説明

栞及びメモ機能を備えたストリーミング・データ再生装置

【課題】 従来のストリーミング・データ再生装置に栞及びメモ機能を追加する。
【解決手段】 ストリーミング・データ再生装置(402、403)は、ストリーミング・サーバ(401)への要求に応答して送信されるストリーミング・データを受信し、受信されたストリーミング・データを再生する手段と、受信されたストリーミング・データが再生されている時間軸上の特定の位置を指定する手段と、指定された時間軸上の特定の位置データが栞データとして記憶されるメモリと、前記メモリに記憶された栞データを読み出し、読み出された栞データに含まれる時間軸上の特定の位置データから前記受信されたストリーミング・データが再生される際の特定の時間軸上の位置を指定する手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、ストリーミング・データ再生装置に関し、更に詳しくは、既存のストリーミング・データ再生装置において、動画が再生される間の希望する時点にメモを付加する機能を有するストリーミング・データ再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーバ上にある音声や動画データを、クライアントがすべてダウンロードしてからではなく、順次データを再生することを可能にするストリーミング技術は、高速通信機能を備えたパーソナル・コンピュータの普及と共に広く知られるようになった。例えば、インターネット上の多くの報道サイトにおいて動画を見ることができるのは、この技術による場合が多い。言うまでもないが、リアルオーディオないしリアルビデオ、ウィンドウズ・メディア、クイックタイム(それぞれ、登録商標)など、ストリーミングを可能にするソフトウェアも、広く知られ、用いられている。
【0003】
この技術は、教育の分野でも広く用いられている。大学における教育を公開している一例として、マサチューセッツ工科大学(MIT)のオープンコースウエア(OpenCourseWare)があるが、この中では、日本でもその教科書が翻訳され広く知られているギルバート・ストラング教授による線形代数の講義が、そのまま、ストリーミング技術を用いてビデオ講義として提供されている。
【0004】
このようなストリーミング技術を用いた講義を聴講する場合に、特定の時点にたちかえって、例えば一度目には理解が困難だった部分をもう一度聞きたい場合には、ディスプレイ上に表示されている再生位置を調整するスライドバーをマウスなどを用いてドラッグすればよい。しかし、これは意外に、容易ではない。スライドバーを特定の位置に移動させる技術があれば非常に便利であることは、スライドバーをスライドさせてみた経験をもつ者ならば、一度は考えたことがあるであろう。
【0005】
また、ストリーミング技術によって再生される動画を見て何かを学ぶ場合には、特定の位置に疑問点やメモを付けることができれば便利であろう。これは、ちょうど、書物を用いて勉強するときに、後から参照するときのために、栞として紙製の付箋を付けたり、本に直接に書き込みをしたり、メモ用紙をはさんだりするのと同じである。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、このような要望をかなえるためのストリーミング・データ再生装置を提供することを目的とする。メモ機能を実現するソフトウェアは、ストリーミング・サーバにおいてではなく、クライアント側(ストリーミング・ファイルを再生するパソコン側)で動作するので、サーバやネットワークに不要な負荷をかけることもない。
【0007】
本発明によると、インターネットを含む通信ネットワークを介してストリーミング・サーバと接続されたストリーミング・データ再生装置であるストリーミング・プレーヤが提供される。このストリーミング・データ再生装置は、通常は、通信機能を備えた一般的なパーソナル・コンピュータとして実現されているが、前記ストリーミング・サーバへの要求に応答して送信されるストリーミング・データを受信し、受信されたストリーミング・データを再生する手段と、前記受信されたストリーミング・データが再生されている時間軸上の特定の位置を指定する手段と、前記指定された時間軸上の特定の位置データが栞データとして記憶されるメモリと、前記メモリに記憶された栞データを読み出し、読み出された栞データに含まれる時間軸上の特定の位置データから前記受信されたストリーミング・データが再生される際の特定の時間軸上の位置を指定する手段と、を備えている。時間軸上の特定の位置を指定する手段は、パーソナル・コンピュータのディスプレイ上に表示される「栞ボタン」等をマウスなどで押下することによって、指定を行う。
【0008】
本発明によるストリーミング・データ再生装置は、更に、前記栞データと関連付けられておりテキスト・データ、静止画データ、動画データ及び音声データを少なくとも含むメモ・データを作成する手段を備えている場合がある。なお、前記メモ・データは、関連付けられている栞データと共に、前記メモリに記憶される。
【0009】
また、本発明の有する質問機能を用いると、本発明によるストリーミング・データ再生装置を含む学習システムであって、作成され前記メモリに記憶されたデータを読み出し前記通信ネットワークを介して別のストリーミング再生装置に送信することにより、前記別のストリーミング再生装置と前記データを共有することが可能な学習システムを構成することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1には、ストリーミング・サーバと動画が再生されるクライアント端末との間での動作の概略が示されている。まず、クライアント端末において、ストリーミング・データ再生装置と同時に、メモ機能実現プログラムが起動される。起動されたメモ機能実現プログラムは、再生しようとするストリーミング・データの制御情報を監視し、コンテンツ情報を取得する。そして、メモ機能実現プログラムに、コンテンツ情報がセットされる。時間軸データも作成する。
【0011】
ストリーミングの再生が開始されると、時間軸が追跡される。「栞挿入」ボタンが押下されると、時間軸上にインデックスが付与される。このインデックスに対し「メモ編集」ボタンが更に押下された場合には、外部ファイルが生成され、メモ又は質問がその外部ファイルとして付加される。再生が停止されると、作成された栞・メモファイルがメモリに記憶される。
【0012】
図2には、栞が挿入される場合の処理が、流れ図として示されている。ステップ201では、ストリーミング・データ再生装置の動作開始と同時に、「栞・メモプログラム」を起動する。このプログラムは、起動と同時に、クライアント端末側とストリーミング・サーバとの間でやり取りされるストリーミング・データの制御情報を監視する。ステップ202では、監視によって得られたデータから、ストリーミングのコンテンツ情報を取得する。配信元のサーバやファイル名、全体の長さ等、栞の作成・保存に必要な情報を取得する。ステップ203では、再生に要する時間を含めた時間軸データを生成し、ストリーミングの再生情報が流れるまで待機する。ステップ204では、再生と同時に時間軸追跡を開始し、栞が挿入されるのを待つ。ステップ205では、「しおり挿入」ボタンが押下され、時間軸データ上にインデックスを付与する。「メモ編集」ボタンが押下された場合には、メモ編集画面を起動する。インデックス付与後も再生が終了するまで監視を継続し、再生が終了するまでステップ205の動作が反復される。ステップ206では、クライアント端末のメモリに栞とメモとが保存される。ステップ207では、プログラムが終了される。
【0013】
図3には、栞に加えて、ストリーミング再生の間のある時点においてメモが作成される場合の処理を示している。クライアント端末において、「メモ編集」ボタンが押下されると、メモ編集ツールが起動される。第1の静止画メモ(テキスト)の場合には、テキスト入力エリアをオープンし、キーボードより入力を行う。第2の静止画メモ(画像)の場合には、描画用のツール(線画、図形描写、着色、選択、削除等)を起動し、各ツールを使って描画を行う。この場合、描画領域は仮想的なシートないしレイヤとして重畳的に構成され、独立したデータとして扱われるため、ストリーミングの再生データそのものには影響を及ぼさない。第3の動画メモの場合には、描画自体の仕組みは画像静止画メモと同じであるが、時間軸を含めて記録されるため、ストリーミング・データと同期を取りながら再生することができる。第4の音声メモの場合には、音声入力装置を使い、音声ファイルとして記録される。
【0014】
これらのデータは、すべてが、「栞・メモプログラム」の独自ファイルとしてストリーミング・データとは別にクライアント端末のメモリに保存される。ストリーミングとメモとは、栞によるインデックスと時間軸データとに基づいて同期が取られている。
【0015】
図4には、質問機能の概要が示されている。インターネット404などの通信ネットワークを介して、ストリーミング・サーバ401と、ストリーミング・データを再生する複数のクライアント端末(例えば、生徒側402及び教師側403)とが接続されている。これは、ストリーミング技術を用いてオンライン型の遠隔教育が行われ、その中で生徒側がストリーミング形式の授業に関し、教師に向かって質問をする場合である。なお、この場合の教師は、ストリーミング形式の授業を行っている当人である必要はない。さて、生徒が質問をすると、その質問として「栞・メモプログラム」で生成されたデータは、ストリーミング・データとは独立したファイルとしてクライアント端末のメモリに保存される。そのため、他のパソコンにそのデータを移しても、同様に栞やメモが再現できる。そうすることにより、質問が、複数の端末において共有できる。ここで「共有」というのは、生徒と教師との間の共有もあるし、複数の生徒の間での共有もありうる。図4における第1のステップでは、生徒側のクライアント端末から教師側のクライアント端末へ栞・メモファイルが送信される(質問の送信)。ステップ2として、教師側のクライアント端末では、栞・メモファイルを受信すると、それによってなされた質問に関係するストリーミング・ファイルのあるストリーミング・サーバへアクセスする。そして、質問の対象となっているストリーミング・データと栞・メモファイルとを取得し、同時に再生する(ステップ3)。その上で、メモ編集ツールを起動し、回答メモを作成する(ステップ4)。作成された回答は、回答メモとして、生徒側クライアント端末に返信される(ステップ5)。
【0016】
以上で本発明によるストリーミング・データ再生装置について詳細に述べたが、新たに付加されたメモ機能は、ストリーミング・ファイルの編集ツールではないので、再生されるストリーミング・ファイルそのものは改変されない。よって、データ量の大きなストリーミング・ファイルを何度も生成し直す必要がない。また、メモ機能は、通常、ストリーミング・データ再生装置と同時に動作するが、その動作はストリーミング・データ再生装置自体の動作とは独立であり、単独で編集が可能である。ストリーミング・ファイルとメモ機能との連携は、ストリーミングを制御する、例えば、RTSP(Real Time Streaming Protocol RFC2326)など、標準的なプロトコルを利用する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ストリーミング・サーバと動画などのストリーミング・データが再生されるクライアント端末との間での動作の概略が示されている。
【図2】栞が挿入される場合のデータ処理を示す流れ図である。
【図3】ストリーミング・データ再生の間のある時点において、栞の挿入と同時にメモが作成される場合の処理を示している。
【図4】複数のストリーミング・データ再生端末の間でストリーミング・データに関する質問内容を共有する質問機能の概要が示されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットを含む通信ネットワークを介してストリーミング・サーバと接続されたストリーミング・データ再生装置であって、
前記ストリーミング・サーバへの要求に応答して送信されるストリーミング・データを受信し、受信されたストリーミング・データを再生する手段と、
前記受信されたストリーミング・データが再生されている時間軸上の特定の位置を指定する手段と、
前記指定された時間軸上の特定の位置データが栞データとして記憶されるメモリと、
前記メモリに記憶された栞データを読み出し、読み出された栞データに含まれる時間軸上の特定の位置データから前記受信されたストリーミング・データが再生される際の特定の時間軸上の位置を指定する手段と、
を備えていることを特徴とするストリーミング・データ再生装置。
【請求項2】
請求項1記載のストリーミング・データ再生装置において、前記栞データと関連付けられテキスト・データ、静止画データ、動画データ及び音声データを少なくとも含むメモ・データを作成する手段を更に備えており、前記メモ・データは、関連付けられている栞データと共に前記メモリに記憶されることを特徴とするストリーミング・データ再生装置。
【請求項3】
請求項1ないし請求項3のいずれかの請求項に記載のストリーミング・データ再生装置を含み、作成され前記メモリに記憶されたデータを読み出し前記通信ネットワークを介して別のストリーミング再生装置に送信することにより前記別のストリーミング再生装置と前記データを共有する手段を備えていることを特徴とする学習システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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