説明

核内受容体及びその変異体、並びに細胞の再プログラミングにおけるその使用

本発明によれば、インビトロで多能性幹細胞を誘導するための方法であって、核内受容体の遺伝子又はポリペプチドと、Sox、クルッペル様因子又はmycファミリーからなる群から選択される1個以上の遺伝子又はポリペプチドとをインビトロで細胞に導入することを含む方法を提供する。本発明はまた、同物を生成するためのベクター及び組成物、並びに誘導された多能性幹細胞を使用して、多能性幹細胞治療を必要とする患者を治療するための方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0002]本発明は、核内受容体タンパク質、及び分化した細胞を多能状態に再プログラミングする方法におけるこのようなタンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[0003]幹細胞治療は、疾患又は傷害を治療するために損傷を受けた組織に新たな細胞を導入する細胞療法の1種である。多能性細胞が自己再生し、様々な細胞種に分化する能力は、拒絶される危険性を伴わずに体内で罹患した組織及び損傷を受けた組織と代替することができる組織を培養する可能性を大いにもたらす。
【0003】
[0004]幹細胞治療はいくつか存在するが、骨髄移植を注目すべき例外として、ほとんどはまだ実験段階で、及び/又は費用がかかる。医学研究者らは、癌、糖尿病、神経障害、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー、認知症、並びに心障害及び筋肉損傷に加えてその他多くを治療するために、成人体細胞から得られた細胞をいつか使用することができるようになると予測している。
【0004】
[0005]体細胞の多能性細胞への復帰(reversion)とは、通常再プログラミングのことである。体細胞の核移動及び細胞融合は、分化した細胞の再プログラミングで使用される技術の例である(Lewitzky,M.& Yamanaka,S.(2007)Curr Opin Biotechnol 18、467〜73)。再プログラミングのもう1つの方法は、4種類の転写因子Oct4、Sox2、Klf4及びc−Mycのみをレトロウイルス導入することによってマウス線維芽細胞を再プログラミングしたときに発見された(Takahashi,K.& Yamanaka,S.(2006)Cell 126、663〜76)。体細胞は、Oct4、Sox2、Klf4及びc−Myc(OSKM)などの転写因子を一緒に導入することによって再プログラミングし、多能状態に戻すことができる。これらの変換された細胞は、形態、遺伝子発現及びエピジェネティックマークに関して胚性幹細胞(ESC)と多くの特性を共有し、誘導多能性幹細胞(iPSC)として知られている。iPSCが発見されてから、様々な系列及び様々な種の細胞の再プログラミングが成功してきた(Feng,B.ら、(2009)Cell Stem Cell 4、301〜12)。このような方法の効率を高めることが必要とされている。
【0005】
[0006]草分けとなったYamanakaの研究によって発見された4種類の再プログラミング因子の他に、NANOG及びLIN28などのその他の因子も再プログラミングに関与することが発見された(Yu,J.ら、(2007)Science 318、1917〜20)。さらに、ESC特異的転写因子であるUTF1は、4種類のYamanaka因子及びp53のノックダウンと併用するとヒト線維芽細胞の再プログラミングを増強することが示された。4種類のYamanaka転写因子のいくつかはまた、再プログラミングにおける因子と代替することが示された。例えば、Klf4は、Klf2及びKlf5に代替することができ、Sox2はSox1及びSox5に代替することができ、一方、N−myc及びL−mycはc−Mycに代替することができた。4種類の明らかにされた再プログラミング因子の中でも、Oct4は多能性の誘導において最も重要であることが示された(Nakagawa,M.ら(2008)Nat Biotechnol 26、101〜6)。しかし、Oct4はOct1及びOct6などの近接したファミリーのメンバーを含むその他の転写因子によって依然として代替することはできない(Nakagawa,Mら(2008)。今までのところ、どの転写因子も体細胞の再プログラミングにおいてOct4とは代替できないことが示されている。
【0006】
[0007]Oct−4(オクタマー−4の略語)は、POUファミリーのホメオドメイン転写因子タンパク質である。Oct−4発現は、注意深く調節しなければならない。多すぎたり、少なすぎたりすると実際に細胞の分化の原因となる。Oct−4は、成体の生殖細胞の腫瘍形成に関係することがある。成体マウスにおけるこの因子の異所性発現は、皮膚及び腸の異形成病変の形成の原因となることが発見された。腸の異形成は、細胞分化の阻害による前駆細胞集団の増加及びβ−カテニン転写の上方制御によって生じた。
【0007】
[0008]胚盤胞の内部細胞塊(ICM)において発現したOct4は、ICM並びにESCにおける細胞の多能性の維持に重要である。神経前駆細胞(NPC)は内在性Sox2を高レベルで発現するが、Oct4のみを異所性発現することがまだ再プログラミングに必要であった。この所見は、Oct4が体細胞に多能性を与えるために極めて重要であることを示唆している。さらに、Oct4及び前述の転写因子などの数種の転写因子のみがiPSC生成に関与することが報告されてきた。
【0008】
[0009]核内受容体は、直接DNAに結合し、隣接する遺伝子の発現を調節する能力を有する。核内受容体はモジュラー構造をしており、DNA結合ドメイン(DBD)及びリガンド結合ドメイン(LBD)などの特定のドメインを含有する。核内受容体は一般的に、作用機構及びリガンド不在下での細胞内分布に応じて2つの大きな部類に分類される。48個の公知のヒト核内受容体は、タンパク質の配列相同性に基づいてサブファミリーにさらに分類された。サブファミリー5は2個の核内受容体、ステロイド産生因子1(Sf1)としても知られているNr5a1及びNr5a2を含む。その他の核内受容体のように、Nr5a2はリガンド結合ドメイン(LBD)及びDNA結合ドメイン(DBD)を有する。しかし、オーファン核内受容体では、Nr5a2の内在性リガンドは依然として知られていない。二量体として機能を果たすほとんどの核内受容とは異なり、Nr5a2は単量体の状態でDNAに結合することができる(Galarneau,L.ら(1996)Mol Cell Biol 16、3853〜65)。
【発明の概要】
【0009】
[00010]本発明は、代替転写因子及び分化した細胞を多能状態に再プログラミングする方法におけるこのような因子の使用を探究する。
【0010】
[00011]本発明者らは、核内受容体及び核内受容体のSUMO化変異体がインビトロで多能性幹細胞を惹起できることを示す。さらに核内受容体は、インビトロにおいて多能性幹細胞の誘導においてOct4と代替することができるだろう。
【0011】
[00012]したがって、本発明の一態様では、インビトロで多能性幹細胞を誘導する方法であって、インビトロで細胞を培養するステップ、培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、前記転写因子をコードするポリヌクレオチドが、核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とを含む、ステップを含む方法を提供する。
【0012】
[00013]本発明の別の態様では、(a)配列番号1、配列番号3、配列番号5若しくは配列番号8で記載されたヌクレオチド配列又はポリペプチド配列番号10を発現する断片を含むポリヌクレオチド、(b)配列番号1、配列番号3、配列番号5若しくは配列番号8で記載されたヌクレオチド配列又はポリペプチド配列番号10を発現する断片に選択的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、(c)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号11で記載された配列を含む核内受容体ポリペプチド又は配列番号10を含有するそれらの相同体、変種、誘導体若しくは断片をコードするポリヌクレオチドから選択されるサブファミリー5の核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とのポリヌクレオチドを含む発現ベクターであって、宿主細胞において前記ポリヌクレオチドの発現を導くことができる調節配列に操作可能に結合している、発現ベクター、を提供する。
【0013】
[00014]本発明の別の態様では、多能性幹細胞治療の必要な患者を治療するための医薬品の製造において、インビトロで多能性幹細胞を誘導する方法であって、個体ドナーから細胞を単離するステップ、インビトロで細胞を培養するステップ、培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、転写因子をコードするポリヌクレオチドが、核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とを含む、ステップ、多能性幹細胞治療の必要な患者に多能性細胞を導入するステップを含む方法を提供する。
【0014】
[00015]本発明の別の態様では、多能性幹細胞株の作製方法であって、インビトロで細胞を培養するステップ、培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、前記ポリヌクレオチドが、核内受容体を含む転写因子と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とをコードする、ステップ、多能性細胞を継代して細胞株を維持するステップを含む方法を提供する。
【0015】
[00016]本発明のその他の態様には、好ましい実施形態の説明及び図面を参考にして、当業者に明らかであるものが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】Nr5a2は再プログラミング効率を高め、Sox2及びKlf4と共に、c−Mycの有無に関わらず、MEFを再プログラミングすることができる。 (a)Oct4、Sox2、Klf4及びc−Myc(OSKM)によるMEF再プログラミングの増強について、18種の核内受容体をスクリーニングした図である。図は、OSKM(対照)に対してOSKMと併用したそれぞれの核因子から生成したPou5f1−GFP陽性コロニーの数の倍率変化を表している。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (b)MEFの再プログラミングにおいて再プログラミングエンハンサー、Nr1i2及びNr5a2がSox2、Klf4及びOct4と代替する能力について試験した。GFP陽性コロニーの定量は、14dpiで実施した。対照実験として、核内受容体因子は導入せず、OKM、OSM又はSKMレトロウイルスのみを添加した。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (c)Sox2及びKlf4と一緒にNr5a2でMEFを再プログラミングして生成したGFP陽性コロニーの数を示した図である。対照実験として、SKレトロウイルスのみをMEFに導入した。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (d)Nr5a2、Sox2及びKlf4でPou5f1−GFP MEFをレトロウイルス形質導入した後のiPSCコロニーの生成を示した図である。位相差画像を示す。 (e)dのiPSCコロニーは、蛍光顕微鏡下で確認するとPou5f1−GFP陽性であり、内在性Pou5f1の反応性を示している。 (f)NSK iPSCはアルカリホスファターゼを発現した。 (g)NSK iPSCにおけるNanogの発現を示した図である。 (h)gの核は、ヘキストで対比染色した。 (i)NSK iPSCにおけるSSEA−1の発現を示した図である。 (j)iの細胞は、核を示すためにヘキストで染色した。スケールバーはd〜fでは200μmを表し、g〜jでは50μmを表す。
【図2】Nr5a2で再プログラミングされた細胞の全般的な発現プロファイルを示した図である。 (a)相関分析(46,643プローブ)は、ESC、iPSC(OSKM、NSKM #A5、NSK #B3及びNSK #B11)及びMEF(アクチン−GFP及びPou5f1−GFP)のトランスクリプトームをクラスター化するために実施した。OSKM iPSCは、Oct4、Sox2、Klf4及びc−MycをMEFにレトロウイルス導入することによって得られた。 (b)aの生物学的反復マイクロアレイデータから作製したヒートマップは、1000個のESC関連及びMEF関連遺伝子の発現プロファイルを示している。緑色はMEFに対する遺伝子発現の下方制御を表し、赤色は遺伝子発現の上方制御を表す。
【図3】Nr5a2で再プログラミングされた細胞のエピジェネティック状態を示した図である。 (a)Nr5a2で再プログラミングされた細胞のPou5f1及びNanogプロモーターメチル化分析を示した図である。重亜硫酸塩によるゲノム配列解析は、ESC、MEF及びNr5a2で再プログラミングされた細胞(NSKM #A5、NSK #B3及びNSK #B11)におけるPou5f1及びNanogのプロモーター領域のメチル化状態を分析するために実施した。それぞれの細胞株について、10個のランダムクローンを配列決定し、結果を丸で示し、白丸はメチル化されていないCpGジヌクレオチドを表し、赤丸はメチル化されたCpGジヌクレオチドを表す。 (b)Nr5a2で再プログラミングされた細胞における2価クロマチンマークを示した図である。ChIPアッセイに続いて、定量的リアルタイムPCRを実施して、ESC、MEF及びNr5a2で再プログラミングされた細胞におけるトリメチル化ヒストンH3K4及びH3K27クロマチンマークの濃縮を分析した。データは、報告されたビバレント(bivalent)遺伝子座(Zfpm2、Sox21、Pax5、Lbx1h、Evx1及びDlx)の濃縮をlogで表す。データは、3回の独立した実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。
【図4】NSKiPSによって、マウスのキメラを作製することができることを示した図である。 (a)E13.5 NSK #B3キメラ胚から切除した雄生殖腺の明視野画像を示した図である。 (b)aのGFP蛍光画像である。GFP陽性シグナルが生殖腺で認められ、Nr5a2で再プログラミングされた細胞の生殖系への取り込みが示唆された。 (c)NSK #B11成体キメラの図である。129S2/SV Pou5f1−GFP MEFから得られたNr5a2で再プログラミングされた細胞をB6(Cg)−Tyrc−2J/J胚にマイクロインジェクションし、被毛の色が混合したキメラを作製した。
【図5】ウイルス特異的プライマー及び遺伝子特異的プライマーでcDNAをPCR増幅することによって確認した、スクリーニングされた核内受容体遺伝子を有するウイルス構築物の発現を示した図である。
【図6】Nr5a2は、Sox2、Klf4及びc−Mycと共にMEFを再プログラミングすることを示した図である。 (a)Nr5a2、Sox2、Klf4及びc−MycでPou5f1−GFP MEFをレトロウイルス形質導入して得られたiPSCコロニーの位相差画像を示した図である。 (b)aの蛍光画像は、Nr5a2で再プログラミングされた細胞における内在性Pou5f1の回復を示している。 (c)N2SKM iPSCにおけるアルカリホスファターゼの発現を示した図である。 (d)N2SK iPSCにおけるNanog発現を示した図である。 (e)dの核は、ヘキストで対比染色した。 (f)N2SKM iPSCにおけるSSEA−1の発現を示した図である。 (g)fの細胞は、核を示すためにヘキストで染色している。 (h)その他の核内受容体のOct4と代替する能力についてスクリーニングを示した図である。MEFは、SKMウイルス及び核内受容体それぞれをコードするウイルスで同時形質導入した。SKM+Nr5a2は、陽性対照として使用した。対照実験は、SKMウイルスのみによるMEFの形質導入を意味する。GFP陽性コロニーの数は、14dpiに計数した。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (i)129S2/SV Pou5f1−GFP MEFから得られたN2SKM #A5 iPSCをC57BL/6Jにマイクロインジェクションして作製した成体マウスキメラの図である。スケールバーはa〜cでは200μmを表し、d〜gでは50μmを表す。
【図7】Nr5a2で再プログラミングされた細胞の核型及び遺伝子型分析を示した図である。 (a)N2SKM #A5、N2SK #B3及びN2SK #B11 iPSC株は正常な雄の核型を表した。 (b)PCRによって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞におけるレトロウイルス遺伝子、Nr5a2、Sox2、Klf4及びc−Mycのゲノム組み込みが確認された。PCRは、ESC、MEF及びiPSCから収集したゲノムDNAでウイルス特異的プライマー及び遺伝子特異的プライマーを用いて実施した。OSKM iPSCは、Oct4、Sox2、Klf4及びc−MycでMEFをウイルス形質導入することによって得られた。p21遺伝子の領域のPCR増幅は全試料で実施し、対照図で示している。
【図8】Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、インビトロ及びインビボにおける分化アッセイにおいて、3種類の主要な胚葉の系列に分化することを示した図である。 (a)胚様体媒介インビトロ分化アッセイでは、Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、3種類の主要な胚系統の細胞に分化することができることを示している。Nr5a2で再プログラミングされた細胞から分化した細胞は、Gata−4(内胚葉)、ネスチン(外胚葉)及びα−平滑筋アクチン(中胚葉)で陽性に染色した。分化マーカーは、赤色に染色され、ヘキスト色素は核を青色に対比染色した。 (b)奇形腫アッセイにおいて、Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、3種類の主要な胚葉の組織に分化したことを示した図である。奇形腫を切断し、マロリーテトラクローム(Mallory’s Tetrachrome)で染色し、外胚葉組織(神経外胚葉)、中胚葉組織(筋肉及び軟骨)及び内胚葉組織(腸管上皮細胞及び膵臓細胞)を明らかにした。スケールバーはaで100μmを表し、bで50μmを表す。
【図9】Nr5a1は、Sox2、Klf4及びc−Mycと共にMEFを再プログラミングする。 (a)Nr5a1は、Oc4、Sox2、Klf4及びc−Myc(OSKM)による再プログラミングの効率を高める。図は、OSKM(対照)に対してOSKMと併用したNr5a1から生成したPou5f1−GFP陽性コロニーの数の倍率変化を表している。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (b)MEFの再プログラミングにおいて、Nr5a1はOct4と代替する。OKM、OSM及びSKMそれぞれと併用してNr5a1を同時形質導入することによって、Nr5a1がSox2、Klf4及びOct4と代替する能力について調べた。対照実験は、Nr5a1無しでOKM、OSM又はSKMレトロウイルスで実施した。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (c)Nr5a1、Sox2、Klf4及びc−Myc4によってPou5f1−GFP MEFをレトロウイルス形質導入して生成したiPSCコロニーの位相差画像を示した図である。 (d)cにおけるPou5f1−GFP陽性N1SKM iPSCコロニーの蛍光画像を示した図である。 (e)Nr5a1で再プログラミングされた細胞は、アルカリホスファターゼで陽性に染色した。 (f)Nanogは、Nr5a1で再プログラミングされた細胞で発現した。 (g)fのヘキスト染色は核を示している。 (h)Nr5a1で再プログラミングされた細胞は、SSEA−1で陽性に染色した。 (i)hの細胞は、核を示すためにヘキストで染色した。 (j)Nr5a1で再プログラミングされた細胞株の正常な雄の核型。 (k)Nr5a1で再プログラミングされた細胞で実施された胚様体媒介インビトロ分化アッセイは、Nr5a1で再プログラミングされた細胞が3種類の主要な胚系統の細胞に分化できることを示している。分化した細胞は、Gata4(内胚葉)、ネスチン(外胚葉)及びα−平滑筋アクチン(中胚葉)で陽性に染色した。系統マーカーは赤色に染色し、核はヘキストで青色に染色した。スケールバーはc〜eでは200umを表し、f〜iでは50umを表す。
【図10】Nr5a2及びNr5a1は一緒に、Sox2、Klf4及びc−MycによるMEFの再プログラミングを増強する。Sox2、Klf4及びc−Mycと共にNr5a2及びNr5a1の両方を導入すると、Nr5a2又はNr5a1のいずれかをSKMと共に形質導入するときと比較して、生成するGFP陽性コロニーの数が増加する。対照実験は、SKMウイルスのみでMEFを形質導入した。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。
【図11】DNA結合ドメイン(DBD)は、Nr5a2がMEFを再プログラミングするために重要であるが、Nr5a2のリガンド結合ドメイン(LBD)は再プログラミング因子としての機能に重要ではない。 (a)Nr5a2 WT、Nr5a2 A368M(LBD変異体)及びNr5a2 G190V、P191A(DNA変異体)をコードするレトロウイルスベクターのいずれかをトランスフェクトした293−T細胞から収集した細胞抽出物のウェスタン分析によって、Nr5a2タンパク質の発現が等しいことが示された。GFP遺伝子を有するレトロウイルスベクターをトランスフェクトした293−T細胞を陰性対照として使用した。アクチンのウェスタンブロットは、添加対照として実施した。 (b)Nr5a2変異体が再プログラミング因子としての機能を保持する能力について分析した図である。Pou5f1−GFP MEFは、SKMウイルス及びNr5a2 WT、Nr5a2 A368M又はNr5a2 G190V、P191Aをコードするウイルスで形質導入した。対照実験は、SKMウイルスのみによるMEFの感染を表す。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。
【図12】Nr5a2は、Sox2、Klf4と共に、c−Mycを含めて、又はc−Mycを含めずにMEFを再プログラミングする。 (A)OSKMによる再プログラミングの増強について19種の核内受容体をスクリーニングした図である。図は、OSKM(対照)に対してOSKMと一緒にしたそれぞれの核受容体因子で生成したGFP陽性コロニーの数の倍率変化を表している。 (B)Nr5a2又はNr1i2いずれかと一緒にしたOSKMによる再プログラミングの動態を示した図である。 (C)再プログラミングエンハンサー、Nr1i2及びNr5a2のSox2、Klf4及びOct4を代替する能力の再プログラミングアッセイ。対照実験として、Nr5a2又はNr1i2を加えずにレトロウイルスのそれぞれの組み合わせを添加した。 (D)Nr5a2、Sox2及びKlf4によるMEFの再プログラミングから生成したGFP陽性コロニーの数を示した図である。対照実験として、SKレトロウイルスのみを導入した。AからDのデータは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (E)Nr5a2、Sox2及びKlf4によってPou5f1−GFP MEFをレトロウイルス形質導入した後のiPSCコロニーの生成。位相差画像を示す。 (F)Eのコロニーは、蛍光顕微鏡下で確認するとGFP陽性であり、内在性Pou5f1の再活性化を示している。 (G)NSK iPSCはアルカリホスファターゼを発現する。 (H)NSK iPSCにおけるNanogの発現を示した図である。 (I)Hの核は、ヘキストで対比染色した。 (J)NSK iPSCにおけるSSEA−1の発現を示した図である。 (K)Jの細胞は、核を示すためにヘキストで染色した。スケールバーはE〜Gでは200μmを表し、H〜Kでは50μmを表す。 (L)E13.5 NSK #B3キメラ胚から切除した雄生殖腺の明視野画像を示した図である。 (M)LのGFP蛍光画像である。GFP陽性シグナルが生殖腺で認められ、Nr5a2で再プログラミングされた細胞の生殖系列への組み込みが示された。 (N)NSK #B11成体キメラは、B6(Cg)−Tyrc−2J/J胚にマイクロインジェクションしたF1(129S2/SV×Pou5f1−GFP)MEFから得られたNr5a2で再プログラミングされた細胞から生じた。 (O)NSK #B11成体キメラをアルビノB6(Cg)−Tyrc−2J/Jマウスと交配して生じた出生児。アグーチ及びブラックの出生児は、Nr5a2で再プログラミングされた細胞の生殖系列移行の指標である。
【図13】Nr5a1で媒介された再プログラミング及びNr5a2の再プログラミング能力に対する変異の影響を示した図である。 (A)Nr5a1は、OSKMによる再プログラミング効率を高める。図は、対照(OSKM)に対してOSKMと併用したNr5a1から生成したGFP陽性コロニーの数の倍率変化を表している。 (B)MEFの再プログラミングにおいて、Nr5a1はOct4と代替する。OKM、OSM又はSKMそれぞれと併用してNr5a1を同時形質導入することによって、Nr5a1がSox2、Klf4及びOct4と代替する能力について調べた。対照実験は、Nr5a1無しでOKM、OSM又はSKMレトロウイルスで実施した。 (C)Nr5a1及びSKMによるPou5f1−GFP MEFのレトロウイルス形質導入によって作製したiPSCコロニーの位相差画像を示した図である。 (D)CにおけるGFP陽性NSKM iPSCコロニーを示した図である。 (E)Nr5a1で再プログラミングされた細胞は、アルカリホスファターゼで陽性に染色された。 (F)Nr5a1で再プログラミングされた細胞におけるNanog発現。 (G)Fのヘキスト染色は核を示している。 (H)Nr5a1で再プログラミングされた細胞は、SSEA−1で陽性に染色した。 (I)Hのヘキスト染色は核を示している。 (J)NSKM株におけるレトロウイルス遺伝子Nr5a1のゲノム組み込みのPCRによる確認。対照図は、p21遺伝子の領域のPCR増幅を示している。 (K)Nr5a1で再プログラミングされた株の正常な核型。 (L)Nr5a1で再プログラミングされた細胞で実施されたEB媒介インビトロ分化アッセイ。分化した細胞は、Gata4(内胚葉)、ネスチン(外胚葉)及びα−平滑筋アクチン(中胚葉)で陽性に染色した。系統マーカーは赤色に染色し、核はヘキストで青色に染色した。 (M)Nr5a1で再プログラミングされた細胞の奇形腫アッセイ。スケールバーはC〜Eでは200μm、Lでは100μm及びF〜I、Mでは50μmを表す。 (N)Nanog、Sall4、Stat3、Zfx、Tcfcp2l1、Klf2、Klf5、N−Myc及びEsrrbのウイルス転写物発現のPCRによる確認。 (O)SKMと併用したPou5f1調節領域に結合する転写因子のスクリーニング。対照は、SKMウイルスのみのMEFへの形質導入を表す。SKMを有するNr5a1及びNr5a2は、陽性対照として使用した。 (P)Nr5a2 WT、Nr5a2 A368M及びNr5a2 G190V、P191Aをコードするいずれかのレトロウイルスベクターをトランスフェクトした293−T細胞から収集した細胞抽出物のウェスタン分析。GFP遺伝子を有するレトロウイルスベクターをトランスフェクトした293−T細胞を陰性対照として使用した。 (Q)Nr5a2リガンド及びDNA結合変異体によるSKM再プログラミング。Pou5f1−GFP MEFは、SKMウイルス及びNr5a2 WT、Nr5a2 A368M又はNr5a2 G190V、P191Aのいずれかをコードするウイルスで形質導入した。対照実験は、SKMウイルスのみによるMEFの感染を表す。 (R)Nr5a2 WT、Nr5a2 2KR及びNr5a2 5KRをコードするいずれかのレトロウイルスベクターをトランスフェクトした293−T細胞から収集した細胞抽出物のウェスタン分析。いかなる遺伝子も有さないレトロウイルスベクターをトランスフェクトした293−T細胞を陰性対照として使用した。 (S)Nr5a2 SUMO変異体とのOSKM再プログラミング。対照実験は、OSKMウイルスのみによるMEFの感染を表す。図は、対照の陽性コロニー数に対する、OSKMウイルス及びNr5a2 WT、Nr5a2 2KR又はNr5a2 5KRのいずれかをコードするウイルスをPou5f1−GFP MEFに感染させて生成したGFP陽性コロニーの数の倍率変化を表している。A〜B、O、Q及びSのデータは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。
【図14】Nr5a2結合部位のゲノム全体マッピングを示した図である。 (A)Nr5a2結合部位の過剰出現配列を調べる新規モチーフ発見アルゴリズムMEMEによって作製したNr5a2のモチーフ。 (B)Nr5a2及びその他の転写因子の同時出現を示すヒートマップ。ヒートマップ中のそれぞれの四角は、2つの転写因子間の同時局在頻度を表す(赤色は同時局在の頻度が低いことを表し、黄色は同時局在の頻度が高いことを表す)。転写因子は、その他の因子との同時局在における類似性に基づいて両軸に沿って密集していた。転写因子は、Nr5a2と同時局在する傾向がある青い枠によって区別された。 (C)Nr5a2、Sox2及びKlf4が結合する、ESCの独自性の維持及び細胞増殖などの様々な細胞の役割において重要な遺伝子。
【図15】Nanogは、再プログラミングにおけるNr5a2の下流標的である。 (A)MEFの再プログラミング中に、Nr5a2はNanogエンハンサーと結合する。ChIPアッセイは、OSKM及びHA-Nr5a2ウイルスを同時形質導入して8日後のMEFで実施した。定量的リアルタイムPCRは、抗HA抗体を使用してNanogエンハンサーに対するHA-Nr5a2の濃縮を分析するために実施した。示されたデータは、2連の生物試料(biological duplicates)の平均±標準誤差を意味する。 (B)経時的(3、7及び11dpi)3連の生物学的マイクロアレイデータ(平均±標準誤差)に基づいた、OSKM再プログラミング細胞と比較したOSKM+Nr5a2再プログラミング細胞におけるNanogの発現レベルの倍率変化。ESC関連遺伝子、Gdf3及びZic3の発現レベルの倍率変化も図に含めた。 (C)感染していないMEFに対してOSKM+Nr5a2又はOSKMで感染したMEFにおける内在性Pou5f1 mRNAレベルの経時的倍率変化。 (D)感染していないMEFに対してOSKM+Nr5a2又はOSKMで感染したMEFにおける内在性Nanog mRNAレベルの経時的倍率変化。C〜Dにおけるリアルタイム定量的PCRデータは、3連の生物学的試料の平均±標準誤差である。 (E)Nr5a2 shRNAでノックダウンした後のESCにおけるNr5a2 mRNAレベルのリアルタイム定量的PCRによる確認。対照ESCは、ルシフェラーゼ遺伝子を標的とするshRNA構築物をトランスフェクトした。 (F)Nr5a2を標的とするノックダウン構築物を導入した後のESCにおけるNr5a2タンパク質発現のウェスタン分析。Nr5a2タンパク質は、Nr5a2に特異的な抗体で標的化した。 (G)OSKM再プログラミングにおけるNr5a2のshRNAノックダウン。OSKMを有するPou5f1 RNAiは、陽性ノックダウン対照として使用し、ルシフェラーゼRNAiは陰性ノックダウン対照として使用する。Nanog又はMtf2は、ノックダウン効果を回復させる能力を調べるために導入した。 (H)Nr5a2及びNanogの両方に添加したOSKMによる再プログラミング。図は、対照に対するGFP陽性コロニーの数の倍率変化を表している。E、G及びHのデータは、3回の独立した実験(n=3)の平均±標準誤差である。
【図16】Nr5a2は、Sox2、Klf4及びc−Mycと共にMEFを再プログラミングすることを示した図である。 (A)MEFにおいて遺伝子導入したPou5f1高感度緑蛍光タンパク質(EGFP)レポーター構築物の模式図である。EGFPの発現は、Pou5f1調節領域の制御下にあり、調節領域にはPou5f1遠位エンハンサー及びPou5f1プロモーターが含まれる(Szaboら、2002)。 (B)Nr5a2及びNr1i2感染MEFのタネルアッセイ。図は、蛍光標示式細胞分取器(FACS)分析後のタネル陽性細胞の割合を示している。MEFに、(pMX)、Nr1i2(pMX−Nr1i2)又はNr5a2(pMX-Nr5a2)のいずれの遺伝子もコードしないレトロウイルスを感染させた。陽性対照として、感染してないMEFをタネル標識の前にDNアーゼ1処理した。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (C)Nr5a2、Sox2、Klf4及びc−MycでPou5f1−GFP MEFをレトロウイルス形質導入して得られたiPSCコロニーの位相差画像を示した図である。 (D)Cの蛍光画像は、Nr5a2で再プログラミングされた細胞における内在性Pou5f1の回復を示している。 (E)NSKM iPSCにおけるアルカリホスファターゼの発現を示した図である。 (F)NSK iPSCにおけるNanog発現を示した図である。 (G)Fの核は、ヘキストで対比染色した。 (H)NSKM iPSCにおけるSSEA−1の発現を示した図である。 (I)Hの細胞は、核を示すためにヘキストで染色している。スケールバーはC〜Eでは200μmを表し、F〜Iでは50μmを表す。 (J)その他の核内受容体のOct4と代替する能力についてスクリーニングを示した図である。MEFは、SKMウイルス及び核内受容体それぞれをコードするウイルスを同時形質導入した。SKM+Nr5a2は、陽性対照として使用した。対照実験は、SKMウイルスのみによるMEFの形質導入を示す。GFP陽性コロニーの数は、14dpiで計数した。データは、3回のレトロウイルス媒介形質導入実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。 (K)NSKM #A5、NSK #B3及びNSK #B11 iPSC株の核型分析。 (L)Nr5a2で再プログラミングされた細胞の遺伝子型分析。Nr5a2で再プログラミングされた細胞におけるレトロウイルス遺伝子、Nr5a2、Sox2、Klf4及びc−Mycのゲノム統合のPCRによる確認は、ESC、MEF及びiPSCから収集したゲノムDNAに対してウイルス特異的プライマー及び遺伝子特異的プライマーを用いて実施した。OSKM iPSCは、MEFをOct4、Sox2、Klf4及びc−Mycでウイルス形質導入することによって得られた。p21遺伝子の領域のPCR増幅は全試料について実施し、対照図で示している。 (M)F1(129S2/SV×Pou5f1−GFP)MEFから得られたNSKM #A5 iPSCをC57BL/6Jにマイクロインジェクションして生成した成体マウスキメラの図である。
【図17】Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、インビトロ及びインビボの分化アッセイで、3種類の主要な胚葉系列に分化し、Nr5a2で再プログラミングされた細胞の網羅的発現プロファイリング及びエピジェネティック状態を示した図である。 (A)胚様体(EB)媒介インビトロ分化アッセイでは、Nr5a2で再プログラミングされた細胞は3種類の主要な胚系統の細胞に分化することができることを示している。Nr5a2で再プログラミングされた細胞から分化した細胞は、Gata−4(内胚葉)、ネスチン(外胚葉)及びα−平滑筋アクチン(中胚葉)で陽性に染色した。分化マーカーは赤色で染色され、ヘキスト色素は核を青色に対比染色した。 (B)奇形腫アッセイにおいて、Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、3種類の主要な胚葉の組織に分化することを示した図である。奇形腫を切断し、マロリーテトラクロームで染色することによって、外胚葉組織(神経外胚葉)、中胚葉組織(筋肉及び軟骨)及び内胚葉組織(腸管上皮細胞及び膵臓細胞)を明らかにした。スケールバーはAでは100μmを表し、Bでは50μmを表す。 (C)相関分析(46,643プローブ)は、ESC、iPSC(OSKM、NSKM #A5、NSK #B3及びNSK #B11)及びMEF(アクチン−GFP及びPou5f1−GFP)のトランスクリプトームをクラスター化するために実施した。 (D)Cのマイクロアレイデータから作製したヒートマップは、1000個のESC関連及びMEF関連遺伝子の発現プロファイルを示している。遺伝子は、ESC及びPou5f1-GFP MEFにおける発現の倍率変化に基づいて選択し、平均発現比によって分類し、Pou5f1−GFP MEFシグナルに平均を中心化した(mean−centered)。緑色はPou5f1−GFP MEFに対して遺伝子発現の下方制御を表し、赤色は遺伝子発現の上方制御を表す。 (E)Nr5a2で再プログラミングされた細胞のPou5f1及びNanogプロモーターメチル化分析を示した図である。重亜硫酸塩によるゲノム配列解析は、ESC、MEF及びNr5a2で再プログラミングされた細胞におけるPou5f1及びNanogのプロモーター領域のメチル化状態を分析するために実施した。それぞれの細胞株について、10個のランダムクローンを配列決定し、結果を丸で示し、白丸はメチル化されていないCpGジヌクレオチドを表し、赤丸はメチル化されたCpGジヌクレオチドを表す。 (F)Nr5a2で再プログラミングされた細胞におけるビバレントクロマチンマーク。ChIPアッセイに続いて、定量的リアルタイムPCRを実施して、ESC、MEF及びNr5a2で再プログラミングされた細胞におけるトリメチル化ヒストンH3K4及びH3K27クロマチンのマークの濃縮を分析した。データは、報告されたビバレント遺伝子座(Zfpm2、Sox21、Pax5、Lbx1h、Evx1及びDlx)の濃縮をlogで表す。データは、3回の独立した実験(n=3)の平均±標準誤差を表す。
【図18】Nr5a2、Sox2及びKlf4の共通標的遺伝子に対するChIP−seq結合プロファイルを示した図である。 (A)ESCの細胞溶解物を列1に添加し、内在性Nr5a2タンパク質をNr5a2特異的抗体によって標的化した。列2にはNr5a2 3HAでタグ付けした(直列型の3個のHAタグ)安定な細胞株の細胞溶解物を添加した。上のバンドは3HAでタグ付けしたNr5a2タンパク質を表し、下のバンドは内在性Nr5a2タンパク質を表す。 (B)Nr5a2、Sox2及びKlf4の共通標的遺伝子に対する結合プロファイル。転写因子トリオ、Nr5a2、Sox2及びKlf4はPou5f1、Nanog、Klf2、Tbx3などの多能性のある自己再生遺伝子に結合する。これらの転写因子はまた、c−Myc、N−Mycなどの細胞増殖遺伝子及びBach1などの酸化ストレス誘導性細胞老化に関与する遺伝子に結合する。現在及び以前のChIP−seq分析(Chenら、2008)によるこれらの標的遺伝子に対する転写因子それぞれの結合プロファイルは、示したようなプロットで表される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[00017]本発明は、核内受容体、好ましくは核内受容体サブファミリー5のメンバーがインビトロで体細胞からiPSCを誘導する場合Oct4と代替できるという我々の発見から始まっている。さらに、オーファン核内受容体Nr5a2(Lrh−1としても知られている)はまた、OSKMと共に再プログラミングの効率を高めることができる。したがって、2個のリシン残基が変異した変異構築物(2KR)及び5個のリシン残基が変異した別の構築物(5KR)を使用して、リシン残基が変異したNr5a2の再プログラミング能力を試験することに注目した。ウェスタン分析によって、WT及び変異体構築物が同じようなレベルのタンパク質を発現することが示された(図13R)。際だったことに、OSKM再プログラミングアッセイによって、再プログラミング効率の増強がWTでは4倍であったのに対し、2KR変異体では少なくとも7倍になることが明らかになった(図13S)。5KR変異体を導入したとき、再プログラミング効率はほぼ11倍にまでさらに増大した(図13S)。これらの結果は、SUMO部位の変異によってもたらされた細胞内局在の同時阻止及び転写活性の増強がNr5a2による再プログラミングの誘導増大のきっかけとなり得ることを示唆している。核内受容体サブファミリー5によって再プログラミングされた細胞は、ESC特異的マーカーが陽性で、3種類の系統の組織を含む奇形腫を形成してキメラを生成し得る。これらのことを考え合わせると、我々の研究は、Oct4に関係のない転写因子がOct4と代替することができることを示しており、再プログラミングにおける重要な因子としての核内受容体の役割を強調している。
【0018】
[00018]上記に基づいて、本発明は、インビトロで多能性幹細胞を誘導する方法であって、インビトロで細胞を培養するステップ、培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、前記転写因子をコードするポリヌクレオチドが、核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とを含む、ステップを含む方法を提供する。
【0019】
[00019]核内受容体は、DNAに直接結合し、隣接する遺伝子の発現を調節する能力を有する。核内受容体はモジュラー構造をしており、DNA結合ドメイン(DBD)及びリガンド結合ドメイン(LBD)などの特定のドメインを含有する。好ましい実施形態において、核内受容体は、表1に挙げた核内受容体の1つを含む。好ましくは、核内受容体は、サブファミリー5の核内受容体を含む。サブファミリー5の核内受容体は、Nr5a1及びNr5a2を含む。好ましい実施形態において、核内受容体は、Nr5a2又はそのSUMO化変異体を含む。
【0020】
[00020]20個のヒトSOX遺伝子があり、全部で約30個のSox遺伝子が同定されている。Sox遺伝子は、DNA中の小さな溝に結合する転写因子である。Soxは、ry関連HMGボックス(box)を表す。Sox遺伝子は、HMG(高移動度群)ボックスと呼ばれる配列が特徴である。このHMGボックスは、真菌種全体にわたって高く保存されているDNA結合ドメインである。Soxファミリーは、1つだけの機能を有するのではなく、多くのメンバーが発生のいくつかの様々な局面を調節する能力を備えている。Sox遺伝子には、中枢神経系の早期発生に関与するSOX1、小脳の上皮顆粒細胞の移動状態への変化に関与するSox2及びSox3、胚発生の調節及び細胞の運命の決定に関与するSox5並びに当業者には公知のその他の多くのSox遺伝子が含まれる。好ましくは、Sox遺伝子は、Sox2、Sox1及びSox5を含む。好ましい実施形態では、Sox遺伝子はSox2、Sox1及びSox5の群から選択される。
【0021】
[00021]転写因子のクルッペル様因子ファミリー(Klf)は、高度に保存された連結によって分離されたC末端に位置する3個のCys2 His2亜鉛フィンガーが特徴である。以下のヒト遺伝子は、クルッペル様因子、KLF1、KLF2、KLF3、KLF4、KLF5、KLF6、KLF7、KLF8、KLF9、KLF10、KLF11、KLF12、KLF13、KLF14、KLF15、KLF16又はKLF17をコードする。好ましい実施形態では、クルッペル様因子は、klf4、klf2又はklf5を含む。好ましい実施形態では、クルッペル様因子は、klf4、klf2及びklf5の群から選択される。
【0022】
[00022]遺伝子のMycファミリーは、転写因子を含み、転写因子は、bHLH/LZ(基本的なヘリックス−ループ−ヘリックス/ロイシンジッパー)ドメインを含有する。遺伝子のMycファミリーには、N−Myc及びL−Myc遺伝子が含まれる。好ましい実施形態では、Mycファミリーの遺伝子はN−Myc、L−Myc又はC−Mycを含む。好ましい実施形態では、Mycファミリーの遺伝子はN−Myc、L−Myc及びC−Mycの群から選択される。
【0023】
ベクター
[00023]本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、例えば、宿主において前記ポリヌクレオチドの発現を対象とすることができる調節配列に操作可能に結合した本発明のポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0024】
[00024]精製又は非精製形態の任意の核内受容体核酸標本を、1つ以上の開始核酸として利用することができる。
【0025】
[00025]PCRは、単離された核内受容体配列を増幅するために使用することができるような1つのプロセスである。この技術は、例えば、DNA又はメッセンジャーRNAを含むRNAを増幅することができ、DNA又はRNAは1本鎖又は2本鎖であってもよい。RNAを鋳型として使用する場合、鋳型をDNAに逆転写するために最適な酵素及び/又は条件が使用されるだろう。さらに、それぞれの1本鎖を含有するDNA−RNAハイブリッドを利用してもよい。核酸の混合物も使用することができ、又は本明細書で記載した以前の増幅反応で生成した核酸も、同じ、若しくは異なるプライマーを用いて利用することができる。
【0026】
[00026]増幅すべき特異的核酸配列は、核酸の一部であってもよく、又は特定の配列が核酸全体を構成するように、別個の核酸として最初から存在させることができる。増幅すべき配列は、純粋な形態で最初から存在している必要はなく、複雑な混合物の小画分であってもよく、例えば、全ヒトDNAに含有されていてもよい。
【0027】
[00027]本明細書で使用したDNAは、身体試料、例えば、血液、組織材料、肺組織などから、当業界で公知の様々な技術によって抽出することができる。抽出した試料が精製されていなければ、増幅の前に、細胞又は試料の動物細胞膜を切断し、核酸(複数可)の鎖(複数可)を曝露し、及び/又は分離するために効果的な試薬量で処理してもよい。鎖を曝露し、分離するためのこの溶解及び核酸変性ステップによって、はるかに容易に増幅を起こさせることができるだろう。
【0028】
[00028]デオキシリボヌクレオチド3リン酸、dATP、dCTP、dGTP及びdTTPは、プライマーと別々に、又は一緒に、適切な量で合成混合物に添加し、得られた溶液を約90度〜100度Cで約1〜10分、好ましくは1〜4分加熱する。この加熱時間の後、溶液を冷却させ、プライマーハイブリダイゼーションに利用しやすくする。冷却した混合物に、プライマー伸長反応を実施するために適切な薬剤(本明細書では「重合化用薬剤」と呼ぶ)を添加し、反応は当業界で公知の条件下で起こさせる。重合化用薬剤はまた、熱に安定ならば、その他の試薬と一緒に添加してもよい。この合成(又は増幅)反応は、室温及びそれ以上では重合化用試薬がもはや機能しない温度までで行うことができる。したがって、例えば、DNAポリメラーゼを薬剤として使用する場合、温度は一般的に約40度Cを上回らない。反応は室温で行うことが最も便利である。
【0029】
[00029]プライマーは、標的ポリヌクレオチド(例えば、サブファミリー5などの核内受容体)の増幅を導く。使用するプライマーは、重合化の開始を実現するために十分な長さであり、適切な配列であるべきである。合成を促す環境条件には、ヌクレオシド3リン酸及び重合化用試薬、例えば、DNAポリメラーゼの存在、並びに適切な温度及びpHが含まれる。
【0030】
[00030]プライマーは、増幅効率を最大にするために1本鎖であることが好ましいが、2本鎖であってもよい。2本鎖の場合、伸長生成物を調製するために使用する前に、プライマーはまず鎖を分離するために処理してもよい。プライマーは、重合化誘導薬剤の存在下で、本発明の核内受容体の伸長生成物への合成を刺激するために十分な長さであるべきである。プライマーの正確な長さは、温度、緩衝液及びヌクレオチド構成を含む多くの要素に左右される。オリゴヌクレオチドプライマーは典型的に、12〜20以上のヌクレオチドを含有するが、より少ないヌクレオチドを含有していてもよい。
【0031】
[00031]プライマーは、核内受容体ゲノム遺伝子配列の各鎖と実質的に相補的であるように設計するべきである。これは、重合化用薬剤の作用を可能にする条件下で、それぞれの鎖とハイブリダイズするために、プライマーが十分相補的であるべきことを意味する。言い換えると、プライマーは、5’及び3’配列とハイブリダイズして核内受容体ゲノム遺伝子配列の増幅を可能にするために、変異に隣接した5’及び3’配列と十分相補的であるべきである。
【0032】
[00032]本発明のオリゴヌクレオチドプライマーは、関与した反応ステップの数に対して指数関数的量のCD166遺伝子配列を生成する酵素的連鎖反応であるPCR増幅プロセスで使用した。通常、1つのプライマーは、核内受容体遺伝子配列のネガティブ(−)鎖に相補的で、他方はポジティブ(+)鎖に相補的である。変性した核酸にプライマーをアニールした後、酵素、例えば、DNAポリメラーゼIの大きな断片(クレノウ)及びヌクレオチドで伸長すると、標的の核内受容体遺伝子配列を含有する、新たに合成された+及び−鎖が生じる。これらの新たに合成された配列はまた鋳型となるので、変性、プライマーアニーリング及び伸長の反復サイクルによって、プライマーによって限定された領域(すなわち、核内受容体遺伝子配列)の指数関数的生成が起こる。連鎖反応の生成物は、使用した特定のプライマーの末端に対応する終端を有する個別の核酸2本鎖である。
【0033】
[00033]オリゴヌクレオチドプライマーは、任意の適切な方法、例えば、従来のホスホトリエステル及びホスホジエステル法又はそれらの自動化実施形態を使用して調製することができる。1つのこのような自動化実施形態では、ジエチルホスホラミダイトが開始物質として使用され、当業界で知られているように合成することができる。
【0034】
[00034]重合化用薬剤は、酵素を含めて、プライマー伸長生成物の合成を実現するために機能する任意の化合物又は系であってもよい。この目的のために適切な酵素には、例えば、E.coli DNAポリメラーゼI、E.coli DNAポリメラーゼのクレノウ断片、ポリメラーゼムテイン、逆転写酵素、熱安定性酵素(すなわち、変性を引き起こすために十分上昇させた温度にした後でプライマー伸長を実行する酵素)、例えば、Taqポリメラーゼを含むその他の酵素が含まれる。適切な酵素は、それぞれの核内受容体遺伝子配列核酸鎖に相補的なプライマー伸長生成物を形成するために適切な様式でヌクレオチドの組み合わせを促進する。一般的に、合成は、それぞれのプライマーの3’末端で開始し、合成が終結するまで鋳型鎖に沿って5’方向に進行し、異なる長さの分子を生成する。
【0035】
[00035]新たに合成された核内受容体鎖及びその相補的な核酸鎖は、前述したハイブリダイズ条件下で2本鎖分子を形成し、このハイブリッドはこのプロセスのその後のステップで使用される。
【0036】
[00036]変性、アニーリング及び伸長生成物合成のステップは、標的の多形遺伝子配列核酸配列を必要な程度まで増幅するために必要な頻度で繰り返すことができる。生じた特定の核酸配列の量は、指数関数的に蓄積する。これはまた、当業界で公知のリアルタイムPCRによって実現することができる。
【0037】
[00037]好ましくは、核内受容体を増幅する方法は、本明細書で記載したようなPCR、又はリアルタイムPCR、及び当業者によって通常使用される通りである。増幅の代替方法も記載されたことがあり、本発明のプライマーを使用してPCRによって増幅された核内受容体配列が代替手段によっても同じように増幅される限り、この方法も使用することができる。このような代替増幅系には、限定はしないが、対象の短いRNA配列及びT7プロモーターで開始する自家持続配列複製法が含まれる。逆転写酵素がRNAをcDNAに複製し、RNAを分解し、その後逆転写酵素が第2のDNA鎖を重合化する。もう1つの核酸増幅技術は、核酸配列をベースにした増幅法(NASBA)で、この増幅法は逆転写及びT7RNAポリメラーゼを使用し、そのサイクルスキームを標的とするために2個のプライマーを組み込む。NASBAは、DNA又はRNAのいずれかで開始し、いずれかで終結することができ、60〜90分以内に10個までのコピーを増幅する。或いは、核酸は連結反応活性化転写法(LAT)によって増幅することができる。LATは、部分的に1本鎖で、部分的に2本鎖である1個のプライマーによって1本鎖鋳型から作動する。増幅は、cDNAをプロモーターオリゴヌクレオチドに連結することによって開始し、数時間以内に増幅は10〜10倍になる。対象のDNA配列に相補的なRNAに、MDV-1と呼ばれるRNA配列を付着させることによって、QBレプリカーゼ系が利用可能となる。試料と混合すると、ハイブリッドRNAは標本のmRNA中にその相補体を見出して結合し、レプリカーゼを活性化して対象のタグに沿う配列を複製する。もう1つの核酸増幅技術、リガーゼ連鎖反応(LCR)は、試料中の近接した配列の存在下で、リガーゼによって共有結合し、新たな標的を形成する対象配列の2つの別々に標識された半分同士を用いることによって作動する。修復連鎖反応(RCR)核酸増幅技術は、標的配列を幾何的に増幅するために、2個の相補的で標的特異的なオリゴヌクレオチドプローブ対、熱安定性ポリメラーゼ及びリガーゼ並びにDNAヌクレオチドを使用する。2塩基のギャップがオリゴヌクレオチドプローブ対を分離し、RCRは正常なDNA修復を模倣して、このギャップを充填して接合する。鎖置換活性化法(SDA)による核酸増幅は、標的DNAに結合する5’末端に短いオーバーハングを有する、hincIIの認識部位を含有する短いプライマーを利用する。DNAポリメラーゼがオーバーハングに対向するプライマーの一部に、硫黄含有アデニン類似体を充填する。HincIIが添加されるが、無修飾のDNA鎖しか切断しない。5’エキソヌクレアーゼ活性が欠如したDNAポリメラーゼが、切れ目の部位に進入して重合化を開始し、最初のプライマー鎖を下流に向かって置換し、新規プライマーを構築し、この新規プライマーがさらなるプライマーとなる。SDAは、37度C、2時間で10倍を上回る増幅を生じる。PCR及びLCRとは異なり、SDAは、機器による温度サイクルを必要としない。本発明の方法に有用なもう1つの増幅系は、QBレプリカーゼ系である。本発明ではPCRが好ましい増幅法であるが、これらのその他の方法も、本発明の方法で記載したように核内受容体配列を増幅するために使用することができる。
【0038】
[00038]本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞に導入するために複製可能な組換えベクターに組み込むことができる。このようなベクターは通常、所望するポリペプチドをコードする目的のポリヌクレオチドを含み、宿主によって認識される複製系を含むことができ、好ましくはポリペプチドをコードする部分に操作可能に結合した転写及び翻訳開始調節配列も含む。発現ベクターには、例えば、複製開始点又は自己複製配列(ARS)及び発現制御配列、プロモーター、エンハンサー及び必要なプロセシング情報部位、例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライシング部位、ポリアデニル化部位、転写終止配列及びmRNA安定化配列が含まれる。適切ならば局在化シグナルも含めることができ、天然の核内受容体タンパク質由来であっても、その他の受容体由来であっても、同種若しくは関連種の分泌ポリペプチド由来であってもよく、タンパク質が細胞膜を横断して移動するのを可能にし、従ってタンパク質の機能的形態を達成する。このようなベクターは、当業界で周知の標準的組換え技術によって調製することができる。
【0039】
[00039]適切なプロモーター及びその他の必要なベクター配列は、宿主で機能させるために選択され、適切ならば、天然に核内受容体遺伝子に関連したものを含めることができる。細胞株及び発現ベクターの実用的な組み合わせの例は当業界では公知である。多くの有用なベクターは、当業界では公知で、Stratagene、New England Biolabs、Promega Biotech及びその他などの販売会社から入手することができる。trp、lacなどのプロモーター及びphageプロモーター、tRNAプロモーター及び解糖酵素プロモーターは原核生物宿主で使用することができる。有用な酵母プロモーターには、メタロチオネイン、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ又はその他の解糖酵素、例えば、エノラーゼ若しくはグリセルアルデヒド−3−リン酸脱水素酵素、マルトース及びガラクトース利用に関連した酵素などのためのプロモーター領域が含まれる。酵母発現における使用に適したベクター及びプロモーターが知られている。適切な非天然哺乳類プロモーターには、SV40の初期及び後期プロモーター又はマウスモロニー白血病ウイルス、マウス腫瘍ウイルス、トリ肉腫ウイルス、アデノウイルスII、ウシパピローマウイルス若しくはポリオーマ由来のプロモーターを含めることができる。さらに、遺伝子の複数コピーを作製することができるように、構築物は増幅可能な遺伝子(例えば、DHFR)に結合することができる。適切なエンハンサー及びその他の発現制御配列のために。
【0040】
[00040]このような発現ベクターは自律的に複製することができるが、当業界で周知の方法によって、宿主のゲノムに挿入することによっても複製することができる。
【0041】
[00041]発現及びクローニングベクターは、選択可能なマーカー、ベクターで形質転換した宿主細胞の生存又は増殖に必要なタンパク質をコードする遺伝子を含有するようである。この遺伝子が存在すると、挿入物を発現する宿主のみが確実に増殖する。典型的な選択遺伝子は、a)抗生物質若しくはその他の毒性物質、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキセートなどに対する耐性を与える、b)栄養要求性欠損を補完する、又はc)複合培地から利用できない必須栄養素を供給するタンパク質をコードしており、例えば、Bacilliの場合はD−アラニンラセマーゼをコードする遺伝子である。適切な選択マーカーの選択は、宿主細胞に左右され、様々な宿主の適切なマーカーは当業界では周知である。
【0042】
[00042]対象の核酸を含有するベクターはインビトロで転写され、得られたRNAを周知の技術によって、例えば、注入によって宿主細胞に導入することができ、又はベクターは、エレクトロポレーション、塩化カルシウム、塩化ルビジウム、リン酸カルシウム、DEAE−デキストラン若しくはその他の物質を使用するトランスフェクション、微粒子銃、リポフェクション、感染(ベクターは感染性病原体、例えば、レトロウイルスゲノムである)及びその他の方法を含む、細胞宿主の種類に応じて変化する当業界で周知の方法によって宿主細胞に直接導入することができる。特に、前述の方法を含む当業界で公知の任意の方法によるポリヌクレオチドの宿主細胞への導入は、本明細書では「形質転換」と称する。以下に記載した核酸を導入した細胞とは、このような細胞の後代も含むことを意味する。
【0043】
ポリヌクレオチド
[00043]通常核内受容体ポリペプチドをコードする、単離された核内受容体核酸分子を開示する。核酸分子は表1に挙げた機能的核内受容体ポリペプチドをコードすることができる任意の核酸を含む。好ましくは、核酸分子は、サブファミリー5の核内受容体をコードすることができる核酸、対立遺伝子変異型又は断片も含むそれらの類似体を含む。サブファミリー5の核内受容体は、Nr5a2、Nr5a1又は対立遺伝子変異型のいずれか1つ、又はDNA結合ドメイン(DBD)及び又は活性化ドメインを含む、断片を含むそれら類似体を含むことができる。具体的には、(a)配列番号:1、3、5、8で記載されたDNA分子又は配列番号10などのそれらの断片をコードするDNA分子、(b)(a)で定義したDNA分子とハイブリダイズするDNA分子又はそれらのハイブリダイズできる断片、及び(c)前記のDNA分子のいずれかによってコードされたアミノ酸配列の発現をコードするDNA分子からなる群から選択されるDNA分子を提供する。
【0044】
[00044]本発明による好ましいDNA分子には、配列番号1、3、5、8で記載された配列を含むDNA分子又は配列番号10などのそれらの断片をコードするDNA分子が含まれる。
【0045】
[00045]ポリヌクレオチドが、天然の状態で、又は当業者に周知の方法によって操作されたときに、ポリヌクレオチドはmRNA及び/又はポリペプチド又はそれらの断片を生成するために転写及び/又は翻訳され得る場合、ポリペプチドを「コードする」という。アンチセンス鎖は、このような核酸に相補的で、コードしている配列は核酸から推定することができる。
【0046】
[00046]「単離された」又は「実質的に純粋な」核酸(例えば、RNA、DNA若しくは混合ポリマー)とは、天然のヒト配列又はタンパク質を天然に伴うその他の細胞成分、例えば、リボソーム、ポリメラーゼ、その他の多くのヒトゲノム配列及びタンパク質から実質的に分離された核酸である。この用語は、天然に生じる環境から取り出された核酸配列又はタンパク質を包含し、組換え若しくはクローニングされたDNA単離物及び化学的に合成された類似体若しくは異種系によって生物学的に合成された類似体を含む。
【0047】
[00047]「核内受容体遺伝子配列」、「核内受容体遺伝子」、「核内受容体核酸」又は「核内受容体ポリヌクレオチド」はそれぞれ、DNA結合ドメイン(DBD)及び活性化ドメインなどの特定のドメインを含有するポリヌクレオチドを意味する。さらに、それらは、表1に挙げたタンパク質をコードするポリヌクレオチドを意味する。好ましくは、核酸分子は、サブファミリー5の核内受容体をコードすることができる核酸、対立遺伝子変異型又は断片を含む類似体、又はそれらの変異体を含む。サブファミリー5の核内受容体は、Nr5a2、Nr5a1又は対立遺伝子変異型のいずれか1つ、又はDNA結合ドメイン(DBD)及び又は活性化ドメインを含む、断片を含む類似体、又はそれらの変異体を含むことができる。SUMO化変異体は、変異したリシン残基を有するNr5a2又はNr5a1変異体、例えば、配列番号1又は配列番号3で記載したNr5a2 2KRを意味することができる。
【0048】
[00048]これらの用語は、核酸に適用する場合、核内受容体ポリペプチド、断片、例えば、タンパク質融合物、SUMO化変異体若しくは欠失物を含む同族変異体又は変種をコードする核酸を意味する。本発明の核酸は、天然の核内受容体をコードする遺伝子から得られた、若しくは天然の核内受容体をコードする遺伝子と実質的に類似の配列、又は天然の核内受容体をコードする遺伝子若しくはその一部と実質的に相同な配列を有する。サブファミリー5のマウスの核内受容体ポリペプチドのコーディング配列は、配列番号5及び8に示されており、アミノ酸配列は配列番号6、7及び9から11に示されている。サブファミリー5のSUMO化核内受容体ポリペプチドのコーディング配列は、配列番号1及び3に示されており、アミノ酸配列は配列番号2及び4に示されている。
【0049】
[00049]核酸又はその断片は、(ヌクレオチドを適切に挿入又は欠失させて)その他の核酸(又はその相補鎖)と最適に整列させたとき、ヌクレオチド塩基の少なくとも約60%、通常少なくとも約70%、より通常少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、及びより好ましくはヌクレオチド塩基の少なくとも約95〜98%でのヌクレオチド配列同一性を有する場合、もう1つの核酸と「実質的に相同」(又は「実質的に類似」)である。実質的に相同な断片を作動するためのコーディング配列の例は、配列番号1、3、5及び8に示されており、アミノ酸配列は配列番号2、4、6、7及び9から11に示されている。
【0050】
[00050]或いは、核酸又はその断片がもう1つの核酸(又はそれらの相補鎖)と選択的ハイブリダイゼーション条件下で、鎖と、又はその相補体とハイブリダイズするときに、実質的な相同性又は(同一性)が存在する。特異性の全欠如よりも実質的により選択的なハイブリダイゼーションが起こるとき、ハイブリダイゼーションの選択性が存在する。通常、少なくとも約14個のヌクレオチドの長さにわたって同一性が少なくとも約55%、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、最も好ましくは少なくとも約90%あるとき、選択的ハイブリダイゼーションが生じる。記載したように、相同性比較の長さは、より長くにわたってもよく、特定の実施形態では、しばしば少なくとも約9ヌクレオチド、通常少なくとも約20ヌクレオチド、より通常は少なくとも約24ヌクレオチド、典型的には少なくとも約28ヌクレオチド、より典型的には少なくとも約32ヌクレオチド、好ましくは少なくとも約36以上のヌクレオチドの長さである。
【0051】
[00051]したがって、本発明のポリヌクレオチドは、本明細書で挙げた配列で示された配列と好ましくは少なくとも75%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%の相同性を有する。より好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の相同性を有する。ヌクレオチド相同性比較は、ポリペプチドについて以下に記載したように実施してもよい。好ましい配列比較プログラムは、以下に記載したGCGウィスコンシンベストフィット(Wisconsin Bestfit)プログラムである。初期設定のスコアリングマトリックスは、それぞれの同一なヌクレオチドについてマッチ値が10であり、それぞれのミスマッチについては−9である。それぞれのヌクレオチドに対して初期設定ギャップ生成ペナルティーは−50であり、初期設定ギャップ伸張ペナルティーは−3である。
【0052】
[00052]本発明の場合、相同な配列は、配列番号1、3、5及び8で記載されたヌクレオチド配列と少なくとも20、50、100、200、300、500又は1000ヌクレオチドにわたってアミノ酸レベルで少なくとも60、70、80又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一であるヌクレオチド配列を含むと考えられる。特に、相同性は通常、タンパク質の機能に必要ではない隣接する配列よりも、必要であることが知られている近接したアミノ酸配列をコードする配列の領域に関して考えるべきである。本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸1から499、配列番号7のアミノ酸1から560若しくは配列番号9のアミノ酸1から462をコードするポリペプチド配列である配列番号10若しくは11をコードするヌクレオチド配列の1個以上と50、60若しくは70%を上回る相同性、より好ましくは80、90、95若しくは97%を上回る相同性を有する近接した配列を含む。好ましいポリヌクレオチドは、代わりに又はさらに、配列番号6のアミノ酸1から499、配列番号7のアミノ酸1から560、配列番号9のアミノ酸1から462、配列番号10のアミノ酸100から187若しくは配列番号11のアミノ酸317から560をコードする配列番号5若しくは8の配列と80、90、95若しくは97%を上回る相同性を有する近接した配列を含んでいてもよい。好ましい核酸は、好ましくはDNA結合ドメイン(DBD)及び活性化ドメインなどの特定のドメインを含有する。
【0053】
[00053]ヌクレオチド配列の長さは、好ましくは少なくとも15ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも20、30、40、50、100若しくは200ヌクレオチドである。一般的に、ポリヌクレオチドの長さが短ければ短いほど、選択的ハイブリダイゼーションを得るために必要な相同性は大きくなる。したがって、本発明のポリヌクレオチドが約30ヌクレオチド未満からなる場合、本明細書で挙げた配列で記載された核内受容体ヌクレオチド配列と比較して、%同一性は75%を上回ること、好ましくは90%又は95%を上回ることが好ましい。反対に、本発明のポリヌクレオチドが、例えば、50若しくは100ヌクレオチドを上回る場合、本明細書で挙げた配列で記載された核内受容体ヌクレオチド配列と比較した%同一性は低くてもよく、例えば、50%を上回り、好ましくは60又は75%を上回ってもよい。
【0054】
[00054]核酸ハイブリダイゼーションは、当業者には容易に理解されるように、塩基成分、相補鎖の長さ、ハイブリダイズする核酸の間のヌクレオチド塩基ミスマッチの数に加えて、塩濃度、温度又は有機溶媒などの条件によって影響を受ける。ストリンジェント温度条件は一般的に、30度Cを上回る、典型的には37度Cを上回る、好ましくは45度Cを上回る温度を含む。ストリンジェント塩条件は、普通は1000mM未満、典型的には500mM未満、好ましくは200mM未満である。しかし、パラメータの組み合わせは、任意の単一のパラメータの大きさよりもずっと重要である。ストリンジェントハイブリダイゼーション条件の一例は、65℃及び0.1×SSC(1×SSC=NaCl 0.15M、クエン酸ナトリウム 0.015M、pH7.0)である。
【0055】
[00055]本発明の「ポリヌクレオチド」成分には、RNA、cDNA、ゲノムDNA、合成型及び混合ポリマー、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方が含まれ、当業者によって容易に理解されるように、化学的若しくは生化学的に改変されていてもよく、又は非天然若しくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含有していてもよい。このような改変には、例えば、標識、メチル化、1個以上の天然に生じるヌクレオチドの類似体による置換、電荷を有さない結合(例えば、ホスホン酸メチル、ホスホトリエステル、ホスホアミダイト、カルバマートなど)、電荷を有する結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)、付属部分(例えば、ポリペプチド)、介入物(例えば、アクリジン、プソラレンなど)、キレ−ト剤、アルキル化剤、SUMO化部位変異体及び改変結合(例えば、アルファアノマー核酸など)などのヌクレオチド間の改変が含まれる。水素結合及びその他の化学的相互作用によって指定された配列に結合するポリヌクレオチドの能力を模倣した合成分子も含まれる。このような分子は当業界では公知で、例えば、ペプチド結合が分子の主鎖におけるリン酸結合と置換したものが含まれる。
【0056】
ポリペプチド
[00056]本発明の完全長核内受容体ポリペプチドは、少なくとも87アミノ酸を有し、動物、特に、哺乳類の核内受容体をコードしており、対立遺伝子変異型、変異体又は相同体を含む。本発明の核内受容体ポリペプチドはまた、完全長核内受容体ポリペプチドの断片及び誘導体、特に実質的に同じ、又は増強された生物活性を有する断片又は誘導体を含む。核内受容体ポリペプチドには、配列番号2、4、6、7、9、10、11のアミノ酸配列、又は対立遺伝子変異型、変異体又は相同体を含むものが含まれ、配列番号10又は11などのそれらの断片も含まれる。特に好ましいポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸1から560、配列番号4のアミノ酸1から560、配列番号6のアミノ酸1から499、配列番号7のアミノ酸1から560若しくは配列番号9のアミノ酸1から462、又はそれらの対立遺伝子変異型、相同体又は配列番号10若しくは11などの断片からなる。
【0057】
[00057]「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸のポリマー及びその等価物を意味し、特定の長さの生成物を意味しないので、ペプチド、オリゴペプチド及びタンパク質はポリペプチドの定義内に含まれる。この用語はまた、ポリペプチドの改変、例えば、グリコシル化、アセチル化、ホスホリル化などを意味しないか、又は排除している。定義内に含まれるのは、例えば、アミノ酸の1個以上の類似体(例えば、天然に単離されたアミノ酸などを含む)を含有するポリペプチド、置換された結合並びに天然及び非天然に生じる当業界に公知のその他の改変を有するポリペプチドである。
【0058】
[00058]本発明の場合、相同な配列は、配列番号2、4、6、7、9、10又は11で記載されたアミノ酸配列と少なくとも20、50、100、200、300若しくは400アミノ酸にわたってアミノ酸レベルで少なくとも60、70、80又は90%同一、好ましくは少なくとも95又は98%同一であるアミノ酸配列を含むものと考えられる。特に、相同性は、重要性が少ない隣接する配列、例えば、リガンド結合ドメイン(LBD)よりも、タンパク質の機能に必須の公知の配列、例えば、配列番号10が一例であるDNA結合ドメイン、又は配列番号11が一例である活性化ドメインの領域に関するものと典型的には考えられるべきである。本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号2、4、6、7、9、10若しくは11のアミノ酸の1個以上と50、60又は70%を上回る相同性、より好ましくは80又は90%を上回る相同性を有する近接した配列を含む。
【0059】
[00059]その他の好ましいポリペプチドは、配列番号2、4、6、7、9、10又は11と40、50、60又は70%を上回る相同性有する近接した配列を含む。相同性はまた類似性(すなわち、類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)に関して考えることができるが、本発明の場合、配列同一性に関して相同性を表現することが好ましい。「実質的な相同性」又は「実質的な同一性」という用語は、ポリペプチドのことをいう場合、問題のポリペプチド又はタンパク質が天然に生じるタンパク質全体又はその一部と少なくとも約70%の同一性、通常少なくとも約80%の同一性、好ましくは少なくとも約90又は95%の同一性を示すことを表す。
【0060】
[00060]相同性比較は、目測によって、又はより通常は、容易に利用可能な配列比較プログラムによって、実施することができる。これらの市販のコンピュータプログラムでは、2個以上の配列の間の相同性%を算出することができる。
【0061】
[00061]パーセント(%)相同性は、近接した配列にわたって算出することができ、すなわち、1配列をその他の配列と整列させ、1配列の各アミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と1度に1残基ずつ直接比較する。これを「ギャップのない」アライメントと呼ぶ。典型的には、そのようなギャップのないアライメントは、比較的短い残基数(例えば、50個未満の近接したアミノ酸)にのみ行われる。
【0062】
[00062]これは非常に単純で一貫性のある方法であるが、例えば、1つの挿入又は欠失があると、それ以外は同一な配列対であっても、それ以降のアミノ酸残基がアライメントから閉め出される原因になるので、グローバルアライメントを行った場合、%相同性の大幅な減少が生じる可能性があることを考慮できない。したがって、ほとんどの配列比較法は、全相同性スコアに過度のペナルティーを課すことなく可能性のある挿入及び欠失を考慮した最適アライメントを生成するように考案されている。これは、局所相同性の最大化を試みるために配列アライメント中に「ギャップ」を挿入することにより達成される。
【0063】
[00063]しかしながら、これらのより複合的な方法では、同一アミノ酸の個数が同数の場合、できるかぎり少ないギャップを有する配列アライメントが、2つの比較配列間のより高い関連性を反映して、多くのギャップを有するものよりも高いスコアを達成するように、アライメント中に生じるそれぞれのギャップに「ギャップペナルティー」が割り当てられる。典型的には、ギャップの存在に比較的高いコストを課し、ギャップ中のそれぞれの後続残基により小さいペナルティーを課する「アフィンギャップコスト(Affine gap cost)」が使用される。これは、最もよく使用されるギャップスコアリング系である。当然ながら、ギャップペナルティーが高ければ、より少ないギャップを有する最適化アライメントが生成されるであろう。ほとんどのアライメントプログラムでは、ギャップペナルティーを変更することが可能である。しかしながら、配列比較用のこのようなソフトウェアを使用する場合、初期設定値を使用することが好ましい。例えば、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(下記参照)を使用する場合、アミノ酸配列に対する初期設定ギャップペナルティーは、ギャップ1つにつき−12、各伸長につき−4である。
【0064】
[00064]したがって、最大%相同性の計算では、最初に、ギャップペナルティーを考慮して最適アライメントを生成することが必要である。このようなアライメントを実施するのに最適なコンピュータプログラムは、GCGウィスコンシンベストフィットパッケージ(University of Wisconsin,U.S.A.;Devereuxら、1984、Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を行うことができるその他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら、1999、前述、18章)、FASTA(Atschulら、1990、J.Mol.Biol.、403〜410)、及び一連のGENEWORKS比較ツールが含まれるが、これらに限定されるものではない。BLAST及びFASTAはいずれも、オフライン検索及びオンライン検索で利用可能である(Ausubelら、1999 前述、7−58〜7−60頁)。しかしながら、GCGベストフィットプログラムを使用することが好ましい。
【0065】
[00065]同一性に関して最終的な%相同性を求めることはできるが、アライメント法自体は、典型的には、絶対的な対比較に基づくものではない。その代わりに、化学的類似性又は進化距離に基づいてそれぞれのペアワイズ比較にスコアを割り当てるスケール化類似性スコアマトリックスが広く使用される。一般に使用されるこのようなマトリックスの一例は、BLOSUM62マトリックス、一連のBLASTプログラムの初期設定マトリックスである。GCGウィスコンシンプログラムでは一般的に、公開初期設定値又は供給されるのであれば、カスタムシンボル比較表のいずれかが使用される(さらに詳しくはユーザーマニュアルを参照されたい)。GCGパッケージでは公開初期設定値を、又は他のソフトウェアの場合にはBLOSUM62などの初期設定マトリックスを使用することが好ましい。
【0066】
[00066]ソフトウェアによって最適アライメントを生成させた後、%相同性、好ましくは%配列同一性を計算することが可能である。典型的には、ソフトウェアは配列比較の一部分としてこれを行い、数値結果を生成する。
【0067】
[00067]核内受容体ポリペプチド相同体には、1個以上のアミノ酸が別のアミノ酸と置換されており、その置換が分化した細胞を多能性状態に再プログラミングする分子の生物学的活性を実質的に改変しないアミノ酸配列を有するものが含まれる。本発明による核内受容体ポリペプチドの相同性は、表1に挙げたアミノ酸のいずれかと80%以上であることが好ましい。好ましくは、核内受容体はサブファミリー5由来で、好ましくは配列番号2、4、6、7、9、10又は11に記載されたアミノ酸配列に対する配列同一性のいずれか1つが80パーセント以上の相同性を有する。本発明の範囲内の核内受容体ポリペプチド相同体の例には、配列番号2、4、6、7、9、10又は11のアミノ酸配列が含まれ、(a)1個以上のアスパラギン酸残基がグルタミン酸と置換されており、(b)1個以上のイソロイシン残基がロイシンと置換されており、(c)1個以上のグリシン若しくはバリン残基がアラニンと置換されており、(d)1個以上のアルギニン残基がヒスチジンと置換されており、又は(e)1個以上のチロシン若しくはフェニルアラニン残基がトリプトファンと置換されている。
【0068】
[00068]好ましくは「核内受容体タンパク質」又は「核内受容体ポリペプチド」は、核内受容体遺伝子配列によってコードされるタンパク質又はポリペプチド、それらの変種又は断片を意味する。好ましくは「核内受容体タンパク質」又は「核内受容体ポリペプチド」は、表1に挙げたタンパク質又はポリペプチドを意味する。より好ましくは「核内受容体タンパク質」又は「核内受容体ポリペプチド」は、サブファミリー5のタンパク質又はポリペプチドを意味する。サブファミリー5の核内受容体には、Nr5a2、Nr5a1のいずれか1つ又はその任意の変種変異体若しくは断片を含めることもできる。高又は低ストリンジェント条件下で核内受容体をコードする核酸にハイブリダイズするDNAによってコードされたタンパク質及び密接に関連したポリペプチド又は核内受容体タンパク質(複数可)に対する抗血清によって回収されたタンパク質も含まれる。
【0069】
[00069]「タンパク質改変又は断片」は、1次構造配列が実質的に相同であるが、例えば、インビボ又はインビトロにおける化学的及び生化学的改変を含むか、又は通常にはないアミノ酸を組み込んだ核内受容体ポリペプチド又はその断片として、本発明によって提供される。このような改変には、当業者によって容易に理解されるように、例えば、SUMO化部位変異、アセチル化、カルボキシル化、ホスホリル化、グリコシル化、ユビキチン化、例えば、放射性核種による標識、及び様々な酵素的改変が含まれる。ポリペプチドを標識するための様々な方法及びこのような目的のために有用な様々な置換基又は標識は、当業界では周知で、32Pなどの放射性同位元素、標識したアンチリガンド(例えば、抗体)に結合するリガンド、蛍光色素、化学ルミネセンス剤、酵素及び標識したリガンドに対して特異的な結合対を作るメンバーとなり得るアンチリガンドが含まれる。標識の選択は必要な感受性、プライマーとの接合しやすさ、安定性要件及び利用可能な装置に左右される。ポリペプチドの標識方法は当業界では周知である。
【0070】
[00070]ポリペプチド「断片」、「部分」又は「区域」とは、少なくとも約5個〜7個の近接したアミノ酸、しばしば少なくとも約7個〜9個の近接したアミノ酸、典型的に少なくとも約9個〜13個の近接したアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約20個〜30個以上の近接したアミノ酸のアミノ酸残基の伸長である。
【0071】
[00071]本発明の好ましいポリペプチドは野生型完全長核転写因子と実質的に類似の機能を有する。本発明の好ましいポリヌクレオチドは、野生型完全長核転写因子と実質的に類似の機能を有するポリペプチドをコードする。「実質的に類似の機能」とは、野生型核内受容体核酸又は野生型核内受容体ポリペプチドに関して、核内受容体の核酸又はポリペプチド相同体、変種、誘導体又は断片が、本明細書で記載したアッセイに従って、体細胞を再プログラミングする機能を意味する。
【0072】
本発明の組成物
[00072]本発明によって生成したポリペプチドは、組成物の形態で再プログラミングする体細胞に投与することができる。
【0073】
[00073]したがって、本発明はまた、治療有効量の核内受容体ポリペプチド及びSoxポリペプチド、クルッペル様因子ポリペプチド又はmycファミリー由来のポリペプチドから選択される1個以上の転写因子ポリペプチドを含む医薬組成物を含む組成物に関する。本明細書では、インビトロで体細胞を再プログラミングすることができるならば、化合物は治療的に有効である。
【0074】
[00074]注射して使用するために適切な本発明の組成物には、滅菌水性溶液(水溶性であれば)若しくは分散液及び滅菌した注射可能な溶液を即時調合するための滅菌粉末並びに又は1つ以上の担体が含まれる。或いは、注射可能な溶液は、細胞膜を通過した輸送を助けるためにリポソームに被包して送達してもよい。その代わりに又はそれに加えて、このような調製物は、細胞膜を通過する輸送を容易にするために自己集合したポア構造の構成要素を含有していてもよい。これらの調製物は製造及び保存の条件下で安定でなければならず、例えば、細菌及び真菌などの微生物の汚染/破壊作用から保護しなければならない。
【0075】
[00075]担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物及び植物油を含有する溶媒又は分散媒であることができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング剤を使用することによって、分散液の場合は必要な粒径を維持することによって、及び界面活性剤を使用することによって維持することができる。本発明の組成物中における微生物の作用の妨害は、抗菌剤及び/又は抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどを添加することによって達成される。多くの場合、等張化剤、例えば、糖類又は塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射可能な組成物の持続吸収は、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの組成物を使用することによってもたらすことができる。
【0076】
[00076]滅菌した注射可能な溶液は、必要な量の活性ポリペプチドを前記に列挙したその他の成分のいくつかと共に適切な溶媒に組み入れ、必要であればその後濾過滅菌することによって調製する。一般的に、分散液は、様々な滅菌活性成分を、塩基性分散媒及び前記に列挙したものからの必要なその他の成分を含有する滅菌媒体に組み入れることによって調製する。滅菌した注射可能な溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製の好ましい方法は真空乾燥法及び凍結乾燥法で、活性成分及びさらに所望する任意の成分の粉末を前もって滅菌濾過したそれら成分の溶液から生成する。
【0077】
[00077]生物学的に許容される担体及び/又は希釈剤にはまた、溶媒、分散媒、抗生物質及び/又は抗菌物質、等張剤及び吸収遅延剤などのいずれか及び全てを含めることができる。このような媒質及び培養のための薬剤の使用は当業界では周知である。任意の便利な媒質又は薬剤が活性ポリペプチドに適合しない場合を除いて、組成物中において媒質又は薬剤を使用することが考えられる。
【0078】
[00078]ポリペプチドも、前述のようなトランスフェクション高分子送達媒体及び当業者に公知のその他の方法などの当業界で公知のタンパク質送達方法によって送達することができる。
【0079】
[00079]この組成物は、体細胞の再プログラミングにおける使用のためのものであってもよい。使用には、新たな細胞が必要とされる変性疾患を治療するための医薬品として、多能性細胞を調製するための本発明の組成物の使用が含まれる。
【0080】
治療で使用するための多能性細胞の誘導方法
[00080]本発明の一実施形態は、多能性幹細胞治療の必要な患者を治療するための医薬品の製造において、インビトロで多能性幹細胞を誘導する方法であって、個体ドナーから細胞を単離するステップ、インビトロで細胞を培養するステップ、培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、前記転写因子をコードするポリヌクレオチドが、細胞を多能性細胞に誘導するために、核内受容体及び群Sox2、Klf4、c−Myc、Klf2、Klf5、Sox1、Sox5、N−myc及びL−mycから選択される1個以上の転写因子を含む、ステップ、多能性幹細胞治療の必要な患者に多能性細胞を導入するステップを含む方法である。
【0081】
[00081]「治療」及び「治療する」並びにそれらの同義語は、治療的療法及び予防的又は防御的処置を意味し、その目的は変性状態を防御するか、又は鈍化させる(減少させる)ことである。このような治療を必要とする人には、脳卒中、癌、糖尿病、神経障害、例えば、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー、認知症、並びに心障害及び筋肉損傷及びその他多くと既に診断された人が含まれる。
【0082】
[00082]本明細書では、化合物の「治療有効量」は、変性状態を防御するか、又は少なくとも鈍化させる(減少させる)、特に患者の寿命を延長させることができる細胞の量である。本発明の細胞の用量及び投与は、当業者によって決定することができる。治療上使用される細胞の有効量は、例えば、治療目的、投与経路及び哺乳類の状態に左右される。したがって、治療専門家は、最適な治療効果を得るために必要な用量を調節し、投与経路を変更することが必要とされる。
【0083】
[00083]好ましくは、本発明の多能性細胞は、パーキンソン病、ハンチントン病、アルツハイマー、認知症又は脳卒中などの神経障害で使用される。
【0084】
誘導多能性幹細胞株
[00084]一実施形態では、多能性幹細胞株を作製する方法は、インビトロで細胞を培養するステップ、培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、転写因子をコードするポリヌクレオチドが、核内受容体と、群Sox2、Klf4、c−Myc、Klf2、Klf5、Sox1、Sox5、N−myc及びL−mycから選択される1個以上の転写因子とを含む、ステップ、細胞株を維持するために多能性細胞を継代するステップを含む。
【0085】
細胞の調製
[00085]本明細書では「細胞」とは、体内の組織、又は体液から得られた生物学的試料を意味する。細胞は、穿刺生検試料などの患者から得られた試料である「臨床試料」であることが多い。「細胞」にはまた、血液、血清などの液体から単離された細胞が含まれてもよい。細胞試料は、肺、膀胱、脳、子宮、子宮頚部、結腸、直腸、食道、口腔、頭部、筋肉、心臓、皮膚、腎臓、乳房、卵巣、首部、膵臓、前立腺、精巣、肝臓、生殖腺、胃の組織又は当業者には公知の任意のその他の臓器若しくは組織から単離して得ることができる。
【0086】
[00086]細胞試料は身体から得られ、細胞及び細胞外物質を含む。細胞試料は、ヒト又は非ヒト動物由来であってもよい。細胞試料は、任意の臓器又は体液から得ることができる。細胞試料は、公知の方法、例えば、切除、針生検、血液抽出などを使用して得ることができる。細胞は、細胞の培養及び再プログラミングを可能にする方法で加工すべきである。したがって、対象、ドナー又は個体から得られた細胞は、理想的には洗浄してすぐに培養する。
【0087】
細胞培養
[00087]iPSCは、研究又は医学的処置用のインビトロで細胞を増殖させるための人工培地などの関連培養培地で、当業界で知られているように培養してもよい。細胞は、細胞の連続継代性を維持するために当業界で公知なように何世代か継代してもよい。培養培地は、細胞に栄養を与え、保持するために栄養素を含有してもよい。培養培地にはまた、細胞に所望する変化を起こさせるため、増殖因子を添加して含めてもよい。
【0088】
好ましい実施形態の例
【0089】
核内受容体の再プログラミング能力
[00088]再プログラミングの効率を高めることができる核内受容体を同定するため、18種の核内受容体(表1)のスクリーニングを実施した。内在性Pou5f1−GFPレポーターを含有するマウスの胚性線維芽細胞(MEF)をスクリーニングで使用した。再プログラミングされたMEFは、サイレンシングしたPou5f1−GFPレポーターの反応の結果として、GFPが発現することによって陽性に同定された。スクリーニングは、Oct4(O)、Sox2(S)、Klf4(K)及びc−Myc(M)ウイルスでレトロウイルスにより形質導入されたそれぞれの核内受容体について実施した。Pou5f1−GFP陽性コロニーの出現頻度は、感染させて14日後(dpi)に記録した。核内受容体構築物全ての転写発現も確認された(図5)。このスクリーニングによって、オーファン核内受容体Nr1i2(プレグナンX受容体、Pxrとしても知られている)及びNr5a2(肝臓受容体ホモログ−1、Lrh−1としても知られている)の両方が再プログラミングの効率を(OSKM対照と比較して)それぞれ2.7倍及び4.0倍増強することができることを発見した(図1a)。
【0090】
【表1】

【0091】
[00089]これらの再プログラミングエンハンサーが中心的な再プログラミング因子と代替できるかどうかを次に調べようとした。c−Mycが再プログラミングに重要ではないことが以前に示されているので、c−Mycの代替能力については調べなかったが、代わりにこれら2種類の核内受容体がOSKトリオのいずれかと代替する能力を調べた。注目すべきことに、Pou5f1−GFP MEFをNr5a2及びSKMウイルスで形質導入すると、Pou5f1−GFP陽性コロニー(播種したMEF100,000個当たり23.7±3.5個)が14dpiに認められた(図1b及び図6a〜b)。これは、外来性Nr5a2が再プログラミング効率を高めるだけでなく、MEFの再プログラミングにおいて外来性Oct4と代替することもできることを示している。Nr5a2、Sox2、Klf4及びc−Mycで再プログラミングされたこれらの細胞をNSKM iPSCと称する。これらのコロニーは、長期間安定に継代することができ、アルカリホスファターゼ(図6c)、Nanog(図6d〜e)及びSSEA−1(図6f〜g)で陽性に染色した。
【0092】
[00090]c−Mycが再プログラミングに必要ないならば、NSKM iPSCよりも効率は低いが(播種したMEF100,000個当たり2.3±0.6個)Nr5a2及びSKウイルスだけで形質導入されたPou5f1−MEFからiPSCを生成することもできる(図1c〜e)。これらの3因子Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、NSK iPSCと称する。NSKM iPSCと同様に、NSK iPSCはアルカリホスファターゼ(図1f)、Nanog(図1g〜h)及びSSEA−1(図1i〜j)で陽性に染色した。
【0093】
[00091]Nr5a2で再プログラミングされた細胞を細胞遺伝学的に分析すると、核型が正常であることが示された(図7a)。さらに、それぞれのウイルスのゲノム統合を試験し、Nr5a2で再プログラミングされた細胞のゲノムDNAにOct4レトロウイルスが存在しないことを確認した(図7b)。
【0094】
Nr5a2で再プログラミングされた細胞の特徴
[00092]Nr5a2で再プログラミングされた細胞のグローバル遺伝子発現プロファイルを実施して、これらのiPSCの遺伝子発現がESCと類似しているかどうかを調べた。Nr5a2で再プログラミングされた細胞株(NSKM及びNSK)並びにMEF(アクチン−GFP及びPou5f1−GFP)、ESC及びOSKM iPSC株のトランスクリプトームを特徴付けた。クラスター分析によって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞はMEFよりもESC及びOSKM iPSCに類似していることが明らかになった(図2a)。さらに、発現プロファイリングによって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞では、ESC関連遺伝子が付随して上方制御され、MEF関連遺伝子が下方制御されることが示された(図2b)。これらのことを考え合わせると、Nr5a2で再プログラミングされた細胞の発現プロファイルは、ESC及び従来のOSKM iPSCの両方と類似している。
【0095】
[00093]次に、Nr5a2で再プログラミングされた細胞におけるPou5f1及びNanogのプロモーターのメチル化状態を調べるために、重亜硫酸塩による配列解析を実施した。プロモーターメチル化分析によって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞のPou5f1及びNanogプロモーターはほとんどがメチル化されておらず(図3a)、ESCのプロモーターと類似しているが、MEFのPou5f1及びNanogプロモーター領域は高度にメチル化されていることが明らかになった。Nr5a2で再プログラミングされた細胞のビバレントドメインパターンも調べた。その結果、Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、6個の遺伝子(Zfpm2、Sox21、Pax5、Lbx1h、Evx1及びDlx1)に活性H3K4me3及び抑制H3K27me3両方のクロマチン修飾を有することが示された(図3b)。これらの結果は、両方のクロマチン修飾も有するESCの結果と一致しているが、どちらのクロマチンマークも解除されている分化した細胞とは異なっている。
【0096】
[00094]Nr5a2で再プログラミングされた細胞の多能性を試験するために、胚様体(EB)媒介分化アッセイ及び奇形腫形成アッセイの両方を実施した。Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、インビトロで3種類の主要な胚様(内胚葉、外胚葉及び中胚葉)の細胞に分化し(図8a)、3種類の主要な肺葉を起源とした分化組織からなる奇形腫を形成することができたので(図8b)、本当に多能性があった。
【0097】
[00095]Nr5a2で再プログラミングされた細胞を8細胞期の野生型C57BL/6J又はB6(Cg)−Tyrc−2J/J(B6−アルビノ)胚にマイクロインジェクションすることによって、多能性のよりストリンジェントなアッセイを実施した。Nr5a2で再プログラミングされた細胞はPou5f1−GFP MEFから得られたので、生殖腺では内在性Oct4発現が高レベルであるため、GFP発現は生殖腺で観察するべきである。予測通り、E3.5胚は生殖腺でGFP発現を示した(図4a〜b)。より重要なことに、生産キメラはNSKM(図6i)及びNSK株(図4c)から作製された。
【0098】
Nr5a1で再プログラミングされた細胞の特徴
[00096]ステロイド産生因子1(Sf1)としても知られているNr5a1は、Nr5a2と同じ核内受容体サブファミリー5に属する。したがって、Nr5a1が再プログラミングの効率を高め、Oct4と代替できるかどうかを調べることに関心を持った。Nr5a1は再プログラミング効率を高めるが(図9a)、Nr5a2よりは少なかった。次に、Nr5a1が中心的な再プログラミング因子(O、S及びK)のいずれかと代替できるかどうかを調べた。Nr5a2と同様に、Nr5a1はSox2及びKlf4と代替することはできなかった。興味深いことに、Nr5a1及びSKMウイルスで形質導入したMEFは、Pou5f1−GFP陽性iPSCコロニーを生成した(図9b〜d)。これらの再プログラミングされたMEFは、NSKM iPSCと称する。これらのNr5a1で再プログラミングされた細胞はアルカリホスファターゼ(図9e)、Nanog(図9f〜g)及びSSEA−1(図9h〜i)を発現する。さらに、これらの核型が正常なNSKM iPSC(図9j)は、インビトロで3種類の異なる胚葉の系列に分化することができた(図9k)。Nr5a1による再プログラミングを独立して示すことによって、Nr5aサブファミリーの両メンバーは本当に類似の再プログラミング特性を有することが示される。
【0099】
[00097]次に、Nr5a2及びNr5a1の両方の添加によってOct4無しで再プログラミングの効率が高まるかどうかを調べた。したがって、Pou5f1−GFP MEFをNr5a2、Nr5a1及びSKMウイルスで同時形質導入した。興味深いことに、Nr5a2及びNr5a1の両方をSKMと共に添加すると、Nr5a2及びSKMに対して約3倍にPou5f1−GFP陽性コロニーの数を増加させることができた(図10)。この結果は、両因子を一緒に導入すると、本当に再プログラミング効率に対して相加効果を有することを示している。
【0100】
核内受容体断片の設計
[00098]その他の核内受容体のように、Nr5a2はリガンド結合ドメイン(LBD)及びDNA結合ドメイン(DBD)を有する。しかし、オーファン核内受容体は、Nr5a2の内在性リガンドが依然として知られていない。二量体で機能を果たすほとんどの核内受容体とは異なり、Nr5a2は単量体の状態でDNAに結合することができる。Oct4がない場合のMEFの再プログラミングにおいて、Nr5a2のLBD及びDBDの機能的重要性を調べた。推定リガンドの結合を阻止するために、Nr5a2 LBDの溝を埋めるように特定の残基を大きな残基(A368M)に変異させた。次に、Nr5a2 DNA結合活性の著しい減少を生じる、保存されたFtz−F1ドメインに2重変異(G190V、P191A)を有するDBD変異体を作製した。したがって、SKMウイルスで形質導入したPou5f1−GFP MEFをまた、野生型(WT)Nr5a2、A368M Nr5a2変異体又はG190V、P191A Nr5a2変異体のいずれかをコードするウイルスで形質導入することによって、再プログラミングアッセイを実施した。レトロウイルスベクターが同レベルのNr5a2タンパク質を発現することを確かめるために、ウェスタン分析を実施した(図11a)。我々の結果によって、Nr5a2 LBD変異体はWTと比較して、Pou5f1−GFP陽性コロニーの形成数を減少させないことが示された(図11b)。このことは、Nr5a2はリガンド結合とは独立した再プログラミング因子として機能することを示唆している。対照的に、Nr5a2 DBD変異体をSKMと共に導入すると、Pou5f1−GFP陽性コロニー数が劇的に減少した(図11b)。このことは、Nr5a2 DBDの完全性は、MEFにおいて再プロミングプロセスを開始するために核内受容体が標的遺伝子のプロモーター/エンハンサー領域に適切に結合するために重要であることを示している。考え合わせると、DBDはNr5a2の再プログラミング機能に必須であるが、リガンド結合はNr5a2の再プログラミングの役割に重要ではないことが示される。
【0101】
[00099]Nr5a2又はNr5a1による再プログラミングは、外来性Oct4の必要性を回避することができる転写因子の最初の報告例である。Nr5a2は早期マウス胚発生におけるOct4発現の維持に関与する。Nr5a2は、Pou5f1の近位エンハンサー及び近位プロモーターの領域の両方に結合することができ、マウス胚発生のエピブラスト段階においてOct4を調節できることが示された。したがって、Oct4調節因子として、外来性Nr5a2は、MEFの再プログラミングプロセスにおいて内在性Oct4発現を誘導し、内在性Oct4と代替するのに十分であり得る。Nr5a1はマウスESCでは発現しないが、マウス胚性癌腫細胞においてOct4発現を活性化し、これは、再プログラミングにおいてOct4と代替する能力と一致する。この点について、Oct4発現を活性化する因子はまた、再プログラミングプロセスにおいてOct4と代替することができると考えられる。Sall4はOct4の公知の転写調節因子である。しかし、Sall4レトロウイルスをSKMウイルスと共に導入しても、Pou5f1−GFP陽性コロニーは認められなかった(データは示さず)。したがって、Oct4調節因子が全てiPSCの生成においてOct4と代替できるのではないことは注目すべきことである。
【0102】
[000100]要約すると、我々の研究は、体細胞の再プログラミングのためにOct4に依存しない形式(code)を提供する。さらに、Nr5a2及びNr5a1の両方が従来の4種類の因子と共に再プログラミングの効率を高めることができることも示す。要するに、再プログラミングの増強及び媒介の両方における核内受容体の予期せぬ2つの役割を明らかにした。
【0103】
方法
[000101]細胞培養及びトランスフェクション。iPSCは、熱不活性化牛胎児血清(FBS、Gibco)15%又はノックアウト血清代替物(KSR、Gibco)15%、β−メルカプトエタノール(Gibco)0.055mM、L−グルタミン(Gibco)2mM、MEM非必須アミノ酸(Gibco)0.1mM、ゲンタマイシン(Gibco)20μgml−1及びLIF(手製)1000Uml−1を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Gibco)においてマイトマイシンCで処理したMEFフィーダーで培養し、2〜3日毎に継代した。MEFは、E13.5胚から単離し、以前に記載したように培養した。10cmプレート上の293−T細胞を、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して製造元の指示に従って各PMXレトロウイルスベクター25μgをトランスフェクトした。
【0104】
[000102]マウス分子遺伝学。MEFはPou5f1−GFPトランスジェニックマウス及びアクチン−GFPトランスジェニックマウス(Jackson’s lab、ストック番号004654及び003516)から単離した。Pou5f1−GFPは、Pou5f1−GFP雄マウスと野生型129S2/SV雌の交配から得られたE13.5胚から収集し、アクチン−GFP MEFはアクチン−GFPマウスと野生型CD1雌マウスの交配から得られたE13.5胚から収集した。8〜12個のiPSCを、8細胞期に得たC57BL/6J及びB6(Cg)−Tyrc−2J/J胚にマイクロインジェクションした。マイクロインジェクションした胚をE0.5偽妊娠雌F1(CBA×C57BL/6J)の卵管に移植した。キメラ胚は、E13.5で収集し、蛍光顕微鏡で生殖腺におけるGFP発現を測定した。
【0105】
[000103]レトロウイルスパッケージング及び感染。Nr5a2及びその他の因子のcDNA配列は、マウスESC cDNA又は市販のプラスミド(Open Biosystems)のいずれかからPCR増幅した。Nr5a2変異体は、適切なプライマーでPCR増幅した。増幅したコーディング配列は配列決定によって確認し、MMLVをベースにしたpMXレトロウイルスベクターにクローニングした。レトロウイルスは、既に記載したように作製した。iPSC生成のために、異なる因子をコードする等量のウイルスをFBS15%及びポリブレン6ngml−1を含有するDMEMに70%コンフルエンスでMEFに導入した。1dpiに培地を新鮮なMEF培地に交換した。2dpiに、細胞をMEFフィーダーに移し、前述のようにFBSを含有する培養培地で6日間培養し、その後さらに5〜15日間、前述のようにKSRを含有する培養培地で培養した。
【0106】
[000104]RNA抽出、逆転写及び定量的リアルタイムPCR。前述の通りである。
【0107】
[000105]重亜硫酸塩ゲノム配列決定。ゲノムDNAは、Imprint(商標)DNA修飾キット(Sigma)によって製造元の指示に従って重亜硫酸塩処理した。Pou5f1及びNanogのプロモーター領域は、PCRによって増幅し、pCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen)にクローニングし、M13フォワード及びM13リバースプライマーで配列決定した。
【0108】
[000106]Pou5f1及びNanogプロモーター領域のPCR増幅で使用したプライマー配列はそれぞれ、
5’-ATGGGTTGAAATATTGGGTTTATTTA、
5’CCACCCTCTAACCTTAACCTCTAAC、及び
5’−GATTTTGTAGGTGGGATTAATTGTGAATTT、
5’−ACCAAAAAAACCCACACTCATATCAATATAである。
【0109】
[000107]核型分析。iPSCをコルセミド(Invitrogen)で処理し、標準低浸透圧処理によって収集し、メタノール:酢酸(3:1)で固定した。スライドは、Gバンド核型分析の前に空気乾燥した。
【0110】
[000108]遺伝子型決定。各PCR増幅反応は、iPSC、ESC、MEF又は胚のいずれかから収集したゲノムDNA300ngで実施した。
【0111】
センスプライマー配列:5’−GACGGCATCGCAGCTTGGATACACである。
【0112】
アンチセンスプライマー配列は、
Nr5a2:5’−GACGCAATAGCTGTAAGTCCATG
Sox2:5’−GCTTCAGCTCCGTCTCCATCATGTT
Klf4:5’−GCCATGTCAGACTCGCCAGG
c−Myc:5’−TCGTCGCAGATGAAATAGGGCTG
Oct4:5’−CCAATACCTCTGAGCCTGGTCCGATである。
【0113】
[000109]EB媒介インビトロ分化。EB形成のため、iPSCをトリプシン処理し、ペトリ皿内でLIF及びβ−メルカプトエタノールを含まないiPSC培養培地で4〜5日培養した。EBは、ゼラチンをコートしたプレートに移し、レチノイン酸(Sigma)1μMを添加して5〜6日培養した。試料は4%パラホルムアルデヒドで固定し、1%トリトンX−100で透過処理し、8%FBSでブロックし、抗Gata−4(1:100、sc−25310、Santa Cruz)、抗ネスチン(1:100、sc−58813、Santa Cruz)又は抗α−平滑筋アクチン(1:100、ab18460、Abcam)で染色した。次に試料は、2次抗体、Alexa Fluor546結合抗マウス(1:1000、Invitrogen)で染色し、次いでヘキスト(1:4000、Invitrogen)で核染色した。
【0114】
[000110]奇形腫アッセイ。iPSCは、トリプシン処理によって収集し、0.9%生理食塩水中1×10細胞ml−1の濃度まで再懸濁した。細胞懸濁液100μlをアベルチンで麻酔したSCIDマウスの各背側部に皮下注射した。奇形腫を3〜4週間後に切除し、重量を量り、パラフィルムに包埋する前にブアン固定液で固定した。パラフィン包埋組織を切除し、前述したようにマロリーテトラクロームで染色した26
【0115】
[000111]免疫蛍光顕微鏡及びアルカリホスファターゼ染色。ゼラチンコーティングしたカバーガラス上で培養したiPSCを4%パラホルムアルデヒドで固定し、1%tritonX−100で透過処理し、8%FBSでブロックした。ブロック後、試料を抗Nanog(1:50、RCAB0002PF、CosmoBio)又は抗SSEA−1(1:200、MAB4301、Chemicon)で染色し、その後Alexa Fluor568結合抗ウサギ(1:300、Invitrogen)又はAlexa Fluor546結合抗マウスIgM(1:2000、Invitrogen)それぞれで染色した。次に、核はヘキスト(Invitrogen)で対比染色した。市販のESC特徴付けキット(Chemicon)を使用してアルカリホスファターゼ検出を実施した。
【0116】
[000112]ウェスタン分析。トランスフェクション48時間後、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を添加したRIPA緩衝液(Pierce)で293−T細胞を可溶化した。タンパク質濃度は、ブラッドフォード(Bradford)アッセイキット(Bio−Rad)で測定した。細胞溶解物50μgを10%SDS−ポリアクリルアミドゲルで分離し、ポリビニリジンジフルオライド膜(Millipore)に移した。この膜を5%スキムミルクでブロックした。ブロック後、ブロットを抗Nr5a2(1:2000、ab18293、Abcam)又は抗アクチン(1:2000、sc−1616、Santa−Cruz)いずれかの一次抗体で1時間インキュベートし、PBSTで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗ウサギIgG(1:5000、sc−2004、Santa Cruz)又はHRP結合抗ヤギIgG(1:5000、sc−2768、Santa Cruz)それぞれでインキュベートした。PBSTで洗浄後、シグナルはウェスタンブロッティングルミノール試薬(Santa Cruz)を使用して検出した。
【0117】
[000113]ChIPアッセイ。ChIPアッセイは、以前に記載されたように実施した27。簡単にいうと、細胞は室温で10分間1%ホルムアルデヒドと架橋結合させ、ホルムアルデヒドはグリシン125mMで反応停止させた。細胞溶解物は超音波処理し、クロマチン抽出物を抗H3K4me3(ab8580、Abcam)又は抗H3K27me3(07−449、Millipore)抗体で免疫沈降させた。定量PCR分析は、以前に記載されたように実施した
【0118】
[000114]マイクロアレイ分析。マウスESC、iPSC(OSKM、NSKM #A5、NSK #B3及び#B11)及びMEF(アクチン−GFP及びPou5f1−GFP)から収集したmRNAの逆転写を実施した。各細胞株から2つの生物学的なマイクロアレイデータが繰り返し得られた。製造元の指示に従って処理したアレイ(セントリックスマウス−6発現ビーズチップ(Sentrix Mouse−6 Expression BeadChip)バージョン1.1)をイルミナ(Illumina)マイクロアレイプラットホームで読み取った。個別に発現した遺伝子をマイクロアレイの有意性分析(SAM)基準に基づいて選択した:倍率変化((FC)<0.6は下方制御、FC>1.5は上方制御、q値<2%及び全試料の検出可能性は0.95を上回る。
【0119】
核内受容体のスクリーニングによって、Nr1i2及びNr5a2が再プログラミング効率を高めることができることが明らかである
【0120】
[000115]19種の核内受容体(表1)の再プログラミング効率を高める能力のスクリーニングを実施した。Pou5f1−GFPレポーターを含有するMEF(図12A)(Fengら、2009a)を使用して、Pou5f1遺伝子の反応性に基づいて推定iPSCコロニーを同定した。Oct4(O)、Sox2(S)、Klf4(K)及びc−Myc(M)レトロウイルスと共にそれぞれの核内受容体をレトロウイルスでトランスフェクトした。GFP陽性コロニーの出現頻度は、感染させて14日後(dpi)に測定した。核内受容体構築物全ての転写発現が確認された(データは示さず)。このスクリーニングによって、オーファン核内受容体Nr1i2(プレグナンX受容体、Pxrとしても知られている)及びNr5a2(肝臓受容体ホモログ−1、Lrh−1としても知られている)の両方が再プログラミングの効率を(OSKM対照と比較して)それぞれ2.7倍及び4.0倍増強することができることを発見した(図12A)。Nr5a2を添加するとまた、OSKMによる再プログラミングの動態が増強され、従来の4種類の因子による再プログラミングの場合よりも3日間早くGFP発現が検出可能であった(図12B)。細胞生存能アッセイによって、Nr1i2及びNr5a2両方が細胞死を誘導しないことが確かめられた(図16B)。
【0121】
Nr5a2はMEFのiPSCへの再プログラミングにおいてOct4と代替することができる
【0122】
[000116]次に、Nr1i2及びNr5a2が再プログラミング効率の増強に加えて中心的再プログラミング因子と代替できるかどうかを調べた。c−Mycが再プログラミングに重要ではないことが既に示されたので(Nakagawaら、2008;Wernigら、2008)、c−Mycの代替能力については調べなかったが、代わりにこれら2種類の核内受容体がOSKトリオのいずれかと代替する能力について試験した。Nr1i2はO、S又はKとは代替できず、Nr5a2はS又はKと代替できなかった(図12C)。注目すべきことに、Pou5f1−GFP MEFをNr5a2及びSKMウイルスで形質導入すると、GFP陽性コロニー(播種したMEF100,000個当たり23.7±3.5個)が14dpiによって認められた(図12C、図16C及び16D)。これは、外来性Nr5a2が再プログラミング効率を高めるだけでなく、内在性Oct4と代替することもできたことを示している。Nr5a2、Sox2、Klf4及びc−Mycで再プログラミングされたこれらの細胞をNSKM iPSCと称する。これらのコロニーは、長期間安定に継代することができ、アルカリホスファターゼ(図16E)、Nanog(図16F及び16G)及びSSEA−1(図16H及び16I)で陽性に染色された。その他の18種の核内受容体がOct4と代替する能力についても試験した。しかし、Nr5a2とは異なり、いずれもOct4とは代替できなかった(図16J)。
【0123】
[000117]c−Mycが再プログラミングに重要でないならば、NSKMの組み合わせよりも効率は低いが(播種したMEF100,000個当たり2.3±0.6個)、Nr5a2及びSKウイルスで形質導入されたPou5f1−GFP MEFからiPSCを生成することもできた(図12D〜12F)。これらの3因子Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、NSK iPSCと称する。NSKM iPSCと同様に、NSK iPSCはアルカリホスファターゼ(図12G)、Nanog(図12H及び12I)及びSSEA−1(図12J及び12K)で陽性に染色された。
【0124】
[000118]Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、核型が正常で(図16K)、それぞれのウイルスのゲノムDNAへのゲノム統合が確認されており、Oct4導入遺伝子の統合の証拠は示されなかった(図16L)。胚様体が媒介する分化及び奇形腫形成アッセイの両方を、Nr5a2で再プログラミングされた細胞の多能性を試験するために実施した。インビトロで3種類の主要な胚葉の細胞に分化し(図17A)、3種類の主要な肺葉を起源とした分化組織からなる奇形腫を形成することができたので(図17B)、Nr5a2で再プログラミングされた細胞は本当に多能性がある。
【0125】
[000119]Nr5a2で再プログラミングされた細胞を8細胞期の野生型C57BL/6J又はB6(Cg)−Tyrc−2J/J(B6−アルビノ)胚にマイクロインジェクションすることによって、多能性のよりストリンジェントなアッセイを実施した。Nr5a2で再プログラミングされた細胞はPou5f1−GFP MEFから得られたので、E13.5胚は、内在性Oct4を高レベルで発現することによって、生殖腺においてGFP発現を示した(図12L及び12M)。さらに、生産キメラはNSKM(図16M)及びNSK株(図12N)の両方から生成された。さらに重要なことに、NSK株は生殖系列に分化可能である(図12O、表2)。
【0126】
【表2】

【0127】
表の説明。あり(yes)はiPSC株がアッセイで合格したことを示し、なし(no)は生殖系列への移行が認められなかったことを示している。
【0128】
Nr5a2で再プログラミングされた細胞の発現及びエピジェネティックプロファイリングはESCに非常に似ている。
【0129】
[000120]Nr5a2で再プログラミングされた細胞のグローバル遺伝子発現プロファイリングを実施し、マイクロアレイデータの階層的クラスター化によって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞がMEFよりもESC及びOSKM iPSCとより類似していることが明らかになった(図17C)。さらに、発現プロファイリングによって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞では、ESC関連遺伝子が付随して上方制御され、MEF関連遺伝子が下方制御されることが示された(図17D)。
【0130】
[000121]次に、プロモーターメチル化分析によって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞のPou5f1及びNanogプロモーターはほとんどがメチル化されておらず(図17E)、ESCと類似していることが明らかになった。Nr5a2で再プログラミングされた細胞のビバレントドメインパターンも調べた。我々の結果によって、Nr5a2で再プログラミングされた細胞は、ESCと類似した活性H3K4me3及び抑制H3K27me3両方のクロマチン修飾を有することが示された(図17F)。
【0131】
近接したファミリーのメンバーNr5a1も再プログラミング効率を高め、Oct4と代替することができる
【0132】
[000122]再プログラミングの場合、転写因子の同じファミリーの密接に関与したメンバーは互いに代替することができる(Fengら、2009a;Nakagawaら、2008)。Nr5a1(ステロイド産生因子1、Sf1としても知られている)及びNr5a2の両方が同じ核内受容体サブファミリーVに属するので、Nr5a1が再プログラミングの効率を高め、Oct4と代替できるかどうかを調べることに関心を持った。Nr5a1は再プログラミング効率を高めるが(図13A)、Nr5a2よりは少なかった(図12A)。次に、Nr5a1が中心的な再プログラミング因子(O、S及びK)のいずれかと代替できるかどうかを調べた。Nr5a2と同様に、Nr5a1はS及びKとは代替できないが、Oct4とは代替することができた(図13B)。これらのGFP陽性iPSCコロニー(図13C及び13D)をNSKM iPSCと称する。これらのNr5a1で再プログラミングされた細胞はアルカリホスファターゼ(図13E)、Nanog(図13F及び13G)及びSSEA−1(図13H及び13I)を発現する。NSKM iPSCにおいてウイルス性Nr5a1のゲノム統合を確認したが、ウイルス性Pou5f1及びウイルス性Nr5a2ゲノム統合の証拠は見いだせなかった(図13J)。これらの核型が正常なNSKM iPSC(図13K)は、インビトロで3種類の異なる胚葉に分化することができ(図13L)、3種類の異なる系列の組織を含む奇形腫を形成することができた(図13M)。Nr5a1による再プログラミングを示すことによって、Nr5aサブファミリーのいずれのメンバーも本当に類似の再プログラミング特性を有することが示される。
【0133】
Pou5f1調節領域に結合するその他の転写因子は、再プログラミングにおいて外来性Oct4と代替することができない
【0134】
[000123]Nr5a2は、Pou5f1の近位エンハンサー及び近位プロモーターの領域の両方に結合し、マウス胚発生のエピブラスト段階においてPou5f1を調節することが示された(Guら、2005)。Nr5a2欠損胚は、エピブラストにおいてOct4発現の欠如を示し(Guら、2005)、E6.5とE7.5の間で死滅する(Guら、2005、Pareら、2004)。したがって、外来性Oct4との代替におけるNr5a2の機構の一部は、Nr5a2が直接Pou5f1を調節し、Pou5f1の上流に作用するという発見によって説明することができる。
【0135】
[000124]Pou5f1プロモーター又はエンハンサー領域に結合するその他の転写因子もMEFの再プログラミングにおいてOct4と代替できるか調査を続行した。したがって、Pou5f1調節領域に結合する9種類のその他の転写因子(Nanog、Sall4、Stat3、Zfx、Tcfcp2l1、Klf2、Klf5、N−Myc、Esrrb)を試験した(Chenら、2008)。各ウイルス転写物の発現を確認した(図13N)。我々の結果によって、これらの転写因子はいずれもSKMと組み合わせてOct4と代替できないことが明らかになった(図13O)。この結果は、Pou5f1調節領域に結合する転写因子が再プログラミングにおいてOct4と全く代替できないことを示している。したがって、Nr5a2及びその近接したファミリーのメンバー、Nr5a1はOct4と代替する能力において特有である。
【0136】
Nr5a2のDNA結合能力は、再プログラミングにおける役割のために重要であるが、リガンド結合はあまり重要ではない
【0137】
[000125]その他の核内受容体のように、Nr5a2はリガンド結合ドメイン(LBD)及びDNA結合ドメイン(DBD)を備えている。しかし、オーファン核内受容体では、Nr5a2の内在性リガンドは依然として知られていない。Oct4がない場合の再プログラミングにおいて、Nr5a2のリガンド結合及びDNA結合の機能的重要性を調べた。推定リガンドの結合を阻止するために、Nr5a2 LBDの溝を埋めるように特定の残基を大きな残基(A368M)に変異させた(Sablinら、2003)。次に、Nr5a2のDNA結合活性の著しい減少を生じる、保存されたFtz−F1ドメインに2重変異(G190V、P191A)を有するDNA結合変異体を創出した(Solomonら、2005)。これらのレトロウイルスベクターが同レベルのNr5a2タンパク質を発現することを確かめるために、ウェスタン分析を実施した(図13P)。再プログラミングアッセイは、Nr5a2リガンド結合変異体は野生型(WT)Nr5a2と比較して、GFP陽性コロニーの形成数を減少させないことを示す(図13Q)。このことは、Nr5a2の再プログラミング因子として機能する能力はリガンド結合とは独立していることを示唆している。対照的に、Nr5a2 DNA結合変異体をSKMと共に導入すると、GFP陽性コロニー数が劇的に減少した(図13Q)。考え合わせると、DNA結合はNr5a2の再プログラミング機能に必須であるが、リガンド結合は重要ではないことが示される。
【0138】
Nr5a2SUMO化部位変異体は、再プログラミング能力の増強を示す
【0139】
[000126]2個のリシン残基が変異した変異構築物(2KR)及び5個のリシン残基が変異した別の構築物(5KR)を使用して、リシン残基が変異したNr5a2の再プログラミング能力を試験した。ウェスタン分析によって、WT及び変異体構築物が同レベルのタンパク質を発現することが示された(図13R)。注目すべきことに、OSKM再プログラミングアッセイによって、2KR変異体が、再プログラミング効率を、WTによって実現した4倍の増強と比較して、少なくとも7倍増強することが明らかになった(図13S)。5KR変異体を導入したとき、再プログラミング効率はほぼ11倍までさらに高まった(図13S)。これらの結果は、SUMO部位の変異によってもたらされた細胞内局在の同時阻止及び転写活性の増強がNr5a2による再プログラミングの誘導増大のきっかけとなり得ることを示唆している。
【0140】
ESCにおけるNr5a2のゲノム全体の結合分析
【0141】
[000127]Pou5f1(Guら、2005)の他に、多能性細胞においてNr5a2の標的遺伝子は知られていない。このために、クロマチン免疫沈降配列決定(ChIP−seq)技術を使用することによってESCにおけるNr5a2のゲノム全体の地図作成を実施した(表3)。HAタグを付けたNr5a2を発現する安定なESC細胞株を作製し、HAタグを付けたNr5a2タンパク質の発現はNr5a2特異的抗体を用いたウェスタンブロットによって確認した(図18A)。Nr5a2結合クロマチンは、抗HAタグ抗体で濃縮された。新規モチーフ発見アルゴリズムMEMEを使用し、データセットに濃縮された公知のNr5a2モチーフを明らかにした(図14A)。より重要なことに、ペアワイズ共起分析によってNr5a2はNanog、Oct4、Sox2、Smad1及びEsrrbと一緒に局在する傾向があることが明らかになった(図14B)。この結果は、Nr5a2を既に報告されているNanog−Oct4−Sox2クラスターに関連付ける(Chenら、2008)。Nr5a2はSox2及びKlf4と協力してMEFをiPSCに再プラグラムするので、これら3種類の転写因子が同じ結合標的を共有するかどうかを調べた。興味深いことに、3種類の転写因子全てが、Pou5f1、Nanog、Tbx3、Klf2及びKlf5などのESCの独自性の維持に極めて必要な標的遺伝子に結合することを発見した(図14C、図18B)。
【0142】
NanogはNr5a2の標的である
【0143】
[000128]Nanogは、多能性の基準状態レベルへの入り口となるので、ESCにおいて重要である(Silvaら、2009)。Nanogが再プログラミング中、Nr5a2の標的であることを確かめるために、外来性のHAタグを付けたNr5a2をMEFに導入した。ChIP実験によって、再プログラミング中Nr5a2は本当にNanogエンハンサーに結合することが示された(図15A)。NanogはESC及びMEFの両方におけるNr5a2の標的なので(図18B、図15A)、Nr5a2が関与する再プログラミングにおけるNanogの役割を調べた。Nr5a2を再プログラミングするMEFに導入すると、Nanog発現が増加することを発見した(図4B)。予測通り、再プログラミング中にNr5a2をOSKMと共に導入すると、内在性Pou5f1はNanogと類似の傾向で増加する(図15C及び15D)。Nanogは多能性状態への移行に重要なので(Silvaら、2009)、Nr5a2を導入することによってもたらされた再プログラミング効率の増強は、Nanogによって部分的に促進され得る。
【0144】
[000129]次に、Nr5a2がMEFの再プログラミングに重要かどうかを確かめたかった。OSKMをMEFに導入すると同時にNr5a2のノックダウンを実施した。Nr5a2 shRNAノックダウン構築物は、マウスESCにおいてNr5a2 mRNA及びタンパク質発現を減少させることができた(図15E及び15F)。再プログラミング中にNr5a2を激減させると、コロニー数の減少が生じた(図15G)。重要なことに、外来性NanogはNr5a2のノックダウンによって生じたコロニーの減少を回復させることができた(図15G)。Nanogとは異なり、独立した因子Mtf2は、コロニーの減少を回復させることはできなかった(図15G)。Nanogは、Nr5a2ノックダウンによってもたらされた再プログラミング効率の減少を回復させることはできたが、Nanogは、Pou5f1ノックダウンによる影響を回復させることはできなかった(図15G)。興味深いことに、Nanog及びNr5a2の両方をOSKMと共に添加すると、OSKMと共にNr5a2のみを添加する場合よりも多くのGFP陽性コロニーを生成することができた(図15H)。考え合わせると、これらの結果は、NanogがMEFの再プログラミングにおいてNr5a2の重要な下流標的の1つであり、再プログラミング効率の増強を媒介することを示唆している。
【0145】
[000130]ここでは、Nr5a2又はNr5a1による再プログラミングが外来性Oct4の必要性を回避することができることを示す。我々のデータによって、Nr5a2がSox2及びKlf4と相乗的に機能してMEFの再プログラミングの成功を媒介する外来性Oct4と代替することが示される。Klf4及びc−Mycと一緒に外来性Nr5a2で、MEF以外にマウスNPCを再プログラミングすることができた(データは示さず)。Pou5f1の上流活性化因子であることに加えて(Guら、2005)、Nr5a2はまた、ESCにおける基準状態の多能性の重要な媒介物であるNanogによって部分的に作用し(Silvaら、2009)、Nr5a2によるNanog誘導によって多能性の獲得が促進される。最近、Tgf−βシグナル伝達を阻害する化学物質(Ichidaら、2009、Maherali及びHochedlinger、2009)が、MEFの再プログラミングにおけるNanogと外来性Sox2の代替を誘導することが発見された(Ichidaら、2009)。したがって、Nanogは本当に再プログラミングの重要な標的である。
【0146】
[000131]要約すると、我々の研究は、体細胞の再プログラミングのために外来性Oct4に依存しない形式(code)の一例を提供する。Nr5a2及びNr5a1の両方が従来の4種類の因子と共に再プログラミングの効率を高めることができることも示す。要するに、再プログラミングの増強及び媒介の両方における核内受容体の予期せぬ2つの役割を明らかにした。
【0147】
細胞培養及びトランスフェクション
[000132]iPSCは、前述のようにマイトマイシンC処理したMEFフィーダー上で培養した(Fengら、2009a)。MEFは、E13.5胚から単離し、以前に記載されたように培養した(Fengら、2009a)。293−T細胞は、リポフェクタミン2000(Invitrogen)を使用して製造元の方法に従って、各pMXレトロウイルスベクターをトランスフェクトした。RNAi実験用に、pSUPER.puroベクターにクローニングしたshRNA構築物をリポフェクタミンでESCにトランスフェクトした。細胞は、トランスフェクション16時間後にピューロマイシン1μgml−1で選択した。shRNA配列はPou5f1:5’−GAAGGATGTGGTTCGAGTA−3’、ルシフェラーゼ:5’−GATGAAATGGGTAAGTACA−3’及びNr5a2:5’GCAAGTGTCTCAATTTAAA−3’である。
【0148】
ChIP−seq分析
[000133]Nr5a2 ChIP−seqデータ(8,023 427特有にマップされたタグ)のピーク検出(peak calling)は、MACSを使用してp値カットオフ1e〜9を用いて実施し、3,346ピークを生成した。対照の抗HA ChIP−seqライブラリーは13,001,272の特有にマップされたタグを含有した。濃縮されたモチーフは、新規モチーフ発見ツールMEMEによって、ChIP−seqピークの中心の200−bp配列を使用して同定した。Nr5a2結合部位とその他の重要な転写因子の結合部位との重複を研究するために同時出現分析をNr5a2 ChIP−seqデータ及び我々の以前の研究で作製したデータセットで実施した(Chenら、2008)。
【0149】
マイクロアレイ分析
[000134]マウスESC、iPSC(OSKM、NSKM #A5、NSK #B3及び#B11)及びMEF(アクチン−GFP及びPou5f1−GFP)から収集したmRNAの逆転写を実施した。各細胞株について、2つの生物学的な2連のマイクロアレイデータが得られた。OSKM+Nr5a2及びOSKM試料のマイクロアレイでは、生物を3連で使用した。製造元の指示に従って処理したアレイ(セントリックス(Sentrix)マウス−6発現ビーズチップ バージョン1.1)をイルミナ(Illumina)マイクロアレイプラットホームで読み取った。個別に発現した遺伝子をマイクロアレイの有意性分析基準に基づいて選択した:倍率変化((FC)<0.6は下方制御、FC>1.5は上方制御、q値<0.02及び全試料の検出可能性は0.95超。
【0150】
GEO登録コード
[000135]マイクロアレイ及びChIP−seqデータは、GEOデータベースでそれぞれ登録番号GSE19023及びGSE19019で入手できる。
【0151】
マウス分子遺伝学
[000136]MEFはPou5f1−GFPトランスジェニックマウス及びアクチン−GFPトランスジェニックマウス(JAX研究室、ストック番号004654及び003516)から単離した。Pou5f1−GFPは、Pou5f1−GFP雄マウスと野生型129S2/SV雌の交配から得られたE13.5胚から収集し、アクチン−GFP MEFはアクチン−GFPマウスと野生型CD1雌マウスの交配から得られたE13.5胚から収集した。8〜12個のiPSCを、8細胞期で得られたC57BL/6J及びB6(Cg)−Tyrc−2J/J胚にマイクロインジェクションした。マイクロインジェクションした胚をE0.5偽妊娠雌F1(CBA×C57BL/6J)の卵管に移植した。キメラ胚は、E13.5で収集し、蛍光顕微鏡で生殖腺におけるGFP発現を測定した。キメラマウスは、生殖系列関与を測定するためにアルビノB6(Cg)−Tyrc−2J/Jマウスと交配した。動物実験は全てIACUC指針に従って実施した。
【0152】
レトロウイルス構築物、パッケージング及び感染
[000137]Nr5a2及びその他の因子のcDNA配列は、マウスESC cDNA又は市販のプラスミド(Open Biosystems)のいずれかからPCR増幅した。Nr5a2 SUMO変異体(2KR:K173R、K289R及び5KR:K173R、K213R、K289R、K329R、K389R)のcDNA配列は恵与された構築物(Yangら、2009)から増幅した。Nr5a2リガンド及びDNA結合変異体は、適切なプライマーでPCR増幅した。増幅したコーディング配列は配列決定によって確認し、MMLVをベースにしたpMXレトロウイルスベクターにクローニングした。それぞれのプロモーター領域でshRNAノックダウンした構築物は、pSUPER.puroベクターからpMXベクターに移した。レトロウイルスは、既に記載されたように作製した(Takahashi及びYamanaka、2006)。3T3細胞はGFP遺伝子を有するpMXレトロウイルスで感染させた。48時間感染させた後、GFP陽性細胞の割合を定量するためにFACsを実施した。形質導入する単位の数は、既に記載されたように計算した(Tiscorniaら、2006)。形質導入する単位の数は、感染効率(MOI)5を実現するために必要なウイルスの量を計算するために使用した(Parkら、2008)。iPSC作製のために、それぞれMOIが5の異なる因子をコードするウイルスを、FBS15%及びポリブレン6ngml−1を含有するDMEM中で、70%コンフルエンスでMEFに導入した。1dpiで培地を新鮮なMEF培地に交換した。2dpiで、細胞をMEFフィーダーに移し、FBSを含有する培養培地で6日間培養し、その後さらに5〜15日間KSRを含有する培養培地で培養した。
【0153】
RNA抽出、逆転写及び定量的リアルタイムPCR
[000138]方法は前述の通りである(Fengら、2009)。
【0154】
重亜硫酸塩ゲノム配列決定
[000139]ゲノムDNAは、Imprint(商標)DNA修飾キット(Sigma)によって製造元の指示に従って重亜硫酸塩処理した。Pou5f1及びNanogのプロモーター領域は、PCRによって増幅し、pCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen)にクローニングし、M13フォワード及びM13リバースプライマーで配列確認した。Pou5f1及びNanogプロモーター領域のPCR増幅で使用したプライマー配列はそれぞれ、
5’−ATGGGTTGAAATATTGGGTTTATTTA−3’、5’−CCACCCTCTAACCTTAACCTCTAAC−3’及び
5’−GATTTTGTAGGTGGGATTAATTGTGAATTT−3’、5’−ACCAAAAAAACCCACACTCATATCAATATA−3’である。
【0155】
核型決定
[000140]iPSCをコルセミド(Invitrogen)で処理し、標準低浸透圧処理によって収集し、メタノール:酢酸(3:1)で固定した。スライドは、Gバンド核型分析の前に空気乾燥した。
【0156】
遺伝子型決定
[000141]各PCR増幅反応は、iPSC、ESC、MEF又は胚のいずれかから収集したゲノムDNA300ngで実施した。
センスプライマー配列:5’−GACGGCATCGCAGCTTGGATACAC−3’。
アンチセンスプライマー配列は、
Nr5a2:5’−GACGCAATAGCTGTAAGTCCATG−3’、
Sox2:5’−GCTTCAGCTCCGTCTCCATCATGTT−3’、
Klf4:5’−GCCATGTCAGACTCGCCAGG−3’
c−Myc:5’−TCGTCGCAGATGAAATAGGGCTG−3’
Pou5f1:5’−CCAATACCTCTGAGCCTGGTCCGAT−3’である。
【0157】
EB媒介インビトロ分化
[000142]EB形成のため、iPSCをトリプシン処理し、ペトリ皿でLIF及びβ−メルカプトエタノールを含まないiPSC培養培地で4〜5日培養した。ゼラチンをコートしたプレートにEBを移し、レチノイン酸(Sigma)1μMを添加して5〜6日培養した。試料は4%パラホルムアルデヒドで固定し、1%トリトンX−100で透過処理し、8%FBSでブロックし、抗Gata−4(1:100、sc−25310、Santa Cruz)、抗ネスチン(1:100、sc−58813、Santa Cruz)又は抗α−平滑筋アクチン(1:100、ab18460、Abcam)で染色した。次に試料は、2次抗体、Alexa Fluor546結合抗マウス(1:1000、Invitrogen)で染色し、次いでヘキスト(1:4000、Invitrogen)で核を染色した。
【0158】
奇形腫アッセイ
[000143]iPSCは、トリプシン処理によって収集し、0.9%生理食塩水に1×10細胞ml−1で再懸濁した。細胞懸濁液100μlをアベルチンで麻酔したSCIDマウスの各背側部に皮下注射した。奇形腫を3〜4週間後に切除し、重量を量り、パラフィルムに包埋する前にブアン固定液で固定した。パラフィン包埋組織を切除し、既に記載されたようにマロリーテトラクロームで染色した(Wang及びLufkin、2000)。
【0159】
免疫蛍光顕微鏡及びアルカリホスファターゼ染色
[000144]ゼラチンコーティングしたカバーガラス上で培養したiPSCを4%パラホルムアルデヒドで固定し、1%tritonX−100で透過処理し、8%FBSでブロックした。ブロック後、試料を抗Nanog(1:50、RCAB0002PF、CosmoBio)又は抗SSEA−1(1:200、MAB4301、Chemicon)で染色し、その後Alexa Fluor568結合抗ウサギ(1:300、Invitrogen)又はAlexa Fluor546結合抗マウスIgM(1:2000、Invitrogen)それぞれで染色した。次に、核はヘキスト(Invitrogen)で対比染色した。市販のESC特徴付けキット(Chemicon)を使用して、製造元の方法にしたがってアルカリホスファターゼ検出を実施した。
【0160】
ウェスタン分析
[000145]プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を補給したRIPA緩衝液(Pierce)で細胞を可溶化した。タンパク質濃度は、ブラッドフォードアッセイキット(Bio−Rad)で測定した。細胞溶解物50μgを10%SDS−ポリアクリルアミドゲルで分離し、ポリビニリジンジフルオライド膜(Millipore)に移した。この膜は5%スキムミルクでブロックした。ブロックした後、ブロットを抗HA(1:2000、sc−7392、Santa Cruz)、抗Nr5a2(1:2000、ab18293、Abcam)又は抗アクチン(1:2000、sc−1616、Santa−Cruz)1次抗体のいずれかで1時間インキュベートし、PBSTで洗浄し、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合抗マウスIgG(1:5000、1858413、Pierce)、HRP結合ウサギIgG(1:5000、sc−2004、Santa Cruz)又はHRP結合抗ヤギIgG(1:5000、sc−2768、Santa Cruz)のいずれかでそれぞれインキュベートした。PBSTで洗浄後、シグナルはウェスタンブロッティングルミノール試薬(Santa Cruz)を使用して検出した。
【0161】
タネルアッセイ
[000146]MEFに各ウイルスを感染させ、感染培地は24時間後に新鮮なMEF培地と交換した。感染して78時間後、タネルアッセイのために細胞を収集した。陽性対照のために、感染してないMEFを細胞標識する前にDNアーゼ1(Ambion)で処理した。市販のキットを使用して、製造元(Roche)の方法にしたがってタネル標識を実施した。標識後、細胞はFACS分析を行った。
【0162】
ChIPアッセイ
[000147]ChIPアッセイは、以前に記載されたように実施した(Lohら、2006)。一般的に、細胞は室温で10分間1%ホルムアルデヒドと架橋結合させ、ホルムアルデヒドはグリシン125mMで反応停止させた。細胞溶解物を超音波処理し、クロマチン抽出物を抗H3K4me3(ab8580、Abcam)、抗H3K27me3(07−449、Millipore)抗体又は抗HA(sc−7392、Santa Cruz)抗体で免疫沈降させた。定量PCR分析は、以前に記載したように実施した(Fengら、2009)。
【0163】
[000148]当業者であれば、本明細書で記載した本発明は、具体的に記載したもの以外の変更及び改変を受けやすいことを理解するであろう。本発明には、このような変更及び改変が全て含まれる。本発明にはまた、明細書で言及した、又は指示したステップ、特徴、製剤及び化合物の全てが個々に、又は集合的に含まれ、並びに2個以上のステップ若しくは特徴の任意又は全部の組み合わせが含まれる。
【0164】
[000149]本文で引用したそれぞれの文書、参考文献、特許出願又は特許は、参考として全体が明らかに本明細書に組み込まれており、これは読者によって本文の一部として読まれ、考えられるべきであることを意味している。本文で引用した文書、参考文献、特許出願又は特許が本文において繰り返されていないのは、簡明にするというだけの理由である。
【0165】
[000150]本明細書又は本明細書で参考として組み込まれた任意の文書において述べた任意の製品のための任意の製造元の指示、記載、製品明細及び製品仕様書は、参考のために本明細書に組み込まれており、本発明の実践で使用することができる。
【0166】
[000151]本発明は、本明細書で記載した具体的な実施形態のいずれかによって範囲を限定されるものではない。これらの実施形態は、例示の目的だけのためのものである。機能的に等価の製品、製剤及び方法は、明らかに本明細書で記載した本発明の範囲内である。
【0167】
[000152]本明細書で記載した本発明は、1個以上の範囲の値(例えば、大きさ、濃度など)を含むことができる。値の範囲には、範囲内の全ての値が含まれるものと理解され、範囲を限定する値、及び範囲の境界を定める値に直接隣接した値と同じ又は実質的に同じ結果を導く、範囲に隣接した値が含まれる。
【0168】
[000153]本明細書全体にわたって、特に必要がなければ、「含む(comprise)」又は「含む(comprises)」若しくは「含んでいる(comprising)」などの変化形は、記載されている整数又は整数の群を含むが、その他の任意の整数又は整数の群も排除しないものと理解される。本開示、特に特許請求の範囲及び/又は段落では、「含む(comprise)」、「含んだ(comprised)」、「含んでいる(comprising)」などの用語は、米国特許法でそれらのものとされる意味を有することができ、例えば、「含む(includes)」、「含んだ(included)」、「含んでいる(including)」などを意味することができ、並びに「から本質的になる(consisting essentially of)」及び「から本質的になる(consists essentially of)」などの用語は、米国特許法においてそれらのものと認められる意味を有し、例えば、これらは不明瞭に引用された要素は許容するが、先行技術に見出される、又は本発明の基本的な、若しくは新規の特性に影響を及ぼす要素は排除する。
【0169】
[000154]本明細書で使用した選択用語のその他の定義は、本発明の詳細な説明の中に見出すことができ、全体にわたって適用することができる。特に定義されていない限り、本明細書で使用したその他の科学的及び技術的用語は全て、本発明が属する業界の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0170】
[000155]本発明は特定の方法及び実施形態に関して記載されているが、本発明を逸脱しなければ様々な改変及び変更を行うことができることを理解されたい。
【0171】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、いずれの内容も本明細書に参考として組み込んだ、2009年9月30日出願のシンガポール特許出願第200906546−7号及び2010年1月9日出願の第201000140−2号の利益及び優先権を主張する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インビトロで多能性幹細胞を誘導する方法であって、
a)インビトロで細胞を培養するステップ、
b)培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、転写因子をコードするポリヌクレオチドが、核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とを含む、ステップ
を含む方法。
【請求項2】
ポリヌクレオチドが、表1に挙げた核内受容体の1つをコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
核内受容体をコードするポリヌクレオチドが、サブファミリー5の核内受容体又はそのSUMO化変異体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
サブファミリー5の核内受容体が配列番号10を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
サブファミリー5の核内受容体が、配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号8を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
サブファミリー5の核内受容体が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10又は配列番号11から選択されるポリペプチドをコードする、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
宿主細胞内でポリヌクレオチドの発現を導くことができる調節配列に操作可能に結合した、核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子、又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とのポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
【請求項8】
ポリヌクレオチドが、表1に挙げた核内受容体の1つをコードする、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項9】
核内受容体をコードするポリヌクレオチドが、サブファミリー5の核内受容体又はそのSUMO化変異体を含む、請求項7に記載の発現ベクター。
【請求項10】
サブファミリー5の核内受容体が配列番号10を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項11】
サブファミリー5の核内受容体が、配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号8を含む、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項12】
サブファミリー5の核内受容体が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10又は配列番号11から選択されるポリペプチドをコードする、請求項9に記載の発現ベクター。
【請求項13】
変性疾患の治療において使用するための、請求項7〜12のいずれか一項に記載の発現ベクター。
【請求項14】
ポリヌクレオチドが、請求項7〜12のいずれか一項に記載のベクターによって培養液中の細胞に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
多能性幹細胞治療の必要な患者を治療するために多能性幹細胞を誘導する方法であって、
a)個体ドナーから細胞を単離するステップ、
b)インビトロで細胞を培養するステップ、
c)培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、転写因子をコードするポリヌクレオチドが、核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とを含む、ステップ、
d)多能性幹細胞治療の必要な患者に多能性細胞を誘導するステップ
を含む方法。
【請求項16】
ポリヌクレオチドが、表1に挙げた核内受容体の1つをコードする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
核内受容体をコードするポリヌクレオチドが、サブファミリー5の核内受容体をコードするポリヌクレオチド又はそのSUMO化変異体を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
サブファミリー5の核内受容体が、配列番号10を発現するポリヌクレオチドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
サブファミリー5の核内受容体が、配列番号1、配列番号3、配列番号5又は配列番号8のポリヌクレオチドを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
サブファミリー5の核内受容体が、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10又は配列番号11から選択されるポリペプチドをコードする、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
変性疾患の治療のための医薬品を調製するための、請求項7〜12のいずれか一項に記載のベクターの使用。
【請求項22】
多能性幹細胞株の作製方法であって、
a)インビトロで細胞を培養するステップ、
b)培養液中の細胞に転写因子をコードするポリヌクレオチドを導入するステップであり、細胞を多能性細胞に誘導するために、ポリヌクレオチドが、核内受容体と、Sox遺伝子、クルッペル様因子遺伝子又はmycファミリーの遺伝子から選択される1個以上の転写因子とを含む転写因子をコードする、ステップ、
c)多能性細胞を継代して細胞株を維持するステップ
を含む方法。
【請求項23】
核内受容体ポリペプチドと、Soxポリペプチド、クルッペル様因子ポリペプチド又はmycファミリーのポリペプチドから選択される1個以上の転写因子ポリペプチドとを含む、体細胞を再プログラミングするための組成物。
【請求項24】
核内受容体ポリペプチドが、表1に挙げた核内受容体の1つである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
核内受容体ポリペプチドが、サブファミリー5の核内受容体又はそのSUMO化変異体を含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
サブファミリー5の核内受容体ポリペプチドが、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9、配列番号10又は配列番号11から選択される、請求項25に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2013−506417(P2013−506417A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532053(P2012−532053)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際出願番号】PCT/SG2010/000372
【国際公開番号】WO2011/040887
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】