説明

柿皮から酸味を呈する食材の加工方法

【課題】柿皮は殆どが廃棄されている。果肉と柿皮とを比べると柿皮は黄色色素カロテンとしてのビタミンAとビタミンポリヘノールの含有量が多い。柿皮を分解、溶解し養分を細胞から流出させて栄養豊富で酸味を有する柿の食材と成す。
【解決手段】柿の皮剥き工程で柿の剥離部分の刺激と細胞液の流出に因る作用で柿渋の渋味は急速に少なくなる。冷凍保存の工程に於いても渋味は少なくなる。ペクチン分解酵素剤、繊維素分解酵素剤を添加し加温して60℃以下の酵素活性適温の温度で活性時間を確保する。この温度帯も柿渋は不溶化する。その後、80℃以上に加熱する。これらの経過によって酵素失活と柿皮細胞崩壊と殺菌を成す。出来た果汁及びピューレ状食材が酸味を呈する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【産業上の利用分野】
【0001】
本発明は、干し柿製造工程に於いて発生し破棄される生柿皮を用いる。柿を食した時には感じ無い酸味を、柿皮組織内に含有する養分を柿皮の組織の崩壊に因って溶解し酸味を有するピューレ、柿汁を得る。柿皮食材の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
渋柿を干し柿に加工する際、柿皮剥きの行程が有る。この行程で出来た柿皮の少量は乾燥して漬け物の甘味料として用いられている。この他、粉末に加工して食品にする研究が継続している。
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
市田柿を例とすれば1個の重量は100g位である。柿の皮を剥くと果肉部80%位、皮部20%位となる。皮部のみで1kgを得るには、50個位の柿の皮部の集まりと成る。池田書店、2001年11月27日発行、食品成分表、渋ぬき柿生の項での柿100g中の含有ビタミンは黄色色素のカロテンとしてのビタミンAが300mg、ビタミンCは55mgと記されている。黄色色素の黄色は柿皮部分と果肉部分を可視判定で比較すると柿皮部分が極端に濃く見える。この事はビタミンAが多量に存在している証拠である。食品添加物のビタミンCのアスコルビン酸を食すと、酸味が濃い。市田柿の果肉部をジュースに加工し、飲んだ経験では、酸味は殆ど感じない。皮部にビタミンCが多く含有していれば、柿皮部でジュースを製造すると、出来たジュースは酸味を呈するはずだ。もし、酸味の有る品物と成れば廃棄している柿皮には多量の栄養分が有り、もったいない、と考察して、柿皮を食品とする事を思考した。柿皮は外果皮に表皮、亜表皮。中果皮に石細胞、タンニン細胞、柔細胞で構成されている。表皮は外界から果肉を保護し、内容物の流失を防ぐ。亜表皮は細菌と太陽光の果肉への侵入を阻止し保護する。石細胞は硬く形状保持をする。タンニン細胞は未熟果の時期は渋く、果肉を食す外敵から果肉を守る。熟柿に成ると不溶化して渋味が無くなる。柔細胞は柔く内部の種子と果肉を保護する。この様に薄い柿皮は緻密な構造であり果肉保護の働きを担う。この働きを担う物質の中にはカロテン色素のビタミンAとビタミンCが多く含まれている。他に少量の各種ビタミンが有る。良く知られている食品加工に使うビタミンCはアスコルビン酸で酸味を呈する。柿皮を加工した食品に酸味が出れば水溶性であるビタミンCが柿皮の細胞組織が崩壊して流出している証拠である。石細胞は硬質で食した場合、口の中でガリガリした食感がして何時までも渣が残り、食品加工を阻止してきた。タンニンはポリヘノールで解毒作用、蛋白質の収斂作用が代表的な人体に対しての作用で有る。タンニンは渋く、この渋味を無くす課題が有る。これらの薄く高密度に硬く強固に結集した柿皮の組織を、どの様な手段で崩壊して柿皮の食品と成す事が出来るのか課題で有る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は洗浄した柿皮を用いる。この柿皮にペクチン分解酵素剤、植物組織崩壊酵素剤の添加行程。冷凍行程。解凍行程を経て、酵素死活,柿皮細胞崩壊、細菌の殺菌の3種類の作用を1回の加熱処理行程で成す順序で行う。酵素剤添加に於いては柿皮の冷凍、解凍行程後に添加する事も可能である。手段について詳細に説明する。柿皮果汁を抽出するにはペクチン分解酵素剤を0.05%〜0.5%で任意に添加する。ペースト状にするには植物組織崩壊酵素剤を任意に0.05%〜0.5%添加する。ペクチン分解酵素剤と植物組織崩壊酵素剤との配合率は相互に0〜100%の範囲で製造する製品の目的に因って任意に決定する。両酵素剤は40℃〜50℃で2時間加温するのが通例である。本発明の実施例に於いては柿収穫時期の室内温度5℃〜20℃位の常温で作用させる。気温が高い時は短時間で良い,低温の時は時間を長時間として酵素の作用を充分に行う。冷凍庫に入庫し氷結に至る過程で4℃の時、柿皮の細胞内の水分の容積が最も縮小する。氷点下に至ると細胞は固化し、細胞の水分は凍って膨張して細胞膜を破壊する。この冷凍で保存も同時に行う。通常の冷凍は、冷凍した品物の品質の保持が目的な為に急速で一般の冷凍装置で−20℃位以下が要求される。これに対して本発明の柿皮は品質を変化するのが目的の為−5℃程度以下の冷凍保存で良く、保存経費の軽減に成る。解凍行程では冷凍で細胞水が膨張し固化した細胞壁が4℃の水の最小容積と成る過程を通過する事で細胞は破壊が進む、タンニンはこの冷凍行程と解凍行程に因って不溶化が進み渋味を無くす。冷凍に因って渋味を抜く為に5日以上の日数が必要である。解凍行程から次の熱処理行程に至る迄の常温での時間でペクチン分解酵素、植物組織崩壊酵素の作用はいっそう促進する。酵素剤添加から凍結に至る迄の時間が24時間を経過した柿皮に有っては冷凍行程から加熱行程へ短時間で移行出来る。加熱行程では常温から60℃に至る迄の時間にペクチン分解酵素、植物組織崩壊酵素の活動最適温度を通過する時に作用が最も促進される。60℃〜80℃の間に細胞幕が煮えて急速に軟化して無加圧に有っても果汁が流出する様になる。食感を悪くしていた石細胞は、これまでの植物組織崩壊酵素の働きで違和感が無く成る。最終加熱最高温度を80℃以上にして煮て柿皮組織の崩壊と酵素と細菌を死滅させる。加熱を終了した柿皮は裏漉しすれば、酸味の有るピューレとなる。加熱を終了した柿皮から搾汁して酸味の有る柿皮果汁を得る。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の好適な実施形態について長野県南部を産地とする市田柿を使って説明する。通常の収穫時期は10月中旬から11月下旬であり堅い柿を収穫する。この柿の皮を剥いて市田柿の商品名の干し柿として出荷して有名である。この際剥いた柿皮は漬け物の甘味料として少量用いられている程度で収穫した生柿の重量にして20%位が廃棄され産地全域では多量の廃棄物と成る。柿剥きの際、柿剥きの機械の改良に因って蔕の部位が柿皮と完全に分離して柿皮の品質が向上した。この柿皮を洗浄する。柿皮10kgにヤクルト薬品工業株式会社製、ペクチン分解酵素剤、ペクチナーゼSSを0.05%重量で5gを添加して攪拌と破砕の作業をミキサーで行った。冷凍庫に入庫するまで24時間、11月中旬の室内の常温に置いた後、−5℃に設定した冷凍庫に入れて冷凍を7日間行た。出庫した柿皮を11月下旬、2日間常温に放置して解凍した。二重釜に移し湯煎で90℃で10分間経過するまで加熱した。この加熱行程では常温から60℃に至る迄の時間にペクチン分解酵素、植物組織崩壊酵素の活動最適温度を通過する時に作用が最も促進される。60℃〜80℃の間に細胞幕が煮えて急速に軟化して無加圧に有っても果汁が流出する様に成った。90℃で10分間加熱して酵素と細菌の死滅を行った。この時点での加熱に因る水分蒸発量0.9kgであった。残りの柿皮からアップルサーで搾汁した結果6.7kgの果汁を得た。搾汁した柿皮果汁の糖度は15.8で有った。搾汁滓は2.4kgであった。生柿の酸度はPH4.8で有るが出来た柿皮果汁の酸度はPH4.5でジュース製造で必要な酸度PH4.6以下の値に適合した。この搾汁滓は石細胞が残存し、繊維質も堅さが有り食品には適さない。この搾汁滓を有効な食品と成す手段として,加工着手時の柿皮にヤクルト薬品工業株式会社製、植物組織崩壊酵素マセロチームAを0.05%を添加して柿皮を冷凍行程、解凍行程、加熱行程を経過した結果、繊維質と石細胞は植物組織崩壊酵素の働きで軟化した。これを破砕した。破砕の度合いに因って異なるが繊維質が軟化していて効率良く微細化する事で裏漉しの効率が良く成った。廃棄する残り滓の量は殆ど出なく成った。ビューレとした柿皮は植物組織崩壊酵素を無添加で作ったピューレと比較すると極端に食感が改善した。ペクチン分解酵素と植物組織崩壊酵素の配合比率を変える事で趣を変えた食感となった。出来た搾汁液、ピューレは酸味を呈する食感となった。食品の材料とする事を可能にした。
【発明の効果】
【0006】
干し柿の産地では柿の皮を剥く、この柿皮の利用手段がなく収穫された生柿の約20%程が柿皮で廃棄されている。1kgの柿皮は約50個分の柿皮の集まりで果肉1kgよりもビタミンA、Cは特に多量に含有されている。養分が豊富な柿皮の食材を本発明によって加工して有効利用する効果が有る。ペクチン分解酵素、植物組織崩壊酵素の添加の働きの効果。冷凍保存行程、解凍行程での組織崩壊の効果。加温初期の20〜60℃に至るまでの間に添加した酵素が成すペクチン質分解と細胞の崩壊作用。この加熱の継続で酵素剤死活,柿皮細胞崩壊、細菌の死活を1回の80℃以上に加熱を成す事に因る加熱処理行程に因って,柿皮の組織を分解、破壊して効率良い果汁の抽出と柿皮の全量に近い量の柿皮ピューレを得ることが出来る様になった。柿皮はその組織の中に多量の石細胞が存在する。この石細胞が硬く食感が悪く柿皮を食品に成す事を阻害していた。この石細胞を植物組織崩壊酵素の働きで軟化し食材と成すことを可能にした。この事でピューレの食感の改良が出来た。柿皮部にはタンニン細胞が存在して渋味を呈する。この渋味を冷凍と解凍の作用と加熱に因る作用でタンニンを不溶化して渋味を無くす効果がある。以上のように柿皮細胞組織の崩壊に因って養分のビタミンCが流出して柿皮果汁、柿皮ピューレを酸味の有る食材に変貌した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柿皮にペクチン分解酵素剤、植物組織崩壊酵素剤を添加し熟成する時間を有する行程。冷凍の作用に因って柿皮細胞の破壊と保存と渋味の減少をする行程。解凍の作用に因って柿皮細胞の破壊と渋味の減少をする行程。加熱で常温から60℃迄に至る酵素活性最適の温度帯では酵素活性を成し、80℃以上の高温で酵素死活,柿皮細胞崩壊、細菌の死活等を成す加熱処理行程を経過する。細胞を崩壊した柿皮を搾汁、裏漉等の行程を経て、柿皮の養分が酸味を呈する食材と成す。

【公開番号】特開2012−179037(P2012−179037A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58527(P2011−58527)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(594034304)
【出願人】(500147986)
【出願人】(508068489)
【出願人】(508068490)
【Fターム(参考)】