説明

核酸増幅法を用いたヒト乳頭腫ウイルスの検出方法及び核酸鎖固定化担体

ヒト乳頭腫ウイルスの検出および遺伝子型を同定するために用いるLAMP増幅用核酸プライマーを提供する。また、本発明は、ヒト乳頭腫ウイルスの検出および遺伝子型を同定する方法であって、本発明の核酸プライマーから選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により検体試料の核酸鎖増幅反応を行う工程と、前記増幅反応後に増幅産物の存在を検出し、および遺伝子型を同定する工程とを含む方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定するための核酸プライマー配列、キット、核酸鎖固定化担体、並びに、核酸増幅法を用いたヒト乳頭腫ウイルスの検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1980年代、子宮頸癌の原因としてヒト乳頭腫ウイルス(HPV)の感染が報告され、特に癌の悪性度とHPVの遺伝子型の関係が注目されている。HPVは子宮頸癌以外にも、性器や口腔粘膜などに生じるガンの原因とも考えられており、迅速で正確な検出が求められていた。これまで、DNA/RNA認識抗体を使い、悪性、良性の遺伝子型を検出する方法や、遺伝子型に特徴的な配列を含む領域をポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)で増幅し、最後に遺伝子型特異的なプローブで同定する方法が知られていた。しかしながら、前者の方法では遺伝子型を特定できないので、現在開発が進められているワクチン投与のための検査には対応できない。また、後者のPCR法を利用する方法は、核酸抽出などの前処理が煩雑であること、サーマルサイクラーのような複雑な温度制御装置が必要であること、反応時間が2時間以上かかること、などの不利点がある。またPCR法では、誤った相補鎖合成が行われた場合に、その生成物が増幅において鋳型として使用され、結果として、誤った判定がされる可能性がある。実際に、プライマーの末端の1塩基の相違のみでは、特異的な増幅を制御することは困難である。
【0003】
また一般に、DNAチップを用いて検出するためにPCR法で増幅された遺伝子産物は2本鎖である。このため、プローブとハイブリダイゼーション反応させる場合に、相補鎖がプローブに対するコンペティターとなるためにハイブリ効率が低くなり、検出感度が悪いのが問題であった。そこで、ターゲット遺伝子産物を1本鎖にするために、相補鎖を分解する、または分離するといった方法がとられている。しかしながら、それらの方法はいずれも酵素や磁気ビーズの使用などによって高価格化したり、操作が煩雑であったりという課題が残され、これらに代わる新しい手法が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、簡便且つ短時間で核酸を検出できるLAMP法の原理を応用し、LAMP増幅産物中に存在するHPV核酸配列を検出するための核酸プライマーを提供すること、並びに、該核酸プライマーを用いたHPV検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明では、HPVの遺伝子型を同定するために、PCR法とは異なる方法、即ちLAMP法を採用した。これによって、遺伝子型の同定を容易に行うことができる。しかし、LAMP産物は複雑な高次構造を有しているため、ハイブリダイゼーションの際に、プローブが結合した基体と物理的な障害を起こし、その結果、ハイブリダイゼーション効率に悪影響を及ぼすことが知られている(たとえば、特願2003-332067明細書を参照されたい)。このため、本発明では、従来とは異なり、LAMP産物の一本鎖ループ部分にヒト乳頭腫ウイルス由来のターゲット配列が位置するようにプライマーを設計した。
【0006】
本発明の一つの側面によれば、ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定するために用いられるLAMP増幅用核酸プライマーであって、以下の(a)〜(f)から選択される核酸プライマーが提供される:(a) 表1に記載された第1配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、表2に記載された第2配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;(b) 前記第1配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、表3に記載された第3配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;
(c) 前記第2配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、前記第3配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;(d) 核酸プライマー(a)、(b)及び(c)のうちの一つの選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プライマー(a)、(b)及び(c)のうちの一つの選択された前記配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プライマー;(e) 表4に記載された第4配列群から選択される配列、又は、それに相補的な配列を含む核酸プライマー;及び(f) 核酸プライマー(e)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プライマー(e)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プライマー。
【0007】
また、本発明の他の側面から、ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、上記記載の核酸プライマーから選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により検体試料の核酸鎖の増幅反応を行う工程と、前記増幅反応後に増幅産物の存在を検出し、それらの遺伝子型を同定する工程とを含む方法が提供される。
【0008】
また、本発明の他の側面から、ヒト乳頭腫ウイルスのLAMP増幅産物を検出するための、ヒト乳頭腫ウイルス特異的または遺伝子型特異的な核酸鎖が固定化された核酸鎖固定化基体が提供される。好ましくは、該固定化された核酸鎖は、(g) 表5に記載された第5配列群から選択される配列又はそれに相補的な配列を含む核酸プローブ、又は、(h) 核酸プローブ(g)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プローブ(g)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プローブである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる増幅法「LAMP法」は、等温遺伝子増幅法の1種であり、4種類あるいは6種類のプライマーを用いる。LAMP法は、PCR法に比べ増幅効率が優れていると共に、サンプル中の不純物の影響も受けにくいと報告されている。そのため、サンプルを簡単に前処理するだけで微量なヒト乳頭腫ウイルスを検出することが可能である。
【0010】
ここで、LAMP法におけるプライマー設計及び得られる増幅産物について、図1および図2を参照して説明する。図1は、検出されるべき二本鎖DNAを示している。従来、LAMP増幅産物においては、ターゲット配列が、増幅産物のステム・アンド・ループ構造の中央に位置されていた(図2)。ターゲット配列を増幅・検出しようとする場合、該ターゲット配列の両側に位置する配列に基づいて、合計4種類のプライマー配列(FIPプライマー、F3プライマー、BIPプライマー、B3プライマー)を決定する。FIPプライマーおよびBIPプライマーは、各々二つの領域(FIP=F1c+F2、BIP=B2+B1c)を含んでいる。これらプライマーとして用いられる合計6つの領域のそれぞれを、以下ではプライマー領域と称する。上記4種類のプライマーを用いてLAMP増幅を行なうと、図2に示すようなダンベル型のステム・アンド・ループ構造の増幅産物が得られ、それらの各鎖は、図1に示したDNA鎖の夫々の鎖と相補的である。その増幅機構については説明を省略するが、必要であれば、例えば特開2002−186781号公報を参照されたい。
【0011】
一方、本発明では、図2に示したような従来のターゲット配列の位置とは異なり、一本鎖のループ部分にターゲット配列が位置するようにプライマーを設計する。即ち、図3に示すように、本発明においては、ターゲット配列(図3ではFPc、FP、BP、BPcの何れか)が、プライマー領域F1とF2の間(F2領域含む)、プライマー領域F2cとF1cの間(F2c領域含む)、プライマー領域B1とB2の間(B2領域含む)、および/またはプライマー領域B2cとB1cの間(B2c領域含む)の何れかに位置するように、6つのプライマー領域を設定する。ターゲット配列は、上記の領域間に形成される一本鎖のループ部分のいずれに位置するように設計されていてもよく、このため、プライマー領域F1とF2の間のループ部分にはF2領域も含まれる。このように設定された6つのプライマー領域に基づいて4種類のプライマーを作製し、これらプライマーを用いてLAMP増幅を行なうことにより、図4にその一部が示されたようなLAMP増幅産物を得る。このLAMP増幅産物中では、ターゲット配列FPc、FP、BP、BPcは増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置することとなる。一方、プライマー領域F1cとF1、およびB1cとB1は、もともと相補的な配列を有しているので、自己ハイブリダイゼーションによって二本鎖を形成することとなる。このように増幅産物中に含まれるターゲット配列には、図4に示すような一本鎖の状態のものが存在する。このため、変性操作を行なうことなく、図示したように各ターゲット配列に対する相補的なプローブ核酸(FP、FPc、BP、BPc)との特異的ハイブリダイゼーションにより検出することができる。特異的ハイブリダイゼーションとは、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphisms:SNPs)または変異が存在する場合、その僅かの違いも検出することが可能であることを意味している。
【0012】
本発明は、上記のようなプライマーの構造をHPVウイルスに対して適用し、その遺伝子型を検出する。
【0013】
図11に示した配列は、HPVウイルスの配列である。図中の配列番号1、2、および3を含む領域は、HPVウイルス間でよく保存されていることが知られている領域である。また、配列番号4は、悪性種と良性種の間に多型が存在することが知られている領域である。HPVウイルスの遺伝子型を検出するためには、例えば配列番号4に対応する領域の配列をターゲット配列として多型を検出することとなる。この場合、上記プライマー領域F1とF2に対応する配列として、例えば第1配列群(表1)と第2配列群(表2)から選択される配列を使用し、また例えば第1配列群と第3配列群(表3)から選択される配列を使用する。ここで、第1配列群、第2配列群、および第3配列群は、以下の表1〜3に示した配列群であり、それぞれ図11の配列番号1、2、および3の領域に対応している。この領域の配列はウイルス型毎に異なるので、必ずしも図11の配列に一致するものではない。また、実際のLAMP増幅を行う際には、BIPプライマー及びB3プライマーからなるプライマーセットも必要になる。図11では配列番号5、6あるいはそれらの相補配列を使用することが可能である。本発明で使用されるプライマーは、5’→3’の方向で同一鎖上に、第1配列群から選択される配列の相補配列と第2配列群から選択される配列が互いに結合している配列か、第2配列群から選択される配列と第1配列群から選択される配列の相補配列が互いに結合している配列か、第1配列群から選択される配列の相補配列と第3配列群から選択される配列が互いに結合している配列か、第3配列群から選択される配列と第1配列群から選択される配列の相補配列が互いに結合している配列か、第2配列群から選択される配列の相補配列と第3配列群から選択される配列が互いに結合している配列か、第3配列群から選択される配列と第2配列群から選択される配列の相補配列が互いに結合している配列か、第4配列群(表4)から選択される配列、或いは、第4配列群から選択される配列の相補配列であることが望ましい。
【0014】
相補配列には、厳密に相補的な配列だけでなく、上記配列群に対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる配列も含まれる。そのような条件下では、通常、配列の相同性が90〜95%もあれば反応が進行するものと考えられる。ストリンジェントな条件は、当業者であれば容易に認識することができると考えられ、たとえば20℃〜65℃の範囲の温度で2×SSC緩衝液、0.1%w/vSDSであり、特に好ましくは高いストリンジェンシーの条件であり、少なくとも65℃の温度で0.1×SSC緩衝液、0.1%w/vSDSである。更に、配列番号1、2、3あるいはその相補鎖のうちの少なくとも1つが1つまたは数個(たとえば、1〜5ヌクレオチド)の置換、欠失、挿入を有する配列であっても構わない。ただし、これらの置換、欠失、挿入された配列は、該置換、欠失、もしくは挿入がなされていない配列の相補鎖に対して、上記ストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができる配列であるものとする。更に、配列番号1、2、3あるいはその相補鎖のうちの少なくとも1つが、1〜5のヌクレオチドの混合された配列であるか、または配列番号1、2、3あるいはその相補鎖のうちの少なくとも1つが、1〜5のユニバーサルヌクレオチドを有する配列であっても良い。ユニバーサルなヌクレオチドとしては、deoxyinosine(dI)や、Gren Research社の3-Nitropyrrole、5-Nitroindole、deoxyribofuranosyl (dP)、deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl (dK)が使用可能である。本発明のプライマーは、これらのプライマー領域が、それぞれ直接連結されてもよく、またはスペーサーを介して連結されていてもよいことは当業者には明らかであろう。プライマーの各配列間、あるいは末端側には1〜100ヌクレオチド、好ましくは2〜30ヌクレオチド程度の配列(スペーサー)が含まれていても構わない。核酸プライマーの長さは15〜200ヌクレオチド程度であり、好ましくは20〜100ヌクレオチド、更に好ましくは40〜60ヌクレオチドである。
【0015】
本発明のHPVウイルスの遺伝子型を検出するためのプライマーにおいては、プライマー領域F1とF2、あるいはB1とB2に対応する配列として、上記第1〜3配列群の配列の組合せあるいは第4配列群を使用することにより、初めて多型領域を増幅することができる。そして、LAMP増幅産物に含まれる配列番号4に存在する多型をプローブを使用して検出することができる。すなわち、LAMPプライマーによる増幅産物のダンベル構造における一本鎖ループの中に位置するターゲット配列FPc、FP、BP、BPcは、配列番号4に対応することとなる。
【0016】
プライマー領域F1とF2を有する構造の上記のようなプライマーを使用して、HPV含有検体試料に対してLAMP法による増幅を行うと、図4で説明したように、ステム・アンド・ループ構造を有する核酸プライマーの一本鎖のループ構造内に含まれたHPV由来のターゲット配列(すなわち、配列番号4に対応する領域の配列)が得られる。
【0017】
上記増幅反応は、1チューブ当たり1プライマーセットで行っても構わないし、あるいは1チューブに各種遺伝子型に対応した複数のプライマーセットを用いて行っても構わない。複数の遺伝子型を同時に特定する必要がある場合は、後者の方法で行う方が効率的である。
【0018】
この増幅産物を、例えば配列番号4と相補的な配列を有するプローブ核酸(FP、FPc、BP、BPc)を用いて検出する。均一なハイブリダイゼーションは、例えば、蛍光色素(フルオレセイン、ローダミン、FITC、FAM、TET、JOE、VIC、MAX、ROX、HEX、TAMRA、Cy3、Cy5、TexasRedなど)、電子スピン物質及び金属錯体(ルテニウム、コバルト、鉄など)などによって標識された核酸プローブを用いて達成できる。分子標識(beacon)の例としては、蛍光共鳴エネルギー転移(fluorescence resonance energy transfer)(FRET)が、標識化されたプローブを用いる均一なハイブリダイゼーションのためにしばしば用いられる。インベーダー及びピロシークエンチング(Invader and pyrosequenching)技術もまた、標識なしの均一なハイブリダイゼーションのために用いられる。LAMP産物のための均一なハイブリダイゼーションアッセイは、特に限定されない。このプローブ核酸は、均一なハイブリダイゼーションのために固相基体表面に固定化されたものであり、典型的にはDNAチップとして構成されたものを用いるが、他のマイクロアレイを構成するプローブを用いてもよい。上述のとおり、配列番号4の領域は多型領域であるため、増幅産物を検出するためのプローブ核酸は、検出する多型に応じて変化させることもできる。
【0019】
本発明で用いる核酸プローブ配列は、好ましくは、第5配列群(表5)から選択される配列もしくは第5配列群から選択される配列の相補配列を含む配列を有する核酸プローブであり、または、第5配列群から選択される配列もしくはその相補配列の塩基が1つまたは数個置換あるいは欠失あるいは挿入された配列を含む核酸プローブである。また、Kleter et al., J.Clin.Microbiol., 37, 2508-17(1999)、Vernon et al., BMC Infectious Diseases, 3:12 (2003)、特開平09-509062等に記載の配列を用いることも可能である。また、核酸プローブの構造も特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA、LNA、メチルホスホネート骨格の核酸、その他の人工核酸鎖を用いることも可能である。また、これらのキメラ核酸でも構わない。核酸プローブを固相に固定化する場合は、末端にアミノ基、チオール基、ビオチン、などの官能基を導入することも可能で、更に、官能基とヌクレオチドの間にスペーサーを導入することも可能である。ここで用いられるスペーサーの種類は特に限定されないが、例えばアルカン骨格、エチレングリコール骨格などを用いることができる。また、本発明使用可能なユニバーサルのヌクレオチドとしては、deoxyinosine(dI)や、Gren Research社の3-Nitropyrrole、5-Nitroindole、deoxyribofuranosyl (dP)、deoxy-5'-dimethoxytrityl-D-ribofuranosyl (dK)などを用いることが可能である。
【0020】
本発明で使用する検出法は特に限定されるものではないが、濁度、可視光、蛍光、化学発光、電気化学発光、化学蛍光、蛍光エネルギー転移法、ESRなどの光学的な手法や、電流、電圧、周波数、伝導度、抵抗などの電気的な性質を利用することも可能である。
【0021】
本発明で用いる核酸プローブを固定化するための基体は特に限定されるものではないが、粒子(例えば、樹脂ビーズ、磁気ビーズ、金属微粒子、金コロイドなど)、基板(例えば、マイクロタイタープレート、ガラス基板、シリコン基板、樹脂製基板、電極基板、膜など)などを用いることができる。
【0022】
本発明で使用する基体の材料は、特に限定されるものではないが、透過性材料、例えば多孔質体や膜、或いは不透過性材料、例えばガラスや樹脂を使用することができる。例として、基体材料には、ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、フォルステライト、炭化珪素、酸化珪素、窒化珪素等の無機絶縁材料、並びにポリエチレン、エチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、シリコン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリエチレングリコール、アガロース、アクリルアミド、ニトロセルロース、ナイロン、ラテックス等の有機材料を用いることができる。
【0023】
核酸鎖が固定化される基体表面は、例えば電極材料で構成されることができる。電極材料は特に限定されるものではないが、例えば、金、金の合金、銀、プラチナ、水銀、ニッケル、パラジウム、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、タングステン等の金属単体及びそれらの合金、あるいはグラファイト、グラシーカーボン等の炭素等、またはこれらの酸化物、化合物を用いる事ができる。更に、酸化珪素等の半導体化合物や、CCD、FET、CMOSなど各種半導体デバイスを用いることが可能である。電極は、メッキ、印刷、スパッタ、蒸着などでも作製することができる。蒸着を行う場合は、抵抗加熱法、高周波加熱法、電子ビーム加熱法により電極膜を形成することができる。また、スパッタリングを行う場合は、直流2極スパッタリング、バイアススパッタリング、非対称交流スパッタリング、ゲッタスパッタリング、高周波スパッタリングで電極膜を形成することが可能である。更に、ポリピロール、ポリアニリンなどの電解重合膜や導電性高分子も用いることが可能である。電極以外の部分を絶縁するための材料は特に限定されるものではないが、フォトポリマー、フォトレジスト材料であることが好ましい。レジスト材料としては、光露光用フォトレジスト、遠紫外用フォトレジスト、X線用フォトレジスト、電子線用フォトレジストが用いられる。光露光用フォトレジストには、主原料が環化ゴム、ポリけい皮酸、ノボラック樹脂があげられる。遠紫外用フォトレジストには、環化ゴム、フェノール樹脂、ポリメチルイソプロペニルケトン(PMIPK),ポリメチルメタクリレート(PMMA)等が用いられる。また、X線用レジストには、COP、メタルアクリレートほか、薄膜ハンドブック(オーム社)に記載の物質を用いることができる。更に電子線用レジストには、PMMA等上記文献に記載の物質を用いることが可能である。ここで用いるレジストは100Å以上1mm以下であることが望ましい。フォトレジストで電極を被覆し、リソグラフィーを行うことで、面積を一定にすることが可能になる。これにより、DNAプローブの固定化量がそれぞれの電極間で均一になり、再現性に優れた測定を可能にする。従来、レジスト材料は最終的には除去するのが一般的であるが、遺伝子検出用電極ではレジスト材料は除去することなく電極の一部として用いることも可能である。この場合は、用いるレジスト材料に耐水性の高い物質を使用する必要がある。電極上部に形成する絶縁層にはフォトレジスト材料以外でも用いることが可能である。例えば、Si、Ti、Al、Zn、Pb、Cd、W、Mo、Cr、Ta、Ni等の酸化物、窒化物、炭化物、その他合金を用いることも可能である。これらの材料をスパッタ、蒸着あるいはCVD等を用いて薄膜を形成した後、フォトリソグラフィーで電極露出部のパターニングを行い、面積を一定に制御する。電極は1つの素子上に幾つかの電極部を構成し、異なったプローブを固定化することで、一度に数種類の標的に対して検査を行うことができる。また、1つの素子上に幾つかの電極部を構成し、同じプローブを固定化することで、一度に数検体の検査を行うことも可能である。この場合、フォトリソグラフィーを利用して、あらかじめ基板上複数の電極をパターニングしておく。この際、隣同士の電極が接触しないように、絶縁膜で仕切りを付けることは有効である。絶縁膜の厚さは0.1ミクロンから100ミクロン程度が望ましい。
【0024】
本発明が対象とする検体は特に限定されるものではなく、例えば、血液、血清、白血球、尿、便、精液、唾液、膣液、組織、バイオプシー、口腔内粘膜、培養細胞、喀痰等を用いることができる。これら検体試料から核酸成分の抽出を行う。抽出方法は特に限定される物ではなく、フェノール−クロロホルム法等の液−液抽出法や担体を用いる固液抽出法を用いることができる。また、市販の核酸抽出方法QIAamp(QIAGEN社製)、スマイテスト(住友金属社製)等を利用することも可能である。
【0025】
抽出した核酸成分をLAMP法によって増幅し、その増幅産物を遺伝子検出用電極に固定されたプローブとハイブリダイゼーション反応させる。この反応は、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液中で行う。この溶液中にはハイブリダイゼーション促進剤である硫酸デキストランや、サケ精子DNA、牛胸腺DNA、EDTA、界面活性剤などを添加することが可能である。増幅産物をそれに添加する。また、基板上に液を滴下することでハイブリダイゼーション反応を行うことも可能である。反応中は、撹拌、あるいは振盪などの操作で反応速度を高めることもできる。反応温度は10℃〜90℃の範囲で、また反応時間は約1分から1晩程度行う。ハイブリダイゼーション反応後、電極を取り出し洗浄を行う。洗浄には、イオン強度0.01〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。
【0026】
抽出したサンプル核酸は、あらかじめFITCやCy3、Cy5、ローダミンなどの蛍光色素やビオチン、ハプテン、オキシダーゼやホスファターゼ等の酵素や、フェロセンやキノン類等の電気化学的に活性な物質で標識するか、あるいは前述した物質で標識したセカンドプローブを用いることで検出が可能になる。
【0027】
電気化学的に活性なDNA結合物質を用いた検出を行う場合は、以下のような手順で検出を行う。基板は洗浄後、電極表面に形成した二本鎖部分に選択的に結合するDNA結合物質を作用させ、電気化学的な測定を行う。ここで用いられるDNA結合物質は特に限定されるものではないが、例えば、ヘキスト33258、アクリジンオレンジ、キナクリン、ドウノマイシン、メタロインターカレーター、ビスアクリジン等のビスインターカレーター、トリスインターカレーター、ポリインターカレーター等を用いることが可能である。更に、これらのインターカレーターを電気化学的に活性な金属錯体、例えば、フェロセン、ビオロゲン等で修飾しておくことも可能である。DNA結合物質の濃度は、その種類によって異なるが、一般的には1ng/ml〜1mg/mlの範囲で使用する。この際、イオン強度0.001〜5の範囲で、pH5〜10の範囲の緩衝液を用いる。電極をDNA結合物質と反応させた後、洗浄し、電気化学的な測定を行う。電気化学的な測定は、3電極タイプ、すなわち参照電極、対極、作用極、あるいは2電極タイプ、すなわち対極、作用極で行う。測定では、DNA結合物質が電気化学的に反応する電位以上の電位を印加し、DNA結合物質に由来する反応電流値を測定する。この際、電位は定速で掃引するか、あるいはパルスで印加するか、あるいは、定電位を印加することができる。測定には、ポテンショスタット、デジタルマルチメーター、ファンクションジェネレーター等の装置を用いて電流、電圧を制御する。得られた電流値を基に、検量線から標的遺伝子の濃度を算出する。遺伝子検出用電極を用いた遺伝子検出装置は、遺伝子抽出部、遺伝子反応部、DNA結合物質反応部、電気化学測定部、洗浄部等から構成される。
【0028】
また、上記した本発明の方法を使用することによって、ヒト乳頭腫ウイルスの感染を診断することができる。
【0029】
すなわち、ヒト乳頭腫ウイルスの感染を診断する方法であって、
ヒトから検体試料を得ることと、
検体試料から核酸成分を抽出することと、
上記記載の核酸プライマーから選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により検体試料の核酸鎖増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の存在を検出する工程と、
を含み、増幅産物の存在が、ヒト乳頭腫ウイルスに感染していることを示す方法が提供される。
【0030】
また、ヒト乳頭腫ウイルスの感染を診断する方法であって、
ヒトから検体試料を得ることと、
検体試料から核酸成分を抽出することと、
上記記載の核酸プライマーから選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により検体試料中の核酸鎖の増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の存在を検出するか、またはウイルスの遺伝子型を同定する工程と、
を含み、増幅産物の存在によりヒト乳頭腫ウイルスに感染していると診断される方法が提供される。
【0031】
さらに、本発明に従えば、ヒト乳頭腫ウイルスの検出および遺伝子型を同定するために用いるLAMP増幅用キットが提供される。このLAMP増幅用キットは、以下の(a)〜(f)から選択される核酸プライマーを含み、さらに任意に、LAMP増幅反応に必要なポリメラーゼ、dNTPs、ベタイン、バッファー、ポジティブコントロールDNA、滅菌水などを含む:
(a) 表1に記載された第1配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、表2に記載された第2配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;
(b) 前記第1配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、表3に記載された第3配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;
(c) 前記第2配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、前記第3配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;
(d) 核酸プライマー(a)、(b)及び(c)のうちの一つの選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プライマー(a)、(b)及び(c)のうちの一つの選択された前記配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プライマー;
(e) 表4に記載された第4配列群から選択される配列、又は、それに相補的な配列を含む核酸プライマー;及び
(f) 核酸プライマー(e)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プライマー(e)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プライマー。
【0032】
またさらに、本発明に従えば、ヒト乳頭腫ウイルスの検出および遺伝子型を同定するために用いる検出用キットが提供される。この検出用キットは、上記のLAMP増幅のためのキットに加えて、該LAMP増幅用キットを用いて増幅されたヒト乳頭腫ウイルスのLAMP増幅産物を検出するための核酸鎖が固定化された基体を含む。ここで、該固定化された核酸鎖は、(g) 表5に記載された第5配列群から選択される配列又はそれに相補的な配列を含む核酸プローブ、又は
(h) 核酸プローブ(g)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プローブ(g)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プローブである。この核酸プローブは、基体表面に固定化され、基体及び基体表面は、上記のような材料から構成される。
【実施例】
【0033】
以下、プライマー領域に対応する配列である、第1配列群、第2配列群、第3配列群、第4配列群の具体例を表に示す。
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

【0036】
【表4−1】

【0037】
【表4−2】

【0038】
【表4−3】

【0039】
【表4−4】

【0040】
【表4−5】

【0041】
【表4−6】

【0042】
【表4−7】

【0043】
【表4−8】

【0044】
【表4−9】

【0045】
【表4−10】

【0046】
【表4−11】

【0047】
【表4−12】

【0048】
【表4−13】

【0049】
【表4−14】

【0050】
更に、核酸プローブに対応する配列である、第5配列群の具体例を示す。
【表5−1】

【0051】
【表5−2】

【0052】
【表5−3】

【0053】
【表5−4】

【0054】
【表5−5】

【0055】
以下に、本発明による核酸検出方法を実施例により具体的に説明する。
【0056】
(1)合成オリゴヌクレオチド
上記表1に記載された配列を組み合わせて、ヒト乳頭腫ウイルスの検出および遺伝子型を同定するために用いる核酸プライマーを調製する。すなわち、第1配列群と第2配列群、または第1配列群と第3配列群、もしくは第2配列群の相補鎖と第3配列群をそれぞれ直接連結するか、またはスペーサーを介して連結する。また、第4配列群、あるいはこれらの相補配列を調製する。このようなプライマーの調製は、当業者に既知のいずれの方法を使用して行うこともできる。
【0057】
(2)LAMP反応溶液
LAMP反応溶液は以下の表6の組成とする。テンプレートには、HPV16がクローニングされたプラスミドDNAを使用した。
【表6】

【0058】
また、以下の表7に示したLAMP増幅反応用核酸プライマー配列を同時に添加する。
【表7】

【0059】
(3)LAMP法による核酸増幅
温度は58℃、時間は1時間として核酸増幅を行う。この時、テンプレートの代わりに滅菌水を添加したものをnegative controlとする。増幅したLAMP産物をアガロースゲル電気泳動で確認した結果、LAMP産物に典型的なラダー状のパターンが現れる。一方、鋳型DNAを含まない場合は全く増幅が見られない。以上より、選択したプライマーセットを用いて、配列特異的にパピローマウイルスの増幅が可能となる。
【0060】
(4)核酸プローブ固定化スライドガラスの作製
図5に示した核酸プローブ固定化スライドガラスを作製するためのプローブ塩基配列を表8-1に示す。
【表8−1】

【0061】
HPV16〜31はHPVのサブタイプに対し特異的な配列、一方rDNAはネガティブコントロールとして使用した。それぞれのプローブは末端をアミノ基で修飾してあり、カルボジイミド処理したスライドガラス基板にプローブ溶液をスポットすることでプローブを基板上に固定化した。最終的には、超純水で洗浄、風乾し、DNAチップを作成した。
【0062】
(5)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
試料核酸は、上記(3)で増幅したLAMP産物を用いた。(4)で作製したDNAチップを2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行った。続いてCy5標識した配列番号7の核酸を添加し35℃、15分放置した後、超純水で軽く洗浄した。蛍光強度は、アマシャム社のTyhoonを用いて検出した。
【0063】
(6)結果
蛍光測定の結果、HPV16のプローブを固定化したスポットからのみ有意な蛍光が検出されたことから、LAMP反応で増幅した核酸を配列特異的に検出できることが明らかになった。
【0064】
(7)核酸プローブ固定化電極の作製
DNAプローブ7〜11を基体12上に配置された電極13に固定した。それらの核酸配列を表8−2に示す。接続部14は基体12上に配置されてよい。
【表8−2】

【0065】
HPV16〜31はHPVのサブタイプに対し特異的な配列、一方rDNAはネガティブコントロールとして使用する。それぞれのプローブは末端をチオール基で修飾してあり、金電極にプローブ溶液をスポットすることでプローブを基板上に固定化する。最終的には、超純水で洗浄、風乾し、DNAチップを作成する。
【0066】
(8)核酸プローブへのLAMP産物のハイブリダイゼーション
(7)で作製したDNAチップを2×SSCの塩を添加したLAMP産物に浸漬し、35℃で60分間静置することによってハイブリダイゼーション反応を行う。この電極を挿入剤であるヘキスト33258溶液を50μM含むリン酸緩衝液中に15分間浸漬した後、ヘキスト33258分子の酸化電流応答を測定する。
【0067】
(9)結果
電流測定の結果、HPV16のプローブを固定化したスポットからのみ有意な電流信号が検出された。これにより、LAMP反応で増幅した核酸を配列特異的に検出できることが明らかとなった。
【0068】
(10) LAMP法によるマルチ増幅1
表9に示すプライマーを用いて、まずそれぞれ1種の鋳型に対する増幅を行った。その結果、LAMP増幅に特徴的なラダー状のバンドが観察され、遺伝子型特異的な増幅が確認できた(図7)。次に、A〜Dの4グループに分けた複数のプライマーセットを混合し、マルチプライマーによる1種の鋳型に対する増幅を行った。その結果、遺伝子型特異的な増幅が確認できた(図8)。
【表9】

【0069】
(11) LAMPマルチ増幅産物の検出1
図8に示した増幅産物を配列番号605、623、635、652、683、763、793に示すプローブを同一チップ上に固定化した電流検出型DNAチップで検出した。これらはそれぞれ、16、18、31、33、45、58、68型に特異的に反応するようデザインされている。16型と18型を鋳型にして増幅を行ったサンプルを反応させた結果、鋳型に対応した電極からのみ電流の増加が見られ、遺伝子型特異的な検出が確認できた(図9)。
【0070】
(12) LAMP法によるマルチ増幅2
表10に示すプライマーを用いて、A〜Dの4グループに分けた複数のプライマーセットを混合し、マルチプライマーによる1種の鋳型に対する増幅を行った。鋳型の濃度は103copy/reactionで増幅は65℃、2時間行った。その結果、遺伝子型特異的な増幅が確認できた(図10)。
【表10】

【0071】
(13) LAMPマルチ増幅産物の検出2
図10に示した増幅産物を配列番号602、623、635、647、657、681、694、750、762、774、793に示すプローブを同一チップ上に固定化した電流検出型DNAチップで検出した。これらはそれぞれ、16、18、31、33、35、45、51、56、58、59、68型に特異的に反応するようデザインされている。11種のそれぞれを鋳型にして増幅を行ったサンプルを反応させた結果、鋳型に対応した電極からのみ電流の増加が見られ、11種の遺伝子型特異的な検出が確認できた。
【0072】
(14) LAMP法によるマルチ増幅3
表11に示すA〜Dグループのプライマーセットを混合し、それぞれ複数のプライマーセットを得た。すなわちAのチューブには16、35、59型、Bのチューブには18、39、56型、Cのチューブには45、51、58、68型、Dのチューブには31、33、52型のプライマーセットを含む。また、Eのチューブは、ヒトのβ-globin遺伝子を増幅するために調製された配列番号801、802、803、804のプライマーを含む。(表12)。1種の鋳型を、それぞれのマルチプライマーセットを用いて増幅した。鋳型には各HPV型に対応するプラスミドを用い、濃度は103copy/reactionで増幅は63℃、1.5時間行った。その結果、遺伝子型特異的な増幅が確認できた。
【表11−1】

【0073】
【表11−2】

【0074】
【表12】

【0075】
(15) LAMPマルチ増幅産物の検出3
上述した増幅産物を、配列番号600、623、630、641、654、673、676、699、725、750、752、771、783のプローブを同一チップ上に保有する電流検出用DNAチップを用いて検出した。これらはそれぞれ、16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、68型に特異的に反応するようデザインされている。また、反応のポジティブコントロールとしてβ-globin遺伝子を検出するためのプローブとして配列番号813を、またネガティブコントロールとして配列番号814も同一基板上に固定化した(表13)。13種のそれぞれを鋳型にして増幅を行ったサンプルを反応させた結果、鋳型に対応した電極とポジティブコントロールからのみ電流の増加が見られ、13種の遺伝子型特異的な検出が確認できた。
【表13】

【0076】
本発明のさらなる利点及び改変は当業者には容易であり、それ故、本発明はその広い側面において、本明細書中に示された詳細な説明及び代表的な態様に限定されるものではない。従って、請求の範囲で定義された本発明の概念とその等価であるものの意図及び範囲から逸脱することなく種々の改変を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来のLAMP法による増幅方法を説明するための模式図。
【図2】従来のLAMP法を用いて得られる増幅産物を説明するための模式図。
【図3】本発明の測定用核酸の製造における増幅方法を説明するための模式図。
【図4】本発明の測定用核酸を説明するための模式図。
【図5】HPV遺伝子型判定用DNAチップの一例を示す模式図。
【図6】HPV遺伝子型判定用DNAチップの一例を示す模式図。
【図7】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図8】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図9】電流検出型DNAチップによる検出結果の一例を示す図。
【図10】LAMP増幅の電気泳動写真の一例を示す図。
【図11】HPV配列および本発明のプライマーまたはプローブとして使用し得る部分を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定するために用いるLAMP増幅用核酸プライマーであって、以下の(e)及び(f)から選択される核酸プライマー:
(e) 表4に記載された第4配列群から選択される配列、又は、それに相補的な配列を含む核酸プライマー;及び
(f) 核酸プライマー(e)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プライマー(e)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プライマー。
【請求項2】
請求項1の核酸プライマーを含む核酸プライマーセットであって、該核酸プライマーセットが、
配列番号136及び132の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号278及び276の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号527及び524の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号164及び167の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号320及び327の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号454及び457の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号363及び359の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号399及び391の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号474及び476の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号549及び547の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号208及び203の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、
配列番号251及び244の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット、及び、
配列番号422及び425の配列をそれぞれ含む2種の核酸プライマーのセット;から成る群から選択されるプライマーセット。
【請求項3】
請求項1の核酸プライマーを含む核酸プライマーセットであって、該核酸プライマーセットが、
配列番号136,132,126及び128の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号278,276,277及び281の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号527,524,526及び523の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号164,167,162及び166の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号320,327,319及び324の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号454,457,453及び456の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号363,359,366及び361の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号399,391,395及び388の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号474,476,477及び475の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号549,547,548及び546の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号208,203,210及び205の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、
配列番号251,244,248及び242の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット、及び
配列番号422,425,420及び429の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット;
から成る群から選択される核酸プライマーセット。
【請求項4】
請求項1の核酸プライマーを含む核酸プライマーセットであって、該核酸プライマーセットが、
配列番号136,132,126,128及び138の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号278,276,277,281及び280の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号527,524,526,523及び529の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号164,167,162,166及び170の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号320,327,319,324及び328の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号454,457,453,456及び458の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号363,359,366,361及び370の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号399,391,395,388及び402の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号474,476,477,475及び480の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号549,547,548,546及び572の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号208,203,210,205及び214の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、
配列番号251,244,248,242及び255の配列をそれぞれ含む5種の核酸プライマーのセット、及び
配列番号422,425,420,429及び431の配列をそれぞれ含む4種の核酸プライマーのセット;
から成る群から選択される核酸プライマーセット。
【請求項5】
ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定するために用いるLAMP増幅用キットであって、請求項1に記載の核酸プライマーを含むキット。
【請求項6】
ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、
請求項1に記載の核酸プライマーから選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により検体試料の核酸鎖の増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の存在を検出し、それらの遺伝子型を同定する工程と、
を含む方法。
【請求項7】
請求項6に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記増幅反応後に、増幅産物の存在を検出するかまたはそれらの遺伝子型を同定する工程は、
前記増幅産物と、ウイルス特異的または遺伝子型特異的な核酸鎖とをハイブリダイズさせる工程と、
前記ハイブリダイズによって形成した二本鎖を検出してヒト乳頭種ウイルスを検出するか又はその遺伝子型を同定する工程と、
を含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記ウイルス特異的又は遺伝子型特異的な核酸鎖が、
(g) 表5に記載された第5配列群から選択される配列又はそれに相補的な配列を含む核酸プローブ、又は
(h) 核酸プローブ(g)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プローブ(g)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プローブ;
であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記ウイルス特異的または遺伝子型特異的な核酸鎖が基体表面に固定化されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項9に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記基体表面が電極材料で構成されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、電気化学的に活性な核酸鎖認識体を用いることを特徴とする方法。
【請求項12】
ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定するために用いるLAMP増幅用核酸プライマーであって、以下の(a)〜(f)から選択される核酸プライマー:
(a) 表1に記載された第1配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、表2に記載された第2配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;
(b) 前記第1配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、表3に記載された第3配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;
(c) 前記第2配列群から選択される配列と相補的な配列、及び、前記第3配列群から選択される配列を、同一鎖上に含む核酸プライマー;
(d) 核酸プライマー(a)、(b)及び(c)のうちの一つの選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プライマー(a)、(b)及び(c)のうちの一つの選択された前記配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プライマー;
(e) 表4に記載された第4配列群から選択される配列、又は、それに相補的な配列を含む核酸プライマー;及び
(f) 核酸プライマー(e)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プライマー(e)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プライマー。
【請求項13】
ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定するために用いるLAMP増幅用キットであって、請求項12に記載の核酸プライマーを含むキット。
【請求項14】
ヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、
請求項12に記載の核酸プライマーから選択される少なくとも1つのプライマーを含む複数のプライマーを使用して、LAMP反応により検体試料の核酸鎖の増幅反応を行う工程と、
前記増幅反応後に増幅産物の存在を検出し、それらの遺伝子型を同定する工程と、
を含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記増幅反応後に、増幅産物の存在を検出するかまたはそれらの遺伝子型を同定する工程は、
前記増幅産物と、ウイルス特異的または遺伝子型特異的な核酸鎖とをハイブリダイズさせる工程と、
前記ハイブリダイズによって形成した二本鎖を検出してヒト乳頭種ウイルスを検出するか又はその遺伝子型を同定する工程と、
を含む方法。
【請求項16】
請求項15に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記ウイルス特異的又は遺伝子型特異的な核酸鎖が、
(g) 表5に記載された第5配列群から選択される配列又はそれに相補的な配列を含む核酸プローブ、又は
(h) 核酸プローブ(g)の選択された配列と、一以上の塩基の挿入、欠失、又は置換によって異なる配列を含み、且つ、核酸プローブ(g)の前記選択された配列に相補的な配列を有する核酸鎖とハイブリダイズすることができる核酸プローブ;
であることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記ウイルス特異的または遺伝子型特異的な核酸鎖が基体表面に固定化されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項17に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、前記基体表面は、電極材料で構成されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18に記載のヒト乳頭腫ウイルスの検出およびその遺伝子型を同定する方法であって、電気化学的に活性な核酸鎖認識体を用いることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2009−518001(P2009−518001A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528274(P2008−528274)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【国際出願番号】PCT/JP2006/325010
【国際公開番号】WO2007/066831
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(390037327)積水メディカル株式会社 (111)
【Fターム(参考)】