核酸分子の配列決定の方法
【課題】複数の塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法を提供する。
【解決手段】重合反応中における塩基の付加の一時的な順序が核酸の単分子上で測定され、即ち、配列決定される鋳型核酸分子上の核酸重合酵素の活性が実時間で追跡調査される。塩基付加の配列における各段階における核酸重合酵素の触媒活性により、どの塩基が伸長する標的核酸の相補鎖に取り込まれるかを決定することにより、配列が推定される。標的核酸分子複合体上のポリメラーゼは、標的核酸分子に沿った移動、および活性部位におけるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長のために適切な位置において提供される。複数の標識型のヌクレオチド類似体が、標的核酸配列において異なるヌクレオチドに対し相補的な、各々識別可能な型のヌクレオチド類似体と共に、活性部位近傍に提供される。
【解決手段】重合反応中における塩基の付加の一時的な順序が核酸の単分子上で測定され、即ち、配列決定される鋳型核酸分子上の核酸重合酵素の活性が実時間で追跡調査される。塩基付加の配列における各段階における核酸重合酵素の触媒活性により、どの塩基が伸長する標的核酸の相補鎖に取り込まれるかを決定することにより、配列が推定される。標的核酸分子複合体上のポリメラーゼは、標的核酸分子に沿った移動、および活性部位におけるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長のために適切な位置において提供される。複数の標識型のヌクレオチド類似体が、標的核酸配列において異なるヌクレオチドに対し相補的な、各々識別可能な型のヌクレオチド類似体と共に、活性部位近傍に提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、1999年5月19日に出願された米国仮特許出願第60/134,827号のを恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は国立科学財団補助金第BIR8800278号、国立保健研究所補助金第P412RR04224-11号、およびエネルギー省補助金第066898-0003891号の下で米国政府により提供された基金により発明された。米国政府は本発明において一定の権利を有する可能性がある。
【0003】
発明の分野
本発明は、核酸分子の配列を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒトの全ゲノムを明らかにするという目標は、大小いずれのスケールの適用についても迅速なDNA配列決定をする技術に対する関心を喚起した。重要なパラメータは配列決定の速さ、一度の配列解析において読み取ることの可能な配列長、および必要とされる鋳型の核酸の量である。これらの研究上の挑戦は、事前に増幅せずに、および事前に遺伝材料を配列決定用ベクターへクローニングする必要なく、単一の細胞の遺伝情報の配列決定を目指すことを提案する。現状では、大きなスケールのゲノムプロジェクトは、多数の生物または患者について現実的に実施するには費用がかかりすぎる。さらに、ヒトの疾患について遺伝学的基礎の知識が増加するにつれ、臨床適用を可能にする、正確な、高処理量DNA配列決定の必要性は常に増加し続けると考えられる。核酸の単分子の塩基対配列の決定の実用的な方法、好ましくは高速かつ読み取り長の長いものは、必要な測定能を提供する。
【0005】
DNAの配列決定のための2つの従来技術は、サンガー(Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:563〜5467(1977))(非特許文献1)のジデオキシ法およびマクサム・ギルバートの化学分解法(MaxamおよびGilbert、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:560〜564(1977))(非特許文献2)である。両方法は、全ての伸長鎖が同じヌクレオチドにおいて終了するような一群のDNA鎖を各サンプルが含んでいる4つのサンプルを産出する。超薄スラブゲル電気泳動が、または、最近は、キャピラリーアレイ電気泳動が、末端ヌクレオチドを示すため電気泳動の前に各サンプルの鎖を異なったタグ標識すること、またはサンプルをゲルの異なるレーン、または異なるキャピラリーにおいて電気泳動することのいずれかにより、異なる長さの鎖を分解し、ヌクレオチド配列を決定するために使用される。サンガー法およびマクサム・ギルバート法のいずれも労力集約的および時間集約的であり、元のDNAの長い前処理を必要とする。時間集約的な電気泳動の段階に代えて質量分析を使用する試みがなされてきている。既存の配列決定技術の総説については、チェン(Cheng)の「高速DNA配列決定分析(High-Speed DNA-Sequence Analysis)」、Prog,Biochem.Biophys.22:223〜227(1995)(非特許文献3)を参照のこと。
【0006】
末端ヌクレオチドに結合した色素または蛍光標識を使用した関連方法が開発され、この方法においても配列決定はゲル電気泳動、および自動蛍光検出器により行われる。例えば、サンガー伸長法は近年、わずかマイクロリッター以下の試薬および色素標識したジデオキシリボヌクレオチド三リン酸しか必要としない、自動微量塩基配列解析システムを使用するように改変された。ソーパー(Soper)らの米国特許第5,846,727号(特許文献1)においては、蛍光検出はキャピラリーチャネルまで励起光を運ぶチャネル1つの単一モード光ファイバー、および蛍光光子を収集する第二の単一モード光ファイバーを用いてチップ上にて行われる。配列の読み取りは400〜500塩基の範囲内と推定され、これは、従来のサンガー法またはマクサム・ギルバート法により得られる配列情報量を超える著しい改善ではない。さらに、ソーパー法は、鋳型DNAのPCR増幅、および分離反応の開始に先駆けて、オリゴヌクレオチド配列「ラダー(ladders)」の精製およびゲル電気泳動を必要とする。これらの系は全て、標的DNAの著しい量を必要とする。配列決定のためにゲル電気泳動を用いない、チーズマン(Cheeseman)の米国特許第5,302,509号(特許文献2)にて説明される方法においてでさえ、少なくとも百万のDNA分子が必要である。
【0007】
元々10年前に発明された、合成による塩基配列決定の方法論の近年の改良において、DNA/ポリメラーゼ複合体を各デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)を別個におよび連続的に用いて試験することによるピロリン酸放出の測定によりDNA配列は推定される。ロナージ(Ronaghi)ら、「実時間のピロリン酸に基づく配列決定法(A Sequencing Method Based on Real-Time Pyrophosphate)」、Science 281:363〜365(1998)(非特許文献4)およびハイマン(Hyman)「DNAの配列決定の新しい方法(A New Method of Sequencing DNA)」、Anal.Biochem.174:423〜436(1988)(非特許文献5)を参照のこと。天然型のヌクレオチドを用い、この方法は配列の読み取り長を著しく制限するDNA鎖上のポリメラーゼの同調化を必要とする。ロナージ(Ronaghi)ら、「実時間のピロリン酸に基づく配列決定法(A Sequencing Method Based on Real-Time Pyrophosphate)」、Science 281:363〜365(1998)(非特許文献4)により示された手順において、約40ヌクレオチドの読み取りのみが達成され、ルシファラーゼの光産生による限定された量子収量により、この検出法による単分子への感度に達することは期待されない。さらに、総合的な配列決定の速さは必須の洗浄段階、その後のピロリン酸の存在の同定のための化学段階により、また4塩基全てについて連続的に配列決定される各塩基対の試験に必要な固有の時間により制限される。また、配列中の同一ヌクレオチドの連続ホモヌクレオチドの正確な決定が困難であることが認識された。
【0008】
単分子の配列決定についての以前の試み(一般には成功しなかったが将来性のある)では、DNAポリメラーゼが完全な相補鎖を形成した後の第二段階として、各蛍光標識塩基の連続的な放出のためにエキソヌクレアーゼを利用した。グッドウィン(Goodwin)らの「単分子の検出のDNA配列決定への適用(Application of Single Molecule Detection to DNA Sequencing)」、Nucleos.Nucleot.16:543〜550(1997)(非特許文献6)を参照のこと。これは4つの異なる蛍光dNTP類似体により標識されたDNA鎖の合成、それに続く、エキソヌクレアーゼの作用による標識鎖の分解、および流体力学的流動検出器における、各々放出された各塩基の検出から成る。しかし、ポリメラーゼおよびエキソヌクレアーゼの両者が高度に修飾されたDNA鎖上で活性を示さねばならず、および4つの異なる蛍光dNTP類似体で置換されたDNA鎖の作製はまだ成功していない。ダプリッチ(Dapprich)ら、「ビーズ置換により観察される、ミクロ構造における、光学的に捕捉したビーズへのDNA付着(DNA Attachment to Optically Trapped Beads in Microstructures Monitored by Bead Displacement)」、Bioimaging 6:25〜32(1998)(非特許文献7)。さらに、DNAの標識の程度とエキソヌクレアーゼ活性阻害の間の関係について既知の正確な情報は少ない。ドーレ(Dorre)ら、「単分子の配列決定のための技術(Techniques for Single Molecule Sequencing )」、Bioimaging 5:139〜152(1997)(非特許文献8)を参照のこと。
【0009】
エキソヌクレアーゼを用いる第二のアプローチにおいては、切断ヌクレオチドを空間的に分離するため、天然型のDNAを、液体薄膜内を通す間に切断する。ダプリッチ(Dapprich)ら、「ビーズ置換により観察される、ミクロ構造における、光学的に捕捉したビーズへのDNA付着(DNA Attachment to Optically Trapped Beads in Microstructures Monitored by Bead Displacement)」、Bioimaging 6:25〜32(1998)(非特許文献7)を参照のこと。その後、それらを検出のために表面上で固定化する前に、短距離を拡散する。しかし、ほとんどのエキソヌクレアーゼは、配列依存性の切断率または構造依存性の切断率を示し、その結果、部分配列からのデータ解析および対合組みが困難になる。さらに、検出表面上の塩基の同定法はなおも開発または改良されなければならない。
【0010】
検出システムに関わらず、エキソヌクレアーゼを使用する方法は、迅速、高処理量配列決定についての今日の要求を満たす方法が開発されていない。加えて、ほとんどのエキソヌクレアーゼは比較的遅いターンオーバー率をもち、提案される方法は、長い前処理である、鋳型DNAの標識およびそれに続く流液中のビーズ上での固定化を必要とし、それら全ては単純な高処理量システムの実現をより複雑なものにしている。
【0011】
走査型原子プローブ顕微鏡による、固定および伸展したDNA分子の空間的配列の決定のような、その他の、DNA配列決定のより直接的なアプローチが試みられた。これらの方法の使用で遭遇した問題は、DNA分子中の塩基の狭い間隔(0.34 nmのみ)、およびこれらの方法によって認識するには小さな物理化学的差異にある。ハンスマ(Hansma)ら、「原子間力顕微鏡による液体中での再現性のあるプラスミドDNAの画像化と解析(Reproducible Imaging and Dissection of Plasmid DNA Under Liquid with the Atomic Force Microscope)」、Science 256:1180〜1184(1992)(非特許文献9)を参照のこと。
【0012】
ポリメラーゼを用い、エキソヌクレアーゼを用いない微量配列決定についての近年のアプローチにおいては、一連の同一単鎖DNA(ssDNA)分子を基質に連結し、蛍光標識されたdNTPを用いた一連の反応の繰り返しにより配列を決定する。チーズマン(Cheeseman)の米国特許第5,302,509号(特許文献2)。しかし、この方法は、各塩基が蛍光標識物および3’-dNTPブロック基と共に付加されることを必要とする。塩基の付加および検出後、蛍光標識物およびブロック基を除去し、その後、次の塩基をポリマーに付加する。
【0013】
ゆえに、現在の配列決定法では配列を推定するため、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性の両方を必要とするか、または、3’-ブロックされたdNTPの付加および除去という付加的な段階によりポリメラーゼのみに依存するかのいずれかである。ヒトゲノムプロジェクトは、最小限の開始材料を用いた高処理量を可能にする、迅速かつ大小のスケールでのDNA配列決定への要求を強めた。またブロック置換基を使用せずに、ポリメラーゼ活性のみを必要とすることから、結果的に、増加する単純性、より容易な縮小化能および単一段階技術の並行処理に対する適合性を有する、核酸分子の配列決定方法を提供する必要性も残る。
【0014】
本発明は、本技術分野における要求を満たし、欠点を克服することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,846,727号
【特許文献2】米国特許第5,302,509号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:563〜5467(1977)
【非特許文献2】MaxamおよびGilbert、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:560〜564(1977)
【非特許文献3】チェン(Cheng)の「高速DNA配列決定分析(High-Speed DNA-Sequence Analysis)」、Prog,Biochem.Biophys.22:223〜227(1995)
【非特許文献4】ロナージ(Ronaghi)ら、「実時間のピロリン酸に基づく配列決定法(A Sequencing Method Based on Real-Time Pyrophosphate)」、Science 281:363〜365(1998)
【非特許文献5】ハイマン(Hyman)「DNAの配列決定の新しい方法(A New Method of Sequencing DNA)」、Anal.Biochem.174:423〜436(1988)
【非特許文献6】グッドウィン(Goodwin)らの「単分子の検出のDNA配列決定への適用(Application of Single Molecule Detection to DNA Sequencing)」、Nucleos.Nucleot.16:543〜550(1997)
【非特許文献7】ダプリッチ(Dapprich)ら、「ビーズ置換により観察される、ミクロ構造における、光学的に捕捉したビーズへのDNA付着(DNA Attachment to Optically Trapped Beads in Microstructures Monitored by Bead Displacement)」、Bioimaging 6:25〜32(1998)
【非特許文献8】ドーレ(Dorre)ら、「単分子の配列決定のための技術(Techniques for Single Molecule Sequencing )」、Bioimaging 5:139〜152(1997)
【非特許文献9】ハンスマ(Hansma)ら、「原子間力顕微鏡による液体中での再現性のあるプラスミドDNAの画像化と解析(Reproducible Imaging and Dissection of Plasmid DNA Under Liquid with the Atomic Force Microscope)」、Science 256:1180〜1184(1992)
【発明の概要】
【0017】
本発明は、複数のヌクレオチド塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法に関する。本方法は、標的核酸に相補的な活性部位において、ヌクレオチド類似体を付加するために適した位置において、互いに配向された、核酸重合酵素と標的核酸分子の複合体の提供に関連する。多種のヌクレオチド類似体が活性部位の近傍に、各種のヌクレオチド類似体が標的核酸配列の異なるヌクレオチドに対し相補的になるように提供される。ヌクレオチド類似体は活性部位において、付加したヌクレオチド類似体が次なるヌクレオチド類似体の付加を受けられるように、付加されるヌクレオチド類似体が標的核酸ヌクレオチドに対し相補的になるように重合される。重合段階の結果、活性部位に付加されたヌクレオチド類似体が同定される。標的核酸配列を決定するため、複数のヌクレオチド類似体の提供段階、重合段階、および同定段階が繰り返される。
【0018】
本発明の他の局面は、標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関連する。本装置は支持体と共に、核酸重合酵素または標的核酸分子に結合するために適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、ポリメラーゼまたはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置する。ミクロ構造は、支持体上に位置しない標識ヌクレオチド類似体を迅速に限られた制限領域中を移動させるために形成された、支持体および核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限された領域を定義する。
【0019】
本発明のさらなる特徴は、標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関するものである。本装置は、固体支持体および核酸重合酵素または標的核酸分子にハイブリダイズさせるのに適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置される。外被は、支持体と、核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限領域とを定義する。外被は、支持体上に位置する標識ヌクレオチド類似体の同定を容易にするように構成される。制限領域近傍の光学導波管は、活性化放射を制限領域に集中させ、制限領域から放射を収集する。
【0020】
本発明により多くの利点が得られる。配列決定は少量の核酸を用いて実施することができ、配列の開始に先立つ増幅の必要性を排除する、単独核酸鋳型分子の配列決定が可能になる。一度の配列解析において長い読み取り長の配列が推定でき、長い鋳型分子(例:バクテリア人工染色体(BAC)クローン)のギャップのない全長配列を組合せるための、長大なコンピューターを用いた方法の必要性が排除される。本発明の2つの操作方法のため、配列の読み取り長は、配列決定される鋳型長により、またはポリメラーゼのプロセシビティ(processivity)の各々により制限される。例えば二本鎖鋳型核酸上の特異的部位(例:複製起点)における配列決定反応の開始のためにアクセサリータンパク質を用いるような、適切な酵素系の使用により、配列決定用ベクターへのサブクローニングのような従来の配列決定技術には必要な準備段階が排除できる。
【0021】
加えて、本発明の配列決定法は、ポリメラーゼを用い、エキソヌクレアーゼを用いずに実施することができる。これにより、増加する単純性、より容易な縮小化能、および単一段階技術の並行処理への適合性がもたらされる。
【0022】
後者の利点に関して、あるポリメラーゼはエキソヌクレアーゼよりも高いプロセシビティおよび触媒速度を示し、T7 DNAポリメラーゼの場合、(λエキソヌクレアーゼの場合の3,000塩基と比較して)酵素の解離前に10,000塩基より多く付加する。ある場合、例えばT7ヘリカーゼ/プライマーゼと複合体を形成したT7 DNAポリメラーゼにおいては、プロセシビティ値はさらに高く、数十万にも及ぶ。DNA合成率は非常に高くなり得、インビボにて1,000塩基/秒およびインビトロにて750塩基/秒(インビトロにてλエキソヌクレアーゼにより分解された12塩基/秒に対して)と測定される。参照として本明細書に組み入れられる、ケルマン(Kelman)ら、「DNAポリメラーゼのプロセシビティ:2つの機構、1つの目標(Processivity of DNA Polymerases:Two Mechanisms, One Goal)」、Structure 6:121〜125(1998);カーター(Carter)ら、「遺伝子組換えにおけるファージλのエキソヌクレアーゼおよびβタンパク質の役割。II.λエキソヌクレアーゼの基質特異性および作用の仕方(The Role of Exonuclease and Beta Protein of Pharge Lambda in Genetic Recombination. II. Substrate Specificity and the Mode of Action of Lambda Exonuclease)」、J.Biol.Chem. 246:2502〜2512(1971);テイバー(Tabor)ら、「大腸菌チオレドキシンはバクテリオファージT7の遺伝子5タンパク質のDNAポリメラーゼ活性にプロセシビティを与える(Escherichia coli Thioredoxin Confers Processivity on the DNA Polymerase Activity of the Gene 5 Protein of Bacteriophage T7)」、J.Biol.Chem. 262:16212〜16223(1987);およびコヴァル(Kovall)ら、「λエキソヌクレアーゼのトロイダル構造(Toroidal Structure of Lambda-Exonuclease)」、Science 277:1824〜1827(1997)を参照のこと。750塩基/秒の取り込み率は、ヒトゲノムについてのショットガン配列決定法において使用するよう提案された、パーキンエルマー社(Perkin Elmer Corp.、Foster City, California)の、完全に自動化したABI PRISM 3700 DNAシーケンサーの1つによる配列決定の速さよりも、約150倍速い。参照として本明細書に組み入れられる、ヴェンター(Venter)ら、「ヒトゲノムのショットガン配列決定法(Shotgun Sequencing of the Human Genome)」、Science 280:1540〜1542(1998)を参照のこと。
【0023】
本発明の配列決定法を実施するために使用できる小さなサイズの装置もまた、非常に有利である。鋳型/ポリメラーゼ複合体の制限領域は、連続してまたは同時に実施される何千もの配列決定反応と共に、高度に同時並行に行われる操作方法が可能なアレイを有することのできるミクロ構造装置により提供され得る。これにより、研究の適用のために、また医学的診断法のために、迅速および超高感度の手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る配列決定のための3つの代替態様を示す。
【図2】本発明に係る核酸の配列決定に使用される、一連の段階を示す概略図である。
【図3】本発明に係る核酸の配列決定に使用される一連の段階中における、蛍光シグナル対時間のプロットを示す。図3Cはこれらの段階により生じた配列を示す。
【図4】γリン酸の位置(ここではγ‐連結dNTPとして示される)に標識を有する蛍光ヌクレオチドが使用された場合の構造、および、本発明に係る核酸の配列決定に使用される一連の段階を示す概略図を表す。
【図5】本発明に係るバックグラウンドシグナルを抑制するために使用され得る、ゲート時間蛍光減衰時間測定(time-gated fluorescence decay time measurement)による、蛍光団の識別の原理を示す。
【図6】図6Aは本発明に係る配列決定系を示す。図6Bはその系の一部を拡大したものである。
【図7】金属チップを用いた電磁場増強を使用する、本発明に係る配列決定系を示す。図7Bはその系の一部を拡大したものである。
【図8】図8Aは近接場口径を使用する、本発明に係る配列決定系を示す。図8Bはその系の一部を拡大したものである。
【図9】図9Aは、ナノチャネルを使用する、本発明に係る配列決定の系を示す。図9Bはその系の一部を拡大したものである。
【図10】本発明に係るナノファブリケーション制限系に試薬を提供するための系を示す。特に、図10Aは試薬がどのように提供され、系を通るかを示す概略図である。図10Bは同様であるが、単独チップ上のこの系を、系を液体槽に連結するためのパッドと共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、複数のヌクレオチド塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法に関するものである。本方法は標的核酸に相補的な活性部位にヌクレオチド類似体を付加するために適切な位置において、互いに関して配向する核酸重合酵素と標的核酸分子の複合体の提供に関連する。多種のヌクレオチド類似体が、各種のヌクレオチド類似体が標的核酸配列において異なるヌクレオチドに対し相補的になるように、活性部位の近傍に提供される。ヌクレオチド類似体は活性部位において、付加したヌクレオチド類似体が、次なるヌクレオチド類似体の付加を受けられるように、付加されるヌクレオチド類似体が標的核酸ヌクレオチドに対し相補的になるように重合される。重合段階の結果、活性部位に付加されたヌクレオチド類似体が同定される。標的核酸配列を決定するため、複数のヌクレオチド類似体の提供段階、重合段階、および同定段階が繰り返される。
【0026】
本発明の他の局面は標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関連する。本装置は支持体と共に、核酸重合酵素または標的核酸分子に結合するために適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、ポリメラーゼまたはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置する。ミクロ構造は、支持体上に位置しない標識ヌクレオチド類似体を迅速に制限領域中を移動させるために形成された、支持体および核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限された領域を定義する。
【0027】
本発明のさらなる特徴は、標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関するものである。本装置は、支持体および核酸重合酵素または標的核酸分子にハイブリダイズさせるのに適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置される。外被は支持体および核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限領域を定義する。外被は、支持体上に位置する標識ヌクレオチド類似体の同定を容易にするよう構成される。制限領域近傍の光学導波管は、活性化放射を制限領域に集中させ、制限領域から放射を収集する。
【0028】
本発明は複数の塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法を目的とする。その基本原則において、重合反応中における塩基の付加の一時的な順序が核酸の単分子上で測定され、即ち、以下にポリメラーゼとしても称される、配列決定される鋳型核酸分子上の核酸重合酵素の活性が実時間で追跡調査される。塩基付加の配列における各段階における核酸重合酵素の触媒活性により、どの塩基が伸長する標的核酸の相補鎖に取り込まれるかを決定することにより、配列は推定される。本発明の好ましい態様においては、塩基付加の時間的順序の認識は、伸長する核酸鎖に取り込まれる際の、適切に標識したヌクレオチド類似体からの蛍光の検出により達成される。塩基対形成の正確さは酵素の特異性により提供され、不適正塩基対形成の誤差率は10−5またはそれ以下である。酵素の忠実度については、本明細書に参照として組み入れられる、ジョンソン(Johnson)、「DNAポリメラーゼ忠実度における、構造との相関(Conformational Coupling in DNA-Polymerase Fidelity)」、Ann.Rev.Biochem. 62:685〜713(1993)およびクンケル(Kunkel)、「DNA複製忠実度(DNA-Replication Fedelity)」、J.Biol.Chem. 267:18251〜18254(1992)を参照のこと。
【0029】
本発明は、多数の重合酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、混合物等)を用いて、全ての種類の核酸(DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド等)の配列決定に等しく適用される。ゆえに、核酸重合酵素の基質分子として使用される適切なヌクレオチド類似体は、dNTP、NTP、修飾dNTP、修飾NTP、ペプチドヌクレオチド、修飾ペプチドヌクレオチド、または修飾リン酸‐糖骨格をもつヌクレオチド群の一員からなる群からなることが可能である。
【0030】
本発明に従って、2つの好都合な操作方法がある。本発明の第一の操作方法においては、鋳型核酸は支持体に付着される。これは(1)オリゴヌクレオチドプライマーまたは(2)単鎖標的核酸分子または(3)二本鎖標的核酸分子のいずれかの固定化により行うことができる。そこで、(1)付着したオリゴヌクレオチドプライマーに標的核酸分子がハイブリダイズする、(2) プライマーが結合した標的核酸分子複合体を形成するため、固定化された標的核酸分子にオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする、または(3)二本鎖鋳型上にポリメラーゼの認識部位が作製される(例:プライマーゼのようなアクセサリータンパク質との相互作用を通して)のいずれかが行われる。標的核酸分子に沿った移動および活性部位におけるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長に適切な位置において、プライマーが結合した標的核酸分子複合体上の核酸重合酵素が提供される。標識された型のヌクレオチド類似体の複数は、ブロック置換基をもたず、標的核酸配列における異なるヌクレオチドに相補的な各々識別可能な型のヌクレオチド類似体と共に、活性部位の近傍に提供される。オリゴヌクレオチドプライマーは、ヌクレオチド類似体が活性部位にて標的核酸のヌクレオチドに相補的に付加されるような活性部位において、ヌクレオチド類似体をオリゴヌクレオチドプライマーに付加するため、核酸重合酵素の使用により伸長される。伸長段階の結果としてオリゴヌクレオチドプライマーに付加されたヌクレオチド類似体が同定される。必要であれば、オリゴヌクレオチドプライマーに付加された、標識されたヌクレオチド類似体は、オリゴヌクレオチドプライマーに付加されたヌクレオチド類似体が、その後の重合段階および同定段階においてヌクレオチド類似体の検出を妨げないことを確保するために、多くのさらなるヌクレオチド類似体がオリゴヌクレオチドプライマーに取り込まれる前に処理される。オリゴヌクレオチドプライマーがさらに伸長され、標的核酸配列が決定されるように、標識したヌクレオチド類似体を提供する段階、オリゴヌクレオチドプライマーを伸長する段階、付加されたヌクレオチド類似体を同定する段階、およびヌクレオチド類似体を処理する段階が繰り返される。
【0031】
または、前述の手順は、プライマーが結合した核酸分子複合体を活性部位において伸長するために、核酸重合酵素を、核酸重合酵素に相対的に標的核酸分子複合体が移動するのに適切な位置で支持体に最初に付着することにより実施することができる。本態様においては、活性部位において標的核酸ヌクレオチドに相補的な、標識したヌクレオチド類似体の複数が、プライマーが結合した標的核酸複合体が核酸重合酵素と共に移動するに従い付加される。オリゴヌクレオチドプライマーをさらに伸長するため、および標的核酸配列を決定するため、上記に説明されたように、ヌクレオチド類似体を提供する段階、プライマーを伸長する段階、付加されたヌクレオチド類似体を同定する段階、および取り込みの間または後にヌクレオチド類似体を処理する段階が繰り返される。
【0032】
図1A〜Cは、本発明に係る配列決定の3つの代替の態様を示す。図1Aにおいては、シークエンシングプライマーは、例えばビオチン‐ストレプトアビジン結合により、標的核酸分子にハイブリダイズされたプライマー、およびハイブリダイズされた核酸分子にヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加される活性部位にて付着された核酸重合酵素と共に、支持体に付着される。図1Bにおいては、標的核酸分子は、鋳型核酸分子にハイブリダイズされたシークエンシングプライマー、およびハイブリダイズされた核酸分子にヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加される活性部位にて付着された核酸重合酵素と共に支持体に付着される。プライマーはヌクレオチド類似体の提供前または提供中に付加することができる。これらのシナリオに加え、二本鎖標的核酸分子を、ヌクレオチド類似体がプライマーに付加される活性部位で核酸重合酵素と結合するための認識部位を有する、標的核酸分子と共に支持体に付着できる。例えば、そのような認識部位は、標的核酸上の特異的部位において短いプライマーを合成し、ゆえに核酸重合酵素の開始部位を提供する、RNAポリメラーゼまたはヘリカーゼ/プライマーゼのような、アクセサリータンパク質を使用して確立することができる。本明細書に参照として組み入れられる、リチャードソン(Richardson)「バクテリオファージT7:二本鎖DNA分子の複製のための最低要件(Bacteriophage T7: Minimal Requirements for the Replication of a Duplex DNA Molecule)」、Cell 33:315〜317(1983)を参照のこと。図1Cにおいては、核酸重合酵素は支持体に、ヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加される活性部位にて結合する、プライマーが結合した標的核酸分子と共に付着される。以前に説明されたように、核酸重合酵素は同様に支持体に付着されるが、ヌクレオチド類似体が伸長する核酸鎖に付加される活性部位で、核酸重合酵素と結合するための認識部位を有する、二本鎖核酸である標的核酸分子と共に付着される。図1A〜Cは支持体上にて実施される1つの配列決定反応のみを示すが、単一の支持体上の異なる部位において幾つかの、そのような一連の反応を行うことが可能である。この代替態様において、この固体支持体上に固定化されるべき各シークエンシングプライマー、標的核酸、または核酸重合酵素は、例えばDNAチップのマイクロアレイ技術のために使用されるように、ミクロコンタクトプリンティングまたはミクロコンタクトスタンピングにより、または固体支持体の表面の処理による結合部位のアレイの形成により、その表面上にスポットされる。図1に概説される態様を組合せること、および標的核酸分子および核酸重合酵素の両方を互いの近傍に固定化することもまた考えられる。
【0033】
本発明の配列決定過程は、二本鎖DNA、単鎖DNA、単鎖DNAヘアピン、DNA/RNAハイブリッド、ポリメラーゼの結合認識部位をもつRNA、またはRNAヘアピンを含む、任意の核酸分子の配列決定のために使用することができる。
【0034】
本発明の過程の実施に使用されるシークエンシングプライマーは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾ペプチド核酸、修飾リン酸‐糖骨格をもつオリゴヌクレオチド、ならびに他のヌクレオチド類似体およびオリゴヌクレオチド類似体が可能である。それはプライマーゼ、RNAポリメラーゼ、または他のオリゴヌクレオチド合成酵素により、合成的または天然のいずれかで産生することが可能である。
【0035】
本発明に従って使用される核酸重合酵素は耐熱性ポリメラーゼまたは熱失活性ポリメラーゼのいずれかが可能である。適切な耐熱性ポリメラーゼの例には、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、ピロコッカス・オエセイ(Pyrococcus woesei)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、およびサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)から単離されたポリメラーゼが含まれる。有用な熱失活性ポリメラーゼは、大腸菌DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、およびその他のものを含む。核酸分子の配列決定に使用できる他の重合酵素の例は、大腸菌、T7、T3、SP6のRNAポリメラーゼおよびAMV、M-MLVおよびHIVの逆転写酵素を含む。ポリメラーゼは、プライマーが結合した単鎖核酸、複製起点、二本鎖核酸におけるニックまたはギャップ、単鎖核酸における二次構造、アクセサリータンパク質により産出される結合部位、またはプライマーが結合した単鎖核酸において、プライマーが結合した標的核酸配列に結合することができる。
【0036】
支持体の形成に有用な材料は、ガラス、表面を改変したガラス、シリコン、金属、半導体、高屈折率誘電体、水晶、ゲル、およびポリマーを含む。
【0037】
図1の態様において、シークエンシングプライマー、標的核酸分子、または核酸重合酵素のいずれかを支持体に固定化するため、当業者に既知の任意の適切な結合パートナーを使用できる。吸収による非特異的結合もまた可能である。図1A〜Cにて示されるように、ビオチン‐ストレプトアビジン連結がシークエンシングプライマーまたは標的核酸分子と固体支持体との結合に適切である。そのような連結のビオチン成分はプライマーもしくは核酸のいずれかに、または反対側の全体に付着されたストレプトアビジン(もしくは任意の他のビオチン結合タンパク質)を用いて固体支持体に付着することができる。
【0038】
この結合技術を実施するためのあるアプローチは、PHOTOACTIVATABLE BIOTIN(商標)(「PAB」)(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois)を、本発明の配列決定手順を実施するため使用されるチェンバーの表面に付着することに関連する。これは、本明細書に参照として組み入れられる、ヘングサクル(Hengsakul)ら、「ビオチンの光活性可能な誘導体を用いたタンパク質パターン化(Protein Patterning with a Photoactivable Derivative of Biotin)」、Bioconjugate Chem. 7:249〜54(1996)において説明されるように、好ましくはチェンバーの透明な壁を通過させて、360 nmの光への曝露により達成できる。ナノチェンバーを用いる場合、光学顕微鏡下の回折限界点においてビオチンを活性化する。近接場励起により、望ましい領域に直接光を指向させる導波管を用いて曝露を自己調整できる。光に曝露された場合、PABは活性化されチャネルの内部表面に共有結合により結合する。その後、結合しなかった過剰なPABを、水での洗浄により除去する。
【0039】
または、ストレプトアビジンを支持体表面に被覆できる。適切な核酸プライマーオリゴヌクレオチドまたは単鎖核酸鋳型をその後ビオチン化し、ストレプトアビジン‐ビオチン結合プライマーによって、固定化された核酸プライマー標的分子複合体を作製する。
【0040】
本発明の過程を実施するための他のアプローチは、シークエンシングプライマー、または標的核酸分子を固体支持体に連結するために、相補的な核酸を使用するものである。これは、既知のリーダー配列をもつ単鎖核酸を改変し、既知のリーダー配列をシークエンシングプライマーまたは標的核酸分子に連結することにより実施することができる。その結果生じるオリゴヌクレオチドを、その後、支持体に付着された、既知のリーダー配列に相補的なヌクレオチド配列をもつオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより結合することができる。または、第二のオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドプライマーに結合したものと反対側の標的核酸分子の末端にハイブリダイズすることができる。その第二のオリゴヌクレオチドは、支持体に付着された相補的な核酸配列へのハイブリダイゼーションに使用できる。
【0041】
支持体と、オリゴヌクレオチドプライマーまたは標的核酸配列のいずれかとの間の可逆的または不可逆的結合は、任意の共有結合対または非共有結合対の成分を用いて達成できる。シークエンシングプライマーまたは標的核酸分子を支持体に固定化するための他のそのようなアプローチは、抗体‐抗原結合対および光活性化された共役分子を含む。
【0042】
図1Cの態様において、可逆的または不可逆的にタンパク質材料を固定化するのに有用であることが知られる任意の技術を使用できる。RNAポリメラーゼは、触媒活性を失わずに、活性化した表面上に都合よく固定化されたことが文献において報告されている。本明細書に参照として組み入れられる、イン(Yin)ら、「適用された力に対する転写(Transcription Against an Applied Force)」、Science 270:1653〜1657(1995)を参照のこと。または、HIV逆転写酵素について報告されるように、その触媒活性を妨げないように、タンパク質を抗体に結合することができる。本明細書に参照として組み入れられる、レナーストランド(Lennerstrand)ら、「粗サンプルに有用な免疫親和性による精製とHIV-1の逆転写酵素活性のアッセイ法を組合せた方法(A Method for Combined Immunoaffinity Purification and Assay of HIV-1 Reverse Transcriptase Activity Useful for Crude Samples)」、Anal.Biochem. 235:141〜152(1996)を参照のこと。ゆえに、核酸重合酵素は機能を損なわずに固定化できる。抗体および他のタンパク質は無機物の表面上にパターン化できる。本明細書に参照として組み入れられる、ジェイムス(James)ら、「薄スタンプミクロコンタクトプリンティングにより、固体基質上にて型取って作製されたパターン化タンパク質層(Patterned Protein Layers on Solid Substrates by Thin Microcontact Printing)」、Lamgmuir 14:741〜744(1998)およびセントジョン(St John)ら、「ミクロコンタクトプリントされた抗体格子を用いた回折ベースの細胞検出(Diffraction-Based Cell Detection Using a Microcontact Printed Antibody Grating)」、Anal.Chem. 70:1108〜1111(1998)を参照のこと。または、タンパク質をビオチン化し(または他の結合分子と同様に標識し)、その後、ストレプトアビジンで被覆した支持体表面に結合できる。
【0043】
図1A〜Cの任意の態様において、結合パートナーおよびそれが固定化するポリメラーゼまたは核酸のいずれかは、当技術分野において既知の従来的な化学的および写真製版技術により、支持体に適用できる。一般に、これらの手順は支持体の標準の化学的な表面の改変、異なる温度、異なる培地における支持体のインキュベーション、およびその後の可能な、各分子を有する支持体表面の洗浄およびインキュベーションの段階に関わることが可能である。
【0044】
重合複合体を配置においては、例えば複合体を通過させるには小さすぎるが、ヌクレオチド類似体の移動には充分大きい細孔を有するゲルにおける複合体の捕捉によるものなどの代替的可能性が考えられる。適切な培地には、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、合成多孔材料、またはナノ構造が含まれる。
【0045】
本発明の配列決定手順は、図1A〜Bの態様において、核酸重合酵素が反応混合液へ付加することにより開始できる。図1Cの態様について、プライマーが結合した核酸を開始のために付加できる。ポリメラーゼの活性部位の必須の構成成分である二価の金属イオン(最も一般的にはMg2+)の非存在下において核酸‐ポリメラーゼ複合体を予め形成するというような、開始のための他のシナリオも使用できる。その後、これらの金属イオンの付加により、配列決定反応を開始できる。ヌクレオチドの非存在下において酵素を用いて、鋳型の開始前複合体をも形成することができ、反応を開始するためには蛍光ヌクレオチド類似体を加える。本明細書に参照として組み入れられる、フーバー(Huber)ら、「大腸菌チオレドキシンはバクテリオファージT7 DNAポリメラーゼとプライマーが結合した鋳型との複合体を安定化する(Escherichia coli Thioredoxin Stabilizes Complexes of Bacteriophage T7 DNA Polymerase and Primed Templates)」、J.Biol.Chem. 262:16224〜16232(1987)を参照のこと。または、核酸重合酵素への結合から防護するオリゴヌクレオチドプライマー上の活性基の解放により、この過程を開始できる。その後、レーザービーム照射により、観察開始時点と同時に反応を開始する。
【0046】
図2A〜Cは、本発明に係る核酸塩基配列決定のために使用される連続した段階を示す概要図である。
【0047】
図2Aにおいては、標識したヌクレオチド類似体は、固体支持体に付着された、ハイブリダイズされたシークエンシングプライマーと標的核酸分子とに付着された核酸重合酵素の、プライマーが結合した複合体に近接して存在する。配列決定過程のこの段階において、標識されたヌクレオチド類似体は拡散する、または伸長培地中をプライマーが結合した複合体に向かって、またはその周囲を強制的に流動する。
【0048】
図2Bに従って、ヌクレオチド類似体が、プライマーが結合した複合体の活性部位に達すると、それに結合し、核酸重合酵素はこのヌクレオチド類似体が標的核酸分子の最初の開いた塩基に対して相補的であるか、または不適正対合を示すものなのかを確定する。前述の、酵素の高忠実度に対応して不適正対合した塩基は高い確率で拒絶される一方、シークエンシングプライマーの伸長のため、相補的なヌクレオチド類似体はシークエンシングプライマーに重合される。
【0049】
標識された各ヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーへ付加する間または付加する後に、シークエンシングプライマーに付加されたヌクレオチド類似体を同定する。これは各ヌクレオチド類似体に異なる識別可能な標識を与えることにより最も有効に達成される。異なる標識のどれがシークエンシングプライマーに付加されるかを検出することにより、シークエンシングプライマーに付加された対応するヌクレオチド類似体を同定でき、その相補的な性質により、ヌクレオチド類似体が相補する標的核酸の塩基を決定できる。これが達成されると、シークエンシングプライマーに付加されたヌクレオチド類似体にはもはや、その標識を保存することは必要ではない。実際、既に配列決定された標的核酸中の塩基に相補するヌクレオチド類似体上の標識の連続的な存在は、引き続きプライマーに付加されたヌクレオチド類似体の検出を妨げる可能性が高い。従って、図2Cに示されるように、検出後、シークエンシングプライマーに付加された標識を除去する。これは好ましくは、付加的なヌクレオチド類似体がオリゴヌクレオチドプライマーに取り込まれる前に行う。
【0050】
図2A〜Cにて説明される一連の段階を繰り返すことにより、シークエンシングプライマーは伸長し、その結果、標的核酸の全長配列を決定できる。図2A〜Cにて示される固定化の態様は、図1Aにて示されるものであり、図2A〜Cにて示される一連の段階を実施するために、図1B〜Cにて示される代替の固定化態様を、同様に使用できる。
【0051】
図2A〜Cの拡散、取り込み、および除去の段階の実施において、ヌクレオチド類似体をシークエンシングプライマーに付加させるために適切な成分を含む伸長培地を使用する。適切な伸長培地は、例えば50 mM Tris-HCl、pH8.0、25 mM、MgCl2、65 mM NaCl、3 mM DTT(これはシーケナーゼ(Sequenase)、T7変異体DNAポリメラーゼの製造業者により推奨される伸長培地組成である)、および配列の同定を行うために適切な濃度のヌクレオチド類似体を含有する溶液を含む。単鎖結合タンパク質のようなアクセサリータンパク質を含む、または含まない、これに適切な他の培地および他のポリメラーゼが可能である。ポリメラーゼが活性をもつ他の温度を用いることができるが、好ましくは、多くの熱失活性のポリメラーゼについては、37℃にて伸長段階を実行する。
【0052】
前述のように、標識されたヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加されると、どの型のヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加されたか、および結果的に、標的核酸の相補的塩基が何であるかを決定するため、付加された部分の特定の標識を同定しなければならない。付加された全体の標識がどのように決定されるかは、使用される標識の種類に依存する。本発明の好ましい態様については、同定段階の検討は蛍光部分を有するヌクレオチド類似体の使用に制限される。しかし、他の適切な標識は、発色団、酵素、抗原、重金属、磁気プローブ、色素、りん光群、放射性物質、化学発光部分、散乱または蛍光ナノ粒子、ラマンシグナル発生部分、および電気化学的検出部分を含む。そのような標識は当技術分野において既知であり、例えば、本明細書に参照として組み入れられる、プロバー(Prober)ら、Science 238:336〜41(1997);コネル(Connell)ら、BioTechniques 5(4):342〜84(1987);アンソージ(Ansorge)ら、Nucleic Acids Res. 15(11):4593〜602(1987);およびスミス(Smith)ら、Nature 321:674(1986)にて開示されている。発色団、蛍光団、蛍光標識、ナノ粒子、またはラマンシグナル群のような幾つかの場合においては、標識を検出するために、反応部位に活性化放射を受けさせることが必要である。この手順は蛍光標識の場合について以下にて詳細に検討される。蛍光標識の検出のために適切な技術は時間分解型遠隔場顕微分光、近接場マイクロ分光、蛍光共鳴エネルギー移動の測定、光変換、および蛍光寿命の測定を含む。スペクトル波長識別、蛍光寿命の測定および分離、蛍光団同定、ならびに/またはバックグラウンド抑制により、蛍光団同定を達成できる。蛍光団同定および/またはバックグラウンド抑制は、励起モードと照射源、およびその組合せの間の迅速な切替により容易にすることができる。
【0053】
図3A〜Bは、本発明の配列決定手順を実施するために使用される一連の段階(図2に概説される)中における蛍光シグナル/時間のプロットを示す。本質的には、この手順においては、識別可能な各標識について同時に行う蛍光の経時的追跡の分析により、取り込まれたヌクレオチド類似体は取り込まれていないもの(観察容量を通って無作為に拡散する、または流体力学的または電気泳動の流動により、それを通って対流される)と識別される。これは、取り込まれた標識の連続した安定な蛍光(以下に議論される機構により除去されるまで)を、遊離蛍光団の断続的発光から識別する、光子バースト記録および時間分解型蛍光相関分光により達成される。本明細書に参照として組み入れられる、マッジ(Magde)ら、「反応系における熱力学的揺らぎ−蛍光相関分光による測定(Thermodynamic Fluctuations in a Reacting System-Measurement by Fluorescence Correlation Spectroscopy)」、Phys.Rev.Lett. 29:705〜708(1972)、カスク(Kask P.)ら、「蛍光‐強度分布分析および生体分子検出技術におけるその適用(Fluorescence-Intensity Distribution Analysis and its Application in Biomolecular Detection Technology)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 96:13756〜13761(1999)、およびエッゲリング(Eggeling)ら、「選択的蛍光分光による、単分子の構造力学の調査(Monitoring Conformational Dynamics of a Single Molecule by Selective Fluorescence Spectroscopy)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95:1556〜1561(1998)を参照のこと。全ての検出チャネルの経時的追跡を組合せることにより、配列は推定することができる。
【0054】
図3Aは、4つの異なる塩基についての蛍光検出の4つの異なるチャネルを仮定した、図2Aの拡散段階中のみにおける蛍光シグナル/時間のプロットを示す(例:光学フィルターを通して分離できるような、各々異なる蛍光放射スペクトルをもつ4つの異なる標識の使用による)。図3Aにおける各ピークは、異なる色のピーク(図3Aにおいては異なる線種により示される)を形成する、異なる標識により識別される各々異なるヌクレオチド類似体と共に、観察容量におけるヌクレオチド類似体の存在の結果として得られた蛍光バーストを表す。これらのピークの幅の狭さは、ヌクレオチド類似体が、観察容量を通って自由に拡散または流動しているため、配列決定の活性部位の近傍において短い滞留時間をもつことを示唆する。核酸重合酵素の活性部位に一過的に結合する不適正対合ヌクレオチド類似体、およびそれに引き続く酵素による取り込みの拒絶の場合、同様のピークの幅が予測される。
【0055】
図3Bは、図2B〜Cの取り込み段階およびそれに続く除去段階中の蛍光シグナル/時間のプロットを示す。図3Aにおけるように、図3Bの各ピークは、異なる色のピーク(図3Bにおいては異なる線種により表される)を生じさせる、異なる標識により識別される、各々異なるヌクレオチド類似体と共に、ヌクレオチド類似体の存在を示す。図3Bの幾つかのピークの幅の狭さはまた、伸長培地中にて可動性のままであり、シークエンシングプライマーを伸長しない、ヌクレオチド類似体に関連するものである。図3Aについて説明されたように、これらのヌクレオチド類似体は配列決定の活性部位の近傍に短い滞留時間を有するため、このような狭いピークが生じる。一方、より幅広いピークが、活性部位に鋳型核酸分子上の相補的な塩基をもち、シークエンシングプライマーの伸長を担うヌクレオチド類似体に対応する。それらの固定化の結果、伸長する核酸鎖において、取り込み中および取り込み後に観察容量中に残るため、そのヌクレオチド類似体はより幅広いピークをもち、ゆえに蛍光を発し続ける。連続する蛍光を除去する、その後の除去段階の結果、これらのシグナルは時間が経つにつれ消失し、その後の取り込みイベントの同定を行う。
【0056】
図3Bにおいて左から右へ移ると(即ち、時間が経つにつれ)、より幅広いピークの配列が、鋳型核酸分子の配列の相補物に対応する。図3Cは、例えば蛍光の短いバーストを検出し、それらを最終アウトプットでは廃棄するようなコンピュータープログラムにより達成できる、図3Bの最終アウトプットを示す。そのようなふるい分けの結果、固定化されたヌクレオチド類似体により生じたピークのみが存在し、鋳型核酸分子の配列相補物に対応する配列へと変換される。この相補的配列はここではATACTAであり、そのため、配列決定される鋳型核酸分子の塩基の順番はTATGATである。
【0057】
蛍光標識は様々な位置においてヌクレオチドに付着できる。付着はヌクレオチドへの架橋リンカーを用いて、または用いないで行うことができる。蛍光団を用いた核酸の標識のために従来的に使用されるヌクレオチド類似体は、ヌクレオチド基質分子の塩基に付着された蛍光部分を有す。しかし、それは糖部分(例:デオキシリボース)またはαリン酸へも付着できる。この種の連結は、核酸の内部構造を損なわない一方、塩基に付着された蛍光団は合成された分子の二重らせんを歪め、続いてさらなるポリメラーゼ活性を阻害することが観察されたため、αリン酸への付着は好都合であることが証明される可能性がある。本明細書に参照として組み入れられる、ズー(Zhu)ら、「異なる長さのリンカーと共に蛍光ヌクレオチドを用いて直接標識したDNAプローブ(Directly Labelled DNA Probes Using Fluorescent Nucleotides with Different Length Linkers)」、Nucleic Acids Res. 22:3418〜3422(1994)、およびダブリー(Doublie)ら、「2.2オングストローム分解能における、バクテリオファージ T7 DNA複製複合体の結晶構造(Crystal Structure of a Bacteriophage T7 DNA Replication Complex at 2.2 Ångstrom Resolution)」、Nature 391:251〜258(1998)を参照のこと。ゆえに、RNAポリメラーゼについての架橋試験のために(NTPの形で)使用された、チオール基を含むヌクレオチドは、適切なリンカーおよび蛍光標識の付着のために、主要骨格分子とすることができる。本明細書に参照として組み入れられる、ハナ(Hanna)ら、「新規光架橋CTP類似体の合成および特徴付けおよび、大腸菌およびT7-RNAポリメラーゼの光アフィニティー標識法におけるその使用(Synthesis and Characterization of a New Photo-Cross-Linking CTP Analog and Its Use in Photoaffinity-Labeling Escherichia-coli and T7-RNA Polymerases)」、Nucleic Acids Res. 21:2073〜2079(1993)を参照のこと。
【0058】
蛍光団がヌクレオチドの塩基に付着される従来的な場合においては、典型的には、フルオレセインのような、比較的大きなサイズの蛍光団を与えられる。しかし、より小さな蛍光団、例えばピレンまたはクマリン族からの色素は、ポリメラーゼのより高い許容性があるという点から有利であることを証明する可能性がある。実際、酵素はフルオレセイン標識dNTPを用いて対応する合成を実行できないが、一方、ある種の塩基が、T7 DNAポリメラーゼを用いて対応するクマリン標識dNTPにより完全に置換された、7,300塩基対長のDNA断片の合成が可能である。
【0059】
これら全ての場合において、蛍光団は合成中に伸長する核酸分子に取り込まれる基質分子の部分に付着したままである。本発明の塩基配列決定のスキームに係る蛍光団の検出および同定後の、蛍光団除去のための適切な方法は、蛍光団の光退色またはヌクレオチドおよび蛍光団の光化学的切断、例えばリンカー中の化学結合の切断を含む。レーザー力により比率を調整できる、既に取り込まれたヌクレオチドの蛍光標識の除去は、核酸鎖上のシグナルの蓄積を妨げ、それにより、ヌクレオチド同定のためのバックグラウンドに対するシグナルの比率を最大化する。このスキームについて、本発明の目的は、各標識から全ての光子を検出し、その後、次なる同定段階のための充分な、ノイズに対するシグナルの値を維持するため、次なる多少のヌクレオチドが取り込まれる前に、または取り込まれた直後に、光退色または光化学的に切断することである。本発明の過程の除去段階は、配列決定反応複合体を損なわずに標識を除去するのに適切な、任意の手順により実施することができる。
【0060】
合成中核酸の中に残る蛍光標識に加え、蛍光物質により標識された、またはさもなくば、ヌクレオチドのβリン酸またはγリン酸のいずれかに付着された標識を有するヌクレオチドも、本発明の配列決定手順において使用できる。類似化合物は、以前、NTP類似体の形で合成され、RNAポリメラーゼを含む様々な酵素のための優れた基質であることが示された。本明細書に参照として組み入れられる、ヤーブロー(Yarbrough)ら、「DNA依存のRNAポリメラーゼのための蛍光ヌクレオチド基質の合成および特性(Synthesis and Properties of Fluorescent Nucleotide Substrates for DNA-dependent RNA Polymerase)」、Journal of Biological Chemistry 254:12069〜12073(1979)、およびチャッテージ(Chatterji)ら、「RNAポリメラーゼの活性部位および調節部位の蛍光分光分析(Fluorescence Spectroscopy Analysis of Active and Regulatory Sites of RNA Polymerase)」、Methods in Enzymology 274:456〜479(1996)を参照のこと。DNA合成の間、αリン酸およびβリン酸の間において、ヌクレオチドにおける結合切断が生じ、重合後、活性部位からβリン酸およびγリン酸を放出させ、また、形成されたピロリン酸は引き続き、拡散する、または核酸から対流される。本発明に従って、ヌクレオチドの結合およびその核酸への取り込みイベントを、不適正対合したヌクレオチドの結合(およびそれに続く拒絶)に関するイベントと識別することが可能である。なぜなら、これら2つのイベントの速度定数は著しく異なるからである。DNA重合の連続する基本段階における律速段階は、正しい(対合した)ヌクレオチドが活性部位に結合されることが酵素により確立された後にのみ起こる、ポリメラーゼの構造的変化である。ゆえに、ヌクレオチド類似体の不適正対合した結合のイベントは、正しい塩基の取り込みのイベントよりも著しく短い。本明細書に参照として組み入れられる、パテル(Patel)ら、「エキソヌクレアーゼ欠損変異体の完全な特徴付けを含む、プロセシブな(processive)DNA複製の前定常状態動力学的分析(Pre-Steady-State Kinetic Analysis of Processive DNA Replication Including Complete Characterization of an Exonuclease-Deficient Mutant)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)およびウォン(Wong)ら、「DNA複製忠実度についての誘導適合動力学的機構:単一ターンオーバー動力学による直接測定(An Induced-Fit Kinetic Mechanism for DNA Replication Fidelity: Direct Measurement by Single-Turnover Kinetics)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)を参照のこと。結果として、ヌクレオチド類似体のβリン酸またはγリン酸に付着された標識の蛍光は、ヌクレオチド類似体が重合される場合、より長い時間ポリメラーゼの近傍に残り、図3について上記に説明されたスキームに従って識別できる。取り込み後、標識は切断したピロリン酸と共に拡散消失する。この手順は図4に示される。図4Aは1-アミノナフタレン-5-スルホン酸 (AmNS)-dUTP、γリン酸に付着された蛍光標識をもつヌクレオチド類似体の代表的な例の構造を、点線により示される切断位置と共に示す。図4B〜Dは図2と類似して、ピロリン酸-蛍光団複合体の取り込みおよび放出の連続した段階を示す。このスキームについての蛍光の経時的追跡は図3に示されるものと同じである。ゆえに、これは蛍光団が最初に核酸に取り込まれ、引き続いて標識の同定後に光退色または光化学的切断によりシグナルが除去される、上記に概説されたものへの代替スキームである。
【0061】
核酸重合酵素の近傍にて拡散または流動する、取り込まれなかったヌクレオチドのバックグラウンドに対し、取り込まれる、特定の蛍光標識されたヌクレオチド類似体の同定は、ある蛍光標識されたdNTP(例:クマリン-5-dGTPまたはAmNS-UTP)については、共有結合の状態にある塩基の存在は標識の蛍光を著しく減少する(即ちクエンチングする)という観察結果を用いることにより、さらに増強することができる。本明細書に参照として組み入れられる、ダー(Dhar)ら、「堆積およびクエンチングされたウリジンヌクレオチド蛍光団の合成および特徴付け(Synthesis and Characterization of Stacked and Quenched Uridine Nucleotide Fluorophores)」、Journal of Biological Chemistry 274:14568〜14572(1999)、およびドラガネス(Draganescu)ら、「新規の蛍光基質および蛍光性基質を用いて調べたFhit-ヌクレオチド特異性(Fhit-Nucleotide Specificity Probed with Novel Fluorescent and Fluorogenic Substrates)」、Journal of Biological Chemistry 275:4555〜4560(2000)を参照のこと。分子が溶液中において単独で強く蛍光を放たないよう、蛍光団と塩基の間の相互作用は蛍光をクエンチングする。しかし、そのような蛍光ヌクレオチドが核酸に取り込まれた場合、蛍光団はヌクレオチドから切断され、蛍光はもはやクエンチングされない。ヌクレオチドのβリン酸またはγリン酸への連結の場合については、ポリメラーゼの酵素活性を通してこれは自然に起こり、塩基に連結された蛍光団の場合においては、これは光化学的切断により達成されなければならない。切断された蛍光団からの蛍光シグナルは、はるかに明るく、ポリメラーゼ/核酸複合体の近傍において生じ得る複数のクエンチングされた分子のバックグラウンドを超えて検出することができる。
【0062】
さらに、溶液中拡散するクエンチングされた分子の蛍光の寿命は、切断された分子の寿命よりもはるかに短いため、パルス照射およびゲート時間光子検出を使用することにより、バックグラウンドに対するシグナルのさらなる増強が得られる。これは図5に表され、クマリン単独およびクマリン-dGTPの各々についての時間分解型蛍光減衰曲線を示す。クマリン蛍光はdGTPへの共有結合においてクエンチングされるため、寿命は遊離色素単独より非常に短く、これは平均的に蛍光光子は、例えばパルスレーザーにより生み出されるような励起パルスの、より直後に発せられることを意味する。例えば変動遅延線成分(幅Tの調整可能な遅延時間と共に交差斜線をした棒により示される)を用いて達成できる、検出からパルス直後のこの時間的間隔を除去することにより、遅滞減衰成分から発せられた蛍光、この場合は遊離色素(または、配列決定スキームによっては、切断された蛍光団)のみが検出されるように、またそのため、取り込まれない分子からのバックグラウンドがさらに減少するように、検出器の反応ウィンドウをゲートで調節することができる。本明細書に参照として組み入れられる、サーヴェドラ(Saavedra)ら、「ゲル電気泳動により分離された、テルビウム標識されたデオキシリボ核酸の時間分解型蛍光検出(Time-Resolved Fluorimetric Detection of Terbium-Labelled Deoxyribonucleic Acid Separated by Gel Electrophoresis)」、Analyst 114:835〜838(1989)を参照のこと。
【0063】
ヌクレオチドはまた、ラジカル形成に関わる光化学反応により蛍光団に変換できる。この技術は、セロトニンおよび他の生物学的に関連する分子と共に使用された。本明細書に参照として組み入れられる、シアー(Shear)ら、「セロトニン溶液による多光子励起した可視的放出(Multiphoton-Excited Visible Emission by Serotonin Solutions)」、Photochem.Photobiol. 65:931〜936(1997)を参照のこと。理想的な光物理学的状況は、各ヌクレオチドにそれ自身の蛍光シグナルを発するようにさせるものである。あいにく、核酸および個々のヌクレオチドは、非常に少量の量子収量で深い紫外線の照射においてのみ弱く発光する弱い蛍光団である。しかし、天然の紫外線蛍光団セロトニン(5HT)は、2つ多い光子の吸収において明るい緑色蛍光を発する複合体を形成するように他の基底状態分子と反応するラジカル形成のための、4赤外線光子の同時の吸収により、光イオン化できる。その後の知見から、多くの小さい有機分子がこの多光子変換を受ける可能性があることが示された。
【0064】
核酸成分による、および近傍の蛍光団また共鳴エネルギー移動による、蛍光団の既知のクエンチングは、ポリメラーゼにより許容されるマーカーを提供することができる。本明細書に参照として組み入れられる、フューレイ(Furey)ら、「クレノウ断片に結合したDNA基質の構造を調べるための、蛍光共鳴エネルギー移動の使用(Use of Fluorescence Resonance Energy Transfer to Investigate the Conformation of DNA Substrates Bound to the Klenow Fragment)」、Biochemistry 37:2979〜2990(1998)およびグレイザー(Glazer)ら、「DNA分析のためのエネルギー移動蛍光試薬(Energy-Transfer Fluorescent Reagents for DNA Analyses)」、Curr.Op.Biotechn. 8:94〜102(1997)を参照のこと。
【0065】
本発明の最も有効な構成においては、図3Cにて表示されるように、4つの異なるチャネルの組合せたアウトプットから配列が推定され得るように、各塩基はそれ自身の標識により識別されるべきである。これは例えば、異なる蛍光団の標識としての使用および、光学フィルターにより分離される4つの異なる検出チャネルの使用により達成できる。蛍光寿命のような、または異なる塩基についての幾つかのパラメータの任意の組合せのような、放出波長バンド以外のパラメータによる標識の識別もまた可能である。蛍光団の塩基との可能な相互作用により、1つより多くの塩基を識別するために同じ蛍光団を使用することは可能である。1例として、クマリン-dGTPはクマリン-dCTPよりはるかに短い蛍光寿命をもち、そのため、蛍光標識として同じ化学的物質をもつにも関わらず、2つの塩基は配列決定スキームの同定段階にての蛍光寿命におけるその差異により識別できる。
【0066】
配列決定手順はまた、4つ未満の標識を用いて行うこともできる。3つの標識を用い、(1)4つ目の塩基が他の標識のシグナルの間の一定の暗時間遅延として検出できる場合、または(2)この場合においては、各塩基対から陽性の蛍光シグナルを得るため、両核酸鎖の配列決定によって明白に、核酸鎖の配列決定から配列は推定できる。2つの標識を使用するその他の可能なスキームは、1つの蛍光団にて標識した1塩基および、他の蛍光団にて標識した他の3塩基を用いるものである。この場合においては、他の3塩基は配列を与えないが、他の蛍光団により同定される特定の塩基の間に生じる多くの塩基のみを与える。異なる配列決定反応における異なる塩基を通してこの同定蛍光団を循環させることにより、連続した塩基配列解析から全長配列が推定できる。2標識のみを用いるこのスキームを拡大することにより、1つの塩基配列解析当たり、標識した塩基を2つのみ用いて完全な配列を得ることでさえも可能である。参照として本明細書に組み入れられる、ソーアー(Sauer)ら、「ミクロキャピラリーにおいて光ファイバーから放出された、単色素標識したモノヌクレオチド分子の検出および同定:新規単分子DNA 配列決定技術に向けての第一段階(Detection and Identification of Single Dye Labelled Mononucleotide Molecules Released From an Optical Fiber in a Microcapillary: First Steps Towards a New Single Molecule DNA Sequencing Technique)」、Phys.Chem.Cehm.Phys. 1:2471〜77(1999)により示された通りに、2標識の可能な組合せを用いて多数の配列決定反応を実施した場合に、2標識のみを用いて配列を決定できる。ゆえに、本発明の過程の実施において、長く連なった核酸を少なくとも2つの異なる標識にて標識することが望ましい。
【0067】
核酸ではなくポリメラーゼを支持体に付着することにより配列決定を実施する場合、核酸/タンパク質複合体が離れないように、酵素が長く連なった核酸を合成することが重要である。これはプロセシブな核酸合成と称される。少なくともT7 DNAポリメラーゼおよびクマリン-5-dCTPにより完全に置換されたdCTPを用いた系については、合成は少なくとも7300塩基対に渡って完全にプロセシブである(即ち、1つのポリメラーゼ分子はssDNA鋳型に結合し、一度も離れることなく全長の第二の鎖を作製する)。1つの標識を用いて、塩基対解離およびその塩基の配列プロフィールと共にポリメラーゼを実時間で観察することにより、他の塩基については知ることなく、本発明の過程を実施することができる。従って、上述のように、より迅速および正確に行うためには、4つの異なる標識の使用が最も望ましい。しかし、与えられた配列環境における個々の塩基についての取り込み率のような、ヌクレオチドの単分子レベルでの取り込みの測定からの情報は、合成される配列のさらなる特徴付けの方法を提供できる。本発明の第二の操作方法についてのプロセシブな合成の確証に関して、核酸重合酵素単独で使用するよりもさらにプロセシブな核酸/タンパク質複合体を作製するためにアクセサリータンパク質を使用できる。例えば、最適条件下においては、T7 DNAポリメラーゼは少なくとも10,000塩基に渡ってプロセシブであり、一方T7ヘリカーゼ/プライマーゼタンパク質複合体においては、プロセシビティは100,000に渡るまで増加する。参照として本明細書に組み入れられる、ケルマン(Kelman)ら、「DNAポリメラーゼのプロセシビティ:2つの機構、1つの目標(Processivity of DNA Polymerases: Two Mechanisms, One Goal)」、Structure 6:121〜125(1998)を参照のこと。単鎖結合タンパク質もまた適切なアクセサリータンパク質である。ポリメラーゼのプロセシビティ値は限界基質濃度において減少することが知られているため、プロセシビティは特定のポリメラーゼについての飽和限界以下のヌクレオチド類似体の濃度において特に重要である。参照として本明細書に組み入れられる、パテル(Patel)ら、「エキソヌクレアーゼ欠損変異体の完全な特徴付けを含む、プロセシブなDNA複製の前定常状態の動力学的分析(Pre-Steady-State Kinetic Analysis of Processive DNA Replication Including Complete Characterization of an Exonuclease-Deficient Mutant)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)を参照のこと。プロセシビティを保証するための他の可能性は、基質の非存在下または非常に低濃度において(例えば伸長するRNAポリメラーゼ/DNA複合体の場合におけるように)、完全にプロセシブなポリメラーゼの開発または発見である。プロセシビティが充分高くない場合、ポリメラーゼおよび標的核酸分子の両方を支持体上で互いの近傍に付着することが可能である。これにより、配列決定複合体がときどき離れてしまうような場合に備え、複合体の再構成およびDNA合成の継続が容易になる。非プロセシブなポリメラーゼもまた、本発明に従って標的核酸が支持体に結合される場合について使用できる。ここで、同じまたは異なるポリメラーゼ分子は複合体を再構成でき、複合体の解離後、合成を継続できる。
【0068】
本発明を実施する1つのアプローチは図6にて示される。図6Aは、プライマーが結合した標的核酸分子複合体が固定化される表面2に位置する試薬溶液Rを用いた、配列決定のための系を示す。ポリメラーゼ伸長の活性部位近傍の小さい領域に照射を制限することにより、例えばレンズまたは光ファイバー6を用いることによって、活性化放射の焦点を当てることにより、照射領域内に位置するため、伸長する核酸鎖に取り込まれるヌクレオチド類似体が検出される。図6Bは、照射領域における重合複合体と共に、装置の拡大部分を示す。溶液R中の周辺領域におけるヌクレオチド類似体数が一般に照射領域の外側となり、検出されないように、基質濃度を選択する。
【0069】
図6Aにて示されるように、照射源10(例:レーザー)は、励起放射を、レンズ6および表面2を通して、二色性ビームスプリッタ8により、固定化されたプライマーを結合済みの標的核酸複合体に指向させる。これにより複合体に固定化された標識が励起され、その結果表面2およびレンズまたは光ファイバー6を通って帰還する放射が発される。二色性ビームスプリッタ8は、発された放射を、放出の種類を同定する検出器(または数個の検出器の列)12まで通過させる。検出された放出情報はその後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定され、その同一性が保存されるコンピューター14に指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができると考えられる。上記に説明されるように、検出に対応するアウトプットは再度、図3にて示されるスキームに対応する。
【0070】
本発明の他の態様に従って、蛍光の照射および検出は、励起光を運ぶ第一の単一モード光ファイバー末端において結合した核酸のための支持体を作製することにより達成できる。蛍光光子の収集のために、本ファイバーおよび/または第二の光ファイバーを使用することができる。第一の単一モード光ファイバーを通して適切な励起波長の放射を伝達することにより、標識は蛍光を放ち、適切な蛍光光周波数を発する。発された蛍光は部分的に第二の光ファイバーへと伝達され、ファイバー上の食刻回折格子によって行われるように、スペクトルによって分けられる。帰還した光スペクトルは特定の結合したヌクレオチド類似体を同定する。導波管照射または、例えば内部全反射のようなエバネッセント波照射の使用のような、光を反応部位に運搬または収集するための他の技術が考えられる。1つまたは多くの光子励起を生み出す、1つまたは幾つかの照射源を使用できる。適切な検出器は、アバランシュフォトダイオードモジュール、光電子増倍管、CCD カメラ、CMOS チップ、または数個の検出器の列もしくは組合せを含む。
【0071】
バックグラウンド比率に対し許容可能なシグナルに、およびポリメラーゼ周辺でただ拡散する特定のヌクレオチド類似体の識別能に相関する、観察容量内においてヌクレオチド類似体が存在する濃度には上限がある可能性があるため、本発明の配列決定手順は1つ以上のヌクレオチド類似体の飽和限界より低い濃度にて行わなければならない可能性がある。
【0072】
例えば、従来的な回折制限光学法が蛍光の検出のために使用される場合、ナノモル範囲の基質濃度が許容できるバックグラウンドシグナルについて使用されなければならないように、観察容量は大きい。これは、バックグラウンド蛍光の寄与を「電気的に」または物理的に減少するため、上記にて議論されたような(図5)寿命による識別、または以下にて説明されるような容量制限技術のような、バックグラウンドを減少する他の方法が「電気的に」もしくは物理的にバックグラウンド蛍光の寄与を減少させるために使用されない限り、ポリメラーゼの通常のkm(通常μMの範囲)よりもはるかに低い。従来的に焦点を当てたレーザー光線においては、約0.2 flに対応して、焦点容量は約0.2μm3(直径0.5μm、軸方向において1.5μm)である。1つの蛍光ヌクレオチド類似体のみを、任意の時点において励起容量内に平均的に存在させるため、基質濃度は、DNAポリメラーゼのkm値(約1〜2μM)よりもはるかに低い約10 nMまで減少させなければならない。参照として本明細書に組み入れられる、ポールスキー(Polesky)ら、「大腸菌 からのDNAポリメラーゼIのクレノウ断片のポリメラーゼ活性に重要な残基の同定(Identification of Residues Critical for the Polymerase-Activity of the Klenow Fragment of DNA-Polymerase-I from Escherichia-coli.)」、J.Biol.Chem. 265:14579〜14591(1990)およびマクルール(McClure)ら、「大腸菌デオキシリボ核酸ポリメラーゼIの定常状態動力学的パラメータおよび非プロセシビティ(The Steady State Kinetic Parameters and Non-Processivity of Escherichia-coli. Deoxyribonucleic Acid Plymerase I)」、J.Biol.Chem. 250:4073〜4080(1975)を参照のこと。ゆえに、基質の濃度がkmよりもはるかに低い場合、核酸合成のプロセシビティ値は上述の可能性のうち1つにより確保されなければならない。または、観察容量が減少できる場合、より高い基質濃度が許容され、それにより自然にプロセシビティが増加する。ゆえに、本発明の1つの目的は、標識された遊離ヌクレオチドにより生じるバックグラウンド蛍光を減少または回避し、プロセシビティを増加するための、観察容量の効果的な減少と関連している。これは数多くの方法において達成できる。
【0073】
バックグラウンドノイズを減少させるための1つのアプローチは、小さな曲率半径によって対象物近辺の電磁場増強に関わる。
【0074】
いわゆる「アンテナ効果」により、金属チップのような鋭利な物体の末端において電磁放射は著しく増強される。この手順を用い、増強される容量はおよそチップの直径に近い直径をもつ球体に対応する。参照として本明細書に組み入れられる、サンチェス(Sanchez,E.J.)ら、「金属チップを用いた2つの光子の励起に基づく近接場蛍光顕微鏡(Near-Field Fluorecence Microscopy Based on Two-Photon Excitation with Metal Tips)」、Phys.Rev.Lett. 82:4014〜17(1999)において、この技術は開示される。
【0075】
本発明の過程の実施において、核酸重合酵素を、例えば従来的な対物レンズによってレーザー光が指向する金属チップの末端に配置する。効果的な被照射容量はポリメラーゼ自身のサイズの順にでき、実際には溶液中で拡散する蛍光ヌクレオチドからの蛍光は検出されない。さらに、そのような小さな容量を通る拡散分子の滞留時間は著しく短い。しかし、特定の分子がこの小さな被照射容量内に留まる(上記に説明されるように除去されるまで)ため、蛍光ヌクレオチドの取り込みは、蛍光の比較的長いバーストとして認められる。
【0076】
本発明の実施する1つのアプローチは、図7A〜Bにて示される。図7Aは、プライマーが結合した標的核酸分子複合体が固定化される表面2における、試薬溶液Rと共に電磁場増強を用いた配列決定のための系を示す。図7Bにて示されるように、ポリメラーゼをもつ金属チップを試薬溶液R中に配置し、レンズ6による照射においてポリメラーゼ周辺に照射の小さい領域を作成する。ポリメラーゼ伸長の活性部位近傍のこの小さい領域に照射を制限することにより、それらは照射領域内に位置するため、伸長する核酸鎖へ取り込まれるヌクレオチド類似体が検出される。その一方で、試薬溶液R中の周辺領域のヌクレオチド類似体は一般にこの領域の外側にあり、検出されない。
【0077】
図7Aに示されるように、照射源10(例:レーザー)は、チップに並行したゼロでない偏光成分を用いた1つまたは多数の光子励起放射を、レンズ6および表面2を通し、二色性ビームスプリッタ8によって、固定化されたプライマーが結合済みの標的核酸複合体に指向させる。これは複合体に固定化された標識を励起し、その結果、表面2およびレンズ6を通って帰還する放射を発する。二色性ビームスプリッタ8は発された放射を、放出の種類を同定する検出器12まで通過させる。検出された放出情報はその後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定され、その同一性が保存されるコンピューター14へ指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができる。上記に説明されるように、検出に対応するアウトプットは再度、図3にて示されるスキームに対応する。以前に議論された場合との主要な差異は、観察容量は非常に小さいため、焦点容量によって無作為にヌクレオチド類似体を拡散することにより生じる短いピークはここでは著しく短いということである。ゆえに、この観察容量を減少させるアプローチは、取り込まれたヌクレオチド対取り込まれないものに関わる、時間分解の増強にも帰結する。これは以下にてさらに議論される容量制限の他の可能性の全てについて真実である。
【0078】
この手順の実施において、様々な材料、例えばプラチナ、銀、または金のような金属からチップを形成することができる。チップのファブリケーションを、例えばワイヤーの電気化学的腐食またはイオンビームマイリングにより達成できる。参照として本明細書に組み入れられる、サンチェス(Sanchez,E.J.)ら、「金属チップを用いた2つの光子の励起に基づく近接場蛍光顕微鏡(Near-Field Fluorecence Microscopy Based on Two-Photon Excitation with Metal Tips)」、Phys.Rev.Lett. 82:4014〜17(1999)を参照のこと。
【0079】
核酸重合酵素は、チップを核酸重合酵素分子の溶液に浸し、電場を核酸重合酵素を誘引する負荷をもってチップに適用すること、または他の連結技術(例:リンカー、抗体等を用いて)のいずれかにより、チップの末端に付着できる。この配列決定スキームのために電磁場増強を使用する代替のモードは、チップの末端に物理的に付着された複合体によるよりも、むきだしのチップを固定化された核酸/核酸重合酵素複合体の近傍に配置することによるものである。複合体の集団は、例えば、スライドグラス上に固定化でき、チップを、配列決定に有用な複合体が見つかるまで表面上をスキャンすることができる。このナノポジショニングの実施のために適切な技術は、走査型プローブ顕微鏡の分野において開発された。
【0080】
本発明の配列決定法の実施中にバックグラウンドノイズを減少するための他のアプローチは、図8A〜Bに示されるように、近接場照射の使用に関わる。本明細書おいて、図8Bにて表されるように、プライマーが結合した標的核酸複合体が、表面2上に適用される不透明層16と共に、表面2上にて固定化される。しかし、小孔18が不透明層16に食刻される。下から照射された場合、孔18の直径が光の波長の半分より小さいため、光は孔を通って試薬溶液Rまで完全に貫通できない。しかし、孔18における表面2の真上に光の小領域を作るいくらかの漏出があり、いわゆる近接場励起容量を作成する。図8Bにて示されるように、プライマーが結合した標的核酸複合体は、孔18中に位置し、下から照射される。照射をこの小さな近接場領域に制限することにより、照射領域内に位置する、取り込まれたヌクレオチド類似体が検出される。その一方で、プライマーの伸長を担わないヌクレオチド類似体の量は、孔18のサイズが小さいためその数が少なく、検出される狭い範囲までは、上記に説明されるように取り込まれたヌクレオチド類似体から容易に識別できる。
【0081】
本態様を実施するための系は図8Aにて示される。照射源10(例:レーザー)は、二色性ビームスプリッタ8により、レンズ6および表面2を通して、固定化されたプライマーが結合済みの標的核酸複合体に対して励起放射を指向させる。これは複合体に固定化された標識を励起し、その結果表面2およびレンズ6を通って帰還する放射を発する。二色性ビームスプリッタ8は発された放射を、放出の種類を同定する検出器12まで通過させる。検出された放出情報は、その後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定され、その同一性が保存されるコンピューター14に指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができる。
【0082】
近接場励起容量を使用する適切な代替法として、近接場容量はまた、通常走査型近接場顕微鏡にて使用される、1つまたは多数の先細の光ファイバーの使用によっても生成することができる。
【0083】
ナノファブリケーションは、バックグラウンド蛍光レベルを減少させるため、反応容量を限定することにおいて有用なその他の技術である。これはナノチャネル内の領域への励起容量の制限に関わる。ここにおいて、制限は2次元または3次元におけるものが可能である。遠隔場焦点光学を用いて到達できる焦点容量よりもはるかに小さな容量の反応容器を、シリコンまたは融合無水ケイ酸ウェーファー上にて光学的に透明な材料から組み立てられる。参照として本明細書に組み入れられる、ターナー(Turner)ら、「統合最上層をもつ、DNA電気泳動のための固体人工ゲル(Solid-State Artificial Gel for DNA Electrophoresis with an Integrated Top Layer)」、Proceedings of SPIE: Micro- and Nano- Fabricated Structures and Devices for Biomedical Environmental Applications 3258:114〜121(1998)を参照のこと。この技術はチャネルの実用空洞を定義するため、ポリシリコン電気防食用層を利用する。参照として本明細書に組み入れられる、スターン(Stern)ら、「化学センサーのためのナノチャネルファブリケーション(Nanochannel Fabrication for Chemical Sensors)」、J.Vac.Sci.Technol. B15:2887〜2891(1997)、およびシュー(Chu)ら、「完全な孔の大きさおよび高い力学的強度をもつシリコンナノフィルター(Silicon Nanofilter with Absolute Pore Size and High Mechanical Strength)」、Proc.SPIE - Int.Soc.Opt.Eng.(USA)2593:9〜20(1995)を参照のこと。チャネルの床、天井および壁は窒化ケイ素から作製され、パターン化されたポリシリコン電気防食用層上に等角に沈積される。電気防食用層は、その後、高感度湿式化学的腐食により除去され、窒化ケイ素のみを残す。この技術は、幅広い範囲の構造サイズに渡って、精密な限界ディメンション(CD)調節を表した。ポリシリコン層の高さは、全装置に渡って5 nm内にまで管理でき、横ディメンションはサイズを制限され、リソグラフィー技術によってのみ、CD調節が適用される。ナノ構造は標識検出を増強するためにパンクチュエート(punctuate)、針状(acicular)、または共鳴配置を有することが可能である。
【0084】
図9A〜Bは、本発明に係るナノファブリケーション系を示す。図9Bに示されるのは、チャネル壁104および106により作成される制限領域102にのみ位置する試薬Rと、ナノチャネルの断面図の拡大像である。プライマーが結合した標的核酸分子複合体は制限領域102内にのみ位置する。結果として、励起光が制限領域102を通過するとき、取り込まれたヌクレオチド類似体の標識が励起され、伸長するプライマーの配列に特定のヌクレオチド塩基が付加されるように対応して検出および同定される放射を発する。試薬を、制限領域102を通過させることにより、プライマーを伸長しないヌクレオチド類似体の量は、任意の特定の時点において数少ない。そのような可動物の全体が検出される狭い範囲において、それらは上記に説明されたように固定化された部分から容易に識別できる。
【0085】
図9Aは本発明のナノチャネル態様を実施する系を示す。照射源10(例:レーザー)は、レンズ6およびナノチャネル106を通し、二色性ビームスプリッタ8によって、励起放射を、固定化されたプライマーを結合済みの標的核酸複合体に指向させる。これにより複合体に固定化された標識が励起され、その結果、レンズ6を通って帰還する放射が発される。二色性ビームスプリッタ8は発された放射を、放出の種類を同定する検出器12まで通過させる。検出された放出情報はその後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定されその同一性が保存されるコンピューター14に指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができる。
【0086】
図10A〜Bは、試薬を本発明に係るナノファブリケーション制限系に提供するための系を示す。図10Aにおいて、dATP、dCTP、dGTP、dUTP、核酸源を含む試薬および緩衝液は、別々の液体槽に保持され、ナノチャネル202に入る前に試薬が共に混合される多様体200に至る別個の導管を通して連結される。ナノチャネル202の上流または下流へのこの系の構成要素は、ミクロ構造として組合せることができる。ナノチャネル202を迅速に通過させる過程において、試薬は本発明の配列決定手順が実施される反応帯204を迅速に移動する。ナノチャネル202から、残留試薬Rは出口206を通過する。図10Bの系は一般に図10Aのものと同様であるが、前者の系は系を液体槽に連結するパッドと共に単独チップ上にある。特に、各々の試薬のための液体槽は、入口パッド210a〜f経由でチップ208と連結される一方、排出される試薬のための出口はパッド212に連結される。
【0087】
幅75 nm、高さ60 nmのナノファブリケーションチャネルは、優れた光学的透過性をもつように製造され、DNA流動調節のために使用されてきた。ターナー(Turner)ら、「統合最上層をもつ、DNA電気泳動のための固体人工ゲル(Solid-State Artificial Gel for DNA Electrophoresis with an Integrated Top Layer)」、Proceedings of SPIE: Micro- and Nano- Fabricated Structures and Devices for Biomedical Environmental Applications 3258:114〜121(1998)を参照のこと。焦点を当てたレーザー光線のx-ディメンションを約300 nmまで最小化し、y-ディメンションを100 nmのチャネル幅により固定し、核酸合成複合体を深さz=25 nmのチャネルに配置することにより、有効な観察容量を、0.75アトリッターに対応する7.5×10-4μm3まで減少させることができる。ここでは、励起容量内に存在する1つの基質分子のみについての濃度は、2μM、即ち迅速かつ効果的な核酸重合の充分範囲内の基質濃度にまで達する。その上、各々を識別すべき、4つの異なるヌクレオチド類似体があるため、ポリメラーゼのために有効な基質濃度は4倍高い。より小さな有効観察容量が必要とされる場合、テータ顕微鏡におけるように、約90℃の軸角度における2つの対象物の干渉図形の照射により、流動方向のy-ディメンションは約100 nmまで減少させることができる。参照として本明細書に組み入れられる、ステルツァー(Stelzer)ら、「胚および他の大きなスペシメンの観察のための新規の手段:共焦点テータ蛍光顕微鏡(A New Tool for the Observation of Embryos and Other Large Specimens: Confocal Theta Fluorescence Microscopy)」、J.Microscopy 179:1〜10(1995)を参照のこと。
【0088】
標識を励起するために、活性化エネルギーをポリメラーゼ伸長の活性部位近傍(即ち、ポリメラーゼが位置するところ)に集中する。伸長中にこの活性部位が移動する範囲に限り(例:ポリメラーゼによる移動の結果として)、活性化エネルギーの焦点もまた移動する。
【0089】
必要な考察は、蛍光の単光子励起または多光子励起の間における選択である。多光子励起はある大きな利点を提供するが、実行するにはより複雑かつより高価である。超高速固体レーザーにより生じた明るい、10-15秒の赤外パルスからの、2つまたはそれ以上の光子の同時の吸収を使用する多光子励起蛍光は、最も有望なアプローチを提供する。参照として本明細書に組み入れられる、デンク(Denk)ら、「2つの光子のレーザー走査型蛍光顕微鏡(2-Photon Laser Scanning Fluorescence Microscopy)」、Science 248:73〜76(1990)を参照のこと。単分子蛍光に対する感度は機械的に得られ、かなりの正確さで測定可能な単分子についての蛍光寿命を用いて、マイクロセカンドレベルまで一時的に解像可能である。参照として本明細書に組み入れられる、マーツ(Mertz)ら、「2つの光子により励起された蛍光による単分子の検出(Single-Molecule Detection by Two-Photon-Excited Fluorescence)」、Optics Lett.20:2532〜2534(1995)、およびエッゲリング(Eggeling)ら、「選択的蛍光分光による、単分子の構造力学の調査(Monitoring Conformational Dynamics of a Single Molecule by Selective Fluorescence Spectroscopy)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95:1556〜1561(1998)を参照のこと。
【0090】
単分子配列決定のための理想的な蛍光シグナルは、各ヌクレオチドが結合されることによって、識別可能な蛍光の時間分解型バーストから成る。ゆえに、この理想的状況においては、図3にて説明されるように、ヌクレオチドが識別可能な間隔で結合された場合に、色分解蛍光バーストの時間分解型列が得られる。イベントの時間配列の完全な分解はそのため、ヌクレオチド認識のための最良のバックグラウンド減少および信頼性の高い可能性を与える。近年入手可能なポリメラーゼを用い、標識したヌクレオチドは、1ミリセカンド間隔においてよりは速くなく付加される可能性が非常に高いため、各標識ヌクレオチドから検出された全ての蛍光光子は蓄積でき、次の蛍光ヌクレオチドが結合される前に除去することが可能である。実際には重合の全ての分子動力学的段階は確率ポアソン過程に関わるのだが、この理想的なバースト‐ギャップ‐バースト配列は実現される。単独のポアソン過程については、平均遅延はゼロより大きいが、イベント間の最も可能性の高い時間遅延はゼロである。しかし、DNAポリメラーゼによる、単独dNTPのDNAへの取り込み過程は、少なくとも5つの異なるイベントから成る連続した多段階過程である。パテル(Patel)ら、「エキソヌクレアーゼ欠損変異体の完全な特徴付けを含む、プロセシビブなDNA複製の前定常状態の動力学的分析(Pre-Steady-State Kinetic Analysis of Processive DNA Replication Including Complete Characterization of an Exonuclease-Deficient Mutant)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)を参照のこと。これらの段階の連続した総和は、ゼロより大きな、最も可能性の高い時間遅延に帰結する。そのため、光子バーストが重複する可能性は低い。
【0091】
従来的な蛍光団のため、蛍光団当たり約105光子を光退色前に発する。(最大で)1%の放出の検出により、3%の相対ノイズ不確定性について約103光子を得る。遊離ヌクレオチドによるバックグラウンドは、例えば約1つのみの遊離標識ヌクレオチドを非常に短い滞留時間で含むように焦点容量サイズを制限することのような、上記にて議論されたスキームにより、ほとんど無視できるレベルにまで減少する。
【0092】
約10-3sにおいて、各標識ヌクレオチドから予測される検出レベルは約103光子である。これは許容できる計測率、〜106 Hzであり、一重項励起状態飽和の約10分の1の、許容できる蛍光団励起率である。この蛍光励起は、各標識ヌクレオチドについての特性波長の約1 msにおいて、〜103 光子の、検出されるバーストを生み出し、平均的に、多分1ミリセカンドより長い、ヌクレオチド付加の間の平均時間的間隔内に充分含まれる間隔にて、次のヌクレオチドが付加される前に、約1 msのギャップを残す。可能なバースト重複は、最も正確な配列決定結果については(最良として)4チャネルでの、時間コヒーレントシーケンスにおけるデータの連続する測定の分析処理により、分析および解決できる。実験デザインおよび近年開発された連結多チャネルアナライザーおよび演算ソフトウェアにおいて利用できる光子統計を用いて、上記に概説されるような、4つの標識ヌクレオチドまたは、より少ない数の標識に関わる方法について、誤差率を許容できるものにすることが可能である。
【0093】
ヌクレオチドを同定する、4つの蛍光団のスペクトル分解は、赤外パルスによる2光子の励起を用いて達成できる。通常2光子励起に特徴的な、広い励起帯によって、4つ全ての蛍光団は同時に励起できる。参照として本明細書に組み入れられる、シュウ(Xu)ら、「分子蛍光団の多光子励起断面積(Multiphoton Excitation Cross-Sections of Molecular Fluorophores)」、Bioimaging 4:198〜207(1996)を参照のこと。または、必要であれば、配列決定複合体を照射するために、多重励起源を組合せて、または迅速な切替により使用できる。スペクトル分離は従来的な干渉フィルターを用いて実施されるが、放出スペクトルが重複する可能性があり、時間相関解析を複雑にするため、修正のために、4色チャネルの交差相関が必要となる可能性がある。核酸重合酵素との蛍光団の適合性が適切な色素組の適用可能性を制限する場合、標識を識別するために、技術の組合せが適用できる。
【0094】
伸長する核酸配列鎖へのヌクレオチドの取り込みを識別するための他の可能な方法は、蛍光寿命における変化の測定を含む。オリゴヌクレオチドピレンプローブの蛍光寿命は、DNAの付着において配列依存的に変化することが観察された。参照として本明細書に組み入れられる、ダプリッチ(Dapprich J.)、「分子進化の蛍光検出(Fluoreszenzdetection Molekularer Evolution(Fluorescence Detection of Molecular Evolution))」、Dissertation, Georg-August-Univ., Goettingen, Germany(1994)を参照のこと。蛍光団と塩基の間の光物理学的相互作用は、特徴的な蛍光減衰時間に帰結し、また上記に議論されたように、塩基を区別するために使用することもできる。近年、単分子レベルにおける寿命の決定および識別は、取り込まれる塩基間の識別および、自由に拡散するヌクレオチド間の識別は、蛍光寿命の測定により実施できることが示された。参照として本明細書に組み入れられる、エッゲリング(Eggeling)ら、「選択的蛍光分光による、単分子の構造力学の調査(Monitoring Conformational Dynamics of a Single Molecule by Selective Fluorescence Spectroscopy)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95:1556〜1561(1998)を参照のこと。
【0095】
本発明の過程の実施において、4つの蛍光波長チャネルにおける時間相関測定が有効に使用できる。放出スペクトルの重複は、1つの蛍光団からのシグナルを幾つかのチャネルに入らせるが、相対数率および計時により標識は正確に同定される。取り込まれた標識ヌクレオチドおよび遊離している標識からの同時のシグナルは、遊離している標識に限定される持続時間、およびバーストの大きさにより識別可能である。各10-15秒のレーザー励起パルス後の蛍光光子放出について得られる、0.1 nsの時間遅延の分解により実行できる、蛍光減衰時間測定の使用により、標識の不確定性はさらに減少させることができる。蛍光光子放出および光退色の過程もまた、それら自身が確率過程ではあるが、誤差率が無視できるような、充分に異なる量子収量をもたらす。
【0096】
自由に拡散または流動する標識ヌクレオチドからのバックグラウンドの拒絶において、焦点容量における、任意の個々の遊離ヌクレオチドの非常に短い滞留時間が都合よく用いられる。焦点容量の開いたディメンション(最悪の場合非干渉遠隔場照射において)を横切る遊離ヌクレオチド類似体についての特性拡散時間は、yを焦点容量ディメンションおよびDを拡散係数として、τD〜y2/4D〜2×10-5秒となる。イオノホレティック流速1 cm/sは、10-5秒未満までのその短い蛍光バーストを維持し、大きさの順に光子数を減少するのに充分である。これは遊離ヌクレオチドに対する識別を保証し、議論されたようにヌクレオチド類似体濃度が適切に低いという条件で、核酸配列を示すバーストの時系列を同定する。参照として本明細書に組み入れられる、マッジ(Magde)ら、「反応系における熱力学的揺らぎ−蛍光相関分光による測定(Thermodynamic Fluctuations in a Reacting System- Measurement by Fluorescence Correlation Spectroscopy)」、Phys.Rev.Lett. 29:705〜708(1972)、およびマイチ(Maiti)ら、「3光子励起を用いた、生きた細胞におけるセロトニン分布の測定(Measuring Serotonin Distribution in Live Cells with Three-Photon Excitation)」、Science 275:530〜532(1997)を参照のこと。識別は、上記にて議論したように、容量制限技術またはゲート時間検出の使用により改善できる。
【0097】
伸長する核酸鎖に取り込まれるヌクレオチド類似体アクセプターを調整するための、ドナー蛍光団(例:ポリメラーゼに付着したドナー)からの、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の検出は、取り込まれたヌクレオチドからのバックグラウンドを下げることについて、さらなる的確な可能性を示唆する。FRETは、約20ヌクレオチドを含む非常に短い距離にしか達せず、距離の6分の1の逆数の力にて減衰する。励起ドナー分子はそのエネルギーを近隣のアクセプター蛍光団にのみ移動させ、付加されるにつれ各標識ヌクレオチドのスペクトル分解されたアクセプター蛍光団を発する。エネルギー移動の距離および配向束縛が観察の効果的な範囲を60 Å未満まで減少させるため、ドナーからさらに遠くの、既に取り込まれたヌクレオチドは、蛍光シグナルに寄与せず、それにより、取り込まれないヌクレオチドからのバックグラウンド蛍光は効果的に除去される。光退色を用いずに、反復ヌクレオチドはFRETの範囲を新規ヌクレオチドが付加されるものと同率に維持することから、配列認識の不確定性が生じる可能性があるため、この方法は高感度を必要とする。光退色または光化学的切断、または上記に議論されたようなそれらの組合せにより、問題を解決することができる。FRETを用いたドナー分子の光退色は、それが付着された鋳型核酸であり、核酸重合酵素をもつドナーが周期的に置換される場合には、回避できる。
【0098】
本発明の成功のために重要な最終的な考察は、厳密に焦点を合わせたレーザー光線のような活性化放射における、タンパク質/核酸複合体の安定性に関わるものである。タンパク質が吸収しない波長で選択されるため、励起照射により酵素が影響を受けることは予測されず、長い読み取り長に渡って正確な配列解析を実行させるため、レーザー光線におけるポリメラーゼの安定性は充分に高いものであるべきである。酵素を強いレーザー光に曝露する以前の調査において、光傷害および機能喪失が調べられた。固定化されたRNAポリメラーゼ/DNA複合体は、1047 nm Nd:約108 W/cm2の強さに対応する、タンパク質に焦点を当てた、82〜99 mWレーザー力のYレーザー光について82±58 秒の不活性時間を示した。アクトミオシン系またはキネシン系についての他の研究は、同様の安定性を示した。DNAおよびビオチン−アビジン結合の両方が、光学的捕捉に対し光安定性をもつことが示された。本明細書に参照として組み入れられる、イン(Yin)ら、「適用された力に対する転写(Transcription Against an Applied Force)」、Science 270:1653〜1657(1995)、スヴォボダ(Svoboda)ら、「光学的捕捉干渉法によるキネシン段階の直接観察(Direct Observation of Kinesin Stepping by Optical Trapping Interferometry)」、Nature 365:721〜727(1993)、およびモロイ(Molloy)ら、「単独ミオシン頭部により生産される移動および力(Movement and Force Produced by a Single Myosin Head)」、Nature 378:209〜212(1995)を参照のこと。本発明に係るヌクレオチド類似体の蛍光検出のため、1つの光子の励起について0.1 mW(105 W/cm2)、2つの光子励起について1 mW(106〜107 W/cm2)のような、FCS測定の典型的なレーザー力(強さ)が予測され、よって上記に説明されたオプティカルトウィーザーの場合より著しく低い。酵素の安定性はゆえにより高く、さらに、本方法により提案される配列決定の迅速なスピード(例:100 bp/s)により、8 kb核酸の配列決定には80秒のみで充分である。
【0099】
実例を挙げる目的にて本発明は詳細を説明してきたが、このような詳細は単にその目的のためにだけに述べられたものと理解され、特許請求の範囲によって定義される、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに当業者による変更が可能である。
【技術分野】
【0001】
本出願は、1999年5月19日に出願された米国仮特許出願第60/134,827号のを恩典を主張するものである。
【0002】
本発明は国立科学財団補助金第BIR8800278号、国立保健研究所補助金第P412RR04224-11号、およびエネルギー省補助金第066898-0003891号の下で米国政府により提供された基金により発明された。米国政府は本発明において一定の権利を有する可能性がある。
【0003】
発明の分野
本発明は、核酸分子の配列を決定する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
ヒトの全ゲノムを明らかにするという目標は、大小いずれのスケールの適用についても迅速なDNA配列決定をする技術に対する関心を喚起した。重要なパラメータは配列決定の速さ、一度の配列解析において読み取ることの可能な配列長、および必要とされる鋳型の核酸の量である。これらの研究上の挑戦は、事前に増幅せずに、および事前に遺伝材料を配列決定用ベクターへクローニングする必要なく、単一の細胞の遺伝情報の配列決定を目指すことを提案する。現状では、大きなスケールのゲノムプロジェクトは、多数の生物または患者について現実的に実施するには費用がかかりすぎる。さらに、ヒトの疾患について遺伝学的基礎の知識が増加するにつれ、臨床適用を可能にする、正確な、高処理量DNA配列決定の必要性は常に増加し続けると考えられる。核酸の単分子の塩基対配列の決定の実用的な方法、好ましくは高速かつ読み取り長の長いものは、必要な測定能を提供する。
【0005】
DNAの配列決定のための2つの従来技術は、サンガー(Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:563〜5467(1977))(非特許文献1)のジデオキシ法およびマクサム・ギルバートの化学分解法(MaxamおよびGilbert、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:560〜564(1977))(非特許文献2)である。両方法は、全ての伸長鎖が同じヌクレオチドにおいて終了するような一群のDNA鎖を各サンプルが含んでいる4つのサンプルを産出する。超薄スラブゲル電気泳動が、または、最近は、キャピラリーアレイ電気泳動が、末端ヌクレオチドを示すため電気泳動の前に各サンプルの鎖を異なったタグ標識すること、またはサンプルをゲルの異なるレーン、または異なるキャピラリーにおいて電気泳動することのいずれかにより、異なる長さの鎖を分解し、ヌクレオチド配列を決定するために使用される。サンガー法およびマクサム・ギルバート法のいずれも労力集約的および時間集約的であり、元のDNAの長い前処理を必要とする。時間集約的な電気泳動の段階に代えて質量分析を使用する試みがなされてきている。既存の配列決定技術の総説については、チェン(Cheng)の「高速DNA配列決定分析(High-Speed DNA-Sequence Analysis)」、Prog,Biochem.Biophys.22:223〜227(1995)(非特許文献3)を参照のこと。
【0006】
末端ヌクレオチドに結合した色素または蛍光標識を使用した関連方法が開発され、この方法においても配列決定はゲル電気泳動、および自動蛍光検出器により行われる。例えば、サンガー伸長法は近年、わずかマイクロリッター以下の試薬および色素標識したジデオキシリボヌクレオチド三リン酸しか必要としない、自動微量塩基配列解析システムを使用するように改変された。ソーパー(Soper)らの米国特許第5,846,727号(特許文献1)においては、蛍光検出はキャピラリーチャネルまで励起光を運ぶチャネル1つの単一モード光ファイバー、および蛍光光子を収集する第二の単一モード光ファイバーを用いてチップ上にて行われる。配列の読み取りは400〜500塩基の範囲内と推定され、これは、従来のサンガー法またはマクサム・ギルバート法により得られる配列情報量を超える著しい改善ではない。さらに、ソーパー法は、鋳型DNAのPCR増幅、および分離反応の開始に先駆けて、オリゴヌクレオチド配列「ラダー(ladders)」の精製およびゲル電気泳動を必要とする。これらの系は全て、標的DNAの著しい量を必要とする。配列決定のためにゲル電気泳動を用いない、チーズマン(Cheeseman)の米国特許第5,302,509号(特許文献2)にて説明される方法においてでさえ、少なくとも百万のDNA分子が必要である。
【0007】
元々10年前に発明された、合成による塩基配列決定の方法論の近年の改良において、DNA/ポリメラーゼ複合体を各デオキシリボヌクレオチド三リン酸(dNTP)を別個におよび連続的に用いて試験することによるピロリン酸放出の測定によりDNA配列は推定される。ロナージ(Ronaghi)ら、「実時間のピロリン酸に基づく配列決定法(A Sequencing Method Based on Real-Time Pyrophosphate)」、Science 281:363〜365(1998)(非特許文献4)およびハイマン(Hyman)「DNAの配列決定の新しい方法(A New Method of Sequencing DNA)」、Anal.Biochem.174:423〜436(1988)(非特許文献5)を参照のこと。天然型のヌクレオチドを用い、この方法は配列の読み取り長を著しく制限するDNA鎖上のポリメラーゼの同調化を必要とする。ロナージ(Ronaghi)ら、「実時間のピロリン酸に基づく配列決定法(A Sequencing Method Based on Real-Time Pyrophosphate)」、Science 281:363〜365(1998)(非特許文献4)により示された手順において、約40ヌクレオチドの読み取りのみが達成され、ルシファラーゼの光産生による限定された量子収量により、この検出法による単分子への感度に達することは期待されない。さらに、総合的な配列決定の速さは必須の洗浄段階、その後のピロリン酸の存在の同定のための化学段階により、また4塩基全てについて連続的に配列決定される各塩基対の試験に必要な固有の時間により制限される。また、配列中の同一ヌクレオチドの連続ホモヌクレオチドの正確な決定が困難であることが認識された。
【0008】
単分子の配列決定についての以前の試み(一般には成功しなかったが将来性のある)では、DNAポリメラーゼが完全な相補鎖を形成した後の第二段階として、各蛍光標識塩基の連続的な放出のためにエキソヌクレアーゼを利用した。グッドウィン(Goodwin)らの「単分子の検出のDNA配列決定への適用(Application of Single Molecule Detection to DNA Sequencing)」、Nucleos.Nucleot.16:543〜550(1997)(非特許文献6)を参照のこと。これは4つの異なる蛍光dNTP類似体により標識されたDNA鎖の合成、それに続く、エキソヌクレアーゼの作用による標識鎖の分解、および流体力学的流動検出器における、各々放出された各塩基の検出から成る。しかし、ポリメラーゼおよびエキソヌクレアーゼの両者が高度に修飾されたDNA鎖上で活性を示さねばならず、および4つの異なる蛍光dNTP類似体で置換されたDNA鎖の作製はまだ成功していない。ダプリッチ(Dapprich)ら、「ビーズ置換により観察される、ミクロ構造における、光学的に捕捉したビーズへのDNA付着(DNA Attachment to Optically Trapped Beads in Microstructures Monitored by Bead Displacement)」、Bioimaging 6:25〜32(1998)(非特許文献7)。さらに、DNAの標識の程度とエキソヌクレアーゼ活性阻害の間の関係について既知の正確な情報は少ない。ドーレ(Dorre)ら、「単分子の配列決定のための技術(Techniques for Single Molecule Sequencing )」、Bioimaging 5:139〜152(1997)(非特許文献8)を参照のこと。
【0009】
エキソヌクレアーゼを用いる第二のアプローチにおいては、切断ヌクレオチドを空間的に分離するため、天然型のDNAを、液体薄膜内を通す間に切断する。ダプリッチ(Dapprich)ら、「ビーズ置換により観察される、ミクロ構造における、光学的に捕捉したビーズへのDNA付着(DNA Attachment to Optically Trapped Beads in Microstructures Monitored by Bead Displacement)」、Bioimaging 6:25〜32(1998)(非特許文献7)を参照のこと。その後、それらを検出のために表面上で固定化する前に、短距離を拡散する。しかし、ほとんどのエキソヌクレアーゼは、配列依存性の切断率または構造依存性の切断率を示し、その結果、部分配列からのデータ解析および対合組みが困難になる。さらに、検出表面上の塩基の同定法はなおも開発または改良されなければならない。
【0010】
検出システムに関わらず、エキソヌクレアーゼを使用する方法は、迅速、高処理量配列決定についての今日の要求を満たす方法が開発されていない。加えて、ほとんどのエキソヌクレアーゼは比較的遅いターンオーバー率をもち、提案される方法は、長い前処理である、鋳型DNAの標識およびそれに続く流液中のビーズ上での固定化を必要とし、それら全ては単純な高処理量システムの実現をより複雑なものにしている。
【0011】
走査型原子プローブ顕微鏡による、固定および伸展したDNA分子の空間的配列の決定のような、その他の、DNA配列決定のより直接的なアプローチが試みられた。これらの方法の使用で遭遇した問題は、DNA分子中の塩基の狭い間隔(0.34 nmのみ)、およびこれらの方法によって認識するには小さな物理化学的差異にある。ハンスマ(Hansma)ら、「原子間力顕微鏡による液体中での再現性のあるプラスミドDNAの画像化と解析(Reproducible Imaging and Dissection of Plasmid DNA Under Liquid with the Atomic Force Microscope)」、Science 256:1180〜1184(1992)(非特許文献9)を参照のこと。
【0012】
ポリメラーゼを用い、エキソヌクレアーゼを用いない微量配列決定についての近年のアプローチにおいては、一連の同一単鎖DNA(ssDNA)分子を基質に連結し、蛍光標識されたdNTPを用いた一連の反応の繰り返しにより配列を決定する。チーズマン(Cheeseman)の米国特許第5,302,509号(特許文献2)。しかし、この方法は、各塩基が蛍光標識物および3’-dNTPブロック基と共に付加されることを必要とする。塩基の付加および検出後、蛍光標識物およびブロック基を除去し、その後、次の塩基をポリマーに付加する。
【0013】
ゆえに、現在の配列決定法では配列を推定するため、ポリメラーゼ活性およびエキソヌクレアーゼ活性の両方を必要とするか、または、3’-ブロックされたdNTPの付加および除去という付加的な段階によりポリメラーゼのみに依存するかのいずれかである。ヒトゲノムプロジェクトは、最小限の開始材料を用いた高処理量を可能にする、迅速かつ大小のスケールでのDNA配列決定への要求を強めた。またブロック置換基を使用せずに、ポリメラーゼ活性のみを必要とすることから、結果的に、増加する単純性、より容易な縮小化能および単一段階技術の並行処理に対する適合性を有する、核酸分子の配列決定方法を提供する必要性も残る。
【0014】
本発明は、本技術分野における要求を満たし、欠点を克服することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第5,846,727号
【特許文献2】米国特許第5,302,509号
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Sangerら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:563〜5467(1977)
【非特許文献2】MaxamおよびGilbert、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 74:560〜564(1977)
【非特許文献3】チェン(Cheng)の「高速DNA配列決定分析(High-Speed DNA-Sequence Analysis)」、Prog,Biochem.Biophys.22:223〜227(1995)
【非特許文献4】ロナージ(Ronaghi)ら、「実時間のピロリン酸に基づく配列決定法(A Sequencing Method Based on Real-Time Pyrophosphate)」、Science 281:363〜365(1998)
【非特許文献5】ハイマン(Hyman)「DNAの配列決定の新しい方法(A New Method of Sequencing DNA)」、Anal.Biochem.174:423〜436(1988)
【非特許文献6】グッドウィン(Goodwin)らの「単分子の検出のDNA配列決定への適用(Application of Single Molecule Detection to DNA Sequencing)」、Nucleos.Nucleot.16:543〜550(1997)
【非特許文献7】ダプリッチ(Dapprich)ら、「ビーズ置換により観察される、ミクロ構造における、光学的に捕捉したビーズへのDNA付着(DNA Attachment to Optically Trapped Beads in Microstructures Monitored by Bead Displacement)」、Bioimaging 6:25〜32(1998)
【非特許文献8】ドーレ(Dorre)ら、「単分子の配列決定のための技術(Techniques for Single Molecule Sequencing )」、Bioimaging 5:139〜152(1997)
【非特許文献9】ハンスマ(Hansma)ら、「原子間力顕微鏡による液体中での再現性のあるプラスミドDNAの画像化と解析(Reproducible Imaging and Dissection of Plasmid DNA Under Liquid with the Atomic Force Microscope)」、Science 256:1180〜1184(1992)
【発明の概要】
【0017】
本発明は、複数のヌクレオチド塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法に関する。本方法は、標的核酸に相補的な活性部位において、ヌクレオチド類似体を付加するために適した位置において、互いに配向された、核酸重合酵素と標的核酸分子の複合体の提供に関連する。多種のヌクレオチド類似体が活性部位の近傍に、各種のヌクレオチド類似体が標的核酸配列の異なるヌクレオチドに対し相補的になるように提供される。ヌクレオチド類似体は活性部位において、付加したヌクレオチド類似体が次なるヌクレオチド類似体の付加を受けられるように、付加されるヌクレオチド類似体が標的核酸ヌクレオチドに対し相補的になるように重合される。重合段階の結果、活性部位に付加されたヌクレオチド類似体が同定される。標的核酸配列を決定するため、複数のヌクレオチド類似体の提供段階、重合段階、および同定段階が繰り返される。
【0018】
本発明の他の局面は、標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関連する。本装置は支持体と共に、核酸重合酵素または標的核酸分子に結合するために適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、ポリメラーゼまたはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置する。ミクロ構造は、支持体上に位置しない標識ヌクレオチド類似体を迅速に限られた制限領域中を移動させるために形成された、支持体および核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限された領域を定義する。
【0019】
本発明のさらなる特徴は、標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関するものである。本装置は、固体支持体および核酸重合酵素または標的核酸分子にハイブリダイズさせるのに適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置される。外被は、支持体と、核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限領域とを定義する。外被は、支持体上に位置する標識ヌクレオチド類似体の同定を容易にするように構成される。制限領域近傍の光学導波管は、活性化放射を制限領域に集中させ、制限領域から放射を収集する。
【0020】
本発明により多くの利点が得られる。配列決定は少量の核酸を用いて実施することができ、配列の開始に先立つ増幅の必要性を排除する、単独核酸鋳型分子の配列決定が可能になる。一度の配列解析において長い読み取り長の配列が推定でき、長い鋳型分子(例:バクテリア人工染色体(BAC)クローン)のギャップのない全長配列を組合せるための、長大なコンピューターを用いた方法の必要性が排除される。本発明の2つの操作方法のため、配列の読み取り長は、配列決定される鋳型長により、またはポリメラーゼのプロセシビティ(processivity)の各々により制限される。例えば二本鎖鋳型核酸上の特異的部位(例:複製起点)における配列決定反応の開始のためにアクセサリータンパク質を用いるような、適切な酵素系の使用により、配列決定用ベクターへのサブクローニングのような従来の配列決定技術には必要な準備段階が排除できる。
【0021】
加えて、本発明の配列決定法は、ポリメラーゼを用い、エキソヌクレアーゼを用いずに実施することができる。これにより、増加する単純性、より容易な縮小化能、および単一段階技術の並行処理への適合性がもたらされる。
【0022】
後者の利点に関して、あるポリメラーゼはエキソヌクレアーゼよりも高いプロセシビティおよび触媒速度を示し、T7 DNAポリメラーゼの場合、(λエキソヌクレアーゼの場合の3,000塩基と比較して)酵素の解離前に10,000塩基より多く付加する。ある場合、例えばT7ヘリカーゼ/プライマーゼと複合体を形成したT7 DNAポリメラーゼにおいては、プロセシビティ値はさらに高く、数十万にも及ぶ。DNA合成率は非常に高くなり得、インビボにて1,000塩基/秒およびインビトロにて750塩基/秒(インビトロにてλエキソヌクレアーゼにより分解された12塩基/秒に対して)と測定される。参照として本明細書に組み入れられる、ケルマン(Kelman)ら、「DNAポリメラーゼのプロセシビティ:2つの機構、1つの目標(Processivity of DNA Polymerases:Two Mechanisms, One Goal)」、Structure 6:121〜125(1998);カーター(Carter)ら、「遺伝子組換えにおけるファージλのエキソヌクレアーゼおよびβタンパク質の役割。II.λエキソヌクレアーゼの基質特異性および作用の仕方(The Role of Exonuclease and Beta Protein of Pharge Lambda in Genetic Recombination. II. Substrate Specificity and the Mode of Action of Lambda Exonuclease)」、J.Biol.Chem. 246:2502〜2512(1971);テイバー(Tabor)ら、「大腸菌チオレドキシンはバクテリオファージT7の遺伝子5タンパク質のDNAポリメラーゼ活性にプロセシビティを与える(Escherichia coli Thioredoxin Confers Processivity on the DNA Polymerase Activity of the Gene 5 Protein of Bacteriophage T7)」、J.Biol.Chem. 262:16212〜16223(1987);およびコヴァル(Kovall)ら、「λエキソヌクレアーゼのトロイダル構造(Toroidal Structure of Lambda-Exonuclease)」、Science 277:1824〜1827(1997)を参照のこと。750塩基/秒の取り込み率は、ヒトゲノムについてのショットガン配列決定法において使用するよう提案された、パーキンエルマー社(Perkin Elmer Corp.、Foster City, California)の、完全に自動化したABI PRISM 3700 DNAシーケンサーの1つによる配列決定の速さよりも、約150倍速い。参照として本明細書に組み入れられる、ヴェンター(Venter)ら、「ヒトゲノムのショットガン配列決定法(Shotgun Sequencing of the Human Genome)」、Science 280:1540〜1542(1998)を参照のこと。
【0023】
本発明の配列決定法を実施するために使用できる小さなサイズの装置もまた、非常に有利である。鋳型/ポリメラーゼ複合体の制限領域は、連続してまたは同時に実施される何千もの配列決定反応と共に、高度に同時並行に行われる操作方法が可能なアレイを有することのできるミクロ構造装置により提供され得る。これにより、研究の適用のために、また医学的診断法のために、迅速および超高感度の手段が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る配列決定のための3つの代替態様を示す。
【図2】本発明に係る核酸の配列決定に使用される、一連の段階を示す概略図である。
【図3】本発明に係る核酸の配列決定に使用される一連の段階中における、蛍光シグナル対時間のプロットを示す。図3Cはこれらの段階により生じた配列を示す。
【図4】γリン酸の位置(ここではγ‐連結dNTPとして示される)に標識を有する蛍光ヌクレオチドが使用された場合の構造、および、本発明に係る核酸の配列決定に使用される一連の段階を示す概略図を表す。
【図5】本発明に係るバックグラウンドシグナルを抑制するために使用され得る、ゲート時間蛍光減衰時間測定(time-gated fluorescence decay time measurement)による、蛍光団の識別の原理を示す。
【図6】図6Aは本発明に係る配列決定系を示す。図6Bはその系の一部を拡大したものである。
【図7】金属チップを用いた電磁場増強を使用する、本発明に係る配列決定系を示す。図7Bはその系の一部を拡大したものである。
【図8】図8Aは近接場口径を使用する、本発明に係る配列決定系を示す。図8Bはその系の一部を拡大したものである。
【図9】図9Aは、ナノチャネルを使用する、本発明に係る配列決定の系を示す。図9Bはその系の一部を拡大したものである。
【図10】本発明に係るナノファブリケーション制限系に試薬を提供するための系を示す。特に、図10Aは試薬がどのように提供され、系を通るかを示す概略図である。図10Bは同様であるが、単独チップ上のこの系を、系を液体槽に連結するためのパッドと共に示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、複数のヌクレオチド塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法に関するものである。本方法は標的核酸に相補的な活性部位にヌクレオチド類似体を付加するために適切な位置において、互いに関して配向する核酸重合酵素と標的核酸分子の複合体の提供に関連する。多種のヌクレオチド類似体が、各種のヌクレオチド類似体が標的核酸配列において異なるヌクレオチドに対し相補的になるように、活性部位の近傍に提供される。ヌクレオチド類似体は活性部位において、付加したヌクレオチド類似体が、次なるヌクレオチド類似体の付加を受けられるように、付加されるヌクレオチド類似体が標的核酸ヌクレオチドに対し相補的になるように重合される。重合段階の結果、活性部位に付加されたヌクレオチド類似体が同定される。標的核酸配列を決定するため、複数のヌクレオチド類似体の提供段階、重合段階、および同定段階が繰り返される。
【0026】
本発明の他の局面は標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関連する。本装置は支持体と共に、核酸重合酵素または標的核酸分子に結合するために適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、ポリメラーゼまたはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置する。ミクロ構造は、支持体上に位置しない標識ヌクレオチド類似体を迅速に制限領域中を移動させるために形成された、支持体および核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限された領域を定義する。
【0027】
本発明のさらなる特徴は、標的核酸分子の配列決定に適切な装置に関するものである。本装置は、支持体および核酸重合酵素または標的核酸分子にハイブリダイズさせるのに適切なオリゴヌクレオチドプライマーを含み、核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーは支持体上に配置される。外被は支持体および核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーを含む制限領域を定義する。外被は、支持体上に位置する標識ヌクレオチド類似体の同定を容易にするよう構成される。制限領域近傍の光学導波管は、活性化放射を制限領域に集中させ、制限領域から放射を収集する。
【0028】
本発明は複数の塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法を目的とする。その基本原則において、重合反応中における塩基の付加の一時的な順序が核酸の単分子上で測定され、即ち、以下にポリメラーゼとしても称される、配列決定される鋳型核酸分子上の核酸重合酵素の活性が実時間で追跡調査される。塩基付加の配列における各段階における核酸重合酵素の触媒活性により、どの塩基が伸長する標的核酸の相補鎖に取り込まれるかを決定することにより、配列は推定される。本発明の好ましい態様においては、塩基付加の時間的順序の認識は、伸長する核酸鎖に取り込まれる際の、適切に標識したヌクレオチド類似体からの蛍光の検出により達成される。塩基対形成の正確さは酵素の特異性により提供され、不適正塩基対形成の誤差率は10−5またはそれ以下である。酵素の忠実度については、本明細書に参照として組み入れられる、ジョンソン(Johnson)、「DNAポリメラーゼ忠実度における、構造との相関(Conformational Coupling in DNA-Polymerase Fidelity)」、Ann.Rev.Biochem. 62:685〜713(1993)およびクンケル(Kunkel)、「DNA複製忠実度(DNA-Replication Fedelity)」、J.Biol.Chem. 267:18251〜18254(1992)を参照のこと。
【0029】
本発明は、多数の重合酵素(DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、混合物等)を用いて、全ての種類の核酸(DNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド等)の配列決定に等しく適用される。ゆえに、核酸重合酵素の基質分子として使用される適切なヌクレオチド類似体は、dNTP、NTP、修飾dNTP、修飾NTP、ペプチドヌクレオチド、修飾ペプチドヌクレオチド、または修飾リン酸‐糖骨格をもつヌクレオチド群の一員からなる群からなることが可能である。
【0030】
本発明に従って、2つの好都合な操作方法がある。本発明の第一の操作方法においては、鋳型核酸は支持体に付着される。これは(1)オリゴヌクレオチドプライマーまたは(2)単鎖標的核酸分子または(3)二本鎖標的核酸分子のいずれかの固定化により行うことができる。そこで、(1)付着したオリゴヌクレオチドプライマーに標的核酸分子がハイブリダイズする、(2) プライマーが結合した標的核酸分子複合体を形成するため、固定化された標的核酸分子にオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする、または(3)二本鎖鋳型上にポリメラーゼの認識部位が作製される(例:プライマーゼのようなアクセサリータンパク質との相互作用を通して)のいずれかが行われる。標的核酸分子に沿った移動および活性部位におけるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長に適切な位置において、プライマーが結合した標的核酸分子複合体上の核酸重合酵素が提供される。標識された型のヌクレオチド類似体の複数は、ブロック置換基をもたず、標的核酸配列における異なるヌクレオチドに相補的な各々識別可能な型のヌクレオチド類似体と共に、活性部位の近傍に提供される。オリゴヌクレオチドプライマーは、ヌクレオチド類似体が活性部位にて標的核酸のヌクレオチドに相補的に付加されるような活性部位において、ヌクレオチド類似体をオリゴヌクレオチドプライマーに付加するため、核酸重合酵素の使用により伸長される。伸長段階の結果としてオリゴヌクレオチドプライマーに付加されたヌクレオチド類似体が同定される。必要であれば、オリゴヌクレオチドプライマーに付加された、標識されたヌクレオチド類似体は、オリゴヌクレオチドプライマーに付加されたヌクレオチド類似体が、その後の重合段階および同定段階においてヌクレオチド類似体の検出を妨げないことを確保するために、多くのさらなるヌクレオチド類似体がオリゴヌクレオチドプライマーに取り込まれる前に処理される。オリゴヌクレオチドプライマーがさらに伸長され、標的核酸配列が決定されるように、標識したヌクレオチド類似体を提供する段階、オリゴヌクレオチドプライマーを伸長する段階、付加されたヌクレオチド類似体を同定する段階、およびヌクレオチド類似体を処理する段階が繰り返される。
【0031】
または、前述の手順は、プライマーが結合した核酸分子複合体を活性部位において伸長するために、核酸重合酵素を、核酸重合酵素に相対的に標的核酸分子複合体が移動するのに適切な位置で支持体に最初に付着することにより実施することができる。本態様においては、活性部位において標的核酸ヌクレオチドに相補的な、標識したヌクレオチド類似体の複数が、プライマーが結合した標的核酸複合体が核酸重合酵素と共に移動するに従い付加される。オリゴヌクレオチドプライマーをさらに伸長するため、および標的核酸配列を決定するため、上記に説明されたように、ヌクレオチド類似体を提供する段階、プライマーを伸長する段階、付加されたヌクレオチド類似体を同定する段階、および取り込みの間または後にヌクレオチド類似体を処理する段階が繰り返される。
【0032】
図1A〜Cは、本発明に係る配列決定の3つの代替の態様を示す。図1Aにおいては、シークエンシングプライマーは、例えばビオチン‐ストレプトアビジン結合により、標的核酸分子にハイブリダイズされたプライマー、およびハイブリダイズされた核酸分子にヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加される活性部位にて付着された核酸重合酵素と共に、支持体に付着される。図1Bにおいては、標的核酸分子は、鋳型核酸分子にハイブリダイズされたシークエンシングプライマー、およびハイブリダイズされた核酸分子にヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加される活性部位にて付着された核酸重合酵素と共に支持体に付着される。プライマーはヌクレオチド類似体の提供前または提供中に付加することができる。これらのシナリオに加え、二本鎖標的核酸分子を、ヌクレオチド類似体がプライマーに付加される活性部位で核酸重合酵素と結合するための認識部位を有する、標的核酸分子と共に支持体に付着できる。例えば、そのような認識部位は、標的核酸上の特異的部位において短いプライマーを合成し、ゆえに核酸重合酵素の開始部位を提供する、RNAポリメラーゼまたはヘリカーゼ/プライマーゼのような、アクセサリータンパク質を使用して確立することができる。本明細書に参照として組み入れられる、リチャードソン(Richardson)「バクテリオファージT7:二本鎖DNA分子の複製のための最低要件(Bacteriophage T7: Minimal Requirements for the Replication of a Duplex DNA Molecule)」、Cell 33:315〜317(1983)を参照のこと。図1Cにおいては、核酸重合酵素は支持体に、ヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加される活性部位にて結合する、プライマーが結合した標的核酸分子と共に付着される。以前に説明されたように、核酸重合酵素は同様に支持体に付着されるが、ヌクレオチド類似体が伸長する核酸鎖に付加される活性部位で、核酸重合酵素と結合するための認識部位を有する、二本鎖核酸である標的核酸分子と共に付着される。図1A〜Cは支持体上にて実施される1つの配列決定反応のみを示すが、単一の支持体上の異なる部位において幾つかの、そのような一連の反応を行うことが可能である。この代替態様において、この固体支持体上に固定化されるべき各シークエンシングプライマー、標的核酸、または核酸重合酵素は、例えばDNAチップのマイクロアレイ技術のために使用されるように、ミクロコンタクトプリンティングまたはミクロコンタクトスタンピングにより、または固体支持体の表面の処理による結合部位のアレイの形成により、その表面上にスポットされる。図1に概説される態様を組合せること、および標的核酸分子および核酸重合酵素の両方を互いの近傍に固定化することもまた考えられる。
【0033】
本発明の配列決定過程は、二本鎖DNA、単鎖DNA、単鎖DNAヘアピン、DNA/RNAハイブリッド、ポリメラーゼの結合認識部位をもつRNA、またはRNAヘアピンを含む、任意の核酸分子の配列決定のために使用することができる。
【0034】
本発明の過程の実施に使用されるシークエンシングプライマーは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾ペプチド核酸、修飾リン酸‐糖骨格をもつオリゴヌクレオチド、ならびに他のヌクレオチド類似体およびオリゴヌクレオチド類似体が可能である。それはプライマーゼ、RNAポリメラーゼ、または他のオリゴヌクレオチド合成酵素により、合成的または天然のいずれかで産生することが可能である。
【0035】
本発明に従って使用される核酸重合酵素は耐熱性ポリメラーゼまたは熱失活性ポリメラーゼのいずれかが可能である。適切な耐熱性ポリメラーゼの例には、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)、サーマス・サーモフィラス(Thermus thermophilus)、ピロコッカス・オエセイ(Pyrococcus woesei)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、サーモコッカス・リトラリス(Thermococcus litoralis)、およびサーモトガ・マリティマ(Thermotoga maritima)から単離されたポリメラーゼが含まれる。有用な熱失活性ポリメラーゼは、大腸菌DNAポリメラーゼ、大腸菌DNAポリメラーゼのクレノウ断片、T4 DNAポリメラーゼ、T7 DNAポリメラーゼ、およびその他のものを含む。核酸分子の配列決定に使用できる他の重合酵素の例は、大腸菌、T7、T3、SP6のRNAポリメラーゼおよびAMV、M-MLVおよびHIVの逆転写酵素を含む。ポリメラーゼは、プライマーが結合した単鎖核酸、複製起点、二本鎖核酸におけるニックまたはギャップ、単鎖核酸における二次構造、アクセサリータンパク質により産出される結合部位、またはプライマーが結合した単鎖核酸において、プライマーが結合した標的核酸配列に結合することができる。
【0036】
支持体の形成に有用な材料は、ガラス、表面を改変したガラス、シリコン、金属、半導体、高屈折率誘電体、水晶、ゲル、およびポリマーを含む。
【0037】
図1の態様において、シークエンシングプライマー、標的核酸分子、または核酸重合酵素のいずれかを支持体に固定化するため、当業者に既知の任意の適切な結合パートナーを使用できる。吸収による非特異的結合もまた可能である。図1A〜Cにて示されるように、ビオチン‐ストレプトアビジン連結がシークエンシングプライマーまたは標的核酸分子と固体支持体との結合に適切である。そのような連結のビオチン成分はプライマーもしくは核酸のいずれかに、または反対側の全体に付着されたストレプトアビジン(もしくは任意の他のビオチン結合タンパク質)を用いて固体支持体に付着することができる。
【0038】
この結合技術を実施するためのあるアプローチは、PHOTOACTIVATABLE BIOTIN(商標)(「PAB」)(Pierce Chemical Co.,Rockford,Illinois)を、本発明の配列決定手順を実施するため使用されるチェンバーの表面に付着することに関連する。これは、本明細書に参照として組み入れられる、ヘングサクル(Hengsakul)ら、「ビオチンの光活性可能な誘導体を用いたタンパク質パターン化(Protein Patterning with a Photoactivable Derivative of Biotin)」、Bioconjugate Chem. 7:249〜54(1996)において説明されるように、好ましくはチェンバーの透明な壁を通過させて、360 nmの光への曝露により達成できる。ナノチェンバーを用いる場合、光学顕微鏡下の回折限界点においてビオチンを活性化する。近接場励起により、望ましい領域に直接光を指向させる導波管を用いて曝露を自己調整できる。光に曝露された場合、PABは活性化されチャネルの内部表面に共有結合により結合する。その後、結合しなかった過剰なPABを、水での洗浄により除去する。
【0039】
または、ストレプトアビジンを支持体表面に被覆できる。適切な核酸プライマーオリゴヌクレオチドまたは単鎖核酸鋳型をその後ビオチン化し、ストレプトアビジン‐ビオチン結合プライマーによって、固定化された核酸プライマー標的分子複合体を作製する。
【0040】
本発明の過程を実施するための他のアプローチは、シークエンシングプライマー、または標的核酸分子を固体支持体に連結するために、相補的な核酸を使用するものである。これは、既知のリーダー配列をもつ単鎖核酸を改変し、既知のリーダー配列をシークエンシングプライマーまたは標的核酸分子に連結することにより実施することができる。その結果生じるオリゴヌクレオチドを、その後、支持体に付着された、既知のリーダー配列に相補的なヌクレオチド配列をもつオリゴヌクレオチドへのハイブリダイゼーションにより結合することができる。または、第二のオリゴヌクレオチドを、オリゴヌクレオチドプライマーに結合したものと反対側の標的核酸分子の末端にハイブリダイズすることができる。その第二のオリゴヌクレオチドは、支持体に付着された相補的な核酸配列へのハイブリダイゼーションに使用できる。
【0041】
支持体と、オリゴヌクレオチドプライマーまたは標的核酸配列のいずれかとの間の可逆的または不可逆的結合は、任意の共有結合対または非共有結合対の成分を用いて達成できる。シークエンシングプライマーまたは標的核酸分子を支持体に固定化するための他のそのようなアプローチは、抗体‐抗原結合対および光活性化された共役分子を含む。
【0042】
図1Cの態様において、可逆的または不可逆的にタンパク質材料を固定化するのに有用であることが知られる任意の技術を使用できる。RNAポリメラーゼは、触媒活性を失わずに、活性化した表面上に都合よく固定化されたことが文献において報告されている。本明細書に参照として組み入れられる、イン(Yin)ら、「適用された力に対する転写(Transcription Against an Applied Force)」、Science 270:1653〜1657(1995)を参照のこと。または、HIV逆転写酵素について報告されるように、その触媒活性を妨げないように、タンパク質を抗体に結合することができる。本明細書に参照として組み入れられる、レナーストランド(Lennerstrand)ら、「粗サンプルに有用な免疫親和性による精製とHIV-1の逆転写酵素活性のアッセイ法を組合せた方法(A Method for Combined Immunoaffinity Purification and Assay of HIV-1 Reverse Transcriptase Activity Useful for Crude Samples)」、Anal.Biochem. 235:141〜152(1996)を参照のこと。ゆえに、核酸重合酵素は機能を損なわずに固定化できる。抗体および他のタンパク質は無機物の表面上にパターン化できる。本明細書に参照として組み入れられる、ジェイムス(James)ら、「薄スタンプミクロコンタクトプリンティングにより、固体基質上にて型取って作製されたパターン化タンパク質層(Patterned Protein Layers on Solid Substrates by Thin Microcontact Printing)」、Lamgmuir 14:741〜744(1998)およびセントジョン(St John)ら、「ミクロコンタクトプリントされた抗体格子を用いた回折ベースの細胞検出(Diffraction-Based Cell Detection Using a Microcontact Printed Antibody Grating)」、Anal.Chem. 70:1108〜1111(1998)を参照のこと。または、タンパク質をビオチン化し(または他の結合分子と同様に標識し)、その後、ストレプトアビジンで被覆した支持体表面に結合できる。
【0043】
図1A〜Cの任意の態様において、結合パートナーおよびそれが固定化するポリメラーゼまたは核酸のいずれかは、当技術分野において既知の従来的な化学的および写真製版技術により、支持体に適用できる。一般に、これらの手順は支持体の標準の化学的な表面の改変、異なる温度、異なる培地における支持体のインキュベーション、およびその後の可能な、各分子を有する支持体表面の洗浄およびインキュベーションの段階に関わることが可能である。
【0044】
重合複合体を配置においては、例えば複合体を通過させるには小さすぎるが、ヌクレオチド類似体の移動には充分大きい細孔を有するゲルにおける複合体の捕捉によるものなどの代替的可能性が考えられる。適切な培地には、アガロースゲル、ポリアクリルアミドゲル、合成多孔材料、またはナノ構造が含まれる。
【0045】
本発明の配列決定手順は、図1A〜Bの態様において、核酸重合酵素が反応混合液へ付加することにより開始できる。図1Cの態様について、プライマーが結合した核酸を開始のために付加できる。ポリメラーゼの活性部位の必須の構成成分である二価の金属イオン(最も一般的にはMg2+)の非存在下において核酸‐ポリメラーゼ複合体を予め形成するというような、開始のための他のシナリオも使用できる。その後、これらの金属イオンの付加により、配列決定反応を開始できる。ヌクレオチドの非存在下において酵素を用いて、鋳型の開始前複合体をも形成することができ、反応を開始するためには蛍光ヌクレオチド類似体を加える。本明細書に参照として組み入れられる、フーバー(Huber)ら、「大腸菌チオレドキシンはバクテリオファージT7 DNAポリメラーゼとプライマーが結合した鋳型との複合体を安定化する(Escherichia coli Thioredoxin Stabilizes Complexes of Bacteriophage T7 DNA Polymerase and Primed Templates)」、J.Biol.Chem. 262:16224〜16232(1987)を参照のこと。または、核酸重合酵素への結合から防護するオリゴヌクレオチドプライマー上の活性基の解放により、この過程を開始できる。その後、レーザービーム照射により、観察開始時点と同時に反応を開始する。
【0046】
図2A〜Cは、本発明に係る核酸塩基配列決定のために使用される連続した段階を示す概要図である。
【0047】
図2Aにおいては、標識したヌクレオチド類似体は、固体支持体に付着された、ハイブリダイズされたシークエンシングプライマーと標的核酸分子とに付着された核酸重合酵素の、プライマーが結合した複合体に近接して存在する。配列決定過程のこの段階において、標識されたヌクレオチド類似体は拡散する、または伸長培地中をプライマーが結合した複合体に向かって、またはその周囲を強制的に流動する。
【0048】
図2Bに従って、ヌクレオチド類似体が、プライマーが結合した複合体の活性部位に達すると、それに結合し、核酸重合酵素はこのヌクレオチド類似体が標的核酸分子の最初の開いた塩基に対して相補的であるか、または不適正対合を示すものなのかを確定する。前述の、酵素の高忠実度に対応して不適正対合した塩基は高い確率で拒絶される一方、シークエンシングプライマーの伸長のため、相補的なヌクレオチド類似体はシークエンシングプライマーに重合される。
【0049】
標識された各ヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーへ付加する間または付加する後に、シークエンシングプライマーに付加されたヌクレオチド類似体を同定する。これは各ヌクレオチド類似体に異なる識別可能な標識を与えることにより最も有効に達成される。異なる標識のどれがシークエンシングプライマーに付加されるかを検出することにより、シークエンシングプライマーに付加された対応するヌクレオチド類似体を同定でき、その相補的な性質により、ヌクレオチド類似体が相補する標的核酸の塩基を決定できる。これが達成されると、シークエンシングプライマーに付加されたヌクレオチド類似体にはもはや、その標識を保存することは必要ではない。実際、既に配列決定された標的核酸中の塩基に相補するヌクレオチド類似体上の標識の連続的な存在は、引き続きプライマーに付加されたヌクレオチド類似体の検出を妨げる可能性が高い。従って、図2Cに示されるように、検出後、シークエンシングプライマーに付加された標識を除去する。これは好ましくは、付加的なヌクレオチド類似体がオリゴヌクレオチドプライマーに取り込まれる前に行う。
【0050】
図2A〜Cにて説明される一連の段階を繰り返すことにより、シークエンシングプライマーは伸長し、その結果、標的核酸の全長配列を決定できる。図2A〜Cにて示される固定化の態様は、図1Aにて示されるものであり、図2A〜Cにて示される一連の段階を実施するために、図1B〜Cにて示される代替の固定化態様を、同様に使用できる。
【0051】
図2A〜Cの拡散、取り込み、および除去の段階の実施において、ヌクレオチド類似体をシークエンシングプライマーに付加させるために適切な成分を含む伸長培地を使用する。適切な伸長培地は、例えば50 mM Tris-HCl、pH8.0、25 mM、MgCl2、65 mM NaCl、3 mM DTT(これはシーケナーゼ(Sequenase)、T7変異体DNAポリメラーゼの製造業者により推奨される伸長培地組成である)、および配列の同定を行うために適切な濃度のヌクレオチド類似体を含有する溶液を含む。単鎖結合タンパク質のようなアクセサリータンパク質を含む、または含まない、これに適切な他の培地および他のポリメラーゼが可能である。ポリメラーゼが活性をもつ他の温度を用いることができるが、好ましくは、多くの熱失活性のポリメラーゼについては、37℃にて伸長段階を実行する。
【0052】
前述のように、標識されたヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加されると、どの型のヌクレオチド類似体がシークエンシングプライマーに付加されたか、および結果的に、標的核酸の相補的塩基が何であるかを決定するため、付加された部分の特定の標識を同定しなければならない。付加された全体の標識がどのように決定されるかは、使用される標識の種類に依存する。本発明の好ましい態様については、同定段階の検討は蛍光部分を有するヌクレオチド類似体の使用に制限される。しかし、他の適切な標識は、発色団、酵素、抗原、重金属、磁気プローブ、色素、りん光群、放射性物質、化学発光部分、散乱または蛍光ナノ粒子、ラマンシグナル発生部分、および電気化学的検出部分を含む。そのような標識は当技術分野において既知であり、例えば、本明細書に参照として組み入れられる、プロバー(Prober)ら、Science 238:336〜41(1997);コネル(Connell)ら、BioTechniques 5(4):342〜84(1987);アンソージ(Ansorge)ら、Nucleic Acids Res. 15(11):4593〜602(1987);およびスミス(Smith)ら、Nature 321:674(1986)にて開示されている。発色団、蛍光団、蛍光標識、ナノ粒子、またはラマンシグナル群のような幾つかの場合においては、標識を検出するために、反応部位に活性化放射を受けさせることが必要である。この手順は蛍光標識の場合について以下にて詳細に検討される。蛍光標識の検出のために適切な技術は時間分解型遠隔場顕微分光、近接場マイクロ分光、蛍光共鳴エネルギー移動の測定、光変換、および蛍光寿命の測定を含む。スペクトル波長識別、蛍光寿命の測定および分離、蛍光団同定、ならびに/またはバックグラウンド抑制により、蛍光団同定を達成できる。蛍光団同定および/またはバックグラウンド抑制は、励起モードと照射源、およびその組合せの間の迅速な切替により容易にすることができる。
【0053】
図3A〜Bは、本発明の配列決定手順を実施するために使用される一連の段階(図2に概説される)中における蛍光シグナル/時間のプロットを示す。本質的には、この手順においては、識別可能な各標識について同時に行う蛍光の経時的追跡の分析により、取り込まれたヌクレオチド類似体は取り込まれていないもの(観察容量を通って無作為に拡散する、または流体力学的または電気泳動の流動により、それを通って対流される)と識別される。これは、取り込まれた標識の連続した安定な蛍光(以下に議論される機構により除去されるまで)を、遊離蛍光団の断続的発光から識別する、光子バースト記録および時間分解型蛍光相関分光により達成される。本明細書に参照として組み入れられる、マッジ(Magde)ら、「反応系における熱力学的揺らぎ−蛍光相関分光による測定(Thermodynamic Fluctuations in a Reacting System-Measurement by Fluorescence Correlation Spectroscopy)」、Phys.Rev.Lett. 29:705〜708(1972)、カスク(Kask P.)ら、「蛍光‐強度分布分析および生体分子検出技術におけるその適用(Fluorescence-Intensity Distribution Analysis and its Application in Biomolecular Detection Technology)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 96:13756〜13761(1999)、およびエッゲリング(Eggeling)ら、「選択的蛍光分光による、単分子の構造力学の調査(Monitoring Conformational Dynamics of a Single Molecule by Selective Fluorescence Spectroscopy)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95:1556〜1561(1998)を参照のこと。全ての検出チャネルの経時的追跡を組合せることにより、配列は推定することができる。
【0054】
図3Aは、4つの異なる塩基についての蛍光検出の4つの異なるチャネルを仮定した、図2Aの拡散段階中のみにおける蛍光シグナル/時間のプロットを示す(例:光学フィルターを通して分離できるような、各々異なる蛍光放射スペクトルをもつ4つの異なる標識の使用による)。図3Aにおける各ピークは、異なる色のピーク(図3Aにおいては異なる線種により示される)を形成する、異なる標識により識別される各々異なるヌクレオチド類似体と共に、観察容量におけるヌクレオチド類似体の存在の結果として得られた蛍光バーストを表す。これらのピークの幅の狭さは、ヌクレオチド類似体が、観察容量を通って自由に拡散または流動しているため、配列決定の活性部位の近傍において短い滞留時間をもつことを示唆する。核酸重合酵素の活性部位に一過的に結合する不適正対合ヌクレオチド類似体、およびそれに引き続く酵素による取り込みの拒絶の場合、同様のピークの幅が予測される。
【0055】
図3Bは、図2B〜Cの取り込み段階およびそれに続く除去段階中の蛍光シグナル/時間のプロットを示す。図3Aにおけるように、図3Bの各ピークは、異なる色のピーク(図3Bにおいては異なる線種により表される)を生じさせる、異なる標識により識別される、各々異なるヌクレオチド類似体と共に、ヌクレオチド類似体の存在を示す。図3Bの幾つかのピークの幅の狭さはまた、伸長培地中にて可動性のままであり、シークエンシングプライマーを伸長しない、ヌクレオチド類似体に関連するものである。図3Aについて説明されたように、これらのヌクレオチド類似体は配列決定の活性部位の近傍に短い滞留時間を有するため、このような狭いピークが生じる。一方、より幅広いピークが、活性部位に鋳型核酸分子上の相補的な塩基をもち、シークエンシングプライマーの伸長を担うヌクレオチド類似体に対応する。それらの固定化の結果、伸長する核酸鎖において、取り込み中および取り込み後に観察容量中に残るため、そのヌクレオチド類似体はより幅広いピークをもち、ゆえに蛍光を発し続ける。連続する蛍光を除去する、その後の除去段階の結果、これらのシグナルは時間が経つにつれ消失し、その後の取り込みイベントの同定を行う。
【0056】
図3Bにおいて左から右へ移ると(即ち、時間が経つにつれ)、より幅広いピークの配列が、鋳型核酸分子の配列の相補物に対応する。図3Cは、例えば蛍光の短いバーストを検出し、それらを最終アウトプットでは廃棄するようなコンピュータープログラムにより達成できる、図3Bの最終アウトプットを示す。そのようなふるい分けの結果、固定化されたヌクレオチド類似体により生じたピークのみが存在し、鋳型核酸分子の配列相補物に対応する配列へと変換される。この相補的配列はここではATACTAであり、そのため、配列決定される鋳型核酸分子の塩基の順番はTATGATである。
【0057】
蛍光標識は様々な位置においてヌクレオチドに付着できる。付着はヌクレオチドへの架橋リンカーを用いて、または用いないで行うことができる。蛍光団を用いた核酸の標識のために従来的に使用されるヌクレオチド類似体は、ヌクレオチド基質分子の塩基に付着された蛍光部分を有す。しかし、それは糖部分(例:デオキシリボース)またはαリン酸へも付着できる。この種の連結は、核酸の内部構造を損なわない一方、塩基に付着された蛍光団は合成された分子の二重らせんを歪め、続いてさらなるポリメラーゼ活性を阻害することが観察されたため、αリン酸への付着は好都合であることが証明される可能性がある。本明細書に参照として組み入れられる、ズー(Zhu)ら、「異なる長さのリンカーと共に蛍光ヌクレオチドを用いて直接標識したDNAプローブ(Directly Labelled DNA Probes Using Fluorescent Nucleotides with Different Length Linkers)」、Nucleic Acids Res. 22:3418〜3422(1994)、およびダブリー(Doublie)ら、「2.2オングストローム分解能における、バクテリオファージ T7 DNA複製複合体の結晶構造(Crystal Structure of a Bacteriophage T7 DNA Replication Complex at 2.2 Ångstrom Resolution)」、Nature 391:251〜258(1998)を参照のこと。ゆえに、RNAポリメラーゼについての架橋試験のために(NTPの形で)使用された、チオール基を含むヌクレオチドは、適切なリンカーおよび蛍光標識の付着のために、主要骨格分子とすることができる。本明細書に参照として組み入れられる、ハナ(Hanna)ら、「新規光架橋CTP類似体の合成および特徴付けおよび、大腸菌およびT7-RNAポリメラーゼの光アフィニティー標識法におけるその使用(Synthesis and Characterization of a New Photo-Cross-Linking CTP Analog and Its Use in Photoaffinity-Labeling Escherichia-coli and T7-RNA Polymerases)」、Nucleic Acids Res. 21:2073〜2079(1993)を参照のこと。
【0058】
蛍光団がヌクレオチドの塩基に付着される従来的な場合においては、典型的には、フルオレセインのような、比較的大きなサイズの蛍光団を与えられる。しかし、より小さな蛍光団、例えばピレンまたはクマリン族からの色素は、ポリメラーゼのより高い許容性があるという点から有利であることを証明する可能性がある。実際、酵素はフルオレセイン標識dNTPを用いて対応する合成を実行できないが、一方、ある種の塩基が、T7 DNAポリメラーゼを用いて対応するクマリン標識dNTPにより完全に置換された、7,300塩基対長のDNA断片の合成が可能である。
【0059】
これら全ての場合において、蛍光団は合成中に伸長する核酸分子に取り込まれる基質分子の部分に付着したままである。本発明の塩基配列決定のスキームに係る蛍光団の検出および同定後の、蛍光団除去のための適切な方法は、蛍光団の光退色またはヌクレオチドおよび蛍光団の光化学的切断、例えばリンカー中の化学結合の切断を含む。レーザー力により比率を調整できる、既に取り込まれたヌクレオチドの蛍光標識の除去は、核酸鎖上のシグナルの蓄積を妨げ、それにより、ヌクレオチド同定のためのバックグラウンドに対するシグナルの比率を最大化する。このスキームについて、本発明の目的は、各標識から全ての光子を検出し、その後、次なる同定段階のための充分な、ノイズに対するシグナルの値を維持するため、次なる多少のヌクレオチドが取り込まれる前に、または取り込まれた直後に、光退色または光化学的に切断することである。本発明の過程の除去段階は、配列決定反応複合体を損なわずに標識を除去するのに適切な、任意の手順により実施することができる。
【0060】
合成中核酸の中に残る蛍光標識に加え、蛍光物質により標識された、またはさもなくば、ヌクレオチドのβリン酸またはγリン酸のいずれかに付着された標識を有するヌクレオチドも、本発明の配列決定手順において使用できる。類似化合物は、以前、NTP類似体の形で合成され、RNAポリメラーゼを含む様々な酵素のための優れた基質であることが示された。本明細書に参照として組み入れられる、ヤーブロー(Yarbrough)ら、「DNA依存のRNAポリメラーゼのための蛍光ヌクレオチド基質の合成および特性(Synthesis and Properties of Fluorescent Nucleotide Substrates for DNA-dependent RNA Polymerase)」、Journal of Biological Chemistry 254:12069〜12073(1979)、およびチャッテージ(Chatterji)ら、「RNAポリメラーゼの活性部位および調節部位の蛍光分光分析(Fluorescence Spectroscopy Analysis of Active and Regulatory Sites of RNA Polymerase)」、Methods in Enzymology 274:456〜479(1996)を参照のこと。DNA合成の間、αリン酸およびβリン酸の間において、ヌクレオチドにおける結合切断が生じ、重合後、活性部位からβリン酸およびγリン酸を放出させ、また、形成されたピロリン酸は引き続き、拡散する、または核酸から対流される。本発明に従って、ヌクレオチドの結合およびその核酸への取り込みイベントを、不適正対合したヌクレオチドの結合(およびそれに続く拒絶)に関するイベントと識別することが可能である。なぜなら、これら2つのイベントの速度定数は著しく異なるからである。DNA重合の連続する基本段階における律速段階は、正しい(対合した)ヌクレオチドが活性部位に結合されることが酵素により確立された後にのみ起こる、ポリメラーゼの構造的変化である。ゆえに、ヌクレオチド類似体の不適正対合した結合のイベントは、正しい塩基の取り込みのイベントよりも著しく短い。本明細書に参照として組み入れられる、パテル(Patel)ら、「エキソヌクレアーゼ欠損変異体の完全な特徴付けを含む、プロセシブな(processive)DNA複製の前定常状態動力学的分析(Pre-Steady-State Kinetic Analysis of Processive DNA Replication Including Complete Characterization of an Exonuclease-Deficient Mutant)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)およびウォン(Wong)ら、「DNA複製忠実度についての誘導適合動力学的機構:単一ターンオーバー動力学による直接測定(An Induced-Fit Kinetic Mechanism for DNA Replication Fidelity: Direct Measurement by Single-Turnover Kinetics)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)を参照のこと。結果として、ヌクレオチド類似体のβリン酸またはγリン酸に付着された標識の蛍光は、ヌクレオチド類似体が重合される場合、より長い時間ポリメラーゼの近傍に残り、図3について上記に説明されたスキームに従って識別できる。取り込み後、標識は切断したピロリン酸と共に拡散消失する。この手順は図4に示される。図4Aは1-アミノナフタレン-5-スルホン酸 (AmNS)-dUTP、γリン酸に付着された蛍光標識をもつヌクレオチド類似体の代表的な例の構造を、点線により示される切断位置と共に示す。図4B〜Dは図2と類似して、ピロリン酸-蛍光団複合体の取り込みおよび放出の連続した段階を示す。このスキームについての蛍光の経時的追跡は図3に示されるものと同じである。ゆえに、これは蛍光団が最初に核酸に取り込まれ、引き続いて標識の同定後に光退色または光化学的切断によりシグナルが除去される、上記に概説されたものへの代替スキームである。
【0061】
核酸重合酵素の近傍にて拡散または流動する、取り込まれなかったヌクレオチドのバックグラウンドに対し、取り込まれる、特定の蛍光標識されたヌクレオチド類似体の同定は、ある蛍光標識されたdNTP(例:クマリン-5-dGTPまたはAmNS-UTP)については、共有結合の状態にある塩基の存在は標識の蛍光を著しく減少する(即ちクエンチングする)という観察結果を用いることにより、さらに増強することができる。本明細書に参照として組み入れられる、ダー(Dhar)ら、「堆積およびクエンチングされたウリジンヌクレオチド蛍光団の合成および特徴付け(Synthesis and Characterization of Stacked and Quenched Uridine Nucleotide Fluorophores)」、Journal of Biological Chemistry 274:14568〜14572(1999)、およびドラガネス(Draganescu)ら、「新規の蛍光基質および蛍光性基質を用いて調べたFhit-ヌクレオチド特異性(Fhit-Nucleotide Specificity Probed with Novel Fluorescent and Fluorogenic Substrates)」、Journal of Biological Chemistry 275:4555〜4560(2000)を参照のこと。分子が溶液中において単独で強く蛍光を放たないよう、蛍光団と塩基の間の相互作用は蛍光をクエンチングする。しかし、そのような蛍光ヌクレオチドが核酸に取り込まれた場合、蛍光団はヌクレオチドから切断され、蛍光はもはやクエンチングされない。ヌクレオチドのβリン酸またはγリン酸への連結の場合については、ポリメラーゼの酵素活性を通してこれは自然に起こり、塩基に連結された蛍光団の場合においては、これは光化学的切断により達成されなければならない。切断された蛍光団からの蛍光シグナルは、はるかに明るく、ポリメラーゼ/核酸複合体の近傍において生じ得る複数のクエンチングされた分子のバックグラウンドを超えて検出することができる。
【0062】
さらに、溶液中拡散するクエンチングされた分子の蛍光の寿命は、切断された分子の寿命よりもはるかに短いため、パルス照射およびゲート時間光子検出を使用することにより、バックグラウンドに対するシグナルのさらなる増強が得られる。これは図5に表され、クマリン単独およびクマリン-dGTPの各々についての時間分解型蛍光減衰曲線を示す。クマリン蛍光はdGTPへの共有結合においてクエンチングされるため、寿命は遊離色素単独より非常に短く、これは平均的に蛍光光子は、例えばパルスレーザーにより生み出されるような励起パルスの、より直後に発せられることを意味する。例えば変動遅延線成分(幅Tの調整可能な遅延時間と共に交差斜線をした棒により示される)を用いて達成できる、検出からパルス直後のこの時間的間隔を除去することにより、遅滞減衰成分から発せられた蛍光、この場合は遊離色素(または、配列決定スキームによっては、切断された蛍光団)のみが検出されるように、またそのため、取り込まれない分子からのバックグラウンドがさらに減少するように、検出器の反応ウィンドウをゲートで調節することができる。本明細書に参照として組み入れられる、サーヴェドラ(Saavedra)ら、「ゲル電気泳動により分離された、テルビウム標識されたデオキシリボ核酸の時間分解型蛍光検出(Time-Resolved Fluorimetric Detection of Terbium-Labelled Deoxyribonucleic Acid Separated by Gel Electrophoresis)」、Analyst 114:835〜838(1989)を参照のこと。
【0063】
ヌクレオチドはまた、ラジカル形成に関わる光化学反応により蛍光団に変換できる。この技術は、セロトニンおよび他の生物学的に関連する分子と共に使用された。本明細書に参照として組み入れられる、シアー(Shear)ら、「セロトニン溶液による多光子励起した可視的放出(Multiphoton-Excited Visible Emission by Serotonin Solutions)」、Photochem.Photobiol. 65:931〜936(1997)を参照のこと。理想的な光物理学的状況は、各ヌクレオチドにそれ自身の蛍光シグナルを発するようにさせるものである。あいにく、核酸および個々のヌクレオチドは、非常に少量の量子収量で深い紫外線の照射においてのみ弱く発光する弱い蛍光団である。しかし、天然の紫外線蛍光団セロトニン(5HT)は、2つ多い光子の吸収において明るい緑色蛍光を発する複合体を形成するように他の基底状態分子と反応するラジカル形成のための、4赤外線光子の同時の吸収により、光イオン化できる。その後の知見から、多くの小さい有機分子がこの多光子変換を受ける可能性があることが示された。
【0064】
核酸成分による、および近傍の蛍光団また共鳴エネルギー移動による、蛍光団の既知のクエンチングは、ポリメラーゼにより許容されるマーカーを提供することができる。本明細書に参照として組み入れられる、フューレイ(Furey)ら、「クレノウ断片に結合したDNA基質の構造を調べるための、蛍光共鳴エネルギー移動の使用(Use of Fluorescence Resonance Energy Transfer to Investigate the Conformation of DNA Substrates Bound to the Klenow Fragment)」、Biochemistry 37:2979〜2990(1998)およびグレイザー(Glazer)ら、「DNA分析のためのエネルギー移動蛍光試薬(Energy-Transfer Fluorescent Reagents for DNA Analyses)」、Curr.Op.Biotechn. 8:94〜102(1997)を参照のこと。
【0065】
本発明の最も有効な構成においては、図3Cにて表示されるように、4つの異なるチャネルの組合せたアウトプットから配列が推定され得るように、各塩基はそれ自身の標識により識別されるべきである。これは例えば、異なる蛍光団の標識としての使用および、光学フィルターにより分離される4つの異なる検出チャネルの使用により達成できる。蛍光寿命のような、または異なる塩基についての幾つかのパラメータの任意の組合せのような、放出波長バンド以外のパラメータによる標識の識別もまた可能である。蛍光団の塩基との可能な相互作用により、1つより多くの塩基を識別するために同じ蛍光団を使用することは可能である。1例として、クマリン-dGTPはクマリン-dCTPよりはるかに短い蛍光寿命をもち、そのため、蛍光標識として同じ化学的物質をもつにも関わらず、2つの塩基は配列決定スキームの同定段階にての蛍光寿命におけるその差異により識別できる。
【0066】
配列決定手順はまた、4つ未満の標識を用いて行うこともできる。3つの標識を用い、(1)4つ目の塩基が他の標識のシグナルの間の一定の暗時間遅延として検出できる場合、または(2)この場合においては、各塩基対から陽性の蛍光シグナルを得るため、両核酸鎖の配列決定によって明白に、核酸鎖の配列決定から配列は推定できる。2つの標識を使用するその他の可能なスキームは、1つの蛍光団にて標識した1塩基および、他の蛍光団にて標識した他の3塩基を用いるものである。この場合においては、他の3塩基は配列を与えないが、他の蛍光団により同定される特定の塩基の間に生じる多くの塩基のみを与える。異なる配列決定反応における異なる塩基を通してこの同定蛍光団を循環させることにより、連続した塩基配列解析から全長配列が推定できる。2標識のみを用いるこのスキームを拡大することにより、1つの塩基配列解析当たり、標識した塩基を2つのみ用いて完全な配列を得ることでさえも可能である。参照として本明細書に組み入れられる、ソーアー(Sauer)ら、「ミクロキャピラリーにおいて光ファイバーから放出された、単色素標識したモノヌクレオチド分子の検出および同定:新規単分子DNA 配列決定技術に向けての第一段階(Detection and Identification of Single Dye Labelled Mononucleotide Molecules Released From an Optical Fiber in a Microcapillary: First Steps Towards a New Single Molecule DNA Sequencing Technique)」、Phys.Chem.Cehm.Phys. 1:2471〜77(1999)により示された通りに、2標識の可能な組合せを用いて多数の配列決定反応を実施した場合に、2標識のみを用いて配列を決定できる。ゆえに、本発明の過程の実施において、長く連なった核酸を少なくとも2つの異なる標識にて標識することが望ましい。
【0067】
核酸ではなくポリメラーゼを支持体に付着することにより配列決定を実施する場合、核酸/タンパク質複合体が離れないように、酵素が長く連なった核酸を合成することが重要である。これはプロセシブな核酸合成と称される。少なくともT7 DNAポリメラーゼおよびクマリン-5-dCTPにより完全に置換されたdCTPを用いた系については、合成は少なくとも7300塩基対に渡って完全にプロセシブである(即ち、1つのポリメラーゼ分子はssDNA鋳型に結合し、一度も離れることなく全長の第二の鎖を作製する)。1つの標識を用いて、塩基対解離およびその塩基の配列プロフィールと共にポリメラーゼを実時間で観察することにより、他の塩基については知ることなく、本発明の過程を実施することができる。従って、上述のように、より迅速および正確に行うためには、4つの異なる標識の使用が最も望ましい。しかし、与えられた配列環境における個々の塩基についての取り込み率のような、ヌクレオチドの単分子レベルでの取り込みの測定からの情報は、合成される配列のさらなる特徴付けの方法を提供できる。本発明の第二の操作方法についてのプロセシブな合成の確証に関して、核酸重合酵素単独で使用するよりもさらにプロセシブな核酸/タンパク質複合体を作製するためにアクセサリータンパク質を使用できる。例えば、最適条件下においては、T7 DNAポリメラーゼは少なくとも10,000塩基に渡ってプロセシブであり、一方T7ヘリカーゼ/プライマーゼタンパク質複合体においては、プロセシビティは100,000に渡るまで増加する。参照として本明細書に組み入れられる、ケルマン(Kelman)ら、「DNAポリメラーゼのプロセシビティ:2つの機構、1つの目標(Processivity of DNA Polymerases: Two Mechanisms, One Goal)」、Structure 6:121〜125(1998)を参照のこと。単鎖結合タンパク質もまた適切なアクセサリータンパク質である。ポリメラーゼのプロセシビティ値は限界基質濃度において減少することが知られているため、プロセシビティは特定のポリメラーゼについての飽和限界以下のヌクレオチド類似体の濃度において特に重要である。参照として本明細書に組み入れられる、パテル(Patel)ら、「エキソヌクレアーゼ欠損変異体の完全な特徴付けを含む、プロセシブなDNA複製の前定常状態の動力学的分析(Pre-Steady-State Kinetic Analysis of Processive DNA Replication Including Complete Characterization of an Exonuclease-Deficient Mutant)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)を参照のこと。プロセシビティを保証するための他の可能性は、基質の非存在下または非常に低濃度において(例えば伸長するRNAポリメラーゼ/DNA複合体の場合におけるように)、完全にプロセシブなポリメラーゼの開発または発見である。プロセシビティが充分高くない場合、ポリメラーゼおよび標的核酸分子の両方を支持体上で互いの近傍に付着することが可能である。これにより、配列決定複合体がときどき離れてしまうような場合に備え、複合体の再構成およびDNA合成の継続が容易になる。非プロセシブなポリメラーゼもまた、本発明に従って標的核酸が支持体に結合される場合について使用できる。ここで、同じまたは異なるポリメラーゼ分子は複合体を再構成でき、複合体の解離後、合成を継続できる。
【0068】
本発明を実施する1つのアプローチは図6にて示される。図6Aは、プライマーが結合した標的核酸分子複合体が固定化される表面2に位置する試薬溶液Rを用いた、配列決定のための系を示す。ポリメラーゼ伸長の活性部位近傍の小さい領域に照射を制限することにより、例えばレンズまたは光ファイバー6を用いることによって、活性化放射の焦点を当てることにより、照射領域内に位置するため、伸長する核酸鎖に取り込まれるヌクレオチド類似体が検出される。図6Bは、照射領域における重合複合体と共に、装置の拡大部分を示す。溶液R中の周辺領域におけるヌクレオチド類似体数が一般に照射領域の外側となり、検出されないように、基質濃度を選択する。
【0069】
図6Aにて示されるように、照射源10(例:レーザー)は、励起放射を、レンズ6および表面2を通して、二色性ビームスプリッタ8により、固定化されたプライマーを結合済みの標的核酸複合体に指向させる。これにより複合体に固定化された標識が励起され、その結果表面2およびレンズまたは光ファイバー6を通って帰還する放射が発される。二色性ビームスプリッタ8は、発された放射を、放出の種類を同定する検出器(または数個の検出器の列)12まで通過させる。検出された放出情報はその後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定され、その同一性が保存されるコンピューター14に指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができると考えられる。上記に説明されるように、検出に対応するアウトプットは再度、図3にて示されるスキームに対応する。
【0070】
本発明の他の態様に従って、蛍光の照射および検出は、励起光を運ぶ第一の単一モード光ファイバー末端において結合した核酸のための支持体を作製することにより達成できる。蛍光光子の収集のために、本ファイバーおよび/または第二の光ファイバーを使用することができる。第一の単一モード光ファイバーを通して適切な励起波長の放射を伝達することにより、標識は蛍光を放ち、適切な蛍光光周波数を発する。発された蛍光は部分的に第二の光ファイバーへと伝達され、ファイバー上の食刻回折格子によって行われるように、スペクトルによって分けられる。帰還した光スペクトルは特定の結合したヌクレオチド類似体を同定する。導波管照射または、例えば内部全反射のようなエバネッセント波照射の使用のような、光を反応部位に運搬または収集するための他の技術が考えられる。1つまたは多くの光子励起を生み出す、1つまたは幾つかの照射源を使用できる。適切な検出器は、アバランシュフォトダイオードモジュール、光電子増倍管、CCD カメラ、CMOS チップ、または数個の検出器の列もしくは組合せを含む。
【0071】
バックグラウンド比率に対し許容可能なシグナルに、およびポリメラーゼ周辺でただ拡散する特定のヌクレオチド類似体の識別能に相関する、観察容量内においてヌクレオチド類似体が存在する濃度には上限がある可能性があるため、本発明の配列決定手順は1つ以上のヌクレオチド類似体の飽和限界より低い濃度にて行わなければならない可能性がある。
【0072】
例えば、従来的な回折制限光学法が蛍光の検出のために使用される場合、ナノモル範囲の基質濃度が許容できるバックグラウンドシグナルについて使用されなければならないように、観察容量は大きい。これは、バックグラウンド蛍光の寄与を「電気的に」または物理的に減少するため、上記にて議論されたような(図5)寿命による識別、または以下にて説明されるような容量制限技術のような、バックグラウンドを減少する他の方法が「電気的に」もしくは物理的にバックグラウンド蛍光の寄与を減少させるために使用されない限り、ポリメラーゼの通常のkm(通常μMの範囲)よりもはるかに低い。従来的に焦点を当てたレーザー光線においては、約0.2 flに対応して、焦点容量は約0.2μm3(直径0.5μm、軸方向において1.5μm)である。1つの蛍光ヌクレオチド類似体のみを、任意の時点において励起容量内に平均的に存在させるため、基質濃度は、DNAポリメラーゼのkm値(約1〜2μM)よりもはるかに低い約10 nMまで減少させなければならない。参照として本明細書に組み入れられる、ポールスキー(Polesky)ら、「大腸菌 からのDNAポリメラーゼIのクレノウ断片のポリメラーゼ活性に重要な残基の同定(Identification of Residues Critical for the Polymerase-Activity of the Klenow Fragment of DNA-Polymerase-I from Escherichia-coli.)」、J.Biol.Chem. 265:14579〜14591(1990)およびマクルール(McClure)ら、「大腸菌デオキシリボ核酸ポリメラーゼIの定常状態動力学的パラメータおよび非プロセシビティ(The Steady State Kinetic Parameters and Non-Processivity of Escherichia-coli. Deoxyribonucleic Acid Plymerase I)」、J.Biol.Chem. 250:4073〜4080(1975)を参照のこと。ゆえに、基質の濃度がkmよりもはるかに低い場合、核酸合成のプロセシビティ値は上述の可能性のうち1つにより確保されなければならない。または、観察容量が減少できる場合、より高い基質濃度が許容され、それにより自然にプロセシビティが増加する。ゆえに、本発明の1つの目的は、標識された遊離ヌクレオチドにより生じるバックグラウンド蛍光を減少または回避し、プロセシビティを増加するための、観察容量の効果的な減少と関連している。これは数多くの方法において達成できる。
【0073】
バックグラウンドノイズを減少させるための1つのアプローチは、小さな曲率半径によって対象物近辺の電磁場増強に関わる。
【0074】
いわゆる「アンテナ効果」により、金属チップのような鋭利な物体の末端において電磁放射は著しく増強される。この手順を用い、増強される容量はおよそチップの直径に近い直径をもつ球体に対応する。参照として本明細書に組み入れられる、サンチェス(Sanchez,E.J.)ら、「金属チップを用いた2つの光子の励起に基づく近接場蛍光顕微鏡(Near-Field Fluorecence Microscopy Based on Two-Photon Excitation with Metal Tips)」、Phys.Rev.Lett. 82:4014〜17(1999)において、この技術は開示される。
【0075】
本発明の過程の実施において、核酸重合酵素を、例えば従来的な対物レンズによってレーザー光が指向する金属チップの末端に配置する。効果的な被照射容量はポリメラーゼ自身のサイズの順にでき、実際には溶液中で拡散する蛍光ヌクレオチドからの蛍光は検出されない。さらに、そのような小さな容量を通る拡散分子の滞留時間は著しく短い。しかし、特定の分子がこの小さな被照射容量内に留まる(上記に説明されるように除去されるまで)ため、蛍光ヌクレオチドの取り込みは、蛍光の比較的長いバーストとして認められる。
【0076】
本発明の実施する1つのアプローチは、図7A〜Bにて示される。図7Aは、プライマーが結合した標的核酸分子複合体が固定化される表面2における、試薬溶液Rと共に電磁場増強を用いた配列決定のための系を示す。図7Bにて示されるように、ポリメラーゼをもつ金属チップを試薬溶液R中に配置し、レンズ6による照射においてポリメラーゼ周辺に照射の小さい領域を作成する。ポリメラーゼ伸長の活性部位近傍のこの小さい領域に照射を制限することにより、それらは照射領域内に位置するため、伸長する核酸鎖へ取り込まれるヌクレオチド類似体が検出される。その一方で、試薬溶液R中の周辺領域のヌクレオチド類似体は一般にこの領域の外側にあり、検出されない。
【0077】
図7Aに示されるように、照射源10(例:レーザー)は、チップに並行したゼロでない偏光成分を用いた1つまたは多数の光子励起放射を、レンズ6および表面2を通し、二色性ビームスプリッタ8によって、固定化されたプライマーが結合済みの標的核酸複合体に指向させる。これは複合体に固定化された標識を励起し、その結果、表面2およびレンズ6を通って帰還する放射を発する。二色性ビームスプリッタ8は発された放射を、放出の種類を同定する検出器12まで通過させる。検出された放出情報はその後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定され、その同一性が保存されるコンピューター14へ指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができる。上記に説明されるように、検出に対応するアウトプットは再度、図3にて示されるスキームに対応する。以前に議論された場合との主要な差異は、観察容量は非常に小さいため、焦点容量によって無作為にヌクレオチド類似体を拡散することにより生じる短いピークはここでは著しく短いということである。ゆえに、この観察容量を減少させるアプローチは、取り込まれたヌクレオチド対取り込まれないものに関わる、時間分解の増強にも帰結する。これは以下にてさらに議論される容量制限の他の可能性の全てについて真実である。
【0078】
この手順の実施において、様々な材料、例えばプラチナ、銀、または金のような金属からチップを形成することができる。チップのファブリケーションを、例えばワイヤーの電気化学的腐食またはイオンビームマイリングにより達成できる。参照として本明細書に組み入れられる、サンチェス(Sanchez,E.J.)ら、「金属チップを用いた2つの光子の励起に基づく近接場蛍光顕微鏡(Near-Field Fluorecence Microscopy Based on Two-Photon Excitation with Metal Tips)」、Phys.Rev.Lett. 82:4014〜17(1999)を参照のこと。
【0079】
核酸重合酵素は、チップを核酸重合酵素分子の溶液に浸し、電場を核酸重合酵素を誘引する負荷をもってチップに適用すること、または他の連結技術(例:リンカー、抗体等を用いて)のいずれかにより、チップの末端に付着できる。この配列決定スキームのために電磁場増強を使用する代替のモードは、チップの末端に物理的に付着された複合体によるよりも、むきだしのチップを固定化された核酸/核酸重合酵素複合体の近傍に配置することによるものである。複合体の集団は、例えば、スライドグラス上に固定化でき、チップを、配列決定に有用な複合体が見つかるまで表面上をスキャンすることができる。このナノポジショニングの実施のために適切な技術は、走査型プローブ顕微鏡の分野において開発された。
【0080】
本発明の配列決定法の実施中にバックグラウンドノイズを減少するための他のアプローチは、図8A〜Bに示されるように、近接場照射の使用に関わる。本明細書おいて、図8Bにて表されるように、プライマーが結合した標的核酸複合体が、表面2上に適用される不透明層16と共に、表面2上にて固定化される。しかし、小孔18が不透明層16に食刻される。下から照射された場合、孔18の直径が光の波長の半分より小さいため、光は孔を通って試薬溶液Rまで完全に貫通できない。しかし、孔18における表面2の真上に光の小領域を作るいくらかの漏出があり、いわゆる近接場励起容量を作成する。図8Bにて示されるように、プライマーが結合した標的核酸複合体は、孔18中に位置し、下から照射される。照射をこの小さな近接場領域に制限することにより、照射領域内に位置する、取り込まれたヌクレオチド類似体が検出される。その一方で、プライマーの伸長を担わないヌクレオチド類似体の量は、孔18のサイズが小さいためその数が少なく、検出される狭い範囲までは、上記に説明されるように取り込まれたヌクレオチド類似体から容易に識別できる。
【0081】
本態様を実施するための系は図8Aにて示される。照射源10(例:レーザー)は、二色性ビームスプリッタ8により、レンズ6および表面2を通して、固定化されたプライマーが結合済みの標的核酸複合体に対して励起放射を指向させる。これは複合体に固定化された標識を励起し、その結果表面2およびレンズ6を通って帰還する放射を発する。二色性ビームスプリッタ8は発された放射を、放出の種類を同定する検出器12まで通過させる。検出された放出情報は、その後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定され、その同一性が保存されるコンピューター14に指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができる。
【0082】
近接場励起容量を使用する適切な代替法として、近接場容量はまた、通常走査型近接場顕微鏡にて使用される、1つまたは多数の先細の光ファイバーの使用によっても生成することができる。
【0083】
ナノファブリケーションは、バックグラウンド蛍光レベルを減少させるため、反応容量を限定することにおいて有用なその他の技術である。これはナノチャネル内の領域への励起容量の制限に関わる。ここにおいて、制限は2次元または3次元におけるものが可能である。遠隔場焦点光学を用いて到達できる焦点容量よりもはるかに小さな容量の反応容器を、シリコンまたは融合無水ケイ酸ウェーファー上にて光学的に透明な材料から組み立てられる。参照として本明細書に組み入れられる、ターナー(Turner)ら、「統合最上層をもつ、DNA電気泳動のための固体人工ゲル(Solid-State Artificial Gel for DNA Electrophoresis with an Integrated Top Layer)」、Proceedings of SPIE: Micro- and Nano- Fabricated Structures and Devices for Biomedical Environmental Applications 3258:114〜121(1998)を参照のこと。この技術はチャネルの実用空洞を定義するため、ポリシリコン電気防食用層を利用する。参照として本明細書に組み入れられる、スターン(Stern)ら、「化学センサーのためのナノチャネルファブリケーション(Nanochannel Fabrication for Chemical Sensors)」、J.Vac.Sci.Technol. B15:2887〜2891(1997)、およびシュー(Chu)ら、「完全な孔の大きさおよび高い力学的強度をもつシリコンナノフィルター(Silicon Nanofilter with Absolute Pore Size and High Mechanical Strength)」、Proc.SPIE - Int.Soc.Opt.Eng.(USA)2593:9〜20(1995)を参照のこと。チャネルの床、天井および壁は窒化ケイ素から作製され、パターン化されたポリシリコン電気防食用層上に等角に沈積される。電気防食用層は、その後、高感度湿式化学的腐食により除去され、窒化ケイ素のみを残す。この技術は、幅広い範囲の構造サイズに渡って、精密な限界ディメンション(CD)調節を表した。ポリシリコン層の高さは、全装置に渡って5 nm内にまで管理でき、横ディメンションはサイズを制限され、リソグラフィー技術によってのみ、CD調節が適用される。ナノ構造は標識検出を増強するためにパンクチュエート(punctuate)、針状(acicular)、または共鳴配置を有することが可能である。
【0084】
図9A〜Bは、本発明に係るナノファブリケーション系を示す。図9Bに示されるのは、チャネル壁104および106により作成される制限領域102にのみ位置する試薬Rと、ナノチャネルの断面図の拡大像である。プライマーが結合した標的核酸分子複合体は制限領域102内にのみ位置する。結果として、励起光が制限領域102を通過するとき、取り込まれたヌクレオチド類似体の標識が励起され、伸長するプライマーの配列に特定のヌクレオチド塩基が付加されるように対応して検出および同定される放射を発する。試薬を、制限領域102を通過させることにより、プライマーを伸長しないヌクレオチド類似体の量は、任意の特定の時点において数少ない。そのような可動物の全体が検出される狭い範囲において、それらは上記に説明されたように固定化された部分から容易に識別できる。
【0085】
図9Aは本発明のナノチャネル態様を実施する系を示す。照射源10(例:レーザー)は、レンズ6およびナノチャネル106を通し、二色性ビームスプリッタ8によって、励起放射を、固定化されたプライマーを結合済みの標的核酸複合体に指向させる。これにより複合体に固定化された標識が励起され、その結果、レンズ6を通って帰還する放射が発される。二色性ビームスプリッタ8は発された放射を、放出の種類を同定する検出器12まで通過させる。検出された放出情報はその後、放出に対応するヌクレオチド塩基が同定されその同一性が保存されるコンピューター14に指向される。この手順を多数回行った後、コンピューターは標的核酸分子配列をアウトプットとして生成することができる。
【0086】
図10A〜Bは、試薬を本発明に係るナノファブリケーション制限系に提供するための系を示す。図10Aにおいて、dATP、dCTP、dGTP、dUTP、核酸源を含む試薬および緩衝液は、別々の液体槽に保持され、ナノチャネル202に入る前に試薬が共に混合される多様体200に至る別個の導管を通して連結される。ナノチャネル202の上流または下流へのこの系の構成要素は、ミクロ構造として組合せることができる。ナノチャネル202を迅速に通過させる過程において、試薬は本発明の配列決定手順が実施される反応帯204を迅速に移動する。ナノチャネル202から、残留試薬Rは出口206を通過する。図10Bの系は一般に図10Aのものと同様であるが、前者の系は系を液体槽に連結するパッドと共に単独チップ上にある。特に、各々の試薬のための液体槽は、入口パッド210a〜f経由でチップ208と連結される一方、排出される試薬のための出口はパッド212に連結される。
【0087】
幅75 nm、高さ60 nmのナノファブリケーションチャネルは、優れた光学的透過性をもつように製造され、DNA流動調節のために使用されてきた。ターナー(Turner)ら、「統合最上層をもつ、DNA電気泳動のための固体人工ゲル(Solid-State Artificial Gel for DNA Electrophoresis with an Integrated Top Layer)」、Proceedings of SPIE: Micro- and Nano- Fabricated Structures and Devices for Biomedical Environmental Applications 3258:114〜121(1998)を参照のこと。焦点を当てたレーザー光線のx-ディメンションを約300 nmまで最小化し、y-ディメンションを100 nmのチャネル幅により固定し、核酸合成複合体を深さz=25 nmのチャネルに配置することにより、有効な観察容量を、0.75アトリッターに対応する7.5×10-4μm3まで減少させることができる。ここでは、励起容量内に存在する1つの基質分子のみについての濃度は、2μM、即ち迅速かつ効果的な核酸重合の充分範囲内の基質濃度にまで達する。その上、各々を識別すべき、4つの異なるヌクレオチド類似体があるため、ポリメラーゼのために有効な基質濃度は4倍高い。より小さな有効観察容量が必要とされる場合、テータ顕微鏡におけるように、約90℃の軸角度における2つの対象物の干渉図形の照射により、流動方向のy-ディメンションは約100 nmまで減少させることができる。参照として本明細書に組み入れられる、ステルツァー(Stelzer)ら、「胚および他の大きなスペシメンの観察のための新規の手段:共焦点テータ蛍光顕微鏡(A New Tool for the Observation of Embryos and Other Large Specimens: Confocal Theta Fluorescence Microscopy)」、J.Microscopy 179:1〜10(1995)を参照のこと。
【0088】
標識を励起するために、活性化エネルギーをポリメラーゼ伸長の活性部位近傍(即ち、ポリメラーゼが位置するところ)に集中する。伸長中にこの活性部位が移動する範囲に限り(例:ポリメラーゼによる移動の結果として)、活性化エネルギーの焦点もまた移動する。
【0089】
必要な考察は、蛍光の単光子励起または多光子励起の間における選択である。多光子励起はある大きな利点を提供するが、実行するにはより複雑かつより高価である。超高速固体レーザーにより生じた明るい、10-15秒の赤外パルスからの、2つまたはそれ以上の光子の同時の吸収を使用する多光子励起蛍光は、最も有望なアプローチを提供する。参照として本明細書に組み入れられる、デンク(Denk)ら、「2つの光子のレーザー走査型蛍光顕微鏡(2-Photon Laser Scanning Fluorescence Microscopy)」、Science 248:73〜76(1990)を参照のこと。単分子蛍光に対する感度は機械的に得られ、かなりの正確さで測定可能な単分子についての蛍光寿命を用いて、マイクロセカンドレベルまで一時的に解像可能である。参照として本明細書に組み入れられる、マーツ(Mertz)ら、「2つの光子により励起された蛍光による単分子の検出(Single-Molecule Detection by Two-Photon-Excited Fluorescence)」、Optics Lett.20:2532〜2534(1995)、およびエッゲリング(Eggeling)ら、「選択的蛍光分光による、単分子の構造力学の調査(Monitoring Conformational Dynamics of a Single Molecule by Selective Fluorescence Spectroscopy)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95:1556〜1561(1998)を参照のこと。
【0090】
単分子配列決定のための理想的な蛍光シグナルは、各ヌクレオチドが結合されることによって、識別可能な蛍光の時間分解型バーストから成る。ゆえに、この理想的状況においては、図3にて説明されるように、ヌクレオチドが識別可能な間隔で結合された場合に、色分解蛍光バーストの時間分解型列が得られる。イベントの時間配列の完全な分解はそのため、ヌクレオチド認識のための最良のバックグラウンド減少および信頼性の高い可能性を与える。近年入手可能なポリメラーゼを用い、標識したヌクレオチドは、1ミリセカンド間隔においてよりは速くなく付加される可能性が非常に高いため、各標識ヌクレオチドから検出された全ての蛍光光子は蓄積でき、次の蛍光ヌクレオチドが結合される前に除去することが可能である。実際には重合の全ての分子動力学的段階は確率ポアソン過程に関わるのだが、この理想的なバースト‐ギャップ‐バースト配列は実現される。単独のポアソン過程については、平均遅延はゼロより大きいが、イベント間の最も可能性の高い時間遅延はゼロである。しかし、DNAポリメラーゼによる、単独dNTPのDNAへの取り込み過程は、少なくとも5つの異なるイベントから成る連続した多段階過程である。パテル(Patel)ら、「エキソヌクレアーゼ欠損変異体の完全な特徴付けを含む、プロセシビブなDNA複製の前定常状態の動力学的分析(Pre-Steady-State Kinetic Analysis of Processive DNA Replication Including Complete Characterization of an Exonuclease-Deficient Mutant)」、Biochemistry 30:511〜525(1991)を参照のこと。これらの段階の連続した総和は、ゼロより大きな、最も可能性の高い時間遅延に帰結する。そのため、光子バーストが重複する可能性は低い。
【0091】
従来的な蛍光団のため、蛍光団当たり約105光子を光退色前に発する。(最大で)1%の放出の検出により、3%の相対ノイズ不確定性について約103光子を得る。遊離ヌクレオチドによるバックグラウンドは、例えば約1つのみの遊離標識ヌクレオチドを非常に短い滞留時間で含むように焦点容量サイズを制限することのような、上記にて議論されたスキームにより、ほとんど無視できるレベルにまで減少する。
【0092】
約10-3sにおいて、各標識ヌクレオチドから予測される検出レベルは約103光子である。これは許容できる計測率、〜106 Hzであり、一重項励起状態飽和の約10分の1の、許容できる蛍光団励起率である。この蛍光励起は、各標識ヌクレオチドについての特性波長の約1 msにおいて、〜103 光子の、検出されるバーストを生み出し、平均的に、多分1ミリセカンドより長い、ヌクレオチド付加の間の平均時間的間隔内に充分含まれる間隔にて、次のヌクレオチドが付加される前に、約1 msのギャップを残す。可能なバースト重複は、最も正確な配列決定結果については(最良として)4チャネルでの、時間コヒーレントシーケンスにおけるデータの連続する測定の分析処理により、分析および解決できる。実験デザインおよび近年開発された連結多チャネルアナライザーおよび演算ソフトウェアにおいて利用できる光子統計を用いて、上記に概説されるような、4つの標識ヌクレオチドまたは、より少ない数の標識に関わる方法について、誤差率を許容できるものにすることが可能である。
【0093】
ヌクレオチドを同定する、4つの蛍光団のスペクトル分解は、赤外パルスによる2光子の励起を用いて達成できる。通常2光子励起に特徴的な、広い励起帯によって、4つ全ての蛍光団は同時に励起できる。参照として本明細書に組み入れられる、シュウ(Xu)ら、「分子蛍光団の多光子励起断面積(Multiphoton Excitation Cross-Sections of Molecular Fluorophores)」、Bioimaging 4:198〜207(1996)を参照のこと。または、必要であれば、配列決定複合体を照射するために、多重励起源を組合せて、または迅速な切替により使用できる。スペクトル分離は従来的な干渉フィルターを用いて実施されるが、放出スペクトルが重複する可能性があり、時間相関解析を複雑にするため、修正のために、4色チャネルの交差相関が必要となる可能性がある。核酸重合酵素との蛍光団の適合性が適切な色素組の適用可能性を制限する場合、標識を識別するために、技術の組合せが適用できる。
【0094】
伸長する核酸配列鎖へのヌクレオチドの取り込みを識別するための他の可能な方法は、蛍光寿命における変化の測定を含む。オリゴヌクレオチドピレンプローブの蛍光寿命は、DNAの付着において配列依存的に変化することが観察された。参照として本明細書に組み入れられる、ダプリッチ(Dapprich J.)、「分子進化の蛍光検出(Fluoreszenzdetection Molekularer Evolution(Fluorescence Detection of Molecular Evolution))」、Dissertation, Georg-August-Univ., Goettingen, Germany(1994)を参照のこと。蛍光団と塩基の間の光物理学的相互作用は、特徴的な蛍光減衰時間に帰結し、また上記に議論されたように、塩基を区別するために使用することもできる。近年、単分子レベルにおける寿命の決定および識別は、取り込まれる塩基間の識別および、自由に拡散するヌクレオチド間の識別は、蛍光寿命の測定により実施できることが示された。参照として本明細書に組み入れられる、エッゲリング(Eggeling)ら、「選択的蛍光分光による、単分子の構造力学の調査(Monitoring Conformational Dynamics of a Single Molecule by Selective Fluorescence Spectroscopy)」、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A. 95:1556〜1561(1998)を参照のこと。
【0095】
本発明の過程の実施において、4つの蛍光波長チャネルにおける時間相関測定が有効に使用できる。放出スペクトルの重複は、1つの蛍光団からのシグナルを幾つかのチャネルに入らせるが、相対数率および計時により標識は正確に同定される。取り込まれた標識ヌクレオチドおよび遊離している標識からの同時のシグナルは、遊離している標識に限定される持続時間、およびバーストの大きさにより識別可能である。各10-15秒のレーザー励起パルス後の蛍光光子放出について得られる、0.1 nsの時間遅延の分解により実行できる、蛍光減衰時間測定の使用により、標識の不確定性はさらに減少させることができる。蛍光光子放出および光退色の過程もまた、それら自身が確率過程ではあるが、誤差率が無視できるような、充分に異なる量子収量をもたらす。
【0096】
自由に拡散または流動する標識ヌクレオチドからのバックグラウンドの拒絶において、焦点容量における、任意の個々の遊離ヌクレオチドの非常に短い滞留時間が都合よく用いられる。焦点容量の開いたディメンション(最悪の場合非干渉遠隔場照射において)を横切る遊離ヌクレオチド類似体についての特性拡散時間は、yを焦点容量ディメンションおよびDを拡散係数として、τD〜y2/4D〜2×10-5秒となる。イオノホレティック流速1 cm/sは、10-5秒未満までのその短い蛍光バーストを維持し、大きさの順に光子数を減少するのに充分である。これは遊離ヌクレオチドに対する識別を保証し、議論されたようにヌクレオチド類似体濃度が適切に低いという条件で、核酸配列を示すバーストの時系列を同定する。参照として本明細書に組み入れられる、マッジ(Magde)ら、「反応系における熱力学的揺らぎ−蛍光相関分光による測定(Thermodynamic Fluctuations in a Reacting System- Measurement by Fluorescence Correlation Spectroscopy)」、Phys.Rev.Lett. 29:705〜708(1972)、およびマイチ(Maiti)ら、「3光子励起を用いた、生きた細胞におけるセロトニン分布の測定(Measuring Serotonin Distribution in Live Cells with Three-Photon Excitation)」、Science 275:530〜532(1997)を参照のこと。識別は、上記にて議論したように、容量制限技術またはゲート時間検出の使用により改善できる。
【0097】
伸長する核酸鎖に取り込まれるヌクレオチド類似体アクセプターを調整するための、ドナー蛍光団(例:ポリメラーゼに付着したドナー)からの、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)の検出は、取り込まれたヌクレオチドからのバックグラウンドを下げることについて、さらなる的確な可能性を示唆する。FRETは、約20ヌクレオチドを含む非常に短い距離にしか達せず、距離の6分の1の逆数の力にて減衰する。励起ドナー分子はそのエネルギーを近隣のアクセプター蛍光団にのみ移動させ、付加されるにつれ各標識ヌクレオチドのスペクトル分解されたアクセプター蛍光団を発する。エネルギー移動の距離および配向束縛が観察の効果的な範囲を60 Å未満まで減少させるため、ドナーからさらに遠くの、既に取り込まれたヌクレオチドは、蛍光シグナルに寄与せず、それにより、取り込まれないヌクレオチドからのバックグラウンド蛍光は効果的に除去される。光退色を用いずに、反復ヌクレオチドはFRETの範囲を新規ヌクレオチドが付加されるものと同率に維持することから、配列認識の不確定性が生じる可能性があるため、この方法は高感度を必要とする。光退色または光化学的切断、または上記に議論されたようなそれらの組合せにより、問題を解決することができる。FRETを用いたドナー分子の光退色は、それが付着された鋳型核酸であり、核酸重合酵素をもつドナーが周期的に置換される場合には、回避できる。
【0098】
本発明の成功のために重要な最終的な考察は、厳密に焦点を合わせたレーザー光線のような活性化放射における、タンパク質/核酸複合体の安定性に関わるものである。タンパク質が吸収しない波長で選択されるため、励起照射により酵素が影響を受けることは予測されず、長い読み取り長に渡って正確な配列解析を実行させるため、レーザー光線におけるポリメラーゼの安定性は充分に高いものであるべきである。酵素を強いレーザー光に曝露する以前の調査において、光傷害および機能喪失が調べられた。固定化されたRNAポリメラーゼ/DNA複合体は、1047 nm Nd:約108 W/cm2の強さに対応する、タンパク質に焦点を当てた、82〜99 mWレーザー力のYレーザー光について82±58 秒の不活性時間を示した。アクトミオシン系またはキネシン系についての他の研究は、同様の安定性を示した。DNAおよびビオチン−アビジン結合の両方が、光学的捕捉に対し光安定性をもつことが示された。本明細書に参照として組み入れられる、イン(Yin)ら、「適用された力に対する転写(Transcription Against an Applied Force)」、Science 270:1653〜1657(1995)、スヴォボダ(Svoboda)ら、「光学的捕捉干渉法によるキネシン段階の直接観察(Direct Observation of Kinesin Stepping by Optical Trapping Interferometry)」、Nature 365:721〜727(1993)、およびモロイ(Molloy)ら、「単独ミオシン頭部により生産される移動および力(Movement and Force Produced by a Single Myosin Head)」、Nature 378:209〜212(1995)を参照のこと。本発明に係るヌクレオチド類似体の蛍光検出のため、1つの光子の励起について0.1 mW(105 W/cm2)、2つの光子励起について1 mW(106〜107 W/cm2)のような、FCS測定の典型的なレーザー力(強さ)が予測され、よって上記に説明されたオプティカルトウィーザーの場合より著しく低い。酵素の安定性はゆえにより高く、さらに、本方法により提案される配列決定の迅速なスピード(例:100 bp/s)により、8 kb核酸の配列決定には80秒のみで充分である。
【0099】
実例を挙げる目的にて本発明は詳細を説明してきたが、このような詳細は単にその目的のためにだけに述べられたものと理解され、特許請求の範囲によって定義される、本発明の精神および範囲から逸脱することなしに当業者による変更が可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、複数のヌクレオチド塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法:
標的核酸に対し相補的なヌクレオチド類似体を活性部位に付加するために適切な位置において互いに関して配向された、核酸重合酵素および標的核酸分子の複合体を提供する段階;
標的核酸配列において各々の型のヌクレオチド類似体が異なるヌクレオチドに対し相補的になっている活性部位近傍に、複数の型のヌクレオチド類似体を提供する段階;
付加されたヌクレオチド類似体が次なるヌクレオチド類似体の付加を受けられるように、付加されるヌクレオチド類似体が標的核酸ヌクレオチドに対し相補的になっている活性部位においてヌクレオチド類似体を重合する段階;
該重合段階の結果、活性部位において付加されたヌクレオチド類似体を同定する段階;および
標的核酸配列が決定されるように、複数の型のヌクレオチド類似体の該提供段階、該重合段階、および該同定段階を繰り返す段階。
【請求項2】
核酸重合酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
核酸重合酵素が耐熱性ポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
核酸重合酵素が熱失活性ポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
標的核酸分子が、二本鎖DNA、単鎖DNA、単鎖DNAヘアピン、DNA/RNAハイブリッド、ポリメラーゼの結合のための認識部位をもつRNA、およびRNAヘアピンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
核酸重合酵素が、複製起点、二本鎖標的核酸のニックもしくはギャップ、単鎖標的核酸の二次構造、アクセサリータンパク質により作成される結合部位、またはプライマーが結合した単鎖核酸において、標的核酸分子複合体に結合される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
核酸重合酵素に、その活性を改変するために1つまたはそれ以上のアクセサリータンパク質を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
アクセサリータンパク質が、単鎖結合タンパク質、プライマーゼ、およびヘリカーゼからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
核酸重合酵素がプロセシブ(processive)である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
核酸重合酵素が非プロセシブ(non-processive)である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ヌクレオチド類似体が、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ペプチドヌクレオチド、修飾ペプチドヌクレオチド、および修飾リン酸‐糖骨格をもつヌクレオチドからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法:
複数のヌクレオチド類似体の提供段階の前または提供段階の間に、オリゴヌクレオチドプライマーを標的核酸分子にハイブリダイズする段階。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドプライマーが、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾ペプチド核酸、および修飾リン酸‐糖骨格をもつヌクレオチドからなる群より選択されるヌクレオチドを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ヌクレオチド類似体に標識を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
標識が、発色団、蛍光部分、酵素、抗原、重金属、磁気プローブ、色素、りん光群、放射性物質、化学発光部分、散乱または蛍光ナノ粒子、ラマンシグナル発生部分、および電気化学的検出部分からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
標識がヌクレオチド類似体に、その塩基、糖部分、αリン酸、βリン酸、またはγリン酸で付着する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
標識がリンカーによってヌクレオチド類似体に付着する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
標識がリンカーを用いずにヌクレオチド類似体に付着する、請求項14記載の方法。
【請求項19】
以下の段階をさらに含む、請求項14記載の方法:
多くのさらなるヌクレオチド類似体の活性部位において、同定段階の間または同定段階の後で、且つ重合段階の前に、標識をヌクレオチド類似体から除去する段階。
【請求項20】
除去段階が標識の退色により実施される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
標識の除去を誘導および調節するために調整された放射光を用いた光退色により退色が実施される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
除去段階がヌクレオチド類似体からの標識の切断により実施される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
βまたはγ標識されたヌクレオチド類似体が酵素的に切断される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
複数の型のヌクレオチド類似体の各々が、同定段階の間に互いに識別される異なる標識をもつ、請求項14記載の方法。
【請求項25】
3つまたはそれ以下の、複数の型のヌクレオチド類似体が異なる標識をもつ、請求項14記載の方法。
【請求項26】
異なる型のヌクレオチド類似体が、同じ標識であるが、塩基蛍光団、クエンチングされた蛍光団、または蛍光性ヌクレオチド類似体の存在による異なる特性により識別される標識をもつ、請求項14記載の方法。
【請求項27】
核酸重合酵素が標識をもち、同定段階が該標識とヌクレオチド類似体の間の相互作用の検出により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項28】
標識が蛍光共鳴エネルギー移動ドナーまたはアクセプターである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
同定段階が非光学的手順により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
同定段階が、遠隔場顕微分光、近接場顕微分光、エバネッセント波または導波管照射、ナノ構造増強、およびそれらの組合せからなる群より選択される光学的手順により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項31】
同定段階が、単光子および/または多光子励起、蛍光共鳴エネルギー移動、または光変換の使用により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項32】
同定段階が、スペクトル波長識別、蛍光寿命の測定および分離、蛍光団同定および/またはバックグラウンド抑制により達成される、請求項1記載の方法。
【請求項33】
蛍光団同定および/またはバックグラウンド抑制において、励起モードと照射源の間の迅速な切替、およびその組合せを使用する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
複合体の提供段階が以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
(1)オリゴヌクレオチドプライマーまたは(2)標的核酸分子のいずれかを支持体上に配置する段階;
プライマーが結合した標的核酸分子複合体を形成するために、(1) 配置されたオリゴヌクレオチドプライマーに標的核酸分子をハイブリダイズする、または(2) 配置された標的核酸分子にオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイズする段階;および
標的核酸分子に沿った移動および活性部位におけるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長のために適切な位置において、プライマーが結合した標的核酸分子複合体上の核酸重合酵素を提供する段階。
【請求項35】
ハイブリダイズの段階が、支持体上に配置された第二のオリゴヌクレオチドプライマーに、オリゴヌクレオチドプライマーに結合したものの反対側の標的核酸分子末端を付加的に結合することにより実施される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
支持体およびオリゴヌクレオチドプライマーまたは標的核酸分子のいずれかが、抗原‐抗体結合対、ストレプトアビジン‐ビオチン結合対、光活性化した結合分子、および相補的核酸対からなる群より選択される、共有結合対または非共有結合対の対応する成分と、可逆的または不可逆的に結合する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
オリゴヌクレオチドプライマーが支持体上に配置され、配置されたオリゴヌクレオチドプライマーに標的核酸分子がハイブリダイズする、請求項34記載の方法。
【請求項38】
標的核酸分子が支持体上に配置され、配置された標的核酸分子にオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする、請求項34記載の方法。
【請求項39】
複合体の提供段階が以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
標的核酸を含み、且つ活性部位近傍に認識部位をもつ二本鎖核酸分子を、支持体上に配置する段階、および
核酸重合酵素を、標的核酸分子上の標的核酸分子に沿った移動のために適切な位置において提供する段階。
【請求項40】
複合体の提供段階が以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
核酸重合酵素を、標的核酸複合体が核酸重合酵素に対して相対的に移動するために適切な位置で支持体上に配置する段階。
【請求項41】
支持体および核酸重合酵素が、抗原‐抗体結合対、ストレプトアビジン‐ビオチン結合対、光活性化結合分子、および相補的核酸対からなる群より選択される、共有結合対または非共有結合対の対応する成分により、可逆的または不可逆的に結合される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
核酸重合酵素または標的核酸を調整可能な支持体上に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項43】
核酸重合酵素または標的核酸を小孔をもつゲル内に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項44】
標的核酸および核酸重合酵素を固体支持体上に互いに近傍に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項45】
同定段階が、遊離ヌクレオチド類似体から生じるバックグラウンドノイズを減少することにより実施される、請求項1記載の方法。
【請求項46】
同定段階が以下の段階を含む、請求項45記載の方法:
活性化放射を実質的に活性部位に対応する領域に指向させる段階、および
活性部位において重合されたヌクレオチド類似体を検出する段階。
【請求項47】
同定段階により活性部位において重合されたヌクレオチド類似体が遊離ヌクレオチド類似体から識別される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
同定段階が活性部位近傍の制限領域において実施される、請求項45記載の方法。
【請求項49】
同定段階がナノ構造において実施される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
ナノ構造が、検出段階を増強する、パンクチュエート(punctuate)構造、針状(acicular)構造、または共鳴ナノ構造である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
活性部位において重合されていないヌクレオチド類似体が、ミクロ構造を通って、制限領域までおよび制限領域から迅速に移動する、請求項48記載の方法。
【請求項52】
ミクロ構造が以下のものを含む、請求項51記載の方法:
異なるヌクレオチド類似体を制限領域へ指向させるための複数のチャネル、および
制限領域から材料を除去させるための排出チャネル、および以下を含むナノ構造:
制限領域を定義し、同定段階を容易にするために構成される外被。
【請求項53】
同定段階が、活性部位近傍にて小さな曲率半径を有する対象物の近傍において増強された電磁放射を用いた電磁場増強により実施される、請求項45記載の方法。
【請求項54】
同定段階が、プライマーが結合した標的核酸分子が位置する空洞の近接場照射により実施される、請求項45記載の方法。
【請求項55】
同定段階が、複合体近傍の光ファイバーを用いて実施される、請求項45記載の方法。
【請求項56】
光子検出のゲート時間遅延(time gated delay)により同定およびバックグラウンドの減少が実施される、請求項45記載の方法。
【請求項57】
アレイ上の複数の異なる位置における異なる核酸分子の配列決定により方法が実施される、請求項1記載の方法。
【請求項58】
同時にまたは連続して同じ標的核酸を配列決定する段階、およびそのような配列決定からのアウトプットを組合せる段階により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項59】
標的核酸分子を配列決定するために適切な装置であって、
支持体と、
標的核酸分子に結合するのに適切な核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーであって、該支持体上に配置される核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーと、
該支持体および該核酸重合酵素または該オリゴヌクレオチドプライマーを含み、支持体上に位置しない標識ヌクレオチド類似体を、制限領域を通って迅速に移動させるために形成された、制限領域を定義するミクロ構造と
を含む装置。
【請求項60】
ミクロ構造が、
異なる型のヌクレオチド類似体を制限領域へ指向させるための複数のチャネルと、
制限領域および、支持体上に位置するヌクレオチド類似体の同定を容易にするために構成されたナノ構造から材料を除去させるための排出チャネルと
を含む、請求項59記載の装置。
【請求項61】
標的核酸分子を配列決定するために適切な装置であって、
支持体と、
標的核酸分子にハイブリダイズするために適切な核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーであって、該支持体上に配置される核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーと、
該支持体および該核酸重合酵素または該オリゴヌクレオチドプライマーを含む、制限領域を定義し、該支持体上に位置する標識ヌクレオチド類似体の同定を容易にするために構成される外被と、
活性化放射を制限領域に集中させ、制限領域から放射を収集するための、制限領域近傍の光学導波管と
を含む装置。
【請求項1】
以下の段階を含む、複数のヌクレオチド塩基をもつ標的核酸分子の配列決定の方法:
標的核酸に対し相補的なヌクレオチド類似体を活性部位に付加するために適切な位置において互いに関して配向された、核酸重合酵素および標的核酸分子の複合体を提供する段階;
標的核酸配列において各々の型のヌクレオチド類似体が異なるヌクレオチドに対し相補的になっている活性部位近傍に、複数の型のヌクレオチド類似体を提供する段階;
付加されたヌクレオチド類似体が次なるヌクレオチド類似体の付加を受けられるように、付加されるヌクレオチド類似体が標的核酸ヌクレオチドに対し相補的になっている活性部位においてヌクレオチド類似体を重合する段階;
該重合段階の結果、活性部位において付加されたヌクレオチド類似体を同定する段階;および
標的核酸配列が決定されるように、複数の型のヌクレオチド類似体の該提供段階、該重合段階、および該同定段階を繰り返す段階。
【請求項2】
核酸重合酵素が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、およびその混合物からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
核酸重合酵素が耐熱性ポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
核酸重合酵素が熱失活性ポリメラーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
標的核酸分子が、二本鎖DNA、単鎖DNA、単鎖DNAヘアピン、DNA/RNAハイブリッド、ポリメラーゼの結合のための認識部位をもつRNA、およびRNAヘアピンからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
核酸重合酵素が、複製起点、二本鎖標的核酸のニックもしくはギャップ、単鎖標的核酸の二次構造、アクセサリータンパク質により作成される結合部位、またはプライマーが結合した単鎖核酸において、標的核酸分子複合体に結合される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
核酸重合酵素に、その活性を改変するために1つまたはそれ以上のアクセサリータンパク質を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項8】
アクセサリータンパク質が、単鎖結合タンパク質、プライマーゼ、およびヘリカーゼからなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
核酸重合酵素がプロセシブ(processive)である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
核酸重合酵素が非プロセシブ(non-processive)である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ヌクレオチド類似体が、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ペプチドヌクレオチド、修飾ペプチドヌクレオチド、および修飾リン酸‐糖骨格をもつヌクレオチドからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項12】
以下の段階をさらに含む、請求項1記載の方法:
複数のヌクレオチド類似体の提供段階の前または提供段階の間に、オリゴヌクレオチドプライマーを標的核酸分子にハイブリダイズする段階。
【請求項13】
オリゴヌクレオチドプライマーが、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、修飾リボヌクレオチド、修飾デオキシリボヌクレオチド、ペプチド核酸、修飾ペプチド核酸、および修飾リン酸‐糖骨格をもつヌクレオチドからなる群より選択されるヌクレオチドを含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ヌクレオチド類似体に標識を提供する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
標識が、発色団、蛍光部分、酵素、抗原、重金属、磁気プローブ、色素、りん光群、放射性物質、化学発光部分、散乱または蛍光ナノ粒子、ラマンシグナル発生部分、および電気化学的検出部分からなる群より選択される、請求項14記載の方法。
【請求項16】
標識がヌクレオチド類似体に、その塩基、糖部分、αリン酸、βリン酸、またはγリン酸で付着する、請求項14記載の方法。
【請求項17】
標識がリンカーによってヌクレオチド類似体に付着する、請求項14記載の方法。
【請求項18】
標識がリンカーを用いずにヌクレオチド類似体に付着する、請求項14記載の方法。
【請求項19】
以下の段階をさらに含む、請求項14記載の方法:
多くのさらなるヌクレオチド類似体の活性部位において、同定段階の間または同定段階の後で、且つ重合段階の前に、標識をヌクレオチド類似体から除去する段階。
【請求項20】
除去段階が標識の退色により実施される、請求項19記載の方法。
【請求項21】
標識の除去を誘導および調節するために調整された放射光を用いた光退色により退色が実施される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
除去段階がヌクレオチド類似体からの標識の切断により実施される、請求項19記載の方法。
【請求項23】
βまたはγ標識されたヌクレオチド類似体が酵素的に切断される、請求項22記載の方法。
【請求項24】
複数の型のヌクレオチド類似体の各々が、同定段階の間に互いに識別される異なる標識をもつ、請求項14記載の方法。
【請求項25】
3つまたはそれ以下の、複数の型のヌクレオチド類似体が異なる標識をもつ、請求項14記載の方法。
【請求項26】
異なる型のヌクレオチド類似体が、同じ標識であるが、塩基蛍光団、クエンチングされた蛍光団、または蛍光性ヌクレオチド類似体の存在による異なる特性により識別される標識をもつ、請求項14記載の方法。
【請求項27】
核酸重合酵素が標識をもち、同定段階が該標識とヌクレオチド類似体の間の相互作用の検出により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項28】
標識が蛍光共鳴エネルギー移動ドナーまたはアクセプターである、請求項27記載の方法。
【請求項29】
同定段階が非光学的手順により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項30】
同定段階が、遠隔場顕微分光、近接場顕微分光、エバネッセント波または導波管照射、ナノ構造増強、およびそれらの組合せからなる群より選択される光学的手順により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項31】
同定段階が、単光子および/または多光子励起、蛍光共鳴エネルギー移動、または光変換の使用により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項32】
同定段階が、スペクトル波長識別、蛍光寿命の測定および分離、蛍光団同定および/またはバックグラウンド抑制により達成される、請求項1記載の方法。
【請求項33】
蛍光団同定および/またはバックグラウンド抑制において、励起モードと照射源の間の迅速な切替、およびその組合せを使用する、請求項32記載の方法。
【請求項34】
複合体の提供段階が以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
(1)オリゴヌクレオチドプライマーまたは(2)標的核酸分子のいずれかを支持体上に配置する段階;
プライマーが結合した標的核酸分子複合体を形成するために、(1) 配置されたオリゴヌクレオチドプライマーに標的核酸分子をハイブリダイズする、または(2) 配置された標的核酸分子にオリゴヌクレオチドプライマーをハイブリダイズする段階;および
標的核酸分子に沿った移動および活性部位におけるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長のために適切な位置において、プライマーが結合した標的核酸分子複合体上の核酸重合酵素を提供する段階。
【請求項35】
ハイブリダイズの段階が、支持体上に配置された第二のオリゴヌクレオチドプライマーに、オリゴヌクレオチドプライマーに結合したものの反対側の標的核酸分子末端を付加的に結合することにより実施される、請求項34記載の方法。
【請求項36】
支持体およびオリゴヌクレオチドプライマーまたは標的核酸分子のいずれかが、抗原‐抗体結合対、ストレプトアビジン‐ビオチン結合対、光活性化した結合分子、および相補的核酸対からなる群より選択される、共有結合対または非共有結合対の対応する成分と、可逆的または不可逆的に結合する、請求項34記載の方法。
【請求項37】
オリゴヌクレオチドプライマーが支持体上に配置され、配置されたオリゴヌクレオチドプライマーに標的核酸分子がハイブリダイズする、請求項34記載の方法。
【請求項38】
標的核酸分子が支持体上に配置され、配置された標的核酸分子にオリゴヌクレオチドプライマーがハイブリダイズする、請求項34記載の方法。
【請求項39】
複合体の提供段階が以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
標的核酸を含み、且つ活性部位近傍に認識部位をもつ二本鎖核酸分子を、支持体上に配置する段階、および
核酸重合酵素を、標的核酸分子上の標的核酸分子に沿った移動のために適切な位置において提供する段階。
【請求項40】
複合体の提供段階が以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
核酸重合酵素を、標的核酸複合体が核酸重合酵素に対して相対的に移動するために適切な位置で支持体上に配置する段階。
【請求項41】
支持体および核酸重合酵素が、抗原‐抗体結合対、ストレプトアビジン‐ビオチン結合対、光活性化結合分子、および相補的核酸対からなる群より選択される、共有結合対または非共有結合対の対応する成分により、可逆的または不可逆的に結合される、請求項40記載の方法。
【請求項42】
核酸重合酵素または標的核酸を調整可能な支持体上に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項43】
核酸重合酵素または標的核酸を小孔をもつゲル内に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項44】
標的核酸および核酸重合酵素を固体支持体上に互いに近傍に配置する、請求項1記載の方法。
【請求項45】
同定段階が、遊離ヌクレオチド類似体から生じるバックグラウンドノイズを減少することにより実施される、請求項1記載の方法。
【請求項46】
同定段階が以下の段階を含む、請求項45記載の方法:
活性化放射を実質的に活性部位に対応する領域に指向させる段階、および
活性部位において重合されたヌクレオチド類似体を検出する段階。
【請求項47】
同定段階により活性部位において重合されたヌクレオチド類似体が遊離ヌクレオチド類似体から識別される、請求項45記載の方法。
【請求項48】
同定段階が活性部位近傍の制限領域において実施される、請求項45記載の方法。
【請求項49】
同定段階がナノ構造において実施される、請求項48記載の方法。
【請求項50】
ナノ構造が、検出段階を増強する、パンクチュエート(punctuate)構造、針状(acicular)構造、または共鳴ナノ構造である、請求項49記載の方法。
【請求項51】
活性部位において重合されていないヌクレオチド類似体が、ミクロ構造を通って、制限領域までおよび制限領域から迅速に移動する、請求項48記載の方法。
【請求項52】
ミクロ構造が以下のものを含む、請求項51記載の方法:
異なるヌクレオチド類似体を制限領域へ指向させるための複数のチャネル、および
制限領域から材料を除去させるための排出チャネル、および以下を含むナノ構造:
制限領域を定義し、同定段階を容易にするために構成される外被。
【請求項53】
同定段階が、活性部位近傍にて小さな曲率半径を有する対象物の近傍において増強された電磁放射を用いた電磁場増強により実施される、請求項45記載の方法。
【請求項54】
同定段階が、プライマーが結合した標的核酸分子が位置する空洞の近接場照射により実施される、請求項45記載の方法。
【請求項55】
同定段階が、複合体近傍の光ファイバーを用いて実施される、請求項45記載の方法。
【請求項56】
光子検出のゲート時間遅延(time gated delay)により同定およびバックグラウンドの減少が実施される、請求項45記載の方法。
【請求項57】
アレイ上の複数の異なる位置における異なる核酸分子の配列決定により方法が実施される、請求項1記載の方法。
【請求項58】
同時にまたは連続して同じ標的核酸を配列決定する段階、およびそのような配列決定からのアウトプットを組合せる段階により実施される、請求項1記載の方法。
【請求項59】
標的核酸分子を配列決定するために適切な装置であって、
支持体と、
標的核酸分子に結合するのに適切な核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーであって、該支持体上に配置される核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーと、
該支持体および該核酸重合酵素または該オリゴヌクレオチドプライマーを含み、支持体上に位置しない標識ヌクレオチド類似体を、制限領域を通って迅速に移動させるために形成された、制限領域を定義するミクロ構造と
を含む装置。
【請求項60】
ミクロ構造が、
異なる型のヌクレオチド類似体を制限領域へ指向させるための複数のチャネルと、
制限領域および、支持体上に位置するヌクレオチド類似体の同定を容易にするために構成されたナノ構造から材料を除去させるための排出チャネルと
を含む、請求項59記載の装置。
【請求項61】
標的核酸分子を配列決定するために適切な装置であって、
支持体と、
標的核酸分子にハイブリダイズするために適切な核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーであって、該支持体上に配置される核酸重合酵素またはオリゴヌクレオチドプライマーと、
該支持体および該核酸重合酵素または該オリゴヌクレオチドプライマーを含む、制限領域を定義し、該支持体上に位置する標識ヌクレオチド類似体の同定を容易にするために構成される外被と、
活性化放射を制限領域に集中させ、制限領域から放射を収集するための、制限領域近傍の光学導波管と
を含む装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2011−125345(P2011−125345A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34095(P2011−34095)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2000−618479(P2000−618479)の分割
【原出願日】平成12年5月18日(2000.5.18)
【出願人】(500056220)コーネル リサーチ ファンデーション インク. (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【分割の表示】特願2000−618479(P2000−618479)の分割
【原出願日】平成12年5月18日(2000.5.18)
【出願人】(500056220)コーネル リサーチ ファンデーション インク. (7)
【Fターム(参考)】
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