説明

柔軟性のある高吸収性を有する材料

本発明は、一連の複数の層を備えた吸収性を有する構造体であって、少なくとも1つの第1外側層および1つの第2外側層、ならびに、第1外側層と第2外側層との間に配置された少なくとも1つの液体貯蔵層を含み、この複数の層は互いに重複していて、層状体構造体を形成し、液体貯蔵層は、少なくとも好ましくはセルロース繊維であるセルロース材料と、好ましくはSAP粒子および/またはSAP繊維である高吸収性ポリマーSAPとを有し、液体貯蔵層は、少なくとも吸収性を有する構造体中のこの液体貯蔵層に隣接する液体を貯蔵する層状体に比して結合剤がより少ない、好ましくは結合剤を有さない吸収性を有する構造体に関する。この吸収性を有する構造体は、湿潤状態でも乾燥状態でも、とりわけ柔軟性が高い。この構造体は、使い捨て品中に採用されうることが好ましい。さらに、この吸収性を有する構造体の製造方法および製造装置も提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース繊維および高吸収性ポリマーを用いた少なくとも1つの液体貯蔵層を備えた、好ましくは液体吸収層と、液体貯蔵層と、液体分配層とを備えた複数層の吸収性を有する構造体、ならびに、この構造体を製造するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースおよび高吸収性ポリマー(省略形はSAP)(例えば、SAP粒子またはSAP繊維形態のもの)を用いた複数層の吸収性を有する構造体は、この数年公知であり、使い捨て製品(例えば、衛生製品、医療用製品および産業用製品)中における層状体の材料として利用される。
【0003】
吸収力のある層状体を備えた繊維ウェブであって、吸収力のある層状体を安定させるために、かつ繊維の断裂を避けるために、中に結合剤が入れられている繊維ウェブが公知である。この種の層状体材料からなる層状体は結合剤を含有する。この結合剤は、例えば、繊維、粉体、熱溶解性接着剤、溶剤と結合剤との混合物などの形態であって、例えば液体形態での塗布などが行われる。
【0004】
例えば、EP1 721 036号公報では、吸収性特性を有するセルロース繊維からなる繊維ウェブをエアレイド(airlaid)方法で製造することが記載されている。繊維ウェブは、複数の層状体を有する。内側の吸収力のある層状体は、高吸収性ポリマーにより、点で結合されたセルロース材料を含有する。セルロース繊維が擦り切れて、ないし毛羽立って生じる繊維粉塵(「リンティング(linting)」と称される)を避けるために、繊維を、とりわけ中央繊維ウェブの外側領域を、水とラテックスとの混合物で含浸させる。
【0005】
例えば液体吸収層と、液体貯蔵層と、液体分配層とを有する吸収性を有する構造体が液体により湿れば、液体は、毛管効果により、液体吸収層から液体貯蔵層へと達する。余剰液体は、液体貯蔵層から液体分配層へと入り、ここから、多孔性構造体を適宜選択することにより分配され、場合によっては貯蔵層へと還流しうる。これにより望ましくない効果、すなわち再湿潤化効果(液体が、液体吸収層から液体分配層へと流れ出て、かつこれを越えて、例えば、衛生製品の装着者の肌へと液体が到達してしまいうること)を低減することができる。しかるに、この種の製品は、装着快適性においてしばしばかなりの欠点を有する。例えば、液体吸収とそれに続く変形により、すなわち、使用により湿って圧縮された液体貯蔵層が、負荷が取り除かれた後にも元の状態に戻ろうとはしない。例えば、SAP粒子が湿り変形した際に、粒子間での接着効果が生じうる。公知の相対的に小型の液体貯蔵層では、これにより、さらに液体を吸収する容量が非常に低減し、これが装着快適性に悪影響を与える。
【0006】
したがって、使用時に装着快適性をこのように損ねないようにすることができる製品を提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州1 721 036号公報(EP1 721 036)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、利用時によりよい挙動が可能で、とりわけ、高い柔軟性が可能であるような、吸収性を有する製品、これを製造するための方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、吸収性を有する構造体については請求項1により、吸収性を有する構造体の製造方法に関しては請求項12により、装置に関しては請求項13により解決される。好適な実施形態は従属請求項中に定義されている。しかし、この中に含まれている特徴は、以下の詳細な説明中の他の特徴とも組み合わせてさらなる構成をなすことができ、個々に特許請求されたさらなる構成のみに限定されない。また、提案された各特徴は、とりわけ各独立請求項に対しても、解決方法の第1の提案としてのみ機能し、独立請求項中に含まれる特徴のうちの1つまたは複数は、これに続く特徴によって補足および/または置換することもできる。
【0010】
一連の複数の層を備えた吸収性を有する構造体が提案されているが、これは、少なくとも1つの第1外側層および1つの第2外側層、ならびに、第1外側層と第2外側層との間に配置された少なくとも1つの液体貯蔵層を含み、これらの複数の層は互いに重なりあっていて、層状体構造体を形成し、液体貯蔵層は、少なくとも、セルロース材料(好ましくはセルロース繊維)と、高吸収性ポリマーSAP(好ましくはSAP粒子および/またはSAP繊維)とを有し、この液体貯蔵層は、吸収性を有する構造体のこの液体貯蔵層に隣接する液体を貯蔵する層状体に比して少なくとも結合剤がより少ない、好ましくは結合剤を有さない。
【0011】
液体を貯蔵するこの隣接し合う層状体は、ある構成では、吸収性を有する構造体の第1外側層と第2外側層とを形成する層状体のうちの少なくとも1つも含みうる。
【0012】
好ましい実施形態では、この吸収性を有する構造体は、少なくとも1つの液体吸収層と、これに続く少なくとも1つの液体貯蔵層と、これに続く少なくとも1つの液体分配層とを有し、ここで、これらの層は結合されていて、層状体構造体を形成している。液体吸収層および/または液体貯蔵層は、セルロース材料(好ましくはセルロース繊維)と、高吸収性ポリマーSAP(好ましくはSAP粒子および/またはSAP繊維)とを有する。液体吸収層および/または液体分配層は結合剤を含有する。好適な構成では、液体吸収層および液体分配層のセルロース繊維とは異なり、液体貯蔵層のセルロース繊維は、結合剤で含浸されていず、ないし結合剤を有さない。別の構成では、結合剤が低い濃度で存在し、すなわち、液体貯蔵層内にわずかな接着効果のみが存在する。この濃度は、例えば以下のように計量されている、すなわち、例えば、力(例えば、せん断力および/またはSAPの膨潤により加えられた力)が作用した際に、液体貯蔵層中の固着結合が即座に裂け、可動自由度が与えられるように計量されている。結合剤の濃度をこのようにすることにより、例えば、吸収性を有する構造体を製造するために、液体貯蔵層中へSAPを局所的に配置して、少なくともある時点で固定するために利用することができる。これに反して、液体吸収時には、固着結合が解除され、液体貯蔵層内での可動性が得られる。採用可能な結合剤は、例えば、液体により湿らされるとその結合力を失いうる。また、吸収性を有する構造体を利用する際にせん断力が生じえ、これが、固着結合を解除し、液体貯蔵層中で可動性を生じさせることができる。
【0013】
好ましくは、ある構成の層状体構造体は、少なくとも以下の構造を有する。
・少なくとも、処理済みフラッフパルプと、多成分繊維(好ましくはPE/PET複合繊維)と、高吸収性ポリマーとを含む第1層状体と、
・少なくとも、処理済みおよび/または非処理フラッフパルプと、高吸収性ポリマーとを含む第2層状体と、
・少なくとも、非処理フラッフパルプと、多成分繊維(好ましくはPE/PET複合繊維)とを含む第3層状体と、
を有する。
【0014】
第1層状体を支持するために、この外側表面には、さらに紙組織層状体を設けることができる。ある実施形態では、この層状体構造体は、(好ましくは、フラットローラ艶出し機を用いた)艶出し工程により緩い圧縮を受けるが、これにより、第1の厚さ、例えば、層状体材料の最終厚さが設定可能である。
【0015】
さらに、ラテックス結合剤、例えばEVA分散結合剤を、層状体構造体の1つまたは双方の外側表面上に塗布可能で、その後乾燥および硬化されている。従来の材料とは異なり、本件で提案された層状体構造体の構造では、高吸収性ポリマーが、中央層状体(好ましくは、液体貯蔵層により形成された中央層状体、あるいは少なくとも部分的に液体貯蔵層により形成されている中央層状体)中で、液体の進入後も自由に膨潤することができるが、この理由は、この高吸収性ポリマーが、結合繊維により妨げられていないからである。この膨潤挙動は、例えば、EVA分散結合剤により硬くなるが開いたパルプビコ(Bico)層状体によって妨げられない。
【0016】
好ましくは、これにより、外側層状体は硬く、少なくとも1つの内側層状体は緩くほぼ圧縮されていない弾性を有する層状体構造体が利用可能になる。
【0017】
この層状体構造体は、組織層状体なしでも生成可能であり、および/または、これ以外の担体層状体(例えば、スパンボンド層状体または所望の形態で製造された不織布)で、生成可能である。
【0018】
層状体の材料は、ある構成では、実質的に均等な厚さを有し、約0.1g/cm3の桁サイズである。この桁サイズは、0.08〜0.15g/cm3の範囲でもありうる。さらに、ある構成では、乾燥状態で厚さが約5mmである層状体材料の単位面積あたりの重量は、約460g/m2であり、厚さが約6mmである層状体材料の単位面積あたりの重量は、約600g/m2である。440g/m2〜680g/m2の範囲の単位面積あたりの重量を得る努力がなされる。吸収性を有する構造体の厚さとしては、4.7mm〜6.7mmを得る努力がなされる。この場合、生成された層状体構造体の層厚さとは、この層状体構造体が乾燥状態で有しうる厚さのことである。この好適な層厚さ以外に、本発明の層状体構造体では、各層状体構造体の使用に応じ、かつこの使用に関連した液体発生、ないし、短時間での液体発生の頻度に応じて、層厚さが3mmと15mmとの間であること、好ましくは4mmと8mmとの間であることが考えられうる。この層状体構造体の利用時には、すなわち湿潤状態には、液体吸収層の吸収能力が高いので、および、この液体吸収層に隣接する層に相対的な可動性があるので、従来の製品で公知の場合に比べて、層厚さの変化は実質的により小さい。層厚さの増加は、飽和度に応じて、層状体構造体の当初の厚さに対して50%〜150%の範囲内にある。
【0019】
驚くべきことに、従来技術から公知であるフラッフパルプSAP層状体構造体または均一の熱結合層を備えた層状体構造体(これは、全ての層が、結合剤、例えば複合繊維を備えている)に対して、上述の層状体材料は実質的な利点を有することが明らかになった。とりわけ、利用状態では、すなわち湿潤状態では、本出願で提案された層状体構造体が利点を有することが判明した。
【0020】
これにより、例えば、吸収性を有する構造体の使用時に複数回、液体を吸収し圧力を受けても、液体貯蔵層がほぼ元の状態を採りうるという利点を、この吸収性を有する構造体は有することが明らかになった。結合繊維が存在しないので、高吸収性ポリマー材料の自由な膨潤は妨げられない。したがって、例えば、自由膨潤能力の所望のパラメータ、いわゆる自由膨潤能力は、好ましくは20g/gの範囲であり、従来の層状体構造体の場合よりも、比較的SAP割合を低くして、単位面積あたりの重量を低く維持することができる。これにより、原料コストを下げることができる。ある構成では、自由膨潤能力は、17g/gと24g/gとの間の範囲である。
【0021】
さらに、公知の層状体構造体では、液体進入後に高吸収性ポリマーが接着剤のように作用し、層がその形成された形状で固定することが観察された。それ自体緩い材料が変形しこの形状で固定されると、もはや元の形状を採ろうとはしない。重力に支持されて、塊状が形成され、いわゆる「垂れ下がり」が生じ、これにより、装着快適性および吸収効率が下がるが、この理由は、高吸収性ポリマーが、もはや液体貯蔵層中で最適に分布していないからである。本出願で提案された層状体構造体ではこの欠点が克服され、その結果、同じ材料であって結合剤が液体貯蔵層内に含有された材料と比較すると、湿潤硬直の小さい材料、すなわち、可動性と装着快適性が高い材料を製造することができる。
【0022】
さらに、SAP材料がすでに液体吸収層中に配置されているので、進入する液体を即座に吸収し、したがって、液体を、受けとった場所から、吸収体製品のコア部分へと迅速に搬出することができる。これにより、再湿潤化効果、例えば、液体が多量に発生した際に、過剰な液体が吸収体製品の担体へと流れ出すことが回避される。さらに、例えば、吸収性を有する構造体が再度湿める可能性も改善されうる。
【0023】
本発明のさらなる構成では、吸収性を有する構造体が、少なくとも3つの層状体を有し、中央の層状体は、少なくとも結合剤がより少ない、好ましくは結合剤を有さない。
【0024】
同様に、層状体構造体の全ての層は、好ましくは層の主要構成成分として、それぞれ少なくとも1つのエアレイド材料を有し、各層はそれ自体複数層状体として構成されうるように設けられている。例えば、液体吸収層、液体貯蔵層および/または液体分配層は、エアレイド層以外に、1つまたは複数の機能層を有し、これらの層が、各層の所望の効果を補強することができる。好ましくは、層状体の1つの外側表面が、他の外側表面に向かって特性勾配を生成しうるように、層状体の個々の層が配置されうる。他方で、ある層状体の層が、層状体内に最適の所望の特性を生成するように配置されうる。
【0025】
本発明の別の構成では、中央層状体において、少なくとも結合剤がより少ない、好ましくは結合剤を有しておらず、少なくともその大部分が、処理済みおよび/または非処理セルロース材料からなるように設けられている。
【0026】
さらなる構成では、液体吸収層および/または液体分配層の結合剤は、熱可塑性繊維、好ましくは多成分繊維、特に好ましくは複合繊維として形成されている。
【0027】
本発明のさらなる構成では、液体貯蔵層中のSAP粒子および/またはSAP繊維は、液体吸収時および/または圧力下で、互いに対して可動であるように配置されている。
【0028】
本発明のさらなる構成では、層状体構造体は、第1表面と第2表面とを有し、この第1表面および/または第2表面は、それぞれ好ましくはラテックスベースの結合剤層を有する。
【0029】
本発明のさらなる構成では、吸収性を有する構造体は、紙組織層状体と、フラッフパルプ、結合繊維および高吸収性ポリマーを有する第2層状体と、フラッフパルプ、(第2層状体および第4層状体それぞれに比して少なくともより少ない)結合繊維(好ましくは結合繊維なし)および高吸収性ポリマーを有する第3層状体と、フラッフパルプおよび結合繊維を有する第4層状体とを有する。
【0030】
本発明のさらなる構成では、液体吸収層は、処理済みおよび/または非処理セルロース材料からなる、かさ高不織布を有するように設けられている。
【0031】
吸収性を有する構造体の個々の層状体は、
・それぞれ同種のセルロース繊維
・それぞれ異種のセルロース繊維
・上述の混合物
・化学的および/または物理的に処理済みのセルロース繊維
・非処理セルロース繊維
・処理済みセルロース繊維と非処理セルロース繊維との混合物
・合成繊維のみ、または、処理済みまたは非処理形態のセルロース繊維との混合物
・天然繊維のみ、または、合成繊維および/またはセルロース繊維との混合物
を有しうる。個々の層状体は、セルロース繊維のみを有してもよい。
【0032】
「セルロース繊維」という概念は、本件開示の範囲では限定的に理解されない。液体を吸収し、好ましくはこれを結合することもできる天然繊維、または、化学的および/または物理的処理により液体を吸収し、好ましくはこれと結合することもできるようになった天然繊維を採用することができる。全く同じ処理により、合成繊維も天然繊維も精製可能である。
【0033】
原理的には、層状体構造体の全ての層は、処理済みおよび/または非処理セルロース繊維を有することができる。しかし、液体吸収層は、化学的および/または物理的に実質的に非処理のセルロース繊維を有するエアレイド層状体を含む方が目的に合うと判明している。さらなる構成では、液体分配層のセルロース繊維は化学的におよび/または物理的に処理されている。
【0034】
化学的処理とは、例えば、
・洗浄プロセス、抽出プロセス、
・漂白プロセス、
・着色プロセス、
・溶媒を用いたフィブリル化、
・表面処理、好ましくは、例えば噴霧、ディップ、浸漬、洗浄により、親水化、強度または弾性の向上を行うための表面処理
などであると理解される。
【0035】
物理的処理は、
・例えば、切断、粉砕、繊維状化による、細分化およびフィブリル化
・分級、例えば、空気分級
により行われうる。
【0036】
繊維の分解プロセスおよび漂白プロセスの様式に応じて、セルロース繊維中に所定の特性の組み合わせを達成することができる。
【0037】
例えば、液体貯蔵層状体中に、非処理繊維を採用することが好ましい。これには、様々な理由がある。パルプは、処理剤(とりわけ、表面処理剤)を添加することにより、吸収能力が失われる。液体貯蔵層状体中で最大限の吸収を確保するために、非処理パルプタイプを採用することが好ましい。非処理繊維は互いに対して良好に固着するので、このパルプタイプは、プロセス中でも非常に良好に圧縮されうる。
【0038】
本発明の層状体構造体では、層状体構造体の全重量に対して、それぞれ以下の成分で配置することができれば、有用である。
・組織を2〜10重量%、好ましくは3〜4重量%
・処理済みまたは非処理形態のセルロース繊維を20〜60重量%、好ましくは35〜45重量%、特に好ましくは、処理済みセルロースおよび非処理セルロースをそれぞれ15〜25重量%
・高吸収性ポリマー材料を30〜50重量%、好ましくは40〜45重量%
・第1結合剤を1〜5重量%、好ましくは3〜4重量%、この際、第1結合剤はポリマー分散液を有することが好ましく、ラテックス結合剤を有することが特に好ましい
・第2結合剤を3〜10重量%、好ましくは5〜7重量%、この際、第2結合剤は、多成分繊維、好ましくはポリエチレンおよびポリエチレン・テレフタレート(PET)ベースの複合繊維を含有する。ここで示した成分の範囲は、構造体の個々の層状体に対する割合として分類されることができ、または、1つまたは複数の成分はある層状体中には配置されていないこともありえる。
【0039】
吸収性を有する構造体が、液体吸収および/または軽い圧力を受けると、液体吸収および/または軽い圧力を受けた液体貯蔵層の少なくともSAP粒子および/またはSAP繊維は、その外側の形状をほぼ維持することができる。この負荷で、SAP粒子および/またはSAP繊維が膨潤し、場合によっては変形することがある。負荷が取り除かれた後に、SAP材料はほぼその当初の形状を再び採り得る。
【0040】
吸収性を有する構造体のある構成では、第1層状体としての紙組織層状体と、フラッフパルプ、結合繊維および高吸収性ポリマーを有する第2層状体と、フラッフパルプおよび高吸収性ポリマーを有する第3層状体と、フラッフパルプおよび結合繊維を有する第4層状体とを有し、ここで、第3層状体は、少なくとも第2層状体および第4層状体それぞれよりも結合繊維がより少ない、好ましくは結合繊維を有さない。さらなる構成では、吸収性を有する構造体が湿潤状態にある際に、第3層状体では、吸収性を有する構造体の縦方向(longitudinal direction)で、第2層状体と第4層状体との間で相対的に可動となる。
【0041】
例えば上述のSAP粒子および/またはSAP繊維の形態での高吸収性を有する材料は、膨潤能力を有し、通常ゼリー状の状態に移行する。このSAP粒子および/またはSAP繊維は、これにより水を貯蔵することができるのみではない。むしろ、SAP粒子は、上述のような配置において、層状体構造体中で吸収流を生成することができ、したがって、例えば、液体分配層の排水材としても機能しうる。
【0042】
化学的観点からは、SAPは、例えばアクリル酸およびアクリル酸ナトリウムを有するコポリマーでありえ、この2つのモノマーの割合は様々でありえる。加えて、重合化の際に、例えば架橋剤を添加して、この架橋剤が、形成された長鎖ポリマーを、ところどころで化学的橋かけにより結合する。架橋の程度に応じて、ポリマーの特性を設定することができる。SAP材料は、例えばEP 0810 886号公報から(とりわけ、この文献中で引用された従来例からも)明らかなように採用することができる。この文献は、本件の開示の枠内としてその全体が援用される。ある構成では、例えば、SAP粒子がコーティングを有するように設けられている。このコーティングは、例えば、液体と結合して初めて分解することができ、これにより、そもそもSAP粒子による液体の吸収が可能になる。さらに、DE 10 2004 015 686 A1号公報、DE698 217 94号公報および/またはDE 10 2004 005 417 A1号公報からそれぞれ明らかであるように、SAP材料が採用されることができ、とりわけ、高吸収性ポリマーの構成、構造、形状に関して、そして、これらの文献中で用いられる材料および製造方法に関して、採用されることができる。これらの文献は、本件の開示の枠内として例示的に援用される。さらなる構成では、SAP粒子は顆粒状であってもよく、またこれ以外の形状であってもよく、例えば、繊維形状、丸い形状またはこれ以外の形状であってもよい。高吸収性ポリマーを含有する繊維は、例えば、DE 102 32 078 A1号公報またDE 102 51 137 A1号公報からも明らかになる。これらの文献も、本開示の枠内として援用される。
【0043】
各層状体は、同種または異種のセルロース繊維および/またはSAP粒子および/またはSAP繊維を有することができる。このようにして、層状体構造体の個々の層状体の液体吸収挙動を規定して設定することができる。
【0044】
例えば、ある層状体中に、高透過性のSAP粒子および/またはSAP繊維を採用することができる。このSAP粒子および/またはSAP繊維が、さらなる層状体中のSAP粒子および/またはSAP繊維と共に、2段階の吸収効果および貯蔵効果を引き起こしうる。例えば、液体吸収層の側にある層状体中に、高い吸収能力を有するSAP粒子および/またはSAP繊維を設け、さらなる層状体中に半透過性のSAP粒子および/またはSAP繊維を設けることができる。これにより、このさらなる層状体中に緩衝機能を設けることができ、この機能は特に液体を複数回供給した際に有用であると判明している。
【0045】
本発明の好適な実施形態では、液体貯蔵層中のSAP粒子および/またはSAP繊維は、液体吸収時および/または軽い圧力下で、互いに対して可動であるように配置する。これは、液体貯蔵層中に、例えば多成分繊維のような熱可塑性繊維の形態を有する結合剤が設けられていないことにより可能になる。これにより、液体貯蔵層中のSAP粒子および/またはSAP繊維は、互いに対して良好に動くことができるが、この理由は、膨潤用の空間が十分に利用可能で、これにより、層状体構造体の吸収能力が改善され、同時に、液体が再度供給された際に液体を貯蔵できる自由空間を作ることができるからである。したがって、この種の製品は、とりわけ失禁製品の要件を満たす。これに加えて、この層状体は、層状体構造体の延性挙動(例えば、弾性特性に関しても)を改善するために寄与する。液体貯蔵層中のセルロース繊維が、結合剤により互いに接着されない、というよりむしろ接触させられないので、この繊維および/またはSAP材料は互いに対して可動であるように配置される。利用状態、いわゆる湿潤状態であってさえ、この層の構成成分は妨げられない、あるいはわずかしか妨げられない。さらに、SAP材料とりわけSAP粒子は、膨潤後(この膨潤は、粒子の表面上での架橋、というよりむしろ後架橋を伴う)に、「潤滑剤」としての効果を果たし、というよりむしろ、液体貯蔵層が全体で液体吸収層と液体分配層との間の「潤滑層」として機能する。好ましくは、SAP粒子は、乾燥状態でその表面上にすでに大部分が弓状の部分を有し、その結果、膨潤状態で好ましくは球状の粒子が生じ、これにより、粒子の外側形状は、乾燥状態から湿潤状態に移行する際にほとんど変化しない。
【0046】
実質的に球状の粒子が得られることで、吸収性を有する構造体を利用する際に、液体貯蔵層内部の可動性、およびこの液体貯蔵層と層状体構造体の個々の層との間の可動性を達成することができ、これは、この構造体から製造される使い捨て製品の装着快適性の改善に反映される。液体貯蔵層中のSAP粒子および/またはSAP繊維の可動性とは、湿った状態および膨潤状態すなわち湿潤状態において、負荷を受けた際でも、粒子がまだ動き、互いに対してスライドすることができる状態であると理解される。負荷が取り除かれた状態では、部分的に回転運動さえも起こりえ、これは、使用時には押し付けられていた液体貯蔵層の形態の内側層状体が、負荷が取り除かれた際に、ほぼ元の状態に戻りうるのに役立つ。湿潤状態では、層状体構造体の外側層状体の連結が解除され、より固体のゲルに拡大したSAPが、可動のスライドする中間層状体を形成し、このゲルが、玉軸受けのように互いに対する横方向のxy面上でのスライドを容易にする。この点は、材料の完全性を失うことなく、装着快適性の維持に役立つ。湿潤強度を有する分散結合剤により結合された外側層状体は、その所望の復元力を有する繊維特性を維持し続け、その結果この材料は全体として、所定の形状に従うという能力を維持する。形状が変化した際でさえ、従来のフラッフパルプとSAPとからなる湿潤層状体のような可塑性を有さない。層状体構造体の可動性と、表面付近での繊維特性は、したがって維持される。
【0047】
このようにして、吸収体製品の利用により外側から層状体構造体へとかけられて作用される力(例えば圧力、せん断力または牽引力)は、液体吸収層、液体貯蔵層および液体分配層の可動性により相殺され、その結果、吸収性を有する構造体の使用における永続的な歪みまたは層の層間剥離でさえも回避される。
【0048】
この際に、液体吸収層および/または液体分配層の分離された結合剤の成分が、液体貯蔵層中に進入しうること、および、セルロース繊維または分離されたSAP粒子またはSAP繊維が、完全にまたは部分的に周囲を覆うことでさえ除外されない。これにより、結合強度は高められ、とりわけ液体貯蔵層の外側表面の境界領域で、液体吸収層ないし液体分配層それぞれに対して安定化される。しかし、良好な装着快適性を得るために必要である、互いの層に対する可動性および液体貯蔵層の可動性自体は維持されたままである。
【0049】
例えば、吸収性を有する構造体のさらなる実施形態では、液体分配層および/または液体吸収層と液体貯蔵層との境界領域では、少なくとも結合剤好ましくは複合繊維の一部分が、それぞれ液体貯蔵層のセルロース材料と混合されている。
【0050】
本発明の好適な構成では、結合剤は、複合繊維の形態を有する熱可塑性繊維を有する。例えば、複合繊維、とりわけ、コア−シース繊維(この場合、シースの融点はコアの融点より低い)を採用することができる。同様に、複合繊維は、少なくともPETを含むように設けられている。より有用には、複合繊維は、少なくともポリエチレン、好ましくはLDPEまたはLLDPEを含む。コア−シース構造を備えたある複合繊維では、コア中にPETまたはポリプロピレンを含有するポリマーが、そして、シース中にポリエチレンを含有するポリマーが設けられている。加熱によりこの複合繊維は少なくとも柔らかくなり、粘着性の表面が形成され、この表面に接する位置で、セルロース繊維も、この層の他の成分も、それからこの層に隣接する成分も、冷却時には固められる。ある構成では、DE 69808061号公報で明らかなように、セルロース結合繊維を採用することができる。この文献は、本件の開示の枠内として指摘される。
【0051】
さらに、液体分配層および/または液体貯蔵層および/または液体吸収層の層状体は、それぞれの境界領域内で、少なくとも部分的に互いに中に入っていこうとすることができる。
【0052】
これにより、従来製品に比べて、本出願の吸収性を有する構造体の層状体の接合層は、乾燥状態のみならず、湿潤状態においても、確実に非常に良好にまとまっているが、それにも関わらず互いに対して確実に可動であり、これにより、良好な装着快適性を維持しつつ、十分な湿潤引張強度を達成することができる。本発明の層状体構造体の引張強度は、乾燥状態では15〜27Nであり、湿潤状態では4〜7Nであり、ここで、装着快適性にとって重要である層状体構造体の曲げ強度は、湿潤状態では、乾燥状態でのこの曲げ強度の約3〜8%でしかない。
【0053】
本発明のさらなる実施形態では、液体吸収層および/または液体分配層は、液体貯蔵層よりも強く圧縮されている。吸収性を有する構造体は、液体分配層が第1表面と第2表面とを有し、第1表面が液体貯蔵層と接触し、その第2表面では第1表面においてよりも強く圧縮されているように液体分配層が形成されうる。
【0054】
液体貯蔵層は、好ましくはかさ高不織布として実施されていて、その大部分でセルロース繊維を含む。このセルロース繊維は、液体吸収層または液体分配層中の場合と同様に処理済みまたは非処理セルロース繊維でありえる。
【0055】
層状体材料の個々の層は、その大部分がセルロース繊維および分離された結合繊維、好ましくは熱可塑性結合繊維を有するが、さらなる天然繊維または合成繊維、例えば熱可塑性繊維、好ましくはスパンボンド繊維、メルトブロー繊維、スフなどを、層中に配置することも除外されない。これらの繊維の配置および/または調製の選択により、層状体材料のある層内で、または1つもしくは複数の層に渡って、特性勾配を生成することも可能である。この合成繊維の生成には、大部分がポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミドを有するポリマーが好ましい。
【0056】
熱可塑性繊維を使用することにより、例えば液体吸収層中が新たに液体で湿った場合に、この液体の液体貯蔵層状体中へのさらなる搬送が改良されうる。これに関して、用途に合わせて、液体吸収層の繊維を相応に仕上げることができ、例えば、疎水仕上げにより、進入した液体が即座に親水性の繊維の方向へ流れ、または、親水仕上げにより、液体を迅速に搬送することができる毛細管路が目的に応じて作られる。
【0057】
本発明の更なる構成では、液体吸収層、液体貯蔵層および/または液体分配層は、エアレイド層状体を含み、または、エアレイド層状体からなる。
【0058】
さらに、吸収性を有する構造体は、好ましくは組織層からなる担体層を有しうる。この際、担体層は、液体分配層の外側に配置されうる。
【0059】
さらに、吸収性を有する構造体は、さらなる結合剤層を有することができ、これは例えば、液体分配層および/または液体吸収層上に配置されているラテックス層でありうる。
【0060】
これによれば、本発明の構成は、第1表面および第2表面を備えた層状体構造体を有し、ここで、第1表面および/または第2表面は、結合剤層好ましくはラテックスベースの結合剤層を有する。吸収性を有する構造体の外側の液体吸収層中には、より長い繊維でかさ高にするために、非処理セルロース・パルプ・タイプが採用されているのが好ましい。
【0061】
層状体構造体のこの第1および/または第2表面は、例えば液体吸収層または液体分配層または担体層(好ましくは組織層)の外側表面でありえる。吸収性を有する構造体は、多孔性構造に関して勾配を有することができ、これは、液体吸収層から液体分配層への流出を支持する。この勾配構造は、1つの層の内部で、および複数の層に渡って伸張しうる。この勾配は、好ましくは毛細管力を上昇させることができる。この勾配は、例えば、セルロース繊維を載置する形態により、追加的な圧縮により、および/または、追加的な手段(例えば、孔を小さくするまたは部分的に孔に栓をする液体または結合剤の供給)により設定することができる。例えば、これはラテックスで湿らせることにより可能である。
【0062】
本発明は、吸収性を有する構造体の製造方法を提供していて、この方法は、少なくとも以下の工程を含む。すなわち、
・担体層上に第2層状体として、フラッフパルプ、SAPおよび結合剤を載置する工程と、
・第2層状体上に、第3層状体としてフラッフパルプおよびSAPを載置する工程と、
・第3層状体上に、フラッフパルプおよび結合剤からなる第4層状体を載置する工程と、・好ましくは、結合剤(好ましくはラテックスベースの結合剤)を、少なくとも1つの層状体上に、好ましくはこのようにして得られた層状体構造体上に、とりわけ、層状体構造体の外側層状体上に塗布する工程と、
・層状体構造体を、艶出し機の間隙を備えた艶出し機に送る工程と、
・艶出し機の間隙中で層状体構造体を圧縮する工程と
を含む。
【0063】
ある構成では、第3層状体は吸収層状体として、第2層状体は液体貯蔵層状体として、そして、第2層状体は液体分配層状体として機能する。したがって、好ましくは、それぞれの層状体は、それぞれの上述した成分からなり、各層状体中にさらなる成分が追加的に存在することはなく、供給されることもない。したがって、これに対応する装置は、ある構成では、これらの各成分用の供給部のみを有し、あるいは、さらなる構成では、各層状体中のこれらの成分のみが供給されるように、かつ、各層状体中のこれ以外の成分(代替的にまたは補足的に供給されうる成分)は遮断されうる、また遮断されているように設計されている。
【0064】
本発明のさらなる構成では、吸収性を有する構造体の製造方法を提供していて、この方法は、少なくとも以下の工程を含む。すなわち、
・液体吸収層を形成するために、少なくとも1つの第1層状体として、好ましくはエアレイド層状体を載置する工程であって、この層状体は、好ましくは、少なくともセルロース材料、結合剤(好ましくは多成分繊維)を含む、工程と、
・液体貯蔵層を形成するために、1つの層状体、好ましくはエアレイド層状体を載置する工程であって、この層状体は、好ましくは、少なくともセルロース材料(好ましくはセルロース繊維)および高吸収性ポリマー(好ましくはSAP粒子および/またはSAP繊維)を含み、結合剤を含まない、工程と、
・液体分配層を形成するために、第3層状体、好ましくはエアレイド層状体を載置する工程であって、この層状体は、少なくともセルロース材料と、結合剤(好ましくは多成分繊維)とを含む、工程と、
・好ましくは層状体(好ましくは、上述のようにして得られた層状体構造体)上に、結合剤層(好ましくはラテックスベースの結合剤)を塗布する工程と、
・好ましくは、層状体構造体を結合するために、層状体構造体をして加熱手段を通過させる工程と、
・少なくとも1つの層状体、好ましくは層状体構造体を、(艶出し機の間隙を形成する少なくとも、フラットローラと対抗するローラとを含む)艶出し機に供給する工程と、
・少なくとも1つの層状体、好ましくは層状体構造体を艶出し機の間隙中で緩く圧縮する工程と
を含む。
【0065】
本発明はさらに、吸収性を有する構造体の製造装置を提供し、これは、少なくとも、以下を有する。すなわち、
・層状体構造体を形成するために層状体を載置するためのフィルターベルトと、
・少なくともセルロース繊維、SAPおよび結合剤を引き出すことができる第1成形装置と、
・さらなる層状体を形成するために、セルロース繊維およびSAPを引き出すことができる第2成形装置と、
・さらなる層状体として、結合剤およびセルロース繊維を引き出すことができる第3成形装置と、
・結合剤、好ましくはラテックス層を、吸収性を有する構造体の少なくとも1つの外側表面上に塗布できる塗布ステーションと、
・層状体構造体を圧縮することができる圧縮ステーション、好ましくは艶出し機と
を有する。
【0066】
吸収性を有する構造体、とりわけ上述の吸収性を有する構造体の製造装置も提案し、これは、少なくとも、以下を有する。すなわち、
・層状体構造体を載置するために層状体を載置するためのフィルターベルトと、
・少なくともセルロース繊維および結合剤をフィルターベルト上で塗布できる第1成形装置と、
・さらなる層状体を形成するために、セルロース繊維およびSAPをフィルターベルト上に塗布できる第2成形装置と、
・さらなる層状体として、高吸収性ポリマーSAP、結合剤およびセルロース繊維をフィルターベルト上で塗布できる第3成形装置と、
・結合剤、好ましくはラテックスベースの結合剤を、層状体構造体の外側表面上に塗布できる少なくとも1つの塗布ステーションと、
・層状体構造体を圧縮することができる圧縮ステーション、好ましくは艶出し機と
を有する。
【0067】
第2成形装置は、好ましくはこれを介して結合剤が供給されない、というよりはむしろ供給することができないように設計されている。これに関して、例えば結合剤塗布用構成部品、または、結合剤供給用構成部品に対して必須となる連結が欠如しうる。結合剤貯蔵部への連結も中断されうる。
【0068】
第2成形装置において、結合剤が供給される場合には、結合剤の搬送においては、第1ないし第3の成形装置よりも少ない量の結合剤が供給されるように設定されている。より少量の結合剤とは、ここでは、絶対的に見た毎秒の結合剤の流入のことである。
【0069】
本発明のさらなる概念では、吸収性を有する構造体の製造装置も提案され、これは、少なくとも、以下の構成要素を有する。すなわち、
・層状体構造体を形成するために、層状体好ましくはエアレイド層状体を載置するためのフィルターベルトと、
・少なくともセルロース材料(好ましくはセルロース繊維)を引き出すことができる第1成形装置、好ましくはエアレイド成形装置と、
・セルロース繊維と共に第1層状体を形成するために、結合剤(好ましくは、多成分繊維)を引き出すことができる第2成形装置と、
・高吸収性ポリマーSAP(好ましくは、SAP粒子および/またはSAP繊維)を、第1層状体上に載置可能にする第3成形装置と、
・少なくとも、セルロース繊維と、高吸収性ポリマーSAP(好ましくは、SAP粒子および/またはSAP繊維)を、第1層状体上に載置することができ、好ましくは第2層状体を形成する第4成形装置と、
・セルロース材料および結合剤(好ましくは多成分繊維)を含む第3層状体用の載置装置と、
・結合剤、好ましくはラテックス層を塗布できる好ましくは1つの塗布手段と、
・複合繊維および/または結合剤を活性化することができる加熱手段と、
・層状体構造体を緩く圧縮可能にするローラシステム、好ましくは艶出し機と
を有する。
【0070】
SAP粒子および/またはSAP繊維の添加は、材料の全幅で異なるようにすることができる。材料の全幅で、異なるSAP材料を異なる箇所にも等しい箇所にも配置する、とりわけ載置する可能性も存在する。ある構成では、材料の全厚に渡ってSAP粒子をある層中で異なるように配置する。位置の制御は、例えば、SAP供給部を目的に応じて配向することを介して行うこともできるし、また、この位置制御を、例えば、センサー、画像分析処理などを介して自動的に行うこともできる。また、層中のSAP粒子および/またはSAP繊維の層状体を、例えば、SAP粒子および/またはSAP繊維の検出により自動的にテストする可能性もある。このために、SAP粒子および/またはSAP繊維は、例えば、検出可能な識別子(例えば特別な材料、色またはこれ以外の識別子)を有することができる。これにより、例えば、現行の製造方法中の訂正が可能になる。
【0071】
吸収性を有する構造体のさらなる処理は、層状体製造の直後に行われうる。吸収性を有する構造体を、互いにつなげ合わせて巻き取ることもできるし、または花飾りユニット(festooning unit)を介して搬送することができる。さらなる処理は、これに続いて別の場所で行うこともできる。さらなる処理には、例えば、コーティング、1つまたは複数の層のさらなる積層化(ラミネート)、縦方向および/または横方向(transversal direction)での切断、さらなる圧縮および/またはボンディング、引き伸ばしおよび/またはこれ以外の工程が含まれうる。
【0072】
エアレイド製造装置の構成部材およびこれらそれぞれの採用は、例えば、セルロース繊維からなる繊維ウェブの製造に関してはDE 10 2004 009 556 A1号公報から、エアレイド層を製造するための成形ヘッドおよびその方法に関してはDE 10 2004 024 551 B4号公報から、搬送装置に関してはDE 10 2004 056 154 A1号公報から明らかになる。さらに、DE 103 270 26 A1号公報からは、エアレイド方法による繊維不織布の製造方法、および、これに適した繊維が明らかになる。DE 199 183 43 A1号公報からも、エアレイド方法およびエアレイド層状体(ここでは、結合繊維も採用されている)が明らかになる。WO 2005/080655 A1号パンフレットからも、さらなる様々な成分を有するエアレイド層状体の構造および層状体システムおよびその目的も読み取ることができる。SAPの検出、その制御された載置および妥当な場合その訂正、ならびに、互いに分離された吸収性を有する構造体の作成は、例えば、WO03/034963 A2号パンフレットから明らかである。
【0073】
その他の点では、本発明の開示の枠内として、それぞれまだ公開されていない双方の優先権出願であるUS12/657,987号(名称は「柔軟性のある高吸収性を有する材料(Flexible, Highly Absorbent Material)」、発明者はRoettger他)およびDE 10 2010 006 228号(名称は「柔軟性のある高吸収性を有する材料(Flexibles, stark absorbierendes Material)」)ならびにこれらのそれぞれの全内容を援用する。これらの文献で明らかになっている各特徴は、包括的に本明細書の構成要素でもある。
【0074】
上述の従来技術およびこれらの従来技術中で先行技術として挙げられた文献は、この装置がいかに構成されうるかに関するさらなる可能性を提示する。本発明の開示の枠内として、これらの文献およびその冒頭部で挙げられた従来技術も、包括的に援用する。
【0075】
吸収性を有する構造体は、例えば衛生分野における使い捨て製品中に採用されうる。吸収性を有する構造体は、使い捨て品自体でもありえる。好ましくは、この使い捨て製品は、赤ん坊用のオムツ、婦人用生理用品、失禁用製品用に採用される。
【0076】
さらに、この種の使い捨て製品は、
・例えば、吸収材料および下敷きなどの医療製品、または、
・例えば、液体を吸収するための吸収性を有する材料などの産業用製品
の分野でも利用可能である。
【0077】
これに関して、吸収性を有する構造体自身が、ある製品の少なくとも1つの外側面、好ましくは両側の外側面を形成することも可能である。吸収性を有する構造体は、少なくとも一方の側で、例えば各側で、少なくとも1つの追加的な層状体で覆われうる。好ましくはこれと結合しうる。
【0078】
本発明のさらなる有用な構成およびさらなる改良は、図面中にも提示された以下の実施例に基づき、より詳細に説明する。ここで提示された特徴は、個別の構成に限定されているのではなく、互いに組み合わせて、およびさらなる上述の特徴と組み合わせて、個別にはここで詳しく説明していない追加的なさらなる構成とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】各々異なる形態でボンディングされた吸収性を有する構造体の断面の概略図である。
【図2】各々異なる形態でボンディングされた吸収性を有する構造体の断面の概略図である。
【図3】製造装置の構成を示した概略図である。
【図4】吸収性を有する構造体のさらなる好適な実施形態を示した概略図である。
【図5】試料記号VH460.103の試料Aの断面であって縦方向の側面概略図である。
【図6】試料記号VH600.101の試料Bの横断面であって側面概略図である。
【図7】牽引実験用に計測器械のクランプジョー間で試料を引っ張っているところを示す原理図である。
【図8】せん断強度を測定するための牽引実験の結果を示す図であり、表5として表されている図である。
【図9】製造装置のさらなる構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0080】
図1に提示された吸収性を有する層状体構造体1は、以下の層を有する。すなわち、
・組織を内含し、層状体構造体の第1層状体を形成する担体層2と、
・セルロース・フラッフ・パルプ3、SAP粒子4および結合繊維5(例えば、複合繊維)からなる第2層状体6と、
・セルロースパルプ7およびセルロース・フラッフ・パルプ3からなる第3層状体8と、
・セルロースパルプ7、好ましくはSAP粒子4(しかし、これは、省くことができる)および結合繊維5からなる第4層状体9と、
・結合剤10(例えば、ラテックス結合剤)からなる層状体と
を有する。
【0081】
この層状体構造体の層状体は、互いに重なって配置され、続く艶出しプロセスにおいて、熱および圧力をかけて、互いに結合されている。この際、構造体の外側層状体は、中央層状体よりも強く圧縮されている。層状体材料1は、担体層2なしでも形成可能である。第2層状体6のみで、または、担体層2と組み合わせて、層状体構造体中の液体吸収層の機能を担う。この層状体6中にSAP粒子4が存在するがゆえに、この層状体は貯蔵機能も有している。この貯蔵機能は層状体8により補強される。この層状体8は、フラッフパルプ3とセルロースパルプ7とを有する。この層状体は、ほんの軽く圧縮されるだけであり、間隙体積が大きい。層状体9は、セルロースパルプ7、結合繊維5およびSAP粒子4を有し、液体分配層として作用することができる。この層状体9上には、結合剤10(例えば、ラテックス結合剤)からなる外側層状体が配置されている。
【0082】
この例はインラインプロセスであるが、載置プロセスおよび結合プロセスをいかに選択するかに応じて、個々の層状体の圧縮度は異なりうる。この圧縮度は、層状体構造体の双方の外側表面で内側領域よりも高い場合に、より有用である。したがって、図1に提示したように、個々の層状体の機能を逆にしてもよい。その場合、液体の吸収層状体として第4層状体が設けられていて、この場合、第4層状体中にはSAPは設けず、逆に組織の形態を有する担体層は遮断層となるが、その理由は、この層が全ての層状体中で最も狭い孔を有し、したがって液体透過性に関して最も大きな抵抗が得られるからである。
【0083】
図2に提示した吸収性を有する層状体構造体1は、以下の層を有する。すなわち、
・組織を内含し、層状体構造体の第1層状体を形成する担体層2と、
・セルロース・フラッフ・パルプ3、SAP粒子4および結合繊維5(例えば、複合繊維)からなる第2層状体6と、
・セルロースパルプ7、セルロース・フラッフ・パルプ3およびSAP粒子4からなる第3層状体8’と、
・セルロースパルプ7および結合繊維5からなる第4層状体9’と、
・ラテックス結合剤10からなる外側層状体と
を有する。
【0084】
層状体8’は、その組成がゆえに、すなわち好ましくはセルロース・フラッフ・パルプであるがゆえに、これと境界を接する層状体と比較して圧縮度が非常に小さい。これにより、層状体8’中に設けられたSAP粒子は、例えば使用者からの液体供給またはせん断応力による負荷を受けた際の可動性が非常に高い。この層状体8’内の可動性により、これと境界を接している層状体が、この層状体8’からの連結を解除することができ、これにより構造体の層状体は互いに対して相対的に可動となる。使用状態において膨れ上がったSAP粒子は、層状体8’の圧縮度が小さいがゆえに、互いに対してスライドし、これが、層状体8’中に観察された潤滑効果の前提となり、この潤滑効果により、層状体構造体に負荷をかけた際に、引き裂けまたは層間剥離を防ぐことができる。
【0085】
図3は、吸収性を有する層状体構造体1を製造するための装置11の可能な構成を示した概略図である。ここで提示されているのはインラインプロセスであり、このプロセスは、エアレイド材料2を調製するための巻き解き装置(このエアレイド材料は、駆動ローラ2bを備えたフィルターベルト2a上に載置される)と、フラッフパルプ3を調製するための第1成形装置13と、吸収体(例えば、SAP粒子4)を調製するための成形装置14と、結合繊維5および必要な場合さらなる結合繊維5aを調製するための成形装置15、15’とを備えている。これらは担体層2上に載置される第1層状体6を形成するための装置である。第2層状体6上に載置される第3層状体8を形成するために成形装置16、16’を介して、フラッフパルプ3およびパルプ7が調製される。パルプ7を調製するための成形装置16”と、SAP粒子4ないし結合繊維5を調製するための成形装置14ないし成形装置15は、第3層状体上に載置される第4層状体9を形成するのに役立つ。装置17を介して、例えばラテックス結合剤などの結合剤10が、層状体9の上に塗布される。この塗布は、例えば、噴霧またはナイフコーティングで行われる。層状体構造体は、結合剤を塗布した後に熱で活性化(図示せず)されることができ、続いて層状体構造体を圧縮する装置12を通過する。装置12は、例えばフラットローラシステムを備えた艶出し機である。結合繊維を活性化するために、赤外線加熱部、オーブンの部分またはこれ以外の加熱部を設けても良く、これらは、結合剤を含有する層を重なり合うように、また互いに対して結合する。
【0086】
図4は、吸収性を有する構造体20の別の好適な実施形態を示した概略図である。第1層状体としての紙組織21上に、第2層状体22が配置されている。第2層状体22は、パルプ(好ましくは処理済みパルプ)と、SAPと、結合剤(好ましくは、例えば複合繊維の形態を有する接着繊維)とを有する。SAPは、例えば粒子および/または繊維として取り込まれうる。第2層状体22はバックアップ貯蔵部として機能し、この上に配置されている液体貯蔵層を通過して到達した液体を分配するためにも利用されうる。第2層状体22のこの種の機能は、例えばSAPの分布を介して孔径を設定することにより、および/または、他の手段により可能になる。紙組織21は圧縮されていて、これにより好ましくは、第2層状体中に含有されこれを貫通する液体の遮断部として作用する。第2層状体22上には、さらなる第3層状体23が配置されていて、これは、パルプ(好ましくは、非処理パルプおよび/または処理済みパルプ)およびSAPからなる。この場合、結合剤を有さないことが好ましい。第3層状体23は液体貯蔵層状体である。第3層状体23上には第4層状体24がある。この第4層状体24は、パルプ(好ましくは非処理パルプ)と、結合剤(好ましくは、例えば複合繊維の形態を有する接着繊維)とを有する。好ましくは、第4層状体24はこれらの材料からなる。さらに、第4層状体24は吸収層状体として機能し、すなわち進入してきた液体と最初に接触し、この液体を続く層状体へとさらに導く。第1層状体および第4層状体24には、さらに好ましくは、それぞれさらなる結合剤が取り込まれる、この取り込みは、例えば含浸、押圧塗布、噴霧法またはこれ以外の方法で行われる。好ましくは、それぞれラテックス塗布される。第1層状体と第4層状体との上にそれぞれ外側から塗布される結合剤は、好ましくは同じ結合剤であり、とりわけ同じラテックス塗布である。各外側上に塗布される結合剤が異なるというさらなる構成もある。ある構成では、結合剤は、好ましくは第1ないし第4層状体中のみに浸透するように添加塗布される。さらなる構成では、結合剤が、実質的に少なくとも第1層状体ないし第4層状体の表面上にのみ留まっている。これ以外のある構成では、第1層状体21からこれに隣接する第2層状体22に浸透するが、逆に第3層状体23には浸透しない。
【実施例】
【0087】
以下の実施例で、本発明の層状体構造体およびその製造について、より詳しく説明する。以下に説明するように、本発明に係る試料および比較試料が製造され、これに続いて、厚さ、曲げ長さ、曲げ強度、引張強度、結合強度、液体吸収容量およびせん断強度を得るための計測が行われた。
【0088】
本出願が提案する新規の吸収性を有する構造体について、エアレイド層を用いて、2つの材料AおよびBを製造した。双方の材料とも、組織からなる担体層上に載置された3つの層を含む。これらの層状体構造体を成形した後、この層状体構造体の双方の外側表面に、水性EVAラテックス混合物からなる分散結合剤を噴霧した。
【0089】
材料A(VH460.103)は、艶出し工程後に、厚さ5mm(0.5kPa時)で密度0.092g/cm3時に、単位面積当たり重量が460g/m2である。一方、材料B(VH600.101)は、同様の製造で、厚さ6mmで密度0.100g/cm3時に、単位面積当たり重量が600g/m2である。この際、第1エアレイド層は、処理済みフラッフパルプ(例えば、テンベック・タルタ(Tembec Tartas)社製のビオフラッフ(Biofluff) TDR)と、熱可塑性の複合繊維(例えば、トレビラ(Trevira)社製のHC255、または、ファイバービジョン(FiberVision)社製のAlバウンス・アドヒージョン(Al Bounce-Adhesion))と、尿の臭気制御用に特別に開発された天然抽出物を有するSAPとからなる。第1層の表面上に、処理済みフラッフパルプ(例えば、タルタ TDR)および非処理フラッフパルプ(例えば、ジョージアパシフィック(Georgia Pacific)社製のGP4881)および上述の尿の臭気制御用SAPを備えた第2エアレイド層が載置されている。第2エアレイド層の表面上に、非処理フラッフパルプ(例えば、GP4881)および熱可塑性複合繊維からなる第3層が載置されている。
【0090】
試料AおよびBの層状体構造体は、その層の組成が以下の典型的な範囲にありうる。
【0091】
試料Aについて、層状体構造体の全重量に対する組織の割合は、3.9重量%である。第1層1は、層1の全重量に対して、それぞれ42.9重量%のパルプ、7.1重量%の複合繊維および50重量%のSAPを含む。第1層1の層状体構造体の全重量に対する割合は34.6重量%である。第2層2は、層2の全重量に対して、それぞれ39.3重量%のパルプおよび61.7重量%のSAPを含む。第2層2の層状体構造体の全重量に対する割合は45.1重量%である。第3層3は、この層の全重量に対して、同様にそれぞれ82.1重量%のパルプおよび17.9重量%の複合繊維を含む。層状体構造体における第3層3の割合は、13.8重量%である。この層状体構造体は、全重量に対して、1.3重量%のラテックスを上下それぞれに有する。
【0092】
これに対応する層状体構造体Bの構造の各層の個別の割合は、層1、2、3に関して、それぞれ各個別層の全体重量に対して、以下の通りである。
・層状体構造体Bの全重量に対する組織の割合は、3.0重量%
・層1は、42.8重量%のパルプ、7.2重量%の複合繊維および50重量%のSAP
・層2は、43.1重量%のパルプおよび56.9重量%のSAP
・層3は、75.7重量%のパルプおよび24.3重量%の複合繊維
である。
【0093】
層状体構造体の全重量における割合は、層1は34.6重量%、層2は49.0重量%、層3は10.4重量%である。さらに、この層状体構造体には、上下に1.3重量%のラテックスが用いられる。
【0094】
ラテックスは、以下の形態で採用されている。すなわち、水性のEVAラテックス混合物が使用されていて、この際、ラテックスの割合は16.0重量%で、水の割合が84.0重量%である。この分散液が、試料AおよびBないしVH460.103およびVH600.101の層状体構造体において採用されている。
【0095】
複合繊維は、番手が例えば2.2dtexで、繊維長が約3mmである。そのコアはPETを含み、一方でシースはコポリオレフィンまたはポリエチレンを含む。高吸収性ポリマーとして、ストックハウゼン(Stockhausen)社のフェイバー(Favor)Z 3269が用いられた。ラテックス結合剤は、層状体構造体の表面上に、エチレン酢酸ビニル(EVA)ラテックス(例えば、ヴァッカー・ケミー(Wacker Chemie)株式会社のビナパス(Vinnapas)(登録商標)192を有するエアフレックス(Airflex)(登録商標)192)が用いられて、水性ラテックス分散液の硬化後には〜1.3%の乾燥残滓が生じる。VH460.103(試料A)およびVH600.101(試料B)の試料の製造に用いられた原材料およびその組成に関する概観は、表1および2から得られる。
【0096】
層状体構造体AおよびBの製造は、以下の工程で行われた。
【0097】
エアレイド層状体を、担体材料として機能する湿潤化組織上に、3つの連続する層として載置し、無限不織布が形成された。続いて、加熱されたフラットローラにより形成されたローラの間隙中で層状体構造体の圧縮を行った。続いて、層状体構造体の両側に分散結合剤を噴霧し、水を撒きラテックスを架橋し、かつ多段乾燥システム中で複合繊維の低融点材料を溶融させた。層状体構造体を加熱し、これを固めた後に、フラットローラ艶出し機の間隙中で必要な厚さを設定する。
【0098】
試料A(VH460.103)および試料B(VH600.101)ならびに比較例MT410.104および比較例VE500.200において得られた結果を、その厚さについては表3に、その機械特性については表4に示す。
【0099】
以下に説明するWSP方法(全世界戦略的パートナー法(Worldwide Strategic Partner))は、欧州不織布材料組織Edanaおよびアメリカ不織布材料組織Indaにおける統一標準テスト方法である。
【0100】
厚さの測定
厚さの測定は、標準的なテスト方法であるWSP120.6(05)により、試料A(VH460.103)および試料B(VH600.101)ならびに比較例MT410.104および比較例VE500.200について、7cm×7cmのサイズの試料それぞれ10個について行った。この際、各試料は、乾燥状態、液体10g/gの浸漬状態および飽和状態で計測した。計測値を表3に示すが、例えば、本発明による材料VH600.101は、乾燥状態での密度が約0.1g/cm3で非常に緩く構成されていて、これにより、液体吸収のためにより大きな自由体積が利用可能で、したがって湿潤状態での厚さは、(乾燥状態でVH600.101よりも強く圧縮されている)比較材料VE500.200の厚さのように急上昇することはない。したがって、本出願で提案された層状体構造体の厚さは、液体吸収時にあまり変わらず、これは、利用時の快適さ特性として見なすことができる。
【0101】
曲げ長さおよび曲げ強度の測定
曲げ強度を得るために、標準的なテスト方法WSP90.5(05)を用いた。このために、試料を長方形の帯に切断し、この試料の曲げ長さをこの帯の四方の側で計測し、その平均値を形成した。曲げ強度をmN*cmで測定するために、得た曲げ長さ(cm)を試料の各単位面積あたりの重量で乗算し、1000で割る。湿潤状態での試料の曲げ長さが、乾燥状態での試料でのこの値の約30%〜35%であることが、表4から読み取ることができる。湿潤状態での試料の剛性は、逆に、乾燥状態の剛性の約5%である。比較試料MT410.104および比較試料VE500.200は、これらの特性に関して同様の傾向を示す。
【0102】
引張強度の測定
引張強度は、標準的なテスト方法WSP110.4(05)オプションBにしたがって、クリップ間の間隔200mm、推進力100mm/分であるツビヴィック(Zwick)試験機を用いて測定した。表4によれば、湿潤状態での試料(VH600.101)の引張強度は、この試料の乾燥状態で得ることができたこの値の約25%に低下し、VH460.103の試料の場合では、約20%に低下する。比較試料MT410.104およびVE500.200では、乾燥状態から湿潤状態への試料の引張強度の低下はより小さい。さらに、表4からは試料VH600.101の引張強度を読み取ることができ、完全な試料における、組織におけるおよび液体吸収層を形成している試料の上側における引張強度も読み取れる。ここで完全な試料における引張強度は、比較試料のこの値よりも高い値を示す。この点から、外側層状体が引張強度の実質的な部分を提供するとの指摘が得られる。
【0103】
結合強度の測定
WSP401.0による結合強度、すなわち、層状体の断裂に必要な力を測定するために、25mm幅の試料を準備し、一方の側で約3cm裂いた。続いて、外側層状体にクリップを固定し、試料を試料1gにつき10gの液体で浸漬させた。約3gの重さの試料を30mlの0.9%のNaCl溶液に均等に浸漬させ、約4gの重さの試料を40mlの0.9%の食塩溶液で均等に浸漬し、続いて遅滞なく計測を行った。この結果、湿った状態における試料の計測を行った。まだ裂かれていない側の試料を支持するように保持した。すなわち、この材料を、常にクリップ間隔の半分の高さで、手で支え、この結果試料の自重により計測値が歪められないようにした。表4によれば、計測値は、乾燥状態から湿潤状態へ移行する間にほとんど変わっていないことが示されている。これとは逆に、比較試料MT410.104およびVE500.200は、湿潤状態では乾燥状態に比して結合強度が著しく小さい。
【0104】
液体貯蔵層の潤滑効果が、層状体構造体の層間の連結を解除し、所定程度のせん断力および牽引力を吸収し、したがって、試料の引き裂きまたは層間剥離に対抗することができると考えられる。
【0105】
液体吸収容量の測定
液体吸収容量は、標準的なテスト方法WSP10.1(05)Pos.7.2により得られる。ここでは、10cm×10cmのサイズのそれぞれ5つの個々の試料が用いられた。これにしたがって、約6gの試料VH600.101の個々の試料を製造した。試料の前処理は、1分間0.9%のNaCl溶液中に載置し、これに続いて2分間垂直に掛けられて水切りしうることにより行った。
【0106】
これと平行して、SAP含有材料については、コンサート(Concert)社が開発した方法(2009年3月2日付けの「吸収容量に関するCGテスト4改定5試験規則(CG Test 4 Rev.5 Pruefvorschrift fuer die Absorptionskapazitaet)」)を用いた。これによれば、標準テスト方法WSP10.1(05)にしたがって得た値と比較すると、隔たりのある値がでた。コンサート社により開発された方法では、試料を10分間ディップさせ、10秒間垂直にして水切りをした。コンサート社の方法を適用することにより、試料の液体吸収容量の値が、上述の標準テスト方法において得られた値より大きくなり、20g/gを超える範囲に入りうる。この理由は、高吸収性ポリマーは迅速に液体を結合可能であるが、その全吸収力は1分以内に発揮することはできないからである。表4では、各試料の得られた質量が記載され、その平均値が算定されている。
【0107】
コンサート社の比較方法により得られた値は、標準テスト方法での値よりも上回っている。
【0108】
液体吸収容量LAC(%)は、標準テスト方法WSP10.1(05)によれば、以下の式で演算する。
【数1】

ここで、Mnは、乾燥試料の質量であり、Mkは、湿潤試料の質量である。
【0109】
これによれば、例えば、試料VH600.101の液体吸収容量は、約1763%または17.63g/gである。本発明の材料の液体吸収容量が、比較試料MT410.104ないし比較試料VE500.200の液体吸収容量の値よりも高いことは明らかである。この効果は、結合繊維が欠如していることによりSAP粒子またはSAP繊維の可動性がより高いという点、ならびに、液体吸収層にセルロース繊維が存在するという点により説明され、これにより、液体吸収時したがってこれと連動する膨潤工程において、粒子の可動性が存在することで、液体の自由体積がより大きくなる。
【0110】
せん断強度の測定
せん断強度の測定のための計測は、引張強度の計測方法と類似の方法で行った。この場合、せん断とは、力を作用させて物体を変形させるやり方であると理解される。ここで、物体の平行な内側面または外側面に対して平行な力が作用する。この際、表面は互いに対して相対的に変位する。せん断強度の計測については、上述の本発明の試料および比較試料を、それぞれ25mmの幅で20cmを上回る長さ(典型的には26cm)の帯に切る。この際、すべての材料を、機械の方向でそれぞれ長さ方向に切る。続いて、試料を層状体の外側面で掴み約3cm裂く。これを帯の両側で行った。
【0111】
まず、テープを使用せずに、試料をそれぞれ引っ張り、開いた外側層状体、例えば材料の上側を上方クリップ中で引っ張り、他方の外側層状体、すなわち材料の下側が上方の引っ張りクリップの下方で外れた状態であり続けた。その後、上端に対向する側の開いた外側層状体を、すなわち材料下側を、下側クリップ中で引っ張り、他方の外側層状体、すなわち材料上側が、下側引っ張りクリップの上方で外れた状態であり続けた。
【0112】
予想通り、本発明の試料VH460.103およびVH600.101では、パルプおよびSAPからなる内側層中のまとまりは、外側層状体の引張強度よりも高くなく、すなわち、組織に支持されたパルプ−SAP複合成分の下側は、硬化ラテックス結合剤で増強されていた。試料VH600.101では、組織が配置されている側の引張強度は、計測された全引張強度の約4分の3で、層状体の上側(ここは、硬化ラテックス結合剤を備えた、パルプ複合成分層を有する)の引張強度は、全引張強度の約4分の1で、一方で結合繊維を有さない内側層は、したがって、引張強度へほぼ寄与しない。テープ有りの計測と無しの計測との間には、ほとんど違いが確認されなかった。
【0113】
比較材料を同様に計測しうるために、テープを付ける必要があるが、この理由は、これらの試料では、上述の方法に従って引っ張る際および動きだす際に、開かれた外側層状体は早期にすでに断裂しているからである。試料の上側と下側とにテープをつけることにより、外側層状体のこの早期の断裂を中断させるが、この理由は、このテープの引張強度は45N/cmで、この材料のせん断力より上で、外側層状体は、したがって、断裂に対向して有効に固定されているからである。
【0114】
テサパック(tesapack)(登録商標)4024PP(茶色型)と試料との接着は、以下の工程で行った。
【0115】
まず、一般的なA4サイズの試料の両側を、縦方向で幅5cmのテープで接着し、このテープを、試料の表面と接着結合させた。その後、25mmの幅の帯を、上述の引張強度、曲げ強度および結合強度に関する機械的な標準的な計測方法の場合と同様の方法で、標準的な切断器械で、典型的には26cmの長さに切断した。続いて、両側がテープで接着された試料を中央で開き、約3cm裂く(これは、WSP401.0による結合強度の計測用に行われたのと同様の方法である)が、この断裂を帯の両側で行った。テープを利用していない上述の実験と同様に、対向する端部で交互に引っ張り、その一方で、一端はクリップ間隔の内で外れた状態のままであり、その結果、これは引張強度に寄与せず、中央層状体のせん断力のみを測定する。
【0116】
比較材料では、高く不都合なせん断力の値が観察された。MT410.104のこの値は37Nであるが、これは、内側層状体のSAP粒子と関連付けられたパルプと複合繊維との熱結合に起因する。比較材料VE500.200では、44Nのせん断力が得られたが、これは、とりわけこの層状体構造体の内側での高い密度と強度とに起因する。これとは逆に、本発明の試料では、VH600.101では5〜6N、VH460.103では4Nを得ることができた。この計測によれば、本発明の試料は、乾燥状態でさえも、互いに対して平行方向に変位することができ、したがって、層状体構造体の内部では、純粋なパルプSAP材料の可動性という利点が提供され、この場合、外側層状体中の強度により所望の快適な繊維特性が得られる。
【0117】
自由な吸収と、湿潤状態での機械的な表面強度との組み合わせの点で、本発明の層状体構造体は、(例えば、マックエアレイド(McAirlaid)およびレヨニア(Rayoniers)EAMで公知であるような)純粋に機械的に圧縮されたセルロース−SAP−エアレイドとは区別される。これらの層状体材料は、十分な湿潤完全性を有さず、したがって、いわゆる「エアフェルトパッド(airfelt pad)」の挙動に類似している。
【0118】
均一な熱結合エアレイド材料(例えば、比較材料MT410.104)と比較すると、本発明の層状体材料の湿潤状態での変形は可逆的であり、結果として、層状体構造体の剛性が小さくなる。さらに、この材料は、層状体構造体の中央での孔が大きいことにより、乾燥状態にでさえも十分な柔軟性を有し、すなわち、乾燥状態でさえも、この材料の片持ち梁(カンチレバー)曲げ強度は、剛性のある基質を有する熱結合製品のこの値よりも小さい。
【0119】
せん断強度を測定するための牽引実験
試料A(VH460.103)および試料B(VH600.101)ならびに比較試料MT410.104および比較試料VE500.200に関するせん断強度ないしせん断力を測定するための上述の実験に続いて、調製された試料について、さらなる実験を行った。以下に、実験の実施の仕方を、まず大まかに説明し、続いて詳細に説明する。試料ないしエアレイド不織布材料の調製を以下のように行う。すなわち、全ての試料の両側に噴霧接着剤を噴霧し、乾燥時間後に、両側に同様に接着テープを貼る。試料に噴霧接着剤を与えることで、確実に試料と接着テープとの間で永続的な結合を行う。この際、試料の湿潤状態においても確実に永続的な結合が続く。このように調製された試料により、したがって、湿潤せん断強度の測定が可能となる。湿潤せん断強度の測定をするための計測は、引張強度の計測方法に類似する方法で行った。この際に、せん断歪みとは、力の作用下での物体の変形であると理解される。この力は、物体の平行な内側面または外側面に対して平行に作用する。試料の表面は、この際互いに対して相対的に変位する。せん断強度の計測では、調製されたエアレイド不織布材料から、それぞれ25mmの幅で20cm(典型的には26cm)の長さの試料Aおよび試料Bならびに比較試料を切り取った。この際、全ての材料を機械の方向でそれぞれ長さ方向に切り、この結果、試料は帯として載置される。
【0120】
図5は、試料記号VH460.103の試料Aの断面図であって、縦方向の側面概略図である。試料Aは、組織材料からなる担体層25を含み、その上に、液体吸収層26が載置された。液体吸収層26は、処理済みフラッフパルプ、粒子形状のSAP材料および熱可塑性の複合繊維から形成されていて、第1エアレイド層を構成する。液体吸収層26上には、湿度貯蔵層27が同様にエアレイド層として載置されている。この液体貯蔵層27は、処理済みフラッフパルプおよびSAP粒子を含む。液体貯蔵層27は、好ましくは熱可塑性複合繊維を含まない。液体貯蔵層27の上方には、さらに液体分配層28が載置されていて、これもエアレイド層である。層状体構造体は、その両側が分散接着剤(ラテックス結合剤とも称される)で含浸される。エチレン酢酸ビニル(EVA)ラテックス(例えば、ヴァッカー・ケミー株式会社のビナパス(Vinnapas)(登録商標)192の名称のエアフレックス(Airflex)(登録商標)192)の結合剤が全面に塗布され、水−ラテックス−分散液の乾燥および硬化後に、各側で〜1.3%残り、これは、460gsmの場合、各側で乾燥残滓1m2毎6gに相当する。ラテックス結合剤層29、30は、斜線面として提示した。ここで注意すべきは、層状体ないし層の厚さの割合は、概略図示しているのみであるという点である。例えば、ラテックス層29、30の厚さは、実際の状況からは隔たっている。したがって、とりわけラテックス結合剤が、液体分配層28上のみに存在し、および/または部分的に液体分配層中に分散的に浸透し、結合剤層を液体分配層28中に形成することも可能である。これに対応することが、組織層状体25上に塗布されたラテックス結合剤層30にも該当し、この層も同様に概略的に非常に拡大されて提示されている。試料の全厚さは、約5mmである。
【0121】
試料Aは、せん断強度の値の牽引実験用に以下のように調製された。試料Aは、両側にラテックス結合剤が含浸された層状体構造体を含み、この層状体構造体は、組織25、液体吸収層26、液体貯蔵層27および液体分配層28からなる。この層状体構造体は、両側で、噴霧接着剤(“UHU(登録商標)3−in−1”噴霧接着剤、添加量500ml、品番UH48905、UHU(登録商標)プロフィショップ(Profishop)で入手可能)で噴霧された。この噴霧は、両側でそれぞれ3列の噴霧列で行われ、この後、10分間噴霧接着剤が乾燥された。噴霧接着剤の形態としては、“UHU(登録商標)3−in−1、第1型、パーマネント(permanent)”の名称で販売されている永続接着用の噴霧接着剤型が採用された。帯の長い側を水平方向に配向し位置づけた後に、各側で3ラインの水平方向の噴霧を行う。すなわち、エアレイドからの距離が20〜25cmの距離での噴霧ラインで、噴霧接着剤添加処理に関する指示にしたがって、中央で縦方向に重複し、水平方向に左から右へ、その後右から左へ、最後に再度左から右へ噴霧が行われる。面積当たりの一回の添加量は、約200ml/m2であり、3度重ね合わせた噴霧ラインでは、したがって約600ml/m2が塗布された。乾燥後に、層状体構造体に、その両側で5cmの幅の接着テープ31、32を接着した。接着テープとしては、テサパック(Tesapack)(登録商標)4024PP(茶色型)の名称の接着テープを用いた。この接着テープは、バイヤースドルフ(Beiersdorf)社のテサ(TESA)SEで入手可能であるアクリレート接着剤を備えたPPフィルムである。規定のローラ重量を達成するために、試料Aを、一度7.4kgの重さの真鍮製ローラで圧延した。このように調製された層状体構造体から、長さ260mm、幅25mmの試料を切り出した。
【0122】
図6は、試料B(試料記号VH600.101)の横断面図であって、側面概略図である。試料Bは、組織層状体である担体層33を含み、その上に、液体吸収層34が載置されている(これは、エアレイド法で載置された層である)。液体吸収層34は、処理済みフラッフパルプ、SAP粒子および熱可塑性の複合繊維を有し、好ましくはこの液体吸収層34は、これらの成分からなる(計測用にこうなっている)。液体吸収層34上には、液体貯蔵層35が同様にエアレイド法で載置された。この液体貯蔵層35は、処理済みフラッフパルプおよびSAP粒子を有する。液体吸収層34は、好ましくはこれらの成分からなる(計測用にこうなっている)。液体貯蔵層の上方には、さらに液体分配層36が載置され、これは、非処理フラッフパルプおよび熱可塑性複合繊維から形成されている。担体層33、液体吸収層34、液体貯蔵層35および液体分配層36からなる層状体構造体には、その両側でラテックスからなる結合剤層37、38が設けられている。エチレン酢酸ビニル(EVA)ラテックス(例えば、ヴァッカー・ケミー株式会社のビナパス(Vinnapas)(登録商標)192の名称のエアフレックス(Airflex)(登録商標)192)の結合剤が全面に塗布され、水−ラテックス−分散液の乾燥および硬化後に、各側で〜1.3%残り、これは、600gsmの場合、各側での乾燥残滓1m2毎7.8gに相当する。せん断強度を測定するための牽引実験用に試料Bを調製するために、結合剤を備えた層状体構造体を、試料Aの場合と同様に、噴霧接着剤(UHU 3-in-1、第1型、パーマネント)で噴霧した。層状体構造体の厚さに対して、噴霧接着剤の厚さは無視できるほどに僅かであるので、噴霧接着剤層は図示していない。噴霧結合剤を10分間乾燥させた後に、層状体構造体はその両側に、接着テープ39、40を接着した。接着テープ39、40としては、試料Aの場合と同様に、幅5cmのテサパック(Tesapack)(登録商標)4024PP(茶色型)との名称の接着テープ39、40を用いた。接着後に、接着された層状体構造体を、規定の重量を達成するために、一度7.4kgの重さの真鍮製ローラで圧延した。このように調製された試料材料から、牽引実験のために、長さ260mm、幅25mmの試料を切り出した。
【0123】
噴霧接着剤により、結合剤を設けた層状体構造体と、接着テープとの間で永続的な結合を行う。これにより、計測が確実に行われる、すなわち、試料の湿潤状態においてもせん断強度を測定するための牽引実験が確実に実行できる。
【0124】
上の実施例で説明したように、試料Aと試料Bとは、液体吸収層、液体貯蔵層および液体分配層の層状体の組成が異なっている。したがって、とりわけ試料Aの液体貯蔵層は、39.3重量%のフラッフパルプおよび61.7重量%のSAP粒子から形成されている。これに対して、試料Bの液体貯蔵層は、43.1重量%のフラッフパルプおよび56.9重量%のSAP粒子から形成されている。液体分配層の構造においても、試料Aと試料Bとは異なっている。試料Aの液体分配層27は、82.1重量%のフラッフパルプおよび17.9重量%の複合繊維を有し、試料Bの液体分配層(36)は、75.7重量%のフラッフパルプおよび24.3重量%の複合繊維から形成される。試料AおよびBと、比較試料MT410.104およびVE500.200との実質的な差異は、試料AおよびBが複合繊維を有さない液体貯蔵層27、35を有するという点にある。
【0125】
この液体貯蔵層のフラッフ・パルプ・セルロース繊維は、結合剤で含浸されていず、ないし結合剤を有さない。結合剤が欠如していることにより、この場合、液体貯蔵層27、35中に含有されるSAP粒子が、ほぼ妨げられることなく膨潤可能であり、および/またはせん断力がかけられた際に、互いに動くことが可能になる。これにより、液体貯蔵層に、可動の自由度が与えられる。
【0126】
図5および図6中に説明された試料AおよびBの調製方法以外に、試料CおよびDも牽引実験に採用される。試料CおよびDは、結合剤層上で噴霧接着剤が用いられていないが、これ以外の特徴は、上述の試料AおよびBと一致している。比較試料C(MT410.104)は、熱的に結合されていて、すなわちラテックスなどの接合剤の使用することなく結合されている。むしろ、複合繊維の形態での結合繊維の特性が利用されている。これに反して、第2の比較試料D(VE500.200)は、分散結合剤の形態での結合剤を含有するラテックスを利用している。
【0127】
比較材料も、実質的に3つの層を含んでいる。
【0128】
材料MT410.104は、艶出し工程後に、厚さが約5.4mmで(0.5kPaの場合)単位面積あたりの重量が410g/m2である。この際、第1層は、非処理フラッフパルプからなるエアレイド層であり、このエアレイド層は、例えば、熱可塑性複合繊維(例えば、トレビラ(Trevira)社製のHC255を有する、ウェアーハウザー(Weyerhaeuser)社製のNB416)である。第1層の上面上に、非処理フラッフパルプ(例えば、ウェアーハウザー社製のNB416)と、高吸収性ポリマー(例えば、エボニック・シュトックハウゼン(Evonik Stockhausen)社製のフェイバー(Favor))とを有するエアレイド層の形態の第2層が載置されている。第2層の上面上には、第3層が載置されているが、これは、非処理フラッフパルプ(例えば、ウェアーハウザー社製のNB416)と、熱可塑性複合繊維(例えば、トレビラ社製のHC255)からなる。
【0129】
この層状体構造体の層の組成に関する特有の範囲は、以下の通りでありうる。
【0130】
層1は、この層の全重量に対して、それぞれ82.8重量%のパルプおよび17.1重量%の複合繊維を含む。第2層は、この層の全重量に対して、それぞれ39.1重量%のパルプ、9.7重量%の複合繊維および51.2重量%のSAPを含む。第3層は、同様にこの層の全重量に対して、それぞれ74.4重量%のパルプ、25.6重量%の複合繊維を含む。層状体構造体の全重量における層の割合は、層1が29.2重量%、層2が51.3重量%、層3が19.5重量%である。
【0131】
これに反して、材料VE500.200についての値と組成とは、以下の通りである。
【0132】
材料VE500.200は、特殊なエンボス型を備えたエンボス機を通した後および艶出し工程後に、厚さが約1.6mmの場合(0.5kPaの場合)単位面積あたりの重量が500g/m2である。この際、第1層は、処理済みフラッフパルプからなるエアレイド層であり、これは、例えば、ジョージアパシフィック社製のGP4821、または、テンベック・タルタ社製のビオフラッフTDRを有する。第1層の上面上に第2層が載置されているが、これは、非処理フラッフパルプ(例えば、ウェアーハウザー社製のNB416)と、高吸収性ポリマー(例えば、エコテック(Ekotec)社製のEK−X EN52)とを含む。第2層の上面上には、第3層が載置されているが、これは、処理済みフラッフパルプ(例えば、ジョージアパシフィック社製のGP4821またはテンベック・タルタ社製のビオフラッフTDR)からなる。この層状体構造体を形成した後に、層状体構造体の両側の外側表面に、水性EVAラテックス混合物からなる分散結合剤による噴霧が行われた。この場合、ラテックスの割合は4.5重量%であり、水の割合は95.5重量%である。
【0133】
これにより、比較試料VE500.200の構造における各層の個々の割合は、これも個々の層の全重量に対して、以下の通りとなる。
・層1は、100重量%のパルプ
・層2は、25.3重量%のパルプおよび74.7重量%のSAP
・層3は、100重量%のパルプ
【0134】
層状体構造体の全重量における各層の割合は、層1が13.8重量%、層2が65.9重量%、層3が16.3重量%であり、それ以外に、水分割合がもはや存在しなくなった後に、2.0重量%のラテックスの乾燥残滓が上下にある。
【0135】
図7は、試料41を、牽引実験用の計測器械のクランプジョー42、43間で引っ張る際の原理図である。この場合、計測器械としては、ウルム(Ulm)市在のツビック(Zwick)社製のツビック/レール(Zwick/Roehl)との商品名の機械(長さ可変受容部付き、型式BZ2.5/PN1S)を採用した。これは、構造方式から見ると、定速伸長(CRE)モードでの応力−延性経過を記録するための機械である。
【0136】
実験の基本は、非織物材料の破断力および/または牽引力および延性を得るための標準的な計測方法である。この標準的なテストは、WSP110.4(05)と称されている。この標準的なテストは、非織物材料の延性および牽引力を測定するためのテストであり、「非織物材料の破断力および延性の標準テスト方法(Standard Test Method for Breaking Force and Elongation of Nonwoven Materials)(ストリップ方法)」とも称されうる。定速伸張(CRE)モードで計測が行われ、すなわち、試料の長さの割合の増加は、時間に比例している。一般的には、以下の変更を有するオプションBが選択される。標準テスト中オプションBで用いられる試料または試験部分は、幅50mmで、長さ200mmである。標準的なテストとは異なり、牽引実験では幅25mmでクランプジョー間の長さがL0=200mmの試料が採用され、すなわち、牽引実験では、引っ張り長さは200mmである。さらに、付勢力0.5N、試験速度100mm/分で試験を行った。23℃、50%の相対大気湿度、通常許容可能な許容誤差を含む実験条件下で試験を行った。引っ張り長さL0=200mmは、図7のクランプジョー42、43および試料41を示した平面図中に記入されている。クランプジョーの幅は60mmであり、その結果、25mmの幅を有する試料は、中央を引っ張った際に良好に受容される。
【0137】
図7の右の図は、線A−A’に沿った概略断面図であり、計測器械の上方クランプジョー42と下方クランプジョー43との間で試料41を引っ張ることが明示されている。試料A、Bおよび比較試料MT410.104、VE500.200を、全て機械方向でそれぞれ縦方向に切断した。続いて、この試料を、層状体の外側面44、45で掴み、中央で厚さを半分にするように約3cm裂いた。これを試料41の両側で行った。
【0138】
図7の右の図で図示するように、切り離され、接着テープが設けられた外側層状体をそれぞれ引っ張るが、これにより開かれた外側層状体44が、例えば、上方クランプジョー42中で材料の上面が引っ張れられ、他方の外側層状体46が(すなわち、上方クランプジョー42の下側にある材料の下面が)外れた状態であり続けた。その後、この上端に対向する側の開かれた外側層状体47を、すなわち材料の下側45を下側クランプジョー43中で引っ張り、他方の外側層状体48(すなわち、材料の上面44)が下方クランプジョー43の上方で外れた状態であり続けた。ここで示されているのは、牽引試験開始前で、負荷がかけられていず、試料41が引っ張られた状態である。明確に認識できる通り、対称線49により具体的に示されているように、試料41は、液体吸収層、液体貯蔵層および液体分配層の領域中では、せん断応力がある。以下の一連の実験を行った。
【0139】
第1の一連の実験では、試料41を乾燥状態で引っ張り、矢印Fの方向で牽引力をかけた。実験は3度行われた。
【0140】
第2の一連の実験でも、牽引実験を3度行ったが、この場合、試料41を1分間0.9%のNaCl溶液中にディップし調製した。このディップ後、試料41を、2分間垂直に掛け水切りした。これも、標準テスト方法WSP10.1(吸収)に相当する。
【0141】
第3の一連の牽引実験でも、牽引実験を3度行った。この場合、試料41を10分間0.9%のNaCl溶液中にディップし、続いて10秒間垂直方向に水切りした。これは、2009年3月2日付けの、吸収容量に関するコンサートCGテスト4改定5試験規則に相当する。
【0142】
図8では、せん断強度の測定のための牽引実験の結果を表5として示す。実験結果1〜9は、試料C、Dおよび比較試料MT410.104(無し)、VE500.200(無し)を用いた実験を示す。この際、これらの試料は、その外側層状体で、接着テープ(テープ)で補強されるが、その外側層状体は、噴霧接着剤が噴霧されなかった。記号trは、ここで乾燥状態での試料を示し、記号nは湿潤状態での試料を表す。
【0143】
通し番号10〜45の実験は、乾燥状態、1分間湿らせた後、および、10分間湿らせた後での実験である。
【0144】
本発明で形成された試料A、C(VH460.103)およびB、D(VH600.101)を、比較試料MT410.104、MT410.104(無し)および比較試料VE500.200、VE500.200(無し)と対比する。牽引実験には、1〜45まで通し番号が付けられている。番号1の牽引実験は、乾燥状態で本発明で形成された試料Dを用いた牽引実験を示していて、ここでは、試料Dの外側面を接着テープで接着している。この試料は、上述したように、かつ図7中で示したように、計測器械中で引っ張られ、力Fで付勢されている。対向する外側層状体を引っ張ることにより、この牽引実験により層状体構造体のせん断強度値を測定することができた。実験番号1における試料Dの最大せん断強度値は、クランプジョーの移動距離が全体で9.19mmである際には、Fmax=6.82N/25mmであり、引っ張り長さL0に対して延性4.58%に相当する。ここで、延性を
延性=△L/ L0[%]
の割合から計算する。
【0145】
ここで、△Lは、最大力に達しかつ試料が最終的に引き裂かれるまでのクランプジョーの移動距離に相当する。
【0146】
通し番号2の牽引実験は湿潤試料Dを用いて行われたが、この場合、試料Dには両側中で振り掛けを行った。湿らせる尺度は、この場合、試料Dの比重であり、試料の重量1g当たり10mlの0.9%のNaCl溶液を供給した。このようにして、牽引実験番号2の試料Dには、40mlの0.9%のNaCl溶液を供給した。牽引実験番号1で得られた低いせん断強度Fmax=6.82Nは、試料を湿らせることにより小さくなり、牽引実験番号2中でも、より小さいせん断強度であるFmax1=5.06Nが得られた。試料Dについての牽引実験番号3も同様に湿潤状態で行われたが、これは、Fmax3=5.65Nの値で、同様に非常に小さいせん断強度が確認された。牽引実験番号1〜3の計測より、本発明による試料は、乾燥状態でも湿潤状態でも、互いに対する平行方向の変位が非常に僅かであることが明らかになった。
【0147】
せん断強度の値は、全ての試料において、25mmの試料幅についての値である。
【0148】
牽引実験8において乾燥状態で調べた試料Cは、最大せん断強度Fmax8=11.66Nを有する。これも小さい値であるが、この値は、牽引実験番号9による湿潤状態では、ほぼ半分のFmax8=5.65Nになる。同様に注意すべきであるのは、最大牽引力に達するまでに進んだ距離も、試料Bでは半分以下になり、試料Aではほぼ半分になった。本発明により形成された試料CおよびDは、せん断力がより小さくなり、これも、層状体の互いに対する可動性にとって利点に相当する。
【0149】
本発明で構成された試料CおよびDに反して、牽引実験番号4〜7による比較試料では、せん断強度が非常に高く、Fmax4=34.94NおよびFmax6=41.26Nである。可動性に関連付けて述べると、このことは、比較試料の層状体構造体を互いに変位させるためには、非常に大きい力が必要であることを意味する。比較試料MT410.104は湿潤状態でさえも非常に高いせん断強度を有するが、比較試料VE500.200(無し)のせん断強度は、湿潤状態では(牽引実験番号7)は明らかに低下し、Fmax7=5.59Nで、本発明の試料AおよびBの範囲内にある。比較材料VE500.200(無し)は、湿潤結合のための溶融接着繊維を含有せず、表面結合剤は、内側層状体中には作用しない。吸収材料は、したがって、膨潤することができ、互いに対して層状体が軽く変位することができる。比較試料VE500.200(無し)中に溶融接着繊維がないという点は、層状体の互いに対する可動性に肯定的に作用し、その結果、湿潤状態では層状体の互いに対する変位が確保されうる。
【0150】
図8の表5に示された牽引実験番号10〜18では、本発明の試料Aの乾燥状態および湿潤状態での牽引実験結果を示している。この試料には、噴霧接着剤を噴霧し、接着テープを外側層状体を補強するために設ける。乾燥状態で実施された牽引実験番号10、11および12は、噴霧接着剤なしで実施された実験番号8に対して、せん断強度がより高く、したがって、このせん断強度値が少し高くなった理由も、この状態および噴霧接着剤の採用によりうる。逆に湿潤状態では、せん断強度は、再び有意に低下し、Fmax13=5.16NとFmax14=4.18Nとの間の値で、噴霧接着剤がない牽引実験番号9の場合の値よりも小さいの値となる。実験16、17、18で明らかなように、試料Aを長時間湿らせた場合、せん断強度の値は、さらに明らかに下がる。
【0151】
試料Aを、牽引実験番号16〜18で行ったように、10分間0.9%のNaCl溶液中にディップすると、SAP粒子には、湿度を吸収しかつ膨潤するための十分な時間がある。液体貯蔵層中に結合繊維が欠けているので、高吸収性ポリマー材料(SAP)は自由に膨潤することができ、すなわち、自由な膨潤がほぼ妨げられない。SAP粒子は、膨潤後に「潤滑剤」のように作用し、というよりはむしろ液体貯蔵層が全体として液体吸収層と液体分配層との間の潤滑層のように作用する。実験番号16、17、18で明らかに示されているように、吸収性を有する粒子が膨潤する時間がより長くなると、せん断強度値の減少に作用する。
【0152】
番号19〜27の牽引実験は、本発明により形成された試料Bのせん断強度を測定するための牽引実験である。試料Bに噴霧接着剤を噴霧し、その外側層状体に接着テープを固定した。試料Bは、その製造によってより厚い液体貯蔵層を有し、すなわち中央層がより厚い。この層も同様に複合繊維を含有していない。液体貯蔵層がより厚いことにより、乾燥状態で層状体構造体がより容易に変位することができるが、これは、表5中牽引実験番号19〜21に見出される通りである。乾燥状態ですでに試料Bのせん断強度は非常に小さいが、これは湿らせることによりさらに小さくなり、10分間湿らせた後に最大牽引強度が3N以下にまでなる。一方では構造(とりわけ、より厚い液体貯蔵層)が、層状体構造体の可動性に対して肯定的に作用するので、吸収性を有する粒子を湿らせることにより、およびその「潤滑作用」により、層状体構造体が妨げられないように膨潤した後の可動性はさらに上昇する。
【0153】
第1比較試料MT410.104の牽引実験は、牽引実験番号28〜36に示されている。乾燥状態で明らかに30Nを上回る高いせん断強度から出発して、湿潤状態ではわずかしかせん断強度が下がらないことが明確に認識されうる。牽引実験番号28の比較試料のせん断強度Fmax28=30.09Nであるが、この値は、試料を1分間湿潤化しただけで、Fmax31=19.40Nに低下する。比較試料MT410.104は、したがって、乾燥状態でも湿潤状態でも、せん断応力に対して高い抵抗力を示す。構造体の層状体は、したがって、高い力をかけられた場合のみ、互いに対して変位しうる。
【0154】
番号37〜45の牽引実験は、乾燥状態および湿潤状態での比較試料VE500.200およびこれらの実験の結果を示す。乾燥状態では、この比較試料は、例えば索引実験番号37からわかるように、最大牽引力Fmax37=50.73Nを示した。せん断強度値は、湿潤状態で完全性を失うまでに非常に低下する。この比較試料は、湿潤結合用の溶融接着剤繊維を有さず、その結果、湿潤状態ではせん断強度値が有意に低下する。牽引実験番号6および7における元のせん断強度の8分の1にまで有意に低下することが(この場合は、10ml/gの湿潤振り掛けを行った)確認された。湿潤計測(この場合は、1分間および10分間、0.9%のNaCl溶液中に完全に沈ませること)により、湿潤せん断強度値の急激な低下が確認され、層状体のまとまりとしての完全性は存在しない(これは、実験40〜45からわかる)。
【0155】
表5の計測値から、とりわけ以下の関係がわかる。本出願で提案された概念により、層状体構造体の完全性を達成することができ、一方では、乾燥状態で層状体構造体が容易にたわみ、柔軟性を有し、これによりある輪郭に良好に適合することができるようになっている。とりわけ、この構造は、これ以外の層状体構造体でありうるような高い強度を提供する剛性を有しはしない。他方では、湿潤状態では、すなわち、層状体構造体を本来の目的で利用し液体吸収した場合にも、層状体構造体の完全性がまだ十分に存在するので、この層状体構造体は崩れることがない。この点は、とりわけ液体を長時間作用させた場合に該当する。したがって、とりわけ液体を作用させた場合にも、硬くならず、さらに柔軟性を有する層状体構造体を作ることができる。
【0156】
例えば、以下の結果は、本出願で提案された層状体構造体の設計時に有利であると判明した。
【0157】
ある可能な構成では、吸収性を有する構造体は、0.9%のNaCl溶液中で1分間湿らされた場合、幅25mm、自由引っ張り長が200mmの試料について、湿潤状態のせん断強度に対する乾燥状態のせん断強度の割合が1対1.2、好ましくは1対2から1対4の範囲である。
【0158】
さらなる可能な構成では、吸収性を有する構造体は、0.9%のNaCl溶液中で10分間湿らされた場合、幅25mm、自由引っ張り長が200mmの試料について、湿潤状態のせん断強度に対する乾燥状態のせん断強度の割合が1対1.5から1対5.33の範囲である。
【0159】
さらに、層状体構造体は、乾燥状態では引張強度が6.8〜16N/25mmであり、湿潤状態では引張強度が3〜6N/25mmでありうる。
【0160】
湿潤状態での吸収性を有する構造体のせん断強度が、3N/25mm〜6N/25mmの範囲である可能性も存在する。まさにこの領域において、層状体構造体の完全性と同時に柔軟性を維持することが可能となる。さらなる形成によれば、吸収性を有する構造体が、乾燥状態においては、せん断強度が5〜7N/25mmの間の範囲中にありうる。さらなる構成では、乾燥状態での吸収性を有する構造体のせん断強度が、11〜17N/25mmの間の範囲内にある。
【0161】
図9は、吸収性を有する構造体1を製造するための装置11のさらに可能な構成を示した概略図である。ここで提示されているのは、エアレイド材料2からなる第1層としての担体層状体を調製するための巻き解き装置を有するインラインプロセスである。この巻き解き装置は、フィルターベルト2a上に駆動ローラ2bを備えている。さらに、フラッフパルプ3を載置するための第1成形装置13と、吸収体(例えば、SAP粒子4)を調製するための成形装置14と、担体層状体2上に塗布される第2層6を形成するために結合繊維5を調製するための追加的な成形装置15とを備えている。フラッフパルプ3および吸収体4は、第2層6上に塗布される第3層8を形成するために成形装置16、14’を介して調製される。フラッフパルプ3を調製するための成形装置16’と、結合剤10を調製するための装置17は、第3層上に載置される第4層9を形成するために採用される。例えばラテックス結合剤などの結合剤10が、装置17を介して第4層9の上に塗布される。この塗布は、例えば、塗布噴霧またはナイフコーティングで、層の少なくとも1つの外側面上に塗布される。層状体構造体は、結合剤の塗布後に熱で活性化されうる。これは、例えば加熱装置を用いて行われうる。この加熱装置は、放射線熱を利用するのが好ましい。例えば、この加熱装置は、通過ステーションとして構成されうる。この際またはこの後で、層状体構造体を、装置12(例えば艶出し機)を通過させて導く。この艶出し機は、艶出し機の間隙を含み、この中で層状体構造体を押圧する。この装置12は、例えば、滑らかに走行するローラシステムを備えた艶出し機であるが、しかし、赤外線加熱器、オーブンの部分または結合繊維を活性化するためのこれ以外の加熱体であってもよく、これらは、結合材料を含有する層を結合し、または、これらの層同士をそれぞれ結合する。
【0162】
テストに基づき、層状体構造体は、上述の試料AおよびBと同様に、例えば好ましくは層状体構造体の全重量に対して以下のような層割合の分布を有することが明らかになった。
・層1:28〜39重量%
・層2:42〜55重量%
・層3:8.5〜16.5重量%
【0163】
この場合、とりわけ上述したように、少なくとも一方の側に組織層状体が設けられる。好ましくは、湿式紙組織が採用される。組織層状体が設けられていれば、これは、例えば層状体構造体の全重量に対して、好ましくは2.7〜5.5重量%の範囲にある。
【0164】
とりわけ好ましいのは、層状体構造体の外側層状体にエンボス結合をしていない場合である。これゆえに、例えば、熱の作用が、均等に全面に塗布されるように設けられうる。さらに、ある構成では、好ましくは、外側層状体に対して、とりわけラテックスを用いた分散結合剤のみが採用されている。好ましくは、試料AおよびBについて説明したような分散接着剤が採用される。ラテックスが、分散液に対して、好ましくは11〜19.5重量%の範囲で用いられている分散液を利用するのが好ましい。さらに、分散接着剤(とりわけラテックスないしEVAラテックス)が、ラテックス構造体の乾燥状態で、すなわち分散剤中に存在する液体の蒸発後に、層状体構造体の各側それぞれに対して1重量%と1.8重量%との間の範囲で存在するのが好ましい。
【0165】
さらに、組織層状体のうちの1つが省かれ、各外側層の構造的な完全性が、層状体構造体の各外側層状体の繊維と関係する分散接着剤により得られる構成も可能であることが明らかになっている。とりわけ、湿潤時テストでは、層状体構造体の完全性が、この種の構造においても十分存在することが示された。
【0166】
とりわけ、本出願で提案されたような割合で、上述のせん断強度の上述の範囲も達成されうる。
【0167】
【表1】

【0168】
【表2】

【0169】
【表3−1】

【0170】
【表3−2】

【0171】
【表3−3】

【0172】
【表4−1】

【0173】
【表4−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一連の複数の層を備えた吸収性を有する構造体であって、少なくとも1つの第1外側層および1つの第2外側層、ならびに、前記第1外側層と前記第2外側層との間に配置された少なくとも1つの液体貯蔵層を含み、
前記複数の層は互いに重なりあって、層状体構造体を形成し、
前記液体貯蔵層は、少なくとも、セルロース材料、好ましくはセルロース繊維と、高吸収性ポリマーSAP、好ましくはSAP粒子および/またはSAP繊維とを有し、
前記液体貯蔵層は、前記吸収性を有する構造体中の前記液体貯蔵層に隣接する液体を貯蔵する層状体に比して、少なくとも結合剤がより少ない、好ましくは結合剤を有さない、
吸収性を有する構造体。
【請求項2】
前記構造体は、少なくとも3つの層状体を有し、
中央層状体は、少なくとも結合剤がより少ない、好ましくは結合剤を有さない
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項3】
少なくとも結合剤がより少ない、好ましくは結合剤を有さない前記層状体は、少なくともその大部分が処理済みおよび/または非処理セルロース材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項4】
前記液体貯蔵層中のSAP粒子および/またはSAP繊維は、液体吸収時および/または圧力下で、互いに対して可動であるように配置されていることを特徴とする請求項3に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項5】
前記層状体構造体は、第1表面と第2表面とを有し、
前記第1表面および/または第2表面は、それぞれ、結合剤層、好ましくはラテックスベースの結合剤層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項6】
前記吸収性を有する構造体は、第1層状体としての紙組織層状体と、フラッフパルプ、結合繊維および高吸収性ポリマーを有する第2層状体と、フラッフパルプおよび高吸収性ポリマーを有する第3層状体と、フラッフパルプおよび結合繊維からなる第4層状体とを有し、
前記第3層状体は、少なくとも第2層状体および第4層状体それぞれよりも結合繊維がより少ない、好ましくは結合繊維を有さないことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項7】
前記吸収性を有する構造体が湿潤状態にある際、前記第3層状体は、前記吸収性を有する構造体の縦方向で、前記第2層状体と前記第4層状体との間での相対的に可動となることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項8】
前記吸収性を有する構造体は、0.9%のNaCl溶液中で1分間湿らされた場合に、幅25mmで自由把持長200mmの試料について、湿潤状態のせん断強度に対する乾燥状態のせん断強度の割合が、1対1.2、好ましくは1対2から1対4の範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項9】
前記吸収性を有する構造体は、0.9%のNaCl溶液中で10分間湿らされた場合に、幅25mmで自由把持長200mmの試料について、湿潤状態のせん断強度に対する乾燥状態のせん断強度の割合が、1対1.5の割合から1対5.33の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項10】
前記層状体構造体の引張強度は、乾燥状態では6.8〜16N/25mmであり、湿潤状態では3〜6N/25mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項11】
前記層状体構造体のせん断強度は、湿潤状態では3N/25mm〜6N/25mmであることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の吸収性を有する構造体。
【請求項12】
吸収性を有する構造体の製造方法であって、少なくとも以下の工程、すなわち、
・担体層上に第2層状体として、フラッフパルプ、SAPおよび結合剤を載置する工程と、
・前記第2層状体上に、第3層状体としてフラッフパルプおよびパルプを載置する工程と、
・前記第3層状体上に、フラッフパルプおよび結合剤からなる第4層状体を載置する工程と、
・結合剤、好ましくはラテックスベースの結合剤を、前記層状体の少なくとも1つの外側表面上に塗布する工程と、
・前記層状体を、艶出し機間隙を備えた艶出し機に送る工程と、
・前記艶出し機の間隙中で層状体を圧縮する工程と
を含む方法。
【請求項13】
吸収性を有する構造体の製造装置であって、少なくとも
・層状体構造体を形成するために層状体を載置するためのフィルターベルトと、
・少なくともセルロース繊維、高吸収性ポリマーSAPおよび結合剤を前記フィルターベルト上で塗布できる第1成形装置と、
・さらなる層状体を形成するために、セルロース繊維およびSAPを前記フィルターベルト上で塗布できる第2成形装置と、
・さらなる層状体として、結合剤およびセルロース繊維を前記フィルターベルト上で塗布できる第3成形装置と、
・結合剤、好ましくはラテックスベースの結合剤を、前記層状体構造体の外側表面上に塗布することができる少なくとも1つの塗布ステーションと、
・前記層状体構造体を圧縮できる圧縮ステーション、好ましくは艶出し機と
を有する製造装置。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の吸収性を有する構造体の、例えば衛生分野の使い捨て製品としての、好ましくは衛生製品中での使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−517859(P2013−517859A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550374(P2012−550374)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/EP2011/000391
【国際公開番号】WO2011/092025
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512196769)グラトフェルター ファルケンハーゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1)
【Fターム(参考)】