説明

架空線撮影システム及び方法

【課題】
架空線を適正なサイズと方向で撮影する。
【解決手段】
レーザ測距装置28、選択装置34及び代表線距離・方向算出装置36により、ビデオカメラ10から見た代表架空線までの距離と方向を算出する。カメラ・架台制御装置38は、装置36の出力に従いカメラ10のフォーカスと撮影方向を制御する。線抽出装置46はカメラ10の撮影画像から線画像を抽出し、傾き算出装置48は線画像の傾きを算出する。制御目標決定装置50は、抽出された線の情報からカメラ10の光学ズームの制御目標及び撮影中心の制御目標を決定する。追尾モードで、装置38は、光学ズーム機能の制御目標に従いカメラ10の光学ズームを制御させ、傾き算出装置48の算出結果に従い、架空線が撮影画面内で水平になるようにカメラ10を回転させ、撮影中心の制御目標に従いビデオカメラ10をチルトし、装置36の出力に従いカメラ10をパンする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空線撮影システム及び方法に関し、より具体的には、架空送電線及びその落雷防止用の接地線(グランド・ワイヤ)等の使用中の架空線を、その検査のために撮影する架空線撮影システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
架空線を撮影する方法として、特許文献1には、レーザ測距装置と高精細ビデオカメラをヘリコプタに搭載し、ヘリコプタを架空線に沿って飛行させ、レーザ測距装置による架空線までの距離と方向の計測結果に従いビデオカメラのフォーカスと撮影方向を制御するシステムが、記載されている。ヘリコプタを架空線に沿って飛行させながら、架空線を撮影し録画することで、架空線を追尾し、フォーカスの合ったビデオ画像を得ることができる。また、撮影画像内の電線のずれと傾きを検出し、架空線が常時画面中央でほぼ水平に位置するようにカメラのチルト角及びロール角を制御することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、架空線に対向させた赤外線カメラを架空線の長手方向に一定速度で移動させて温度分布を測定し、局部的な高温部を検出する技術が記載されている。鋼芯の被膜の腐蝕が進行している部分は、温度が周囲より高くなることを利用する。
【0004】
特許文献3には、地上から延びて電線に掛ける棒状をしており、電線に近接する部分にカメラを設置することで、地上で、架空線の表面を観察できるようにした架空線表面観察装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−003109号公報
【特許文献2】特開平05−332962号公報
【特許文献3】特開2004−242401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
送電鉄塔には、通常、複数の送電線が並列に接続されている。特許文献1に記載の方法は、単一の架空線をアップで撮影することは容易である。しかし、撮影距離が異なる複数本の架空線を同時に撮影し、しかも、細部を確認できる程にアップで撮影することは難しい。
【0006】
特許文献2,3に記載の方法は、架空線にカメラ装置を掛ける必要があり、例えば、山中の架空線や、非常に高い位置に設置される架空線に適用するのは難しい。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決し、複数本の架空線を同時に、且つその細部の検査に利用可能な程にアップで撮影可能な架空線撮影システム及び方法を提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る架空線撮影システムは、架空線を撮影する架空線撮影システムであって、光学ズーム機能及びオートフォーカス機能を具備し、外部制御信号によりマニュアルでフォーカスを制御可能なビデオカメラと、当該ビデオカメラの撮影映像情報を記録する記録手段と、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能を制御するズーム制御手段と、当該ビデオカメラの撮影方向を変更する撮影方向変更手段と、当該ビデオカメラをその撮影光軸を中心として回転するカメラ回転手段と、当該架空線までの距離及び方向を計測する距離・方向計測手段と、当該ビデオカメラの撮影画像から線画像を抽出する線抽出手段と、当該線抽出手段で抽出された線画像の傾きを算出する傾き算出手段と、当該線抽出手段の抽出結果に従い、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標及び当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定する制御目標決定手段と、当該ズーム制御手段、当該撮影方向変更手段及び当該カメラ回転手段を制御する制御手段であって、初期的には、当該距離・方向計測手段の計測結果に従い、当該ビデオカメラの当該フォーカスを制御すると共に、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラの当該撮影方向を変更し、追尾モードでは、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能及び当該オートフォーカス機能を有効にし、当該制御目標決定手段の当該光学ズーム機能の制御目標に従い、当該架空線が所定サイズで撮影されるように当該ズーム制御手段に当該光学ズーム機能を制御させ、当該傾き算出手段の算出結果に従い、当該架空線が撮影画面内で所定方向に向くように当該カメラ回転手段を制御し、当該制御目標決定手段の当該撮影中心の制御目標に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを第1の方向に制御し、当該距離・方向計測手段の計測結果に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを当該第1の方向に直交する第2の方向に制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る架空線撮影方法は、光学ズーム機能及びオートフォーカス機能を具備し、外部制御信号によりマニュアルでフォーカスを制御可能なビデオカメラと、当該ビデオカメラの撮影映像情報を記録する記録手段と、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能を制御するズーム制御手段と、当該ビデオカメラの撮影方向を変更する撮影方向変更手段と、当該ビデオカメラをその撮影光軸を中心として回転するカメラ回転手段と、撮影対象までの距離及び方向を計測する距離・方向計測手段とを具備する架空線撮影システムにより架空線を撮影する方法であって、当該距離・方向計測手段の計測結果に従い、当該ビデオカメラの当該フォーカスを制御すると共に、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラの当該撮影方向を変更する初期ステップと、追尾モードへの移行指示に従い、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能及び当該オートフォーカス機能を有効にするステップと、当該ビデオカメラの撮影画像から線画像を抽出する線抽出ステップと、当該線抽出ステップで抽出された線画像の傾きを算出する傾き算出ステップと、当該線抽出ステップの抽出結果に従い、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標及び当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定する制御目標決定ステップと、当該制御目標決定ステップで決定された当該光学ズーム機能の制御目標に従い、当該架空線が所定サイズで撮影されるように当該光学ズーム機能を制御するズーム制御ステップと、当該傾き算出ステップの算出結果に従い、当該架空線が撮影画面内で所定方向に向くように当該カメラ回転手段を制御するカメラ回転制御ステップと、当該制御目標決定ステップの当該撮影中心の制御目標に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを第1の方向に制御し、当該距離・方向計測手段の計測結果に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを当該第1の方向に直交する第2の方向に制御する撮影方向変更ステップとを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、光学ズーム及びフォーカスをオペレータが手動調節する必要無しに、1又は複数の架空線を適正なサイズと方向で撮影し、録画することができる。録画映像により、架空線の障害を容易に発見することができ、架空線の保守点検が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施例の概略構成ブロック図であり、ヘリコプタ等に搭載して使用される。架空線を撮影するビデオカメラ10は、ヘリコプタによる振動を防止する機能を有するカメラ架台12に固定されている。カメラ架台12は、搭載するビデオカメラ10をその撮影光軸を中心に回転可能であると共に、ビデオカメラ10の水平走査線と平行な水平面内(便宜上、パン方向とする)と、水平走査線に直交する垂直面内(便宜上、チルト方向の合計3軸について回転可能である。但し、撮影光軸を中心としてビデオカメラ10を回転する架台上に、パンの架台とチルトの架台が載置されている。
【0013】
ビデオカメラ10は、現在のズーム値及びフォーカス値を出力すると共に、外部からのフォーカス制御信号によりフォーカスを制御でき、外部からのズーム制御信号により光学ズームを制御できる。
【0014】
図2は、カメラ架台12によるビデオカメラ10の撮影方向制御の説明図を示す。カメラ架台12のパンアクチュエータ14Pは、ビデオカメラ10の撮影方向をパン制御信号に従う量だけその水平走査線に平行な面内で回転し、角度検出器16Pは、回転角度(位置)αを検出する。カメラ架台12のチルトアクチュエータ14Tは、ビデオカメラ10の撮影方向をチルト制御信号に従う量だけ水平走査線に垂直な面内で回転し、角度検出器16Tは、その回転角度(位置)βを検出する。カメラ架台12の回転アクチュエータ14Rは、ビデオカメラ10をカメラ回転制御信号に従う量だけその撮影光軸を中心に回転し、角度検出器16Rは、回転角度γを検出する。
【0015】
本実施例では、回転アクチュエータ14Rで回転される架台の上に、パンアクチュエータ14Pで回転される架台及びパンアクチュエータ14Tで回転される架台を載せている。この構成により、垂れ下がっている架空線を画面内で水平になるように撮影している状態で、パン制御により架空線に沿ってビデオカメラの撮影方向を変更でき、チルト制御により、架空線に垂直な方向でビデオカメラの撮影方向を制御できる。即ち、ビデオカメラ10の撮影方向の制御が容易になる。勿論、架空線の傾き具合からカメラの撮影方向の2方向の制御値を演算しても良い。
【0016】
ビデオカメラ10の出力映像信号は高精細モニタ18とVTR20に供給される。高精細モニタ18の画面上で、撮影対象と範囲を確認できる。また、VTR20により、撮影映像を記録できる。ヘリコプタに搭乗しているオペレータ又はパイロットは、VTR制御装置22によりVTR20の録画及びその停止を制御できる。
【0017】
GPS(Global Positioning System)受信機24は、GPS衛星からの電波を受信して、ヘリコプタの機体位置と時刻(GPS時刻)を計測する。また、3軸ジャイロ装置等からなる姿勢検出装置26は、機体姿勢(又は機体の方向)を3軸について計測し、地上座標上での3軸の機体姿勢値を出力する。走査型のレーザ測距装置28は、レーザパルスを架空線に向けて照射し、且つ、架空線を交差するように走査し、走査範囲内の架空線からの反射光により架空線の機体からの距離Dと方向θを計測する。
【0018】
GPS受信機24は、計測した機体位置とGPS時刻を撮影線座標算出装置30に出力する。姿勢検出装置26は、3軸の機体姿勢の角度情報を撮影線座標算出装置30に出力する。レーザ測距装置28は、計測された各反射点iの距離Dと角度θ、即ち、{(D,θ)i}を撮影線座標算出装置30に出力する。撮影線座標算出装置30は、GPS受信機24からの機体位置、姿勢検出装置26からの3軸の機体姿勢の角度情報、及びレーザ測距装置28の計測データ{(D,θ)i}から、各撮影線(即ち、撮影対象となった架空線)の地上座標上の3次元位置を算出する。この算出方法は、周知であるので、詳細な説明は省略する。撮影線座標算出装置30は、算出した座標値と、GPS受信機24からのGPS時刻と、算出に使用した原データ(機体姿勢値、機体位置、及び{(D,θ)i})をVTR20に供給する。VTR20は、ビデオカメラ10からの映像信号の付属データとして、撮影線座標算出装置30からのデータを映像信号と共にビデオテープに記録する。VTR20はまた、カメラ架台12の回転角α,β,γも記録する。記録映像と同期を取れる場合には、これらの計測データをVTR20とは別の記録装置で記録しても良いことは勿論である。
【0019】
図3は、レーザ測距装置28の走査範囲と、カメラ10の撮影範囲の関係を示す。送電線間には複数(例えば、4本の架空線)を1グループとして、複数グループの架空線を掛けてある。レーザ測距装置28はこれらの架空線までの距離を1走査で計測できる走査能力を具備する。他方、カメラ10は、アップで撮影する場合に、1グループの架空線をまとめて撮影する。
【0020】
本実施例では、1グループの複数の架空線を同時に撮影でき、しかも、可能な限り大きく撮影できるように、以下の機能を装備している。
【0021】
レーザ測距装置28の計測結果に従い初期的にフォーカスを合わせるべきグループの中から代表線を選択する。具体的には、オペレータが、代表線指定装置32により、レーザ測距装置28の計測値の内で、代表線となるものを指定する。選択装置34は、代表線指定装置32で指定された線の計測値(D,θ)を代表値(D,θ)repとして選択する。
【0022】
通常、レーザ測距装置28の走査の中心光軸と、ビデオカメラ10の撮影光軸とは一致しないので、レーザ測距装置28により計測された架空線の距離と方向を、ビデオカメラ10から見た場合の距離と方向に換算又は補正する必要がある。代表線距離・方向算出装置36は、この換算又は補正を担当し、選択装置34からの代表線の距離Drep及び方向θrepを、ビデオカメラ10から見た場合の距離と方向に換算し、換算された距離値と方向値をカメラ・架台制御装置38に供給する。
【0023】
詳細は後述するが、初期的には、カメラ・架台制御装置38は、代表線距離・方向算出装置36からの方向値に従い、代表線がカメラ10の撮影範囲に入るようなパン制御信号及びチルト制御信号を生成し、それぞれカメラ架台12のパンアクチュエータ14P及びチルトアクチュエータ14Tに印加する。これにより、代表線指定装置32で指定された代表線がビデオカメラ10の撮影範囲のほぼ中央に位置するようになる。
【0024】
カメラ・架台制御装置38はまた、代表線距離・方向算出装置36からの方向値に従い、フォーカス制御装置40にカメラ10のフォーカスを制御させる。即ち、この時点では、カメラ・架台制御装置38は目標のフォーカス値をフォーカス制御装置40に指示し、フォーカス制御装置40は、指示されたフォーカス制御値のフォーカス値になるように、ビデオカメラ10のフォーカスを制御する。
【0025】
このような制御の後、オペレータは操作装置42により追尾モードへの移行をカメラ・架台制御装置38に指示することができる。追尾モードでは、カメラ・架台制御装置38は、後述するように、撮影された架空線を撮影画面上で水平にする制御、ビデオカメラ10のオートフォーカス制御、及びビデオカメラ10のズーム制御を有効にする。追尾モードに入る前では、オペレータは、操作装置42により、カメラ・架台制御装置38を介してビデオカメラ10の光学ズームとフォーカス、及びカメラ架台12の3軸の回転角をマニュアルで操作できる。
【0026】
フレームメモリ44は、撮影された架空線の本数と位置を確認するために、ビデオカメラ10から出力される映像信号を一時記憶する。全フレームを記憶するのが好ましいが、適当にフレームを間引いてもよい。線抽出装置46は、公知の線抽出アルゴリズムに従い、フレームメモリ44に記憶されるフレーム画像から線画像を抽出する。例えば、フレームメモリ44に記憶されるフレーム画像をその輝度又は色により2値化し、ハフ変換等により各線要素の外縁を検出し、この検出結果から、線幅と中心線を示す関数、又は両側の外縁の線を示す関数を決定する。線抽出装置46は、フレーム画像の座標上で、抽出した各線(の中心線と幅、又は両側の外縁)を示す一次関数式又は二次式関数式を出力する。
【0027】
傾き算出装置48は、線抽出装置46により抽出された全ての線の平均の傾き値(又は、画面中央等の代表線の傾き値)を算出し、カメラ・架台制御装置38に供給する。カメラ・架台制御装置38は、追尾モードでは、傾き算出装置48からの傾き値が撮影画面上で水平に近づく方向に、ビデオカメラ10をその撮影光軸を中心にわずかに回転させるカメラ回転制御信号を生成する。生成されたカメラ回転制御信号は、カメラ架台12のカメラ回転アクチュエータ14Rに供給される。カメラ回転アクチュエータ14Rは、カメラ回転制御信号に従う回転角度だけ、ビデオカメラ10をその撮影光軸を中心に回転させる。このような漸進的な制御の結果、ビデオカメラ10の撮影画面内で撮影線の傾きが緩和され、最終的に、撮影画面内でほぼ水平になる。
【0028】
勿論、傾き算出装置48からの傾き値が撮影画面内で実質的に水平とみなせる範囲では、カメラ・架台制御装置38は、カメラ回転アクチュエータ14Rの制御を停止し、水平から外れたら、カメラ回転アクチュエータ14Rの制御を再開する。
【0029】
このような制御により、架空線をほぼ水平に維持して、撮影できる。例えば、送電線鉄塔間で中間では、送電線は撓んでいるが、この撓みに関わらず、常時、送電線を水平に捉えて撮影できる。
【0030】
制御目標決定装置50は、光学ズームの倍率の制御目標とカメラ架台12のチルト目標を決定する。制御目標決定装置50は、先ず、線抽出装置46の出力から、撮影画面の中央の垂直線上での線数と、各線の位置及び幅を算出する。ユーザは、線指定装置52により、撮影されている架空線の内の1又は複数の架空線を画面中央に位置させるかを指定できる。1本の架空線を指定した場合、それは、指定された1本の架空線を撮影画面中央に位置させることを意味し、且つ、指定された1本の架空線を画面上の指定範囲(例えば、撮影画面内の20〜30%程度)内に拡大して撮影することを意味する。また、複数の架空線を指定した場合、それは、指定された複数の架空線の中央の位置を撮影画面中央に位置させることを意味し、且つ、指定された複数の架空線を撮影画面上の指定範囲(例えば、撮影画面内の60〜70%程度)内に拡大して撮影することを意味する。
【0031】
制御目標決定装置50は、線指定装置52の指定に従いビデオカメラ10の光学ズームの倍率の制御目標とカメラ架台12のチルト目標を決定する。そして、制御目標決定装置50は、光学ズームの倍率の制御目標に僅かに近づくような制御をズーム制御装置54に指示し、カメラ架台12のチルト目標に近づく方向へのチルト制御をカメラ・架台制御装置38に指示する。ズーム制御装置54は、制御目標決定装置50からの指示に従い、ビデオカメラ10の光学ズームを望遠方向又は広角方向に僅かに制御する。カメラ・架台制御装置38は、制御目標決定装置50からの指示に従い、チルト角βを僅かに変化させるチルト制御信号をカメラ架台12のチルトアクチュエータ14Tに供給する。
【0032】
これらの制御の結果、線指定装置52で指定された1又は複数の架空線が、撮影画面内で中央よりに位置するようになり、撮影画面内のサイズも、適切なサイズに近づく。この変化を反映して、制御目標決定装置50は、光学倍率の変更を指示する新たな指示信号をズーム制御装置54に供給し、チルト角の変更を指示する新た指示信号をカメラ・架台制御装置38に供給する。このような漸進的な制御の結果、線指定装置52で指定した1又は複数の架空線を、撮影画面内のほぼ中央に適切なサイズで撮影できるようになる。
【0033】
なお、線抽出装置46で抽出された線数が目的の線数よりも少ない場合、制御目標決定装置50は、ズーム制御装置54に広角方向への変更を指示する。ズーム制御装置54は、この指示に従い、広角方向へのズームを指示するズーム制御信号を生成し、ビデオカメラ10に供給する。
【0034】
このように、本実施例では、ビデオカメラ10の撮影画像から架空線を示す線画像を抽出し、それが水平になるようにビデオカメラ10の撮影光軸を中心とする回転角度γを制御し、同時に、必要な本数の架空線が1画面内に適切なサイズで収まるようにビデオカメラ10の光学ズームとビデオカメラ10のチルト角を制御する。
【0035】
合焦検出装置56は、ビデオカメラ10から出力される映像信号の高周波成分を抽出して合焦度を検出し、検出結果をフォーカス制御装置40に供給する。オートフォーカスモードでは、フォーカス制御装置40は、合焦検出装置56から出力される合焦度を示す信号が、最も大きくなるようにビデオカメラ10のフォーカスを帰還制御する。
【0036】
追尾モードでも、カメラ・架台制御装置38は、代表線距離・方向算出装置36からの方向情報に従い、カメラ架台12のパン角を制御する。
【0037】
図1に示す構成では、理解を容易にするために、フォーカス制御装置とズーム制御装置をビデオカメラ10の外部に配置してあるが、これらを内蔵するビデオカメラを外部制御してもよいことは明らかである。
【0038】
図4は、本実施例の制御動作のフローチャートを示す。図5は、撮影画面の変遷例の模式図を示す。本実施例では、図1に示す撮影システムを搭載したヘリコプタを撮影対象の架空線に沿って飛行させながら、架空線を撮影する。
【0039】
先ず、スタート時に、ビデオカメラ10の光学ズームを適当な初期値に設定し、カメラ架台12のパン角α、チルト角β及び回転角γを適当な初期値に設定し、フォーカス制御装置40をマニュアル制御に設定する(S1)。
【0040】
レーザ測距装置28により架空線までの距離と方向を測定する(S2)。カメラ・架台制御装置38は、代表線距離・方向算出装置36からの距離・方向情報に従い、パンアクチュエータ14P及びチルトアクチュエータ14Tを介してカメラ架台12のパン・チルト角を制御し、フォーカス制御装置40を介してビデオカメラ10のフォーカスを制御する(S3)。これにより、撮影対象の架空線をビデオカメラ10の撮影視野内に捉えることができる。
【0041】
オペレータが操作装置42で追尾モードへの移行を指示するまで(S4)、ステップS2,S3を繰り返す。
【0042】
オペレータが操作装置42により追尾モードへの移行をカメラ・架台制御装置38に指示すると(S4)、カメラ・架台制御装置38は、フォーカス制御装置40にオートフォーカスを有効にする(S5)。これにより、フォーカス制御装置40は、合焦検出装置56の出力に従い、ビデオカメラ10の撮影画像内で被写体(主として、撮影対象の架空線)がシャープになるようにビデオカメラ10のフォーカスを自動制御する。この状態では、例えば、図5(a)に示すように、架空線は傾いて撮影されている。
【0043】
カメラ・架台制御装置38は、上述したように、傾き算出装置48の算出結果に従い、カメラ回転アクチュエータ14Rによりビデオカメラ10をその撮影光軸を中心に回転させ、図5(b)に例示するように、撮影されている架空線を水平化する(S6)。
【0044】
更に、カメラ・架台制御装置38は、制御目標決定装置50からの目標チルト角に従い、チルトアクチュエータ14Tを介してカメラ架台12のチルト角を制御し、ズーム制御装置54が、制御目標決定装置50からの目標ズーム値に従い、ビデオカメラ10の光学ズームを広角側又は望遠側に制御する(S7)。これにより、図5(c)に例示するように、撮影対象の架空線が、適切に拡大されたサイズで撮影される。
【0045】
何れかでエラーが検出されると、ステップS1に戻る(S9)。これは、自動で行っても良いし、オペレータが手動で行っても良い。このエラーは例えば、突風等により撮影対象の架空線が突然、ビデオカメラ10の撮影視野から外れてしまい、自動追尾が不可能になった場合等である。
【0046】
オペレータが、追尾モードをオフにするまで(S10)、ステップS6〜S9を繰り返す。説明の都合上、ステップS6,S7,S9を逐次的に実行するとしたが、これらを同時並行に実行しても良いことは明らかである。
【0047】
上記実施例では、ビデオカメラ10の光学ズーム制御及びフォーカス制御の態様又は動作を理解しやすいように、フォーカス制御装置40、ズーム制御装置54及び合焦検出装置56をビデオカメラ10の外部に図示したが、多くのビデオカメラでは、フォーカス制御装置40、ズーム制御装置54及び合焦検出装置56に相当する機能はビデオカメラに内蔵されている。即ち、本発明におけるビデオカメラは、フォーカス制御装置40、ズーム制御装置54及び合焦検出装置56の何れかを内蔵するものを含む。
【0048】
上記実施例では、架空線の撮影(録画)と同様に、撮影線座標算出装置30が、レーザ測距装置28により測距された架空線の3次元座標を算出したが、録画後に地上で算出しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施例の概略構成ブロック図である。
【図2】カメラ架台12によるビデオカメラ10の回転方向を示す説明図である。
【図3】レーザ測距装置28の走査範囲とビデオカメラ10の撮影範囲の関係を示す模式図である。
【図4】本実施例の制御フローチャートである。
【図5】本実施例の撮影画像の変化例である。
【符号の説明】
【0050】
10:ビデオカメラ
12:カメラ架台
14P:パンアクチュエータ
14T:チルトアクチュエータ
14R:カメラ回転アクチュエータ
16P,16T,16R:角度検出器
18:高精細モニタ
20:VTR
22:VTR制御装置
24:GPS受信機
26:姿勢検出装置
28:走査型レーザ測距装置
30:撮影線座標算出装置
32:代表線指定装置
34:選択装置
36:代表線距離・方向算出装置
38:カメラ・架台制御装置
40:フォーカス制御装置
42:操作装置
44:フレームメモリ
46:線抽出装置
48:傾き算出装置
50:制御目標決定装置
52:線指定装置
54:ズーム制御装置
56:合焦検出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
架空線を撮影する架空線撮影システムであって、
光学ズーム機能及びオートフォーカス機能を具備し、外部制御信号によりマニュアルでフォーカスを制御可能なビデオカメラ(10,40,56)と、
当該ビデオカメラの撮影映像情報を記録する記録手段(20)と、
当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能を制御するズーム制御手段(54)と、
当該ビデオカメラの撮影方向を変更する撮影方向変更手段(14P,14T)と、
当該ビデオカメラをその撮影光軸を中心として回転するカメラ回転手段(14R)と、
当該架空線までの距離及び方向を計測する距離・方向計測手段(28)と、
当該ビデオカメラの撮影画像から線画像を抽出する線抽出手段(46)と、
当該線抽出手段(46)で抽出された線画像の傾きを算出する傾き算出手段(48)と、
当該線抽出手段(46)の抽出結果に従い、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標及び当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定する制御目標決定手段(50)と、
当該ズーム制御手段、当該撮影方向変更手段及び当該カメラ回転手段を制御する制御手段(38)であって、初期的には、当該距離・方向計測手段の計測結果に従い、当該ビデオカメラの当該フォーカスを制御すると共に、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラの当該撮影方向を変更し、追尾モードでは、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能及び当該オートフォーカス機能を有効にし、当該制御目標決定手段の当該光学ズーム機能の制御目標に従い、当該架空線が所定サイズで撮影されるように当該ズーム制御手段に当該光学ズーム機能を制御させ、当該傾き算出手段の算出結果に従い、当該架空線が撮影画面内で所定方向に向くように当該カメラ回転手段を制御し、当該制御目標決定手段の当該撮影中心の制御目標に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを第1の方向に制御し、当該距離・方向計測手段の計測結果に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを当該第1の方向に直交する第2の方向に制御する制御手段
とを具備することを特徴とする架空線撮影システム。
【請求項2】
当該距離・方向計測手段が、計測された複数の当該架空線の計測値から代表線の計測結果を選択する選択手段(34)を具備することを特徴とする請求項1に記載の架空線撮影システム。
【請求項3】
更に、当該ビデオカメラを支持するカメラ架台であって、当該ビデオカメラをその撮影光軸を中心として回転可能な回転架台と、当該回転台上に設置され、当該ビデオカメラの撮影方向を2軸方向に変更可能な、当該ビデオカメラを直接支持する架台とからなることを特徴とする請求項1又は2に記載の架空線撮影システム。
【請求項4】
当該制御目標決定手段(50)は、単一の架空線を目標とする場合、当該架空線が所定サイズで撮影されるように当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標を決定し、当該架空線が撮影画面の所定位置に位置するように、当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定し、複数の架空線を目標とする場合、当該複数の架空線が撮影画面内の所定範囲に入るように当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標を決定し、当該複数の架空線の中心が撮影画面の所定位置に位置するように、当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の架空線撮影システム。
【請求項5】
光学ズーム機能及びオートフォーカス機能を具備し、外部制御信号によりマニュアルでフォーカスを制御可能なビデオカメラ(10,40,56)と、
当該ビデオカメラの撮影映像情報を記録する記録手段(20)と、
当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能を制御するズーム制御手段(54)と、
当該ビデオカメラの撮影方向を変更する撮影方向変更手段(14P,14T)と、
当該ビデオカメラをその撮影光軸を中心として回転するカメラ回転手段(14R)と、
撮影対象までの距離及び方向を計測する距離・方向計測手段(28,32,34,36)
とを具備する架空線撮影システムにより架空線を撮影する方法であって、
当該距離・方向計測手段の計測結果に従い、当該ビデオカメラの当該フォーカスを制御すると共に、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラの当該撮影方向を変更する初期ステップと、
追尾モードへの移行指示に従い、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能及び当該オートフォーカス機能を有効にするステップと、
当該ビデオカメラの撮影画像から線画像を抽出する線抽出ステップと、
当該線抽出ステップで抽出された線画像の傾きを算出する傾き算出ステップと、
当該線抽出ステップの抽出結果に従い、当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標及び当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定する制御目標決定ステップと、
当該制御目標決定ステップで決定された当該光学ズーム機能の制御目標に従い、当該架空線が所定サイズで撮影されるように当該光学ズーム機能を制御するズーム制御ステップと、
当該傾き算出ステップの算出結果に従い、当該架空線が撮影画面内で所定方向に向くように当該カメラ回転手段を制御するカメラ回転制御ステップと、
当該制御目標決定ステップの当該撮影中心の制御目標に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを第1の方向に制御し、当該距離・方向計測手段(28)の計測結果に従い、当該撮影方向変更手段により当該ビデオカメラを当該第1の方向に直交する第2の方向に制御する撮影方向変更ステップ
とを具備することを特徴とする架空線撮影方法。
【請求項6】
当該制御目標決定ステップは、
単一の架空線を目標とする場合に、当該架空線が所定サイズで撮影されるように当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標を決定し、当該架空線が撮影画面の所定位置に位置するように、当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定するステップと、
複数の架空線を目標とする場合に、当該複数の架空線が撮影画面内の所定範囲に入るように当該ビデオカメラの当該光学ズーム機能の制御目標を決定し、当該複数の架空線の中心が撮影画面の所定位置に位置するように、当該ビデオカメラの撮影中心の制御目標を決定するステップ
とを具備することを特徴とする請求項5に記載の架空線撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−86471(P2009−86471A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258278(P2007−258278)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000213909)朝日航洋株式会社 (30)
【Fターム(参考)】