説明

柔らかで自立性があるタンパク質ナノ薄膜、その製造法及び応用

【課題】比較的小さな(分子量が約1000Da程度の)分子を、迅速かつ簡単に分離(又は濃縮)できるタンパク質膜を提供する。
【解決手段】強健で柔軟な自立性のある超薄(ナノ)若しくは薄い純タンパク質膜は、金属(Cd、Cu又はZn)硝酸塩若しくは塩酸塩の希薄液を中性若しくは弱塩基性pHに保ち、その金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドを自発的に形成させ、得られた金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドとタンパク質溶液とを混合し、タンパク質と金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドとでできたコンポジット・ナノファイバーを得、得られたコンポジット・ナノファイバーの分散液をフィルター上で濾過し、コンポジット・ナノファイバーに含まれるタンパク質を二官能性架橋剤によって架橋させ、上記反応物から金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドを除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子量の大きい分子はもとより、比較的小さな分子量(約1000程度)の分子を迅速かつ単純に分離(又は濃縮)できる「柔らかで自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜」に関するものである。本発明は、また、上記タンパク質膜の製造法あるいは上記タンパク質膜の応用にも関する。
【背景技術】
【0002】
今日、膜(メンブレン)は、海水からの飲料水の製造、産業廃水の浄化、貴重成分の回収、食品・医薬品産業における高分子混合物の濃縮、精製又は分画、そして気体や蒸気の分離のために、実際に広く応用されている。膜は、エネルギー変換システム、人口臓器あるいはドラッグデリバリー(医薬運搬)デバイスにおける重要な構成要素でもある。しかし、分離操作における膜の広範な使用は、高い選択性があって、分離物質の高い純度、操作性の低コスト、及び高透過性をもたらす好ましい組合せの膜を調製すること(即ち、膜の高い流束のみならず、膜面積及び製造コストを削減させること)が困難なため制約があった。膜の高い流量(フラックス)は、膜システムのコストを決定する鍵となる基本性能である。しかし不運にも、従来のポリマー膜材料の選択性が増加するほど、透過性は例外なく減少し、その逆も同様である。そして、流量を上げるために膜厚を減少させると、膜の安定性も劇的に減少する。ポリマーの機械的伸縮性や操作性と、空間的に厳密なゼオライト孔のサイズ選択性とを組み合わせ、先の制約を克服するために有機ポリマーにミクロンサイズの多孔性ゼオライト粒子を添加する試みが探求されてきた(Lai, Z. P. et al, 2003)。しかしながら、この方向での商業化は、ポリマー/ゼオライトの低接着性、不適切な粒子分散及び膜の低流量(低フラックス)によって妨げられてきた。
【0003】
特異な構造及び形態をもつ新しいナノ構造材料の発展は、ガス分離のために高度に制御可能な選択性及び透過性を有する膜の調製に強力なツールを提供している(Lai, Z. P. et al, 2003; De Vos, R. M. et al, 1998; Merekel, T. C. et al, 2002; Shiflett, M. B. et al, 1999)。今日まで、ナノコンポジット膜の殆どは100nmよりも大きな厚さで、支持層を有し、それが膜の流量(フラックス)、分離効率、及びマクロスケールの応用(特に液体分離系の応用)をかなり制限している(Holt, J. K. et al, 2006 ; Jirage, K. B. et al, 1997)。超薄(数十nm程度の厚み)の自立性フィルムは従来から幾つか報告されており(Yang, H. et al, 1996; Mamedov, A. A. et al, 2002; その他)、センサーやアクチュエータに用いられている。しかしながら、これらの分離操作についての報告は、機能性や作業性の欠陥に因るためか無い。但し、例外として、サイズに基づく巨大分子の分離に超薄ナノメンブレンを用いた最初の例に、精確なシリコン堆積とエッチング技術及び高温(約700℃)熱アニーリングプロセスによって調製された厚み15nmの自立性シリコン膜を用いたStriemerとその共同研究者の報告があるのみである(Striemer. C. C. et al, 2007)。
【0004】
本発明者らの研究室では、単純な濾過と剥離技術によって、マイナス電荷の色素分子(非特許文献1参照)、DNA(非特許文献2参照)、あるいはプラス電荷の金属水酸化物ナノストランド(非特許文献3参照)でできた繊維性ナノコンポジット構造を有する、マクロスケールで超薄の自立性メソポーラス膜の一般的合成法を開発してきた。しかし不運にも、これらの繊維性ナノコンポジットフィルムは金属水酸化物ナノストランドの化学的安定性が低いために、脆くて簡単に壊れた。そこで、ナノストランドを(ポリアニリンやポリピロール等の)共役ポリマーでコートし、生理的条件下にタンパク質をサイズ選択的に分離するメソポーラスな超薄フィルムを生成させた(Peng, X. S.et al, 2007)。しかし、そのようなフィルムは、pH4よりも低い酸性溶液条件下では(自身を)支持することができなかった。
【0005】
【非特許文献1】Luo, Y.-H., Huang, J., Ichinose, I. “Bundle-like assemblies of cadmium hydroxide nanostrands and anionic dyes” J. Am. Chem. Soc. 127, 8296-8297 (2005).
【非特許文献2】Ichinose, I., Huang, J., Lou, Y.-H. “Electrostatic trapping of double-strand DNA by using cadmium hydroxide nanostrands” Nano Lett. 5, 97-100 (2005).
【非特許文献3】Ichinose, I., Kurashima, K., Kunitake. T. “Spontaneous formation of cadmium hydroxide nanostrands in water” J. Am. Chem. Soc. 126, 7162-7163 (2004).
【非特許文献4】Luo, Y.-H. et al. “Formation of positively charged copper hydroxide nanostrands and their structural characterization” Chem. Mater. 18, 1795-1782 (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した繊維性ナノコンポジットの問題点を解決するために、本発明者らはプラス電荷の金属水酸化物ナノストランドをタンパク質でコートする方法を更に検討した。そして、繊維性コンポジット中のタンパク質をグルタールアルデヒド(GA)によって共有結合で架橋させ、その後、無機ナノストランドを除去することによって、幸いにも、強健で柔軟な自立性のある超薄(ナノ)若しくは薄い純タンパク質膜を開発することに成功することができた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔発明の概要〕
すなわち、本発明は、柔らかで自立性がある超薄(ナノ又はnmスケール)若しくは薄いタンパク質膜であって、前記タンパク質は二官能性架橋剤で結合(架橋)されているタンパク質膜を提供する。ここで、本明細書において、“膜”とは“フィルム”と同じ意味であり、“自立性”とは“自己支持性”と同じ意味である。
【0008】
また、本発明は、上記柔らかで自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜の製造法も提供する。その製造法は、以下の工程を含んでいる:
(1)金属水酸化物ナノストランドを形成させる工程:すなわち、金属(Cd、Cu又はZn)硝酸塩若しくは塩酸塩の希薄液を中性若しくは弱塩基性pHに保ち、その金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドを自発的に形成させる;
(2)タンパク質と上記金属水酸化物ナノストランドでできたコンポジットナノファイバーを得る工程:すなわち、得られた金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドとタンパク質溶液とを混合し、タンパク質と金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドとでできたコンポジットナノファイバーを得る;
(3)濾過する工程:すなわち、得られたコンポジットナノファイバーの分散液をフィルター上で濾過する;
(4)架橋する工程:すなわち、コンポジットナノファイバーに含まれるタンパク質を二官能性架橋剤によって結合(架橋)する;そして
(5)金属水酸化物を除去する工程:すなわち、上記反応物から金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドを除去する。
【0009】
また、本発明は、上記自立性がある超薄若しくは薄いタンパク質膜のいくつかの応用も提供する。一つの応用として、一つの層は上記タンパク質膜であり、他の一つの層は前記タンパク質膜上に所定の分子を堆積させ、二官能性架橋剤で架橋させて形成させた薄い分子膜である二層から成る自立性薄膜が本発明で提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の、柔らかで自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜は、新規なものである。(タンパク質としてアポフェリチンを使った)ある例では、得られたタンパク質膜は、厚みが均一な25nmで、直径が7.5cmであり、直径/厚みの比は3,000,000(このような高い比率はかつて報告されたことがない)を示す膜であった。
本発明の、柔らかで自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜は、小分子量(約1,000又はそれ以下)の分子のサイズ選択的分離に応用できる。それらは、更には、pH制御下の分子の効率的分離や、pHを変動させながらの色素分子の可逆的吸着及び脱着にも、非常に高い容量(モル比)をもって応用できる。
本発明の製造法によれば、上記柔らかで自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜を容易に製造できる。
本発明の、一つの層は上記タンパク質膜であり、他の一つの層は前記タンパク質膜上に所定の分子を堆積させ、二官能性架橋剤で架橋させて形成させた薄い分子膜である二層から成る自立性薄膜は、新規な多層膜であり、上記柔らかい自立性のある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜とは異なった使い方ができるであろう。
【発明の実施の形態】
【0011】
〔発明の更に詳しい説明〕
先ず、自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜の製造法を詳細に説明する。本発明の製造法は、上で述べたように、以下の各工程を含んでいる。
(1)金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドを形成させる工程;
(2)タンパク質と上記金属水酸化物ナノストランドでできたコンポジットナノファイバーを得る工程;
(3)濾過する工程;
(4)架橋する工程;そして
(5)金属水酸化物を除去する工程。
ここで、必ずしも上記順に行なう必要はないが、上記順、すなわち、(1)→ (2)→(3)→(4)→(5)の順がもっとも好ましい。
更には、工程(4)(架橋する工程)の後に、タンパク質と金属水酸化物とでできたコンポジットナノファイバーを剥離する工程を付け加えることもできる。
【0012】
本発明では色々な種類のタンパク質を使用できる。フェリチン、アポフェリチン、チトクロームc、ミオグロビン、及びグルコースオキシダーゼ(言うまでも無く、他のタンパク質を使うことも可能である)を使った例を後に示す。単一のタンパク質に限らず、混合されたタンパク質も使えるが、膜の均一性を期待できる点から単一のタンパク質の使用が好ましい。
【0013】
自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜の典型的な製造プロセスのスキームを図1に示した。
最初の工程(金属水酸化物ナノストランドを形成させる工程;ただし、ここでは図示されず)においては、ほかのところで(非特許文献3、4参照)示したようにして、ポリマー様プラス電荷の金属水酸化物ナノストランドを調製した。簡単に述べれば、Cd、Cu又はZnの硝酸塩(Cd又はZnでは塩酸塩も可)の希釈溶液に、希釈アルカリ液を添加して、pHを中性又は弱アルカリ性(pH=6.0−8.5)とし、そのまま室温で数分乃至は一日間放置し、金属水酸化物ナノストランド(その太さ径は約2−3nm、その長さは数十μmに達する)を自発的に形成させる。
【0014】
得られた金属水酸化物ナノストランドをマイナス電荷をもつタンパク質の水溶液と共に所定の時間混合すると、タンパク質と金属水酸化物ナノストランドとでできたコンポジットナノファイバー分散液を生成する。得られた分散液を、孔径が200nm(空隙率が約10%)のポリカーボネート(PC)膜のようなフィルターの上で濾過し、コンポジットナノ繊維性フィルムを形成させる。次に、得られたフィルムを二官能性架橋剤の溶液(例えば、10重量%グルタールアルデヒド水溶液)で十分な時間処理し、架橋反応を完了させる。
グルタールアルデヒドを使用した場合の反応は以下の通り。
(化1)
Protein-NH2 + O=CHC3H6HC=O →
Protein-N=CHC3H6HC=N-protein + 2H2O

グルタールアルデヒドに代えて、他の二官能性架橋剤、例えば、タンパク質の二官能性架橋剤としてよく知られている種々のイミドエステル類、N−ヒドロキシスクシンイミドエステル類、あるいはカルボジイミド類を使うこともできる。
【0015】
図1に、これら架橋されたナノ繊維性コンポジット膜の剥離例が示されている。この剥離のために、上記膜付きフィルターをアルコール(例えば、エタノール)に浸漬させて、自立性を有する架橋膜を得ることができる。
引き続いて、自立性を有する上記架橋膜を塩酸溶液のような鉱酸水溶液中に浸し、金属水酸化物ナノストランドを除去する。次に、精製水を用いて過剰の金属イオン及び塩酸を洗い去る。このようにして、純粋な(すなわち、金属水酸化物を含まない)、水中に浮遊する自立性タンパク質膜を得ることができる。更に応用若しくは評価するために、これら膜をアルコール中に保存することができる。
【0016】
タンパク質膜の厚みは、濾過される繊維性コンポジット液の容量を調節することで、10nmから10μmの範囲で容易に制御できる(実施例3、表1参照)。
対象となる材料の迅速且つ簡便な分離(又は濃縮)を行なうために、タンパク質膜の厚みは、好ましくは15nm〜1000nm、更に好ましくは20nm〜1000nmである。所定濃度の繊維性コンポジットを濾過しようとするとき、タンパク質膜厚み及びその濾過操作の時間は濾過液の容量に直線的に依存する。
タンパク質膜の大きさ(直径)は、制約されない。なぜなら、タンパク質膜の直径は基本的には漏斗の大きさ(内径)によって決まるからである。
【0017】
上記自立性がある超薄(ナノ)若しくは薄いタンパク質膜は種々の応用がある。上で述べたように、ひとつの応用は、一つの層が上記タンパク質膜であり、他の一つの層が前記タンパク質膜上に所定の分子を堆積させ、二官能性架橋剤で架橋させて形成させた薄い分子膜である二層から成る自立性薄膜の調製である。
ここで、「所定の分子」として、合成高分子のような構造の分かった種々の分子で上記タンパク質膜の通路を通過できない程度に大きい分子量を有する分子を使うことができる。そのような合成高分子として、例えば、末端アミノ基を有するデンドリマーを使うことができる。そして、そのようなデンドリマーとしては、分子量が約2,000以上(上記タンパク質膜の通路を通過できないような大きさ)のポリアミドアミンが好ましく用いられる。
【実施例】
【0018】
実施例で用いた材料は、次の通り。CdCl・2.5HO、Cu(NO・3HO、2−アミノエタノール、ダイレクトイェロー 50、エバンスブルー、8−アミノナフタレン−1,3,6−トリスルホン酸二ナトリウム塩、K[Fe(CN)]、塩化水素(5M溶液)及びグルタールアルデヒド(50重量%水溶液)は関東化学から購入した。テトラキス(1−メチルピリジニウム−4−イル)ポルフィン p−トルエンスルホン酸、8−オクタノイルオキシピレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウム塩、銅フタロシアニンテトラスルホン酸四ナトリウム塩、グルコースオキシダーゼ、チトクロームc、ミオグロビン、ウマ脾臓フェリチン(76mg/ml溶液)及びアポフェリチン(38mg/ml溶液)はシグマ−アルドリッチ社から購入した。脱イオン水(18.2MΩ)はミリポア社のダイレクト−Q システムにより製造し、実験全体を通して用いた。自立性膜の調製のために、ポリカーボネート(PC)膜及び直径2.5cm、4.7cm、及び9.0cmのフィルタ(ヌクレポア、ワットマン社)を用いた。アルミナメンブレン(アノディスク、孔径0.2μm、直径2.5cm、厚み60μm)もまたワットマン社から購入した。
【0019】
使用した器具及び方法は以下の通り。得られた膜は走査型電子顕微鏡(SEM、Hitachi S−4800)、透過型電子顕微鏡(TEM、JEOL 1010)及びエネルギー分散性X線分析系を備えた高分解能透過型電子顕微鏡(HR−TEM、JEM 2100F)によって特性評価した。TEM及びHR−TEM観察用のサンプルは、炭素でコートしたグリッドの上にこの自立性膜を移すことにより準備した。SEM観察は、Hitachi e−1030イオンスパッターを用いて、10Paの圧力、10mAの電流密度で、白金層を2nmの厚みにコートした後に行なった。紫外可視吸収スペクトルは、SHIMAZU UV−3150スペクトロフォトメータを用いて得た。フォトルミネッセンススペクトルは、JASCO EP−6500スペクトロフォトメータにより得た。磁性は超伝導干渉デバイスを備える市販の磁気計(MPMS−XL、Quantum Design)を用いて測定した。機械的性質は、TriboIndenter(Hysitron社)を用い、シリコン基板付きダイアモンド製Berkovitchインデンターを使って測定した。分子の大きさは、Chem3Dウルトラ10.0(Cambridge Scientific Computing)により測定した。
【0020】
〔実施例1〕 本発明のタンパク質膜の調製及び特性評価
(a)調製
最初に、ポリマーのようなプラス電荷をもつ水酸化カドミウムナノストランドを文献(非特許文献2−4参照)に記載した方法により調製した。簡単に言えば、希カセイソーダ液又はアミノエタノール溶液(2mM,20mL)を、4mM硝酸カドミウム水溶液20mLの中に投じてすばやく混合し、更に数分間撹拌して、水酸化カドミウムナノストランドを調製した。
得られた水酸化カドミウムナノストランド分散液に、タンパク質(フェリチン、アポフェリチン、チトクロームc、ミオグロビン、又はグルコースオキシダーゼ)を加え、そして30分間撹拌した。フェリチンとアポフェリチンの場合は、その混合液は、3.8mg/mLのタンパク質液1mLと水酸化カドミウムナノストランド分散液20mLとでできている。チトクロームc、ミオグロビン及びグルコースオキシダーゼの場合は、その混合液は、6.4mg/mLのタンパク質液1mLと水酸化カドミウムナノストランド分散液20mLとを混ぜてできている。
【0021】
その混合物の所定量をポリカーボネート膜(濾過に使用した膜/漏斗の直径:3.2cm)上で、ゲージ圧(差圧)90KPaのもとに濾過した。次いで、その膜を10重量%グルタールアルデヒド水溶液中に浸し、室温で1時間、架橋反応させた。これら架橋反応後のナノ繊維性コンポジットフィルムは、フィルム付きPCメンブレンをエタノールに浸漬し、剥離して得た。得られた自立性膜を10mM塩酸溶液中に3時間浸漬し、無機のナノストランドを除き、次いで、ミリ−Q精製水を用いて過剰のカドミウムイオン及び塩酸を洗い去った。このようにして、5種類の、各々水に浮遊する純粋な自立性タンパク質(フェリチン、アポフェリチン、チトクロームc、ミオグロビン、又はグルコースオキシダーゼ)膜を得た。
【0022】
(b)特性評価
図2は、架橋反応後の、フェリチン/水酸化カドミウムナノストランドのナノ繊維性フィルムのTEM像であり、この像から繊維性構造が明らであり、また、タンパク質は殆どがナノストランドに沿って集まっていることが分かる。この像で、フェリチンタンパク質は、フェリチンの鉄化合物コアに起因して直径が約8nmの黒点のように見える。水酸化カドミウムナノストランドは(太さ)約2nmの繊維構造のように見える。
図3は、図2で示されたフェリチン/水酸化カドミウムナノストランドのナノ繊維性フィルムから水酸化カドミウムナノストランドを除去した後の、純フェリチン膜のTEM像である。この像では繊維性構造は消失しており、そのことはナノストランドが完全に除去されたことを意味する。
【0023】
図4は、直径7.5cmの、自立性があるフェリチン膜の写真の写しである。この膜の直径は濾過に用いた漏斗のサイズに等しい。
【0024】
SEM及びEDXを用いて、水酸化カドミウムナノストランドを除去する前及び後の膜の形態及び組成を更に詳細に調べた。自立性膜を孔径200nmの陽極アルミナメンブレンの上に移した。
図5は、水酸化カドミウムナノストランドを除去する前のフェリチン/水酸化カドミウムナノストランド膜(厚み:40nm)のSEM断面像(a)及びSEM平面像(b)であり、図6は、水酸化カドミウムナノストランドを除去した後のフェリチン膜(厚み:40nm)のSEM断面像(a)及びSEM平面像(b)である。
図5aと図6aとを比べると、膜の厚みに大きな違いはなく、すなわち、ナノストランドを除去した後に膜厚の減少はなかった。これは、ナノストランド除去に起因する崩壊がないことを意味している。しかし、ナノストランド除去後の膜表面は、ナノストランド除去前のそれよりも滑らかになっている(図5bと図6bとを比較せよ。)
【0025】
図7は、水酸化カドミウムナノストランドを除去する前及び除去した後の架橋フィルムから記録されたEDXスペクトルを示している。これらのEDXスペクトルは、カドミウム元素が膜から完全に除去されたことを裏付けているが、これは前述のTEMによる検討結果と矛盾していない。天然フェリチン(架橋なし)と本発明で得られた純フェリチン膜の各々のFTIRスペクトルを図8に示した。特徴的ピークは両者殆ど同じであるが、ピーク強度はフェリチン膜のほうが天然フェリチンよりも強い。ピーク位置が同じであることは、架橋反応のあいだに膜中へ新しい官能基が何も導入されなかったからである。約1660cm−1でのピーク強度の増加は、架橋反応のあいだにおけるC=N共有結合の形成に由来する(Rozkiewicz, D. I. et al, Chem. Eur. J. 12, 6290-6297,2006)。これらの結果は、タンパク質が変性していないことを示している。
【0026】
付言すれば、水酸化カドミウムナノストランドは、これを除くことによってタンパク質膜に悪影響を及ぼさないとしても、水酸化カドミウムナノストランドと同様な性質を有し、それよりももっと安全な水酸化銅ナノストランドや水酸化亜鉛ナノストランドのようなナノストランドもまた使うことができ、自立性タンパク質膜を調製できる(データはここに示さないが)。
【0027】
〔実施例2〕 いろいろな厚み及び直径のタンパク質膜の制御合成
(a)調製
濾過時間及び/又は濾過液量を変え、また、用いた膜/漏斗の直径を1.7cm、3.2cm又は7.5cmとしたほかは実施例1と同様にして、自立性がある超薄の純タンパク質膜を調製した。結果を表1に示した。
【0028】
【表1】


ここで、Vmixturea は、フェリチン又はアポフェリチンタンパク質3.8mg/ml(他のタンパク質では6.4mg/ml)溶液2mlと水酸化カドミウムナノストランド液40mlとからつくられた混合物を供給源として、そのときの混合物の濾過容量を意味する。タンパク質膜の厚みは、断面SEM像から測定した。
【0029】
(b)特性評価
得られた膜は、肉眼観察(又は写真)と共にSEM像及びTEM像(ここには示さず)とによって評価した。これらの結果から、タンパク質膜の厚み及び濾過操作の時間は、濾過液量に直線的に依存することが分かる。これらの例では、1.7cm、3.2cm及び7.5cmの三つの直径で薄膜が得られた。そしてまた、フェリチンの場合に1.7cmの直径で最も薄い厚みの40nmであり、3.2cm及び7.5cmの直径で各々60nmの厚みであった。最も厚いものは、1.7cmの直径で濾過時間が1時間のものであり、4000nmに達した。すなわち、フェリチンの場合は、フェリチン膜の厚みは40nmから4000nmまでの範囲で制御可能である。
水酸化カドミウムナノストランド除去前の厚み60nm、200nm、600nm及び4000nmの膜を比較すると、膜厚みが大きいほどその色は深かった。水酸化カドミウムナノストランドを除去した後も、対応する膜の厚みは殆ど変わらなかった。これは、ナノストランドを除去した後の膜は堅く結合されているのではなく、より多孔性の膜となっていることを示している。
【0030】
もう一つのタンパク質のアポフェリチンの場合には、得られたアポフェリチン超薄タンパク質膜は、直径7.5cm(No.12)のときさえも、25nmの均一な厚みであった。厚みに対する直径の比率は、3,000,000倍にも達した。TEM像(ここには示さない)は、その膜がnmスケールの非常に柔らかいものであることを示している。この極端なマクロスケールの柔軟性は、直径7.5cmのアポフェリチン自立性膜を先端が0.8mm穴径のピペット中へ吸い込むことによって裏付けられた。このタンパク質膜が、その面積(大きさ)の8790倍も小さな穴を可逆的に通り抜けることができたのは驚くべきことであった。これは、そのタンパク質膜の柔軟かつ極端な薄さに因るものである。
【0031】
水酸化カドミウムナノストランド除去前及び後の、厚み1500nmのフェリチン及びアポフェリチン膜の各々の機械的特性を、ダイアモンドBerkovitchインデンターを用い、Triboindenter(Hysitron社)を用いるナノインデンターにより、各々、測定した。これらに対する典型的な負荷−脱負荷曲線を図9に示した。それぞれのサンプルで3回測定し、その平均値を求めた。硬度(H)及びヤング率を表2に示す。
【0032】
【表2】

a ポアッソン割合は0.5で、ヤング率の計算に用いた。
b n1は測定点のナンバーを示し、n1、n2及びn3は3点での測定を意味する。
c Avgは3点での測定値の平均値を意味する。
d (前)は水酸化カドミウムナノストランド除去前を意味する。
e (後)は水酸化カドミウムナノストランド除去後を意味する。
【0033】
水酸化カドミウムナノストランド除去前の膜の硬度及びヤング率は、ナノストランド除去後のそれよりも大きいと結論できる。同時に、フェリチン膜の硬度及びヤング率はアポフェリチン膜のそれよりも大きい。ナノストランド除去前後の膜におけるこれらの相違は、タンパク質膜の機械特性の増強が無機成分とタンパク質との間の相互作用から生じていることを示している。同時に、フェリチンにおける鉄化合物はフェリチン膜をアポフェリチン膜よりも高い硬度及びヤング率をもつ膜にしている。フェリチン膜、アポフェリチン膜の硬度及びヤング率の値は、従来報告されたゼラチン、大豆、カゼインあるいはソジウムカゼイネート等のグリオキサール架橋構造の天然タンパク質膜(Vaz, C. M. et al, J. Mater. Sci.: Mater. in Medicine 14, 789-796 ,2003)の値よりも10倍高く、グルタールアルデヒド架橋構造の大豆タンパク質膜(Chabba, S. et al, J. Mater. Sci. 40, 6263-6273, 2005)よりも4倍高い。
【0034】
我々は、更には、内径が5mmで外径が7mmのプラスチックチューブの穴を厚み60nmの膜でシールし、この上に内径が7mmで外径が10mmの別のプラスチックチューブを連結し、次いで、大きいほうのプラスチックチューブにダイレクトイェローのエタノール溶液を注意深く注ぎ込み、これを垂直に維持した。そのような膜は、21cmのエタノールカラムを支持できた(これより、明らかなエタノールの透過無しに、膜自体の重量の約180,000倍の重量が支持されたと計算できる)。
【0035】
フェリチンあるいはアポフェリチン膜からナノストランドが除かれたときの膜は、厚み1550nmの膜における肉眼観察では更に柔軟になっている(写真は示さず)。この現象は、ナノストランド除去後のこれらタンパク質膜が酸性及び塩基性のいずれの条件下にも非常に安定であるばかりではなく、アセトン、ベンゼン及びクロロホルムのような有機溶媒にも非常に安定であり、膜を応用する上では望ましい特性である。
【0036】
〔実施例3〕 分離、濃縮、吸収又は脱着への本発明のタンパク質膜の応用
これら自立性の純タンパク質膜の分離特性を、種々の大きさ、電荷状態及びpH特性をもつ分子の透過を研究することによって、検討した。濾過操作は、90kPaの圧力下に行なった。その分子(を含む溶液)の容量は20mlである。流速は、有効面積及び操作時間によって規格化された透過液の容量に等しい。透過特性は、濾過前後の溶液、更には上部液について記録されたUV可視吸収スペクトルによってモニターした。結果を表3にまとめた。
【0037】
【表3】

【0038】
厚み60nm、直径1.7cmのフェリチン薄膜を用いることによって、分子サイズ選択的な分子の高速分離が達成された。PC/Cu(MW:984.25)やTMPyP dye(MW:1,363.6) 及びCyt. c(MW:13,000)のような大きな分子は、それらの水性媒体から完全に分離された。ANTS分子(MW:650.58) 及び [Fe(CN)6]3+イオン(MW:212)は膜を完全に通過した。DY(ダイレクトイェロー50)(MW:956.82)及びEB(エバンスブルー)(MW:960.81)分子は、中性pHにおいて膜を部分的に通過した。しかしながら、DYやEB水溶液のpHを変える、すなわち、7より高いpHにすると、これらの色素分子はタンパク質膜を完全に通過し、3.19より低いpHにすると、膜通過は阻害された。このようなpH依存性はタンパク質の表面電荷性状に起因している。フェリチン及びアポフェリチンの場合、その等電点はいずれも同じの約4.4である。そのため、4.4よりも低いpHのときには膜はプラス電荷であり、マイナス電荷の色素分子を静電力により吸着し、膜孔(チャンネル)が狭まる。ANTS(8.23x7.0x3.17 A3)や[Fe(CN)6]3-(8.7x8.7x8.7 A3)のように分子が十分に小さいと、これらはこの狭まった膜孔(チャンネル)も通過できる。しかしながら、分子の大きさがこの狭まった膜孔(チャンネル)よりも大きいと膜を通過できない。もちろん、分子の大きさが(狭まっていない)膜孔よりも大きいと、どんなpHにおいても、その分子は膜を通過できない。pH13.03におけるPC/Cu分子とDY分子の混合液の透過実験では、DY分子は膜を完全に通過したのに対して、PC/Cu分子は殆ど通過できなかったことが示されている。しかし、(濾過)水の流速はすべてにおいて90kPaの圧力下で5,000Lm-2h-1よりも大きかった。大きな分子は膜を通過しないので、希薄液からの濃縮が可能である。
【0039】
例えば、PC/Cu分子溶液について調べた(図10)。PC/Cu分子は、アルミナ膜上の60nm厚のフェリチン膜を使い、90kPaの差圧で吸引することによって、2分以内に10μMから28.89μMへと効果的に濃縮できた。濃縮操作の効率をモニターするためにUV可視スペクトルを用いた。操作時間が長くなるほど上側の液は一層青くなったが、濾過液(通過液)にPC/Cuは検出されなかった。濾過液の流速は6671.9Lm-2h-1であった。
【0040】
タンパク質の可逆的電荷特性に起因して、pHがその等電点よりも高いか又は低いと、タンパク質は、異なるpHの溶液中において電荷をもつ分子又は粒子に対する吸収剤として用いることができ、pHを変化させることによってこれら電荷をもつ分子又は粒子を他の溶液中へ放出することもできる。この研究のために、色素分子(エバンスブルーとDY)の可逆的吸着及び脱着を検討した。溶液中のエバンスブルー分子の吸着及び脱着に、厚さ300nm、直径3.2cmのアポフェリチン膜を用い、その溶液のpHを制御した。pH1.50のエバンスブルー(10μM)溶液10mL中の色素分子は、一日以内にそのタンパク質膜に完全に捕捉された。そして、これら捕捉された分子は、pH13.09のようなアルカリ性では再び液中へ放出された。この捕捉及び放出の過程は、UV可視スペクトロスコピーでモニターした。
【0041】
図11aは、捕捉操作中のUV可視スペクトルの時間経過の典型例を示している。図11bは原液及び一日後の写真(写し)で、膜によって色素分子が溶液から完全に除去されたことが分かる。これはUV可視スペクトルの結果と一致している。放出の実験結果は、図12a及び図12bに示した。2.5h(150min)後に、エバンスブルー分子の83.5%が膜から溶液中へ放出された。時間が長くなるにつれ、多くの色素分子が溶液中に放出された。最初の放出サークルの最大速度は94.5%で、これはDY分子の放出速度(データは示さず)と似たものであった。しかし、その最初の捕捉及び放出サークルの後については、放出効率は後のサークルについて99.4%であった。捕捉及び放出操作は、アポフェリチン膜の電荷特性のpHによる誘発に起因する。(すなわち)溶液のpHがアポフェリチンの等電点4.4よりも低いときは、その膜はプラスに帯電し、逆に、溶液のpHが4.4よりも高いときは、そのタンパク質膜はマイナスに帯電するであろう。それゆえ、4.4よりも低いpHの溶液においては、マイナス電荷の分子は静電力によって膜中に捕捉されるであろう。そうでない(溶液のpHが4.4よりも高い)場合は、マイナス電荷の色素分子は反発力によって膜から追いやられるであろう。エバンスブルー溶液のpH1.50における青色(図11)及びpH13.09における紫色(図12)は、各々、色素分子自体の色によるものである。
【0042】
吸着実験のもう一つの例を図13に示した。10μMの8−オクタノイルオキシピレン−1,3,6−トリスルホン酸三ナトリウム塩(OPTAT)溶液の10mLをpH1.39において、厚み300nm、径3.2cmのフェリチン膜に吸着させた。フォトルミネッセンス(PL)スペクトルは、7h後には前記分子は全てフェリチン膜にトラップされて、膜のPL強度は原液のそれよりも強いことが示されている。挿入の写真(コピー)は、膜を375nmで励起して得たものである。
【0043】
〔実施例4〕 二つの層、すなわち、一層がタンパク質膜、他の一層がその上に形成された分子薄膜の二層で構成された自立性薄膜の調製へ向けた、本発明のタンパク質膜の別の応用
(a)タンパク質(アポフェリチン)膜の調製
タンパク質(アポフェリチン)膜の調製方法は、実施例1に記述の方法と同じ。
(b)二つの層、すなわち、一層がタンパク質(アポフェリチン)膜、他の一層がそのタンパク質(アポフェリチン)膜表面上に形成された分子薄膜の二層で構成された自立性薄膜の調製
フィルタとして、孔径200nmのポリカーボネート膜の上に載せた厚み1.9μmのアポフェリチン薄膜を吸引濾過系で用いた。デンドリマーPAMAM(ポリアミドアミン)分子(ジェネラル4、分子量:14215、直径:4.5nm、表面のアミノ基数:64、シグマ−アルドリッチ社から購入)の2重量%メタノール溶液2mlを90kPaのゲージ圧(差圧)の下に、前記吸引濾過系で濾過した。濾過でメタノールを除去した後に、PAMAM(ポリアミドアミン)分子の濾過ケーキを5重量%グルタールアルデヒド水溶液の1mlによって1.5時間架橋反応させた。最後に、得られた膜をメタノール及び水で4回洗浄した。図14は、1.9μm厚みのアポフェリチン膜表面上に形成された4.6μm厚みのPAMAM膜の典型的SEM像である。
PAMAM膜の厚みは、PAMAM溶液の濾過液量によって制御できる。
更には、タンパク質膜に基づく同じ濾過操作及び架橋プロセスを用いることで、その他の分子膜もまた調製することができる。この方法は、例えば分離のような種々の応用のための機能性分子薄膜を構築する単純な方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】超薄(ナノ)若しくは薄くて自立性があるタンパク質膜の典型的製造プロセスを示す模式図。
【図2】架橋反応後の、フェリチン/水酸化カドミウムナノストランドのナノ繊維性フィルムのTEM平面像。
【図3】図2で示されたフェリチン/水酸化カドミウムナノストランドのナノ繊維性フィルムから水酸化カドミウムナノストランドを除去した後の、フェリチン膜のTEM平面像。
【図4】直径7.5cmの、自立性があるフェリチン膜の写真の写し。
【図5】(a)水酸化カドミウムナノストランドを除去する前の、フェリチン/水酸化カドミウムナノストランド膜(厚み:40nm)のSEM断面像。(b)同、SEM平面像。
【図6】(a)水酸化カドミウムナノストランドを除去した後のフェリチン膜(厚み:40nm)のSEM断面像。(b)同、SEM平面像。
【0045】
【図7】水酸化カドミウムナノストランドを除去する前(Before)及び除去した後(After)の架橋フィルムから記録されたEDXスペクトル。
【図8】(i)架橋前(no-cross link)、及び(ii)架橋後に水酸化カドミウムナノストランドを除去した後(cross-link remove CdOH)の、膜のFTIRスペクトル。
【図9】水酸化カドミウムナノストランドがある場合及び無い場合の、フェリチン膜及びアポフェリチン膜の各々の負荷(Loading)−脱負荷(Unloading)曲線の典型例。
【図10】PC/Cuに対する濃縮性能を示す典型的UV−可視スペクトルと写真の写し。
【図11】アポフェリチン膜(厚み:300nm、径:3.2cm)を使用した場合の、エバンスブルーの吸収(Absorption)を示す典型的UV−可視スペクトルと写真の写し。
【図12】アポフェリチン膜(厚み:300nm、径:3.2cm)を使用した場合の、エバンスブルーの脱着(Desorption)を示す典型的UV−可視スペクトルと写真の写し。
【図13】フェリチン膜により脱着される蛍光色素分子を示すフォトルミネッセンス(PL)スペクトルの典型例。挿入の写真(コピー)は、波長375nmの光照射の下に撮影。蛍光色素分子(OPTAT)の構造は、図中の右下に示されている。
【図14】アポフェリチン膜上に形成されたPAMAM膜(厚み:4.6μm)の典型的SEM像。(b)は(a)中において点線で囲った部分の拡大像を示す。
【符号の説明】
【0046】
(図9中)1:(Cd)ナノストランド有りのアポフェリチン
2:(Cd)ナノストランド無しのアポフェリチン
3:(Cd)ナノストランド有りのフェリチン
4:(Cd)ナノストランド無しのフェリチン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔らかで自立性がある超薄(ナノ)の若しくは薄いタンパク質膜であって、前記タンパク質は二官能性の架橋剤で架橋されているタンパク質膜。
【請求項2】
請求項1のタンパク質膜において、膜厚みは10nm〜10μmで均一であるタンパク質膜。
【請求項3】
請求項1又は2のタンパク質膜において、二官能性の架橋剤がグルタールアルデヒドであるタンパク質膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかのタンパク質膜において、前記タンパク質はフェリチン、アポフェリチン、チトクロームc、ミオグロビン又はグルコース・オキシダーゼから選ばれるタンパク質膜。
【請求項5】
上記柔らかで自立性がある超薄(ナノ)の若しくは薄いタンパク質膜の製造法であって、以下の工程を含む製造法:
(1)金属(Cd、Cu又はZn)硝酸塩若しくは塩酸塩の希薄液を中性若しくは弱塩基性pHに保ち、その金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドを自発的に形成させる;
(2)得られた金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドとタンパク質溶液とを混合し、タンパク質と金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドとでできたコンポジット・ナノファイバーを得る;
(3)得られたコンポジット・ナノファイバーの分散液をフィルター上で濾過する;
(4)コンポジット・ナノファイバーに含まれるタンパク質を二官能性架橋剤によって架橋する;そして
(5)上記反応液から金属(Cd、Cu又はZn)水酸化物ナノストランドを除去する。
【請求項6】
請求項5の製造法において、前記二官能性架橋剤としてグルタールアルデヒドを用いるタンパク質膜の製造法。
【請求項7】
請求項5又は6の製造法において、前記タンパク質としてフェリチン、アポフェリチン、チトクロームc、ミオグロビン又はグルコース・オキシダーゼを用いるタンパク質膜の製造法。
【請求項8】
一つの層は請求項1〜4のいずれかのタンパク質膜であり、他の一つの層は前記タンパク質膜上に所定の分子を堆積させ、二官能性架橋剤で架橋させて形成させた薄い分子膜である、二層から成る自立性薄膜。
【請求項9】
請求項8の自立性薄膜において、前記所定の分子が末端アミノ基を有するデンドリマーである自立性薄膜。
【請求項10】
請求項9の自立性薄膜において、前記デンドリマーの分子量が2,000以上のポリアミドアミンである自立性薄膜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−131725(P2009−131725A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−290238(P2007−290238)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年度文部科学省 科学技術総合研究委託研究 産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】