柔軟性グラファイト複合材料製の電極
対向する平らな表面(22、24)からシートの中に伸びるセラミック繊維(3a)を埋め込み、ガスに対する透過性をシートに与えている、電気化学的燃料電池の電極として有用な柔軟性グラファイトシート(10)。
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野 本発明は、ガスケットおよび燃料電池用のフローフィールドプレートおよび電極、すなわちアノードまたはカソード、の製造にも使用できる、柔軟性グラファイトおよび針状セラミック粒子の複合材料に関するものである。
【0002】
発明の背景 ここで使用する用語「柔軟性グラファイト」は、グラファイトの結晶構造中に挿入し(intercalate) 、挿入粒子を、結晶構造中の炭素層に対して直角の方向に少なくとも80倍以上も膨脹させる試剤で処理し、急速に加熱した天然グラファイトの薄片状に剥離された反応生成物を意味する。柔軟性グラファイトおよびその製法は米国特許第3,404,061号明細書、Shane ら、に記載されている。膨脹した、すなわち薄片状に剥離されたグラファイトは、理論密度に近い密度を有する薄いシート(以下、柔軟性グラファイト「ホイル」と呼ぶ)に圧縮できるが、ほとんどの用途(エンジン排気系統におけるシールリングとして適当な形状への圧縮および他の用途を含む)には約10〜85 lbs./ft.3の密度が適当である。
【0003】
膨脹可能なグラファイト粒子の一般的な製造方法は、ここにその開示を参考として含める米国特許第3,404,061号明細書にShane らにより開示されている。この方法の典型的な実施態様では、天然グラファイトフレークを、酸化剤、例えば硝酸と硫酸の混合物、を含む溶液中に分散させることにより、フレークに挿入する(intercalate) 。挿入溶液は、酸化剤および他の、この分野で公知の挿入剤を含む。例としては、酸化剤および酸化性混合物を含む溶液、例えば硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、重クロム酸カリウム、過塩素酸、およびその他、または混合物、例えば濃硝酸と塩素酸塩、クロム酸とリン酸、硫酸と硝酸、または強有機酸、例えばトリフルオロ酢酸、と有機酸に可溶性の強酸化剤の混合物、を含む溶液がある。好ましい挿入剤は、硫酸、または硫酸とリン酸、および酸化剤、すなわち硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸、およびその他、の混合物の溶液である。あまり好ましくはないが、挿入溶液は金属ハロゲン化物、例えば塩化第二鉄、および硫酸と混合した塩化第二鉄、またはハロゲン化物、例えば臭素と硫酸の溶液、または臭素の有機溶剤溶液としての臭素、も含むことができる。フレークに挿入した後、過剰の溶液をフレークから除去し、水洗後、挿入されたグラファイトフレークを乾燥させることにより、火炎にほんの数秒間さらすだけで膨脹し得る様になる。この様に処理したグラファイトの粒子を、以下、「挿入グラファイト粒子」と呼ぶ。高温にさらすことにより、挿入グラファイト粒子は、c方向、すなわち構成グラファイト粒子の結晶面に対して直角の方向、で、本来の体積の80〜1000倍以上もアコーデオン状に膨脹する。薄片状に剥離されたグラファイト粒子は、外観が虫状であるために、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒にして柔軟性のシートに圧縮することができ、このシートは、本来のグラファイトフレークとは異なり、様々な形状に成形および切断することができる。
【0004】
柔軟性グラファイトホイルは、緻密であり、取扱い強度が良好であり、柔軟性グラファイトホイルは、ロールに巻くことができ、金属製設備、例えばマンドレル、の周りに巻き付けることができ、望ましい伝熱特性を有し、従って、高温用途、例えばエンジン排気系統のシールリング用途、に特に有用である。柔軟性グラファイトのシートまたはホイルに樹脂を含浸させることにより、それらの密封性を強化することが提案されている。しかし、柔軟性グラファイトシートまたはホイルの表面層は、薄片状に剥離されたグラファイト粒子が整列しており、原子の構成層が柔軟性シートまたはホイルの表面に対して平行であるので、シートまたはホイルを液体樹脂中に浸漬しても樹脂が含浸され難い。しかし、柔軟性グラファイトの良く知られている異方性のために、柔軟性グラファイトシートの中に浸透し始めれば、樹脂は柔軟性グラファイトシートの中で、シートまたはホイルの対向する平らな平行表面およびシートの構成グラファイト粒子の面に対して平行な方向に、すなわちグラファイト粒子の「c軸」方向に対して横の方向に容易に流動する。
【0005】
発明の概要 本発明は、対向する平行で平らな外側表面を有する柔軟性グラファイトの薄いシートおよび針状セラミック繊維粒子を含む樹脂の複合材料に関するものであり、針状セラミック繊維粒子は、柔軟性シート中に埋め込まれ、柔軟性グラファイトシートの対向する平らな外側表面からグラファイトシート中に伸び、ガスに対する透過性をグラファイトシートに付与しているので、グラファイトシートは電気化学的燃料電池用の電極として使用できる。
【0006】
詳細な説明 本発明の特定の実施態様では、挿入された天然グラファイトフレークを、約1.5〜30重量%の、長さ0.15〜1.5ミリメートルの針状セラミック繊維粒子と混合する。粒子の幅は0.04〜0.004mmにすべきである。セラミック繊維粒子は、グラファイトに対して非反応性で、非接着性であり、2000°F、好ましくは2500°Fまで、の温度で安定している。適当なセラミック繊維粒子は、離解させた(macerated) 石英ガラス繊維、炭素およびグラファイト繊維、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシア繊維、天然鉱物繊維、例えばメタケイ酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウムアルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、およびその他から形成される。
【0007】
挿入天然グラファイトフレークおよび針状セラミック繊維粒子の、グラファイトフレークとセラミック繊維粒子が一般的に整列している混合物を温度2500°Fまでの火炎にさらして薄片状に剥離する、すなわち挿入グラファイトフレークを、針状セラミック繊維粒子を取り囲み、閉じ込めている膨脹前の挿入天然グラファイトフレークの体積の80〜1000倍に膨脹したグラファイト粒子に膨脹させる。膨脹により、セラミック繊維粒子はグラファイト粒子と最早実質的に整列しておらず、薄片状に剥離されたグラファイトとセラミック繊維の混合物中に不規則に配置されている。薄片状に剥離されたグラファイト粒子と不規則に配向した針状セラミック繊維粒子の混合物をロールプレスし、典型的には0.1〜3.5mm厚のシートまたはホイルに加工する。得られたシートまたはホイルは、柔軟性グラファイトシートの内側から、柔軟性グラファイトシートの対向する平らな表面の少なくとも1方に伸びているのが特徴である。針状セラミック繊維粒子は柔軟性シート中のグラファイトに対して非反応性で、非接着性であるので、個々の針状セラミック繊維粒子の周りを取り囲み、シートの対向する表面からシート本体の中に伸びている複数の輪状通路が柔軟性グラファイトシートの中に形成される。柔軟性グラファイトシートを液体樹脂中に浸漬すると、これらの通路が樹脂を受け入れ、その樹脂は、柔軟性グラファイトシートの平らな表面に対して平行な、透過性のより高い方向で柔軟性グラファイトシートに浸透し、シートを形成する、プレスされた、薄片状に剥離されたグラファイト粒子に(間に埋め込まれた針状セラミック繊維粒子により形成された通路により支援されて)浸透するが、柔軟性グラファイトシートの平らで平行な表面には浸透しない。セラミック繊維粒子は加工の全工程を通じて安定しているので、融解した繊維または繊維の分解生成物により通路がブロックされることはない。グラファイトシート中で樹脂が硬化した後、柔軟性グラファイトシートの密封性は、該シートで形成されたガスケット用に強化される。好ましい実施態様では、樹脂含有シートを加圧ロール間でプレスすることにより、カレンダー加工する。
【0008】
燃料電池用途における電極として使用する材料は、針状セラミック粒子を取り囲む輪状通路が柔軟性グラファイトシートの平行な対向する表面の一方から、シートの中を通り、反対側の平行な対向する表面に伸びる様に、厚さ0.75〜0.2mmにプレスされる。これによって、燃料電池の運転で必要とされる様に、燃料電池の酸化体ガスの燃料がグラファイトシートの中を通過することができる。
【0009】
図1は、柔軟性グラファイトの厚さ0.01インチのシートの顕微鏡観察によるスケッチであり、柔軟性グラファイトシート10の断面、平行で対向する平らな表面22、24、を示すものである。埋め込まれたセラミック繊維粒子は30で示される。セラミック繊維30によるシート10の貫通をは40で示される。
【0010】
例I 50メッシュ上に80重量%が保持されるサイズの天然グラファイトフレーク、を硫酸90重量%および硝酸10重量%の混合物中で処理した。この様に処理された挿入グラファイトフレークを水洗し、水分約1重量%に乾燥させた。この挿入フレーク1ポンドを、市販の大部分15〜25(l/w) アスペクト比のサイズを有するメタケイ酸カルシウムの針状セラミック繊維0.15ポンドと混合した。挿入グラファイトとメタケイ酸カルシウム繊維の混合物を2500°Fの加熱炉に入れ、挿入グラファイトフレークを、膨脹前の挿入フレークの体積の約325倍の体積を有する細長いウォーム状粒子に急速に膨脹させた。膨脹したウォーム状粒子は、混合したメタケイ酸カルシウム繊維を取り囲んでおり、この混合物を厚さ0.01インチ、幅24インチの柔軟性グラファイトシートにロール加工した。このシート中で、混合されたメタケイ酸カルシウム繊維がシートの表面からシートの本体中に伸びており、シートは約12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含んでいた。
【0011】
図2の電子顕微鏡写真(100X−100ミクロン尺度参照)は、柔軟性グラファイトシートの平らな表面22を貫通するセラミック繊維100の上側部分を示すものである。図3〜6は、電圧を増加して、柔軟性グラファイトシート中に「より深く」見ており、柔軟性グラファイトシート中に貫通するセラミック繊維100を示している。表面72の下の柔軟性グラファイトシート中に埋め込まれたセラミック繊維は140、160で示される。
【0012】
例II 例Iのシートの試料、幅8インチ、を、アセトン希釈剤を含む10%フェノール系樹脂溶液中に浸漬し、毎分10フィートの速度で溶液中を引っ張った。浸漬および乾燥の後、試料は重量が18.7%増加していた。
【0013】
この試料をさらに235℃に加熱処理し、樹脂を硬化および安定化させ、シートを加圧ロール間で密度1.5 gms/cc にカレンダー加工した。カレンダー加工されたシートを油および水中に浸漬したが、影響されなかった、すなわち不透過性であった。セラミック繊維または樹脂添加剤を加えずに同じ試験条件にさらした比較用シートは、重量が約35%、厚さが8%増加した。
【0014】
添加剤としてメタケイ酸カルシウム繊維5重量%、15重量%および25重量%を含む試料シートを、樹脂溶液中で毎分10フィートの速度で引っ張り、約17〜19重量%の樹脂で飽和させた。セラミック繊維を添加しなかった比較用試料は、同じ毎分10フィートの引張り速度で5重量%の樹脂しか保持していなかった。
【0015】
例III 例Iに記載される型の、5重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む、カレンダー加工された柔軟性グラファイトシート材料(100mmx100mm)を打抜きにより機械的に変形させ、図7、7Aの上面および側面図に示される様な、燃料電池用の流体フロープレートとして有用な形状にした。プレート100は、壁120により分離された複数の溝を有する。溝110は、典型的には深さ1.5mm、幅1〜1.5mmで、燃料電池の電極を覆う様に伸びている。壁120は、典型的には厚さが1〜1.5mmインチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3 gm/ccであり、打抜き後は典型的には1.1 gm/ccを超えている。図7、7Aのプレート100を、例IIの樹脂を使用し、約15 psiの加圧下で含浸し、235℃に加熱して硬化させた後、プレート中の樹脂が約20重量%になった。樹脂含浸したプレートは、溝を切削した先行技術のグラファイトプレートと比較して、曲げ強度が増加し、放熱性が改善され、燃料電池の流体フローフィールドプレートとして使用した時に、その厚さを横切る電圧低下がより低くなっている。
【0016】
例IV 例Iに記載される型の、5重量%の繊維を含むシートの1平方フィート試料を、例Iの希釈樹脂溶液中に、シートが一様に分布した15重量%の樹脂を含む様に15秒間浸漬した。このシートを粘着しない状態に乾燥させ(100℃)、打抜きにより機械的に変形させ、図7、7Aの上面および側面図に示される様な、燃料電池用の流体フロープレートとして有用な形状にした。プレート100は、壁120により分離された複数の溝を有する。溝110は、典型的には深さ1.5mm、幅1〜1.5mmで、燃料電池の電極を覆う様に伸びている。壁120は、典型的には厚さが1〜1.5mmインチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3 gm/ccであり、打抜き後は典型的には1.1 gm/ccを超えている。次いで、図7、7Aのプレート100を徐々に235℃に加熱し、例III の特性改良が達成される。
【0017】
図9は、燃料電池の基本要素を図式的に示すが、その詳細は、ここに参考として含める米国特許第4,988,583号および第5,300,370号、およびPUTWO95/16287(1995年6月15日)各明細書に記載されている。
【0018】
図9に関して、全体的に500で示される燃料電池は、プラスチックの形態の電解質、例えば固体重合体メンブラン電解質550、を含んでなる。炭素繊維電極600は、電極−メンブラン界面601、603で、触媒600、例えば白金、で被覆されている。フローフィールドプレート1000、1100は触媒層600と接触しており、燃料、例えば水素、が酸化体フローフィールドプレート1100の溝1400を通って循環する。運転の際、燃料フローフィールドプレート1000はアノードとなり、酸化体フローフィールドプレート1100はカソードとなる結果、電気的ポテンシャル、すなわち電圧、が燃料フローフィールドプレート1000と酸化体フローフィールドプレート1100の間に発生する。上記の米国特許第5,300,370号および第4,988,583号各明細書に記載されている様に、上記の電気化学的燃料電池を他の一群の燃料電池と組み合わせ、所望のレベルの電力を得る。
【0019】
Watkins の米国特許第4,988,583号明細書に記載されている型の、連続反応物流路を有する流体フローフィールドプレート1000’は図8および8Aに示す通りである。プレートは、例III に記載する型の、12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む樹脂含有柔軟性グラファイトシートである。プレート1000’の表面には、打抜きまたは成形により形成された、流体入口1600および流体出口1800を有する単一の連続流体流路1200’が形成されている。流体入口1600は、アノードフローフィールドプレートの場合には燃料の供給源(図には示していない)、またはカソードフローフィールドプレートの場合には酸化体の供給源(図には示していない)に接続されている。流路1200’は、プレート1000’の主な中央区域を何往復もしながら横切り、図8Aに示す様に組み立てた時に、それが隣接するアノードまたはカソードの電気触媒的に活性な区域に相当する。燃料電池の積重ねに組み立てた時に、各フローフィールドプレートは集電装置としても機能する。
【0020】
図10は、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部を光学的に観察(200X)した様子である。セラミック繊維30によるグラファイトシート表面の貫通を40で示す。セラミック繊維30を取り囲む輪状通路を35で示す。
【0021】
図11は、2本のセラミック繊維30、30’を400Xで光学的に観察した様子を示すものであるが、繊維30はグラファイトシート表面を40で貫通している。繊維30’はシート表面下の、グラファイトシートの中にある。取り囲んでいる輪状通路は35’で示す。セラミック繊維30’は、柔軟性グラファイトシートの中の、セラミック繊維30の下にある。
【0022】
本発明の好ましい実施態様では、セラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートを、図12に示される様に、セラミック繊維30が柔軟性グラファイトシート100の平行で平らな表面24’、22’間に伸び、表面を40で貫通する様に、厚さ0.75mm〜0.2mm、密度0.5〜1.5グラム/立方センチメートルにプラテンまたはロールプレスするので、柔軟性グラファイト100を通して伸びる通路(図10、11で35、35’で示す)が得られるが、柔軟性グラファイトシートは導電性であり、ガス、例えば水素および酸素、に対しても透過性であり、その結果、図13で100で示す燃料電池500(従来の固体重合体メンブラン電極をフローフィールドプレート1100、1000の間の550で示す)の電極として使用できる。電極100の形態にある柔軟性グラファイトシートは、流体フロープレートの溝1200、1400にそれぞれ接触しており、それらの溝の上にあり、上記の米国特許明細書およびPCT特許明細書文献に記載されている様な燃料電池の通常の運転の際に、溝から来るガスは透過性電極100を通過し得る。触媒粒子105、例えば細かく分割した白金、パラジウム、を、従来の技術、例えば薄片状に剥離されたグラファイト粒子に圧縮前に塗布することにより、平らな表面22および電極100の内側に分散させ、表面22を電気化学的に活性化させることができる。平らな表面22は、固体重合体メンブラン電解質550に接触している。セラミック繊維を含むシート100を最終的にプレスする直前に触媒を表面22に塗布してもよい。
【0023】
電極100の機械的強度は、例えば液体ピッチまたは樹脂溶液に浸漬し、電極100に液体ピッチまたは樹脂を含浸させることにより、高めることができるが、この含浸は、電極100中のセラミック繊維を取り囲む通路により容易に行なうことができる。次いで、含浸させた電極を高温、例えば250〜750℃、に加熱し、ピッチまたは樹脂をコークス残留物に転化するが、この残留物は体積が、電極中の最初の樹脂量の約60%に低下している。これによって、事実上、セラミック繊維を取り囲む通路が再び開放され、コークス残留物が柔軟性グラファイトと炭素−炭素結合を形成し、それによって機械的特性、例えばシートの強度、が向上する。本発明のこの実施態様では、樹脂またはピッチのコークス化の後に触媒を電極に塗布する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシート(本来の厚さ0.01インチ)の拡大断面図。
【図2】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図3】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図4】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図5】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図6】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図7】
燃料電池におけるフローフィールドプレートとして使用するための溝付きプレートに機械的に変形させた、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの一部を示す図。
【図7A】
燃料電池におけるフローフィールドプレートとして使用するための溝付きプレートに機械的に変形させた、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの一部を示す図。
【図8】
燃料電池の構成部品としての、本発明のフローフィールドプレートの上面図。
【図8A】
燃料電池の構成部品としての、本発明のフローフィールドプレートの部分的な側面図(断面)。
【図9】
先行技術の電気化学的燃料電池を図式的に示す図。
【図10】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の明視野顕微鏡検査の写真(元倍率200X)。
【図11】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの表面の明視野顕微鏡検査の写真(元倍率400X)。
【図12】
電気化学的燃料電池のアノードまたはカソードとして使用するのに適当な、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの透視図の拡大断面。
【図13】
本発明の電極を取り入れた従来の電気化学的燃料電池を示す図。
【0001】
発明の分野 本発明は、ガスケットおよび燃料電池用のフローフィールドプレートおよび電極、すなわちアノードまたはカソード、の製造にも使用できる、柔軟性グラファイトおよび針状セラミック粒子の複合材料に関するものである。
【0002】
発明の背景 ここで使用する用語「柔軟性グラファイト」は、グラファイトの結晶構造中に挿入し(intercalate) 、挿入粒子を、結晶構造中の炭素層に対して直角の方向に少なくとも80倍以上も膨脹させる試剤で処理し、急速に加熱した天然グラファイトの薄片状に剥離された反応生成物を意味する。柔軟性グラファイトおよびその製法は米国特許第3,404,061号明細書、Shane ら、に記載されている。膨脹した、すなわち薄片状に剥離されたグラファイトは、理論密度に近い密度を有する薄いシート(以下、柔軟性グラファイト「ホイル」と呼ぶ)に圧縮できるが、ほとんどの用途(エンジン排気系統におけるシールリングとして適当な形状への圧縮および他の用途を含む)には約10〜85 lbs./ft.3の密度が適当である。
【0003】
膨脹可能なグラファイト粒子の一般的な製造方法は、ここにその開示を参考として含める米国特許第3,404,061号明細書にShane らにより開示されている。この方法の典型的な実施態様では、天然グラファイトフレークを、酸化剤、例えば硝酸と硫酸の混合物、を含む溶液中に分散させることにより、フレークに挿入する(intercalate) 。挿入溶液は、酸化剤および他の、この分野で公知の挿入剤を含む。例としては、酸化剤および酸化性混合物を含む溶液、例えば硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、重クロム酸カリウム、過塩素酸、およびその他、または混合物、例えば濃硝酸と塩素酸塩、クロム酸とリン酸、硫酸と硝酸、または強有機酸、例えばトリフルオロ酢酸、と有機酸に可溶性の強酸化剤の混合物、を含む溶液がある。好ましい挿入剤は、硫酸、または硫酸とリン酸、および酸化剤、すなわち硝酸、過塩素酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸、およびその他、の混合物の溶液である。あまり好ましくはないが、挿入溶液は金属ハロゲン化物、例えば塩化第二鉄、および硫酸と混合した塩化第二鉄、またはハロゲン化物、例えば臭素と硫酸の溶液、または臭素の有機溶剤溶液としての臭素、も含むことができる。フレークに挿入した後、過剰の溶液をフレークから除去し、水洗後、挿入されたグラファイトフレークを乾燥させることにより、火炎にほんの数秒間さらすだけで膨脹し得る様になる。この様に処理したグラファイトの粒子を、以下、「挿入グラファイト粒子」と呼ぶ。高温にさらすことにより、挿入グラファイト粒子は、c方向、すなわち構成グラファイト粒子の結晶面に対して直角の方向、で、本来の体積の80〜1000倍以上もアコーデオン状に膨脹する。薄片状に剥離されたグラファイト粒子は、外観が虫状であるために、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒にして柔軟性のシートに圧縮することができ、このシートは、本来のグラファイトフレークとは異なり、様々な形状に成形および切断することができる。
【0004】
柔軟性グラファイトホイルは、緻密であり、取扱い強度が良好であり、柔軟性グラファイトホイルは、ロールに巻くことができ、金属製設備、例えばマンドレル、の周りに巻き付けることができ、望ましい伝熱特性を有し、従って、高温用途、例えばエンジン排気系統のシールリング用途、に特に有用である。柔軟性グラファイトのシートまたはホイルに樹脂を含浸させることにより、それらの密封性を強化することが提案されている。しかし、柔軟性グラファイトシートまたはホイルの表面層は、薄片状に剥離されたグラファイト粒子が整列しており、原子の構成層が柔軟性シートまたはホイルの表面に対して平行であるので、シートまたはホイルを液体樹脂中に浸漬しても樹脂が含浸され難い。しかし、柔軟性グラファイトの良く知られている異方性のために、柔軟性グラファイトシートの中に浸透し始めれば、樹脂は柔軟性グラファイトシートの中で、シートまたはホイルの対向する平らな平行表面およびシートの構成グラファイト粒子の面に対して平行な方向に、すなわちグラファイト粒子の「c軸」方向に対して横の方向に容易に流動する。
【0005】
発明の概要 本発明は、対向する平行で平らな外側表面を有する柔軟性グラファイトの薄いシートおよび針状セラミック繊維粒子を含む樹脂の複合材料に関するものであり、針状セラミック繊維粒子は、柔軟性シート中に埋め込まれ、柔軟性グラファイトシートの対向する平らな外側表面からグラファイトシート中に伸び、ガスに対する透過性をグラファイトシートに付与しているので、グラファイトシートは電気化学的燃料電池用の電極として使用できる。
【0006】
詳細な説明 本発明の特定の実施態様では、挿入された天然グラファイトフレークを、約1.5〜30重量%の、長さ0.15〜1.5ミリメートルの針状セラミック繊維粒子と混合する。粒子の幅は0.04〜0.004mmにすべきである。セラミック繊維粒子は、グラファイトに対して非反応性で、非接着性であり、2000°F、好ましくは2500°Fまで、の温度で安定している。適当なセラミック繊維粒子は、離解させた(macerated) 石英ガラス繊維、炭素およびグラファイト繊維、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシア繊維、天然鉱物繊維、例えばメタケイ酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウムアルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、およびその他から形成される。
【0007】
挿入天然グラファイトフレークおよび針状セラミック繊維粒子の、グラファイトフレークとセラミック繊維粒子が一般的に整列している混合物を温度2500°Fまでの火炎にさらして薄片状に剥離する、すなわち挿入グラファイトフレークを、針状セラミック繊維粒子を取り囲み、閉じ込めている膨脹前の挿入天然グラファイトフレークの体積の80〜1000倍に膨脹したグラファイト粒子に膨脹させる。膨脹により、セラミック繊維粒子はグラファイト粒子と最早実質的に整列しておらず、薄片状に剥離されたグラファイトとセラミック繊維の混合物中に不規則に配置されている。薄片状に剥離されたグラファイト粒子と不規則に配向した針状セラミック繊維粒子の混合物をロールプレスし、典型的には0.1〜3.5mm厚のシートまたはホイルに加工する。得られたシートまたはホイルは、柔軟性グラファイトシートの内側から、柔軟性グラファイトシートの対向する平らな表面の少なくとも1方に伸びているのが特徴である。針状セラミック繊維粒子は柔軟性シート中のグラファイトに対して非反応性で、非接着性であるので、個々の針状セラミック繊維粒子の周りを取り囲み、シートの対向する表面からシート本体の中に伸びている複数の輪状通路が柔軟性グラファイトシートの中に形成される。柔軟性グラファイトシートを液体樹脂中に浸漬すると、これらの通路が樹脂を受け入れ、その樹脂は、柔軟性グラファイトシートの平らな表面に対して平行な、透過性のより高い方向で柔軟性グラファイトシートに浸透し、シートを形成する、プレスされた、薄片状に剥離されたグラファイト粒子に(間に埋め込まれた針状セラミック繊維粒子により形成された通路により支援されて)浸透するが、柔軟性グラファイトシートの平らで平行な表面には浸透しない。セラミック繊維粒子は加工の全工程を通じて安定しているので、融解した繊維または繊維の分解生成物により通路がブロックされることはない。グラファイトシート中で樹脂が硬化した後、柔軟性グラファイトシートの密封性は、該シートで形成されたガスケット用に強化される。好ましい実施態様では、樹脂含有シートを加圧ロール間でプレスすることにより、カレンダー加工する。
【0008】
燃料電池用途における電極として使用する材料は、針状セラミック粒子を取り囲む輪状通路が柔軟性グラファイトシートの平行な対向する表面の一方から、シートの中を通り、反対側の平行な対向する表面に伸びる様に、厚さ0.75〜0.2mmにプレスされる。これによって、燃料電池の運転で必要とされる様に、燃料電池の酸化体ガスの燃料がグラファイトシートの中を通過することができる。
【0009】
図1は、柔軟性グラファイトの厚さ0.01インチのシートの顕微鏡観察によるスケッチであり、柔軟性グラファイトシート10の断面、平行で対向する平らな表面22、24、を示すものである。埋め込まれたセラミック繊維粒子は30で示される。セラミック繊維30によるシート10の貫通をは40で示される。
【0010】
例I 50メッシュ上に80重量%が保持されるサイズの天然グラファイトフレーク、を硫酸90重量%および硝酸10重量%の混合物中で処理した。この様に処理された挿入グラファイトフレークを水洗し、水分約1重量%に乾燥させた。この挿入フレーク1ポンドを、市販の大部分15〜25(l/w) アスペクト比のサイズを有するメタケイ酸カルシウムの針状セラミック繊維0.15ポンドと混合した。挿入グラファイトとメタケイ酸カルシウム繊維の混合物を2500°Fの加熱炉に入れ、挿入グラファイトフレークを、膨脹前の挿入フレークの体積の約325倍の体積を有する細長いウォーム状粒子に急速に膨脹させた。膨脹したウォーム状粒子は、混合したメタケイ酸カルシウム繊維を取り囲んでおり、この混合物を厚さ0.01インチ、幅24インチの柔軟性グラファイトシートにロール加工した。このシート中で、混合されたメタケイ酸カルシウム繊維がシートの表面からシートの本体中に伸びており、シートは約12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含んでいた。
【0011】
図2の電子顕微鏡写真(100X−100ミクロン尺度参照)は、柔軟性グラファイトシートの平らな表面22を貫通するセラミック繊維100の上側部分を示すものである。図3〜6は、電圧を増加して、柔軟性グラファイトシート中に「より深く」見ており、柔軟性グラファイトシート中に貫通するセラミック繊維100を示している。表面72の下の柔軟性グラファイトシート中に埋め込まれたセラミック繊維は140、160で示される。
【0012】
例II 例Iのシートの試料、幅8インチ、を、アセトン希釈剤を含む10%フェノール系樹脂溶液中に浸漬し、毎分10フィートの速度で溶液中を引っ張った。浸漬および乾燥の後、試料は重量が18.7%増加していた。
【0013】
この試料をさらに235℃に加熱処理し、樹脂を硬化および安定化させ、シートを加圧ロール間で密度1.5 gms/cc にカレンダー加工した。カレンダー加工されたシートを油および水中に浸漬したが、影響されなかった、すなわち不透過性であった。セラミック繊維または樹脂添加剤を加えずに同じ試験条件にさらした比較用シートは、重量が約35%、厚さが8%増加した。
【0014】
添加剤としてメタケイ酸カルシウム繊維5重量%、15重量%および25重量%を含む試料シートを、樹脂溶液中で毎分10フィートの速度で引っ張り、約17〜19重量%の樹脂で飽和させた。セラミック繊維を添加しなかった比較用試料は、同じ毎分10フィートの引張り速度で5重量%の樹脂しか保持していなかった。
【0015】
例III 例Iに記載される型の、5重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む、カレンダー加工された柔軟性グラファイトシート材料(100mmx100mm)を打抜きにより機械的に変形させ、図7、7Aの上面および側面図に示される様な、燃料電池用の流体フロープレートとして有用な形状にした。プレート100は、壁120により分離された複数の溝を有する。溝110は、典型的には深さ1.5mm、幅1〜1.5mmで、燃料電池の電極を覆う様に伸びている。壁120は、典型的には厚さが1〜1.5mmインチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3 gm/ccであり、打抜き後は典型的には1.1 gm/ccを超えている。図7、7Aのプレート100を、例IIの樹脂を使用し、約15 psiの加圧下で含浸し、235℃に加熱して硬化させた後、プレート中の樹脂が約20重量%になった。樹脂含浸したプレートは、溝を切削した先行技術のグラファイトプレートと比較して、曲げ強度が増加し、放熱性が改善され、燃料電池の流体フローフィールドプレートとして使用した時に、その厚さを横切る電圧低下がより低くなっている。
【0016】
例IV 例Iに記載される型の、5重量%の繊維を含むシートの1平方フィート試料を、例Iの希釈樹脂溶液中に、シートが一様に分布した15重量%の樹脂を含む様に15秒間浸漬した。このシートを粘着しない状態に乾燥させ(100℃)、打抜きにより機械的に変形させ、図7、7Aの上面および側面図に示される様な、燃料電池用の流体フロープレートとして有用な形状にした。プレート100は、壁120により分離された複数の溝を有する。溝110は、典型的には深さ1.5mm、幅1〜1.5mmで、燃料電池の電極を覆う様に伸びている。壁120は、典型的には厚さが1〜1.5mmインチである。機械的変形前の密度は約0.1〜0.3 gm/ccであり、打抜き後は典型的には1.1 gm/ccを超えている。次いで、図7、7Aのプレート100を徐々に235℃に加熱し、例III の特性改良が達成される。
【0017】
図9は、燃料電池の基本要素を図式的に示すが、その詳細は、ここに参考として含める米国特許第4,988,583号および第5,300,370号、およびPUTWO95/16287(1995年6月15日)各明細書に記載されている。
【0018】
図9に関して、全体的に500で示される燃料電池は、プラスチックの形態の電解質、例えば固体重合体メンブラン電解質550、を含んでなる。炭素繊維電極600は、電極−メンブラン界面601、603で、触媒600、例えば白金、で被覆されている。フローフィールドプレート1000、1100は触媒層600と接触しており、燃料、例えば水素、が酸化体フローフィールドプレート1100の溝1400を通って循環する。運転の際、燃料フローフィールドプレート1000はアノードとなり、酸化体フローフィールドプレート1100はカソードとなる結果、電気的ポテンシャル、すなわち電圧、が燃料フローフィールドプレート1000と酸化体フローフィールドプレート1100の間に発生する。上記の米国特許第5,300,370号および第4,988,583号各明細書に記載されている様に、上記の電気化学的燃料電池を他の一群の燃料電池と組み合わせ、所望のレベルの電力を得る。
【0019】
Watkins の米国特許第4,988,583号明細書に記載されている型の、連続反応物流路を有する流体フローフィールドプレート1000’は図8および8Aに示す通りである。プレートは、例III に記載する型の、12重量%のメタケイ酸カルシウム繊維を含む樹脂含有柔軟性グラファイトシートである。プレート1000’の表面には、打抜きまたは成形により形成された、流体入口1600および流体出口1800を有する単一の連続流体流路1200’が形成されている。流体入口1600は、アノードフローフィールドプレートの場合には燃料の供給源(図には示していない)、またはカソードフローフィールドプレートの場合には酸化体の供給源(図には示していない)に接続されている。流路1200’は、プレート1000’の主な中央区域を何往復もしながら横切り、図8Aに示す様に組み立てた時に、それが隣接するアノードまたはカソードの電気触媒的に活性な区域に相当する。燃料電池の積重ねに組み立てた時に、各フローフィールドプレートは集電装置としても機能する。
【0020】
図10は、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部を光学的に観察(200X)した様子である。セラミック繊維30によるグラファイトシート表面の貫通を40で示す。セラミック繊維30を取り囲む輪状通路を35で示す。
【0021】
図11は、2本のセラミック繊維30、30’を400Xで光学的に観察した様子を示すものであるが、繊維30はグラファイトシート表面を40で貫通している。繊維30’はシート表面下の、グラファイトシートの中にある。取り囲んでいる輪状通路は35’で示す。セラミック繊維30’は、柔軟性グラファイトシートの中の、セラミック繊維30の下にある。
【0022】
本発明の好ましい実施態様では、セラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートを、図12に示される様に、セラミック繊維30が柔軟性グラファイトシート100の平行で平らな表面24’、22’間に伸び、表面を40で貫通する様に、厚さ0.75mm〜0.2mm、密度0.5〜1.5グラム/立方センチメートルにプラテンまたはロールプレスするので、柔軟性グラファイト100を通して伸びる通路(図10、11で35、35’で示す)が得られるが、柔軟性グラファイトシートは導電性であり、ガス、例えば水素および酸素、に対しても透過性であり、その結果、図13で100で示す燃料電池500(従来の固体重合体メンブラン電極をフローフィールドプレート1100、1000の間の550で示す)の電極として使用できる。電極100の形態にある柔軟性グラファイトシートは、流体フロープレートの溝1200、1400にそれぞれ接触しており、それらの溝の上にあり、上記の米国特許明細書およびPCT特許明細書文献に記載されている様な燃料電池の通常の運転の際に、溝から来るガスは透過性電極100を通過し得る。触媒粒子105、例えば細かく分割した白金、パラジウム、を、従来の技術、例えば薄片状に剥離されたグラファイト粒子に圧縮前に塗布することにより、平らな表面22および電極100の内側に分散させ、表面22を電気化学的に活性化させることができる。平らな表面22は、固体重合体メンブラン電解質550に接触している。セラミック繊維を含むシート100を最終的にプレスする直前に触媒を表面22に塗布してもよい。
【0023】
電極100の機械的強度は、例えば液体ピッチまたは樹脂溶液に浸漬し、電極100に液体ピッチまたは樹脂を含浸させることにより、高めることができるが、この含浸は、電極100中のセラミック繊維を取り囲む通路により容易に行なうことができる。次いで、含浸させた電極を高温、例えば250〜750℃、に加熱し、ピッチまたは樹脂をコークス残留物に転化するが、この残留物は体積が、電極中の最初の樹脂量の約60%に低下している。これによって、事実上、セラミック繊維を取り囲む通路が再び開放され、コークス残留物が柔軟性グラファイトと炭素−炭素結合を形成し、それによって機械的特性、例えばシートの強度、が向上する。本発明のこの実施態様では、樹脂またはピッチのコークス化の後に触媒を電極に塗布する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシート(本来の厚さ0.01インチ)の拡大断面図。
【図2】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図3】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図4】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図5】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図6】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の一部の、電子線強度電圧を増加(2.5KV〜40KV)させた時の電子顕微鏡写真(元倍率100X)。
【図7】
燃料電池におけるフローフィールドプレートとして使用するための溝付きプレートに機械的に変形させた、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの一部を示す図。
【図7A】
燃料電池におけるフローフィールドプレートとして使用するための溝付きプレートに機械的に変形させた、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの一部を示す図。
【図8】
燃料電池の構成部品としての、本発明のフローフィールドプレートの上面図。
【図8A】
燃料電池の構成部品としての、本発明のフローフィールドプレートの部分的な側面図(断面)。
【図9】
先行技術の電気化学的燃料電池を図式的に示す図。
【図10】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの平らな表面の明視野顕微鏡検査の写真(元倍率200X)。
【図11】
本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの表面の明視野顕微鏡検査の写真(元倍率400X)。
【図12】
電気化学的燃料電池のアノードまたはカソードとして使用するのに適当な、本発明のセラミック繊維を含む柔軟性グラファイトシートの透視図の拡大断面。
【図13】
本発明の電極を取り入れた従来の電気化学的燃料電池を示す図。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する平らで平行な外側表面を有する、単一の、統一された、薄い、圧縮された柔軟性グラファイトシートの形態にある、電気化学的燃料電池に使用される電極であって、前記柔軟性グラファイトシートが、柔軟性グラファイトと非反応性であり、2000°Fまでの温度で安定している複数の針状セラミック繊維粒子の分散物が中に埋め込まれており、前記針状粒子が、前記平らで平行な外側表面のそれぞれから前記柔軟性グラファイトシートの中に伸びており、前記平らで平行な外側表面の一方から他方へ、前記柔軟性グラファイトシートの中を通って伸びる通路を形成させ、前記柔軟性グラファイトシートを通して燃料または酸化体ガスを通過させることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記圧縮された柔軟性グラファイトシートの厚さが0.075〜0.2mmである、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記柔軟性グラファイトシートの通路が、樹脂のコークス残留物で部分的に充填されている、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記柔軟性グラファイトシートが、電気化学的燃料電池の運転においてガスの電気化学的活性を強化する触媒を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
(i) 対向する平らで平行な外側表面を有する、単一の、統一された、薄い、圧縮された柔軟性グラファイトシートの形態にある電極であって、前記柔軟性グラファイトシートが、柔軟性グラファイトと非反応性であり、2000°Fまでの温度で安定している複数の針状セラミック繊維粒子の分散物が中に埋め込まれており、前記針状粒子が、前記平らで平行な外側表面のそれぞれから前記柔軟性グラファイトシートの中に伸びており、前記平らで平行な外側表面の一方から他方へ、前記柔軟性グラファイトシートの中を通って伸びる通路を形成させ、前記柔軟性グラファイトシートを通して燃料または酸化体ガスを通過させる電極、および(ii)前記電極と接触し、整列して配置され、放出される気体状燃料または酸化体を受け入れるための、溝の付いた表面を有する流体フローフュールプレートの組合せ。
【請求項1】
対向する平らで平行な外側表面を有する、単一の、統一された、薄い、圧縮された柔軟性グラファイトシートの形態にある、電気化学的燃料電池に使用される電極であって、前記柔軟性グラファイトシートが、柔軟性グラファイトと非反応性であり、2000°Fまでの温度で安定している複数の針状セラミック繊維粒子の分散物が中に埋め込まれており、前記針状粒子が、前記平らで平行な外側表面のそれぞれから前記柔軟性グラファイトシートの中に伸びており、前記平らで平行な外側表面の一方から他方へ、前記柔軟性グラファイトシートの中を通って伸びる通路を形成させ、前記柔軟性グラファイトシートを通して燃料または酸化体ガスを通過させることを特徴とする電極。
【請求項2】
前記圧縮された柔軟性グラファイトシートの厚さが0.075〜0.2mmである、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記柔軟性グラファイトシートの通路が、樹脂のコークス残留物で部分的に充填されている、請求項1に記載の電極。
【請求項4】
前記柔軟性グラファイトシートが、電気化学的燃料電池の運転においてガスの電気化学的活性を強化する触媒を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項5】
(i) 対向する平らで平行な外側表面を有する、単一の、統一された、薄い、圧縮された柔軟性グラファイトシートの形態にある電極であって、前記柔軟性グラファイトシートが、柔軟性グラファイトと非反応性であり、2000°Fまでの温度で安定している複数の針状セラミック繊維粒子の分散物が中に埋め込まれており、前記針状粒子が、前記平らで平行な外側表面のそれぞれから前記柔軟性グラファイトシートの中に伸びており、前記平らで平行な外側表面の一方から他方へ、前記柔軟性グラファイトシートの中を通って伸びる通路を形成させ、前記柔軟性グラファイトシートを通して燃料または酸化体ガスを通過させる電極、および(ii)前記電極と接触し、整列して配置され、放出される気体状燃料または酸化体を受け入れるための、溝の付いた表面を有する流体フローフュールプレートの組合せ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図8】
【図8A】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2002−520784(P2002−520784A)
【公表日】平成14年7月9日(2002.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−559604(P2000−559604)
【出願日】平成11年7月6日(1999.7.6)
【国際出願番号】PCT/US99/12833
【国際公開番号】WO00/03445
【国際公開日】平成12年1月20日(2000.1.20)
【出願人】
【氏名又は名称】ユーカー、カーボン、テクノロジー、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】UCAR CARBON TECHNOLOGY CORPORATION
【Fターム(参考)】
【公表日】平成14年7月9日(2002.7.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成11年7月6日(1999.7.6)
【国際出願番号】PCT/US99/12833
【国際公開番号】WO00/03445
【国際公開日】平成12年1月20日(2000.1.20)
【出願人】
【氏名又は名称】ユーカー、カーボン、テクノロジー、コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】UCAR CARBON TECHNOLOGY CORPORATION
【Fターム(参考)】
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