柱補強用ブロック
【課題】 ブロックの肉厚を薄くして軽量化でき、既設柱の耐震補強を容易に施工できるとともに、補強された既設柱の周囲の利用スペースを広げることができる補強用ブロックを提供することにある。
【解決手段】 この柱補強用ブロック51は、上面14、底面11、上下の側面12a,12bおよび左右の側面13a,13bを有するブロック本体10と、このブロック本体10の左右の側面13a,13bのそれぞれに設けられた補強鋼板3,3とを備える。上記上面14は、平面視平行四辺形をなすと共に、上記左右の側面13a,13bにわたって円弧をなす。上記底面11は、平行四辺形をなす平坦形状である。上記上下の側面12a,12bは、略三日月状で平坦である。
【解決手段】 この柱補強用ブロック51は、上面14、底面11、上下の側面12a,12bおよび左右の側面13a,13bを有するブロック本体10と、このブロック本体10の左右の側面13a,13bのそれぞれに設けられた補強鋼板3,3とを備える。上記上面14は、平面視平行四辺形をなすと共に、上記左右の側面13a,13bにわたって円弧をなす。上記底面11は、平行四辺形をなす平坦形状である。上記上下の側面12a,12bは、略三日月状で平坦である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄筋コンクリート建造物における既設柱を地震などに対して補強するために用いられる柱補強用ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱補強用ブロックとして、出願人が提案したコンクリートブロックがある(例えば、特開2003−328566号公報(特許文献1)参照)。このコンクリートブロックは、平行四辺形の平面をなす底面と、この底面に対向する円弧状の上面と、底面と上面の間の4つの側面で構成されている。
【0003】
そして、このコンクリートブロックを、正方形断面の既設柱の下端から周方向に順次セメントペースト等で張り付けつつ積み重ね、既設柱の外周全長を覆って、この既設柱を円柱状に形成した後、コンクリートブロックの上面に形成されて一連の螺旋をなす溝に、小径のスパイラル状の束に予め加工した鋼線を人手で巻き付けて、既設柱とコンクリートブロックを強固に一体化するものである。
【0004】
しかしながら、上記コンクリートブロックは、コンクリートのみからなるため、強度の関係から肉厚を厚くする必要があるうえ、既設柱の軸を中心とする所定半径の円周面で既設柱を覆うため、柱の断面方向の面積が大きくなって、既設柱で構成される構造物の内部空間が狭くなる。駅舎内のコンコースや駐車場などの支柱では、利用スペースを狭めるうえ、狭いスペースで施工も難しくなるという問題を生じる。また、コンクリートブロックが厚肉なため、重量が増えて、運搬作業、揚重作業や取付作業の効率が上がらない。
【特許文献1】特開2003−328566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、ブロックの肉厚を薄くして軽量化でき、既設柱の耐震補強を容易に施工できるとともに、補強された既設柱の周囲の利用スペースを広げることができる補強用ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の柱補強用ブロックは、
平面視平行四辺形をなすと共にこの平行四辺形の一対の対向辺にわたって円弧をなす上面と、
上記上面に対向すると共に平行四辺形をなす平坦な底面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する略三日月状で平坦な一方の一対の側面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する他方の一対の側面と
を有するブロック本体と、
このブロック本体の上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面の内の少なくとも一つの一対の側面に設けられた補強鋼板と
を備えることを特徴としている。
【0007】
ここで、上記ブロック本体は、例えば、コンクリートまたはモルタルで形成される。上記補強鋼板は、上記一対の側面の間にわたって設けられておらず、上記ブロック本体の上面の少なくとも中央部は、露出している。また、上記ブロック本体の上面と上記補強鋼板の上面とは、滑らかに連続している。また、上記補強鋼板は、例えば、上記側面の全長にわたって設けられてもよく、または、上記側面の両端に設けられてもよい。
【0008】
この発明の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体と、このブロック本体の少なくとも一対の側面に設けられた上記補強鋼板とを備えるので、コンクリートのみからなるブロックに比して、強度が大きく、肉厚を薄くできる。
【0009】
このように、上記柱補強用ブロックの肉厚を薄くできるので、上記柱補強用ブロックで外周を補強された既設柱の周囲の利用スペースを広げることができる。また、薄肉化により上記補強用ブロックを軽くできて、運搬作業、揚重作業や取付作業の効率を上げることができる。
【0010】
また、上記補強用ブロックの上面に、この上面の円弧方向に、鋼線を巻き付け、地震時に、この鋼線が、上記補強用ブロックに対して、大きな支圧力を与えた場合、上記補強用ブロックの厚さが薄くても、上記ブロック本体の側面の開放面を上記補強鋼板で補強しているので、上記補強用ブロックは、上記支圧力に対して、破壊しない。
【0011】
また、上記ブロック本体の上面の少なくとも一部は、露出しているので、地震で既設柱に亀裂が入ったときには、この亀裂が、(例えばコンクリートで形成された)上記ブロック本体の上面(露出面)に現れ、柱の破壊状態(状況)を観察(目視)できる。
【0012】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、
上記補強鋼板は、上記他方の一対の側面に設けられ、
上記他方の一対の側面は、上記上面の曲面と連続して外方に凸な曲面をなし、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有する。
【0013】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記補強鋼板の上記アンカは、上記ブロック本体に埋設されているので、上記補強鋼板を上記ブロック本体の他方の一対の側面に確実に固定できる。また、上記補強鋼板によって、上記鋼線の支圧力に対して、上記ブロック本体の角(隅)の欠けを防止できる。
【0014】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、
上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面に設けられ、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有する。
【0015】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記補強鋼板の上記アンカは、上記ブロック本体に埋設されているので、上記補強鋼板を上記ブロック本体の一方の一対の側面に確実に固定できる。また、上記補強鋼板によって、上記鋼線の支圧力に対して、上記ブロック本体の角(隅)の開放面側の欠けを防止できる。
【0016】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面を囲んでいる。
【0017】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記補強鋼板は、上記ブロック本体の全側面を囲んでいるので、上記鋼線の支圧力に対して、上記ブロック本体の角(隅)や開放面側の角(隅)の欠けを一層確実に防止できる。また、ブロックの運搬時にも、ブロックの角が欠けるおそれがなくて、取り扱いやすい。また、上記補強鋼板を上記ブロック本体に埋設して固定する必要がなくて、上記補強鋼板にアンカ等が不要になる。
【0018】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、上記ブロック本体の上面の近傍に、メッシュ筋を埋設している。
【0019】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体の上面の近傍に、メッシュ筋を埋設しているので、上記ブロック本体の強度を一層向上させることができる。
【0020】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、上記ブロック本体の上面に、上記一方の一対の側面に平行な方向に延びると共に上記一方の一対の側面に垂直な方向に間隔をもって配置された複数の凸部を設けている。
【0021】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体の上面に複数の凸部を設けているので、隣り合う上記凸部の間に溝が形成される。すなわち、上記ブロック本体は、上記一方の一対の側面に平行な複数の溝を有する。なお、この溝の底は、上記ブロック本体の上面である。
【0022】
このように、上記ブロックによって既設柱の四周全長を覆って、上記既設柱を円柱状に形成したとき、外周面になる上記ブロック本体の上面に、連続する螺旋状の溝が作られる。したがって、この溝にスパイラル状に予め加工した鋼線を巻き付ければ、巻き付け間隔を正確に確保でき、さらに、鋼線のずれや外れを防止でき、既設柱を確実に補強できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体の少なくとも一対の側面に上記補強鋼板を設けているので、ブロックの肉厚を薄くして軽量化でき、既設柱の耐震補強を容易に施工できるとともに、補強された既設柱の周囲の利用スペースを広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1Aは、この発明の柱補強用ブロックの一実施形態である平面図を示している。図1Bは、この柱補強用ブロックの下側面図を示し、図1Cは、この柱補強用ブロックの右側面図を示している。
【0026】
この柱補強用ブロック51は、上面14、底面11、上下の側面12a,12bおよび左右の側面13a,13bを有するブロック本体10と、このブロック本体10の左右の側面13a,13bのそれぞれに設けられた補強鋼板3,3とを備える。
【0027】
上記上面14は、平面視平行四辺形をなすと共に、この平行四辺形の一対の対向辺(左右の側面13a,13b)にわたって円弧をなす。上記底面11は、上記上面14に対向すると共に、平行四辺形をなす平坦形状である。
【0028】
上記上下の側面12a,12b(一方の一対の側面)は、上記上面14と上記底面11に連なると共に対向する。この上下の側面12a,12bは、略三日月状(かまぼこ形)で平坦である。
【0029】
上記左右の側面13a,13b(他方の一対の側面)は、上記上面14と上記底面11に連なると共に対向する。上記左右の側面13a,13bは、上記上面14の曲面と連続して外方に凸な曲面をなす。
【0030】
上記補強鋼板3は、上記左右の側面13a,13bに沿って形成された帯状の本体部31と、この本体部31の内面から突出する2つのアンカ32,32とを備える。このアンカ32は、上記本体部31の内面に溶接手段等で一体に固着されている。このアンカ32は、上記左右の側面13a,13bの両端部のそれぞれで上記ブロック本体10に埋設されている。
【0031】
上記ブロック本体10は、例えば、コンクリートまたはモルタルで形成される。上記補強鋼板3は、左右の側面13a,13bの間にわたって設けられておらず、上記ブロック本体10の上面14の中央部は、露出している。上記補強鋼板3は、上記左右の側面13a,13bの近傍の上記上面14を覆う。
【0032】
上記ブロック本体10の上面14に、上記上下の側面12a,12bに平行な方向に延びると共に上記上下の側面12a,12bに垂直な方向に間隔をもって配置された複数の凸部17を設けている。この凸部17の上面は、上記上面14に沿った円弧をなす。
【0033】
すなわち、隣り合う上記凸部17,17の間に溝15が形成される。つまり、上記ブロック本体10は、上記上下の側面12a,12bに平行な複数の溝15を有する。この溝15の底は、上記ブロック本体10の上面14である。そして、上記ブロック本体10の上面14(上記溝15の底)と上記補強鋼板3の上面とは、滑らかに連続している。なお、上記溝15の形状は、弧状でなくても凹部を形成する形状であればよい。
【0034】
上記補強鋼板3の上記アンカ32は、平面視、最も外側(最も上下)の溝15の外側から内側まで延びている。すなわち、上記アンカ32は、上記左右の側面13a,13bに対して傾斜する方向に延びている。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、上記左右の側面13a,13bの全長にわたる長さでなく、両端部のアンカ32を含む上記側面13a,13bの両端にあって、かつ、最側端の溝15の位置に達する長さであればよい。
【0035】
上記ブロック本体10の上面14の近傍に、メッシュ筋16を埋設している。このメッシュ筋16は、上記ブロック本体10の全面にわたって設けてもよく、上記ブロック本体10の強度を向上させることができる。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、ボルト孔33を有する。このボルト孔33は、(後述する)型枠に上記補強鋼板3を固定するためのボルトを挿通するために用いられ、さらに、上記ブロック51を(後述する)既設柱20に張り付ける際に上記ブロック51を吊り上げるためのボルトを挿通するために用いられる。
【0036】
この柱補強用ブロック51の製造方法を説明すると、(図示しない)型枠に、上記アンカ32を備えた上記補強鋼板3,3と上記メッシュ筋16とを設置して、この型枠にコンクリートまたはモルタルを流し込んで上記ブロック本体10を形成し、その後、上記型枠を外して、上記柱補強用ブロック51を製造する。このように、上記補強鋼板3の上記アンカ32および上記メッシュ筋16を上記ブロック本体10に埋設することができる。なお、上記型枠には、上記凸部17に対応する溝が設けられている。
【0037】
図2と図3は、上記柱補強用ブロック51を、正方形断面の既設柱20の四周面に張り付けて補強した状態を示す正面図および平面図である。上記ブロック51は、左右の補強鋼板3,3の間の幅が既設柱20の幅よりも小さくしてあり、さらに上下の側面12a,12bの間の高さも既設柱20の幅よりも小さくなっている。このブロック51は、底面11を既設柱20の周面21の下部にセメントペーストによって接着しつつ、周方向に順次張り付けられ、次いで既に張り付けられた柱補強用ブロック51上に貧配合モルタル23などを充填した離間部22を介してブロック51を積み重ねるとともに同様に既設柱20の周面21に周方向に順次張り付けられて、既設柱20の外周を基礎部20aから上に向かって螺旋状に覆っていくことになる。但し、既設柱20の上下端は、補強柱の曲げ剛性の増加を抑えて、地震荷重で柔軟に撓みうるように、ブロック51で覆っていない(図2参照)。なお、図2では,上下のブロック51,51の間に貧配合モルタル23を挟んでいるが、この貧配合モルタル23を省略して、ブロック51の上下の側面12a,12bの間に隙間22を設けるだけでもよい。
【0038】
上記ブロック51の上下の側面12a,12bに平行な複数の溝15は、上記ブロック51が既設柱20の四周を覆ったとき、既設柱20の4隅の隙間22aを介して周方向に隣接するブロック51,51の溝15と円滑に螺旋状に連なる。なお、図2では、一つのブロック51当たり4つの溝15を示している。
【0039】
上記ブロック51は、図3に示すように、既設柱20を覆ったとき、上記凸部17である円弧面の外面は、ブロック51で補強された既設柱20の軸Cを中心とする外接円20bよりも内側になる。これは、ブロック51が、上記補強鋼板3のアンカ32および上記メッシュ筋16を埋設したコンクリートまたはモルタルで作られていて、コンクリートのみで作られたものに比して肉厚を薄くして軽量化を図っても、同等の強度が得られるからであり、コンクリートのみからなるブロックでは、上記外接円20bに相当する肉厚が必要となる。
【0040】
したがって、このブロック51で補強された既設柱20では、周囲の利用スペースを広げることができ、特に駅舎のコンコースや駐車場内などの既設柱20の補強に有利である。さらに、ブロックの薄肉化および軽量化により、作業能率が向上でき、狭い作業空間でも施工が可能になる。つまり、上記ブロック51の運搬作業、揚重作業や取付作業の効率を上げることができる。
【0041】
図4は、既設柱20の四つの周面21を覆うブロック51の上記溝15およびこの溝15に嵌め込んで巻き付けたスパイラル状の鋼線24を示す展開図である。
【0042】
この溝15は、図4の左端に示すように、正弦波状であり、最初の周面21aの下部に張り付けたブロック51の下端から始まって、既設柱20の角の隙間22aを介して、順次右隣りの周面21b,21c,21dに張り付けた3つのブロックの溝15に連なって、既設柱を一周した後、再び周面21aのブロック(図4の右端に重複して一部を示す)の1つ上の溝に連なり、これを繰り返して既設柱の上端に至る。この螺旋状の溝15に図示の如く鋼線24が巻き付けられる。
【0043】
図4で平行四辺形の上下辺として示されるブロック51の上下の側面12a,12b、つまりこれと平行に延びる溝15は、図4から判るように、既設柱の4つの周面21a〜21dを1周すると、溝15の1ピッチpの距離だけ上昇する。ブロック51を横切る1本の溝15(例えば周面21aの下端)について言えば、溝15の上昇距離は、既設柱の1/4周に相当するp/4から柱角の間隔に相当する上昇分αを減じた値(p/4−α)となる。したがって、ブロック51の上下の側面12a,12bの傾きも、図1A中に示すように、平行四辺形の左右辺の左辺13aの下端から右辺13bに下ろした垂線の足と、右辺13bの下端との距離が(p/4−α)になるような傾きとなる。上記隙間の間隔に相当する上昇分αとは、図3の柱角の隙間22aを溝15がブロック51におけると同じ傾きで進んだ場合の上昇距離をいう。
【0044】
溝15に巻き付けられる鋼線24は、既設柱20の周りを1周する溝15の直径より小さい直径(望ましくは既設柱20の断面の対角線の長さの80%の直径)のスパイラル状の束に予め加工されていて、油圧シリンダ等の引張り機械を用いることなく、人手によって巻き付けられる。このような螺旋状に束ねられた鋼線24を既設柱に巻き付ける方法については、出願人に帰属する特許第149647号に詳しく述べられているので、ここでは簡単に説明するに留める。
【0045】
即ち、スパイラル状の束に加工された鋼線24を、束のループ面が既設柱20の周面21に平行になるよう鉛直に配置し、巻き始めとなる直角に曲げた始端24a(図4参照)を周面21aの下端に設けた穴(図示せず)に差し込んで固定し、鋼線24の束を解ける方向に回転させつつ既設柱20の周りに巡らせて、解きながら1ループずつ既設柱20に巻き付けて、鋼線24を螺旋状の溝15に嵌め込んで順次上方へ巻き付けていく。最後に、直角に曲げた終端24b(図2参照)を周面21の上端に設けた穴に差し込んで固定して巻き付けを終了する。鋼線24の端部の固定方法は、既設柱20の周面21に固定するのではなく、鋼線24をブロック51の外周に重ねて巻き付けて重なった部分をクリップで固定するようにしてもよい。
【0046】
この方法は、鋼線24のスパイラル状の束をループ面内でループを解く方向に曲げて大きく開くのでなく、鋼線24のスパイラル状の束を既設柱20の周りに巡らせながら鋼線24をその軸の周りに僅かに捩じるだけの弾性変形範囲で巻き付けが行えるので、従来のように油圧シリンダ等の大掛かりな機械を要さず、人力のみで容易かつ迅速に施工することができる。なお、鋼線24は、棒鋼でも撚線でもよい。
【0047】
上記ブロック51を用いた既設柱20の補強方法について次に述べる。
【0048】
まず、既設柱20の下端外周の基礎部20a上に、貧配合モルタル23を所定厚さで塗るとともに、既設柱20の四つの周面21またはブロック51の底面11の少なくともいずれかにセメントペーストを塗った後、ブロック51の下側面12bを貧配合モルタル23に載せつつ底面11を各周面21に当接させて、既設柱20の外周に4つのブロック51を張り付ける。
【0049】
次に、張り付けた各ブロック51の上側面12aに貧配合モルタル23を充填した厚さ1〜2cmの離間部22を設け、この上に4つのブロック51を積み重ねつつ同様に各周面21に張り付けていく。ここで、ブロック51は、図4に示すように左右辺と上下辺が直交しない平行四辺形であるので、下端の貧配合モルタル23の上面および上下ブロック間の貧配合モルタル23を充填した離間部22は、水平面に対して傾いている。
【0050】
既設柱20の四つの周面21の全長に亘るブロック51の張り付けが終わると、既設柱20の周りを1周するブロック51の螺旋状の溝15の直径より僅かに小径のスパイラル状の束に予め加工された鋼線24を、既に述べた人手による方法で螺旋状の溝15に嵌め込んで、全ブロック51に亘る巻き付けを終了する。この鋼線24の巻き付け方法は、既述の如く油圧シリンダ等の大掛かりな機械を要さず、人力のみで容易かつ迅速に施工できるという利点を有する。
【0051】
なお、既設柱20の上下端は、既に述べた曲げ剛性を過大にしないという理由からブロック51で覆わない。また、巻き付けた鋼線24は、溝15に密に嵌合していて、ずれることがないから、従来のように鋼線24の表面全体にモルタルを塗布する必要もない。鋼線24の始端24aと終端24bは、図3と図4で述べたように、既設柱20の周面21に設けた穴に差し込んで固定するが、これに代えて、鋼線24同士を結束線などで結んで固定してもよい。さらに、既に述べたように、上下に積み重ねたブロック51の間に適宜間隔を設ければ、貧配合モルタル23は、省略しても問題はない。
【0052】
こうして補強された既設柱20は、地震の際に次のように挙動して、地震の振動エネルギを効果的に吸収する。
【0053】
既設柱20は、従来のように縦長で一体物の4枚のPC板を四周面に張り付けるのではなく、図3と図4に示すように、縦寸法の短い多数のブロック51を、適宜間隔を設けながら積み上げて張り付けて補強され、既設柱20の角の周面が露出した隙間22aが生じる。
【0054】
したがって、地震による曲げ荷重が加わった場合、既設柱20は、ブロック51の積み重ね部の貧配合モルタル23が破壊して開口し、過大曲げ荷重が加わる前に図5に示すように変形する。つまり、この実施形態の補強された柱20は、従来と異なり、曲げ剛性が大きくなり過ぎて変形能やエネルギ吸収能が低下することがなく、結果的に耐震性が向上するのである。また、周方向に隣接するブロック51,51は、隙間22aによって互いに当接しないので、当接箇所が地震による既設柱20の変形で互いに衝突して欠け落ちることもない。また、隙間22aを設けているので、地震によって既設柱が損傷した場合、その損傷程度を観察できる。
【0055】
既設柱20は、螺旋状の溝15の直径よりも僅かに小径のスパイラル状に予め加工した鋼線24を、僅かに捩じりながら拡径して巻き付けるので、油圧シリンダ等を用いずとも、鋼線24が弾性力でブロック51に密着するとともに、巻き付いた鋼線24が既設柱20の剪断耐力を大幅に向上させる。つまり、この実施形態の補強された柱20は、曲げ剛性を過大にすることなく、剪断耐力を高めているので、結果的に靭性が向上し、地震エネルギを効果的に吸収して既設柱20を強固に補強することができるのである。
【0056】
さらに、この実施形態のブロック51は、既に述べたように、出願人が以前提案したコンクリートのみからなるブロックと異なり、上記ブロック本体10の左右の側面13a,13bに上記補強鋼板3を設けているので、肉厚を薄くしても、強度を大きくできる。さらに、上記ブロック本体10内に上記メッシュ筋16を埋め込んでいるので、一層薄肉にできる。
【0057】
このように、上記ブロック51の肉厚を薄くできるので、上記ブロック51で外周を補強された既設柱20の周囲の利用スペースを広げることができる。また、薄肉化により上記ブロック51を軽くできて、運搬作業、揚重作業や取付作業の効率を上げることができる。
【0058】
また、上記ブロック51の上面14に、この上面14の円弧方向に、鋼線24を巻き付け、地震時に、この鋼線24が、上記ブロック51に対して、大きな支圧力を与えた場合、上記ブロック51の厚さが薄くても、上記ブロック本体10の左右側面13a,13bの開放面を上記補強鋼板3で補強しているので、上記ブロック51は、上記支圧力に対して、破壊しない。つまり、上記補強鋼板3によって、上記鋼線24の支圧力に対して、上記ブロック本体10の角(隅)の欠けを防止できる。
【0059】
また、上記補強鋼板3の上記アンカ32は、上記ブロック本体10に埋設されているので、上記補強鋼板3を上記ブロック本体10の左右側面13a,13bに確実に固定できる。さらに、上記アンカ32は、上記ブロック本体10に鋼線24を一定間隔に複数本巻いたときの一番外側の鋼線24が巻かれる位置よりも中央部まで、斜め方向に延びているので、上記アンカ32の上記ブロック本体10からの抜けを確実に防止できる。
【0060】
また、上記ブロック本体10の上面14の少なくとも一部は、露出しているので、地震で既設柱20に亀裂が入ったときには、この亀裂が、コンクリートまたはモルタルで形成された上記ブロック本体10の上面14(つまり、露出面)に現れて、柱の破壊状態(状況)を観察(目視)できる。
【0061】
(第2の実施形態)
図6A、図6Bおよび図6Cは、この発明の柱補強用ブロックの第2の実施形態を示している。この第2の実施形態のブロック52は、上面14に、上記第1の実施形態の上記凸部17(つまり、上記溝15)がない点を除いて、上記第1の実施形態のブロック51と同じ構成である。
【0062】
このように、上記ブロック52は、上記上面14に凸部がないので、上記ブロック52を一層軽量化および薄肉化でき、上記ブロック52の製造が容易になると共に、施工時の上記ブロック52の破損を容易に防止できる。なお、その他の構造は、上記第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0063】
上記アンカ32は、上記ブロック本体10に鋼線24を一定間隔に複数本巻いたときの(仮想線にて示される)最も外側の鋼線24が巻かれる位置よりも中央部まで、斜め方向に延びている。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、上記左右の側面13a,13bの全長にわたる長さでなく、両端部のアンカ32を含む上記側面13a,13bの両端にあって、かつ、(仮想線にて示される)最も外側の鋼線24が巻かれる位置を越える長さであればよい。
【0064】
(第3の実施形態)
図7A、図7Bおよび図7Cは、この発明の柱補強用ブロックの第3の実施形態を示している。この第3の実施形態のブロック53では、上記左右の側面13a,13bの代わりに上記上下の側面12a,12bに補強鋼板3が設けられている点を除いて、上記第2の実施形態のブロック52と同じ構成である。
【0065】
この補強鋼板3は、上記上下の側面12a,12bの両端部および中央部で、上記ブロック本体10に埋設されたアンカ32を有する。このアンカ32は、上記ブロック本体10に鋼線24を一定間隔に複数本巻いたときの(仮想線にて示される)最も外側の鋼線24が巻かれる位置よりも中央部まで、上記左右の側面13a,13bと平行に延びている。上記補強鋼板3は、上記上下の側面12a,12bの近傍の上記上面14を覆っておらず、上記上面14の全部は、露出している。
【0066】
このように、上記補強鋼板3の上記アンカ32は、上記ブロック本体10に埋設されているので、上記補強鋼板3を上記ブロック本体10の上記上下の側面12a,12bに確実に固定できる。また、上記補強鋼板3によって、上記鋼線24の支圧力に対して、上記ブロック本体10の角(隅)の欠けを防止できる。なお、その他の構造は、上記第1の実施形態および上記第2の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、上記上下の側面12a,12bの全長にわたる長さでなく、上記側面12a,12bの両端にあって、かつ、両端部のアンカ32を含む適宜長さだけ中央に延びる長さであればよい。
【0067】
(第4の実施形態)
図8A、図8Bおよび図8Cは、この発明の柱補強用ブロックの第4の実施形態を示している。この第4の実施形態のブロック54では、上記上下の側面12a,12bおよび上記左右の側面13a,13bの両方に補強鋼板3が設けられている点を除いて、上記第3の実施形態のブロック53と同じ構成である。
【0068】
上記補強鋼板3は、上記上下の側面12a,12bおよび上記左右の側面13a,13bを囲んでいる。上記補強鋼板3は、上記第3の実施形態の上記アンカ32がない。
【0069】
このように、上記補強鋼板3は、上記ブロック本体10の全側面を囲んでいるので、上記鋼線24の支圧力に対して、上記ブロック本体10の角(隅)の欠けを一層確実に防止できる。また、ブロック54の運搬時にも、ブロック54の角が欠けるおそれがなくて、取り扱いやすい。また、上記補強鋼板3を上記ブロック本体10に埋設して固定する必要がなくて、上記補強鋼板3にアンカ等が不要になる。なお、その他の構造は、上記第1〜上記第3の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0070】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記凸部17(上記溝15)、上記メッシュ筋16、および、上記アンカ32等の数量は、例えばブロックが必要とする補強の程度に応じて、増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】この発明の柱補強用ブロックの第1実施形態を示す平面図である。
【図1B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図1C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【図2】柱補強用ブロックで補強された既設柱の正面図である。
【図3】柱補強用ブロックで補強された既設柱の平面図である。
【図4】柱補強用ブロックの溝とこの溝に嵌め込んで巻き付けられたスパイラル状の鋼線の展開図である。
【図5】地震荷重による既設柱の変形の様子を示す正面図である。
【図6A】この発明の柱補強用ブロックの第2実施形態を示す平面図である。
【図6B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図6C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【図7A】この発明の柱補強用ブロックの第3実施形態を示す平面図である。
【図7B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図7C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【図8A】この発明の柱補強用ブロックの第4実施形態を示す平面図である。
【図8B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図8C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【符号の説明】
【0072】
3 補強鋼板
10 ブロック本体
11 底面
12a,12b 上下の側面(一方の一対の側面)
13a,13b 左右の側面(他方の一対の側面)
14 上面
15 溝
16 メッシュ筋
17 凸部
20 既設柱
21 周面
22 離間部
23 貧配合モルタル
24 鋼線
31 本体部
32 アンカ
51,52,53,54 柱補強用ブロック
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、鉄筋コンクリート建造物における既設柱を地震などに対して補強するために用いられる柱補強用ブロックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、柱補強用ブロックとして、出願人が提案したコンクリートブロックがある(例えば、特開2003−328566号公報(特許文献1)参照)。このコンクリートブロックは、平行四辺形の平面をなす底面と、この底面に対向する円弧状の上面と、底面と上面の間の4つの側面で構成されている。
【0003】
そして、このコンクリートブロックを、正方形断面の既設柱の下端から周方向に順次セメントペースト等で張り付けつつ積み重ね、既設柱の外周全長を覆って、この既設柱を円柱状に形成した後、コンクリートブロックの上面に形成されて一連の螺旋をなす溝に、小径のスパイラル状の束に予め加工した鋼線を人手で巻き付けて、既設柱とコンクリートブロックを強固に一体化するものである。
【0004】
しかしながら、上記コンクリートブロックは、コンクリートのみからなるため、強度の関係から肉厚を厚くする必要があるうえ、既設柱の軸を中心とする所定半径の円周面で既設柱を覆うため、柱の断面方向の面積が大きくなって、既設柱で構成される構造物の内部空間が狭くなる。駅舎内のコンコースや駐車場などの支柱では、利用スペースを狭めるうえ、狭いスペースで施工も難しくなるという問題を生じる。また、コンクリートブロックが厚肉なため、重量が増えて、運搬作業、揚重作業や取付作業の効率が上がらない。
【特許文献1】特開2003−328566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明の課題は、ブロックの肉厚を薄くして軽量化でき、既設柱の耐震補強を容易に施工できるとともに、補強された既設柱の周囲の利用スペースを広げることができる補強用ブロックを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明の柱補強用ブロックは、
平面視平行四辺形をなすと共にこの平行四辺形の一対の対向辺にわたって円弧をなす上面と、
上記上面に対向すると共に平行四辺形をなす平坦な底面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する略三日月状で平坦な一方の一対の側面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する他方の一対の側面と
を有するブロック本体と、
このブロック本体の上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面の内の少なくとも一つの一対の側面に設けられた補強鋼板と
を備えることを特徴としている。
【0007】
ここで、上記ブロック本体は、例えば、コンクリートまたはモルタルで形成される。上記補強鋼板は、上記一対の側面の間にわたって設けられておらず、上記ブロック本体の上面の少なくとも中央部は、露出している。また、上記ブロック本体の上面と上記補強鋼板の上面とは、滑らかに連続している。また、上記補強鋼板は、例えば、上記側面の全長にわたって設けられてもよく、または、上記側面の両端に設けられてもよい。
【0008】
この発明の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体と、このブロック本体の少なくとも一対の側面に設けられた上記補強鋼板とを備えるので、コンクリートのみからなるブロックに比して、強度が大きく、肉厚を薄くできる。
【0009】
このように、上記柱補強用ブロックの肉厚を薄くできるので、上記柱補強用ブロックで外周を補強された既設柱の周囲の利用スペースを広げることができる。また、薄肉化により上記補強用ブロックを軽くできて、運搬作業、揚重作業や取付作業の効率を上げることができる。
【0010】
また、上記補強用ブロックの上面に、この上面の円弧方向に、鋼線を巻き付け、地震時に、この鋼線が、上記補強用ブロックに対して、大きな支圧力を与えた場合、上記補強用ブロックの厚さが薄くても、上記ブロック本体の側面の開放面を上記補強鋼板で補強しているので、上記補強用ブロックは、上記支圧力に対して、破壊しない。
【0011】
また、上記ブロック本体の上面の少なくとも一部は、露出しているので、地震で既設柱に亀裂が入ったときには、この亀裂が、(例えばコンクリートで形成された)上記ブロック本体の上面(露出面)に現れ、柱の破壊状態(状況)を観察(目視)できる。
【0012】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、
上記補強鋼板は、上記他方の一対の側面に設けられ、
上記他方の一対の側面は、上記上面の曲面と連続して外方に凸な曲面をなし、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有する。
【0013】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記補強鋼板の上記アンカは、上記ブロック本体に埋設されているので、上記補強鋼板を上記ブロック本体の他方の一対の側面に確実に固定できる。また、上記補強鋼板によって、上記鋼線の支圧力に対して、上記ブロック本体の角(隅)の欠けを防止できる。
【0014】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、
上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面に設けられ、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有する。
【0015】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記補強鋼板の上記アンカは、上記ブロック本体に埋設されているので、上記補強鋼板を上記ブロック本体の一方の一対の側面に確実に固定できる。また、上記補強鋼板によって、上記鋼線の支圧力に対して、上記ブロック本体の角(隅)の開放面側の欠けを防止できる。
【0016】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面を囲んでいる。
【0017】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記補強鋼板は、上記ブロック本体の全側面を囲んでいるので、上記鋼線の支圧力に対して、上記ブロック本体の角(隅)や開放面側の角(隅)の欠けを一層確実に防止できる。また、ブロックの運搬時にも、ブロックの角が欠けるおそれがなくて、取り扱いやすい。また、上記補強鋼板を上記ブロック本体に埋設して固定する必要がなくて、上記補強鋼板にアンカ等が不要になる。
【0018】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、上記ブロック本体の上面の近傍に、メッシュ筋を埋設している。
【0019】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体の上面の近傍に、メッシュ筋を埋設しているので、上記ブロック本体の強度を一層向上させることができる。
【0020】
また、一実施形態の柱補強用ブロックでは、上記ブロック本体の上面に、上記一方の一対の側面に平行な方向に延びると共に上記一方の一対の側面に垂直な方向に間隔をもって配置された複数の凸部を設けている。
【0021】
この一実施形態の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体の上面に複数の凸部を設けているので、隣り合う上記凸部の間に溝が形成される。すなわち、上記ブロック本体は、上記一方の一対の側面に平行な複数の溝を有する。なお、この溝の底は、上記ブロック本体の上面である。
【0022】
このように、上記ブロックによって既設柱の四周全長を覆って、上記既設柱を円柱状に形成したとき、外周面になる上記ブロック本体の上面に、連続する螺旋状の溝が作られる。したがって、この溝にスパイラル状に予め加工した鋼線を巻き付ければ、巻き付け間隔を正確に確保でき、さらに、鋼線のずれや外れを防止でき、既設柱を確実に補強できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明の柱補強用ブロックによれば、上記ブロック本体の少なくとも一対の側面に上記補強鋼板を設けているので、ブロックの肉厚を薄くして軽量化でき、既設柱の耐震補強を容易に施工できるとともに、補強された既設柱の周囲の利用スペースを広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1Aは、この発明の柱補強用ブロックの一実施形態である平面図を示している。図1Bは、この柱補強用ブロックの下側面図を示し、図1Cは、この柱補強用ブロックの右側面図を示している。
【0026】
この柱補強用ブロック51は、上面14、底面11、上下の側面12a,12bおよび左右の側面13a,13bを有するブロック本体10と、このブロック本体10の左右の側面13a,13bのそれぞれに設けられた補強鋼板3,3とを備える。
【0027】
上記上面14は、平面視平行四辺形をなすと共に、この平行四辺形の一対の対向辺(左右の側面13a,13b)にわたって円弧をなす。上記底面11は、上記上面14に対向すると共に、平行四辺形をなす平坦形状である。
【0028】
上記上下の側面12a,12b(一方の一対の側面)は、上記上面14と上記底面11に連なると共に対向する。この上下の側面12a,12bは、略三日月状(かまぼこ形)で平坦である。
【0029】
上記左右の側面13a,13b(他方の一対の側面)は、上記上面14と上記底面11に連なると共に対向する。上記左右の側面13a,13bは、上記上面14の曲面と連続して外方に凸な曲面をなす。
【0030】
上記補強鋼板3は、上記左右の側面13a,13bに沿って形成された帯状の本体部31と、この本体部31の内面から突出する2つのアンカ32,32とを備える。このアンカ32は、上記本体部31の内面に溶接手段等で一体に固着されている。このアンカ32は、上記左右の側面13a,13bの両端部のそれぞれで上記ブロック本体10に埋設されている。
【0031】
上記ブロック本体10は、例えば、コンクリートまたはモルタルで形成される。上記補強鋼板3は、左右の側面13a,13bの間にわたって設けられておらず、上記ブロック本体10の上面14の中央部は、露出している。上記補強鋼板3は、上記左右の側面13a,13bの近傍の上記上面14を覆う。
【0032】
上記ブロック本体10の上面14に、上記上下の側面12a,12bに平行な方向に延びると共に上記上下の側面12a,12bに垂直な方向に間隔をもって配置された複数の凸部17を設けている。この凸部17の上面は、上記上面14に沿った円弧をなす。
【0033】
すなわち、隣り合う上記凸部17,17の間に溝15が形成される。つまり、上記ブロック本体10は、上記上下の側面12a,12bに平行な複数の溝15を有する。この溝15の底は、上記ブロック本体10の上面14である。そして、上記ブロック本体10の上面14(上記溝15の底)と上記補強鋼板3の上面とは、滑らかに連続している。なお、上記溝15の形状は、弧状でなくても凹部を形成する形状であればよい。
【0034】
上記補強鋼板3の上記アンカ32は、平面視、最も外側(最も上下)の溝15の外側から内側まで延びている。すなわち、上記アンカ32は、上記左右の側面13a,13bに対して傾斜する方向に延びている。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、上記左右の側面13a,13bの全長にわたる長さでなく、両端部のアンカ32を含む上記側面13a,13bの両端にあって、かつ、最側端の溝15の位置に達する長さであればよい。
【0035】
上記ブロック本体10の上面14の近傍に、メッシュ筋16を埋設している。このメッシュ筋16は、上記ブロック本体10の全面にわたって設けてもよく、上記ブロック本体10の強度を向上させることができる。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、ボルト孔33を有する。このボルト孔33は、(後述する)型枠に上記補強鋼板3を固定するためのボルトを挿通するために用いられ、さらに、上記ブロック51を(後述する)既設柱20に張り付ける際に上記ブロック51を吊り上げるためのボルトを挿通するために用いられる。
【0036】
この柱補強用ブロック51の製造方法を説明すると、(図示しない)型枠に、上記アンカ32を備えた上記補強鋼板3,3と上記メッシュ筋16とを設置して、この型枠にコンクリートまたはモルタルを流し込んで上記ブロック本体10を形成し、その後、上記型枠を外して、上記柱補強用ブロック51を製造する。このように、上記補強鋼板3の上記アンカ32および上記メッシュ筋16を上記ブロック本体10に埋設することができる。なお、上記型枠には、上記凸部17に対応する溝が設けられている。
【0037】
図2と図3は、上記柱補強用ブロック51を、正方形断面の既設柱20の四周面に張り付けて補強した状態を示す正面図および平面図である。上記ブロック51は、左右の補強鋼板3,3の間の幅が既設柱20の幅よりも小さくしてあり、さらに上下の側面12a,12bの間の高さも既設柱20の幅よりも小さくなっている。このブロック51は、底面11を既設柱20の周面21の下部にセメントペーストによって接着しつつ、周方向に順次張り付けられ、次いで既に張り付けられた柱補強用ブロック51上に貧配合モルタル23などを充填した離間部22を介してブロック51を積み重ねるとともに同様に既設柱20の周面21に周方向に順次張り付けられて、既設柱20の外周を基礎部20aから上に向かって螺旋状に覆っていくことになる。但し、既設柱20の上下端は、補強柱の曲げ剛性の増加を抑えて、地震荷重で柔軟に撓みうるように、ブロック51で覆っていない(図2参照)。なお、図2では,上下のブロック51,51の間に貧配合モルタル23を挟んでいるが、この貧配合モルタル23を省略して、ブロック51の上下の側面12a,12bの間に隙間22を設けるだけでもよい。
【0038】
上記ブロック51の上下の側面12a,12bに平行な複数の溝15は、上記ブロック51が既設柱20の四周を覆ったとき、既設柱20の4隅の隙間22aを介して周方向に隣接するブロック51,51の溝15と円滑に螺旋状に連なる。なお、図2では、一つのブロック51当たり4つの溝15を示している。
【0039】
上記ブロック51は、図3に示すように、既設柱20を覆ったとき、上記凸部17である円弧面の外面は、ブロック51で補強された既設柱20の軸Cを中心とする外接円20bよりも内側になる。これは、ブロック51が、上記補強鋼板3のアンカ32および上記メッシュ筋16を埋設したコンクリートまたはモルタルで作られていて、コンクリートのみで作られたものに比して肉厚を薄くして軽量化を図っても、同等の強度が得られるからであり、コンクリートのみからなるブロックでは、上記外接円20bに相当する肉厚が必要となる。
【0040】
したがって、このブロック51で補強された既設柱20では、周囲の利用スペースを広げることができ、特に駅舎のコンコースや駐車場内などの既設柱20の補強に有利である。さらに、ブロックの薄肉化および軽量化により、作業能率が向上でき、狭い作業空間でも施工が可能になる。つまり、上記ブロック51の運搬作業、揚重作業や取付作業の効率を上げることができる。
【0041】
図4は、既設柱20の四つの周面21を覆うブロック51の上記溝15およびこの溝15に嵌め込んで巻き付けたスパイラル状の鋼線24を示す展開図である。
【0042】
この溝15は、図4の左端に示すように、正弦波状であり、最初の周面21aの下部に張り付けたブロック51の下端から始まって、既設柱20の角の隙間22aを介して、順次右隣りの周面21b,21c,21dに張り付けた3つのブロックの溝15に連なって、既設柱を一周した後、再び周面21aのブロック(図4の右端に重複して一部を示す)の1つ上の溝に連なり、これを繰り返して既設柱の上端に至る。この螺旋状の溝15に図示の如く鋼線24が巻き付けられる。
【0043】
図4で平行四辺形の上下辺として示されるブロック51の上下の側面12a,12b、つまりこれと平行に延びる溝15は、図4から判るように、既設柱の4つの周面21a〜21dを1周すると、溝15の1ピッチpの距離だけ上昇する。ブロック51を横切る1本の溝15(例えば周面21aの下端)について言えば、溝15の上昇距離は、既設柱の1/4周に相当するp/4から柱角の間隔に相当する上昇分αを減じた値(p/4−α)となる。したがって、ブロック51の上下の側面12a,12bの傾きも、図1A中に示すように、平行四辺形の左右辺の左辺13aの下端から右辺13bに下ろした垂線の足と、右辺13bの下端との距離が(p/4−α)になるような傾きとなる。上記隙間の間隔に相当する上昇分αとは、図3の柱角の隙間22aを溝15がブロック51におけると同じ傾きで進んだ場合の上昇距離をいう。
【0044】
溝15に巻き付けられる鋼線24は、既設柱20の周りを1周する溝15の直径より小さい直径(望ましくは既設柱20の断面の対角線の長さの80%の直径)のスパイラル状の束に予め加工されていて、油圧シリンダ等の引張り機械を用いることなく、人手によって巻き付けられる。このような螺旋状に束ねられた鋼線24を既設柱に巻き付ける方法については、出願人に帰属する特許第149647号に詳しく述べられているので、ここでは簡単に説明するに留める。
【0045】
即ち、スパイラル状の束に加工された鋼線24を、束のループ面が既設柱20の周面21に平行になるよう鉛直に配置し、巻き始めとなる直角に曲げた始端24a(図4参照)を周面21aの下端に設けた穴(図示せず)に差し込んで固定し、鋼線24の束を解ける方向に回転させつつ既設柱20の周りに巡らせて、解きながら1ループずつ既設柱20に巻き付けて、鋼線24を螺旋状の溝15に嵌め込んで順次上方へ巻き付けていく。最後に、直角に曲げた終端24b(図2参照)を周面21の上端に設けた穴に差し込んで固定して巻き付けを終了する。鋼線24の端部の固定方法は、既設柱20の周面21に固定するのではなく、鋼線24をブロック51の外周に重ねて巻き付けて重なった部分をクリップで固定するようにしてもよい。
【0046】
この方法は、鋼線24のスパイラル状の束をループ面内でループを解く方向に曲げて大きく開くのでなく、鋼線24のスパイラル状の束を既設柱20の周りに巡らせながら鋼線24をその軸の周りに僅かに捩じるだけの弾性変形範囲で巻き付けが行えるので、従来のように油圧シリンダ等の大掛かりな機械を要さず、人力のみで容易かつ迅速に施工することができる。なお、鋼線24は、棒鋼でも撚線でもよい。
【0047】
上記ブロック51を用いた既設柱20の補強方法について次に述べる。
【0048】
まず、既設柱20の下端外周の基礎部20a上に、貧配合モルタル23を所定厚さで塗るとともに、既設柱20の四つの周面21またはブロック51の底面11の少なくともいずれかにセメントペーストを塗った後、ブロック51の下側面12bを貧配合モルタル23に載せつつ底面11を各周面21に当接させて、既設柱20の外周に4つのブロック51を張り付ける。
【0049】
次に、張り付けた各ブロック51の上側面12aに貧配合モルタル23を充填した厚さ1〜2cmの離間部22を設け、この上に4つのブロック51を積み重ねつつ同様に各周面21に張り付けていく。ここで、ブロック51は、図4に示すように左右辺と上下辺が直交しない平行四辺形であるので、下端の貧配合モルタル23の上面および上下ブロック間の貧配合モルタル23を充填した離間部22は、水平面に対して傾いている。
【0050】
既設柱20の四つの周面21の全長に亘るブロック51の張り付けが終わると、既設柱20の周りを1周するブロック51の螺旋状の溝15の直径より僅かに小径のスパイラル状の束に予め加工された鋼線24を、既に述べた人手による方法で螺旋状の溝15に嵌め込んで、全ブロック51に亘る巻き付けを終了する。この鋼線24の巻き付け方法は、既述の如く油圧シリンダ等の大掛かりな機械を要さず、人力のみで容易かつ迅速に施工できるという利点を有する。
【0051】
なお、既設柱20の上下端は、既に述べた曲げ剛性を過大にしないという理由からブロック51で覆わない。また、巻き付けた鋼線24は、溝15に密に嵌合していて、ずれることがないから、従来のように鋼線24の表面全体にモルタルを塗布する必要もない。鋼線24の始端24aと終端24bは、図3と図4で述べたように、既設柱20の周面21に設けた穴に差し込んで固定するが、これに代えて、鋼線24同士を結束線などで結んで固定してもよい。さらに、既に述べたように、上下に積み重ねたブロック51の間に適宜間隔を設ければ、貧配合モルタル23は、省略しても問題はない。
【0052】
こうして補強された既設柱20は、地震の際に次のように挙動して、地震の振動エネルギを効果的に吸収する。
【0053】
既設柱20は、従来のように縦長で一体物の4枚のPC板を四周面に張り付けるのではなく、図3と図4に示すように、縦寸法の短い多数のブロック51を、適宜間隔を設けながら積み上げて張り付けて補強され、既設柱20の角の周面が露出した隙間22aが生じる。
【0054】
したがって、地震による曲げ荷重が加わった場合、既設柱20は、ブロック51の積み重ね部の貧配合モルタル23が破壊して開口し、過大曲げ荷重が加わる前に図5に示すように変形する。つまり、この実施形態の補強された柱20は、従来と異なり、曲げ剛性が大きくなり過ぎて変形能やエネルギ吸収能が低下することがなく、結果的に耐震性が向上するのである。また、周方向に隣接するブロック51,51は、隙間22aによって互いに当接しないので、当接箇所が地震による既設柱20の変形で互いに衝突して欠け落ちることもない。また、隙間22aを設けているので、地震によって既設柱が損傷した場合、その損傷程度を観察できる。
【0055】
既設柱20は、螺旋状の溝15の直径よりも僅かに小径のスパイラル状に予め加工した鋼線24を、僅かに捩じりながら拡径して巻き付けるので、油圧シリンダ等を用いずとも、鋼線24が弾性力でブロック51に密着するとともに、巻き付いた鋼線24が既設柱20の剪断耐力を大幅に向上させる。つまり、この実施形態の補強された柱20は、曲げ剛性を過大にすることなく、剪断耐力を高めているので、結果的に靭性が向上し、地震エネルギを効果的に吸収して既設柱20を強固に補強することができるのである。
【0056】
さらに、この実施形態のブロック51は、既に述べたように、出願人が以前提案したコンクリートのみからなるブロックと異なり、上記ブロック本体10の左右の側面13a,13bに上記補強鋼板3を設けているので、肉厚を薄くしても、強度を大きくできる。さらに、上記ブロック本体10内に上記メッシュ筋16を埋め込んでいるので、一層薄肉にできる。
【0057】
このように、上記ブロック51の肉厚を薄くできるので、上記ブロック51で外周を補強された既設柱20の周囲の利用スペースを広げることができる。また、薄肉化により上記ブロック51を軽くできて、運搬作業、揚重作業や取付作業の効率を上げることができる。
【0058】
また、上記ブロック51の上面14に、この上面14の円弧方向に、鋼線24を巻き付け、地震時に、この鋼線24が、上記ブロック51に対して、大きな支圧力を与えた場合、上記ブロック51の厚さが薄くても、上記ブロック本体10の左右側面13a,13bの開放面を上記補強鋼板3で補強しているので、上記ブロック51は、上記支圧力に対して、破壊しない。つまり、上記補強鋼板3によって、上記鋼線24の支圧力に対して、上記ブロック本体10の角(隅)の欠けを防止できる。
【0059】
また、上記補強鋼板3の上記アンカ32は、上記ブロック本体10に埋設されているので、上記補強鋼板3を上記ブロック本体10の左右側面13a,13bに確実に固定できる。さらに、上記アンカ32は、上記ブロック本体10に鋼線24を一定間隔に複数本巻いたときの一番外側の鋼線24が巻かれる位置よりも中央部まで、斜め方向に延びているので、上記アンカ32の上記ブロック本体10からの抜けを確実に防止できる。
【0060】
また、上記ブロック本体10の上面14の少なくとも一部は、露出しているので、地震で既設柱20に亀裂が入ったときには、この亀裂が、コンクリートまたはモルタルで形成された上記ブロック本体10の上面14(つまり、露出面)に現れて、柱の破壊状態(状況)を観察(目視)できる。
【0061】
(第2の実施形態)
図6A、図6Bおよび図6Cは、この発明の柱補強用ブロックの第2の実施形態を示している。この第2の実施形態のブロック52は、上面14に、上記第1の実施形態の上記凸部17(つまり、上記溝15)がない点を除いて、上記第1の実施形態のブロック51と同じ構成である。
【0062】
このように、上記ブロック52は、上記上面14に凸部がないので、上記ブロック52を一層軽量化および薄肉化でき、上記ブロック52の製造が容易になると共に、施工時の上記ブロック52の破損を容易に防止できる。なお、その他の構造は、上記第1の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0063】
上記アンカ32は、上記ブロック本体10に鋼線24を一定間隔に複数本巻いたときの(仮想線にて示される)最も外側の鋼線24が巻かれる位置よりも中央部まで、斜め方向に延びている。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、上記左右の側面13a,13bの全長にわたる長さでなく、両端部のアンカ32を含む上記側面13a,13bの両端にあって、かつ、(仮想線にて示される)最も外側の鋼線24が巻かれる位置を越える長さであればよい。
【0064】
(第3の実施形態)
図7A、図7Bおよび図7Cは、この発明の柱補強用ブロックの第3の実施形態を示している。この第3の実施形態のブロック53では、上記左右の側面13a,13bの代わりに上記上下の側面12a,12bに補強鋼板3が設けられている点を除いて、上記第2の実施形態のブロック52と同じ構成である。
【0065】
この補強鋼板3は、上記上下の側面12a,12bの両端部および中央部で、上記ブロック本体10に埋設されたアンカ32を有する。このアンカ32は、上記ブロック本体10に鋼線24を一定間隔に複数本巻いたときの(仮想線にて示される)最も外側の鋼線24が巻かれる位置よりも中央部まで、上記左右の側面13a,13bと平行に延びている。上記補強鋼板3は、上記上下の側面12a,12bの近傍の上記上面14を覆っておらず、上記上面14の全部は、露出している。
【0066】
このように、上記補強鋼板3の上記アンカ32は、上記ブロック本体10に埋設されているので、上記補強鋼板3を上記ブロック本体10の上記上下の側面12a,12bに確実に固定できる。また、上記補強鋼板3によって、上記鋼線24の支圧力に対して、上記ブロック本体10の角(隅)の欠けを防止できる。なお、その他の構造は、上記第1の実施形態および上記第2の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。なお、上記補強鋼板3の本体部31は、上記上下の側面12a,12bの全長にわたる長さでなく、上記側面12a,12bの両端にあって、かつ、両端部のアンカ32を含む適宜長さだけ中央に延びる長さであればよい。
【0067】
(第4の実施形態)
図8A、図8Bおよび図8Cは、この発明の柱補強用ブロックの第4の実施形態を示している。この第4の実施形態のブロック54では、上記上下の側面12a,12bおよび上記左右の側面13a,13bの両方に補強鋼板3が設けられている点を除いて、上記第3の実施形態のブロック53と同じ構成である。
【0068】
上記補強鋼板3は、上記上下の側面12a,12bおよび上記左右の側面13a,13bを囲んでいる。上記補強鋼板3は、上記第3の実施形態の上記アンカ32がない。
【0069】
このように、上記補強鋼板3は、上記ブロック本体10の全側面を囲んでいるので、上記鋼線24の支圧力に対して、上記ブロック本体10の角(隅)の欠けを一層確実に防止できる。また、ブロック54の運搬時にも、ブロック54の角が欠けるおそれがなくて、取り扱いやすい。また、上記補強鋼板3を上記ブロック本体10に埋設して固定する必要がなくて、上記補強鋼板3にアンカ等が不要になる。なお、その他の構造は、上記第1〜上記第3の実施形態と同じであるため、その説明を省略する。
【0070】
なお、この発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、上記凸部17(上記溝15)、上記メッシュ筋16、および、上記アンカ32等の数量は、例えばブロックが必要とする補強の程度に応じて、増減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1A】この発明の柱補強用ブロックの第1実施形態を示す平面図である。
【図1B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図1C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【図2】柱補強用ブロックで補強された既設柱の正面図である。
【図3】柱補強用ブロックで補強された既設柱の平面図である。
【図4】柱補強用ブロックの溝とこの溝に嵌め込んで巻き付けられたスパイラル状の鋼線の展開図である。
【図5】地震荷重による既設柱の変形の様子を示す正面図である。
【図6A】この発明の柱補強用ブロックの第2実施形態を示す平面図である。
【図6B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図6C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【図7A】この発明の柱補強用ブロックの第3実施形態を示す平面図である。
【図7B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図7C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【図8A】この発明の柱補強用ブロックの第4実施形態を示す平面図である。
【図8B】柱補強用ブロックの下側面図である。
【図8C】柱補強用ブロックの右側面図である。
【符号の説明】
【0072】
3 補強鋼板
10 ブロック本体
11 底面
12a,12b 上下の側面(一方の一対の側面)
13a,13b 左右の側面(他方の一対の側面)
14 上面
15 溝
16 メッシュ筋
17 凸部
20 既設柱
21 周面
22 離間部
23 貧配合モルタル
24 鋼線
31 本体部
32 アンカ
51,52,53,54 柱補強用ブロック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視平行四辺形をなすと共にこの平行四辺形の一対の対向辺にわたって円弧をなす上面と、
上記上面に対向すると共に平行四辺形をなす平坦な底面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する略三日月状で平坦な一方の一対の側面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する他方の一対の側面と
を有するブロック本体と、
このブロック本体の上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面の内の少なくとも一つの一対の側面に設けられた補強鋼板と
を備えることを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項2】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記補強鋼板は、上記他方の一対の側面に設けられ、
上記他方の一対の側面は、上記上面の曲面と連続して外方に凸な曲面をなし、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有することを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項3】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面に設けられ、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有することを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項4】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面を囲んでいることを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項5】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の上面の近傍に、メッシュ筋を埋設したことを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項6】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の上面に、上記一方の一対の側面に平行な方向に延びると共に上記一方の一対の側面に垂直な方向に間隔をもって配置された複数の凸部を設けたことを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項1】
平面視平行四辺形をなすと共にこの平行四辺形の一対の対向辺にわたって円弧をなす上面と、
上記上面に対向すると共に平行四辺形をなす平坦な底面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する略三日月状で平坦な一方の一対の側面と、
上記上面と上記底面に連なると共に対向する他方の一対の側面と
を有するブロック本体と、
このブロック本体の上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面の内の少なくとも一つの一対の側面に設けられた補強鋼板と
を備えることを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項2】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記補強鋼板は、上記他方の一対の側面に設けられ、
上記他方の一対の側面は、上記上面の曲面と連続して外方に凸な曲面をなし、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有することを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項3】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面に設けられ、
上記補強鋼板は、上記ブロック本体に埋設されたアンカを有することを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項4】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記補強鋼板は、上記一方の一対の側面および上記他方の一対の側面を囲んでいることを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項5】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の上面の近傍に、メッシュ筋を埋設したことを特徴とする柱補強用ブロック。
【請求項6】
請求項1に記載の柱補強用ブロックにおいて、
上記ブロック本体の上面に、上記一方の一対の側面に平行な方向に延びると共に上記一方の一対の側面に垂直な方向に間隔をもって配置された複数の凸部を設けたことを特徴とする柱補強用ブロック。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【公開番号】特開2006−257761(P2006−257761A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77392(P2005−77392)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(592105620)ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 (15)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)
【出願人】(592105620)ジェイアール西日本コンサルタンツ株式会社 (15)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【出願人】(390007607)大鉄工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】
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