説明

柱状地盤改良体構築装置

【課題】主に基礎構造の施工に伴って現場で発生する建設発生土全般を対象として、場外での廃棄物処分量を低減するのみならず、建設発生土を有効利用した原地盤の改良に資する柱状地盤改良体の構築装置を提供する。
【解決手段】先端に掘削ヘッドが装着されるとともに、周辺地盤を側方に締め固めて圧密するテーパー状部とこれに連続する円筒部とから構成されたケーシング1を回転させながら掘削を進め、ケーシング1頭部が地表面から突出した状態で所定の深度まで掘削した後に、ケーシング1頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土6を、その頂面が地表面より上方に位置するまでケーシング1内に投入し、建設発生土6を含むケーシング1内の土に地盤改良材を注入しつつ攪拌翼7にて3次元的にあるいは共廻りを防止しつつ混合攪拌して、攪拌翼7とケーシング1を地上に引き上げることにより柱状地盤改良体を構築する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特殊なケーシングを利用して原地盤を圧密させて空間を作成し、その空間に構築物の建設や解体に伴って発生する現場発生土を投入し、該現場発生土を含む土に地盤改良材を注入しつつ混合攪拌することにより、該現場発生土を含む土を固化させて柱状地盤改良体を構築する柱状地盤改良体構築装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、地盤改良工法の深層改良の分野に属するものである。
この深層地盤改良工法は、比較的深い地層までの地盤を対象とした地盤改良であり、地盤と地盤改良材を原位置で攪拌混合して地盤改良体を構築するものである。
従来の深層地盤改良工法のイメージを図9乃至図11に示す。
この深層地盤改良工法は、攪拌翼付きの攪拌棒を用いて機械的に地盤と攪拌するもの(図9と図10)と、細径の中空ロッド先端から高圧で硬化材を吐出しロッドを回転させて地盤を噴射攪拌する工法(図11)に分けられる。
いずれも原位置地盤内で混合攪拌するものである。
【0003】
一方、建設における環境問題に対する取り組みの一つに、構築物の建設や解体に伴って発生する産業廃棄物の低減が挙げられる。
ここで、構築物の建設や解体に伴って発生する産業廃棄物には、(1)杭の施工に伴って排出される掘削残土、(2)基礎スラブや基礎梁などの構築に伴う掘削残土、(3)造成工事で発生する残土、(4)コンクリート又は鉄筋コンクリート解体物などがある。
本明細書においては、それら残土を総称して建設発生土という。
【0004】
上記の産業廃棄物すなわち建設発生土を低減すべき対象分野は多岐に亘るが、近年基礎構造の分野でも、軟弱地盤中に砂、砕石等の中込材を排出して該地盤中等に残置し杭状体を形成するようにした軟弱地盤改良工法や現地発生土を利用した液状化対策工法などの技術開発も行われているが、あまり普及していない。
【0005】
例えば、軟弱地盤改良工法としては、重機のリーダーに沿ってケーシングパイプ1を所定深度まで地盤中に貫入し、ホッパから中空ケーシングパイプ本体内部に砂、砕石等の中込材を投入充填し、ケーシングパイプの地盤中への貫入に際し、地盤の土壌がケーシングパイプ本体の内部に侵入しないように貫入抵抗を介してコーン状のシュウがそのネイルピースを介して閉鎖状態にされ、所定深度に達した後、ケーシングパイプを上昇させると共にスクリュウを押進下降させて各ネイルピースを強制的に開くことにより、シュウを開放してケーシングパイプ本体内の中込材を地盤中に排出残置して杭状体を形成するようにした工法が提案されている。
【特許文献1】特許第2747924号公報
【0006】
また、液状化対策工法としては、軟弱砂質土地盤中に中空管を貫入し、該中空管を引き抜きつつ、その跡に建設発生土を含む産業廃棄物を充填してパイルを造成し、前記中空管の貫入時に周辺地盤に作用する側方押し力で、周辺地盤をせん断変形させつつ圧縮してその密度を高め、この状態を中空管の引き抜き後もその跡に充填したパイル材料で保持して、地盤を液状化しないように改良する際に、パイル材料が液状化する恐れがあるとき、パイル材料の建設発生土等に所定量の石灰、セメント等の固化材を配合して、パイル材料の液状化を防止する軟弱砂質土地盤改良工法が提案されている。
【特許文献2】特許第2887578号公報
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された発明は、選抜された中込材を使用するものであって建設発生土を使用するものではなく、建設発生土の処分や有効利用を目的としたものではない。
また、特許文献2に記載された発明のパイルは、それ自体液状化することが防止されたものであるが、強度を持たせることで構造物を支持したりその沈下低減を図ることが可能な柱状地盤改良体ではない。
さらに、それぞれの施工には特殊な施工機械が必要となることから、一般工事現場へ普及するには至っていない実情にある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、これらの課題を解決するために創作されたものであり、主に基礎構造の施工に伴って現場で発生する上記の建設発生土全般を対象として、場外での廃棄物処分量を低減するのみならず、建設発生土を有効利用した原地盤の改良に資する柱状地盤改良体構築装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、先端に掘削ヘッドが装着されるとともに、周辺地盤を側方に締め固めて圧密するテーパー状部とこれに連続する円筒部とから構成されたケーシングを回転させながら掘削し、所定の深度まで掘削した後に、ケーシング頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土を前記ケーシング内に投入し、前記建設発生土を含む該ケーシング内の土に地盤改良材を注入しつつ攪拌手段にて混合攪拌して、該攪拌手段を地上に引き上げ、次いで前記ケーシングを地上に引き上げることにより柱状地盤改良体を構築する柱状地盤改良体構築装置において、駆動装置により回転駆動されるロッドに直径が前記ケーシングの内径の半分程度のスクリューが取り付けられ、該スクリューの終端縁がロッド方向に折り曲げ形成された案内板が土を前記ケーシングの壁方向に案内することにより、前記ケーシングの軸心部の土の上昇流を前記ケーシングの上端近傍位置において土の自重により自由落下する下降流に変更して、前記ケーシングの先端部から上端部近傍に至るケーシング内における土の上下方向の対流を発生させることとした。
【0010】
請求項2に係る発明は、同じく柱状地盤改良体構築装置において、回転軸に固定された固定翼と同軸に回転自在に枢着された自由翼とから構成され、前記自由翼先端に摩擦係数の大きい素材が取り付けられて該素材が前記ケーシングの内壁に摺接され、または、前記自由翼が前記ケーシング内に設けられたストッパーに当接されて、前記自由翼の回転が規制されることにより掘削土の共回りが防止されていることを特徴としている。
請求項3に係る発明は、同じく柱状地盤改良体構築装置において、内方において正方向に回転する正転翼と外方において逆方向に回転する逆転翼とから構成され、前記正転翼と前記逆転翼の回転により掘削土の共回りを防止されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、構築物の建設現場等で発生する建設発生土を柱状地盤改良体の構成材料として活用することが可能となり、産業廃棄物として処理すべき建設発生土の発生量を確実に減少することができる。
また、土と地盤改良材をケーシング内で攪拌混合することにより、混合ムラの少ない高品質の柱状地盤改良体を形成することができる。
さらに、地盤改良材の周辺地盤への侵出が低減され、地下水汚染を極力防止し得て、使用地盤改良材の使用ボリュームを低減することができる。
さらにまた、原地盤の周辺を特殊なケーシングにより圧密することができるから、原地盤の改良度合いを格段に向上することができる。
さらに、ケーシングと攪拌翼は別々に駆動すればよいため、安価な回転駆動装置を利用して施工することができる。
この発明によれば、ケーシング内には掘削土を進入させないので、原地盤の圧密度を大きくすることができ、特に堆積年代の新しい沖積層や2次堆積したような軟弱な粘土やゆるい砂層等、あるいは十分な管理がなされていない埋立層等の軟質の原地盤において柱状地盤改良体を構築するのに好適である。
この発明によれば、原地盤の土や投入された建設発生土が、柱状地盤改良体の上下方向に攪拌され、地盤改良材との混合攪拌が繰り返されることから、上下方向に均一の強度を備えた柱状地盤改良体を構築することがすることができる。
この発明によれば、ケーシング内で地盤改良材と混合攪拌された掘削土の土質が、ケーシングの引上げ時においてケーシング外へ排出しづらいものである場合、容易に排出することができる。
【0012】
この発明によれば、ケーシング及び攪拌手段の占有体積を予め見込んだ上で、それに見合う容積の建設発生土を余分に投入し、柱状地盤改良体の天端が両者を引上げた時点で地表面付近となるようにすることができ、柱状地盤改良体の先端から天端まで均質のものとすることができる。また、本手法により地表面付近まで行う改良を短時間に行うことができる。
この発明によれば、ケーシング内の建設発生土を含む土は、共回りが防止された状態で柱状地盤改良体の先端から頭部に亘って、上下・水平方向に地盤改良材との混合をより一層均一にすることができるため、柱状地盤改良体全体を均質に構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明は、先端に掘削ヘッドが装着されるとともに、周辺地盤を側方に締め固めて圧密するテーパー状部とこれに連続する円筒部とから構成されたケーシングを回転させながら掘削を進め、前記ケーシング頭部が地表面から突出した状態で所定の深度まで掘削した後に、該ケーシング頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土を、その頂面が前記地表面より上方に位置するまで該ケーシング内に投入し、前記建設発生土を含む該ケーシング内の土に地盤改良材を注入しつつ攪拌翼にて混合攪拌して、該攪拌翼と前記ケーシングを地上に引き上げることにより柱状地盤改良体を構築する柱状地盤改良体の構築方法である。
【0014】
掘削する原地盤は地域によりその性状は千差万別であって、粘土質であったり礫質であったりするから、注入する地盤改良材と、ケーシング内に流入する原地盤の掘削土及び後に投入する建設発生土との配合割合は、これらの性状に合わせて適宜調整する。
また、地盤改良材としては、各種ポルトランドセメントを主成分とし、固化対象物に有効に作用する成分を添加している。
添加される有効成分は、スラグ、フライアッシュ等のポラゾン材、アルミナセメント、ジェットセメント等特殊な成分の強度増進材、せっこう、硫酸ソーダ等の水和刺激材など各種ある。
一方、ケーシング内に流入する掘削土の量は、請求項2に係る発明を除き、ケーシング先端に装着された掘削ヘッドの掘削径により決まる。
このため、ケーシングを原地盤に貫入することにより造成される空間の容積は、基本的にはケーシング内径と掘削ヘッドの掘削径により決定付けられる。
そしてこの空間の容積が、ケーシング内に投入される建設発生土と注入される地盤改良材の総量とほぼ等しい。
【0015】
以下、本発明に係る柱状地盤改良体の構築方法の実施の態様を図面に基づいて詳しく説
明する。
図1及び図2は、本発明1と本発明3の施工手順を模式的に示し、図3は、図2の装置の拡大斜視図である。
図4と図5は、ケーシング先端部に形成されるテーパー状部の実施の形態例を示す図である。
図6は、先端部が烏口状に形成された本発明2のケーシングの模式図である。
図7は、ケーシング内の共廻り防止機構を示す図である。
【実施例1】
【0016】
図1に基づいて、1軸回転方式の本発明1について詳細に説明する。
本発明1の柱状地盤改良体を構築する柱状地盤改良体の構築方法は、先端に掘削ヘッド10(図5参照)が装着され、周辺地盤を側方に締め固めて圧密するテーパー状部2とこれに連続する円筒部3とから構成されたケーシング1を1軸回転駆動装置(図示省略)にて回転させながら掘削を進め、ケーシング1内に原地盤の土4を収容しながら所定の深度まで掘削する掘削・圧密工程と、ケーシング1の頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土6を前記ケーシング内に作られた空隙部5に投入する建設発生土投入工程と、該建設発生土を含むケーシング1内の土に地盤改良材を注入しつつ、前記回転駆動装置にて攪拌手段である攪拌翼7を回転駆動して混合攪拌する工程と、該攪拌翼7とケーシング1を地上に引き上げる工程の4工程から成る。
【0017】
掘削・圧密工程に続くケーシング1の頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土6をケーシング1内に作られた空隙部5に投入する建設発生土投入工程においては、ケーシング1の頭部が地表面から突出した状態で前工程の掘削を終了し、また、投入され地盤改良材が注入されて混合攪拌された建設発生土の天端面は、地表面より上方に位置するように建設発生土の投入量と地盤改良材の注入量を調整する。
このようにすることにより、ケーシングと攪拌翼の合計体積に見合う容量の建設発生土と地盤改良材を余分に投入し、それらの投入量の適正化を図り、柱状地盤改良体の頂部の強度を頂部より下方の柱状地盤改良体の強度と同等のものとすることができ、柱状地盤改良体全体の強度を均質化することができる。
【0018】
また、建設発生土6を含むケーシング1内の土4、6に地盤改良材を注入しつつ混合攪拌する工程において、上述の1軸回転駆動装置を用いて攪拌翼7を回転駆動すると同時に、攪拌翼7を上下動する。そして、攪拌翼7の上記動作中においてその先端部近傍位置に形成された地盤改良材吐出孔9から地盤改良材を吐出・注入することにより、土と地盤改良材の混合攪拌をより一層均質にすることができ、ひいては柱状地盤改良体の強度のバラツキを極力小さくすることが可能となる。
【0019】
また、攪拌翼7とケーシング1を地上に引き上げる工程において、攪拌翼7とケーシング1を前後して地上に引き上げるので、攪拌翼とケーシングの両方を時間差を設けて回転しつつ上下動して引上げることができ、土と地盤改良材の混合を完全にし、ケーシング先端部からの内部の土の排出をより円滑にでき、均一に強化された柱状地盤改良体を構築することができる。
【0020】
以上の説明においては、図1に示すとおり、建設発生土をケーシング1内に投入した後に攪拌翼7を挿入し、建設発生土を含む土と地盤改良材を混合攪拌することとしているが、攪拌翼7を掘削作業終了後に挿入し、先ず原地盤の土と地盤改良材を混合攪拌しながら攪拌翼7を引上げ、その後に建設発生土を投入しながら攪拌翼7を上下動しながら引上げつつ地盤改良材と混合攪拌するようにしてもよい。
【0021】
次いで、ケーシングのテーパー状部の実施の態様について説明する。
回転駆動装置にて先端にテーパーをもつケーシング1を回転させながら原地盤に圧入して原地盤を掘削する。
このとき、ケーシング先端部に設けられた開口部から、掘削した原地盤の土がケーシング1内に進入可能としてあり、その周辺の土はケーシング1のテーパー状部によって側方に押しやられて圧密される。
この圧密作用によって、ケーシング周囲の原地盤は密度を上げられて強度を高められるとともに、後の工程において建設発生土を投入出来る空間をケーシング1内に確保している。
ケーシング先端のテーパー状部の構造は、地盤改良条件や地盤条件に応じて適切なものを選択する。
【0022】
一方、ケーシング1内に進入した土は、攪拌翼7によって地盤改良材と混合攪拌され、地盤改良材のその後における固結により強化される。
このケーシング先端部の開口部は、ケーシングの引上げ時において、掘削して進入した原地盤の土と、後の工程にて投入される建設発生土とを原地盤に戻す機構としている。
【0023】
最も一般的なテーパー状部の構造として、テーパー状部2は円筒部3先端に形成されている図4(a)に示されたものがある。
砂質土ではN値,粘性土ではQu(一軸圧縮強度)などの地盤調査結果を判断基準とし、ケーシング外径に対する先端開口部の内径の比率、図中のD1/D2、を最適なものにすることが可能である。
同様の指標をもとに、適切なテーパー角度θを決定することも可能である。
【0024】
このテーパー状部の先端には、図5に示すように、リング状基部に掘削刃が植設された掘削ヘッド10が取付けられている。
このケーシングは、テーパー状部に連通孔14が穿設されているから、ケーシングを地上に引上げるとき、テーパー状部に形成された連通孔14よりケーシング内の掘削土を容易に排出することができる。
なお、掘削中にケーシング内に土が進入することを確実に防止するために連通孔14よりやや大きめの閉塞板15を枢着してもよい。この閉塞板15は、ケーシング圧入時には土圧により自動的に閉じられ、ケーシング引上げ時には土の重量によって自動的に開放される。
また、ケーシング1外周面に連続または不連続の螺旋翼16を形成してもよい。このようにすれば、ケーシングを回転させながらの掘削は、この連続または不連続に形成された螺旋翼により推進力を得つつ行われることから、回転駆動装置の駆動力を小さくして、安定した掘削作業と省エネルギーに資することができる。
【0025】
テーパー状部の他の例としては、図4(b)に示される、テーパー状部がケーシング円筒部先端に2段に形成されている複式テーパー状部のものがある。このテーパー状部によれば、周辺の土の圧密は2回にわたって行われることとなる。この場合、周辺の土の圧密が円滑に行われることから、圧密しづらい土に対する圧密に有効である。
【0026】
テーパー状部のさらに他の例としては、図4(c)に示される、ケーシング先端部の小径の円筒部と大径の円筒部の間にテーパー状部が形成されたものもある。この場合、ケーシング1内への掘削土の誘導を円滑に行い得る。
【実施例2】
【0027】
地盤の条件にもよるが、地盤の圧縮率を上げたい場合には、図6に示すようにケーシング先端を閉塞させて、ケーシング1内に原地盤の土を進入させず、柱状地盤改良体は投入した建設発生土と注入した地盤改良材のみで構成した発明2としてもよい。
この発明の閉塞したテーパー状部は、ケーシングの円錐状先端部を周方向複数に分割した烏口片11から構成され、この烏口片11は特別の開閉機構を設けなくても、ケーシング圧入時は土圧により自動的に閉じられ、ケーシング引上げ時には内部に収容された攪拌翼先端をケーシング先端から突出させることにより、特別の機構を設ける必要なく開放される。もちろん駆動開閉機構を採り入れてもよい。
【0028】
建設発生土の投入と攪拌翼7の挿入のタイミングについては、建設発生土の投入に先立って攪拌翼を挿入しておき、建設発生土を投入しつつ攪拌翼を引上げながら建設発生土と地盤改良材の混合攪拌を行えば、短時間かつ効率的な混合攪拌に有利である。
また、攪拌翼を挿入する以前に建設発生土を投入しておくときは、攪拌翼を上下動させつつケーシング内に進入させつつ混合攪拌するとよい。
さらに、ケーシング1の圧入と攪拌翼7の挿入、並びに、攪拌翼7とケーシング1の引上げは同時に行われることはないから、1軸回転装置を用いて行うとよい。
この発明によれば、ケーシング内には原地盤の掘削土を進入させないことから、ケーシング周辺の土を強く圧密することができるとともに、ケーシング内には掘削土は存在していないことから、現場発生土を大量に処理することができ、また、ケーシング先端部を開放できるので、ケーシング引上げ時の土の排出を円滑に行い得る。
【実施例3】
【0029】
攪拌翼による攪拌方法の例としては、掘削土を三次元的に攪拌する方法がある。
具体的には、攪拌翼を回転軸回りに回転する回転装置と、前記回転軸を同時に上下動する上下動装置とから構成される三次元攪拌機構により攪拌する方法がある。
また、攪拌翼を回転軸回りに回転する回転装置と、前記回転軸に直交する2本の支持部材が固定され、表面に3〜4本の攪拌棒が植設されたリングを支持部材に回動自在に枢着された三次元攪拌機構により攪拌する方法がある。
これらの方法によれば、土と地盤改良材の混合攪拌を柱状地盤改良体全体に亘って均一にして、結果的には均一の強度を保持した柱状地盤改良体を構築造成することができる。
【0030】
さらに、柱状地盤改良体の先端部から頭部に亘って、水平及び深度方向にさらに強度を均一にするために、建設発生土を含むケーシング内の土を、軸心部において上方に移動させるとともに壁部において下方に移動させることにより、土のケーシング軸方向の対流を発生させ、この対流中の土に対しケーシングの上方位置及び下方位置にて地盤改良材を注入して攪拌する発明3の方法がある。
【0031】
この方法は、図2、図3に示される攪拌装置20を用いて実施される。
図示を省略する駆動装置により回転駆動されるロッド17には、攪拌手段としての直径がケーシング内径の約半分程度のスクリュー18が取り付けられている。このスクリュー18の終端縁の近傍は、スクリューの捻りが形成されない平坦部とされ、終端縁はロッド17の径方向よりも後方に傾いた線に沿って形成されている。
ケーシング内の土は、このスクリュー18によってケーシング内をロッド17に沿って上方へ移動し、スクリュー18終端縁に形成された案内板19によってケーシング軸心寄り位置から壁方向に案内される。
この案内板19は、図3に示されるように、上記平坦部の径方向より後傾したスクリュー終端縁がロッド17方向に折り曲げ形成された板で、分散された状態の土等をスクリューの下段に落とさないで、土等をケーシングとスクリューの間、すなわち、ケーシング壁方向に案内するものである。これにより、ケーシング1軸心部の土の上昇流は、ケーシング上端近傍位置において、土の自重により自由落下する下降流に変更される。
一方、ケーシング先端位置では、土がスクリュー18のロッド17に沿って上方へ移動されることから、ケーシング軸心寄り位置において空洞が形成され、この空洞に上方から下降してきた周辺部位の土が供給されることとなる。
これにより、ケーシング先端部から上端部近傍に至るケーシング内における土の上下方向の対流が発生する。
【0032】
9は、ロッド17上端と先端の近傍に設けられた地盤改良材吐出孔である。
ここで吐出孔を下端近傍のみに設けた場合、地盤改良材により流状体化した土等は比重が大きくなり、ケーシング内の下端に溜まりやすくなり、ケーシング内の上端まで上下対流が生じない可能性がある。反対に吐出孔を上端近傍のみに設けた場合、ケーシング下端付近で、土等がケーシングとスクリューの間で共回りして混合攪拌されないことが考えられる。
そこで本実施の形態では、これらを考慮し、最小限上端及び下端近傍に吐出孔9と攪拌翼7を設けることとしている。
【0033】
攪拌手段を構成する攪拌機構21は、ロッド先端部とロッド上端部に設けられているスクリュー18の間において、ロッド17に段違い状に直交して設けられ、ケーシング内壁にほぼ達する長さを有する2本の攪拌翼7と、その表面の2箇所に植設された2〜4本の攪拌棒22とから構成されている。
23は、この攪拌機構21に対応して、攪拌翼7軸方向において2個所の攪拌棒22の間に望む位置にスクリュー18の上下面に取り付けられ、ロッド方向に伸びる共回り防止具である。
この攪拌機構21と共回り防止具23は、ロッド17の先端部及び上端部近傍において、攪拌棒22と共回り防止具23の協同作業により、スクリュー18の間に土が挟まって土とスクリューが共回りすることを防止しつつ、土塊を破砕しながらケーシング内の土と地盤改良材とを水平方向に混合攪拌する。
【0034】
上記した攪拌棒22は、攪拌翼7に固定する方式、回動自在に枢着する方式、回転駆動する方式の3方式にて支持することがあり得る。
しかるに、粘性土等はスクリュー18、攪拌翼7等に付着し、それが肥大化し、攪拌翼7と攪拌棒22と共回り防止具23が一体化し、攪拌を阻害する恐れがある。また、粘性土等の塊を砕くためにも、強制的に攪拌することが効果的であって望ましい。
よって本実施の形態では、回転駆動式を採用することとしている。
【0035】
攪拌棒22を回転駆動するための駆動機構は、図示を省略するが、ロッド17は内外2重管とし、内管を固定管とし、スクリュー18が固定された外管を回転させる。
無回転の内管の表面にラックを形成し、回転する外管の内面にピニオンを配置し、ピニオンに伝達された駆動力を攪拌棒22の回転に利用すればよい。
具体的には、該ピニオンを攪拌棒22を取付けた攪拌翼7の基端部に固定するとともに、攪拌翼をロッド外管に突設形成したスリーブに挿通させる構造を採用している。
上述の上下の吐出孔9に地盤改良材を供給するスラリー輸送管(図示省略)は、上記外管の内側表面に固定すればよい。
【0036】
攪拌翼による攪拌は、掘削土が攪拌翼と共回りすることを防止しつつ行うことが重要である。
他の共回り防止機構としては、回転軸に固定された固定翼と同軸に回転自在に枢着された自由翼とから構成し、図7に示すように、この自由翼先端に摩擦係数の大きい素材12、例えばゴム材、を取り付けておき、このゴム材をケーシング1内壁に摺接させるか(図7(a))、この自由翼をケーシング内に設けられたストッパー13に当接させて、自由翼の回転を規制する(図7(b))ことにより掘削土の共回りを防止する手法もある。
あるいは、共回り防止機構を内方において正方向に回転する正転翼と外方において逆方向に回転する逆転翼とから構成し、正転翼と逆転翼の回転により掘削土の共回りを防止することもできる。
このようにすれば、ケーシング内での土と地盤改良材との混合攪拌を効率的に行うことができる。
【0037】
さらには、建設発生土と地盤改良材の混合攪拌は、ケーシング内に投入した後に実施しているが、地上において予め両者を混合攪拌しておくことも可能である。
このとき建設発生土が地上で流動化するまで軟化しているときは、流動化処理が施された後、ケーシング1頭部からケーシング内に挿入したホースまたは攪拌手段の回転軸の地盤改良材吐出孔9から注入されることもある。
このようにすることにより、より品質の高い柱状地盤改良体を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明1の柱状地盤改良体の構築方法の工程を模式的に示す概略工程図である。
【図2】本発明2の柱状地盤改良体の構築方法の工程を模式的に示す概略工程図である。
【図3】図2の拡大斜視図である。
【図4】ケーシング先端部の構造例を示す模式図であり、(a)はテーパー状部が円筒部先端に形成された一般的なケーシング、(b)はテーパー状部がケーシング先端部の小径の円筒部と大径の円筒部の間に形成されたケーシング、(c)はテーパー状部が円筒部先端に2段に形成された複式テーパー状部を有するケーシングである。
【図5】図4(a)の拡大斜視図である。
【図6】先端部が烏口状に形成された本発明3のケーシングの模式図である。
【図7】ケーシング内の共廻り防止機構を示す図である。
【図8】特許文献1に記載された従来技術の説明図である。
【図9】従来の粉状の地盤改良材と空気をロッド先端から噴出して攪拌翼付きの攪拌棒を用いて機械的に地盤と攪拌し空気を排出する深層地盤改良工法のイメージ図である。
【図10】従来のスラリー状の地盤改良材をロッド先端から噴出して攪拌翼付きの攪拌棒を用いて機械的に地盤と攪拌する深層地盤改良工法のイメージ図である。
【図11】細径の中空ロッド先端から高圧でスラリー状の地盤改良材を吐出しロッドを回転させて地盤を噴射攪拌する深層地盤改良工法のイメージ図である。
【符号の説明】
【0039】
1 ケーシング
2 ケーシングのテーパー部
3 ケーシングの円筒部
4 原地盤の土
5 空隙部
6 建設発生土
7 攪拌翼
8 掘削ビット
9 地盤改良材吐出孔
10 掘削ヘッド
11 烏口片
12 摩擦係数の大きい素材(ゴム材)
13 ストッパー
14 連通孔
15 閉塞板
16 螺旋翼
17 ロッド
18 スクリュー
19 案内板
20 攪拌装置
21 攪拌機構
22 攪拌棒
23 共回り防止具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に掘削ヘッドが装着されるとともに、周辺地盤を側方に締め固めて圧密するテーパー状部とこれに連続する円筒部とから構成されたケーシングを回転させながら掘削し、所定の深度まで掘削した後に、ケーシング頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土を前記ケーシング内に投入し、前記建設発生土を含む該ケーシング内の土に地盤改良材を注入しつつ攪拌手段にて混合攪拌して、該攪拌手段を地上に引き上げ、次いで前記ケーシングを地上に引き上げることにより柱状地盤改良体を構築する柱状地盤改良体構築装置において、
駆動装置により回転駆動されるロッドに直径が前記ケーシングの内径の半分程度のスクリューが取り付けられ、該スクリューの終端縁がロッド方向に折り曲げ形成された案内板が土を前記ケーシングの壁方向に案内することにより、前記ケーシングの軸心部の土の上昇流を前記ケーシングの上端近傍位置において土の自重により自由落下する下降流に変更して、前記ケーシングの先端部から上端部近傍に至るケーシング内における土の上下方向の対流を発生させることを特徴とする柱状地盤改良体構築装置。
【請求項2】
先端に掘削ヘッドが装着されるとともに、周辺地盤を側方に締め固めて圧密するテーパー状部とこれに連続する円筒部とから構成されたケーシングを回転させながら掘削し、所定の深度まで掘削した後に、ケーシング頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土を前記ケーシング内に投入し、前記建設発生土を含む該ケーシング内の土に地盤改良材を注入しつつ攪拌手段にて混合攪拌して、該攪拌手段を地上に引き上げ、次いで前記ケーシングを地上に引き上げることにより柱状地盤改良体を構築する柱状地盤改良体構築装置において、
回転軸に固定された固定翼と同軸に回転自在に枢着された自由翼とから構成され、
前記自由翼先端に摩擦係数の大きい素材が取り付けられて該素材が前記ケーシングの内壁に摺接され、または、前記自由翼が前記ケーシング内に設けられたストッパーに当接されて、前記自由翼の回転が規制されることにより掘削土の共回りが防止されていることを特徴とする柱状地盤改良体構築装置。
【請求項3】
先端に掘削ヘッドが装着されるとともに、周辺地盤を側方に締め固めて圧密するテーパー状部とこれに連続する円筒部とから構成されたケーシングを回転させながら掘削し、所定の深度まで掘削した後に、ケーシング頭部より構造物建設に伴って発生する建設発生土を前記ケーシング内に投入し、前記建設発生土を含む該ケーシング内の土に地盤改良材を注入しつつ攪拌手段にて混合攪拌して、該攪拌手段を地上に引き上げ、次いで前記ケーシングを地上に引き上げることにより柱状地盤改良体を構築する柱状地盤改良体構築装置において、
内方において正方向に回転する正転翼と外方において逆方向に回転する逆転翼とから構成され、前記正転翼と前記逆転翼の回転により掘削土の共回りを防止されていることを特徴とする柱状地盤改良体構築装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−122326(P2012−122326A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−21656(P2012−21656)
【出願日】平成24年2月3日(2012.2.3)
【分割の表示】特願2008−222716(P2008−222716)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】