説明

核酸または核酸含有種の濃縮及び/または単離方法

【解決手段】本発明は、核酸含有溶液から核酸類または核酸含有種を濃縮及び/または単離する方法、及びそのためのキットに関する。ひとつの具体例では、本発明は、核酸含有溶液からのDNA及び/またはRNAの濃縮及び/または単離に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸含有溶液から核酸類または核酸含有種(species)を濃縮及び/または単離する方法、及びそのためのキットに関する。ひとつの具体例では、本発明は、核酸含有溶液からのDNA及び/またはRNAの濃縮及び/または単離に関する。
【背景技術】
【0002】
DNA及びRNAなどの核酸類の単離及び/または濃縮を含む操作は、バイオテクノロジーにおいて極めて重要な役割を演じている。初期の核酸類の単離方法には、有機溶媒を使用する一連の抽出と、その後のエタノール沈殿、及び核酸類の透析が含まれる。これらの方法は、相対的に手間が掛かり、しばしば核酸の収率が低くなる。
【0003】
米国特許第5,523,231号公報によれば、エタノール(EtOH)またはイソプロパノール等のアルコールを約70%(v/v)の濃度で使用することにより、核酸類を磁気吸着ビーズの周りに沈殿させるが、ビーズに特定的には結合しない。沈殿は磁場を適用してビーズを単離することによって、上澄みから分離することができる。
【0004】
最近の方法では、カオトロピックな(chaotropic)条件下、即ち、典型的には2M〜8Mのカオトロピック塩、例えばグアニジウム塩を単独で(例えば、米国特許第5,234,809号、同5,234,909号、同6,027,945号参照)、またはEtOHとの組み合わせ(国際特許WO95/01359)では、核酸類がシリカの表面に結合するという優位点がある。この方法は、典型的には、シリカ表面を含むフィルターの形態(例えば、スピンカラム、QIAGEN社、ドイツ、ヒルデン(Hilden))、またはシリカ表面を含むビーズの形態、例えば、常磁性シリカビーズ(例えば、米国特許第6,027,945号、同5,945,525号、同5,658,548号)またはフェリ磁性シリカビーズ(国際特許WO04/003231号)での固相で実施される。
【0005】
特異的な固相及び核酸結合条件にもかかわらず、核酸含有サンプルの容量は、極めて重要な役割を演じる。核酸または核酸含有種を含有する水性懸濁液の容量は、核酸の結合に必要な添加成分を必然的に希釈する。従って、この希釈効果を克服するために、そのような成分を増量することが必要であり、従って、これらの鍵となる成分には好適な最終濃度がある。
【0006】
典型的には、カオトロピック塩単独では、核酸を核酸結合固相へ好適に結合させるために、2M〜8Mの最終濃度が必要である。カオトロピック塩が、例えばエタノール等のアルコールと組み合わせて使用される場合は、核酸を核酸結合固相へ好適に結合させるためのアルコールの典型的な最終濃度は、30〜60%(v/v)である。
【0007】
核酸類または核酸含有種の単離が重要である多くの適用例では、核酸含有サンプルは水溶液であるか、または、好適な溶媒、例えば好適な緩衝液の溶液中に加えておく。サンプルが臨界的容量に達する場合は、核酸類または核酸含有種は、上述した様に鍵となる成分が希釈されることによって、典型的なカオトロピック結合条件を用いても容易に単離されない。このことは当業者には以前より知られている問題であり、故に、この問題を解決することが求められている。
【0008】
例えばバクテリアなどの、ある核酸含有種では、サンプル容量が多くなるのを避ける挑戦は、溶菌及び/または結合の前に、遠心分離し、その後上澄みを廃棄することで、台無しになりかねない。高容量の水溶液中に含まれるフリーの核酸類または小さい核酸を含有する種、例えば、血漿中のウイルス類は、遠心分離によって容易に沈殿させることもできず、アルコールの存在下または非存在下でのカオトロピック条件下で容易に単離することもできない。
【0009】
核酸類または小さい核酸を含有する種を遠心分離以外の手段で沈殿させる、いくつかの方法が報告されている。例えば、粒子に核酸類または核酸含有種を水溶液中で結合させるために、アミン基で表面をコートした粒子が知られている。しかしながら、これらの粒子には、更なる精製の観点で、核酸類がそれらのビーズに堅固に結合しており非常に高濃度の塩溶液で溶出しなければならないという、極めて重大な欠点がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、比較的高容量の核酸含有水溶液から核酸類を結合させる技術状態から知られる方法の欠点を克服する技術に関する。本発明の方法を用いることにより、サンプルの容量に拘らず、水溶液に含有される核酸類を容易に単離及び/または濃縮することができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一般的に、本発明の方法は、
(a)核酸類を含有する水溶液を用意する工程、
(b)一定分量の物質Iを(a)に加える工程、
(c)一定分量の物質IIを(b)に加える工程、
(d)(c)の水溶液を遠心分離し、上澄みを捨てる工程
を含む。
【0012】
本発明の予期されずかつ有益な効果は、物質I及び物質IIの添加の順番とは関係なく、このことは、工程(b)と工程(c)は交換できることを意味する。極めて重要な要素は、物質Iと物質IIを別々に添加することであり、このことは、物質Iと物質IIは、工程(a)の核酸類を含有する水溶液に同時に添加することができるが、工程(a)の核酸類を含有する水溶液に添加する前に物質Iと物質IIとを混合すべきではないことを意味する。従って、工程(b)及び(c)は、上述の通り、逆の順番で実施することができ、または、代わりに、物質Iと物質IIを別々ではあるが同時に添加することができる。故に、本発明は、さらに、
(a)核酸類を含有する水溶液を用意する工程、
(b)一定分量の物質IIを(a)に加える工程、
(c)一定分量の物質Iを(b)に加える工程、
(d)(c)の水溶液を遠心分離し、上澄みを捨てる工程
または
(a)核酸類を含有する水溶液を用意する工程、
(b/c)一定分量の物質I及び一定分量の物質IIを互いに別々に、しかし同時に(a)に加える工程、
(d)(b/c)の水溶液を遠心分離し、上澄みを捨てる工程
を含んでもよい。
【0013】
核酸含有溶液において、物質Iは沈殿剤であり、沈殿を誘導する物質IIの存在下で即座に沈殿を開始する。核酸類は、発生する沈殿中の物理的カプセルとして、または発生する沈殿に対する核酸類の特異的親和性によって、最終的な沈殿の一部となる。
【0014】
工程(d)で得られる沈殿は、標準的な方法を用いる更なる精製工程に付してもよい。そのように単離及び/または濃縮された核酸類をさらに精製するため、当業界において、いくつかの異なる方法が知られており、当業者によって容易に適用することができる。
【0015】
従って、本発明は、核酸類を水溶液から、水溶液の容量に依存しない沈殿の一部として、単離及び/または濃縮する方法を提供する。
【0016】
本発明は、生化学において広範囲に適用される。上述したとおり、遠心分離によって水溶液からウイルス類を単離することは容易ではなく、またウイルス類はアルコールの存在下または非存在下のカオトロピック条件下で容易に単離することもできない。別の具体例では、本発明は、水溶液からウイルス類を、完全なウイルス粒子として、またはウイルス溶菌後のウイルス核酸類として、濃縮及び/または単離するために利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、核酸類を水溶液から、水溶液の容量に依存しない沈殿の一部として、単離及び/または濃縮する方法を提供する。本発明の方法は、
(a)核酸類を含有する水溶液を用意する工程、
(b)一定分量の物質Iを(a)に加える工程、
(c)一定分量の物質IIを(b)に加える工程、
(d)(c)の水溶液を遠心分離し、上澄みを捨てる工程
を含む。
【0018】
本発明の予期されずかつ有益な効果は、物質I及び物質IIの添加の順番とは関係なく、このことは、工程(b)と工程(c)は交換できることを意味する。極めて重要な要素は、物質Iと物質IIを別々に添加することであり、このことは、物質Iと物質IIは、工程(a)の核酸類を含有する水溶液に同時に添加することができるが、工程(a)の核酸類を含有する水溶液に添加する前に物質Iと物質IIとを混合すべきではないことを意味する。従って、工程(b)及び(c)は、上述の通り、逆の順番で実施することができ、または、代わりに、物質Iと物質IIを別々ではあるが同時に添加することができる。故に、本発明は、さらに、
(a)核酸類を含有する水溶液を用意する工程、
(b)一定分量の物質IIを(a)に加える工程、
(c)一定分量の物質Iを(b)に加える工程、
(d)(c)の水溶液を遠心分離し、上澄みを捨てる工程
または
(a)核酸類を含有する水溶液を用意する工程、
(b/c)一定分量の物質I及び一定分量の物質IIを互いに別々に、しかし同時に(a)に加える工程、
(d)(b/c)の水溶液を遠心分離し、上澄みを捨てる工程
を含んでもよい。
【0019】
本発明において、物質I及び物質IIは、不均質溶液を形成するように選択される。このことは、核酸含有溶液において、物質Iは沈殿剤であり、沈殿を誘導する物質IIの存在下で即座に沈殿を開始することを意味する。核酸類は、発生する沈殿中の物理的カプセルとして、または発生する沈殿に対する核酸類の特異的親和性によって、工程(d)で得られる最終的な沈殿の一部となる。
【0020】
本発明において、物質Iは、負に荷電したイオン性洗剤の群より選択されるか、またはそのような負に荷電したイオン性洗剤の混合物である。「負に荷電したイオン性洗剤」という用語は、水溶液中、例えば水中に溶解され、加えて水溶液のpHが核酸類の単離及び/または濃縮に好適な範囲内にある場合に、負に荷電するイオン性洗剤を言う。このような溶媒としても好適な洗剤及び好適なpHの範囲は当業者に周知である。好ましくは、物質Iはドデシル硫酸リチウム(LiDS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはそれらの混合物である。
【0021】
物質Iの添加は、工程(a)の核酸含有水溶液に一定分量の物質Iを添加した後の物質Iの最終濃度が、工程(a)の核酸含有水溶液に一定分量の物質IIを添加した後と同様に、0.1%(w/v)〜10%(w/v)、好ましくは0.4%(w/v)〜5%(w/v)、より好ましくは0.5%(w/v)〜1%(w/v)の範囲になるように実施する。
【0022】
本発明において、物質IIはカオトロピック塩であるか、種々のカオトロピック塩類の混合物である。当業者には、塩類がカオトロピック特性を有することは周知である。好ましくは、カオトロピック成分は、尿素、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、塩化コバルトヘキサミン、塩化トリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化アルキルトリメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウムより選択されるか、またはそれらの混合物である。本発明において、アルキルは、1〜20個の炭素原子を有する、分枝状または非分枝状の炭化水素ラジカルを表す。
【0023】
物質IIの添加は、工程(a)の核酸含有水溶液に一定分量の物質IIを添加した後の物質IIの最終濃度が、工程(a)の核酸含有水溶液に一定分量の物質Iを添加した後と同様に、0.1M〜7M、好ましくは0.2M〜2M、より好ましくは0.25M〜1Mの範囲になるように実施する。好ましい具体例において、本発明は高濃度のカオトロピック成分を必要としないという、さらなる優位点を有する。
【0024】
好ましくは、物質I及び/または物質IIは、好適な濃度の溶液として、核酸含有溶液に添加される。例えば、水または緩衝系など、全ての好適な溶媒は、物質I及び物質IIを溶解するために適用することができる。本発明による、あらゆる他の好適な溶媒は、当業者に自明である。或いはまた、物質I及び/または物質IIは固体として添加することができる。
【0025】
工程(d)で言及される遠心分離は、核酸含有水溶液中に物質I及び物質IIを混合した後に急速に沈殿が発生するため、物質Iと物質IIの両者を核酸含有溶液へ添加した後、程度の差はあるが直接続けて実施することができる。従って、本発明の方法においては、インキュベーション工程にかかる時間は、有利なことに必要とされない。
【0026】
本発明の方法は、あらゆる好適な温度で実施することができる。このような方法に好適な温度は、当業者に自明である。本発明に好ましい温度範囲は室温(18℃〜25℃)である。
【0027】
本発明による「核酸」という用語は、あらゆる核酸及び核酸アナログを含む。従って、核酸は、例えば、DNAまたはRNAまたはそれらの混合物であってもよい。核酸の供給源は、考えられるあらゆる供給源であってもよい。それは、例えば細胞または組織などの自然の供給源、または、例えばPCR産物等の人工的な供給源のいずれであってもよい。本発明によれば、核酸は水溶液中に存在しなければならない。水溶液は、例えば血液、または脳脊髄液などの、あらゆる自然の溶液であってもよく、または、核酸類または核酸含有種は、例えば好適な緩衝液等のあらゆる好適な溶媒を用いた溶液中に添加されなければならない。そのような好適な溶媒は、当業者に自明である。核酸源が、例えば細胞懸濁液または全血中の細胞である場合には、物質Iの添加は、有利なことに、付加的に細胞を溶解するために用いてもよい。この場合、細胞を溶解するために、追加の充分なインキュベーションの時間が必要である。細胞を溶解するために要する条件、例えば、インキュベーション時間、温度、洗剤濃度等は、当業者に周知であり、本発明の方法に容易に適合させることができる。
【0028】
工程(d)で得られる沈殿は、遠心分離や、当業者に公知の他の好適な手段によって、溶液から容易に分離することができる。任意に、工程(d)で得られる沈殿を、標準的な方法を使用してさらなる精製工程に付することができる。そのように単離され、及び/または、濃縮された核酸類をさらに精製するための、いくつかの異なる方法が当業界で知られており、当業者によって容易に適用することができる。一つの典型的かつ非制限的な具体例において、工程(d)の後に、概略として
(e)工程(d)で得られた沈殿を、カオトロピック塩(類)及び、例えばエタノールなどのアルコールを含有する緩衝液中に再懸濁し、その後、磁気シリカビーズを添加する工程、
(f)核酸類を磁気ビーズに結合させ、適当なインキュベーション時間の後、磁気ビーズを除き、上澄みを捨てる工程、
(g)磁気ビーズと核酸類との複合物を一回以上の洗浄工程に付す工程、
(h)磁気ビーズから核酸類を溶出する工程
を含む精製が続く。
【0029】
別の態様では、本発明は、核酸類を濃縮及び/または単離するためのキットを提供する。このキットは、本発明の方法を実施するために、少なくとも物質I及び物質IIを含む。例えば、物質I及び物質IIは、例えば、固体または保存溶液として、またはすぐに使用できる(ready-to-use)溶液として、キットの一部であってもよい。さらに別の態様では、キットは、工程(d)で得られる沈殿に含まれる核酸類をさらに精製するための一揃えの溶液及び/または装置を付加的に含む。この一揃えの溶液及び/または装置によって、例えば上述の方法など、当業者に公知のいくつかの異なる方法の一つに従って、沈殿はさらに精製されるであろう。
【実施例】
【0030】
以下に、例示を目的として、非限定的な例を挙げる。
【0031】
実施例1
前濃縮:
LiDS(シグマ社、ドイツ、デイセンホーフェン(Deisenhofen))の5%(w/v)水溶液50μlを、1mlのDNA溶液(1μg/ml)を含む試験管、及び1mlのRNA溶液(1μg/ml)を含む試験管に、それぞれ添加した。次に、3.5Mチオシアン酸グアニジニウム1mlをそれぞれの試験管に加えた。即座に沈殿が形成し始めた。2分間インキュベートした後、溶液を遠心分離し(10,000g、3分間)、上澄みを捨てた。
【0032】
さらなる精製:
QIAGEN MagAttract RNA Cell Mini M48キット(QIAGEN社、ドイツ、ヒルデン(Hilden))を用い、製造者の取扱説明書に従って、それぞれの沈殿をさらに精製した。
【0033】
結果:
核酸類の収量は、UV吸収の測定により定量化して、RNAが0.3μgで、DNAが0.4μgであった。DNA溶離物のOD260/280(=260nmでのOD/280nmでのOD)は1.95であり、RNA溶離物のOD260/280は2.1であった。RNAとDNAは両者とも、単離に続いて容易に増幅された(それぞれQIAGEN QuantiTect RT-PCRキット及びQIAGEN QuantiTect PCRキット、両者ともQIAGEN社、ドイツ、ヒルデン)。
【0034】
実施例2
1×107個のHL60細胞を、1mlの10%(w/v)LiDS水溶液に再懸濁した(溶液A)。溶解するのに充分な時間インキュベートした後(室温で3分間)、一定容量の溶液Aを、表1に示したように、一定容量の5.5M GTC水溶液(溶液B)に加えた。次に、溶液を遠心分離し(3,000g、3分間)、上澄みを捨てた。沈殿は、500μlの溶液Bで一度洗浄した。
その後、実施例1と同様に沈殿をさらに精製した。結果を表2に列記する。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
実施例3
前濃縮及びさらなる精製:
実施例2と同様に、1×106個のHL60細胞を、1mlの2%(w/v)LiDS水溶液中で溶解した。次に、1mlの1M塩酸グアニジニウム水溶液を加えた。その後、実施例1と同様に、溶液を遠心分離し、沈殿をさらに精製した。
結果:
核酸類(DNA及びRNA)3.2μgを単離した(OD260/280=2.04)。
【0038】
実施例4
前濃縮及びさらなる精製:
1×106個のHL60細胞を、1mlのpH12.5の2%(w/v)SDS水溶液中でインキュベートした。細胞を効果的に溶解するために、懸濁液を90℃で5分間インキュベートした。その後の工程は室温で実施した。次に、1mlの2M塩酸グアニジニウム水溶液を加えた。その後、実施例1と同様に、溶液を遠心分離し、沈殿をさらに精製した。
結果:
核酸類(DNA及びRNA)0.5μgを単離した(OD260/280=2.04)。
【0039】
実施例5
前濃縮及びさらなる精製:
実施例4と同様に、1×106個のHL60細胞を、1mlの2%(w/v)LiDS水溶液中で溶解した。次に、1mlの2M塩酸グアニジニウム水溶液を加えた。その後、実施例1と同様に、溶液を遠心分離し、沈殿をさらに精製した。
結果:
核酸類(DNA及びRNA)1.6μgを単離した(OD260/280=2.12)。
【0040】
実施例6
前濃縮及びさらなる精製:
実施例4と同様に、1×106個のHL60細胞を、1mlの2%(w/v)LiDS水溶液中で溶解した。次に、1mlの2Mヨウ化ナトリウム水溶液を加えた。その後、実施例1と同様に、溶液を遠心分離し、沈殿をさらに精製した。
結果:
核酸類(DNA及びRNA)0.2μgを単離した(OD260/280=1.85)。
【0041】
実施例7
前濃縮及びさらなる精製:
2%(w/v)LiDS水溶液400μlを、大腸菌(E.coli)(OD=0.75)を一晩培養したもの100μlに加え、室温で1分間インキュベートした。次に、1M塩酸グアニジニウム水溶液500μlを加えた。即座に沈殿が形成し始めた。その後、実施例1と同様に、溶液を遠心分離し、沈殿をさらに精製した。
結果:
核酸類(DNA及びRNA)3μgを単離した(OD260/280=1.78)。
【0042】
本明細書で言及した、上記の特許、特許出願、及び非特許刊行物は全て、引用によってその全体が本発明に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液から核酸または核酸アナログを単離及び/または濃縮する方法であって、
(a)核酸類を含有する水溶液を用意する工程、
(b)一定分量の物質Iを(a)に加える工程、
(c)一定分量の物質IIを(b)に加える工程、及び
(d)(c)の水溶液を遠心分離し、上澄みを捨てる工程
を含み、工程(b)及び工程(c)は交換でき、または、工程(b)と工程(c)を同時に実施することができ、一定分量の物質Iと一定分量の物質IIは互いに別々に、しかし同時に(a)の水溶液に与えられることを特徴とする、核酸または核酸アナログの単離及び/または濃縮方法。
【請求項2】
物質Iが負に荷電したイオン性洗剤の群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
物質Iがドデシル硫酸リチウム(LiDS)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
物質Iの最終濃度が0.1%(w/v)から10%(w/v)までの範囲内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
物質Iの最終濃度が0.4%(w/v)から5%(w/v)までの範囲内であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
物質Iの最終濃度が0.5%(w/v)から1%(w/v)までの範囲内であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
物質IIがカオトロピック塩または種々のカオトロピック塩類の混合物であることを特長とする、請求項1の方法。
【請求項8】
物質IIが、尿素、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、塩酸グアニジニウム、イソチオシアン酸グアニジニウム、チオシアン酸グアニジニウム、塩化コバルトヘキサミン、塩化トリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化アルキルトリメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、またはそれらの混合物より選択されることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
物質IIの最終濃度が0.1Mから7Mまでの範囲内であることを特徴とする、請求項1、7または8に記載の方法。
【請求項10】
物質IIの最終濃度が0.2Mから2Mまでの範囲内であることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
物質IIの最終濃度が0.25Mから1Mまでの範囲内であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
物質Iと物質IIが、一つの溶液に合わせた時に不均質な溶液を形成するように選択されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
物質I及び/または物質IIを溶液として加えられることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
物質I及び/または物質IIを固体として加えられることを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
核酸がDNAまたはRNAまたはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
請求項1の工程(d)で得られる沈殿をさらに精製することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
少なくとも
(a)物質I、及び
(b)物質II
を含むことを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法を実施するためのキット。
【請求項18】
(c)請求項1の工程(d)で得られる沈殿に含まれる核酸類をさらに精製するための一揃えの溶液及び/または装置
をさらに含むことを特徴とする、請求項17に記載のキット。

【公表番号】特表2006−526591(P2006−526591A)
【公表日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−508261(P2006−508261)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005998
【国際公開番号】WO2004/108741
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(503470311)キアゲン アクティーゼルスカブ (2)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】