説明

校正印刷用インクジェットプリンタ及び校正印刷方法

【課題】 多彩な色調を容易に表現することができるインクジェットプリンタ及び校正印刷方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るインクジェットプリンタは、被印刷体に予め形成された検知マークを検出する検出手段と、この検知マークに基づいて、画像形成位置を位置決めする位置決め手段とを備えており、他の印刷機によって画像の一部が形成された被印刷体に対し、前記検出手段及び位置決め手段によって位置決めをして画像を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、校正印刷に用いることが可能なインクジェットプリンタ及びこれを用いた校正印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷前に行われる校正刷りとしては、実際の量産機と同様の再現性及び質感が得られることから、グラビア印刷機を用いることが広く行われている。しかしながら、この方法は、量産の印刷と同様、刷版やインキ調整の工程が必要であるため、手間がかかるという問題があった。そこで、このような手間を軽減させる目的で、近年、インクジェットプリンタによる印刷校正が行われている。このようなインクジェットプリンタとしては、例えば、特許文献1に示すものがある。
【特許文献1】特開平7−256960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、グラビア印刷機では表現できても、インクジェットプリンタでは表現できない色調が存在する。例えば、グラビア印刷機で木目調を表現する場合、部分的な光沢を表現する際には、所謂グロスインキを使用したり、パール調インキを使用するが、このような色調はインクジェットプリンタでは表現することができなかった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、多彩な色調を容易に表現することができる校正印刷用インクジェットプリンタ及び校正印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るインクジェットプリンタは、被印刷体に予め形成された検知マークを検出する検出手段と、前記検知マークに基づいて、画像形成位置を位置決めする位置決め手段とを備え、他の印刷機によって画像の一部が形成された被印刷体に対し、前記検出手段及び位置決め手段によって位置決めをして画像を形成するように構成されている。
【0006】
上述のように、従来のインクジェットプリンタは、グラビア印刷機と比べると、部分的に光沢を有する画像等、表現できない色調が存在する(この色調のことを本明細書において「特殊インキ」とよぶ)。ここで、本発明のインクジェットプリンタは検知手段及び位置決め手段を備えているため、他の印刷機で予め形成された画像の一部と、インクジェットプリンタで形成すべき画像とを正確に一致させることができる。そのため、例えば、グラビア印刷機で、パール調インキを予め形成しておき、このパール調インキが形成された箇所に対して、所望の箇所が一致するように画像形成位置を位置決めすれば、上述したような部分的に光沢のある画像を印刷することができる。したがって、従来のインクジェットプリンタでは表現できなかった質感の高い色調も表現することができる。
【0007】
また、インクジェットプリンタの画像を予め形成した後に、このインクジェットプリンタにより画像が形成された箇所に対して、所望の箇所が一致するように、グラビア印刷機によってグロスインキの画像を形成することも、上述と同様に行うことができる。
【0008】
このようなインクジェットプリンタにおいては、インキを吐出する少なくとも一つのノズルが形成されたインクジェットヘッドが被印刷体の移動方向に対して垂直に移動可能であるように構成するとともに、このインクジェットヘッドを、被印刷体の移動方向に沿って複数個配置し、各インクジェットヘッドにおいて複数のノズルからインキが吐出されるとともに、これらが重ね合わせられることにより、量産機で用いられるインキに対応する特色が形成され、各インクジェットヘッドにより形成される前記特色によって画像が形成するように構成することもできる。
【0009】
この構成によれば、複数のインクジェットヘッドが配置され、各インクジェットヘッドでは、複数のノズルから吐出されるインキによって所望の特色を形成している。そして、これらの特色によって画像が形成されるようになっている。このとき形成される特色は、量産機で用いられるインキと対応しているため、各インクジェットヘッドで形成される特色を調整することにより、量産機で形成される画像との相関をとることができる。ここで、特色の調整はノズルから吐出される各インキを、インクジェットプリンタの通常の制御により調整することによって簡単に行えるため、従来のグラビア印刷機での色の調整よりも容易に校正印刷を行うことができる。
【0010】
また、本発明に係る校正印刷方法は、上記問題を解決するためになされたものであり、グラビア印刷によって被印刷体に画像の一部を印刷する工程と、前記被印刷体をインクジェットプリンタにセットする工程と、当該被印刷体に形成された検知マークを検出し、これに基づいて形成すべき画像の位置決めを行う工程と、前記インクジェットプリンタによって印刷を行う工程とを備えている。これにより、インクジェットプリンタであっても、上述したような質感の高い色調を表現することができる。
【0011】
なお、上記グラビア印刷機では、被印刷体にグロスインキやパール調インキ等の特殊インキによる印刷を行うことが好ましい。
【0012】
また、上記インクジェットプリンタにおいては、インキを吐出する複数のノズルが形成されたインクジェットヘッドが被印刷体の移動方向に沿って複数個配置され、しかも、前記各インクジェットヘッドが前記被印刷体の移動方向に対して垂直に移動可能となるように構成し、前記インクジェットプリンタによって印刷を行う工程では、前記各インクジェットヘッドにおける前記複数のノズルから吐出されたインキを重ね合わせることにより、量産機で用いるインキに対応する特色を形成し、これらの特色によって画像を形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るインクジェットプリンタ及び校正印刷方法によれば、質感の高い色調を、容易に表現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係るインクジェットプリンタの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る校正用インクジェットプリンタの概略構成を示す平面図である。
【0015】
図1に示すように、このインクジェットプリンタは、図示を省略する駆動手段により、印刷紙P(被印刷体)が同図の左から右へと移動するように構成されている。そして、印刷紙Pの進行方向Xに対して垂直に延びるガイドレール1が設けられており、各ガイドレール1には、これに沿って往復動可能なインクジェットヘッド3が取り付けられている。このインクジェットヘッド3には、インキを吐出する複数のノズル、例えばイエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、及びブラック(B)を吐出するノズル7が設けられている。なお、各インクジェットヘッド3の構成、駆動制御、インキの吐出制御は、公知のものを用いることができる。
【0016】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンタには、図示を省略するが、印刷紙に形成された検知マークを検出する検出手段、及び検出された検知マークに基づいて印刷すべき画像の位置決めを行う位置決め手段が設けられている。検出手段は、例えば各種センサによって構成することができ、位置決め手段は、例えばインクジェットヘッドの動作位置、範囲を制御する制御回路によって構成することができる。
【0017】
このように構成されたインクジェットプリンタは、インクジェットヘッドがガイドレール1の一端部から他端部に移動する間に、少なくとも一ドット分が印刷される。そして、印刷紙Pの進行に伴って、インクジェットヘッドの往復動が繰り返されることにより、画像が形成される。より詳細には、インクジェットヘッドが移動する間に、Y,M,C及びBのインキがこの順で吐出されて重ね合わせられることにより、カラー印刷が行われる。
【0018】
次に、このインクジェットプリンタを用いた本実施形態に係る印刷方法を説明する。ここでは、その一例として、部分的に光沢を有する画像を印刷する場合について説明する。まず、公知のグラビア印刷機によって、印刷紙上の光沢を必要とする箇所にパールインキを塗布して印刷を行う。続いて、この印刷紙を上記インクジェットプリンタにセットし、印刷を行う。このとき、印刷紙には、位置決めを行うための検知マークを形成しておき、この検知マークを検出手段によって検出し、これに基づいて、パールインキの印刷箇所が、形成すべき画像の所望の箇所に一致するように位置決めを行う。すなわち、制御回路によってインクジェットヘッドの動作位置、範囲を決定した後、印刷を開始する。こうして、光沢を表現したい箇所には、パールインキが下地として印刷されているため、インクジェットプリンタによっても、質感の高い、光沢のある画像の印刷を行うことができる。なお、検知マークは、グラビア印刷時に、画像範囲外に印刷によって形成することのほか、印刷紙の端部に予めマークを設けたり、切欠を設ける等、種々の方法で形成することができる。
【0019】
以上のように、本実施形態に係るインクジェットプリンタによれば、検知手段と、位置決め手段とが設けられているため、グラビア印刷機で予め形成された画像の一部と、インクジェットプリンタで形成すべき画像とを正確に一致させることができる。そのため、従来インクジェットプリンタでは表現できなかった質感の高い色調を容易に表現することができる。
【0020】
この方法の場合、グラビア印刷機及びインクジェットプリンタの2つの印刷機を用いているが、グラビア印刷機では、下地となる特殊インキを塗布するのみであるため、通常のグラビア印刷を行うよりも、その手間は非常に小さいものである。そして、校正印刷の大部分をインクジェットプリンタによって行うため、質感の高い色調を短時間に、しかも容易に印刷することができる。
【0021】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。例えば、上記説明では、光輝性発色と呼ばれる特殊な視覚効果を付与するパールインキを用いているが、これに限定されるものではなく、インクジェットプリンタによって形成することが難しい特殊インキをグラビア印刷で形成しておけばよい。
【0022】
なお、本明細書において、「特殊インキ」とは、通常のインキでは表現できない特殊な視覚効果を付与する機能を持つインキを指す。パールインキ、グロスインキは特殊インキの例であって、特殊インキの語はこれらに限定されるものではない。
【0023】
また、上記インクジェットプリンタを次のように構成することができる。すなわち、図2に示すように、上記インクジェットヘッドが設けられたガイドレール1を、印刷紙Pの進行方向に、所定間隔をおいて平行に並ぶように複数設ける。ここでは、印刷紙進行方向Xの下流から上流側へ並ぶ順に、第1,第2及び第3インクジェットヘッド3,4,5と称することとする。
【0024】
また、この例では、各インクジェットヘッドから吐出されるY、M、C及びBを重ね合わせることで、量産機で使用されるインキと対応する特色が形成される。例えば、量産機で3つのインキ1,インキ2,及びインキ3が使用される場合には、各インクジェットヘッドではYMCBにより、これらにそれぞれ対応する特色1,特色2,及び特色3が形成される。
【0025】
次に、上記のように構成されたインクジェットプリンタの動作について説明する。まず、上記実施形態で示したように、グラビア印刷で画像の一部を形成した後、印刷紙をインクジェットプリンタにセットする。このインクジェットプリンタは、一つのインクジェットヘッドがガイドレール1の一端部から他端部に移動する間に、Y、M、C及びBのインキが吐出され、これらが重ね合わせられることにより、印刷紙P上に少なくとも一色の特色が一ドット形成される。そして、印刷紙Pの進行に伴って、インクジェットヘッドの往復動が繰り返されることにより、一の特色からなる画像が印刷紙P上に形成される。
【0026】
また、このプリンタでは、3つのインクジェットヘッド3,4,5が設けられているため、3つの特色が重ねられて画像が形成される。つまり、第1、第2,第3インクジェットヘッド3,4,5から、この順で特色1,2及び3の画像が形成され、これらが重ね合わせられることにより、カラー印刷が行われる。
【0027】
上記構成によれば、3つのインクジェットヘッド3,4,5が配置されている。そして、各インクジェットヘッド3,4,5では複数のノズルから吐出されるインキによって量産機と対応する特色を形成し、これら特色によって画像を形成している。そのため、各インクジェットヘッド3,4,5で形成される特色を調整することにより、量産機で形成される画像との相関をとることができる。例えば、校正印刷で形成された画像で、特色1が弱いと判断されたとき、どの程度特色1を強めれば所望の画像が得られるかを検証しておけば、この知見に基づいて量産機での印刷を行うことができる。このとき、特色の強弱はインクジェットプリンタの通常の制御によってYMCBを調整することにより簡単に行うことができる。したがって、従来グラビア印刷機によって行われていた校正印刷を、インクジェットプリンタを用いて手軽に表現することが可能となる。
【0028】
なお、本明細書において、「量産機」とは、特色系グラビア印刷、特色系フレキソ印刷及び特色系シルク印刷のいずれかをさすものとする。また、上記説明では、特色系グラビア印刷の校正印刷をインクジェットプリンタで行うことを中心に説明しているが、特色系のフレキソ印刷、もしくは特色系のシルク印刷の校正印刷をインクジェットプリンタで行うことも、同様に考えることができる。
【0029】
上記説明では、3つのインクジェットヘッドを配置し、3つの特色を形成しているが、これ以上の数のインクジェットヘッドを用いて多数の特色を形成することができるのは言うまでもない。また、複数のインクジェットヘッドをすべて用いなくても、このうちのいずれかを用いて画像を形成することも可能である。
【0030】
また、上記実施形態では、特色を形成するために、通常のY、M、C及びBのインキを用いているが、量産機で用いられる特色を形成できるのであれば、これ以外の色のインキを用いることもできる。また、使用するインキの数も、特色を形成できるのであれば、上記の4つに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係るインクジェットプリンタの一実施形態の概略構成を示す平面図である。
【図2】本発明に係るインクジェットプリンタの他の例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ガイドレール
3〜5 インクジェットヘッド
7 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷体に予め形成された検知マークを検出する検出手段と、
前記検知マークに基づいて、画像形成位置を位置決めする位置決め手段と
を備え、
グラビア印刷機によって画像の一部が形成された被印刷体に対し、前記検出手段及び位置決め手段によって位置決めをして画像を形成する、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
インキを吐出する少なくとも一つのノズルが形成されたインクジェットヘッドを有し、当該インクジェットヘッドが被印刷体の移動方向に対して垂直に移動可能であり、
前記インクジェットヘッドが、被印刷体の移動方向に沿って複数個配置され、
前記各インクジェットヘッドにおいては前記複数のノズルからインキが吐出されるとともに、これらが重ね合わせられることにより、量産機で用いられるインキに対応する特色が形成され、
前記各インクジェットヘッドにより形成される前記特色によって画像が形成される、請求項1に記載の校正印刷用インクジェットプリンタ。
【請求項3】
グラビア印刷によって被印刷体に画像の一部を印刷する工程と、
前記被印刷体をインクジェットプリンタにセットする工程と、
当該被印刷体に形成された検知マークを検出し、これに基づいて形成すべき画像の位置決めを行う工程と、
前記インクジェットプリンタによって印刷を行う工程と
を備えている、校正印刷方法。
【請求項4】
前記グラビア印刷によって、被印刷体に特殊インキを印刷する、請求項3に記載の校正印刷方法。
【請求項5】
前記インクジェットプリンタにおいては、インキを吐出する複数のノズルが形成されたインクジェットヘッドが被印刷体の移動方向に沿って複数個配置され、しかも、前記各インクジェットヘッドが前記被印刷体の移動方向に対して垂直に移動可能であり、
前記インクジェットプリンタによって印刷を行う工程では、前記各インクジェットヘッドにおける前記複数のノズルから吐出されたインキを重ね合わせることにより、量産機で用いるインキに対応する特色を形成し、これら特色によって画像を形成する、請求項3または4に記載の校正印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−35821(P2006−35821A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−223371(P2004−223371)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】