説明

栄養医薬品および医薬品のための品質管理バイオアッセイ

食物物質、栄養補助食品、治療剤および/もしくは疾患予防剤の1つのサンプルの、このような物質、補助食品および/もしくは薬剤の第2のサンプルに対する、翻訳開始を阻害、アップレギュレート、さもなければ調節する能力を検出するバイオアッセイが提供され、これによって、このような物質、補助食品および/もしくは薬剤を摂取するか、またはこのような物質、補助食品および/もしくは薬剤が投与されるヒトおよび/もしくは動物における疾患治癒ならびに/または予防効果が示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2009年4月17日に出願された米国仮特許出願番号第61/170,330号の優先権を主張し、その全体がここに引用により援用される。
【0002】
政府権益の陳述
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により授与されたR01CA078411に基づく政府支援によりなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0003】
分野
本発明の実施形態は、概して、ヒトまたは動物の健康に有益な性質についての食品、栄養医薬品(nutriceutical products)および医薬品のアッセイに関する。本発明の実施形態はさらに、改良されたアッセイ法により定量しながら、疾患の予防または治癒に関連するか、またはそれを示す態様である、特定の核酸またはタンパク質バイオマーカのレベルを調節することができる食品、栄養医薬品および医薬品の製造方法を含む。
【背景技術】
【0004】
メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳開始は、細胞成長および悪性転換の制御において決定的な役割を果たす。なぜなら、殆どの発癌タンパク質および細胞成長制御タンパク質の発現は、翻訳的に制御されるためである(Flynn et al.,1996, Cancer Surv. 27:293; Sonenberg et al.,1998, Curr. Opin. Cell Biol. 10:268)。このため、翻訳開始は、緻密に制御された細胞プロセスである。翻訳開始の負の制御の不良は、癌の誘発、発病および進行につながる可能性がある(Donze et al, 1995, Embo J. 14: 3828; Rosenwald, 1996, Bioessays 18: 243-50; De Benedetti et al., 2004, Oncogene 23: 3189-99; および Rosenwald, 2004, Oncogene 23:3230)。制御が不十分な翻訳開始を阻害すると、転換された表現系の復帰も生じ得る(Jiang et al., 2003, Cancer Cell Int. 3:2; Graff et al., 1995, Int. J. Cancer 60:255)。eIF2・GTP・Met−tRNA複合体(三元複合体とも知られている)は、翻訳開始の重要な正の制御因子である。そのアベイラビリティを制限すると、タンパク質翻訳の新たなラウンドの開始が減らされる。多くの発癌タンパク質および他の細胞成長因子の翻訳は、三元複合体に強く依存するが、このことはハウスキーピング遺伝子には当てはまらない。このため、三元複合体の量、アベイラビリティまたは活性を制限する助けをする食品、栄養医薬品および医薬品は、疾患を予防および治療する安全な手段を提示する可能性がある。さらに、ある腫瘍抑制因子ならびにアポトーシス促進性遺伝子および/またはタンパク質の発現は、三元複合体のインヒビターの存在下で、または、より一般的には、翻訳開始のインヒビターの存在下で、実際に増加する。発癌タンパク質の翻訳の低下は、特に腫瘍抑制因子およびアポトーシス促進性遺伝子のアップレギュレーションと組合されると、全体的に、悪性表現型を防止および/または抑える傾向にある。
【0005】
n−3多価不飽和脂肪酸(n−3PUFA)であるエイコサペンタエン酸(EPA)は、魚、特に、寒冷な海洋水に生息する野生集団の魚に由来する油に大量に存在する。養殖された魚は、典型的に、野生の魚よりも遥かに低いレベルのn−3PUFAを含有する。海産魚油をヒト前立腺癌患者に投与すると、eIF2αがリン酸化されることが観察され、このことは、機能的eIF2の三元複合体へのアベイラビリティが低下したことを示唆しており、動物モデルまたは細胞ベースの実験系においてEPAおよび三元複合体の合成インヒビターを用いた知見と一致している。したがって、翻訳開始インヒビターを含有する健康補助食品は、異常な細胞増殖が特徴的な病理学的異常である癌および/もしくは増殖性疾患の治療ならびに/または予防のための魅力的な市販品である。このような健康補助食品は、翻訳開始制御因子としても作用し得、肥満および糖尿病などの代謝病の治療ならびに/または予防のための魅力的な市販品である。
【0006】
さまざまなソースからの魚油が、食品または栄養補助食品として消費者に幅広く入手可能である。製品の異なる生産ロット、バッチ、サンプルもしくは用量で含有される、油、または油由来の画分もしくは成分は、そのソース(たとえば、気候、魚の種類もしくは成長条件、供給源)または処理条件に依存して、品質または有効性が異なり得る。同じことが、製品の単一のロット、バッチ、サンプルまたは用量の内容にさえも当てはまり得る。翻訳開始の天然または合成インヒビターを含有する他の食品、栄養医薬品または医薬品は、同様の理由から、品質または有効性が異なり得る。
【0007】
潜在的な消費者に対する製品の生理的効果または医薬的効果に関する品質管理および/または保証が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ヒトの疾患のための治療/予防効果を有する健康補助食品は、急成長中であり、数十億ドルの世界的な産業である。しかし、この産業で未解決の大きな問題は、特定の生物学的活性および有効性を保証し、同じ植物/動物ソースから抽出/生産された異なる製剤間の生物学的活性の均質性を保証し、ならびに、同じ植物または動物種であるが、異なる地理的地域および/または産業ソースに起源しているものから抽出された製剤間での同等な有効性を保証するための、天然ソースから抽出された製品の品質管理が欠如していることである。
【0009】
翻訳開始のインヒビター、アップレギュレータまたは他のモジュレータは、広域スペクトルの抗癌、抗細胞増殖作用、およびエネルギバランスに対する広域スペクトルの作用を有する。魚油製剤を含むが、これに限定されない、翻訳開始のインヒビター、アップレギュレータまたは他のモジュレータを含有する栄養医薬品は、癌を含む、異常な細胞増殖により特徴付けられるヒトの疾患の予防のために用いられ得る。しかしながら、この種の栄養医薬品の生物学的活性を求めるためのバイオアッセイは現存しないため、異なるブランドもしくはソース間、または単一のブランドもしくはソースからの異なるバッチもしくは製品間の、品質、有効性および/または均質性を制御することが不可能となっている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、ある例示的な実施形態においては、食品、栄養医薬品および医薬品のmRNAの翻訳開始を調節する能力に関するこのような製品の品質管理および/または保証のための方法が提供され、それによって、このような製品の潜在的な健康上の利益について、消費者に正確な情報を提供する必要性が対処される。
【0011】
たとえば、栄養医薬品など、翻訳開始のインヒビター、アップレギュレータまたはモジュレータを含有する化合物の生物学的活性を定量的に評価するために用いられ得る翻訳開始に特異的なバイオアッセイが提供される。ここで提供される翻訳開始に特異的なアッセイは、たとえば、内在的製品または添加物など、翻訳開始のインヒビター、アップレギュレータまたは他のモジュレータとして作用する製品を含有する栄養医薬品の品質(たとえば、生物学的活性)、有効性およびバッチ均質性を評価する。
【0012】
これらのアッセイ法は、食品、栄養医薬品または医薬品の所与のサンプルが翻訳開始を調節できる程度を求める正確かつ迅速な手段を提示し、それによって、このような製品を摂取したり、このような製品が投与されるヒトまたは動物に利益が与えられる。これらのアッセイ法により、通常、このような製品のサンプルのmRNAの翻訳開始を阻害する能力について試験することが可能となる。ここに記載する例示的なアッセイにより、三元複合体の形成、アベイラビリティまたは活性を阻害するサンプルの能力を、eIF2αのリン酸化によるか、またはその他か、検出することが可能になる。
【0013】
ある例示的な実施形態においては、製品のサンプルは、特定のmRNA転写物の翻訳をアップレギュレートする能力について試験してもよい。このような転写物の翻訳のアップレギュレーションは、このようなサンプルに含有されるEPAまたは他の3−nPUFAの存在、レベル、アベイラビリティおよび/または活性を示し得る。ある実施形態においては、5′非翻訳領域(5′UTR)が2つ以上のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有する、あるmRNA転写物の翻訳を増加させるサンプルの能力を検出してもよい。ある実施形態においては、ATF−4、BRCA1 mRNAb、CD59、TCTPおよびGCN4のうち1つ以上の翻訳を増加させるサンプルの能力を、該当する製品を摂取するか、該当する製品が投与されるヒトまたは動物に対して健康上の利益を付与するこのようなサンプルの有効性および/または能力の基準として試験してもよい。このようなアッセイは、これらのmRNAのアップレギュレートされた翻訳の結果として、作られたタンパク質の量、アベイラビリティまたは活性の増加を検出してもよい。マーカタンパク質の翻訳が増加、アップレギュレートあるいは調節された程度は、試験結果をコントロールと比較することにより求めてもよい。如何なる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、このような翻訳の増加は、eIF2αのリン酸化および/または三元複合体の阻害により促進されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によって、転写が、食品、栄養医薬品または医薬品のサンプルに含有されるEPAまたは他の3−nPUFAの存在下で増加、アップレギュレートあるいは調節される遺伝子の核酸産物を検出することにより、そのサンプルの有益な活性について評価することが可能となる。
【0015】
ある実施形態においては、本発明は、EPA、他の3−nPUFAまたは他の有益な作用物質の存在下で、増加、アップレギュレートあるいは調節される遺伝子転写物の検出を設ける。このような転写物は、非限定的な様式で、ATF−4、BiP、CHOP、Xpb−1およびアミノ酸シンテターゼをコードするものを含み得る。本発明のある実施形態は、逆転写、核酸増幅(たとえば、当該技術分野で公知のPCRもしくは等温増幅法)または核酸ハイブリタイゼーション法などを通して、このようなタンパク質をコードするmRNA転写物の検出を設ける。増加、アップレギュレートあるいは調節された遺伝子転写の検出は、レポーター遺伝子アッセイを用いて、たとえば、目的の遺伝子のプロモータが、DNA転写が起きることを可能にする系中での試験サンプルまたはコントロールサンプルとの接触の前に、レポーター遺伝子に作動可能に連結されるようにして、行なってもよい。転写が増加、アップレギュレートあるいは調節される程度は、試験サンプル中に見られる転写レベルまたはレポーター遺伝子活性と外部または内部(たとえば、デュアルレポーター)スタンダードまたはコントロールに見られる転写レベルまたはレポーター遺伝子活性との比較を通して求められる。
【0016】
ある例示的な実施形態は、EPA、他の3−nPUFAまたは他の有益な作用物質の存在下で、増加、アップレギュレートあるいは調節される遺伝子転写物によりコードされるタンパク質を検出することによる、食品、栄養医薬品および医薬品のアッセイを設ける。このようなタンパク質は、非限定的な様式で、ATF−4、BiP、CHOP、Xpb−1およびアミノ酸シンテターゼを含み得る。試験サンプルの存在下で見られるこのようなタンパク質のレベルを、スタンダードまたは他のコントロールサンプルの存在下で見られるレベルと比較して、試験サンプルの有効性を求めてもよい。
【0017】
別の実施形態においては、複数の個々の組成物のバッチ均質性を求める方法であって、個々の組成物のうち少なくとも1つの翻訳開始阻害、アップレギュレーション活性または他の調節活性を検出する工程と、個々の組成物のうち少なくとも1つの翻訳開始阻害、アップレギュレーション活性または他の調節活性をスタンダードと比較し、バッチ均質性を求める工程とを含む、方法が提供される。
【0018】
したがって、ある例示的な実施形態においては、物質(たとえば、魚油由来の物質および/またはEPAを含有する物質)が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有するかを判別するための方法が提供される。その方法は、その5′UTRに少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、第2のバイオマーカタンパク質をコードする第2のmRNA配列を含む第2のサンプルを提供する工程と、第2のサンプルを物質と接触させる工程と、第1および第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルを検出する工程とを含む。この検出工程において、物質が少なくとも1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有する場合は、第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、第1のバイオマーカの翻訳レベルよりも大きくなる。ある局面においては、第1のサンプルをスタンダード物質またはコントロール物質と接触させる。他の局面においては、第1のmRNAおよび第2のmRNAは、同じ配列を有する。他の局面においては、第1のバイオマーカタンパク質および第2のバイオマーカタンパク質は、同じタンパク質である。ある局面においては、第1および第2のバイオマーカタンパク質は、乳癌感受性遺伝子1転写b産物(breast cancer susceptibility gene 1(BRCA1)transcript b product)、活性化転写因子4(ATF−4)、翻訳的に制御された腫瘍タンパク質(TCTP)、プロテクチン(CD59)および一般制御非脱抑制4(general control nonderepressible 4:GCN4)からなる群から選択される。他の局面においては、翻訳レベルを検出する工程は、ウエスタン解析、ELISAおよび免疫細胞化学のうち1つ以上により行なわれる。ある局面においては、サンプルは、DNA転写および/またはmRNA翻訳が適宜起こり得る、動物、細胞または無細胞系(たとえば、ウサギ網状赤血球ライセート系(rabbit reticulocyte lysate system))である。細胞は、ヒト、他の哺乳類(限定なしに、マウスおよびラットを含む)、ニワトリもしくは他の鳥類または酵母に由来し得る。無細胞系は、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽、またはHeLa S100抽出物などの哺乳類細胞質抽出物を含む。ある局面においては、5′UTRは、天然由来のものまたは合成されたものである。他の局面においては、5′UTRは、レポータータンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結されている。ある局面においては、翻訳レベルは、レポータータンパク質の1つ以上の活性を評価することにより求められる。他の局面においては、第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、第1のバイオマーカの翻訳レベルの少なくとも150%である。ある局面においては、物質は、n−3多価不飽和脂肪酸(PUFA)(たとえば、エイコサペンタエン酸(EPA))活性について評価されている。ある局面においては、物質は、食品サンプル、栄養医薬品サンプルまたは医薬品サンプルである。
【0019】
ある例示的な実施形態においては、物質(たとえば、魚油由来の物質および/またはEPAを含有する物質)が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有するかを判別するための方法が提供される。その方法は、その5′UTRに少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、バイオマーカタンパク質をコードするmRNA配列を含むサンプルを提供する工程と、サンプルを物質に接触させる工程と、バイオマーカタンパク質の翻訳レベルを検出する工程と、内部スタンダードタンパク質の翻訳レベルを検出する工程とを含む。この検出工程において、物質が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有する場合は、バイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、内部スタンダードタンパク質の翻訳レベルよりも大きくなる。他の局面においては、内部スタンダードタンパク質は、その5′UTRにオープンリーディングフレームを1つ有するか全く有さないmRNA配列によりコードされる。他の局面においては、バイオマーカタンパク質は、BRCA1転写b産物、ATF−4、TCTP、CD59およびGCN4からなる群から選択される。他の局面においては、翻訳レベルを検出する工程は、ウエスタン分析、ELISAおよび免疫細胞化学のうち1つ以上により行なわれる。さらに他の局面においては、5′UTRは、天然由来のものまたは合成されたものである。他の局面においては、5′UTRは、レポータータンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結されている。他の局面においては、翻訳レベルは、レポータータンパク質の1つ以上の活性を評価することにより求められる。他の局面においては、バイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、内部スタンダードの翻訳レベルの少なくとも150%である。他の局面においては、物質は、n−3PUFA(たとえば、EPA)活性について評価されている。他の局面においては、物質は、食品サンプル、栄養医薬品サンプルまたは医薬品サンプルである。
【0020】
ある例示的な実施形態においては、物質(たとえば、魚油由来の物質および/またはEPAを含有する物質)がバイオマーカ遺伝子の転写のアップレギュレーションを媒介するかを検出するための方法が提供される。その方法は、第1のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第1のレポータータンパク質についてのコード領域を有するmRNA配列を含む第1の試験系を提供する工程と、第2のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第2のレポータータンパク質についてのコード領域を有する第2のmRNA配列を含む第2の試験系を提供する工程と、第2の試験系を物質と接触させる工程と、第1および第2のmRNA配列の転写レベルを検出する工程とを含む。この検出工程において、物質がバイオマーカ遺伝子の転写のアップレギュレーションを媒介する場合は、第2のmRNA配列の転写レベルは、第1のmRNA配列の転写レベルよりも大きくなる。ある局面においては、第1および第2の試験系は、動物アッセイ、細胞ベースアッセイまたは無細胞アッセイである。ある局面においては、第1の試験系をスタンダード物質またはコントロール物質に接触させる。他の局面においては、第1のmRNAおよび第2のmRNAは、同じ配列を有し、および/または、第1のレポータータンパク質および第2のレポータータンパク質は、同じタンパク質である。ある局面においては、転写レベルは、リアルタイムPCR(たとえば、in vitroまたはin vivo(たとえば、細胞内))により求められる。ある局面においては、転写活性は、1つ以上のレポータータンパク質活性を検出することにより求められる。他の局面においては、バイオマーカ遺伝子は、アポトーシス促進性タンパク質または腫瘍抑制タンパク質(たとえば、CHOP、BiP、ATF−4、Xbp−1、アミノ酸シンテターゼなど)をコードする。ある局面においては、第2のmRNA配列の転写は、第1のmRNA配列の転写の少なくとも150%である。ある局面においては、物質は、n−3PUFA(たとえば、EPA)活性について評価されている。ある局面においては、物質は、食品サンプル、栄養医薬品サンプルまたは医薬品サンプルである。
【0021】
ある例示的な実施形態においては、品質管理された魚油製品を製造するための方法が提供される。その方法は、第1のmRNA配列の5′非翻訳領域に少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、第1のバイオマーカタンパク質をコードする第1のmRNA配列を含む第1のサンプルを提供する工程と、第2のmRNA配列の5′非翻訳領域(UTR)に少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、第2のバイオマーカタンパク質をコードする第2のmRNA配列を含む第2のサンプルを提供する工程と、第2のサンプルを魚油製品と接触させる工程と、第1および第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルを検出する工程(魚油製品が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を対象に提供できる場合、第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、第1のバイオマーカの転写レベルよりも大きい)と、より大きな転写レベルを有する魚油製品を品質管理された魚油製品として選択する工程とを含む。ある局面においては、第1のサンプルをスタンダード物質またはコントロール物質に接触させる。他の局面においては、第1のmRNAおよび第2のmRNAは、同じ配列を有する。さらに他の局面においては、第1のバイオマーカタンパク質および第2のバイオマーカタンパク質は、同じタンパク質(たとえば、BRCA1転写b産物、ATF−4、TCTP、CD59およびGCN4)である。
【0022】
ある例示的な実施形態においては、品質管理された魚油製品を製造するための方法が提供される。その方法は、mRNA配列の5′非翻訳領域に少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、バイオマーカタンパク質をコードするmRNA配列を含むサンプルを提供する工程と、サンプルを魚油製品と接触させる工程と、バイオマーカタンパク質の転写レベルを検出する工程と、内部スタンダードタンパク質の転写レベルを検出する工程(魚油製品が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を対象に与えることができる場合、バイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、内部スタンダータンパク質の翻訳レベルよりも大きい)と、より大きな翻訳レベルを有する魚油製品を品質管理された魚油製品として選択する工程とを含む。他の局面においては、バイオマーカタンパク質は、BRCA1転写b産物、ATF−4、TCTP、CD59およびGCN4からなる群から選択される。
【0023】
ある例示的な実施形態においては、品質管理された魚油製品を製造するための方法が提供される。その方法は、第1のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第1のレポータータンパク質についてのコード領域を有するmRNA配列を含む第1の試験系を提供する工程と、第2のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第2のレポータータンパク質についてのコード領域を有する第2のmRNA配列を含む第2の試験系を提供する工程と、第2の試験系を魚油製品と接触させる工程と、第1および第2のmRNA配列の転写レベルを検出する工程(魚油製品が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を対象に提供することができる場合、第2のmRNA配列の転写レベルは、第1のmRNA配列の転写レベルよりも大きい)と、より大きな翻訳レベルを有する魚油製品を品質管理された魚油製品として選択する工程とを含む。ある局面においては、バイオマーカプロモータは、CHOPプロモータ、BiPプロモータ、ATF−4プロモータ、Xbp−1プロモータもしくはアミノ酸シンテターゼプロモータなど、または、同様に翻訳開始の阻害により誘導される他のプロモータからなる群から選択される。
【0024】
本発明のあるさらなる例示的な実施形態においては、オメガ−3脂肪酸活性の結果として増加するサンプル中の転写物を、リアルタイムPCRなどの核酸検出法を用いて検出するための方法が提供される。さらに、オメガ−3脂肪酸活性の結果として増加するサンプル中の転写物を、オメガ−3脂肪酸により転写的にアップレギュレートされるプロモータの影響下で遺伝子によりコードされるレポータータンパク質の活性の検出を通して検出するための方法が設けられる。さらに、その5′UTRに2つ以上のオープンリーディングフレームを有する転写物の増加した翻訳の検出のための方法が設けられる。さらに、オメガ−3脂肪酸活性の結果として増加するサンプル中の転写物を検出する方法を用いて、品質管理された食品、栄養医薬品および医薬品を製造するための方法が提供される。
【0025】
本発明の上述のおよび他の特徴ならびに利点は、添付の図面と関連して挙げられる、以下の例示的な実施形態の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】CHOPをコードするmRNA転写物が増幅されたときに得られた結果をグラフにより示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
一部のmRNAは、三元複合体が豊富なときよりも少ないときの方が、より効率的に翻訳されるという逆接的な観察がなされている(Aktas et al., 2004, Journal of Nutrition 134(9): 2487S-2491S; Halperin and Aktas、国際特許出願番号第WO2008/008333号)。これらは、アポトーシス促進性のC/EBP相同タンパク質(CHOP)またはERシャペロン結合タンパク質(BiP)などのERストレス応答遺伝子の多くを転写的にアップレギュレートする、転写因子ATF−4をコードするmRNAを含む(Harding et al., 2000, Mol Cell 6:1099)。mRNAbと呼ばれるBRCA1 mRNAのアイソフォームも、三元複合体が少ないときの方がより効率的に翻訳される。n−3多価不飽和脂肪酸エイコサペンタエン酸(EPA)は、癌細胞中、および動物癌モデルまたはヒト患者のいずれかから切除された腫瘍中で、CHOP(ジェンバンク受入番号S40706)およびグルコース制御タンパク質78(BiP、RefSeq受入番号NM_005347)をアップレギュレートしたこと、また、それは乳癌細胞株および動物腫瘍中でBRCA1 mRNAbの翻訳を増加させたことが観察された。
【0028】
BRCA1 mRNAbおよび活性化転写因子4(ATF−4、RefSeq受入番号NM_001675)をコードするmRNAの各々は、その5′非翻訳領域(5′UTR)に複数のオープンリーディングフレーム(ORF)を含有する。科学的な理論により拘束されることを意図してはいないが、それぞれの5′UTRに2つ以上のORFを含有する追加的なmRNAが同定された。このようなmRNAは、限定されることなしに、翻訳的に制御された腫瘍タンパク質(TCTP、RefSeq受入番号NM_003295.2)、プロテクチン(CD59)および一般制御非脱抑制4(GCN4、RefSeq受入番号NC_00113)をコードする遺伝子のmRNA転写物を含む。ある例示的な実施形態に従うと、食品、栄養医薬品または医薬品のサンプルは、その5′UTRに複数のORFを有するmRNA転写物によりコードされるタンパク質の存在、レベルまたは生物学的活性を増加させる能力について評価してもよい。特に、このようなサンプルは、BRCAl、ATF−4、TCTP、CD59およびGCN4のうち1つ以上の存在、レベルまたは活性の増加を媒介する能力について評価してもよい。
【0029】
ある遺伝子の増加した転写は、三元複合体のインヒビターの存在下でも起きる。ATF−4、BiPおよびCHOPをコードする遺伝子に加えて、翻訳開始のインヒビターの存在下で増加した転写を示す遺伝子は、X−box結合タンパク質1(Xbp−1、RefSeq受入番号NM_001079539.1)およびアミノ酸シンテターゼをコードするものである。このような遺伝子は、魚油に存在するもののような、本発明に従って評価される翻訳開始インヒビターのための適切な試験バイオマーカを提供する。これらの遺伝子転写物を検出し、試験動物、細胞または無細胞系が当該技術分野で公知の方法により試験食品、栄養医薬品または医薬品サンプルに暴露される前後に、これらのレベルを定量化し、転写物のレベルを比較して、試験サンプルがマーカ遺伝子の転写を促進した程度を求めることができる。代替的には、試験バイオマーカ転写物のレベルは、コントロール転写物(たとえば、ハウスキーピング遺伝子)または公知の生物学的活性のスタンダードもしくはコントロールに暴露された動物、細胞もしくは無細胞系から単離された転写物のレベルと比較され得る。同様に、バイオマーカ転写物のタンパク質製品を、検出および定量化し、これらのレベルを、非処理動物、細胞もしくは無細胞系のレベル、または公知の生物学的活性のスタンダードもしくはコントロールに暴露された動物、細胞もしくは系のレベルと比較することができる。
【0030】
ここで用いられる「栄養医薬(nutriceutical)」という用語は、「栄養の(nutritional)」と「医薬の(pharmaceutical)」との組合せであり、ヒトなどの生体に対して1つ以上の有益な効果を有する摂取可能な物質を指す。栄養医薬という用語は、摂取可能な物質中に存在する1つ以上の化合物も指し得る。摂取可能な物質は、健康補助食品、食物、飲料などを含むが、これらに限定されない。「栄養医薬」および「栄養補助食品(nutritional supplement)」という用語は、交換可能に用いられ得る。有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有する物質(たとえば、食品、栄養医薬品または医薬)は、ここに記載されるその成分の個々の1つ以上の健康上の利益(たとえば、ここに記載される1つ以上の疾患および/もしくは障害の予防、緩和ならびに/または治癒において)を与える能力を指す。
【0031】
本発明の栄養医薬品は、冷水魚、温水魚、淡水魚、鹹水魚、汽水魚、野生魚、養殖魚などの魚類に由来する油、およびオメガ−3脂肪酸を含有するもののような脂肪酸の製剤を含む。
【0032】
ここで用いられる「オメガ−3脂肪酸」という用語は、サバ、サケ、イワシなどの脂の多い魚、またはチア(chia)、シソ、亜麻、クルミ、スベリヒユ(purslane)、コケモモ、シーバックソーン(seabuckthorn)、麻の種子などの植物ソース、およびアサイーパーム(acai palm)などの植物の果実に存在するものなどの多価不飽和脂肪酸を指す。オメガ−3脂肪酸は、α−リノール酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などを含むが、これらに限定されない。
【0033】
本発明のある局面は、組成物の翻訳開始もしくは遺伝子転写を阻害、アップレギュレートまたは調節する有効性を求める方法に向けられる。ここで用いられる「有効性(potency)」という用語は、たとえば、栄養医薬品などの化合物の翻訳開始または遺伝子転写を阻害、アップレギュレートあるいは調節する効力を含むことを意図するが、これに限定されない。その組成物の有効性は、スタンダードまたはコントロールに対する、翻訳開始または遺伝子転写を阻害、アップレギュレートあるいは調節するその組成物の能力として定義され得る。
【0034】
本発明のスタンダードまたはコントロールは、ここに記載されるバイオアッセイのうち1つ以上により求められる、翻訳開始阻害もしくは転写阻害、アップレギュレーションもしくは調節活性を有する化合物または組成物である。スタンダードは、オメガ−3脂肪酸またはここに記載される他の作用物質のソースなど、さまざまなソースから得られてもよい。スタンダードは、研究室で合成されても、市販のソースから得られてもよい。スタンダードは、希釈または濃縮されて、その翻訳阻害、アップレギュレーションまたは調節活性をそれぞれ減少または増加させてもよい。代替的には、スタンダードまたはコントロールは、試験系の内部であってもよく、たとえば、その転写または翻訳が、たとえば、β−アクチン、ユビキチン、b−チューブリン、GADPHなどの試験物質により実質的に影響されない遺伝子、遺伝子プロモータ、mRNA転写物またはタンパク質(たとえば、ハウスキーピング遺伝子、プロモータ、転写物またはタンパク質)であってもよい。
【0035】
ある局面においては、スタンダードまたはコントロールは、エイコサペンタエン酸などのオメガ−3脂肪酸である。スタンダードまたはコントロールは、魚油(たとえば、海産魚油)または亜麻種子油に由来してもよい。
【0036】
他の局面においては、スタンダードまたはコントロールは、有効性または生物学的活性が評価されている物質の作用に対して実質的に非感受性であるバイオマーカである。遺伝子もしくは遺伝子プロモータの転写制御、またはmRNA転写物もしくはタンパク質の翻訳制御に関連して、この文脈で用いられる「実質的に非感受性」という用語は、試験物質によって全く影響されないか、または試験物質の活性のためのバイオマーカよりも著しく低い程度で調節される(たとえば、少なくとも10倍、100倍、1000倍または1000倍よりも低い)ことのいずれかを意味する。
【0037】
ある局面においては、試験サンプルは、その有効成分が直線的な範囲にあり、試験系を飽和させないように較正される。較正方法は、当該技術分野で周知であり、単純希釈、段階希釈などを含む。
【0038】
本発明は、組成物の翻訳阻害もしくは転写阻害、アップレギュレーション活性または調節活性を、ここに記載されるバイオアッセイのうち1つ以上を用いてスタンダードと比較するアッセイを提供する。組成物は、スタンダードまたはコントロールの活性の0.001%、0.01%、0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%、101%、102%、103%、104%、105%、106%、107%、108%、109%、110%、115%、120%、125%、130%、135%、140%、145%、150%、155%、160%、165%、170%、175%、180%、185%、190%、195%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%の、または1000%よりも大きい活性レベルを有してもよい。
【0039】
ある局面においては、翻訳開始または遺伝子転写に関する活性の阻害、アップレギュレーションまたは他の調節は、スタンダードまたはコントロールの活性の約1%〜200%の間、約5%〜195%の間、約10%〜190%の間、約20%〜180%の間、約30%〜170%の間、約40%〜160%の間、約50%〜150%の間、約60%〜140%の間、約65%〜135%の間、約70%〜130%の間、約75%〜125%の間、約80%〜120%の間、約85%〜115%の間、約90%〜110%の間、約91%〜109%の間、約92%〜108%の間、約93%〜107%の間、約94%〜106%の間、約95%〜105%の間、約96%〜104%の間、約97%〜103%の間、約98%〜102%の間、または約99%〜101%の間である。他の局面においては、翻訳開始または遺伝子転写に関する活性の阻害、アップレギュレーションまたは他の調節は、スタンダードの活性の約50%から約150%の間、スタンダードの活性の約80%から約120%の間、スタンダードの活性の約90%から約110%の間、またはスタンダードもしくはコントロールの活性の約95%から約105%の間である。
【0040】
いくつかの実施形態においては、コントロールまたはスタンダードの活性は0であってもよい。したがって、所与の活性について、2値の結果(すなわち、正または負)が得られ得る。このような場合、精密な活性の定量化が必要であれば、絶対スケール、または公知のレベルの少なくとも若干の活性を有するスタンダードと比較して、測定されるであろう。
【0041】
本発明の栄養医薬品または栄養医薬品を含む組成物は、希釈または濃縮されて、それぞれその翻訳阻害もしくは転写阻害、アップレギュレーション活性または調節活性を、コントロール/スタンダードに対して減少または増加させてもよい。
【0042】
本発明は、2つ以上(たとえば、10、100、1000、10,000、1,000,000またはそれ以上)の組成物の相対的活性を、ここに記載されるバイオアッセイのうち1つ以上を用いて比較することにより、組成物のバッチ均質性またはロット均質性を求めるアッセイも提供する。ここで用いられる「バッチ均質性」または「ロット均質性」という用語は、バッチまたはロット中の2つ以上の組成物の相対的な翻訳開始阻害、アップレギュレーション活性もしくは調節活性、または転写アップレギュレーション活性を指すことを意図するが、これらに限定されない。ここで用いられる「バッチ」または「ロット」という用語は、2つ以上の組成物の群を指すが、これに限定されない。バッチまたはロットは、共に調製される組成物、または2つ以上のソース(たとえば、地理的ソース、植物ソース、動物ソース、市販ソース、および/または合成ソース)からの組成物を含む。ここで用いられる「バッチ」または「ロット」という用語は、そこから製品もしくは試験サンプルの単位が引き出されるかもしくは生産されるべきであるか、または、さもなければ、そこからさらに分割もしくは分割されるであろう、組成物の単一のプールも指し得る。
【0043】
少なくともある例においては、ここに開示される栄養医薬品は、細胞増殖性障害(たとえば、癌)などの異常細胞増殖に関連する障害の治療に用いられ得る。細胞増殖性障害の治療は、急速増殖を含む増殖の阻害を含むことを意図する。ここで用いられる「細胞増殖性障害」という用語は、多細胞生物中の1つ以上の細胞のサブセットの好ましくないかまたは不適切な増殖により特徴付けられる障害を含む。「癌」という用語は、さまざまな種類の悪性腫瘍(neoplasms)を指し、その殆どが周辺組織に浸潤し得、異なる部位に転移する可能性がある(たとえば、PDR医学辞典第1版、1995年を参照)。「腫瘍(neoplasm)」および「腫瘍(tumor)」という用語は、細胞増殖により正常組織よりも速く成長し、増殖を開始した刺激が取除かれた後で成長し続ける異常組織を指す(たとえば、PDR医学辞典第1版、1995年を参照)。このような異常組織は、正常組織との構造的構成および機能的整合の一部または完全な欠如を示し、良性(すなわち、良性腫瘍)または悪性(すなわち、悪性腫瘍)のいずれであってもよい。
【0044】
「細胞増殖性障害の治療」という文言は、対象における腫瘍の誘発、発症、確立もしくは成長の予防、または対象における既存の腫瘍の成長の低減を含むことが意図される。その文言は、腫瘍細胞の隣接組織への浸潤、または腫瘍のある部位から別の部位への転移の阻害も示し得る。本発明により包含されることが意図される腫瘍の種類の例は、乳房、皮膚、骨、前立腺、卵巣、子宮、頚部、肝臓、肺、脳、喉頭、胆嚢、膵臓、直腸、副甲状腺、甲状腺、副腎、免疫系、神経組織、頭および首、結腸、胃、気管支、ならびに/または腎臓の癌に関連する腫瘍を含むが、これに限定されない。
【0045】
細胞増殖性障害は、たとえば、アテローム性動脈硬化および再狭窄などの増殖性心臓血管障害など、血管平滑筋細胞の過剰増殖に関連する障害をさらに含み得る。細胞増殖性障害は、たとえば、X連鎖魚鱗癬、乾癬、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、表皮溶解性角化症および脂漏性皮膚炎などの、増殖性皮膚病などの障害も含み得る。細胞増殖性障害は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)、肥満細胞症、およびウイルスなどの感染因子により引き起こされる細胞増殖性障害などの障害をさらに含み得る。
【0046】
少なくともある例においては、ここに開示される方法に従って評価および/または生産される栄養医薬品は、糖尿病、肥満、糖原貯蔵障害、脂質貯蔵障害、ミトコンドリア病などを含むが(世界的ウェブサイト:emedicine.com/ped/GENETICS_AND_METABOLIC_DISEASE.htmも参照)、これらに限定されない代謝性障害などの、エネルギバランスに関連する障害の治療に用いることができる。ある局面においては、ここに開示される方法に従って評価および/または生産される栄養医薬品は、レプチン受容体の5′UTRと相互作用することにより、体重増加を調節する。
【0047】
ここに記載される検出方法は、生体サンプル中の、1つ以上の目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチドを、in vitroおよびin vivoで検出するために用いることができる。たとえば、mRNAの検出のin vitroの技術は、ノーザンハイブリダイゼーションおよびin situハイブリダイーゼーションを含む。本発明のマーカに対応するポリペプチドの検出のためのin vitroの技術は、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、ウエスタンブロット、免疫沈降および免疫蛍光を含む。ゲノムDNAの検出のためのin vitroの技術は、サザンハイブリダイーゼーションを含む。さらに、タンパク質および/またはポリペプチドの検出のためのin vivoの技術は、対象中に、タンパク質および/またはポリペプチドに対する標識抗体を導入することを含む。たとえば、抗体は、対象中の存在および位置が標準的な撮像技術により検出され得る放射性マーカにより標識することができる。
【0048】
検出および/または定量化の一般的な原則は、1つ以上の目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチドおよびプローブを含有し得るサンプルまたは反応混合物を、適切な条件下で、また、マーカおよびプローブが相互作用し結合できるのに十分な時間で調製することを含み、それにより、除去され得、および/または反応混合物中で検出され得る複合体が形成される。これらのアッセイは、さまざまな方法で行なわれ得る。
【0049】
たとえば、このようなアッセイを行なう方法の1つは、目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質もしくはポリペプチドまたはプローブを、基質とも呼ばれる固相担体上に固定することと、反応の終わりに固相上に固定された対象とする目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチド/プローブ複合体を検出することとを含むであろう。このような方法の一実施形態においては、マーカの存在および/または濃度について評価されるべきサンプルは、キャリアまたは固相担体上に固定されることができる。別の実施形態においては、逆の状況が可能であり、プローブを固相に固定し、対象からのサンプルをアッセイの非固定成分として反応させることができる。
【0050】
アッセイ成分を固相に固定させるためには多くの確立された方法が存在する。これらは、限定されないが、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合によって固定化されるマーカまたはプローブ分子を含む。このようなビオチン化されたアッセイ成分は、当該技術分野において公知の技術(たとえば、ビオチン化キット,ピアースケミカル(Pierce Chemicals)、イリノイ州、ロックフォード)を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−サクシイミド)から調製され得、ストレプトアビジンでコーティングされた96ウェルプレート(ピアースケミカル)のウェル中で固定化され得る。ある実施形態においては、固定化されたアッセイ成分を有する表面を予め調製し、保存することができる。
【0051】
このようなアッセイのための他の好適なキャリアまたは固相担体は、マーカまたはプローブが属するクラスの分子に結合可能な如何なる材料も含む。周知の担体またはキャリアは、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然および修飾されたセルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱を含むが、これらに限定されない。
【0052】
上述の方法によりアッセイを行なうためには、非固定化成分を、第2の成分が固定された固相に添加する。反応が完了した後、形成された如何なる複合体も固相上に固定化されたまま残るような条件下で、非複合化成分を(たとえば、洗浄により)除去してもよい。固相に固定された目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチド/プローブの複合体の検出は、ここに略述される数多くの方法で達成され得る。
【0053】
ある例示的な実施形態においては、プローブが非固定のアッセイ成分である場合、そのプローブは、アッセイの検出および読出の目的で、直接または間接的に、当業者に周知の検出可能なマーカで標識することができる。検出可能なマーカの例は、さまざまな放射性部分(moieties)、酵素、補欠分子族、蛍光マーカ、発光マーカ、生物発光マーカ、金属粒子、タンパク質−タンパク質結合対、タンパク質−抗体結合対などを含む。蛍光タンパク質の例は、黄色蛍光タンパク質(YFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、フィコエリトリンなどを含むが、これらに限定されない。生物発光マーカの例は、ルシフェラーゼ(たとえば、細菌、蛍、コメツキムシなど)、ルシフェリン、エクオリンなどを含むが、これらに限定されない。視覚的に検出可能なシグナルを有する酵素系の例は、ガラクトシダーゼ、グルコリニダーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、コリンエステラーゼなどを含むが、これらに限定されない。同定可能なマーカは、125I、35S、14C、Hまたは32Pなどの放射性化合物も含む。同定可能なマーカは、さまざまなソースから商業的に入手可能である。
【0054】
蛍光標識ならびにそれらのヌクレオチドおよび/またはオリゴヌクレオチドへの結合は、Haugland, Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals, Ninth Edition (Molecular Probes, Inc., Eugene, 2002); Keller and Manak, DNA Probes, 2nd Edition (Stockton Press, New York, 1993); Eckstein, editor, Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach (IRL Press, Oxford, 1991); および Wetmur, Critical Reviews in Biochemistry and Molecular Biology, 26:227-259 (1991)を含む多くのレビューに記載されている。本発明に適用可能な特定の方法論は、米国特許番号第4,757,141号、第5,151,507号および第5,091,519号の参照文献のサンプルに開示されている。一局面においては、1つ以上の蛍光染料が、たとえば、米国特許番号第5,188,934号(4,7−ジクロロフルオレセイン染料);第5,366,860号(スペクトルにより分割可能なローダミン染料);第5,847,162号(4,7−ジクロロローダミン染料);第4,318,846号(エーテル置換フルオレセイン染料);第5,800,996号(エネルギ移動染料);Lee et al.;第5,066,580号(キサンチン染料);第5,688,648号(エネルギ移動染料)などに開示されるように、標識として用いられる。標識は、米国特許番号第6,322,901号、第6,576,291号、第6,423,551号、第6,251,303号、第6,319,426号、第6,426,513号、第6,444,143号、第5,990,479号、第6,207,392号、第2002/0045045号および第2003/0017264号の特許および特許公報に開示されるように、量子ドットにより実施することもできる。ここで用いられる「蛍光標識」という用語は、1つ以上の分子の蛍光吸収および/または発光性質を通して情報を伝達するシグナリング部分(moiety)を含む。このような蛍光性質は、蛍光強度、蛍光寿命、発光スペクトル特徴、エネルギ移動などを含む。
【0055】
別の実施形態においては、プローブのマーカを認識する能力の判定は、リアルタイム生物分子相互作用分析(BIA)などの技術を利用することにより、いずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカ)も標識することなく達成することができる(たとえば、Sjolander et al. (1991) Anal. Chem. 63:2338 2345 および Szabo et al. (1995) Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699 705を参照)。ここで用いられる「BIA」または「表面プラズモン共鳴法」は、生体特異的な相互作用を、如何なる相互作用物(たとえば、BIAコア)も標識することなく、リアルタイムで研究する技術である。結合表面での質量変化(結合事象を示す)により表面近くの光の屈折率の変化が生じ(表面プラズモン共鳴法(SPR)の光学的現象)、結果として、生体分子間のリアルタイムな反応の表示として用いられ得る検出可能なシグナルが生じる。
【0056】
代替的には、別の実施形態においては、類似の検出および/または定量化アッセイを、液相中、溶質として1つ以上の目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチドおよびプローブを用いて行なうことができる。このようなアッセイにおいては、目的の複合化したDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチドおよびプローブは、分画遠心、クロマトグラフィー、電気泳動および免疫沈降を含むが、これらに限定されない数多くの標準的な技術のいずれかにより、非複合化成分から分離される。分画遠心においては、目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチド/プローブ複合体は、異なるサイズおよび密度に基づく複合体の異なる沈降平衡による、一連の遠心工程を通して、非複合化アッセイ成分から分離され得る(たとえば、Rivas and Minton (1993) Trends Biochem Sci. 18:284を参照)。複合化分子を非複合化分子から分離するために、標準的なクロマトグラフィー技術を利用してもよい。たとえば、ゲル濾過クロマトグラフィーは、サイズに基づいて分子を分離し、適切なゲル濾過樹脂のカラム形式での利用を通して、たとえば、比較的大きな複合体を比較的小さな非複合化成分から分離してもよい。同様に、非複合化成分と比較して、目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチド/プローブ複合体の比較的異なる電荷性質を活用して、たとえば、イオン交換カラムクロマトグラフィー樹脂の利用を通して、非複合化成分から複合体を区別してもよい。このような樹脂およびカラムクロマトグラフィー技術は、当業者には周知である(たとえば、Heegaard (1998) J. MoI. Recognit. 11: 141; Hage and Tweed (1997) J. Chromatogr. B. Biomed. Sci. Appl. 12:499を参照)。ゲル電気泳動法を使用して、複合化アッセイ成分を非結合成分から分離してもよい(たとえば、Ausubel et al, ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987 1999を参照)。この技術においては、タンパク質または核酸複合体は、たとえば、サイズまたは電荷に基づき分離される。電気泳動プロセスの間、結合の相互作用を維持するためには、非変性ゲルマトリックス材料および還元剤の非存在下での条件が、典型的には好ましい。特定のアッセイに適切な条件およびその成分は、当業者には周知であろう。
【0057】
ある例示的な実施形態においては、目的のmRNA配列のレベルは、当該技術分野で公知の方法を用いて、生体サンプル中でのin situおよび/またはin vitroな形式のいずれかにより求めることができる。多くの発現検出法は、単離RNAを用いる。in vitroの方法については、mRNAの単離に対して選択しないRNA単離技術であればいずれも、血液細胞からRNAを精製するために利用できる(たとえば、Ausubel et al, ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987 1999を参照)。さらに、多数の細胞および/またはサンプルを、たとえば、Chomezynskiの単一工程RNA単離プロセス(米国特許番号第4,843,155号、1989年)など、当業者に周知の技術を用いて、容易に処理することができる。
【0058】
単離mRNAは、サザンまたはノーザン解析、ポリメラーゼ連鎖反応分析およびプローブアレイを含むが、これらに限定されないハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイに用いることができる。ある例示的な実施形態においては、mRNAレベルの検出のための診断法は、単離mRNAを、検出されている遺伝子によりコードされるmRNAとハイブリッド形成することができる核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。核酸プローブは、たとえば、全長cDNAであるか、またはその一部、たとえば長さが少なくとも7、15、30、50、100、250または500個のヌクレオチドであり、かつ、ストリンジェントな条件下で、本発明のマーカをコードするmRNAまたはゲノムDNAと特異的にハイブリダイズするために十分なオリゴヌクレオチドなどであり得る。本発明の診断アッセイに用いられる他の好適なプローブは、ここに記載される。
【0059】
一形式においては、たとえば、単離mRNAをアガロースゲル上に流し、mRNAをゲルからニトロセルロースなどの膜に移動させることにより、mRNAを固体表面上に固定化し、プローブと接触させる。代替的な形式においては、たとえば、遺伝子チップアレイにおいて、プローブを固体表面上に固定化し、mRNAをプローブと接触させる。当業者は、公知のmRNA検出法を、本発明のマーカによりコードされるmRNAのレベルを検出する際の使用に容易に適応させることができる。
【0060】
サンプル中で本発明のマーカに対応するmRNAのレベルを求めるための代替的な方法は、たとえば、rtPCR(米国特許番号第4,683,195号および第4,683,202号に記載される実験的な実施形態)、COLD−PCR(Li et al. (2008) Nat. Med. 14:579)、リガーゼ連鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Scl. USA, 88:189)、自家持続配列複製法(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Scl. USA 87:1874)、転写増幅系(Kwoh et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Scl. USA 86:1173)、Q−ベータレプリカーゼ(Lizardi et al. (1988) Bio/Technology 6: 1197)、ローリングサークル複製(米国特許番号第5,854,033号)または任意の他の核酸増幅法による核酸増幅の後に、当業者に周知の技術を用いて増幅された分子を検出するプロセスを含む。これらの検出スキームは、このような分子が非常に少ない数で存在する場合に核酸分子を検出するために特に有用である。ここで用いられる増幅プライマーは、遺伝子の5′または3′領域(それぞれプラスおよびマイナス鎖、またはその反対)にアニールすることができ、かつ、中間に短い領域を含有する1対の核酸分子として定義される。一般的に、増幅プライマーは、長さが約10から30個のヌクレオチドであり、長さが約50から200個のヌクレオチドの領域にフランキングする。適切な条件下、および適切な試薬により、このようなプライマーは、プライマーによりフランキングされたヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
【0061】
in situな方法については、mRNAは、検出の前にサンプル(たとえば、体液(たとえば、血液細胞))から単離する必要はない。このような方法においては、細胞または組織サンプルは、公知の組織学的方法を用いて調製/処理される。次に、サンプルを、典型的にはスライドガラスである担体上に固定化させ、次に、マーカをコードするmRNAにハイブリダイズすることが可能なプローブと接触させる。
【0062】
目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチドの絶対発現レベルに基づいて判定を行なうことの代替として、目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチドの標準化された発現レベルに基づき判定を行なってもよい。発現レベルは、目的のDNA配列、RNA配列、タンパク質またはポリペプチドの絶対発現レベルを、その発現と、たとえば、スタンダードまたはコントロールなど、マーカではない遺伝子の発現とを比較することにより校正することによって標準化される。この標準化により、1つのソースからのサンプルにおける発現レベルと別のソースからのサンプルとを比較することができる。
【0063】
別の例示的な実施形態においては、タンパク質またはポリペプチドが検出される。ある例示的な実施形態においては、本発明のポリペプチドを検出するための作用物質は、検出可能な標識付きの抗体など、本発明のマーカに対応するポリペプチドに結合することの可能な抗体である。抗体は、ポリクローナル、または、より好ましくは、モノクローナルであり得る。インタクトな抗体、またはそのフラグメント(たとえば、FabもしくはF(ab´))を用いることができる。プローブまたは抗体に関して、「標識」という用語は、プローブまたは抗体に、検出可能な物質をカップリング(すなわち、物理的に結合させる)させることによる、プローブまたは抗体の直接的な標識、および、直接標識された別の試薬との反応性による、プローブまたは抗体の間接的な標識を包含することを意図する。間接的な標識の例は、蛍光標識された二次抗体を用いた一次抗体の検出、およびDNAプローブが蛍光標識されたストレプトアビジンにより検出され得るような、ビオチンを有するDNAプローブの末端標識を含む。
【0064】
ポリクローナル抗体は、選択されたタンパク質またはポリペプチドで好適な対象を免疫することにより調製され得る。免疫された対象における選択されたタンパク質の力価は、固定化タンパク質を用いた酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)など、標準的な技術により経時的に監視され得る。所望により、選択されたタンパク質に対する抗体分子は、哺乳類(たとえば、血液)から単離され、さらに、プロテインAクロマトグラフィなどの周知の技術で精製され、IgG画分を得ることができる。免疫後、適切な時点、たとえば、選択された抗タンパク質の抗体価が最も高いときに、抗体産生細胞を対象から得て、Kohler and Milstein (1975) Nature 256:495-497)により初めて記載されたハイブリドーマ技術(Brown et al. (1981) J. Immunol. 127:539-46; Brown et al. (1980) J. Biol. Chem. 255:4980-83; Yeh et al. (1976) Proc. Natl. Acad. Scl. USA 76:2927-31; および Yeh et al. (1982) Int. J. Cancer 29:269-75も参照)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al. (1983) Immunol. Today 4:72)、EBV−ハイブリドーマ技術(Cole et al. (1985), Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96)またはトリオーマ技術などの標準的な技術により、モノクローナル抗体を調製するために用いることができる。モノクローナル抗体ハイブリドーマを産生する技術は、周知である(一般的には、R. H. Kenneth, in Monoclonal Antibodies: A New Dimension In Biological Analyses, Plenum Publishing Corp., New York, N.Y. (1980); E. A. Lerner (1981) Yale J. Biol. Med. 54:387-402; Gefter et al. (1977) Somatic Cell Genet. 3:231- 36を参照)。簡潔には、不死細胞株(典型的には、骨髄腫)を、上述のように、選択されたタンパク質により免疫された哺乳類からのリンパ球(典型的には、脾細胞)に融合させて、得られたハイブリドーマ細胞の培養上清をスクリーニングして、選択されたタンパク質に結合するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを同定する。
【0065】
サンプルが所与の抗体に結合するタンパク質を含有するかを判別するためには、さまざまな形式が使用され得る。このような形式の例は、酵素免疫測定法(EIA)、放射性免疫測定法(RIA)、ウエスタンブロット分析、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)などを含むが、これらに限定されない。当業者であれば、公知のタンパク質/抗体検出法を、細胞(たとえば、血液細胞などの体液細胞)が本発明のマーカを発現するかを判別する際の使用に容易に適応できる。
【0066】
一形式においては、ウエスタンブロットまたは免疫蛍光技術などの方法において、抗体、または抗体フラグメントを用いて、発現されたタンパク質を検出することができる。このような使用においては、一般的に、抗体またはタンパク質のいずれかを固体担体上に固定化することが好ましい。好適な固相担体またはキャリアは、抗原または抗体を結合することの可能な如何なる担体も含む。周知の担体またはキャリアは、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロン、アミラーゼ、天然および修飾セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩および磁鉄鉱などを含む。
【0067】
当業者であれば、抗体または抗原を結合するための多くの他の好適なキャリアを知っており、このような担体を本発明による使用に適応することが可能であろう。たとえば、細胞(たとえば、血液細胞などの体液細胞)から単離されたタンパク質をポリアクリルアミドゲル電気泳動法で流して、ニトロセルロースなどの固相担体上に固定化することができる。次に、担体を、好適な緩衝液で洗浄して、その後、検出可能に標識された抗体により処理することができる。次に、固相担体を緩衝液で2度洗浄し、非結合抗体を除去することができる。次に、固体担体上の結合標識の量が、従来の手段により検出され得る。
【0068】
ある例示的な実施形態においては、本発明のアッセイは、動物モデル(ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、アラチネズミ、非ヒト霊長類などを含むが、これらに限定されない)、細胞(たとえば、微生物からの細胞(たとえば、細菌細胞、ウイルス細胞、酵母細胞など))または無細胞系(たとえば、in vitro転写アッセイ、in vitro翻訳アッセイ、細胞ライセートアッセイ、分画された細胞ライセートアッセイなど)において行なわれてもよい。
【0069】
記載された本発明の実施形態は、本発明の原則の応用の一部を例示するに過ぎないことが理解されるべきである。本発明の真の精神および範囲から逸脱することなしに、ここに提示した教示に基づき、当業者により数多くの変形例が行なわれてもよい。本出願の全体を通して引用される参照文献、特許および公開特許出願のすべての内容は、そのすべてがここに引用により援用されている。
【0070】
以下の実施例は、本発明の代表例として記載される。これらおよび他の同等の実施形態は、本願の開示、図、表および添付の請求項を鑑みて明らかであろうため、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0071】
実施例1
リアルタイムPCRによるバイオマーカmRNAの検出
リアルタイムPCRは、特定のRNAのレベルの変化を検出する定量法である。したがって、三元複合体のインヒビターの存在下で転写的にアップレギュレートされるアポトーシス促進性遺伝子または腫瘍抑制遺伝子のためのリアルタイムPCRは、三元複合体のアベイラビリティを評価するために迅速かつ正確な定量アッセイを提供し、また、オメガ−3脂肪酸により誘導されるeIF2αのリン酸化の検出のために効果的な代替アッセイである。この新たなアッセイは、三元複合体のアベイラビリティに強く依存する既存のATF−4細胞ベースアッセイの使用を通して得られるアッセイと著しい相関関係を示す。したがって、それは、オメガ−3脂肪酸、および三元複合体のアベイラビリティに影響を与えてmRNA翻訳を開始する他の有益な化合物の、活性に関する食品、栄養医薬品および医薬品の品質管理および保証のための改良方法である。
【0072】
標準的リアルタイムPCRアッセイ
1.たとえば、5〜10%ウシ胎仔もしくはウシ胎児血清を含有するDMEMまたはRPMI164などの標準的な培地で成長させた、たとえば、ネズミ肝細胞、マウス繊維芽細胞またはヒト繊維芽細胞などのヒト、マウスまたはラットのいずれかに由来する細胞を、各条件について、プレート(6ウェルプレートもしくは100mmプレート中の3つのウェルか、または他の容器)に蒔く。
【0073】
2.被評価化合物で、またはコントロール/スタンダードビヒクルで処理する。
3.6時間後、細胞を採取する。
【0074】
4.RNAを単離する。
5.RNAを逆転写する。
【0075】
6.バイオマーカmRNA(たとえば、CHOP、BiP、ATF−4、Xbp−1、またはアミノ酸シンテターゼをコードするもの)の逆転写物および18S RNA(内部スタンダード)の逆転写物を増幅する。
【0076】
7.18S逆転写物に対する標準化の後、バイオマーカ逆転写物の量を定量化する。
8.バイオマーカ逆転写物の量を、異なる形で処理されたサンプル(たとえば、試験化合物またはビヒクルにより処理)の全体に亘って比較する。
【0077】
細胞内、リアルタイムPCRアッセイ
1.細胞をプレート(たとえば、96ウェルプレートまたは他のマルチチャンバ形式中)に蒔く。
【0078】
2.異なる用量の化合物またはビヒクルにより処理する。
3.6時間後、細胞を溶解する。
【0079】
4.同じウェル中で逆転写する。
5.バイオマーカmRNA(たとえば、CHOP、BiP、ATF−4、Xbp−1、またはアミノ酸シンテターゼをコードするもの)の逆転写物および18S RNAの逆転写物を同じウェル中で増幅する。
【0080】
6.18S逆転写物に対する標準化の後、バイオマーカ逆転写物の量を定量化する。
7.バイオマーカ逆転写物の量を、異なる形で処理されたサンプル(たとえば、試験化合物またはビヒクルにより処理)の全体に亘って比較する。
【0081】
CHOPをコードするmRNA転写物を増幅したときに得られた結果を、既存のATF−4アッセイで得られた結果と比較して、図1に示す。
【0082】
実施例2
レポーター遺伝子アッセイを介したバイオマーカ遺伝子の転写活性の検出
食物、栄養医薬および医薬組成物中のオメガ−3脂肪酸の存在および活性を評価する別の手段は、レポーター遺伝子コンストラクトを用いてマーカ遺伝子転写活性のアップレギュレーションを測定することである。この方法に従うと、各々のこのようなコンストラクトは、レポータータンパク質(たとえば、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、赤色、遠赤色、ds赤色、ds赤色2、橙色、黄色、シアン、ベータガラクトシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アクアポリン、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、または検出可能なシグナルを発生するか、当業者に公知の方法による検出に対して感受性が高い酵素活性もしくは他の活性を有する他のタンパク質)をコードする核酸配列を含有する。コンストラクトのレポータータンパク質コード配列に作動可能に連結されるのは、オメガ−3脂肪酸または、たとえば、三元複合体インヒビターなど、mRNA翻訳開始の他の好適なインヒビターの存在下で、転写的にアップレギュレートされる天然由来のまたは合成されたプロモータ領域である。好適なプロモータは、非限定的な様式で、CHOP、BiP、ATF−4、Xbp−1、またはアミノ酸シンテターゼなどのバイオマーカをコードする遺伝子のプロモータを含む。核酸転写およびmRNA翻訳が起きることのできる条件下で、系は試験サンプルと接触し、それにより処理される。好適な負のコントロールは、そのように接触もしくは処理されていない並行試験系、または適切なスタンダードサンプルと接触もしくはそれにより処理されたものとを含むが、これらに限定されない。試験系およびコントロール系の両方において、レポータータンパク質機能は、当該技術分野で周知の方法により検出および定量化され、試験系および標準系におけるレポーター機能のレベルは比較されて、試験サンプル中に存在するオメガ−3脂肪酸の有効性が求められる。このようなアッセイにおいて、未変性のATF−4 5′UTRも含むATF−4プロモータコンストラクトまたはCHOPプロモータコンストラクトを用いて得られたシグナルは、他のプロモータを用いて生ずるであろうシグナルよりも高度に増幅される。なぜなら、ATF−4は、オメガ−3脂肪酸の存在下で、転写的にかつ翻訳的にアップレギュレートされるためである。レポーターコンストラクトは、このことを考慮に入れて、たとえば、類似の由来、処理などによるサンプルで得られた結果に基づき、アッセイ前に推定されるレポーターコンストラクトの有効性に依存して、試験サンプルへの暴露から生じると予想されるレポーター活性のレベルに対して直線的な範囲にシグナルレベルを保つように設計されてもよい。
【0083】
本発明のあるレポーターコンストラクトは、CHOPプロモータおよびATF−4 5′UTRを用いてなど、高効率な転写プロモータと高効率な翻訳5′UTRとを組合せて、好ましくは幾何学的な信号増幅を与えることにより、2つの要素のうち1つしか含まないレポーターコンストラクトと比較して、有利なシグナル対ノイズ比も与える。このようなレポーターコンストラクトは、処理の初期の段階で、または稀な活性を検出する際によく遭遇する、希釈または弱く正のサンプルを比較するときなど、高い感度が望ましいアッセイにおいて特に有用である。プロモータおよび5′UTRは、当業者に公知の方法を用いて、また、ここに記載されるように、組合されて単一のレポーターコンストラクトとすることができる。有用なプロモータは、非限定的な様式で、CHOP、BiP、ATF−4、Xbp−1、またはアミノ酸シンテターゼなど、ならびに他の当該技術分野で公知のものおよびここに記載されるものなどのバイオマーカをコードする遺伝子のプロモータが含まれる。有用な5′UTRは、ATF−4、BRCA1 mRNAb、CD59、TCTPおよびGCN4など、ならびに他の当該技術分野において公知のものおよびここに記載されるものを含む。両方の要素を含む有用なレポーターコンストラクトは、選択された要素、すなわち、5′UTRおよびプロモータ対合が、同じまたは同様の作用物質またはシグナルに応答するとき、特に有利である。
【0084】
実施例3
バイオマーカタンパク質の増加した翻訳の検出
食品、栄養医薬品または医薬品中のオメガ−3脂肪酸または他の有益な作用物質の有効性を求めるために、2つ以上のORFを含有する5′UTR配列がレポータータンパク質をコードする配列に作動可能に連結されたmRNA転写物を、タンパク質翻訳が起こり得る条件、たとえば、ウサギ網状赤血球ライセート系またはmRNAのタンパク質への翻訳を実施するために必要な細胞成分を含有する他のin vitro系などの動物、細胞または無細胞翻訳系に暴露する。転写物は、系内で産生してもよく(たとえば、動物、細胞または、レポーターコンストラクトおよび、たとえば、RNAポリメラーゼなどの適切な核酸ポリメラーゼを含有する他の混合物の中で発現)、または、外生的に産生して系に添加してもよい。系は、随意に、翻訳効率が、アッセイが検出することを意図するオメガ−3脂肪酸または他の有益な作用物質の存在により影響されない内部または他のコントロールレポーターmRNAを含有してもよく、それにより、試験およびコントロールの翻訳活性のレベルを、翻訳されるために利用可能な試験およびコントロール転写物の相対的な量に対して標準化することができる。代替的には、レポーターmRNAレベルは、さまざまな試験サンプルと比較されるレポーター機能のレベルとの間に標準化してもよい。
【0085】
試験転写物に適切な5′UTRは、非限定的な様式で、BRCA1、ATF−4、TCTP、CD59またはGCN4などのバイオマーカタンパク質をコードする遺伝子またはmRNA転写物のものを含む。コントロール転写物に適切な5′UTRは、ハウスキーピングタンパク質をコードし、および/または、それぞれの5′UTRに1つもしくはより少ない(すなわち、0)ORFを有する遺伝子またはmRNA転写物から引き出されてもよい。
【0086】
上述の系は、食物、栄養医薬または医薬組成物のサンプルにより処理するか、またはそれと接触させ、試験およびコントロールレポータータンパク質機能の量(たとえば、試験サンプル内、試験サンプルと未処理サンプルとの間、試験サンプルと、オメガ−3脂肪酸または他の有益な作用物質の有効性についてスタンダードにより処理されたサンプルとの間)が、当該技術分野で周知の方法により検出および定量化される。その検出および定量化において、レポーター機能の上昇したレベルは、試験レポーターmRNAの翻訳活性、また、結果的には、試験サンプル中に含有されるオメガ−3脂肪酸または他の有益な作用物質の有効性と、正の相関関係を有する。
【0087】
実施例4
品質管理された魚油からの栄養医薬品および他の製品の製造
上記のように、魚油はオメガ−3脂肪酸の重要なソースである。しかし、魚油の供給物は、これらの有益な化合物の含有量および生物活性においてそれぞれ大きく異なる。本発明は、オメガ−3脂肪酸の公知の、均一な生物活性を所有する魚油由来の製品の製造方法を提供する。
【0088】
魚を捕まえて、生きている間または殺してすぐに、食品グレードの製造条件下で押圧し、魚肉から油の抽出を行なう。重金属および他の環境汚染物質を、濾過、キレート化および/または関連技術において当業者に公知の他の方法により除去する。随意に、次に、魚油をさらに処理して、たとえば、味、臭いおよび/または見た目を改善させるか、他の有益な作用物質(非限定的な様式で、植物ステロールまたは他の有益な化合物を含む)を添加するか、またはオメガ−3脂肪酸および/もしくは他の有益な作用物質を濃縮させてもよい。随意に、未処理か、部分的に処理(たとえば、解毒化)されているか、分画されているか、さもなければ処理された魚油を、たとえば、瓶または他の摂取不可能な容器、または、たとえば、ゲルカプセルもしくはカプレットなど、食品もしくは医薬品グレードのカプセルなどの摂取可能な容器中に包装してもよい。随意に、魚油中に含有されるオメガ−3脂肪酸および/または他の有益な作用物質を富化したり、部分的に精製したり、またはさらに完全に精製、すなわち単離してもよい。
【0089】
1つ以上の上述の製造段階において、魚油、中間製品または仕上がり製品の、ATF−4、CHOP、BiP、Xbp−1またはアミノ酸シンテターゼなどのバイオマーカをコードする遺伝子のうち1つ以上の増加した転写を行なう能力、または代替的には、非限定的な様式で、BRCA1、ATF−4、TCTP、CD59またはGCN4などのバイオマーカをコードするmRNAからの5′UTRを含む、その5′UTRに2つ以上のORFを含有するmRNAの増加した翻訳を行なう能力を、ここで先の実施例に記載した方法を用いて評価する。製造の初期段階中に得られるアッセイ結果によって、さらなる製造工程の間にオメガ−3脂肪酸の濃度を調整することが可能となり、または、製品成分の集合体、混合物または配合物から、オメガ−3脂肪酸生物活性に関して公知の有効性を有する食品、栄養医薬品または医薬品を導くこともできる。随意に、仕上がり製品のサンプル(たとえば、各々、それが取り出され、もしくは選択されたバッチまたはロットを示す液体もしくは粉末の一定分量、または単一のカプレット)を流通前に評価することにより、製品が所有する有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質のレベルに関して、たとえば、翻訳開始の阻害、またはバイオマーカ遺伝子転写もしくはmRNA翻訳の阻害、アップレギュレーションもしくは他の調節に関連する治療的もしくは予防的性質に関して、ラベルまたは他のマーケティング的な主張を行なうことが可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有するかを同定または判別するための方法であって、
5′非翻訳領域(UTR)に少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、第1のバイオマーカタンパク質をコードする第1のmRNA配列を含む第1のサンプルを提供する工程と、
5′UTRに少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、第2のバイオマーカタンパク質をコードする第2のmRNA配列を含む第2のサンプルを提供する工程と、
前記第2のサンプルを前記物質に接触させる工程と、
前記第1および第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルを検出する工程(前記物質が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有する場合、前記第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、前記第1のバイオマーカの翻訳レベルよりも大きい)とを含む、方法。
【請求項2】
前記第1のサンプルをスタンダード物質またはコントロール物質と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のmRNAおよび前記第2のmRNAは、同じ配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1のバイオマーカタンパク質および前記第2のバイオマーカタンパク質は、同じタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1および第2のバイオマーカタンパク質は、乳癌遺伝子1(BRCA1)転写b産物、活性化転写因子4(ATF−4)、翻訳的に制御された腫瘍タンパク質(TCTP)、プロテクチン(CD59)および一般制御非脱抑制4(GCN4)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記翻訳レベルを検出する工程は、ウエスタン解析、ELISAおよび免疫細胞化学のうち1つ以上により行なわれる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプルは、動物、細胞または無細胞系である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記無細胞系は、ウサギ網状赤血球ライセート系である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記5′UTRは、天然由来である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記5′UTRは、合成されたものである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記5′UTRは、レポータータンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結されている、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
翻訳レベルは、前記レポータータンパク質の1つ以上の活性を評価することにより求められる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、前記第1のバイオマーカの翻訳レベルの少なくとも150%である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記物質は、魚油に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記物質は、n−3多価不飽和脂肪酸(PUFA)活性について評価されている、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記n−3PUFAは、エイコサペンタエン酸(EPA)である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記物質は、EPAを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記物質は、食品サンプル、栄養医薬品サンプルおよび医薬品サンプルからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
物質が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有するかを同定または判別するための方法であって、
5′UTRに少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、バイオマーカタンパク質をコードするmRNA配列を含むサンプルを提供する工程と、
前記サンプルを前記物質に接触させる工程と、
前記バイオマーカタンパク質の翻訳レベルを検出する工程と、
内部スタンダードタンパク質の翻訳レベルを検出する工程(前記物質が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を有する場合、前記バイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、前記内部スタンダードタンパク質の翻訳レベルよりも大きい)とを含む、方法。
【請求項20】
前記内部スタンダードタンパク質は、5′UTRにオープンリーディングフレームを1つ有するか全く有さないmRNA配列によりコードされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バイオマーカタンパク質は、BRCA1転写b産物、ATF−4、TCTP、CD59およびGCN4からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記翻訳レベルを検出する工程は、ウエスタン分析、ELISAおよび免疫細胞化学のうち1つ以上により行なわれる、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記5′UTRは、天然由来である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記5′UTRは、合成されたものである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記5′UTRは、レポータータンパク質をコードするコード配列に作動可能に連結されている、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
翻訳レベルは、前記レポータータンパク質の1つ以上の活性を評価することにより求められる、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記バイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、前記内部スタンダードの翻訳レベルの少なくとも150%である、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記物質は、魚油に由来する、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記物質は、n−3PUFA活性について評価されている、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
前記n−3PUFAは、EPAである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記物質は、EPAを含有する、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記物質は、食品サンプル、栄養医薬品サンプルおよび医薬品サンプルからなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
バイオマーカ遺伝子の転写のアップレギュレーションを媒介する物質を同定するための方法、または物質がバイオマーカ遺伝子の転写のアップレギュレーションを媒介するかを検出するための方法であって、
第1のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第1のレポータータンパク質についてのコード領域を有するmRNA配列を含む第1の試験系を提供する工程と、
第2のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第2のレポータータンパク質についてのコード領域を有する第2のmRNA配列を含む第2の試験系を提供する工程と、
前記第2の試験系を前記物質に接触させる工程と、
前記第1および第2のmRNA配列の転写レベルを検出する工程(前記物質が前記バイオマーカ遺伝子の転写のアップレギュレーションを媒介する場合、前記第2のmRNA配列の転写レベルは、前記第1のmRNA配列の転写レベルよりも大きい)とを含む、方法。
【請求項34】
前記第1および第2の試験系は、動物、細胞および無細胞アッセイからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の試験系をスタンダード物質またはコントロール物質に接触させる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記第1のmRNAおよび前記第2のmRNAは、同じ配列を有する、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記第1のレポータータンパク質および前記第2のレポータータンパク質は、同じタンパク質である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
転写レベルは、リアルタイムPCRにより求められる、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
リアルタイムPCRは、in vitroで行なわれる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
リアルタイムPCRは、細胞内で行なわれる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
転写活性は、1つ以上のレポータータンパク質活性を検出することにより求められる、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記バイオマーカ遺伝子は、アポトーシス促進性タンパク質または腫瘍抑制タンパク質をコードする、請求項33に記載の方法。
【請求項43】
前記バイオマーカ遺伝子は、CHOP、BiP、ATF−4、Xbp−1およびアミノ酸シンテターゼをコードする核酸配列からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記第2のmRNA配列の転写は、前記第1のmRNA配列の転写レベルの少なくとも150%である、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記物質は、食品サンプル、栄養医薬品サンプルおよび医薬品サンプルからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記物質は、魚油に由来する、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記物質は、n−3PUFA活性について評価されている、請求項33に記載の方法。
【請求項48】
前記n−3PUFAは、EPAである、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記物質は、EPAを含有する、請求項33に記載の方法。
【請求項50】
品質管理された魚油製品を製造するための方法であって、
第1のmRNA配列の5′非翻訳領域に少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、第1のバイオマーカタンパク質をコードする前記第1のmRNA配列を含む第1のサンプルを提供する工程と、
第2のmRNA配列の5′非翻訳領域(UTR)に少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、第2のバイオマーカタンパク質をコードする前記第2のmRNA配列を含む第2のサンプルを提供する工程と、
前記第2のサンプルを前記魚油製品に接触させる工程と、
前記第1および第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルを検出する工程(前記魚油製品が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を対象に提供できる場合、前記第2のバイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、前記第1のバイオマーカの翻訳レベルよりも大きい)と、
より大きな翻訳レベルを有する魚油製品を品質管理された魚油製品として選択する工程とを含む、方法。
【請求項51】
前記第1のサンプルをスタンダード物質またはコントロール物質に接触させる、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第1のmRNAおよび前記第2のmRNAは、同じ配列を有する、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記第1のバイオマーカタンパク質および前記第2のバイオマーカタンパク質は、同じタンパク質である、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記第1および第2のバイオマーカタンパク質は、BRCA1転写b産物、ATF−4、TCTP、CD59およびGCN4からなる群から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項55】
品質管理された魚油製品を製造するための方法であって、
mRNA配列の5′非翻訳領域に少なくとも2つのオープンリーディングフレームを有し、バイオマーカタンパク質をコードする前記mRNA配列を含むサンプルを提供する工程と、
前記サンプルを前記魚油製品と接触させる工程と、
前記バイオマーカタンパク質の翻訳レベルを検出する工程と、
内部スタンダードタンパク質の翻訳レベルを検出する工程(前記魚油製品が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を対象に与えることができる場合、前記バイオマーカタンパク質の翻訳レベルは、前記内部スタンダードタンパク質の翻訳レベルよりも大きい)と、
より大きな翻訳レベルを有する魚油製品を品質管理された魚油製品として選択する工程とを含む、方法。
【請求項56】
前記バイオマーカタンパク質は、BRCA1転写b産物、ATF−4、TCTP、CD59およびGCN4からなる群から選択される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
品質管理された魚油製品を製造するための方法であって、
第1のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第1のレポータータンパク質についてのコード領域を有するmRNA配列を含む第1の試験系を提供する工程と、
第2のバイオマーカプロモータに作動可能に連結された第2のレポータータンパク質についてのコード領域を有する第2のmRNA配列を含む第2の試験系を提供する工程と、
前記第2の試験系を前記魚油製品に接触させる工程と、
前記第1および第2のmRNA配列の転写レベルを検出する工程(前記魚油製品が1つ以上の有益な生物学的、栄養医薬的または医薬的性質を対象に提供することができる場合、前記第2のmRNA配列の転写レベルは、前記第1のmRNA配列の転写レベルよりも大きい)と、
より大きな翻訳レベルを有する魚油製品を品質管理された魚油製品として選択する工程とを含む、方法。
【請求項58】
前記バイオマーカプロモータは、CHOPプロモータ、BiPプロモータ、ATF−4プロモータ、Xbp−1プロモータまたはアミノ酸シンテターゼプロモータからなる群から選択される、請求項57に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−523837(P2012−523837A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−505958(P2012−505958)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/031393
【国際公開番号】WO2010/121131
【国際公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(504000410)プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ (10)
【Fターム(参考)】