説明

染色体再編成を伴う腫瘍の診断、予後及び治療のためのマイクロRNAに基づいた方法及び組成物

提供されるものは、染色体再編成を伴う腫瘍、特に甲状腺の腫瘍又は新生物の診断、予後及び治療のための新規方法及び組成物である。加えて、抗腫瘍剤を同定する方法が記載される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に分子生物学の分野に関する。より詳細には、マイクロRNA(miRNA又はmiR)分子を伴う方法及び組成物に関する。分析のために又はmiRNAアレイのような分析用ツールとしてmiRNAを単離する、標識する、調製する方法及び組成物が記載される。加えて、診断、治療及び予後におけるmiRNAの適用がある。より詳細には、本発明は、miR、特に、染色体切断点領域に近接して位置するmiRクラスターに属するmiRの、染色体再編成を伴う腫瘍の治療における診断及び治療標的としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍の発生は、多くの場合、遺伝子調節及び発現の変更によってもたらされる転座のような染色体再編成を伴う。例えば、甲状腺腺腫は、7トリソミー及び染色体再編成を有するクローン染色体異常を示す。甲状腺腺腫は、被包性増殖及び侵襲性の欠如それぞれによってその悪性の対応物、すなわち濾胞状癌と区別することができる高頻度のヒト腫瘍である。ヨウ素が十分な領域においても、甲状腺腺腫は4〜7%の成人において生じ、ヨウ素が不足している領域では、この数字は約50%に上昇しうる。これらの頻繁な良性腫瘍の病因は、不十分にしか理解されていないが、クローン染色体異常は、ほぼ40%の小結節において観察することができ、疾患の発生に関わるゲノム領域及び遺伝子の位置を正確に示す可能性がある(DeLellis、内分泌器官の腫瘍の病理学及び遺伝学(Pathology and genetics of tumours of endocrine organs)、2003年4月23〜26日、フランス、リヨンにおける編集及び見解統一会議、320 S.IARCプレス、リヨン、2004年)。ほぼ20%の腫瘍は、7トリソミーを有するクローン染色体異常を示し(Bartnitzkeら、癌、遺伝学、細胞遺伝学(Cancer Genet. Cytogenet.)39(1989年)、65〜68頁)、クローン細胞遺伝学的異常を有する腫瘍の約20%は、染色体バンド19q13を伴う異常を示す(Belgeら、癌、遺伝学、細胞遺伝学(Cancer Genet. Cytogenet.)101(1998年)、42〜48頁)。ヨーロッパ及び米国における甲状腺腺腫の極めて高い罹患率を考慮するだけでも、4〜5百万人が甲状腺におけるこのゲノム変更によって影響を受けていると推定することができる。19q13切断点は、位置クローニングにより150kbのセグメントに指定されており、このクラスター領域における可能な標的遺伝子は、いくらか詳細に調査されてきた(Belgeら、細胞遺伝学(Cytogenet. Cell Genet.)93(2001年)、48〜51頁;Rippeら、遺伝子染色体癌(Genes Chromosomes Cancer)26(1999年)、229〜236頁)。しかし、染色体19の長腕は、ヒトゲノムの他の領域と比較して著しく高い遺伝子密度を示し、今まで、タンパク質コード遺伝子だけがこれらの高頻度構造的染色体異常の標的として考慮されてきた。
【0003】
染色体異常を伴う腫瘍の療法についての相当数の研究にもかかわらず、この種類の腫瘍、特に甲状腺腺腫は、効果的に診断し、治療することが困難なままであり、この疾患の診断、治療及び予防において改善が必要であることを示している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、部分的には、2つのマイクロRNA(miRNA)遺伝子クラスター、すなわち、染色体再編成の染色体切断点領域に極めて近接して位置し、正常対照細胞と比べて一貫して活性化されるC19MC及びmiR−371−3の甲状腺腺腫特異的特徴を同定することに基づいている。
【0005】
したがって、本発明は、被験者が、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍を有するか又は発生する危険性があるかを診断する方法であって、被験者の試験試料における少なくとも1つのマイクロRNA(miR)のレベルを測定することを含む方法を包含する。対照試料における対応するmiRのレベルと比べた試験試料におけるmiRのレベルの変更は、被験者が前記腫瘍を有する又は発生する危険性がある、のいずれかであることを示す。
【0006】
特定の態様では、被験者が、甲状腺の腫瘍又は新生物を有するか又は発生する危険性があるかを診断する方法であって、被験者の試験試料における少なくとも1つのマイクロRNA(miR)のレベルを測定することを含む方法が、本明細書において提供される。対照試料における対応するmiRのレベルと比べた試験試料におけるmiRのレベルの変更、特に増加は、被験者が甲状腺の腫瘍又は新生物を有する又は発生する危険性がある、のずれかであることを示す。
【0007】
別の特定の態様では、miR発現と、好ましくは染色体再編成、特に染色体転座を伴う腫瘍との相関関係又は前記腫瘍の素因を同定することを含み、(a)疾患又は状態を有する又は有することが疑われる被験者の試料から単離されたmiRを標識すること;(b)miRをmiRアレイにハイブリダイズすること;(c)アレイへのmiRハイブリダイゼーションを決定すること;及び(d)基準と比較して疾患又は状態の代表的な試料に異なって発現したmiRを同定することを含む方法が、本明細書において提供される。
【0008】
特定の態様では、miR発現と、好ましくは、染色体19、特に染色体バンド19q13での染色体再編成を伴う腫瘍との相関関係を同定することを含み、被験者の試験試料における少なくとも1つのマイクロRNA(miR)のレベルを測定することを含む方法が、本明細書において提供される。対照試料における対応するmiR試験のレベルと比べた試験試料におけるmiRのレベルの変更、特に増加は、被験者が前記腫瘍を有する又は発生する危険性がある、のいずれかであることを示す。
【0009】
典型的には、本発明の方法は、試験試料における少なくとも1つのmiRのレベルを測定することを含み、ここでmiRは、染色体再編成、特に染色体転座に関連する切断点領域に近接して位置するmiRクラスターである又はそれに属する。
【0010】
特定の態様では、異なって発現したmiRを同定することは、試料のmiRプロフィールを生成すること及びmiRプロフィールを評価して、試料におけるmiRが正常試料と比較して異なって発現しているかを決定することを含む方法が、本明細書において提供される。特定の実施態様において、miRプロフィールは、表3に示されているように、C19MCクラスター及び/又はmiR−371−3クラスターの1つ以上のmiRから選択される。好ましくは、miRプロフィールは、miR−371−3クラスターの1つ以上のmiRから選択される。
【0011】
特定の態様において、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍は、甲状腺の1つ以上の腫瘍又は新生物、特に甲状腺腺腫である。特定の態様において、miRプロフィールは、表3に示されている1つ以上のmiRから選択され、ここでは、甲状腺腺腫細胞は正常細胞と区別されている。
【0012】
特定の実施態様において、miRプロフィールは、miR−512−5p、miR−517a、miR−519a、miR−520c、miR−371−3p、miR−372及びmiR−373からなる群より選択される少なくとも1つのmiRを伴い、ここで正常試料と比較した1つ以上のmiRNAの発現における差は、甲状腺腺腫を示す。
【0013】
特定の態様では、正常試料と比較したhsa−mir−371; hsa−miR−371−3p; hsa−miR−371−5p; hsa−miR−372; hsa−miR−373; hsa−miR−373*; hsa−mir−512−1; hsa−miR−512−5p; hsa−miR−512−3p; hsa−mir−512−2; hsa−miR−512−5p; hsa−miR−512−3p; hsa−mir−515−1; hsa−miR−515−5p; hsa−miR−515−3p; hsa−mir−515−2; hsa−miR−515−5p; hsa−miR−515−3p; hsa−mir−516a−1; hsa−miR−516a−5p; hsa−miR−516a−3p; hsa−mir−516a−2; hsa−miR−516a−5p; hsa−miR−516a−3p; hsa−mir−516b−1; hsa−miR−516b; hsa−miR−516b*; hsa−mir−518b; hsa−miR−517a; hsa−miR−517*; hsa−miR−517b; hsa−miR−517*; hsa−mir−517c; hsa−miR−517*; hsa−mir−518a−1; hsa−miR−518a−5p; hsa−miR−518a−3p; hsa−mir−518a−2; hsa−miR−518a−5p; hsa−miR−518a−3p; hsa−miR−518b; hsa−miR−518c; hsa−miR−518c*; hsa−mir−518d; hsa−miR−518d−5p; hsa−miR−518d−3p; hsa−miR−518e; hsa−miR−518e*; hsa−mir−518f; hsa−miR−518f*; hsa−mir−519a−1; hsa−miR−519a; hsa−miR−519a*; hsa−mir−519a−2; hsa−mir−519b; hsa−miR−519b−5p; hsa−miR−519b−3p; hsa−mir−519c; hsa−miR−519c−5p; hsa−miR−519c−3p; hsa−miR−519d; hsa−mir−519e; hsa−miR−519e; hsa−miR−519e*; hsa−mir−520a; hsa−miR−520a−5p; hsa−miR−520a−3p; hsa−miR−520b; hsa−mir−520c; hsa−miR−520c−5p; hsa−miR−520c−3p; hsa−mir−520d; hsa−miR−520d−5p; hsa−miR−520d−3p; hsa−mir−520e; hsa−miR−520f; hsa−miR−520g; hsa−miR−520h; hsa−mir−521−1; hsa−mir−521−2; hsa−miR−521; hsa−mir−522; hsa−miR−522*; hsa−mir−523; hsa−miR−523*; hsa−mir−524; hsa−miR−524−5p; hsa−miR−524−3p; hsa−mir−525; hsa−miR−525−5p; hsa−miR−525−3p; hsa−mir−526a−1; hsa−miR−526a; hsa−mir−526a−2; hsa−mir−526b; hsa−miR−526b*; and/or hsa−miR−527;(詳細は表1を参照すること)の発現の増加が甲状腺腺腫を示す方法が、本明細書において提供される。
【0014】
本発明の方法の幾つかの実施態様において、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍は、被験者における1つ以上の予後マーカーと関連する。例えば、甲状腺腺腫の場合、予後マーカーは7トリソミーである。加えて、分子診断マーカー、すなわち甲状腺の腫瘍及び新生物の核酸配列及びタンパク質は、国際出願WO2003/093310、WO2002/083727及びWO2001/027265に記載されており、これらの開示内容は参照として本明細書に組み込まれる。
【0015】
特定の態様では、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍の細胞の増殖を阻害する方法であって、
【0016】
(i)対照細胞と比べて、染色体再編成を有する腫瘍細胞においてその発現が誘導又は増加される1つ以上のmiRの発現又は活性を阻害する1つ以上の作用物質を、細胞に導入すること;及び
【0017】
(ii)1つ以上の作用物質がmiRの発現又は活性を阻害する条件下に細胞を維持し、それによって腫瘍細胞の増殖を阻害することを含む方法が、本明細書において提供される。
【0018】
特定の実施態様において、細胞はヒト細胞である。
【0019】
特定の態様において、miR−371−3p、miR−372及びmiR−373の発現が上方制御され、甲状腺腫瘍のような好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍、すなわち甲状腺腺腫において下方制御されている、細胞増殖の制御に関与する腫瘍サプレッサーLATS2又は他の遺伝子を共通推定標的として有する方法が、本明細書において提供される。
【0020】
特定の態様では、正常組織と比較して、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍の細胞におけるC19MCクラスターの少なくとも1つのmiR及び/又はmiR−371−3クラスターの少なくとも1つのmiRのレベルを調節する方法であって、幾つかの場合では過剰発現の原因であるプミリオホモログ1(PUM1)遺伝子(実施例4を参照すること)の発現を低減又は阻害する作用物質の有効量を投与することを含む方法が、本明細書において提供される。
【0021】
少なくとも1つのmiRのレベルは、当業者に周知の多様な技術を使用して測定することができる。一つの実施態様において、少なくとも1つのmiRのレベルは、ノーザンブロット分析を使用して測定される。別の実施態様において、試験試料における少なくとも1つのmiRのレベルは、対照試料における対応するmiRのレベルよりも大きい。
【0022】
本発明は、被験者において1つ以上の予後マーカーに関連する腫瘍を診断する方法であって、被験者の腫瘍試料において少なくとも1つのmiRのレベルを測定することを含み、対照試料における対応するmiRのレベルと比べて、試験試料における少なくとも1つのmiRのレベルの変更、特に増加が、被験者が1つ以上の予後マーカーと関連する腫瘍を有することを示す方法も提供する。一つの実施態様において、少なくとも1つのmiRのレベルは、被験者から得た試験試料のRNAを逆転写して、一連の標的オリゴデオキシヌクレオチドを提供すること;標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miR特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズして、試験試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを提供すること;及び試験試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを、対照試料から生成したハイブリダイゼイーションプロフィールと比較することによって測定される。少なくとも1つのmiRのシグナルにおける変更は、被験者がそのような腫瘍を有する又は発生する危険性がある、のいずれかであることを示す。一つの実施態様において、予後マーカーは、クローン細胞遺伝学的異常のような有害予後マーカー、例えば7トリソミー及び特に染色体バンド19q13を伴う構造変更を有するクローン染色体異常を含む。
【0023】
本発明は、被験者の腫瘍を治療する方法であって、少なくとも1つのmiRのシグナルが対照試料から生成されたシグナルと比べて調節解除(例えば、上方制御)される方法も包含する。
【0024】
本発明は、被験者から得た試験試料のRNAを逆転写して、一連の標的オリゴデオキシヌクレオチドを提供すること;標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miR特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズして、試験試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを提供すること;及び試験試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを、対照試料から生成したハイブリダイゼイーションプロフィールと比較することによって、被験者が被験者において1つ以上の有害予後マーカーに関連する腫瘍を有するか又は発生する危険性があるかを診断する方法も包含する。シグナルにおける変更、特に増加は、被験者が腫瘍を有する又は発生する危険性がある、のいずれかであることを示す。
【0025】
本発明は、少なくとも1つのmiRが対照細胞と比べて被験者の腫瘍細胞において上方制御されている腫瘍を有する被験者において、腫瘍を治療する方法も包含する。少なくとも1つのmiRが腫瘍細胞において上方制御されている場合、方法は、少なくとも1つのmiRの発現を、被験者における腫瘍細胞の増殖が阻害されるように阻害する、少なくとも1つの化合物の有効量を被験者に投与することを含む。
【0026】
関連する実施態様において、本発明は、被験者において腫瘍を治療する方法であって、対照細胞と比べて腫瘍細胞において少なくとも1つのmiRの量を決定し、腫瘍細胞に発現するmiRの量が対照細胞に発現するmiRの量よりも大きい場合、被験者における腫瘍細胞の増殖を阻害するように、被験者に少なくとも1つの単離miRの有効量を投与して、腫瘍細胞に発現するmiRの量を変更することを含む方法を提供する。
【0027】
本発明は、少なくとも1つのmiR発現インヒビター化合物及び薬学的に許容される担体を含む、腫瘍を治療するための医薬組成物を更に提供する。より詳細には、本発明は、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍に罹患している被験者を治療する医薬組成物であって、染色体再編成の切断点領域に近接して位置するmiRクラスターに属する少なくとも1つのmiRの発現を阻害することができる又はmiRの活性の量若しくはレベルを減少することができる化合物と、場合により薬学的に許容される担体とを含む前記組成物に関する。通常、治療される被験者は、腫瘍を罹患することが本発明の方法によって診断される。
【0028】
他の実施態様において、本発明は、腫瘍に対する抗腫瘍剤を同定することであって、試験剤を細胞に提供すること及び染色体再編成を有する腫瘍細胞における発現レベルの増加に関連する少なくとも1つのmiRのレベルを測定することを含み、適切な対照細胞と比べて細胞におけるmiRのレベルの減少が、試験剤が抗腫瘍剤であること示すことを提供する。
【0029】
更なる実施態様において、本発明は、被験者が腫瘍を有するか又は発生する危険性があるかを診断する本発明の方法;miR発現と、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍との相関関係を同定することを含む本発明の方法;又は本明細書に記載される抗腫瘍剤を同定する本発明の方法に有用なキットであって、1つ以上のmiRを検出するために1つ以上の試薬を含む前記キットに関する。
【0030】
特定の態様において、本明細書に開示されているように、少なくとも1つのmiRは、C19MCクラスター及び/又はmiR−371−3クラスターから選択される。特定の実施態様において、miRは、miR−512−5p、miR−517a、miR−519a、miR−520c、miR−371−3p、miR−372及びmiR−373からなる群より選択される。
【0031】
特定の態様において、好ましくは染色体再編成、すなわち染色体転座、特に19q13.4を伴う平衡転座を伴う腫瘍は、ヒト新生物、より詳細には、甲状腺腺腫、間葉腫瘍又はリンパ腫のようなヒト上皮腫瘍である。
【0032】
特定の態様では、その発現が特定の甲状腺腫瘍、すなわちヒストタイプ、被包性増殖及び侵襲性の欠如、並びにヨウ素が十分な領域における罹患率のような甲状腺腺腫の生物病理学的特徴と相関するmiRNAの同定も本明細書において提供される。
【0033】
好ましい実施態様において、本発明の方法は、miRクラスター、特にC19MCクラスター及び/又はmiR−371−3クラスター、より好ましくは前記C19MC及びmiR−371−3クラスターのいずれか1つ又は両方でコードされているマイクロRNAの1つ又は幾つかの同時解析及び標的化をそれぞれ含む。
【0034】
別の特定の態様では、その活性化及び過剰発現の原因である機構を制御することにより、例えばPUM1プロモーターを下方制御してこれらのmiRの発現を変更する、そうでなければPUM1エクソン/イントロン配列の近接部分と、特にC19MCクラスター及び/又はmiR−371−3クラスターにおける染色体19の配列との融合転写物の発現、安定性、分解などに干渉する方法も、本明細書において開示される。PUMIをコードする核酸分子とハイブリダイズするPUM1、特にオリゴヌクレオチド化合物の発現を調節する化合物及び方法は、当業者に知られており、例えば米国特許出願US2005/0261217A1に記載されており、その開示内容は参照として本明細書に組み込まれる。
【0035】
本発明の多様な目的及び利点は、好ましい実施態様及び実施例の以下の詳細な説明を、添付の図面を考慮して読んだとき、当業者に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
特許又は出願ファイルは、カラーで作製された1つ以上の図面及び/又は1つ以上の写真を含有する場合がある。カラー図面及び/又は写真を有するこの特許又は特許出願公報のコピーは、要請があり、必要な費用が支払われたら欧州特許庁又は米国特許商標庁によって提供されうる。
【図1】2つのmiRNAクラスターのC19MC及びmiR−371−3を有する染色体領域19q13.4の略図である。約150kbの良性甲状腺腫瘍の共通切断点クラスター(BPC)が垂直方向の矢で示されている。miR−512−1(プリmiR)は、成熟miR−512−5pをコードし、miR−371(プリmiR)は、成熟miR371−3pをコードしている。遺伝子符号は以下のタンパク質コード遺伝子を意味する:ZNF331=ジンクフィンガータンパク質331、DPRX=多岐対関連ホメオボックス、NLRP12=12含有NLRファミリーピリンドメイン。
【図2A】細胞株及び原発性腫瘍におけるmiR−520c、miR−371−3p、miR−372及びmiR−373の発現である。miRNAの相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。miRNAの値をRNU65B(RNA、U6核内低分子2)に規準化した。19q13.4の再編成を有する腺腫から誘導した5つの細胞株(S141.2、S290.1、S121、S211、S40.2)(黒色棒)及び他の構造的再編成を有する甲状腺腺腫から誘導した3つの細胞株(S533、S325、S270.2)(白色棒)の甲状腺細胞株におけるmiR−520cの発現。
【図2B】非新生物性甲状腺組織の3つの試料(Th1、Th2、Th3)(白色棒)、19q13.4の再編成を有する5つの腺腫(S801、S849、S842、S846、S814)(黒色棒)及び細胞遺伝学的に検出可能な異常を有さない5つの腺腫(S805、S806、S889、S920、S925)(白色棒)におけるmiR−520cの発現。
【図2C】非新生物性甲状腺組織の3つの試料(黒色点付棒(miR−371−3p)、斜線棒(miR−372)及び横線棒(miR−373))、19q13.4の再編成を有する5つの腺腫(黒色(miR−371−3p)、大方眼棒(miR−372)及び小方眼棒(miR−373))、並びに細胞遺伝学的に検出可能な異常を有さない5つの腺腫(黒色点付棒、斜線棒及び横線棒))(ケース番号は表2を参照すること)。
【図2D】19q13.4の再編成を有する腺腫から誘導した5つの細胞株(黒色棒(miR−371−3p)、大方眼棒(miR−372)及び小方眼棒(miR−373))、並びに他の構造的再編成を有する甲状腺腺腫から誘導した3つの細胞株(黒色点付棒(miR−371−3p)、斜線棒(miR−372)及び横線棒(miR−373))(ケース番号は表2を参照すること)。標準偏差における高い変動は、非常に高いCt値に起因する。
【図3】細胞株S40.2における転座t(1;19)(p35.2;13.4)によりもたらされる誘導染色体1への融合遺伝子のゲノム構造である。細胞株S40.2において同定された融合転写物PUM1−FUS−19q−I(ジェンバンク受入番号GQ334687)及びPUM1−FUS−19q−II(ジェンバンク受入番号GQ334688)の由来を説明する詳細な概略図である。1p35.2におけるPUM1のゲノム領域は、19q13.4におけるC19MCのゲノム領域に、PUM1のエクソン10の後で融合する。2本の垂直棒は、両方とも選択的スプライシングにより始まるPUM1−FUS−19q−I及びPUM1−FUS−19q−IIそれぞれにおけるPUM1のエクソン1−10の後に位置する3′−配列を示す。融合転写物を、3′−RACE−PCR(PUM1−FUS−19q−I)又はRT−PCR(PUM1−FUS−19q−II)のいずれかの実験によって検出した。定量化したmiRNAをその名称により強調した。
【図4】RT−PCRによるmiR−517aの発現分析である。PCR反応を実施し、次に4%小型DNAアガロースにより分析した。予測されるDNAフラグメントは、62bpの大きさを有するので、Ultra low range Ladder(Fermentas)をマーカー(M)として使用した。レーン1:S40.2、2:逆転写酵素なしのS40.2(−RT)、3:S121、4:S121−RT、5:甲状腺(正常)、6:甲状腺−RT、7:胎盤、8:胎盤−RT、9:S270.2、10:S270.2−RT、11:S290.1、12:S290.1−RT、13:S141.2、14:S325、15:S211、16:S211−RT、17:胎児RNA、18:成人精巣、19:胎児RNA−RT、20:S141.2−RT、21:成人精巣−RT、22:S325−RT(細胞株及び腫瘍試料についての詳細は、表1を参照すること)。
【図5】細胞株S40.2における転座t(1;19)(p35.2;13.4)によりもたらされる誘導染色体1への融合遺伝子のゲノム構造である。細胞株S40.2において同定された融合転写物PUM1−FUS−19q−I(ジェンバンク受入番号GQ334687)及びPUM1−FUS−19q−II(ジェンバンク受入番号GQ334688)の由来を説明する詳細な概略図である。1p35.2におけるPUM1のゲノム領域は、19q13.4におけるC19MCのゲノム領域に、PUM1のエクソン10の後で融合する。2本の垂直棒は、両方とも選択的スプライシングにより始まるPUM1−FUS−19q−I及びPUM1−FUS−19q−IIそれぞれにおけるPUM1のエクソン1−10の後に位置する3′−配列を示す。融合転写物を、3′−RACE−PCR(PUM1−FUS−19q−I)又はRT−PCR(PUM1−FUS−19q−II)のいずれかの実験によって検出した。定量化したmiRNAをその名称により強調した。
【図6】細胞株S40.2の部分核型である。t(1;19)(p35.2;q13.4)によりもたらされる染色体1及び19、並びにそれらの誘導体を示す部分Gバンド核型である。
【図7】中期FISHによるPUM1切断点の図解である。両方とも1p35.2におけるPUM1のゲノム配列の全体に及んでいる2つの重複するBACクローン、RP11−201O14及びRP11−1136E4を有する、FISHの後の細胞核S40.2の中期の一部である。1p35.2における切断点はPUM1の中に位置し、RP11−201O14及びRP11−1136E4の分離により示されている。der(1)に対するRP11−1136E4の弱い残留シグナルのため、切断点は、RP11−201O14に対して遠位のRP11−1136E4の中に位置する。
【図8】miR−371−3pの相対的な発現である。miR−371−3pの相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。
【図9】miR−372の相対的な発現である。miR−372の相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。
【図10】miR−373の相対的な発現である。miR−373の相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。
【図11】miR−520c.3pの相対的な発現である。miR−520c−3pの相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。
【図12】miR−371−3pの相対的な発現である。miR−371−3pの相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。絨毛膜絨毛の核型を括弧内に示す。
【図13】miR−372の相対的な発現である。miR−372の相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。
【図14】miR−373の相対的な発現である。miR−373の相対的な発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。
【図15】miR−520c−3pの相対的な発現である。2つの甲状腺腺腫組織(1つは19q13.4の再編成がなく(S925)、1つは19q13.4再編成がある(S958))、19q13.4の再編成がある甲状腺腺腫から誘導された1つの細胞株(S40.2)、並びに8つの異なる培養絨毛膜絨毛(第1及び/又は第2継代)におけるmiR−520c−3pの相対的発現は、リアルタイムPCR(3つの独立した実験の平均標準偏差)により決定した。Ct値をmiR−103に規準化した。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明は、miRNAの調製及び特徴決定、並びに染色体再編成、特に染色体転座のため発生する腫瘍の治療、予後及び診断用途におけるmiRNAの使用に関する組成物及び方法を対象とする。
【0038】
本発明は、ヨウ素が十分な領域でも高い罹患率を有する一般的なヒト腫瘍である甲状腺腺腫に基づき、それにより説明される。染色体バンド19q13.4の再編成は、甲状腺腺腫において頻繁に見られ、まさに、ヒト上皮癌における最も頻度のある特定の染色体転座となっている(Belgeら、癌、遺伝学、細胞遺伝学(Cancer Genet. Cytogenet.)101(1998年)、42〜48頁)。2つのマイクロRNA(miRNA)遺伝子クラスター、すなわちC19MC及びmiR−371−3は、これらの染色体再編成の切断点領域に極めて近接して位置している。マイクロRNAのmiR−520c及びmiR−373に関連する幹細胞は、これらのクラスターのメンバーであり、インビトロ及びインビボにおいて上皮細胞の侵襲性増殖に関与している(Huangら、ネイチャー細胞生物学(Nat.Cell Biol.)10(2008年)、202〜210頁)。
【0039】
腫瘍形成におけるマイクロRNAの役割についての概念は、例えばCalinら、2002年により取り組まれ、染色体再編成において見られる切断点と、マイクロRNAをコードする遺伝子の指定との間の関連性を2004年に示した(Calinら、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)99(2002年)、15524〜15529頁;Calinら、米国科学アカデミー紀要101(2004年)、2999〜3004頁)。更に、miRNA配座への位置が近いことに起因する細胞原腫瘍形成遺伝子、すなわちc−mycの活性化が記載されている(Calinら、(2004年)、上記;Gauwerkyら、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci. USA)86(1989年)、8867〜8871頁)。しかし、染色体再編成において見られる切断点とmiRNA遺伝子の位置との一致は知られているが、腫瘍形成マイクロRNAの活性化をもたらす転座の例は今まで示された又は考慮されたことがない(例えば、Calin及びCroce、臨床研究(J. Clin. Invest.)117(2007年)2059〜2066頁を参照すること)。
【0040】
本発明の範囲内で実施された実験は、驚くべきことに、染色体バンド19q13.4の再編成によって、C19MC及びmiR−371−3クラスターの両方が一貫して活性化され、したがって甲状腺腺腫の個別の分子サブタイプの描写を可能にすることを明らかにした。ヒト新生物において19q13.4の再編成が頻繁に生じることを考慮すると、本発明は、現在、両方のクラスターの活性化は、ヒト新生物においてより一般的な現象である及びmiRの変更された発現は、他の染色体再編成を伴う腫瘍においても有意でありうる、という見解である。
【0041】
したがって、本発明は、被験者が、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍を有するか又は発生する危険性があるかを診断する方法であって、被験者の試験試料において少なくとも1つのマイクロRNA(miR)のレベルを測定することを含み、対照試料における対応するmiRのレベルと比べた試験試料におけるmiRのレベルの存在又は増加が、被験者が前記腫瘍を有する又は発生する危険性がある、のいずれかであることを示す方法に関する。
【0042】
更に、本発明は、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍に罹患している被験者を治療する医薬組成物であって、先行請求項のいずれかにおいて定義された又は本明細書において、より特定的には表1において定義された少なくとも1つのmiRの発現を阻害することができる又はmiRの活性の量若しくはレベルを減少することができる化合物と、場合により薬学的に許容される担体とを含む前記組成物に関する。
【0043】
加えて、本発明は、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍の細胞の増殖を阻害する方法であって、
(i)対照細胞と比べて、好ましくは染色体再編成を有する腫瘍細胞においてその発現が誘導又は増加される1つ以上のmiRの発現又は活性を阻害する1つ以上の作用物質を、細胞に導入すること;及び
(ii)1つ以上の作用物質がmiRの発現又は活性を阻害する条件下に細胞を維持し、それによって腫瘍細胞の増殖を阻害すること
を含む方法に関する。
【0044】
本明細書に開示される方法、プロセス及び/又は使用のそれぞれ及びいずれかに付される腫瘍が良性又は悪性腫瘍であることは、本発明の範囲内である。実施態様において、腫瘍は、甲状腺の腫瘍若しくは甲状腺過形成、乳房の悪性癌、良性若しくは悪性の生殖細胞系の腫瘍又は卵巣癌である。
【0045】
更に、本発明は、胎盤及び/又は妊娠性障害の状態を診断又は決定する方法であって、被験者の試験試料における少なくとも1つのマイクロRNA(miR)のレベルを測定することを含み、対照試料における対応するmiRのレベルと比べた試験試料におけるmiRのレベルの存在又は増加が、被験者が胎盤及び/又は妊娠性障害の前記状態を有する又は発生する危険性がある、のいずれかであることを示す方法に関する。その実施態様において、miRは本明細書に開示されているmiRであり、好ましくは、miRはmiRクラスターに属し、好ましくは、miRクラスターは、C19MCクラスター及びmiR−371−3クラスターを含む群から、より好ましくは表1のmiRから選択される。実施態様において、胎盤及び/又は妊娠性障害は、子癇前症、子宮内発育遅延、胎盤の奇胎(placenta moles)及びこれらの残遺物から選択される。別の実施態様において、方法は、胎児の染色体異常の診断のためである。より好ましい実施態様において、染色体異常は、X染色体又は21トリソミーの欠失である。
【0046】
本発明は、また、腫瘍に対する抗腫瘍剤を同定する方法であって、試験剤を細胞に提供すること及び好ましくは染色体再編成を有する腫瘍細胞における発現レベルの増加に関連する少なくとも1つのmiRのレベルを測定することを含み、適切な対照細胞と比べた細胞におけるmiRのレベルの減少が、試験剤が抗腫瘍剤であること示す方法に関する。
【0047】
更に、本発明は、好ましくは染色体再編成を有する腫瘍の診断及びそれに対する抗腫瘍剤の同定に関する本発明の方法において有用であり、本明細書に記載されている1つ以上のmiRを検出するために1つ以上の試薬を含むキットに関する。
【0048】
miRの存在を検出する方法は、当業者に知られており、例えば、Cissell KA、Deo SK(2009年)マイクロRNA検出のトレンド(Trends in microRNA detection)、分析的生物分析化学(Anal Bioanal Chem)394:1109〜1116頁に記載されている又はmiRNA−FISHを用いること、例えばロックド核酸(LNA)プローブを使用することは、Nuovo GJ、Elton TS、Nana−Sinkam P、Volinia S、Croce CM、Schmittgen TD、マイクロRNAの前駆体形態と成熟形態のその場での分析を組み合わせる方法論及びそれらの推定標的との相関関係(A methodology for the combined in situ analyses of the precursor and mature forms of microRNAs and correlation with their putative targets)、ネイチャープロトコール(Nat Protoc.)2009年;4(1):107〜15頁若しくは Song R、Ro S、Michaels JD、Park C、McCarrey JR、Yan W、多くのX結合マイクロRNAが減数分裂性染色体不活性化を回避する(Many X-linked microRNAs escape meiotic sex chromosome inactivation)、ネイチャージェネティクス(Nat Genet.)2009年4月;41(4):488〜93頁、電子出版2009年3月22日を参照すること;又はノーザンブロットを用いることは、例えばValoczi A、Hornyik C、Varga N、Burgyan J、Kauppinen Sら(2004年)、LNA修飾オリゴヌクレオチドプローブを使用するノーザンブロット分析によるマイクロRNAの高感度及び特異的検出(Sensitive and specific detection of microRNAs by northern blot analysis using LNA-modified oligonucleotide probes)、核酸研究(Nucleic Acids Res)32:e175を参照すること。
【0049】
C19Mクラスターでは、Bentwich I、Avniel A、Karov Y、Aharonov R、Gilad Sら(2005年)、数百の保存及び非保存ヒトマイクロRNAの同定(Identification of hundreds of conserved and nonconserved human microRNAs)、ネイチャージェネティクス(Nat Genet)37:766〜770頁において最初に記載されたことが認識されており、Lehnert S、Van Loo P、Thilakarathne PJ、Marynen P、Verbeke Gら(2009年)、ヒトマイクロRNAとAlu反復の共進化の証拠(Evidence for co-evolution between human microRNAs and Alu-repeats)、PLoS ONE 4:e4456において、最初にC19Mと呼ばれた。
【0050】
そうでないことが特に記述されていない限り、用語「癌」及び「腫瘍」は、本明細書において交換可能に使用される。
【0051】
本明細書において交換可能に使用されるとき、「miR」、「マイクロRNA」、「miR」、又は「miRNA」は、miR遺伝子の非プロセス又はプロセス済RNA転写物を意味する。miRがタンパク質に翻訳されないとき、用語「miR」はタンパク質を含まない。非プロセスmiR遺伝子転写物は、「miR前駆体」とも呼ばれ、典型的には約70〜100個のヌクレオチドの長さのRNA転写物を含む。miR前駆体を、RNアーゼ(例えば、ダイサー、アルゴノート又はRNアーゼ111,例えば大腸菌RNアーゼ111)による消化でプロセスして、活性19−25ヌクレオチドRNA分子にすることができる。この活性19−25ヌクレオチドRNA分子は、「プロセス済」miR遺伝子転写物又は「成熟」miRNAとも呼ばれる。用語「miR」は、本明細書で使用されるとき、成熟miR、プレmiR、プリmiR又はmiRシード配列が含まれる1つ以上のmiR−オリゴヌクレオチドを含むことができることが理解されるべきである。特定の実施態様において、多様なmiR核酸の混合物を使用することもできる。また、特定の実施態様において、miRを修飾して、送達を増強することができる。
【0052】
miRNA(miR)の情報はSanger Instituteから入手可能であり、http:/microrna.sanger.ac.uk/sequences/においてmiRNAの登録を維持管理している。(Griffiths−Jones S.ら、「miRベース:マイクロRNAゲノム用ツール」(“miRBase: tools for microRNA genomics”)、NAR 2008 36(データベース発行):D154−D158;Griffiths−Jones S.ら、「miRベース:マイクロRNA配列、標的及び遺伝子命名法」(“miRBase: microRNA sequences, targets and gene nomenclature” )、NAR 2006 34(データベース発行):D140−D144又はGriffiths−Jones S.、「マイクロRNA登録」(“The microRNA Registry”)、NAR 2004 32(データベース発行):D109−D111も参照すること)。miRベース配列データベースは、多様な供給源からの公表されているmiRNAのヌクレオチド配列及び注釈を含む。miRベース登録は、公表前の新たなmiRNAのために、従来の命名法に適合する特有の名称を新規miRNA遺伝子に提供する。また、miRベース標的は、動物における断定miRNA標的の供給源である。
【0053】
活性19−25ヌクレオチドRNA分子は、天然のプロセシング経路を介して(例えば、無傷の細胞又は細胞溶解産物を使用して)又は合成プロセシング経路により(例えば、単離したダイサー、アルゴノート又はRNアーゼ111のような単離したプロセシング酵素を使用して)miR前駆体から得ることができる。活性19−25ヌクレオチドRNA分子を、miR前駆体からプロセスすることなく、生物学的又は化学的な合成により直接産生できることも理解される。
【0054】
本発明は、被験者が腫瘍を有するか又は発生する危険性があるかを診断する方法であって、被験者の試験試料における少なくとも1つのmiRのレベルを測定し、試験試料におけるmiRのレベルを対照試料における対応するmiRのレベルと比較することを含む方法を包含する。本明細書で使用されるとき、「被験者」は、染色体再編成、特に染色体19における転座を伴う腫瘍を有する又は有すると疑われる任意の哺乳動物でありうる(実施例も参照すること)。特定の実施態様において、被験者は、腫瘍を有する又は有すると疑われるヒトである。本発明の方法及びキットに使用されるのが好ましいmiRは、下記の表1に記載されている。
【0055】
【表1−1】

【0056】
【表1−2】

【0057】
【表1−3】

【0058】
【表1−4】

【0059】
【表1−5】

【0060】
【表1−6】

【0061】
【表1−7】

【0062】
【表1−8】

【0063】
【表1−9】

【0064】
【表1−10】

【0065】
【表1−11】

【0066】
【表1−12】

【0067】
【表1−13】

【0068】
【表1−14】

【0069】
【表1−15】

【0070】
【表1−16】

【0071】
miRベースacc#という用語は、miRベースデータベースにおいて示された配列の受入番号を表す。miRベースデータベースは、公表されたmiRNA配列及び注釈の検索可能なデータベースである。そのウエブサイトは、http://www.mirbase.org/である。Griffiths−Jones S.ら、「miRベース:マイクロRNAゲノム用ツール」(“miRBase: tools for microRNA genomics”)、NAR 2008 36(データベース発行):D154−D158;Griffiths−Jones S.ら、「miRベース:マイクロRNA配列、標的及び遺伝子命名法」(“miRBase: microRNA sequences, targets and gene nomenclature”)、NAR 2006 34(データベース発行):D140−D144又はGriffiths−Jones S.、「マイクロRNA登録」(“The microRNA Registry”)、NAR 2004 32(データベース発行):D109−D111も参照すること。
【0072】
上記に示された配列は、配列番号1がhsa−mir−371であり、配列番号2がhsa−miR−371−3pであるなど、配列番号1〜121として提示されている付属配列も含有することができる。
【0073】
少なくとも1つのmiRのレベルを、被験者から得た生物学的試料の細胞において測定することができる。例えば、組織試料を、染色体再編成に関連する腫瘍を有すると疑われる被験者から、従来の生検技術により取り出すことができる。そのような組織試料は、試験試料を形成することができる。別の例では、血液試料を被験者から取り出すことができ、白血球をDNA抽出のために標準的な技術により単離することができ、それは好ましくは試験試料を形成する。血液又は組織試料は、好ましくは放射線療法、化学療法又は他の治療措置を開始する前に被験者から得る。対応する対照組織又は血液試料のような、正常試料とも呼ぶことができる対照試料を、被験者の未罹患組織から、正常な個体若しくは個体の集団から又は被験者の試料の大部分の細胞に対応する培養細胞から得ることができる。次に対応する組織又は血液試料のような対照試料は、被験者の試料と共にプロセスされ、これによって、被験者の試料の細胞における所定のmiR遺伝子から産生されるmiRのレベルを対照試料の細胞における対応するmiRレベルと比較することができる。この手順は、試験試料、正常試料又は対照試料が使用される、本明細書に開示されているそれぞれ及び任意の方法、プロセス又は使用に適用される。
【0074】
対照試料における対応するmiRのレベルと比べた被験者から得た試料におけるmiRのレベルの変更、すなわち増加は、被験者における腫瘍の存在を示す。本発明によると、試験試料における少なくとも1つのmiRのレベルは、対照試料における対応するmiRのレベルよりも大きい(すなわち、miRの発現は「上方制御」されている)。本明細書で使用されるとき、miRの発現は、被験者の細胞又は組織試料におけるmiRの量が対照細胞又は対照組織試料における同じmiRの量よりも大きい場合に、「上方制御」される。対照及び正常試料における相対的なmiR遺伝子発現は、1つ以上のRNA発現基準によって決定することができる。基準は、例えば、ゼロmiR遺伝子発現レベル、基準細胞株におけるmiR遺伝子発現レベル又は正常なヒト対照の集団から予め得たmiR遺伝子発現のレベルを含むことができる。これは、本明細書に開示されているそれぞれ及び任意の方法、プロセス又は使用に適用される。
【0075】
試料におけるmiRのレベルは、生物学的試料においてRNA発現レベルを検出するのに適した任意の技術を使用して測定することができる。生物学的試料の細胞においてRNA発現レベルを決定するのに適した技術(例えば、ノーザンブロット分析、RT−PCR、インサイチューハイブリダイゼーション)は、当業者に良く知られている(実施例も参照すること)。特定の実施態様において、少なくとも1つのmiRのレベルは、ノーザンブロット分析を使用して検出される。例えば、全細胞RNAを、核酸抽出緩衝液の存在下での均質化、続く遠心分離により細胞から精製することができる。核酸が沈殿し、DNAをDNアーゼによる処理及び沈殿によって除去する。次にRNA分子を、標準的技術に従ってアガロースゲルでのゲル電気泳動により分離し、ニトロセルロースフィルターに移す。次にRNAを加熱によりフィルターに固定する。特定のRNAの検出及び定量化は、当該のRNAに相補的な適切に標識したDNA又はRNAプローブを使用して達成される(例えば、その開示が全て参照として組み込まれる、分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、J.Sambrookら編、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年、第7章を参照すること)。これは、本明細書に開示されているそれぞれ及び任意の方法、プロセス又は使用に適用される。
【0076】
所定のmiRのノーザンブロットハイブリダイゼーションに適したプローブを、所定のmiRの核酸配列から産生することができる。標識DNA及びRNAプローブの調製方法及び標的ヌクレオチド配列へのそのハイブリダイゼーションの条件は、分子クローニング:研究室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、J.Sambrookら編、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1989年、第10及び11章に記載されており、その開示は参照として本明細書に組み込まれる。
【0077】
例えば、核酸プローブを、例えばH、32P、33P、14C若しくは35Sのような放射性核種;重金属;又は標識リガンドの特異的結合対メンバーとして機能することができるリガンド(例えば、ビオチン、アビジン若しくは抗体)、蛍光分子、化学発光分子、酵素などで標識することができる。
【0078】
プローブを、Rigbyら、分子生物学ジャーナル(J. Mol. Biol)113(1977年)、237〜351頁のニック翻訳法又はFeinbergら、分析生化学(Anal. Biochem.)132(1983年)、6〜13頁のランダムプライミング法のいずれか(これらの開示は全て参照として本明細書に組み込まれる)により標識して、高度に特異的な活性にすることができる。後者は、一本鎖DNA又はRNAテンプレートから高度に特異的な活性の32P標識プローブを合成する選択法である。例えば、ニック翻訳法により既存のヌクレオチドを高放射能ヌクレオチドに代えることによって、特異的活性の32P標識核酸プローブを、10cpm/マイクログラムを十分に越えて調製することが可能である。
【0079】
次にハイブリダイゼーションのオートラジオグラフ検出を、ハイブリダイズしたフィルターを写真フィルムに曝すことにより実施することができる。ハイブリダイズしたフィルターに曝された写真フィルムの濃度走査は、miR遺伝子転写物レベルの正確な測定を提供する。別の手法を使用して、miR遺伝子転写物レベルを、Amersham Biosciences、Piscataway、NJから入手可能なMolecular Dynamics 400−B 2D Phosphorimagerのようなコンピュータ画像化システムにより定量化することができる。
【0080】
DNA又はRNAプローブの放射性核種標識化が実用的ではない場合、ランダムプライマー法を使用して、類似体、例えばdTTP類似体5−(N−(N−ビオチニル−イプシロン−アミノカプロイル)−3−アミノアリル)デオキシウリジントリホスフェートをプローブ分子に組み込むことができる。ビオチン化プローブオリゴヌクレオチドは、色変化を生じる蛍光染料又は酵素と結合したアビジン、ストレプトアビジン及び抗体(例えば、抗ビオチン抗体)のようなビオチン結合タンパク質と反応させることによって、検出することができる。
【0081】
ノーザン及び他のRNAハイブリダイゼーション技術に加えて、RNA転写物のレベルを決定することは、インサイチューハイブリダイゼーションの技術を使用して達成することができる。この技術は、ノーザンブロッティング技術よりも少ない細胞を必要とし、細胞全体を顕微鏡カバースリップに置き、細胞の核酸内容物を、放射性又は別の方法で標識された核酸(例えば、cDNA又はRNA)プローブを含有する溶液でプローブすることを伴う。この技術は、被験者の組織生検試料を分析するのに特に好適である。インサイチューハイブリダイゼーション技術の実施は、米国特許第5,427,916号においてより詳細に記載されており、その開示は、全て参照として本明細書に組み込まれる。所定のmiRのインサイチューハイブリダイゼーションに適したプローブを、核酸配列から産生することができる。このインサイチューハイブリダイゼーションは、本明細書に開示されているそれぞれ及び任意の方法、プロセス又は使用に適用される。
【0082】
本明細書に開示されているそれぞれ及び任意の方法、プロセス又は使用に関して、細胞におけるmiR遺伝子転写物の相対数は、miR遺伝子転写物の逆転写、続く逆転写転写物のポリメラーゼ連鎖反応による増幅(RT−PCR)によって決定することもできる。miR遺伝子転写物のレベルを、内部基準、例えば同じ試料の存在する「ハウスキーピング」遺伝子のmRNAのレベルと比較して定量化することができる。内部基準として使用するのに適した「ハウスキーピング」遺伝子には、例えば5S rRNA、U6 snRNA又はtRNAが含まれる。定量RT−PCRの方法及びその変形は、当該技術の技能の範囲内である。
【0083】
本明細書に開示されている方法、プロセス又は使用の幾つかの場合では、試料において複数の異なるmiRの発現レベルを同時に決定することが望ましいことがある。本明細書に開示されているそのような方法、プロセス又は使用の他の場合では、腫瘍に関連する全ての既知のmiR遺伝子の転写物の発現レベルを決定することが望ましいことがある。数百のmiR遺伝子の腫瘍特異的発現レベルを評価することは、時間がかかり、大量の全RNA(それぞれのノーザンブロットにおいて少なくとも20pg)及び放射性同位元素を要するオートラジオグラフ技術を必要とする。
【0084】
これらの制限を克服するために、miR遺伝子のセットに特異的なプローブオリゴデオキシヌクレオチドのセットを含有する、マイクロチップフォーマット(すなわち、マイクロアレイ)のオリゴライブラリーを構築することができる。RNAを逆転写して標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを生成し、それらをマイクロアレイのプローブオリゴデオキシヌクレオチドにハイブリダイズして、ハイブリダイゼーション又は発現プロフィールを生成することによって、そのようなマイクロアレイを使用して、生物学的試料における多数のマイクロRNAの発現レベルを決定することができる。次に試験試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを対照試料と比較して、どのマイクロRNAが腫瘍において変更された発現レベルを有するかを決定することができる。これは、本明細書に開示されているそれぞれ及び任意の方法、プロセス又は使用に適用される。
【0085】
本明細書で使用されるとき、「プローブオリゴヌクレオチド」又は「プローブオリゴデオキシヌクレオチド」は、標的オリゴヌクレオチドにハイブリダイズすることができるオリゴヌクレオチドを意味する。
【0086】
「標的オリゴヌクレオチド」又は「標的オリゴデオキシヌクレオチド」は、(例えば、ハイブリダイゼーションによって)検出される分子を意味する。
【0087】
「miR特異的プローブオリゴヌクレオチド」又は「miRに特異的なプローブオリゴヌクレオチド」とは、特定のmiR又は特定のmiRの逆転写物にハイブリダイズする選択された配列を有するプローブオリゴヌクレオチドを意味する。
【0088】
特定の試料の「発現プロフィール」又は「ハイブリダイゼイーションプロフィール」は、実質的に試料状態の指紋であり、2つの状態は同様に発現する任意の特定の遺伝子を有する場合があるが、多数の遺伝子の評価は、細胞の状態に特有な遺伝子発現プロフィールの生成を同時に可能にする。すなわち、正常細胞を腫瘍細胞と区別することができ、腫瘍細胞内では、異なる予後状態(例えば、良好な又は不十分な長期生存の見込み)を決定することができる。異なる状態の腫瘍細胞の発現プロフィールを比較することによって、どの遺伝子がそれぞれに状態において重要であるか(遺伝子の上方及び下方制御を含む)に関する情報が得られる。
【0089】
本明細書において好ましく使用されるとき、用語「遺伝子再編成」は、実施態様において、例えば染色体転座、逆位又は中間部欠失により影響を受けうる1つ又は幾つかの染色体の一部の非相同的再編成を意味する。
【0090】
染色体再編成は、好ましくは、インサイチューハイブリダイゼーションが含まれるが、これに限定されない伝統的な細胞遺伝学又は分子細胞遺伝学によって検出される。
【0091】
本明細書において好ましく使用されるとき、腫瘍が染色体再編成を伴うという用語は、実施態様において、少なくとも幾つかの腫瘍細胞がそのような染色体再編成を示す又は表示することを意味する。
【0092】
本明細書において好ましく使用されるとき、結果が、例えば腫瘍を有する被験者を「示す」という用語は、結果が、被験者が腫瘍を有する証拠を提供することを意味する。
【0093】
腫瘍細胞又は正常細胞において異なって発現する配列、並びに異なる予後結果をもたらす異なる発現の同定は、多数の方法でこの情報を使用することを可能にする。例えば、特定の治療レジメンを(例えば、化学療法薬が特定の患者において長期予後を改善するために作用するかを決定するために)評価することができる。
【0094】
同様に、診断を患者試料と既知の発現プロフィールとの比較により実施又は確認することができる。更に、これらの(個別の遺伝子ではなく)遺伝子発現プロフィールは、腫瘍発現プロフィールを抑制する又は不十分な予後プロフィールを良好な予後プロフィールに転換する薬剤候補のスクリーニングを可能にする。
【0095】
したがって、本発明は、被験者が本明細書に定義されている腫瘍を有するか又は発生する危険性があるかを診断する方法であって、被験者から得た試験試料のRNAを逆転写して、標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供し、標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズして、試験試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを提供し、試験試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを、対照試料から生成したハイブリダイゼイーションプロフィールと比較することを含み、少なくとも1つのmiRNAのシグナルにおける変更、特に増加が、被験者が腫瘍を有する又は発生する危険性がある、のいずれかを示す方法を提供する。
【0096】
一つの実施態様において、マイクロアレイは、C19MC及びmiR−371−3クラスターの相当部分のmiRNA特異的プローブオリゴデオキシヌクレオチドを含む。
【0097】
マイクロアレイは、既知のmiRNA配列から生成した遺伝子特異的オリゴヌクレオチドプローブから調製することができる。アレイは、それぞれのmiRNAに2つの異なるオリゴヌクレオチドプローブを含有することができ、一方は活性成熟配列を含有し、他方はmiRNAの前駆体に特異的である。アレイは、ハイブリダイゼーションストリンジェンシー条件において対照として機能することができる、僅か数個の塩基によりヒトオルソルグと異なる1つ以上のマウス配列のような対照を含有することもできる。両方の種のtRNAも、マイクロチップに印刷することができ、特定のハイブリダイゼーションにおいて内部の相対的に安定した陽性対照を提供する。非特異的ハイブリダイゼーションにおける1つ以上の適切な対照も、マイクロチップに含めることができる。この目的のために、配列は、任意の既知のmiRNAとあらゆる相同性が不在であることに基づいて選択される。
【0098】
マイクロアレイは、当該技術に既知の技術を使用して作製することができる。例えば、適切な長さ、例えば40個のヌクレオチドのプローブオリゴヌクレオチドは、C6位で修飾され、市販のマイクロアレイ系、例えばGeneMachine OmiGrid(商標)100 Microarrayer及びAmersham CodeLink(商標)活性化スライドを使用して印刷された5′−アミンである。標的RNAに対応する標識cDNAオリゴマーは、標的RNAを標識プライマーで逆転写することにより調製される。最初の鎖合成の後、RNA/DNAハイブリッドを変性して、RNAテンプレートを分解する。次に、このように調製された標識標的cDNAを、ハイブリダイズ条件下、例えば、6×SSPE/30%ホルムアミドを25℃で18時間にわたってマイクロアレイチップにハイブリダイズし、続いて0.75×TNAにより37℃で40分間洗浄する。固定プローブDNAが試料において相補的標的cDNAを認識するアレイの位置で、ハイブリダイゼーションが生じる。標識標的cDNAは、結合が生じるアレイに正確な位置を示し、自動的な検出及び定量化を可能にする。結果は、ハイブリダイゼーション事象の列挙からなり、患者の試料において特異的cDNA配列の相対的存在量、したがって対応する相補的miRの相対的存在量を示す。一つの実施態様によると、標識cDNAオリゴマーは、ビオチン標識プライマーから調製されたビオチン標識cDNAである。次にマイクロアレイを、例えばStreptavidin−Alexa647複合体を使用するビオチン含有転写物の直接的な検出によりプロセスし、従来の走査方法を使用して走査する。アレイにおける各スポットの画像強度は、患者試料における対応するmiRの存在量に比例する。
【0099】
アレイの使用は、miRNA発現検出にとって幾つかの利点を有する。第1には、数百の遺伝子の網羅的な発現を同じ試料において1つの時点で同定することができる。第2には、オリゴヌクレオチドプローブの注意深い設計によって、成熟及び前駆体の両方の分子の発現を同定することができる。第3には、ノーザンブロット分析と比較して、チップは少量のRNAを必要とし、2.5pgの全RNAを使用して再現可能な結果を提供する。比較的制限された数のmiRNA(種あたり数百)は、それぞれ異なるオリゴヌクレオチドプローブを有する、幾つかの種に共通のマイクロアレイの構築を可能にする。そのようなツールは、多様な条件下でそれぞれ既知のmiRの種横断的発現についての分析を可能にする。
【0100】
特定のmiRの定量発現レベルアッセイの使用に加えて、C19MC及びmiR−371−3クラスターのメンバーの相当部分、好ましくはmiRNome全体に対応するmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含有するマイクロチップを用いて、miR発現パターンの分析のためにmiR遺伝子プロファイリングを実施することができる。個別のmiRの特徴を、確立された疾患マーカー又は直接疾患状態に関連付けることができる。
【0101】
本明細書に記載されている発現プロファイリング方法によると、腫瘍を有すると疑われる被験者の試料における全RNAを定量的に逆転写して、試料のRNAに相補的な標識標的オリゴデオキシヌクレオチドのセットを提供する。次に標的オリゴデオキシヌクレオチドを、miRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドを含むマイクロアレイにハイブリダイズして、試料のハイブリダイゼイーションプロフィールを提供する。結果は、試料におけるmiRNAの発現パターンを代表する試料のハイブリダイゼイーションプロフィールである。ハイブリダイゼイーションプロフィールは、試料の標的オリゴデオキシヌクレオチドとマイクロアレイのmiRNA特異的プローブオリゴヌクレオチドとの結合からのシグナルを含む。プロフィールを、結合の存在又は不在(シグナル対ゼロシグナル)として記録することができる。より好ましくは、記録されるプロフィールは、それぞれのハイブリダイゼーションからのシグナルの強度を含む。プロフィールを、正常、すなわち非腫瘍性の対照試料から生成したハイブリダイゼイーションプロフィールと比較する。シグナルにおける変更は、被験者における腫瘍の存在を示す。
【0102】
腫瘍に罹患している被験者を治療するための、本明細書において定義され、それぞれ開示されている少なくとも1つのmiRの発現を阻害することができる化合物の使用としの上記開示は、本明細書に開示されている胎盤及び/又は妊娠性障害に罹患している又は罹患している危険性がある被験者の治療にも同様に当てはまる。同じことはそれぞれの医薬組成物にも当てはまる。
【0103】
miR遺伝子発現を測定する他の技術も当該技術の技能の範囲内であり、RNA転写及び分解の速度を測定する多様な技術を含む。
【0104】
用語「治療する」、「治療している」及び「治療」は、本明細書で使用されるとき、疾患症状の発症を予防若しくは遅延すこと及び/又は疾患若しくは状態の症状の重篤度若しくは頻度を軽減することを含む、疾患又は状態、例えば腫瘍に関連する症状を改善することを意味する。用語「被験者」及び「個体」は、霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス又は他のウシ科、ヒツジ科、ウマ科、イヌ科、ネコ科、齧歯類若しくはネズミ科の種属が含まれるが、これらに限定されない哺乳動物のような動物を含むことが本明細書において定義される。好ましい実施態様において、動物はヒトである。
【0105】
本発明の治療方法の一つの実施態様において、miR発現を阻害する少なくとも1つの化合物の有効量を被験者に投与することができる。本明細書で使用されるとき、「miR発現を阻害する」は、治療後の活性成熟形態のmiRの産生が、治療前に産生された量よりも少ないことを意味する。当業者は、例えば治療方法について上記に考察されたmiR転写物レベルを決定する技術を使用して、miR発現が腫瘍細胞において阻害されたかを容易に決定することができる。阻害は、遺伝子発現のレベルにおいて(すなわち、miRをコードするmiR遺伝子の転写を阻害することによって)又はプロセシングのレベルにおいて(例えば、成熟活性miRへのmiR前駆体のプロセシングを阻害することによって)生じることができる。
【0106】
本明細書で使用されるとき、miR発現を阻害する化合物の「有効量」は、腫瘍関連染色体の特徴に関連する腫瘍に罹患している被験者において腫瘍細胞の増殖を阻害するのに十分な量である。当業者は、被験者の大きさ及び体重;疾患の侵入の程度;被験者の年齢、健康及び性別;投与経路;並びに投与が局所的か又は全身的かのような要因を考慮することによって、所定の被験者に投与されるべきmiR発現阻害化合物の有効量を容易に決定することができる。
【0107】
例えば、発現阻害化合物の有効量は、治療される被験者の概算又は推定体重に基づくことができる。そのような有効量は、本明細書に記載されるように、とりわけ非経口的又は経腸的に投与される。例えば、被験者に投与される発現阻害化合物の有効量は、約5〜3000マイクログラム/kg体重、約700〜1000マイクログラム/kg体重の範囲でありうるか又は約1000マイクログラム/kg体重を越えることができる。
【0108】
当業者は、miR発現を阻害する化合物を所定の被験者に投与する適切な投与レジメンを容易に決定することもできる。例えば、発現阻害化合物を(例えば、単回注射又は沈着として)被験者に1回投与することができる。あるいは、発現阻害化合物を、被験者に1日1回又は2回、約3〜約28日間にわたって、より好ましくは約7〜約10日間にわたって投与することができる。特定の投与レジメンにおいて、発現阻害化合物は、1日1回、7日間にわたって投与される。投与レジメンが多回投与を含む場合、被験者に投与される発現阻害化合物の有効量は、投与レジメン全体にわたって投与される化合物の総量を含むことができる。
【0109】
miR遺伝子発現を阻害するのに適した化合物には、二本鎖RNA(例えば、短若しくは小型干渉RNA又は「siRNA」)、アンチセンス核酸及びリボザイムのような酵素RNA分子が含まれる。これらの化合物は、それぞれ、所定のmiRを標的にすること、標的miRを破壊すること又は標的miRの破壊を誘導することができる。
【0110】
例えば、所定のmiR遺伝子の発現を、miRの少なくとも一部と少なくとも90%、例えば少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%又は100%の配列相同性を有する単離二本鎖RNA(「dsRNA」)分子によりmiR遺伝子の干渉を誘導することによって、阻害することができる。 特定の実施態様において、dsRNA分子は「短又は小型干渉RNA」又は「siRNA」である。
【0111】
本発明の方法に有用なsiRNAは、約17個のヌクレオチドから約29個のヌクレオチドの長さ、好ましくは約19個から約25個のヌクレオチドの長さの短二本鎖RNAを含む。siRNAは、標準的なワトソン・クリック塩基対合相互作用(本明細書以降「塩基対合」)により一緒にアニーリングしている、センスRNA鎖と相補的アンチセンスRNA鎖を含む。センス鎖は、標的miRに含有されている核酸配列と実質的に同一の核酸配列を含む。
【0112】
本明細書で使用されるとき、標的mRNAに含有されている標的配列と「実質的に同一」であるsiRNAの核酸配列は、標的配列と同一である又はそのようなsiRNA分子がRNA干渉を仲介するのに依然として適している限り、1、2つ若しくはそれ以上のヌクレオチドにより標的配列と異なっている核酸配列である。siRNAのセンス及びアンチセンス鎖は、2つの相補的一本鎖RNA分子を含むことができる又は2つの相補的な部分が塩基対合しており、一本鎖「ヘアピン」領域により共有結合している単一分子を含むことができる。
【0113】
siRNAは、1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換及び/又は変更により天然に生じるRNAと異なる変更RNAであることもできる。そのような変更には、非ヌクレオチド材料の、例えばsiRNAの末端への若しくはsiRNAの1つ以上の内部ヌクレオチドへの付加又はsiRNAをヌクレアーゼ消化に対して耐性にする修飾又はデオキシリボヌクレオチドによるsiRNAの1つ以上のヌクレオチドの置換が含まれうる。
【0114】
siRNAの一方又は両方の鎖は、3′オーバーハングを含むこともできる。本明細書で使用されるとき、「3′オーバーハング」は、二重RNA鎖の3′末端から伸びている少なくとも1つの非対合ヌクレオチドを意味する。したがって、特定の実施態様において、siRNAは、1〜約6個のヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドを含む)の長さ、1〜約5個のヌクレオチドの長さ、1〜約4個のヌクレオチドの長さ又は約2〜約4個のヌクレオチドの長さの少なくとも1つの3′オーバーハングを含む。特定の実施態様において、3′オーバーハングは、siRNAの両方の鎖に存在し、2個のヌクレオチドの長さである。例えば、siRNAのそれぞれの鎖は、ジチミジル酸(「TT」)又はジウリジル酸(「uu」)の3オーバーハングを含むことができる。
【0115】
siRNAは、化学的若しくは生物学的に産生することができる又は国際出願WO2009/033140(この開示内容はその全体が参照として本明細書に組み込まれる)において単離miRについて記載されているように、組み換えプラスミド若しくはウイルスベクターから発現させることができる。dsRNA又はsiRNA分子を産生及び試験する例示的な方法は、米国公開特許出願第2002/0173478A1号及び米国公開特許出願第2004/0018176A1号に記載されており、これらの開示は全て参照として本明細書に組み込まれる。
【0116】
所定のmiR遺伝子の発現を、アンチセンス核酸により阻害することもできる。本明細書で使用されるとき、「アンチセンス核酸」は、RNA−RNA又はRNA−DNA又はRNA−ペプチド核酸相互作用により標的RNAに結合し、標的RNAの活性を変更する核酸分子を意味する。本発明の方法における使用に適したアンチセンス核酸は、miRの隣接核酸配列に相補的な核酸配列を一般に含む一本鎖核酸(例えば、RNA,DNA、RNA−DNAキメラ、PNA)である。アンチセンス核酸は、miRの隣接核酸配列に50〜100%相補的、75〜100%相補的又は95〜100%相補的な核酸配列を含むことができる。miRの核酸配列は本明細書において提供される。いかなる理論にも束縛されるものではないが、アンチセンス核酸は、miR/アンチセンス核酸二重鎖を消化するRナーゼH又は別の細胞ヌクレアーゼを活性化すると考えられる。
【0117】
アンチセンス核酸は、核酸主鎖又は糖及び塩基部分(若しくはこれらの同等物)に対して修飾を含有して、標的特異性、ヌクレアーゼ耐性、送達又は分子の効力に関する他の特性を増強することもできる。そのような修飾には、コレステロール部分、アクリジンのような二重鎖挿入剤又は1つ以上のヌクレアーゼ耐性基が含まれる。
【0118】
アンチセンス核酸は、化学的若しくは生物学的に産生することができる又は単離miRについて記載されているように、組み換えプラスミド若しくはウイルスベクターから発現させることができる。産生及び試験の例示的な方法は、当該技術の技能の範囲内である(例えば、Stein及びCheng、サイエンス(Science)261(1993年)、1004頁及び米国特許第5,849,902号(これらの開示は全て参照として本明細書に組み込まれる)を参照すること)。
【0119】
最近では、化学的に修飾されたアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が、マイクロRNA(miRNA)を機能化するツールとして使用され、ASO阻害後のmiRNAレベルの低減が、効力を示すことが一般に報告されている。例えば、ショウジョウバエS2細胞における2′−o−メチルオリゴヌクレオチドによるmiRNA発現の阻害が、Bergerらによりインビトロ細胞発生生物学−動物(In Vitro Cell Dev. Biol. Anim.)41(2005)、12〜18頁において記載されている。加えて、分解を有さないインビボのASOに基づいたマイクロRNAの強力なインヒビターが、Daviesら、核酸研究(Nucleic Acids Res.)37(2009年)、70〜77頁に記載されており、両方の文書の開示内容は参照として本明細書に組み込まれる。miR−371−3及びC19MCクラスターのもののような染色体再編成に関連するmiRNAの発現及び活性をそれぞれ阻害するために、同様の手法を本発明に従って使用することができる。
【0120】
所定のmiR遺伝子の発現を、酵素核酸により阻害することもできる。本明細書で使用されるとき、「酵素核酸」は、miRの隣接核酸に相補性を有し、miRを特異的に切断することができる基質結合領域を含む核酸を意味する。酵素核酸基質結合領域は、例えば、miRの隣接核酸配列に50〜100%の相補性、75〜100%の相補性又は95〜100%の相補性がありうる。酵素核酸は、塩基、糖及び/又はリン酸塩基に修飾を含むこともできる。本発明の方法に使用される例示的な酵素核酸は、リボザイムである。
【0121】
酵素核酸は、化学的若しくは生物学的に産生することができる又は単離miRについて記載されているように、組み換えプラスミド若しくはウイルスベクターから発現させることができる。酵素核酸分子、すなわちリボザイムを産生及び試験する例示的な方法は、Werner及びUhlenbeck、核酸研究(Nucl. Acids Res.)23(1995年)、2092〜2096頁;Hammannら、アンチセンス及び核酸薬の開発(Antisense und Nucleic Acid Drug Dev.)9(1999年)、25〜31頁;Steineckeら、EMBOジャーナル(EMBO J.)11(1992年)、1525〜1530頁;Steineckeら、遺伝子(Gene)149(1994年)、47〜54頁、並びに米国特許第4,987,071号に記載されており、これらの開示は全て参照として本明細書に組み込まれる。
【0122】
miR遺伝子発現を阻害する別の化合物群は、例えばKruetzfeldt Jらにより記載されたいわゆるアンタゴmiRである(Kruetzfeldt Jら(2005年)、「アンタゴmir」によるインビボでのマイクロRNAのサイレンシング(Silencing of microRNAs in vivo with ‘antagomirs')、ネイチャー(Nature)438(7068):685〜689頁)。
【0123】
miR発現を阻害する少なくとも1つの化合物の投与は、腫瘍関連染色体の特徴に関連する腫瘍を有する被験者において腫瘍細胞の増殖を阻害する。本明細書で使用されるとき、「腫瘍細胞の増殖を阻害する」ことは、細胞を死滅させること又は細胞の増殖を永久若しくは一時的に阻止若しくは遅延することを意味する。腫瘍細胞増殖の阻害は、被験者におけるそのような細胞の数が、miR遺伝子発現阻害化合物の投与後に一定のままである又は減少する場合に推測することができる。腫瘍細胞増殖の阻害は、そのような細胞の絶対数は増加するが、腫瘍増殖の速度が減少する場合にも推測することができる。
【0124】
被験者の体内における腫瘍細胞の数は、直接的な測定により又は原発性若しくは転移性腫瘍量の大きさの推定により決定することができる。例えば、被験者における腫瘍細胞の数は、免疫組織学的な方法、フローサイトメトリー又は腫瘍細胞の特徴的な表面マーカーを検出するように設計された他の技術により測定することができる。
【0125】
miR遺伝子発現阻害化合物は、これらの化合物を被験者の腫瘍細胞に送達するのに適した任意の手段により被験者に投与することができる。例えば、miR遺伝子発現阻害化合物は、これらの化合物により又はこれらの化合物をコードする配列を含む核酸により被験者の細胞に形質移入するのに適した方法によって、投与することができる。一つの実施態様において、細胞は、少なくとも1つのmiR遺伝子発現阻害化合物をコードする配列を含むプラスミド又はウイルスベクターにより形質移入される。
【0126】
真核細胞への形質移入の方法は当該技術において良く知られており、例えば、細胞の核又は前核への核酸の直接的な注入;エレクトロポレーション;リポソーム転移又は親油性材料により仲介される転移;レセプター仲介核酸送達、生体弾道又は粒子加速;リン酸カルシウム沈殿及びウイルスベクターにより仲介される形質移入が含まれる。
【0127】
例えば、細胞を、リポソーム転移化合物により、例えばDOTAP(N〔1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル〕−N,N,N−トリイル−アンモニムメトメチルスルフェート、Roche Diagnostics GmbH、Roche Applied Science、Nonnenwald 2、82372 Penzberg、Germany)又はLIPOFECTINのような同等物により形質移入することができる。使用される核酸の量は、本発明の実施には重要でなく、許容可能な結果を、0.1〜100マイクログラムの核酸/10細胞で達成することができる。例えば、10細胞あたり3マイクログラムのDOTAPの比率の約0.5マイクログラムのプラスミドを使用することができる。
【0128】
miR遺伝子発現阻害化合物を、任意の適切な経腸又は非経口投与経路により被験者に投与することもできる。本発明に適した経腸投与経路には、例えば経口、直腸内又は鼻腔内送達が含まれる。適切な非経口投与経路には、血管内投与(例えば、静脈内ボーラス注射、静脈内注入、動脈内ボーラス注射、動脈内注入及び血管系へのカテーテル注入);組織周辺及び組織内注射(例えば、腫瘍周辺及び腫瘍内注射、網膜内注射又は網膜下注射);(例えば、浸透圧ポンプによる)皮下注入を含む皮下注射又は沈着;例えばカテーテル又は他の設置装置による目的の組織への直接的な適用(例えば、網膜ペレット又は坐剤又は有孔性、無孔性若しくはゼラチン状材料を含む移植片);並びに吸入が含まれる。特に適した投与経路は、患者への注射、注入及び静脈内投与である。
【0129】
本発明の方法において、miR発現阻害化合物を、裸RNA、送達試薬との組み合わせ又はmiR発現阻害化合物を発現する配列を含む核酸(例えば、組み換えプラスミド若しくはウイルスベクター)のいずれかによって被験者に投与することができる。 適切な送達試薬には、例えば、Mirus Transit TKO親油性試薬;リポフェクチン;リポフェクタミン;セルフェクチン;ポリカチオン(例えば、ポリリジン)及びリポソームが含まれる。
【0130】
miR遺伝子発現阻害化合物を発現する配列を含む組み換えプラスミド及びウイルスベクター、並びにそのようなプラスミド及びベクターを腫瘍細胞に送達する技術が、本明細書において考察される。
【0131】
特定の実施態様において、リポソームを使用して、miR遺伝子発現阻害化合物(又はこれらをコードする配列を含む核酸)を被験者に送達する。リポソームは、核酸の血中半減期を増加することもできる。本発明における使用に適したリポソームを、一般に中性又は陰性荷電リン脂質及びコレステロールのようなステロールを含む標準的な小胞形成脂質から形成することができる。脂質の選択は、一般に、所望のリポソームの大きさ及び血流におけるリポソームの半減期のような要因を考慮することにより導かれる。例えば、Szokaら、生物物理学及び生体工学の年間論評(Ann. Rev. Biophys. Bioeng.)9(1980年)、467頁;並びに米国特許第4,235,871、同第4,501,728号、同第4,837,028号及び同第5,019,369号(これらの開示は全て参照として本明細書に組み込まれる)に記載されているように、リポソームを調製するために多様な方法が知られている。
【0132】
本発明の方法に使用されるリポソームは、リポソームを腫瘍細胞に向けて標的化するリガンド分子を含むことができる。腫瘍細胞抗原に結合するモノクローナル抗体のような腫瘍細胞に広く存在するレセプターに結合するリガンドが好ましい。
【0133】
本発明の方法に使用されるリポソームを、単核マクロファージ系(「MMS」)及び細網内皮系(「RES」)によるクリアランスを避けるように修飾することもできる。そのような修飾リポソームは、オプソニン作用阻害部分を表面に有するか又はリポソーム構造内に組み込む。特に好ましい実施態様において、本発明のリポソームは、オプソニン作用阻害部分とリガンドの両方を含むことができる。
【0134】
本発明のリポソームの調製に使用されるオプソニン作用阻害部分は、典型的には、リポソーム膜に結合した大型の親水性ポリマーである。本明細書で使用されるとき、オプソニン作用阻害部分は、例えば、膜それ自体への脂溶性アンカーの膜への挿入により又は膜脂質の活性基への直接的な結合により、化学的又は物理的に膜に結合する場合、リポソーム膜に「結合」している。これらのオプソニン作用阻害親水性ポリマーは、米国特許第4,920,016号(その開示は全て参照として本明細書に組み込まれる)に記載されているように、MMS及びRESによるリポソームの取り込みを有意に減少させる保護表面層を形成する。
【0135】
リポソームを修飾するのに適したオプソニン作用阻害部分は、好ましくは約500〜約40,000ダルトン、より好ましくは約2,000〜約20,000ダルトンの数平均分子量を有する水溶性ポリマーである。そのようなポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)又はポリプロピレングリコール(PPG)誘導体;例えばメトキシPEG又はPPG及びPEG又はPPGステアレート;ポリアクリルアミド又はポリN−ビニルピロリドンのような合成ポリマー;直鎖、分岐鎖又は樹木状ポリアミドアミン;ポリアクリル酸;ポリアルコール、例えばカルボン酸基又はアミノ基が化学的に結合している、ポリビニルアルコール及びポリキシリトール、並びにガングリオシドGM1のようなガングリオシドが含まれる。PEGのコポリマー、メトキシPEG若しくはメトキシPPG又はそれらの誘導体も適している。加えて、オプソニン作用阻害ポリマーは、PEGと、ポリアミノ酸、多糖、ポリアミドアミン、ポリエチレンアミン又はポリヌクレオチドのいずれかとのブロックコポリマーでありうる。オプソニン作用阻害ポリマーは、また、アミノ酸若しくはカルボン酸を含有する天然の多糖類、例えばガラクツロン酸、グルクロン酸、マンヌロン酸、ヒアルロン酸、ペクチン酸、ノイラミン酸、アルギン酸、カラギーナン;アミノ化多糖類若しくはオリゴ糖類(直鎖若しくは分岐鎖);又は例えばカルボン酸基の結合をもたらす炭酸の誘導体と反応させた、カルボキシル化多糖類若しくはオリゴ糖類でありうる。好ましくは、オプソニン作用阻害部分は、PEG、PPG又はそれらの誘導体である。PEG又はPEG誘導体で修飾されたリポソームは、時々、「ペグ化リポソーム」と呼ばれる。
【0136】
オプソニン作用阻害部分を、多数の周知技術のいずれか1つによりリポソーム膜に結合することができる。例えば、PEGのN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを、ホスファチジル−エタノールアミン脂溶性アンカーに結合し、次に膜に結合することができる。同様に、デキストランポリマーを、Na(CN)BH及び比率が30:12のテトラヒドロフランと水のような溶媒混合物を60℃で使用する還元的アミノ化を介して、ステアリルアミン脂溶性アンカーにより誘導体化することができる。
【0137】
オプソニン作用阻害部分で修飾されたリポソームは、非修飾リポソームよりかなり長時間循環に留まる。このために、そのようなリポソームは、時々、「ステルス」リポソームと呼ばれる。ステルスリポソームは、多孔性又は「漏出性」微小血管系により栄養を受け取る組織に蓄積することが知られている。したがって、そのような微小血管系の欠損、例えば固形腫瘍により特徴付けられる組織は、これらのリポソームを効率的に蓄積する(例えば、Gabizonら、米国科学アカデミー紀要(Proc. Natl. Acad. Sci., U.S.A)18(1988年)、6949〜6953頁を参照すること)。加えて、RESにより低減された取り込みは、肝臓及び脾臓におけるリポソームの有意な蓄積を防止することによってステルスリポソームの毒性を低下する。したがって、オプソニン作用阻害部分により修飾されたリポソームは、miR遺伝子発現阻害化合物(又はこれらをコードする配列を含む核酸)を腫瘍細胞に送達するのに特に適している。
【0138】
miR遺伝子発現阻害化合物を、これらを被験者に投与する前に当該技術において既知の技術によって、時々「薬剤」と呼ばれる医薬組成物として処方することができる。したがって、本発明は、腫瘍を治療する医薬組成物を包含する。一つの実施態様において、医薬組成物は、少なくとも1つの単離miR発現阻害化合物を含む。特定の実施態様において、少なくとも1つのmiR遺伝子発現阻害化合物は、対照細胞よりも腫瘍細胞においてその発現が大きいmiR遺伝子に特異的である。
【0139】
本発明の医薬組成物は、少なくとも滅菌であり発熱物質を含まないことが特徴である。本明細書で使用されるとき、「医薬製剤」には、ヒト及び獣医学的用途のための製剤が含まれる。本発明の医薬組成物を調製する方法は、当該技術の技能の範囲内であり、例えば、レミントン薬学(Remington’s Pharmaceutical Science)、第17版、Mack Publishing Company、Easton、Pa.(1985年)及びフィラデルフィア科学大学(University of Sciences in Philadelphia)による最新版レミントン:薬剤学の科学及び実施(Remington:The Science and Practice of Pharmacy)(2000年)ISBN0−683−306472に記載されており、両方の文書の開示は全て参照として本明細書に組み込まれる。
【0140】
本発明の医薬製剤は、少なくとも1つのmiR遺伝子発現阻害化合物(若しくはこれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)(例えば、0.1〜90重量%)又はその生理学的に許容される塩を、薬学的に許容される担体と混合して含む。本発明の医薬組成物は、リポソームに封入されている少なくとも1つのmiR遺伝子発現阻害化合物(又はこれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)及び薬学的に許容される担体を含むこともできる。
【0141】
特に適切な薬学的に許容される担体は、水、緩衝水、生理食塩水、0.4%食塩水、0.3%グリシン、ヒアルロン酸などである。
【0142】
特定の実施態様において、本発明の医薬組成物は、ヌクレアーゼによる分解に耐性がある少なくとも1つのmiR遺伝子発現阻害化合物(又はこれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)を含む。当業者は、例えば、2′位で修飾されている1つ以上のリボヌクレオチドをmiRに組み込むことにより、ヌクレアーゼ耐性である核酸を容易に合成することができる。適切な2′修飾リボヌクレオチドには、フルオロ、アミノ、アルキル、アルコキシ及び0−アリルで2′位が修飾されているものが含まれる。
【0143】
本発明の医薬組成物は、従来の医薬賦形剤及び/又は添加剤を含むこともできる。適切な医薬賦形剤には、安定剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、緩衝剤及びpH調整剤が含まれる。適切な添加剤には、例えば、生理学的に生体適合性のある緩衝剤(例えば、トロメタミン塩酸塩)、キーラント(例えばDTPA、DTPA−ビスアミド)若しくはカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA−ビスアミド)の添加又は場合によりカルシウム若しくはナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム若しくは乳酸カルシウム)の添加が含まれる。本発明の医薬組成物を、液体で使用するために包装することができる又は凍結乾燥することができる。
【0144】
本発明の固体医薬製剤では、従来の非毒性で固体の薬学的に許容される担体を使用することができ、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ナトリウムサッカリン、タルク、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなどである。
【0145】
例えば、経口投与用の固体医薬組成物は、上記に提示された担体及び賦形剤のいずれか、並びに10〜95%、好ましくは25%〜75%の少なくとも1つのmiR遺伝子発現阻害化合物(又はこれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)を含むことができる。エアゾール(吸入)投与用の医薬組成物は、0.01〜20重量%、好ましくは1重量%〜10重量%の、上記に記載されたリポソームで封入されている少なくとも1つのmiR遺伝子発現阻害化合物(又はこれらをコードする配列を含む少なくとも1つの核酸)及び噴射剤を含むことができる。望ましい場合には担体も含めることができ、例えば、経鼻送達用のレシチンである。
【0146】
本発明は、抗腫瘍剤を同定する方法であって、試験剤を細胞に提供すること及び細胞における少なくとも1つのmiRのレベルを測定することを含む方法も包含する。一つの実施態様において、方法は、試験剤を細胞に提供すること及び腫瘍細胞における発現の増加に関連する少なくとも1つのmiRのレベルを測定することを含む。適切な対照細胞と比べた、細胞におけるmiRのレベルの減少は、試験剤が抗腫瘍剤であることを示す。
【0147】
適切な作用物質には、薬剤(例えば、小型分子、ペプチド)及び生物巨大分子(例えば、タンパク質、核酸)が含まれるが、これらに限定されない。作用物質を、組み換え的、合成的に産生することができる又は天然の供給源から単離(すなわち精製)することができる。そのような作用物質を細胞に提供する多様な方法(例えば、形質移入)は、当該技術において良く知られており、そのような方法の幾つかが本明細書上記に記載されている。少なくとも1つのmiRの発現を検出する方法(例えば、ノーザンブロッティング、インサイチューハイブリダイゼーション、RT−PCR、発現プロファイリング)も、当該技術において良く知られている。
【0148】
これら及び他の実施態様は、本発明の記載及び実施例に開示及び包含されている。本発明に用いられる材料、方法、使用及び化合物のいずれかに関する更なる文献は、例えば電子装置を使用して公共の図書館及びデータベースから検索することができる。例えば、全米バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)及び/又は国立衛生研究所(National Institutes of Health)の国立医学図書館(National Library of Medicine)が主催する公共データベース「Medline」を利用することができる。更なるデータベース及びウェブアドレス、例えば欧州分子生物学研究所(EMBL)の一部である欧州バイオフィンフォマティクス研究所(European Bioinformatics Institute)(EBI)のものが当業者には知られており、インターネットの検索エンジンを使用して得ることもできる。バイオテクノロジーについての特許情報の概説、並びに遡及検索及び最新知識に有用な特許情報の関連供給源の調査は、Berks、TIBTECH 12(1994年)、352〜364頁に提示されている。
【0149】
上記の開示は、本発明を一般的に記載する。特に記述のない限り、本明細書において使用される用語は、オックスフォード生化学及び分子生物学辞典(Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology)、Oxford University Press、1997年、2000年改訂及び2003年再版、ISBN0198506732において提示された定義を示す。幾つかの文書は、本明細書の文章の全体にわたって引用されている。引用された全ての参考文献(本出願の全体にわたって引用された参考文献、発行された特許、公開された特許出願及び製造会社の仕様書、説明書などが含まれる)の内容は、参照として本明細書に明確に組み込まれるが、引用されたいずれかの文書を本発明の従来技術として認めるということは全くない。
【0150】
より完全な理解は、以下の特定の実施例を参照して得ることができ、これは例示のみの目的で本明細書において提示され、本発明の範囲を制限することを意図しない。
【0151】
実施例
以下の実施例は、本発明を更に例示するが、本発明の範囲をいかようにも制限するものとして考慮されるべきではない。本明細書に用いられるもののような従来の方法の詳細な記載は、引用文献において見出すことができる(「診断及び治療のメルクマニュアル」(“The Merck Manual of Diagnosis and Therapy”)第17版、Beers及びBerkow編(Merck&Co.,Inc.2003年)も参照すること)。本発明の実施は、特に指示のない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、遺伝子組換生物学、微生物学、組み換えDNA及び免疫学の従来の技術を用い、それらは当該技術の技能の範囲内である。
【0152】
分子遺伝子技術及び遺伝子技術の方法は、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)(Sambrookら、(1989年)分子クローニング:実験室マニュアル、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press;DNAクローニング(DNA Cloning)、第I及びII巻(Glover編、1985年);オリゴヌクレオチド合成(Oligonucleotide Synthesis)(Gait編、1984年);核酸ハイブリダイゼーション(Nucleic Acid Hybridization)(Hames及びHiggins編、1984年);転写及び翻訳(Transcription And Translation)(Hames及びHiggins編、1984年);動物細胞の培養(Culture Of Animal Cells)(Freshney及びAlan、Liss,Inc.、1987年);哺乳類細胞の遺伝子導入ベクター(Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells)(Miller及びCalos編);分子生物学の現行プロトコール及び分子生物学のショートプロトコール(Current Protocols in Molecular Biology and Short Protocols in Molecular Biology)、第3版(Ausubelら編);組み換えDNA方法論(Recombinant DNA Methodology)(Wu編、Academic Press);哺乳類細胞の遺伝子導入ベクター(Miller及びCalos編、1987年、Cold Spring Harbor Laboratory Press);酵素学における方法(Methods In Enzymology)、第154及び155巻(Wuら編);固定細胞及び酵素(Immobilized Cells And Enzymes)(IRL Press、1986年);Perbal、分子クローニングの実践的指針(A Practical Guide To Molecular Cloning)(1984年);論文、酵素学における方法(the treatise, Methods In Enzymology)(Academic Press,Inc.、N.Y.);細胞における免疫科学法及び分子生物学(Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology)(Mayer及びWalker編、Academic Press、London、1987年);実験免疫学のハンドブック(Handbook Of Experimental Immunology)、第I〜IV巻(Weir及びBlackwell編、1986年)の最新号において一般的に記載されている。本開示において参照される試薬、クローニングベクター及び遺伝子操作用のキットは、BioRad、Stratagene、Invitrogen及びClonTechのような商業的供給者から入手可能である。細胞培養及び培地採取についての一般的技術は、大規模哺乳類細胞培養(Large Scale Mammalian Cell Culture)(Huら、バイオテクノロジーにおける最新見解(Curr. Opin. Biotechnol.)8(1997年)、148頁);血清無含有培地(Serum-free Media)(Kitano、バイオテクノロジー(Biotechnology)17(1991年)、73頁);大規模哺乳類細胞培養(バイオテクノロジーにおける最新見解2(1991年)、375頁)及び哺乳類細胞の懸濁培養(Suspension Culture of Mammalian Cells)(Birchら、バイオプロセス技術(Bioprocess Technol.)19(1990年)、251頁);cDNAアレイから情報を抽出する(Extracting information from cDNA arrays)、Herzelら、CHAOS 11(2001年)、98〜107頁において概説されている。
【0153】
補足材料及び方法
本明細書に用いられるもののような従来の方法についての詳細な記載は、引用文献において見出すことができる。
【0154】
組織及び細胞株
全ての試料は、St.Joseph Stift,Bremen(Germany)の一般及び内臓外科(Department of General and Visceral Surgery)で甲状腺切除術を受けている患者から得た。計画の認可は、地方論理委員会から得て、ヘルシンキ宣言(第25章)に概説されたヒト被験者に関わる医療研究の原則に従った。各腫瘍から1片を細胞培養のためにハンクス液に保存し、第2片を遺伝子発現研究のために液体窒素に保存した。細胞株を甲状腺腺腫細胞から以前に報告されたように誘導した(Belgeら、細胞生物学ジャーナル国際版(J. Cell Biol. Int. Rep.)16、(1992年)339〜347頁)。胎児、胎盤及び精巣組織からの保存RNAを対照として使用した。
【0155】
細胞培養及び細胞遺伝学的分析
組織消化、原発性細胞株の培養及び細胞遺伝学的分析を、以前に記載された方法に従って実施した(Belgeら、癌、遺伝学、細胞遺伝学(Cancer Genet. Cytogenet.)101(1998年)、42〜48頁;Roqueら、癌、遺伝学、細胞遺伝学67(1993年)、1〜6頁)。消化の前に、各試料をスライドと接触させて、FISHスクリーニング用の試料を得た。
【0156】
RNAの単離、逆転写及びリアルタイムPCR定量化(qRT−PCR)
全RNAを、Trizol(Invitrogen、Karlsruhe、Germany)試薬又はmirVana(Ambion、Woodward、USA)miRNA単離キットを製造会社の説明書に従って使用して、組織から、並びに固定細胞株から抽出した。miRNA(miR−371−3p、miR−372、miR−373及びmiR−520c)及びRNU6B(RNA、U6核内低分子2;相対的定量化用の内部対照)特異的cDNAを、TaqManマイクロRNA AssaysからのTaqManマイクロRNA RT Kit及び遺伝子特異的RTプライマー(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を製造会社の説明書に従って使用して、10ngの全RNAから生成した。反応を、サーマルサイクラーにより、16℃で30分間、42℃で30分間、85℃で5分間インキュベートし、次に4℃で保存した。全ての逆転写は、テンプレートのない対照及びマイナスRT対照(−RT)を含んだ。リアルタイムPCRは、miRNA及びRNU6B特異的プローブ、並びにTaqMan Universal PCR Master Mixを備えたApplied Biosystems 7300 Fast Real Time PCRシステム(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を使用して実施した。反応を、96ウエルプレートにおいて、95で10分間、続いて95℃で15秒間と60℃で1分間の40サイクルによりインキュベートした。全ての反応を3重に実施した。相対的定量化(RQ)は、RQ=2_DDCt 2(−Delta Delta C(T))法(Livakら、方法(Methods)25(2001年)、402〜408頁)に基づいたApplied Biosystems SDSソフトウエアを使用して計算した。Ctデータを内部対照RNU6Bに規準化した(Yuら、癌細胞(Cancer Cell)13(2008年)、48〜57頁)。
【0157】
3′RACE−PCRを介した融合転写物の検出
3′RACE−PCRを細胞株S40.2で実施した。全RNAを、RNeasy Mini Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して単離した。cDNA合成は、オリゴ(dT)プライマー(Invitrogen、Karlsruhe、Germany)をアンカープライマーとして使用し、M−MLV逆転写酵素についての説明書に従って僅かな修飾により実施した。3′RACE−PCR及びネステッド3′RACE−PCRを、条件をGoTaq Flexi DNA Polymerase(Promega、Mannheim、Germany)に適合させ、Gene Racer Kit(Invitrogen、Karlsruhe、Germany)に記載されたように実施した。サザンブロットを、ジゴキシゲニン−11−dUTPで標識されたPUM1特異的プローブ(RocheDiagnostics、Penzberg、Germany)を用いて、Fehrらにより記述されたとおりに実施した(Fehrら、癌、遺伝学、細胞遺伝学ジャーナル(J. Cancer Genet. Cytogenet.)180(2008年)、135〜139頁)。目的のフラグメントを切除し、QIAquick Gel Extraction Kit(Qiagen、Hilden、Germany)で抽出し、次にpGEM−T Easy Vector(Promega、Mannheim、Germany)にクローンした。目的のクローンからプラスミドDNAをQIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen、Hilden、Germany)により単離し、Eurofins MWG、Ebersberg、Germanyで配列決定した。
【0158】
3′RACE−PCRを介した融合転写物の検出用プライマー
PUM1特異的プライマー(プライマー(エクソン)配列(5′−3′)):
Ex1_Up(エクソン2) CCCTCAAGAACCAGCTAATCCCAACA
Ex3_Up(エクソン4) TTCCTGGGTGATCAATGGCGAGA
Ex4_Up(エクソン5) TCCCCGGGCGATTCCTGTCT
Ex5_Lo(エクソン6) TCCATCACATCACCCTCCTCCTTCAA
Ex7_Up(エクソン8) ACCTAATGCGCTTGCTGTCCA
Ex8_Up(エクソン9) GCTCCCGCTGCGTTTGTCC
Ex9_Up(エクソン10) CAACAGACCACCCCACAGGCTCAG
【0159】
cDNA合成用プライマー(プライマー配列(5′−3′)):
AP2 AAGGATCCGTCGACATC(T)17
オリゴdT GCTGTCAACGATACGCTACGTAACGGCATGACAGTG(T)24
【0160】
3′RACE−PCR用プライマー(プライマー配列(5′−3′)):
UAP2 CTACTACTACTAAAGGATCCGTCGACATC
Gene Racer 3′ GCTGTCAACGATACGCTACGTAACG
Gene Racer 3′ネステッド CGCTACGTAACGGCATGACAGTG
【0161】
PCRにより生成されたサザンブロット用PUM1特異的プローブ:
1.プライマーEx4_UpとEx5_Loの間の配列
2.プライマーEx3_UpとEx5_Loの間の配列
【0162】
プライマー:
Ex3_Up(エクソン4)=TTCCTGGGTGATCAATGGCGAGA
Ex4_Up(エクソン5)=TCCCCGGGCGATTCCTGTCT
Ex5_Lo(エクソン6)=TCCATCACATCACCCTCCTCCTTCAA
【0163】
RT−PCRを介した融合転写物の検出
polyadqプログラム(Tabaskaら、遺伝子(Gene)231(1999年)、77〜86頁)を用いて、C19MCクラスターにおける可能なポリA部位を検出した。すぐ近くにプライマーを設計し、これを後にPUM1特異的プライマーと一緒に使用した。S40.2の全RNAを、以前に記載されたcDNA合成に使用されるTRIzol試薬(Invitrogen、Karlsruhe、Germany)を介して単離した。PCRを、GoTaq Flexi DNAPolymerase(Promega、Mannheim、Germany)により、続いてセミネステッドPCRにより実施した。目的のフラグメントを切除し、上記に記載されたように抽出し、Eurofins MWG、Ebersberg、Germanyで配列決定した。
【0164】
RT−PCRを介した融合転写物の検出用プライマー
PUM1−プライマー:Ex8_Up GCTCCCGCTGCGTTTGTCC
PUM1−プライマー:Ex9_Up CAACAGACCACCCCACAGGCTCAG
#19−プライマー:500−クラスター_ポリA_I CAACCGTTGGGGATTACAAAATAGA
【0165】
融合転写物の確認
前の結果を、融合転写物内に局在化した異なるプライマーを使用して確認した。PCRを上記に記載されたように実施した。目的の大きさのフラグメントを切除し、抽出し、配列決定した(上記を参照すること)。
【0166】
融合転写物の確認用プライマー
#19−プライマー:19_1 GGCTGCCCAGGGAGTTGCT
#19−プライマー:19_2 GCAGAAGCTCCCAGCCAGATCTT
#19−プライマー:19_3 CTAGGGTTCGCTGTCCTCACACTGC
PUM1−プライマー:Ex8_Up GCTCCCGCTGCGTTTGTCC
PUM1−プライマー:Ex9_Up CAACAGACCACCCCACAGGCTCAG
【0167】
RT−PCR
miR−512−5p、miR−517a及びmiR−519a用のmiRNA特異的プライマーを、Chenらにより記載されたように設計した(Chenら、核酸研究(Nucleic Acids Res.)33(2005年)、e179)。cDNAを、Chenら(2005年)上記に従うが、ステムループプライマー濃度(5nM)における小さな変更、並びにアニーリング温度(68℃)及び持続時間(10秒間)を変更したPCR反応を伴って、1μgの全RNAから生成した。RT−PCRを、GoTaq Flexi DNA−Polymerase(Promega GmbH、Mannheim、Germany)により実施した。伸長を72℃で15秒間実施した。
【0168】
miRNA特異的プライマー
miR−371−5pループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACACACTC
miR−371−5pループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACAGTGCC
miR−372ループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACACGCTC
miR−373ループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACACACCC
miR−512−5pループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACGAAAGT
miR−517aループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACACACTC
miR−520c−3pループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACACCCTC
miR−520c−5pループプライマー
GTCGTATCCAGTGCAGGGTCCGAGGTATTCGCACTGGATACGACCAGAAA
miR−371−3p順方向 ACCGCTAAGTGCCGCCATCTTTTG
miR−371−5p順方向 GCCGCCACTCAAACTGTGGGG
miR−372順方向 GGTCATAAAGTGCTGCGACATTTG
miR−373順方向 TTCATGAAGTGCTTCGATTTTGG
miR−512−5p順方向 AGTCTACACTCAGCCTTGAGGGCA
miR−517a順方向 CGGCGGATCGTGCATCCCTTTA
miR−519a順方向 CCGGCTAAAGTGCATCCTTTTAG
miR−520c−3p順方向 GCCGCCAAAGTGCTTCCTTTTAG
miR−520c−5p順方向 ACCGCTCTCTAGAGGGAAGCAC
逆方向プライマー GTGCAGGGTCCGAGGT
【0169】
蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)
I−FISH分析を甲状腺腫瘍の接触調製物(touch-preparation)により実施した。19q13.4再編成の検出のために、tbpc19(甲状腺切断点クラスター19q13)と呼ばれる二重色分裂再編成プローブ(dual-color, break-apart rearrangement probe)(PanPath、Budel、Netherlands)を使用した。再編成プローブは、良性甲状腺病巣における19q13.4の共通切断点クラスターの遠位(3′−tbpc19;AlexaFluor 488で標識されている)及び近位(5′−tbpc19;AlexaFluor 555で標識されている)にそれぞれ位置する2つのプローブの混合物である。1枚のスライドにつき10μlの分裂プローブを使用した。同時変性を、Mastercycler勾配(Eppendorf、Hamburg、Germany)により80℃で3分間実施し、続いて加湿チャンバによりハイブリダイゼーションに37℃で一晩付した。後ハイブリダイゼーションを、0.1×SSCにより61℃で5分間実施した。中間期核をDAPI(0.75μg/ml)で対比染色した。スライドを、Axioskop 2+蛍光顕微鏡(Carl Zeiss、Goettingen、Germany)で検査した。画像をAxioCam MRmデジタルカメラにより撮り、AxioVision(Carl Zeiss、Goettingen、Germany)で編集した。それぞれの場合において、重複していない200個の核をスコア付けした。共存シグナル(緑色/赤色)は、非再編成切断点領域を示し、一方、別々の緑色と赤色のシグナルは、染色体領域19q13.4の再編成を示す。S842のtbpc−19における中期FISHを、接触調製物のI−FISHについて上記に記載されたとおりに実施した。中期の処置をKievitsらにより記載されたように実施した(Kievitsら、血球計算(Cytometry)11(1990年)105〜109頁)。染色体1の切断点の決定では、FISHを細胞株S40.2の中期調製物に対して実施した。プローブとして、両方ともPUM1の全ゲノム配列に及んでいる2つの重複クローンRP11−1136E4(AQ707626及びAQ733864)とRP11−201O14(AL356320.8)(imaGenes、Berlin、Germany)を使用した。DNAを、 Qiagen Plasmid Midi Kit(Qiagen、Hilden、Germany)を使用して単離した。1μgの単離プラスミドDNAを、ジゴキシゲニン−11−dUTP(RP11−201O14)又はビオチン−16−dUTP(RP11−1136E4)のいずれかを用いて、ニック翻訳(Roche、Mannheim、Germany)により標識した。中期の処置、続くFISH実験を、上記に記載されたように実施した同時変性及び後ハイブリダイゼーションを除いてKievitsら(1990年)上記により以前に記載されたとおりに実施した。
【0170】
染色体19プローブ
【数1】

【0171】
PAC13173は、BACクローンのAC011453.4及びAC011487.5に対応する。
【0172】
統計分析
結果を平均±標準偏差(SE)として表す。統計比較を、非対応スチューデントt検定により実施した。0.05未満のp値を有意であると考慮した。
【0173】
実施例1:シリカ分析は甲状腺腫瘍における19q13.4切断点クラスターに対してC19MC及びmiR−371−3が極めて近接していることを明らかにする
クローン細胞遺伝学的異常を有する甲状腺腫瘍の約20%が、遺伝子バンド19q13を伴う異常を示す(Belge,G.ら、癌、遺伝学、細胞遺伝学(Cancer Genet. Cytogenet.)101(1998年)42〜48頁)。今まで、位置クローニング及びシリカ分析によって、切断点は、2つのmiRNクラスター、すなわちC19MC及びmiR−371−3をコードする遺伝子に極めて近接して位置している150kb(キロベース)のセグメント内のクラスターにおいて見出されている(Belgeら、細胞遺伝学(Cytogenet. Cell Genet.)93(2001年)、48〜51頁)(図4)。46の縦列反復霊長類特異的miRNA遺伝子を有する100kbの長さのC19MCクラスターは、全ての既知のヒトmiRNA遺伝子の約8%を占め、現在まで発見された最大のヒトmiRNA遺伝子クラスターである(Bortolin−Cavailleら、核酸研究(Nucleic Acids Res.)37(2009年)、3464〜3473頁)。Renら(Renら、トランスレーショナル医療ジャーナル( J. Transl. Med.)7(2009年)、20頁)は、このクラスターに4,691個の標的を予測した。最近の証拠は、miRNAが、主に胎盤に発現している非タンパク質コードPoI−II転写物のイントロンによりコードされることを示唆している(Bortolin−Cavailleら、(2009年)上記)。その大型クラスターと対照的に、miR−371−3クラスターは、5つのmiRNAがコードされる、およそ1,050bpのかなり小さな領域の範囲である。両方のクラスターのmiRNAは、同様のシード配列を共有する大型miRNAファミリーに属する(Laurentら、幹細胞(Stem Cells)26(2008年)、1506〜1516頁)。注目すべきは、近年、幾つかの群が、ヒト胚幹細胞(hESC)においてmiRNAの特徴的な性質を有するC19MCとmiR−371−3のクラスターのメンバーの発現に関連付けられている(Renら、(2009年)上記;Laurentら、(2008年)上記;Liら、細胞生化学ジャーナル(J. Cell. Biochem.)106(2009年)、1020〜1030頁)。miRー373の腫瘍形成の可能性についての最初の証拠は、ヒト精巣生殖細胞腫瘍において得られ、それは野生型p53の存在下で腫瘍発生性増殖を可能にすることを示した(Voorhoeveら、細胞(Cell)124(2006年)、1169〜1181頁)。前立腺腫瘍において、miR−373及びmiR−520cは、下方制御されていることが見出されたが、両方とも、インビトロで移動及び浸襲を刺激した(Yangら、臨床及び実験病理学国際ジャーナル(Int. J. Clin. Exp. Pathol.)2(2009年)、361〜369頁)。最近、Huangら(Huangら、ネイチャー細胞生物学(Nat. Cell Biol.)10(2008年)、202〜120頁)は、miR−373及びmiR−520cが、CD44の抑制によってインビボ及びインビトロで腫瘍浸襲及び転移を促進することを実証することができた。興味深いことに、CD44発現の定常的及び定量的変化は、甲状腺腫瘍の増殖及び予後に関与していた。浸襲挙動が甲状腺腫瘍の異なる診断において極めて重要な意味があるので、実験は、甲状腺腺腫における両方のmiRNAクラスターの可能な上方制御についての疑問に答えるように実施した。
【0174】
実施例2:19q13異常を有する腺腫はその転座のないものよりも有意に高いレベルのC19MCクラスターのメンバーを発現する
甲状腺腺腫における19q13転座の可能な標的としての2つクラスターのうちのいずれかの役割を評価するために、RT−PCRを使用して、19q13再編成を有する甲状腺腺腫の確立された5つの細胞株及び他のクローン異常を有する腺腫の3つの細胞株において、C19MCクラスターの3つのメンバー、すなわちmiR−512−5p、miR−517a及びmiR−519aの発現を比較した(表2を参照すること)。
【0175】
【表2−1】

【0176】
【表2−2】

【0177】
濾胞性甲状腺腫瘍の分析した試料及び遺伝子のサブグループと共に使用した細胞株についての細胞遺伝学的詳細は、従来の細胞遺伝学により及び/又は分裂二重色再編成プローブ(tbpc−19)による中期蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(I−FISH)により決定した。元の腫瘍にだけクローン異常が見出された細胞株の場合では、それから確立された細胞株が提示されている。
【0178】
全ての細胞株を、SV40誘導サブゲノムフラグメントを使用して原発性腫瘍から確立した。19q13再編成を有する5つの細胞株のうち4つは、3つのmiRNAの検出可能なレベルを発現したが、残りの細胞株(S121,表2)及び他の異常を有する全ての細胞株では、3つのmiRNAのいずれの発現も示されなかった(図4)。これらの細胞株を使用して、C19MCクラスターの別のメンバー、すなわちmiR−520cの発現をリアルタイムPCRにより定量化(qRT−PCR)した。このクラスターの他のメンバーから得た結果と類似して、高い発現が、miR−512−5p、miR−517a及びmiR−519aを発現する、19q13再編成を有する同じ4つの細胞株にだけ示されたが(図5a)、有意に低い発現が、残りの細胞株において見られた(p値=0.001659;詳細は表3を参照すること)。
【0179】
【表3】

【0180】
19q13再編成を含有する組織又は細胞株におけるクラスターC19MC及びmiR−371−3のmiRNAの発現についての統計分析(t−検定、両側)を、19q13再編成を有さない正常な甲状腺組織及び/又は腺腫と比較した。データは統計ソフトウエアR(www.r−project.org)を使用して得た。(d.f.=自由度、t=スチューデントt値)。
【0181】
おそらく、細胞株S121におけるC19MCクラスターの全ての検査メンバーの顕著に低い発現は、染色体転座によりもたらされる切断点領域の一部の欠失によってもたらされうる。同等の結果が原発性腫瘍からも得ることができるかを見るために、70個の甲状腺結節を、細胞培養前に得た細胞学的試料における中期蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(I−FISH)によって特徴決定した。結果を、通常は従来の細胞遺伝学により補足した。結節のFISHスクリーニングは、染色体バンド19q13のクローン再編成を有する5つの腫瘍を検出した(図5)。19q13再編成を有する全ての甲状腺結節は、19q13再編成を有さない試料(腺腫及び周囲の甲状腺組織;詳細は表3を参照すること)よりも有意に高いレベル(p値≦0.003133)のmiR−520を発現することを示すことができた(図5b)。
【0182】
実施例3:19q13異常を有する腺腫はその転座のないものよりも有意に高いレベルのmiR−371−3クラスターのメンバーを発現する
19q13再編成がmiR−371−3クラスターの発現も活性化するかを見るために、このクラスターの3つのメンバーの発現を、前に使用した同じ試料において定量化した。19q13再編成を有する全ての腫瘍は、周囲の組織学的に正常な甲状腺組織(p値≦0,02236)の3つの試料及び細胞遺伝学的に正常な腺腫(p値≦0.01428)よりも有意に高いレベルのmiR−371−3p、miR−372及びmiR−373を発現することを示した(図5c)。次にmiR−371−3p、miR−372及びmiR−373の発現を細胞株で定量化して、同等の結果を得た(図5d)。興味深いことに、C19MCクラスターメンバーの発現が不在又は非常に低い細胞株S121は、miR−371−3クラスターの非常に高い発現を示し、したがって、この細胞株ではC19MCクラスターの一部が欠失しているという概念が更に強化された。
【0183】
実施例4:プミリオホモログ1(PUM1)遺伝子の近位部分の転座がC19MC及miR−371−3クラスターを活性化する
miRNAクラスターの活性化に関与する機構を更に理解するために、19q13群のうちの1つの細胞株を更に詳細に調査した。この細胞株は、明らかな平衡転座t(1;19)(1p35.2;q13.4)によりもたらされた染色体バンド19q13の再編成を示す(図6)。適切なBAC(細菌人工染色体)プローブによって、染色体1の切断点が、プミリオホモログ1(PUM1)内の領域まで絞られた(図7オンライン)。PUM1はRNA結合タンパク質をコードし、成人組織において広範囲の発現を示す。22個のエクソンを有し、染色体バンド1q35.2において約150kbに及んでいる(Spassov及びJurecic、遺伝子(Gene)299(2002年)、195〜204頁;Szaboら、ゲノム生物学(Genome Biol.)5(2004年)、R59)。転座によって、PUM1の近位部分はmiRNAクラスターと並列になる(図6)。したがって、3′RACE−PCRを使用して、PUM1の近位部分と染色体19の配列との間の可能性のある融合転写物を検出した。最初に、PUM1のエクソン1−10、続く染色体19の切断点領域の異所性配列からなる融合転写物を検出することが可能であった(ジェンバンクGQ334687に提出した)。この転写物の存在から、この細胞株における染色体切断は、PUM1のイントロン10内に位置することを結論付けることができた。したがって、RT−PCR実験は、エクソン10内の配列を順方向プライマー(プライマー:Ex9_Up(PUM1のエクソン10)CAACAGACCACCCCACAGGCTCAG及びC19MCの後のプライマー:500−クラスター_ポリA_I CAACCGTTGGGGATTACAAAATAGA)として使用して実施し、それによって、境界がC19MCの遠位境界から明確に伸びている1つの融合転写物の一部を検出することが可能であった(ジェンバンク受入番号GQ334688;図6)。これらの結果から、細胞株S40.2において、両方のクラスターが、PUM1プロモーターにより誘導された大型PoI−II転写物の一部になったことを推定することが妥当であると思われる。異所性PoI−IIプロモーターによる活性化は、一般に、転座が両方のmiRNAクラスターを活性化する機構であり、近年の研究の結果(Bortolin−Cavailleら、核酸研究ジャーナル(J. Nucleic Acids Res.)37、(2009年)3464〜73頁)のように、大型PoI−II誘導転写からのC19MCクラスターのmiRNAの明確な「天然の」世代と一致する機構でありうる。
【0184】
実施例5:miRクラスターの活性化に関連する遺伝子転座を伴う腫瘍
本明細書において実施された組織学的分析から、定義によると濾胞状癌の診断をもたらす、対応する腫瘍の浸襲性の証拠は見出されなかった。また、19q再編成を有さない腺腫と比較して、他の差は明確ではなかった。19q13.4を伴う平衡転座も、子供の希な良性腫瘍様病巣である肝臓の間葉性過誤腫(mesenchymal hamartoma)(MHL)に記載されており(Spelemanら、癌、遺伝学、細胞遺伝学(Cancer Genet. Cytogenet.)40(1989年)、29〜32頁)、より一般的には、染色体バンド19q13の切断は、多様なヒト新生物(例えば、小型細胞肺癌又は結腸癌)において報告されている。更に、CancerChromosomes/Mitelmanデータベース(NCB)によると、染色体バンド19q13は、まさに、ゲノムの染色体異常により最も頻繁に標的にされている領域に属する。したがって、これらのうちの幾つかが、まさに、本明細書において調査されるmiRNAクラスターの2つのうちいのいずれか又は両方も標的にするかは、依然として決定されていない。しかし、甲状腺上皮内における、数千の潜在的な標的を有する2つの重要な「胚」miRNAクラスターのクローン再発現は、甲状腺腺腫の大きなサブグループの発生に因果的に関連するという豊富な証拠が存在する。単一の標的を有するこれらのmiRNAの個別の効果はヒト腫瘍と関連しているが、機械学的には、観察される効果は、対応するmiRNAの単一標的の調節解除よりも遺伝子発現の網羅的変化によりもたらされる可能性が高い。
【0185】
したがって、本発明により実施される実験は、C19MC及びmiR−371−3クラスターのmiRを、上皮腫瘍における高頻度の染色体再編成の標的遺伝子にする可能性が高い。更に、これは、共通の染色体再編成がmiRNA遺伝子又はmiRNAクラスターそれぞれの活性化と相関する最初の証拠である。したがって、miR、特に切断点領域の近位に位置するmiRクラスターに属するものが、そのような染色体再編成を伴う腫瘍の治療における重要な診断及び治療ツールを表すことを予測することは、賢明である。
【0186】
実施例6:腫瘍及び異なる腫瘍細胞株それぞれにおける2つの幹細胞マイクロRNA遺伝子クラスターC19MC及びmiR−371−3の発現
全RNAを、製造会社の説明書に従ってQIAGEN miRNEasy Mini Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を使用して、細胞株及び腫瘍組織から単離した。
【0187】
miRNA(miR−371−3p、miR−372、miR−373、miR−520c及びmiR−103)特異的cDNAを、TaqManマイクロRNA AssaysからのTaqManマイクロRNA RT Kit及び遺伝子特異的RTプライマー(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を製造会社の説明書に従って使用して、200ngの全RNAから生成した。miR−103は、相対的定量化のための内在性対照として機能した。反応を、サーマルサイクラーにより、16℃で30分間、42℃で30分間、85℃で5分間インキュベートし、次に4℃で保存した。全ての逆転写は、テンプレートのない対照及びマイナスRT対照(−RT)を含んだ。
【0188】
リアルタイムPCRは、miRNA特異的プローブ及びTaqMan Universal PCR Master Mixを備えたApplied Biosystems 7300 Fast Real Time PCRシステム(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を使用して実施した。反応を、96ウエルプレートにおいて、95で10分間、続いて95℃で15秒間と60℃で1分間の40サイクルによりインキュベートした。全ての反応を3重に実施した。
【0189】
相対的定量化(RQ)は、RQ=2−ΔΔCt方法に基づいたApplied Biosystems SDSソフトウエアを使用して計算した。Ct値を内部対照miR−103に規準化した。
【0190】
両方のクラスターのmiRNAの相対的発現は、2つの甲状腺腺腫組織(1つは19q13.4再編成を有さず(S925)、1つは19q13.4再編成を有する(S958))、19q13.4再編成を有する甲状腺腺腫から誘導した1つの細胞株(S40.2)、並びに10個の異なる腫瘍誘導細胞株(すべて19q13.4再編成を有さず)においてqRT−PCRにより決定した。
【0191】
結果
結果を図8〜11に示す。
【0192】
19q13.4再編成を有する両方の試料(甲状腺腺腫組織S958及び甲状腺腺腫誘導細胞株S40.2)は、両方のクラスターの測定した全てのmiRNAにおいて高い発現レベルを示した。これらのmiRNAの発現レベルは、子宮頸癌細胞株MRIH−215においても僅かに増加した。
【0193】
実施例7:絨毛膜絨毛試料採取により得た胎盤細胞の細胞培養における2つの幹細胞マイクロRNA遺伝子クラスターC19MC及びmiR−371−3の発現
全RNAを、製造会社の説明書に従ってQIAGEN miRNEasy Mini Kit(QIAGEN、Hilden、Germany)を使用して、培養絨毛膜絨毛細胞から単離した。
【0194】
miRNA(miR−371−3p、miR−372、miR−373、miR−520c及びmiR−103)特異的cDNAを、TaqManマイクロRNA AssaysからのTaqManマイクロRNA RT Kit及び遺伝子特異的RTプライマー(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を製造会社の説明書に従って使用して、200ngの全RNAから生成した。miR−103は、相対的定量化のための内在性対照として機能した。反応を、サーマルサイクラーにより、16℃で30分間、42℃で30分間、85℃で5分間インキュベートし、次に4℃で保存した。全ての逆転写は、テンプレートのない対照及びマイナスRT対照(−RT)を含んだ。
【0195】
リアルタイムPCRは、miRNA特異的プローブ及びTaqMan Universal PCR Master Mixを備えたApplied Biosystems 7300 Fast Real Time PCRシステム(Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)を使用して実施した。反応を、96ウエルプレートにおいて、95で10分間、続いて95℃で15秒間と60℃で1分間の40サイクルによりインキュベートした。全ての反応を3重に実施した。相対的定量化(RQ)は、RQ=2−ΔΔCt方法に基づいたApplied Biosystems SDSソフトウエアを使用して計算した。Ct値を内部対照miR−103に規準化した。
【0196】
両方のクラスターのmiRNAの相対的発現は、2つの甲状腺腺腫組織(1つは19q13.4再編成を有さず(S925)、1つは19q13.4再編成を有する(S958))、19q13.4再編成を有する甲状腺腺腫から誘導した1つの細胞株(S40.2)、並びに8個の異なる培養絨毛膜絨毛(第1及び/又は2継代)においてqRT−PCRにより決定した。
【0197】
結果
結果を図12〜15に表す。
【0198】
19q13.4再編成を有する両方の試料(甲状腺腺腫組織S958及び甲状腺腺腫誘導細胞株S40.2)は、両方のクラスターの測定した全てのmiRNAにおいて高い発現レベルを示した。
【0199】
クラスターmiR−371−3のmiRNAの高発現レベルは、Fi92を除いて全ての絨毛膜絨毛試料においても検出された。興味深いことに、この試料の細胞遺伝学的分析は、45,X0核型を明らかにした(ターナー症候群)。
【0200】
クラスターC19MCのmiR−520c−3pの発現は、僅かに増加した発現レベルしか示さなかったFi156及びFi160(両方とも第1及び第2継代)を除いて、全ての絨毛膜絨毛試料において高かった。
【0201】
明細書、特許請求の範囲、配列リスト及び/又は図面において開示されている本発明の特徴は、別個及びその任意の組み合わせの両方が、種々の形態で本発明を実現する材料となりうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者が、腫瘍を、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍を、有するか又は発生する危険性があるかを診断する方法であって、被験者の試験試料において少なくとも1つのマイクロRNA(miR)のレベルを測定することを含み、対照試料における対応するmiRのレベルと比べた試験試料におけるmiRのレベルの存在又は増加が、被験者が前記腫瘍を有する又は発生する危険性がある、のいずれかであることを示す、方法。
【請求項2】
染色体再編成が転座である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
染色体再編成が染色体19に存在する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
染色体再編成が染色体バンド19q13を伴う、請求項3記載の方法。
【請求項5】
miRが、切断点領域の近位に位置するmiRクラスターであるか、又はmiRクラスターに属する、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
miRクラスターが、C19MC又はmiR−371−3クラスターである、請求項5記載の方法。
【請求項7】
C19MCクラスターの少なくとも1つのmiR及びmiR−371−3クラスターの少なくとも1つのmiRのレベルが測定される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
C19MCクラスターのmiRが、hsa−mir−371; hsa−miR−371−3p; hsa−miR−371−5p; hsa−miR−372; hsa−miR−373; hsa−miR−373*; hsa−mir−512−1; hsa−miR−512−5p; hsa−miR−512−3p; hsa−mir−512−2; hsa−miR−512−5p; hsa−miR−512−3p; hsa−mir−515−1; hsa−miR−515−5p; hsa−miR−515−3p; hsa−mir−515−2; hsa−miR−515−5p; hsa−miR−515−3p; hsa−mir−516a−1; hsa−miR−516a−5p; hsa−miR−516a−3p; hsa−mir−516a−2; hsa−miR−516a−5p; hsa−miR−516a−3p; hsa−mir−516b−1; hsa−miR−516b; hsa−miR−516b*; hsa−mir−518b; hsa−miR−517a; hsa−miR−517*; hsa−miR−517b; hsa−miR−517*; hsa−mir−517c; hsa−miR−517*; hsa−mir−518a−1; hsa−miR−518a−5p; hsa−miR−518a−3p; hsa−mir−518a−2; hsa−miR−518a−5p; hsa−miR−518a−3p; hsa−miR−518b; hsa−miR−518c; hsa−miR−518c*; hsa−mir−518d; hsa−miR−518d−5p; hsa−miR−518d−3p; hsa−miR−518e; hsa−miR−518e*; hsa−mir−518f; hsa−miR−518f*; hsa−mir−519a−1; hsa−miR−519a; hsa−miR−519a*; hsa−mir−519a−2; hsa−mir−519b; hsa−miR−519b−5p; hsa−miR−519b−3p; hsa−mir−519c; hsa−miR−519c−5p; hsa−miR−519c−3p; hsa−miR−519d; hsa−mir−519e; hsa−miR−519e; hsa−miR−519e*; hsa−mir−520a; hsa−miR−520a−5p; hsa−miR−520a−3p; hsa−miR−520b; hsa−mir−520c; hsa−miR−520c−5p; hsa−miR−520c−3p; hsa−mir−520d; hsa−miR−520d−5p; hsa−miR−520d−3p; hsa−mir−520e; hsa−miR−520f; hsa−miR−520g; hsa−miR−520h; hsa−mir−521−1; hsa−mir−521−2; hsa−miR−521; hsa−mir−522; hsa−miR−522*; hsa−mir−523; hsa−miR−523*; hsa−mir−524; hsa−miR−524−5p; hsa−miR−524−3p; hsa−mir−525; hsa−miR−525−5p; hsa−miR−525−3p; hsa−mir−526a−1; hsa−miR−526a; hsa−mir−526a−2; hsa−mir−526b; hsa−miR−526b*;又はhsa−miR−527;(表1も参照すること)である、請求項6又は7記載の方法。
【請求項9】
腫瘍が、甲状腺の、腫瘍又は新生物(neoplasia)である、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
腫瘍が甲状腺腺腫である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
腫瘍が、被験者における1つ以上の予後マーカーと関連する、請求項1〜10のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
腫瘍が甲状腺腺腫であり、予後マーカーが7トリソミーである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
被験者がヒトである、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
請求項8に定義されているmiRNAの発現レベルの増加により特徴付けられる甲状腺腫瘍のサブタイプの検出方法であって、好ましくは、請求項8に定義されているmiRNAの、検出と、場合により定量と、を含む、方法。
【請求項15】
腫瘍に、好ましくは染色体再編成を伴う腫瘍に罹患している対象を治療するための医薬組成物であって、請求項1〜14のいずれか1項に定義されている少なくとも1つのmiRの発現を阻害すること又はmiRの活性の量若しくはレベルを減少することができる化合物と、場合により薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
被験者が、請求項1〜14のいずれか1項記載の方法により診断される、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
miRがmiR−373であり、腫瘍が、甲状腺の腫瘍又は新生物である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
染色体再編成を伴う腫瘍の細胞の増殖を阻害する方法であって、
(i)腫瘍細胞において、好ましくは染色体再編成を有する腫瘍細胞において、対照細胞と比べて、発現が誘導又は増加される1つ以上のmiRの発現又は活性を阻害する1つ以上の作用物質を、細胞に導入すること;及び
(ii)1つ以上の作用物質がmiRの発現又は活性を阻害する条件下に細胞を維持し、それによって腫瘍細胞の増殖を阻害すること
を含む方法。
【請求項19】
腫瘍に対する抗腫瘍剤を同定する方法であって、試験剤を細胞に提供すること、及び染色体再編成を有する腫瘍細胞における発現レベルの増加に関連する少なくとも1つのmiRのレベルを測定することを含み、このとき細胞におけるmiRのレベルが、適切な対照細胞と比べて、減少することが、試験剤が抗腫瘍剤であること示す、方法。
【請求項20】
腫瘍が、甲状腺の腫瘍又は新生物であり、細胞が甲状腺腺腫細胞である、請求項18又は19記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか1項に定義された1つ以上のmiRを検出するための1つ以上の試薬を含む、請求項1〜13又は18〜20のいずれか1項記載の方法において有用な、キット。
【請求項22】
1つ以上の試薬が、請求項1〜21のいずれか1項に定義された1つ以上のmiRに特異的なプライマー及び請求項1〜21のいずれか1項に定義された1つ以上のmiRに特異的なプローブを含む群から選択される、請求項21記載のキット。
【請求項23】
前記少なくとも1つのmiRが、miR−512−5p、miR−517a、miR−519a、miR−520c、miR−371−3p、miR−372及び/又はmiR−373を含む、請求項17〜20のいずれか1項記載の方法、又は請求項21〜22のいずれか1項記載のキット。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2013−502906(P2013−502906A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525941(P2012−525941)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005349
【国際公開番号】WO2011/023414
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(512050519)アルケド バイオテック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】