説明

核酸増幅のためのプライマー、プローブおよび方法

蛍光性DNA色素、並びに間接励起性の標識プライマー及びプローブを利用したPCR増幅、好ましくはLATE-PCR期間中又はその後の均質検出は、再現性と定量化を改善する。蛍光性DNA色素、並びに間接励起性のミスマッチ寛容性標識プローブを利用した非対称性PCR増幅、好ましくはLATE-PCR、期間中又はその後の低温均質検出は、
複合ターゲットの解析を可能にする。LATE-PCR増幅後のシークエンシングサンプル調製法は複雑さを軽減し、「単一チューブ」処理を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応を利用した増幅を含む核酸増幅反応、及びシークエンス法とハイブリダイゼーションプローブ検出方法とを組み合わせた前記反応を利用したアッセイに関する。
【背景技術】
【0002】
核酸増幅技術及び核酸増幅アッセイは、よく知られている。一部の増幅反応は、増幅に基づく核酸配列(Nucleic acid sequence based amplification: NASBA)法のように等温で行われる。その他は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法のように温度サイクルを用いる。増幅産物の蛍光検出を使用する好ましい増幅アッセイは、均質であること、すなわち検出を可能にするための試薬の物理的な分離(例えば、非結合プローブからの結合プローブの分離)を必要とせず、また密閉された一つの容器の中で行えることである。前記アッセイは、産物を増幅後に検出するエンドポイント法であってもよいし、あるいは増幅の進行中に産物を検出するリアルタイム法であってもよい。
【0003】
PCRを用いた核酸増幅技術及び核酸増幅アッセイは、例えば、特許文献1〜3、及びほとんどの場合非特許文献1に記載されている。反応が進行しているとき一部、又は全部のPCRサイクル期間で増幅産物を検出するリアルタイムアッセイ法を含む均質PCRアッセイは、例えば特許文献4〜7に記載されている。
【0004】
PCR増幅反応は、通常、等モル濃度と等融解温度(Tm)で対称的に、すなわちフォワードプライマーとリバースプライマーを用いることで二本鎖アンプリコンを指数関数的に作るように設計されている。「非対称性PCR」は、PCR反応で直接一本鎖DNAを作るための限定的使用を発見した技術である。非特許文献2、及び特許文献8を参照されたい。非対称性PCRは、プライマーの一方が他方のプライマー濃度の1〜20パーセントに限定された量で存在するように5倍から100倍に希釈される点で対称性PCRと異なる非対称性PCR増幅法である。結果として、増幅は、両プライマーが伸長され二本鎖産物あるいはアンプリコンが生じる指数関数的増幅期と、それに続く一方のプライマーのみが残り一本鎖アンプリコンを生じる比例増幅(linear amplification)とからなる。
【0005】
つい最近、本発明者らは「指数関数後比例(Linear-After-The-Exponential)」PCR法、略して「LATE-PCR」法として知られる非対称性PCR増幅法を開発した。LATE-PCR法は、両プライマーがアニールされ、伸長される指数関数増幅期と、それに続く制限プライマー(Limiting Primer)の枯渇後で、過剰プライマー(Excess Primer)のみがアニールされ、伸長される比例増幅期とからなる。非特許文献3、特許文献9(3 July 2003)、及び非特許文献4を参照されたい。これらは、いずれもその全てを引用して本願に援用する。
【0006】
PCR増幅における二本鎖アンプリコン生産量をモニターするための便利で安価な方法は、SYBR Green I、又はSYBR Goldのように、二本鎖DNAにインターカレートするか、別の方法で相互作用するときに蛍光を発する色素を用いることである。例えば、特許文献4を参照されたい。PCR増幅中のリアルタイム又は増幅後のいずれかで行われるアンプリコンの融解温度解析は、産物同定に利用される。前記融解温度解析を利用する際の問題の一つは、色素蛍光がアンプリコンサイズに依存するということである。もう一つの問題は、解析中に色素が低い融解温度をもつ増幅産物又はアンプリコンから、より高い融解温度をもったアンプリコンに再配分され、それによって結果にゆがみが生じてしまうことである。これらの問題を解決するために二つのアプローチが提案された。アプローチの一つであるG消光は、プライマーの設計に厳密な制限が課される上、バックグラウンド蛍光が大きくなる原因となる(非特許文献5)。他方のLC Green色素でSYBR色素を置換する方法は、配列が大量にないためにシグナルが極僅かなパーセンテージでしか産出されず、また高度に特殊化したソフトウェアやハードウェアを必要とする (非特許文献6)。
【0007】
蛍光標識されたプローブは、リアルタイム解析、又はエンドポイント解析のいずれかで所望のアンプリコンの蓄積を測定するために、PCRアッセイを含む均質核酸増幅アッセイで使用される。いくつかの利用可能なタイプのプローブは、直鎖状一本鎖プローブと比較すると、かなりのアレル識別力がある。リアルタイムプローブは、PCRサイクルの伸長ステップ期間に5’−3’エキソヌクレアーゼ活性によって切断される二重標識直鎖状プローブ(特許文献5、10、11を参照)、分子指標(molecular beacon)プローブ(特許文献6、12、13を参照)、副溝結合プローブ(非特許文献7を参照)、ターゲット鎖上に近接してハイブリダイズしたときのFRET直鎖状プローブペア、ターゲットが標識プローブ鎖にハイブリダイズすることで競合する消光された二本鎖直鎖状プローブ(非特許文献8: e5を参照)、そして、二本鎖領域を形成するためにプローブがターゲットに結合したときに蛍光を発する非対称シアニン系色素と連結されたペプチド核酸(PNA)オリゴマーである、いわゆる「ライトアップ」プローブを含む。LATE-PCR法について、本発明者らは低温分子指標プローブ(特許文献14を参照)等の低温アレル識別型プローブを利用した。増幅中に標識オリゴヌクレオチドプローブがコピーはされないが、プライマーの伸長によって生じるターゲット配列には自由にハイブリダイズできるように、該プローブをプライマーにリンカーで取り付けることができる。例えば、分子指標プローブを取り付けたプライマーであるScorpions(登録商標)、及びフルオロフォア標識された直鎖状プローブを取り付けたプライマーであるAnglers(登録商標)が挙げられる。非特許文献9を参照されたい。蛍光標識を有する前記複合構造のプローブ部は、プライマー部とは独立してハイブリダイズする。したがって、本明細書でそれらの用語を使用する場合、それらは標識化プローブであって、標識化プライマーではない。しかし、ターゲット特異的プローブは、二本鎖産物の総生産量をモニターする能力を失っている。
【0008】
いくつかのプローブはミスマッチ寛容性である。ミスマッチ寛容性プローブは、アッセイにおける検出温度で一以上のターゲット配列とハイブリダイズし、検出可能なシグナルを発生する。またそれによって形成される様々なハイブリッドは、異なる融解点を有すると考えられる。直鎖状、又はランダムコイル一本鎖プローブは、通常ミスマッチ寛容性である。そのようなプローブの例として、蛍光レベルが一方の又は他方のターゲット鎖にハイブリダイズしたときに増加する内部蛍光部をもつ直鎖状プローブがある。すなわち、プローブが一方又は他方のターゲットにハイブリダイズする際に色素からのFRETによって標識の蛍光が発生するような、SYBR GoldとSYBR Green Iとの組み合わせで使用される蛍光で標識された直鎖状プローブ(特許文献15:28 August 2002を参照)、いわゆる「スラッピービーコン(sloppy beacon)」、そして、種々のFRET直鎖状プローブペア(特許文献16を参照)等が挙げられる。
【0009】
それぞれが増幅反応で生じた一の可能性のあるターゲットアンプリコンにのみ結合する複数のプローブを利用することは、複雑な反応混合物を解析する上で、又は多数の可能性のあるターゲットの中から一ないし少数のターゲットを検出する上で問題を引き起こす。有効な蛍光検出により、フルオロフォアの数が通常せいぜい8種に限定されている問題が解決できる。限定的多重化は、例えば各ターゲットに対して異なるアレル識別型分子指標プローブを設計すること、及び各プローブに異なる標識をすることによって可能となる(例えば、非特許文献10を参照)。それぞれが多数の色を分割してなるアレル識別性プローブの混合物は、プローブサイン数を拡大する。そして、もし多数(少なくとも56以下)のターゲットのうち1つだけが実際に存在ればうまく機能するが、一以上のターゲットが存在すれば不明瞭な結果に直面する。
【0010】
複合ターゲット、あるいは多数の可能性のあるターゲットの中の一つと関係するという状況は多い。そのような状況のためにいくつかのスキームが開発され、また提唱されてきた。しかし、いずれも重大な欠点と限界がある。特許文献17でTyagiらは、時折「スラッピービーコン」と呼ばれる技術を記載している。スラッピービーコンとは、PCR増幅反応のアニーリング温度でプローブをミスマッチ寛容性にし、ある程度の複数のターゲットに結合できるようにする、長いループ配列をもった分子指標プローブである。このようなプローブは、ミスマッチするターゲットに対する反応動力学が鈍く、またPCR増幅の伸長温度で完全にマッチしたターゲットにハイブリダイズしたままで残り、Taq DNAポリメラーゼによって切断される可能性が高い。さらに、アッセイ条件下でプローブ‐ターゲットハイブリッドの融解温度の間接的な表示のみが得られ、それにより平衡が達成されたと仮定されている。FRETプローブを用いた対称性PCR増幅におけるリアルタイムマルチプレックスが記載されている。増幅を妨げないようにするには、全プローブ‐ターゲットハイブリッドの融解温度がプライマーアニーリング温度とプライマー伸長温度間の狭い温度範囲内になければならない。また、このスキームは定量もできない。異なる色のFRETプローブを用いた増幅後マルチプローブアッセイが、非特許文献11で開示された。対称性PCR増幅に続き、反応混合物が直ちに冷却され、その後存在する様々なフルオロフォアの融解曲線を測定するために徐々に加温される。この方法は定量できない。加えて、反復対称性PCR増幅間の分散が大きいため、エンドポイントアッセイは通常、質的のみの傾向にある。
【0011】
シークエンス(sequencing;配列決定)反応産物は、精密な調査に選択肢を与える。伝統的なジデオキシシークエンス法は、サイクルシークエンスの開始材料として対称性PCR法若しくはLATE-PCR法等の増幅反応産物を利用できる。増幅された産物は、残ったdNTP及びプライマーを除くためエタノール沈殿やアフィニティーカラムを利用して精製され、一のシークエンスプライマー及び蛍光的に標識されたジデオキシヌクレオチドを利用するサイクルシークエンス反応にかけられ、そしてキャピラリーゲル電気泳動にかけられる。「ピロシークエンス法」は、既知の技術のリアルタイム等温シークエンス−バイ−シンセシス(sequence-by-synthesis)法である。例えばPCR法のような指数関数的増幅法がピロシークエンス用の開始材料の調製で使用されるならば、増幅産物は増幅反応からdNTP、ピロリン酸、及び取り込まれないプライマーの除去と共に、一本鎖産物を分離して純度を上げなければならない。LATE-PCRは、主に一本鎖産物を生じるのでサンプル調製が容易である。しかし、産物それ自体をきれいにする必要がある。
【0012】
本発明の一の態様は、SYBR Green I、又は好ましくはSYBR GoldのようなDNA蛍光色素を励起することによって間接的に励起されるフルオロフォアで標識された直鎖状オリゴヌクレオチドからの蛍光の検出を利用することで、増幅反応の反応産物、温度サイクルの反応産物、若しくは等温の反応産物を均質で検出するための方法である。二本鎖DNAへインターカレートすることが報告されている前記色素は、二本鎖DNAと関連すると蛍光を発するようになる。前記方法は、リアルタイムで、又は増幅反応後に検出温度での蛍光の読み取り(エンドポイント検出)により若しくは増幅後融解解析による温度関数として蛍光変化を確かめるような手段のいずれかで行われてよい。反応混合物が各種反応産物の融解温度を通して加温されると、特定の蛍光含有プライマーを含む各種アンプリコンがそれらの融解温度に達して一本鎖となるので、蛍光は連続的に減少する。好ましい方法は、プライマーシグナル対色素シグナルの比を計算することを包含する。
【0013】
本発明のもう一つの態様は、DNA蛍光色素と少なくとも一つの前記標識プライマーとの双方、好ましくはプライマーペアの一部との双方、及び増幅試薬を任意に含む試薬キットである。
【0014】
本発明のさらなる他の態様は、低温検出ステップを用いたLATE-PCR反応の反応産物を検出するための均質方法である。ある実施形態は、反応混合物に本発明の少なくとも一つのアレル識別型プローブ、すなわち、非特許文献8に記載された一般的なタイプの消光された二本鎖プローブを包含することを含む。ただし、プローブが低温(低温Tm、又は超低温Tm)ターゲット特異的プローブである場合、及び好ましくはSYBR Goldのようなプローブ‐ターゲットのハイブリッドにインターカレートするDNA蛍光色素を励起することで間接的に励起される場合は除かれる。他の実施形態は、消光低温プローブである場合を除いて、反応混合物に本発明の少なくとも一つの間接励起性ミスマッチ寛容性プローブ、すなわち、Lee及びFurstによる特許文献15に記載されたタイプの一般に消光性の一本鎖プローブを包含することを含む。これらの様々な方法は、LATE-PCR増幅の低温検出ステップ中で色素を励起すること、及びターゲット一本鎖配列を測定できるようにするためこれらの条件下でプローブからの蛍光を検出することを含んでいる。特殊な実施形態として、反応混合物の温度がプローブの融解温度を超えている間、好ましくは、PCRサイクルの伸長ステップ中、又はその終点で色素蛍光を検出することによって、反応混合物中の二本鎖産物の総量を測定することをさらに含んでいてもよい。ある好ましい方法は、プローブシグナル対色素シグナルの比を算出することを含む。
【0015】
本発明の他の態様は、前記低温アレル識別型で、かつ消光されたミスマッチ寛容性プローブ、少なくとも一つの前記低温ターゲット特異的プローブと増幅試薬、及び好ましくは蛍光性DNA色素を含むLATE-PCRキット、並びにLATE-PCRプライマー及び少なくとも前記プローブの一つからなるオリゴヌクレオチドセットである。
【0016】
本発明の他の態様は、マルチアンプリコンが存在するとき、又は存在するかもしれないときに使用する均質検出方法であって、LATE-PCR増幅反応混合物中に、その低温Tmのため増幅を妨げず、また5’-3’エキソヌクレアーゼ活性をもつDNAポリメラーゼによって加水分解(切断)されない、及びハイブリダイズし、そして適当な励起源によって直接、あるいは適当な励起源によって励起される蛍光性DNA色素によって間接的に励起されたときに蛍光シグナルを放出する、一以上の低温ミスマッチ寛容性検出プローブを含有することを含む前記方法である。このような方法は、遺伝子型タイプ分け等に応用する単一プローブアッセイ及び複数プローブアッセイを含む。一以上のプローブが同一のフルオロフォアで標識されていてもよい。その場合、識別はちょうど単一プローブを使用するときのように温度による蛍光の変化に依存する。プローブは、異なる蛍光で標識されてもよい。その場合、その色の違いも識別に利用される。同定及び定量を目的とするターゲット間の識別は、色素対フルオロフォア比と同じく、同一又は異なる温度でのフルオロフォア間の蛍光比を含んでいてもよい。検出は、好ましくは増幅期間に(リアルタイムで)、また、より好ましくはLATE-PCR増幅プロトコルに含まれる低温検出ステップ期間に行われる。そして、検出ステップは、複数温度での検出を含んでいてもよい。本発明のさらなるもう一つの方法は、前記検出方法で有用な一本鎖直鎖状プローブであって、特許文献15(29 August 2002)に記載されているタイプである。すなわち、蛍光性DNA色素からの蛍光放出によって励起されるプローブは、低温(低温Tm、又は超低温Tm)プローブである場合を除いて、ミスマッチ寛容性であり、また蛍光を消光する消光部分を含んでいる。さもなくば、該プローブは低温で二次構造を生じてしまう。
【0017】
本発明のもう一つの態様は、LATE-PCR増幅の産物を増幅反応室、増幅反応管、増幅反応ウェル、増幅反応スライド、又は増幅反応容器中で、少量、好ましくは17μl以下で行われるLATE-PCR増幅に利用され得る「単一チューブ」操作でピロシークエンス用に調製できるシークエンス同時増幅法(amplification-through-sequencing)である。
【0018】
本発明のもう一つの態様は、「単一チューブ」操作として行われ得る増幅反応混合物の増幅後水溶液希釈のみを利用したジデオキシシークエンス用LATE-PCR産物を調製するための方法である。
【特許文献1】米国特許第4,683,202号
【特許文献2】米国特許第4,683,195号
【特許文献3】米国特許第4,965,188号
【特許文献4】米国特許第5,994,056号
【特許文献5】米国特許第5,487,972号
【特許文献6】米国特許第5,925,517号
【特許文献7】米国特許第6,150,097号
【特許文献8】米国特許第5,066,584号
【特許文献9】国際公開第03/054233号
【特許文献10】米国特許第5,210,015号
【特許文献11】米国特許第5,538,848号
【特許文献12】米国特許第6,103,476号
【特許文献13】米国特許第6,365,729号
【特許文献14】国際公開第03/045233号
【特許文献15】米国特許公開公報2002/0119450号
【特許文献16】米国特許第6,472,156号
【特許文献17】国際公開第01/31062号
【非特許文献1】「PCR PROTOCOLS, a guide to Methods and Applications」Innisら著、Academic Press(San Diego, CA (USA) 1990)
【非特許文献2】GyllenstenとErlich、「Generation of Single-Stranded DNA by the Polymerase Chain Reaction and Its Application to Direct Sequencing of the HLA-DQA Locus」(Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 85: 7652-7656 (1988)
【非特許文献3】SanchezらのProc. Natl. Acad. Sci. (2004)(USA) 101:1933-1938
【非特許文献4】PierceらのProc. Natl. Acad. Sci (2005)(USA) 102:8609-8614
【非特許文献5】Crockett AO、Wittwer CT、「Fluorescein-Labeled Oligonucleotides for Real-Time PCR:Using the Inherent Quenching of Deoxyguanosine Nucleotides」 Anal. Biochem. 290:89-97 (2001)
【非特許文献6】Wittwerら、「High-Resolution Genotyping by Amplicon Melting Analysis Using LCGreen」Clin. Chem. 49:853-860(2003)
【非特許文献7】Afoninaら、「Minor Groove Binder-Conjugated DNA Probes for Quantitative DNA Detection by Hybridization-Triggered Fluorescence」Biotechniques 32: 946-949 (2002)
【非特許文献8】Li, Q.らの(2002)「A New Class of Homogeneous Nucleic Acid Probes Based on Specific Displacement Hybridization」Nucl. Acid Res. 30: (2)e5
【非特許文献9】Lee, M.A.ら、(2002), Analytica Clinica Acta 457: 61:70、Whitcombe, D.ら(1999), Nature Biotechnology 17: 804-807
【非特許文献10】Tyagiら、(2000) Nature Biotechnology 18: 1191-1196
【非特許文献11】Wittwerらの「Real-Time Multiplex PCR Assays, Methods」 25:430-442 (2001)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願では、核酸プライマー、プローブ及びアンプリコンの融解温度Tmについて言及する。Tmとは、対象材料の半分が二本鎖形態で存在し、残りは一本鎖である温度を言う。一般的に、LATE-PCR法を除けば、プライマーのTmは、プライマーと塩濃度の通常条件下では、よく知られた二つの方法、すなわち「%GC」法(Wetmar, J.G (1991) 「DNA Probes: Applications of the Principles of Nucleic Acid Hybridization」Crit. Rev. Biochem. Mol. Biol. 26: 227-259)か、あるいは「2(A+T)+4(G+C)」法を用いた計算値である。しかし、LATE-PCR法は、増幅開始時のプライマー濃度を考慮に入れ、特定の反応における実際のプライマー融解温度を考慮している。非特許文献3及び4を参照されたい。
【0020】
本願で、本発明者らはTm[0]として、増幅開始時の濃度調節された前記融解温度について言及する。Tm[0]は、人工ヌクレオチドが使用される際に必要なときは経験的に決定することができ、あるいは後述の例では0.07Mの1価陽イオン濃度である、塩濃度調節を用いた「最近接(nearest neighbor)」法(Santa Lucia, J. (1998), PNAS (USA) 95: 1460-1465、及びAllawi, H.T.とSanta Lucia, J. (1997),Biochem. 36: 10581-10594)に従って算出することができる。LATE-PCR法は、下記の式を利用して計算されるアンプリコンの融解温度を考慮に入れてもよい。
【0021】
Tm = 81.5 + 0.41 (%G+%C) − 500/L + 16.6 log [M]/(1 + 0.7 [M])
(式中、Lはヌクレオチドの長さであり、[M]は1価陽イオンのモル濃度である。)
直鎖プローブ又はランダムコイルプローブの融解温度は、プライマーについてと同様に算定される。構造化したプローブ、例えば分子指標(Molecular beacon)プローブは、経験的に決定され得る。
【0022】
本願で使用する場合、「LATE-PCR法」は、一方のオリゴヌクレオチドプライマー(「過剰プライマー」)を、蛍光的に検出可能な二本鎖アンプリコンを生成するのにおおよそ十分なPCRサイクルで枯渇するように、それ自身は200nMまでの低濃度で使用される他方のプライマー(「制限プライマー」)の少なくとも5倍過剰で使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)工程を用いた非対称性DNA増幅法を意味する。この方法では、増幅開始時の制限プライマーの濃度調節融解温度(Tm[0]L)が、増幅開始時の過剰プライマーの濃度調節融解温度(Tm[0]X)よりも5℃以上低くなく、好ましくは少なくとも同じ高さであり、より好ましくは3〜10℃高い。またこの方法では、温度サイクルが一本鎖産物、すなわち時折「過剰プライマー鎖」と呼ばれる過剰プライマーの伸長産物を生成させるために制限プライマーの枯渇後もマルチサイクルで続けられる。
【0023】
本発明のプライマーとプローブ、又は本発明の方法及びキットで有用なプライマーとプローブは、広義のオリゴヌクレオチドである。それゆえ、それらはDNA、RNA、DNAとRNAの混合物であってもよく、また人工ヌクレオチド(例えば、2’-O-メチルリボヌクレオチド)及び人工ヌクレオチド間結合(例えば、ホスホロチオエート結合)であってもよいことを意味する。プライマーとプローブは、いずれも反応混合物中で目的の配列にハイブリダイズすることで一部機能する。プライマーは、増幅反応のプライマーアニーリング温度でそれに相補的な配列にハイブリダイズでき、またDNAポリメラーゼによって3’末端が伸長され得る一本鎖オリゴヌクレオチドである。本発明のプライマーは、間接的に励起可能なフルオロフォア(発蛍光団)によって、そのプライミング配列のハイブリダイゼーションを信号化するプライマーである。本発明のプローブ又は本発明の方法で有用なプローブ及びキットは、増幅反応中の、又は増幅反応後に検出温度で目的のターゲット配列にハイブリダイズでき、そして間接的に励起可能なフルオロフォアによってそのハイブリダイゼーション事象を蛍光的に信号化できる一本鎖オリゴヌクレオチドであり、又はそれを含んでいる。本明細書で使用するとき、「プローブ」はDNAポリメラーゼによる増幅反応で伸長されない。完全に相補するターゲット配列に対して極めて特異的であり、一又は数塩基のミスマッチを有する密接に関連した配列を一切受け付けないプローブが、「アレル識別型(allele discriminating)」である。完全相補的配列に対してのみならず、一以上のミスマッチする塩基をもつ部分的相補配列に対しても少なくとも一の実用的な検出条件下でハイブリダイズするプローブが、「ミスマッチ寛容性(mismatch tolerant)」プローブである。
【0024】
「蛍光性DNA色素」は本明細書で使用するときは、二本鎖DNAと会合すると蛍光的に励起性になる組成物、例えば、SYBR Green IやSYBR Goldを意味する。蛍光性DNA色素は二本鎖DNAにインターカレートすることが報告されているが、本発明者らはいずれの実施理論にも束縛されることを望まない。
【0025】
本発明のプライマーは、蛍光性DNA色素と共に使用される。また該プライマーは、間接励起性のフルオロフォアで標識された直鎖状一本鎖オリゴヌクレオチドである。間接励起性とは、すなわち、二本鎖DNA領域を形成するために反応混合物中でプライマーが鋳型鎖にハイブリダイズしたとき、及びDNA蛍光色素を励起する又はDNA蛍光色素で吸収されるが、フルオロフォアをを励起しない又はフルオロフォアで吸収されない波長の光(普通は光だが、可視光である必要は無い)がサンプル上で光るとき、フルオロフォアが光を放出することをいう。エネルギーは蛍光性DNA色素から近傍のフルオロフォアに蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer:FRET)によって転移するという報告があるが、本発明者らはいずれの実施理論にも束縛されることを望まない。本発明者らは、該状況で光を放出するフルオロフォアを「間接励起性」と呼ぶ。本発明のプローブは、同様に二本鎖DNAに結合する蛍光性色素(蛍光性DNA色素)と共に使用され、またプローブが反応混合物中でターゲット鎖にハイブリダイズし、色素が励起されるときに該フルオロフォアが光を放出するというような前記間接励起性フルオロフォアで標識されている。
【0026】
本明細書で使用するとき、「キット」は増幅、又はアッセイを行うための試薬の集合物を意味する。キットは、増幅の又は増幅‐検出の全ステップに必要な全ての試薬を含んでいる「完全な」ものでよい。あるいはキットは、該操作に必要ないくつかの試薬を除いた「部分的な」ものであってもよい。本発明の完全な、又は部分的なキットのどちらも、追加で核酸単離や逆転写等のサンプル調製用の試薬を含み得る。配列決定は二つのキット、例えば、完全LATE-PCR増幅キットと完全サイクルシークエンスキットを含んでいてもよい。あるいは、それら二つは一つのキットに組み合わされていてもよい。
【0027】
本明細書で使用するとき、「オリゴヌクレオチドセット」は、増幅、又はアッセイを行うためのプライマー、又はプライマーとプローブの集合物を意味する。配列決定に関して、オリゴヌクレオチドセットは、例えばLATE-PCR増幅用の制限プライマー及び過剰プライマー、並びにサイクルシークエンス用の一以上の追加プライマーを含み得る。ハイブリダイゼーションプローブアッセイに関して、オリゴヌクレオチドセットは、例えばLATE-PCR増幅用の制限プライマー及び過剰プライマー、並びに少なくとも一つのフルオロフォア標識されたハイブリダイゼーションプローブを含み得る。
【0028】
本明細書で使用するとき、「単一チューブ」法は、例えば、サンプル調製、増幅、又は配列決定といった連続する少なくとも二つの操作法であって、一つの容器、すなわち試験管、反応ウェル、マイクロ流体デバイスの室内、スライドグラス、又は反応混合物を保持できるその他いずれの装置から、もう一つの容器にサンプルを移すことなく行なえる操作法を意味する。
【0029】
低温融解温度をもつプローブ(すなわち、低温融解温度をもつプローブ‐ターゲットのハイブリッドを形成するプローブのことである)は、増幅開始前に増幅反応混合物に添加され、必要なときのみ利用することができる。
【0030】
増幅反応の全期間又は一部期間にプローブの融解温度よりも高い温度を保持することで、前記プローブはそのターゲットにハイブリダイズしなくなり、おそらくは反応効率が減少する。LATE-PCRアッセイのいくつかの実施形態では、低温プローブが利用される。本明細書で使用する場合、「低温Tmプローブ」は、LATE-PCRアッセイで制限プライマーのTm[0]より少なくとも5℃低い増幅開始時点の濃度調節融解温度Tm[0]を有するハイブリダイゼーションプローブを意味する。また、「超低温Tmプローブ」は、LATE-PCR反応の指数関数的増幅期の平均プライマーアニーリング温度より少なくとも5℃低いTm[0]を有するハイブリダイゼーションプローブを意味する。本発明者らは、たびたびLATE-PCR反応にプローブを1マイクロモル(μM)の濃度で添加している。それゆえ、本発明者らは、プローブを設計する際は時々上述のように算出された、しかし1μMの名目上の濃度を利用した名目上のTm[0]を利用している。ほとんどの低温Tm及び超低温Tmプローブは、30~55℃の範囲において1μM濃度で算出されたTm[0]を有する。
【0031】
低温プローブを利用する検出は、低温検出を必要とする。該検出では、プローブ-ターゲット混合物の温度が、ハイブリダイズして信号を発するように蛍光的に標識されたプローブのために十分に下げられている。この検出は、増幅終了時(エンドポイント)で、又は増幅後融解解析中に行われ得る。あるいは、低温検出ステップが、リアルタイムアッセイ用にLATE-PCR増幅の比例増幅期の数サイクル、又は全サイクルに含まれてもよい。このようなステップはプライマーアニーリングステップに含まれ得るが、好ましくは該ステップがプライマー伸長後、及び高温標準融解(又は「変性」)前に起こることである。LATE-PCRアッセイにおける低温検出ステップは、プライマーアニーリング温度より少なくとも5℃低い温度の減少を意味する。
【0032】
本発明の特定のいくつかの方法は、二本鎖DNAに結合する蛍光性色素と共にフルオロフォア標識されたプライマー又はハイブリダイゼーションプローブを利用し、また本手順により間接的に刺激されるフルオロフォアから放出される蛍光を検出することを含む。本発明の方法の特定の実施形態も、色素からの蛍光放出を検出することを含む。いくつかの好ましい方法は、さらに色素放出に対するフルオロフォア放出の比率を算出することを含む。
【0033】
本発明の一の実施形態は、核酸増幅混合物にSYBR Green I、又は好ましくはSYBR Goldなどの蛍光性DNA色素、及び本発明の少なくとも一の増幅プライマー、すなわちDNAポリメラーゼによって伸長可能であり、かつ上述したようにシグナルプライミングに対して間接励起性であるフルオロフォアで標識された直鎖状一本鎖オリゴヌクレオチドを追加すること、アニーリングすること及び標識されたプライマーを伸長することを含む増幅反応、好ましくはPCR反応(LATE-PCRを含む)を行うこと、そして増幅期間中(リアルタイム検出)か、あるいは増幅の完了に続く(増幅反応の終了時点でのエンドポイント検出か、あるいはその後の温度解析(融解曲線)期間のいずれか)いずれかの期間に色素を励起すること、及び単独か、あるいは色素からの蛍光放出を検出すると共にフルオロフォアからの蛍光放出を検出すること、を含む。適当な増幅プロトコル設計によって、増幅反応の希望する時点に二本鎖産物の融解解析を含めることができる。本実施形態では、二本鎖DNAに組み込まれるプライマーのみが蛍光を発し得る。非組み込みプライマーは、蛍光を発しない。それゆえ、結合していないプライマーを物理的に分離する必要がない。前記方法は均質である。また、フルオロフォア放出は、全ての二本鎖産物から生じるのではなく、標識されたプライマーを含む産物の二本鎖領域からのみ生じる。後述の実施例1では、これらの改良点を立証している。多様な長さの混合伸長産物を生じるように設計された一回伸長サイクルにおいて、プライマーのフルオロフォアからの放出の検出に基づく融解曲線は全産物を示すが、色素からの放出の検出に基づく融解曲線は示さないことがわかる。実施例1は、等温反応における本実施形態の方法の使用も実証している。
【0034】
当業者が認めるように、蛍光性DNA色素、例えばSYBR Green Iのインターカレートした色素からのFRETによって励起される蛍光標識されたプライマー又はプローブと共に使用される場合、蛍光の重複を補正することが一般に重要である。なぜなら、蛍光性DNA色素が一般に、プライマー又はプローブによって放出された蛍光を測定するのに使用される光の波長を含み得る広いスペクトル域にわたる光を放出するためである。望ましい補正は、1)色素だけの放出スペクトルを確定すること、2)プライマー又はプローブの放出波長よりも短い波長で各サンプルにおける色素放出の強度を測定すること、3)ステップ1)及び2)の知見からプライマー又はプローブの放出波長で色素放出の強度を算出すること、4)プライマー又はプローブの放出波長で測定された総強度から算出された色素強度を減ずることによって達成され得る。ABI 7700及びCepheid Smart Cycler等の市販の多くの装置は、この補正を実行するためのソフトウェアを提供している。他の方法としては、色素スペクトル、色素放出単独、及び総色素/総プライマー放出の測定を行い、補正に関して満足できる式にマニュアルで当てはめることができる。例えば、LeeとFuerstによる特許文献15には、Light Cyclerでの前記測定式、及びSYBR Green Iの蛍光の重複のマニュアル補正に関する記載がある。
【0035】
本願に記載した実施例は全てABI 7700で行なわれており、また装置のソフトウェアを利用して全ケースで蛍光の重複を補正している。該ケースは、色素単独の蛍光が記録されているかどうかにかかわらず、蛍光性DNA色素を間接励起性蛍光プライマー又をプローブと共に使用している。
【0036】
単一プライマー対を利用したPCR増幅については、少なくとも一つのプライマーが上記のような間接的に励起されたフルオロフォアで標識されており、本実施形態に従った融解曲線解析により目的の産物と非特異的産物とを区別することができる。複数のプライマー対を利用した多重PCR増幅については、各対の少なくとも一方のメンバーがフルオロフォア標識され、また各対に異なるフルオロフォアが使用されおり、異なる目的の産物を色により及び異なるフルオロフォアに関連した融解温度により区別できる。一般的にPCR増幅については、フルオロフォア放出、及び色素放出を、それぞれ特異的産物の増大を追跡するため、及び全二本鎖産物の増大を追跡するため、反応中にモニターすることができる。
【0037】
増幅反応の解析は、フルオロフォア放出(すなわち、ハイブリダイズしたプライマーやプローブに特異的なシグナル)対さほど特異的でない色素放出シグナルの比を利用できる。このような比は、例えば、反復反応(replicate reactions)間の変動を補正できる。解析は、標識プライマーが(単数又は複数の)伸長産物に組み込まれる際に、その大きさが減少するプライマー‐鋳型の融解ピークを利用することもできる。
【0038】
本発明は、蛍光性DNA色素、色素が励起されたときに間接的に励起されるフルオロフォアで標識されたプライマーを含む少なくとも一セットプライマー対、そしてプライマーによって、好ましくはLATE-PCR法によって定まる領域を増幅するための試薬を含む増幅キットとその部分キットを含む。
【0039】
本発明の方法のもう一つの実施形態は、核酸増幅混合物にSYBR Green I、又は好ましくはSYBR Gold等の蛍光性DNA色素、及び本発明のプローブであってもよい少なくとも一つの間接励起性消光アレル識別型低温Tm又は超低温Tmハイブリダイゼーションプローブを添加することを含む。本発明のアレル識別型プローブは、それらが色素を励起することにより間接的に励起されるフルオロフォアで標識されていること、および、それらが低温Tm又は超低温TmプローブとしてLATE-PCR増幅での使用に適した低温融解温度を有することを除けば、非特許文献8(ターゲットに相補的なフルオロフォア標識の直鎖状オリゴヌクレオチドプローブ鎖、及びプローブ鎖よりも短い、通常2〜10ヌクレオチドのクエンチャー標識された相補鎖)に記載された二本鎖プローブタイプである。二本鎖プローブのアレル識別能については、Liらにより記載されたようにバックグラウンド蛍光のレベルを調整できたのと同様にして、調整することができる。加えて、バックグラウンド蛍光については、蛍光部分に隣接するグアニジン残基を含んだ、いわゆる「G消光」によって低減することができる。
【0040】
本実施形態の方法は、前記混合物を利用した増幅、及びプローブがアレル識別様式でハイブリダイズする温度での検出を含む。好ましい実施形態は、前述のプローブが合成中の一本鎖アンプリコンにハイブリダイズするLATE-PCRの比例増幅期間中に低温検出ステップを用いること、フルオロフォアを直接励起しない波長で蛍光性DNA色素を励起すること、そして本様式で間接的に励起される、プローブのフルオロフォアから蛍光を読み取ることを含む。他の実施形態は、増幅に続くエンドポイント測定のような低温検出を含む。いくつかの実施形態は、色素からの放出を検出することをさらに含み、またいくつかの好ましい実施形態は、プローブ放出対色素放出の比を算出することを含む。色素放出の検出は、反応混合物の温度が、存在する全プローブの融解温度を上回っている間に、検出ステップ開始当初から行われることがもっとも好ましい。蓄積中の又は蓄積した二本鎖分子(色素シグナル)からの、及び蓄積中の又は蓄積した一本鎖分子(各プローブからのシグナル)からのデータは、既述の方法で比率を計算するのに利用できる。もしもフルオロフォア標識が、色素からの放出で刺激されるが色素を励起するのに使用された波長で刺激されないのであれば、本実施形態の方法は特許文献14に記載されているような低温分子指標プローブの使用を含む。
【0041】
本発明は、低温検出ステップ(エンドポイント又はリアルタイム)と共に非対称性増幅、好ましくはLATE-PCR増幅を行うための試薬を含み、また蛍光性DNA色素、少なくとも一組のプライマーペア、好ましくは過剰プライマーと制限プライマーを含むLATE-PCRプライマーペア、及び増幅反応の一本鎖産物(過剰に存在するプライマーの伸長産物)に対する少なくとも一つのフルオロフォア標識された低温Tm又は超低温Tmハイブリダイゼーションプローブであって、該プローブは目的の検出温度でミスマッチ寛容性ではないがアレル識別型であり、また該プローブのフルオロフォアは色素の励起によって間接的に励起されるハイブリダイゼーションプローブを包含するLATE-PCRアッセイキット及びその部分キットを含む。好ましいキット又は部分キットでは、少なくとも一つのプローブが本発明のアレル識別型プローブである。本発明は、非対称性増幅用、好ましくはLATE-PCR増幅用の少なくとも1対のプライマー、及び上記のように間接励起性となるようなフルオロフォア、好ましくはSYBR色素で標識された少なくとも一つの低温Tm又は超低温Tm消光アレル識別型二本鎖プローブのほか、前記二本鎖プローブ自身も包含するオリゴヌクレオチドセットも含む。
【0042】
本発明の方法のさらなるもう一つの実施形態は、非対称性増幅反応混合物、好ましくはLATE-PCR反応混合物にSYBR Gold等の蛍光性DNA色素、及び少なくとも一つのミスマッチ寛容性一本鎖直鎖状ハイブリダイゼーションプローブを含んでなる検出試薬を添加することを含む。該ハイブリダイゼーションプローブは、増幅反応において存在してもよいし、しなくともよい1つの可能な一本鎖アンプリコンターゲット配列に完全に相補的であり、また存在するであろう少なくとも1つの他の可能な一本鎖アンプリコンには完全には相補的でない。本実施形態で有用なプローブは、色素からの蛍光放出で間接的に励起性となるフルオロフォアで標識された一本鎖である。該プローブは、存在し得る中で最も相補的な可能性のあるターゲット(通常は完全にマッチするターゲットを意味する)に対して低温Tm、あるいは好ましくは超低温Tmのプローブである。それらは、増幅反応の指数関数的増幅期内で完全に相補的なターゲットに対し、せいぜい数度高いTm[0]を有し、また、好ましくはプライマーアニーリング温度以下、より好ましくはプライマーアニーリング温度より少なくとも5℃低いことが望ましい。プローブを、直鎖状(又はランダムコイル)プローブ、又は本発明のランダムコイルプローブ、すなわち低温で二次構造の形成によりシグナルを消することで消光されたプローブにすることができる。本発明の消光直鎖状プローブは、好ましくは一方の末端にフルオロフォアを、また他方の末端に非蛍光消光部を有し、プローブの3’末端がリン酸キャップで置換されているか、さもなくばプローブの伸長を阻害するため、すなわち、プライマーとして機能することを阻害するため付加されている。
【0043】
本実施形態は、前記混合物を、一本鎖アンプリコン分子を生成するための非対象性増幅にかけること、好ましくはLATE-PCR増幅にかけること、及び増幅反応混合物を、ハイブリダイゼーション時にシグナルを発する少なくとも一つのミスマッチ寛容性プローブを利用する温度解析にかけることを含む。温度解析は、増幅反応が完了した後だけでなく、制限プライマーの枯渇後に一本鎖産物が生成される温度サイクル期間のLATE-PCR低温検出ステップ中にも行われ得る。温度解析は、温度が低下し又は上昇するときに、それぞれ形成され又は不安定化されるプローブ‐ターゲットハイブリッドの融解温度に準じて各プローブのターゲットを明らかにする。温度が低下するにつれて、プローブはまず完全にマッチするターゲット(もし存在するならば)にハイブリダイズし、蛍光シグナルを放出するだろう。温度がさらに低下するにつれて、プローブは徐々に「よりミスマッチした」ターゲットに連続してハイブリダイズし、その時その時で増加した蛍光シグナルを放出するだろう。従来の実施形態に関連して説明したように、蛍光性DNA色素からの放出は、好ましくはプローブがハイブリダイズしていないとき、すなわちプローブのTmを超える温度において、反応における二本鎖分子の蓄積のモニターを可能にすることで、及びレプリカ(複製)サンプル間での分散を減らすために比の利用を可能にすることで検出できる。
【0044】
本発明は、非対称増幅用、好ましくはLATE-PCR増幅用試薬を含み、また一本鎖増幅産物用の蛍光性DNA色素、少なくとも一組のプライマーペア、好ましくは過剰プライマーと制限プライマーを含むLATE-PCRプライマーペア、及び必要であれば消光された少なくとも一つのミスマッチ寛容性低温Tm又は超低温Tmランダムコイルプローブを包含するキットを含む。また、本発明は前記プライマー及びプローブ、並びに前記プローブそれ自身を包含する部分キット及びオリゴヌクレオチドセットも同様に含む。
【0045】
LATE-PCRアッセイの低温検出ステップ、好ましくはプライマー伸長に続き、二本鎖融解前に低温検出ステップを利用する本発明の方法は、複数のターゲットに対して少なくとも一つのプローブを含む複数プローブアッセイに加えて、一以上のプライマーペアを含み、また一以上の一本鎖アンプリコン(各ターゲットに対して一プローブ)を生じる多重プローブアッセイを含む。低温検出ステップを用いたいくつかの好ましい方法は、プライマー伸長に続き、二本鎖融解前に低温検出ステップを含む。前記アッセイの検出ステップ期間中、温度をプライマーアニーリング温度以下30℃ほど又は40℃以下まで下げることができ、検出に大きな温度枠を提供している。アレル識別型プローブを、色(フルオロフォア放出波長)によって区別できることに加えて、融解温度の相違により区別することができる。例えば、ターゲットに対してそれぞれ30、35、40、45℃のTmをもつ4つの異なるFAM標識されたアレル識別型プローブを、増幅後融解解析だけでなく、反応温度が低下又は上昇するときにリアルタイムで、又は増幅に続くエンドポイント測定として識別することができる。この追加された自由度により、同一反応で使用できる異なるプローブの数がかなり増える。ミスマッチ寛容性プローブは、完全マッチ型プローブよりもミスマッチターゲットに対して、より低いTmを有すると思われる。ハイブリダイゼーションでシグナルを発する異なった色をもつ低温ミスマッチ寛容性プローブの組み合わせは、低温検出中に温度依存的蛍光放出曲線のパターンを生じる。本発明の方法は、増幅後融解解析を用いて、またLATE-PCR低温検出ステップ枠内でいくつかの温度で蛍光をモニターすることで、混合されたターゲットの構成をリアルタイムで同定するために、一つの温度か、あるいは異なる温度で前記放出曲線、派生曲線、及びそれらの曲線の比の利用を含む。比は、同一プローブ/プローブ比、異なるプローブ/プローブ比、プローブ/色素比、及びそれらの組み合わせを含み得る。
【0046】
LATE-PCRキット、部分キット、及びオリゴヌクレオチドセットは、Tmによって、又は異なるターゲットへのハイブリダイゼーションをTmで区別することができる少なくとも二つのミスマッチ寛容性プローブによって、好ましくは、蛍光性DNA色素を励起することで間接的に励起される消光性ランダムコイルプローブによって区別することができる同一色の少なくとも二つのアレル識別型プローブを含んでいてもよい。
【0047】
本発明は、LATE-PCR増幅の増幅産物をジデオキシシークエンス法、又はピロシークエンス法等の合成同時シークエンス法のいずれかのシークエンス反応用に調製するため改善された方法を含む。特に、本発明者らは、一つの反応容器でそのような開始材料の生成や調製を実証した。好ましい実施形態は、LATE-PCR反応混合物にミスプライミングを阻害するための試薬を含み、もっとも好ましくは本発明者らの米国仮特許出願番号60/619,620、発明の名称「PCR増幅での再現性の改善とミスプライミングの低減のための試薬及び方法」に開示した試薬を含む。なお、本文献は引用によってその全てを本明細書に援用する。ジデオキシシークエンス法について本発明者らは、サンプル希釈の一回のステップでLATE-PCR増幅産物をシークエンス用に調製できることを実証した。本発明者らは該方法を「希釈して開始する(dilute and go)」方法と呼んでいる。ピロシークエンス法については、本発明者らは、プライマーアニーリング前にLATE-PCR産物の混合物にピロシークエンス酵素/基質試薬を添加するするだけでよい方法を実証した。
【0048】
本発明の方法は、同一反応チューブ、又は同一マイクロ流体デバイス中の室内等、同一容器内でのLATE-PCR増幅、及びピロシークエンス用サンプル調製も含む。それら全てを本発明者らは略して「単一チューブ」法と呼んでいる。これまでのピロシークエンス法で、DNAはプライマーの一つがビオチン分子で5’末端標識されている対称的PCRによって増幅される。増幅後、ストレプトアビジン被覆されたビーズが、一本鎖DNA(ssDNA)を分離するために真空、又は磁気装置と共に使用され、ピロリン酸(PPi)、dNTP、及びPCRプライマーを含むピロシークエンス法を妨げるPCR反応の残余成分を洗い流す。LATE-PCRは、PCRから使い残った4つの干渉成分を排除する同一容器法と組み合わせると、ssDNAを生成する能力によって鎖分離の必要性をなくし、サンプル調製を容易にする。そのような一方法において、ピロシークエンスに十分なssDNAが生じる程度のdNTP量を使用するように注意して、LATE-PCR増幅反応混合物中のdNTP量を制限して使用することにより、増幅終了時に残ったdNTPを除く必要性は最小となる。ピロシークエンス活性を持つ酵素、例えば、酵母ピロホスファターゼ等のピロホスファターゼが、増幅産物に添加されてPPiを除去する。また、混合物はピロシークエンスに進む前に加熱してその酵素を失活させる。制限プライマーはLATE-PCR増幅反応後は残っておらず、また残った過剰プライマーは増幅中の過剰プライマーから伸長した鎖(過剰プライマー鎖)をプライミングできないので、多くの場合、残りのプライマーを除く必要はない。しかし、LATE-PCR反応混合物にピロシークエンスに使用される温度を含め、過剰プライマーのTmよりも低い温度で過剰プライマーにハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを包含することにより、潜在的なミスプライミングを回避することができる。あるいは、3’末端での伸長を阻害し、また過剰プライマーに完全に相補的なオリゴヌクレオチドが、ピロシークエンスに使用される温度で過剰プライマーによるミスプライミングの可能性を防止するためにLATE-PCR増幅後、ピロシークエンス前に添加され得る。増幅中に制限プライマーから伸長した鎖(制限プライマー鎖)の3’末端で過剰プライマーによるミスプライミングを回避する第3の方法は、結合部位に対する競合から過剰プライマーを除外するため、過剰プライマーと同一の配列を含む3’末端阻害オリゴヌクレオチドを十分な濃度で使用することに関連する。
【0049】
本発明者らの「単一チューブ」サンプル反応のより好ましい方法では、特定の増幅に対して適切な制限dNTP濃度を決める必要がない。本方法で本発明者らは、まずdNTPとPPiを除いたLATE-PCR産物にピロシークエンス酵素/基質試薬を加える。これに続いて、添加したシークエンスプライマーを用いてプライマーアニーリングを行う。その後、ピロシークエンス用に個々のdNTPを加える。あるいは、ジャガイモアピラーゼ等のdNTPアーゼ活性をもつ精製酵素の添加によりdNTPを除去し、続いて過熱によって該酵素を失活させてもよい。また、一つには、酵母ピロホスファターゼ等のピロホスファターゼ活性をもつ精製酵素の添加によりピロホスファターゼを除去し、その後過熱によって該酵素を失活させてもよい。もしも両酵素が使用されるなら、それらを同時に添加することができる。
【0050】
本発明のアッセイ、特にLATE-PCRアッセイは、好ましくは反応後期にプローブシグナルの減少の原因となり得るミスプライミングを回避する手段を含む。本発明者らは、本発明者らの上記米国仮特許出願で開示したミスプライミング抑制試薬を反応混合物に含めることで、首尾よくこの「フック効果」を回避した。本発明者らは、反応に加えるポリメラーゼの濃度を調整することでも、その効果を回避した。ポリメラーゼの調整によるミスプライミングの低減については、当業分野で既知の様々な手段により明らかにされる最終産物の組成によることに加えて、ssDNAのプローブを用いたLATE-PCR反応の動力学によって観察することができる。
【0051】
本発明の一以上の実施形態の詳細は、添付した図面及び以下の説明で述べる。本発明の他の特徴、目的、利点は、明細書、図面、及び請求の範囲から明白であろう。
【0052】
<図面の簡単な説明>
(後述の「図面の簡単な説明」の項を参照のこと。)
様々な図にある類似の記号は、同じような要素を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0053】
<発明の詳細な説明>
本発明は、フルオロフォアに強く吸収される波長の光(可視光、又は不可視光)を当てることで直接励起されるのではなく、SYBR Green、又は好ましくはSYBR Gold等の近傍の蛍光性DNA色素を励起する波長の光を当てることにより間接的に励起される少なくとも一つのフルオロフォアで標識されたプライマーからの蛍光放出の検出を含む、例えばPCRアッセイのような核酸増幅アッセイを含む。加えて、本発明は、全ての及びいくつかの増幅試薬を含む完全キット及び部分キット、及び前記標識プライマーを含むオリゴヌクレオチドセット、そしてプライマーそれ自身を含む。
【0054】
増幅プライマーは、周知である。本発明のプライマーは、ターゲット鎖にハイブリダイズし、適切なポリメラーゼで伸長される通常50塩基長未満の短いオリゴヌクレオチドである。プライマーは、天然ヌクレオチドで構成されていてもよく、あるいは人工のヌクレオチド及び人工のヌクレオチド間結合を含んでいてもよい。プライマーは、通常直鎖状オリゴヌクレオチドであるが、二次構造を含んでいてもよい。(例えば、Nazarenko IA、Bhatnagar SK、Hohman RJの「A Closed Tube Format for Amplification and Detection of DNA Based on Energy Transfer」(1997) Nucleic Acids Res. 25:2516-2521を参照されたい)。増幅は、フォワードプライマー及びリバースプライマーのそれぞれからなる一以上のプライマーペアの使用をしばしば含む。本発明の方法、キット及びオリゴヌクレオチドセットでは、プライマーペアの一方、あるいはプライマーペアの双方のいずれかが、近傍の蛍光性DNA色素が刺激されたときに蛍光を発する、共有結合されたフルオロフォアで標識されている。標識プライマーが鋳型鎖においてその相補的配列にハイブリダイズ(又はアニール)するとき、二本鎖領域が形成される。蛍光性DNA色素は、その領域で二本鎖領域にインターカレートするか、又は他の方法で結合する。そして、フルオロフォアを直接励起しない波長で色素が刺激されたときにフルオロフォアが特有の波長を放出するようにプライマーのフルオロフォア近くのその領域で蛍光を発するようになる。これらのプライマーを使用して、PCR、及びリアルタイム検出又はエンドポイント検出でのプライマー伸長アッセイで生じた産物のようなDNAポリメラーゼの伸長により生じる産物の合成をモニターでき、及び/又は融解曲線解析により産物を特異的に評価できる。
【0055】
PCR増幅(対称性又は非対称性、特にLATE-PCRを含む)のためのプライマーを含む、DNAポリメラーゼによる伸長の基質として使用される本発明のプライマーは、いずれかのヌクレオチドの位置で、オリゴヌクレオチドプライマーの3’末端が伸長に利用可能な状態で残るように共有結合されたフルオロフォアで標識されている。本プライマーは、非特許文献8に記載された二本鎖プローブの設計を有し得る。プライマーのオリゴヌクレオチドにおける唯一の配列制限は、オリゴヌクレオチドが間接的なフルオロフォア励起をそれ自身で誘導するどんな二次構造も有してはいけないことであり、通常2塩基対以上の二次構造がないことを意味する。フルオロフォア部分は、使用する励起源波長で感知できるほどに直接励起されるべきではないが、色素は該波長で直接励起されなければならない。つまりフルオロフォアは、蛍光性DNA色素が通常フルオロフォアが蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を受ける距離以上に離れない隣接した存在下で励起されたときに放出しなければならない。また、選択されるフルオロフォアの放出スペクトルは、フィルターの使用、又はスペクトルデコンボルーションのいずれかにより蛍光性DNA色素の放出スペクトルと区別されなければならない。これらの条件下でフルオロフォアは、プライマーアニーリングに続くDNAポリメラーゼによる伸長を含んだ二本鎖産物内への取り込みで蛍光を発する。蛍光の喪失は、加熱中にフルオロフォアを含む二本鎖DNAの特定の鎖の融解温度(Tm)に達したときに生じる。
【0056】
蛍光性DNA色素と併用する本発明のプライマーの使用条件(プライマーとDNA色素濃度、DNA色素励起波長)は、当業分野で知られている反応中のプライマー伸長反応(PCRを含む)産物の合成をモニターするための、また蛍光が色素の放出波長の代わりに又はそれに加えてプライマーフルオロフォアに相当する放出波長で回収される場合を除き、蛍光性DNA色素のみを使用する融解曲線解析により伸長産物の特異性を評価するための条件と同じである。これらの条件下で蛍光シグナルは、反応における全ての二本鎖配列からではなくプライマーを含んでいる二本鎖配列から生じる。
【0057】
本発明の方法とシステムに対するDNA色素の性能の比較を後述の実施例1及び図1で報告する実験で行った。フルオロフォア標識プライマーは、SYBR Green色素の存在下で、及びプライマー伸長の領域近くの鋳型鎖にハイブリダイズした比較的長い伸長不能型オリゴヌクレオチドの存在下でDNAポリメラーゼによって伸長された。これにより鋳型を有するハイブリッドが60℃(フルオロフォア(Cy5)標識プライマー)から79℃(伸長不能型オリゴヌクレオチド)に及ぶTmを有し、プライマー伸長産物のTmはそれら二つのTm間となるような、鋳型鎖−未伸長プライマーハイブリッド、短いプライマー伸長産物、及び伸長不能型オリゴヌクレオチドを有する産物混合物が生じた。
【0058】
鎖融解曲線解析は、色素から読み取った蛍光とフルオロフォアから読み取った蛍光の両方を用いて最終反応混合物(二重サンプル)で行われた。融解曲線を図1に示す。パネルAは、色素放出を利用して得られた融解曲線1である。単独のピークは、伸長不能型オリゴヌクレオチドの融解温度79℃である。他のピークはなく、未伸長プライマーのピークすら見られない。パネルAは、SYBR Green色素が融解曲線の生成期間に、より高いTmのハイブリッドへ移行し、より低いTmのハイブリッドの存在を隠すことを実証した。パネルBは、フルオロフォア放出を利用して得られた融解曲線2である。該パネルは、未伸長プライマー‐鋳型ハイブリッドのTmである60℃のピーク、及び69℃と79℃間の温度の付加的なピーク、すなわちプライマー伸長産物を示すピークを示している。融解曲線1で示したような色素移行の傾向にもかかわらず、より低いTmが見られる。本発明の蛍光放出のモニタリングにより、混合物中の、正しい濃度のフルオロフォアで標識されたあらゆるハイブリッド種が明らかになる。
【0059】
プライマーペアの少なくとも一方が本発明のプライマーである1対のプライマーを利用するPCR増幅の場合、融解曲線解析は単一の蛍光で特異的と非特異的産物とを区別できる。特異的産物は予想される融解温度を有し、また非特異的産物は予想外の融解温度を有しているからである。各プライマーペアの少なくとも一方が本発明のプライマーである1対以上のプライマーを利用する多重PCR増幅の場合、それらは異なっているが予想可能なTm値を有しているため、及び/又は使用される二つの異なるプライマーが異なるフルオロフォアで標識されているため、二つの異なる特異的産物をお互いに区別することができる。さらに、本発明のプライマーを用いた融解曲線解析については、進行中の増幅反応期間に、又は反応終了時に行うことができる。
【0060】
反応経過中の本発明の一以上のプライマーの取り込みを使用して、PCR経過中の一以上のターゲットの増幅の程度を、又は等温伸長反応経過中の一以上の二本鎖DNAの鎖の合成を定量的に測定することもできる。どちらの場合も全長二本鎖産物の分子の量を、増加する蛍光を繰り返し検出することで長期間追跡することができ、又は反応終了時に測定することができる。さらに、等温反応又は温度サイクル反応のいずれかの経過中に本発明の一以上のプライマーの取り込みを用いて、部分産物、すなわち鋳型鎖に沿って伸長し始めたが、その最大可能な長さに達していないものの存在、及び/又は蓄積を測定することができる。このような場合において部分産物の融解温度は、全長産物の融解温度よりも低いが、その元となる標識プライマーの融解温度よりも高い。加えて、部分又は全長産物鎖への標識プライマーの取り込みに伴い、プライマー/鋳型DNA-DNAハイブリッドから生じる融解温度ピークの大きさは減少し、またそれをDNA合成の追加的な尺度として使用できる。
【0061】
上述のように、本発明のプライマーの取り込みによって合成される二本鎖DNA又はアンプリコンの各鎖で、結合したSYBR色素からのFRETにより、又は他の機構により間接的に刺激されたときにプライマーに共有結合したフルオロフォアの放出波長において蛍光シグナルすなわち「プライマー特異的シグナル」が発生する。同じ二本鎖DNAは、SYBR色素の放出波長で全二本鎖配列が蛍光を発するので、該DNAが取り込まれた標識プライマーを有するか否かにかかわらず、反応中に存在する全二本鎖配列の総量である蛍光シグナルすなわち「総SYBRシグナル」も発する。このように本発明のプライマーを使用して、以下の比(プライマー特異的シグナル/総SYBRシグナル:以降PSS/TSS値とする)によって蛍光シグナルを解析することができる。PSS/TSS値に関するデータ解析は、反復反応間の蛍光性DNA色素シグナルTSSにおける変動を補正する。これは、LATE-PCR増幅の場合に特に有効である。なぜなら一本鎖アンプリコン合成の速度は、反応の指数関数増殖期終了時に蓄積した二本鎖アンプリコンの量に比例するからである。したがって、反復反応間の二本鎖DNAレベルの小さな違いで一本鎖アンプリコン蓄積率が変わる。
【0062】
アンプリコンを増幅後の融解曲線解析で区別できる限り、同一フルオロフォアで標識された一以上のプライマーを利用することも可能である。この原理を例証するため図1、パネルBを参照されたい。最終伸長ステップ(エンドポイント)又は中間伸長ステップであり得る伸長ステップの終了時での共通のフルオロフォアからのシグナルは、フルオロフォアを取り込んでいる総アンプリコンの指標となる。融解曲線解析は産物間の区別をし、またそれらの濃度の量的な測定を提供する。
【0063】
LATE-PCRは、いくつかある有利な点の中で特に複数の行動をとることのできる大きな「温度スペース」を提供する非対称性PCR増幅である。特許文献9、及び上記で引用したSanchezらの非特許文献3を参照されたい。LATE-PCRは、「低温Tm」及び「超低温Tm」ハイブリダイゼーションプローブを使用して、一本鎖の増幅産物(アンプリコン)を検出することができる。ミスマッチ寛容性分子指標プローブのような一塩基対ミスマッチに逆らって識別することのできるアレル識別型プローブを含む、特定のアッセイにおいて一ターゲットに特異的である様々なタイプのプローブを、SYBR色素からの放出により間接的に励起できるフルオロフォアを有するミスマッチ寛容性分子指標プローブ又は直鎖状(ランダムコイル)プローブ等のミスマッチ寛容性プローブを利用できるように、低温Tm及び超低温TmプローブとしてLATE-PCRで利用することができる。本発明者らは、反応の中で一本鎖/二本鎖の比率を測定できるLATE-PCRアッセイの低温Tm及び超低温Tmプローブとして有用なアレル識別型プローブの新しいクラスを発明した。
【0064】
本発明のアレル識別型プローブは、非特許文献8に準じて改変された二本鎖アレル識別型消光性プローブである。該プローブは、以下の改変を有している。すなわち、該プローブは、SYBR Green又はSYBR Gold等の二本鎖DNA蛍光色素を励起することで間接に励起できるが、色素を刺激するのに利用される波長では直接には励起できないフルオロフォアで標識されている(これに関しては、上記で論じたプライマーに類似する)、また該プローブは、低温Tm又は超低温Tmプローブとなるように構築されている。ターゲット配列に結合しなかった場合、前記プローブは、相補性の低いオリゴヌクレオチドに結合する。相補的オリゴヌクレオチドは、プローブからのバックグラウンド蛍光を低減するためDabcyl又はBlack HoleTMクエンチャー等のクエンチャーを含むことが好ましい。あるいは又は加えて、フルオロフォアに隣接するグアニジン残基を含めること(G消光)で、バックグラウンド蛍光を低減させることができる。相補性の低い鎖は、完全に相補するターゲット鎖の存在下ではターゲットにハイブリダイズする、より長いフルオロフォア標識鎖と置き換えられる。そしてフルオロフォアは消光解除され、固有の波長で蛍光を発するように色素からのエネルギーを受けることができる状態にされる。異なるフルオロフォアで標識された異なるターゲット用のこれらのプローブのいくつかは、多重アッセイに使用され得る。
【0065】
前記アレル識別型プローブは、それを低温Tm又は超低温Tmにするアッセイにおいて濃度調整融解温度Tm[0]を有するように設計される。調整を最小にするための望ましい開始点として計算値を少なくとも使用することができるが、プローブ‐ターゲットハイブリッドのTm[0]は都合よく決定され、また経験的に調整される。フルオロフォア標識鎖に対して相補的プローブ鎖の長さと濃度は、アレル識別性を最大限にするように経験的に調整される。本発明者らは、フルオロフォア標識プローブより1〜3ヌクレオチド短い長さ、及びフルオロフォア標識プローブ濃度の1〜1.2倍の濃度で始めている。
【0066】
LATE-PCRアッセイにおいて本アレル識別型プローブは、低温検出ステップ、好ましくは制限プライマーの枯渇に続くサイクルでのプライマー伸長ステップに続いて利用される。マルチサイクルにわたるリアルタイムな読み取りについては、SYBR色素が励起され、色素とフルオロフォアの両方から蛍光が読み取られる。温度がプローブのTmを上回るときPCR伸長ステップの期間中又は終了時に色素シグナルを読み取ること、及びプローブ(本発明のアレル識別型プローブ、又は適当に標識された分子指標プローブのどちらか)がハイブリダイズしたとき低温検出ステップ温度内のフルオロフォア放出を読み取ることが好ましい。その後、各プローブ対全SYBRシグナルの蛍光比が測定される。この比は、産物の蓄積の違いにより反復アッセイ間の相違を最小にする。相違を最小にするので、前記比率をエンドポイント分析にも使用することができる。
【0067】
本発明のプライマー及びプローブにより可能となる一本鎖産物対二本鎖産物の比の利用は、既述のように、反復アッセイ間の分散を低減させるための技術である。これは、特に反応動力学が明らかでないエンドポイントアッセイに重要である。一例として、アレル及び本発明のアレル識別プローブの双方に対する1対のプライマーを利用してホモ接合体サンプルと異型接合体サンプルを区別するLATE-PCRアッセイがある。図2は、SYBR色素(この場合、SYBR Goldで)、一方のアレルがCy5で標識されたアレル識別型プローブ、色素の励起と色素からのシグナルの読み取り(伸長温度72℃で)、及びフルオロフォア(プライマー伸長に続く低温検出の55℃で)を用いて行われる低温検出ステップをもつLATE-PCR増幅にかけられた時に達成される分散減少を例証している。パネルAは、レプリカ同型接合体サンプル(丸印21)、及びレプリカ異型接合体サンプル(丸印22)のフルオロフォアからのリアルタイムな読み取りを示している。見て明らかなように、レプリカ間の分散は違いをあいまいにしている。しかし、パネルBは、同型接合体サンプル(丸印23)と異型接合体サンプル(丸印22)についてCy5シグナル対SYBRシグナルの比をプロットしている。分散の減少は、エンドポイントアッセイを安定させるのに十分である。
【0068】
本発明は、蛍光性DNA色素(例えば、SYBR Green又はSYBR Gold)からの放出で励起できるフルオロフォアで標識され、好ましくは末端標識され、またバックグラウンド蛍光を低減するために消光化されたミスマッチ寛容性低温Tm又は超低温Tm直鎖状一本鎖プローブも含む。これらのプローブは、ターゲットがないときの蛍光を抑制する消光部分を有している。ミスマッチ寛容性直鎖状プローブは、温度が低下するにつれて折りたたまれる傾向にあり、短い二本鎖領域を形成する。低温LATE-PCR検出ステップの使用により、この傾向は悪化する。プローブ配列がターゲット配列にハイブリダイズしたときは、この現象は起こらない。もし、プローブが反応混合物中に存在するSYBR色素からの放出により励起されるフルオロフォアを含んでいるのであれば、色素は非結合プローブ分子の意図しない二本鎖領域にインターカレートするか、あるいは該領域に結合してFRETによりプローブのフルオロフォアを励起する。その結果、低温でバックグラウンド蛍光が増加する。
【0069】
本発明のミスマッチ寛容性プローブの消光は、プローブにおける非結合プローブ内部の目的外の二次構造から生じるフルオロフォア蛍光を消光する位置に消光部、例えばDABCYL又はBlack HoleTMクエンチャー(BHQ)を付加することで得られる。可能であれば必ずフルオロフォアと反対の末端部にクエンチャーを付加することが好ましい。後述の実施例2は、二つの可能な技術、すなわち単純にクエンチャーを付加すること、又はクエンチャーをフルオロフォアに、二次構造に、又はその両方に近接するように導く特別に設計された二次構造である消光ヘアピンを構築することを例示している。構築される二次構造のTmは、ターゲット非存在下でほとんどのプローブ分子がヘアピン構造をとり、またバックグラウンド蛍光が低くなるように、他のどの二次構造のTmよりも少なくとも5℃高いことが好ましい。ステム内の配列のターゲットへのハイブリダイゼーションをステムの形成で妨げないように、構築されるステムのTmは、完全にマッチするターゲットにハイブリダイズするプローブのTmよりも低く、ミスマッチターゲットにハイブリダイズするプローブのTmに類似している。
【0070】
核酸ターゲットの検出及び同定は、ハイブリダイズした際にシグナルを発する一つの又は多数の低温ミスマッチ寛容性プローブを利用することで達成され得る。該プローブは、ミスマッチ寛容性分子指標プローブ、蛍光性DNA色素を励起することで間接的に励起される直鎖状一本鎖プローブ、及び本発明の消光直鎖状プローブを含む。プローブ混合物は、いくつかの実施形態については、少なくとも一の本発明のアレル特異的プローブも含み得る。一つの有用な技術は、プローブの少なくとも一つに関して似たようなTmを持つターゲット間を温度関数としての二つのプローブの蛍光の比を利用して区別することである。このような比の曲線を、時々ターゲットの「蛍光サイン」と呼ぶ。
【0071】
低温検出ステップを含むLATE-PCRを用いて検出温度の効果と蛍光サインの効果を組合わせることができる。本発明の消光性一本鎖間接励起性プローブを含むがそれに制限されない多数のミスマッチ寛容性プローブを使用したアッセイは、二本鎖DNAを変性する高温ステップ(95℃2分間)、それに続く制限プライマーと過剰プライマーの両方を利用する指数関数期増幅(95℃10秒、60℃15秒、そして78℃40秒の30サイクル)、続く指数関数増殖期の完了と、その後のプローブ検出ステップを含む比例増殖期(95℃10秒、60℃15秒、78℃40秒、55℃20秒、50℃20秒、45℃20秒、そして40℃20秒の40サイクル)からなるLATE-PCR増幅である。これは、プライマーアニーリング温度である60℃より低い4つの検出温度を提供する。二本鎖生成は、いずれのプローブのTmよりも高い78℃のプライマー伸長温度でSYBR色素からの放出によってモニターされ得る。フルオロフォア放出は、55℃から40℃に至る各低温度でモニターされ得る。最終サイクル後、温度は例えば30℃といった低い数値に下げられ、融解解析のために徐々に上昇され得る。検出された蛍光レベルに加えて、フルオロフォア蛍光対色素蛍光の比およびフルオロフォア蛍光の比が使用され、アンプリコン識別情報を構築できる。
【0072】
いくつかの図面が、前記可能性を利用した技術の例証となる。図4は、数種のミコバクテリア(Mycobacteria)の16sリボソームRNA遺伝子に対するミスマッチ寛容性プローブの融解挙動を示している。ここでは、二つのプローブが使用されている。一つは実施例2に記載したヘアピン形成型消光性プローブであり、5’-Cy5- CTG GAT AGG ACC ACG AGG CCA G - BHQ II -3’ (配列番号2)の配列を有している。もう一つはTAMRA標識プローブであり、5’-G CAT GTC TTG TGG TGG-TAMRA-3’ (配列番号3)の配列を有している。非消光性の後者プローブは、数種についてはバックグラウンドを上回る識別可能なシグナルを呈示することがわかった。図4のパネルAは、ターゲット無し(線41)、M.アジアティカム(M. asiaticum)(線42)、M.ゴルドナエ(M. gordonae)(線43)、M.ハイデルバージェンス(M. heidelburgense)(線44)、M.マルモエンス(M. malmoense)(線45)、及びM.マリナム(M. marinum)(線46)を用いたヘアピンプローブに関する融解曲線を示している。パネルBは、ターゲット無し(線47)、M.アジアティカム(線48)、M.ゴルドナエ(線49)、M.ハイデルバージェンス(線50)、M.マルモエンス(線51)、及びM.マリナム(線52)を用いたTAMRA標識プローブに関する融解曲線を示している。図4のパネルCは、TAMRA蛍光対Cy5蛍光の比をプロットしており、M.アジアティカム(線53)、M.ゴルドナエ(線54)、M.ハイデルバージェンス(線55)、M.マルモエンス(線56)、及びM.マリナム(線57)を示す。
【0073】
もう一つの解析技術は、フルオロフォアからの蛍光変化率を温度関数としてプロットすることである。図5は本発明の上述したCy5標識した消光性ヘアピンプローブ及びTAMRA標識した非消光性プローブに関する前記プロットを示している。パネルAは消光性ヘアピンプローブであり、またパネルBはTAMRA標識プローブである。プロットは、M.アジアティカム(線61、71)、M.ゴルドナエ(線62、72)、M.ハイデルバージェンス(線63、73)、M.マルモエンス(線64、74)、及びM.マリナム(線65、75)の融解ピークを示している。両プローブを使用することで、融解ピークにより5種のターゲットを区別することができる。Cy5標識プローブは、単独で他種からM.ゴルドナエ(線62)を区別できた。TAMRA標識プローブは、単独でM.アジアティカム(線71)、M.ゴルドナエ(線72)、及びM.マリナム(線75)のそれぞれをお互いから区別できた。M.ハイデルバージェンスではCy5プローブで高いピークが、またTAMRAプローブで低いピークが生じるのに対してM.アジアティカムではその反対のピークが生じるので、合わせて考えると本プローブでM.アジアティカムとM.ハイデルバージェンスを区別することができる。アンプリコンあたり一つのプローブを用いて、相対的なピークの高さが産物濃度の違いを反映できる。しかし、ここでは両プローブで同じアンプリコンを検出しているので、相対的なピークの高さは、プローブ‐ターゲットの融解特性における違いを反映している。
【0074】
上述したもう一つの解析ツールは、一以上の蛍光比率、たとえば本明細書に記載の特定の実施形態においてはPCR中に同じ温度又は異なる温度でTAMRA蛍光対Cy5蛍光の比等を利用することである。プローブ設計についての有用なストラテジーは、参考となる複数種に共通した保存領域に結合するプローブを一つ設計することを含み、又は必要であれば保存領域として制限プライマー配列の一部を利用することを含む。これはLATE-PCRにおける選択肢である。なぜなら、プローブのTmは制限プライマーのTm及びアニーリング温度よりも十分低いので、共通配列をもったプローブは増幅を妨げないからである。図6は、蛍光比率の組み合わせを用いた結果を示している。本実施形態では、一方の比として、それぞれ40℃で回収したTAMRA/Cy5蛍光値を、また他方の比として、45℃と55℃の検出温度でそれぞれ回収したTAMRA/Cy5の蛍光シグナル比を利用した。図6は、本例においては50サイクルの特定のサイクルでの両比をプロットしている。6回の反復実験から様々な種、M.アジアティカム(丸印81)、M.ゴルドナエ(丸印82)、M.ハイデルバージェンス(丸印83)、M.マルモエンス(丸印84)、及びM.マリナム(丸印85)に関する非重複データが得られた。
【0075】
PCR中に異なる温度でプローブ蛍光を測定することは、解析をPCR後の融解に制限することよりも利点がある。利点の一つは、閾値サイクル(CT値)に達した後は特定のサイクル数で蛍光値を比較できることである。これは、上述したようにSYBR色素(又は他のインターカレートする色素)を用いた比の使用により可能となる。もう一つの利点は、各サンプルがアンプリコン検出前のサイクル期間にそれぞれの温度で測定されたバックグラウンド蛍光を有していることである。それゆえ、バックグラウンド蛍光でのサンプル間の変化を正確に調整することができる。プローブが異なるターゲットに対してハイブリダイゼーションの違いを示す温度範囲にわたり、ほぼ完全な融解解析をもたらすことで、PCR期間中に多数の温度で蛍光を測定することができる。これらのステップの回数と継続時間は、検出装置の能力に一部依存する。温度上昇中又は温度下降中の連続的な蛍光検出は、いくつかのサーマルサイクラーで行うことができる。多重温度での検出は、最初の蛍光上昇が予想される直前のある時点まで開始する必要はない。複数温度での検出は、サイクルごとに、又はいくつかの異なる間隔で、例えば5サイクルごとに行われ得る。最初のサイクルの期間、複数検出ステップを制限すること、及びそれらのステップの頻度を減少させることは、増幅反応を完了するのに必要とされる全時間を短縮する。プローブ蛍光対色素蛍光の比を利用する場合、プローブがそのターゲットにハイブリダイズする温度を通してプローブ蛍光を測定し、またプローブが結合しない温度でSYBR蛍光を測定することが好ましい。SYBR蛍光は伸長温度で測定することが最も好ましい。プローブ蛍光は、SYBR蛍光がプラトーに達すると同時に、閾値サイクル(CT)値を十分に超えたサイクルで増加するので、それらの比は増幅反応期中に変わりえる。したがって、それぞれのサンプルのCT値を過ぎた特定のサイクル数後での個々のサンプルの比を比較することは重要である。
【0076】
ミスマッチ寛容性プローブを用いることで、一本鎖DNA産物の解析も可能となる。このプローブのシグナルは、一以上、例えば二つ又は三つの異なる温度で測定される。得られたデータを、その後、二以上の温度の蛍光値を用いた比率としてを処理することができる。本比率は、レプリカサンプル間のシグナルの相違を相当に小さくし、また目的のアレルの定量測定を提供する。図11は、二温度でのプローブ蛍光レベルを示している。図11に例証するように、過剰プライマー鎖へのプローブのハイブリダイゼーションによって生じるプローブシグナルは、プローブがアレル識別型であり、完全に相補的なアレルに対してのみ結合する高い温度で、及びプローブが完全なミスマッチ寛容性であり、ターゲット配列の可能な全アレル変異体に結合する低い温度で、得られる。高温及び低温での蛍光の測定、並びに結果としての比率の計算は、エンドポイントアッセイとしても行いうる。本発明者らは、これらのアッセイを「二温度標準化アッセイ(バックグラウンド補正なし)」と呼んでいる。図11で例証するように、それらは、同型接合体及び異型接合体の遺伝子型を難なく区別できる。本タイプのアッセイは、エンドポイント均質LATE-PCRアッセイ、すなわちQE-LATE-PCRアッセイとして行うことができる。
【0077】
図11は、ベースライン補正された蛍光シグナルを報告している。実施例5で考察するように、ベースライン補正された蛍光シグナルよりもむしろ図12で示したようなABI 7700からの生のシグナルを使用することが好ましい。ベースライン補正は個々のサンプルの標準化した蛍光比率にアーチファクトを導入する可能性がある。なぜなら、補正要素はベースラインを規定するバックグラウンド蛍光シグナルにおける偽りの変動に対して敏感であるからである。生の蛍光読み取り値は、前記アーチファクトに晒されない。生の蛍光シグナルの信頼性により、前記アッセイはフルオロメーター能を有するどのPCRサーマルサイクラーにも、又はエンドポイントでの蛍光読み取りに温度調整されたフルオロメーターと組み合わせて使用される通常のサーマルサイクラーにも適用できる。
【0078】
二温度以上で検出されたシグナル比を作成することで、QE-LATE-PCR遺伝型決定の精度をさらに高めることができる。エンドポイントデータを標準化するための三温度法は、次の式で与えられる。
【0079】
標準化蛍光値=(Fs−Ft)/(Fb−Ft)
(式中、Ft=最高温度での蛍光、Fb=最低温度での蛍光、Fs=任意の所与の第三の温度での蛍光を表す。)
ヒトp53遺伝子中のSNP部位の同型接合体及び異型接合体遺伝子型に適用した該三温度法を実施例6に記載し、また図13で例証している。
【0080】
ピロシークエンス法は、当業分野では既知のリアルタイム等温シークエンス−バイ−シンセシス法である。本方法は、動力学的にバランスされた4つの酵素、すなわちDNAポリメラーゼ、ATPスルフリラーゼ、ルシフェラーゼ、そしてアピラーゼによって触媒される。本方法は、一本鎖DNAにアニールするシークエンスプライマーを含む。各ヌクレオチドが、鋳型DNAの配列に準じたシークエンスプライマーの3’末端への取り込みのために個別に分配され、該取り込みについて分析される。取り込み事象が成功すると、取り込まれたヌクレオチド量に対して等モル量のピロリン酸(PPi)の遊離が起こる。ATPスルフリラーゼは、アデノシン5’ホスホ硫酸の存在下で遊離したPPiをATPに定量的に変換する。ATPはその後、ルシフェリンのルシフェラーゼを介したオキシルシフェリンへの変換を駆動する。オキシルシフェリンは、ATP量に比例した量の可視光を発生する。該光は電荷結合素子(charge coupled device:CCD)カメラで検出され、パイログラムにピークとして表示される。取り込まれなかったdNTP及び過剰ATPは、アピラーゼによって継続的に分解される。ヌクレオチド配列は、ヌクレオチド分配の順番、及びパイログラム中の、取り込まれたヌクレオチドの量に比例するピークの高さから決定される。
【0081】
LATE-PCR法は一本鎖DNAを効率的に生成する。それゆえ、伝統的な二本鎖PCR産物から一本鎖鋳型を生成することを必要とした従来のピロシークエンスサンプル調製法を必要としない。しかし、ピロシークエンス用にLATE-PCR産物を使用するには、ピロシークエンスの化学反応を妨げると思われる使い残った試薬、すなわちdNTP、ピロリン酸、及び過剰プライマーを増幅反応物から効率的に除去することが必要である。使い残った試薬の除去を、カラム精製、エタノール沈殿、又は増幅反応物からdNTP、ピロリン酸、及び過剰プライマーを除くためのPCR産物精製の既知のいずれかの方法で行うことができる。精製後、LATE-PCRからの一本鎖DNAをシークエンスプライマーに直接アニールし、使用説明書に従ってピロシークエンスを行う。前記シークエンスプライマーが利用できる唯一の鋳型が一本鎖DNA産物であることを保証するために、LATE-PCRサンプルを、反応で生成した二本鎖産物を変性する温度で加熱しないことが重要である。実際は、鋳型DNAが既に一本鎖であるので、プライマーアニーリングのためにLATE-PCRサンプルを加熱する必要は全くないといってよい。
【0082】
本発明者らは、LATE-PCR増幅と簡易精製法を組み合わせて、シークエンス操作用サンプルを調製した。実施例7と図14を参照されたい。本発明者らは、物理的なPCR産物精製を必要とせず、また単一チューブで実行可能なピロシークエンス用のLATE-PCRサンプル調製法を二つ考案した。第一の方法において、LATE-PCRからの残余dNTPの問題は反応過程でdNTPが枯渇する(とはいえ、一本鎖DNA、すなわち過剰プライマー鎖が不十分に生産される原因となるような早期枯渇となることのない)ように、増幅期間の全dNTPの量を制限して使用することで対処される。当該量は、日常の実験で測定できる。LATE-PCRから残ったピロリン酸の問題は、ピロホスファターゼ活性をもつ酵素、例えば酵母ピロホスファターゼ等のピロホスファターゼでLATE-PCRサンプルを処理し、続いて熱不活化することで対処される。LATE-PCR増幅から残った過剰プライマーは、ピロシークエンスを妨げないと考えられる。なぜなら、制限プライマーの伸長産物(制限プライマー鎖)の3’末端における該プライマーに対するマッチするターゲット配列は、A)二本鎖形態となっているため容易に利用できないこと、及びB) LATE-PCRプライマー比率に依存して過剰プライマー鎖よりも量的に5〜20倍少ない、からである。しかし、LATE-PCR増幅の開始時に過剰プライマーに相補的なオリゴヌクレオチドを任意で加えて、過剰プライマーがピロシークエンスで使用する温度においてPCR産物上でミスプライミングするいかなる可能性も排除することができる。該相補的オリゴヌクレオチドは、例えば、3’末端において過剰プライマーよりも数ヌクレオチド短くすることで、過剰プライマーTmよりも少なくとも5〜10℃低いTmを有していなければならない。また、DNAポリメラーゼによるオリゴヌクレオチドの伸長を妨げるため、当業者に知られるいずれかの方法で3’末端を阻害されなければならない(例えば、リン酸基の包含によって)。本様式で設計された場合、前記相補的オリゴヌクレオチドは、LATE-PCR増幅を妨げない。しかし、ピロシークエンスで使用される温度において過剰プライマーと安定した二本鎖ハイブリッドを形成する。それによって、過剰プライマーが増幅された物質上の別の相補的部位にミスプライミングすることを妨げる。あるいは別の方法として、もしLATE-PCR反応後に加えるとすれば、前記相補的オリゴヌクレオチドが過剰プライマーと同じ長さ、若しくは過剰プライマーのTmより少なくとも5〜10℃低いTm、又はその両方を有していてもよい。その他、過剰プライマーと同じ配列を含む3’ブロック化オリゴヌクレオチドは、そのTmを高めるための他の改変(例えば、3’末端への余分な塩基の付加やLNAアナログの使用等)とともに、又はそれなしに、LATE-PCR反応後に制限プライマー鎖の3’末端における相補的な部位に対して過剰プライマーを打ち負かすのに十分な濃度で加えられ得る。
【0083】
第二の方法は、ピロシークエンスで使用するものと同じ酵素及び基質の混合物を用いたLATE-PCRサンプルの前処理と、それに続くピロシークエンスのためのプライマーアニーリング及び個々のdNTPの添加を含む。本方法は、メーカー推奨プロトコルの指示とは逆になっている(例えば、通常のプロトコルではプライマーアニーリングに続いてピロシークエンス反応混合液の添加するように命じている)。本方法では、ATPスルフリラーゼとルシフェラーゼがピロリン酸をATPと光に変換すると同時に、ピロシークエンス混合液に存在するアピラーゼがdNTPを分解する。前記溶液中のルシフェラーゼとルシフェリンは、dNTPと同様にPPiの分解をモニターする有用な系を提供する。ATPとdATPは、双方ともルシフェラーゼの基質として役立つ。それゆえ、サンプル光出力の停止がピロシークエンス装置のCCDカメラで検出されたとき、精製に近似したものとしての役目を果たす。もし、特にその調製に必要で、特にアンプリコンが約100塩基対以上であれば、又は約20塩基対以上がシークエンスされるのであれば、該反応で枯渇する基質(アデノシン5’ホスホ硫酸とルシフェリン)は、その後DNAシークエンスの開始前に補充される。いくつかのケースでは、最初の処理は製品プロトコルよりも多くの基質混合物を必要とするであろう。その後のプライマーアニーリングで加熱と冷却が必要な場合には、該試薬は破壊され、ピロシークエンス前に取り替える必要があるであろう。
【0084】
第二の方法のバリエーションの一つは、dNTPアーゼ活性をもつ精製酵素、例えば、ジャガイモアピラーゼのようなアピラーゼと、ピロホスファターゼ活性をもつ精製酵素、例えば、酵母ピロホスファターゼのようなピロホスファターゼを加え、その後該酵素を熱不活化し、プライマーアニーリングを行った後で、従来のピロシークエンス法を行うことである。繰り返すが、LATE-PCRから使い残った過剰プライマーは、一般にピロシークエンスを妨げないと思われる。しかし、そうなった場合、上記相補的オリゴヌクレオチド法を用いることで該プライマーに対して対処することができる。本第二の方法では、別のLATE-PCR増幅のためにdNTP濃度の調整をする必要がないので、多少の時間が節約される。
【0085】
LATE-PCR産物の直接的ピロシークエンスには、使用するピロシークエンス機器に応じて、3〜15pmol、時には10〜15pmolのシークエンスプライマーでアニールされた0.5〜4pmol、時には2〜4pmolの調製された一本鎖産物が必要である。第二、及び第三のサンプル調製法では、ピロシークエンス混合液の最適pH(pH 8.0又はそれ以上、例えば、PCRのpH 8.3と比べるとpH7.5である)を保つために、加えるLATE-PCRサンプル量を全ピロシークエンス反応液量の1/2未満、時には1/3未満とすることが重要である。あるいは別の方法として、もしバッファ濃度とpHがその状態に応じて調節されるのであれば、LATE-PCR産物を反応量の半分以上を含むことができる。ハイブリダイゼーションプローブがシークエンスされる一領域、又はピロシークエンスプライマーが結合する場所に結合するように設計されているときを除けば、蛍光性DNA色素及びハイブリダイゼーションプローブのようなLATE-PCR増幅の様々な段階をモニターするのに用いられる試薬は、ピロシークエンスと互換性があるので除去する必要がない。この場合、過剰プライマーを阻害するために上述したストラテジーの一つを使用して、ハイブリダイゼーションプローブを阻害することができる。本発明者らは、ピロシークエンス反応における該化合物の最終濃度が300nM又はそれより低く、好ましくは200nM又はそれより低く、またピロシークエンス用の標準的なDNAポリメラーゼ(エキソヌクレアーゼ欠損型Klenow DNAポリメラーゼフラグメント)が使用される場合、本発明者らが同時出願した米国仮特許出願:発明の名称「PCR増幅での再現性の改善とミスプライミングの低減のための試薬及び方法」で開示した増幅期間のミスプライミングを阻害する試薬はピロシークエンス法と適合性があることを見出した。同一室内又は同一容器内で調製と増幅ができるPCRサンプル調製技術(例えば米国公開公報第2003-022231-Al号を参照されたい)を、少量、好ましくは10μ1以下又はそれと等量、例えば2〜10μlで行うLATE-PCR増幅法と組み合わせて利用することにより、単一チューブ形式で、わずかな細胞群(1〜10,000細胞)からピロシークエンス情報を得ることができる。この「細胞からシークエンスへ(Cell-to-Sequence)」のアッセイによって、わずかな細胞群(1〜10,000細胞)が、Pierceらの(2002) Biotechniques 32(5): 1106-1111(米国公開公報第2003-022231-Al号を参照されたい)等に記載されているようなPCRサンプル調製技術に従って増幅用に調製され、LATE-PCR増幅にかけられ、そして上記のような一つの容器、ウェル、管、又は反応室の中でピロシークエンスのために直接処理される。後述の実施例8、及び図15で立証したように、単一チューブ法は、たった一つの細胞であっても、一分子レベルで正確かつ精密に遺伝子型を決定できる。
【0086】
酵素主体のピロシークエンス用PCR精製法の一般的な関心事として、シークエンス後期における酵素阻害をフィードバックし、読み取りの長さを短くし兼ねない破壊副産物の過剰生成が挙げられる。該破壊副産物には、SO42-、オキシルシフェリン、無機リン酸(Pi)、dNMP及びAMPが含まれる。Pi及びdNMPの蓄積を抑える一方法は、PCR中に使用されるdNTPの濃度を減少することである(上記第一の方法で述べたような反応期間で完全に消費されるという点については、必ずしもそうではないけれども)。600塩基長までのLATE-PCRアンプリコンにおける定量PCR観測から、本発明者らは増幅効率に影響されることなく、dNTP濃度をいつも100nMに低下できることを判明した。このような条件の下で、実施例9と図16で実証したように酵素的に調製したLATE-PCR反応物でピロシークエンスを50以上連続した塩基に対して行うことができる。
【0087】
ジデオキシシークエンスについて、本発明者らは、LATE-PCR増幅産物のみに必要な処理として希釈を含むプロトコルを開発した。キャピラリー電気泳動は産物量に敏感なので、サイクルシークエンス法によるLATE-PCR増幅由来の一本鎖アンプリコンの従来のジデオキシシークエンスでは、50fmolの産物及び既知量の産物が必要である。二本鎖DNAの合成をモニターするためにSYBR Green I蛍光性DNA結合色素を利用すること、また一本鎖アンプリコンの合成をモニターするためにCy5で標識された直鎖状プローブを利用することで、好ましくは本発明者らの米国仮特許:発明の名称「PCR増幅での再現性の改善とミスプライミングの低減のための試薬及び方法」で開示したミスプライミング阻害試薬を含んでいるLATE-PCR増幅をモニターできる。前記三つの追加物は、いずれもその後のシークエンス反応を妨げない。LATE-PCR反応では、指数関数的増幅の期間と二本鎖産物の合成は、制限プライマーの量によって定まり、開始時の鋳型量には依存しない。もし希望するのであれば、一本鎖生成期間に少なくとも一種のdNTP量を制限することで、又は増幅サイクル数を制限することで抑えることができる。
【0088】
本発明者らは、過剰プライマー鎖(例えば、LATE-PCRの過剰プライマーから生成された鎖)の配列決定のため、LATE-PCR増幅物を水で少なくとも20倍の総量に又はそれ以上に希釈することでジデオキシシークエンスの出発材料として適当な過剰プライマー鎖産物を得ることを見出した。本発明者らのキャピラリーシークエンサーで使用する量が希釈後に配列決定に供される材料の必要最小量である50fmolを含むことを確実にするため、制限プライマーの濃度が25ナノモル(nM)(25fmole/μl)で、かつ一本鎖DNAの約8倍過剰量が必要とされるときには、LATE-PCR反応の比例増幅期で少なくとも200フェムトモル(fmol)一本鎖DNA/マイクロリットル(μl)が生成されなければならない。LATE-PCR増幅により生成される一本鎖DNAの濃度を見積もるため、本発明者らは、反応終了時における二本鎖DNAの存在する鎖濃度に(サイクルシークエンス法に関係し、その濃度は制限プライマーの濃度によって定まる)、さらにプラスして、反応が比例増幅期にある間の、サイクルあたりに生成される一本鎖DNAの濃度、すなわちサイクル数倍(本発明者らは、一般に比例合成期の各サイクルで約50%の理論上の産物を生じていると見積もっている。理論上の産物は、反応中の二本鎖DNAの量に等しい)を加える。フルオロフォアに関するリアルタイム蛍光曲線の平坦化で示されるように、もし産物の蓄積が反応経過中に直線的で無くなったならば、非比例期間に生成された一本鎖DNA量は、前記反応が増幅反応の最終サイクルに対して直線的なときは、最後のサイクル間の蛍光シグナルを倍増して推測される。一般的に、LATE-PCR増幅で生成される一本鎖産物の濃度が200fmole/μlであれば、過剰プライマー鎖を1:8で25fmol/μlに希釈し、20μlのジデオキシシークエンス反応液中に2μlの希釈産物(50fmol)を直接使用する。前記条件の下で、シークエンス反応内へのLATE-PCR産物は最終的に80倍に希釈されている。希釈したLATE-PCR産物(200fmol)8μlほどを総希釈20倍のシークエンス反応液に使用することができ、また、なお説明可能なシークエンスクロマトグラフを得ることができる。
【0089】
dNTP及びプライマー等のPCR増幅から使い残った試薬がジデオキシシークエンスを妨げると思われるため、サンプル精製は必要である。LATE-PCRは、エタノール沈殿、又は水による簡単な希釈ステップを用いたアフィニティーカラムでサンプル調製物を置換する。ジデオキシシークエンス用のLATE-PCR調製では、過剰な一本鎖DNA産物を水で少なくとも8〜10倍希釈して25fmole/μlの濃度にすることのみが必要である。続いて、50〜200 fmolの一本鎖DNA産物が10pmolのシークエンスプライマーを含むジデオキシサイクルシークエンス反応液に加えられる。前記条件の下では、LATE-PCRから使い残ったdNTPは大希釈されているのでジデオキシシークエンスを妨げることはない。LATE-PCRから持ち込んだ過剰プライマーについても問題はない。なぜなら、過剰プライマーが結合する鋳型である制限プライマー鎖は、希釈ステップ後に非常に低濃度で存在しており、また過剰プライマー鎖と完全にハイブリダイズしているからである。前記二つの理由により、過剰プライマーはシークエンスプライマーとして機能しない。実施例10と図17は本発明者らの「希釈して開始する(dilute-and-go)」法の有効性を実証している。図17は、対称性PCR法及び従来のサンプル調製法(Qiagenカラムを用いたDNA産物の精製と、それに続くゲル電気泳動による定量化;全調製時間:1時間)を用いて得られたシークエンスクロマトグラフ、並びにLATE-PCR法と水希釈(全調製時間:30秒)を用いて得られたシークエンスクロマトグラフを示している。シークエンスクロマトグラフは、ほとんど同じである。
【0090】
実施例11と図18〜19は、同一反応で同一DNAサンプルから一産物以上のLATE-PCR増幅するためのストラテジーを例証している。したがって、これらの反応は連続する鋳型の中で二つの分離した配列を増幅する二組のプライマー(それぞれは、過剰プライマーと制限プライマーからなる)を包含する。前記二組のプライマーを、過剰プライマーと制限プライマーの双方が前記鋳型の同一鎖にハイブリダイズするように、又はそれらが前記鋳型の相対する鎖にハイブリダイズするように配置させることができる。当業者にはおわかりのように、類似するプライマーが鋳型の相対する鎖にハイブリダイズする場合、前記二つの過剰プライマーは、それぞれの鋳型鎖上で「内向き方向」又は「外向き方向」のいずれかで伸長できる。図19は、「希釈して開始する」法により両方の過剰プライマー鎖の配列を同一反応混合物から得ることができることも示している。
【0091】
実施例12と図20は、LATE-PCR増幅によって生じたssDNAとdsDNAの量を独立に測定できること、またssDNA/dsDNA比を算出するのに使用できること、さらに該比がそれまでに蓄積されたssDNAの量が「希釈して開始する」法を介して続くシークエンス反応に十分であるかどうかを測定するのに使用できることを示している。
【0092】
実施例13と図21は、密接に関連するが異なる二つの配列を有するLATE-PCRアンプリコンを50:50混合比で使用したときの「希釈して開始する」法を示している。図22は、密接に関連するが異なる配列を有する二種のLATE-PCRアンプリコンを90:10及び10:90の比で含む混合物を、「希釈して開始する」法により純粋な100:0混合物及び0: 100混合物や30:70混合物及び70:30混合物と区別できることを示している。このタイプの解析を達成するためには、それぞれのヘテロプラスミック(heteroplasmic)位置で観察されたそれぞれのヌクレオチドピークの大きさを、同等の「純粋な」ヌクレオチドで予想される該位置における大きさに関して補正する必要がある。一旦これが行われれば、それぞれの配列の相対量を大きさの比率(補正ヌクレオチド1)÷(補正ヌクレオチド1+補正ヌクレオチド2)として算出できる。したがって、異なるミトコンドリアDNA配列ついては、本明細書に記載したLATE-PCRとジデオキシ「希釈して開始する」法を利用してヘテロプラスミーを検出することができる。ヘテロプラスミー測定用のジデオキシ法を用いれば、一回の解析で何百ものヌクレオチドを測定できるので特に都合が良い。本発明者らは、いずれの理論にも束縛されることを望んでいないが、本明細書に記載した方法は対称性PCR法とジデオキシシークエンス法に基づいた従来の試みと比べて役に立つと信じている。なぜなら、LATE-PCR法は、高度に均質の一本鎖アンプリコン集団を生成するからである。これに対して、対称性PCR法は、全長分子集団と共に部分的アンプリコンを多少とミスプライミングしたアンプリコンを多少生じる傾向にある。
【0093】
実施形態14と図23は、少なくとも一つの単一ミスマッチ寛容性プローブでLATE-PCR法を使用してエンドポイント融解曲線を生成でき、それに続いて、密接に関連するが異なる配列を有する二種以上の混合LATE-PCRアンプリコンの相対量を定量できることを示している。関連するアンプリコン混合物の定量性エンドポイント融解解析(Quantitative end-point melting analysis:QE)LATE-PCRが可能となるのは、LATE-PCRが一本鎖産物を生成するという事実による。つまり、標識された一以上のミスマッチ寛容性プローブが反応中に存在する場合、そのプローブはまず最も相補的なターゲット配列にハイブリダイズし、その後温度が十分に下がったならば、全ての関連するターゲット配列にハイブリダイズする。したがって、1セット中の各プローブ/ターゲットハイブリッドはそれ自身の融解温度を有しており、また各プローブ/ターゲットハイブリッド由来の融解ピークの強さは、それぞれの蓄積したターゲット配列の量を正確に反映する。各融解曲線の振幅の定量測定、又は各融解曲線の二次元面積の定量測定を利用して、各ターゲット配列の相対的な存在量を算出することができる。図23で示したデータは、本方法を使用して99.7%の信頼性をもってヌクレオチド1個が相違する二つの配列の0:100-10:90−50:50-90:10−100:0の混合物を区別することができることを立証している。
【0094】
本発明のアッセイは、本発明者らの米国仮特許出願番号60/619,620に記載された試薬存在の有無にかかわらず、単独で最適化して、反応に加えられるDNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼの濃度を調整することによりミスプライミングを避け若しくは最小にすることができる。ポリメラーゼの調整によりミスプライミングが減少することは、ssDNAのプローブを用いたLATE-PCRの動力学により、さらに当業分野における既知の様々な手段で明らかとなる最終産物の組成により、観測することができる。本発明者らは、従来の過剰濃度のTaqポリメラーゼで開始して、その後のステップで該濃度を減少させることが実験的に都合よいことを見出した。ごく僅かなポリメラーゼが反応を無効化する原因となり得る(産物増幅の比率や程度の著しい減少として現れる)一方で、最適レベルのポリメラーゼは、効率的なdsDNA増幅と何サイクルにもわたる持続的なssDNA合成をLATE-PCR増幅アッセイにもたらす。実施例15は、ポリメラーゼの最適レベルをSYBR Green等の二本鎖色素を用いて観察されるdsDNAシグナルとdsDNA産物の融解曲線とで判断できること、またSYBR Greenを用いて観察もできることを立証している。実施例16と図24は、前記アッセイで異なる分量の出発材料から生じる特定のssDNA産物を精査すると、結果として生じるプロットは、ssDNA生成の多くのサイクルにわたり、直線的かつ平行的であることを示している。
【実施例1】
【0095】
<結合色素対標識プライマー+結合色素>
インターカレート色素の性能と、インターカレートフルオロフォアを含むプライマーと組み合わせて用いる色素の性能とを比較するために伸長アッセイを行った。使用した色素は、SYBR Green Iを1:40,000で希釈したものである。
【0096】
3種のヌクレオチド鎖を使用した。すなわち、鋳型DNA、伸長型DNAプライマー(Cy5標識した5’を有し、鋳型相補性であり、そして60℃のTmを有する)、及び伸長不能型オリゴヌクレオチド(リン酸基でブロックした3'末端を有し、プライマーに対して3'側の位置でターゲットに相補的であり、Cy5フルオロフォア標識もされ、そして79℃の高いTmを有する)である。伸長不能型オリゴヌクレオチドに届くまでの全プライマー伸長産物のTmが79℃よりも低くなるようにプライマーと伸長不能型オリゴヌクレオチドの間隔を選んだ。
【0097】
プライマー伸長アッセイ用の反応混合物には0.5マイクロモル(μM)鋳型DNA、1.5pMプライマー、及び1.5pM伸長不能型オリゴヌクレオチドが含まれている。前記混合物には1×PCRバッファ、3ミリモル(mM) MgCl2、250ナノモル(nM)の各dNTP、1:40,000×SYBR Green I、及びTaq DNAポリメラーゼが含まれている。反応混合物を50℃で2分間加熱し、プライマー及び伸長不能型オリゴヌクレオチドを結合させ、伸長不能型オリゴヌクレオチドに達する短いプライマー伸長産物が生じるようにした。二重サンプルで行った。
【0098】
プライマー伸長反応に続いて、産物を温度を変化させた時にSYBR Green色素が励起される融解解析にかけた。蛍光の読み取りは、未伸長プライマーと伸長不能型オリゴヌクレオチドとを包含する融解温度の範囲で温度を上昇させた際、色素放出の波長、及びフルオロフォア放出の波長で行った。温度に対してプロットされた温度に関する蛍光の一次導関数である融解曲線を図1で示した。本図のパネルAは、色素放出から得たデータである二サンプルについての曲線1を示している。また、パネルBは、Cy5放出から得たデータである二サンプルについての曲線2を示している。
【実施例2】
【0099】
<消光型ミスマッチ寛容性プローブ>
ミコバクテリアの16SリボソームRNA 遺伝子に相補的なコンセンサス配列を有するように標識プローブを設計した。二次構造は、70mMのナトリウム濃度、及び3mMのマグネシウム濃度で、Mfoldプログラム(Zucker, M、2003,「Mfold web server for nucleic acid folding and hybridization prediction」Nucleic Acids Res 31: 3406-3415)に従って予想された。本プローブの配列は、Cy5-AATACTGGATAGGACC ACG AGG(配列番号1)で、下線領域のハイブリダイゼーションによって形成される予想二次構造をもつ。本プローブの二次構造の予想されるTmは、37℃であった。本プローブは、SYBR Green I色素を包含する混合物中に、ターゲットなし、M.ゴルドナエ、又はM.アジアティカムを含んだサンプルでテストされた。Cy5蛍光と温度との結果を図3のパネルAに示している。線31(ターゲットなし)は、高いバックグラウンド蛍光を示しているが、線32(M.ゴルドナエ)及び線33(M.アジアティカム)は、バックグラウンドよりも高い識別可能なシグナルを示している。バックグラウンド蛍光を消すために、非蛍光性クエンチャー(Black Ho1eTM II quencher:BHQII)をプローブの3'末端ヌクレオチドに付加した。本改変プローブを同様にテストして、その結果を図3のパネルBに示している。見ての通り、バックグラウンド蛍光(線34:ターゲットなし)は著しく下がり、またM.ゴルドナエ(線35)及びM.アジアティカム(線36)由来のシグナルは、バックグラウンドよりも一層高くなった。
【0100】
プローブを消光するもう一つの技術は、一方の端部を適当なフルオロフォアで、また他方の端部をクエンチャーで末端標識したヘアピン構造を有するプローブを構築することである。本発明者らは、下線配列が相補的で、かつヘアピンステムを形成する配列Cy5-CTGGATAGGACCACGAGGCCAG-BHQII(配列番号2)を有するプローブを構築した。完全に一致するターゲットと本プローブとの予想融解温度は60℃である。(フルオロフォア−クエンチャーの相互作用で増加した親和性によらない40℃の予想非改変型ヌクレオチドステムTmに基づいた)該ステムの予想Tmは約48℃である。本プローブも上記のようにテストされた、その結果を図3のパネルCに示している。バックグラウンド蛍光(線37、ターゲットなし)は、非常に低く、またM.ゴルドナエ(線38)及びM.アジアティカム(線39)由来のシグナルは、バックグラウンドよりも高かった。
【実施例3】
【0101】
<ミスマッチ寛容性プローブを用いたリアルタイム及びエンドポイント遺伝子型タイプ分け>
本例は、リアルタイムLATE-PCR増幅、及びSYBR色素からの放出によって間接的に励起されるCy5標識低温Tmミスマッチ寛容性直鎖状プローブを用いて、テイ−サックス病の原因であるヒトヘキソサミニダーゼA(Hex A)遺伝子のG269アレルに関する同型接合体サンプルと異型接合体サンプルの同定を例証している。プローブハイブリダイゼーションを、LATE-PCRの検出温度空隙内でそれぞれの増幅サイクル期間に二回モニターした。すなわち、まず本アッセイにおいてアレル識別性であるプローブが完全マッチするターゲットにのみ結合する温度である55℃で、そして、その後ミスマッチ寛容性であるプローブが増幅反応におけるターゲット配列のアレルの全てに結合する温度である40℃で行った。特異的アレルとミスマッチ寛容性プローブを用いた全アレルの検出は、レプリカサンプル間のアンプリコン収量における確率論的なチューブ間の変動の補正を可能にする。反応における全アレルに対する特異的アレルの比率(55℃でのCy5/40℃でのCy5)は、エンドポイント遺伝子型決定用のレプリカサンプルの標準化を可能にする。遺伝子型の情報は、比率値から導き出される。同型接合体サンプルの場合、アレル識別条件下で検出されるプローブシグナルはミスマッチ寛容条件下で検出されるプローブシグナルと同じである。前記プローブが両ケースでターゲット配列アレルに100%結合するからである。これに対して、異型接合体サンプルの場合、アレル識別条件下で検出されるプローブシグナルはミスマッチ寛容条件下で検出されるプローブシグナルの強さの半分程度である。これは、プローブがミスマッチ寛容条件下ではアレルの100%に結合するが、アレル識別条件下ではターゲット配列アレルの50%のみに結合するからである。このように、同型接合体サンプルは、異型接合体サンプルよりも高い(55℃でのCy5/40℃でのCy5)比を有する。遺伝子型タイプ分けの本方法は、単一アレルの検出にのみ依存している。
【0102】
LATE-PCRプライマーとプローブの配列及び濃度調整融解温度Tm[0]については、以下の通りである。制限プライマーの配列は、5'CGAGGTCATTGAATACGCACGGCTCC 3'(配列番号3)である。このプライマーは、25nMで63.2℃の濃度調整融解温度Tm[0]を有する。過剰プライマーの配列は、5' TAACAAGCAGAGTCCCTCTGGT 3'(配列番号4)である。このプライマーは1μMで61.8℃の濃度調整融解温度Tm[0]を有する。プローブの配列は、5' Cy5-GGGACCAGGTAAGAA 3'(配列番号5)である。このプローブは56.3℃のTmを有する。該プローブは低温Tmプローブであり、65℃のアニーリング温度で使用されるときは超低温Tmプローブでもある。
【0103】
反復LATE-PCRアッセイ(n=15)を、1×PCRバッファ、3mM MgCl2、250マイクロモラー(μM) dNTP、25nM 制限プライマー、1000nM 過剰プライマー、1.25ユニット Taq DNAポリメラーゼ、0.6μM Cy5標識プローブ、及び1:40,000希釈SYBR Gold Iで、それぞれの異なる遺伝型(同型接合性G296と異型接合性296)についてセットアップした。PCRサイクルパラメーターは、95℃3分後に、95℃10秒、65℃20秒、そして72℃20秒を25サイクル、続いてCy5チャンネルでの55℃と40℃における蛍光獲得と共に95℃10秒、65℃20秒、72℃20秒、55℃20秒、及び40℃20秒を30サイクルである。図7は、40℃でのCy5シグナルに対する55℃でのCy5シグナルの比を解析したもので、該比はプローブ検出閾値を過ぎたいずれの増幅サイクルもエンドポイント遺伝子型タイプ分けに適することを証明している。本図において、同型接合体サンプル(線91)は、異型接合体サンプル(線92)のおおよそ2倍の比を有している。
【実施例4】
【0104】
<異なる融解温度をもつターゲット特異的プローブを用いた複数ターゲットの解析>
それぞれが同じフルオロフォアで標識されている複数のプローブを組み合わせて利用することで、単一の、より長いオリゴヌクレオチド(例えば、非対象PCR法、LATE-PCR法、又はローリングサークル増幅法の産物)に沿って、又は異なるオリゴヌクレオチドで異なる配列を検出し、また定量することができる。低温Tmプローブの使用によって、ミスマッチターゲットから生じるシグナルが大幅に減少または排除されることで前記ターゲットに対する特異性が増加する。この技術で応用可能な一つに、ヒトDNAの遺伝子型を決定し、遺伝病の原因となる既知のアレルを同定する方法がある。本例はプローブ設計と産物検出についての温度解析を説明している。
【0105】
開始点として、本発明者らは増幅産物中に潜在的に存在し得る以下のターゲットを選んだ。すなわち、嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)タンパク質の542番目のアミノ酸領域をコードする該遺伝子の正常配列、CFTRのもっとも一般的な変異であるデルタF508変異の配列、及び、デルタF508変異に対応する正常配列である。
【0106】
本発明者らは、3つのターゲット配列のそれぞれについて低温Tmアレル識別型プローブを設計した。前記プローブは、低温分子指標プローブであり、それぞれフルオロフォアFAM及びクエンチャーで標識された。3つのプローブを、70mM Tris-HClと3mM MgCl2を含む混合物中で、ターゲットに対して異なるTm値をもつように設計した。すなわち、40℃のTm(最近接計算での予想値が41℃)をもつ「542プローブ」、47℃のTm(最近接計算での予想値が46℃)をもつ「508正常プローブ」、及び54℃のTm(最近接計算での予想値が53℃)をもつ「デルタF508プローブ」である。図8は、得られたTm値に基づいた融解曲線を示している。図8は、レプリカサンプルに対する542プローブ(線96)、デルタF508プローブ(線97)、及び508正常プローブ(線98)についての温度関数として蛍光読み取り値の負の一次導関数を示している。1μMのターゲット濃度と2μMの542プローブ濃度を用いることで、ほぼ等しい高さのピークが得られた。本発明者らは、それぞれのプローブをミスマッチターゲットに対してテストし、アレル識別性を確認した。そして、完全ターゲットに対する蛍光がミスマッチを持つターゲットに対する蛍光の5〜10倍あることを見出した。
【0107】
図8からわずかなTmの違いであっても容易に分離できることがわかる。図8のような図から4〜5℃の違いは分離可能である。リアルタイムPCRサーマルサイクラーに付属のソフトウェアを利用したデコンボルーション(脱回旋)によれば、半分の量でTmの相違を分別可能にするかもしれない。
【0108】
蛍光の負の一次導関数を調べることは、与えられるサンプル中にオリゴヌクレオチドターゲットが存在することを測定する一つの方法となる。図9は、バックグラウンドよりも高い蛍光を利用した前記分析を示している。正常508ターゲットを含むがデルタF508ターゲットを含まないサンプル(丸印101)は、54℃に融解ピークをもつが、このピークは、分子指標−ターゲットハイブリッドを示す。デルタF508を含むが正常ターゲットを含まないサンプル(丸印102)は、約47℃に融解ピークをもつが、このピークは、該指標と変異体配列とのハイブリダイゼーションを示す。これらのターゲットの両方を含むサンプル(丸印103)は、上記温度範囲にわたって幅広のピークを有するが、このピークは、分子指標−ターゲットハイブリッドの両方からの蛍光を示す。542位アミノ酸における正常配列の存在および相対濃度は、約40℃の融解ピークの存在と相対的な高さによって示される。542正常ターゲットを有するサンプル(番号付けられた各群について実線で示す)は、前記温度に大きなピークを有する。また、第2の最も一般的なCFTR変異と同じ領域に一塩基変化を含む542変異体ターゲットを有するサンプル(番号付けられた各群について点線で示す)は、前記温度にピークをもたない。さらに、542ターゲットの両方をもつサンプル(番号付けられた各群についてダッシュ線で示す)は、中間の高さのピークを有する。542ターゲットを両方もつサンプル中のピークの高さは、隣接するデルタF508融解ピークの存在によって影響される。
【0109】
増幅反応過程で完全な融解プロファイルを得ることがいつも可能又は望ましいとは言えない。上記サンプルのさらなる解析は、検出ステップの限定された回数が混合物中の特定のオリゴヌクレオチドを同定する上で必要な情報を提供できることを示した。温度を上昇させる方法よりも低下させる方法を採用することができる。サンプルを70℃に加熱し、その後5℃ずつの減少で30℃に下げ、各ステップで30秒検出した。正常508ターゲットを含むがデルタF508ターゲットを含まない、又はデルタF508ターゲットを含むが正常ターゲットを含まないサンプルを、60℃と50℃との蛍光変化に基づいて区別することができた。ターゲットオリゴヌクレオチドの各組合せは、特有の蛍光変化のパターンを生じる。図10に55℃での蛍光増加のパーセント変化と45℃での蛍光増加のパーセント変化の散乱プロットを示す。本解析は、それぞれのサンプルに存在するターゲットの組合せを区別する。蛍光強度自体よりも、むしろ蛍光の変化を利用することで、レプリカ増幅サンプルにおいて起こり得るような、サンプル間でターゲットの総濃度が相当異なるときに、正確な評価をすることができる。図10は、正常508+正常542ターゲット(111で囲まれたマーク)、正常508+両542ターゲット(112)正常508+542ターゲット(113)、両508+正常542ターゲット(114)、両508+両504ターゲット(115)、両508+変異542ターゲット(116)、デルタF508+正常542ターゲット(117)、デルタF508+両542ターゲット(118)、及びデルタF508+変異542ターゲット(119)の各組合せについて、二重のサンプルを包含する。増幅反応の各サイクル中又は選択したサイクル中に、この温度プロファイルを用いて、同様の解析を行うことができた。既知遺伝子型のDNAを持つサンプルのいくつかを増幅し、その検出データを利用して値の予想範囲を決めた。この手法は、未知のサンプルについて遺伝子型を迅速に決定するための方法を提供する。
【0110】
本実施例ではプローブを3つだけ使用したが、より多くのプローブの組合せを利用することが可能である。プローブ総数の主な制限は、検出温度範囲、及びプローブ−ターゲットのハイブリッド間の最小Tmの差異である。これらは、それぞれ増幅反応の性質、及び装置とデコンボリューションソフトウェアの能力に依存する。例えば、もしデコンボリューションの最小Tmの差が3度であるならば、10種の異なるプローブ−ターゲットの組合せを30度の温度幅にわたって区別することができる。この数値は、複数のフルオロフォアを用いることで数倍に増加させることができる。
【実施例5】
【0111】
<バックグラウンド補正あり及びなしの二温度標準化>
rs858521 SNPのQE LATE-PCR遺伝子型決定をCy5標識したミスマッチ寛容性プローブ1種を用いて未知DNAサンプル、同型接合体コントロールrs858521(CCアレル)及び異型接合体コントロール(CGアレル)で行った。増幅及び検出は、一般にベースライン補正された蛍光シグナルを発生する。ABI Prism Sequence Detector 7700 (Applied Biosystems社、米国、カリフォルニア、フォスターシティー)を使用して行われた。しかし、比率を利用する本発明者らの解析では、蛍光シグナル比がベースライン補正された蛍光シグナル(図11)及び生の蛍光シグナル(図12)の両方から得られている。図11は、前記装置でベースライン補正された蛍光シグナルを利用した増幅反応のサイクル数の関数として、25℃でのプローブ蛍光に対する50℃でのプローブ蛍光の比を示している。図11で、丸印113は同型接合体コントロールのレプリカであり、丸印114は異型接合体コントロールのレプリカである。そして、丸印111及び112が前記未知のものである。図12は、生の蛍光シグナルを利用した同様の結果を示している。図12で、丸印116は同型接合体コントロールのレプリカであり、丸印117は異型接合体コントロールのレプリカである。そして、丸印115が前記未知のものである。標準化のためのベースライン補正された蛍光シグナルの利用により、サンプルの一つ、図11の丸印112に不明瞭な遺伝子型タイプ分けの結果が生じた。一方、標準化に生の蛍光シグナルを使用すると、全サンプルについて正確な遺伝子型タイプ分けができた。この結果は、ABI Prism 7700 Sequence Detectorのソフトウェアがシグナル標準化に影響を及ぼすアーチファクトを持ち込み得ること、そして好ましくは該ソフトウェアを使用すべきではないことを立証している。
【実施例6】
【0112】
<三温度標準化>
rs858521遺伝子SNPプライマー、及び単一ミスマッチ寛容性のレゾンセンス(resonsense)プローブを含む反復LATE-PCR増幅反応を、rs858521遺伝子SNPの各遺伝子型に対する精製されたゲノムDNAを用いて行った(1800ゲノム相当、また同型接合性CC遺伝子型、異型接合性CG遺伝子型、及び同型接合性GG遺伝子型のそれぞれについて18反復反応)。増幅した産物は、図13のパネルAで示す融解曲線で、及びパネルBとパネルCで示すようにデータを標準化することで解析した。図13Aは、LATE-PCR増幅に続く融解曲線解析中に回収された生の蛍光シグナルのプロットを示している。使用したプローブは、高温ではアレル識別性であるが、温度が下がると段々とミスマッチ寛容性になるタイプである。レプリカサンプル間の産物収量における内因的な変動性によって、本プローブのアレル識別の温度枠内(40℃〜60℃、以前に合成オリゴヌクレオチドターゲットを用いて測定されたもの、データは示さず)で、生の蛍光シグナル(丸印113)による遺伝子型の識別が妨げられる。図13Bは、該サンプルに関して完全にミスマッチ寛容性の温度(25℃)で回収したシグナルに対する温度ごとに標準化されたそれぞれのサンプルからのシグナルを示している。図13Bで、前記同型接合性CCアレルの標準化シグナルは丸印132であり、前記異型接合性CGアレルの標準化シグナルは丸印133である。そして、前記同型接合性GGアレルの標準化シグナルは丸印134である。図で示すように、標準化によりシグナルの分散が減少し、アレル識別の枠内でそれぞれの遺伝子型の同定が可能となる。使用したResonSenceプローブのTmに一致する52℃で、最大の分離が見られた。シグナル分散は図13Aと比べて図13Bではかなり減少しているが、動力学プロットにおける広がりから判断すると、レプリカサンプル間でシグナル強度にまだ若干の変動が見られる。図13Cは、図13Bで見られたアレル識別枠内の、融解曲線が分岐し始める最大及び最低温度(それぞれ40℃と60℃)で回収された蛍光シグナルに対してそれぞれの温度での蛍光シグナルを標準化することが前記残ったシグナル分散を除去する最良の方法があることを示している。図13Cでは、同型接合性CCアレルの標準化シグナルは丸印135であり、異型接合性CGアレルの標準化シグナルは丸印136である。そして、同型接合性GGアレルの標準化シグナルは丸印137である。Fb及びFtをそれぞれアレル識別温度枠の底部と頂部に対する蛍光読み取り値とし、またFsを融解解析中に与えられるいずれかの温度の蛍光読み取り値とすれば、標準化蛍光比は式3のように計算される。
【0113】
三温度標準化蛍光比=(Fs−Ft)/(Fb−Ft)
いずれのサンプル内でも40℃と60℃での蛍光シグナルに対する各温度での蛍光シグナルの同時標準化は、蛍光シグナル分散をさらに減少し、また各遺伝子型の反復融解曲線を非常にタイトにする結果となった(図13C参照)。単一温度で算出された蛍光比、すなわちアレル識別枠の最高及び最低温度(例えば、60℃と40℃)に対する蛍光シグナルを用いて標準化されたプローブのTm(52℃)が、99.7%以上の確からしさでそれぞれの遺伝型を一意的に決める(例えば、各遺伝子型の可能な全ての蛍光比率の99.7%を網羅する三標準偏差からなるエラーボックスが、お互い十分に分離される。データ示さず)。同様に、蛍光シグナルが、アレル識別の対応する最高及び最小温度(例えば71℃と45℃で)に対して標準化されたプローブのTm(57℃)で算出されたときに改善された結果がrs2270517SNPについて得られた。
【実施例7】
【0114】
<LATE-PCR産物の直接的ピロシークエンス法>
反復LATE-PCR増幅を、1×PCRバッファ、3mM MgCl2、20ナノモル(nM) dNTP、25nM 制限プライマー、1000nM 過剰プライマー、1.25ユニット プラチナTaq DNAポリメラーゼ、及びヒトゲノムDNA 100ゲノムからなる25μl中で行った。前記制限プライマーの配列は、5' CCGCCCTTCTCTCTGCCCCCTGGT 3'(配列番号6)、また前記過剰プライマーの配列は、5' GCCAGGGGTTCCACTACGTAGA 3'(配列番号7)である。これらの配列は、ヒトヘキソサミニダーゼA(Hex A)遺伝子のエクソン11から94塩基対のセグメントを増幅する。LATE-PCR増幅について、サーマルサイクラーのプロファイルは、95℃3分後に、95℃10秒と72℃20秒を10サイクル、続いて95℃10秒、67℃20秒及び72℃20秒を55サイクルである。反応後、16.6μl(以前のピロシークエンス実験から経験的に見積もると一本鎖DNA(ssDNA)3pmolsに相当する)を20マイクロリットル(μl)の10mM Tris-HCl(pH8.5)と共に混合し、ピロシークエンス用に使用されるマイクロタイタープレートのウェル内に入れた。LATE-PCR増幅産物から持ち込まれたdNTP及びピロホスファターゼを除去するために、PSQ96 SNP Reagent Kit(Pyrosequencing Inc.社、マサチューセッツ、ウェストボロ)に付属されているような、エキソヌクレアーゼ欠損型Klenow DNAポリメラーゼ、アピラーゼ、ルシフェラーゼ、ATPスルフリラーゼからなる一般的なピロシークエンス酵素混合物、並びにルシフェリン及びアデノシン5’ホスホ硫酸からなる一般的なピロシークエンス基質混合物を、使用説明書に従いPSQ96装置(Pyrosequencing Inc.社、マサチューセッツ、ウェストボロ)を使用して、LATE-PCRサンプルを含むウェル内に連続的に分注した。その後、37℃で60秒間インキュベートした。PSQ96装置で自動的に行われるその後のdNTPの添加については、前記装置にプログラムされたデフォールト量を用いて10mM Tris-HCl(pH7.5)の一回の添加と置き換えた。本ステップに続いて、LATE-PCRサンプルを含むウェルに10μMシークエンスプライマー(5' CTGGTACCTGAACCGTAT 3')(配列番号8)を25μl加えた。LATE-PCRサンプルに添加されるピロシークエンス酵素及び基質混合物の量を考慮すると、シークエンスプライマーの終濃度は、0.5pM、また最終容量50plと見積もられた。シークエンスプライマーを加えた前記サンプルを、PSQ装置に再度戻した。そして、装置で通常実行されるピロシークエンスと基質の添加を同様の容量の10mM Tris-HCl(pH7.5)の添加で置き換え、続いてdNTPの添加したことを除き、使用説明書に従って続行した。その結果のパイログラムを図14パネルAに示す。この図は、特定のヌクレオチドの組み込みによって生じる光シグナルを示している。ピークの高さは、各付加期間内に組み込まれたヌクレオチド数に相当する。図14のパネルCについて述べると、最初の二つのヌクレオチド(A,T)のそれぞれ一つが鋳型に取り込まれ、続いて次の二つのヌクレオチド(C,C)が取り込まれたこと等がわかる。前記ピークの高さとヌクレオチド付加の順番に基づいて、一つの配列、すなわち5' ATCCTATGGCCC3'(配列番号9)を導き出し、その後GenBank配列を用いてヒトヘキソサミニダーゼA遺伝子(GenBankアクセッション番号:S62068)で確認した。本結果は、ピロシークエンスに用いられる酵素及び基質混合物を用いたLATE-PCRサンプルの前処理と、それに続くプライマーアニーリング及び再度のdNTP添加により、LATE-PCR増幅産物の直接的な配列決定が可能となることを立証している。上記プロトコルを変更して、使用説明書に従った場合(例えば、プライマーアニーリングの実行に続いて、ピロシークエンス酵素及び基質混合物を添加すること)、dNTPの添加時に鋳型に組み込まれるべきでない80%の擬陽性ピークが生じる結果となる。前記擬陽性ピークは、ピロシークエンス前にLATE-PCR増幅から持ち込んだdNTP由来のシークエンスプライマーの部分的伸長によるものである。
【0115】
分離実験では、上記と同じLATE-PCRサンプルをQIAquick PCR Purification Kit(Qiagen社、カリフォルニア、バレンシア)を用いて、その使用説明書に従って精製し、10mM Tris-HCl(pH7.5)で0.35pmols/μlに戻した。この溶液8マイクロリットル(μl)(計3pmol)を、10mM Tris-HCl(pH7.5)を用いて最終容量50μM中0.5μlの上述のシークエンスプライマーと混合した。前記サンプルを、PSQ96装置を用いて使用説明書に従ってピロシークエンス法にかけた。その結果のパイログラムを図14パネルBに示す。従来の調製法は、より多くの時間を要し、また高価であると同時に、パネルAで示した本発明者らの方法と比べると優れたデータを提供できるとは言えない。
【実施例8】
【0116】
<LATE-PCR産物のピロシークエンス>
単一細胞の遺伝子型を決定するために、反復LATE-PCR増幅を1×PCRバッファ、3 mM MgC12、100μM dNTP、100nM 制限プライマー、1000nM過剰プライマー、1.25ユニットAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems社、米国)からなる25μlの溶液中で行った。それぞれの反応を、IVS-110変異に関して可能性のある3つの遺伝子型の一つと共に、Pierceらの(2002) Biotechniques 32(5): 1106-1111(米国特許公開番号2003-022231-A1号参照)に記載されているように調製した単一ヒトリンパ芽球で開始した。制限プライマーの配列は5' GGCCATCACTAAAGGCACCGAGCACT 3'(配列番号10)とし、また過剰プライマーの配列は5' GGGTTTCTGATACGCACTGACTCTCTC 3'(配列番号11)とした。これらの配列は、ヒト11番染色体短腕(11p)上のβ-グロビン遺伝子から191塩基対を増幅する。LATE-PCR増幅のためのサーマルサイクラープロファイルは、95℃10分、続いて95℃10秒、66℃15秒、そして72℃20秒を65サイクルとした。増幅後、5μlを6.64μlの20mM Tris-酢酸 (pH7.6)と混合し、ピロシークエンスに使用される光学プレートのウェル内に入れた。LATE-PCR増幅の産物から持ち込んだdNTPとPPiの除去のために、Pyro Gold Reagent Kit(Biotage AB社、スウェーデン、ウプサラ)に付属されているような、標準量のピロシークエンス酵素混合物(エキソヌクレアーゼ欠損型Klenow DNAポリメラーゼ、アピラーゼ、ルシフェラーゼ、ATPスルフリラーゼから成る)と標準量の約2倍の基質混合物(ルシフェリン及びアデノシン5’ホスホ硫酸からなる)を、PSQ HS 96A装置(Biotage AB社、スウェーデン、ウプサラ)を使用して、LATE-PCRサンプルを含む前記ウェルに連続的に分注した。装置設定は以下を用いた。酵素混合パルス時間:23.5ms;基質混合パルス時間:44.0 ms;試薬分注圧:400mbar。出力光がバックグラウンドよりも下がるまでサンプルを28℃で60秒間インキュベートした。これに続いて、0.36μlの10μMシークエンスプライマー:5' GACCACCAGCAGCCTAAG 3'(配列番号12)を各サンプルに加えて、総反応量12μlとした。その後、80℃で2分間後、室温で10分間冷却してアニールさせた。さらに、ここでLATE-PCR制限プライマー(配列番号7)の3’リン酸化バージョンを900μMの濃度で加えて、鋳型鎖3’末端の自己折りたたみと伸長を防いだ。シークエンスプライマーを加えたサンプルを、その後、PSQ HS 96A装置に再び戻し、標準の酵素及び基質混合物を添加することを含め、使用説明書に従って続行した。同型接合性野生型、異型接合性変異遺伝子型及び同型接合性変異遺伝子型の細胞から得られた結果のパイログラムをそれぞれ図15のパネルA〜Cに示す。光ユニットとピーク高についての説明は、実施例7と同様である。ピークの相対的な高さは、それぞれの位置で組み込まれたヌクレオチド数に相当する。図15のパネルAについて述べると、2番目のピーク(T)は、1番目のピーク(G)の高さの半分であり、3番目のピーク(G)の三分の一であり、4番目のピーク(A)の四分の一であり、そして5〜8番目のピーク(TAGA)と同じ高さであることがわかる。したがって、最初の8つのピークの配列は、GGTGGGAAAATAGA(配列番号13)と読まれる。前記ピークの高さと追加ヌクレオチドの順番に基づいて図15のパネルAにおける野生型β-グロビン配列を導き、続いてヒトβグロビン遺伝子に関してGenBankの配列を用いて確認した。異型接合性(パネルB)又は同型接合性(パネルC)変異については、矢印で示したIVS-110部位で確認した。パネルBで特記すべきことは、1.5ユニットの「C」ピークに続く0.5ユニットの「T」ピークが、両アレル「C」塩基の次に一方のアレルは「C」で他方のアレルは「T」であることを示しているということである。これらの結果は、ピロシークエンス法に使用される酵素及び基質混合物を用いたLATE-PCRサンプルの前処理と、それに続くプライマーアニーリング及び再度のdNTP添加により、LATE-PCRの直接的ピロシークエンスが可能となることを立証している。上記プロトコルを変更して、使用説明書に従った場合(例えば、プライマーアニーリングの実行に続いて、ピロシークエンス酵素及び基質混合物を添加すること)、dNTPの添加で鋳型に組み込まれるべきでない80%の擬陽性ピークが生じる結果となる。前記擬陽性ピークは、ピロシークエンス前にLATE-PCR増幅から持ち込んだdNTP由来のシークエンスプライマーの部分的伸長によるものである。
【実施例9】
【0117】
<長配列のLATE-PCR産物のピロシークエンス>
LATE-PCR増幅を、本発明者らが出願した米国仮特許出願、発明の名称「PCR増幅での再現性の改善とミスプライミングの低減のための試薬及び方法」で開示したような、1×PCRバッファ、3 mM MgC12、100μM dNTP、100nM 制限プライマー、1000nM過剰プライマー、1.25ユニットAmpliTaq Gold DNAポリメラーゼ(Applied Biosystems社、米国)、及び50nM ミスプライミング低減試薬9-22DDからなる25μlの溶液中で行った。試薬9-22DDは、9ヌクレオチド長のステム1つと、22ヌクレオチド長の一本鎖ループをもつヘアピン型オリゴヌクレオチドである。該オリゴヌクレオチドは、5’末と3’末をダブシル(Dabcyl)部の付加によって修飾されている。該ヌクレオチドの配列は、5' CGCGGCGTCAGGCATATAGGATACCGGGACAGACGCCGCG 3'(配列番号14)である。ヒトゲノムDNAの20ゲノム相当で反応を開始した。制限プライマーの配列は、5' GGTCAGCGCCGGGCTGCAAGTGTAGA 3'(配列番号15)とし、また過剰プライマーの配列は、5' GATGGGTGGAGCTTGTCTTGAGG 3'(配列番号16)とした。これらの配列は、ヒト17番染色体短腕(17p)上のp53遺伝子に近い78塩基対のセグメントを増幅する。LATE-PCR増幅のためのサーマルサイクラープロファイルは、95℃10分、続いて95℃10秒、66℃10秒、そして72℃20秒を60サイクルとした。増幅後、7.5μlの産物を9.96μlの20mM Tris-酢酸 (pH7.6)と混合し、ピロシークエンス法に使用される光学プレートのウェル内に入れた。LATE-PCRから持ち込んだdNTPとPPiの除去のために、Pyro Gold Reagent Kit(Biotage AB社、スウェーデン、ウプサラ)に付属されているような、標準量のピロシークエンス酵素混合物(エキソヌクレアーゼ欠損型Klenow DNAポリメラーゼ、アピラーゼ、ルシフェラーゼ、ATPスルフリラーゼから成る)と標準量の約2倍の基質混合物(ルシフェリン及びアデノシン5’ホスホ硫酸からなる)を、PSQ HS 96A装置(Biotage AB社、スウェーデン、ウプサラ)を使用して、LATE-PCRサンプルを含む前記ウェルに連続的に分注した。装置設定は以下を用いた。酵素混合パルス時間:23.5ms;基質混合パルス時間:44.0 ms;試薬分注圧:400mbar。出力光がバックグラウンドよりも下がるまでサンプルを28℃で60秒間インキュベートした。本アンプリコンでは、制限プライマー(配列番号10)をピロシークエンスプライマーとして使用し、その10μM溶液0.54μlを各サンプルに加えて、総反応量18μlとした。その後、80℃2分間のアニーリングの後、室温まで10分間冷却した。シークエンスプライマーを加えたサンプルを、その後、PSQ HS 96A装置に再び戻し、通常の酵素及び基質混合物を添加することを含め、使用説明書に従って続行した。結果のパイログラムを図16に示す。実施例8に記載したように、ピークの相対的な高さはそれぞれの位置で組み込まれたヌクレオチド数に相当する。GenBankデータベースから決定された、正しくマッチングしている予想配列を、一列に並べた所与の塩基の数を下付きで示しながら(すなわち、G1C1A1G2=GCAGG)、ピークの上に記載した。これらの結果は、ピロシークエンス法に使用される酵素及び基質を用いたLATE-PCRサンプルの前処理により、50塩基対以上の長さを読むことが可能となることを立証している。
【実施例10】
【0118】
<LATE-PCR産物の直接ジデオキシシークエンス>
PCR増幅を、ABI Prism Sequence Detector 7700 (Applied Biosystems社、米国、カリフォルニア、 フォスターシティー)を用いて行い、テイ−サックス(Tay-Sachs)病の原因であるG269変異を含むヒトヘキソサミニダーゼA遺伝子のエクソン7のセグメントを増幅した。配列は、GenBankアクセッション番号M16417と一致する。増幅の一つとしてLATE-PCR増幅を行い、その産物を直接ジデオキシシークエンスにかけた。コントロールとしてプライマーの濃度を等モルに変えて、従来の対称性PCR増幅を行った。その後、増幅産物をジデオキシシークエンスする前に従来法で精製した。
【0119】
<増幅反応混合物(終濃度)>
容量:25μl
1×PCRバッファ(Invitrogen社、米国、カリフォルニア、カールスバッド)
3 mM MgC12
10 μM dNTP
0.6 μM プローブ (LATE−PCRのみ)
1:40,000希釈 SYBR Gold色素 (Molecular Probes社、米国、オレゴン、ユージーン)
1.25ユニット プラチナTaq DNA ポリメラーゼ (Invitrogen社)
6 ng ヒトゲノムDNA(1000ゲノムに相当)
プライマー:LATE-PCR用、25 nM 制限プライマー、及び1000 nM 過剰プライマー(コントロールとして、同一プライマーをそれぞれ300nM )
<オリゴヌクレオチド配列>
制限プライマー:5' CGAGGTCATTGAATACGCACGGCTCC 3'(配列番号17)
過剰プライマー:5' TAACAAGCAGAGTCCCTCTGGT 3' (配列番号18)
プローブ:5' Cy5 GGGACCAGGTAAGAA-リン酸 3'(配列番号19)
<サイクルシークエンス反応混合物>
容量:20 μl
100 フェムトモル(fmol) シークエンス用産物
5ピコモル(pmol) シークエンスプライマー(制限プライマーまたは過剰プライマーのいずれか)
1×DTC5 Quick Start Master Mix(Beckman Coulter, Inc.社、米国、カリフォルニア、フラトン)
(dNTP、ddNTP、バッファ、MgC12を含む)
<ジデオキシシークエンス法>
シークエンス反応混合物をサイクルシークエンスにかけた後、使用説明書に従ってCEQ 2000 Due Termination Cycle Sequencing Kit(Beckman Coulter, Inc社)を用いてCEQ 2000XL DNA Sequence(Beckman Coulter, Inc社、米国、カリフォルニア、フラトン.)でキャピラリー電気泳動にかけた。
【0120】
<LATE-PCR増幅とシークエンス調製>
LATE-PCR増幅反応混合物を以下のサーマルサイクルにかけた。すなわち、95℃3分;95℃10秒、65℃20秒、そして72℃20秒を20サイクル、続いて95℃10秒、65℃20秒、72℃20秒、55℃20秒、そして40℃20秒を70サイクルである。二本鎖アンプリコンの合成については、SYBR色素を励起することでモニターし、72℃のプライマー伸長中におけるその蛍光を読み取った。制限プライマーの枯渇に続く一本鎖産物の合成については、SYBR色素を励起することでモニターし、40℃の低温検出ステップ中に低温TmプローブのCy5フルオロフォアからの蛍光を読み取った。
【0121】
100fmolの過剰プライマー伸長産物を得るためには、増幅産物の希釈が必要であった。本発明者らは、反応産物25μl中の産物量を以下の方法で見積もった。まず、最初の増幅サイクル中に作られる二本鎖産物中のその産物量は、制限プライマーの量によって決まる。本実施例において該量は、25nM、すなわち25fmole/μlであった。制限プライマーの枯渇後となるLATE-PCR増幅の比例増幅期に作られる一本鎖伸長産物の濃度については、その期間をCy5蛍光曲線の検分により決定される二つの部分、すなわち増幅が等差級数的に進行している第1部分と産物蓄積が減速した第2部分に分けて見積もった。本実施例では6サイクルに該当する第1部分について、本発明者らは非特許文献1に基づき、増幅効率を50%と仮定した。6サイクル期間中の一本鎖の生産量を、開始濃度(25 fmole/μl)×サイクル数(6)×効率(0.5)で計算した。さらなる生産量については、反応の残余期間中のCy5シグナルの増加分をパーセンテージとして見積もった。本ケースは233.3%であった。したがって、比例増幅期の総生産量は175 fmole/μl(25×6×0.5×2.333)であり、また25fmole/μlの二本鎖アンプリコンを含んだ該産物の総濃度は、200 fmole/μlであると見積もられた。サイクルシークエンス反応混合物において100fmolを得るために、本発明者らは増幅産物を水と1:8で希釈し、20μlの反応混合物中に4μlの希釈産物を用いた。お分かりのように、これは増幅産物が最終的に1:40に希釈されたことを意味している。
【0122】
100fmolの制限プライマー伸長産物を得るためには、開始時点で増幅反応産物が25nM、あるいは25fmole/μlの産物を含んでいる必要がある。本発明者らは、100fmolの望ましい開始量を得るために、単純に20μlのサイクルシークエンス反応混合物中に4μlの増幅産物を用いた。
【0123】
<コントロール増幅とシークエンス調製>
前記5温度サイクルを18サイクル(70サイクルではなく)だけ行ったことを除き、前記増幅反応混合物を同じ前記サーマルサイクラープロファイルにかけた。なぜなら、インターカレートした色素シグナルのリアルタイムプロットが、この時点で増幅がプラトーに達したこと、またその時点までに所望の増幅産物だけが作られていることを示したからである。増幅終了時における反応混合物中の増幅産物をQUIAquick PCR Purification Kit(Qiagen社、カリフォルニア、バレンシア)を用いて、使用説明書に従い従来法で精製した。精製されたアンプリコンを、種々の既知量のDX174 Hind III DNAマーカーに対して0.5×TBE中の3%アガロースゲルで電気泳動し、その後、エチジウムブロミド染色(0.5μg/ml)で視覚化して定量化した。100fmolを含む量を、各プライマーと共にサイクルシークエンス反応混合物に使用した。
【0124】
<結果>
前記LATE-PCR法及びコントロール法の双方は、GeneBank配列情報(アクセッション番号M16417)に一致する配列を生成した。図17は、ジデオキシシークエンス法から得られた4つのクロマトグラフを含んでいる。パネルAは、シークエンスプライマーとして制限プライマーを利用したサイクルシークエンスを含むLATE-PCR法由来のものである。パネルBは、シークエンスプライマーとして過剰プライマーを利用したサイクルシークエンスを含むLATE-PCR法由来のものである。パネルCは、シークエンスプライマーとして過剰プライマーを利用したサイクルシークエンスを伴うコントロール法由来のものである。パネルDは、シークエンスプライマーとして制限プライマーを利用したサイクルシークエンスを伴うコントロール法由来のものである。それぞれのクロマトグラフは、標識されたジデオキシヌクレオチドから得られた蛍光曲線と、決定されたヌクレオチド配列を含んでいる。
【実施例11】
【0125】
<同一反応で同一DNAサンプルから一以上の産物を増幅するLATE-PCR増幅法>
PCR増幅を、ABI Prism Sequence Detector 7700 (Applied Biosystems社、米国、カリフォルニア、 フォスターシティー)を用いて行い、過剰プライマーを用いて増幅された配列に基づいてヒトミトコンドリアDNAのd-loop領域内において同一の二重反応でHV1及びHV2H鎖とHV2L鎖を示す549塩基及び464塩基の二つのアンプリコンを増幅した。
【0126】
<増幅反応混合物(終濃度)>
容量:25μl
1×PCRバッファ(Invitrogen社、米国、カリフォルニア、カールスバッド)
3 mM MgC12
250 μM dNTPs(Promega社)
1.0 μM プローブ (LATE−PCRのみ)
10×希釈 SYBR Green色素(FMC Bioproducts社、米国、メイン、ロックランド)
1.25ユニット プラチナTaq DNA ポリメラーゼ (Invitrogen社)
ヒト血液リンパ球ゲノムDNA(100mtDNAゲノム相当)
プライマー:LATE-PCR用、50 nM 制限プライマー、及び1000 nM 過剰プライマー
<オリゴヌクレオチド配列>
プローブ:5’ Cy5 - TGCTAATGGTGGAG -Phosphate 3’(配列番号20)
HV1-H
制限プライマー:5’ GCCCGGAGCGAGGAGAGTAGCACTCTTG 3’(配列番号21)
過剰プライマー:5’ CACCAGTCTTGTAAACCGGAGATGAA 3’(配列番号22)
HV2-H
制限プライマー:5’ GTATGGGAGTGGGAGGGGAAAATAATGTGTTAG 3’(配列番号23)
過剰プライマー:5’ AGGTCTATCACCCTATTAACCACTCA3’(配列番号24)
HV1-L
制限プライマー:5’ CACCAGTCTTGTAAACCGGAGATGAAAACC 3’(配列番号25)
過剰プライマー:5’ CGAGGAGAGTAGCACTCTT3’(配列番号26)
HV2-L
制限プライマー:5’ AGGTCTATCACCCTATTAACCACTCACGGG 3’(配列番号27)
過剰プライマー:5’ GGAGGGGAAAATAATGTGTTAGT 3’(配列番号28)
<サイクルシークエンス反応混合物>
容量:25 μl
100 fmol シークエンス用産物
5pmol シークエンスプライマー(制限プライマーまたは過剰プライマーのいずれか)
1×DTC5 Quick Start Master Mix(Beckman Coulter, Inc.社、米国、カリフォルニア、フラトン)
(dNTP、ddNTP、バッファ、MgC12を含む)
<ジデオキシシークエンス法>
シークエンス反応混合物をサイクルシークエンスにかけた後、使用説明書に従ってCEQ 2000 Dye Termination Cycle Sequencing Kit(Beckman Coulter, Inc社)を用いてCEQ 2000XL DNA Sequence(Beckman Coulter, Inc社)でキャピラリー電気泳動にかけた。
【0127】
<LATE-PCR増幅とシークエンス調製>
LATE-PCR増幅反応混合物を以下のサーマルサイクルにかけた。すなわち、95℃3分;95℃15秒、64℃10秒、そして72℃45秒を15サイクル、続いて95℃15秒、64℃10秒、72℃45秒、55℃20秒、そしてHV1-Hのみ50℃20秒を50サイクルである。二本鎖アンプリコンの合成については、SYBR Green色素を励起することによりモニターし、72℃のプライマー伸長中にその蛍光を読み取った。制限プライマーの枯渇に続く一本鎖産物の合成については、SYBR色素を励起することによりモニターし、HV1-H領域のみの50℃の低温検出ステップ中に低TmプローブのCy5フルオロフォアからの蛍光を読み取った。
【0128】
100fmolの過剰プライマー伸長産物を得るためには、増幅産物の希釈が必要であった。本発明者らは、反応産物25μl中の産物量を以下の方法で見積もった。まず、最初の増幅サイクル中に作られる二本鎖産物中のその産物量は、制限プライマーの量によって決まる。本実施例において該量は、50nM、すなわち50fmole/μlであった。制限プライマーの枯渇後のLATE-PCR増幅の比例増幅期に作られる一本鎖伸長産物の濃度については、その期間をCy5蛍光曲線の検分により決定される二つの部分、すなわち増幅が等差級数的に進行している第1部分と産物蓄積が減速した第2部分に分けて見積もった。本実施例では11サイクルに該当する第1部分について、本発明者らは非特許文献2に基づき、増幅効率を50%と仮定した。11サイクル中の一本鎖の生産量を、開始濃度(50 fmole/μl)×サイクル数(11)×効率(0.5)で計算した。さらなる生産量については、反応の残余期間中のCy5シグナルの増加分をパーセンテージとして見積もった。本ケースは100%であった。したがって、比例期間の総生産量は275fmoles/μl(50×11×0.5×1)であり、また50fmole/μlの二本鎖アンプリコンを含んだ該産物の総濃度は325fmole/μlであると見積もられた。サイクルシークエンス反応混合物において100fmolを得るために、本発明者らは増幅産物を水と1:13で希釈し、25μlの反応混合物中に4μlの希釈産物を用いた。
【0129】
<結果>
4つの可能な組合せ、すなわち1) HV1-HとHV2-H、2) HV1-LとHV2-L、3) HV 1-HとHV2-L、4) HV 1-LとHV2-Hがある。図18は、4%アガロースゲルの電気泳動結果を示している。左3レーンは鋳型なしのコントロール(NTC)、次の3レーンはゲノムDNA100コピーで始めた反応由来のアンプリコン、そして一番右のレーンは100塩基対のラダーを示す。図18は、反応開始時にゲノムDNA100コピーを用いたときの549塩基対及び464塩基対のHV1-H dsDNAアンプリコン及びHV2-H dsDNAアンプリコンの形成を示している。鋳型なしのコントロールNTCでは、増幅は見られなかった。当業者にはお分かりのように、同一反応で一つの鋳型から二つの一本鎖アンプリコンを増幅する際に、同一のDNA鎖から、又は相補的なDNA鎖から二つの過剰プライマー鎖を生成できる。本発明者らは、両方法をうまく使用した。HV2-HとHV1-H、及びHV2-LとHV1-Lの組合せでは、両アンプリコンは同一のDNA鋳型鎖から生成される。HV1-HとHV2-L、及びHV1-LとHV2-Hの組合せでは、二つのアンプリコンは相補するDNA鋳型鎖から生成される。図19Aは、16209〜16169番目の塩基領域における二重のHV1-HとHV2-H中でのアンプリコンHV1-Hについての配列情報を表す。図19Bは、289〜326番目の塩基領域における二重のHV1-HとHV2-H中でのアンプリコンHV2-Hについての配列情報を表す。図19Cは、16209〜16169番目の塩基領域における二重のHV1-HとHV2-L中でのアンプリコンHV2-Hについての配列情報を表す。図19Dは、289〜326番目の塩基領域における二重のHV1-HとHV2-L中でのアンプリコンHV2-Lについての配列情報を表す。LATE-PCRは、GenBank配列情報に一致する配列を生成した。
【実施例12】
【0130】
<ssDNA必要量の決定>
LATE-PCR増幅で生成された一本鎖DNA量と二本鎖DNA量を使用して、「希釈して開始する」ジデオキシシークエンスに必要なssDNA量を測定することができる。PCR増幅は、ABI Prism Sequence Detector 7700 (Applied Biosystems社、米国、カリフォルニア、 フォスターシティー)を用いて行い、ヒトミトコンドリアDNAのd-ループ領域中のHV1-Hとして設計された549塩基のアンプリコンを増幅した。MtDNAについては、ヒト毛幹から(100μ1の溶解反応混合物中に4μ1のDTTを含んだ状態で、Peirceらの(2002) Biotechniques 32(5); 1106-1111に記載されているような)溶解条件下で抽出した。増幅は全てLATE-PCR増幅であり、また前記産物を直接ジデオキシシークエンスにかけた。
【0131】
<増幅反応混合物(終濃度)>
容量:25μl
1×PCRバッファ(Invitrogen社、米国、カリフォルニア、カールスバッド)
3 mM MgC12
250 μM dNTPs(Promega社)
1.0 μM プローブ (LATE−PCRのみ)
10×希釈 SYBR Green色素(FMC Bioproducts社、米国、メイン、ロックランド)
1.25ユニット プラチナTaq DNA ポリメラーゼ (Invitrogen社)
1μl DNA溶解溶液(ほぼ10mtDNAゲノム相当)
プライマー:LATE-PCR用、50 nM 制限プライマー、及び1000 nM 過剰プライマー
<オリゴヌクレオチド配列>
HV1H:制限プライマー、過剰プライマー、及びプローブ、いずれも実施例11に同じ。
【0132】
<サイクルシークエンス反応混合物>
実施例11に同じ。
【0133】
<ジデオキシシークエンス法>
実施例11に同じ。
【0134】
<LATE-PCR増幅及びシークエンス調製>
LATE-PCR増幅から得た生の蛍光データを図20のパネルA及びBに示す。図20Aの例えば線201は、ssDNA/dsDNA(色素シグナルに対するプローブシグナル)比として増幅サイクル数に対して描かれた全毛幹データを示している。本解析方法は、指数関数的増幅が始まる際、又はそのレベルがプラトーに達したときにより生じる変動を最小にし、また非常に遅れて始まるものを除けばssDNAの増幅効率は全サンプルで実質的に同じであることを立証している。
【0135】
図20Bは、希釈して開始するシークエンスの用意を規定する目的で、一連のLATE-PCRアッセイをモニターする方法を示している。プロットは、45サイクル(四角)及び65サイクル(菱形)における全増幅サンプルについて算出されたssDNA/dsDNA比(色素シグナル対、色素シグナルに対するプローブシグナル)を示している。0.06〜0.10間の比率と300〜600の間のSYBR値を有するサンプル(図中四角枠内)のみが配列決定に供される。図20Bでは、定量エンドポイント解析(QE LATE-PCR法)を使用して、65サイクル後には一つのサンプル以外の全てのサンプルが、「希釈して開始する」シークエンス法で使用する上で十分なssDNAを蓄積したことを立証している。
【実施例13】
【0136】
<複数のSNPをもつアンプリコン>
LATE-PCRと「希釈して開始する」シークエンス法の感度は、10%の分離レベルに複数のSNPをもつアンプリコンの混合物を区別できる。PCR増幅は、2mmのヒト毛幹、又はスライドグラスに付着したヒト親指の指紋一つから始めた。全ての増幅をLATE-PCR法で行い、その産物を直接ジデオキシシークエンスにかけた。最終増幅反応混合物、オリゴヌクレオチドシークエンス(HV1-H)、サイクルシークエンス反応混合物、ジデオキシシークエンス、LATE-PCR増幅及びシークエンス調製については、全て実施例11と同様に行った。
【0137】
三つの反応それぞれの一本鎖LATE-PCR産物についての10:90から90:10までの混合物を先に述べた「希釈して開始する」ジデオキシプロトコルを用いてシークエンスした。その結果を図21と図22に示す。
【0138】
図21は、ヒト血液リンパ球及びヒト親指の指紋の50:50混合物の16320番目と16311番目の塩基を取り巻く10塩基のセグメントを示している。線211は、この配列ではG塩基のピークを示している。また、線202はその配列の同じ位置でA塩基のピークを示している。同一領域の純粋な配列の解析によって立証できるようなジデオキシシークエンスの蛍光定量的特徴のため、ピーク212は異なる遺伝子型配列を有するヒト血液リンパ球及びヒト毛幹の50:50混合物においてピーク211よりも高い。
【0139】
図22は、5箇所のSNPの位置それぞれにおける二つのサンプルの相反的なパーセンテージ(90:10、70:30、50:50、30:70、10:90)を示している。サンプル1は、ヒト毛幹から得られたもの、またサンプル2は他人のヒト親指の指紋より得られたものである。各位置におけるそれぞれのピークについては、ジデオキシシークエンスのプリントアウトから測定し、その後、サンプル1の100%コントロールまたはサンプル2の100%コントロールの同一塩基に基づいて評価した。図22で線222は、混合物中のサンプル2の予定パーセンテージに対してプロットされた混合物中のサンプル1の予定パーセンテージである。線221は実際の結果と一致する線であり、この線が混合物中のサンプル2の実測パーセンテージに対してプロットした混合物中のサンプル1の実測パーセンテージである。サンプル2の各予定パーセンテージに対する実測パーセンテージは、5点、各塩基あたり一つである。前記データは、各パーセンテージにおいて異なる塩基間に非常に僅かな分散があることを立証している。しかし、前記データは、実測値である線221が予定値の線(線222)上に重なり合わないことを示している。おそらく、混合物中のサンプル1とサンプル2の量が厳密に等しくなかったためであろう。
【実施例14】
【0140】
<混合物の識別>
一塩基変異について90%異型接合性DNAと10%同型接合性ゲノムDNAからなるサンプルと100%異型接合性ゲノムDNA からなるサンプルを区別するために、本発明者らは、まずヒト17番染色体に位置するSNP部位rs858521の異型接合性DNA(G/Cアレル)90%に同SNP部位の同型接合性DNA(C/Cアレル)10%を加えてなるDNA混合物を作った。該SNP部位は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi?DB=SNPからアクセスできるNCBI dbSNPデータベースに記載されている。このDNA混合物は、シアトルのワシントン大学におけるReid研究室により提供された対応の異型接合性及び同型接合性DNAの濃度に合わせて混合することにより調製された。混合目的の各ゲノムDNAのDNA濃度については、以下で説明するものと同様にLATE-PCRサンプルのリアルタイム解析から得られたSYBR蛍光のCt値に基づいて見積った。一旦、DNA混合物が調製されれば、本発明者らは100%異型接合性DNAか、90%異型接合性DNA+10%同型接合性DNAのいずれかを含む反復LATE-PCR反応をセットアップした。それぞれのLATE-PCRサンプルは、最終容量25μlで、1×プラチナTaqバッファ(Invitrogen社、カリフォルニア、カールスバッド)、3mM MgC12、250μM dNTP混合液、0.24×SYBR Gold I (Invitrogen社、カリフォルニア、カールスバッド)、本発明者らがElixir化合物9-3iDDと呼んでいる200nMミスプライミング防止試薬、1.25ユニット プラチナTaqポリメラーゼ(Invitrogen社、カリフォルニア、カールスバッド)、1μM rs858521過剰プライマー、50 nM rs858521制限プライマー、2.4 μMのrs858521 SNPのGアレルに対するResonSenceプローブ、及び適当なゲノムDNAの1800ゲノム当量で構成される。前記rs858521過剰プライマーの配列は、5’ CAATCCCTTGACCTGTTGTGGAGAGAA 3’(配列番号29)であり、前記rs858521制限プライマーの配列は、5’ TCCCCAGAGCCCAGCCGGTGTCATTTTC 3’(配列番号30)である。rs858521 SNPのGアレルに対するResonSenceプローブの配列は、5’ [Cy5] CTTCAGCTCAAACAATA [Phos](配列番号31)である。
【0141】
ミスプライミング防止試薬の配列は、5’ Dabcyl-CGCTATAATGAAATTATAGCG-Dabcyl(配列番号32)である。
【0142】
これらのサンプルを、95℃3分を1サイクル後、95℃10秒、66℃10秒、そして72℃20秒を45サイクルからなるサーマルサイクルプロファイルを用いてABI 7700で増幅した。
【0143】
反応終点において、前記反応をCy5チャンネルで蛍光獲得を行うそれぞれの温度において1分間1℃の間隔を置いて95℃から25℃まで徐々に融解させた。ベースライン補正のない切り取ったCy5蛍光シグナルをエクセルコンピュータープログラムにデータ転送した。蛍光シグナルの一次導関数の算出は、前記融解中に、ある温度の蛍光信号をその次の温度の蛍光シグナルから減ずることによって行った。結果を図23のパネルA、及びBに示す。図23Aは、温度に対する蛍光シグナルの一次導関数の曲線を示しており、この曲線が融解温度である。図23Aの融解曲線を、エクセルの移動平均機能を用いて滑らかにし、ABI 7700における温度の揺らぎによるノイズを除いた。図23Aは、融解ピークが高温でマッチするGアレルターゲットへのプローブの結合と、低温でミスマッチするCアレルターゲットへのプローブの結合に一致することを明らかにした。図23Aは、90%異型接合体サンプル+10%同型接合体サンプル(丸印231)が、100%異型接合体サンプル(丸印232)中のCアレル融解ピークとGアレル融解ピークの高さと比べてより低いGアレルピークとより高いCアレル融解ピークを示すことを表している。これらの違いは、100%異型接合体サンプル(50%Gアレル:50%Cアレル)と比較したときの90%異型接合体サンプル+10%同型接合体サンプル中のCアレルの予想される高い割合(55%Cアレル:45%Gアレル)と一致している。Gアレルピークの高さに対するCアレルピークの高さの比を、図23Bに棒グラフで示した。右側の棒グラフのセットは、90%異型接合体サンプル+10%同型接合体サンプルに関するもので、丸印231に相当する。左側の濃い色の棒は100%異型接合体サンプルに関するものである。慣習的なエラーボックスである233及び234をそれぞれの棒グラフのセットについて示した。この比は、平均誤差の三つの標準偏差を反映するエラーボックスの重複欠損に基づいて100%異型接合体サンプルと90%異型接合体サンプル+10%同型接合体サンプルを99.7%の確実性で区別する。
【実施例15】
【0144】
<初期ポリメラーゼ濃度に対するLATE-PCR反応の感度>
PCR増幅をABI 7700を利用して行い、ヒトミトコンドリアDNAのdループ領域内のHV1-Hとして設計した549塩基のアンプリコンを増幅した。ヒトゲノムDNAの反応混合物、オリゴヌクレオチドシークエンス(HV1-H)、及びLATE-PCR増幅は、プラチナTaqDNAポリメラーゼのユニットをサンプル間で0.215、0.250、0.375、0.50、0.625、及び1.25ユニットと変化させたことを除いては、実施例11の記載と同様とした。
【0145】
融解曲線解析(温度に対するSYBR Green蛍光)を行った。融解曲線は、Taqの濃度が本LATE-PCR反応のdsDNA産物の特異性にどのように影響するかを示した。レプリカの融解ピークで反映されたように、プラチナTaqで濃度が1.25ユニットから0.375ユニットまで減少したとき反応の特異性は増加した。さらに濃度を0.250ユニットに下げると特異性は減少した。0.125ユニットでは反応が起きなかった。最も高い特異性は、0.375ユニットのTaq濃度で起こった。
【実施例16】
【0146】
<リアルタイムLATE-PCRとリアルタイム二重LATE-PCRにおけるTaq濃度関数としての勾配変動>
本発明者らは、マウスOct4及びXist遺伝子(GenBankアクセッション番号:それぞれNM013633とL04961)のエクソン内配列の同時増幅用の二重リアルタイムLATE-PCRアッセイを設計した。それぞれの反応は、最終容量50μlで行われ、以下の試薬を含んでいる。すなわち、20 mM Tris-HC1(pH 8.4)と50 mM KC1を含む1×PCRバッファ(Invitrogen社、カリフォルニア、カールスバッド)、3mM MgCI2、0.4 mMの各dNTP、配列5’ TGGCTGGACACCTGGCTTCAGACT 3’(配列番号33)を有する50nM Oct4制限プライマー、配列5’ CAACTTGGGGGACTAGGC 3’(配列番号34)を有する2μM Oct4過剰プライマー、配列5’ GGTCGTACAGGAAAAGATGGCGGCTCAA 3’(配列番号35)を有する100nM Xist制限プライマー、5’ TGAAAGAAACCACTAGAGGGCA 3’(配列番号36)を有する2μM Xist過剰プライマー、配列5’ TET-CCG CCT GGG ATG GCA TAC TGT GGA AGG CGG-Dabcyl 3’(配列番号37)を有する1 μM 低融点Oct4分子指標プローブ、及び配列5’DabcylCGTTATAATGAAATTATAACG-Dabcyl 3’(配列番号38)を有する300nM ミスプライミング防止試薬(本発明者らが化合物9-3bDDと呼ぶもの)である。抗体複合プラチナ(登録商標)Taq DNAポリメラーゼ(Invitrogen社、カリフォルニア、カールスバッド)も1アッセイあたり1、2、又は3ユニットの濃度でPCR混合物に加えた。Xistアンプリコン検出用の分子指標プローブは、本実施例では加えられていない。
【0147】
これらの二重LATE-PCRと平行して、本発明者らはOct4アンプリコンのみのLATE-PCR増幅についての一連のアッセイについても行った。本アッセイは、Xist制限プライマー及びXist過剰プライマーの削除を除いて前記二重LATE-PCRと同一の組成を有する。
【0148】
マウスゲノムDNA(Sigma社、ミズーリ、セントルイス)が、 PCR増幅用鋳型として、全アッセイに加えられた。各チューブに加えられたゲノム数は、6pg/ゲノムサイズ(VendrelyとVendrely (1949) Experientia 5: 327-329参照)に基づいて1000ゲノムと算出された。
【0149】
全アッセイを二重で行った。増幅については、95℃5分を1サイクル;95℃10秒、63℃20秒、そして72℃30秒を6サイクル;及び95℃15秒、55℃25秒、72℃35秒、そして45℃30秒を54サイクルからなるサーマルサイクルプロファイルで、45℃におけるTETチャンネルでの蛍光取得とともに、ABI 7700 Prism Sequence Detector(Applied Biosystems社、カリフォルニア)にて行った。
【0150】
本実験の結果を図24に示す。この図は、TET-Oct4分子指標プローブを用いたハイブリダイゼーションによりOct4アンプリコンを蓄積することで発生した蛍光シグナルをプロットしたものである。プライマー1ペアのみが存在するときは、Taqポリメラーゼ濃度を1ユニット/アッセイ(丸印241)から2ユニット/アッセイ(丸印242)又は3ユニット/アッセイ(丸印243)に増加すると増幅効率が増加するため、シグナルの勾配をより急にする効果がある。丸印242及び243(それぞれ2及び3ユニット/アッセイ)で同定されたシグナルは分散している。これは、これらのおおよそのレベルで最大効率に達したことを示唆している。予想通り、二重反応で生じた線の勾配(丸印244、245及び246)は、全てのケースで単一アンプリコンの増幅で生じるそれよりも低かった。これは、Taqポリメラーゼが前記割合の2倍で使用されたからである。単一アンプリコンLATE-PCRの場合のように、二重反応で1ユニット/アッセイ(丸印244)から2ユニット/アッセイ(丸印245)又は3ユニット/アッセイ(丸印246)にTaq濃度を増加させると、シグナル勾配は増大する結果となった。2ユニット/アッセイ(丸印245)の初期勾配と比べたとき、3ユニット/アッセイ(丸印246)の初期勾配がさらに増加することはなかった。この場合もやはり、最大効率に達したことを示している。しかし、3ユニット/アッセイサンプル(丸印246)は、2ユニット/アッセイサンプル(丸印245)と異なり、すぐにプラトーに達し、またその勾配が減退し始めている。これは、テストした最高濃度のTaq存在下ではミスプライミングが同じ3Taqユニット/アッセイを含んでいてもサンプル243のケースでは起こらず、一組のプライマーペアでのみおそらく起こること示している。二重の場合と比べて単一アンプリコンアッセイでは利用できるTaqの量が多いにもかかわらず(3ユニットが2つのアンプリコンを同時に生成するのでなく1つのアンプリコンを生成するのに使用される)、より多くのミスプライミングがXistプライマーの添加により二重の中で起きた。したがって、ミスプライミングのない最大効率を得るためにTaqポリメラーゼの濃度を、反応に加えたプライマーの数と配列を考慮して最適化する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】融解曲線解析に関する本発明の方法による蛍光標識されたプライマーの使用を示す。
【図2】本発明の方法による一本鎖産物対二本鎖産物比の使用によるシグナル分散の減少を示す。
【図3】16SリボソームRNA遺伝子に対する従来型のミスマッチ寛容性プローブか、又は本発明の方法により設計された同ターゲットに対する消光型ミスマッチ寛容性プローブの異なる二つのバージョン、のいずれかで得られた融解曲線解析を介したミコバクテリア5種の同定の比較を示す。
【図4】本発明の方法による16SリボソームRNAに対する二つのミスマッチ寛容性プローブのみを用いたミコバクテリア5種の同定を示す。
【図5】本発明の方法により設計された16SリボソームRNA遺伝子に対する二つのミスマッチ寛容性プローブを用いた、図3で示した溶解曲線の一次導関数解析を介したミコバクテリア5種の同定を示す。
【図6】本発明の方法による16SリボソームRNA遺伝子に対する二つのミスマッチ寛容性プローブから異なる温度で回収された蛍光シグナルの比率を用いたミコバクテリア5種の同定を示す。
【図7】LATE-PCRと本発明の方法による野生型アレルに対する低温Tmミスマッチ寛容性プローブ1種を用いたヒトHexA遺伝子のG269変異に関する同型接合体サンプル及び異型接合体サンプルのエンドポイント遺伝子型タイプ分けを示す。
【図8】LATE-PCR、同色で標識されたアレル識別型低温Tmプローブ、及び融解曲線の一次導関数解析を用いたヒト嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子の3つの異なるアレルの分離同定を示す。
【図9】同色で標識されたアレル識別型低温Tmプローブ、及び融解曲線の一次導関数解析を用いたヒト嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子の様々なアレルの異なる組み合わせの同時同定を示す。
【図10】本発明の方法により回収された二温度での蛍光の変化をプロットすることによるヒト嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)遺伝子の異なるアレルの組み合わせの同定を示す。
【図11】二温度標準化解析を示す(バックグラウンド補正有り)。
【図12】二温度標準化解析を示す(バックグラウンド補正無し)。
【図13】三温度標準化解析を示す。
【図14】本発明の方法によるピロシークエンス用LATE-PCRサンプル調製の「希釈して開始する」方法と、同アッセイ用LATE-PCRサンプル調製の従来方法との比較を示す。
【図15】単一チューブLATE-PCR法により調製された単一細胞から得られたパイログラムである。矢印は、a)同型接合性野生型、b)異型接合性変異細胞、及びc)同型接合性変異細胞のβ‐グロビンIVS110部位を示す。
【図16】50塩基対以上について行われたピロシークエンス反応のパイログラムである。ヌクレオチドの分配順は各ピークの下に列挙されており、また予想配列は上部に示されている。
【図17】本発明の方法によるジデオキシシークエンス用LATE-PCRサンプル調製の「希釈して開始する(dilute-and-go)」方法由来と、同アッセイ用LATE-PCRサンプル調製の従来方法由来のジデオキシシークエンスクロマトグラフである。
【図18】同一反応で同一鋳型DNAからの一以上の産物のLATE-PCR増幅の電気泳動ゲル図である。
【図19】図18のLATE-PCR増幅産物についての、希釈して開始するジデオキシシークエンスのクロマトグラフである。
【図20】LATE-PCR増幅により生じるssDNAとdsDNAの量を独立に測定できること、またそれを使用して、ssDNA/dsDNA比を算出できること、次に該比をそれまでに蓄積したssDNAの量が「希釈して開始する」方法による次のシークエンシングに十分であるかどうかを測定することに利用できることを示している。
【図21】二つの密接に関係するが異なる配列を有するLATE-PCRアンプリコンを50:50混合で使用した「希釈して開始する」方法のジデオキシシークエンスクロマトグラフである。
【図22】「希釈して開始する」方法を通して区別できる密接に関係するが異なる配列を有する混合LATE-PCRアンプリコンの感度範囲を示す。
【図23】LATE-PCRを少なくとも1つの単一ミスマッチ寛容性プローブと共に使用してエンドポイント融解曲線を生成することができ、次にそれを使用して二以上の密接に関係するが異なる配列の混合LATE-PCRアンプリコンの相対量を定量することができることを示している。
【図24】三つの異なる量のゲノムDNAのそれぞれを用いて二つの異なる濃度のTaqポリメラーゼを使用して行われたいくつかのLATE-PCRアッセイの動力学を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DNAポリメラーゼによるオリゴヌクレオチドプライマーの伸長によって二本鎖及び一本鎖アンプリコンの双方を生成し、ならびに、少なくとも一つのプライマーアニーリング温度を含む非対称性核酸増幅工程の少なくとも一つの一本鎖増幅産物を解析するための方法であって、
均質蛍光検出により二本鎖アンプリコンを検出すること、
前記少なくとも一つのプライマーアニーリング温度より低い温度で配列特異的な均質蛍光検出により前記少なくとも一つの一本鎖アンプリコン産物を検出すること、そして
前記二本鎖アンプリコンの蛍光に対する前記一本鎖産物の蛍光比率を計算すること
を含む前記方法。
【請求項2】
検出試薬を核酸増幅工程の開始時に添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
二本鎖アンプリコンの検出は蛍光性DNA色素によるものである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つの一本鎖産物の検出は低温検出ステップの間に前記一本鎖産物に結合するが、前記少なくとも一つのプライマーアニーリング温度では結合しないフルオロフォア標識されたハイブリダイゼーションプローブを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つの一本鎖増幅産物に対するハイブリダイゼーションプローブはアレル識別型消光性二本鎖プローブである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
同一のフルオロフォアで標識されているがターゲットに関しては異なる融解温度を有する、異なる一本鎖増幅産物に対する少なくとも二つのプローブを包含し、前記低温検出ステップは、一つのプローブのみがそのターゲットに結合する温度、及び少なくとも二つのプローブがそれぞれのターゲットに結合する温度において前記フルオロフォアからの放出を検出することを包含する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
伸長により一本鎖アンプリコンを生じるプライマーが前記色素からの蛍光放出によって間接的に刺激されるフルオロフォアで標識され、ならびに、前記少なくとも一つの一本鎖産物の検出が色素の刺激及び前記プライマーにより放出された蛍光を検出することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
可能性のある少なくとも二つの一本鎖増幅産物に結合して前記増幅でプライマーをアニールするために利用される温度より低い異なる融解温度を有するハイブリッドを形成し、ならびに、前記色素からの蛍光放出によって間接的に刺激されるフルオロフォアで標識された少なくとも一つのミスマッチ寛容性ハイブリダイゼーションプローブを含む方法であって、一本鎖産物の検出が、前記異なる融解温度によって決定される複数の温度における低温検出を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記ミスマッチ寛容性ハイブリダイゼーションプローブは前記低温検出期間に1〜4ヌクレオチド長の二本鎖領域を含む二次構造を形成する直鎖状ハイブリダイゼーションプローブであり、前記二次構造に起因する蛍光は内部で消光される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ミスマッチ寛容性ハイブリダイゼーションプローブは分子指標プローブである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
それぞれが、いずれのターゲットに対してもプライマーアニーリング温度より低い融解温度を有し、ならびに、共同して可能性のある多数のターゲット配列にハイブリダイズする複数の異なる蛍光標識された低温ハイブリダイゼーションプローブと、異なる温度で可能性のある複数のターゲットにハイブリダイズし、かつ、前記色素からの蛍光放出により励起されるフルオロフォアを有するミスマッチ寛容性プローブである少なくとも二つのプローブを含み、
一本鎖アンプリコンの検出が前記プライマーアニーリング温度より低い少なくとも三つの温度において、色素を励起するが前記ミスマッチ寛容性プローブのフルオロフォアを励起しない光で前記反応混合物を刺激すること、及びプローブからの放出を検出することを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
増幅工程は指数関数後比例PCR(LATE-PCR)増幅工程である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記検出は増幅工程の完了に続くエンドポイント検出である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも請求項1〜13のいずれか1項記載の方法で利用される全てのプライマー及びプローブを含む前記方法行うための試薬キット。
【請求項15】
さらに全ての増幅試薬を含む、請求項14に記載の試薬キット。
【請求項16】
a)ターゲット配列に完全相補的な第一配列を含み、かつ前記ターゲット配列に関して算出された30〜55℃の融解温度(Tm)を有する、第一オリゴヌクレオチド、
b)前記第一配列に相補的であるが、前記第一配列よりも短い最大10ヌクレオチドの第二配列を含む、第二オリゴヌクレオチド、
c)蛍光性DNA色素からの蛍光放出で励起性となるが、前記色素の最大吸光波長では励起性にならない、前記第一配列に結合した蛍光標識、および
d)前記第二配列に結合した非蛍光性クエンチャー
を含む、予め選択された核酸ターゲット配列に対する二本鎖核酸ハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項17】
予め選択されたターゲット配列を増幅するための1対のLATE-PCRプライマー、及び請求項16に記載のプローブを含むオリゴヌクレオチドセット。
【請求項18】
最高60℃、好ましくは最高50℃の完全相補に関して算出された第一融解温度を有する低温ミスマッチ寛容性一本鎖オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブであって、
前記プローブは、前記第一融解温度よりも少なくとも10℃低いが、30℃以上ある算出された融解温度のステムを有するステムループヘアピンを含み、
前記プローブは、蛍光性DNA色素により放出される蛍光エネルギーの吸収が可能なフルオロフォア、並びに前記色素に前記プローブを曝露すること及びプローブのターゲットがない場合に色素を励起することによって生じる蛍光を消光するための手段を含む前記プローブ。
【請求項19】
a)30〜60℃の範囲の温度でミスマッチ寛容性であり、
b)30〜50℃の温度範囲で二次構造を形成し、そして
c)以下
i)少なくとも一つの蛍光性DNA色素からの蛍光放出で励起性となるが、前記色素を励起するのに適切な波長では励起性にならないフルオロフォア、及び
ii)前記二次構造に関連する蛍光を十分に消光するが、プローブ‐ターゲットのハイブリッドに関連する蛍光は消光しないように配置された非蛍光性クエンチャーで、二重標識された低温直鎖状オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ。
【請求項20】
前記二次構造は末端ヌクレオチドの相補性によって形成されるステムであって、前記ステムはプローブがステムのない場合に形成するであろう他のいずれの二次構造のTmよりも大きいTmを有する、請求項19に記載のプローブ。
【請求項21】
a)一本鎖DNA産物を調製するためにLATE-PCR増幅反応によってDNA基質を増幅すること、
b)ピロリン酸、及び、もし存在するのであれば残ったdNTPを除くこと、
c)もし必要であれば、過剰なプライマーを阻害するためのオリゴヌクレオチドを加えること、
d)もしピロリン酸とdNTPが上記b)に記載のように既に除かれているならば、ピロシークエンス試薬をシークエンスプライマーを添加する前に加えること、
e)シークエンスプライマーを加えること、及び
f)ピロシークエンスを実行すること、
を含む連続増幅ピロシークエンス方法。
【請求項22】
ステップb)がピロシークエンス試薬を加えることを含み、またステップd)が前記試薬を補充することを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ピロホスファターゼ活性を持つ酵素を加えることによりピロリン酸を除く、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
dNTPアーゼ活性を持つ酵素を加えることによりdNTPを除く、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公表番号】特表2008−516612(P2008−516612A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537034(P2007−537034)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/037667
【国際公開番号】WO2006/044994
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(504238057)ブランデイズ ユニバーシティー (4)
【Fターム(参考)】