説明

核酸プローブを用いる被検物質の検出方法

【課題】 塩基の相補性を利用して、免疫学的手法よりも更に高感度の微量物質の測定方法を提供する。
【解決手段】 第1核酸プローブと核酸リガンドとがハイブリダイズした第1ハイブリッドと、標識被検物質との複合体(第1複合体)を形成させ、第1複合体から、標識被検物質−核酸リガンド複合体を解離させ、この標識被検物質−核酸リガンド複合体を分離採取して、当該標識に基づいて被検物質を検出する。採取した標識被検物質−核酸リガンドと、固相に固定された第2プローブとの複合体(第2複合体)を形成させ、第2複合体中の標識に基づいて被検物質を検出してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸プローブを用いて、特異性の高い塩基の相補反応を利用することにより、非特異吸着による誤差を低減させ、微量でも高精度で検出、定量することができる被検物質の検出方法、当該検出方法に用いられる被検物質検出用試薬キット、及び微量成分の高感度測定のための前処理等に利用できる被検物質の採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微量の被検物質を高感度で検出、定量したいという要望は止まるところがない。また、近年の質量分析技術の発展から、微量タンパクの同定を質量分析を利用して行なわれることが多くなり、これに伴い、夾雑物から目的のタンパクを高精度に分離精製する必要が高まってきている。
このような事情から、高感度に標的物質を分離精製し、検出定量する方法が望まれている。
【0003】
特定の標的物質を検出定量する方法としては、特異性が高い免疫学的手法を利用した方法(イムノアッセイ)が一般に用いられている。
抗原−抗体反応を利用したイムノアッセイは、B/F分離を行うヘテロジーニアスなアッセイと、B/F分離を行わないホモジーニアスなアッセイに分類される。
【0004】
ヘテロジーニアスなイムノアッセイとしては、例えば図9に示すようなELISAが一般に用いられている。これは、固相上に固定した第1抗体1により被検物質2を捕捉した(図9(a))後、さらに被検物質2に特異的な第2抗体3を添加して、第2抗体3を被検物質2に結合させ(図9(b))、被検物質2に結合しなかった第2抗体(F)と、被検物質2に結合して形成される第1抗体−被検物質−第2抗体の複合体4(B)を分離した後、複合体4を検出又は定量する方法である。第2抗体に酵素等の標識を結合させることにより、複合体4の検出が容易かつ高感度で検出可能となる。
【0005】
しかしながら、固相上に第2抗体3が非特異吸着することがあり(図9(c))、この固相に非特異吸着した第2抗体3は、洗浄によるB/F分離では除去されずに残存していることが多い。このため、非特異吸着した第2抗体3がノイズとなるため、バックグラウンドが高くなり、微量な被検物質の検出、定量についての感度アップの改良が求められている。
【0006】
非特異吸着によるノイズ低減、高感度なイムノアッセイとしては、特許文献1(特開2003−107089号)で、被検物質と該被検物質と特異的に結合する物質との複合体を第1固相上に形成させた後、この複合体を溶出して第2の固相に移し替え、第2固相に結合した複合体を測定する方法を提案している。具体的には、図10に示すように、第1の固相にジニトロフェニル抗体11を固相化しておき、ジニトロフェニル基で標識した一次抗体12と該一次抗体12に結合する標的タンパク13と該標的タンパク13に結合する二次抗体(標識抗体)14の複合体15を形成させて固相に添加すると(図10(a))、ジニトロフェニル基(DN)がジニトロフェニル抗体11に結合するにしたがって、ジニトロフェニル基を介して、一次抗体−標的タンパク−二次抗体複合体が第1の固相に結合固定化される。洗浄後、第1固相上に過剰のN−2,4−ジニトロフェニル−L−リジン(NDL)を添加し(図10(b))、これによりジニトロフェニル抗体に対して一次抗体とN−2,4−ジニトロフェニル−L−リジンとの競合反応が起り、一次抗体−標的タンパク−二次抗体の複合体15が解離される(図10(c))。解離された複合体15’を別の第2の固相上に移し替えて、第2の固相に結合固定化させた後、複合体を検出する。複合体を構成する抗体(例えば一次抗体12)を、例えば、予めビオチンなどで標識しておき、第2の固相にストレプトアビジンを使用することで、一次抗体−標的タンパク−二次抗体複合体15’を特異的に第2固相に結合固定化させることができる。このようにして、第2固相に結合した複合体を検出することで、二次抗体14が標的分子以外に吸着するような、第1固相で生じる非特異的吸着の影響を減らすことができる。また第1固相から特異的に解離した一次抗体が第2固相に結合することから、第2固相では複合体が精製されて結合することになる。よって、第2固相上では二次抗体(標識抗体)14の非特異的吸着の影響が減少され、結果としてノイズが低減される。
【0007】
しかし、このような免疫学的手法による検出、定量方法では、第1の固相から複合体を解離させる際の競合反応は平衡反応であることから、第1の固相に結合固定化された複合体の全てが競合反応の相手物質(上記例ではN−2,4−ジニトロフェニル−L−リジン)に置換されるということは少ないため、複合体の検出、分離される量は、第2固相に移し替える時点でのロスが少なくなく、試料中に含まれる標的物質の定量方法としては、精度的に満足できるものではなかった。従って、バックグラウンドが低く、精度の高い検出方法が望まれる。
【0008】
【特許文献1】特開2003−107089
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、バックグラウンドが低く、精度の高い被検物質の検出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の核酸プローブを用いる被検物質の検出方法は、試料中の被検物質を検出する方法であって、第1固相に固定され且つ一本鎖部分を有する第1核酸プローブと、該第1核酸プローブの該一本鎖部分にハイブリダイズ可能な塩基配列の相補塩基配列部及び被検物質を特異的に捕捉できる認識結合部を含む核酸リガンドとがハイブリダイズした第1ハイブリッド;前記被検物質;及び該被検物質に結合可能な標識物質からなる標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させる工程;
前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体から、前記核酸リガンドと前記標識物質と前記被検物質とが結合した標識被検物質−核酸リガンド複合体を解離させる工程;
解離された標識被検物質−核酸リガンド複合体を分離採取する工程;並びに
前記標識被検物質−核酸リガンド複合体中の標識物質に基づいて被検物質を検出する工程を含む。
【0011】
前記分離採取した標識被検物質−核酸リガンド複合体と、第2固相に固定され且つ前記核酸リガンドの相補塩基配列部にハイブリダイズ可能な一本鎖を有する第2核酸プローブとからなる標識被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成し、前記被検物質の検出工程は、前記標識被検物質−第2ハイブリッド複合体中の標識物質に基づいて行なわれることが好ましい。
【0012】
前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体形成工程は、前記第1ハイブリッドに被検物質及び標識物質を結合させることにより行なってもよいし、前記第1核酸プローブに前記標識被検物質−核酸リガンド複合体を結合させることにより行なってもよい。
【0013】
前記認識結合部は、被検物質と結合できるアプタマー、抗体、及び受容体からなる群より選ばれる1種であることが好ましい。
【0014】
また、前記相補塩基配列部はDNA又はRNAで構成され、前記認識結合部は、前記相補塩基配列部の3’末端に結合していることが好ましい。
【0015】
前記解離工程は、前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を含む系の温度を上げることにより行なってもよいし、あるいは、第1核酸プローブとハイブリダイズ可能であり且つ前記核酸リガンドよりも鎖長が長い一本鎖の長鎖核酸の存在下で、前記第1核酸プローブと前記核酸リガンドとのハイブリッドの融解温度(Tm値)よりも高く且つ前記長鎖核酸と前記第1核酸プローブとのハイブリッドの融解温度(Tm値)よりも低い温度にまで、前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を含む系の温度を上昇させることにより行なってもよい。あるいは、前記解離工程は、鎖置換型DNAポリメラーゼと、dATP、dGTP、dTTP及びdCTPからなる群より選択される少なくとも1種のデオキシヌクレオチドとの存在下で、前記第1核酸プローブを鋳型とする伸長反応により行なってもよい。
【0016】
前記標識物質としては、前記被検物質に結合可能な第2認識結合部と、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、及び発光物質からなる群より選択される少なくとも1種とを有するもの;あるいは、前記被検物質に結合可能な第1物質と、前記第1物質に結合可能であり、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、及び発光物質からなる群より選択される少なくとも1種を有する第2物質とからなるものが好ましく用いられる。
【0017】
本発明の被検物質の採取方法は、試料から被検物質を採取する方法であって、固相に固定され且つ一本鎖部分を有する第1核酸プローブと、該第1核酸プローブの該一本鎖部分にハイブリダイズ可能な塩基配列の相補塩基配列部及び被検物質を特異的に捕捉できる認識結合部を含む核酸リガンドとがハイブリダイズした第1ハイブリッドと、前記被検物質とを結合させて被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させる工程;前記被検物質−第1ハイブリッド複合体から、被検物質−核酸リガンド複合体を解離させる工程;及び解離された被検物質−核酸リガンド複合体を採取する工程を含む。
【0018】
本発明の被検物質検出用試薬キットは、試料中の被検物質を検出するために用いられる試薬キットであって、一本鎖部分を有する第1核酸プローブを固定化した第1固相;前記第1核酸プローブの一本鎖部分にハイブリダイズ可能な相補塩基配列部と、前記被検物質に結合可能な認識結合部とを有する核酸リガンド;前記核酸リガンドの認識結合部にハイブリダイズ可能な一本鎖部分を有する第2核酸プローブを固定化した第2固相;及び前記被検物質に結合可能な標識物質を含む。
【0019】
さらに、前記第1固相を洗浄するための洗浄液を含むことが好ましく、また鎖置換型DNAポリメラーゼと、dATP、dGTP、dTTP及びdCTPからなる群より選択される少なくとも1つのデオキシヌクレオチドとを含むことが好ましい。
【0020】
尚、本明細書における「核酸」とは、デオキシリボ核酸(DNA)、リボ核酸(RNA)の他に、PNA (Peptide Nucleic Acid)やBNA(Bridged Nucleic Acid)、及びこれらの類縁体などの人工的に合成された核酸(以下、「人工核酸」という)も含む。また、本明細書における「塩基配列」とは、DNAやRNAの塩基配列だけでなく、人工核酸の塩基配列をも含む。
【0021】
本明細書における「検出」とは、被検物質の有無だけでなく、被検物質の定量をも含む概念である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の被検物質の検出方法は、被検物質を核酸リガンドに結合させ、この核酸リガンドを、核酸プローブを用いて捕捉し、さらに分離採取して第2の固相に移すことによって精製しているので、バックグラウンドノイズが少なく、高精度で微量の被検物質を検出することができる。
【0023】
また、本発明の被検物質の分離方法では、塩基の特異的反応を利用して、被検物質を核酸プローブに捕捉させ、洗浄後、解離させて採取しているので、高純度で微量の被検物質を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の被検物質の検出方法は、第1固相に固定され且つ一本鎖部分を有する第1核酸プローブと、該第1核酸プローブの該一本鎖部分にハイブリダイズ可能な塩基配列の相補塩基配列部及び被検物質を特異的に捕捉できる認識結合部を含む核酸リガンドとがハイブリダイズした第1ハイブリッド;前記被検物質;及び該被検物質に結合可能な標識物質からなる標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させる工程;
前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体から、前記核酸リガンドと前記標識物質と前記被検物質とが結合した標識被検物質−核酸リガンド複合体を解離させる工程;
解離された標識被検物質−核酸リガンド複合体を分離採取する工程;並びに
前記標識被検物質−核酸リガンド複合体中の標識物質に基づいて被検物質を検出する工程を含む。
【0025】
本発明の方法が適用される被検物質としては、タンパク質、核酸、糖類、脂質、ホルモン、ハプテン、トキシン、ウィルス、微生物などが挙げられる。前記微生物とは、バクテリア、プロチスタ、クロミスタなど、肉眼で観察できないような微小生物をいう。また、これらの被検物質を含む試料としては、例えば、血液、唾液、尿、鼻汁、涙液、糞便、組織抽出液、培養液、河川水、廃液などが挙げられ、これらの試料を精製したものも含まれる。
【0026】
本発明で用いられる第1固相としては、第1核酸プローブを安定に固定することができるものであればよく、プレート、チューブなどの容器、メンブレン、粒子などを用いることができる。具体的には、ポリプロピレン、ポリスチレン等の合成樹脂製又はガラス製のマイクロプレート、ニトロセルロースメンブレン、ラテックス粒子、磁性粒子などが挙げられる。
【0027】
本発明の方法で用いられる第1核酸プローブは、上記核酸リガンドの相補塩基配列部とハイブリダイズ可能な塩基配列を有するものであればよい。第1核酸プローブは、1本鎖であってもよいし、長さの異なる2本の塩基配列がハイブリダイズして二本鎖部分と一本鎖部分とを有し、この一本鎖部分が核酸リガンドの相補塩基配列部とハイブリダイズできる配列を有しているものであってもよい。また、一本鎖でステムループを形成し且つ核酸リガンドとハイブリダイズできる配列を有する一本鎖部分を有しているものであってもよい。これらのうち、ステムループ構造を有する第1核酸プローブが好ましい。プローブの二本鎖を形成しているステム部分は5〜10merで、1本鎖部分が15〜20merであることが好ましい。
【0028】
このような第1核酸プローブは、第1固相に固定されている。第1固相への固定は、第1核酸プローブが直接第1固相と結合を形成することにより固定されていてもよいし、間接的に固定されていてもよい。間接的固定方法としては、例えば、固相に特定の物質Aを固定し、さらにこの物質に結合できる物質Bを第1核酸プローブに結合させ、物質Aと物質Bとの結合を介して、第1核酸プローブを固相に固定化する方法;第1核酸プローブを構成する何れかの塩基にアミノ基を化合させ、このアミノ基を固相に固定化する方法;固相に特定の塩基配列Xを有する一本鎖の核酸を固定し、この一本鎖の核酸に、塩基配列Xに相補的な塩基配列Xcと、核酸リガンドの相補塩基配列部にハイブリダイズ可能な塩基配列Yとを有する核酸プローブを結合させる方法などが挙げられる。上記物質Aと物質Bとの組み合わせとしては、ストレプトアビジンとビオチンとの組み合わせなどが挙げられる。第1核酸プローブがステムループ構造である場合、ループ部分が固相に固定化されていることが好ましい。
【0029】
本発明の方法で用いられる核酸リガンドは、第1核酸プローブの1本鎖部分にハイブリダイズ可能な塩基配列の相補塩基配列部と、被検物質を特異的に捕捉できる認識結合部とを含む。
【0030】
認識結合部は、被検物質と特異的に結合できるものであればよく、被検物質の種類に応じて適宜選択される。認識結合部としては、抗体、レセプター、ペプチド、核酸リガンド(アプタマー)、ポリヌクレオチドなどを用いることができる。本明細書における抗体とは、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体だけでなく、また、抗体フラグメント、及びその誘導体をも含む。具体的には、Fab、Fab’、F(ab)、及びFvフラグメントなど(Blazar et al., 1997, J. Immunol., 159: 5821-5833及びBird et al., 1988, Science, 242: 423-426)が例示される。抗体のサブクラスはIgGに限定されず、IgMなどでもよい。
【0031】
相補塩基配列部は、天然に存在するDNAやRNAで構成される場合に限らず、人工核酸で構成されていてもよいが、好ましくはDNAの塩基配列である。
相補塩基配列部の配列は、使用する第1核酸プローブの配列に応じて適宜決められる。具体的には、第1核酸プローブの一本鎖部分とハイブリッドを形成できる相補性を有するものであればよく、一本鎖部分と完全な相補性を有するものに限定されない。特に後の解離工程を引き起こすためには、完全一致の相補性でないことが好ましく、相補塩基配列部における第1核酸プローブの相補部分との相同性は約50%以上であればよい。
【0032】
相補塩基配列部の長さとしては、第1核酸プローブと安定的に結合できる長さで、しかも採用する解離方法で容易に解離できる程度の長さの配列であることが好ましく、使用する解離方法に応じて配列、鎖長は適宜決定される。
【0033】
例えば、解離反応が温度上昇により行われる場合、配列は、結合が比較的緩やかなA−T塩基対の組合わせのみで構成されることが好ましい。また、相補塩基配列部が、A−T塩基対のみで形成される場合には、相補ヌクレオチド配列部長12〜16merであることが好ましい。
【0034】
認識結合部がアプタマーの場合、このアプタマーに相補塩基配列部が結合してもよいし、アプタマーの一部が相補塩基配列部となっていてもよい。例えば、配列「5’TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTGTGACTACTGGTTGGTGAGGTTGGGTAGTCACAAA 3’」(配列ID No.1)からなるアプタマーは、5’末端から20塩基(dT20部分)が相補塩基配列部で、残りの配列がトロンビンと特異的に結合する3次元構造を有する認識結合部である。
【0035】
認識結合部は、相補塩基配列部の末端に接続されていることが好ましい。相補塩基配列部がDNA又はRNAの場合、認識結合部は相補塩基配列部の3’末端に結合していることが好ましい。また、認識結合部がアプタマーで構成されているときは、相補塩基配列部が5’末端側に形成され、3’末端側にアプタマーを構成する配列が形成されていることが好ましい。認識結合部が抗体のときは、例えば、核酸リガンドのヌクレオチド3’端にチオール基を修飾し、マレイミド基を有するリンカー分子と結合させ、このマレイミド基の反対方向にグルタルアルデヒド基を修飾しておき、このアルデヒド基が抗体中に存在するアミノ基と共有結合することにより、抗体を結合させることができる。
【0036】
本発明における標識物質は、被検物質に結合可能であり、標識を有する物質である。具体的には、被検物質に結合可能な第2認識結合部と標識との組み合わせ;又は被検物質に結合可能な第1物質と、該第1物質に結合可能な標識を有する第2物質との組み合わせなどが挙げられる。
【0037】
第2認識結合部としては、塩基配列、抗体、レセプター、アプタマーなどを用いることができる。第2認識結合部が認識する被検物質の領域は、核酸リガンドの認識結合部が認識する領域とは異なることが好ましい。
【0038】
標識としては、検出可能なシグナルを発する物質や、検出可能なシグナルを発する生成物を生じる反応を触媒する物質などを用いることができる。例えば、32P、125Iなどの放射性同位元素、フルオレセインなどの蛍光色素、アルカリホスファターゼ(ALP)、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素、量子ドット、ナノ粒子などの蛍光・発光物質、フェロセンなどの電気化学活性をもつ物質、ルテニウム、ユーロピウム錯体などの電気化学発光物質などが挙げられる。
【0039】
標識物質が、被検物質に結合可能な第1物質と、該第1物質に結合可能な標識を有する第2物質との組み合わせで構成される場合、被検物質−第1ハイブリッド複合体に第1物質が結合し、さらにこの第1物質に第2物質が結合することにより、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を間接的に標識することができる。
【0040】
以下、本発明の検出方法の各工程について説明する。
先ず、第一固相(反応容器など)において、被検物質と、第1核酸プローブと、核酸リガンドと、標識物質とを結合させ、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させる(標識被検物質−第1ハイブリッド複合体形成工程)。
【0041】
被検物質、第1核酸プローブ、及び核酸リガンドの結合は、第一固相において第1核酸プローブと核酸リガンドとを先ず結合させて、第1ハイブリッドを形成し、次いで、被検物質を含む試料を添加して、第1ハイブリッド中の核酸リガンドに被検物質を結合させることによって行うことができる。また、予め核酸リガンドと被検物質とを結合させて形成された被検物質−核酸リガンド複合体を、第一固相に固定されている第1核酸プローブに結合させて、核酸リガンドと第1核酸プローブとがハイブリダイズした第1ハイブリッドを形成させることによっても行うことができる。
標識物質と被検物質との結合は、被検物質と第1ハイブリッドとの複合体を形成させる前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
【0042】
標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を第一固相上に形成した後、第一固相を洗浄することが好ましい。これにより、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成できなかった標識物質、核酸リガンド、被検物質などを第一固相上から除去することができる。洗浄には、洗浄液を用いることが好ましい。洗浄液としては、TBSやPBSなどの緩衝液を用いることができる。
【0043】
次に、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体から標識被検物質−核酸リガンド複合体を解離させる(解離工程)。
解離方法としては、(1)温度上昇を利用する方法、(2)競合反応を利用する方法、(3)鎖置換反応を利用する方法などが挙げられ、使用した第1核酸プローブに応じて適宜選択される。
【0044】
(1)の方法は、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体が形成されている反応系(第1核酸プローブが固相に固定されている容器内)の温度を上昇させることにより、前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体中の第1核酸プローブと核酸リガンドの相補塩基配列部とを解離させる方法である。
【0045】
室温で本発明を実施する場合、第1核酸プローブと相補塩基配列部とのハイブリッドの融解温度(Tm値)が室温以上である必要がある。さらに、このTm値は、プローブや被検物質を変性させない程度の温度であることが好ましい。例えば、相補塩基配列部を構成する塩基がA又はTである場合には、鎖長12〜16merであれば、Tm値は約24〜33℃であるから、約40℃で解離させることができる。相補塩基配列部の塩基は、C及びGが含まれず、A及びTから構成されていることが好ましい。
【0046】
(2)の方法は、第1核酸プローブの一本鎖部分と相補的な配列を有し、且つ核酸リガンドの相補塩基配列部よりも長い鎖長を有する競合用の長鎖核酸を用いる。核酸リガンドと第1核酸プローブとのハイブリッド(第1ハイブリッド)が不安定な温度で、第1核酸プローブとより安定なハイブリッドを形成することができる競合用の長鎖核酸が共存する場合、核酸リガンドが解離して、競合用の長鎖核酸と第1核酸プローブとがハイブリッドを形成するようになる。
【0047】
従って、競合反応は、核酸リガンドと第1核酸プローブとがハイブリダイズしてなる第1ハイブリッドが不安定な温度で、競合用長鎖核酸と第1核酸プローブとのハイブリッドが安定に存在出来る温度で行なうことが好ましい。つまり、競合反応温度Tcは、第1ハイブリッドのTm値(Tm)よりも高く、第1核酸プローブと競合用の長鎖核酸とのハイブリッドのTm値(Tm)よりも低い温度に設定することが好ましい(Tm<Tc<Tm)。
【0048】
(3)の方法は、鎖置換用ポリメラーゼとデオキシヌクレオチド(dNTPs)との存在下で、第1核酸プローブを鋳型として、伸長反応をおこさせることにより、核酸リガンドを解離させる方法である。
【0049】
尚、用いられるデオキシヌクレオチド(dNTP)は、核酸プローブの一本鎖部分の配列によって選択される。核酸プローブがアデニン、グアニン、チミン、及びシトシンの全てを有する場合にはdATP、dGTP、dTTP、及びdCTPの全てを用いる必要があるが、例えば、核酸プローブがアデニンを有するヌクレオチドのみからなる場合には、dATP、dGTP、dTTP、及びdCTPの全てを用いる必要はなく、dATPを用いるだけで足りる。
【0050】
また、第1核酸プローブとしては、DNAを用いることが好ましい。第1核酸プローブが一本鎖である場合は、ポリメラーゼの伸長反応の基点とするため、第1核酸プローブの、相補塩基配列部とハイブリダイズしない部分に結合することのできるプライマを用いることが好ましい。
また、第1核酸プローブがステムループ構造を有している場合は、第1核酸プローブの一本鎖部分が5’末端側であることが好ましい。この場合、第1核酸プローブの3’末端側は二本鎖となっており、これを伸長反応の基点とすることができるため、プライマを用いる必要がない。
【0051】
伸長反応に於いては、鎖置換型DNAポリメラーゼとdNTPの存在下で反応系を37〜50℃にすることにより、鎖置換型DNAポリメラーゼは第1核酸プローブの3’末端を始点として、順次、ヌクレオチドを連結していく。つまり第1核酸プローブの一本鎖部分を鋳型として伸長反応が起るとともに、第1核酸プローブと核酸リガンドのハイブリダイゼーションが解かれて、核酸リガンドが解離する。
【0052】
この方法を用いる場合は、核酸リガンドの相補塩基配列部の5’末端の1〜2塩基が第1核酸プローブと相補性を有しないことが好ましい。これにより、ポリメラーゼの伸長反応による鎖置換が起こりやすくなる。
【0053】
上記(1)〜(3)のいずれかの方法により、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体から、標識被検物質−核酸リガンド複合体が解離したら、標識被検物質−核酸リガンド複合体が反応系で遊離状態となっている溶液を回収する(標識被検物質−核酸リガンド複合体の分離採取工程)。
【0054】
採取した標識被検物質−核酸リガンド複合体を含む溶液を第1固相とは異なる容器に移し、この溶液に含まれる標識被検物質−核酸リガンド複合体中の標識物質に基づいて被検物質を検出する(検出工程)。
【0055】
採取した標識被検物質−核酸リガンド複合体を含む溶液を、第2核酸プローブが固定されている第2固相に移し、標識被検物質−核酸リガンド複合体を第2核酸プローブとハイブリダイズさせて、標識被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成させ(第2複合体形成工程)、標識被検物質−第2ハイブリッド複合体中の標識物質に基づいて、被検物質を検出してもよい。
【0056】
第2核酸プローブの構成は、第1核酸プローブの構成と同様のものを用いることができる。すなわち、上記核酸リガンドの相補塩基配列部とハイブリダイズ可能な塩基配列を有するものであればよい。第2核酸プローブは、第1核酸プローブと同様に、1本鎖であってもよく、長さの異なる2本の塩基配列がハイブリダイズして二本鎖部分と一本鎖部分とを有し、この一本鎖部分が核酸リガンドの相補塩基配列部とハイブリダイズできる配列を有しているものであってもよい。また、一本鎖でステムループを形成し且つ核酸リガンドとハイブリダイズできる配列を有する一本鎖部分を有しているものであってもよい。
【0057】
第2核酸プローブの塩基配列は、第1核酸プローブの塩基配列と同じであってもよいし、異なる配列であってもよい。
【0058】
本発明で用いられる第2固相は、第2核酸プローブを安定に固定することができるものであればよく、第1固相と同様に、プレート、チューブなどの容器、メンブレン、粒子などを用いることができる。
【0059】
標識被検物質−核酸リガンド複合体又は標識被検物質−第2ハイブリッド複合体中の被検物質の検出方法は、標識物質の標識の種類に応じて、公知の方法から適宜選択される。例えば、標識として蛍光色素を用いた場合には、反応系に紫外線等を照射し、蛍光強度を測定することができる。また、標識としてラジオアイソトープを用いた場合には、シンチレーションカウンタなどを用いて放射能を測定すればよい。標識として酵素を用いた場合には、当該酵素の基質となる物質を加え、酵素反応によって生成した物質を定量すればよい。
【0060】
第2核酸プローブがステムループ構造を有する場合、被検物質の検出の前に、ステム部分の末端と相補塩基配列部の末端とを連結してもよい。第2核酸プローブ及び相補塩基配列部がDNAの場合は、ライゲースを用いることにより、末端を連結することができる。また、第2核酸プローブ及び相補塩基配列部が人工核酸の場合は、光結合などによって連結させることができる。光結合による人工核酸の連結法としては、例えば米国特許US6593088B1号公報記載の方法を用いることができる。
【0061】
本発明の被検物質検出用試薬キットは、第1固相から分離採取した標識被検物質−核酸リガンドを第2固相で標識被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成し、かかる標識被検物質−第2ハイブリッド複合体中の標識物質に基づいて被検物質を検出する検出方法に好適に用いられる試薬キットで、一本鎖部分を有する第1核酸プローブを固定化した第1固相;前記第1核酸プローブの一本鎖部分にハイブリダイズ可能な相補塩基配列部と前記被検物質に結合可能な認識結合部とを有する核酸リガンド;前記核酸リガンドの認識結合部にハイブリダイズ可能な一本鎖部分を有する第2核酸プローブを固定化した第2固相;及び前記被検物質に結合可能な標識物質を含む。
【0062】
さらに、第1固相を洗浄するための洗浄液を含むことが好ましい。また、解離工程として、伸長反応を利用するキットについては、鎖置換型DNAポリメラーゼ及びdNTPsを、更に含むことが好ましい。
【0063】
次に、本発明の被検物質の測定方法の一実施態様を、図1及び図2に基づいて説明する。
図1の実施態様で使用されている第1核酸プローブ21は、1本鎖ヌクレオチドで、ステムループを形成している。2重らせんを形成していない第1核酸プローブの1本鎖部分21aは、ループの3’端から数塩基おいて、核酸リガンドの相補塩基配列部と相補的な配列を有している。ループを構成している塩基の一つは、ビオチンで修飾されている。このような第1核酸プローブとしては、例えば、「5’AGAACAGCGTATAATCATTAGCCCGCCCGGCCAAAAAGGCCGGGCGGGCTAA3’」(配列ID No.2)の配列を有するものが挙げられる。34番目の「A」はビオチン修飾アデニンを示している。このような配列のプローブは、例えば、タカラバイオ(株)に合成を依頼して得ることができる。
【0064】
第1固相たるガラス容器の底面には、ストレプトアビジンが固定されている。このストレプトアビジンにビオチンが結合することにより、第1核酸プローブが第1固相に固定されている(図1(a))。
【0065】
図1に示す実施態様では、被検物質22が蛋白質(抗原)で、認識結合部24aとして該抗原に特異的に結合できる抗体を使用した核酸リガンド24を用いている。核酸リガンド24は、第1核酸プローブ21の1本鎖部分21aと相補性ある相補塩基配列部24b(「ATACGCTGTTCT」など)の3’端にリンカーを介して認識結合部24aたる抗体が結合したものである。
【0066】
被検物質22は、アルカリホスファターゼ(ALP)で標識した二次抗体(第2認識結合物質)23によりラベル化されている。つまり、標識物質として、被検物質に結合可能な第2認識結合部として二次抗体とALPとの組み合わせを用いている。このような標識物質が結合した被検物質が認識結合部24aと結合してなる標識被検物質−核酸リガンド複合体25を、第1核酸プローブ21が固定化された容器に添加すると、核酸リガンド24の相補塩基配列部24bと第1核酸プローブ21の一本鎖部分21aとがハイブリダイズして、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体が形成される(図1(b))。
【0067】
鎖置換型ポリメラーゼ及び塩基を添加すると、鎖置換型ポリメラーゼ26が第1核酸プローブ21の3’端に結合し(図1(c))、第1核酸プローブ21の一本鎖部分21aであった配列を鋳型として、第1核酸プローブが3’端へ伸長していく(図1(d))。
伸長反応が進行するにつれ、核酸リガンド24の相補塩基配列部24bが剥がされ、鎖置換反応が生じる。第1核酸プローブ21の一本鎖だった部分21aが伸長反応により二本鎖となると、標識被検物質−核酸リガンド複合体25が完全に解離する(図1(e))。
【0068】
解離により得られた標識被検物質−核酸リガンド複合体25を別の容器(第2固相)に移し替える。第2固相には、第2核酸プローブ31が固定されている(図2(a))。
【0069】
第2核酸プローブ31は、固相に結合した二本鎖DNAの片方のストランドが長く、一本鎖部分31aを有する(図2(a))。第2核酸プローブの一本鎖部分は5’末端側に位置している。
【0070】
第2核酸プローブ31が固定されている第二固相に、標識被検物質−核酸リガンド25を添加すると、第2核酸プローブの一本鎖部分31aと核酸リガンド24の相補塩基配列部24bとがハイブリダイズして、標識被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成する(図2(b))。標識被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成させた後、標識被検物質−第2ハイブリッド複合体の標識を測定することにより、被検物質22を検出することができる。
【0071】
本実施態様では、標識としてアルカリフォスファターゼ(ALP)を使用している。例えば、パラメトキシフェニルリン酸(pMPP)のようなALPの基質と、標識被検物質−第2ハイブリッド複合体のALPとを所定時間反応させると(図2(c))、pMPPがp−メトキシフェノール(pMP)に変化する。EDTAを添加することによりALPの反応を停止させた(図2(d))後、反応生成物であるpMPの発色を測定することにより、被検物質を検出できる。
【0072】
上述の方法を用いると、標識物質が被検物質と結合せずに固相に吸着することによって生じるバックグラウンドノイズを減らすことができ、正確に被検物質の検出を行うことができる。また、核酸リガンドを介して行なわれる核酸プローブとの解離、捕捉は、塩基の相補性に基づくもので、抗原−抗体反応よりも再現性、効率がよいので、高精度、高感度の検出、測定が可能となる。また、核酸反応を利用することは、塩基配列を随意に決定することにより核酸リガンドと核酸プローブとからなるハイブリッドのTm値を設定することが可能となるので、検出方法での温度管理が簡便になる。
【0073】
尚、本発明の核酸リガンドは、上記本発明の検出方法の利用だけに限定されない。例えば、上記測定方法で被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させ、被検物質−第1ハイブリッド複合体から被検物質−核酸リガンド複合体を解離する工程、及び解離した被検物質−核酸リガンド複合体を採取する工程までを行うことで、混合物の測定試料から、目的の被検物質の分離採取することができる。すなわち高純度及び高濃度の測定試料を得ることが可能となる。従って、電気泳動や質量分析、LC、分子間相互作用測定装置(SPR−ROM)などに供する高純度の測定試料を得るための前処理として、被検物質−第1ハイブリッド複合体形成工程から分離採取工程までを利用することも可能である。
【実施例】
【0074】
〔実施例1〕
(1)第1核酸プローブの固相化
96穴プレートA(IWAKI製のELISAプレート)の各ウェルに、0.2pmol/μlのストレプトアビジン(chemicon SA101 Lot,21080929)を50μl添加し、37℃で1.7時間保存して、ストレプトアビジンを結合させた(図3(a))。
【0075】
プレートAの各ウェルを、0.1%BSA(シグマ製)を含むTBS(TBS−T)で洗浄した後、各ウェルに、TBS−TでBSA3%Salmon−DNA(サケ精子DNA)を0.1mg/mlの濃度に希釈した溶液300μlを添加し、37℃で3時間静置して、非特異吸着をブロックした。
【0076】
第1核酸プローブとして、bio−Transfer用DNA(ステムループを形成したDNAでステム部分の1塩基にあたる34番目のAがビオチンで修飾されている:配列「5’AGAACAGCGTATAATCATTAGCCCGCCCGGCCAAAAAGGCCGGGCGGGCTAA 3’」(配列ID No.2))を用いた。このbio−Transfer用DNA1pmol/μlの50μlをストレプトアビジンが固定された各ウェルに添加し、37℃で5時間静置した。第1核酸プローブ中のビオチンがストレプトアビジンと結合することにより、第1核酸プローブが各ウェルの固相に固定された(図3(b))。
【0077】
(2)標識被検物質−第1ハイブリッド複合体の形成
核酸リガンドとして、第1核酸プローブの1本鎖にハイブリダイズ可能な配列を有し、3'端に認識結合部としてビオチンが結合したもの(「5’ATAGCGCGCTGTTCTTACTCAGGGCACTGCAATTGTGGTCCCAATGGGCTGAGTA−biotin 3’」(配列ID No.3))を用いた。第1核酸プローブ(配列ID No.2)の1〜9番目までの塩基と、この核酸リガンド(配列ID No.3)の7〜15番目の塩基が相補的関係にある。
【0078】
各ウェルに、上記核酸リガンドを添加し、室温で1.7時間静置することにより、核酸リガンドと第1核酸プローブとをハイブリダイズさせた(図3(c))。核酸リガンドの添加量は、ウェル50μlあたり、0.1×10−14mol、1×10−13mol、1×10−12mol、1×10−11mol、又は3.3×10−10molとした。
【0079】
(3)被検物質の捕捉
次いで、被検物質(アルカリホスファターゼ(ALP)で標識したストレプトアビジン)を添加し、核酸リガンドのビオチンでこれらを捕捉した(図3(d))。尚、被検物質の捕捉は、アルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジン(NORDIC社製、SAv−AP)の2000倍希釈液と核酸リガンドを、1時間反応させることにより行なった。これにより、核酸リガンドのビオチンと被検物質たるストレプトアビジンが結合し、その結果、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体が形成された。
【0080】
尚、被検物質の添加量は、各ウェルにおける核酸リガンドの濃度にかかわらず、核酸リガンドのすべてに被検物質が結合する量とした。
【0081】
(4)解離工程
鎖置換型DNAポリメラーゼとして、Takara製のReverse TranscriotaqseXL(AMV)を用いた。
下記組成を含む反応液50μlを、各ウェルに1μl添加し、37℃で15時間反応させた。
【0082】
Tris緩衝液(50mMのトリス塩酸、40mMのKCl、pH8.2)
塩化マグネシウム 6mM
dNTPs 250μl
DTT 2mM
AMV RTaseXL(5U/μl)
【0083】
鎖置換型DNAポリメラーゼAMVは、第1ハイブリッドの核酸プローブの3’端に結合し、第1核酸プローブを鋳型として伸長させた。このようにして鎖置換型反応が起り、標識被検物質−核酸リガンド複合体が解離した(図3(d))。
【0084】
(5)第2核酸プローブの第2固相への固定
第2固相として、オリゴdT20が固定化されたプレートB(ベリタス製のGENE PLATE21GP02−3RNAture)を用いた(図3(g))。
【0085】
プレートBに、dA20を有し且つ核酸リガンドとハイブリダイズ可能な塩基配列とを有する1本鎖の核酸を、1時間、室温で静置することによりハイブリダイズさせ、第2核酸プローブを固定化した(図3(e))。
【0086】
プレートBを洗浄した後、BSAを3%含むSalmon Speruma DNA(サケ精子DNA)をTBS−Tで0.01%に希釈した溶液を添加し、室温で1.5時間以上静置し、ブロッキングを行った。
【0087】
(6)分離採取、移送工程
(4)で得られた標識被検物質−核酸リガンド複合体を含むプレートAの各ウェルに収容された溶液を、マイクロピペットを用いて採取し、第2核酸プローブを固定化したプレートBに移した(図3(e))。上澄み液中には、(4)の解離反応で得られた被検物質−核酸リガンド複合体が含有されている。室温で1時間静置することにより、第2核酸プローブの一本鎖と複合体中の相補塩基配列部をハイブリダイズさせて、被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成させた(図3(f))。
【0088】
(7)検出測定工程
被検物質−第2ハイブリッド複合体が形成されている容器に、アルカリフォスファターゼ(ALP)の基質であるp−メトキシフェニルフォスフェイト(p−MPP)10mM(希釈液:0.5M、炭酸緩衝液)を10μlずつ添加して、ALP反応を37℃で30分間行った。ALP反応後、停止液(EDTA溶液:pH9)を10μlずつ添加した。
【0089】
ALP反応によりp−MPPがp−メトキシフェノール(p−MP)に分解される。
p−MP量はALPの分子数に応じて変化する。従って、p−MP量を測定することによって、核酸リガンド−ストレプトアビジン−ALP複合体の量を測定することができる。
【0090】
p−MP量は、図4に示すフロー式電気化学測定系を用いて測定した。結果を図5に示す。
【0091】
〔アルカリフォスファターゼ(ALP)標識の電気化学的手法での検出系〕
インジェクターに測定試料液(実施例1ではALP反応を終了させた溶液)を入れる。試料液は、インジェクトバルブ(Reodine製77251)を開いて、ODSカラム(YMC−Pack−ODS−AM、AM3C7AM12S05−L502WT No.0270458(W))、ショートカラム(YMCセミミクロガードカートリッジカラム2×10、AM12S05−0102CC)を通って、電気化学検出部へ送液される。このときの溶出液としては、45v/v%又50v/v%メタノールを含む0.1Mのリン酸緩衝液を用いた。ショートカラムは、インジェクトバルブと電極検出部の間に配置されて、測定試料に混入するタンパク成分が電極検出部に到達することで電極表面の汚れを防止する。また、ショートカラムにより緩衝液由来のノイズ電流と検出成分の電流を検出器に到達する時間で分離する。
【0092】
溶出液を収納したデガッサ(Vaccum Degasser LC−27A)は溶出液の気泡を除去し、ポンプ(MICRO LCポンプLC−100)により、250μl/minで溶出液を電気化学検出部に送ることにより、インジェターに収容した試料液が電気化学検出部に送られる。
【0093】
FIA−EC−DT(Flow Injection Analysys−Electrochemical−Detection)流路への測定試料のサンプル量は20μlとなるように設定した。
【0094】
FIA−EC−DTの電極検出部には3電極系を使用し、参照電極にはAg/AgCl(BAS RE3V)、カウンター電極には流路一体型電極、作用電極にはグラッシーカーボン電極(BAS003456)を使用した。電気化学測定器には、BAS社のALS832aを使用した。
【0095】
各サンプルをフロー式電気化学測定系にインジェクトし、酸化電流値のピークを求めて、電気化学検出した。検出条件は、作用電極電位(酸化電位)が0.55VvsAg/AgCl、インジェクターから電極検出部までの出現時間は90秒である。
【0096】
〔比較例1〕
実施例1の操作(1)〜(3)を同様に行ない、96穴プレートに標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させた。この状態で、ALP反応を利用して、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体の量を測定した。
【0097】
アルカリフォスファターゼの測定は、図4に示すフロー式電気化学的検出系を用いて測定した。結果を図5に示す。
【0098】
図5の結果からバックグラウンドノイズを差し引いたシグナル値との関係を図6に示す。
【0099】
図5,6中、「■」は実施例、「□」は比較例を示している。横軸は、使用した核酸リガンド(核酸リガンド−ストレプトアビジン複合体)量(mol)を示し、縦軸は、検出系で測定された電流値(A)を示している。
【0100】
〔評価結果〕
図5からわかるように、解離反応を行わなかったアッセイ系(比較例1)では、試料濃度が10−12molまでは、試料濃度と測定値がほぼ相関関係を有するが、それ未満では、ほぼ測定値は変化しなかった。このことは、バックグラウンドノイズが大きいために、10−12mol未満の微量試料を区別して測定できないことを意味する。
【0101】
一方、解離反応を行ったアッセイ系(実施例1)では、試料濃度と測定値がほぼ相関関係にあった。従って、解離反応を行なうアッセイ系では、10ー14mol、少なくとも10ー13molまで測定することはできる。このことは、従来のアッセイ系より検出レベルが1桁以上向上したことを意味する。
【0102】
〔実施例2〕
(1)第1核酸プローブの固相化
第1固相となる96穴プレートC(CORNING社、DNA-BIND plate)の各ウェルに、50mM NaPO、1mM EDTA、100pmol アミノ化オリゴDNA(第1核酸プローブ:5’AGAACAGCGTATAATCATTAGCCCGCCCGGCCAA(NH−A)AAGGCCGGGCGGGCTAA 3’(配列ID No.4、株式会社ベックス)を含む溶液(pH8.5)を100μl添加し、37℃で1時間静置して、第1核酸プローブ41の35番目のアデニンに付加したアミノ基がプレートCに結合し、第1核酸プローブ41が固定された(図7(a))。
【0103】
プレートCの各ウェルを、200μlのPBSで三回洗浄した後、各ウェルに50mM NaPO、1mM EDTA、3% BSAを含むブロッキング用溶液を200μl添加し、37℃で30分間静置して、非特異吸着をブロックした。
【0104】
(2)標識被検物質−第1ハイブリッド複合体の形成
標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成する際のハイブリダイゼーション用バッファーとして、5×SSC(20×SSC(ニッポンジーン社)を希釈して調製)、0.05% SDS(10%SDS(ニッポンジーン社)を希釈して調製)及び0.005% BSAを超純水に溶解した溶液を用いた。
【0105】
被検物質として、M13mp18一本鎖DNA(タカラバイオ社:以下、「M13DNA」という)を用いた。これを、サケ精子DNA(ナカライテクス社)を10μg/mlの濃度で含むTEバッファ(ニッポンジーン社)に添加し、調製した溶液を測定用試料とした。
【0106】
核酸リガンド44として、第1核酸プローブ41及びM13DNAの両者にハイブリダイズ可能な配列を持ち、3’末端をリン酸化したDNA(5’TGACCATACGCTGCTCTTTTTGTAAAACGACGGCCAGT3’:配列ID No.5、シグマジェノシス社)を用いた。
【0107】
標識物質としては、ビオチン化DNA(第1物質43a)とHRP標識ストレプトアビジン(第2物質43b)との組み合わせを用いた。第1物質43aであるビオチン化DNAは、核酸リガンド44とハイブリダイズ可能で且つ被検物質であるM13DNAともハイブリダイズ可能で、5’末端をビオチン化し、3’末端をリン酸化したDNA(5’TTTTTGTCGACTCTAGAGGATC3’:配列ID No.6、シグマジェノシス社)である。
【0108】
第1核酸プローブ41を固定化したプレートCの各ウェルに、先ず上述のハイブリダイゼーション用バッファーを100μlずつ添加した。次にプレートCの各ウェルに、測定用試料、核酸リガンド10pmol及び第1物質10pmolを添加し、37℃で1時間静置して、第1核酸プローブ41と、核酸リガンド44と、M13DNAと、第1物質43aとを結合させた(図7(b))。次に、プレートCの各ウェルを洗浄バッファー(2×SSC、0.1%SDSを含む)200μlを用いて3回洗浄した。
【0109】
プレートCの各ウェルにブロッキング溶液(3%BSAを含むPBS(ニッポンジーン社))を200μl添加して、37℃30分間静置してプレートのブロッキングを行った。ブロッキング溶液をウェルから除去した後、このブロッキング溶液で1000倍希釈した標識用第2物質としてのHRP標識ストレプトアビジン(1000U/ml、ロシュ社)溶液を各ウェルに100μlずつ添加し、37℃で1時間静置し、第1物質43aと第2物質43bとの間で、ビオチンとストレプトアビジンを結合させた。これにより、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体が形成された(図7(c))。
【0110】
(3)解離工程
以下の組成を含む反応液100μlを各ウェルに添加し、37℃1時間反応させた。
1×Thermopol バッファ(New England Labs社)
1mM dATPs(インビトロジェン社)
1mM dGTPs(インビトロジェン社)
1mM dTTPs(インビトロジェン社)
1mM dCTPs(インビトロジェン社)
2.4U/ml BstDNAポリメラーゼ(New England Labs社)
なお、BstDNAポリメラーゼは、鎖置換型DNAポリメラーゼである。
この反応によって、標識被検物質−第1ハイブリッド複合体からHRPで標識された被検物質−核酸リガンド複合体を解離させ、反応液中に遊離させた。
【0111】
(4)第2核酸プローブの固定化
第2固相となる96穴プレートD(CORNING社、DNA-BIND plate)の各ウェルに50mM NaPO、1mM EDTA、100pmol 3’末端アミノ化オリゴDNA(第2核酸プローブ:5’ AGAGCAGCGTATGGTCATTTTTT3’:配列ID No.7、シグマジェノシス社)を含む溶液(pH8.5)を100μl添加し、37℃で1時間静置して、第2核酸プローブ51を結合させた。その後、プレートDに固定化されなかった第2核酸プローブを200μlのPBSで3回洗浄することにより除去した。
【0112】
(5)移送工程
(3)で得られたプレートCの反応液の全量をプレートDの各ウェルに移動した。移動後、37℃で1時間静置することにより、反応液中のHRPで標識した被検物質−核酸リガンド複合体を第2核酸プローブ51とハイブリダイズさせ、標識被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成させた(図10)。標識被検物質−第2ハイブリッド複合体の形成後、各ウェルを200μlのPBSで3回洗浄した。
【0113】
(6)検出工程
(5)の工程を終了した後、各ウェルの洗浄用のPBSを除去した。次に、各ウェルにHRPの基質であるTMB(3,3',5,5'Tetramethylbensidine )を含む基質溶液100μlを添加し、37℃で反応させ、HRPの作用で基質であるTMBを分解し、発色させた。1時間後、各ウェルに100μlの1N HCl(和光純薬社)を加えて反応を停止させた。各ウェルの450nmにおける吸光度を、プレートリーダ(TECAN社、Safire2)を用いて測定した。
【0114】
また、測定の際のバックグラウンド値を測定するため、被検物質を含まない試料(0 fmol)を用いて実施例2の(1)〜(6)を実施し、吸光度測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0115】
〔比較例2〕
実施例2と同様にして(1)〜(2)の工程を実施した。その後、(3)〜(5)の工程を行わず、(6)と同様にしてHRPによる発色反応を行い、吸光度を測定した。また、測定の際のバックグラウンド値を測定するため、被検物質を含まない試料(0 fmol)を用いて実施例2の(1)〜(2)を実施し、さらに(6)と同様にしてHRPによる発色反応を行い、吸光度測定を行った。測定結果を表1に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
実施例2のバックグラウンド値(被検物質量が0fmolの場合の吸光度)は、比較例2のバックグラウンド値に比べ、約10分の1の値を示した。また、実施例2のシグナル値(被検物質量が10fmolの場合の吸光度)は、比較例2のシグナル値に比べ、約2分の1の値を示した。シグナル値とバックグラウンド値(ノイズ)の比(S/N比)は、比較例2の2.47に比べて実施例2は12.4となり、約5倍の値を示した。
【0118】
実施例2及び比較例2より、第一固相から標識被検物質−核酸リガンド複合体を分離採取し、これを第二固相へ移送することによって被検物質の検出の際のバックグラウンド値が大幅に低下することが確認された。また、S/N比も大きく向上し、高精度で被検物質を検出することができた。従って、本発明の検出方法によると、バックグラウンドが少なく、試料に含まれる微量の被検物質を高精度で検出することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明の測定方法は、微量の被検物質、特に試料中に目的物質が微量に含まれている場合の、目的物質の検出、定量に利用できる。
また、試料に含まれる特定物質について、質量分析、電気泳動、分子間相補作用測定を行なうに際して、高純度の測定試料を得るための前処理として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】本発明の測定方法の一実施態様を説明するための図である。
【図2】本発明の測定方法の一実施態様を説明するための図である。
【図3】実施例1の操作を説明するための図である。
【図4】アルカリホスファターゼの反応の測定に用いたシステムの構成を示すブロック図である。
【図5】供した試料濃度と測定電流値との関係の測定結果を示すグラフである。
【図6】図5の結果からバックグラウンドノイズを差し引いたグラフである。
【図7】実施例2の操作を説明するための図である。
【図8】実施例2の操作を説明するための図である。
【図9】従来の測定方法を説明するための図である。
【図10】従来の測定方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0121】
21 第1核酸プローブ
22 被検物質
23 二次抗体(第2認識結合物質)
24 核酸リガンド
24a 認識結合部
24b 相補塩基配列部
25 標識被検物質−核酸リガンド複合体
26 鎖置換型ポリメラーゼ
31 第2核酸プローブ
41 第1核酸プローブ
43a 第1物質
43b 第2物質
44 核酸リガンド
51 第2核酸プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の被検物質を検出する方法であって、
第1固相に固定され且つ一本鎖部分を有する第1核酸プローブと、該第1核酸プローブの該一本鎖部分にハイブリダイズ可能な塩基配列の相補塩基配列部及び被検物質を特異的に捕捉できる認識結合部を含む核酸リガンドとがハイブリダイズした第1ハイブリッド;前記被検物質;及び該被検物質に結合可能な標識物質からなる標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させる工程;
前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体から、前記核酸リガンドと前記標識物質と前記被検物質とが結合した標識被検物質−核酸リガンド複合体を解離させる工程;
解離された標識被検物質−核酸リガンド複合体を分離採取する工程;並びに
前記標識被検物質−核酸リガンド複合体中の標識物質に基づいて被検物質を検出する工程
を含む核酸プローブを用いる被検物質の検出方法。
【請求項2】
前記分離採取した標識被検物質−核酸リガンド複合体と、第2固相に固定され且つ前記核酸リガンドの相補塩基配列部にハイブリダイズ可能な一本鎖を有する第2核酸プローブとからなる標識被検物質−第2ハイブリッド複合体を形成し、
前記被検物質の検出工程は、前記標識被検物質−第2ハイブリッド複合体中の標識物質に基づいて行なわれる請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体形成工程は、
前記第1ハイブリッドに、被検物質及び標識物質を結合させることにより行なわれる請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体形成工程は、
前記第1核酸プローブに、前記標識被検物質−核酸リガンド複合体を結合させることにより行なわれる請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項5】
前記認識結合部は、被検物質と結合できるアプタマー、抗体、及び受容体からなる群より選ばれる1種である請求項1〜4のいずれかに記載の測定方法。
【請求項6】
前記相補塩基配列部はDNA又はRNAで構成され、
前記認識結合部は、前記相補塩基配列部の3’末端に結合している請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記解離工程は、前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を含む系の温度を上げることにより行われる請求項1〜6のいずれかに記載の測定方法。
【請求項8】
前記解離工程は、
第1核酸プローブとハイブリダイズ可能であり且つ前記核酸リガンドよりも鎖長が長い一本鎖の長鎖核酸の存在下で、
前記第1核酸プローブと前記核酸リガンドとのハイブリッドの融解温度(Tm値)よりも高く且つ前記長鎖核酸と前記第1核酸プローブとのハイブリッドの融解温度(Tm値)よりも低い温度にまで、
前記標識被検物質−第1ハイブリッド複合体を含む系の温度を上昇させることにより行なわれる請求項1〜6のいずれかに記載の検出方法。
【請求項9】
前記解離工程は、鎖置換型DNAポリメラーゼと、dATP、dGTP、dTTP及びdCTPからなる群より選択される少なくとも1種のデオキシヌクレオチドとの存在下で、前記第1核酸プローブを鋳型とする伸長反応により行われる請求項1〜6のいずれかに記載の検出方法。
【請求項10】
前記標識物質は、
前記被検物質に結合可能な第2認識結合部と、
放射性同位元素、酵素、蛍光物質、及び発光物質からなる群より選択される少なくとも1種とを有する請求項1〜9のいずれかに記載の検出方法。
【請求項11】
前記標識物質は、
前記被検物質に結合可能な第1物質と、
前記第1物質に結合可能であり、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、及び発光物質からなる群より選択される少なくとも1種を有する第2物質とからなる請求項1〜9のいずれかに記載の検出方法。
【請求項12】
試料から被検物質を採取する方法であって、
固相に固定され且つ一本鎖部分を有する第1核酸プローブと、該第1核酸プローブの該一本鎖部分にハイブリダイズ可能な塩基配列の相補塩基配列部及び被検物質を特異的に捕捉できる認識結合部を含む核酸リガンドとがハイブリダイズした第1ハイブリッドと、
前記被検物質とを結合させて被検物質−第1ハイブリッド複合体を形成させる工程;
前記被検物質−第1ハイブリッド複合体から、被検物質−核酸リガンド複合体を解離させる工程;及び
解離された被検物質−核酸リガンド複合体を採取する工程;
を含む被検物質の採取方法。
【請求項13】
試料中の被検物質を検出するために用いられる試薬キットであって、
一本鎖部分を有する第1核酸プローブを固定化した第1固相;
前記第1核酸プローブの一本鎖部分にハイブリダイズ可能な相補塩基配列部と、前記被検物質に結合可能な認識結合部とを有する核酸リガンド;
前記核酸リガンドの認識結合部にハイブリダイズ可能な一本鎖部分を有する第2核酸プローブを固定化した第2固相;及び
前記被検物質に結合可能な標識物質;
を含む被検物質検出用試薬キット。
【請求項14】
さらに、前記第1固相を洗浄するための洗浄液を含む請求項13に記載の試薬キット。
【請求項15】
鎖置換型DNAポリメラーゼと、dATP、dGTP、dTTP及びdCTPからなる群より選択される少なくとも1種のデオキシヌクレオチドとを、さらに含む請求項13又は14に記載の試薬キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−129866(P2006−129866A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274912(P2005−274912)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】