説明

核医学診断装置

【課題】吸収補正による過補正を防止することができる核医学診断装置を提供することを目的とする。
【解決手段】呼吸などの体動の部分は特異点として特異点抽出部22により抽出される、あるいはエッジとしてエッジ抽出部24により抽出されるので、特異点に位置する座標の画素値を特異点補間部23が補間するとともに、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値をエッジ補間部25が補間することにより、体動の部分が補正されて核医学用データと吸収補正データとの両データ間で相違部分を低減させることができる。その結果、吸収補正による過補正を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上述した核医学診断装置、すなわちECT(Emission Computed Tomography)装置として、PET(Positron Emission Tomography)装置を例に採って説明する。PET装置は、陽子(Positron)、すなわちポジトロンの消滅によって発生する複数本のγ線を検出して複数個の検出器でγ線を同時に検出したときのみ被検体の断層画像を再構成するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このPET装置では、放射性薬剤を被検体に投与した後、対象組織における薬剤蓄積の過程を経時的に測定することで、様々な生体機能の定量測定が可能である。したがって、PET装置によって得られる断層画像は機能情報を有する。
【0004】
具体的には、被検体として人体を例に採って説明すると、被検体の体内にポジトロン(陽電子)放射性の同位元素(例えば15O、18F、11Cなど)を注入し、これらから放出されるポジトロンが電子と結合する際に発生するγ線を検出する。このγ線の検出を、被検体の長手方向の軸である体軸周りを取り囲むようにしてリング状に配置された多数のγ線検出器からなる検出器列により行う。そして、コンピュータにより通常のX線CT(Computed Tomography)と同様の手法で計算を行って面内で特定し、被検体のイメージを作成する。
【0005】
通常では、短い時間内に被検体の3次元像を得るために、リング状の検出器列を体軸方向にも多段積み重ねて配設した円筒状の検出器積層体を構成する。このように構成された検出器積層体のγ線検出器では、シンチレータを使用し、これによる検出光をフォトマルチプライヤ(光電子増倍管)などにより増幅させて検出信号を得る。特許文献1のように、PET装置では、正確な薬剤の分布を把握するために、体内に入れた放射性同位元素から発せられるγ線のデータ(『エミッションデータ』とも呼ばれる)と、骨や臓器などによって減衰するγ線の量を測定するデータ(『トランスミッションデータ』とも呼ばれる)との2種類を収集し、前者を後者によって補正する必要がある。
【特許文献1】特開2002−323567号公報(第1−6頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、腹部領域で呼吸性の動きが大きな場合に、横隔膜の動きによりエミッションデータとトランスミッションデータとの両データ間で臓器の大きさが異なってしまう。このような両データ間で異なった状態でトランスミッションデータによるエミッションデータの吸収補正を行うと、過補正による高輝度化もしくは低輝度化となる問題がある。かかる吸収補正での過補正を防止するために、呼吸に同期した呼吸ゲートなどの同期手段を備え、同期したタイミングのみに撮像を行って、両データ間での相違部分を低減させることが考えられる。しかし、かかる同期手段を備えた場合には、同期したタイミングのみに撮像が行われるので撮像時間が長くなってしまう。
【0007】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、吸収補正による過補正を防止することができる核医学診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線を検出することで、前記核医学用データを収集する第1検出手段と、核医学用データに吸収補正データを作用させることで核医学用データを吸収補正する吸収補正手段とを備え、前記装置は、(A)被検体の長手方向ごとに前記吸収補正データをそれぞれ再構成する再構成処理手段と、(B)その再構成処理手段でそれぞれ再構成された各々の吸収補正データ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点を統計的に抽出する特異点抽出手段と、(C)その特異点抽出手段で抽出された特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する座標の画素値から補間する特異点補間手段とを備え、その特異点補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、前記吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行うことを特徴とするものである。
【0009】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、(A)の再構成処理手段は、被検体の長手方向ごとに吸収補正データをそれぞれ再構成し、(B)の特異点抽出手段は、再構成処理手段でそれぞれ再構成された各々の吸収補正データ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点を統計的に抽出し、(C)の特異点補間手段は、特異点抽出手段で抽出された特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する画素値から補間する。そして、特異点補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行う。このとき、呼吸などの体動の部分は特異点として特異点抽出手段により抽出されるので、特異点に位置する座標の画素値を特異点補間手段が補間することにより、体動の部分が補正されて核医学用データと吸収補正データとの両データ間で相違部分を低減させることができる。その結果、吸収補正による過補正を防止することができる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線を検出することで、前記核医学用データを収集する第1検出手段と、核医学用データに吸収補正データを作用させることで核医学用データを吸収補正する吸収補正手段とを備え、前記装置は、(a)前記吸収補正データの体内領域において対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジとして、被検体の長手方向に対して抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向のエッジ特徴画像を作成するエッジ抽出手段と、(b)そのエッジ抽出手段で抽出された前記エッジ特徴画像内のエッジに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間するエッジ補間手段とを備え、そのエッジ補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、前記吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行うことを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、(a)のエッジ抽出手段は、吸収補正データの体内領域において対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジとして、被検体の長手方向に対して抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向のエッジ特徴画像を作成し、(b)のエッジ補間手段は、エッジ抽出手段で抽出されたエッジ特徴画像内のエッジに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間する。そして、エッジ補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行う。このとき、呼吸などの体動の部分はエッジとしてエッジ抽出手段により抽出されるので、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値をエッジ補間手段が補間することにより、体動の部分が補正されて核医学用データと吸収補正データとの両データ間で相違部分を低減させることができる。その結果、吸収補正による過補正を防止することができる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線を検出することで、前記核医学用データを収集する第1検出手段と、核医学用データに吸収補正データを作用させることで核医学用データを吸収補正する吸収補正手段とを備え、前記装置は、(A)被検体の長手方向ごとに前記吸収補正データをそれぞれ再構成する再構成処理手段と、(B)その再構成処理手段でそれぞれ再構成された各々の吸収補正データ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点を統計的に抽出する特異点抽出手段と、(C)その特異点抽出手段で抽出された特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する座標の画素値から補間する特異点補間手段と、(a´)その特異点補間手段により補間された補間後の吸収補正データについて、吸収補正データの体内領域において対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジとして、被検体の長手方向に対して抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向のエッジ特徴画像を作成するエッジ抽出手段と、(b)そのエッジ抽出手段で抽出された前記エッジ特徴画像内のエッジに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間するエッジ補間手段とを備え、そのエッジ補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、前記吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行うことを特徴とするものである。
【0013】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、(A)の再構成処理手段は、被検体の長手方向ごとに吸収補正データをそれぞれ再構成し、(B)の特異点抽出手段は、再構成処理手段でそれぞれ再構成された各々の吸収補正デー タ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点を統計的に抽出し、(C)の特異点補間手段は、特異点抽出手段で抽出された特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する画素値から補間する。その後、(a´)のエッジ抽出手段は、特異点補間手段により補間された補間後の吸収補正データについて、吸収補正データの体内領域において対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジとして、被検体の長手方向に対して抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向のエッジ特徴画像を作成し、(b)のエッジ補間手段は、エッジ抽出手段で抽出されたエッジ特徴画像内のエッジに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間する。そして、エッジ補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行う。このとき、呼吸などの体動の部分は特異点として特異点抽出手段により抽出されて、同じく呼吸などの体動の部分はエッジとしてエッジ抽出手段によりさらに抽出されるので、特異点に位置する画素値を特異点補間手段が補間した後に、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値をエッジ補間手段が補間することにより、体動の部分が補正されて核医学用データと吸収補正データとの両データ間で相違部分を低減させることができる。その結果、吸収補正による過補正を防止することができる。
【0014】
上述した請求項1や請求項3に記載の発明では、補間前の吸収補正データについては下記のように収集することが可能である。すなわち、放射性薬剤と同種の放射線を外部から被検体に向けて照射する外部線源と、上述した第1検出手段による放射線の検出とは独立して、外部線源から照射されて被検体を透過した放射線を検出することで、核医学用データの収集とは独立して、補間前の吸収補正データを収集する第2検出手段とを備え、被検体の長手方向に複数の検出器を配設することで第2検出手段を構成することである(請求項4に記載の発明)。この場合には、外部線源から照射されて被検体を透過した放射線を、第1検出手段による放射線の検出とは独立して、第2検出手段が検出して、核医学用データの収集とは独立して、補間前の吸収補正データを収集する。また、第2検出手段は、被検体の長手方向に複数の検出器を配設することで構成されているので、第2検出手段で検出・収集された吸収補正データは被検体の長手方向のデータを有し、再構成処理手段が、被検体の長手方向ごとに吸収補正データをそれぞれ再構成することができる。
【0015】
同様に、上述した請求項2に記載の発明では、補間前の吸収補正データについては下記のように収集することが可能である。すなわち、放射性薬剤と同種の放射線を外部から被検体に向けて照射する外部線源と、上述した第1検出手段による放射線の検出とは独立して、外部線源から照射されて被検体を透過した放射線を検出することで、核医学用データの収集とは独立して、補間前の吸収補正データを収集する第2検出手段とを備えることである(請求項5に記載の発明)。この場合にも、外部線源から照射されて被検体を透過した放射線を、核医学用データの収集とは独立して、第2検出手段が検出して、核医学用データの収集とは独立して、補間前の吸収補正データを収集する。
【0016】
また、上述した請求項1〜請求項3に記載の発明では、補間前の吸収補正データについては下記のように用いられることも可能である。すなわち、X線CT装置から得られたデータを補間前の吸収補正データとして用いることである(請求項6に記載の発明)。
【発明の効果】
【0017】
この発明に係る核医学診断装置によれば、呼吸などの体動の部分は特異点として特異点抽出手段により抽出される(請求項1、3に記載の発明)、あるいはエッジとしてエッジ抽出手段により抽出される(請求項2、3に記載の発明)ので、特異点に位置する座標の画素値を特異点補間手段が補間する(請求項1、3に記載の発明)、あるいはエッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値をエッジ補間手段が補間する(請求項2、3に記載の発明)ことにより、体動の部分が補正されて核医学用データと吸収補正データとの両データ間で相違部分を低減させることができる。その結果、吸収補正による過補正を防止することができる。
【実施例1】
【0018】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図であり、図2は、PET装置内のγ線検出器の配置図である。なお、後述する実施例2も含めて、本実施例1では、核医学診断装置として、PET装置を例に採って説明する。
【0019】
本実施例1に係るPET装置は、図1に示すように、被検体Mを載置する天板1を備えている。この天板1は、上下に昇降移動、被検体Mの体軸Zに沿って平行移動するように構成されている。このように構成することで、天板1に載置された被検体Mは、後述するガントリ2の開口部2aを通って、頭部から順に腹部、足部へと走査されて、被検体Mの投影データや断層画像といった診断データを得る。この診断データは、この発明における核医学用データに相当し、体軸Zの方向は、この発明における被検体の長手方向に相当する。
【0020】
天板1の他に、本実施例1に係るPET装置は、開口部2aを有したガントリ2と、互いに近接配置された複数個のシンチレータブロック(図示省略)と複数個のフォトマルチプライヤ(図示省略)とで構成されるγ線検出器3を備えている。図2に示すように、γ線検出器3は、被検体Mの体軸Z周りを取り囲むようにしてリング状に配置されており、ガントリ2内に埋設されている。フォトマルチプライヤは、シンチレータブロックよりも外側に配設されている。シンチレータブロックの具体的な配置としては、例えば、被検体Mの体軸Zと平行な方向にはシンチレータブロックが2個並び、被検体Mの体軸Z周りにはシンチレータブロックが多数個並ぶ形態が挙げられる。γ線検出器3は後述するエミッションデータを収集する。γ線検出器3は、この発明における第1検出手段に相当する。
【0021】
また、点線源4と後述する吸収補正データ(『トランスミッションデータ』とも呼ばれる)を収集するためのγ線検出器5を備えている。吸収補正データ用のγ線検出器5は、エミッションデータを収集するためのγ線検出器3と同様にシンチレータブロック5a(図2を参照)とフォトマルチプライヤ5b(図2を参照)とで構成されている。点線源4は、被検体Mに投与する放射性薬剤、すなわち放射性同位元素(RI)と同種の放射線(本実施例1ではγ線)を照射させる線源であって、被検体Mの外部に配設されている。点線源4は、ガントリ2内に埋設されている。点線源4は被検体Mの体軸Z周りに回転する。点線源4は、この発明における外部線源に相当し、γ線検出器5は、この発明における第2検出手段に相当する。
【0022】
また、後述する実施例2も含めて、本実施例1ではγ線検出器5は、γ線検出器3と同様に、図2に示すように被検体Mの体軸Zに複数のシンチレータブロック5aおよびフォトマルチプライヤ5bを配設することで構成されている。つまり、リング状に配置された多数のγ線検出器3からなる検出器列が体軸Z方向にも多段積み重ねて配設した円筒状の検出器積層体として構成されている。本実施例1では6列とする。
【0023】
その他にも、本実施例1に係るPET装置は、天板駆動部6とコントローラ7と入力部8と出力部9と投影データ導出部10とPET用再構成部11と吸収補正データ導出部12と吸収補正データ処理部13と吸収補正部14とメモリ部15とを備えている。天板駆動部6は、天板1の上述した移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0024】
コントローラ7は、本実施例1に係るPET装置を構成する各部分を統括制御する。コントローラ7は、中央演算処理装置(CPU)などで構成されている。
【0025】
入力部8は、オペレータが入力したデータや命令をコントローラ7に送り込む。入力部8は、マウスやキーボードやジョイスティックやトラックボールやタッチパネルなどに代表されるポインティングデバイスで構成されている。出力部9はモニタなどに代表される表示部やプリンタなどで構成されている。
【0026】
メモリ部15は、ROM(Read-only Memory)やRAM(Random-Access Memory)などに代表される記憶媒体で構成されている。本実施例1では、投影データ導出部10やPET用再構成部11で処理された診断データや、吸収補正データ導出部12で求められた吸収補正データや、吸収補正データ処理部13で処理された吸収補正データや、吸収補正部14で吸収補正された断層画像についてはRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。ROMには、各種の核医学診断を行うためのプログラム等を予め記憶しており、そのプログラムをコントローラ7が実行することでそのプログラムに応じた核医学診断をそれぞれ行う。
【0027】
投影データ導出部10とPET用再構成部11と吸収補正データ導出部12と吸収補正データ処理部13と吸収補正部14とは、例えば上述したメモリ部15などに代表される記憶媒体のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部8などに代表されるポインティングデバイスで入力された命令をコントローラ7が実行することで実現される。
【0028】
放射性薬剤が投与された被検体Mから発生したγ線をγ線検出器3のシンチレータブロックが光に変換して、変換されたその光をγ線検出器3のフォトマルチプライヤが光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素)として投影データ導出部10に送り込む。
【0029】
具体的には、被検体Mに放射性薬剤を投与すると、ポジトロン放出型のRIのポジトロンが消滅することにより、2本のγ線が発生する。投影データ導出部10は、γ線検出器3のシンチレータブロックの位置とγ線の入射タイミングとをチェックし、被検体Mを挟んで互いに対向位置にある2つのシンチレータブロックでγ線が同時に入射したときのみ、送り込まれた画像情報を適正なデータと判定する。一方のシンチレータブロックのみにγ線が入射したときには、投影データ導出部10は、ポジトロンの消滅により生じたγ線ではなくノイズとして扱い、そのときに送り込まれた画像情報もノイズと判定してそれを棄却する。
【0030】
投影データ導出部10に送り込まれた画像情報を投影データとして、PET用再構成部11に送り込む。PET用再構成部11がその投影データを再構成して断層画像を求める。投影データ導出部10で求められた投影データやPET用再構成部11で再構成された断層画像は、『エミッションデータ』とも呼ばれる。
【0031】
なお、点線源4が被検体Mの体軸Zの周りを回転しながら被検体Mに向けてγ線を照射し、照射されたγ線を吸収補正データ用のγ線検出器5のシンチレータブロック5aが光に変換して、変換されたその光をγ線検出器5のフォトマルチプライヤ5bが光電変換して電気信号に出力する。その電気信号を画像情報(画素)として吸収補正データ導出部12に送り込む。
【0032】
吸収補正データ導出部12に送り込まれた画像情報に基づいて吸収補正データを求める。吸収補正データ導出部12は、γ線またはX線の吸収係数とエネルギーとの関係を表す演算を利用することで、CT用の投影データ、すなわちX線吸収係数の分布データをγ線吸収係数の分布データに変換して、γ線吸収係数の分布データを吸収補正データとして求める。導出された吸収補正データは吸収補正データ処理部13に送られる。吸収補正データ処理部13の具体的な機能については、図3のブロック図および図4のフローチャートで後述する。また、吸収補正データ処理部13では再構成および特徴部分である補間処理が行われる。吸収補正データ導出部12で求められた吸収補正データや吸収補正データ処理部13で再構成されて補間された吸収補正データは、『トランスミッションデータ』とも呼ばれる。
【0033】
上述したように吸収補正データ処理部13では補間処理も行われるので、処理後の吸収補正データは、この発明における補間後の吸収補正データに相当し、吸収補正データ導出部12で求められた吸収補正データは、この発明における補間前の吸収補正データに相当する。
【0034】
処理後の吸収補正データを吸収補正部14に送り込む。PET用再構成部11で再構成された断層画像に、吸収補正データ処理部13で再構成されて補間された処理後の吸収補正データを作用させて、被検体Mの体内でのγ線の吸収を考慮した断層画像に補正する。補正された断層画像を、コントローラ7を介して出力部9に送り込む。吸収補正部14は、この発明における吸収補正手段に相当する。
【0035】
次に、吸収補正データ処理部13の具体的な機能について、図3〜図8を参照して説明する。図3は、吸収補正データ処理部のブロック図であり、図4は、吸収補正データ処理部での吸収補正データ処理のフローチャートであり、図5は、ある断層面(スライス面)での時相の異なるデータの収集を模式化した説明図であり、図6は、特異点の補間を模式化した説明図であり、図7(a)〜図7(c)は、エッジの抽出を模式化した説明図であり、図8は、エッジの補間の際の補間画素の対象領域の動的な制御を模式化した説明図である。
【0036】
吸収補正データ処理部13は、図3に示すように、吸収補正用再構成部21と特異点抽出部22と特異点補間部23とエッジ抽出部24とエッジ補間部25とを備えている。吸収補正用再構成部21は、この発明における(A)の再構成処理手段に相当し、特異点抽出部22は、この発明における(B)の特異点抽出手段に相当し、特異点補間部23は、この発明における(C)の特異点補間手段に相当し、エッジ抽出部24は、この発明における(a)または(a´)のエッジ抽出手段に相当し、エッジ補間部25は、この発明における(b)のエッジ補間手段に相当する。
【0037】
(ステップS1)再構成
エミッションデータ用のγ線検出器3は独立して、点線源(例えば137Cs)4から照射されて被検体Mを透過したγ線をトランスミッション用のγ線検出器5が検出器することで、診断データ(エミッションデータ)の収集とは独立して、吸収補正データ(トランスミッションデータ)を収集する。上述したように被検体Mの長手方向である体軸Z方向に複数(ここでは6つ)の検出器(図2を参照)を配設することでγ線検出器5を構成している。このようにγ線検出器5を構成しているので、天板1(図1を参照)を被検体Mの体軸Zに沿って平行移動して走査して、γ線検出器5で検出・収集して、吸収補正用再構成部21で被検体Mの長手方向である体軸Zの方向ごとに吸収補正データをそれぞれ再構成することで、図5に示すように断層面(スライス面)ごとに時相の異なるデータ(本実施例1では6つのデータ)を収集することができる。
【0038】
(ステップS2)面内の動き成分を抽出
ステップS1において吸収補正用再構成部21でそれぞれ再構成された各々の吸収補正データ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点を、特異点抽出部22は統計的に抽出する。本実施例1では、図5に示すように、対象となる各断層面(スライス面)ごとに、対象となる座標を各時相ごとにp(x,y,t)、p(x,y,t)、p(x,y,t)、p(x,y,t)、p(x,y,t)、p(x,y,t)と設定する(図5ではスライス面P)。そして、面内の動き成分を抽出するために、p、p、p、p、p、pでの画素値の分散量を求める。一般化して、p、p、…、p…、pとした場合、このときの画素値の分散量をVとするとともに、各座標p、p、…、p…、pでの画素値をv(p)、v(p)、…、v(p)…、v(p)とすると、Vは下記(1)式のように表される。
【0039】
=Σ{v(p)−Avg}/(M−1) …(1)
ただし、Σ{v(p)−Avg}/(M−1)はI=1〜Mまでの{v(p)−Avg}、{v(p)−Avg}、…、{v(p)−Avg}、…、{v(p)−Avg}の総和である。また、Avgはv(p)、v(p)、…、v(p)…、v(p)の相加平均であって、Avg=Σ{v(p)/M}で表される。上記(1)式によって他の座標についても同様に分散量Vを求めることで、面内の動き成分を抽出する。この分散量Vを求めることが、この発明における同一座標位置で特異点を統計的に抽出することに相当する。
【0040】
予め設定された所定値よりも分散量Vが大きければ、面内の動きが時系列的に変化して画素値が変動したとみなすことができる。したがって、腹部領域で呼吸性の動きが大きな場合には、求められた分散量Vが所定値よりも大きくなることになる。このように、分散量Vが所定値よりも大きければ、図6に示すように、その分散量Vでの座標を特異点Xとして抽出する。
【0041】
(ステップS3)特異点の補間
ステップS2において特異点抽出部22で抽出された特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する画素値から特異点補間部23は補間する。本実施例1では、分散量Vが所定値よりも大きければ、その分散量Vでの座標を特異点Xとして抽出しているので、図6に示すように、分散量Vでの座標の画素値を、その座標が属する断層面(図5および図6ではスライス面P)以外の他の断層面(図6ではスライス面Q)内の同一特異点Xに位置する画素値から補間する。なお、他の断層面で求められた分散量Vは所定値よりも小さく、面内の動き成分は小さいとする。また、分散量Vが最も小さい他の断層面において、その断層面(例えばスライス面Q)内の同一特異点Xに位置する画素値から補間するのが好ましい。
【0042】
なお、補間する場合には、単一のスライス面Q内の同一特異点Xに位置する画素値から補間する以外にも、複数のスライス面内の同一特異点Xに位置する画素値の平均値を求めて、その平均値から補間してもよいし、複数のスライス面内の同一特異点Xに位置する画素値の中央値(メディアン)を求めて、その中央値から補間してもよい。このように、通常の画素の補間に用いられる手法であって、特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する画素値から補間するのであれば、具体的な補間の方法については特に限定されない。
【0043】
(ステップS4)コロナル断面で2値化
ステップS3において特異点補間部23により補間された補間後の吸収補正データについて、今度はコロナル断面を作成する。ここで、コロナル断面とは天板1(図1を参照)に対して平行な水平面である。したがって、コロナル断面は体軸Zに平行となり、スライス面とは直交する。このコロナル断面から2値化して、図7(a)に示すように被検体Mの体内領域Rを抽出する。判別分析法により2値化のしきい値を決定する。領域選択は2値化された画像の外周を2次元方向に認識することで、体内領域Rを抽出する。
【0044】
(ステップS5)スライス方向の動き成分を抽出
ステップS4において抽出された体内領域Rにおいて対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジとして、被検体の長手方向に対してエッジ抽出部24が抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向である体軸Zの方向(スライス方向)のエッジ特徴画像を作成する。本実施例1では、2値化された画像中の画素値と元の画像の画素値(図7(b)を参照)とに基づいてスライス方向のエッジ特徴画像を作成して、スライス方向の動き成分を抽出する。このとき、図7(c)に示すように、対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分(すなわち一次微分)が所定値以上となる箇所をエッジEとして抽出する。なお、周囲の座標は対象となる座標の体軸Z方向に隣接した座標でもよいし、隣接しない複数の周囲の座標であってもよい。
【0045】
周囲の座標の画素値との差分が予め設定された所定値以上であれば、体軸Zの方向(スライス方向)が時系列的に変化して画素値が変動したとみなすことができる。したがって、腹部領域で呼吸性の動きが大きな場合には、周囲の座標の画素値との差分が所定値以上になる。このように、周囲の座標の画素値との差分が所定値以上であれば、その対象となる座標での箇所をエッジとして抽出する。
【0046】
(ステップS6)エッジの補間
ステップS5においてエッジ抽出部24で抽出されたエッジ特徴画像内のエッジに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値からエッジ補間部25は補間する。本実施例1では、図8に示すように、エッジ量に応じて補間画素の対象領域を変更する。例えば、エッジの度合いをE,Eとし、E<Eとした場合に、Eでは補間画素の対象領域を少なく(例えば周囲画素5つ分)して、Eでは補間画素の対象領域を多く(例えば周囲画素10個分)して、その対象領域を動的に制御する。そして、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間する。
【0047】
なお、補間する場合には、対象領域中においてメディアンフィルタを用いて補間すべき画素値を求めて、その画素値から、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を補間する。もちろん、対象領域中において平均値を求めて、その平均値から、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を補間してもよい。このように、通常の画素の補間に用いられる手法であって、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間するのであれば、具体的な補間の方法については特に限定されない。
【0048】
ステップS6においてエッジ補間部25により補間された補間後の吸収補正データを用いて、図2に示すように吸収補正部14は、PET用再構成部11で再構成された断層画像に補間後の吸収補正データを作用させて断層画像を吸収補正し、その吸収補正部14により補正された補正後の断層画像に基づいて核医学診断を行う。
【0049】
上述の構成を備えた本実施例1に係るPET装置によれば、吸収補正用再構成部21は、被検体Mの長手方向である体軸Zの方向ごとに吸収補正データをそれぞれ再構成し、特異点抽出部22は、吸収補正用再構成部21でそれぞれ再構成された各々の吸収補正データ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点Xを統計的に抽出し、特異点補間部23は、特異点抽出部22で抽出された特異点Xに位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点Xに位置する画素値から補間する。
【0050】
その後、エッジ抽出部24は、特異点補間部23により補間された補間後の吸収補正データについて、吸収補正データの体内領域Rにおいて対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジEとして、被検体の長手方向に対して抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向である体軸Zの方向のエッジ特徴画像を作成し、エッジ補間部25は、エッジ抽出部24で抽出されたエッジ特徴画像内のエッジEに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジEの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間する。そして、エッジ補間部25により補間された補間後の吸収補正データを用いて、吸収補正部14は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正部24により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行う。
【0051】
このとき、呼吸などの体動の部分は特異点Xとして特異点抽出部22により抽出されて、同じく呼吸などの体動の部分はエッジEとしてエッジ抽出部24によりさらに抽出されるので、特異点Xに位置する画素値を特異点補間部23が補間した後に、エッジEの箇所に位置する吸収補正データの画素値をエッジ補間部25が補間することにより、体動の部分が補正されて核医学用データ(エミッションデータ)と吸収補正データ(トランスミッションデータ)との両データ間で相違部分を低減させることができる。その結果、吸収補正による過補正を防止することができる。
【0052】
なお、上述した呼吸ゲートなどの同期手段がなくても、両データ間で相違部分を低減させることができる。したがって、同期手段が不要となり、同期したタイミングのみに撮像が行われることなく、撮像時間を延長することもないという効果をも奏する。
【0053】
本実施例1では、PET装置は、放射性薬剤と同種の放射線を外部から被検体Mに向けて照射する点線源4と、エミッション用のγ線検出器3によるγ線の検出とは独立して、点線源4から照射されて被検体Mを透過したγ線を検出することで、核医学用データ(エミッションデータ)とは独立して、補間前の吸収補正データを収集するトランスミッション用のγ線検出器5とを備え、被検体Mの長手方向である体軸Zの方向に複数(本実施例1では6つ)の検出器を配設することでγ線検出器5を構成している。この場合には、点線源4から照射されて被検体Mを透過したγ線を、γ線検出器3によるγ線検出器とは独立して、γ線検出器5が検出して、核医学用データ(エミッションデータ)の収集とは独立して、補間前の吸収補正データ(トランスミッションデータ)を収集する。また、γ線検出器5は、被検体Mの長手方向である体軸Zの方向に複数の検出器を配設することで構成されているので、γ線検出器5で検出・収集された吸収補正データは被検体Mの長手方向のデータを有し、吸収補正用再構成部21が、被検体Mの長手方向ごとに吸収補正データをそれぞれ再構成することができる。
【実施例2】
【0054】
次に、図面を参照してこの発明の実施例2を説明する。
図9は、実施例2に係るPET装置とX線CT装置とを備えたPET−CT装置の側面図およびブロック図である。
【0055】
上述した実施例1では、PET装置が点線源4を備え、点線源4が放射性薬剤と同じγ線を照射して被検体Mを透過して、γ線検出器5がそのγ線を検出することで、補間前の吸収補正データを収集したが、本実施例2では、X線CT装置から得られたCT用の投影データを吸収補正データとして用いている。
【0056】
X線CT装置は、開口部31aを有したガントリ31とX線管32とX線検出器33とを備えている。X線管32およびX線検出器33は、被検体Mを挟んで互いに対向配置されており、ガントリ31内に埋設されている。X線検出器33を構成する多数個の検出素子は被検体Mの体軸Z周りに扇状に並ぶ。本実施例2では、X線検出器33が、この発明における第2検出手段に相当する。
【0057】
その他にもX線CT装置は、ガントリ駆動部34と高電圧発生部35とコリメータ駆動部36とCT用再構成部37とを備えて構成されている。CT用再構成部37は、例えば上述したメモリ部15などに代表される記憶媒体のROMに記憶されたプログラムあるいは入力部8で入力された命令をコントローラ7が実行することで実現される。なお、後述するCT用の投影データやCT用再構成部37で処理されたCT用の断層画像も、上述した実施例1と同様にメモリ部15のRAMに書き込んで記憶し、必要に応じてRAMから読み出す。
【0058】
ガントリ駆動部34は、互いに対向関係を維持させたままX線管32とX線管検出器33とをガントリ31内で被検体Mの体軸Z周りに回転させるように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0059】
高電圧発生部35は、X線管32の管電圧や管電流を発生させる。コリメータ駆動部36は、X線の照視野を設定し、X線管32に近接されたコリメータ(図示省略)について水平方向の移動を行うように駆動する機構であって、図示を省略するモータなどで構成されている。
【0060】
間接変換型のX線検出器33の場合には、X線管32から照射されて被検体Mを透過したX線を、X線検出器33内のシンチレータ(図示省略)が光に変換するとともに、変換された光を光感応膜(図示省略)が光電変換して電気信号に出力する。直接変換型のX線検出器33の場合には、X線を放射線感応膜(図示省略)が電気信号に直接的に変換して出力する。その電気信号を画像情報(画素)として、CT用再構成部37に送り込む。CT用再構成部37に送り込まれる画像情報はCT用の投影データとして伝送される。
【0061】
CT用再構成部37に送り込まれた画像情報(CT用の投影データ)を再構成して、CT用の断層画像を求める。このCT用の断層画像を、コントローラ7を介して出力部9に送り込む。吸収補正データ導出部12を含むPET装置の後段の処理部(吸収補正データ処理部13や吸収補正部14)の各機能については、実施例1と同様なので、その説明を省略する。なお、PET用再構成部11で再構成されたPET用の断層画像と、CT用再構成部37で再構成されたCT用の断層画像とを出力部9で重ね合わせて重畳出力してもよい。
【0062】
このように、本実施例2では、X線CT装置のX線検出器33で検出されて得られたCT用の投影データをCT用再構成部37に送り込むとともに、吸収補正データ導出部12に送り込み、CT用の投影データを吸収補正データとして用いている。
【0063】
なお、本実施例2では、PET装置とX線CT装置とを1つの装置に統合したが、X線CT装置をPET装置の外部装置として構成し、PET装置にX線CT装置から得られたデータを転送するようにしてもよい。この場合には、この発明における第2検出手段に相当するX線検出器33は、PET装置の外部装置であるX線CT装置側に配設されるので、PET装置側では、第2検出手段を必ずしも備える必要はない。
【0064】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0065】
(1)上述した各実施例では、PET装置を例に採って説明したが、この発明は、単一のγ線を検出して被検体の断層画像を再構成するSPECT(Single Photon Emission CT)装置などにも適用することができる。
【0066】
(2)上述した各実施例では、トランスミッション用のγ線検出器5が静止したままでγ線を検出する静止型であったが、γ線検出器5が被検体Mの周りを回転しながらγ線を検出する回転型でもよい。
【0067】
(3)上述した各実施例では、特異点を抽出して補間する処理(図4のステップS1〜S3を参照)とエッジを抽出して補間する処理(図4のステップS4〜S6を参照)という2つの処理を行ったが、2つの処理のうち少なくとも1つの処理を行ってもこの発明の課題を解決することができる。したがって、特異点を抽出して補間する処理(図4のステップS1〜S3を参照)のみを行ってもよいし、エッジを抽出して補間する処理(図4のステップS4〜S6を参照)のみを行ってもよい。
【0068】
(4)エッジを抽出して補間する処理のみを行う場合には、この発明における第2検出手段(実施例1ではγ線検出器5)は、被検体Mの長手方向である体軸Zの方向に複数(実施例1では6つ)の検出器を配設せずともγ線検出器5として構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】実施例1に係るPET(Positron Emission Tomography)装置の側面図およびブロック図である。
【図2】PET装置内のγ線検出器の配置図である。
【図3】吸収補正データ処理部のブロック図である。
【図4】吸収補正データ処理部での吸収補正データ処理のフローチャートである。
【図5】ある断層面(スライス面)での時相の異なるデータの収集を模式化した説明図である。
【図6】特異点の補間を模式化した説明図である。
【図7】(a)〜(c)は、エッジの抽出を模式化した説明図である。
【図8】エッジの補間の際の補間画素の対象領域の動的な制御を模式化した説明図である。
【図9】実施例2に係るPET装置とX線CT装置とを備えたPET−CT装置の側面図およびブロック図である。
【符号の説明】
【0070】
3,5 … γ線検出器
4 … 点線源
14 … 吸収補正部
21 … 吸収補正用再構成部
22 … 特異点抽出部
23 … 特異点補間部
24 … エッジ抽出部
25 … エッジ補間部
Z … 体軸
X … 特異点
E … エッジ
M … 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線を検出することで、前記核医学用データを収集する第1検出手段と、核医学用データに吸収補正データを作用させることで核医学用データを吸収補正する吸収補正手段とを備え、前記装置は、(A)被検体の長手方向ごとに前記吸収補正データをそれぞれ再構成する再構成処理手段と、(B)その再構成処理手段でそれぞれ再構成された各々の吸収補正データ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点を統計的に抽出する特異点抽出手段と、(C)その特異点抽出手段で抽出された特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する座標の画素値から補間する特異点補間手段とを備え、その特異点補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、前記吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行うことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項2】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線を検出することで、前記核医学用データを収集する第1検出手段と、核医学用データに吸収補正データを作用させることで核医学用データを吸収補正する吸収補正手段とを備え、前記装置は、(a)前記吸収補正データの体内領域において対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジとして、被検体の長手方向に対して抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向のエッジ特徴画像を作成するエッジ抽出手段と、(b)そのエッジ抽出手段で抽出された前記エッジ特徴画像内のエッジに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間するエッジ補間手段とを備え、そのエッジ補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、前記吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行うことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項3】
放射性薬剤が投与された被検体から発生した放射線に基づいて被検体の核医学用データを求める核医学診断装置であって、前記放射線を検出することで、前記核医学用データを収集する第1検出手段と、核医学用データに吸収補正データを作用させることで核医学用データを吸収補正する吸収補正手段とを備え、前記装置は、(A)被検体の長手方向ごとに前記吸収補正データをそれぞれ再構成する再構成処理手段と、(B)その再構成処理手段でそれぞれ再構成された各々の吸収補正データ間で断層面ごとの同一座標位置で特異点を統計的に抽出する特異点抽出手段と、(C)その特異点抽出手段で抽出された特異点に位置する座標の画素値を、その座標が属する断層面以外の他の断層面内の同一特異点に位置する座標の画素値から補間する特異点補間手段と、(a´)その特異点補間手段により補間された補間後の吸収補正データについて、吸収補正データの体内領域において対象となる座標の画素値と周囲の座標の画素値との差分が所定値以上となる箇所をエッジとして、被検体の長手方向に対して抽出することで、周囲の座標の画素値との差分からなる長手方向のエッジ特徴画像を作成するエッジ抽出手段と、(b)そのエッジ抽出手段で抽出された前記エッジ特徴画像内のエッジに応じて、補間に用いられる補間画素の対象領域を変更することでその対象領域を動的に制御して、エッジの箇所に位置する吸収補正データの画素値を対象領域中の画素値から補間するエッジ補間手段とを備え、そのエッジ補間手段により補間された補間後の吸収補正データを用いて、前記吸収補正手段は、核医学用データに補間後の吸収補正データを作用させて核医学用データを吸収補正し、その吸収補正手段により補正された補正後の核医学用データに基づいて核医学診断を行うことを特徴とする核医学診断装置。
【請求項4】
請求項1または請求項3に記載の核医学診断装置において、前記装置は、前記放射性薬剤と同種の放射線を外部から被検体に向けて照射する外部線源と、前記第1検出手段による放射線の検出とは独立して、前記外部線源から照射されて被検体を透過した放射線を検出することで、前記核医学用データの収集とは独立して、前記吸収補正データを収集する第2検出手段とを備え、被検体の長手方向に複数の検出器を配設することで前記第2検出手段を構成することを特徴とする核医学診断装置。
【請求項5】
請求項2に記載の核医学診断装置において、前記装置は、前記放射性薬剤と同種の放射線を外部から被検体に向けて照射する外部線源と、前記第1検出手段による放射線の検出とは独立して、前記外部線源から照射されて被検体を透過した放射線を検出することで、前記核医学用データの収集とは独立して、前記補間前の吸収補正データを収集する第2検出手段とを備えることを特徴とする核医学診断装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の核医学診断装置において、X線CT装置から得られたデータを前記補間前の吸収補正データとして用いることを特徴とする核医学診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−64711(P2008−64711A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245602(P2006−245602)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】