の存在またはレベルを医学的状態と相関させることにより、当業者は、関連する医学的状態を診断することができる。例えば、刺激されたT細胞は、自らのIL21Rの発現を増大させ、関節における非常に高い濃度のIL21R発現T細胞が、関節の炎症および可能性のある関節炎を示し得る。本発明の結合タンパク質によって診断され得る実例的な医学的状態には、限定はしないが、多発性硬化症、関節リウマチ、および移植拒絶反応が含まれる。
【0082】
抗IL21R結合タンパク質を用いた毒性の研究
アンタゴニストとして作用する結合タンパク質、例えば抗体を、少なくとも1個のIL21R介在性免疫応答を調節するために用いることができ、したがって、免疫系に対する何らかの副作用を伴うことなく、例えば、免疫系(例えば、ヒトの免疫系)に対する活性化シグナルの伝達、末梢血単核球(PBMC)の活性化、および対象におけるサイトカインストームの誘発を伴うことなく、様々な免疫障害を治療するために用いることができる。さらに、本発明の結合タンパク質は、対象におけるIL21経路の活性化を誘発しない。
【0083】
実施例において説明されるように、AbSおよびいくつかの他の抗IL21R結合タンパク質は、抗IL21R拮抗的結合タンパク質として作用するが、サイトカインストームに関連する毒性事象のいずれも誘発しない。したがって、いくつかの実施形態において、本発明はまた、アンタゴニスト、例えば拮抗的抗IL21R結合タンパク質が、臨床的な試験および治療において副作用、例えばサイトカインストームの活性化を有し得るかどうかを決定または予測する方法を提供する。
【0084】
いくつかの実施形態において、本方法は、インビトロでの方法であり得る。本発明の1つの実施形態において、本方法は、例えば、IL21の活性化効果、およびIL21アンタゴニスト、例えば本明細書において記載されるAbSまたは他の抗IL21R結合タンパク質の阻害効果を検出するために用いることができる。例えば、本発明の1つの実施形態において、本方法は、毒性免疫応答(例えば、サイトカインストームの活性化)に関連するサイトカインの上方調節について試験するために、哺乳動物対象、例えばヒト対象の血液細胞、例えばPBMCを利用する。このようなインビトロでの方法は、(a)哺乳動物対象から血液試料を得るステップ、(b)治療用結合タンパク質、例えばAbSを血液試料と共にインキュベートするステップであって、血液試料が結合タンパク質で処理された血液試料であるステップ、(c)結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および(d)結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを、未処理のまたは陰性対照で処理された試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルと比較するステップを包含し、結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理のまたは陰性対照で処理された試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きいことにより、治療用結合タンパク質が哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発することが示される(例えば予測される)。他方で、結合タンパク質で処理された血液試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理のまたは陰性対照で処理された試料における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きくない場合は、治療用結合タンパク質が哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発しないことが示され得る(例えば予測され得る)。
【0085】
いくつかの実施形態において、インビトロでの方法は、マルチウェルプレート内で行うことができる。例えば、抗IL21R拮抗的結合タンパク質または対照試薬は、プレートのウェル上に直接的に被覆されているか(乾燥被覆)、またはプレートの抗IgGで被覆されたウェルにアプライされ、哺乳動物ドナーのPBMCに曝露される。
【0086】
他の実施形態において、治療用結合タンパク質がサイトカインストームを誘発するかどうかを決定するために用いられる方法は、IL21の活性化効果、およびIL21アンタゴニスト、例えば、AbSまたは本明細書において記載される他の拮抗的結合タンパク質の阻害効果を検出するために用いることができる、エクスビボでの全血法、例えば、ヒト全血法またはサル全血法である。
【0087】
あるいは、本方法は、インビボでのアッセイであり、対象における、AbSまたは本明細書において記載される他の結合タンパク質の投与後効果を決定するために用いられる。このような投与後法は、抗IL21R拮抗的結合タンパク質、例えばAbSを、哺乳動物対象、例えばヒト以外の哺乳動物対象(例えば、カニクイザル)に投与した後に行うことができる。例えば、治療用結合タンパク質が第1の哺乳動物対象(例えば、ヒト対象)においてサイトカインストームを誘発するかどうかを予測する方法において、本方法は、(a)治療用結合タンパク質、例えばAbSを第2の哺乳動物対象(例えば、カニクイザル対象)に投与するステップであって、第2の哺乳動物対象が結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象であるステップ、(b)結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象から血液試料を得るステップ、(c)結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定するステップ、および(d)結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを、未処理の第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルと比較するステップを包含することができ、結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理の第2の哺乳動物対象における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きいことにより、治療用結合タンパク質が第1の哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発することが示される。あるいは、結合タンパク質で処理された第2の哺乳動物対象の血液における少なくとも1個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルが、未処理の第2の哺乳動物対象におけるそのサイトカインストーム遺伝子の発現レベルよりも実質的に大きくない場合は、治療用結合タンパク質が第1の哺乳動物対象においてサイトカインストームを誘発しないことが示され得る(例えば予測され得る)。
【0088】
1つの実施形態において、インビボでの方法は、高用量の、すなわち、予想された臨床用量よりも高い用量の抗IL21R拮抗的結合タンパク質を、例えばカニクイザルに投与すること、ならびに、毒性免疫応答(サイトカインストーム)およびIL21応答のいずれかまたは両方に関連するサイトカインの変化について、全血試料をモニタリングすることを包含する。したがって、いくつかの実施形態において、第1の哺乳動物対象はヒト対象であり、一方、第2の哺乳動物対象はカニクイザル対象である。当業者には、第2の哺乳動物対象が、拮抗的結合タンパク質の毒性を試験するために適した任意の対象、例えば、齧歯動物対象、ヒト以外の別の霊長類動物対象であってもよいことが理解されよう。
【0089】
本明細書において用いる場合、「結合タンパク質で処理された」という用語は、サイトカインストーム遺伝子の上方調節のレベルを決定するために、治療用結合タンパク質、例えば治療用抗体、例えば抗IL21R抗体(例えばAbS)で処理された、試料または対象について言う。「未処理の」は、活性化物質または阻害物質、例えば、結合タンパク質、抗体、またはサイトカインが添加されていない試料または対象を言う。未処理の対象または試料は、結合タンパク質で処理された対象におけるサイトカインの上方調節のレベルと比較するための陰性対照として用いられる。したがって、「陰性対照で処理された」は、陰性対照の結合タンパク質、例えば、IgGTM(IgG1抗破傷風三重突然変異体)抗体、IgG1(IgG1抗破傷風野生型)抗体、またはIgGFc(Fc対照)抗体で処理された試料または対象を言う。「陽性対照で処理された」は、IL21サイトカインで処理された試料または対象を言う。本発明のいくつかの実施形態において、血液試料は、全血試料、例えば、ヒト全血試料またはカニクイザル全血試料であり得る。別の実施形態において、血液試料は、末梢血単核球(PBMC)試料であり得る。
【0090】
サイトカインストーム遺伝子の上方調節について試験することに加え、本発明の方法は、IL21応答性サイトカインおよびIL21応答性タンパク質の上方調節について同時にまたは別の方法で試験することができる。サイトカインストームに関連するサイトカイン(例えば、サイトカインストーム遺伝子)には、限定はしないが、IL4、IL2、IL1β、IL12、TNF、IFNγ、IL6、IL8、およびIL10が含まれる。IL21応答性のサイトカインおよびタンパク質には、限定はしないが、CCL19、CCL2、CCL3、CCR2、CD19、CD40、CSF2、CSF3、CXCL10、CXCL11、GZMB、IFNγ、IL10、IL12β、IL1β、IL2RA、IL6、PRF1、PTGS2、およびTBX21が含まれる。したがって、サイトカインストームに関連する、全てではないがいくつかのサイトカインは、IL21応答性サイトカインとオーバーラップすることが明らかである。本発明の方法は、少なくとも1個の、少なくとも2個の、少なくとも3個の、少なくとも4個の、少なくとも5個の、少なくとも6個の、少なくとも7個の、少なくとも8個の、もしくは少なくとも9個の、またはそれ以上のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含し得る。いくつかの実施形態において、本発明の方法は、9個のサイトカインストーム遺伝子の発現レベルを決定することを包含する。同様に、本発明の方法は、少なくとも1個の、少なくとも2個の、少なくとも3個の、少なくとも4個の、少なくとも5個の、少なくとも6個の、少なくとも7個の、少なくとも8個の、少なくとも9個の、少なくとも10個の、少なくとも11個の、少なくとも12個の、少なくとも13個の、少なくとも14個の、少なくとも15個の、少なくとも16個の、少なくとも17個の、少なくとも18個の、少なくとも19個の、少なくとも20個の、もしくは少なくとも21個の、またはそれ以上のIL21応答性サイトカインのレベルを決定することを包含し得る。
【0091】
サイトカインの変化は、RNAまたはタンパク質の発現の変化を試験するための方法のいずれかによってモニタリングすることができる。1つの実施形態において、サイトカインの変化、例えば、毒性免疫応答またはIL21応答性サイトカインに関連する、サイトカインの上方調節を、タンパク質検出法またはmRNA検出法のいずれかなどの、遺伝子またはタンパク質の発現の変化を試験するための方法のいずれかによって検出することができる。遺伝子発現の上方調節は、mRNA発現の上方調節によって試験することができ、また、TAQMAN(登録商標)低密度アレイ上でリアルタイムPCR(RT−PCR)によって標的をスクリーニングすることによって検出することができる。本発明の別の実施形態において、遺伝子発現の上方調節は、タンパク質発現の上方調節を測定することによって試験することができる。1つの実施形態において、サイトカインのレベルは、例えばMSD多重免疫測定(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)を用いることによって、サイトカインの放出を測定することによって決定することができる。本発明の結合タンパク質を試験するためのアッセイの具体的な例は、実施例において記載される。
【0092】
当業者には、実施例において記載される結合タンパク質に加え、任意の結合タンパク質を、サイトカインストームに関連する毒性事象を含む毒性を誘発することなく、結合タンパク質がアンタゴニスト、例えばIL21Rアンタゴニストとして作用するかどうかを決定するための、本明細書において記載されるアッセイにおいて用い得ることが認識されよう。
【0093】
本発明の別の態様は、治療用結合タンパク質が投与されるとサイトカインストームを誘発するかどうかを予測するためのキットに関する。例えば、本キットは、サイトカインストームの予測に関連する重要な遺伝子のレベルを評価するためのオリゴヌクレオチドマイクロアレイチップなどを提供し得る。他の実施形態において、本発明の他の態様は、キットの中心であってもよく、当業者であれば、このようなキットおよびそれらの構成要素を、本開示に基づいて構築/作製することが可能である。
【0094】
組合せ療法
1つの実施形態において、少なくとも1個の抗IL21R結合タンパク質と少なくとも1個の治療薬とを包含する医薬組成物が、組合せ療法において投与される。本療法は、免疫障害および炎症性障害などの病理学的状態または病理学的障害を治療するために有用である。この状況において「組み合わせて」という用語は、結合タンパク質組成物および治療薬が、実質的に同時期に、すなわち同時にまたは連続的に投与されることを意味する。連続的に投与される場合、第2の化合物の投与の開始時に、2つの化合物のうちの第1の化合物は、治療部位で、効果的な濃度で依然として検出可能であり得る。
【0095】
例えば、組合せ療法は、少なくとも1個のさらなる治療薬と共製剤および/または共投与される、少なくとも1個の抗IL21R結合タンパク質を含むことができる。さらなる作用物質は、以下においてより詳細に記載される、少なくとも1個のサイトカイン阻害剤、成長因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、細胞傷害性物質、および細胞増殖抑制剤を含み得る。このような組合せ療法は、有利には、低用量の、投与される治療薬を利用し、したがって、様々な単独療法に関連する可能性のある毒性または合併症を避けることができる。さらに、本明細書において開示される治療薬は、IL21/IL21R経路とは異なる経路に対して作用し、したがって、抗IL21R結合タンパク質の効果を増強させ、かつ/または前記効果との相乗効果をもたらすことが予想される。抗IL21R抗体と他の治療薬との組合せ投与を行うためのキットもまた提供される。1つの実施形態において、本キットは、医薬担体中に製剤された少なくとも1個の抗IL21R抗体と、必要に応じて1つまたは複数の個別の医薬調製物中に製剤された少なくとも1個の治療薬とを包含する。
【0096】
この出願を通して引用される全ての参考文献、特許出願、および特許の全内容は、参照することにより本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0097】
本発明は、以下の非限定的な実施例においてさらに説明される。以下の実施例は、本発明の理解に役立つべく説明されるが、決して、本発明の範囲を限定することを意図したものではなく、また、限定すると解釈されるべきではない。実施例は、従来の方法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、リアルタイムPCR、クローニング、トランスフェクション、細胞系においてタンパク質を過剰発現させるための方法の基本的な態様、およびタンパク質精製のための基本的な方法の詳細な記載を含まない。このような方法は、当業者に周知である。
【0098】
(実施例1)
抗IL21R結合タンパク質の生成
本明細書において説明される抗IL21R結合タンパク質と、IL21に関連する多くの障害を治療するための、前記タンパク質の治療薬としての有用性とは、例えば、米国特許出願第12/472,237号(参照することにより本明細書に組み込まれる)において詳細に記載されている。いくつかの抗IL21R結合タンパク質の配列、ならびにこれらの結合タンパク質の生成および研究に関与する他の配列(例えば、配列番号196〜210、および230〜238)は、添付の配列表において開示され、表2Bおよび/または参照することによりその全体が組み込まれる米国特許出願第12/472,237号において詳細に記載されている。
【0099】
(実施例2)
IL21に対するヒト全血の作動性応答は、抗IL21R結合タンパク質を用いたエクスビボでの処理によって中和される
IL21R依存性応答の阻害における、抗IL21R結合タンパク質の有用性を実証するために、抗IL21R結合タンパク質での、IL21に対するヒト全血の作動性応答の阻害を分析した。ヒト全血は、マサチューセッツ州、ケンブリッジにあるHuman Blood Donor Programによって採血された。全てのヒト血液試料を、BD Vacutainer(商標)CPT(商標)細胞調製チューブ内に回収した。回収チューブはヘパリンナトリウムを含むものであった。試料を周囲温度で維持し、迅速に処理した。血液を、クライオバイアル内の1〜2mLのアリコートに分け、IL21、AbS、または対照タンパク質で処理した。試料を抗IL21結合タンパク質とIL21との両方で処理する場合、結合タンパク質はIL21の直前に添加した。次に、試料を、4時間にわたり、Forma Scientific Reach−In Incubatorモデル番号3956において37℃でインキュベートし、一方で、インキュベーションの間に、Appropriate Technical Resources Inc(ATR)Rotamix
(カタログ番号RKVS)回転ミキサー(シリアル番号0995−52および0695−36)を用いて、またはLabquake(登録商標)Tube Shaker/Rotator(カタログ番号400110)を用いて、15RPMで連続的に混合した。アリコート(0.5mL)を、ART 1000Eチップ(カタログ番号72830−042)を有するGilson P1000ピペットを用いて取り出し、Human RiboPure(商標)−Blood Kit(Ambion、Austin、TX;カタログ番号AM1928)に同梱されている1.3mLのRNA later(登録商標)を含有する、2.0mLのマイクロチューブ(Axygen Scientific、カタログ番号10011−744)に添加し、5回の完全な反転によって完全に混合した。試料を一晩にわたり周囲温度で保存し、次に、RNA精製を待つ間、−80℃で凍結した。
【0100】
RNAを、Human RiboPure(商標)Blood Protocol(Ambion、カタログ番号AM1928)を用いて単離した。Human RiboPure(商標)RNA単離手順は、グアニジウムベースの溶液における細胞溶解、およびフェノール/クロロホルム抽出によるRNAの最初の精製、およびガラスファイバーフィルター上での固相抽出による最終的なRNA精製からなる。残りのゲノムDNAを、キットにおいて提供されるDNA−free(商標)試薬を用いて、DNAse処理のために、製造者の使用説明書に従って除去した。全ての試料について、RNAの量を、NanoDrop1000(NanoDrop、Wilmington、DE)を用いた260nmでの吸光度によって決定した。RNAの質は、2100 Bioanalyzer(Agilent、Palo Alto、CA)を用いて抽出検査した。試料は、cDNA合成が行われるまで−80℃で保存した。
【0101】
製造者の使用説明書に従って、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(ABI、カタログ番号4368814)を、50U/試料のさらなるRNase阻害剤(ABI、カタログ番号N808−0119)と共に用いて、cDNAを全RNAから逆転写した。cDNA試料は、RT−PCR(リアルタイムPCR)を行うまで、−20℃で保存した。Taqman(登録商標)Low Density Array card(TLDA)上にロードされたcDNAの量を、実験内で得られた最小RNA収量を用いて決定した。
【0102】
TLDAは、Applied Biosystem’s Assays−on−Demand(AOD)の遺伝子特異的プライマー対/プローブの組からなる、マイクロ流体カードである。各ウェルは、遺伝子特異的な標識されていないフォワードプライマーおよびリバースプライマーと、非蛍光クエンチャー(NFQ)を有する、遺伝子特異的な5’FAM(商標)染料で標識されたTaqmanマイナーグルーブバインダー(MGB)プローブとからなる、単一のAODを含有する。これらのAODは、事前に検証され、品質管理の試験をされ、かつあらゆるABI PRISM配列検出システムでの使用について最適化されている。
【0103】
試料cDNAを、Taqman(登録商標)Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems;カタログ番号4304437)と共に混合し、TLDA上に添加した。次に、TLDAを、室温で、1200×g、1分間の回転を連続して2回行い、密封し、そしてABI 7900HT配列検出器(Sequence Detector Software 2.2.3、Applied Biosystems)内にロードした。以下の共通の温度サイクル条件(50℃で2分間、95℃で10分間、95℃で15秒間を40サイクル、および60℃で1分間)を、この実施例および以下の実施例において記載されている全てのTLDAについて用いた。これらの共通の温度サイクル条件は、全てのその後の実験で用いた。
【0104】
内因性対照を用いて、ロードされた試料の濃度のn変動を明らかにすることによって、試料の定量を正規化した。全てのTLDAデータについての相対的な定量を、Spotfireガイドアプリケーション(LivakおよびSchmittgen(2001)Methods 25:402〜08)において行った。
【0105】
IL21のエクスビボでの効果を確認するために、ヒト全血および/または精製PBMCが、遺伝子発現レベルにおける検出可能な変化を伴ってIL21に応答したかどうかを試験するために実験を行った。ヒトドナーから得られる全血または精製PBMCを、IL21の存在下および非存在下でインキュベートし、RNAレベルを、TLDAカードを用いて決定した。2つの異なるTLDAを用いて、RNA発現レベルを測定した。第1のヒト免疫TLDA(ABI、カタログ番号4370573)では96個の遺伝子を試験し、そのうち91個は、刺激されたヒト血液において検出可能であった。ヒトドナーの全血から得られるLPSまたはPHAで刺激されたPBMCを、陽性対照として用いた。IL21の刺激に応じたIL21Rの上方調節を試験するために、IL21R遺伝子を含有する特注設計のTLDAを用いて結果を得た。
【0106】
最大シグナルを生成させるためのIL21処理の最適な時間および用量を決定するために、5人の健康なドナーから得られる全血試料を、3.3、10、または30ng/mlのIL21の存在下で、2、4、6、または24時間にわたりインキュベートした。RNAを単離し、遺伝子発現レベルを測定した。顕著な、および強力なIL21依存性シグナルが、IL6、IFNγ、IL2RA、GZMB、PRF1、CD19という6つの遺伝子について得られた。CD19を除く全てについての最適なシグナルが、2時間の時点で得られた(図1A)。3.3、10、または30ng/mlのIL21で得られた応答にはほとんど差はなかった。エクスビボでのIL21処理に対する応答は、全ての5人のドナーの間で一貫していた(データは示していない)。これらの5人のドナーで得られた結果に基づいて、IL21に対するエクスビボでの応答に対するAbSの阻害効果について用量設定するために選択されたアッセイ条件は、10ng/mlのIL21で2時間にわたり刺激することであった。
【0107】
IL21の効果を最適に遮断するためのAbSの用量を決定するために、4人の個別のドナーから得られる試料を、共にPBS内に希釈されたAbSおよびIgGTMの指定された濃度で、2時間にわたりプレインキュベートし、その後、10ng/mlのIL21を添加した。IL21を添加した後、試料をさらに2時間にわたりインキュベートした。0.1μg/mLのAbSを添加すると、完全な阻害が生じ、したがって、0.003μg/mLのAbSを、後の実験に用いた。図1Bにおいて実証されるように、AbSは、全ての4人のドナーにおいて試験された全ての6つの遺伝子の応答を阻害したが、IgGTMは阻害しなかった。
【0108】
これらの結果は、IL21依存性の応答の阻害における抗IL21R結合タンパク質の有用性を実証し、また、ヒト血液におけるIL21に対する応答を測定するための方法を規定するものである。
【0109】
(実施例3)
ヒト対象およびカニクイザル対象における抗IL21R結合タンパク質処理後の細胞シグナル伝達およびサイトカインストームについての可能性の評価
(実施例3.1)
ヒト末梢血単核球(PBMC)におけるIL21リガンドによるサイトカインのインビトロでの活性化の測定
全身性の炎症性応答および多臓器不全をもたらした、サイトカインストームの誘発による、臨床試験におけるTGN1412(抗CD28抗体)の最近の失敗を受けて、類似の毒性応答を誘発させるためのリード化合物となる治療用結合タンパク質を試験することが急務となった。TGN1412の臨床試験の後、プラスチック製の組織培養ウェル(Stebbingsら(2007)J.Immunol.179:3325〜31)の表面に架橋したTGN1412によるPBMCの活性化を試験するための、インビトロでの活性化プロトコルが開発された。6つの異なるプロトコルを、TGN1412によるPBMCの活性化について試験し、3つは、活性化を誘発することが示された(上記のStebbingsら(2007))。これらのプロトコルのうち、2つ(抗IgGおよび乾燥被覆上での提示)をここで試験した。IL21は、特定の条件下で、ならびに異なる細胞系および精製細胞集団から得られる、サイトカインストームに関連するいくつかの遺伝子を誘発することが知られているが、PBMCおよび全血に対するIL21誘発性の活性化の程度は知られていない。したがって、免疫活性化に関連する12個のタンパク質および90個のmRNAの、IL21による誘発を試験した。
【0110】
新鮮なヒトPBMCを、クエン酸ナトリウムCPT Vacutainer管(BD、Franklin Lakes、NJ)を用いて、5人の健康なドナーの全血から単離した。各ドナーから得られたおよそ310〜450mlの全血(8ml/管)を、Research Blood Components(Brighton、MA)から購入し、異なる日に抽出した。各試料を、採血の4時間以内に処理した。CPT管のアリコート(8ml)を、室温で、1500×gで20分間にわたり回転させた(血漿、赤血球、好中球などを除去するため)。PBMCをPBS内で2回洗浄し(pH=7.2)、精製後の示差的な細胞計数を、Panta 60C(HORIBA ABX Diagnostics、Irvine、CA)を用いて得た。最終的な細胞ペレットを、細胞培養培地(RPMI−1640、10%HIFBS、2nMのL−グルタミン、100単位/mlのペニシリン、および100mg/mlのストレプトマイシン、10mMのHepes(1:100)、1mMのピルビン酸ナトリウム、50μMのβ−メルカプトエタノール、12.5ml/Lの20%グルコース)中で再構成し、2〜2.5×10個/mlの最終濃度とした。100μL/ウェルの懸濁液細胞をウェルに添加し、ここに用量設定したIL21もまた添加した。
【0111】
TGN1412と比較した、IL21により誘発されるタンパク質の程度を試験するために、33ng/mlのIL21を、5人の個別のヒト対象から得られたPBMCと共に、96ウェルプレート内でインキュベートした。MSD多重免疫アッセイプレート(Meso Scale Discovery、Gaithersburg、MD)を用いて、製造者の使用説明書に従って、PBMC培養物から採取された細胞調整培地における、分泌されたサイトカインレベルを測定した。結果を、1μg/ウェルでの架橋TGN1412について報告されているシグナルと比較した(上記のStebbingsら(2007))。20時間のインキュベーションの後の、TGN1412またはIL21のいずれかによって誘発されたインビトロでのIL8タンパク質シグナルまたはTNFαタンパク質シグナルの程度を、表2Aに示す。Stebbingsらによると、IL8およびTNFαは、TGN1412刺激によってそれぞれ18倍および13倍誘発されたが、IL8およびTNFαのはるかに少ない誘発がIL21については実証された(1.5〜4倍の増大)。
【0112】
(実施例3.2)
架橋抗CD28および架橋AbSの効果の比較
全部で15人の健康なドナーから得られたPBMCをインキュベートし、様々な時点でのタンパク質およびRNAの発現に対する架橋AbSの効果、IgG濃度、および架橋プロトコルについて試験した。
【0113】
インキュベーションの最後に、全ての96ウェルプレートを、Jouan CR422冷却遠心分離機(Jouan Inc.、Winchester、VA)を用いて、280×g(冷却下で)で回転させた。細胞ペレットからのRNA抽出を、調整培地を除去する際に、1%のβ−メルカプトエタノールを含有する100μLのRLT溶解緩衝液(Qiagen、Valencia、CA)をウェルに添加することで開始した。次に、ウェルを、その後のRNA精製のために急速冷凍した。簡潔に述べると、RLT溶解緩衝液内で凍結させた細胞ペレットを解凍し、製造者の推奨に従ってQIAシュレッダーキットおよびRNeasyミニキット(Qiagen)を用いて、全RNAの単離のために処理した。試料の全てをDNase(オンカラム処理)に供し、潜在的なDNA汚染を除去し、次に、Qiagenキットにおいて提供されるカラムを用いて精製した。次に、フェノール−クロロホルム抽出を行い、RNeasyミニキット試薬を用いて、RNAをさらに精製した。NanoDrop ND−1000分光光度計(Thermo Scientific、Wilmington、DE)を用いて、溶出されたRNAを定量した。試料当たりおよそ225ngの全RNA(TLDA当たり、以下を参照されたい)を、Applied Biosystems High Capacity cDNA Archiveキット(カタログ番号4322171;Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いてcDNAに変換した。
【0114】
実施例3(ヒト)におけるこの研究および以下の研究における全ての遺伝子転写分析では、TLDAヒト免疫アレイカード(カタログ番号4370573、TAQMAN(登録商標)低密度アレイ、Applied Biosystems)、または特注のTAQMAN(登録商標)低密度アレイのいずれかを用い、この低密度アレイは、Applied Biosystemsから入手され、既知のIL21応答性遺伝子およびサイトカインストームに関連する遺伝子を照会するために設計されたものである。
【0115】
10μg/ウェルの架橋抗体で試験された5人のドナーで得られた結果を図2Bに示す。結果は、Stebbingsら(上記)によって記載されている抗CD28架橋の条件が、サイトカインストームに関連するサイトカインの強力な分泌を誘発することを裏付けるものであった。さらに、また予想通りに、サイトカインストームとの既知の関連および/またはIL21介在性の活性化との関連に基づいて選択された14個の遺伝子のRNA発現レベルにおいて、大幅な増大が観察された(図2B、黒いバー)。逆に、架橋AbSは、RNA発現の増大を誘発しなかった(図2B、白いバー)。
【0116】
対照IgGTMで観察されるいくつかのサイトカインのレベルは、培地対照群におけるレベルよりも増大したが、図2Bに示すように、抗CD28で刺激された群におけるレベルは、対照IgGTMで刺激された培養物におけるレベルよりも有意に高かった。観察されたIgGTMの効果が、その特定の試薬に特異的な特徴に起因するかどうかを調べるために、2つの他の架橋Ig対照試薬を試験した。これらの試薬の両方、すなわち、定常領域における3つの突然変異を除いてIgGTMと全ての特徴を共有するヒトIgG野生型と、精製ヒトFcとは、培地対照に対する、類似の増大を誘発した(データは示していない)。これらの結果は、IgG試薬が、これらの研究において採用された架橋プロトコルのもとで活性化を誘発することを示し、このような研究における、よく特徴付けされた対照IgG試薬の必要性を強調する。
【0117】
(実施例3.3)
インビトロでの架橋抗IL21R結合タンパク質でのヒトPBMC活性化の検出
抗IL21R結合タンパク質が、IL21で観察されるシグナルと類似のシグナル、またはサイトカインストームに関連するシグナルを誘発するかどうかを決定するために、15人の個別のヒトドナーから得られたPBMCに対する架橋結合タンパク質(例えばAbS)のインビトロでの試験を行った(図3)。具体的には、結合タンパク質(ウェル当たり、100ng、300ng、1μg、または10μg)または対照IgG[IgGTM、IgG1(ヒトIgG抗破傷風野生型)、またはIgGFc]を、96ウェルプレートの抗IgG被覆ウェルまたは乾燥被覆ウェルのいずれかに吸着させた。IL21および抗CD28(ANC28.1/5D10;Ancell、Bayport、MN)を、活性化シグナルの検出のための陽性対照として用いた。
【0118】
乾燥被覆プロトコルにおいて、結合タンパク質は、全容積がウェル当たり50μlの無菌PBS(pH=7.2)中の用量設定された結合タンパク質のそれぞれのマスターストック溶液を空気乾燥させることによって、ウェル上に被覆され、これは、96ウェルポリスチレンCorning高結合プレート(カタログ番号3361、Corning、Lowell、MA)のウェル上に直接アプライされた。これらのプレートは、乾燥のために、室温で一晩、組織培養フードの下で開いたままにした。
【0119】
抗IgG被覆プロトコルにおいて、無菌PBS(pH=7.2)中の用量設定された結合タンパク質の、ウェル当たり100μlのマスターストック溶液を、室温で1時間にわたり、96ウェルヤギ抗ヒトIgGプレート(H+L)(カタログ番号354180;BD Biosciences、Bedford MA)のウェル上に直接アプライし、次に、4℃で一晩撹拌した。
【0120】
乾燥被覆プロトコルおよび抗IgG被覆プロトコルの両方によって、PBMC架橋実験について、良好に結合したヒトIgGが得られた(図4)。培養ウェルにおける被覆された結合タンパク質の持続性を、細胞培養物試料を回収した後に、ヒトIgGのELISA検出によって、各条件について確認した。ウェルを、200μl/ウェルの、PBS内の0.03%Tween−20で4回洗浄した。検出抗体であるマウス抗ヒトIgG(Fc)HRP(カタログ番号9040−05;Southern Biotech、Birmingham、AL)を、アッセイ緩衝液(PBS内の、0.5%BSA+0.02%Tween−20)内に1:2000の割合で希釈し、100μlを各ウェルに添加し、30分間にわたりゆっくりと撹拌した。次に、ウェルを、200μL/ウェルの、PBS内の0.03%Tween−20で4回洗浄した。最後に、100μl/ウェルのBioFX TMB HRP Microwell Substrate(BioFX Laboratories,Inc.、Owings Mills、MD;カタログ番号TMBW−0100−01)を各ウェルに添加し、室温で8分間にわたり発色させた。50μl/ウェルの、0.18NのHSOによって、反応を停止させた。結合した結合タンパク質の相対的な量を、450nmのO.D.での吸光度を測定することによって、Spectra Max Plusプレートリーダー(Molecular Devices、Sunnyvale、CA)を用いて記録した。
【0121】
結合タンパク質の吸着の後、プレートを、実施例3.1において記載したように単離された、2〜2.5×10個細胞/ウェルのヒトPBMCと共に、4、20、48、72、または120時間にわたりインキュベートし、タンパク質レベルおよびRNAレベルを測定した(図5)。表3は、最初の5人のヒトドナーで試験されたタンパク質レベルおよびRNAレベルの結果を示す。次の10人のドナーから得られた試料を、21個の試験遺伝子(CXCL10、ICOS、IFNγ、IL2RA、CD19、PRF1、GZMB、GNLY、IL13、IL17、CXCL11、CD40LG、IL1b、IL2、IL4、IL6、IL8、IL10、IL12B、TNF、およびIL21R)および3つの内因性対照遺伝子(18S、ZNF592、およびPTPRC)という遺伝子を含有する、特注のTLDAを用いて試験した。
【0122】
【表4】
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【0123】
表3について、タンパク質レベルを、多重免疫アッセイによって決定した。具体的には、6ウェルの、10スポット(IFNγ、IL1β、IL2、IL4、IL5、IL8、IL10、IL12p70、IL13、TNF)MSDプレート(MS6000 Human TH1/TH2 10−Plex Kit、Meso Scale Discovery)ならびに96ウェルの特注の2スポット(IL6およびCCL3)MSDプレート(Meso Scale Discovery)を用いて、製造者の使用説明書に従って、PBMC培養物から採取された細胞調整培地における、分泌されたサイトカインレベルを測定した。アッセイの感度は、製造者のガイドラインの限定値内であった。
【0124】
RNAレベルを、実施例3.2において記載したように、Human Immune Taqman(登録商標)Low Density Array上で標的をスクリーニングすることによって決定した。AbS対IgGTMのRQは、同一の濃度の対照結合タンパク質に対する抗IL21R結合タンパク質の相対的な倍率変化の代表的なものであった。
【0125】
測定値は、複数の時点で、複数の結合タンパク質濃度および3つの異なる陰性対照IgGで得た。IL21刺激/抗CD28刺激を陽性対照として含め、プレートへの結合タンパク質の結合を常にELISAによって確認した。
【0126】
結合タンパク質処理によるIFNγ放出の決定によって実証されるように、20時間の時点では、全ての12個のサイトカインについて、架橋AbSでは有意なサイトカインタンパク質の放出は実証されなかった(図6A)。同様に、4時間の時点での乾燥被覆提示法または抗IgG被覆提示法のいずれかによって実証されるように、架橋AbSは、IL21応答性遺伝子またはサイトカインストーム遺伝子のいずれかのヒトPBMCのRNA発現を有意には活性化しなかった(図6B)。実際、架橋AbSでは、IgGTM対照と比較して、IL21依存性の増大は観察されなかった。
【0127】
したがって、AbSは、ヒトPBMCのインビトロでのアッセイにおいて、IL21で観察されたシグナルまたはサイトカインストームに関連するシグナルを誘発しない。
【0128】
異なるドナー間の処理応答における固有の変動を制御するため、および、所与のドナーにおいて誘発された何らかのアゴニスト応答が、他のドナーにおける応答の欠如により統計的にマスキングされる可能性を避けるため、AbS処理による誘発遺伝子転写産物を、対照IgGTMを有する全てのドナーで見られる範囲と比較した。アッセイの固有の変動性の範囲は、全てのドナーから得られるIgGTM対照の値の平均±3標準偏差と定義した。活性化シグナルは、アッセイの固有の変動の範囲よりも大きい任意の値として定義した。
【0129】
AbS(10、1、0.3、および0.1μg/ウェル)で得られたサイトカインストーム誘発の値を、IgGTMで得られた値によって定義された、アッセイの固有の変動性の範囲と比較した。10μg/ウェルのAbS(抗CD28抗体によるサイトカインストーム誘発のために最適な用量)では、いずれのドナーにおけるいずれのサイトカインストーム遺伝子についても、シグナルは観察されなかった。1人のドナーにおける0.3μg/ウェルでのIL2RAの値は、3.18倍増大して固有の変動性の範囲を超えたが、一方、別のドナーにおける、0.1および0.3μg/ウェルでのIL2RAの値は、それぞれ0.5倍および0.04倍低下し、また同様に、固有の変動性の範囲を超えた。しかし、IL2RA遺伝子は、サイトカインストームとも炎症性カスケードとも関連していない。
【0130】
AbV、AbW、およびAbUを含むいくつかの他の結合タンパク質についてのサイトカインストーム活性化シグナルもまた決定した(データは示していない)。個別のドナーを任意の活性化シグナルについて評価すると、非常に少数の散発的なシグナルが観察された。AbVでは、試験したあらゆる濃度でのあらゆる遺伝子について、いずれのドナーにおいても活性化シグナルは観察されなかった。AbWおよびAbUでは、対照を超えるわずかな散発性の活性化シグナルが、非常に少数の試料において観察されたが、これらのシグナルは、より低い、試験された濃度でのものであった。
【0131】
(実施例3.4)
IL21に対するカニクイザル全血の作動性応答は、抗IL21R結合タンパク質を用いたエクスビボでの処理によって中和される
拮抗的結合タンパク質、例えばAbSを用いた毒性研究におけるカニクイザルの使用を支持するために、AbSが、カニクイザルの血液におけるIL21誘発性の活性化シグナルを遮断するという所望のエクスビボでの効果を誘発することを示す必要があった。
【0132】
カニクイザル全血試料を、BD Vacutainer(商標)CPT(商標)細胞調製チューブ内に回収した。回収チューブは、クエン酸ナトリウム、ヘパリンリチウム、またはヘパリンナトリウムという抗凝固剤の1つを含有するものであった。カニクイザル全血を採血し、迅速に処理した。血液を、クライオバイアル内の1〜2mlのアリコートに分け、IL21、AbS、または指定された場合は対照タンパク質で処理した。試料を、結合タンパク質とIL21との両方で処理する場合、結合タンパク質はIL21の直前に添加した。次に、試料を、4時間にわたり、Forma Scientific Reach−In Incubatorモデル番号3956(Forma Scientific,Inc.、Marietta、OH)において37℃でインキュベートし、一方で、インキュベーションの間に、ATR Rotamix回転ミキサー(カタログ番号RKVS;シリアル番号0995−52および0695−36;Appropriate Technical Resources,Inc.、Laurel、MD)を用いて、またはLabQuake(登録商標)Tube Shaker/Rotator(カタログ番号400110、ThermoFischer Scientific,Inc.、Dubuque、IA)を用いて、15RPMで連続的に混合した。アリコート(0.5ml)を、ART 1000Eチップ(カタログ番号72830−042)を有するGilson P1000ピペットを用いて取り出し、Human RiboPure(商標)−Blood Kit(カタログ番号AM1928;Ambion、Austin、TX)に同梱されている1.3mlのRNAlater(登録商標)を含有する、2.0mlのマイクロチューブ(カタログ番号10011−744;Axygen Scientific、Union City、CA)に添加し、5回の完全な反転によって完全に混合した。試料を一晩にわたり周囲温度で保存し、次に、RNA精製を待つ間、−80℃で凍結した。
【0133】
RNAを、Human RiboPure(商標)−Blood Protocol(Ambion、カタログ番号AM1928)を用いて単離した。Human RiboPure(商標)RNA単離手順は、グアニジウムベースの溶液における細胞溶解、およびフェノール/クロロホルム抽出によるRNAの最初の精製、およびガラスファイバーフィルター上での固相抽出による最終的なRNA精製からなる。残りのゲノムDNAを、キットにおいて提供されるDNA−free(商標)試薬を用いて、DNAse処理のために、製造者の使用説明書に従って除去した。全ての試料について、RNAの量を、NanoDrop1000(Thermo Scientific)を用いた260nmでの吸光度によって決定した。RNAの質は、2100 Bioanalyzer(Agilent、Palo Alto、CA)を用いて抽出検査した。試料は、cDNA合成が行われるまで、−80℃で保存した。
【0134】
製造者の使用説明書に従って、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(カタログ番号4368814;Applied Biosystems Inc.、Foster City、CA)を、50U/試料のさらなるRNase阻害剤(Applied Biosystems Inc.、カタログ番号N808−0119)と共に用いて、cDNAを全RNAから逆転写した。cDNA試料は、RP−PCR(リアルタイムPCR)を行うまで、−20℃で保存した。cDNA試料を、50℃で2分間、95℃で10分間、次に95℃で15秒間を40サイクル、および60℃で1分間という普遍的な温度サイクル条件を用いて、ABI PRISM 7900配列検出器(Sequence Detector Software v2.2.2、Applied Biosystems)でのサルの研究のために設計された特注のTLDAを用いてアッセイした。
【0135】
IL21がカニクイザルおよびヒトの血液において類似の応答を誘発するかどうかを決定するために、PRF1、IL21R、GZMB、IL10、TNF、およびIL2RAを含む17個のRNAのIL21依存性の誘発を試験した。IL21に対する、強力な、顕著な応答が、IL2RA、PRF1、GZMB、およびIL21Rを含むいくつかの遺伝子について観察された(データは示していない)。IL21は、カニクイザルの血液において強力なIL2RA応答を誘発したが、TNF応答は、別の実験において観察されたLPS誘発性およびPHA誘発性の応答と比較してはるかに弱かった(図7)。
【0136】
AbSは、ヒト血液におけるその応答と同様に、IL21に対するカニクイザル血液のエクスビボでの応答を阻害した。IL21によって典型的に誘発される11個のサイトカインの発現レベルを試験した(データは示していない)。IL2RAのAbSによる阻害により実証されるように(図8)、AbSは、IL21に対するカニクイザル血液のエクスビボでの応答を阻害した。これらのデータは、AbSがカニクイザルにおいて所望の生物学的活性を有することを示し、したがって、カニクイザルを、さらなる毒性研究に用いた。
【0137】
(実施例3.5)
IL21経路およびサイトカインストームの結合タンパク質誘発性の活性化について試験するためのインビボでの非ヒトモデルの確立
カニクイザルにおけるIL21経路およびサイトカインストーム遺伝子に対するAbSのインビボでの効果を実証するため、サルを2つの処理群、すなわちAbS処理群または未処理群に分けた。処理される動物には、100mg/kgのAbSを1回静脈内投与した(これは、予想された臨床用量よりも少なくとも10倍高いものである)。血液は、処理後6時間、24時間、14日、または56日でサルから得た。動物から血液を採取する際、1mlの血液を、125μlのクエン酸ナトリウム(0.1M)に迅速に添加し、5回反転させ、その後、遠心分離機において1200×gで10分間にわたり回転させた。血漿を、クライオチューブ内にアリコート化し、300μlのRPMI1640を残りの血液ペレットに添加した(血漿の損失を補うため)。次に、2.6mlのRNA later(Ambion、カタログ番号AM7020)を血液と培地との混合物に添加し、よく混合し、−80℃で凍結した。
【0138】
実施例3.4において記載するように、RNAを、RiboPure−Blood Procedure(Ambion、カタログ番号AM1928)を用いて精製し、A260/280のOD値をモニタリングするNanodrop製品(Thermo Scientific)を用いて定量した。各RNA試料の質を、Agilent 2100バイオアナライザー(Agilent Technologies、Palo Alto、CA)上のRNA分子量ラダーに沿ったキャピラリー電気泳動によって評価した。
【0139】
各試料から得られるRNAを、Applied Biosystems High Capacity cDNA Archiveキット(Applied Biosystems Inc.、Foster City、CA;カタログ番号4322171)を用いてcDNAに変換し、TLDAカード上にロードし、上記の実施例において記載したように処理した。
【0140】
TNF、IFNγ、IL6、IL8、IL2、IL12β、IL10、IL2RA、IL21R、PRF1、GZMB、STAT3、TBX21、CSF1、およびCD19を含む、いくつかのサイトカインストーム遺伝子およびIL21応答性遺伝子の発現レベルを測定した。
【0141】
TNFおよびIFNγに対する効果によって実証されるように(図9)、AbSで処理したサルおよび対照で処理したサルは、IL21誘発性遺伝子およびサイトカインストームに関連する遺伝子の同程度の血液RNA発現レベルを示した。対照的に、インビトロでのアゴニストLPSおよびPHAは、別のインビトロでの刺激実験において、TNFのRNAの50倍および20倍の刺激を誘発した(図9)。
【0142】
これらのデータは、結合タンパク質AbSが、IL21応答性シグナルもサイトカインストームに関連するシグナルも誘発せず、薬剤開発のための有望な標的となることを実証する。
【0143】
本明細書において記載される具体的な実施例のいくつかは、AbSを用いる研究であったが、同一のまたは類似のタイプの研究を、例えばサイトカインストームに対する、特定のIL21R結合タンパク質/抗体の効果を決定するため、およびヒトの療法における特定の抗IL21R結合タンパク質/抗体の安全性の評価において役立てるために、本願内に組み込まれる抗IL21R結合タンパク質または他の抗IL21R結合タンパク質/抗体などの任意の抗IL21R結合タンパク質を用いて行うことができる。例えば、このような実験は、法的提出文書に含めるために行うことができ、また、将来の抗IL21R療法を評価するために用いることができる。
【0144】
均等物
当業者であれば、ただの常法通りの実験を用いて、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの均等物を認識するか、または確認することができる。このような同等物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。
【図1−1】
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【図1−2】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−504939(P2012−504939A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528094(P2011−528094)
【出願日】平成21年9月23日(2009.9.23)
【国際出願番号】PCT/US2009/058037
【国際公開番号】WO2010/039533
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(309040701)ワイス・エルエルシー (181)
【Fターム(参考)】