核酸、ポリペプチド、及びアポトーシスを調節するための方法
【課題】真核細胞の単離、及び/又は精製されたラットのアポトーシスに特異的開始因子-5A(eIF-5A)及びデオキシハイプシン・シンターゼ(DHS)核酸及びポリペプチドであり、さらに、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSを用いて、アポトーシスを調節する方法、及びこうした方法に有益なアンチセンス・オリゴヌクレオチド及び発現ベクターを提供する。
【解決手段】プロモータに操作可能に結合されたヒトアポトーシスに特異的なeIF−5Aの特定なヌクレオチド配列を含む発現ベクターを適用する。
【解決手段】プロモータに操作可能に結合されたヒトアポトーシスに特異的なeIF−5Aの特定なヌクレオチド配列を含む発現ベクターを適用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシスに特異的な真核細胞の開始因子-5A(eIF-5A)及びデオキシハイプシン・シンターゼ(DHS)の核酸、及びポリペプチド、ならびにアポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSを用いて、細胞のアポトーシスを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、細胞の縮退、クロマチンの縮合、核の断片化、及び膜の水泡化など、充分明記された形態的特性を特徴付ける、遺伝的にプログラムされた細胞事象である。Kerrら、(1972)Br.J.Cancer,26,239-257;Wyllieら(1980)Int.Rev.Cytol.,68,251-306を参照。通常な組織の形成や恒常性に重要な役割を果し、アポトーシス・プログラムの欠陥は、神経細胞の変性及び自己免疫不全から腫瘍に至るまで広範囲にわたるヒトの疾患に関与していると考えられる。Thompson(1995)Science,267,1456-1462;Mullauerら(2001)Mutat.Res,488,211-231を参照。アポトーシス細胞の形態的特性が、よく特徴付けられているが、この過程を調節する分子経路が、明らかにされ始めたばかりである。
【0003】
アポトーシスに中核的役割を果すと考えられる1群のタンパク質が、カスパーゼと称するシステイン・プロテアーゼのファミリーであり、カスパーゼが、アポトーシスのほとんどの経路に必要と見られる。Creagh & Martin(2001)Biochem.Soc.Trans,29,696-701;Dalesら,(2001)Leuk.Lymphoma,41,247-253を参照。カスパーゼは、種々の細胞タンパク質が切断されることによるアポトーシス刺激に応答しアポトーシスの引き金を引き、それが、細胞の縮退、膜の水泡及びDNAの断片化を含むアポトーシスの典型的な明示となる。Chang & Yang(2000)Microbiol.Mol.Bio.Rev.,64,821-846を参照。
【0004】
さらに、Bax又はBakなどの前駆アポトーシス・タンパク質が、ミトコンドリア・シトクロム cなどのカスパーゼ活性化分子の放出によりアポトーシス経路に中核的役割を果し、これによりアポトーシスを介し細胞死を増強する。Martinou & Green(2001)Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.2,63-67;Zouら、(1997)Cell,90,405-413参照。Bcl-2などの抗-アポトーシス・タンパク質は、前駆-アポトーシス・タンパク質である、Bax及びBakなどの活性をアンタゴナイズすることにより細胞の生存を増強する。Tsujimoto(1998)Genes Cells,3,697-707;Kroemer(1997)Nature Med.,3,614-620を参照。Bax:Bcl-2の比が、細胞の運命を決定付ける1つの方法と考えられ、すなわち過剰なBaxがアポトーシスを増強し、そして過剰なBcl-2が細胞の生存を増強する。Salomonsら(1997)Int.J.Cancer,71,959-965;Wallace-Brodeur & Lowe(1999)Cell Mol.Life Sci.,55,64-75を参照。
【0005】
アポトーシスに関与する別の重要なタンパク質は、腫瘍抑制遺伝子P53によりコードされるタンパク質である。このタンパク質は、細胞の増殖を調節し、おそらくBaxの上限調節を介して損傷し、そして遺伝的に不安定な細胞にアポトーシスを誘発する転写因子である。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142;Ronenら、1996;Schuler & Green(2001)Biochem.Soc.Trans.,29,684-688;Ryanら、(2001)Curr.Opin.Cell.,13,332-337;Zoringら、(2001)Biochem.Biophys.Acta,1551,F1-F37を参照。
【0006】
アポトーシスとなる細胞を特徴付ける明確な形態的特性により、アポトーシスの開始及び進行を評価する多くの方法が形成されることである。これらの検出のため使用できるアポトーシス細胞のこうした特徴の1つは、フリッパーゼ(flippase)の活性化であり、それが、血漿膜の内部小葉に通常に配置されるリン脂質である、ホスファチジルセリンを外在化することになる。Fadokら、(1992)J.Immunol.,149,4029-4035を参照。外在化されたホスファチジルセリンを生ずる(bearing)アポトーシス細胞が、蛍光染料に結合したホスファチジルセリン-結合タンパク質であるAnnexin Vで染色することで検出することができる。アポトーシス進行中に起こる特徴的なDNAの断片化が、蛍光標識されたデオキシヌクレオチドにて、露出したDNA断片の3'-OH末端部を標識化することで検出することができる。ヘキスト(Hoescht)33258など、核酸に結合する蛍光染料が、アポトーシス細胞のクロマチンの縮退、及び核の断片化における検出に使用できる。さらに細胞集団内のアポトーシス度は、細胞抽出物に存在するカスパーゼのタンパク質分解活性度から推定することができる。
【0007】
遺伝的に明確にされた過程として、他の何らかの形成プログラムと同様アポトーシスが、突然変異化により壊される場合がある。アポトーシス経路の変更が、ガンを含む多くの疾患過程の重要な役割を果すと考えられる。Wyllieら、(1980)Int.Rev.Cytol.,68,251-306;Thompson(1995)Science,267,1456-1462;Sen & D'Incalci(1992)FEBS Letters,307,122-127;McDonnellら、(1995)Seminars in Cancer and Biology,6,53-60を参照。ガンの発生と進行の研究では、これまで伝統的に細胞の増殖が中核となってきた。しかしながら、アポトーシスが腫瘍形成に果す重要な役割が、最近明らかになってきた。実際に現在アポトーシスに関し知られている多くが、腫瘍モデルを用いて研究されてきた、その理由は、アポトーシス制御が、腫瘍細胞における幾つかの点でばらつきなく変更されることである。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142を参照。
【0008】
アポトーシスを、腫瘍形成中に種々のシグナルにより誘起することができる。細胞外シグナルには、増殖又は生存因子の枯渇、低酸素及び電離性放射線が含まれる。アポトーシスを誘起できる内因性シグナルには、DNAの損傷、テロメアの短縮、及び不適切な増殖シグナルを生成する原ガン遺伝子変異体が含まれる。Lowe & Lin(2000)Carcinogenesis,21,485-495を参照。悪性腫瘍の治療に用いられる電離性放射、及びほぼ全ての細胞障害性化学治療剤が、細胞死を誘発する内因性アポトーシス機構の引き金を引くことにより、作用すると考えられる。Rowan & Fisher(1997)Leukemia,11,457-464;Kerr ら、(1994)Cancer,73,2013-2026;Martin & Schwartz(1997)Oncology Research,9,1-5を参照。
【0009】
初期ガンの進行における腫瘍細胞が、アポトーシスを誘発する薬剤(電離性放射線又は化学療法剤など)に感受性であることが、実証により示唆されている。しかしながら、腫瘍が進行するにつれその細胞が、アポトーシス刺激に対し抵抗性を形成する。Naikら、(1996)Genes and Development,10,2105-2116を参照。これは、初期ガンが、病巣のより進行したガンより治療により良好に応答する理由として説明することができる。後期段階のガンが化学療法や放射線治療に抵抗性を形成できることは、腫瘍細胞がアポトーシス刺激に応答できる能力を制限するアポトーシス経路の変更と結びついていると見られる。Reedら、(1996)Journal of Cellular Biology,60,23-32;Meynら、(1996)Cancer Metastasis Reviews,15,119-131;Hannun(1997)Blood,89,1845-1853;Reed(1995)Toxicology Letters,82-83,155-158;Hickman(1996)European Journal of Cancer,32A,921-026を参照。化学療法に対する耐性は、抗-アポトーシス遺伝子bcl-2の過剰発現、及び慢性リンパ球白血病と結腸ガンそれぞれの前駆-アポトーシスbax遺伝子の欠失又は変異化に関連していた。
【0010】
さらに腫瘍細胞の転移による拡散を上手く確立できることは、アポトーシス経路の変更に関係すると見られる。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142を参照。たとえば腫瘍阻害遺伝子p53の変異化が、腫瘍細胞の70%に形成されると考えられる。Evanら、(1995)Curr.Opin.Cell Biol.,7,825-834を参照。p53遺伝子を不活性にする変異化が、細胞におけるDNAの損傷に応答しアポトーシスを誘発する能力を制限し、さらに変異化を受け易い状態となる。Ko & Prives(1996)Gene and Development,10,1054-1072を参照。
【0011】
従って、アポトーシスが、原ガン遺伝子への形質転換及び転移の形成及び進行に密接に関係し、そして関与されるアポトーシス経路を充分理解すれば、遺伝子治療方法を介しアポトーシス経路の調節により、新たなガン治療の有力な標的を導き出すことを可能にする。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142を参照。
【0012】
デオキシハイプシン・シンターゼ(DHS)及びハイプシンを含む真核細胞の翻訳開始因子-5A(eIF-5A)では、細胞の増殖及び分化を含む多くの細胞過程に重要な役割を果すことが、知られている。特有のアミノ酸であるハイプシンが、実験による全ての真核細胞及び古細菌にて見出されたが、真正バクテリアでは見出されず、そしてeIG-5Aが、唯一ハイプシン含有タンパク質として知られている。
【0013】
Park(1988)J.Biol.chem.,263,7447-7449;Schumann & Klink(1989)System、Appl.Microbiol.,11,103-107;Bartigら、(1990)System.Appl.Microbipl.,13,112-116;Gordonら、(1987a)J.Biol.Chem.262,16585-16589を参照。活性化eIF-5Aが、2つの翻訳後の工程から形成され、すなわち第一工程では、デオキシハイプシン・シンターゼにより触媒とされる前駆体eIF-5Aの 特異的リシンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル成分を転移することによりデオキシハイプシン残基が形成され、第二工程では、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼにより4-アミノブチル成分をドロキシル化し、ハイプシンを形成することが含まれる。
【0014】
eIF-5Aのアミノ酸配列が、種間において良好に保守され、そしてeIF-5Aのハイプシン残基周辺のアミノ酸配列が、ストリンジェントな状態にて保守され、これは、この変更が生存に重要なことを示唆している。Parkら、(1993)Biofactors,4,95-104を参照。さらにこの予測が、今までに酵母に見出されたeIF-5Aの両異性体の不活性化、又は第一工程にてこれらの活性化を触媒するDHS遺伝子を不活性化により、細胞分裂がブロックされるという観察によりさらに裏付けられた。Schnierら(1991)Mol.Cell.Biol.,3105-3114;Sasakiら、(1996)FEBS Lett.,384,151-154;Parkら、(1998)J.Biol.Chem.273,1677-1683を参照。しかしながら、酵母中のeIF-5Aタンパク質が枯渇すると、全タンパク質の合成が僅しか減少しないことが、eIF-5Aが、タンパク質の全体的な合成に対してでなく、mRNAの特異的サブセットの翻訳に必要とされることを示唆している。Kangら(1993)、「Effect of initiation factor eIF-5A depletion on cell proliferation and protein synthesis,」in Tuite,M.(ed),Protein Synthesis and Targeting in Yeast,NATO Series Hを参照。eIF-5Aに結合するリガンドが、より高く保守されたモチーフを共有するというという最近の知見により、さらにeIF-5Aの重要性が裏付けられている。Xu & Chen(2001)J.Biol.Chem.276,2555-2561を参照。加えて修飾されたeIF-5Aのハイプシン残基が、RNAに配列特異的な結合に必須であり、そしてその結合が、リボヌクレアーゼからの保護を提供していないことが見出された。
【0015】
eIF-5Aに対する最初のcDNAが、Smit-McBrideらにより1989にヒトからクローン化され、それ以後eIF-5Aに対するcDNA又は遺伝子が、酵母、ラット、雛トリの胚、ムラサキウマゴヤシ、及びトマトを含む種々の真核細胞からクローン化されてきた。Smit-McBridら(1989a)J.Biol.Chem.264,1578-1583;Schnierら(1991)(yeast);Sano,A.(1995)in Imahori,Mら(eds),Polyamines,Basic and Clinical Aspects,VNU Science Press,The Netherlands,81-88(rat);Rinaudo & Park(1992)FASEB J.,6,A453(chick embryo);Payら、(1991)Plant Mol.Biol.,17,927-929(alfalfa);Wangら(2001)J.Biol.Chem.,276,17541-17549(tomato)を参照。
【0016】
さらに、eIF-5Aが細胞内にて枯渇すれば、核内の特定mRNAの有意な蓄積が起こり、eIF-5Aが、核から細胞質への特定種のmRNAをシャトルに対し関与する可能性を示している。Liu & Tartakoff(1997)Supplement to Molecular Biology of the Cell,8,426a.Abstract No.2476,37thAmerican Society for Cell Biology Annual Meetingを参照。核細孔に会合した核内フィラメントでeIF-5Aの蓄積及び通常の核輸出リセプターの相互作用は、eIF-5Aが、ポリソーム成分よりむしろ核細胞質のシャトル・タンパク質であることをさらに示唆している。Rosoriusら、(1999)J.Cell Science,112,2369-2380を参照。
【0017】
eIF-5AのmRNAの発現は、種々のヒトの組織や哺乳動物の細胞株にて研究されてきた。たとえば、血清の除去に続いて血清を付加した後のヒト線維芽細胞において、eIF-5A発現の変化が観察された。Pang & Chen(1994)J.Cell Physiol.,160,531-538を参照。アイソフォームの異なる変化の平均を反映する確率が決定されなかったとしても、前駆体eIF-5Aのデオキシハイプシン・シンターゼ活性及び量の加齢に伴う減少が、老化する線維芽細胞において観察された。Chen & Chen(1997b)J.Cell Physiol.,170,248-254を参照。
【0018】
種々の研究により、eIF-5Aが、ヒト免疫不全ウイルス型1 Revタンパク質、及びヒトT細胞白血球ウイルス型1 Rexタンパク質など、ウイルス性タンパク質の細胞標的となる可能性を示した。Ruhlら(1993)J.Cell Biol.,123,1309-1320;Katahiraら(1995)J.Virol.,69,3125-3111を参照。予備研究により、eIF-5Aが、Revなどの他のRNA結合タンパク質と相互作用することにより、RNAを標的とすることができることを明示し、こうしたウイルスタンパク質が、ウイルスRNAのプロセシングのためeIF-5Aを補充できることを示唆している。Liuら、(1997)Biol.Signals,6,166-174を参照。
【0019】
デオキシハイプシン・シンターゼ及びeIF-5Aは、細胞増殖及び老化を含む中核的細胞過程に重要な役割を果すことが、知られている。たとえば、植物におけるデオキシハイプシン・シンターゼのアンチセンスが減少すると、葉や果物の老化が遅くなり、植物中の老化を誘発するeIF-5Aの異性体があることを指示している。WO 01/02592;PCT/US01/44505;U.S.Application No.09/909,796を参照。デオキシハイプシン・シンターゼに対する遺伝子、あるいは酵母中のeIF-5Aが不活性であると、細胞分裂を阻害することに成る。Schnierら、(1991)Mol.Cell.Biol.11,3105-3114;Sasakiら、(1996)FEBS lett.,384,151-154;Parkら、(1998)J.Biol.Chem.273,1677-1683を参照。
【0020】
スペルミジンの類似物質が、タンパク質合成及び細胞の増殖の阻害に付随するin vitroにおけるデオキシハイプシン・シンターゼの阻害、及びin vivoにおけるハイプシンの形成を阻害するため上手く使用されてきてた。Jakusら、(1993)J.Biol.Chem.,268,13161-13159;Parkら(1994)J.Biol.Chem.269,27824-27832を参照。さらにポリアミン自体、特にプトレシン及びスペルミジンが、細胞増殖及び分化にも重要な役割を果すと見られる。Tabor & Tabor(1984)Annu.Rev.Biochem.,53,749-790;Pegg(1988)Cancer Res.,48,759-774を参照。たとえば、ポリアミンの生合成経路又はブロックされた酵母の変異体が、外因性ポリアミンにて提供されなければ、増殖することができない。Cohnら、(1980)J.Bacteriol.,134,208-213を参照。
【0021】
さらにポリアミンでは、アポトーシスの誘発から細胞を保護することが示された。たとえば、胸腺細胞のアポトーシスが、スペルミジン及びスペルミンに暴露することでブロックされたが、その機構が、エンドヌクレアーゼ活性を阻害すると見られる。Desiderioら、(1995)Cell Growth Differ.,6,505-513;Bruneら、(1991)Exp.Cell Res.,195,323-329を参照。さらに、外因性ポリアミンにより、B細胞リセプター介在のアポトーシス、及び単一細胞の寄生虫、Trypanosoma Cruiziによるアポトーシスを阻害することが示された。Natlら(2001)Exptl.Cell Res.,265,174-183;Piacenzaら(2001)Pro.Natl.Acad.Sci.,USA,98,7301-7306を参照。さらにスペルミン及びスペルミジンの濃度が低いと、新生ラットの通常の発育期間に神経細胞の喪失数を減少させ、及び脳虚血中に神経細胞の損傷から脳を保護することが観察された。Giladら(1985)Brain Res.,348,363-366;Gilad & Gilad(1991)Exp.Neurol.,111,349-355を参照。さらにポリアミンが、プログラムされた細胞死の形態として植物組織の老化を阻害する。スペルミジン及びプトレッシンでは、カーネーション花の採取後の老化、及び大根葉の落葉を遅延させることが示された。Wang & Baker(1980)HortScience,15,805-806(carnation flowers);Altman(1982)Physiol.Plant.,54,189-193(detached radish leaves)を参照。
【0022】
しかしながら他の研究において、外因性ポリアミンへの応答におけるアポトーシスの誘発が観察された。たとえば、ヒト胸部ガン細胞株が、アポトースを誘発することによるポリアミン類似体に応答し、そして過剰なプトレッシンでは、DH23A細胞におけるアポトーシスを誘発することが示された。McCloskeyら、(1995)Cancer Res.,55,3233-3236;Tomeら(1997)Biochem.J.,328,837-854を参照。
【0023】
ポリアミンとこれらの実験から収集的な結果は、eIF-5Aの特異的なアイソマーの存在が、アポトーシスを誘発する役割を果していることを示唆している。特にそのデータは、アポトーシスに特異的なeIF-5Aのアイソマーが存在し、それがDHSにより活性化されるという見解と一致する。DHS反応がスペルミジンを必要とするという事実は、ポリアミンが、アポトーシス関連タンパク質分解の中核的実行剤としてのカスパーゼ活性化を惹起することを示している知見と、矛盾していない。Stefanelliら、(2000)Biochem.J.,347,875-880;Stefanelliら(1999)FEBS Lett.,451,95-98を参照。同様静脈において、ポリアミン合成の阻害剤が、アポトーシスを遅らせることができる。Dasら(1997)Oncol.Res.,9,565-572;Montiら(1998)Life Sci.,72,799-806;Rayら(2000)Am.J.Physiol.,278,C480-C489;Packhan & Cleveland(1994)Mol.Cell Biol.,14,5741-5747を参照。
【0024】
外在性ポリアミドが、アポトーシスを阻害も増強もさせるという知見は、適用レベルに依存してこれらが、eIF-5Aの活性化を誘発するDHS反応を阻害し、それによりアポトーシスを阻害するか、あるいは毒性である理由からアポトーシス誘発するいずれかが可能である事実により説明することができる。低濃度の外在性ポリアミンが、植物系及び動物系におけるアポトーシスをブロックするという知見が、低濃度なポリアミド及びこれらの類似体が、DHS反応の競合的阻害剤として作用するという事実と一致している。実際に、DHS反応のための基質である外因性スペルミジンでさえ、基質の阻害化を介して反応を阻害することになる。Jakusら(1993)J.Biol.Chem.,268,13153-13159を参照。
【0025】
しかしながら、全てのポリアミン及びこれらの類似体が高濃度で毒性であり、そしてアポトーシスを誘発することができる。これは、予測されるアポトーシスに特異的なeIF-5Aの異性体の活性化を阻害できるにもかかわらず、2つの理由のために生じる。第一には活性化されるeIF-5Aが、長い半減期を有す。Torrelioら、(1987)Biochem.Biophys.Res.Commun.,145,1335-1341;Dou & Chen(1990)Biochim.Biophys.Acta.,1036,128-137を参照。したがって、デオキシハイプシン・シンターゼ活性を阻害することから起こる活性化したアポトーシスに特異的なeIF-5Aの枯渇が、スペルミジンの毒性効果が要因としたアポトーシスをブロックする時間に起らない。第二として、ポリアミンが、デオキシハイプシン反応の競合阻害剤であり、そのため毒性濃度の反応でさえ完全にブロックされ得ない。
【0026】
本発明は、アポトーシスを誘発する直前に上限調節されたeIF-5A cDNAのクローニングに関する。このアポトーシスに特異的なeIF-5Aが、アポトーシスにより生ずる疾患状態に干渉する適切な標的と見られ、その理由としてそれが、アポトーシス経路に関与した下流イフェクター、及び転写因子の転写後の調節レベルに作用すると見られるからである。特にアポトーシスに特異的なeIF-5Aは、アポトーシスの下流イフェクター及び転写因子をコードするmRNAsを核から細胞質への転移を選択的に容易にし、ここで実質的に翻訳されると見られる。アポトーシスを開始する最終的決定が、内在性と外在性のプロ-及びアンチ-アポトーシス・シグナル間の相互作用を複合体からステム(stem)へと見られる。
【0027】
Lowe & Lin(2000)Carcinogenesis,21,485-495を参照。それが下流のアポトーシス・イフェクター及び転写因子の翻訳を容易にできるが、アポトーシス関連eIF-5Aが、アポトーシスに対するこれらシグナル間のバランスを傾斜させるとみられる。
【0028】
前記のように、抗ガン剤がアポトーシスを誘発し、そしてアポトーシス経路における変更が、薬剤により誘発される細胞死を減衰できることが十分確立された。Schmitt & Lowe(1999)J.Pathol.,187,127-137を参照。多くの抗ガン剤がp53を上限調節し、そしてp53を喪失した腫瘍細胞がこれらの薬剤への耐性を形成する。しかしながら投与量が十分あったとしても、p53に関係なくほぼ全ての化学療法剤が、アポトーシスを誘発でき、薬剤耐性腫瘍においてさえ、アポトーシスへの経路が、完全にブロックされないことを示している。Wallace-Brodeur & Lowe(1999)Cell Mol.Life Sci.,55,64-75を参照。このことは、アポトーシスeIF-5Aの誘発が、たとえそれが変異化遺伝子を正しく出来なくとも、p53依存性経路を迂回することができ、そして別の経路を増強させてアポトーシスを誘発できることを示唆している。
【0029】
アポトーシス関連eIF-5Aの誘発が、通常では周辺の細胞にほとんど影響を及ぼさないか全く影響をおよぼさないで、ガン細胞を選択的に標的とする可能性を有する。これが起こるという理由は、腫瘍細胞内にて発現される有糸分裂因子の原ガン遺伝子が、通常細胞に存在しないmRNAの特異的な種の形状に対し、アポトーシス・シグナルを提供するという理由である。Loweら、(1993)Cell,74,954-967;Lowe & Lin(2000)Carcinogenesis,21,485-495を参照。たとえば、p53の変異腫瘍細胞が野生型p53に戻れば、腫瘍細胞株及びゼノグラフィー(xenographs)における薬剤感受性の増大ばかりか、アポトーシスを直接誘発できる(Spitzら、1996;Badieら、1998を参照)。
【0030】
アポトーシスによるeIF-5Aの選択性が、核から細胞質へのこれらの転移を介在することで、下流のアポトーシス・イフェクター及び転写因子にmRNAの翻訳を選択的に容易にするという事実から起るものである。従って、効果を有するアポトーシスeIF-5Aのため、これらのイフェクター及び転写因子に向けたmRNAを、転写する必要がある。これらmRNAは、ガン細胞内に転写されるが周辺の通常の細胞に転写出来ない限り、アポトーシスeIF-5Aが、ガン細胞にアポトーシスを増強し、しかし通常の細胞にあったとしても影響を最少にすることが期待される。従って、アポトーシスに関係するeIF-5Aにより腫瘍細胞の潜在的アポトーシスの能力が回復すれば、腫瘍細胞を選択的に標的とすることによりガン患者が経験する毒性及び副作用を軽減させることができる。さらにアポトーシス・eIF-5Aを誘発させることは、抗がん剤への腫瘍細胞の応答性を増強する効力を有し、これにより薬剤耐性腫瘍に対するこれらの薬剤の効能を改良する。さらにこのことは、効能に対する抗がん剤の投与量を減少させ、そして患者への毒性を低減させることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、単離され及び/又は精製されたラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHSの核酸及びポリペプチド及びアンチセンス・オリゴヌクレオチド、及びアポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSの発現ベクターを提供する。さらに本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSを用いアポトーシスを調節する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、ラットの黄体から単離されたeIF-5Aをコードする全長cDNAの発見、及び特徴付けにある程度基づいており、それはアポトーシスに関与している(アポトーシスに特異的)。従って1例において、本発明は、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。さらに本発明により提供されるものは、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドのアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチドである。ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドが、ラットに対する特異的な何らかのポリペプチドを意味し、それが、細胞をアポトーシスする際異なる発現が行われ、そしてデオキシハイプシン・シンターゼにて触媒とされる前駆eIF-5Aの特異的に保守されたリシンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル成分を転移することによるデオキシハイプシン残基を形成し、そしてこの4アミノブチル成分をデオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによりヒドロキシル化しハイプシンを形成し、これによってeIF-5Aを活性化する。
【0033】
加えて本発明のラットアポトーシスに特異的なeIF-5A配列の核酸及びポリペプチドが、本明細書に提供されているガイダンス、及び当業者周知の技術を用い、他の細胞、組織、器官、又は動物からアポトーシスに特異的な核酸及びポリペプチドの単離に使用することができる。さらに本発明は、本発明のラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドをコードする核酸を検出するプライマー又はハイブリッドプローブとして適切な核酸分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、ヌクレオチド配列及びラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aから誘発される3’末端のアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、ヌクレオチド配列及びラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNAから誘発される5’末端のアミノ酸配列を示す。
【図3】図3は、ラット黄体アポトーシスに特異的なeIF-5A 全長cDNAのヌクレオチド配列を示す。
【図4】図4は、ヌクレオチド配列及びラットのアポトーシスに特異的なDHS CDNAから誘発される3’末端のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(Accession number BC000751又はNM 001970,配列番号:3)とラットの黄体アポトーシスに特異的なeIF-5A CDNAの配向した全長ヌクレオチド配列である。
【図6】図6は、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(Accession number NM-020390,配列番号:4)とラットの黄体アポトーシスに特異的なeIF-5A CDNAの配向した全長ヌクレオチド配列である。
【図7】図7は、マウスeIF-5Aのヌクレオチド配列(Accession number BC003889)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5A CDNAの配向した全長ヌクレオチド配列である。マウスのヌクレオチド配列(Accession number BC003889)は、配列番号:5である。
【図8】図8は、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(Accession number BC000751又はNM 001970)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの配向した誘導された全長アミノ酸配列である。
【図9】図9は、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(Accession number NM 020390)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの配向した誘導された全長のアミノ酸配列である。
【図10】図10は、マウスのeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(Accession number BC003889)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの配向した誘導された全長アミノ酸配列である。
【図11】図11は、ヒトDHSのヌクレオチド配列(Accession number BC000333、配列番号:8)と、ラット黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAの配向した部分的長さのヌクレオチド配列である。
【図12】図12は、ラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNAの制限酵素地図である。
【図13】図13は、ラットのアポトーシスに特異的なDHS codaの部分長の制限酵素地図である。
【図14】図14は、ラットの黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNAの32P-dCTPにて標識化され、3'末端にてプローブされた全体RNAのノーザン・ブロット(図14A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図14B)である。
【図15】図15は、ラットの黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAの32P-dCTPにて標識化され、3'末端にてプローブされた全体RNAのノーザン・ブロット(図15A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図15B)である。
【図16】図16は、過排卵されたラット黄体のアポトーシスの程度を、PGF-2αの注射後に試験したDNAラダーリング試験示す。
【図17】図17は、PGF F-2αにてラットを処理した後、DNAラダリングを示しているアポトーシスのラット黄体から単離されたアガロース・ゲルによるゲノムDNAを示す。
【図18】図18は、過剰に排卵させたラット黄体の分散した細胞のアポトーシスの程度を、プロスタグランジンF-(PGF-2α)に暴露する前にスペルミジンにて処理されたラットにて試験したDNAラダーリング試験を示す。
【図19】図19は、過剰に排卵させたラット黄体のアポトーシスの程度を、スペルミジン及び/又はPGF-2αにて処理したラットにて試験したDNAラダーリング試験を示している。
【図20】図20は、ラット黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAにおける32P-dCTPで標識化した部分長さにてプローブされたラットゲノムDNAのサーザン・ブロットである。
【図21】図21は、エピトープ・タグ発現ベクターであるpHM6を示す(Roche Molecular Biochemicals)。
【図22】図22は、ラットの黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAにおける32P-dCTPで標識化した3'の未翻訳領域にてプローブされた血清を取り出すことによるアポトーシスの誘発後、COS-7細胞から単離された全RNAのノーザン・ブロット(図23A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図23B)である。
【図23】図23は、COS-7細胞の一過性にトランスフェクションのための方法を示すフローチャートである。
【図24】図24は、pHM6にてトランスフェクション後、COS-7細胞における外来タンパク質の一過性的発現のウエスタンブロットである。
【図25】図25は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図26】図26は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により一過性にトランスフェクトされた場合、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図27】図27は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、核の断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図28】図28は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、核の断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図29】図29は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて、全長含むpHM6により一過性にトランスフェクトされた場合、ホスファチジルセリン暴露にて反映されたアポトーシスの検出を示す。
【図30】図30は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて、全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、フォスファチジルセリンの暴露の増大にて反映されたアポトーシスの増強を示す。
【図31】図31は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、フォスファチジルセリンの暴露の増大にて反映されたアポトーシスの増強を示す。
【図32】図32は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、増強したアポトーシスを示す。
【図33】図33は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、Bcl-2の下限調節を示す。図31Aは、クーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット;図31Bは、相当するウエスタンブロットである。
【図34】図34は、プローブとしてc-Mycを用い、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをアンチセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞のクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット及び相当するウエスタンブロットである。
【図35】図35は、プローブとしてc-Mycを用いラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞のクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット、及び相当するウエスタンブロットである。
【図36】図36は、p53が、プローブとして使用される場合、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞のクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット,及び相当するウエスタンブロットである。
【図37】図37は、抗-[HA]-パーオキサダーゼ・プローブを使用した場合のCOS-7細胞におけるpHM6の全長ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aを発現するクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット及び相当するウエスタンブロット、あるいはp53が使用された場合、COS-7細胞におけるpHM6の全長ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aを発現するクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット及び相当するウエスタンブロットである。
【図38】図38は、ヒトeIF5A2(Genbank acession number XM 113401)の配列にてPKO細胞から単離された配向したヒトeIF5A2を示す。
【図39】図39は、一過性トランスフェクションの後、PKO及びPKO-E6細胞に起こるアポトーシスの割合を示すグラフである。PKO及びPKO-E6細胞を、pHM6-LacZ又はpHM6eIF5A1にて一過性トランスフェクトした。アクチノマイシンDで処理し、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトしたPKO細胞を、アクチノマイシンDで処理せず、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞と比較すると、アポトーシスが240%増大したことを示す。アクチノマイシンDで処理し、pHM6eIF5A1にてトランスフェクトしたPKO-E6細胞を、アクチノマイシンDで処理せず、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞と比較すると、アポトーシスが105%増大したことを示す。
【図40】図40は、一過性トランスフェクトの後、PKO6細胞に発生するアポトーシスの割合を示すグラフである。PKO細胞を、pHM6-LacZ、pHM6eIF5A1,pHM6 eIF5A2又はpHM6-切断eIF5A1にて一過性にトランスフェクトした。pHM6 eIF5A1にてトランスフェクトした細胞を、pHM6-LacZにてトランスフェクトしたコントロール細胞と比較してアポトーシスが25%増大したことを示す。
【図41】図41は、一過性トランスフェクトの後、PKO細胞に起こるアポトーシスの割合を示すクラフである。PKO細胞が、トランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ又はpHM6eIF-5A1にて一過性にトランスフェクトされたかのいずれかである。トランスフェクト効率を補正した後、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた60%の細胞が、アポトーシスであった。
【図42】図42は、一過性トランスフェクトの後、PKO6細胞のアポトーシスのフロサイトメトリー(flow sytometry analysis)分析結果を示す。PKO細胞は、トランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1,pHM6-eIF5A2又はpHM6-切断eIF5A1よる一過性にトランスフェクトされたかのいずれかである。表は、各ゲート下の面積に基づいて計算され、アポトーシスになった割合を示す。トランスフェクトされない細胞のアポトーシスのバックグラウンド、及びトランスフェクト効率用に補正した後、pHM6-eIF5A1によりトランスフェクトされた80%の細胞が、アポトーシスを示した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A2又はpHM6-切断eIF5A1よるトランスフェクトされた細胞が、アポトーシスのバックグラウンドのレベルのみ示した。
【図43】図43は、0.25μg/mlのアクチノマイシンDで、0,3,7,24及び48時間にて処理されたPKO細胞から抽出されたタンパク質のウエスタンブロットを提供する。表(panel)の上部は、一次抗体として抗-p53を用いたウエスタンブロットを示す。表(panel)の中間部は、一次抗体として抗eIF5A1を用いたウエスタンブロットを示す。表(panel)下部は、クーマシーブルー(Coomassie-blue)にて染色され、後で、等しく付加していることを証明するため化学蛍光により検出する抗-eIF5A1ブロットのため用いられる膜を示す。p53とeIF5A1が共に、アクチノマイシンDにて処理することにより下部調節される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の核酸は、DNA,RNA,DNA/RNAの二本鎖、タンパク質-核酸(RNA),又はその誘発物質でよい。本明細書に用いられる核酸又はポリペプチドが、実質的に細胞物質のないか又は、化学的前駆物質又は他の化学物質のない場合、「単離された」又は「精製された」と言及される。単離された又は精製されたという用語が、膨大な数の他の配列の断片を含むライブリー種の調製を言及していないと理解すべきである。本発明の核酸又はポリペプチドが、均一性又は別の純度まで精製できる。精製レベルが意図される用途に依存する。重要な特質として他の成分が、かなりの量を存在していたとしても、調製にて核酸又はポリペプチドを所望する機能とすることができる。
【0036】
単離されたポリペプチドが、それを天然に発現する細胞から精製でき、そしてそれを発現するために変更された細胞から(組み換え型)、又は周知のタンパク質合成方法を用い合成された細胞から精製することができる。例えばタンパク質の組み換え生成には、アポトーシス誘発IF-5AかDHSのいずれかをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングすることが含まれる。その発現ベクターが宿主内に誘発され、そしてそのタンパク質が宿主内にて発現される。次にそのタンパク質を、標準的タンパク質精製技術を用い、適切な精製方法のいずれかにより細胞から単離することができる。
【0037】
おそらく本発明のラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドをコードする単離された核酸が、配列番号:1のヌクレオチド配列を有し、そして本発明の精製されたポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸配列を有す。さらに本発明のラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aの核酸及びポリペプチドが、配列番号:1と配列番号:2のそれぞれに実質的に同一か相同する配列、及び機能的な誘発物質又はその変異体を有する配列を包含する。
【0038】
本明細書に用いられるように、「配列の実質的同一性」又は「実質的相同性」という語句が、ある配列が、他の配列と実質的に構造又は機能的に同一であることを呈示するために用いられる。実質的に同一の配列や実質的な相同性を有する配列間の何らかの構造的又は機能的な相違を最少限にすること、すなわちこれらが、所望される用途に指示された機能への配列の能力に影響を及ぼさないことである。種々の相違は、たとえば違った種の間における使用コドンの遺伝的な変異化に起因するとみてよい。2以上の違った配列間において、かなりの量の配列の重なりや類似性がある場合、又は異なる配列が、配列の長さや構造が違ったとしても類似した生理特性を呈する場合、構造的相違が最少であると考えられる。たとえばこうした特徴が、明確な条件下にてハイブリダイズができ、又はタンパク質の場合、免疫的な交差反応性、類似する酵素活性などを含む。技術を有する開業医が、技術的に周知の方法でこれらの各特徴を容易に決定することができる。
【0039】
さらに、配列におけるこれらの間における配列の類似性が、少なくとも70%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは約95%以上有する場合、2つのヌクレオチド配列が、「実質的な相補」である。活性と機能的に関連性のあるポリペプチドの部分との間の類似性に少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは少なくとも95%有するならば、2つのアミノ酸配列が実質的に相同である。
【0040】
2つの配列における同一性の割合を決定するため、上記配列が、最適な比較目的のために(たとえばギャップ(gaps)が、一次及び二次アミノ酸又は核酸配列の一方又は両方に、最適な配列構成のため導入されるが、相同性のない配列が、比較目的のため無視してもよい)構成される。好ましい例において、基準配列の長さの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上が、比較目的のため配向(aligned)される。次に該当するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置にアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第一の配列の位置が、第二の配列の該当する位置として同じアミノ酸残基又はヌクレオチドより占められる場合、上記分子はその位置に同一である(本明細書によりアミノ酸又は核酸の「同定(identity)」は、アミノ酸又は核酸の「相同性(homology)」と同一である。2つの配列における同一割合が、配列により共有される同一位置の数の関数であり、2つの配列の最適な配向(alignment)のため導入する必要があるギャップ(gaps)の数、各ギャップ(gaps)の長さを考慮する。
【0041】
配列の比較、及び2つの配列間の同一性及び類似性の割合の決定を、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Project,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;and Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991を参照)。
【0042】
本発明の核酸及びタンパク質の配列が、「キー配列(query sequences)」として使用され、配列データベースに対して検索が行われ、たとえば他のファミリー・メンバー又は関係する配列を同定できる。こうした検索が、NBLAST及びXBLASTプログラム((version 2.0)of Altschulら、(1990)J.Mol Biol.215:403-10を参照)を用いて行うことができる。BKASTヌクレオチドの検索は、NBLASTプログラムにより行うことができる。BKASTタンパク質の検索が、XBLASTプログラムにより行われ、本発明のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のため隙間(gapped)を形成した配列構造を得るために、ギャプド・ブラスト(Gapped BKAST)が、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402、に記載されたように利用することができる。
【0043】
BLAST及びギャプド・ブラスト(Gapped BKAST)を利用する場合、各プログラムのデフォルト・パラメータ(たとえばXBLAST及びNBLAST)を、使用することができる。
【0044】
核酸の「機能的誘発体」と言う用語は、遺伝子又は核酸配列の相同性又は類似性の意味として、本明細書に用いられる。機能的誘発体は、所定遺伝子の機能の少なくとも1部を保持し、それが本発明に従って利用することができる。本明細書に記載のアポトーシスに特異的なeIF-5Aのポリペプチドの「機能的誘発体」は、少なくとも1部のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性、又はアポトーシスに特異的なeIF-5Aと特異的抗体との免疫的交差反応を保持するアポトーシスに特異的なeIF-5Aの断片、変異体、類似物質又は化学的誘発体である。アポトーシスに特異的なeIF-5Aのポリペプチドの断片は、いずれかのサブセット分子を言及している。
【0045】
さらに機能変異体が、機能が変化しないか、有意に変化しなくなる類似アミノ酸の置換体を含む。機能的に必須アミノ酸が、部位特異的変異誘発法、又はアラニン走査変異誘発法(alanine-scanning mutagenesis)(Cuninghamら(1989)Science 244:1081-1085を参照)など、技術的に周知の方法により同定することができる。後者の方法により、分子中のあらゆる残基に単一のアラニン変異体が誘発される。次に得られた変異体の分子を、キナーゼ活性などの生物活性として、又はin vitroの増殖活性などのアッセイにおいて試験される。さらに結合相手/基質を結合するために必須である部位を、結晶化、核磁気共鳴法又は光親和性標識法(Smithら,(1992)J.Mol.Bio.224:899-904;de Vosら,(1992)Science 255:306-312)を参照)など構造分析により決定することができる。
【0046】
「変異体」は、1又は複数の置換されたヌクレオチドを有するヌクレオチドの置換変異体など、遺伝子全体又はその断片のいずれか実質的に同様の分子を言及するが、特定遺伝子とハイブリダイズするか、又は天然のDNAとハイブリダイズするmRNA転写物をコードする能力を維持している。「相同性」は、異なる動物遺伝子又は種からの断片又は変異体の配列を指している。「類似体(analog)」は、全分子、変異体又はその断片に実質的に類似するか、又はそれに対し機能する非天然の分子を指している。
【0047】
変異体ペプチドは、天然に発生するペプチド及び技術的に周知な方法により製造されたものを含む。こうした変異体は、本明細書記載のような分子技術及び配列情報を用い、同定/作成を容易に行うことができる。さらにこうした変異体は、本発明のeIF-5A又はDHSタンパク質に対し、配列及び/又は構造的相同性に基づいて他のタンパク質との区別を容易にすることができる。タンパク質が機能的変異体又は非機能的変異体であったとしても、相同性/同一性の存在する程度が、主にパラログ・ファミリー(paralog family)に存在する分散量、及びオルソログ間の進化する距離に基づくことになる。
【0048】
本発明の非天然に発生するeIF-5A又はDHSの変異体を、組み換え技術を用い容易に生成できる。こうした変異体が、タンパク質のアミノ酸配列における欠失、付加、及び置換を含むがそれに限定されない。たとえば、一分類の置換体が保守されたアミノ酸置換である。こうした置換体は、同じ特徴の別のアミノ酸によりタンパク質中の所定のアミノ酸を置換するものである。典型的に保守置換体と見られる物には、脂肪族Ala,Val,Leu及びIleの間にて一方から他方への置換物;ヒドロキシル残基SerとThrとの交換;酸性残基AspとGluとの交換;アミド残基AsnとGlnとの間の置換;塩基性残基LysとArgとの交換;芳香族残基Pheとの間の置換などがある。アミノ酸の変化が、表現型サイレントである可能性に関する指針が、Bowieら、Science 247:1306-1310(1990)に見出される。
【0049】
選択肢としてであるが、より好ましくは本発明のラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドをコードする核酸は、配列番号1の物と相補的であるヌクレオチド配列と有意に高いストリンジェントな条件下にてハイブリダイズする。
【0050】
明細書に使用される用語「ハイブリット化(hybridization)」は、プローブ配列及び標的配列の特性に依存して当業者に容易に明らかになるよう、適切なストリンジェントな条件下にて核酸のハイブリット化の意味として、一般的に用いられる。ハイブリット化及び洗浄の条件が、技術的に良く知られ、インキュベート時間、温度及び/又は溶液のイオン強度を変えることにより所望のストリンジェントな条件を調節することが、容易に行われる。Sambrook,J.ら、molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbour Press,Cold Spring Harbor,New York,1989を参照。
【0051】
選択される条件が、ハイブイット化されている配列の長さ、特にプローブ配列の長さ、核酸におけるG-Cの相対的含有量、及び組み合わせミスの許容量にて求められる。有意的に低い相補度を有する遺伝子鎖間を部分的にハイブリット化が所望される場合、ストリンジェントの低い条件が好ましい。完全か、ほぼ完全な相補性が所望される場合、高いストリンジエントな条件が好ましい。典型的に高いストリンジエントな条件に対し、ハイブリット化溶液には、6XS.S.C.,0.01MEDA,1Xデンハルト溶液(Diehard's solution)及び0.5%SDSが含まれる。ハイブリット化は、約68℃にてクローン化されたDNAの断片に対して約3乃至4時間、そして全真核細胞のDNAに対し約12乃至16時間行われた。ストリンジエントが有意に低い場合、ハイブリット化の温度を、二重鎖の融解温度(Tm)より低い約42℃に低下させた。そのTmでは、G-Cの含有量及び二重鎖の長さ、並びにその溶液のイオン強度の関数であることが知られている。
【0052】
本明細書に用いられているように、DNA又はRNAの「該当する部分にハイブリダイズ」という語句は、ハイブリダイズする分子、たとえば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又はいずれかのヌクレオチド配列(センス又はアンチセンスに配向)が、適切な条件下にてハイブリット化を行うため、ほぼ同じサイズで、そこに類似性が十分ある配列を有する他の核酸分子の配列を認識し、そしてそれにハイブリダイズすることを意味する。たとえばヌクレオチド長100のセンス分子が、2つの配列間で約70%以上の配列の類似性がある限り、核酸配列の約100ヌクレオチド部分の認識し、それにハイブリダイズすることになる。「該当する部分」が、それにハイブリダイズする分子より有意に小さくても大きくても、たとえば20-30%の大小、好ましくは12-15%以下の大小でも良い。
【0053】
さらに加えてポリペプチドの機能的変異体が、機能的に変化しないか、実質的に変化しない類似したアミノ酸の置換を含むことができる。機能として必須アミノ酸を、部位特異的な変異誘発法、又はアラニン走査変異誘発法(alanine-scanning mutagenesis)(Cuninghamら(1989)Science 244:1081-1085を参照)など技術的に知られた方法により同定することができる。後者の方法が、分子のあらゆる残基に単一アラニンの変異体を導入する。その後得られた変異分子を、生物活性又はアッセイのために試験する。
【0054】
たとえばアポトーシスに特異的なeIF-5Aの類似体(analog)とは、非天然のタンパク質又は全タンパク質又はその断片のいずれかに擬似的ペプチドとして実質的に類似することを指している。アポトーシスに特異的なeIF-5Aの化学的誘発体が、通常でないある領域のペプチド又はペプチド断片としての付加的な化学成分を含む。修飾化が、選択された側鎖又は末端の残基との反応を可能にする有機誘発化剤と、ペプチドの標的化されたアミノ酸残基とを反応させることにより、ペプチド又はその断片に導入することができる。
【0055】
ラットの黄体から単離されたアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードする全長cDNAの最初の発見及び特徴付けにより、ラットの黄体から単離され、アポトーシスに関与するDHSをコードするcDNAクローンの部分的長さの発見及び特徴付けを導き出す。従って付加的な例において、本発明は、ラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。さらに提供されるものは、ラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドのアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチドである。ラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドが、ラットに対し特異的な何らかの適切なポリペプチドを意味し、それが、アポトーシスする細胞に異って発現され、そして不活性eIF-5Aの特異的に保守されるリシンのαアミノ基にスペルミジンの4-アミノブチル成分を転移させることにより、デイキシハイプシン残基の形成を触媒し、デイキシハイプシンを形成し、それによりeIF-5Aを活性化させる。
【0056】
好ましくは、本発明におけるラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドをコードする単離された核酸が、配列番号:22のヌクレオチド配列を有し、そして本発明の精製されたポリペプチドが、配列番号:23のアミノ酸配列を有する。さらに本発明のラットのアポトーシスに特異的なDHS核酸及びポリペプチドが、各配列番号:22及び配列番号:23に実質的に同一又は相同性を有する配列、及び前記の機能的な誘発及びその断片を有する配列を含む。選択肢としてさらに好ましくは、前記本発明の単離された核酸も又配列番号:22の相補鎖と高いストリンジェントな条件下にてハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する。
【0057】
本明細書に記載されたラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A配列の核酸及びポリペプチドにおける例のように、本発明において、ラットのアポトーシスに特異的なDHS配列の核酸及びポリペプチドを、ヒトを含む他の動物からアポトーシスに特異的なDHS配列の核酸及びポリペプチドを単離するため使用することができる。動物及びヒトからこうしたDHS配列を単離することが、技術的に周知な方法及び本明細書に提供されるガイダンスを用い、少なくとも80%交差している種の類似した配列に基づいて行うことができる。さらに本発明は、本発明におけるアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドをコードする核酸を検出するため、プライマー又はハイブリット化プローブとして適切である核酸分子を提供する。
【0058】
アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSが、アポトーシスを基本とする疾患過程を含む、アポトーシスを調節するための適切な標的であり、その理由が、アポトーシス経路に関係する下流のイフェクター及び転写因子の転写後の調節を作用できることである。従ってさらに本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を調節する薬剤を、細胞に投与することにより、細胞におけるアポトーシスの調節方法を提供する。なおアポトーシスに特異的なeIF-5A機能だけ、アポトーシスに特異的なDHS機能だけ、又はアポトーシスに特異的なeIF-5AとDHSの両方の機能を調節できることが、当業者にて理解されるであろう。
【0059】
アポトーシスは、細胞におけるアポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能の通常レベルを、いずれか適切な変更によって調節することができる。本明細書に意図されるように、修飾又は変更が、完全か又は部分的に可能であり、細胞におけるeIF-5A及び/又はDHS機能の転写又は翻訳の制御の変化、あるいはそれを変更させる他の変化を含むことができる。
【0060】
アポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHS機能が、何らかの活性を意味し、それが、DHSにより触媒される前駆体eIF-5Aの特異的に保守されたリシンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル成分を転移することによりデオキシハイプシン残基の形成し、その4-アミノブチル成分をデオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによりヒドロキシル化しハイプシンを形成し、それによりeIF-5Aを活性にする。
【0061】
本発明の1例において、薬剤がアポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を阻害し、それによりアポトーシスを阻害することができる。アポトーシスを阻害することは、たとえば細胞の縮重、クロマチンの縮合、核の断片化、及び膜の泡状化などアポトーシスを十分に明確にされた成形的特性を特徴付けるいずれか又は全における強度、及び/又は数のなんらかの減少、及び/又は開始における遅延を意味する。
【0062】
アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を阻害できる1つの薬剤が、アンチセンス・オリゴヌクレオチドである。好ましくはアンチセンス・オリゴヌクレオチドが、1部のアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドを有する。アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの適切な核酸配列が、技術的に知られている。例えば配列番号:1,3,4,5,11,15,19,20及び21(アポトーシスに特異的なeIF-5A核酸配列)、配列番号:6及び8(アポトーシスに特異的なDHS核酸配列)、配列番号:12及び16のeIF-5A(アポトーシスに特異的ポリペプチド配列)、及び配列番号:7(アポトーシスに特異的なDHSポリペプチド配列)、又はその1部として、適切な配列を提供する。他の適切な配列が、本明細書に記載された方法によりプローブとして周知の配列を用い見出すことができる。
【0063】
従ってさらに本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドの1部をコードするアンチセンス・オリゴヌクレオチド、又はその相補鎖を提供する。本発明のアンチセンス・オリゴヌクレオチドが、RNA又はDNAたとえば、cDNA、ゲノムDNA、又は合成RNA又はDNA等のRNA又はDNAが、可能な形態である。DNAは、2本鎖又は1本鎖で良くそして例え1本鎖であったとしても、コードする鎖又はコードしない鎖のいずれでもよい。標的核酸と低重合体化合物との特異的ハイブリット化が、核酸の通常な機能と干渉することになる一般的に「アンチセンス」として言及されている。干渉されるDNA機能が複製及び転写を含む。干渉されるRNA機能は、たとえばタンパク質翻訳部位にRNAの転移、RNAからタンパク質の翻訳、1又は複数のmRNA種を生成するRNAのスプライシング、及びRNAに接合(engaged)できるか又はRNAにより増強できる触媒的活性など全ての機能を含む。こうしたアンチセンス・オリゴヌクレオチド全体の効果は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHSの発現、及び/又は産生された活性化アポトーシスに特異的なeIF-5Aの量を阻害することである。
【0064】
選択肢として、アポトーシスに特異的なDHSによるアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を、DHS酵素反応を阻害する化学的薬剤を投与することにより阻害することができる。たとえば、PGF-2α(図18-19)を注入することにより、アポトーシスを誘発後DHS反応の阻害剤であるスペルミジンにて動物を処理した場合、アポトーシスを反映するDNAラダーリングの開始をラットの黄体において遅延する。Jakusら、(1993)J.Biol.Chem.268:13151-13159を参照。
【0065】
さらに、アポトーシスに特異的なeIF-5A・DNA,RNA又はタンパク質を変性させるか、又はアポトーシスに特異的なDHS・DNA,RNA又はタンパク質を変性させ薬剤を加えることにより、アポトーシスに特異的なDHSによるアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性を阻害し、アポトーシスを阻害又は実質的に減少させることができる。本発明の別の例において、内在性哺乳動物のアポトーシスに特異的なDHS、アポトーシスに特異的なeIF-5A、又はその両方の発現を阻害することは、リボザイムの使用を介して影響される。適切な薬剤の例には、アポトーシスに特異的なDHSによりアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を阻害する薬剤、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによりアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を阻害する薬剤、アポトーシスに特異的なDHSの転写及び/又は翻訳を阻害する薬剤、アポトーシスに特異的デイキシハイプシン・ヒドロキシラーゼの転写及び/又は翻訳を阻害する薬剤、及びアポトーシスに特異的なeIF-5Aの転写又は翻訳を阻害する薬剤が含まれる。たとえば、アポトーシスに特異的なDHSによりeIF-5A活性化を阻害する薬剤は、スペルミジン、1,3-ジアミノ-プロパン、1,4-ジアミノ-ブタン(プトレシン)、1,7-ジアミノ-ヘプタン、又は1,8-ジアミノ-オクタンである。
【0066】
さらに細胞のアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードする遺伝子を不活性化することによりアポトーシスに特異的なeIF-5Aを阻害することが可能である。細胞の遺伝子を欠失する、又は遺伝子内の欠失又は変異化を導入することで、こうした不活性化が起こり、それにより遺伝子を不活性化させる。さらにその遺伝子を、内在性アポトーシスに特異的なeIF-5Aタンパク質の発現が起こらないように、別のDNA断片をその遺伝子に挿入することにより、不活性化させることができる。さらに、細胞におけるアポトーシスに特異的なDHSをコードする遺伝子を不活性にすることにより、アポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を阻害することができる。真核細胞の遺伝子内に欠失、挿入などの変異化を導入する方法は、技術的に周知であり、たとえば米国特許番号5,464,764を参照。細胞における遺伝子の変異化に有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを、技術的に周知な方法及び本明細書に提供されるガイダンスにより作成することができ、たとえばアンチセンス・オリゴヌクレオチドを作成及び発現するための有益な方法が、細胞における遺伝子を変異化するために有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターの作成に使用できることである。
【0067】
さらに細胞におけるアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードする遺伝子の発現を阻害することにより、アポトーシスに特異的なeIF-5Aの発現を阻害することが可能である。こうした不活性化が、たとえば同時阻害(cosuppression)が起こるように、細胞内にアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードするヌクレオチド配列を導入することにより、同時阻害(cosuppression)を介して実現することができる。さらに、同時阻害(cosuppression)を介し細胞におけるアポトーシスに特異的なDHSをコードする遺伝子の発現を阻害することで、アポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性を阻害することが可能である。同時阻害(cosuppression)として有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターが、技術的に周知な方法及び本明細書に提供されるガイダンスにより作成でき、たとえばアンチセンス・オリゴヌクレオチドの作成及び発現に有益な方法が、同時阻害(cosuppression)として有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを作成するために使用することができる。同時阻害(cosuppression)のための方法は、技術的に知られており、たとえば、米国特許第5,686,649を参照。
【0068】
阻害による1つの結果(例えば、アンチセンス、変異化又は同時阻害(cosuppression)を介し)は、内在的に翻訳可能なアポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHSをコードするmRNAの量が減少することである。その結果生成されるアポトーシスに特異的なDHSタンパク質量が減少されることにより、活性化されたeIF-5A量が減少され、更にアポトーシスに特異的タンパク質の翻訳を減少させる。従って新規のタンパク質の合成が求められることから、アポトーシスは、阻害されるか又は遅延される。
【0069】
本発明の別の例において、薬剤が、アポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHSの機能を誘発することにより、アポトーシスを誘発することができる。アポトーシスの誘発は、強度又は数の増大、又はたとえば細胞の縮重、クロマチンの縮合、核の断片化、及び膜の水泡などの十分に明確にされたアポトーシスを特徴付ける形態的特性のいずれか又は全ての開始を増強することを意味する。
【0070】
アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を誘発する適切な薬剤を使用することができる。不活性及び活性な形態のポトーシスに特異的なeIF-5Aを投与できることは、当業者に理解されよう。もし不活性な形状、又はハイプシンの未修飾形状にて投与される場合、天然のアポトーシスに特異的なDHSが、eIF-5Aを活性化することになる。アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの適切な核酸配列が、技術的に知られている。たとえば、配列番号:1,3,4,5,11,15,19,20,及び21(アポトーシスに特異的なeIF-5A核酸配列)、配列番号:6及び8(アポトーシスに特異的なDHS核酸配列)、配列番号:12及び16 eIF-5A(アポトーシスに特異的ポリペプチド配列)、及び配列番号:7(アポトーシスに特異的なDHSポリペプチド配列)、又はその1部分から、適切な配列が提供される。他の適切な配列は、本明細書に記載された方法によりプローブとして周知な配列を用い見出すことができる。
【0071】
たとえば、組み換え型産生ポリペプチドを含む、むきだしの核酸(オリゴヌクレオチド又はプラスミドなどのむきだしのDNAベクター)、又はポリペプチドを、細胞に投与することができる。込み換え型産生ポリペプチドは、eIF-5A又はDHSタンパク質をコードするDNA配列が、適切な発現ベクター内に配置されたことを意味し、それが以下に詳細に記載されている。宿主細胞が、発現ベクターにてトランスフェクトされ、その後所望のポリペプチドを生成する。次にそのポリペプチドを宿主細胞から単離する。組み換え型アポトーシス誘発eIF-5Aタンパク質を、たとえばChinese Hamster Ovary(CHO)細胞にて産生し、そして当業者により組換え型DHSを用いて活性化させることができる。Wangら、(2001)J.Biol.Chem.276,17541-17549;Erikssonら、(2001)Semin.Hematil.,38,24-31を参照。さらにこのポリペプチドを合成することができ、それが周知のタンパク質合成方法を用い合成される。
【0072】
ポリペプチドの摂取は、たとえば広範囲な細胞内への摂取に介在する炭疽症から誘発されるリガンドを用い容易に行うことができる。Liuら、(2001)J.Biol.Chem.,276,46326-46332を参照。さらに組み換え型タンパク質を、リポソームを用いて哺乳動物の標的細胞、組織、及び器官に投与することができる。タンパク質を閉塞するリポソームが、静脈内にて投与される。標的化が、リポソームに特定細胞リセプターへのリガンドを組み入れることにより行うことができる。Kaneda,Adv Drug Delivery Rev 43:197-205(2000)を参照。
【0073】
アポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHS機能を誘発できる好ましい薬剤の1は、発現ベクターである。従って本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする核酸に操作的に結合したプロモータを有する発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターが、RNA又はDNA、たとえばcDNA、ゲノムDNA、並びに合成によるRNA又はDNAの形状で良い。DNAは2本鎖、又は1本鎖にて可能であり、たとえ1本鎖であったとしても、コード鎖又は非コード鎖のいずれでも可能である。どれか適切な発現ベクター(Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(Elsevior,N.Y.:1985)を参照)を使用することができる。好ましくはその発現ベクターが、アポトーシスに特異的(関連する)なeIF-5Aポリペプチド、及び/又はアポトーシスに特異的(関連した)なDHSポリペプチドをコードする核酸配列に操作的に結合するプロモータ配列を有する。
【0074】
発現ベクター内にて所望の核酸及びプロモータは、そのプロモータが、核酸の発現を誘発できるように操作的に結合される。核酸が発現される条件にて何か適切なプロモータを使用することができる。こうした適切なプロモータの例には、種々のウイルスのプロモータ、真核細胞のプロモータ、及び構造的に活性なプロモータが含まれる。こうした操作による結合が維持される限り、発現ベクターが、複数の核酸(たとえば、アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHSの両方をコードする核酸)を含むことができる。発現ベクターには、ポリアデニール化配列、リボソーム・エントリー部位、転写調節要素(たとえばエンハンサー、サイレンサーなど)、ベクターの安定性や転写、あるいは細胞内(たとえば放出シグナル、リーダなど)の所望の転写の翻訳又はプロセシングを高める他の配列、又は他のいずれかの適切な要素などの所望による他の要素が含まれる。
【0075】
発現ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、又はレンチウイルスなどのウイルスから誘発される。本発明の発現ベクターが、宿主細胞内でトランスフェクトされ、それが、バクロウイルス(baculovirus)系(Luckowら、Bio/Technology,6,47(1988)を参照)、及び293,COS-7,C127,3T3,CHO,HeLa,BHKなどの確立された細胞株を含む細菌種、哺乳動物又は昆虫の宿主細胞を含むが、それに限定されない。
【0076】
プラスミド及び他のウイルス・ベクター(たとえば、ヘルペス単形ウイルス)と異なり、アデノウイルス・ベクターが、心筋層、血管内皮、及び骨格筋などの心臓血管関連部位に高レベルのタンパク質を発現し、分裂、非分裂の両方の細胞に遺伝子の移送が行われることから、アデノウイルス・ベクターが有意に好まれる。さらにその遺伝子が、エピクロモソマル(epichromosomal)位置におけるアデノウイルス・ベクター機能により移送され、さらに宿主ゲノムの必須部位に移送遺伝子を挿入し、不適切な危険性をほとんどなく輸送される。さらに所望されるアデノウイルス・ベクターが、ウイルスの複製に求められる少なくとも1つの遺伝子機能に欠陥がある。好ましくは、アデノウイルス・ベクターが、アデノウイルス・ゲノムのE1,E2及び/又はE4領域の特に重要なゲノム機能の少なくとも1つに欠陥がある。より好ましくはそのベクターが、アデノウイルス・ゲノムのE3領域の少なくとも1部にさらに欠陥がある(たとえば、an XbaI deletion of the E3 regionを参照)。
【0077】
組み換え型アデノウイルスが、培養培地にウイルスを単に加えることにより、培養細胞に導入することができる。宿主の動物/ヒトへの感染が、血流又は所望の組織にウイルス粒子を直接注入することにより行うことができる。血清中のウイルスの半減期を、リポソーム(たとえばLipofectin,Life Technologies)又はポリエチレン・グリコールと、ウイルスとを複合することにより、延長することができる。アデノウルス・ベクターが、通常ウイルス線維タンパク質のノブ領域とコクサッキーウイルス及びアデノウイルス・リセプター、CARとの間の相互作用を介して細胞に入る。ウイルス・ベクターが、特定細胞リセプターに特異的リガンドを発現させるためウイルスを遺伝子操作することにより、特定細胞に対し、又はCARを発現しない細胞に対して対象とすることができる。
【0078】
別の例において、内在性のアポトーシスに特異的なeIF-5A、又はアポトーシスに特異的なDHS、又はその両方の転写を、化学物質を用い化学的上限調節をすることにより、又はアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を化学的に強化することにより、アポトーシスを開始又は増強することができる。こうした例の1において、PGF-2αを、動物/ヒトのガン細胞又は腫瘍に、DHS及びeIF-5Aの転写物を上限調節まで投与することができる。
【0079】
アポトーシスに特異的なeIF-5Aが、アポトーシスに基づく疾患過程を含む、その理由がアポトーシス経路に関与する下流のイフェクター及び転写因子の転写後の調節に作用すると考えられる。アポトーシスに特異的なeIF-5Aとアポトーシスに特異的なDHSの単独か、組み合わせのいずれかにて調節する本発明の方法は、アポトーシスの誘発又は増強することになるか、又はアポトーシスとなることが出来ない要因とされるか、要因とするか、そうでなければそれと関連した病因を有する疾患を、治療及び防止するための新たな方法及び組成物を形成する動物細胞にて行うことができる。
【0080】
多くの重要なヒトの疾患は、アポトーシス制御における異常により引き起こされる。これらの異常性は、細胞数の病理的な増大(たとえば、ガン)、又は損傷による細胞の喪失(例えば変性疾患)のいずれかにて起こる。限定されない例として、本発明の方法及び組成物が、以下のアポトーシス関連疾患及び不全を防止又は治療するため使用される、すなわち神経細胞/神経細胞変性不全(たとえばアルツハイマー、パーキンソン、ハンチントン、筋萎縮側索硬化症(Lou Gehrig's,Disease))、自己免疫不全(たとえば、慢性間接リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症)、デユシェンヌ筋ジストロフィ(DMD)、運動性神経細胞不全、虚血性疾患、慢性心臓不全、発作、乳児脊髄筋萎縮、急性心停止、腎機能不全、アトピー性皮膚炎、敗血及び敗血発作、AIDS、肝炎、緑内症、糖尿病(型1及び型2)、喘息、色素性網膜症、骨多孔症、異種移植片の拒絶、及び火傷による障害に使用される。
【0081】
本発明の方法は、それぞれ悪性腫瘍細胞の殺傷か腫瘍の進行を阻害するに充分な量で、悪性腫瘍細胞を有するか腫瘍に罹っている動物に対する療法的治療に使用することができる。これを実現する十分な量が、治療としての有効な投与量として定義される。これを使用するための有効量が、疾患の重篤度、及び動物自身の一般的な免疫系症状に依存することになる。
【0082】
腫瘍細胞の増殖を阻害することは、悪性腫瘍の進行の防止又は減少、たとえば腫瘍の増殖、浸襲性、転移及び/又は再発を防止又は減少させることを意味する。本発明の方法は、たとえば、胸部、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部及び頚部、卵巣、前立腺、脳、すい臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、頚部管又は肝臓を含む何か適合する腫瘍を治療するために使用することができる。動物、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトが、本発明の組成物及び方法を用い治療できることである。従って本発明の方法は、in vitro、ex vivo、又はin vivoにて行うことができる。
【0083】
さらに投与計画は、動物の疾患状態や症状で変化し、そして一回の薬物適用量又は連続注入から1日当たり複数の投与(たとえば4-6時間毎)までの典型的な範囲となるか又は治療及び動物の症状により明示されるかである。しかしながら本発明が、何か特定の投与量に限定されないことを留意すべきである。
【0084】
本発明において、何か適切な方法又は経路が、たとえば経口、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内への投与のため使用することができる。投与されるアンタゴニストの用量は、たとえば投与される分子の型、治療される腫瘍のタイプ及び重篤度、及び投与する経路を含む多くの要因に依存する。しかしながら本発明は、何か特定方法又は投与の経路に限定されないことを強調すべきである。
【0085】
別の1例において、本発明の方法は、1又は複数の従来の治療と組み合わせて使用することができる。たとえば適切な抗腫瘍剤は、化学療法剤又は放射線などを使用することができる。さらに別の例において本発明の方法は、たとえばサイトカイン(たとえばIL-10及びIL-13)又は他の免疫刺激剤など1又は複数のアジュバントと組み合わせ使用することができる。
【0086】
さらに別の例において、アポトーシス関連疾患の診断は、アポトーシスに特異的なeIF-5A、及び2つが構造的に相同的するが、カルボキシル末端にて違う、異なるプロモータによって異なる位置から転写される点にて、アポトーシスに特異意的eIF-5Aと異なる増殖するeIF-5Aを用いて行うことができる。本発明の診断方法が、所定細胞に存在するeIF-5Aの増殖量と、同一細胞に存在するアポトーシスに特異的なeIF-5A量とを比較することを含む。通常に機能をしている間、細胞が、アポトーシスに特異的なeIF-5A(又はeIF5A1として本明細書に言及)より増殖するeIF-5A量(又はeIF5A2として本明細書に言及)が有意に多く有することになる。しかしながら幾つかのガン細胞において、通常の調節機構がなくなり、そして増殖するeIF-5A量と比較してアポトーシスに特異的なeIF-5Aの量が変更される。これは、細胞が何か表現型を変化する前に、ガン腫瘍として細胞を有効に診断することができる。
【0087】
さらに別の例において、アポトーシスに特異的なeIF-5Aと増殖するeIF-5Aとの比が、薬剤のスクリーニングに使用することができる。さらにこうした方法は、所定細胞に存在する増殖するeIF-5A量と、同一細胞に存在するアポトーシスに特異的なeIF-5A量との比較を含む。アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対する増殖したeIF-5Aの通常の比率は、薬剤候補と細胞を接触させた後、アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対し増殖したeIF-5Aとの比率と比較すべきである。接触した後アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対し増殖したeIF-5Aの比率が変化すると、アポトーシスの調節活性を有する薬剤候補を同定することができる。アポトーシスの調節活性を有する候補薬剤が、アポトーシスを阻害するか誘発するかのいずれかを介し、アポトーシスと関係する疾患の治療に有益となる。さらに、アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対する増殖したeIF-5Aの比率が変更されれば、アポトーシスの調節に使用でき、それが異常アポトーシスの関係として本明細書に記載のいずれかの症状を治療するために有益である。
【0088】
多数の有効な薬品候補にこの方法を使用すると、すなわちライブラリーが、アポトーシスを調節するライブラリーのメンバーを同定するため有効にスクリーニングすることができる。いずれかの候補又は候補ライブラリーを、この方法を用いスクリーニングすることができる。たとえばシグナル形質導入経路を変更するモノクロナール抗体、TRAIL(Apo2リガンド)などのサイトカイン、レチノイド/ステロイド・ファミリーの核リセプターに対するリガンド、及びタンパク質キナーゼを結合及び阻害する小分子化合物を含む、アポトーシス調節剤として有望であることを示す生物応答修飾剤を、本方法を使用するアポトーシス調節活性を定義するためスクリーニングすることができる。
【0089】
適切な候補の1が、タンパク質・キナーゼC-αアンチセンス・オリゴヌクレオチドのISIS3521(ISIS Pharmaceuticals,Inc.,Carlsbad,CA)であり、それが抗腫瘍作用を有する。他の特定候補としては、ガン及び神経細胞変性疾患に誘発する種々の細胞型におけるアポトーシスを誘起及び実行に必須の役割を果すことが知られたカスパーゼ(Idun Pharmaceuticals,San Diego,CA);Bcl-2の生成をブロックするアンチセンスの薬剤であるGENASENSETM(Genta,Inc.,Berkeley Heights,NJ);P53を療法的に標的とする遺伝子である、INGN241(Introgen Therapeutics,Inc.,Houston,TX);抗-CD20モノクロナールであるrituximab(IDEC Corporation,Osaka,Japan);及び心臓血管症及びガンのため一般的に誘発される療法(AEgera Therapeutics Inc.,Quebec,Canada)が含まれる。予防又は治療を目的として、動物に使用される場合、本発明の核酸及びポリペプチドが、医薬的に受け入れ可能な担体を付加的に含む組成物の形状にて投与できることが理解されよう。医薬的に受け入れ可能な適切な担体には、たとえば1又は複数の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストローズ、グリセロール、エタノールなど、並びにその組み合わせが含まれる。さらに医薬的に受け入れ可能な担体が、湿潤剤又は乳化剤などの補助物質、防腐剤又は緩衝液を最小量含み、それが結合タンパク質の保存寿命又は効能を高める。注射する組成物が、技術的に周知なように、迅速に提供できるように成形され、哺乳動物への投与後、活性成分の放出を維持又は遅延することができる。
【0090】
本発明の組成物は、種々の形状でも良い。これらには、たとえば、錠剤、ピル、粉末、液状、分散又は懸濁状、リポソーム、座薬、注射できるが溶解しない溶液など、固体、半固体、及び液状の投与形状が含まれる。好ましい形状は、意図された投与モード、及び適用される治療法に依存する。
【0091】
こうした組成物を、医薬的技術においてよく知られた方法にて調製することができる。この組成物を作成する際の活性成分が、通常担体と混合されるか、又は担体により希釈されるか、及び/又はたとえばカプセル、サケット、紙又は他の容器の形状にて可能な担体内にて包含される。担体を希釈剤として使用する場合、それが、固体、半固体、又は液状体で良く、それらが、活性成分のための担体、賦形剤又は培地として作用する。従って組成物は、錠剤、薬用ドロップ、サケット、カッシュ、エリキシル剤、エアロゾル(固体又は液状培地として)の形状、例えば10重量%の活性化合物を含む軟膏、ソフト、及びハードなゼラチン・カプセル、座薬、注射用液体、懸濁液、無菌状に包装された粉末、及び局所頒布として可能である。
【0092】
現在本発明に一般的に記載されたものと同一のものが、図示される方法にて提供される、以下の実施例を参照することにより容易に理解されよう。実施例が本発明を理解する際の支援となると説明されているが、いかなる点においてその範囲を限定する意図がなく、且決して限定するように構成されていない。本実施例が、従来の方法の詳細な説明が含まれていない。こうした方法が、当業者に充分に知られ多く公に記載されている。ベクター及びプラスミドの構成に用いられるもの、こうしたベクター及びプラスミドにポリペプチドをコードする核酸の挿入、宿主細胞内にプラスミドを導入、遺伝子の発現及び決定及び遺伝子産生などの従来の方法の詳細な記載は、多くの公開文献から得ることができ、たとえば、Sambrook,J.ら、(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory Pressが含まれる。本明細書に言及する全ての文献が、その全体において組み入れられている。
【実施例】
【0093】
実施例1
本実施例は、アポトーシスに特異的発現を呈するラットのeIF-5A核酸をコードする全長cDNAの単離、及び特徴付けを実証する。
【0094】
ラットの黄体における過剰排卵及びアポトーシスの誘発
メスの未成熟(21-30日経過)ラットを、50IUのPMSG(Pregant Mare Serum Gonadotropin)、さらに60から65時間後50IUのHCG(Human Chorionic Gonadotropin)にて皮下注射し過剰排卵させた。HCG処理から7日後、黄体のアポトーシスを、500mgのPGF-2αで皮下注射にて誘発した。PGF-2αにて処理後そのラットを、種々異なる時間(たとえば、1,8及び24時間)にて犠牲にし、黄体を取り出し液体窒素中に入れた。コントロールとしての黄体組織を、PGF-2α処理直前のラットを犠牲にして得た。
【0095】
ラットの卵巣の黄体細胞の分散
過剰排卵から6乃至9日後、ラットを、500mgのPGF-2αにより複数部位を皮下注射にて処理した。15乃至30分後、卵巣を過剰排卵されたラットから取り出し、氷上のEBSS(Gibco)に置きブロット乾燥しそして計量した。結合している組織を除去し、そして卵巣を、カミソリ刃にて細断し、EBSS 2Xにて2回洗浄した。コラゲナーゼ溶液を、EBSS 5mlに6.5mgのコラゲナーゼ(Sigma,Catologue #C5138)を攪拌することにより調製した。8個の卵巣から細断された組織を、50mlのエレンメヤー・フラスコ(Erlenmeyer flask)にEBSS中5mlのコラゲナーゼに加え、そしてダイアムド・ピペット(Diamed pipette)に数回引き入れることでゆっくりと振動させた。次に細断された組織の入っているフラスコを、95%の空気、5%のCO2の下にゆっくり振動させながら(Position 45 on GFL incubator)、37℃の20分間水浴中に置いた。
【0096】
このインキュベート後、そのフラスコを氷上に置き、そして細胞の懸濁物を、プラスチック製移送ピペットによりSwiss Nirex Nylon Monifilament(75m)に合せたニテクス・フィルター(Nitex filter)上に移した。その濾過物を15mlのファルコン(Falcon)試験管に収集した。コラゲナーゼ溶液(6.5mgのコラゲナーゼ/5mlのEBSS)の第二のアリコート(2.5ml)を、50mlのエレンメヤー・フラスコ(Erlenmeyer flask)に残っている細断した組織に加え、ピペットを用いゆっくりと振動させ、10分間インキュベートし、そして上記のように濾過した。2つの濾過物を合わせ臨床遠心分離機(〜200g)にて室温で、5分間遠心分離した。2mlまでの上澄液以外全てを、ピペットにて取り出し廃棄し、沈殿している細胞を、残っている2mlの上澄液にて再懸濁した。
【0097】
その細胞を、5mlのMEMを加えることにより2回洗浄し、そして上記ように遠心分離にかけそして再懸濁した。洗浄された細胞を、50mlのエレンメヤー・フラスコ(Erlenmeyer flask)に10mmのグルタミンを含む30mlsのMEMに再懸濁し、そして95%の空気、5%のCO2下、37℃にて1時間、振動することなくインキュベートした。次に、その細胞を上記のように遠心分離により沈殿させ、そして10mmのグルタミンを含むMEMにおいて再懸濁した。
【0098】
分散された細胞の濃度を、血球計数計を用いて決定し、そして変動性をトリプシン・ブルー染料を用いて評価した。2-5x105細胞のアリコートを、12x75mmの試験管に入れ、そして95%の空気、5%のCO2下、37℃、2-5時間振動することなくインキュベートした。この期間におけるアポトーシスの進行を、DNAのラダーリング度を評価することで監視した。
【0099】
DNAラダーリングによるラット黄体のアポトーシスの視覚化
アポトーシスの程度を、DNAラダーリングにより決定した。製造指示に従いQLAamp DNA Blood Kit(Qiagen)を用いてゲノムDNAを、分散された黄体細胞又は細断された黄体組織から単離した。PGF-2αにて処理しアポトーシスを誘発する前、アポトーシスを誘発した1時間、及び24時間後の黄体組織を細断した。単離されたDNAを、0.2μCi[α-32P]dCTP,imMのTris,0.5mMのEDTA,3単位のKlenow酵素、及び各dATP,dGTP,及びdTTPに0.2pMより500ngのDNAを、室温にて30分間インキュベートして末端を標識化した。組み込まれなかったヌクレオチドを、Sambrookらによる1mlのSepadex G-50カラムにその試料を通すことにより除去した。次にその試料をTris-酢酸-EDTA(1.8%)ゲル電気泳動により溶解した。そのゲルを真空下室温にて30分間乾燥し、そしてX-線フイルムに-80℃にて24時間暴露した。
【0100】
1つの例において過剰排卵のラットの黄体におけるアポトーシスの程度を、注射によりPGF-2αを注入し0、1、又は24時間後のいずれかにて試験した。0 時間であるコントロールではPGF-2αが注入されることなく、卵巣を取り出した。アポトーシスに関連したヌクレアーゼ活性を反映した低分子量のDNA断片のラダーリングが、PGF-2αの処理前に細断されたコントロール黄体組織に明示されないが、アポトーシス誘発1時間以内では認識することができ、アポトーシス誘発24時間後までには顕著に表れ、それが、図16に示されている。この図におけるパネルの上部が、ラット黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAの32P-dCTPにて標識化された3'の未翻訳領域にてプローブされたNorthern blotのオートラジオグラフィである。パネルの下側は、全RNAの臭化エチジウム染色ゲルである。各レーンが、10μのRNAを含む。そのデータは、血清を取り出した後のeIF-5A転写の下限調節があることを示している。
【0101】
別の例における該当するコントロール動物を、PGF-2αの代りに生理食塩水にて処理した。生理食塩水又はPGF-2αにて処理し15分後、黄体(corpora lutea)を動物から取り出した。ゲノムDNAを、動物から組織を取り出し3時間、及び6時間後その黄体から単離した。そのゲノムDNAのDNAラダーリング及び末端標識化の増大が、明示されたが、組織を取り出し3時間後では、明示されていない。図17を参照。さらに黄体がPGF-2αにて処理して15分後に細断された場合、アポトーシスを反映するDNAのラダーリングが明示され、EBSS(Gibco)におけるin vitroの条件下、6時間保持された。さらにアポトーシスに関連するヌクレアーゼ活性が、ゲノムDNAのより進展した末端標識からも明らかである。
【0102】
別の例において、過剰排卵を、皮下注射にて500μのPGF-2αの注入により誘発した。コントロール・ラットを、等量の生理食塩水溶液にて処理した。15乃至30分後、卵巣を取り出し、そしてコラゲナーゼにより細断した。PGF-2αにて処理されたラットの分散された細胞を、10mmのグルタミン、プラス10mmのスペルミジンにて1時間、そしてスペルミジンがなく10mmのグルタミンにてさらに5時間(レーン2)、又は10mmのグルタミンプラス10mmのスペルミジンにて1時間、そして10mmのグルタミン、プラス1mmのスペルミジンにてさらに5時間(レーン3)インキュベートした。生理食塩水にて処理されたコントロール細胞を、コラゲナーゼにより分散させ、そしてグルタミンのみ(レーン1)にてインキュベートした。各試料から500ngのDNAを、Klenow酵素を用いて[α-32P]-dCTPにて標識化し、1.8%のアガロース・ゲルにて分離し、そして24時間フイルムに暴露した。結果を図18に示す。
【0103】
さらに他の例において、過剰排卵されるラットを、体重当たり1mg/100gのスペルミジン量を皮下注射にて、体重当たり0.333mg/100gの3等分の容量を、500μのPGF-2αにて皮下注射する前24,12,及び2時間にて注入された。コントロール・ラットを3組みに、すなわち注入しないもの、3匹がスペルミジンを注入するがPGF-2αを注入しない、及び3匹が、PGF-2αの処理前に当量の生理食塩水による注入、に分けた。卵巣を、プロスタグランジンにて処置後1時間35分又は3時間45分のいずれかにてラットの前面から取り出しDNAの単離に使用した。各試料から500ngのDNAを、Klenow酵素を用いて[α-32P]-dCTPにて標識化し、1.8%のアガロース・ゲル上にて分離し、そして24時間フイルムに暴露した、レーン1、注入なし(レーン3乃至5に対し同時間にて動物を犠牲);レーン2、3匹を、スペルミジンにて注入(レーン3乃至5に対し同時間にて動物を犠牲);レーン3、3匹を生理食塩水を注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し1時間35分後にその動物を犠牲)、レーン4、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し1時間35分後にその動物を犠牲)、レーン5、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し1時間35分後にその動物を犠牲)、レーン6、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し3時間45分後にその動物を犠牲にした)、レーン7、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し3時間45分後にその動物を犠牲)したものである。得られた結果を図19に示す。
【0104】
RNAの単離
PGF-2αによるアポトーシスを誘発後の種々の時間にて、全RNAを、ラットより取り出した黄体組織から単離した。要約すればその組織(5g)を液体窒素中にてすり潰した。すり潰された粉末を、30mlのグアニジニウム緩衝液(4Mのグアニジニウム・イソチオシアネート、2.5mMのNaOAc、pH8.5、0.8%のβ-メルカプトエタノール)に混合した。その混合物をMiraclothの4層を通し濾出し、そして10,000gで4℃、30分間遠心分離にかけた。次に上澄液を、塩化セシウム密度勾配遠心分離に、11,200g、20時間かけた。ペレット状RNAを、75%エタノールにてすすぎ洗し、600mlのDEPC処理水にて再懸濁し、そしてRNAを1.5mlの95%エタノール及び60mlの3M NaoAcにより-70℃にて析出させた。
【0105】
ゲノムDNAの単離、及びラダーリング
ゲノムDNAを、製造業者の指示によるQIAamp DNA Blood Kit(Qiagen)を使用して抽出された黄体組織又は分散された黄体細胞から単離した。そのDNAは、0.2μCi[α-32P]dCTP,1mMのTris、0.5mMのEDTA,3単位のKlenow酵素、及びdATP,dGTP,及びdTTPそれぞれ0.2pM、により500ngのDNAを室温で30分間インキュベートすることにより、末端を標識化した。組み込まれないヌクレオチドを、Maniatisらによる記載方法により、1-mlのSephadex G-50カラムに試料を通すことにより除去した。次にその試料をTris-酢酸EDTA(2%)ゲル電気泳動により溶解した。そのゲルを、真空下室温にて30分間乾燥し、x線フイルムにて-80℃、24時間暴露した。
【0106】
プラスミドDNAを単離し、そしてDNAの配列決定
上記Sambrookらにより記載のアルカリ溶解法を、プラスミドDNAを単離するため使用した。全長ポジテブなcDNAを、ジデオキシ配列決定法を用い配列決定した。Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:5463-5467を参照。オープンリーデングフレームを、BLAST search(GenBank,Bethesda,MD)を用い翻訳、解析し、そして配列構成を、BCM Search Launcher:Multiple Sequence Alignments Pattern-Induced Multiple Alignment Methodを用いて行った(F.Corpet,Nuc.Acids Res.,16:10881-10890,(1987)を参照。配列及び配列の構成を図 5-11に示した。
【0107】
ラットの黄体RNAのノーザン・ブロット・ハイブリッド化(Northern Blot Hybridization)
アポトーシスの種々の段階にてラットの黄体から単離された20mgの全RNAを、1%の変性ホルムアルデヒド・アガロースゲルにて分離し、ナイロン膜上に固定した。ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を用い32P-dCTPで標識化された全長のラットアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNA(配列番号:1)を、膜7x107をプローブするため使用した。別の選択肢として、ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を用いて32P-dCTPにて標識化された、全長のラットアポトーシスに特異的なDHS cDNA(配列番号:6)を、膜(7x107cpm)をプローブするため使用した。その膜を一度1xSSC、0.1%のSDSにて室温で1回洗浄し、0.2xSSC、0.1%のSDSにて65℃で3回洗浄した。その膜を乾燥し、そしてX線フイルムに-70℃にて1昼夜暴露した。
【0108】
示すことができるように、eIF-5A及びDHSが共に、黄体組織をアポトーシスする際に上限調節される。アポトーシスに特異的なeIF-5Aの発現が、ゼロ時間にPGF-2α-lowで処理しアポトーシスを誘発後実質的に高められ、処理後1時間以内に実質的に増大し、処理8時間以内にてより有意に増大し、そして処理24時間以内で僅かに増大する(図14)。DHSの発現が、時間ゼロで低く、処理1時間以内で実質的に増大し、処理8時間以内にてより有意に増大し、そして処理24時間以内で再度僅かに増大した(図15)。
【0109】
ラットのアポトーシスする黄体の形成
酵母、菌類及びヒトのeIF-5Aの配列に基づくプライマーを使用したRT-PCRの産生物
遺伝子の3'末端に相当する部分長のアポトーシスに特異的なeIF-5A配列(配列番号11)を、酵母、菌類及びヒトのeIF-5Aの配列から設計された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを用い、RT-PCRによりアポトーシス・ラットの黄体RNA鋳型から生成した。ラットのeIF-5A遺伝子の3'末端を単離するために用いられた上流のプライマーが、20ヌクレオチドの再生プライマー:5'TCSAARACHGGNAAGCAYGG3'(配列番号:9)で、ここでSはC及びGから選択され;RはA及びGから選択され、HはA,T,及びCから選択され;そしてNは任意の核酸である。ラットのeIF-5A遺伝子の3'末端を単離するために用いられる下流プライマーが、42ヌクレオチド:5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(配列番号:10)を含んでいる。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT=PCR)を行った。要約すれば、5mgの下流プライマーを用いcDNAの第一の鎖を合成した。次に第一の鎖を、上流及び下流の両プライマーを用いRT-PCRの鋳型として使用した。アガロースゲル上のRT-PCR産生物を分離すると、900bpの断片の存在を示し、それが平滑末端リゲーションを用いpBluescriptTM(Stratagene Cloning Systems,LaJolla,CAを参照)にサブクローンされ、そして配列決定された(配列番号:11)。3'末端のcDNA配列が配列番号:11で、そして3'末端のアミノ酸が配列番号:12である、図 1-2を参照。
【0110】
遺伝子の5'末端に相当し、そして3'末端と重なり合う、部分長のアポトーシスに特異的なeIF-5A配列(配列番号:15)を、RT-PCRによるアポトーシス・ラットの黄体RNA鋳型から生成した。5'のプライマーは、24-merで、CAGGTCTAGAGTTGGAATCGAAGC3'(配列番号:13)の配列を有し、それがヒトeIF-5A配列から作成された。3'プライマーは、30-merで、3'末端のRT-PCR断片より設計された5'ATATCTCGAGCCTTGATTGCAACAGCTGCC3'(配列番号:14)配列を有する。逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応を行った。要約すると、5mgの下流プライマーを用いDNAの第一鎖を合成した。次に第一鎖を、上流と下流の両プライマーを用いRT-PCRの鋳型として使用した。
【0111】
アガロース・ゲル上のRT-PCR産生物を分離すると、500bpの断片があることを示し、それを、上流と下流の各プライマーに存在するXbaI及びXhoIクローニング部位を用い、pBluescriptTM(Stratagene Cloning Systems,LaJolla,CA)にてサブクローンし、そして配列決定した(配列番号:15)。5'末端のcDNA配列が配列番号:15で、そして5'末端のアミノ酸配列が、配列番号:16である。図 2を参照。
【0112】
ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aの3'と5'の末端配列(配列番号:11及び配列番号15のそれぞれ)が重なり合い、そして全長のcDNA配列(配列番号:1)を生ずる。全長の配列が構成され、GeneBank data baseの配列と比較される。図 1-2を参照。
【0113】
そのcDNAクローンは、計算による分子量が16.8KDaを有する154のアミノ酸ポリペプチド(配列番号:2)をコードする。RT-PCRにより得られたラットのアポトーシスに特異的黄体eIF-5A遺伝子の全長cDNAとしてのヌクレオチド配列、配列番号:1が、図3に明示され、そして相当する誘発アミノ酸配列配列番号:9である。eIF-5Aの誘発された全長アミノ酸配列が、ヒト及びマウスのeIF-5A配列にて構成される。図 7-9を参照。
【0114】
アポトーシスするラット黄体の生成、
ヒトDHS配列に基づくプライマーを使用したRT-PCRの産生
遺伝子の3'に相当する部分長のアポトーシスに特異的なDHS配列(配列番号:6)を、ヒトのDHS配列から設計された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを用い、RT-PCRによりアポトーシスするラットの黄体RNA鋳型から生成した。5'プライマーが、20-merで、5'GTCTGTGTATTATTGGGCCC3'(配列番号:17)の配列を有し、3'プライマーが42-merで、5'TCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(配列番号:18)の配列を有する。逆転写酵素・ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行った。要約すると、5mgの下流プライマーを用い、cDNAの第一鎖を合成した。次に第一鎖を、上流と下流の両プライマーを用いRT-PCRの鋳型として使用した。
【0115】
アガロース・ゲル上にRT-PCR産生物を分離すると、606bpの断片を存在することが示され、それが平滑末端リゲーションを用いpBluescriptTM(Stratagene Cloning Systems,LaJolla,CA)にサブクローンされ、そして配列決定された(配列番号:6)。RT-PCRにより得られたラットのアポトーシスに特異的黄体DHS遺伝子のcDNAの部分長としてのヌクレオチド配列(配列番号:6)を、図4に示しさらに該当して誘発されたアミノ酸配列が配列番号:7である。
【0116】
ゲノムDNAの単離、及びサザーン法による分析
サーザン・ブロッテング用のゲノムDNAを、切除されたラットの卵巣から単離した。約100mgの卵巣組織を、小片に分割し15mlのチューブに入れた。この組織を、その組織の懸濁液を静かに振盪することにより、1mlのPBSにて2回洗浄し、さらにピペットを用いてPBSを取り出した。その組織を、2.06mlのDNA緩衝液(0.2MのTris-HCl,pH8.0及び0.1mMのEDTA)にて再懸濁し、そして240μlの10%SDS、及び100μlのプロテナーゼK(Boehringer Manheim;10mg/ml)を加えた。その組織を水槽にいれ45℃にて1昼夜振盪した。その後の期日に、別の100μlのプロテアーゼK(100mg/ml)を加え、そしてその組織懸濁液を水槽にて45℃にてさらに4時間インキュベートした。インキュベート後その懸濁液を、当量のフェノール:クロロフォルム:アミルアルコール(25:24:1)にて1回抽出し、さらに当量のクロロフォルム:イソ-アミルアルコール(24:1)にて1回抽出した。抽出後1/10容量の3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)及び2容量のエタノールを加えた。ブーゼン・バーナを用いてシールし、フック(hook)内に形成されたガラス・ピペットを使用し、溶液からDNAスレッド(DNA threads)を溶液から取り出し、清浄なマイクロ遠心チューブにそのDNAを移した。そのDNAを70%エタノールにて1回洗浄し、そして10分間空気乾燥した。DNAペレットを500μlの10mMのTris-HCl(pH8.0)に溶解し、10μのRNase A(10mg/ml)を加えて、そしてそのDNAを37℃にて1時間インキュベートした。そのDNAを、フェノール:クロロホルム:イソ-アミルアルコール(25:24:1)にて1回抽出し、そして3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)を1/10容量、及び2容量のエタノールを加えることでDNAを沈殿させた。DNAを、4℃、13,000xgにて10分間遠心分離にかけてペレッ化した。DNAペレットを、70%のエタノールにて1回洗浄し、DNAを4℃にて1昼夜回転することにより、10mMのTris-HCl(pH8.0)を200μlにて溶解した。
【0117】
サーザン・ブロット分析用に、ラットの卵巣から単離されたゲノムDNAが、内在性の遺伝子において切断されないか、1回のみ切断かのいずれかである種々の制限酵素にて消化された。これを行うために10μgのゲノムDNA、20μlの10X反応緩衝液、および100Uの制限酵素を、200μlの全反応容量に5乃至6時間反応させた。消化されたDNAを、0.7%アガロース・ゲルに負荷し、40ボルトで6時間又は15ボルトで1昼夜電気泳動にかけた。
【0118】
電気泳動後そのゲルを、0.2NのHClにて10分間再精製し、その後変性溶液(0.5MのNaOH,1.5MのNaCl)にて2乃至15分間洗浄し、そして2乃至15分間中性緩衝液(1.5MのNaOH,0.5MのNaCl)にて洗浄した。そのDNAをナイロン膜に移しさらにその膜を、ハオブリダイゼーション溶液(40%のホルムアミド、6XSSC,5X Denhart's,solution(1X Denhart's solution is 0.02% Ficoll,0.02%PVP,and 0.02%のBSA)、0.5%のSDS,及び1.5mgのdenatured salmon sperm DNA)にてプレ-ハイブルダイズした。ラットのeIF-5A cDNA(650bpの3'UTR及び50bpのcoding)の3'URTの700bp PCR断片を、[a-32P]-dCTPを用い、ランダムプライミングにて標識化し、そして1X106cpm/mlにてその膜に加えられた。
【0119】
同様に、ラットのDHS cDNA(450bp coding and 156bp 3'UTR)の606bp PCR断片が、[α-32P]-dCTPにて標識化されたランダム・プライムであり、第二の同定膜に1X106cpm/mlで加えられた。そのブロットを42℃にて一昼夜ハイブリダイズし、さらに2XSSC及び0.1%のSDSで42℃にて2回洗浄し、そして1XSSC及び0.1%のSDSで42℃にて2回洗浄した。次にそのブロットを、3乃至10日間フイルムに暴露した。
【0120】
ラットの黄体ゲノムDNAを、図20に示すように制限酵素にて切断し、32P-dCTP-にて標識化された全長eIF-5AのcDNAにてプローブした。ストリンジェントの高い条件下でのハイブリダイゼーションが、各制限酵素にて消化されたDNA試料に対し、幾つかの切断断片に全長cDNAプローブをハイブリダイズを表し、eIF-5Aの幾つかのアイソフォームの存在を示している。特に注意すべきもののうち、ラットゲノムDNAがEcoRVにより消化される場合、アポトーシスに特異的なeIF-5Aのオープンリーデングフレーム内の制限部位を有し、eIF-5Aのアポトーシスに特異的アイソフォームの2つの制限酵素断片を、サザンブロット法にて検出することができる。2つの断片が、図20の2重の矢印にて示されている。eIF-5Aのアポトーシスに特異的アイソフォームに相当する制限酵素断片が、標識化されたEcoR1及びBamH1、オープンリーデン・フレーム内に切断部位がない制限酵素である、レーンにて標識化されたEcoR1及びBamH1を単一矢印により示される。これらの結果により、アポトーシスに特異的なeIF-5Aが、ラットの単一コピー遺伝子であることが示唆される。図5から13に示されるように、種を交差して高い保守性があり、したがってそれは、いずれかの種内のアイソフォーム間を有意な量の保守性があることが期待できるであろう。
【0121】
図21が、32P-dCTPにて標識化された、ラット・黄体アポトーシスに特異的なDHS cDNAの一部分の長さにてプローブされたラットゲノムDNAのサザンブロットを示す。ゲノムDNAが、プローブとして使用される部分長のcDNAを切断しない制限酵素としての、EcoRVにより切断された。その切断による断片が、遺伝子の2つの複製があるか、又はその遺伝子がEcoRV部位にてイントロンを含んでいるかを示し実証した。
【0122】
実施例2
本例は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSによるアポトーシスの調節を実証
COS-7細胞の培養及びRNAの単離
野生型T抗原をコードするSV40の変異体にて形質転換されたアフリカ緑サルの腎臓線維芽細胞様の細胞株のCOS-7を、トランスフェクションに基づく全実験に使用した。COS-7細胞を、L-グルタミンのリッター当たり0.584g、グルコースのリッター当たり4.5g、及び0.37%の炭酸水素ナトリウムにて、Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)において培養した。培養培地に、10%の牛胎児血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。その細胞を、5%のCO2及び95%の空気の湿気性環境下37℃にて増殖させた。その細胞を、0.25%のトリプシン及び1mMのEDTAの溶液により、接着細胞を剥離することにより、それぞれ3乃至4日小領域の培養(subcultured)を行った。剥離された細胞を、新たな培養皿にて新鮮な培地と分離比(split ratio)1:10にて調合した。
【0123】
RNAを単離するため使用されるCOS-7細胞を、150-mmの組織培養処理皿(Corning)にて増殖させた。トリプシン-EDTA溶液にて細胞を剥離して、その細胞が採取された。剥離された細胞を遠心チューブに集め、さらにその細胞を、3000rpmにて5分間遠心分離にてペレットとした。その上澄液を取り出し、そして細胞を液体窒素によりフラッシュ冷凍した。RNAを、GenElute Mammalian Total RNA Miniprep kit(Sigma)を用い、作成指示に従って冷凍細胞から単離した。
【0124】
組み換え型プラスミドの構成及びCOS-7細胞のトランスフェクション
センス配向のラットのアポトーシスeIF-5A、及びアンチセンス配向における3'の翻訳されない領域(UTR)のラット・アポトーシスeIF-5Aの全長コードする配列を輸送する組み換え型プラスミドが、哺乳動物のエピトープ・タグ発現ベクターのpHM6(Roche Molecular Biochemicals)を用いて構成され、それを図21に示す。そのベクターには以下のもの、すなわちCMVプロモータ、ヒト・サイトメガロウイルス介在初期プロモータ/エンハンサー;インフルエンザ・ヘマグルチニンからのHA-ノナペプチド・エピトープタグ;BGH pA-Bovine増殖ホルモンポリアデニール化シグナル;f1 ori-f1 origin;SV40 ori-SV40初期プロモータ及びオリジン;Neomycin-Neomycin耐性(G418)遺伝子;SV40 pA-SV40ポリアデニール化シグナル;Col E1-ColE1オリジン;アンピシリン-アンピシリン耐性遺伝子が含まれる。ラットのアポトーシスeIF-5A及びラットのアポトーシスeIF-5Aの3'UTRの全長をコードする配列を、pBluescript(配列番号:1)における元来あるラットeIF-5AのRT-PCR断片からPCRにより増幅した。全長eIF-5Aの増幅に使用されるプライマーが以下の様である、つまり前方5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'(Hind3)及び逆方5'CTGAATTCCAGTTATTTTGCCATGG3'(EcoR1)であった。全長3'UTRのラットeIF-5Aを増幅するために、使用されるプライマー以下のようである、つまり前方5'AATGAATTCCGCCATGACAGAGGAGGC3'(EcoR1)及び逆方5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(Hind3)である。
【0125】
アガロースゲル電気泳動後に単離された全長のラットeIF-5A PCR生成物の長さが、430bpであるが、3'UTRのラットeIF-5A PCR生成物の長さが、697bpである。両PCR生成物を、pHM6-全長eIF-5A及びpHM6-アンチセンス3'UTRのeIF-5Aを形成するためにpHM6のHind3及びEcoR1部位にてサブクローンした。全長のラットeIF-5A PCR生成物を、抗-[HA]-パーオキシダーゼ抗体を使用して組み換え型タンパク質を検出できるよう複数のクローニング部位の上流に存在するインフルエンザ赤血球凝縮素からノナペプチド・エピトープタグにて、フレームにサブクローンした。ヒトのサイトメガロウイルス介在初期プロモータ/エンハンサーにより、発現が誘発され哺乳動物細胞株における高レベル発現が保証される。さらにプラスミドが、安定なトランスフェクトの選択を可能にするネオマイシン耐性(G418)遺伝子、及びCOS-7などのSV40ラージT抗原を発現する細胞において、エピソーマルの複製を可能にするSV40初期プロモータ及びオリジンを特徴とする。
【0126】
トランスフェクト実験に使用されるCOS-7細胞を、タンパク質抽出に使用される細胞用24ウエルの細胞培養プレート(Corning)、又は染色用に使用される細胞用4チャンバー(chamber)培養スライド(Falcon)のいずれかにて培養した。その細胞を、10%のFBSにて補充されたが、ペニシリン/ストレプトマイシンを欠失した状態のDMEM培地にて、50乃至70%の密集度まで増殖させた。24ウエルプレートの1ウエルに又は培養スライドに充分なトランスフェクト培地を、42.5μlの血清のないDMEMに、0.32μgのプラスミドDNAを希釈し、そしてその混合物を室温にて15分間インキュベートすることにより調製した。1.6μlのトランスフェクト試薬、LipofectAMINE(Gibco,BRL)を、42.5μlの血清のないDMEMにて希釈し、そして室温にて5分間インキュベートした。5分後 LipofectAMINE(Gibco,BRL)混合物をDNA混合物に加え、室温にて30乃至60分間共にインキュベートした。トランスフェクトされた細胞をトランスフェクション培地に置く前に、血清のないDMEMにて1回洗浄し、そしてその細胞を増殖チェンバーに4時間戻した。
【0127】
インキュベート後、0.17mlのDMEMプラス20%のFBSをその細胞に加えた。その細胞を、ウエスタンブロット分析用に染色するか、採取する前にアポトーシスとなる様が誘発される、いずれか前にさらに40時間培養した。コントロールとして、プラスミドDNAがトランスフェクション培地から除外される、モック(Mock)トランスフェクション(mock transfections)も行った。
【0128】
タンパク質の抽出及びウエスタンブロッテング法
細胞をPBS(8g/L NaCl,0.2g/L KCl,1.44g/L Na2HPO4,及び0.24g/L KH2PO4)にて2回洗浄し、さらに150μlの熱SDSゲル-負荷緩衝液(50mMのTris-HCl pH 6.8,100mMのジチオセリオール、2%SDS,0.1%のブロモフェノール・ブルー、及び10%のグリセロール)を加えることにより、タンパク質が、トランスフェクトされた細胞からウエスタンブロッテング法のため単離された。細胞溶離物をマイクロ遠心チューブに採取し、95℃にて10分間加熱し、その後13,000xgにて10分間遠心分離にかけた。上澄液を新しいマイクロ遠心チューブに移し、それを使用するまでー20℃にて保存した。
【0129】
ウエスタンブロッテング法では、全タンパク質として2.5又は5μgが、12%のSDS-ポリアクリルアミド・ゲル上にて分離された。分離されたタンパク質を、ポリビニリデン・ジフルオライド膜に移した。次にその膜を、停止溶液(5%のスキム(skim)乳粉、PBS中0.02%のナトリウム・アジド)に1時間インキュベートした。その膜をPBS-Tに4℃で1昼夜保存した。翌日室温まで加温した後その膜を、1μg/mlのポリビニルアルコールに30秒間ブロックした。その膜を脱イオン水にて5回すすぎ洗いし、その後PBSに5%乳の溶液に30分間ブロックした。一次抗体をその膜にインキュベートする前に、PBSに5%乳の溶液に30分間プレインキュベートした。
【0130】
幾つかの一次抗体を使用した。抗-[HA]-パーオキシダーゼ抗体(Roche Molecular Biochemicals)を1:5000に希釈して使用し、組み換え型タンパク質の発現を検出した。この抗体がパーオキシダーゼに接合されることから、二次抗体を全く必要としなく、そしてそのブロットを洗浄し、そして化学蛍光法にて発生させた。使用された他の一次抗体が、p53(Ab-6),Bcl-2(Ab-1),及びc-Myc(Ab-2)を認識する原ガン遺伝子からのモノクロナール抗体である。p53へのモノクロナール抗体を0.1μg/mlの希釈にて使用し、そしてBcl-2及びc-Mycへのモノクロナール抗体を0.83μg/mlの希釈にて共に使用した。60乃至90分間一次抗体とインキュベートした後その膜を、PBS-Tにて15分間3回洗浄した。次に2次抗体を、PBSに1%乳にて希釈しそしてその膜にて60乃至90分間インキュベートした。p53(Ab-6)が、一次抗体として使用される場合、使用される2次抗体が、アルカリホスファターゼ(Rockland)に接合された1:1000に希釈したヤギ・抗マウスIgGであった。Bcl-2(Ab-1),及びc-Myc(Ab-2)が一次抗体として使用される場合、パーオキシダーゼ(Sigma)に接合されたラビット抗-マウスIgGを、1:5000の希釈にて使用した。二次抗体とインキュベートした後その膜を、PBS-Tにて3回洗浄した。
【0131】
ブロットを生成するため、比色分析法及び化学蛍光法の2種の検出方法が使用された。p53(Ab-6)が、アルカリホスファターゼに接合の2次抗体と結合する1次抗体として使用した場合のみ、比色分析法を使用した。結合抗体が、0.33mg/mLのニトロ・ブルー・テトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェイト、100mMのNaCl,5mMのMgCl2、及び100mMのTris-HCl(pH9.5)の溶液にて、暗所でそのブロットをインキュベートすることで視覚化された。色素反応を、PBSに2mMのEDTAにてそのブロットをインキュベートすることにより停止した。化学蛍光検出法を、抗-[HA]-パーオキシダーゼ、Bcl-2(Ab-1),及びc-Myc(Ab-2)を含む他の全ての一次抗体のため使用した。ECLプラス,ウエスタンブロッテング検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を、ペルオキシダーゼ接合の結合抗体を検出するために使用した。簡単にはその膜を、光ブロット乾燥しさらに試薬Aと試薬Bとを40:1にした混合物を暗所にて、5分間インキュベートした。膜をブロット乾燥し、アセテートシート間に置いて、そして10秒から10分間時間を変えてX線フイルムに暴露した。
【0132】
COS-7細胞におけるアポトーシスの誘発
トランスフェクトされたCOS-7細胞におけるアポトーシスを誘発するために、2種の方法が用いられ、それは血清の無い方法とストレプトマイシン種(streptomyces sp)としてアクチノマイシンD(Calbiochem)にて処理する方法である。両処理のためトランスフェクションより40時間後に、その培地をとり出した。血清飢餓実験のためその培地を、血清及び抗生物質の無いDMEMと置き換えた。10%のFBSにて補給される抗生物質の無いDMEMにて増殖した細胞をコントロールとして使用した。アポトーシスを誘発するアクチノマイシンD(Calbiochem)に対し、その培地が、10%のFBSにて補充された抗生物質のないDMEM、及びメタノールに溶解された1μg/mlのアクチノマイシンDと置き換えられた。コントロール細胞を、10%のFBSにて補充された抗生物質のないDMEM、及び等量のメタノールにて増殖した。両方法に対して、アポトーシス細胞の割合を、ヘキスト(Hoescht)かAnnexin V-Cy3のいずれかにて染色し、48時間後に決定した。さらにアポトーシスの誘発が、図22に示すようにノーザン・ブロット分析により確認された。
【0133】
ヘキスト(Hoescht)による染色
核の染色剤としてヘキスト(Hoescht)を、核の断片化や縮合化などの形態的特性に基づいてアポトーシス細胞を同定するため、トランスフェクトされたCOS-7細胞の核標識に使用した。無水メタノールと氷酢酸とを3:1の混合から成る固定液を、使用直前に調製した。等量の固定液を、培養スライド上に増殖するCOS-7細胞の培地に加え2分間培養した。培地/固定液の混合液を細胞から除去し廃棄し、そして新たに1mlの固定液を細胞に加えた。5分後その固定液を廃棄し、1mlの新たな固定液をその細胞に加え5分間インキュベートした。固定液を廃棄しそして1mlのヘキスト染料(Hoescht stain)(0.5μg/ml Hoescht 33258 in PBS)を加える前に、その細胞を4分間空気乾燥した。暗所に10分間インキュベートした後その染色溶液を廃棄し、そしてスライドを脱イオン水にて1分間3回洗浄した。洗浄後1mlのMcI1vaine's緩衝液(0.021Mのクエン酸、0.058MのNa2HPO4・7H2O;pH5.6)をその細胞に加え、そして暗所にて20分間インキュベートした。その緩衝液を廃棄しその細胞を暗所にて5分間空気乾燥し、そしてその培養スライドのウエルを分けるチャンバーを取り出した。蛍光用(Vector Laboratories)として数滴のVectashieldを入れた培地を、そのスライドに加え、カバースリップでかぶせた。染色された細胞を、UVフイルターを用い蛍光電子顕微鏡下にて観察した。明るく染色された細胞又は断片化された核を、アポトーシスとして得点した。
【0134】
アネクシン(Annexin)V-Cy3の染色
アネクシン(Annexin)V-Cy3のアポトーシス検出キット(Sigma)を、アポトーシス細胞に蛍光標識外在性のホスファチジルセリンに使用した。そのキットを、以下の修飾を伴う製造業者の手順に従って使用した。簡単には、4つのチャンバーの培養スライドで増殖するトランスフェクトされたCOS-7細胞を、PBSにて2回そして1X結合緩衝液(Bindind Buffer)にて3回洗浄した。150μlの染色溶液(1Xの結合緩衝液(Bindind Buffer)にて1μg/mlのAnnCy3)を加え、そしてその細胞を暗所にて10分間インキュベートした。次に染色溶液を除去し、細胞を1X結合緩衝液にて5回洗浄した。チャンバー・ウオールを培養スライドから取り出し、そして数滴の1X結合緩衝液がその細胞上に置かれ、カバースリップにてかぶせられた。ポジテブに染色された(アポトーシス)細胞の赤色蛍光を可視化させるために、緑フィルターを用いて蛍光顕微鏡により染色細胞を分析した。可視光下細胞数を計数して全細胞の集団を決定した。
【0135】
実施例3
本例は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSにてアポトーシスを調節することを実証する。
【0136】
前実施例記載の一般的手順及び方法を用いて、図23が、COS-7細胞の一過性トランスフェクションのための手順を示すフローチャートで、そこで血清の無い培地における細胞を、プラスミドDNAでリポフェクトAMINEにて4時間インキュベートし、血清を加えてそしてその細胞をさらに40時間インキュベートした。次にその細胞が、分析前さらに48時間血清を含む通常の培地にてインキュベートされるか(即ちさらに処理をしない)、分析前にアポトーシスを誘発するため血清を取り除く、又は分析前アポトーシスを誘発する前に48時間アクチノマイシンDにて処理されるかのいずれかである。
【0137】
図22は、pHM6にてトランスフェクトした後、COS-7細胞における外来タンパク質の一過性発現を示すウエスタンブロットである。タンパク質を、モック(Mock)トランスフェクトするか、pHM6-LacZ,pHM6-アンチセンス3'rF5A(pHM6-アンチセンス3'URTラットアポトーシスeIF-5A)、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットアポトーシスeIF-5A)にてトランスフェクトするかいずれかにて、48時間後COS-7細胞から単離した。各試料から5μgのタンパク質を、SDS-PAGEにより分画し、PVDF膜に移し抗-[HA]-パーオキシダーゼによりウエスタンブロット処理をした。結合抗体が化学蛍光法により検出され、30秒間X-線フイルムに暴露した。LacZ(レーン2)及びセンス・ラットアポトーシスeIF-5A(レーン4)の発現を、明らかに見ることができる。
【0138】
上記のように、COS-7細胞を、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかであった。トランスフェクトから40時間後、48時間血清を止めてアポトーシスとなるようその細胞を誘発した。トランスフェクトされた細胞抽出物のカスパーゼのタンパク質分解活性を、蛍光定量均一カスパーゼ・アッセイキット(Roche Diagnostics)を用い測定した。さらにDNA断片化が、FragEL DNA Fragmentation Apoptosis Detection kit(Oncogene)を用いて測定され、それは、DNA断片の曝された3'-OH末端に、フルオレセイン標識デオキシヌクレオチドにて標識化してある。
【0139】
さらにCOS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかであった。トランスフェクト化から40時間後、その細胞を血清を含む(さらなる処理なし)定常培地にさらに48時間増殖するか、48時間血清を停止しアポトーシスとなるよう誘発するか、あるいは48時間0.5μg/mlのアクチノマイシンDにて処理することによりアポトーシスとなるよう誘発するかのいずれかである。その細胞ではヘキスト(Hoescht)33258にて染色し、アポトーシスによる核の断片化を示すか、アネクシンAnnexin)V-Cy3にて染色し、アポトーシスに伴うホスファチジルセリンの暴露を示すかのいずれかである。さらに染色された細胞を、緑色フィルターを使用し蛍光顕微鏡下見て計数することにより、アポトーシスになる割合を決定する。細胞の全集団を可視光線下にて計数した。
【0140】
図25では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて、一過性トランスフェクトされた場合に、カスパーゼ活性を増大することを反映し、アポトーシスを増強することが示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すれば、カスパーゼ活性を60%増大することになった。
【0141】
図26では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、DNA断片化を増大することを反映し、アポトーシスを増強することが示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すれば、DNA断片化を273%増大することになった。図27では、COS-7細胞が、センス配向の全長のラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、核の断片化を増大することを反映し、アポトーシスの検出が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現する細胞の断片化された核の発生率が有意に多くなる。図28では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、核の断片化を増大することを反映し、アポトーシスの増強が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すると、非血清の飢餓状態、及び血清の飢餓状態の各試料におけるコントロールより核の断片化が27%と63%増大している。
【0142】
図29では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、ホスファチジルセリンに暴露することを反映し、アポトーシスの検出が示されている。図30では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、ホスファチジルセリン暴露の増大を反映し、アポトーシスの増強が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すると、非血清の飢餓状態、及び血清の飢餓状態の各試料で、コントロールよりホスファチジルセリン暴露が140%と198%増大している。
【0143】
図31では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、核断片化の増大を反映しアポトーシスの増強が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すると、未処理及び処理例それぞれにおいてコントロールより核断片化が115%と62%増大している。図32では、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞が、更に処理されないか、アポトーシスを誘発する処理を行うかのいずれかの条件下にてアポトーシス増強の比較が示されている。
【0144】
実施例4
本実施例は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSを投与した後、アポトーシス活性が調節されることを実証している。
【0145】
さらにCOS-7細胞を、モック(Mock)トランスフェクト、pHM6-LacZにてトランスフェクト、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトするかのいずれかにて行い、さらに40時間インキュベートした。各試料から5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDS膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクロナール抗体にてウエスタンブロット処理した。ペルオキシダーゼに結合したラビット抗-マウスIgGが、二次抗体として使用され、そして結合抗体を、化学蛍光及びX線フイルムに暴露することにより検出した。その結果を図32に示す。pHM6-LacZにてトランスフェクトされた細胞よりpHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされた細胞では、有意に少ないBcl-2を検出することができ、したがってBcl-2が下限調節される。
【0146】
さらにCOS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-アンチセンス3'rF5A(ラット・アポトーシスに特異的なeIF-5AのpHM6-アンチセンス3'UTR)にてトランスフェクトされるか、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラット・アポトーシスに特異的なeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかであった。トランスフェクトから40時間後、その細胞が、48時間血清を停止しアポトーシスに成るよう誘発した。各試料からタンパク質抽出物の5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDF膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクロナール抗体にてウエスタンブロット処理した。ペルオキシダーゼに結合したラビット抗-マウスIgGが、二次抗体として使用され、そして結合抗体を化学蛍光及びX線フイルムに暴露することにより検出した。
【0147】
さらに追加として、COS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-LacZにてトランスフェクトされるか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラット・アポトーシスに特異的なeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかで、40時間インキュベートされた。各試料からタンパク質抽出物の5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDF膜に移し、そしてp53を認識するモノクロナール抗体にてウエスタンブロット処理した。アルカリ性ホスファターゼに結合したヤギ抗-マウスIgGを、二次抗体として使用しそして結合した抗体を化学蛍光法にて検出した。
【0148】
最終的なCOS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-LacZにてトランスフェクトされるか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかでトランフェクトされ、そして40時間インキュベートされた。各試料からタンパク質抽出物の5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDF膜に移しそしてp53を認識するモノクロナール抗体にてプローブした。対応するタンパク質ブロットを、抗-[HA]-ペルオキシダーゼにてプローブされ、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A発現レベルを決定した。アルカリ性ホスファターゼに結合したヤギ抗-マウスIgGを、二次抗体として使用し、そして結合した抗体を化学蛍光法にて検出した。
【0149】
図33では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、Bcl-2の下限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルータンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。有意的に少ないBcl-2が、pHM6-LacZにてトランスフェクトされた細胞よりpHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされた細胞において、検出することができる。
【0150】
図34では、COS-7細胞が、アンチセンス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、Bcl-2の上限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルー染色のタンパク質のブロットを表し、パネル下部が、該当するウエスタンブロットを示している。有意に多くのBcl-2が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、又はpHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞より、pHM6-アンチセンス3'rF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。
【0151】
図35では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合、c-Mycの上限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルー染色のタンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。有意的に多くのc-Mycが、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールによりトランスフェクトされる細胞より、pHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。
【0152】
図36では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、p53の上限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルーにて染色のタンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。有意的に多くのp53が、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールによりトランスフェクトされる細胞より、pHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。
【0153】
図37では、COS-7細胞におけるpHM6-全長のラットアポトーシス誘発eIF-5Aの発現によるp53の上限調節の依存性を示している。抗-[HA]-ペルオキシダーゼにてプローブされたウエスタンブロットにおいて、パネル上部は、クーマシーブルーにて染色のタンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。より多くのラットアポトーシス・誘発eIF-5Aが、第二のトランスフェクションより第一のトランスフェクションにおいて検知するとができる。抗-p53にてプローブされるウエスタンブロットにおいて、パネル上部のAでは、クーマシーブルーにて染色のタンパク質ブロットを表し、そしてパネルの下部では、p53によるウエスタンブロットを示している。第一のトタンスフェクションに対し有意的に多くのp53が、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールによりトランスフェクトされる細胞より、pHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。ラットのアポトーシス誘発eIF-5Aの発現が有意に少ない第二のトタンスフェクションに対し、pHM6-センスrF5A、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールにてトランスフェクトされた細胞間のp53のレベルに検出可能な差がなかった。
【0154】
実施例5
本例は、アポトーシスに特異的なeIF-5Aが、活性p53(RKO細胞)を有する細胞、及び活性p53(RKO細胞)を有しない細胞のアポトーシスを誘発でき、そのアポトーシスに特異的なeIF-5Aが、p53経路以外の経路を通りアポトーシスを開始できることを示している。さらにこれは、上流に作用し広範囲な異なる型のガンを殺すことができるという、当方の意図が裏付けられている。
【0155】
さらに本例では、eIF5A1の活性部位が、RNA結合領域をほとんど含むようなタンパク質のカルボキシ末端(すなわち切断されたeIF-5Aによる実験を参照)であることを示唆している。
【0156】
さらに本例では、ヒトeIF5A2が、それがアポトーシスを誘発できない様大部分増殖eIF-5Aの可能性を実証している。従ってヒトのデータバンクにおける2つのeIF-5A遺伝子のうちアポトーシスに特異的なeIF5A1がアポトーシス遺伝子であり、eIF5A2が増殖遺伝子であると考えられる。
【0157】
PKO及びPKO-E6細胞の培養
野生型p53を発現するヒト結腸悪性腫瘍細胞株のPKO(American Type Culture Collection CRL-2577)、及びp53の通常なレベル及び機能の減少をもたらす、安定に組み入れられたヒト乳頭腫ウイルスE6原ガン遺伝子を含むPKO由来の細胞株としてのPKO-E6(American Type Culture Collection CRL-2578)を、トランスフェクトに基づく実験のため使用した。PKO及びPKO-E6細胞を、非必須アミノ酸、Earle's塩、及びL-グルタミンと共にMinimum Essential Medium Eagle(MEM)に培養した。その培養培地には、10%の胎児牛血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンが補充された。その細胞を、5%のCO2と95%の空気の加湿環境下にて37℃にて増殖させた。その細胞を、0.25%のトリプシン及び1mMのEDTAの溶液により接着細胞を剥離させることにより、3乃至4日ごとにサブカルチャーした(subcultured)した。剥離細胞を、新たな培養皿に新鮮な培地と分離比を1:10乃至1:12にて調製した。
【0158】
ヒトeIF5A2のクローニング
GenBank(ACCESSION XM 113401)から利用できるヒトeIF5A2の配列に対し設計されたプライマーを用い、ヒトeIF5A2を、PKO細胞より単離されたRNAによるRT-PCRで単離した。図38では、ヒトeIF5A2の配列を有するRKO細胞から単離されたヒトeIF-5Aの配向が提供される。RNAを、GenElute Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を用い、PKO細胞から単離した。eIF5A2を増幅させるために使用される前方プライマーが、5'AAACTACCATCTCCCCTGCC3'の配列を有し、逆方プライマーが、5'TGCCCTACACAGGCTGAAAG3'の配列を有した。得られた936bpのPCR産生物が、pGEM-T Easy Vector(Promega)にサブクローンされ、そして配列決定された。
【0159】
次にpGEN-T Easy-eIF5A2の構造を、哺乳動物発現ベクターpHM6(Roche)内に、フレームにてサブクローンされるようeIF5A2 PCR断片を生成するための鋳型として使用した。ヒトeIF-5A2を増幅するために用いられた前方プライマーが、5'ATCAAGCTTGCCCACCATGGCAGACG3'であり、逆プライマー(reverse primer)が、5'AACGAATTCCATGCCTGATGTTTCCG3'であった。得られた505bpのPCR産生物がHind3及びEcoR 1にて消化され、pHM6のHind3及びEcoR 1にサブクローンされた。
【0160】
pHM6-切断eI5A1の構造
eIF5A1のカルボキシ末端領域が、そのアポトーシス誘発活性に重要であるかどうか、決定するために、カルボキシ末端を欠失したeIF5A1が構成された。アミノ酸1から127をコードする欠失eIF-5A1が、鋳型としてpBS-ラットeIF5A1を使用するPCRにより生成された。前方PCRプライマーが、5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'であり、そして逆方プライマーは、5'TCCGAATTCGTACTTCTGCTCAATC3'であった。得られた390bpのPCR産生物が、Hind3及びEcoR 1にて消化され、pHM6のHind3及びEcoR 1にサブクローンされた。
【0161】
トランスフェクション
トランスフェクション実験に使用されるPKO又はPKO-E6細胞を、ヘキスト染色(Hoescht staining)用として使用する細胞に対し8ウエル・チャンバー培養スライド(Falcon)又はフローサイトメトリーにより分析されるよう細胞に対し6ウエルプレートにて培養した。その細胞を、10%のFBSにて補給されるが、ペニシリン/ストレプトマイシンを欠失したMEM培地にて、70乃至80%の密集度に増殖させた。8ウエル培養スライドの1ウエルに充分なトランスフェクション培地を、22μlの血清の無いMEMに0.425μgのプラスミドDNAを希釈して調製し、その混合物を室温にて15分間インキュベートした。トランスフェクション試薬である、0.85μlのLipofectAMINE(Gibco,BRL)を、22μlの血清の無いMEMにて希釈し、さらに室温にて5分間インキュベートした。5分後LipofectAMINE混合物を、DNA混合物に加えそして30乃至60分間室温にてインキュベートした。トランスフェクトされた細胞を、血清の無いMEMにて1回洗浄し、その後44μのMEMをトランスフェクション培地に加え、それを細胞の上に被せるようにした。その細胞を増殖チェンバー内へ4時間にて戻した。インキュベーション後、88μlのMEM+20%のFBSを細胞に加えた。次にその細胞をさらに44時間培養し、その後前記のようにヘキスト(Hoescht)33258にて染色した。別の組みの実験において、8ウエル培養スライドにおけるRKO又はRKP-E6細胞を、トランスフェクションから24時間後に0.25μg/mlのアクチノマイシンD(Actinomycin D)にて処理し、そして20時間後ヘキスト(Hoescht)にて染色した。6ウエルプレートで行われたトランスフェクションを、全ての試薬が4.81倍(times)だけ増大したことを除いて同じ方法にて行った。6ウエルプレートにてトランスフェクトされたRKO細胞を、トランスフェクションから48時間後に採取し、そして下記のようにフローサイトメトリーにて分析するため固定した。
【0162】
トランスフェクション効率の決定
トランスフェクションの効率は、5-ブロモ-4-クロロ-3-イオドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-GAL)にて、pHM6-LacZ-トランスフェクトされた細胞を染色することにより決定した。青色染色の細胞が、LacZ発現のトランスフェクトされた細胞であり、そして青色染色細胞数を全細胞数で割ることにより、トランスフェクション効率を計算した。トランスフェクトされた細胞を、トランスフェクション後48時間染色した。その細胞をPBSで2回洗浄し、そして0.5%のグルタルアルデヒド/PBSにて室温で10分間固定した。その細胞を1mMのMgCl2/PBSにて3回洗浄し、さらに青色に染色された細胞が現れるまで染色溶液[5mMのK4Fe(CN)6.3H2O,5mMのK3Fe(CN)6,1mMのMgCl2,0.1%のX-GAL in PBS]にてインキュベートした。
【0163】
ヘキスト染色(Hoescht Staining)
核の断片化及び縮合に基づくアポトーシス細胞を同定するため、核染色のヘキスト(Hoescht)を、トランスフェクトされたPKO及びPKO-E6細胞の核を標識化するために使用した。無水メタノールと氷酢酸が3:1の混合液から成る固定液を、使用直前に調製した。等容量の固定液を、細胞を培養スライドに増殖させる培地に付加し、2分間インキュベートした。培地/定着液の混合物を細胞から取り出して廃棄し、そして1mlの固定液をその細胞に付加した。5分後その固定液を廃棄し、そして1mlの新鮮な固定液をその細胞に付加し5分間インキュベートした。この固定液を廃棄しそしてその細胞を、1mlのヘキスト染色(Hoescht Staining)(0.5μg/ml Hoescht 33258 in PBS)を加える前に、4分間空気乾燥した。暗所にて10分間インキュベートした後、染色溶液を廃棄し、スライドを脱イオン水にて1分間にて3回洗浄した。洗浄後、1mlのMcIlvaine's緩衝液(0.021 Mのクエン酸、0.058MのNa2HPO4・7H2O;pH5.6)を細胞に付加し、暗所にて20分間インキュベートした。緩衝液を廃棄しそしてその細胞を、暗所にて5分間空気乾燥し培養スライドのウエルを分離するチャンバーを取り出した。蛍光(Vector Laboratories)のため数滴のVectashirld 取り付け培地を、そのスライドに加えカバースリップを被せた。染色された細胞を、UVフィルターを用いて蛍光顕微鏡下にて観察した。明るく染色された細胞又は断片化された核を、アポトーシスとしての得点とした。
【0164】
フローサイトメトリーによるDNA断片化の検出
アポトーシスの期間に形成されるDNAの断片を、Fluorescein-FragELTM DNA Fragmentation Detection Kit(Oncogene Research Products)を用い、フルオレセイントにて標識化されたデオキシヌクレオチドで標識化した。6ウエルの培養プレートに種々の構成にてトランスフェクトされた細胞を、トランスフェクションから48時間後トリプシン化することにより採取し、製造業者の指示により固定し標識化した。簡単には細胞を、1000xgにて40℃、5分間でペレット化し、PBS(8g/L NaCl,0.2g/L KCl,144g/L Na2HPO4,及び0.24g/L KH2PO4)に1回洗浄した。その細胞を4%のホルムアルデヒド/PBSにて再懸濁し、そして室温にて10分間インキュベートした。その細胞を再度ペレット化し1mlの80%エタノールにて再懸濁しそして4℃にて保存した。分析する日に1mlの固定された細胞(1X106細胞/ml)を、マイクロフージ・チューブ(microfuge tube)に移し、そしてその細胞を1000xgにて5分間遠心分離によりペレット化した。ペレット化された細胞を、200μの1XTBS(20mM Tris pH7.6,140mMのNaCl)にて再懸濁し、そして10乃至15分室温にてインキュベートした。次にその細胞を再度ペレット化し、20μg/mlのプロテアーゼKを100μlにて再懸濁し、室温で5分間インキュベートした。その細胞を1XTdT Equilibration 緩衝液100μlにて再懸濁し、室温にて10乃至30分間インキュベートした。次にその細胞を遠心分離によりペレット化し、TdT Labeling Reaction Mixtureを60μlにて再懸濁し、そして暗所にて1乃至1.5時間インキュベートした。インキュベートした後その細胞を遠心分離によりペレット化し、200μlの1XTBSにて2回洗浄した。その細胞を0.5mlの1XTBSである最終容量にて再懸濁し、そして488nmのアルゴンイオン・レザー源を備えたフロサイトメータにて分析した。
【0165】
タンパク質の抽出及びウエスタン・ブロッテング
タンパク質をトランスフェクトされた細胞からウエスタン・ブロッテング用に単離し、その細胞をPBSにて2回洗浄し、さらに150μlの熱いSDSゲル負荷緩衝液(50mMのTris-HCl pH6.8,100mMのジチオセリオール、2%のSDS,0.1%のブロモフェノール・ブルー、及び10%のグリセロール)を加えた。その細胞溶離物をマイクロ遠心分離チューブに集め、95℃にて10分間加熱しさらに13,000Xgにて10分間遠心分離にかけた。上澄液を新たなマイクロ遠心分離チューブに移し、そして使用に準備するまで-20℃にて保存した。
【0166】
ウエスターン・ブロッテング用に、全量5μg又は10μgのタンパク質を、12%のSDS-ポリアクリルアミド・ゲルに分けた。分離されたタンパク質を、ポリビニリデン・ジフルオライド膜に移した。次にその膜を、ブロッキング溶液(5%のスキム(skim)乳粉、PBSに0.02%のナトリウム・アジド)にて、1時間インキュベートし、そしてPBS-T(PBS+0.005%のTween-20)にて15分間3回洗浄した。その膜をPBS-Tに4℃にて1昼夜保存した。翌日室温に加温した後、その膜を1μg/mlのポリビニル・アルコールに30秒間ブロックした。その膜を脱イオン水にて5回すすぎ洗いし、さらにPBSに5%の乳溶液にて30分間ブロックした。1次抗体が膜にてインキュベートする前に、PBS/0.025%のTween-20に5%乳の溶液にて、30分間予備インキュベートした。p53(Ab-6)を認識する原ガン遺伝子からモノクロナール抗体か、ニワトリにて高められたヒトeIF5A1のc-ターミナル末端に相同の合成ペプチド(アミノ-CRLPEGDLGKEIEQKYD-カルボキシ)に対し、対象とされるポリクロナール抗体とのいずれかにてその膜をブロットした。p53に対するモノクロナール抗体を、0.1μg/mlの希釈にて、そしてeIF5A1に対する抗体を、1:1000の希釈にて使用した。1次抗体にて60乃至90分間インキュベートした後、その膜をPBS-Tにて15分間3回洗浄した。次に2次抗体をPBS/0.025%Tween-20における1%乳にて希釈し、その膜を60乃至90分間インキュベートした。p53(Ab-6)を1次抗体として使用すると、使用される2次抗体を1:1000に希釈し、アルカリホスファターゼ(Rockland)に結合したヤギ抗-マウスIgGであった。抗-eIF5A1が、1次抗体として使用された場合、パーオキシダーゼ(Gallus Immunotech)に結合したラビット抗-ニワトリIgYを、1:10000の希釈にて使用した。二次抗体にてインキュベートした後その膜をPBS-Tにて3回洗浄した。2種の検出方法つまり比色分析法及び化学蛍光法を、ブロット生成のために使用した。p53(Ab-6)を、アルカリホスファターゼ接合の二次抗体と結合する一次抗体として使用した場合のみ、比色分析を使用した。結合した抗体を、0.33mg/mlのニトロ・ブルーテトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル・ホスフェート、100mMのNaCl,5mMのMgCl2、及び100mMのTris-HCl(pH9.5)の溶液にて、暗所にてそのブロットをインキュベートすることにより可視化した。その色反応を、PBSにおける2mMのEDTAにブロットをインキュベートすることにより停止させた。化学蛍光検出方法が、抗-[HA]-パーオキシダーゼ及び抗-eIF5A1を含む、他のあらゆる一次抗体に対し使用された。ECLプラスウエスタンブロット検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を、ペルオキシダーゼに結合した結合抗体を検出するため使用した。簡単にはその膜を、光によりブロット乾燥し、その後暗所にて試薬Aと試薬Bとを40:1の混合にして5分間インキュベートした。その膜をドライブロットし、アセテートシート間に置いて、そして10秒から30分間時間を変え、その時間X線フイルムに暴露した。
【0167】
図39は、一過性トランスフェクション後のPKO及びPKO-E6細胞に発生するアポトーシスの割合を明示するグラフを示す。PKO及びPKO-E6細胞を、pHM6-LacZ又はpHM6eIF-5A1にて一過性にトランスフェクトした。24時間後その細胞を、0.25μg/mlのアクチノマイシンDか、等量のメタノール(コントロール)のいずれかにて処理した。その細胞を20時間後ヘキスト(Hoescht)にて染色し、UVフイルターを用い蛍光顕微鏡下にて観察した。縮合されたクロマチンにてより明るく染色された細胞を、アポトーシスとしての得点とした。上記実験を検討し、アクチノマイシンDにて処理し、そしてpHM6-LacZにてトランスフェクトしたPKO細胞と、アクチノマイシンDにて処理されなく、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞とを比較すると、アポトーシスが240%増大するを示した。アクチノマイシンDにて処理し、そしてpHM6eIF-5A1にてトランスフェクトしたPKO-E6細胞と、アクチノマイシンDにて処理されなく、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞とを比較すると、アポトーシスが105%増大することを示した。
【0168】
図40が、一過性トランスフェクション後のPKO細胞に発生するアポトーシスの割合を明示するグラフを示す。PKO細胞を、pHM6-LacZ、pHM6eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6の切断eIF5A1にて一過性にトランスフェクトした。44時間後その細胞をヘキスト(Hoescht)にて染色し、UVフイルターを用いて蛍光顕微鏡下にて観察した。縮合されたクロマチンにより明るく染色された細胞を、アポトーシスとして得点した。pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞を、pHM6-LacZにてトランスフェクトされたコントロール細胞と比較してアポトーシスが25%増大した。この増大では、pHM6-eIF5A2又はpHM6の切断eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞に対し明らかでない。
【0169】
図41が、一過性トランスフェクション後のPKO細胞に発生するアポトーシスの割合を明示するグラフを示す。PKO細胞がトランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ、又はpHM6-eIF5A1にて一過性にトランスフェクトされたかのいずれかである。44時間後その細胞をヘキスト(Hoescht)にて染色し、UVフイルターを用いて蛍光顕微鏡下にて観察した。縮合されたクロマチンにより明るく染色された細胞を、アポトーシスとして得点した。トランスフェクションの効率のため収集後、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞の60%がアポトーシスであった。
【0170】
図42は、一過性トランスフェクション後のPKO細胞のアポトーシスのフローサイトメトリー分析を提供する。PKO細胞がトランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2、又はpHM6の切断eIF5A1にて一過性にトランスフェクトされたかのいずれかであった。48時間後その細胞を採集しそして固定した。アポトーシスを反映する断片化されたDNAを、フルオロセイン結合のデオキシヌクレオチドにて標識化し、488nmのアルゴン・イオンレザー源を備えたフローサイトメトリーにて分析した。ゲートE下発生する蛍光は、非アポトーシス細胞からであり、そしてゲートF下に発生する蛍光は、アポトーシスを受けた細胞からである。その表が、各ゲートのピーク下の面積に基づいて計算されたアポトーシスを受けた細胞の割合を明示している。トランスフェクトされない細胞におけるアポトーシスのバックグランドに対し、及びトランスフェクト効率に対し補正した後、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞の80%が、アポトーシスを呈した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2、又はpHM6の切断eIF-5A1にてトランスフェクトされた細胞が、アポトーシスのバックグランド・レベルしか呈さなかった。
【0171】
図43が、0.25μg/mlのアクチノマイシンDにて、0,3,7,24及び48時間、処理されたRKO細胞から抽出されたタンパク質のウエスタンブロット法を提供する。5μg(アンチ-eIF5A1のため)又は10μg(抗-p53のため)の全タンパク質を、12%のSDS-ポリアクリルアミド・ゲルにて分離し、ポリブニリデン・ジフルオライド膜に移した。パネルの上部は、一次抗体として抗-p53を使用するウエスタンブロットを明示している。パネルの中央は、一次抗体として抗eIF5A1を使用するウエスタンブロットを明示している。パネルの下部は、等量の負荷を実証するために、化学蛍光検出の後、クーマシーブルーにて染色された抗-eIF5A1ブロットのため使用される膜を明示している。p53とeIF5A1が共にアクチノマイシンDにより処理することにより上限調節される。
【技術分野】
【0001】
本発明は、アポトーシスに特異的な真核細胞の開始因子-5A(eIF-5A)及びデオキシハイプシン・シンターゼ(DHS)の核酸、及びポリペプチド、ならびにアポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSを用いて、細胞のアポトーシスを調節する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アポトーシスは、細胞の縮退、クロマチンの縮合、核の断片化、及び膜の水泡化など、充分明記された形態的特性を特徴付ける、遺伝的にプログラムされた細胞事象である。Kerrら、(1972)Br.J.Cancer,26,239-257;Wyllieら(1980)Int.Rev.Cytol.,68,251-306を参照。通常な組織の形成や恒常性に重要な役割を果し、アポトーシス・プログラムの欠陥は、神経細胞の変性及び自己免疫不全から腫瘍に至るまで広範囲にわたるヒトの疾患に関与していると考えられる。Thompson(1995)Science,267,1456-1462;Mullauerら(2001)Mutat.Res,488,211-231を参照。アポトーシス細胞の形態的特性が、よく特徴付けられているが、この過程を調節する分子経路が、明らかにされ始めたばかりである。
【0003】
アポトーシスに中核的役割を果すと考えられる1群のタンパク質が、カスパーゼと称するシステイン・プロテアーゼのファミリーであり、カスパーゼが、アポトーシスのほとんどの経路に必要と見られる。Creagh & Martin(2001)Biochem.Soc.Trans,29,696-701;Dalesら,(2001)Leuk.Lymphoma,41,247-253を参照。カスパーゼは、種々の細胞タンパク質が切断されることによるアポトーシス刺激に応答しアポトーシスの引き金を引き、それが、細胞の縮退、膜の水泡及びDNAの断片化を含むアポトーシスの典型的な明示となる。Chang & Yang(2000)Microbiol.Mol.Bio.Rev.,64,821-846を参照。
【0004】
さらに、Bax又はBakなどの前駆アポトーシス・タンパク質が、ミトコンドリア・シトクロム cなどのカスパーゼ活性化分子の放出によりアポトーシス経路に中核的役割を果し、これによりアポトーシスを介し細胞死を増強する。Martinou & Green(2001)Nat.Rev.Mol.Cell.Biol.2,63-67;Zouら、(1997)Cell,90,405-413参照。Bcl-2などの抗-アポトーシス・タンパク質は、前駆-アポトーシス・タンパク質である、Bax及びBakなどの活性をアンタゴナイズすることにより細胞の生存を増強する。Tsujimoto(1998)Genes Cells,3,697-707;Kroemer(1997)Nature Med.,3,614-620を参照。Bax:Bcl-2の比が、細胞の運命を決定付ける1つの方法と考えられ、すなわち過剰なBaxがアポトーシスを増強し、そして過剰なBcl-2が細胞の生存を増強する。Salomonsら(1997)Int.J.Cancer,71,959-965;Wallace-Brodeur & Lowe(1999)Cell Mol.Life Sci.,55,64-75を参照。
【0005】
アポトーシスに関与する別の重要なタンパク質は、腫瘍抑制遺伝子P53によりコードされるタンパク質である。このタンパク質は、細胞の増殖を調節し、おそらくBaxの上限調節を介して損傷し、そして遺伝的に不安定な細胞にアポトーシスを誘発する転写因子である。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142;Ronenら、1996;Schuler & Green(2001)Biochem.Soc.Trans.,29,684-688;Ryanら、(2001)Curr.Opin.Cell.,13,332-337;Zoringら、(2001)Biochem.Biophys.Acta,1551,F1-F37を参照。
【0006】
アポトーシスとなる細胞を特徴付ける明確な形態的特性により、アポトーシスの開始及び進行を評価する多くの方法が形成されることである。これらの検出のため使用できるアポトーシス細胞のこうした特徴の1つは、フリッパーゼ(flippase)の活性化であり、それが、血漿膜の内部小葉に通常に配置されるリン脂質である、ホスファチジルセリンを外在化することになる。Fadokら、(1992)J.Immunol.,149,4029-4035を参照。外在化されたホスファチジルセリンを生ずる(bearing)アポトーシス細胞が、蛍光染料に結合したホスファチジルセリン-結合タンパク質であるAnnexin Vで染色することで検出することができる。アポトーシス進行中に起こる特徴的なDNAの断片化が、蛍光標識されたデオキシヌクレオチドにて、露出したDNA断片の3'-OH末端部を標識化することで検出することができる。ヘキスト(Hoescht)33258など、核酸に結合する蛍光染料が、アポトーシス細胞のクロマチンの縮退、及び核の断片化における検出に使用できる。さらに細胞集団内のアポトーシス度は、細胞抽出物に存在するカスパーゼのタンパク質分解活性度から推定することができる。
【0007】
遺伝的に明確にされた過程として、他の何らかの形成プログラムと同様アポトーシスが、突然変異化により壊される場合がある。アポトーシス経路の変更が、ガンを含む多くの疾患過程の重要な役割を果すと考えられる。Wyllieら、(1980)Int.Rev.Cytol.,68,251-306;Thompson(1995)Science,267,1456-1462;Sen & D'Incalci(1992)FEBS Letters,307,122-127;McDonnellら、(1995)Seminars in Cancer and Biology,6,53-60を参照。ガンの発生と進行の研究では、これまで伝統的に細胞の増殖が中核となってきた。しかしながら、アポトーシスが腫瘍形成に果す重要な役割が、最近明らかになってきた。実際に現在アポトーシスに関し知られている多くが、腫瘍モデルを用いて研究されてきた、その理由は、アポトーシス制御が、腫瘍細胞における幾つかの点でばらつきなく変更されることである。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142を参照。
【0008】
アポトーシスを、腫瘍形成中に種々のシグナルにより誘起することができる。細胞外シグナルには、増殖又は生存因子の枯渇、低酸素及び電離性放射線が含まれる。アポトーシスを誘起できる内因性シグナルには、DNAの損傷、テロメアの短縮、及び不適切な増殖シグナルを生成する原ガン遺伝子変異体が含まれる。Lowe & Lin(2000)Carcinogenesis,21,485-495を参照。悪性腫瘍の治療に用いられる電離性放射、及びほぼ全ての細胞障害性化学治療剤が、細胞死を誘発する内因性アポトーシス機構の引き金を引くことにより、作用すると考えられる。Rowan & Fisher(1997)Leukemia,11,457-464;Kerr ら、(1994)Cancer,73,2013-2026;Martin & Schwartz(1997)Oncology Research,9,1-5を参照。
【0009】
初期ガンの進行における腫瘍細胞が、アポトーシスを誘発する薬剤(電離性放射線又は化学療法剤など)に感受性であることが、実証により示唆されている。しかしながら、腫瘍が進行するにつれその細胞が、アポトーシス刺激に対し抵抗性を形成する。Naikら、(1996)Genes and Development,10,2105-2116を参照。これは、初期ガンが、病巣のより進行したガンより治療により良好に応答する理由として説明することができる。後期段階のガンが化学療法や放射線治療に抵抗性を形成できることは、腫瘍細胞がアポトーシス刺激に応答できる能力を制限するアポトーシス経路の変更と結びついていると見られる。Reedら、(1996)Journal of Cellular Biology,60,23-32;Meynら、(1996)Cancer Metastasis Reviews,15,119-131;Hannun(1997)Blood,89,1845-1853;Reed(1995)Toxicology Letters,82-83,155-158;Hickman(1996)European Journal of Cancer,32A,921-026を参照。化学療法に対する耐性は、抗-アポトーシス遺伝子bcl-2の過剰発現、及び慢性リンパ球白血病と結腸ガンそれぞれの前駆-アポトーシスbax遺伝子の欠失又は変異化に関連していた。
【0010】
さらに腫瘍細胞の転移による拡散を上手く確立できることは、アポトーシス経路の変更に関係すると見られる。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142を参照。たとえば腫瘍阻害遺伝子p53の変異化が、腫瘍細胞の70%に形成されると考えられる。Evanら、(1995)Curr.Opin.Cell Biol.,7,825-834を参照。p53遺伝子を不活性にする変異化が、細胞におけるDNAの損傷に応答しアポトーシスを誘発する能力を制限し、さらに変異化を受け易い状態となる。Ko & Prives(1996)Gene and Development,10,1054-1072を参照。
【0011】
従って、アポトーシスが、原ガン遺伝子への形質転換及び転移の形成及び進行に密接に関係し、そして関与されるアポトーシス経路を充分理解すれば、遺伝子治療方法を介しアポトーシス経路の調節により、新たなガン治療の有力な標的を導き出すことを可能にする。Boldら、(1997)Surgical Oncology,6,133-142を参照。
【0012】
デオキシハイプシン・シンターゼ(DHS)及びハイプシンを含む真核細胞の翻訳開始因子-5A(eIF-5A)では、細胞の増殖及び分化を含む多くの細胞過程に重要な役割を果すことが、知られている。特有のアミノ酸であるハイプシンが、実験による全ての真核細胞及び古細菌にて見出されたが、真正バクテリアでは見出されず、そしてeIG-5Aが、唯一ハイプシン含有タンパク質として知られている。
【0013】
Park(1988)J.Biol.chem.,263,7447-7449;Schumann & Klink(1989)System、Appl.Microbiol.,11,103-107;Bartigら、(1990)System.Appl.Microbipl.,13,112-116;Gordonら、(1987a)J.Biol.Chem.262,16585-16589を参照。活性化eIF-5Aが、2つの翻訳後の工程から形成され、すなわち第一工程では、デオキシハイプシン・シンターゼにより触媒とされる前駆体eIF-5Aの 特異的リシンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル成分を転移することによりデオキシハイプシン残基が形成され、第二工程では、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼにより4-アミノブチル成分をドロキシル化し、ハイプシンを形成することが含まれる。
【0014】
eIF-5Aのアミノ酸配列が、種間において良好に保守され、そしてeIF-5Aのハイプシン残基周辺のアミノ酸配列が、ストリンジェントな状態にて保守され、これは、この変更が生存に重要なことを示唆している。Parkら、(1993)Biofactors,4,95-104を参照。さらにこの予測が、今までに酵母に見出されたeIF-5Aの両異性体の不活性化、又は第一工程にてこれらの活性化を触媒するDHS遺伝子を不活性化により、細胞分裂がブロックされるという観察によりさらに裏付けられた。Schnierら(1991)Mol.Cell.Biol.,3105-3114;Sasakiら、(1996)FEBS Lett.,384,151-154;Parkら、(1998)J.Biol.Chem.273,1677-1683を参照。しかしながら、酵母中のeIF-5Aタンパク質が枯渇すると、全タンパク質の合成が僅しか減少しないことが、eIF-5Aが、タンパク質の全体的な合成に対してでなく、mRNAの特異的サブセットの翻訳に必要とされることを示唆している。Kangら(1993)、「Effect of initiation factor eIF-5A depletion on cell proliferation and protein synthesis,」in Tuite,M.(ed),Protein Synthesis and Targeting in Yeast,NATO Series Hを参照。eIF-5Aに結合するリガンドが、より高く保守されたモチーフを共有するというという最近の知見により、さらにeIF-5Aの重要性が裏付けられている。Xu & Chen(2001)J.Biol.Chem.276,2555-2561を参照。加えて修飾されたeIF-5Aのハイプシン残基が、RNAに配列特異的な結合に必須であり、そしてその結合が、リボヌクレアーゼからの保護を提供していないことが見出された。
【0015】
eIF-5Aに対する最初のcDNAが、Smit-McBrideらにより1989にヒトからクローン化され、それ以後eIF-5Aに対するcDNA又は遺伝子が、酵母、ラット、雛トリの胚、ムラサキウマゴヤシ、及びトマトを含む種々の真核細胞からクローン化されてきた。Smit-McBridら(1989a)J.Biol.Chem.264,1578-1583;Schnierら(1991)(yeast);Sano,A.(1995)in Imahori,Mら(eds),Polyamines,Basic and Clinical Aspects,VNU Science Press,The Netherlands,81-88(rat);Rinaudo & Park(1992)FASEB J.,6,A453(chick embryo);Payら、(1991)Plant Mol.Biol.,17,927-929(alfalfa);Wangら(2001)J.Biol.Chem.,276,17541-17549(tomato)を参照。
【0016】
さらに、eIF-5Aが細胞内にて枯渇すれば、核内の特定mRNAの有意な蓄積が起こり、eIF-5Aが、核から細胞質への特定種のmRNAをシャトルに対し関与する可能性を示している。Liu & Tartakoff(1997)Supplement to Molecular Biology of the Cell,8,426a.Abstract No.2476,37thAmerican Society for Cell Biology Annual Meetingを参照。核細孔に会合した核内フィラメントでeIF-5Aの蓄積及び通常の核輸出リセプターの相互作用は、eIF-5Aが、ポリソーム成分よりむしろ核細胞質のシャトル・タンパク質であることをさらに示唆している。Rosoriusら、(1999)J.Cell Science,112,2369-2380を参照。
【0017】
eIF-5AのmRNAの発現は、種々のヒトの組織や哺乳動物の細胞株にて研究されてきた。たとえば、血清の除去に続いて血清を付加した後のヒト線維芽細胞において、eIF-5A発現の変化が観察された。Pang & Chen(1994)J.Cell Physiol.,160,531-538を参照。アイソフォームの異なる変化の平均を反映する確率が決定されなかったとしても、前駆体eIF-5Aのデオキシハイプシン・シンターゼ活性及び量の加齢に伴う減少が、老化する線維芽細胞において観察された。Chen & Chen(1997b)J.Cell Physiol.,170,248-254を参照。
【0018】
種々の研究により、eIF-5Aが、ヒト免疫不全ウイルス型1 Revタンパク質、及びヒトT細胞白血球ウイルス型1 Rexタンパク質など、ウイルス性タンパク質の細胞標的となる可能性を示した。Ruhlら(1993)J.Cell Biol.,123,1309-1320;Katahiraら(1995)J.Virol.,69,3125-3111を参照。予備研究により、eIF-5Aが、Revなどの他のRNA結合タンパク質と相互作用することにより、RNAを標的とすることができることを明示し、こうしたウイルスタンパク質が、ウイルスRNAのプロセシングのためeIF-5Aを補充できることを示唆している。Liuら、(1997)Biol.Signals,6,166-174を参照。
【0019】
デオキシハイプシン・シンターゼ及びeIF-5Aは、細胞増殖及び老化を含む中核的細胞過程に重要な役割を果すことが、知られている。たとえば、植物におけるデオキシハイプシン・シンターゼのアンチセンスが減少すると、葉や果物の老化が遅くなり、植物中の老化を誘発するeIF-5Aの異性体があることを指示している。WO 01/02592;PCT/US01/44505;U.S.Application No.09/909,796を参照。デオキシハイプシン・シンターゼに対する遺伝子、あるいは酵母中のeIF-5Aが不活性であると、細胞分裂を阻害することに成る。Schnierら、(1991)Mol.Cell.Biol.11,3105-3114;Sasakiら、(1996)FEBS lett.,384,151-154;Parkら、(1998)J.Biol.Chem.273,1677-1683を参照。
【0020】
スペルミジンの類似物質が、タンパク質合成及び細胞の増殖の阻害に付随するin vitroにおけるデオキシハイプシン・シンターゼの阻害、及びin vivoにおけるハイプシンの形成を阻害するため上手く使用されてきてた。Jakusら、(1993)J.Biol.Chem.,268,13161-13159;Parkら(1994)J.Biol.Chem.269,27824-27832を参照。さらにポリアミン自体、特にプトレシン及びスペルミジンが、細胞増殖及び分化にも重要な役割を果すと見られる。Tabor & Tabor(1984)Annu.Rev.Biochem.,53,749-790;Pegg(1988)Cancer Res.,48,759-774を参照。たとえば、ポリアミンの生合成経路又はブロックされた酵母の変異体が、外因性ポリアミンにて提供されなければ、増殖することができない。Cohnら、(1980)J.Bacteriol.,134,208-213を参照。
【0021】
さらにポリアミンでは、アポトーシスの誘発から細胞を保護することが示された。たとえば、胸腺細胞のアポトーシスが、スペルミジン及びスペルミンに暴露することでブロックされたが、その機構が、エンドヌクレアーゼ活性を阻害すると見られる。Desiderioら、(1995)Cell Growth Differ.,6,505-513;Bruneら、(1991)Exp.Cell Res.,195,323-329を参照。さらに、外因性ポリアミンにより、B細胞リセプター介在のアポトーシス、及び単一細胞の寄生虫、Trypanosoma Cruiziによるアポトーシスを阻害することが示された。Natlら(2001)Exptl.Cell Res.,265,174-183;Piacenzaら(2001)Pro.Natl.Acad.Sci.,USA,98,7301-7306を参照。さらにスペルミン及びスペルミジンの濃度が低いと、新生ラットの通常の発育期間に神経細胞の喪失数を減少させ、及び脳虚血中に神経細胞の損傷から脳を保護することが観察された。Giladら(1985)Brain Res.,348,363-366;Gilad & Gilad(1991)Exp.Neurol.,111,349-355を参照。さらにポリアミンが、プログラムされた細胞死の形態として植物組織の老化を阻害する。スペルミジン及びプトレッシンでは、カーネーション花の採取後の老化、及び大根葉の落葉を遅延させることが示された。Wang & Baker(1980)HortScience,15,805-806(carnation flowers);Altman(1982)Physiol.Plant.,54,189-193(detached radish leaves)を参照。
【0022】
しかしながら他の研究において、外因性ポリアミンへの応答におけるアポトーシスの誘発が観察された。たとえば、ヒト胸部ガン細胞株が、アポトースを誘発することによるポリアミン類似体に応答し、そして過剰なプトレッシンでは、DH23A細胞におけるアポトーシスを誘発することが示された。McCloskeyら、(1995)Cancer Res.,55,3233-3236;Tomeら(1997)Biochem.J.,328,837-854を参照。
【0023】
ポリアミンとこれらの実験から収集的な結果は、eIF-5Aの特異的なアイソマーの存在が、アポトーシスを誘発する役割を果していることを示唆している。特にそのデータは、アポトーシスに特異的なeIF-5Aのアイソマーが存在し、それがDHSにより活性化されるという見解と一致する。DHS反応がスペルミジンを必要とするという事実は、ポリアミンが、アポトーシス関連タンパク質分解の中核的実行剤としてのカスパーゼ活性化を惹起することを示している知見と、矛盾していない。Stefanelliら、(2000)Biochem.J.,347,875-880;Stefanelliら(1999)FEBS Lett.,451,95-98を参照。同様静脈において、ポリアミン合成の阻害剤が、アポトーシスを遅らせることができる。Dasら(1997)Oncol.Res.,9,565-572;Montiら(1998)Life Sci.,72,799-806;Rayら(2000)Am.J.Physiol.,278,C480-C489;Packhan & Cleveland(1994)Mol.Cell Biol.,14,5741-5747を参照。
【0024】
外在性ポリアミドが、アポトーシスを阻害も増強もさせるという知見は、適用レベルに依存してこれらが、eIF-5Aの活性化を誘発するDHS反応を阻害し、それによりアポトーシスを阻害するか、あるいは毒性である理由からアポトーシス誘発するいずれかが可能である事実により説明することができる。低濃度の外在性ポリアミンが、植物系及び動物系におけるアポトーシスをブロックするという知見が、低濃度なポリアミド及びこれらの類似体が、DHS反応の競合的阻害剤として作用するという事実と一致している。実際に、DHS反応のための基質である外因性スペルミジンでさえ、基質の阻害化を介して反応を阻害することになる。Jakusら(1993)J.Biol.Chem.,268,13153-13159を参照。
【0025】
しかしながら、全てのポリアミン及びこれらの類似体が高濃度で毒性であり、そしてアポトーシスを誘発することができる。これは、予測されるアポトーシスに特異的なeIF-5Aの異性体の活性化を阻害できるにもかかわらず、2つの理由のために生じる。第一には活性化されるeIF-5Aが、長い半減期を有す。Torrelioら、(1987)Biochem.Biophys.Res.Commun.,145,1335-1341;Dou & Chen(1990)Biochim.Biophys.Acta.,1036,128-137を参照。したがって、デオキシハイプシン・シンターゼ活性を阻害することから起こる活性化したアポトーシスに特異的なeIF-5Aの枯渇が、スペルミジンの毒性効果が要因としたアポトーシスをブロックする時間に起らない。第二として、ポリアミンが、デオキシハイプシン反応の競合阻害剤であり、そのため毒性濃度の反応でさえ完全にブロックされ得ない。
【0026】
本発明は、アポトーシスを誘発する直前に上限調節されたeIF-5A cDNAのクローニングに関する。このアポトーシスに特異的なeIF-5Aが、アポトーシスにより生ずる疾患状態に干渉する適切な標的と見られ、その理由としてそれが、アポトーシス経路に関与した下流イフェクター、及び転写因子の転写後の調節レベルに作用すると見られるからである。特にアポトーシスに特異的なeIF-5Aは、アポトーシスの下流イフェクター及び転写因子をコードするmRNAsを核から細胞質への転移を選択的に容易にし、ここで実質的に翻訳されると見られる。アポトーシスを開始する最終的決定が、内在性と外在性のプロ-及びアンチ-アポトーシス・シグナル間の相互作用を複合体からステム(stem)へと見られる。
【0027】
Lowe & Lin(2000)Carcinogenesis,21,485-495を参照。それが下流のアポトーシス・イフェクター及び転写因子の翻訳を容易にできるが、アポトーシス関連eIF-5Aが、アポトーシスに対するこれらシグナル間のバランスを傾斜させるとみられる。
【0028】
前記のように、抗ガン剤がアポトーシスを誘発し、そしてアポトーシス経路における変更が、薬剤により誘発される細胞死を減衰できることが十分確立された。Schmitt & Lowe(1999)J.Pathol.,187,127-137を参照。多くの抗ガン剤がp53を上限調節し、そしてp53を喪失した腫瘍細胞がこれらの薬剤への耐性を形成する。しかしながら投与量が十分あったとしても、p53に関係なくほぼ全ての化学療法剤が、アポトーシスを誘発でき、薬剤耐性腫瘍においてさえ、アポトーシスへの経路が、完全にブロックされないことを示している。Wallace-Brodeur & Lowe(1999)Cell Mol.Life Sci.,55,64-75を参照。このことは、アポトーシスeIF-5Aの誘発が、たとえそれが変異化遺伝子を正しく出来なくとも、p53依存性経路を迂回することができ、そして別の経路を増強させてアポトーシスを誘発できることを示唆している。
【0029】
アポトーシス関連eIF-5Aの誘発が、通常では周辺の細胞にほとんど影響を及ぼさないか全く影響をおよぼさないで、ガン細胞を選択的に標的とする可能性を有する。これが起こるという理由は、腫瘍細胞内にて発現される有糸分裂因子の原ガン遺伝子が、通常細胞に存在しないmRNAの特異的な種の形状に対し、アポトーシス・シグナルを提供するという理由である。Loweら、(1993)Cell,74,954-967;Lowe & Lin(2000)Carcinogenesis,21,485-495を参照。たとえば、p53の変異腫瘍細胞が野生型p53に戻れば、腫瘍細胞株及びゼノグラフィー(xenographs)における薬剤感受性の増大ばかりか、アポトーシスを直接誘発できる(Spitzら、1996;Badieら、1998を参照)。
【0030】
アポトーシスによるeIF-5Aの選択性が、核から細胞質へのこれらの転移を介在することで、下流のアポトーシス・イフェクター及び転写因子にmRNAの翻訳を選択的に容易にするという事実から起るものである。従って、効果を有するアポトーシスeIF-5Aのため、これらのイフェクター及び転写因子に向けたmRNAを、転写する必要がある。これらmRNAは、ガン細胞内に転写されるが周辺の通常の細胞に転写出来ない限り、アポトーシスeIF-5Aが、ガン細胞にアポトーシスを増強し、しかし通常の細胞にあったとしても影響を最少にすることが期待される。従って、アポトーシスに関係するeIF-5Aにより腫瘍細胞の潜在的アポトーシスの能力が回復すれば、腫瘍細胞を選択的に標的とすることによりガン患者が経験する毒性及び副作用を軽減させることができる。さらにアポトーシス・eIF-5Aを誘発させることは、抗がん剤への腫瘍細胞の応答性を増強する効力を有し、これにより薬剤耐性腫瘍に対するこれらの薬剤の効能を改良する。さらにこのことは、効能に対する抗がん剤の投与量を減少させ、そして患者への毒性を低減させることになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
本発明は、単離され及び/又は精製されたラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHSの核酸及びポリペプチド及びアンチセンス・オリゴヌクレオチド、及びアポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSの発現ベクターを提供する。さらに本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSを用いアポトーシスを調節する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0032】
本発明は、ラットの黄体から単離されたeIF-5Aをコードする全長cDNAの発見、及び特徴付けにある程度基づいており、それはアポトーシスに関与している(アポトーシスに特異的)。従って1例において、本発明は、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。さらに本発明により提供されるものは、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドのアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチドである。ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドが、ラットに対する特異的な何らかのポリペプチドを意味し、それが、細胞をアポトーシスする際異なる発現が行われ、そしてデオキシハイプシン・シンターゼにて触媒とされる前駆eIF-5Aの特異的に保守されたリシンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル成分を転移することによるデオキシハイプシン残基を形成し、そしてこの4アミノブチル成分をデオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによりヒドロキシル化しハイプシンを形成し、これによってeIF-5Aを活性化する。
【0033】
加えて本発明のラットアポトーシスに特異的なeIF-5A配列の核酸及びポリペプチドが、本明細書に提供されているガイダンス、及び当業者周知の技術を用い、他の細胞、組織、器官、又は動物からアポトーシスに特異的な核酸及びポリペプチドの単離に使用することができる。さらに本発明は、本発明のラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドをコードする核酸を検出するプライマー又はハイブリッドプローブとして適切な核酸分子を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、ヌクレオチド配列及びラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aから誘発される3’末端のアミノ酸配列を示す。
【図2】図2は、ヌクレオチド配列及びラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNAから誘発される5’末端のアミノ酸配列を示す。
【図3】図3は、ラット黄体アポトーシスに特異的なeIF-5A 全長cDNAのヌクレオチド配列を示す。
【図4】図4は、ヌクレオチド配列及びラットのアポトーシスに特異的なDHS CDNAから誘発される3’末端のアミノ酸配列を示す。
【図5】図5は、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(Accession number BC000751又はNM 001970,配列番号:3)とラットの黄体アポトーシスに特異的なeIF-5A CDNAの配向した全長ヌクレオチド配列である。
【図6】図6は、ヒトeIF-5Aのヌクレオチド配列(Accession number NM-020390,配列番号:4)とラットの黄体アポトーシスに特異的なeIF-5A CDNAの配向した全長ヌクレオチド配列である。
【図7】図7は、マウスeIF-5Aのヌクレオチド配列(Accession number BC003889)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5A CDNAの配向した全長ヌクレオチド配列である。マウスのヌクレオチド配列(Accession number BC003889)は、配列番号:5である。
【図8】図8は、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(Accession number BC000751又はNM 001970)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの配向した誘導された全長アミノ酸配列である。
【図9】図9は、ヒトeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(Accession number NM 020390)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの配向した誘導された全長のアミノ酸配列である。
【図10】図10は、マウスのeIF-5Aの誘導されたアミノ酸配列(Accession number BC003889)とラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの配向した誘導された全長アミノ酸配列である。
【図11】図11は、ヒトDHSのヌクレオチド配列(Accession number BC000333、配列番号:8)と、ラット黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAの配向した部分的長さのヌクレオチド配列である。
【図12】図12は、ラット黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNAの制限酵素地図である。
【図13】図13は、ラットのアポトーシスに特異的なDHS codaの部分長の制限酵素地図である。
【図14】図14は、ラットの黄体のアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNAの32P-dCTPにて標識化され、3'末端にてプローブされた全体RNAのノーザン・ブロット(図14A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図14B)である。
【図15】図15は、ラットの黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAの32P-dCTPにて標識化され、3'末端にてプローブされた全体RNAのノーザン・ブロット(図15A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図15B)である。
【図16】図16は、過排卵されたラット黄体のアポトーシスの程度を、PGF-2αの注射後に試験したDNAラダーリング試験示す。
【図17】図17は、PGF F-2αにてラットを処理した後、DNAラダリングを示しているアポトーシスのラット黄体から単離されたアガロース・ゲルによるゲノムDNAを示す。
【図18】図18は、過剰に排卵させたラット黄体の分散した細胞のアポトーシスの程度を、プロスタグランジンF-(PGF-2α)に暴露する前にスペルミジンにて処理されたラットにて試験したDNAラダーリング試験を示す。
【図19】図19は、過剰に排卵させたラット黄体のアポトーシスの程度を、スペルミジン及び/又はPGF-2αにて処理したラットにて試験したDNAラダーリング試験を示している。
【図20】図20は、ラット黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAにおける32P-dCTPで標識化した部分長さにてプローブされたラットゲノムDNAのサーザン・ブロットである。
【図21】図21は、エピトープ・タグ発現ベクターであるpHM6を示す(Roche Molecular Biochemicals)。
【図22】図22は、ラットの黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAにおける32P-dCTPで標識化した3'の未翻訳領域にてプローブされた血清を取り出すことによるアポトーシスの誘発後、COS-7細胞から単離された全RNAのノーザン・ブロット(図23A)、及び臭化エチジウム染色ゲル(図23B)である。
【図23】図23は、COS-7細胞の一過性にトランスフェクションのための方法を示すフローチャートである。
【図24】図24は、pHM6にてトランスフェクション後、COS-7細胞における外来タンパク質の一過性的発現のウエスタンブロットである。
【図25】図25は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図26】図26は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により一過性にトランスフェクトされた場合、カスパーゼ活性の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図27】図27は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、核の断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図28】図28は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、核の断片化の増大により反映されるアポトーシスの増強を示す。
【図29】図29は、COS-7細胞が、ラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて、全長含むpHM6により一過性にトランスフェクトされた場合、ホスファチジルセリン暴露にて反映されたアポトーシスの検出を示す。
【図30】図30は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて、全長含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、フォスファチジルセリンの暴露の増大にて反映されたアポトーシスの増強を示す。
【図31】図31は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、フォスファチジルセリンの暴露の増大にて反映されたアポトーシスの増強を示す。
【図32】図32は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、増強したアポトーシスを示す。
【図33】図33は、COS-7細胞が、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされた場合、Bcl-2の下限調節を示す。図31Aは、クーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット;図31Bは、相当するウエスタンブロットである。
【図34】図34は、プローブとしてc-Mycを用い、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをアンチセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞のクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット及び相当するウエスタンブロットである。
【図35】図35は、プローブとしてc-Mycを用いラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞のクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット、及び相当するウエスタンブロットである。
【図36】図36は、p53が、プローブとして使用される場合、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aをセンス配向にて全長を含むpHM6により、一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞のクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット,及び相当するウエスタンブロットである。
【図37】図37は、抗-[HA]-パーオキサダーゼ・プローブを使用した場合のCOS-7細胞におけるpHM6の全長ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aを発現するクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット及び相当するウエスタンブロット、あるいはp53が使用された場合、COS-7細胞におけるpHM6の全長ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aを発現するクーマシーブルー(Coomassie-buru)染色タンパク質ブロット及び相当するウエスタンブロットである。
【図38】図38は、ヒトeIF5A2(Genbank acession number XM 113401)の配列にてPKO細胞から単離された配向したヒトeIF5A2を示す。
【図39】図39は、一過性トランスフェクションの後、PKO及びPKO-E6細胞に起こるアポトーシスの割合を示すグラフである。PKO及びPKO-E6細胞を、pHM6-LacZ又はpHM6eIF5A1にて一過性トランスフェクトした。アクチノマイシンDで処理し、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトしたPKO細胞を、アクチノマイシンDで処理せず、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞と比較すると、アポトーシスが240%増大したことを示す。アクチノマイシンDで処理し、pHM6eIF5A1にてトランスフェクトしたPKO-E6細胞を、アクチノマイシンDで処理せず、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞と比較すると、アポトーシスが105%増大したことを示す。
【図40】図40は、一過性トランスフェクトの後、PKO6細胞に発生するアポトーシスの割合を示すグラフである。PKO細胞を、pHM6-LacZ、pHM6eIF5A1,pHM6 eIF5A2又はpHM6-切断eIF5A1にて一過性にトランスフェクトした。pHM6 eIF5A1にてトランスフェクトした細胞を、pHM6-LacZにてトランスフェクトしたコントロール細胞と比較してアポトーシスが25%増大したことを示す。
【図41】図41は、一過性トランスフェクトの後、PKO細胞に起こるアポトーシスの割合を示すクラフである。PKO細胞が、トランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ又はpHM6eIF-5A1にて一過性にトランスフェクトされたかのいずれかである。トランスフェクト効率を補正した後、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた60%の細胞が、アポトーシスであった。
【図42】図42は、一過性トランスフェクトの後、PKO6細胞のアポトーシスのフロサイトメトリー(flow sytometry analysis)分析結果を示す。PKO細胞は、トランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1,pHM6-eIF5A2又はpHM6-切断eIF5A1よる一過性にトランスフェクトされたかのいずれかである。表は、各ゲート下の面積に基づいて計算され、アポトーシスになった割合を示す。トランスフェクトされない細胞のアポトーシスのバックグラウンド、及びトランスフェクト効率用に補正した後、pHM6-eIF5A1によりトランスフェクトされた80%の細胞が、アポトーシスを示した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A2又はpHM6-切断eIF5A1よるトランスフェクトされた細胞が、アポトーシスのバックグラウンドのレベルのみ示した。
【図43】図43は、0.25μg/mlのアクチノマイシンDで、0,3,7,24及び48時間にて処理されたPKO細胞から抽出されたタンパク質のウエスタンブロットを提供する。表(panel)の上部は、一次抗体として抗-p53を用いたウエスタンブロットを示す。表(panel)の中間部は、一次抗体として抗eIF5A1を用いたウエスタンブロットを示す。表(panel)下部は、クーマシーブルー(Coomassie-blue)にて染色され、後で、等しく付加していることを証明するため化学蛍光により検出する抗-eIF5A1ブロットのため用いられる膜を示す。p53とeIF5A1が共に、アクチノマイシンDにて処理することにより下部調節される。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の核酸は、DNA,RNA,DNA/RNAの二本鎖、タンパク質-核酸(RNA),又はその誘発物質でよい。本明細書に用いられる核酸又はポリペプチドが、実質的に細胞物質のないか又は、化学的前駆物質又は他の化学物質のない場合、「単離された」又は「精製された」と言及される。単離された又は精製されたという用語が、膨大な数の他の配列の断片を含むライブリー種の調製を言及していないと理解すべきである。本発明の核酸又はポリペプチドが、均一性又は別の純度まで精製できる。精製レベルが意図される用途に依存する。重要な特質として他の成分が、かなりの量を存在していたとしても、調製にて核酸又はポリペプチドを所望する機能とすることができる。
【0036】
単離されたポリペプチドが、それを天然に発現する細胞から精製でき、そしてそれを発現するために変更された細胞から(組み換え型)、又は周知のタンパク質合成方法を用い合成された細胞から精製することができる。例えばタンパク質の組み換え生成には、アポトーシス誘発IF-5AかDHSのいずれかをコードする核酸分子を発現ベクターにクローニングすることが含まれる。その発現ベクターが宿主内に誘発され、そしてそのタンパク質が宿主内にて発現される。次にそのタンパク質を、標準的タンパク質精製技術を用い、適切な精製方法のいずれかにより細胞から単離することができる。
【0037】
おそらく本発明のラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドをコードする単離された核酸が、配列番号:1のヌクレオチド配列を有し、そして本発明の精製されたポリペプチドが、配列番号:2のアミノ酸配列を有す。さらに本発明のラットアポトーシスに特異的なeIF-5Aの核酸及びポリペプチドが、配列番号:1と配列番号:2のそれぞれに実質的に同一か相同する配列、及び機能的な誘発物質又はその変異体を有する配列を包含する。
【0038】
本明細書に用いられるように、「配列の実質的同一性」又は「実質的相同性」という語句が、ある配列が、他の配列と実質的に構造又は機能的に同一であることを呈示するために用いられる。実質的に同一の配列や実質的な相同性を有する配列間の何らかの構造的又は機能的な相違を最少限にすること、すなわちこれらが、所望される用途に指示された機能への配列の能力に影響を及ぼさないことである。種々の相違は、たとえば違った種の間における使用コドンの遺伝的な変異化に起因するとみてよい。2以上の違った配列間において、かなりの量の配列の重なりや類似性がある場合、又は異なる配列が、配列の長さや構造が違ったとしても類似した生理特性を呈する場合、構造的相違が最少であると考えられる。たとえばこうした特徴が、明確な条件下にてハイブリダイズができ、又はタンパク質の場合、免疫的な交差反応性、類似する酵素活性などを含む。技術を有する開業医が、技術的に周知の方法でこれらの各特徴を容易に決定することができる。
【0039】
さらに、配列におけるこれらの間における配列の類似性が、少なくとも70%以上、より好ましくは80%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは約95%以上有する場合、2つのヌクレオチド配列が、「実質的な相補」である。活性と機能的に関連性のあるポリペプチドの部分との間の類似性に少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは90%、最も好ましくは少なくとも95%有するならば、2つのアミノ酸配列が実質的に相同である。
【0040】
2つの配列における同一性の割合を決定するため、上記配列が、最適な比較目的のために(たとえばギャップ(gaps)が、一次及び二次アミノ酸又は核酸配列の一方又は両方に、最適な配列構成のため導入されるが、相同性のない配列が、比較目的のため無視してもよい)構成される。好ましい例において、基準配列の長さの少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%以上が、比較目的のため配向(aligned)される。次に該当するアミノ酸の位置又はヌクレオチドの位置にアミノ酸残基又はヌクレオチドを比較する。第一の配列の位置が、第二の配列の該当する位置として同じアミノ酸残基又はヌクレオチドより占められる場合、上記分子はその位置に同一である(本明細書によりアミノ酸又は核酸の「同定(identity)」は、アミノ酸又は核酸の「相同性(homology)」と同一である。2つの配列における同一割合が、配列により共有される同一位置の数の関数であり、2つの配列の最適な配向(alignment)のため導入する必要があるギャップ(gaps)の数、各ギャップ(gaps)の長さを考慮する。
【0041】
配列の比較、及び2つの配列間の同一性及び類似性の割合の決定を、数学的アルゴリズムを用いて行うことができる(Computational Molecular Biology,Lesk,A.M.,ed.,Oxford University Press,New York,1988;Biocomputing:Informatics and Genome Project,Smith,D.W.,ed.,Academic Press,New York,1993;Computer Analysis of Sequence Data,Part 1,Griffin,A.M.,and Griffin,H.G.,eds.,Humana Press,New Jersey,1994;Sequence Analysis in Molecular Biology,von Heinje,G.,Academic Press,1987;and Sequence Analysis Primer,Gribskov,M.and Devereux,J.,eds.,M Stockton Press,New York,1991を参照)。
【0042】
本発明の核酸及びタンパク質の配列が、「キー配列(query sequences)」として使用され、配列データベースに対して検索が行われ、たとえば他のファミリー・メンバー又は関係する配列を同定できる。こうした検索が、NBLAST及びXBLASTプログラム((version 2.0)of Altschulら、(1990)J.Mol Biol.215:403-10を参照)を用いて行うことができる。BKASTヌクレオチドの検索は、NBLASTプログラムにより行うことができる。BKASTタンパク質の検索が、XBLASTプログラムにより行われ、本発明のタンパク質に相同なアミノ酸配列を得ることができる。比較目的のため隙間(gapped)を形成した配列構造を得るために、ギャプド・ブラスト(Gapped BKAST)が、Altschulら、(1997)Nucleic Acids Res.25(17):3389-3402、に記載されたように利用することができる。
【0043】
BLAST及びギャプド・ブラスト(Gapped BKAST)を利用する場合、各プログラムのデフォルト・パラメータ(たとえばXBLAST及びNBLAST)を、使用することができる。
【0044】
核酸の「機能的誘発体」と言う用語は、遺伝子又は核酸配列の相同性又は類似性の意味として、本明細書に用いられる。機能的誘発体は、所定遺伝子の機能の少なくとも1部を保持し、それが本発明に従って利用することができる。本明細書に記載のアポトーシスに特異的なeIF-5Aのポリペプチドの「機能的誘発体」は、少なくとも1部のアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性、又はアポトーシスに特異的なeIF-5Aと特異的抗体との免疫的交差反応を保持するアポトーシスに特異的なeIF-5Aの断片、変異体、類似物質又は化学的誘発体である。アポトーシスに特異的なeIF-5Aのポリペプチドの断片は、いずれかのサブセット分子を言及している。
【0045】
さらに機能変異体が、機能が変化しないか、有意に変化しなくなる類似アミノ酸の置換体を含む。機能的に必須アミノ酸が、部位特異的変異誘発法、又はアラニン走査変異誘発法(alanine-scanning mutagenesis)(Cuninghamら(1989)Science 244:1081-1085を参照)など、技術的に周知の方法により同定することができる。後者の方法により、分子中のあらゆる残基に単一のアラニン変異体が誘発される。次に得られた変異体の分子を、キナーゼ活性などの生物活性として、又はin vitroの増殖活性などのアッセイにおいて試験される。さらに結合相手/基質を結合するために必須である部位を、結晶化、核磁気共鳴法又は光親和性標識法(Smithら,(1992)J.Mol.Bio.224:899-904;de Vosら,(1992)Science 255:306-312)を参照)など構造分析により決定することができる。
【0046】
「変異体」は、1又は複数の置換されたヌクレオチドを有するヌクレオチドの置換変異体など、遺伝子全体又はその断片のいずれか実質的に同様の分子を言及するが、特定遺伝子とハイブリダイズするか、又は天然のDNAとハイブリダイズするmRNA転写物をコードする能力を維持している。「相同性」は、異なる動物遺伝子又は種からの断片又は変異体の配列を指している。「類似体(analog)」は、全分子、変異体又はその断片に実質的に類似するか、又はそれに対し機能する非天然の分子を指している。
【0047】
変異体ペプチドは、天然に発生するペプチド及び技術的に周知な方法により製造されたものを含む。こうした変異体は、本明細書記載のような分子技術及び配列情報を用い、同定/作成を容易に行うことができる。さらにこうした変異体は、本発明のeIF-5A又はDHSタンパク質に対し、配列及び/又は構造的相同性に基づいて他のタンパク質との区別を容易にすることができる。タンパク質が機能的変異体又は非機能的変異体であったとしても、相同性/同一性の存在する程度が、主にパラログ・ファミリー(paralog family)に存在する分散量、及びオルソログ間の進化する距離に基づくことになる。
【0048】
本発明の非天然に発生するeIF-5A又はDHSの変異体を、組み換え技術を用い容易に生成できる。こうした変異体が、タンパク質のアミノ酸配列における欠失、付加、及び置換を含むがそれに限定されない。たとえば、一分類の置換体が保守されたアミノ酸置換である。こうした置換体は、同じ特徴の別のアミノ酸によりタンパク質中の所定のアミノ酸を置換するものである。典型的に保守置換体と見られる物には、脂肪族Ala,Val,Leu及びIleの間にて一方から他方への置換物;ヒドロキシル残基SerとThrとの交換;酸性残基AspとGluとの交換;アミド残基AsnとGlnとの間の置換;塩基性残基LysとArgとの交換;芳香族残基Pheとの間の置換などがある。アミノ酸の変化が、表現型サイレントである可能性に関する指針が、Bowieら、Science 247:1306-1310(1990)に見出される。
【0049】
選択肢としてであるが、より好ましくは本発明のラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチドをコードする核酸は、配列番号1の物と相補的であるヌクレオチド配列と有意に高いストリンジェントな条件下にてハイブリダイズする。
【0050】
明細書に使用される用語「ハイブリット化(hybridization)」は、プローブ配列及び標的配列の特性に依存して当業者に容易に明らかになるよう、適切なストリンジェントな条件下にて核酸のハイブリット化の意味として、一般的に用いられる。ハイブリット化及び洗浄の条件が、技術的に良く知られ、インキュベート時間、温度及び/又は溶液のイオン強度を変えることにより所望のストリンジェントな条件を調節することが、容易に行われる。Sambrook,J.ら、molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold Spring Harbour Press,Cold Spring Harbor,New York,1989を参照。
【0051】
選択される条件が、ハイブイット化されている配列の長さ、特にプローブ配列の長さ、核酸におけるG-Cの相対的含有量、及び組み合わせミスの許容量にて求められる。有意的に低い相補度を有する遺伝子鎖間を部分的にハイブリット化が所望される場合、ストリンジェントの低い条件が好ましい。完全か、ほぼ完全な相補性が所望される場合、高いストリンジエントな条件が好ましい。典型的に高いストリンジエントな条件に対し、ハイブリット化溶液には、6XS.S.C.,0.01MEDA,1Xデンハルト溶液(Diehard's solution)及び0.5%SDSが含まれる。ハイブリット化は、約68℃にてクローン化されたDNAの断片に対して約3乃至4時間、そして全真核細胞のDNAに対し約12乃至16時間行われた。ストリンジエントが有意に低い場合、ハイブリット化の温度を、二重鎖の融解温度(Tm)より低い約42℃に低下させた。そのTmでは、G-Cの含有量及び二重鎖の長さ、並びにその溶液のイオン強度の関数であることが知られている。
【0052】
本明細書に用いられているように、DNA又はRNAの「該当する部分にハイブリダイズ」という語句は、ハイブリダイズする分子、たとえば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、又はいずれかのヌクレオチド配列(センス又はアンチセンスに配向)が、適切な条件下にてハイブリット化を行うため、ほぼ同じサイズで、そこに類似性が十分ある配列を有する他の核酸分子の配列を認識し、そしてそれにハイブリダイズすることを意味する。たとえばヌクレオチド長100のセンス分子が、2つの配列間で約70%以上の配列の類似性がある限り、核酸配列の約100ヌクレオチド部分の認識し、それにハイブリダイズすることになる。「該当する部分」が、それにハイブリダイズする分子より有意に小さくても大きくても、たとえば20-30%の大小、好ましくは12-15%以下の大小でも良い。
【0053】
さらに加えてポリペプチドの機能的変異体が、機能的に変化しないか、実質的に変化しない類似したアミノ酸の置換を含むことができる。機能として必須アミノ酸を、部位特異的な変異誘発法、又はアラニン走査変異誘発法(alanine-scanning mutagenesis)(Cuninghamら(1989)Science 244:1081-1085を参照)など技術的に知られた方法により同定することができる。後者の方法が、分子のあらゆる残基に単一アラニンの変異体を導入する。その後得られた変異分子を、生物活性又はアッセイのために試験する。
【0054】
たとえばアポトーシスに特異的なeIF-5Aの類似体(analog)とは、非天然のタンパク質又は全タンパク質又はその断片のいずれかに擬似的ペプチドとして実質的に類似することを指している。アポトーシスに特異的なeIF-5Aの化学的誘発体が、通常でないある領域のペプチド又はペプチド断片としての付加的な化学成分を含む。修飾化が、選択された側鎖又は末端の残基との反応を可能にする有機誘発化剤と、ペプチドの標的化されたアミノ酸残基とを反応させることにより、ペプチド又はその断片に導入することができる。
【0055】
ラットの黄体から単離されたアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードする全長cDNAの最初の発見及び特徴付けにより、ラットの黄体から単離され、アポトーシスに関与するDHSをコードするcDNAクローンの部分的長さの発見及び特徴付けを導き出す。従って付加的な例において、本発明は、ラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸を提供する。さらに提供されるものは、ラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドのアミノ酸配列を含む、精製されたポリペプチドである。ラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドが、ラットに対し特異的な何らかの適切なポリペプチドを意味し、それが、アポトーシスする細胞に異って発現され、そして不活性eIF-5Aの特異的に保守されるリシンのαアミノ基にスペルミジンの4-アミノブチル成分を転移させることにより、デイキシハイプシン残基の形成を触媒し、デイキシハイプシンを形成し、それによりeIF-5Aを活性化させる。
【0056】
好ましくは、本発明におけるラットのアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドをコードする単離された核酸が、配列番号:22のヌクレオチド配列を有し、そして本発明の精製されたポリペプチドが、配列番号:23のアミノ酸配列を有する。さらに本発明のラットのアポトーシスに特異的なDHS核酸及びポリペプチドが、各配列番号:22及び配列番号:23に実質的に同一又は相同性を有する配列、及び前記の機能的な誘発及びその断片を有する配列を含む。選択肢としてさらに好ましくは、前記本発明の単離された核酸も又配列番号:22の相補鎖と高いストリンジェントな条件下にてハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する。
【0057】
本明細書に記載されたラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A配列の核酸及びポリペプチドにおける例のように、本発明において、ラットのアポトーシスに特異的なDHS配列の核酸及びポリペプチドを、ヒトを含む他の動物からアポトーシスに特異的なDHS配列の核酸及びポリペプチドを単離するため使用することができる。動物及びヒトからこうしたDHS配列を単離することが、技術的に周知な方法及び本明細書に提供されるガイダンスを用い、少なくとも80%交差している種の類似した配列に基づいて行うことができる。さらに本発明は、本発明におけるアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドをコードする核酸を検出するため、プライマー又はハイブリット化プローブとして適切である核酸分子を提供する。
【0058】
アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSが、アポトーシスを基本とする疾患過程を含む、アポトーシスを調節するための適切な標的であり、その理由が、アポトーシス経路に関係する下流のイフェクター及び転写因子の転写後の調節を作用できることである。従ってさらに本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を調節する薬剤を、細胞に投与することにより、細胞におけるアポトーシスの調節方法を提供する。なおアポトーシスに特異的なeIF-5A機能だけ、アポトーシスに特異的なDHS機能だけ、又はアポトーシスに特異的なeIF-5AとDHSの両方の機能を調節できることが、当業者にて理解されるであろう。
【0059】
アポトーシスは、細胞におけるアポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能の通常レベルを、いずれか適切な変更によって調節することができる。本明細書に意図されるように、修飾又は変更が、完全か又は部分的に可能であり、細胞におけるeIF-5A及び/又はDHS機能の転写又は翻訳の制御の変化、あるいはそれを変更させる他の変化を含むことができる。
【0060】
アポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHS機能が、何らかの活性を意味し、それが、DHSにより触媒される前駆体eIF-5Aの特異的に保守されたリシンのα-アミノ基に、スペルミジンの4-アミノブチル成分を転移することによりデオキシハイプシン残基の形成し、その4-アミノブチル成分をデオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによりヒドロキシル化しハイプシンを形成し、それによりeIF-5Aを活性にする。
【0061】
本発明の1例において、薬剤がアポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を阻害し、それによりアポトーシスを阻害することができる。アポトーシスを阻害することは、たとえば細胞の縮重、クロマチンの縮合、核の断片化、及び膜の泡状化などアポトーシスを十分に明確にされた成形的特性を特徴付けるいずれか又は全における強度、及び/又は数のなんらかの減少、及び/又は開始における遅延を意味する。
【0062】
アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を阻害できる1つの薬剤が、アンチセンス・オリゴヌクレオチドである。好ましくはアンチセンス・オリゴヌクレオチドが、1部のアポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドを有する。アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの適切な核酸配列が、技術的に知られている。例えば配列番号:1,3,4,5,11,15,19,20及び21(アポトーシスに特異的なeIF-5A核酸配列)、配列番号:6及び8(アポトーシスに特異的なDHS核酸配列)、配列番号:12及び16のeIF-5A(アポトーシスに特異的ポリペプチド配列)、及び配列番号:7(アポトーシスに特異的なDHSポリペプチド配列)、又はその1部として、適切な配列を提供する。他の適切な配列が、本明細書に記載された方法によりプローブとして周知の配列を用い見出すことができる。
【0063】
従ってさらに本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はアポトーシスに特異的なDHSポリペプチドの1部をコードするアンチセンス・オリゴヌクレオチド、又はその相補鎖を提供する。本発明のアンチセンス・オリゴヌクレオチドが、RNA又はDNAたとえば、cDNA、ゲノムDNA、又は合成RNA又はDNA等のRNA又はDNAが、可能な形態である。DNAは、2本鎖又は1本鎖で良くそして例え1本鎖であったとしても、コードする鎖又はコードしない鎖のいずれでもよい。標的核酸と低重合体化合物との特異的ハイブリット化が、核酸の通常な機能と干渉することになる一般的に「アンチセンス」として言及されている。干渉されるDNA機能が複製及び転写を含む。干渉されるRNA機能は、たとえばタンパク質翻訳部位にRNAの転移、RNAからタンパク質の翻訳、1又は複数のmRNA種を生成するRNAのスプライシング、及びRNAに接合(engaged)できるか又はRNAにより増強できる触媒的活性など全ての機能を含む。こうしたアンチセンス・オリゴヌクレオチド全体の効果は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHSの発現、及び/又は産生された活性化アポトーシスに特異的なeIF-5Aの量を阻害することである。
【0064】
選択肢として、アポトーシスに特異的なDHSによるアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を、DHS酵素反応を阻害する化学的薬剤を投与することにより阻害することができる。たとえば、PGF-2α(図18-19)を注入することにより、アポトーシスを誘発後DHS反応の阻害剤であるスペルミジンにて動物を処理した場合、アポトーシスを反映するDNAラダーリングの開始をラットの黄体において遅延する。Jakusら、(1993)J.Biol.Chem.268:13151-13159を参照。
【0065】
さらに、アポトーシスに特異的なeIF-5A・DNA,RNA又はタンパク質を変性させるか、又はアポトーシスに特異的なDHS・DNA,RNA又はタンパク質を変性させ薬剤を加えることにより、アポトーシスに特異的なDHSによるアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性を阻害し、アポトーシスを阻害又は実質的に減少させることができる。本発明の別の例において、内在性哺乳動物のアポトーシスに特異的なDHS、アポトーシスに特異的なeIF-5A、又はその両方の発現を阻害することは、リボザイムの使用を介して影響される。適切な薬剤の例には、アポトーシスに特異的なDHSによりアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を阻害する薬剤、デオキシハイプシン・ヒドロキシラーゼによりアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を阻害する薬剤、アポトーシスに特異的なDHSの転写及び/又は翻訳を阻害する薬剤、アポトーシスに特異的デイキシハイプシン・ヒドロキシラーゼの転写及び/又は翻訳を阻害する薬剤、及びアポトーシスに特異的なeIF-5Aの転写又は翻訳を阻害する薬剤が含まれる。たとえば、アポトーシスに特異的なDHSによりeIF-5A活性化を阻害する薬剤は、スペルミジン、1,3-ジアミノ-プロパン、1,4-ジアミノ-ブタン(プトレシン)、1,7-ジアミノ-ヘプタン、又は1,8-ジアミノ-オクタンである。
【0066】
さらに細胞のアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードする遺伝子を不活性化することによりアポトーシスに特異的なeIF-5Aを阻害することが可能である。細胞の遺伝子を欠失する、又は遺伝子内の欠失又は変異化を導入することで、こうした不活性化が起こり、それにより遺伝子を不活性化させる。さらにその遺伝子を、内在性アポトーシスに特異的なeIF-5Aタンパク質の発現が起こらないように、別のDNA断片をその遺伝子に挿入することにより、不活性化させることができる。さらに、細胞におけるアポトーシスに特異的なDHSをコードする遺伝子を不活性にすることにより、アポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を阻害することができる。真核細胞の遺伝子内に欠失、挿入などの変異化を導入する方法は、技術的に周知であり、たとえば米国特許番号5,464,764を参照。細胞における遺伝子の変異化に有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを、技術的に周知な方法及び本明細書に提供されるガイダンスにより作成することができ、たとえばアンチセンス・オリゴヌクレオチドを作成及び発現するための有益な方法が、細胞における遺伝子を変異化するために有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターの作成に使用できることである。
【0067】
さらに細胞におけるアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードする遺伝子の発現を阻害することにより、アポトーシスに特異的なeIF-5Aの発現を阻害することが可能である。こうした不活性化が、たとえば同時阻害(cosuppression)が起こるように、細胞内にアポトーシスに特異的なeIF-5Aをコードするヌクレオチド配列を導入することにより、同時阻害(cosuppression)を介して実現することができる。さらに、同時阻害(cosuppression)を介し細胞におけるアポトーシスに特異的なDHSをコードする遺伝子の発現を阻害することで、アポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性を阻害することが可能である。同時阻害(cosuppression)として有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターが、技術的に周知な方法及び本明細書に提供されるガイダンスにより作成でき、たとえばアンチセンス・オリゴヌクレオチドの作成及び発現に有益な方法が、同時阻害(cosuppression)として有益なオリゴヌクレオチド及び発現ベクターを作成するために使用することができる。同時阻害(cosuppression)のための方法は、技術的に知られており、たとえば、米国特許第5,686,649を参照。
【0068】
阻害による1つの結果(例えば、アンチセンス、変異化又は同時阻害(cosuppression)を介し)は、内在的に翻訳可能なアポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHSをコードするmRNAの量が減少することである。その結果生成されるアポトーシスに特異的なDHSタンパク質量が減少されることにより、活性化されたeIF-5A量が減少され、更にアポトーシスに特異的タンパク質の翻訳を減少させる。従って新規のタンパク質の合成が求められることから、アポトーシスは、阻害されるか又は遅延される。
【0069】
本発明の別の例において、薬剤が、アポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHSの機能を誘発することにより、アポトーシスを誘発することができる。アポトーシスの誘発は、強度又は数の増大、又はたとえば細胞の縮重、クロマチンの縮合、核の断片化、及び膜の水泡などの十分に明確にされたアポトーシスを特徴付ける形態的特性のいずれか又は全ての開始を増強することを意味する。
【0070】
アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHS機能を誘発する適切な薬剤を使用することができる。不活性及び活性な形態のポトーシスに特異的なeIF-5Aを投与できることは、当業者に理解されよう。もし不活性な形状、又はハイプシンの未修飾形状にて投与される場合、天然のアポトーシスに特異的なDHSが、eIF-5Aを活性化することになる。アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする多くの適切な核酸配列が、技術的に知られている。たとえば、配列番号:1,3,4,5,11,15,19,20,及び21(アポトーシスに特異的なeIF-5A核酸配列)、配列番号:6及び8(アポトーシスに特異的なDHS核酸配列)、配列番号:12及び16 eIF-5A(アポトーシスに特異的ポリペプチド配列)、及び配列番号:7(アポトーシスに特異的なDHSポリペプチド配列)、又はその1部分から、適切な配列が提供される。他の適切な配列は、本明細書に記載された方法によりプローブとして周知な配列を用い見出すことができる。
【0071】
たとえば、組み換え型産生ポリペプチドを含む、むきだしの核酸(オリゴヌクレオチド又はプラスミドなどのむきだしのDNAベクター)、又はポリペプチドを、細胞に投与することができる。込み換え型産生ポリペプチドは、eIF-5A又はDHSタンパク質をコードするDNA配列が、適切な発現ベクター内に配置されたことを意味し、それが以下に詳細に記載されている。宿主細胞が、発現ベクターにてトランスフェクトされ、その後所望のポリペプチドを生成する。次にそのポリペプチドを宿主細胞から単離する。組み換え型アポトーシス誘発eIF-5Aタンパク質を、たとえばChinese Hamster Ovary(CHO)細胞にて産生し、そして当業者により組換え型DHSを用いて活性化させることができる。Wangら、(2001)J.Biol.Chem.276,17541-17549;Erikssonら、(2001)Semin.Hematil.,38,24-31を参照。さらにこのポリペプチドを合成することができ、それが周知のタンパク質合成方法を用い合成される。
【0072】
ポリペプチドの摂取は、たとえば広範囲な細胞内への摂取に介在する炭疽症から誘発されるリガンドを用い容易に行うことができる。Liuら、(2001)J.Biol.Chem.,276,46326-46332を参照。さらに組み換え型タンパク質を、リポソームを用いて哺乳動物の標的細胞、組織、及び器官に投与することができる。タンパク質を閉塞するリポソームが、静脈内にて投与される。標的化が、リポソームに特定細胞リセプターへのリガンドを組み入れることにより行うことができる。Kaneda,Adv Drug Delivery Rev 43:197-205(2000)を参照。
【0073】
アポトーシスに特異的なeIF-5A又はDHS機能を誘発できる好ましい薬剤の1は、発現ベクターである。従って本発明は、アポトーシスに特異的なeIF-5Aポリペプチド及び/又はDHSポリペプチドをコードする核酸に操作的に結合したプロモータを有する発現ベクターを提供する。本発明の発現ベクターが、RNA又はDNA、たとえばcDNA、ゲノムDNA、並びに合成によるRNA又はDNAの形状で良い。DNAは2本鎖、又は1本鎖にて可能であり、たとえ1本鎖であったとしても、コード鎖又は非コード鎖のいずれでも可能である。どれか適切な発現ベクター(Pouwelsら、Cloning Vectors:A Laboratory Manual(Elsevior,N.Y.:1985)を参照)を使用することができる。好ましくはその発現ベクターが、アポトーシスに特異的(関連する)なeIF-5Aポリペプチド、及び/又はアポトーシスに特異的(関連した)なDHSポリペプチドをコードする核酸配列に操作的に結合するプロモータ配列を有する。
【0074】
発現ベクター内にて所望の核酸及びプロモータは、そのプロモータが、核酸の発現を誘発できるように操作的に結合される。核酸が発現される条件にて何か適切なプロモータを使用することができる。こうした適切なプロモータの例には、種々のウイルスのプロモータ、真核細胞のプロモータ、及び構造的に活性なプロモータが含まれる。こうした操作による結合が維持される限り、発現ベクターが、複数の核酸(たとえば、アポトーシスに特異的なeIF-5A及び/又はDHSの両方をコードする核酸)を含むことができる。発現ベクターには、ポリアデニール化配列、リボソーム・エントリー部位、転写調節要素(たとえばエンハンサー、サイレンサーなど)、ベクターの安定性や転写、あるいは細胞内(たとえば放出シグナル、リーダなど)の所望の転写の翻訳又はプロセシングを高める他の配列、又は他のいずれかの適切な要素などの所望による他の要素が含まれる。
【0075】
発現ベクターが、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、レトロウイルス、又はレンチウイルスなどのウイルスから誘発される。本発明の発現ベクターが、宿主細胞内でトランスフェクトされ、それが、バクロウイルス(baculovirus)系(Luckowら、Bio/Technology,6,47(1988)を参照)、及び293,COS-7,C127,3T3,CHO,HeLa,BHKなどの確立された細胞株を含む細菌種、哺乳動物又は昆虫の宿主細胞を含むが、それに限定されない。
【0076】
プラスミド及び他のウイルス・ベクター(たとえば、ヘルペス単形ウイルス)と異なり、アデノウイルス・ベクターが、心筋層、血管内皮、及び骨格筋などの心臓血管関連部位に高レベルのタンパク質を発現し、分裂、非分裂の両方の細胞に遺伝子の移送が行われることから、アデノウイルス・ベクターが有意に好まれる。さらにその遺伝子が、エピクロモソマル(epichromosomal)位置におけるアデノウイルス・ベクター機能により移送され、さらに宿主ゲノムの必須部位に移送遺伝子を挿入し、不適切な危険性をほとんどなく輸送される。さらに所望されるアデノウイルス・ベクターが、ウイルスの複製に求められる少なくとも1つの遺伝子機能に欠陥がある。好ましくは、アデノウイルス・ベクターが、アデノウイルス・ゲノムのE1,E2及び/又はE4領域の特に重要なゲノム機能の少なくとも1つに欠陥がある。より好ましくはそのベクターが、アデノウイルス・ゲノムのE3領域の少なくとも1部にさらに欠陥がある(たとえば、an XbaI deletion of the E3 regionを参照)。
【0077】
組み換え型アデノウイルスが、培養培地にウイルスを単に加えることにより、培養細胞に導入することができる。宿主の動物/ヒトへの感染が、血流又は所望の組織にウイルス粒子を直接注入することにより行うことができる。血清中のウイルスの半減期を、リポソーム(たとえばLipofectin,Life Technologies)又はポリエチレン・グリコールと、ウイルスとを複合することにより、延長することができる。アデノウルス・ベクターが、通常ウイルス線維タンパク質のノブ領域とコクサッキーウイルス及びアデノウイルス・リセプター、CARとの間の相互作用を介して細胞に入る。ウイルス・ベクターが、特定細胞リセプターに特異的リガンドを発現させるためウイルスを遺伝子操作することにより、特定細胞に対し、又はCARを発現しない細胞に対して対象とすることができる。
【0078】
別の例において、内在性のアポトーシスに特異的なeIF-5A、又はアポトーシスに特異的なDHS、又はその両方の転写を、化学物質を用い化学的上限調節をすることにより、又はアポトーシスに特異的なeIF-5Aの活性化を化学的に強化することにより、アポトーシスを開始又は増強することができる。こうした例の1において、PGF-2αを、動物/ヒトのガン細胞又は腫瘍に、DHS及びeIF-5Aの転写物を上限調節まで投与することができる。
【0079】
アポトーシスに特異的なeIF-5Aが、アポトーシスに基づく疾患過程を含む、その理由がアポトーシス経路に関与する下流のイフェクター及び転写因子の転写後の調節に作用すると考えられる。アポトーシスに特異的なeIF-5Aとアポトーシスに特異的なDHSの単独か、組み合わせのいずれかにて調節する本発明の方法は、アポトーシスの誘発又は増強することになるか、又はアポトーシスとなることが出来ない要因とされるか、要因とするか、そうでなければそれと関連した病因を有する疾患を、治療及び防止するための新たな方法及び組成物を形成する動物細胞にて行うことができる。
【0080】
多くの重要なヒトの疾患は、アポトーシス制御における異常により引き起こされる。これらの異常性は、細胞数の病理的な増大(たとえば、ガン)、又は損傷による細胞の喪失(例えば変性疾患)のいずれかにて起こる。限定されない例として、本発明の方法及び組成物が、以下のアポトーシス関連疾患及び不全を防止又は治療するため使用される、すなわち神経細胞/神経細胞変性不全(たとえばアルツハイマー、パーキンソン、ハンチントン、筋萎縮側索硬化症(Lou Gehrig's,Disease))、自己免疫不全(たとえば、慢性間接リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)、多発性硬化症)、デユシェンヌ筋ジストロフィ(DMD)、運動性神経細胞不全、虚血性疾患、慢性心臓不全、発作、乳児脊髄筋萎縮、急性心停止、腎機能不全、アトピー性皮膚炎、敗血及び敗血発作、AIDS、肝炎、緑内症、糖尿病(型1及び型2)、喘息、色素性網膜症、骨多孔症、異種移植片の拒絶、及び火傷による障害に使用される。
【0081】
本発明の方法は、それぞれ悪性腫瘍細胞の殺傷か腫瘍の進行を阻害するに充分な量で、悪性腫瘍細胞を有するか腫瘍に罹っている動物に対する療法的治療に使用することができる。これを実現する十分な量が、治療としての有効な投与量として定義される。これを使用するための有効量が、疾患の重篤度、及び動物自身の一般的な免疫系症状に依存することになる。
【0082】
腫瘍細胞の増殖を阻害することは、悪性腫瘍の進行の防止又は減少、たとえば腫瘍の増殖、浸襲性、転移及び/又は再発を防止又は減少させることを意味する。本発明の方法は、たとえば、胸部、心臓、肺、小腸、結腸、脾臓、腎臓、膀胱、頭部及び頚部、卵巣、前立腺、脳、すい臓、皮膚、骨、骨髄、血液、胸腺、子宮、精巣、頚部管又は肝臓を含む何か適合する腫瘍を治療するために使用することができる。動物、好ましくは哺乳動物、そしてより好ましくはヒトが、本発明の組成物及び方法を用い治療できることである。従って本発明の方法は、in vitro、ex vivo、又はin vivoにて行うことができる。
【0083】
さらに投与計画は、動物の疾患状態や症状で変化し、そして一回の薬物適用量又は連続注入から1日当たり複数の投与(たとえば4-6時間毎)までの典型的な範囲となるか又は治療及び動物の症状により明示されるかである。しかしながら本発明が、何か特定の投与量に限定されないことを留意すべきである。
【0084】
本発明において、何か適切な方法又は経路が、たとえば経口、静脈内、腹腔内、皮下又は筋肉内への投与のため使用することができる。投与されるアンタゴニストの用量は、たとえば投与される分子の型、治療される腫瘍のタイプ及び重篤度、及び投与する経路を含む多くの要因に依存する。しかしながら本発明は、何か特定方法又は投与の経路に限定されないことを強調すべきである。
【0085】
別の1例において、本発明の方法は、1又は複数の従来の治療と組み合わせて使用することができる。たとえば適切な抗腫瘍剤は、化学療法剤又は放射線などを使用することができる。さらに別の例において本発明の方法は、たとえばサイトカイン(たとえばIL-10及びIL-13)又は他の免疫刺激剤など1又は複数のアジュバントと組み合わせ使用することができる。
【0086】
さらに別の例において、アポトーシス関連疾患の診断は、アポトーシスに特異的なeIF-5A、及び2つが構造的に相同的するが、カルボキシル末端にて違う、異なるプロモータによって異なる位置から転写される点にて、アポトーシスに特異意的eIF-5Aと異なる増殖するeIF-5Aを用いて行うことができる。本発明の診断方法が、所定細胞に存在するeIF-5Aの増殖量と、同一細胞に存在するアポトーシスに特異的なeIF-5A量とを比較することを含む。通常に機能をしている間、細胞が、アポトーシスに特異的なeIF-5A(又はeIF5A1として本明細書に言及)より増殖するeIF-5A量(又はeIF5A2として本明細書に言及)が有意に多く有することになる。しかしながら幾つかのガン細胞において、通常の調節機構がなくなり、そして増殖するeIF-5A量と比較してアポトーシスに特異的なeIF-5Aの量が変更される。これは、細胞が何か表現型を変化する前に、ガン腫瘍として細胞を有効に診断することができる。
【0087】
さらに別の例において、アポトーシスに特異的なeIF-5Aと増殖するeIF-5Aとの比が、薬剤のスクリーニングに使用することができる。さらにこうした方法は、所定細胞に存在する増殖するeIF-5A量と、同一細胞に存在するアポトーシスに特異的なeIF-5A量との比較を含む。アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対する増殖したeIF-5Aの通常の比率は、薬剤候補と細胞を接触させた後、アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対し増殖したeIF-5Aとの比率と比較すべきである。接触した後アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対し増殖したeIF-5Aの比率が変化すると、アポトーシスの調節活性を有する薬剤候補を同定することができる。アポトーシスの調節活性を有する候補薬剤が、アポトーシスを阻害するか誘発するかのいずれかを介し、アポトーシスと関係する疾患の治療に有益となる。さらに、アポトーシスに特異的なeIF-5Aに対する増殖したeIF-5Aの比率が変更されれば、アポトーシスの調節に使用でき、それが異常アポトーシスの関係として本明細書に記載のいずれかの症状を治療するために有益である。
【0088】
多数の有効な薬品候補にこの方法を使用すると、すなわちライブラリーが、アポトーシスを調節するライブラリーのメンバーを同定するため有効にスクリーニングすることができる。いずれかの候補又は候補ライブラリーを、この方法を用いスクリーニングすることができる。たとえばシグナル形質導入経路を変更するモノクロナール抗体、TRAIL(Apo2リガンド)などのサイトカイン、レチノイド/ステロイド・ファミリーの核リセプターに対するリガンド、及びタンパク質キナーゼを結合及び阻害する小分子化合物を含む、アポトーシス調節剤として有望であることを示す生物応答修飾剤を、本方法を使用するアポトーシス調節活性を定義するためスクリーニングすることができる。
【0089】
適切な候補の1が、タンパク質・キナーゼC-αアンチセンス・オリゴヌクレオチドのISIS3521(ISIS Pharmaceuticals,Inc.,Carlsbad,CA)であり、それが抗腫瘍作用を有する。他の特定候補としては、ガン及び神経細胞変性疾患に誘発する種々の細胞型におけるアポトーシスを誘起及び実行に必須の役割を果すことが知られたカスパーゼ(Idun Pharmaceuticals,San Diego,CA);Bcl-2の生成をブロックするアンチセンスの薬剤であるGENASENSETM(Genta,Inc.,Berkeley Heights,NJ);P53を療法的に標的とする遺伝子である、INGN241(Introgen Therapeutics,Inc.,Houston,TX);抗-CD20モノクロナールであるrituximab(IDEC Corporation,Osaka,Japan);及び心臓血管症及びガンのため一般的に誘発される療法(AEgera Therapeutics Inc.,Quebec,Canada)が含まれる。予防又は治療を目的として、動物に使用される場合、本発明の核酸及びポリペプチドが、医薬的に受け入れ可能な担体を付加的に含む組成物の形状にて投与できることが理解されよう。医薬的に受け入れ可能な適切な担体には、たとえば1又は複数の水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストローズ、グリセロール、エタノールなど、並びにその組み合わせが含まれる。さらに医薬的に受け入れ可能な担体が、湿潤剤又は乳化剤などの補助物質、防腐剤又は緩衝液を最小量含み、それが結合タンパク質の保存寿命又は効能を高める。注射する組成物が、技術的に周知なように、迅速に提供できるように成形され、哺乳動物への投与後、活性成分の放出を維持又は遅延することができる。
【0090】
本発明の組成物は、種々の形状でも良い。これらには、たとえば、錠剤、ピル、粉末、液状、分散又は懸濁状、リポソーム、座薬、注射できるが溶解しない溶液など、固体、半固体、及び液状の投与形状が含まれる。好ましい形状は、意図された投与モード、及び適用される治療法に依存する。
【0091】
こうした組成物を、医薬的技術においてよく知られた方法にて調製することができる。この組成物を作成する際の活性成分が、通常担体と混合されるか、又は担体により希釈されるか、及び/又はたとえばカプセル、サケット、紙又は他の容器の形状にて可能な担体内にて包含される。担体を希釈剤として使用する場合、それが、固体、半固体、又は液状体で良く、それらが、活性成分のための担体、賦形剤又は培地として作用する。従って組成物は、錠剤、薬用ドロップ、サケット、カッシュ、エリキシル剤、エアロゾル(固体又は液状培地として)の形状、例えば10重量%の活性化合物を含む軟膏、ソフト、及びハードなゼラチン・カプセル、座薬、注射用液体、懸濁液、無菌状に包装された粉末、及び局所頒布として可能である。
【0092】
現在本発明に一般的に記載されたものと同一のものが、図示される方法にて提供される、以下の実施例を参照することにより容易に理解されよう。実施例が本発明を理解する際の支援となると説明されているが、いかなる点においてその範囲を限定する意図がなく、且決して限定するように構成されていない。本実施例が、従来の方法の詳細な説明が含まれていない。こうした方法が、当業者に充分に知られ多く公に記載されている。ベクター及びプラスミドの構成に用いられるもの、こうしたベクター及びプラスミドにポリペプチドをコードする核酸の挿入、宿主細胞内にプラスミドを導入、遺伝子の発現及び決定及び遺伝子産生などの従来の方法の詳細な記載は、多くの公開文献から得ることができ、たとえば、Sambrook,J.ら、(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nded.,Cold Spring Harbor Laboratory Pressが含まれる。本明細書に言及する全ての文献が、その全体において組み入れられている。
【実施例】
【0093】
実施例1
本実施例は、アポトーシスに特異的発現を呈するラットのeIF-5A核酸をコードする全長cDNAの単離、及び特徴付けを実証する。
【0094】
ラットの黄体における過剰排卵及びアポトーシスの誘発
メスの未成熟(21-30日経過)ラットを、50IUのPMSG(Pregant Mare Serum Gonadotropin)、さらに60から65時間後50IUのHCG(Human Chorionic Gonadotropin)にて皮下注射し過剰排卵させた。HCG処理から7日後、黄体のアポトーシスを、500mgのPGF-2αで皮下注射にて誘発した。PGF-2αにて処理後そのラットを、種々異なる時間(たとえば、1,8及び24時間)にて犠牲にし、黄体を取り出し液体窒素中に入れた。コントロールとしての黄体組織を、PGF-2α処理直前のラットを犠牲にして得た。
【0095】
ラットの卵巣の黄体細胞の分散
過剰排卵から6乃至9日後、ラットを、500mgのPGF-2αにより複数部位を皮下注射にて処理した。15乃至30分後、卵巣を過剰排卵されたラットから取り出し、氷上のEBSS(Gibco)に置きブロット乾燥しそして計量した。結合している組織を除去し、そして卵巣を、カミソリ刃にて細断し、EBSS 2Xにて2回洗浄した。コラゲナーゼ溶液を、EBSS 5mlに6.5mgのコラゲナーゼ(Sigma,Catologue #C5138)を攪拌することにより調製した。8個の卵巣から細断された組織を、50mlのエレンメヤー・フラスコ(Erlenmeyer flask)にEBSS中5mlのコラゲナーゼに加え、そしてダイアムド・ピペット(Diamed pipette)に数回引き入れることでゆっくりと振動させた。次に細断された組織の入っているフラスコを、95%の空気、5%のCO2の下にゆっくり振動させながら(Position 45 on GFL incubator)、37℃の20分間水浴中に置いた。
【0096】
このインキュベート後、そのフラスコを氷上に置き、そして細胞の懸濁物を、プラスチック製移送ピペットによりSwiss Nirex Nylon Monifilament(75m)に合せたニテクス・フィルター(Nitex filter)上に移した。その濾過物を15mlのファルコン(Falcon)試験管に収集した。コラゲナーゼ溶液(6.5mgのコラゲナーゼ/5mlのEBSS)の第二のアリコート(2.5ml)を、50mlのエレンメヤー・フラスコ(Erlenmeyer flask)に残っている細断した組織に加え、ピペットを用いゆっくりと振動させ、10分間インキュベートし、そして上記のように濾過した。2つの濾過物を合わせ臨床遠心分離機(〜200g)にて室温で、5分間遠心分離した。2mlまでの上澄液以外全てを、ピペットにて取り出し廃棄し、沈殿している細胞を、残っている2mlの上澄液にて再懸濁した。
【0097】
その細胞を、5mlのMEMを加えることにより2回洗浄し、そして上記ように遠心分離にかけそして再懸濁した。洗浄された細胞を、50mlのエレンメヤー・フラスコ(Erlenmeyer flask)に10mmのグルタミンを含む30mlsのMEMに再懸濁し、そして95%の空気、5%のCO2下、37℃にて1時間、振動することなくインキュベートした。次に、その細胞を上記のように遠心分離により沈殿させ、そして10mmのグルタミンを含むMEMにおいて再懸濁した。
【0098】
分散された細胞の濃度を、血球計数計を用いて決定し、そして変動性をトリプシン・ブルー染料を用いて評価した。2-5x105細胞のアリコートを、12x75mmの試験管に入れ、そして95%の空気、5%のCO2下、37℃、2-5時間振動することなくインキュベートした。この期間におけるアポトーシスの進行を、DNAのラダーリング度を評価することで監視した。
【0099】
DNAラダーリングによるラット黄体のアポトーシスの視覚化
アポトーシスの程度を、DNAラダーリングにより決定した。製造指示に従いQLAamp DNA Blood Kit(Qiagen)を用いてゲノムDNAを、分散された黄体細胞又は細断された黄体組織から単離した。PGF-2αにて処理しアポトーシスを誘発する前、アポトーシスを誘発した1時間、及び24時間後の黄体組織を細断した。単離されたDNAを、0.2μCi[α-32P]dCTP,imMのTris,0.5mMのEDTA,3単位のKlenow酵素、及び各dATP,dGTP,及びdTTPに0.2pMより500ngのDNAを、室温にて30分間インキュベートして末端を標識化した。組み込まれなかったヌクレオチドを、Sambrookらによる1mlのSepadex G-50カラムにその試料を通すことにより除去した。次にその試料をTris-酢酸-EDTA(1.8%)ゲル電気泳動により溶解した。そのゲルを真空下室温にて30分間乾燥し、そしてX-線フイルムに-80℃にて24時間暴露した。
【0100】
1つの例において過剰排卵のラットの黄体におけるアポトーシスの程度を、注射によりPGF-2αを注入し0、1、又は24時間後のいずれかにて試験した。0 時間であるコントロールではPGF-2αが注入されることなく、卵巣を取り出した。アポトーシスに関連したヌクレアーゼ活性を反映した低分子量のDNA断片のラダーリングが、PGF-2αの処理前に細断されたコントロール黄体組織に明示されないが、アポトーシス誘発1時間以内では認識することができ、アポトーシス誘発24時間後までには顕著に表れ、それが、図16に示されている。この図におけるパネルの上部が、ラット黄体のアポトーシスに特異的なDHS cDNAの32P-dCTPにて標識化された3'の未翻訳領域にてプローブされたNorthern blotのオートラジオグラフィである。パネルの下側は、全RNAの臭化エチジウム染色ゲルである。各レーンが、10μのRNAを含む。そのデータは、血清を取り出した後のeIF-5A転写の下限調節があることを示している。
【0101】
別の例における該当するコントロール動物を、PGF-2αの代りに生理食塩水にて処理した。生理食塩水又はPGF-2αにて処理し15分後、黄体(corpora lutea)を動物から取り出した。ゲノムDNAを、動物から組織を取り出し3時間、及び6時間後その黄体から単離した。そのゲノムDNAのDNAラダーリング及び末端標識化の増大が、明示されたが、組織を取り出し3時間後では、明示されていない。図17を参照。さらに黄体がPGF-2αにて処理して15分後に細断された場合、アポトーシスを反映するDNAのラダーリングが明示され、EBSS(Gibco)におけるin vitroの条件下、6時間保持された。さらにアポトーシスに関連するヌクレアーゼ活性が、ゲノムDNAのより進展した末端標識からも明らかである。
【0102】
別の例において、過剰排卵を、皮下注射にて500μのPGF-2αの注入により誘発した。コントロール・ラットを、等量の生理食塩水溶液にて処理した。15乃至30分後、卵巣を取り出し、そしてコラゲナーゼにより細断した。PGF-2αにて処理されたラットの分散された細胞を、10mmのグルタミン、プラス10mmのスペルミジンにて1時間、そしてスペルミジンがなく10mmのグルタミンにてさらに5時間(レーン2)、又は10mmのグルタミンプラス10mmのスペルミジンにて1時間、そして10mmのグルタミン、プラス1mmのスペルミジンにてさらに5時間(レーン3)インキュベートした。生理食塩水にて処理されたコントロール細胞を、コラゲナーゼにより分散させ、そしてグルタミンのみ(レーン1)にてインキュベートした。各試料から500ngのDNAを、Klenow酵素を用いて[α-32P]-dCTPにて標識化し、1.8%のアガロース・ゲルにて分離し、そして24時間フイルムに暴露した。結果を図18に示す。
【0103】
さらに他の例において、過剰排卵されるラットを、体重当たり1mg/100gのスペルミジン量を皮下注射にて、体重当たり0.333mg/100gの3等分の容量を、500μのPGF-2αにて皮下注射する前24,12,及び2時間にて注入された。コントロール・ラットを3組みに、すなわち注入しないもの、3匹がスペルミジンを注入するがPGF-2αを注入しない、及び3匹が、PGF-2αの処理前に当量の生理食塩水による注入、に分けた。卵巣を、プロスタグランジンにて処置後1時間35分又は3時間45分のいずれかにてラットの前面から取り出しDNAの単離に使用した。各試料から500ngのDNAを、Klenow酵素を用いて[α-32P]-dCTPにて標識化し、1.8%のアガロース・ゲル上にて分離し、そして24時間フイルムに暴露した、レーン1、注入なし(レーン3乃至5に対し同時間にて動物を犠牲);レーン2、3匹を、スペルミジンにて注入(レーン3乃至5に対し同時間にて動物を犠牲);レーン3、3匹を生理食塩水を注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し1時間35分後にその動物を犠牲)、レーン4、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し1時間35分後にその動物を犠牲)、レーン5、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し1時間35分後にその動物を犠牲)、レーン6、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し3時間45分後にその動物を犠牲にした)、レーン7、3匹をスペルミジンにて注入し、その後PGF-2αにて注入(PGF-2αにて処理し3時間45分後にその動物を犠牲)したものである。得られた結果を図19に示す。
【0104】
RNAの単離
PGF-2αによるアポトーシスを誘発後の種々の時間にて、全RNAを、ラットより取り出した黄体組織から単離した。要約すればその組織(5g)を液体窒素中にてすり潰した。すり潰された粉末を、30mlのグアニジニウム緩衝液(4Mのグアニジニウム・イソチオシアネート、2.5mMのNaOAc、pH8.5、0.8%のβ-メルカプトエタノール)に混合した。その混合物をMiraclothの4層を通し濾出し、そして10,000gで4℃、30分間遠心分離にかけた。次に上澄液を、塩化セシウム密度勾配遠心分離に、11,200g、20時間かけた。ペレット状RNAを、75%エタノールにてすすぎ洗し、600mlのDEPC処理水にて再懸濁し、そしてRNAを1.5mlの95%エタノール及び60mlの3M NaoAcにより-70℃にて析出させた。
【0105】
ゲノムDNAの単離、及びラダーリング
ゲノムDNAを、製造業者の指示によるQIAamp DNA Blood Kit(Qiagen)を使用して抽出された黄体組織又は分散された黄体細胞から単離した。そのDNAは、0.2μCi[α-32P]dCTP,1mMのTris、0.5mMのEDTA,3単位のKlenow酵素、及びdATP,dGTP,及びdTTPそれぞれ0.2pM、により500ngのDNAを室温で30分間インキュベートすることにより、末端を標識化した。組み込まれないヌクレオチドを、Maniatisらによる記載方法により、1-mlのSephadex G-50カラムに試料を通すことにより除去した。次にその試料をTris-酢酸EDTA(2%)ゲル電気泳動により溶解した。そのゲルを、真空下室温にて30分間乾燥し、x線フイルムにて-80℃、24時間暴露した。
【0106】
プラスミドDNAを単離し、そしてDNAの配列決定
上記Sambrookらにより記載のアルカリ溶解法を、プラスミドDNAを単離するため使用した。全長ポジテブなcDNAを、ジデオキシ配列決定法を用い配列決定した。Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74:5463-5467を参照。オープンリーデングフレームを、BLAST search(GenBank,Bethesda,MD)を用い翻訳、解析し、そして配列構成を、BCM Search Launcher:Multiple Sequence Alignments Pattern-Induced Multiple Alignment Methodを用いて行った(F.Corpet,Nuc.Acids Res.,16:10881-10890,(1987)を参照。配列及び配列の構成を図 5-11に示した。
【0107】
ラットの黄体RNAのノーザン・ブロット・ハイブリッド化(Northern Blot Hybridization)
アポトーシスの種々の段階にてラットの黄体から単離された20mgの全RNAを、1%の変性ホルムアルデヒド・アガロースゲルにて分離し、ナイロン膜上に固定した。ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を用い32P-dCTPで標識化された全長のラットアポトーシスに特異的なeIF-5A cDNA(配列番号:1)を、膜7x107をプローブするため使用した。別の選択肢として、ランダム・プライマー・キット(Boehringer)を用いて32P-dCTPにて標識化された、全長のラットアポトーシスに特異的なDHS cDNA(配列番号:6)を、膜(7x107cpm)をプローブするため使用した。その膜を一度1xSSC、0.1%のSDSにて室温で1回洗浄し、0.2xSSC、0.1%のSDSにて65℃で3回洗浄した。その膜を乾燥し、そしてX線フイルムに-70℃にて1昼夜暴露した。
【0108】
示すことができるように、eIF-5A及びDHSが共に、黄体組織をアポトーシスする際に上限調節される。アポトーシスに特異的なeIF-5Aの発現が、ゼロ時間にPGF-2α-lowで処理しアポトーシスを誘発後実質的に高められ、処理後1時間以内に実質的に増大し、処理8時間以内にてより有意に増大し、そして処理24時間以内で僅かに増大する(図14)。DHSの発現が、時間ゼロで低く、処理1時間以内で実質的に増大し、処理8時間以内にてより有意に増大し、そして処理24時間以内で再度僅かに増大した(図15)。
【0109】
ラットのアポトーシスする黄体の形成
酵母、菌類及びヒトのeIF-5Aの配列に基づくプライマーを使用したRT-PCRの産生物
遺伝子の3'末端に相当する部分長のアポトーシスに特異的なeIF-5A配列(配列番号11)を、酵母、菌類及びヒトのeIF-5Aの配列から設計された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを用い、RT-PCRによりアポトーシス・ラットの黄体RNA鋳型から生成した。ラットのeIF-5A遺伝子の3'末端を単離するために用いられた上流のプライマーが、20ヌクレオチドの再生プライマー:5'TCSAARACHGGNAAGCAYGG3'(配列番号:9)で、ここでSはC及びGから選択され;RはA及びGから選択され、HはA,T,及びCから選択され;そしてNは任意の核酸である。ラットのeIF-5A遺伝子の3'末端を単離するために用いられる下流プライマーが、42ヌクレオチド:5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(配列番号:10)を含んでいる。逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT=PCR)を行った。要約すれば、5mgの下流プライマーを用いcDNAの第一の鎖を合成した。次に第一の鎖を、上流及び下流の両プライマーを用いRT-PCRの鋳型として使用した。アガロースゲル上のRT-PCR産生物を分離すると、900bpの断片の存在を示し、それが平滑末端リゲーションを用いpBluescriptTM(Stratagene Cloning Systems,LaJolla,CAを参照)にサブクローンされ、そして配列決定された(配列番号:11)。3'末端のcDNA配列が配列番号:11で、そして3'末端のアミノ酸が配列番号:12である、図 1-2を参照。
【0110】
遺伝子の5'末端に相当し、そして3'末端と重なり合う、部分長のアポトーシスに特異的なeIF-5A配列(配列番号:15)を、RT-PCRによるアポトーシス・ラットの黄体RNA鋳型から生成した。5'のプライマーは、24-merで、CAGGTCTAGAGTTGGAATCGAAGC3'(配列番号:13)の配列を有し、それがヒトeIF-5A配列から作成された。3'プライマーは、30-merで、3'末端のRT-PCR断片より設計された5'ATATCTCGAGCCTTGATTGCAACAGCTGCC3'(配列番号:14)配列を有する。逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応を行った。要約すると、5mgの下流プライマーを用いDNAの第一鎖を合成した。次に第一鎖を、上流と下流の両プライマーを用いRT-PCRの鋳型として使用した。
【0111】
アガロース・ゲル上のRT-PCR産生物を分離すると、500bpの断片があることを示し、それを、上流と下流の各プライマーに存在するXbaI及びXhoIクローニング部位を用い、pBluescriptTM(Stratagene Cloning Systems,LaJolla,CA)にてサブクローンし、そして配列決定した(配列番号:15)。5'末端のcDNA配列が配列番号:15で、そして5'末端のアミノ酸配列が、配列番号:16である。図 2を参照。
【0112】
ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5Aの3'と5'の末端配列(配列番号:11及び配列番号15のそれぞれ)が重なり合い、そして全長のcDNA配列(配列番号:1)を生ずる。全長の配列が構成され、GeneBank data baseの配列と比較される。図 1-2を参照。
【0113】
そのcDNAクローンは、計算による分子量が16.8KDaを有する154のアミノ酸ポリペプチド(配列番号:2)をコードする。RT-PCRにより得られたラットのアポトーシスに特異的黄体eIF-5A遺伝子の全長cDNAとしてのヌクレオチド配列、配列番号:1が、図3に明示され、そして相当する誘発アミノ酸配列配列番号:9である。eIF-5Aの誘発された全長アミノ酸配列が、ヒト及びマウスのeIF-5A配列にて構成される。図 7-9を参照。
【0114】
アポトーシスするラット黄体の生成、
ヒトDHS配列に基づくプライマーを使用したRT-PCRの産生
遺伝子の3'に相当する部分長のアポトーシスに特異的なDHS配列(配列番号:6)を、ヒトのDHS配列から設計された一対のオリゴヌクレオチド・プライマーを用い、RT-PCRによりアポトーシスするラットの黄体RNA鋳型から生成した。5'プライマーが、20-merで、5'GTCTGTGTATTATTGGGCCC3'(配列番号:17)の配列を有し、3'プライマーが42-merで、5'TCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(配列番号:18)の配列を有する。逆転写酵素・ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を行った。要約すると、5mgの下流プライマーを用い、cDNAの第一鎖を合成した。次に第一鎖を、上流と下流の両プライマーを用いRT-PCRの鋳型として使用した。
【0115】
アガロース・ゲル上にRT-PCR産生物を分離すると、606bpの断片を存在することが示され、それが平滑末端リゲーションを用いpBluescriptTM(Stratagene Cloning Systems,LaJolla,CA)にサブクローンされ、そして配列決定された(配列番号:6)。RT-PCRにより得られたラットのアポトーシスに特異的黄体DHS遺伝子のcDNAの部分長としてのヌクレオチド配列(配列番号:6)を、図4に示しさらに該当して誘発されたアミノ酸配列が配列番号:7である。
【0116】
ゲノムDNAの単離、及びサザーン法による分析
サーザン・ブロッテング用のゲノムDNAを、切除されたラットの卵巣から単離した。約100mgの卵巣組織を、小片に分割し15mlのチューブに入れた。この組織を、その組織の懸濁液を静かに振盪することにより、1mlのPBSにて2回洗浄し、さらにピペットを用いてPBSを取り出した。その組織を、2.06mlのDNA緩衝液(0.2MのTris-HCl,pH8.0及び0.1mMのEDTA)にて再懸濁し、そして240μlの10%SDS、及び100μlのプロテナーゼK(Boehringer Manheim;10mg/ml)を加えた。その組織を水槽にいれ45℃にて1昼夜振盪した。その後の期日に、別の100μlのプロテアーゼK(100mg/ml)を加え、そしてその組織懸濁液を水槽にて45℃にてさらに4時間インキュベートした。インキュベート後その懸濁液を、当量のフェノール:クロロフォルム:アミルアルコール(25:24:1)にて1回抽出し、さらに当量のクロロフォルム:イソ-アミルアルコール(24:1)にて1回抽出した。抽出後1/10容量の3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)及び2容量のエタノールを加えた。ブーゼン・バーナを用いてシールし、フック(hook)内に形成されたガラス・ピペットを使用し、溶液からDNAスレッド(DNA threads)を溶液から取り出し、清浄なマイクロ遠心チューブにそのDNAを移した。そのDNAを70%エタノールにて1回洗浄し、そして10分間空気乾燥した。DNAペレットを500μlの10mMのTris-HCl(pH8.0)に溶解し、10μのRNase A(10mg/ml)を加えて、そしてそのDNAを37℃にて1時間インキュベートした。そのDNAを、フェノール:クロロホルム:イソ-アミルアルコール(25:24:1)にて1回抽出し、そして3Mの酢酸ナトリウム(pH5.2)を1/10容量、及び2容量のエタノールを加えることでDNAを沈殿させた。DNAを、4℃、13,000xgにて10分間遠心分離にかけてペレッ化した。DNAペレットを、70%のエタノールにて1回洗浄し、DNAを4℃にて1昼夜回転することにより、10mMのTris-HCl(pH8.0)を200μlにて溶解した。
【0117】
サーザン・ブロット分析用に、ラットの卵巣から単離されたゲノムDNAが、内在性の遺伝子において切断されないか、1回のみ切断かのいずれかである種々の制限酵素にて消化された。これを行うために10μgのゲノムDNA、20μlの10X反応緩衝液、および100Uの制限酵素を、200μlの全反応容量に5乃至6時間反応させた。消化されたDNAを、0.7%アガロース・ゲルに負荷し、40ボルトで6時間又は15ボルトで1昼夜電気泳動にかけた。
【0118】
電気泳動後そのゲルを、0.2NのHClにて10分間再精製し、その後変性溶液(0.5MのNaOH,1.5MのNaCl)にて2乃至15分間洗浄し、そして2乃至15分間中性緩衝液(1.5MのNaOH,0.5MのNaCl)にて洗浄した。そのDNAをナイロン膜に移しさらにその膜を、ハオブリダイゼーション溶液(40%のホルムアミド、6XSSC,5X Denhart's,solution(1X Denhart's solution is 0.02% Ficoll,0.02%PVP,and 0.02%のBSA)、0.5%のSDS,及び1.5mgのdenatured salmon sperm DNA)にてプレ-ハイブルダイズした。ラットのeIF-5A cDNA(650bpの3'UTR及び50bpのcoding)の3'URTの700bp PCR断片を、[a-32P]-dCTPを用い、ランダムプライミングにて標識化し、そして1X106cpm/mlにてその膜に加えられた。
【0119】
同様に、ラットのDHS cDNA(450bp coding and 156bp 3'UTR)の606bp PCR断片が、[α-32P]-dCTPにて標識化されたランダム・プライムであり、第二の同定膜に1X106cpm/mlで加えられた。そのブロットを42℃にて一昼夜ハイブリダイズし、さらに2XSSC及び0.1%のSDSで42℃にて2回洗浄し、そして1XSSC及び0.1%のSDSで42℃にて2回洗浄した。次にそのブロットを、3乃至10日間フイルムに暴露した。
【0120】
ラットの黄体ゲノムDNAを、図20に示すように制限酵素にて切断し、32P-dCTP-にて標識化された全長eIF-5AのcDNAにてプローブした。ストリンジェントの高い条件下でのハイブリダイゼーションが、各制限酵素にて消化されたDNA試料に対し、幾つかの切断断片に全長cDNAプローブをハイブリダイズを表し、eIF-5Aの幾つかのアイソフォームの存在を示している。特に注意すべきもののうち、ラットゲノムDNAがEcoRVにより消化される場合、アポトーシスに特異的なeIF-5Aのオープンリーデングフレーム内の制限部位を有し、eIF-5Aのアポトーシスに特異的アイソフォームの2つの制限酵素断片を、サザンブロット法にて検出することができる。2つの断片が、図20の2重の矢印にて示されている。eIF-5Aのアポトーシスに特異的アイソフォームに相当する制限酵素断片が、標識化されたEcoR1及びBamH1、オープンリーデン・フレーム内に切断部位がない制限酵素である、レーンにて標識化されたEcoR1及びBamH1を単一矢印により示される。これらの結果により、アポトーシスに特異的なeIF-5Aが、ラットの単一コピー遺伝子であることが示唆される。図5から13に示されるように、種を交差して高い保守性があり、したがってそれは、いずれかの種内のアイソフォーム間を有意な量の保守性があることが期待できるであろう。
【0121】
図21が、32P-dCTPにて標識化された、ラット・黄体アポトーシスに特異的なDHS cDNAの一部分の長さにてプローブされたラットゲノムDNAのサザンブロットを示す。ゲノムDNAが、プローブとして使用される部分長のcDNAを切断しない制限酵素としての、EcoRVにより切断された。その切断による断片が、遺伝子の2つの複製があるか、又はその遺伝子がEcoRV部位にてイントロンを含んでいるかを示し実証した。
【0122】
実施例2
本例は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSによるアポトーシスの調節を実証
COS-7細胞の培養及びRNAの単離
野生型T抗原をコードするSV40の変異体にて形質転換されたアフリカ緑サルの腎臓線維芽細胞様の細胞株のCOS-7を、トランスフェクションに基づく全実験に使用した。COS-7細胞を、L-グルタミンのリッター当たり0.584g、グルコースのリッター当たり4.5g、及び0.37%の炭酸水素ナトリウムにて、Dulbecco's Modified Eagle's Medium(DMEM)において培養した。培養培地に、10%の牛胎児血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンを補充した。その細胞を、5%のCO2及び95%の空気の湿気性環境下37℃にて増殖させた。その細胞を、0.25%のトリプシン及び1mMのEDTAの溶液により、接着細胞を剥離することにより、それぞれ3乃至4日小領域の培養(subcultured)を行った。剥離された細胞を、新たな培養皿にて新鮮な培地と分離比(split ratio)1:10にて調合した。
【0123】
RNAを単離するため使用されるCOS-7細胞を、150-mmの組織培養処理皿(Corning)にて増殖させた。トリプシン-EDTA溶液にて細胞を剥離して、その細胞が採取された。剥離された細胞を遠心チューブに集め、さらにその細胞を、3000rpmにて5分間遠心分離にてペレットとした。その上澄液を取り出し、そして細胞を液体窒素によりフラッシュ冷凍した。RNAを、GenElute Mammalian Total RNA Miniprep kit(Sigma)を用い、作成指示に従って冷凍細胞から単離した。
【0124】
組み換え型プラスミドの構成及びCOS-7細胞のトランスフェクション
センス配向のラットのアポトーシスeIF-5A、及びアンチセンス配向における3'の翻訳されない領域(UTR)のラット・アポトーシスeIF-5Aの全長コードする配列を輸送する組み換え型プラスミドが、哺乳動物のエピトープ・タグ発現ベクターのpHM6(Roche Molecular Biochemicals)を用いて構成され、それを図21に示す。そのベクターには以下のもの、すなわちCMVプロモータ、ヒト・サイトメガロウイルス介在初期プロモータ/エンハンサー;インフルエンザ・ヘマグルチニンからのHA-ノナペプチド・エピトープタグ;BGH pA-Bovine増殖ホルモンポリアデニール化シグナル;f1 ori-f1 origin;SV40 ori-SV40初期プロモータ及びオリジン;Neomycin-Neomycin耐性(G418)遺伝子;SV40 pA-SV40ポリアデニール化シグナル;Col E1-ColE1オリジン;アンピシリン-アンピシリン耐性遺伝子が含まれる。ラットのアポトーシスeIF-5A及びラットのアポトーシスeIF-5Aの3'UTRの全長をコードする配列を、pBluescript(配列番号:1)における元来あるラットeIF-5AのRT-PCR断片からPCRにより増幅した。全長eIF-5Aの増幅に使用されるプライマーが以下の様である、つまり前方5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'(Hind3)及び逆方5'CTGAATTCCAGTTATTTTGCCATGG3'(EcoR1)であった。全長3'UTRのラットeIF-5Aを増幅するために、使用されるプライマー以下のようである、つまり前方5'AATGAATTCCGCCATGACAGAGGAGGC3'(EcoR1)及び逆方5'GCGAAGCTTCCATGGCTCGAGTTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT3'(Hind3)である。
【0125】
アガロースゲル電気泳動後に単離された全長のラットeIF-5A PCR生成物の長さが、430bpであるが、3'UTRのラットeIF-5A PCR生成物の長さが、697bpである。両PCR生成物を、pHM6-全長eIF-5A及びpHM6-アンチセンス3'UTRのeIF-5Aを形成するためにpHM6のHind3及びEcoR1部位にてサブクローンした。全長のラットeIF-5A PCR生成物を、抗-[HA]-パーオキシダーゼ抗体を使用して組み換え型タンパク質を検出できるよう複数のクローニング部位の上流に存在するインフルエンザ赤血球凝縮素からノナペプチド・エピトープタグにて、フレームにサブクローンした。ヒトのサイトメガロウイルス介在初期プロモータ/エンハンサーにより、発現が誘発され哺乳動物細胞株における高レベル発現が保証される。さらにプラスミドが、安定なトランスフェクトの選択を可能にするネオマイシン耐性(G418)遺伝子、及びCOS-7などのSV40ラージT抗原を発現する細胞において、エピソーマルの複製を可能にするSV40初期プロモータ及びオリジンを特徴とする。
【0126】
トランスフェクト実験に使用されるCOS-7細胞を、タンパク質抽出に使用される細胞用24ウエルの細胞培養プレート(Corning)、又は染色用に使用される細胞用4チャンバー(chamber)培養スライド(Falcon)のいずれかにて培養した。その細胞を、10%のFBSにて補充されたが、ペニシリン/ストレプトマイシンを欠失した状態のDMEM培地にて、50乃至70%の密集度まで増殖させた。24ウエルプレートの1ウエルに又は培養スライドに充分なトランスフェクト培地を、42.5μlの血清のないDMEMに、0.32μgのプラスミドDNAを希釈し、そしてその混合物を室温にて15分間インキュベートすることにより調製した。1.6μlのトランスフェクト試薬、LipofectAMINE(Gibco,BRL)を、42.5μlの血清のないDMEMにて希釈し、そして室温にて5分間インキュベートした。5分後 LipofectAMINE(Gibco,BRL)混合物をDNA混合物に加え、室温にて30乃至60分間共にインキュベートした。トランスフェクトされた細胞をトランスフェクション培地に置く前に、血清のないDMEMにて1回洗浄し、そしてその細胞を増殖チェンバーに4時間戻した。
【0127】
インキュベート後、0.17mlのDMEMプラス20%のFBSをその細胞に加えた。その細胞を、ウエスタンブロット分析用に染色するか、採取する前にアポトーシスとなる様が誘発される、いずれか前にさらに40時間培養した。コントロールとして、プラスミドDNAがトランスフェクション培地から除外される、モック(Mock)トランスフェクション(mock transfections)も行った。
【0128】
タンパク質の抽出及びウエスタンブロッテング法
細胞をPBS(8g/L NaCl,0.2g/L KCl,1.44g/L Na2HPO4,及び0.24g/L KH2PO4)にて2回洗浄し、さらに150μlの熱SDSゲル-負荷緩衝液(50mMのTris-HCl pH 6.8,100mMのジチオセリオール、2%SDS,0.1%のブロモフェノール・ブルー、及び10%のグリセロール)を加えることにより、タンパク質が、トランスフェクトされた細胞からウエスタンブロッテング法のため単離された。細胞溶離物をマイクロ遠心チューブに採取し、95℃にて10分間加熱し、その後13,000xgにて10分間遠心分離にかけた。上澄液を新しいマイクロ遠心チューブに移し、それを使用するまでー20℃にて保存した。
【0129】
ウエスタンブロッテング法では、全タンパク質として2.5又は5μgが、12%のSDS-ポリアクリルアミド・ゲル上にて分離された。分離されたタンパク質を、ポリビニリデン・ジフルオライド膜に移した。次にその膜を、停止溶液(5%のスキム(skim)乳粉、PBS中0.02%のナトリウム・アジド)に1時間インキュベートした。その膜をPBS-Tに4℃で1昼夜保存した。翌日室温まで加温した後その膜を、1μg/mlのポリビニルアルコールに30秒間ブロックした。その膜を脱イオン水にて5回すすぎ洗いし、その後PBSに5%乳の溶液に30分間ブロックした。一次抗体をその膜にインキュベートする前に、PBSに5%乳の溶液に30分間プレインキュベートした。
【0130】
幾つかの一次抗体を使用した。抗-[HA]-パーオキシダーゼ抗体(Roche Molecular Biochemicals)を1:5000に希釈して使用し、組み換え型タンパク質の発現を検出した。この抗体がパーオキシダーゼに接合されることから、二次抗体を全く必要としなく、そしてそのブロットを洗浄し、そして化学蛍光法にて発生させた。使用された他の一次抗体が、p53(Ab-6),Bcl-2(Ab-1),及びc-Myc(Ab-2)を認識する原ガン遺伝子からのモノクロナール抗体である。p53へのモノクロナール抗体を0.1μg/mlの希釈にて使用し、そしてBcl-2及びc-Mycへのモノクロナール抗体を0.83μg/mlの希釈にて共に使用した。60乃至90分間一次抗体とインキュベートした後その膜を、PBS-Tにて15分間3回洗浄した。次に2次抗体を、PBSに1%乳にて希釈しそしてその膜にて60乃至90分間インキュベートした。p53(Ab-6)が、一次抗体として使用される場合、使用される2次抗体が、アルカリホスファターゼ(Rockland)に接合された1:1000に希釈したヤギ・抗マウスIgGであった。Bcl-2(Ab-1),及びc-Myc(Ab-2)が一次抗体として使用される場合、パーオキシダーゼ(Sigma)に接合されたラビット抗-マウスIgGを、1:5000の希釈にて使用した。二次抗体とインキュベートした後その膜を、PBS-Tにて3回洗浄した。
【0131】
ブロットを生成するため、比色分析法及び化学蛍光法の2種の検出方法が使用された。p53(Ab-6)が、アルカリホスファターゼに接合の2次抗体と結合する1次抗体として使用した場合のみ、比色分析法を使用した。結合抗体が、0.33mg/mLのニトロ・ブルー・テトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルホスフェイト、100mMのNaCl,5mMのMgCl2、及び100mMのTris-HCl(pH9.5)の溶液にて、暗所でそのブロットをインキュベートすることで視覚化された。色素反応を、PBSに2mMのEDTAにてそのブロットをインキュベートすることにより停止した。化学蛍光検出法を、抗-[HA]-パーオキシダーゼ、Bcl-2(Ab-1),及びc-Myc(Ab-2)を含む他の全ての一次抗体のため使用した。ECLプラス,ウエスタンブロッテング検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を、ペルオキシダーゼ接合の結合抗体を検出するために使用した。簡単にはその膜を、光ブロット乾燥しさらに試薬Aと試薬Bとを40:1にした混合物を暗所にて、5分間インキュベートした。膜をブロット乾燥し、アセテートシート間に置いて、そして10秒から10分間時間を変えてX線フイルムに暴露した。
【0132】
COS-7細胞におけるアポトーシスの誘発
トランスフェクトされたCOS-7細胞におけるアポトーシスを誘発するために、2種の方法が用いられ、それは血清の無い方法とストレプトマイシン種(streptomyces sp)としてアクチノマイシンD(Calbiochem)にて処理する方法である。両処理のためトランスフェクションより40時間後に、その培地をとり出した。血清飢餓実験のためその培地を、血清及び抗生物質の無いDMEMと置き換えた。10%のFBSにて補給される抗生物質の無いDMEMにて増殖した細胞をコントロールとして使用した。アポトーシスを誘発するアクチノマイシンD(Calbiochem)に対し、その培地が、10%のFBSにて補充された抗生物質のないDMEM、及びメタノールに溶解された1μg/mlのアクチノマイシンDと置き換えられた。コントロール細胞を、10%のFBSにて補充された抗生物質のないDMEM、及び等量のメタノールにて増殖した。両方法に対して、アポトーシス細胞の割合を、ヘキスト(Hoescht)かAnnexin V-Cy3のいずれかにて染色し、48時間後に決定した。さらにアポトーシスの誘発が、図22に示すようにノーザン・ブロット分析により確認された。
【0133】
ヘキスト(Hoescht)による染色
核の染色剤としてヘキスト(Hoescht)を、核の断片化や縮合化などの形態的特性に基づいてアポトーシス細胞を同定するため、トランスフェクトされたCOS-7細胞の核標識に使用した。無水メタノールと氷酢酸とを3:1の混合から成る固定液を、使用直前に調製した。等量の固定液を、培養スライド上に増殖するCOS-7細胞の培地に加え2分間培養した。培地/固定液の混合液を細胞から除去し廃棄し、そして新たに1mlの固定液を細胞に加えた。5分後その固定液を廃棄し、1mlの新たな固定液をその細胞に加え5分間インキュベートした。固定液を廃棄しそして1mlのヘキスト染料(Hoescht stain)(0.5μg/ml Hoescht 33258 in PBS)を加える前に、その細胞を4分間空気乾燥した。暗所に10分間インキュベートした後その染色溶液を廃棄し、そしてスライドを脱イオン水にて1分間3回洗浄した。洗浄後1mlのMcI1vaine's緩衝液(0.021Mのクエン酸、0.058MのNa2HPO4・7H2O;pH5.6)をその細胞に加え、そして暗所にて20分間インキュベートした。その緩衝液を廃棄しその細胞を暗所にて5分間空気乾燥し、そしてその培養スライドのウエルを分けるチャンバーを取り出した。蛍光用(Vector Laboratories)として数滴のVectashieldを入れた培地を、そのスライドに加え、カバースリップでかぶせた。染色された細胞を、UVフイルターを用い蛍光電子顕微鏡下にて観察した。明るく染色された細胞又は断片化された核を、アポトーシスとして得点した。
【0134】
アネクシン(Annexin)V-Cy3の染色
アネクシン(Annexin)V-Cy3のアポトーシス検出キット(Sigma)を、アポトーシス細胞に蛍光標識外在性のホスファチジルセリンに使用した。そのキットを、以下の修飾を伴う製造業者の手順に従って使用した。簡単には、4つのチャンバーの培養スライドで増殖するトランスフェクトされたCOS-7細胞を、PBSにて2回そして1X結合緩衝液(Bindind Buffer)にて3回洗浄した。150μlの染色溶液(1Xの結合緩衝液(Bindind Buffer)にて1μg/mlのAnnCy3)を加え、そしてその細胞を暗所にて10分間インキュベートした。次に染色溶液を除去し、細胞を1X結合緩衝液にて5回洗浄した。チャンバー・ウオールを培養スライドから取り出し、そして数滴の1X結合緩衝液がその細胞上に置かれ、カバースリップにてかぶせられた。ポジテブに染色された(アポトーシス)細胞の赤色蛍光を可視化させるために、緑フィルターを用いて蛍光顕微鏡により染色細胞を分析した。可視光下細胞数を計数して全細胞の集団を決定した。
【0135】
実施例3
本例は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSにてアポトーシスを調節することを実証する。
【0136】
前実施例記載の一般的手順及び方法を用いて、図23が、COS-7細胞の一過性トランスフェクションのための手順を示すフローチャートで、そこで血清の無い培地における細胞を、プラスミドDNAでリポフェクトAMINEにて4時間インキュベートし、血清を加えてそしてその細胞をさらに40時間インキュベートした。次にその細胞が、分析前さらに48時間血清を含む通常の培地にてインキュベートされるか(即ちさらに処理をしない)、分析前にアポトーシスを誘発するため血清を取り除く、又は分析前アポトーシスを誘発する前に48時間アクチノマイシンDにて処理されるかのいずれかである。
【0137】
図22は、pHM6にてトランスフェクトした後、COS-7細胞における外来タンパク質の一過性発現を示すウエスタンブロットである。タンパク質を、モック(Mock)トランスフェクトするか、pHM6-LacZ,pHM6-アンチセンス3'rF5A(pHM6-アンチセンス3'URTラットアポトーシスeIF-5A)、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットアポトーシスeIF-5A)にてトランスフェクトするかいずれかにて、48時間後COS-7細胞から単離した。各試料から5μgのタンパク質を、SDS-PAGEにより分画し、PVDF膜に移し抗-[HA]-パーオキシダーゼによりウエスタンブロット処理をした。結合抗体が化学蛍光法により検出され、30秒間X-線フイルムに暴露した。LacZ(レーン2)及びセンス・ラットアポトーシスeIF-5A(レーン4)の発現を、明らかに見ることができる。
【0138】
上記のように、COS-7細胞を、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかであった。トランスフェクトから40時間後、48時間血清を止めてアポトーシスとなるようその細胞を誘発した。トランスフェクトされた細胞抽出物のカスパーゼのタンパク質分解活性を、蛍光定量均一カスパーゼ・アッセイキット(Roche Diagnostics)を用い測定した。さらにDNA断片化が、FragEL DNA Fragmentation Apoptosis Detection kit(Oncogene)を用いて測定され、それは、DNA断片の曝された3'-OH末端に、フルオレセイン標識デオキシヌクレオチドにて標識化してある。
【0139】
さらにCOS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかであった。トランスフェクト化から40時間後、その細胞を血清を含む(さらなる処理なし)定常培地にさらに48時間増殖するか、48時間血清を停止しアポトーシスとなるよう誘発するか、あるいは48時間0.5μg/mlのアクチノマイシンDにて処理することによりアポトーシスとなるよう誘発するかのいずれかである。その細胞ではヘキスト(Hoescht)33258にて染色し、アポトーシスによる核の断片化を示すか、アネクシンAnnexin)V-Cy3にて染色し、アポトーシスに伴うホスファチジルセリンの暴露を示すかのいずれかである。さらに染色された細胞を、緑色フィルターを使用し蛍光顕微鏡下見て計数することにより、アポトーシスになる割合を決定する。細胞の全集団を可視光線下にて計数した。
【0140】
図25では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて、一過性トランスフェクトされた場合に、カスパーゼ活性を増大することを反映し、アポトーシスを増強することが示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すれば、カスパーゼ活性を60%増大することになった。
【0141】
図26では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、DNA断片化を増大することを反映し、アポトーシスを増強することが示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すれば、DNA断片化を273%増大することになった。図27では、COS-7細胞が、センス配向の全長のラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、核の断片化を増大することを反映し、アポトーシスの検出が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現する細胞の断片化された核の発生率が有意に多くなる。図28では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、核の断片化を増大することを反映し、アポトーシスの増強が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すると、非血清の飢餓状態、及び血清の飢餓状態の各試料におけるコントロールより核の断片化が27%と63%増大している。
【0142】
図29では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、ホスファチジルセリンに暴露することを反映し、アポトーシスの検出が示されている。図30では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、ホスファチジルセリン暴露の増大を反映し、アポトーシスの増強が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すると、非血清の飢餓状態、及び血清の飢餓状態の各試料で、コントロールよりホスファチジルセリン暴露が140%と198%増大している。
【0143】
図31では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、核断片化の増大を反映しアポトーシスの増強が示されている。ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを発現すると、未処理及び処理例それぞれにおいてコントロールより核断片化が115%と62%増大している。図32では、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされたCOS-7細胞が、更に処理されないか、アポトーシスを誘発する処理を行うかのいずれかの条件下にてアポトーシス増強の比較が示されている。
【0144】
実施例4
本実施例は、アポトーシスに特異的なeIF-5A及びDHSを投与した後、アポトーシス活性が調節されることを実証している。
【0145】
さらにCOS-7細胞を、モック(Mock)トランスフェクト、pHM6-LacZにてトランスフェクト、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトするかのいずれかにて行い、さらに40時間インキュベートした。各試料から5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDS膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクロナール抗体にてウエスタンブロット処理した。ペルオキシダーゼに結合したラビット抗-マウスIgGが、二次抗体として使用され、そして結合抗体を、化学蛍光及びX線フイルムに暴露することにより検出した。その結果を図32に示す。pHM6-LacZにてトランスフェクトされた細胞よりpHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされた細胞では、有意に少ないBcl-2を検出することができ、したがってBcl-2が下限調節される。
【0146】
さらにCOS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-アンチセンス3'rF5A(ラット・アポトーシスに特異的なeIF-5AのpHM6-アンチセンス3'UTR)にてトランスフェクトされるか、pHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラット・アポトーシスに特異的なeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかであった。トランスフェクトから40時間後、その細胞が、48時間血清を停止しアポトーシスに成るよう誘発した。各試料からタンパク質抽出物の5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDF膜に移し、そしてBcl-2を認識するモノクロナール抗体にてウエスタンブロット処理した。ペルオキシダーゼに結合したラビット抗-マウスIgGが、二次抗体として使用され、そして結合抗体を化学蛍光及びX線フイルムに暴露することにより検出した。
【0147】
さらに追加として、COS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-LacZにてトランスフェクトされるか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラット・アポトーシスに特異的なeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかで、40時間インキュベートされた。各試料からタンパク質抽出物の5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDF膜に移し、そしてp53を認識するモノクロナール抗体にてウエスタンブロット処理した。アルカリ性ホスファターゼに結合したヤギ抗-マウスIgGを、二次抗体として使用しそして結合した抗体を化学蛍光法にて検出した。
【0148】
最終的なCOS-7細胞が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、pHM6-LacZにてトランスフェクトされるか、又はpHM6-センスrF5A(pHM6-全長ラットeIF-5A)にてトランスフェクトされるかのいずれかでトランフェクトされ、そして40時間インキュベートされた。各試料からタンパク質抽出物の5μgの試料を、SDS-PAGEにて分画しPVDF膜に移しそしてp53を認識するモノクロナール抗体にてプローブした。対応するタンパク質ブロットを、抗-[HA]-ペルオキシダーゼにてプローブされ、ラットのアポトーシスに特異的なeIF-5A発現レベルを決定した。アルカリ性ホスファターゼに結合したヤギ抗-マウスIgGを、二次抗体として使用し、そして結合した抗体を化学蛍光法にて検出した。
【0149】
図33では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、Bcl-2の下限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルータンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。有意的に少ないBcl-2が、pHM6-LacZにてトランスフェクトされた細胞よりpHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされた細胞において、検出することができる。
【0150】
図34では、COS-7細胞が、アンチセンス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、Bcl-2の上限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルー染色のタンパク質のブロットを表し、パネル下部が、該当するウエスタンブロットを示している。有意に多くのBcl-2が、モック(Mock)トランスフェクトされるか、又はpHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞より、pHM6-アンチセンス3'rF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。
【0151】
図35では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合、c-Mycの上限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルー染色のタンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。有意的に多くのc-Mycが、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールによりトランスフェクトされる細胞より、pHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。
【0152】
図36では、COS-7細胞が、センス配向の全長ラットアポトーシス誘発eIF-5Aを含むpHM6にて一過性にトランスフェクトされた場合に、p53の上限調節を示している。パネルの上部が、クーマシーブルーにて染色のタンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。有意的に多くのp53が、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールによりトランスフェクトされる細胞より、pHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。
【0153】
図37では、COS-7細胞におけるpHM6-全長のラットアポトーシス誘発eIF-5Aの発現によるp53の上限調節の依存性を示している。抗-[HA]-ペルオキシダーゼにてプローブされたウエスタンブロットにおいて、パネル上部は、クーマシーブルーにて染色のタンパク質ブロットを表し、パネルの下部は、該当するウエスタンブロットを示している。より多くのラットアポトーシス・誘発eIF-5Aが、第二のトランスフェクションより第一のトランスフェクションにおいて検知するとができる。抗-p53にてプローブされるウエスタンブロットにおいて、パネル上部のAでは、クーマシーブルーにて染色のタンパク質ブロットを表し、そしてパネルの下部では、p53によるウエスタンブロットを示している。第一のトタンスフェクションに対し有意的に多くのp53が、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールによりトランスフェクトされる細胞より、pHM6-センスrF5Aにてトランスフェクトされる細胞にて検出することができる。ラットのアポトーシス誘発eIF-5Aの発現が有意に少ない第二のトタンスフェクションに対し、pHM6-センスrF5A、pHM6-LacZ又はモック(Mock)コントロールにてトランスフェクトされた細胞間のp53のレベルに検出可能な差がなかった。
【0154】
実施例5
本例は、アポトーシスに特異的なeIF-5Aが、活性p53(RKO細胞)を有する細胞、及び活性p53(RKO細胞)を有しない細胞のアポトーシスを誘発でき、そのアポトーシスに特異的なeIF-5Aが、p53経路以外の経路を通りアポトーシスを開始できることを示している。さらにこれは、上流に作用し広範囲な異なる型のガンを殺すことができるという、当方の意図が裏付けられている。
【0155】
さらに本例では、eIF5A1の活性部位が、RNA結合領域をほとんど含むようなタンパク質のカルボキシ末端(すなわち切断されたeIF-5Aによる実験を参照)であることを示唆している。
【0156】
さらに本例では、ヒトeIF5A2が、それがアポトーシスを誘発できない様大部分増殖eIF-5Aの可能性を実証している。従ってヒトのデータバンクにおける2つのeIF-5A遺伝子のうちアポトーシスに特異的なeIF5A1がアポトーシス遺伝子であり、eIF5A2が増殖遺伝子であると考えられる。
【0157】
PKO及びPKO-E6細胞の培養
野生型p53を発現するヒト結腸悪性腫瘍細胞株のPKO(American Type Culture Collection CRL-2577)、及びp53の通常なレベル及び機能の減少をもたらす、安定に組み入れられたヒト乳頭腫ウイルスE6原ガン遺伝子を含むPKO由来の細胞株としてのPKO-E6(American Type Culture Collection CRL-2578)を、トランスフェクトに基づく実験のため使用した。PKO及びPKO-E6細胞を、非必須アミノ酸、Earle's塩、及びL-グルタミンと共にMinimum Essential Medium Eagle(MEM)に培養した。その培養培地には、10%の胎児牛血清(FBS)及び100単位のペニシリン/ストレプトマイシンが補充された。その細胞を、5%のCO2と95%の空気の加湿環境下にて37℃にて増殖させた。その細胞を、0.25%のトリプシン及び1mMのEDTAの溶液により接着細胞を剥離させることにより、3乃至4日ごとにサブカルチャーした(subcultured)した。剥離細胞を、新たな培養皿に新鮮な培地と分離比を1:10乃至1:12にて調製した。
【0158】
ヒトeIF5A2のクローニング
GenBank(ACCESSION XM 113401)から利用できるヒトeIF5A2の配列に対し設計されたプライマーを用い、ヒトeIF5A2を、PKO細胞より単離されたRNAによるRT-PCRで単離した。図38では、ヒトeIF5A2の配列を有するRKO細胞から単離されたヒトeIF-5Aの配向が提供される。RNAを、GenElute Mammalian Total RNA Miniprep Kit(Sigma)を用い、PKO細胞から単離した。eIF5A2を増幅させるために使用される前方プライマーが、5'AAACTACCATCTCCCCTGCC3'の配列を有し、逆方プライマーが、5'TGCCCTACACAGGCTGAAAG3'の配列を有した。得られた936bpのPCR産生物が、pGEM-T Easy Vector(Promega)にサブクローンされ、そして配列決定された。
【0159】
次にpGEN-T Easy-eIF5A2の構造を、哺乳動物発現ベクターpHM6(Roche)内に、フレームにてサブクローンされるようeIF5A2 PCR断片を生成するための鋳型として使用した。ヒトeIF-5A2を増幅するために用いられた前方プライマーが、5'ATCAAGCTTGCCCACCATGGCAGACG3'であり、逆プライマー(reverse primer)が、5'AACGAATTCCATGCCTGATGTTTCCG3'であった。得られた505bpのPCR産生物がHind3及びEcoR 1にて消化され、pHM6のHind3及びEcoR 1にサブクローンされた。
【0160】
pHM6-切断eI5A1の構造
eIF5A1のカルボキシ末端領域が、そのアポトーシス誘発活性に重要であるかどうか、決定するために、カルボキシ末端を欠失したeIF5A1が構成された。アミノ酸1から127をコードする欠失eIF-5A1が、鋳型としてpBS-ラットeIF5A1を使用するPCRにより生成された。前方PCRプライマーが、5'GCCAAGCTTAATGGCAGATGATTTGG3'であり、そして逆方プライマーは、5'TCCGAATTCGTACTTCTGCTCAATC3'であった。得られた390bpのPCR産生物が、Hind3及びEcoR 1にて消化され、pHM6のHind3及びEcoR 1にサブクローンされた。
【0161】
トランスフェクション
トランスフェクション実験に使用されるPKO又はPKO-E6細胞を、ヘキスト染色(Hoescht staining)用として使用する細胞に対し8ウエル・チャンバー培養スライド(Falcon)又はフローサイトメトリーにより分析されるよう細胞に対し6ウエルプレートにて培養した。その細胞を、10%のFBSにて補給されるが、ペニシリン/ストレプトマイシンを欠失したMEM培地にて、70乃至80%の密集度に増殖させた。8ウエル培養スライドの1ウエルに充分なトランスフェクション培地を、22μlの血清の無いMEMに0.425μgのプラスミドDNAを希釈して調製し、その混合物を室温にて15分間インキュベートした。トランスフェクション試薬である、0.85μlのLipofectAMINE(Gibco,BRL)を、22μlの血清の無いMEMにて希釈し、さらに室温にて5分間インキュベートした。5分後LipofectAMINE混合物を、DNA混合物に加えそして30乃至60分間室温にてインキュベートした。トランスフェクトされた細胞を、血清の無いMEMにて1回洗浄し、その後44μのMEMをトランスフェクション培地に加え、それを細胞の上に被せるようにした。その細胞を増殖チェンバー内へ4時間にて戻した。インキュベーション後、88μlのMEM+20%のFBSを細胞に加えた。次にその細胞をさらに44時間培養し、その後前記のようにヘキスト(Hoescht)33258にて染色した。別の組みの実験において、8ウエル培養スライドにおけるRKO又はRKP-E6細胞を、トランスフェクションから24時間後に0.25μg/mlのアクチノマイシンD(Actinomycin D)にて処理し、そして20時間後ヘキスト(Hoescht)にて染色した。6ウエルプレートで行われたトランスフェクションを、全ての試薬が4.81倍(times)だけ増大したことを除いて同じ方法にて行った。6ウエルプレートにてトランスフェクトされたRKO細胞を、トランスフェクションから48時間後に採取し、そして下記のようにフローサイトメトリーにて分析するため固定した。
【0162】
トランスフェクション効率の決定
トランスフェクションの効率は、5-ブロモ-4-クロロ-3-イオドリル-β-D-ガラクトピラノシド(X-GAL)にて、pHM6-LacZ-トランスフェクトされた細胞を染色することにより決定した。青色染色の細胞が、LacZ発現のトランスフェクトされた細胞であり、そして青色染色細胞数を全細胞数で割ることにより、トランスフェクション効率を計算した。トランスフェクトされた細胞を、トランスフェクション後48時間染色した。その細胞をPBSで2回洗浄し、そして0.5%のグルタルアルデヒド/PBSにて室温で10分間固定した。その細胞を1mMのMgCl2/PBSにて3回洗浄し、さらに青色に染色された細胞が現れるまで染色溶液[5mMのK4Fe(CN)6.3H2O,5mMのK3Fe(CN)6,1mMのMgCl2,0.1%のX-GAL in PBS]にてインキュベートした。
【0163】
ヘキスト染色(Hoescht Staining)
核の断片化及び縮合に基づくアポトーシス細胞を同定するため、核染色のヘキスト(Hoescht)を、トランスフェクトされたPKO及びPKO-E6細胞の核を標識化するために使用した。無水メタノールと氷酢酸が3:1の混合液から成る固定液を、使用直前に調製した。等容量の固定液を、細胞を培養スライドに増殖させる培地に付加し、2分間インキュベートした。培地/定着液の混合物を細胞から取り出して廃棄し、そして1mlの固定液をその細胞に付加した。5分後その固定液を廃棄し、そして1mlの新鮮な固定液をその細胞に付加し5分間インキュベートした。この固定液を廃棄しそしてその細胞を、1mlのヘキスト染色(Hoescht Staining)(0.5μg/ml Hoescht 33258 in PBS)を加える前に、4分間空気乾燥した。暗所にて10分間インキュベートした後、染色溶液を廃棄し、スライドを脱イオン水にて1分間にて3回洗浄した。洗浄後、1mlのMcIlvaine's緩衝液(0.021 Mのクエン酸、0.058MのNa2HPO4・7H2O;pH5.6)を細胞に付加し、暗所にて20分間インキュベートした。緩衝液を廃棄しそしてその細胞を、暗所にて5分間空気乾燥し培養スライドのウエルを分離するチャンバーを取り出した。蛍光(Vector Laboratories)のため数滴のVectashirld 取り付け培地を、そのスライドに加えカバースリップを被せた。染色された細胞を、UVフィルターを用いて蛍光顕微鏡下にて観察した。明るく染色された細胞又は断片化された核を、アポトーシスとしての得点とした。
【0164】
フローサイトメトリーによるDNA断片化の検出
アポトーシスの期間に形成されるDNAの断片を、Fluorescein-FragELTM DNA Fragmentation Detection Kit(Oncogene Research Products)を用い、フルオレセイントにて標識化されたデオキシヌクレオチドで標識化した。6ウエルの培養プレートに種々の構成にてトランスフェクトされた細胞を、トランスフェクションから48時間後トリプシン化することにより採取し、製造業者の指示により固定し標識化した。簡単には細胞を、1000xgにて40℃、5分間でペレット化し、PBS(8g/L NaCl,0.2g/L KCl,144g/L Na2HPO4,及び0.24g/L KH2PO4)に1回洗浄した。その細胞を4%のホルムアルデヒド/PBSにて再懸濁し、そして室温にて10分間インキュベートした。その細胞を再度ペレット化し1mlの80%エタノールにて再懸濁しそして4℃にて保存した。分析する日に1mlの固定された細胞(1X106細胞/ml)を、マイクロフージ・チューブ(microfuge tube)に移し、そしてその細胞を1000xgにて5分間遠心分離によりペレット化した。ペレット化された細胞を、200μの1XTBS(20mM Tris pH7.6,140mMのNaCl)にて再懸濁し、そして10乃至15分室温にてインキュベートした。次にその細胞を再度ペレット化し、20μg/mlのプロテアーゼKを100μlにて再懸濁し、室温で5分間インキュベートした。その細胞を1XTdT Equilibration 緩衝液100μlにて再懸濁し、室温にて10乃至30分間インキュベートした。次にその細胞を遠心分離によりペレット化し、TdT Labeling Reaction Mixtureを60μlにて再懸濁し、そして暗所にて1乃至1.5時間インキュベートした。インキュベートした後その細胞を遠心分離によりペレット化し、200μlの1XTBSにて2回洗浄した。その細胞を0.5mlの1XTBSである最終容量にて再懸濁し、そして488nmのアルゴンイオン・レザー源を備えたフロサイトメータにて分析した。
【0165】
タンパク質の抽出及びウエスタン・ブロッテング
タンパク質をトランスフェクトされた細胞からウエスタン・ブロッテング用に単離し、その細胞をPBSにて2回洗浄し、さらに150μlの熱いSDSゲル負荷緩衝液(50mMのTris-HCl pH6.8,100mMのジチオセリオール、2%のSDS,0.1%のブロモフェノール・ブルー、及び10%のグリセロール)を加えた。その細胞溶離物をマイクロ遠心分離チューブに集め、95℃にて10分間加熱しさらに13,000Xgにて10分間遠心分離にかけた。上澄液を新たなマイクロ遠心分離チューブに移し、そして使用に準備するまで-20℃にて保存した。
【0166】
ウエスターン・ブロッテング用に、全量5μg又は10μgのタンパク質を、12%のSDS-ポリアクリルアミド・ゲルに分けた。分離されたタンパク質を、ポリビニリデン・ジフルオライド膜に移した。次にその膜を、ブロッキング溶液(5%のスキム(skim)乳粉、PBSに0.02%のナトリウム・アジド)にて、1時間インキュベートし、そしてPBS-T(PBS+0.005%のTween-20)にて15分間3回洗浄した。その膜をPBS-Tに4℃にて1昼夜保存した。翌日室温に加温した後、その膜を1μg/mlのポリビニル・アルコールに30秒間ブロックした。その膜を脱イオン水にて5回すすぎ洗いし、さらにPBSに5%の乳溶液にて30分間ブロックした。1次抗体が膜にてインキュベートする前に、PBS/0.025%のTween-20に5%乳の溶液にて、30分間予備インキュベートした。p53(Ab-6)を認識する原ガン遺伝子からモノクロナール抗体か、ニワトリにて高められたヒトeIF5A1のc-ターミナル末端に相同の合成ペプチド(アミノ-CRLPEGDLGKEIEQKYD-カルボキシ)に対し、対象とされるポリクロナール抗体とのいずれかにてその膜をブロットした。p53に対するモノクロナール抗体を、0.1μg/mlの希釈にて、そしてeIF5A1に対する抗体を、1:1000の希釈にて使用した。1次抗体にて60乃至90分間インキュベートした後、その膜をPBS-Tにて15分間3回洗浄した。次に2次抗体をPBS/0.025%Tween-20における1%乳にて希釈し、その膜を60乃至90分間インキュベートした。p53(Ab-6)を1次抗体として使用すると、使用される2次抗体を1:1000に希釈し、アルカリホスファターゼ(Rockland)に結合したヤギ抗-マウスIgGであった。抗-eIF5A1が、1次抗体として使用された場合、パーオキシダーゼ(Gallus Immunotech)に結合したラビット抗-ニワトリIgYを、1:10000の希釈にて使用した。二次抗体にてインキュベートした後その膜をPBS-Tにて3回洗浄した。2種の検出方法つまり比色分析法及び化学蛍光法を、ブロット生成のために使用した。p53(Ab-6)を、アルカリホスファターゼ接合の二次抗体と結合する一次抗体として使用した場合のみ、比色分析を使用した。結合した抗体を、0.33mg/mlのニトロ・ブルーテトラゾリウム、0.165mg/mLの5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル・ホスフェート、100mMのNaCl,5mMのMgCl2、及び100mMのTris-HCl(pH9.5)の溶液にて、暗所にてそのブロットをインキュベートすることにより可視化した。その色反応を、PBSにおける2mMのEDTAにブロットをインキュベートすることにより停止させた。化学蛍光検出方法が、抗-[HA]-パーオキシダーゼ及び抗-eIF5A1を含む、他のあらゆる一次抗体に対し使用された。ECLプラスウエスタンブロット検出キット(Amersham Pharmacia Biotech)を、ペルオキシダーゼに結合した結合抗体を検出するため使用した。簡単にはその膜を、光によりブロット乾燥し、その後暗所にて試薬Aと試薬Bとを40:1の混合にして5分間インキュベートした。その膜をドライブロットし、アセテートシート間に置いて、そして10秒から30分間時間を変え、その時間X線フイルムに暴露した。
【0167】
図39は、一過性トランスフェクション後のPKO及びPKO-E6細胞に発生するアポトーシスの割合を明示するグラフを示す。PKO及びPKO-E6細胞を、pHM6-LacZ又はpHM6eIF-5A1にて一過性にトランスフェクトした。24時間後その細胞を、0.25μg/mlのアクチノマイシンDか、等量のメタノール(コントロール)のいずれかにて処理した。その細胞を20時間後ヘキスト(Hoescht)にて染色し、UVフイルターを用い蛍光顕微鏡下にて観察した。縮合されたクロマチンにてより明るく染色された細胞を、アポトーシスとしての得点とした。上記実験を検討し、アクチノマイシンDにて処理し、そしてpHM6-LacZにてトランスフェクトしたPKO細胞と、アクチノマイシンDにて処理されなく、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞とを比較すると、アポトーシスが240%増大するを示した。アクチノマイシンDにて処理し、そしてpHM6eIF-5A1にてトランスフェクトしたPKO-E6細胞と、アクチノマイシンDにて処理されなく、pHM6-LacZにてトランスフェクトした細胞とを比較すると、アポトーシスが105%増大することを示した。
【0168】
図40が、一過性トランスフェクション後のPKO細胞に発生するアポトーシスの割合を明示するグラフを示す。PKO細胞を、pHM6-LacZ、pHM6eIF5A1、pHM6-eIF5A2又はpHM6の切断eIF5A1にて一過性にトランスフェクトした。44時間後その細胞をヘキスト(Hoescht)にて染色し、UVフイルターを用いて蛍光顕微鏡下にて観察した。縮合されたクロマチンにより明るく染色された細胞を、アポトーシスとして得点した。pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞を、pHM6-LacZにてトランスフェクトされたコントロール細胞と比較してアポトーシスが25%増大した。この増大では、pHM6-eIF5A2又はpHM6の切断eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞に対し明らかでない。
【0169】
図41が、一過性トランスフェクション後のPKO細胞に発生するアポトーシスの割合を明示するグラフを示す。PKO細胞がトランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ、又はpHM6-eIF5A1にて一過性にトランスフェクトされたかのいずれかである。44時間後その細胞をヘキスト(Hoescht)にて染色し、UVフイルターを用いて蛍光顕微鏡下にて観察した。縮合されたクロマチンにより明るく染色された細胞を、アポトーシスとして得点した。トランスフェクションの効率のため収集後、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞の60%がアポトーシスであった。
【0170】
図42は、一過性トランスフェクション後のPKO細胞のアポトーシスのフローサイトメトリー分析を提供する。PKO細胞がトランスフェクトされない状態か、pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2、又はpHM6の切断eIF5A1にて一過性にトランスフェクトされたかのいずれかであった。48時間後その細胞を採集しそして固定した。アポトーシスを反映する断片化されたDNAを、フルオロセイン結合のデオキシヌクレオチドにて標識化し、488nmのアルゴン・イオンレザー源を備えたフローサイトメトリーにて分析した。ゲートE下発生する蛍光は、非アポトーシス細胞からであり、そしてゲートF下に発生する蛍光は、アポトーシスを受けた細胞からである。その表が、各ゲートのピーク下の面積に基づいて計算されたアポトーシスを受けた細胞の割合を明示している。トランスフェクトされない細胞におけるアポトーシスのバックグランドに対し、及びトランスフェクト効率に対し補正した後、pHM6-eIF5A1にてトランスフェクトされた細胞の80%が、アポトーシスを呈した。pHM6-LacZ、pHM6-eIF5A1、pHM6-eIF5A2、又はpHM6の切断eIF-5A1にてトランスフェクトされた細胞が、アポトーシスのバックグランド・レベルしか呈さなかった。
【0171】
図43が、0.25μg/mlのアクチノマイシンDにて、0,3,7,24及び48時間、処理されたRKO細胞から抽出されたタンパク質のウエスタンブロット法を提供する。5μg(アンチ-eIF5A1のため)又は10μg(抗-p53のため)の全タンパク質を、12%のSDS-ポリアクリルアミド・ゲルにて分離し、ポリブニリデン・ジフルオライド膜に移した。パネルの上部は、一次抗体として抗-p53を使用するウエスタンブロットを明示している。パネルの中央は、一次抗体として抗eIF5A1を使用するウエスタンブロットを明示している。パネルの下部は、等量の負荷を実証するために、化学蛍光検出の後、クーマシーブルーにて染色された抗-eIF5A1ブロットのため使用される膜を明示している。p53とeIF5A1が共にアクチノマイシンDにより処理することにより上限調節される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロモータに操作可能に結合された配列番号:3に記載されるヒトアポトーシスに特異的なeIF−5Aのヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項2】
ヒトのガン細胞におけるアポトーシスを増加させる薬剤を製造するための請求項1に記載の発現ベクターの使用。
【請求項3】
アポトーシス特異的なeIF−5Aの発現増加が、配列番号:3によってコードされるポリペプチドの発現を増加させることである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記細胞がヒトに含まれる、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記薬剤がヒトに投与される、請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記薬剤がヒトのガン細胞に直接投与される、請求項2に記載の使用。
【請求項7】
前記発現ベクターがDNA発現ベクターである、請求項2に記載の使用。
【請求項8】
前記発現ベクターがRNA発現ベクターである、請求項2に記載の使用。
【請求項9】
前記プロモータが構造的に活性なプロモータである、請求項2に記載の使用。
【請求項10】
前記発現ベクターがプラスミドである、請求項2に記載の使用。
【請求項11】
前記発現ベクターがアデノウイルスである、請求項2に記載の使用。
【請求項12】
前記ヒトのガン細胞が骨髄由来である、請求項2に記載の使用。
【請求項1】
プロモータに操作可能に結合された配列番号:3に記載されるヒトアポトーシスに特異的なeIF−5Aのヌクレオチド配列を含む発現ベクター。
【請求項2】
ヒトのガン細胞におけるアポトーシスを増加させる薬剤を製造するための請求項1に記載の発現ベクターの使用。
【請求項3】
アポトーシス特異的なeIF−5Aの発現増加が、配列番号:3によってコードされるポリペプチドの発現を増加させることである、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記細胞がヒトに含まれる、請求項2に記載の使用。
【請求項5】
前記薬剤がヒトに投与される、請求項2に記載の使用。
【請求項6】
前記薬剤がヒトのガン細胞に直接投与される、請求項2に記載の使用。
【請求項7】
前記発現ベクターがDNA発現ベクターである、請求項2に記載の使用。
【請求項8】
前記発現ベクターがRNA発現ベクターである、請求項2に記載の使用。
【請求項9】
前記プロモータが構造的に活性なプロモータである、請求項2に記載の使用。
【請求項10】
前記発現ベクターがプラスミドである、請求項2に記載の使用。
【請求項11】
前記発現ベクターがアデノウイルスである、請求項2に記載の使用。
【請求項12】
前記ヒトのガン細胞が骨髄由来である、請求項2に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図21】
【図23】
【図25】
【図26】
【図28】
【図30】
【図31】
【図32】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図24】
【図27】
【図29】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図43】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図21】
【図23】
【図25】
【図26】
【図28】
【図30】
【図31】
【図32】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図22】
【図24】
【図27】
【図29】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図43】
【公開番号】特開2011−103892(P2011−103892A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11061(P2011−11061)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2003−515637(P2003−515637)の分割
【原出願日】平成14年7月23日(2002.7.23)
【出願人】(501325532)セネスコ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【分割の表示】特願2003−515637(P2003−515637)の分割
【原出願日】平成14年7月23日(2002.7.23)
【出願人】(501325532)セネスコ,インコーポレイティド (1)
【Fターム(参考)】
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