説明

柔軟組織用レーザ

【課題】動作中において極めて安全であるとともに人間工学的な観点から操作性が優位である柔軟組織用レーザを提供する。
【解決手段】ディスプレイと制御装置と制御可能なレーザ光源と第1の光導要素と前記第1の光導要素の光放射端上の受口を備えてなり、第2の光導要素を備えた多様な先端部を前記第1の光導要素の光放射端上に取り外し可能に設置することができ、前記多様な先端部が前記第2の光導要素の直径および/または前記第2の光導要素が前記先端部の自由端から軸方向に突出する大きさによってそれぞれ異り、制御装置36が特に所要の作業工程に従って適した先端部12を選択するとともに選択された作業工程のために必要な出力が前記第2の光導要素26の自由端上で利用可能となるような方式でレーザ光源38を制御する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、請求項1前段に記載の柔軟組織用レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から柔軟組織用レーザの先端部を一般的に取り外し可能に柔軟組織用レーザを取り付けることが知られており、それによって先端部を交換可能にした結果殺菌に関する問題が解消されるばかりでなく所要の顕微手術の個々のケースでの使用に合わせた先端部の選択が可能にされる。例えば、適宜な先端部を選択することによって先端部の光放出端部の光放射能力が変化する。加えて、例えば前端を心違いあるいは先細に形成すれば特に深い患部上に位置する処置領域に到達することもできる。
【0003】
光ファイバケーブルの先端部を選択することは以前から知られており、これに関して例えば米国特許第3831017号明細書が参照される。この解決方式によって殺菌の観点には着目されていないものの先端部の交換可能性が公知になっており、しかしながらこの解決方式においては多様な構成に対してそれぞれ異なったケーブル収容具が使用されている。
【0004】
所要の効果を提供するために、柔軟組織用レーザにおいて制御装置を使用して特別な方式の光線、例えば予め設定された出力と特定のスペクトルからなるパルス光線を生成することが知られている。
【0005】
加えて、性能を識別可能にするためにコーディングを有する交換可能な先端部を提供するか、および/または異なった色によって先端部に指標を付けることが提案されている。
【0006】
しかしながら、色付けと対応する性能の関係が容易には把握できないことが問題であり、特に柔軟組織用レーザが日常的に使用されるものでなく時折にしか使用されない場合に例えば性能と色付けの関係をその都度確認しなければならないことから重要な問題となる。
【0007】
さらに別の問題は、異なった色によって標記された先端部を交換する際に操作員が実際の出力に従って色が決定されていると推測してしまい、すなわち操作員の意図する方式の柔軟組織治療のために出力が低すぎることも高すぎることもないと判断する傾向が有る点である。しかしながら他方で、不慮の熱傷を防止することが重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って本発明の目的は、動作中において極めて安全であるとともに人間工学的な観点から操作性が優位である、請求項1前段に記載の柔軟組織用レーザを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題は本発明の請求項1によって達成される。好適な追加構成が従属請求項によって定義される。
【0010】
本発明によれば、例えばモニタを介して所要の出力が予設定されるような方式で操作員による制御が提供される。そこで操作員に対して所要の性能に適合した先端部、または彼の選択に従って異なった放射口を有するものの同じ出力クラスに分類される複数の先端部が提供され、その結果放射波スペクトルのパルス/ポーズ比その他の観点において彼が設定したような方式すなわち量および形態で柔軟組織用のレーザ光線を放射する、安全な操作性の装置が得られる。
【0011】
本発明に係る方式によって意外なほど安全な操作性を有する柔軟組織用レーザが提供され、その理由は作業端部に隣接して放射される光出力に対して本発明に従って制御が作用し、例えば供給される電力に対して作用するものではないためである。
【0012】
本発明に従った出力の調節は任意の適宜な方式で実用化することができる。例えば、対応する先端部を装着した後に放射される光出力を測定し、それに応じてレーザの電気入力を調節することができる。また、各先端部に対してその先端部によってもたらされる出力低下を示すコーディングを施し、その結果柔軟組織用レーザによって放出される切断力に関して信頼性の高い表示を提供することもできる。
【0013】
本発明によれば、操作員による光出力に関しての条件設定が制御装置によって優先事項として設定され、その時点で使用されている先端部も考慮に取り入れられることが極めて好適である。そのため、例えば使用される各先端部を登録したコーディングの支援による、先端部検知装置を使用することができる。このことによって操作員の意図に適合する光出力が放射されることが保証される。
【0014】
例えば操作員によって設定される所要の出力が2Wで選択された先端部のため半分の光出力がレーザの光導要素によって先端部に伝送される場合、例えば先端部の光導面がレーザの光導要素の光導面のサイズの半分であるとしたら、それに従って制御装置は2Wの光出力が光源上で放射されるように自動的に電力を設定する。結果として1Wの光出力が先端部の前方端上で提供される。
【0015】
先端部光導装置の多様な直径のみならず先端部に関するその他のパラメータ、例えば先端部の長さ、前端の心違い位置、さらに必要であれば例えば先端部の光導要素の長さ等がコーディングによって明確にされることが極めて好適である。コーディングは例えば先端部の保持部材の色付けあるいは形状等によって視覚的に認識可能とすることが好適であるが、同様にコーディングを使用してセンサによる検出を行い先端部の種類に関する幾つかの情報を制御装置に提供し得るようにすることも好適である。
【0016】
本発明によれば、特に治療される組織に関連して、ディスプレイ上に少なくとも2つの選択可能な作業工程が表示されることが極めて好適である。
【0017】
本発明によれば、少なくとも1つの作業工程に対して接触モードあるいは非接触モードが選択可能であることが極めて好適である。
【0018】
本発明によれば、ディスプレイ上で直線、傾斜、あるいは湾曲とされる先端部の形状を選択し得ることが極めて好適である。
【0019】
本発明によれば、所要の作業工程に従って使用される先端部が制御装置によってディスプレイ上に表示されレーザ光源の出力が決定されることが極めて好適である。
【0020】
本発明によれば、制御装置によって決定されたレーザ光源の出力をディスプレイ上に表示可能にするか、および/または手動で変更可能にすることが極めて好適である。
【0021】
本発明によれば、異なった先端部がそれぞれ異なった識別コードを有し、判定した識別コードをディスプレイ上に表示可能にすることが極めて好適である。
【0022】
本発明によれば、使い捨て式先端部がそれぞれ識別コードを有し、先端部の受口が識別コードの検出装置を備え、その検出装置が先端部の種類に関する情報を制御装置に対して提供することが極めて好適である。
【0023】
本発明によれば、識別コードがバーコードからなるとともに検出装置がバーコード読み取り装置を備えることが極めて好適である。
【0024】
本発明によれば、検出装置が先端部上の突起部および/または低没部を検知するセンサを備え、識別コードが少なくとも1個の突起部および/または低没部によって形成されることが極めて好適である。
【0025】
本発明によれば、先端部の直径検出装置を設け、それによって光導要素の直径と先端部の直径の間の直径比を検出可能にすることが極めて好適である。
【0026】
本発明によれば、制御装置がマイクロフォンを備え音声入力によって操作可能とすることが極めて好適である。
【0027】
本発明によれば、制御装置がスピーカを備え設定可能なパラメータの組み合わせを音声出力によって提示することが極めて好適である。
【0028】
本発明によれば、識別コードが色によって形成され、および/または先端部の第2の光導要素が200μm、300μm、400μm、あるいは600μmの直径を有することが極めて好適である。
【0029】
本発明によれば、第2の光導要素が先端部の自由端を3mmないし30mm超えて延在することが極めて好適である。
【0030】
本発明によれば、レーザ光源が平均で6Wないし12Wの出力を有するか、および/またはレーザ光源が連続的および/またはパルス式の光を生成することが極めて好適である。
【0031】
本発明によれば、2本の光導要素の移行領域内に少なくとも1個の光学変換要素が配置され、それが第1の光導要素の光線を集束させるかあるいは延長することが極めて好適である。
【0032】
本発明のその他の詳細、特徴、ならびに利点は、添付図面を参照しながら以下に記述する実施例の詳細な説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施例に係る柔軟組織用レーザの一部、特に先端部を示した概略図である。
【図2】別の先端部を装着した図1の実施例を示した概略図である。
【図3】第3の先端部を装着した図1の実施例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に示された柔軟組織用レーザは、通常接続部材14を介して柔軟組織用レーザ10に結合される先端部12を備えている。柔軟組織用レーザ10はガイドチューブ18内に導入して保護された光導要素16を備えている。ガイドチューブ18はその前端に接続部材14に対して嵌め込み結合するためのボス20を備える。このため、接続部材14が内側方向を指向する突起部22をガイドチューブ18に面した端部に備えており、前記突起部22は図1に概略的に示されているがボス20の周りを弾力的に把持するとともに先端部12をガイドチューブ18上に固定することができる。
【0035】
例えばバヨネットジョイント等のその他の任意の結合も本発明の精神を逸脱せずに問題なく使用可能であることが理解される。
【0036】
先端部12は接続部材14に近接してシャンク24を備え、このシャンク24が第2の光導要素26の周りを取り囲んでそれを防護する。光導要素26は光導要素16の前端のインタフェース30上に100%の結合効率が達成されるような方式で面的に密接して接触する。このため、互いに向かい合っている光導要素16と光導要素26の平坦な面が相互に正確に位置決めされ、このことはチューブ18の前端における光導要素26の案内によって支援される。突起部22の弾性作用によって追加的に光導要素26の自由端が光導要素16の自由端に対して対照的に押圧される。
【0037】
先端部12のシャンク24は接続部材14に接続してまず光導要素16と同軸に延在する。図示されている先端部12においてはシャンクがその後前方自由端32の方向に向かって光導要素16の直径の約5倍に相当する曲線半径をもって湾曲している。
【0038】
図1に示されているように、第2の光導要素26はシャンク24から自由に突立し、その際図中の先端部の突出の度合いは光導要素26の直径の約3倍に相当する。上述の各数値は必要に応じて広範囲に調節可能であることが理解される。
【0039】
前記の突出によって、アクセスし難くかつ狭い場所に対しても極めて良好な光照射が保証される。第2の光導要素26の自由端34を例えばそれを被覆する保護フィルム等の適宜な方式によって保護し得ることが理解される。
【0040】
本発明によれば先端部12を、第2の光導要素26の直径が異なっているか、端部34の延伸が異なっているか、または先端部の心違いあるいは湾曲あるいは直線の形状において異なっている別の先端部と任意に交換することができる。本発明によれば、使用される先端部12が制御装置36によって決定され、これは柔軟組織用レーザ10のハウジングの領域内に配置されていて、図1中にブロック線図によって概略的に示されている。
【0041】
制御装置36は適宜な先端部をそれ自身で決定する。選択された作業工程のために必要な出力が第2の光導要素の自由端34上で利用可能となるような方式で制御装置36の光源38が本発明に従って制御される。このため、先端部12をモニタ40上に表示し、必要に応じて追加的にセンサ42によって検知することが好適である。従って、センサ42が光導要素26の直径と光導要素16の直径の間の直径比の数値を検出し、それに従って適宜な方式で光源38を制御する。
【0042】
使用される作業工程と使用される先端部の両方がモニタ40上に適宜な方式で表示されることが理解される。センサ42が使用される場合、柔軟組織用レーザの安全な操作と人間工学的に良好な使用が可能になるように、使用される先端部も同時にモニタ上に視覚的に表示されることが好適である。
【0043】
先端部12、ならびに勿論使用される全ての先端部がそのために適した例えば識別コード44等の識別標記を有することが理解され、それが接続部材14上または先端部12のその他の適宜な部位に付記される。
【0044】
ここでは図示されていない一変更例においては制御装置36がマイクロフォンを備えるとともに音声入力によって動作可能であり、また好適には設定されたパラメータの組み合わせを音声出力によって通知しさらに例えば設定されるべき組み合わせを音声出力によって提示するためのスピーカを備える。
【0045】
図2には変更された先端部12が示されており、それ以外の点においては柔軟組織用レーザ10が図1の柔軟組織用レーザ10と同様であるためその詳細な説明は不要である。この先端部12の実施例においては光導要素26が顕著に細くなっている。その直径は光導要素16の直径の約半分であり、そのためインタフェース30の領域において光導要素16の自由面の50%のみの結合が可能である。従って、自由端34において放出される光出力は図1の自由端の光出力の約50%に相当する。
【0046】
このことは適宜に変更された識別コード44によって明確化され、従って異なった先端部12が装着されていることがセンサ42によって自動的に認識される。
【0047】
図3の先端部12は自由端34がより長く突出している点において図2の先端部12と異なっている。従ってこの先端部は原則的に狭い場所に所要の柔軟組織用レーザ光出力を提供するためにより適しているが、その際より長く突出した自由端34のため慎重な操作が必要である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイと制御装置と制御可能なレーザ光源と第1の光導要素と前記第1の光導要素の光放射端上の受口を備えてなり、第2の光導要素を備えた多様な先端部を前記第1の光導要素の光放射端上に取り外し可能に設置することができ、前記多様な先端部が前記第2の光導要素の直径および/または前記第2の光導要素が前記先端部の自由端から軸方向に突出する大きさによってそれぞれ異なる柔軟組織用レーザであり、前記制御装置(36)が特に所要の作業工程に従って適した先端部(12)を選択するとともに選択された作業工程のために必要な出力が前記第2の光導要素(26)の自由端上で利用可能となるような方式でレーザ光源(38)を制御することを特徴とする柔軟組織用レーザ。
【請求項2】
特に治療される組織に関連して、ディスプレイ上に少なくとも2つの選択可能な作業工程が表示されることを特徴とする請求項1記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項3】
少なくとも1つの作業工程に対して接触モードあるいは非接触モードが選択可能であることを特徴とする請求項1または2記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項4】
ディスプレイ上で直線、傾斜、あるいは湾曲とされる先端部(12)の形状を選択し得ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項5】
所要の作業工程に従って使用される先端部(12)が制御装置(36)によってディスプレイ上に表示され、レーザ光源(38)の出力が決定されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項6】
制御装置(36)によって決定されたレーザ光源(38)の出力をディスプレイ上に表示可能にするか、および/または手動で変更可能にすることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項7】
異なった先端部(12)がそれぞれ異なった識別コード(44)を有し、判定された識別コード(44)をディスプレイ上に表示可能にすることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項8】
使い捨て式の先端部がそれぞれ識別コード(44)を有し、先端部(12)の受口が識別コード(44)の検出装置(42)を備え、その検出装置が先端部(12)の種類に関する情報を制御装置(36)に対して提供することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項9】
識別コード(44)がバーコードからなるとともに検出装置(42)がバーコード読み取り装置を備えることを特徴とする請求項6記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項10】
検出装置が先端部(12)上の突起部および/または低没部を検知するセンサ(42)を備え、識別コード(44)が少なくとも1個の突起部および/または低没部によって形成されることを特徴とする請求項6記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項11】
先端部(12)の直径検出装置を設け、それによって光導要素(16)の直径と先端部(12)の直径の間の直径比を検出可能にすることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項12】
制御装置(36)がマイクロフォンを備え音声入力によって操作可能とすることを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項13】
制御装置(36)がスピーカを備え設定可能なパラメータの組み合わせを音声出力によって提示することを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項14】
識別コード(44)が色によって形成され、および/または先端部(12)の第2の光導要素(26)が200μm、300μm、400μm、あるいは600μmの直径を有することを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項15】
第2の光導要素(26)が先端部(12)の自由端を3mmないし30mm超えて延在することを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項16】
レーザ光源(38)が平均で6Wないし12Wの出力を有するか、および/またはレーザ光源(38)が連続的および/またはパルス式の光を生成することを特徴とする請求項1ないし15のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。
【請求項17】
2本の光導要素(16,26)の移行領域内に少なくとも1個の光学変換要素が配置され、それが第1の光導要素の光線を集束させるかあるいは延長することを特徴とする請求項1ないし16のいずれかに記載の柔軟組織用レーザ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−194239(P2011−194239A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−65095(P2011−65095)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(596032878)イボクラール ビバデント アクチェンゲゼルシャフト (63)
【Fターム(参考)】