説明

核酸の増幅方法及びその装置

本発明は、核酸増幅において、標識または修飾されたオリゴマーの使用量を下げることで、コストを下げ、かつ検出装置の測定範囲内に収まるように希釈などの操作を必要とせずに検出が可能とするものである。 当該目的を達成するために、本発明は、標的核酸を抽出する抽出工程、発光体または修飾基で標識されたオリゴマーに前記標識されたオリゴマーと同一の塩基配列を有しかつ発光体または修飾基で標識されていないオリゴマーを混合する混合工程、前記標識されたオリゴマーと標識されていないオリゴマーの混合物を用いて標的核酸を増幅する増幅工程、修飾基で標識されたオリゴマーを用いた場合には前記修飾基で標識されたオリゴマーとその増幅物に発光体を付加する工程、及び前記増幅された標的核酸を光検出器により測定する検出工程からなる核酸測定方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、生化学、分子生物学、医療分野などにおいて診断及び研究に用いられる標的核酸の増幅方法、検出用試薬、及びその装置に関する。
【背景技術】
微量の核酸を検出するための技術として、さまざまな核酸増幅法において、標識されたオリゴマーやターミネーターなどを用いて生成した核酸での検出が行なわれている。
例えば、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法は、単鎖または二本鎖の標的核酸の配列に相補的な二種類のオリゴマーを合成し、耐熱性DNAポリメラーゼの存在下の反応液中に過剰量加える。もし標的核酸が反応液中に存在すれば、オリゴマーはそれらの特定の部位に結合する。そして、ポリメラーゼは、標的核酸に相補的なヌクレオチドを連続的に付加することによりこれらのオリゴマーの3’末端を伸張する。連続的に温度を上下することにより、伸張されたオリゴマーは、生成核酸として標的核酸から分離し、元の標的核酸と同様にオリゴマーと結合できる。このプロセスを繰り返すことにより、2種類のオリゴマー間の標的核酸を指数的に増幅させることができる。
また、LCR(リガーゼ連鎖反応)法は、2種類の隣接するオリゴヌクレオチドプローブとそれらにそれぞれ相補的なプローブを、温度安定性DNAリガーゼ存在下の反応液中に過剰量加える。ここで各プローブは標的配列と結合し、DNAリガーゼによって2種類の隣接して結合したプローブは連結される。そして、PCR法と同様、連続的に温度を上下することで連結されたプローブは標的配列から分離し、元の標的核酸と同様にプローブと結合する。
その他、RCR(修復連鎖反応)法、TAS法、3SR法、NASBA法、SPSR法、LAT法、SDA法などが核酸増幅法として利用されている。
この中でも特に、PCR法は種々の試料中核酸の高感度分析法として使用可能で、感染症や遺伝病、がんの診断などに利用される。さらに、PCR法は、移植や親子鑑定の際のDNAタイピング検査にも適した方法である。この場合、分析や検査対象となる核酸は、標識されたオリゴマーを用いて増幅反応が行われることが多い。現在では、標識として用いられている化学物質の開発や、検出装置の改良により、ごく微量でも検出が可能となっている。
上記の核酸増幅法では、さまざまなキットなども販売され標識方法としては簡便化されており、通常、発光体で標識されたオリゴマーを用いて標的核酸が多量に増幅される。そして、検出感度が向上した現在のシーケンサーやプレートリーダーなどで増幅した標的核酸の検出を行うためには、このサンプルを装置の検出範囲内に入るように希釈して用いるのが普通である。そのため、検出装置で測定が可能となるように生成核酸の濃度を最適化するため、試料を分注、希釈するなどの煩雑な操作が必要となる。また、標的核酸の増幅を自動化する場合などでは、希釈をするための工程や装置部品などが必要である。
さらに、上記の測定方法で、は、一回の測定につき生成核酸の数十分の一しか用いられない。また、生成核酸の測定回数も、ほとんどの場合、数回である。このため、不必要に標識されたオリゴマーが用いられているといってもよい。しかし、現在の核酸増幅法では、標的とする鋳型核酸に対してある一定量以上のオリゴマーが必要となるため、単に標識されたオリゴマーを減らすこともできない。今後、遺伝子診断などが発達してくると、多数の検体において同じ標的部位の増幅を行う必要があるが、このときに標識されたオリゴマーの使用量を減らすことができれば1検体あたりに必要なコストを低くすることができる。
これらの問題点を解決するためには、簡便で、かつコストの低い標識核酸増幅法が望まれている。
【発明の開示】
本発明では、標識又は修飾されたオリゴマーと該標識又は該標識されていないオリゴマーの混合物を用い、任意の核酸を増幅する。混合物は、生成核酸を含む溶液中の該標識又は該発光体の量が検出装置の測定範囲内に収まるよう調製する。尚、修飾されたオリゴマーを用いる場合は、修飾基に発光体を結合させる。
本発明によれば、従来の方法と比較して標識又は修飾したオリゴマーの使用量が下がるため、増幅のためのコストダウンが図れる。また、生成核酸の希釈などの操作が省けるため、特に同じ標的核酸を多数のサンプルから増幅する場合には、操作時間を短縮することができる。
以下、上記及びその他の本発明の新規な特徴と効果について、図面を参酌して説明する。尚、本明細書では以下の様に用語を定義する。
「標識」とは、生成した核酸を検出するためにオリゴマーに付加された蛍光体、発光体、放射性同位体を含む。
「標識した及び標識された」とは、前記蛍光体、発光体、放射性同位体を、オリゴマーまたは核酸に付加した及び付加されたことを含む。
「標的核酸」とは、増幅反応における反応液中に含まれる核酸のうち、任意に増幅させる塩基配列から成る核酸を含む。
「生成核酸」及び「生成DNA」とは、標識又は修飾されたもの、標識又は修飾されないものに関わらず、増幅反応において生成した核酸及びDNAを含む。
「標的核酸に関連する配列」とは、標的核酸の塩基配列と同一又は相補的な配列の一部又は全部を含む。
「鋳型となる核酸」とは、標的核酸を有し、反応開始時に存在する核酸を含む。なお、増幅反応においては、生成核酸も鋳型となるが、本発明では、鋳型となる核酸と区別する。
【図面の簡単な説明】
図1は、標識核酸の生成方法の概略図である。図2は、本発明を適用した核酸分析装置の一実施例である。図3は、図2の核酸分析装置の変形例である。図4は、実施例1の核酸増幅法の概略図である。図5は、標識されたALD−Fプライマーの割合が1/50の場合の解析結果である。図6は、標識されたALD−Fプライマーの割合が1/100の場合の解析結果である。
図7は、実施例2の抽出・増幅部100の外観図、図8は、実施例2の抽出・増幅部100の平面図、図9は、実施例2のノズルへのチップの取り付け動作説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
核酸増幅法、例えばPCR法は、単鎖または二本鎖DNAの標的となる部位を挟む二箇所の部位を選択し、その二箇所のそれぞれにDNAの複製基点となるオリゴマーを付着させ、DNAポリメラーゼを用いて反応を行うことで必要とする部位のみを増幅させる方法である。
このとき用いられるオリゴマーは、通常20〜25塩基からなり、増幅する部位に標識が必要な場合、このオリゴマーに発光体などの標識物質を付加させて用いる。
従来の標識方法では、標識されたオリゴマーは、反応液中での濃度が0.2μM〜2μMになるように標識されたもののみが加えられ、増幅された後、検出装置の測定範囲に入るように希釈されて、測定・検出が行われる。
本発明では、図1に示されるように、標識されたオリゴマー(以下オリゴマーAとする)及び当該オリゴマーと同一の塩基配列で標識されていないオリゴマー(以下オリゴマーBとする)の混合物を用いて標的核酸の増幅反応(PCR、LCR等)を行う。このとき、オリゴマーAとオリゴマーBは、同一の塩基配列ではなく、標的核酸に含まれる任意の特定配列を持つものであっても良い。また、オリゴマーAとオリゴマーBの塩基数は同じでなくても良い。
この2種類のオリゴマーは、混合量比1:1〜1:10000、より好ましくは1:10〜1:500の割合で混合され、両者の合計が反応液中で0.2μM〜2μMになるように加えて増幅反応を行う。増幅工程後には、標識された核酸と標識されていない核酸が混在して生成するが、希釈などの濃度調製をすることなく、測定・検出などを行える。
従来の標的核酸の増幅、生成核酸の希釈、検出及び分析と本発明の増幅、検出及び分析を対比すると、両者とも同じ結果を得ることが出来る。
図2は、本発明の核酸検出及び分析装置の概念図を示す。本装置は、抽出部、混合部、増幅部、検出部、信号処理装置、及び操作及び出力部から構成される。抽出部は、生体試料から鋳型となる核酸を抽出する機構である。例えば、特開2000−166556号記載の装置を利用する。混合部は、諸定量のオリゴマーAとオリゴマーBを混合し、オリゴマー混合物を調製する機構である。増幅部は、核酸、オリゴマー混合物、及び核酸増幅試薬を混ぜ、たとえばPCR法や恒温増幅法により、所定核酸を増幅する機構である。検出部と信号処理装置は、増幅された所定核酸を検出する機構である。そして、操作及び出力部は、上記各機構を制御し、生体試料中に含まれる所定核酸を検出、及び分析できる。尚、図3記載のように、混合部がない、調製済オリゴマー混合物を利用する核酸検出及び分析装置等の変形例も存在する。
検出及び分析は、以下の手順により行われる。まず、操作及び出力部を介して、検出及び分析の操作が行われる。この指示に基づいて、抽出部で鋳型となる核酸が抽出される。次に、混合部において、標識された、又は修飾基を付加したオリゴマーに、前記標識された、又は修飾基を付加したオリゴマーと同一の塩基配列を有しかつ標識されていない、または修飾基を付加しないオリゴマーが混合される。このオリゴマーの混合物を用い、増幅部において標的核酸が増幅される。検出部において、増幅された標的核酸は検出器により検出または分析される。この検出データは信号処理装置により処理され、その結果は出力部に送信される。これらの各部は一体化された装置を構成することが、検出・分析を効率化するために好ましい。このように、本発明では、増幅部と検出部の間に、増幅された標的核酸を希釈する機構と特に必要としない。
標的核酸の増幅反応液は、ごく一般的に用いられている緩衝液(例えば、トリス−塩酸緩衝液)、耐熱性DNAポリメラーゼ(例えばTaq DNAポリメラーゼ)、塩類(例えば塩化マグネシウム)、デオキシリボヌクレオチド三リン酸、鋳型DNA(例えばヒトゲノムDNA)を用いて調製する。反応もごく一般的に用いられている変性、アニーリング、伸長の温度サイクルで行うが、標的核酸やDNAオリゴマーの配列、塩基数により多少異なる。
また、一般的な増幅用のオリゴマーが含まれないPCR用のキット(例えば、宝酒造社 PCR Amplification Kit)を用いる場合には、前記オリゴマーAとオリゴマーBの混合物の混合量比が1:1〜1:10000、より好ましくは、1:10〜1:500となり、そのオリゴマー総量がキットに指定された濃度となるように反応液に加え、指定された温度サイクルで反応を行う。
標的核酸の増幅以外の反応も同時に行う反応(例えば、RT−PCR)においても、オリゴマーAとオリゴマーBの混合量比が1:1〜1:10000、より好ましくは、1:10〜1:500の割合で混合され、その総量が反応に適した濃度となるように用いて反応を行う。これにより、生成核酸における発光強度又は放射活性が、検出又は分析に適合したものとなる。
核酸増幅法としては、PCR法のほかに、RCR(修復連鎖反応)法、TAS法、3SR法、NASBA法、SPSR法、LAT法、SDA法などが挙げられるが、上記オリゴマーの混合物を用いて行われる方法であれば特に限定されない。
増幅反応終了後、希釈を行わずに検出装置で検出又は分析を行う。このとき、生成核酸を分離しながら検出する装置(例えば、DNAシーケンサー)ではなく、反応液中で生成核酸を検出する装置(例えば、蛍光プレートリーダー)では、未反応のオリゴマーの除去を行う。
修飾基を付加したオリゴマーを用いて増幅反応を行った場合、増幅反応後、光電子増倍管、フォトダイオード、CCD素子などの光検出器を備えた装置で検出または測定できるような発光体を、当該修飾基を介して付加する処理を行った後、測定または検出を行う。また、本発明の核酸検出及び分析装置では、増幅反応終了後、増幅部において発光体を、当該修飾基を介して付加する処理を行った後、検出または分析を行う。
なお、増幅反応で用いるオリゴマーを標識する物質は、標的核酸検出時に本発明の検出部を備えた装置で検出が可能であれば特に制限がなく、蛍光物質、化学発光物質、放射性同位体などでよい。これらは、発光強度が高く、微量でも検出または分析が可能である。また、修飾基は、リン酸基、アミノ基、チオール基、ビオチン、ジゴキシゲニンなどが用いられ、どの修飾基も容易に蛍光物質または化学発光物質を付加することができる。
また、増幅した標的核酸の検出方法については、上記の検出器で検出が可能であれば特に限定されず、測定装置はDNAアナライザ、ゲルイメージングアナライザ、蛍光光度計、シーケンサー、プレートリーダー等の検出部を備えた装置であれば特に限定されない。
従来の方法では、核酸増幅時、すべての生成核酸が標識され、又は修飾基が付加されていたため、大過剰の標識された又は修飾された標的核酸が調製される。検出装置で測定が可能となるように生成核酸の濃度を最適化するため、試料を分注、希釈するなどの煩雑な操作が必要となる。また、標的核酸の増幅を自動化する場合などでは、希釈をするための工程や装置部品などが必要である。本発明では、標識又は修飾に用いる蛍光体、発光体および放射性同位体の使用量を減らすことができ、コストダウンが図れる。また、核酸処理工程を簡略化できる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例1】
特定の遺伝子(例えば標的配列としてアルドラーゼ遺伝子)領域を検出する方法について本実施例で説明する。本方法は、検体からの鋳型となるDNAの抽出工程、鋳型DNAの中の標的核酸部を増幅するためのプライマーセットの調製工程、増幅反応工程、検出工程から構成される。
[検体からの鋳型DNAの抽出工程]
検体としてヒト抹消血(全血)、バイオプシーによる組織片、尿等が使用できる。これらからのゲノムDNAの抽出は、周知の方法により行われる。例えば、ヒト抹消血の場合、QIAGEN社のDNA Blood Mini Kitが使用できる。具体的には、キットの標準プロトコールに従うが、1.5mlマイクロチューブに、ヒト全血200μL、QIAGEN Protease 20μLを加える。次いで、Buffer AL 200μLを加えて、voltexを用いて充分に攪拌後、56℃、10分間のインキュベーションを行う。その後、マイクロチューブを遠心して液を集め、エタノール 200μLを加えて再びvoltexを用いて充分に攪拌する。その混合液全量をコレクションチューブ中のスピンカラムに注入し、8000rpm、1分間遠心して、液をカラムに通し、ゲノムDNAをカラム内に捕捉する。その後、同じスピンカラムを新しいコレクションチューブに移し、蓋をあけてスピンカラムにBuffer AW1 500μLを注入して8000rpmで1分間遠心する。再びスピンカラムを新しいコレクションチューブに移し、次にBuffer AW2 500μLを注入して14000rpmで3分間遠心し、カラムの洗浄を行う。スピンカラムを新しいコレクションチューブに移し、Buffer AE 100μLを注入し、8000rpm、1分間遠心し、捕捉したゲノムDNAを溶出させ、ゲノムDNA溶液を得る。尚、溶出ゲノムDNA溶液を吸光度計を用いて測定することにより、溶出液中の核酸量を定量する。
尿の場合は、まず、遠沈管に採取した尿を1000rpmで5分遠心して沈渣のみを集め、さらにその沈渣に生理食塩水を加えて再分散させて洗浄し、再度1000rpmで5分遠心して沈渣を集めて試料とする。その後、周知のプロテナーゼK消化し、フェノール・クロロホルム抽出などでゲノムDNAを抽出する。組織切片も同様にできる。また、尿沈渣物、組織片、血液の白血球を−80度で凍結保存した試料を使ってもよい。
[標的核酸部を増幅するためのプライマーセットの調整工程]
PCR増幅用のプライマーとして以下の3種のポリヌクレオチドを使用した。

ALD−FFプライマーとALD−FNプライマーは、共に同じ配列を有するポリヌクレオチドであり、標的配列のアルドラーゼ遺伝子領域の一部とハイブリダイズし、共にPCR増幅反応の際のFORWARDプライマーとして使用する。また、ALD−FFプライマーは、その5‘末端に蛍光体であるFAMを結合させた標識ポリヌクレオチドであり、蛍光検出により検出できる。ALD−FNプライマーは非標識のポリヌクレオチドである。蛍光体のポリヌクレオチドへの標識は周知の方法により行うことができる。
ALD−Rプライマーは、標的配列のアルドラーゼ遺伝子領域の一部とハイブリダイズし、PCR増幅反応の際のREVERSEプライマーとして使用する。
PCR増幅反応のFORWARDプライマー溶液には、ALD−FFプライマーとALD−FNプライマーを1:100の濃度比で、全体で25μMの濃度になるように調製した。
REVERSEプライマー溶液には、ALD−Rプライマーを25μMに調製したものを使用した。
[増幅反応工程]
図4を参照して本工程について説明する。本工程では、上述のプライマーを用いてPCR増幅反応を行う。
鋳型となるゲノムDNA 1μg、2mMのdNTP 5μL、50mMのMgCl 1.5μL、10×Tspバッファー 5μL、滅菌水 35.1μL、Tsp DNAポリメラーゼ 0.4μL、25μMのFORWARDプライマー混合溶液(ALD−FFプライマー:ALD−FNプライマー=1:100の混合液)1μL、25μMのREVERSEプライマー溶液 1μLを混合する。PCR反応条件は、最初の変性条件を94℃で2分間、増幅温度サイクルは、94℃で30秒間、57℃で30秒間、72℃で60秒間を10回、次いで、89℃で30秒間、57℃で30秒間、72℃で60秒間を20回繰り返し、最後に伸長反応を72℃で7分間行う。次に、PCRで増幅させた生成核酸を検出する。これについては後述する。
比較のため、従来の様式でのPCR反応を行った。この場合は、FORWARDプライマー溶液として、ALD−FFプライマー溶液のみを使用した。その他の、濃度、液量、反応条件等は同じに設定した。本実施例でのPCR条件での生成DNA量と、従来PCR条件での生成DNA量を比較した。比較は、周知のゲル電気泳動にて行う。ゲル電気泳動装置にはMupid(アドバンス社製)を使用した。使用ゲルはアガロースとした。まず本実施例の反応液と従来PCR反応液の各5μLに対して各々6×サンプルバッファー 1μLを加え、Mupid内のゲルの異なる注入口に各々注入した。次いで、100Vの定電圧で50分間、電気泳動を行った。その後、5mg/Lのエチジウムブロマイド溶液でゲル全体を染色した。エチジウムブロマイドは、DNA2本鎖があると、その間に取り込まれ、紫外線照射により強い蛍光を発するようになる。この蛍光強度を測定する事でDNA量を定量する事ができる。電気泳動により、鋳型DNAと、PCRでの生成DNAとが(分子量の違いにより)バンド状に分離される。生成DNAのバンドの蛍光強度を比較した結果、本実施例でのPCR条件での生成DNA量と、従来PCR条件での生成DNA量はほぼ同程度であった。本実施例でのFORWARDプライマー混合溶液によるPCRは従来と変わらないことが確認でき、PCR反応の違いはなかった。つまり、本実施例のFORWARDプライマー混合溶液を使っても、通常の条件と同じPCR増幅反応を行うことができる。なお、上記紫外線照射によるエチジウムブロマイドからの蛍光検出では、FAM蛍光体の影響は除いており、DNA量の定量にはFAM蛍光体の影響はない。
上記実施例の他、PCR増幅反応際のFORWARDプライマー混合溶液として、ALD−FFプライマーとALD−FNプライマーを1:1から1:10000の濃度比で、調製したものでも評価した。上記実施例と同じくゲル電気泳動で生成DNA量を確認した結果、どの場合でもPCR反応によって生成される生成DNA量はほぼ同等であった。このことは、本実施例でのプライマー混合溶液が、増幅反応自体を阻害することはほとんどないことを示している。つまり、本実施例のプライマーは、従来の条件をそのまま使うことができる為、従来方式のPCR増幅反応からの移行が容易である。また他の増幅法にも同様に適用可能である。
[検出工程]
本工程では、上記工程で調製した生成DNAを検出する。検出方法・装置は種々適用できるが、本実施例ではキャピラリー電気泳動装置によりSSCP解析を実施する場合について説明する。
キャピラリー電気泳動装置として、Applied Biosystems社 ABI PRISM(TM)3100 Genetic Analyzerを使用する。独自に作製した内径75μm、検出長36cmのキャピラリーを使用し、同社製のGeneScanポリマーを独自に濃縮調整したものを充填して泳動検出する。
上記増幅反応工程で、FORWARDプライマー混合溶液を使って調整したPCR生成DNAを含む反応液3μLに、周知の標識されたフラグメントマーカ(既知の塩基長のオリゴマー)を適量含むホルムアミド37μLを混合し、94℃で2分間熱変性を行う。その後、氷冷し、キャピラリー電気泳動用の試料液とする。生成DNAを含む反応液は、希釈をせずにそのまま用いる。電気泳動条件は、キャピラリーの制御温度を18℃、試料注入条件を12KV、5秒、泳動分離を12KVで50分間行う。尚、解析する信号強度は、標準で得られる泳動データを基に、ベースライン、振幅を独自に変更して使用する。
図6に、本実施例による泳動結果の一例を示す。横軸に泳動時間、縦軸に検出蛍光強度を示している。33分の位置のピークはフラグメントマーカのピークであり、泳動時間39分付近と41分付近に現れるピークがPCR増幅された生成DNAのピークである。鋳型がゲノムDNAであり、父親由来と母親由来の両者のゲノムから標的核酸が増幅されるため、2つのピークとなって現れる。この2つのピークを解析することによって、診断などを行うことが出来る。また、これに限らず、種々の泳動試料のピークを測定・解析することによって、遺伝子の有無、多型情報などを得ることが出来る。
尚、図5に、ALD−FFプライマーとALD−FNプライマーの濃度比が1:50であるFORWARDプライマー混合溶液で行った場合の電気泳動結果を示す。図6と同様の位置に信号ピークが得られた。生成DNAのピークの面積強度は図6に比べ約2倍の大きさであった。
なお、比較のため、従来条件での反応液3μL液を、上記と同じ手順で電気泳動して測定した。その結果、注目している生成DNAのピークの蛍光強度が強すぎて検出器の信号強度をオーバーフローしてしまい、正確な測定が出来なかった。試料反応液3μLに希釈液297μLを加えて混和して希釈し、この液の3μLをピペットにて取り出し、再び上記手順で測定するとほぼ同じ泳動測定結果が得られ、同様の解析結果が得られた。
上述の増幅反応工程で述べたとおり、ALD−FFプライマーとALD−FNプライマーを1:1から1:10000の濃度比のFORWARDプライマー混合溶液で行った場合、生成DNA量はどれもほぼ同じ(従来法とも同じ)であった。混合比を変えたFORWARDプライマー混合溶液を使った反応液について、電気泳動測定した結果、泳動ピークの大きさは、混合比率に応じて増減した。特にALD−FFプライマーとALD−FNプライマーを1:10から1:500の濃度比としたとき、濃度比とピーク面積強度がほぼ比例していることが確認できた。この為、好適にはALD−FFプライマーとALD−FNプライマーの濃度比を1:1から1:10000の範囲内で調整し、検出器の感度に応じて適正な強度レベルになるようにしたFORWARDプライマー混合溶液を使用する。この場合、希釈工程を行うことなく検出工程に移ることができ、システムの簡略化ができ、装置が簡便になる。
また、標識プライマーは非標識のプライマーに比べコストが高い。本実施例では、検出装置の感度に応じて、標識プライマー(この場合はALD−FFプライマー)の使用量が低減できるため、全体的に試薬コストを抑えることが可能となる。
本実施例によれば、PCRなどの増幅反応後の反応液を希釈することなく、直接検出工程を実施できる。この為、操作が容易になり、自動化装置を構築する場合、システムが簡略化でき、装置がより簡便になり、安価になる。
また、検出装置の感度に応じて、コストの高い標識プライマーの使用量が低減できる。この為、全体的に試薬コストを抑えることが可能となり、ランニングコストを低減することが出来る。
なお、上記実施例では、標識物として蛍光体FAMを使用したが、標識物はこれに限定されない。種々の蛍光体、さらに化学発光体、生物発光体、りん光体、放射性同位体、微粒子など、種々の標識が使用でき、同様の効果を得ることが出来る。
さらに、修飾基としては、リン酸基、アミノ基、チオール基、ビオチン、ジゴキシゲニンなどを用いることができる。どの修飾基も容易に蛍光物質または化学発光物質を付加することができる。
また、増幅法についても、本実施例のPCRに限らず、種々の方法に適用でき、同様の効果を得ることが出来る。RCR(修復連鎖反応)法、TAS法、3SR法、NASBA法、SPSR法、LAT法、SDA法など、上記オリゴマーの混合物を用いて行われる方法であれば特に限定されない。
標的核酸の増幅以外の反応も同時に行う反応(例えば、RT−PCR)においても、標識プライマーと非標識のプライマーの混合量比を1:1〜1:10000、より好ましくは、1:10〜1:500の割合で混合し、その総量が反応に適した濃度となるように用いて反応を行う。これにより、生成核酸における発光強度又は放射活性が、検出又は分析に適合したものとなる。
プライマー混合溶液のALD−FFプライマーとALD−FNプライマーの比と分離ピークの面積強度がほぼ比例しており、面積強度をALD−FFプライマーとALD−FNプライマーの比で割ることで、生成核酸の総量を算出することも出来る。
増幅反応後の生成DNAの中の標識物を計測する方法としては、上記のほか、平板ゲルを使ったゲル電気泳動を使った検出装置等、生成核酸を分離しながら検出する装置が使用することが出来る。さらに、周知の蛍光偏光測定、時間分解りん光検出エネルギー共鳴などを使ったホモジニアス検出法等を使えば、蛍光光度計、マイクロプレートリーダなども使用することが出来る。または、未反応のオリゴマーの除去を行う工程を行ってもよい。
【実施例2】
本発明の標識/非標識の混合プライマーを用いる方法に基づく核酸処理装置(システム)について説明する。
装置構成は、主に、図2に示したような抽出部、増幅部、及び検出部からなる。
抽出部は、検体から標的核酸を含む鋳型となる核酸を抽出する機構である。実施例1で説明した、検体からの鋳型DNAの抽出工程と同様の機能を有する自動化ユニットである。例えば、特開2000−166556号記載の構成を有する機構部、制御部等からなる。
増幅部は、本発明の標識/非標識の混合プライマー、例えば、実施例1で説明したFORWARDプライマー混合溶液を用いて標的核酸の増幅を行う機構である。FORWARDプライマー混合溶液をはじめとする実施例1の増幅反応工程に記載の試薬溶液を保管し、増幅用の温度サイクラー、抽出部の機構部と同様の試薬・溶液吸引用分注ノズル、分注用チップ、分注用チップホルダ、反応容器、チップ抜き、xyz移動用アーム等で構成される。上記抽出部のユニットを流用することも出来る。
検出部とは、生成核酸の検出および分析を行う機構である。
以下、実施形態を添付図面に基づき説明する。抽出部及び増幅部ユニットと、検出ユニットに分割した装置構成としたが、両方を一緒にした構成でも構成できる。
抽出部及び増幅部ユニットについて説明する。図7は抽出・増幅部100の外観図、図8は、抽出・増幅部100の平面図、図9はノズルへのチップの取り付け動作説明図である。
基本的な動作の詳細は特開2000−166556に準じる。
シリンジ10、32は、液体の吸引と吐出の制御を行う。シリンジ10、32は、それぞれ配管、ノズルホルダー17、配管、ノズルホルダー34を介して、ノズル36、39に、それぞれ独立に接続されている。また、分注ノズル36、液体吸排用可動ノズル39はノズルホルダー17、34にそれぞれ固定されており、ノズルホルダー17、34は、それぞれアーム16、33にY方向(図7のアーム16、33の長手方向)、Z方向(図7のアーム16、33の長手方向に直交する方向)への移動が可能な状態で固定されている。
アーム16、33は、それぞれ独立にX方向(上記Y方向及びZ方向の両方向に直交する方向)への移動が可能であり、Z方向の位置に互いに差を持たせる事により、X方向に互いにオーバーラップすることができる。これにより、ノズルホルダー17、34とアーム16、33の動作の組み合わせにより、装置平面状の必要な部分へノズルを移動することができる。
これらシリンジ、アーム、ノズルホルダー等の動作は制御操作部により、制御される
分注用のチップホルダ14(図7、図8)には分注チップ15を収納することができ、装置上に同じチップホルダ14を複数個(図では14a、14b、14c、14dの4個)設置することができる。また、反応容器ラック23には反応容器24が48本設置でき、精製品ラック25には精製品収納容器26が48本設置できる。精製品ラック25の下部には保冷機構が設置されており(図示せず)、精製品ラック25を保冷することができる。
また、装置上には、洗浄液ボトル19、溶離液ボトル20、希釈液ボトル21、結合促進剤ボトル22、増幅反応用試薬容器200をそれぞれ1ボトルずつ設置できる。そして、核酸捕捉チップラック30には、分注チップ31を48本設置することができる。尚、溶離液ボトル20、結合促進剤ボトル22の底部には加温機構が設置されており(図示せず)、ボトルを加温することができる。また、増幅反応用試薬容器200は冷却ユニット201内に収められて冷却されている。
また、装置上には、増幅反応用の温度サイクラー202が設置される。
チップの取り付けに際しては、アーム16とノズルホルダー17の動作を制御することにより、チップホルダ14上の目的とする分注チップ15の上方へノズル36を移動させる。その後、下方へノズルホルダー17を移動し、分注チップ15の所定の位置とノズル36とを接触させる。これにより、ノズル36の先端に分注チップ15を自動的に取り付けることができる。これと同様の制御をノズル39、ノズルホルダー34、アーム33に対して行うことにより、ノズル39の先端に核酸捕捉チップ31を取り付けることができる。
チップの取り外しは、アーム16とノズルホルダー17とを動作制御することにより、チップ抜き27を使って行う。ノズルホルダー34、アーム33似ついても同様に行う。
液受け11、28は、ノズル36、39からの吐出液を受ける事が可能で、受けた液体は廃液として送られる。洗浄部18は、流水の吐出によりノズルホルダー17にノズル36を介して取り付けられた分注チップ15を洗浄することができる。
核酸捕捉チップ31は、特開2000−166556に記載のものを使用する。この場合の標的核酸を有する検体の核酸を捕捉し、回収、増幅の動作を説明する。
まず、アーム16とノズルホルダー17の動作を制御することにより、ノズル36に分注チップ15を所定の動作により取り付ける。その後、アーム16とノズルホルダー17、及び、シリンジ10の動作を制御することにより、結合促進剤ボトル22から所定量の結合促進剤を分注チップ15に吸引し、更に、所定量の空気を吸引する。そして、分注チップ15を洗浄台18へ移動し、分注チップ15の外壁を流水洗浄する。
分注チップ15の外壁の洗浄後、ノズルホルダー17を検体ラック12上の所定の検体13の位置へ移動する。シリンジ10の動作を制御することにより所定量の検体を分注チップ15に吸引する。そして、分注チップ15の検体の吸引後、ノズルホルダー17を反応容器ラック23上に移動し、ラック23の所定の反応容器24に分注チップ15内の検体の全量を吐出する。
検体を反応容器24へ吐出した後、更に反応容器24内の検体を分注チップ15により吸引と吐出を行うことにより、検体と結合促進剤を混合する。検体と結合促進剤との混合後、ノズルホルダー17をチップ抜き27の位置へ移動し、上述した所定の動作によりノズル36から分注チップ15を取り外す。
アーム33とノズルホルダー34の動作を制御することより、ノズル39に核酸捕捉チップ31を所定の動作により取り付ける。その後、ノズルホルダー34を反応容器ラック23上の上記混合液(検体と結合促進剤との混合液)の入った反応容器24に移動する。そして、シリンジ32の動作を制御することにより、核酸捕捉チップ31の内部へ上記混合液を吸引する。
所定の回数、吸引と吐出とを繰返した後、核酸捕捉チップ31内に反応容器24内の混合液を吸引した後、アーム33、ノズルホルダー34の動作制御により、チップ31を廃液口29へ移動する。そして、核酸捕捉チップ31内の混合液をシリンジ32の制御により廃液口29へ吐出する。混合液の廃液口29への吐出後、アーム33、ノズルホルダー34の動作制御により液受け28へチップ31を移動する。
アーム16とノズルホルダー17の動作を制御することにより、ノズル36に分注チップ15を取り付けた後、アーム16とノズルホルダー17、及びシリンジ10の動作を制御することにより洗浄液ボトル19から所定量の洗浄液を吸引する。そして、ノズルホルダー17を動作させ、反応容器ラック23上の所定の反応容器24上に洗浄液を吐出する。
洗浄液の吐出後、アーム16とノズルホルダー17の動作を制御することにより、ノズルホルダー17をチップ抜き27の位置へ移動し、所定の動作によりノズル36から分注チップ15を取り外す。
ノズルホルダー17の移動後、アーム33、ノズルホルダー34の動作を制御することにより、洗浄液の入った反応容器ラック23上の所定の反応容器24に核酸捕捉チップ31を移動する。シリンジ32の動作により核酸捕捉チップ31内へ洗浄液を吸引する。洗浄液の吸引後、シリンジ32の動作により、所定の回数吸引と吐出を繰り返し、固相38を洗浄液により洗浄する。所定の回数、吸引と吐出を繰返した後、核酸捕捉チップ31内に反応容器24内の洗浄液を吸引する。その後、アーム33、ノズルホルダー34の動作を制御することにより、核酸捕捉チップ31を廃液口29へ移動し、核酸捕捉チップ31内の洗浄液をシリンジ32の動作により吐出する。洗浄液の吐出後、アーム33、ノズルホルダー34の動作により核酸捕捉チップ31を液受け28へ移動させる。
必要に応じて、上記核酸洗浄工程は所定の回数繰返す。その際には、上記核酸洗浄工程をそのまま繰返してもよいが、複数回分の洗浄液を分注チップ15に吸引し、必要量を反応容器24へ吐出する。そして、洗浄液の吐出後、液受け11の位置へ移動し、核酸捕捉チップ31の洗浄操作後、再び必要量の洗浄液を反応容器24へ分注チップ15により吐出することにより、効率良く上記核酸洗浄工程を繰返すことが出来る。
次に、アーム16とノズルホルダー17の動作を制御することにより、ノズル36に分注チップ15を取り付けた後、アーム16とノズルホルダー17、及びシリンジ10の動作により溶離液ボトル20から所定量の溶離液を吸引し、ノズルホルダー17を反応容器ラック23上の所定の反応容器24に溶離液を吐出する。
溶離液の吐出後、アーム16とノズルホルダー17の動作を制御することにより、ノズルホルダー17をチップ抜き27の位置へ移動し、所定の動作によりノズル36から分注チップ15を取り外す。
ノズルホルダー17の移動後、アーム33、ノズルホルダー34の動作を制御することにより、溶離液の入った反応容器ラック23上の所定の反応容器24に核酸捕捉チップ31を移動する。そして、シリンジ32の動作により核酸捕捉チップ31内へ溶離液を吸引する。溶離液の吸引後、シリンジ32の動作により、所定の回数吸引と吐出を繰り返し、固相38と溶離液とを接触させる。
所定の回数、吸引と吐出を繰返し、核酸捕捉チップ31内に反応容器24内の溶離液を吸引する。その後、アーム33、ノズルホルダー34の動作を制御することにより、精製品ラック25に収納された所定の精製品収納容器26へ核酸捕捉チップ31を移動する。核酸捕捉チップ31内の溶離液をシリンジ32の動作により、収容容器26に吐出する。溶離液の吐出後、アーム33、ノズルホルダー34の動作により液受け28へ核酸捕捉チップ31を移動させる。必要に応じて、上記溶離工程は所定の回数繰り返す。その際には、上記溶離工程をそのまま繰返してもよいが、複数回分の溶離液を分注チップ15に吸引し、必要量を反応容器24へ吐出する。そして、溶離液の吐出後、液受け11の位置へ分注チップ15を移動する。核酸捕捉チップ31の吸引吐出操作後に、再び必要量の溶離液を分注チップ15により反応容器24へ吐出することにより、効率良く上記溶離工程を繰返すことが出来る。
上記工程終了後、アーム33、ノズルホルダー34の動作を制御することにより、ノズルホルダー34をチップ抜き27の位置へ移動し、所定の動作によりノズル39から核酸捕捉チップ31を取り外す。その後右端に移動する。
上記工程で、検体からゲノムDNA溶液を得ることが出来る。
次に増幅反応が行なう。
増幅反応用試薬容器200には、実施例1記載のような増幅反応用のプレミックスされた試薬溶液(dNTP、MgCl、Tspバッファー、滅菌水、Tsp DNAポリメラーゼ、FORWARDプライマー混合溶液、REVERSEプライマー溶液等のプレミックス液)が収められている。
精製品収納容器26内のゲノムDNA溶液を使い、それに含まれる標的核酸を増幅するための動作を説明する。アーム16とノズルホルダー17の動作を制御することにより、ノズル36にチップホルダ14d上の分注チップ15を所定の動作により取り付ける。その後、アーム16とノズルホルダー17、及び、シリンジ10の動作を制御することにより、増幅反応用試薬容器200から所定量の増幅反応用のプレミックスされた試薬溶液を分注チップ15に吸引する。その後、ノズルホルダー17を温度サイクラー202上に移動させ、所定の増幅用容器203に分注チップ15内の溶液を吐出する。さらに、同様の操作で、精製品収納容器26内から必要量のゲノムDNA溶液を、所定の増幅用容器203に移し、混合する。その後、所定の条件でPCRなどの増幅動作を行う。尚、増幅用容器203の蓋、及び温度サイクラーの蓋の開閉動作の説明は省略した。
上記工程で、標的核酸の増幅が行われる。
次に、増幅反応後の溶液(一部)に、ホルムアミドを混合し、94℃で2分間熱変性を行った後、周知の検出装置で測定を行う。例えば、キャピラリーアレイ電気泳動装置により測定する。
なお、本実施例では、増幅時には増幅反応用のプレミックスされた試薬溶液を使用したが、例えば、それぞれの試薬を別々にして保管しても良い。さらに、標識プライマーと非標識プライマーとを、別々に保管し、検出装置の情報を得て、増幅時に混合比率を決定して混合し、増幅を行う構成にしても良い。その場合、必要な数の容器保管場所を装置ユニット内に準備し、分注動作を行う。
本実施例により、希釈工程の動作を省くことが出来るので、装置構成が簡単になる。
【発明の効果】
核酸増幅における、標識され、又は修飾されたオリゴマーの使用量を低減できる。この為、核酸増幅処理、及び核酸分析処理のコストダウンや工程簡略化を図ることができる。
【配列表】


【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも以下のオリゴマーの混合物、標的核酸を有する核酸、及び増幅試薬を用い、該標的核酸に関連する配列を含む生成核酸を生産する核酸増幅方法;
標的核酸に含まれる任意の特定配列とハイブリダイズでき、発光体若しくは放射性同位体で標識された、又は修飾基を付加されたオリゴマーA;
前記特定配列とハイブリダイズでき、オリゴマーAと同じ物質で標識されていない、又はオリゴマーAに付加された前記修飾基を付加されていないオリゴマーB。
【請求項2】
前記オリゴマーAと前記オリゴマーBの混合比率が1:1〜1:10000である請求項1記載の核酸増幅方法。
【請求項3】
前記オリゴマーAと前記オリゴマーBの混合比率が1:10〜1:500である請求項2記載の核酸増幅方法。
【請求項4】
前記発光体が蛍光物質、又は化学発光物質である請求項1記載の核酸増幅方法。
【請求項5】
前記修飾基を付加されたオリゴマーAが、ビオチン化、リン酸化、アミノ化、ジゴキシゲニン化、又はチオール化されたオリゴマーである請求項1記載の核酸増幅方法。
【請求項6】
以下のオリゴマーを含む、標的核酸に関連する配列を含む生成核酸を生産できるオリゴマーのキット;
標的核酸に含まれる任意の特定配列とハイブリダイズでき、発光体または放射性同位体により標識され、又は修飾基を付加されたオリゴマーA;
前記特定配列とハイブリダイズでき、オリゴマーAを標識する前記発光体若しくは放射性同位体により標識されておらず、又はオリゴマーAに付加された前記修飾基を付加されていないオリゴマーB。
【請求項7】
前記オリゴマーAと前記オリゴマーBの存在比率が1:1〜1:10000である請求項6記載のオリゴマーのキット。
【請求項8】
前記オリゴマーAと前記オリゴマーBの存在比率が1:10〜1:500である請求項7記載のオリゴマーのキット。
【請求項9】
前記発光体が、蛍光物質又は化学発光物質である請求項6記載のオリゴマーのキット。
【請求項10】
前記修飾基を付加されたオリゴマーAが、ビオチン化、リン酸化、アミノ化、ジゴキシゲニン化、又はチオール化されたオリゴマーである請求項6記載のオリゴマーのキット。
【請求項11】
以下の工程を含む、核酸の分析方法;
少なくとも以下のオリゴマーの混合物、標的核酸を有する核酸、及び増幅試薬を用いて、該標的核酸に関連する配列を含む生成核酸を生産する増幅工程;
(A)標的核酸に含まれる任意の特定配列とハイブリダイズでき、発光体若しくは放射性同位体により標識され、又は修飾基を付加されたオリゴマーA;
(B)前記特定配列とハイブリダイズでき、オリゴマーAを標識する前記発光体若しくは放射性同位体により標識されておらず、又はオリゴマーAに付加された前記修飾基を付加されていないオリゴマーB;
オリゴマーAが前記修飾基を付加されている場合、該修飾基に発光体を結合する結合工程;
前記発光体または放射性同位体を検出する検出工程。
【請求項12】
請求項11記載の分析方法であって、以下の工程を含む方法;
検出された発光体又は放射性同位体の量に基づいて、生成核酸の量を算出する演算工程。
【請求項13】
請求項12記載の分析方法であって、前記演算工程が、前記オリゴマーAと前記オリゴマーBの混合比率に基づいて、生成核酸の量を算出する方法。
【請求項14】
請求項11記載の分析方法であって、前記増幅工程終了時若しくは前記結合工程終了時の生成核酸を含む反応液中の発光体、又は放射性同位体で標識された標的核酸の濃度が、前記検出工程で用いる検出装置の測定可能範囲である方法。
【請求項15】
以下の構成を含む、標的核酸に関連する配列を含む生成核酸の生産装置;
標的核酸に含まれる任意の特定配列とハイブリダイズでき、発光体若しくは放射性同位体により標識され、又は修飾基を付加されたオリゴマーAを保持する保持容器A;
前記特定配列とハイブリダイズでき、オリゴマーAを標識する前記発光体若しくは放射性同位体により標識されておらず、又はオリゴマーAに付加された前記修飾基を付加されていないオリゴマーBを保持する保持容器B;
少なくとも前記オリゴマーA、前記オリゴマーB、増幅試薬、及び標的核酸有する核酸を含む水溶液を保持できる核酸増幅容器;
前記核酸増幅容器に、所定量の前記オリゴマーAと所定量の前記オリゴマーBを供給する供給機構。
【請求項16】
前記供給機構の供給する前記オリゴマーAと前記オリゴマーBの供給比率が1:1〜1:10000である請求項15記載の生産装置。
【請求項17】
前記供給機構の供給する前記オリゴマーAと前記オリゴマーBの供給比率が1:10〜1:500である請求項16記載の生産装置。
【請求項18】
以下の構成を含む、標的核酸を検出する核酸分析装置;
以下のオリゴマー、増幅試薬、及び前記標的核酸を含む核酸を保持でき、前記標的核酸に関連する配列を含む生成核酸を生産できる核酸増幅容器;
(A)標的核酸に含まれる任意の特定配列とハイブリダイズでき、発光体若しくは放射性同位体により標識され、又は修飾基を付加されたオリゴマーA;
(B)前記特定配列とハイブリダイズでき、オリゴマーAを標識する前記発光体若しくは放射性同位体により標識されておらず、又はオリゴマーAに付加された前記修飾基を付加されていないオリゴマーB;
前記発光体若しくは放射性同位体、又は前記修飾基と結合した発光体を検出する検出機構。
【請求項19】
以下の構成を含む、請求項18記載の核酸分析装置;
検出された発光体の量に基づいて算出された前記生成核酸の量に依存する情報を表示する表示機構。
【請求項20】
請求項19記載の核酸分析装置であって、前記表示機構が、オリゴマーAとオリゴマーBの混合率に基づいて、前記生成核酸の量を算出する装置。

【国際公開番号】WO2004/044243
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【発行日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551174(P2004−551174)
【国際出願番号】PCT/JP2002/011815
【国際出願日】平成14年11月13日(2002.11.13)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】