説明

核酸増殖

本発明は一般的に核酸ポリメラーゼの基質としてのリン酸3つ以上を有する末端リン酸標識ヌクレオチドの使用、及び、DNA増幅におけるその使用に関する。使用される標識はケミルミネセント、蛍光、電子化学及び発色原の部分、並びに、質量タグであり、そして、直接検出可能であるか、酵素活性化の後に検出可能であるか、又は他の工程に供されて異なるシグナルを発生させるものを包含する。結合した染料から発生する信号は増幅の量を測定するためにも使用してよい。更にまた、水溶液中の末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸の安定性を増強させるための安定化剤、及び、これ等のヌクレオシドの非酵素的加水分解を低減することによりバックグラウンドを低下させるために有用なアークも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に核酸増幅に関する。より精しくは、本発明は核酸増幅における末端リン酸標識ヌクレオチドの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
高い特異性及び感度を有する試料中の特定の核酸又は分析対象を検出するための方法が知られている。このような方法は一般的にはまず標的配列又は分析対象の存在に基づいた核酸配列を増幅することを必要とする。増幅の後、増幅された配列を検出して定量する。核酸に関わる従来の検出システムは蛍光標識の検出、蛍光酵素結合検出系、抗体媒介標識検出及び放射性標識の検出を包含する。
【0003】
これ等の方法の1つの難点は、標識された生成物が標識原料からのある種の分離を要するのみならず、標識が生成物に結合しているために同定すべき天然の産物とは異なる点である。従って、未修飾の生成物を形成すると同時に進行している反応に特徴的なシグナルを発生する方法及び基質を使用することが有利である。発生されたシグナルが原料からの分離を必要としなければ更に有利であるが、分離が必要であったとしても、多くの場合において未修飾の生成物を生成する利点のほうが凌駕している。
【0004】
末端リン酸標識ヌクレオチドは上記の利点を与える。例えば、核酸ポリメラーゼによるDNA又はRNAへのガンマ−又はデルタ−標識ヌクレオチドの取り込みにより未修飾のDNA又はRNAが生産され、そしてそれと同時に、生成した標識ピロリン酸を用いて標的を検出、特性化及び/又は定量することができる。これ等が増幅反応に使用できれば、それらは標的配列の検出及び定量のための有用な道具を与えるのみならず、修飾を伴わない標的配列の厳密なコピーである増幅産物をその後の試験に用いることができる。
【0005】
多くの増幅方法によるDNA増幅は高温において実施される。例えば、PCRにおいては、95℃における変性、60℃前後におけるアニーリング及び70℃前後における伸長の反復サイクルによりdNTPの顕著な分解が起こる。これはその後のサイクルにおける生成物の収率に大きく影響する場合がある。他の増幅方法、例えばRCA及びNASBAは等熱であるが、やはり、より高温で行われる。41℃で実施されるNASBAの場合は、ヌクレオチドの安定性はそれほど厳密ではないが、使用するポリメラーゼ及び増幅すべき配列の複雑性に応じてより高温で行われる場合があるRCAにおいては、ヌクレオチドの安定性はこれ等の条件化における問題点となりえる。末端リン酸標識ヌクレオチドの分解が起こるとすれば、発生した分解の量は増幅工程に直接関連する何れのシグナルも凌駕することになる。従って、温度のこのような反復サイクル又は一定であるがなお高温における長時間の加熱を克服でき、これにより増幅の後期のサイクルにおいても高収率及び低分解を維持でき、恐らくは所望の増幅を達成するために必要なサイクル/時間を低減できるようなヌクレオチドを保有することが望まれている。従って、ガンマ−リン酸標識ヌクレオチドは核酸合成及び増幅のために通常使用されている条件下ではポリメラーゼに対する極めて不良な基質である。核酸の長ストレッチの合成(数百〜数千塩基長)はサイクル当り数時間〜1日を要する。Harding等(国際特許出願0244425A2)は高温におけるDNA合成のためのアミノナフタレンスルホネート−ガンマ−アミド−dATPの使用を記載している。しかしながら、本発明者等によれば、この場合、合成は、アミノナフタレンスルホネートが核酸を加水分解して放出した後のみに進行し、そしてDNAの形成のためにポリメラーゼにより使用されるものはdATPである。これは当然ながら、発生した染料がDNA合成とは無関係であることから、標的配列の検出又は定量のためには不要である。
【0006】
多くのリアルタイム試験がDNAの定量のために開発されている。これ等の大部分は2つのグループに分類できる。比較的使用が容易である第1のグループはインターカレーションにより増強された蛍光を有するインターカレーション染料の使用を含む。多くの核酸染色、例えば臭化エチジウム。SYBRグリーン(登録商標)染料、PicoGreen(登録商標)、YOYO(登録商標)、TOTO(登録商標)又は類縁体がリアルタイム試験用のインターカレーターとして開発されている。しかしながらこれ等は、部分的にはプライマー二量体の間のインターカレーションにより、そして、部分的にはそれらがインターカレーションされない場合においても弱くはあるが蛍光を発するため、顕著なバックグラウンドシグナルを発生する。
【0007】
リアルタイム試験の他のグループは染料とクエンチャーの間の蛍光共鳴エネルギー転移の使用に基づく。これ等の試験の多くはFRETプローブ又はプライマー、例えばTaqman、MGBEclipseTM、Scorpionプライマー、分子ビーコン、サンライズプライマー等を用いて開発されている。これ等のプローブ/プライマーは、増幅が起こるまでエネルギー転移によりクエンチングされ、そしてクエンチャーは物理的には染料から分離されるか、又は切断される。これ等の試験の感度は大部分がプローブの設計に依存しており、そして多くの旨適化を必要とする。更にまた、最も旨適化されたプローブを用いた場合も、完全なクエンチングは達成されない。従って、これ等の試験は増幅により数倍のシグナル増強をもたらすのみであり、初回サイクルにおいてはバックグラウンドシグナルは真のシグナルよりもはるかに高値となる。
【0008】
従って、増幅を合理的な時間内で実施(未修飾dNTPと同様)することができ、そして生成する標識の量が形成される生成物に比例するような末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を用いた増幅方法の開発は利益を与えるものである。更に、末端リン酸標識ヌクレオチドからのシグナルの干渉を受けることなく生成した標識の量を独立して検出できるリアルタイム試験法を保有することが望ましい。標識は増幅が進行するまでは完全に暗であるようなリアルタイム試験法を保有することが望ましい。
【発明の開示】
【0009】
本発明は核酸増幅における末端リン酸標識ヌクレオチド(末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸とも称する)を用いた方法を提供する。方法はまた選択的増幅による標的配列の検出及び定量を可能とする。更にまた増幅中の標的配列のリアルタイムの検出及び定量のための方法が提供される。
【0010】
本発明はa)末端リン酸標識ヌクレオチドの反応を含む核酸増幅を実施すること、ここでその反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすこと、b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及びc)検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を含む核酸配列の存在を検出するための方法を提供する。本発明におけるホスファターゼの定義はリン酸モノエステル、リン酸チオエステル、ホスホロアミダイト、ポリリン酸及びヌクレオチドを切断して無機のリン酸を放出する何れかの酵素を包含する。本発明の範囲内においては、この酵素は末端標識ヌクレオシドリン酸を切断しない(即ち、末端リン酸標識ヌクレオチドは実質的にはホスファターゼに対して非反応性である)。ホスファターゼの定義は本明細書においては特にアルカリホスファターゼ(EC3.1.3.1)及び酸ホスファターゼ(EC3.1.3.2)を包含するが、これに限定されない。本明細書においては、ヌクレオチドの定義は天然及び修飾されたヌクレオシドリン酸を包含する。
【0011】
本発明はa)マンガン塩の存在下に核酸増幅反応を実施すること、ここで反応は末端リン酸標識ヌクレオチドの反応を包含し、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及びc)検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を包含する核酸配列の存在を検出する方法を提供する。
【0012】
本発明は更に、a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNA増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及びc)検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を包含するDNA配列の存在を検出する方法を提供する。
【0013】
本発明は更に、a)末端リン酸標識ヌクレオチド及びマンガン塩の存在下にDNA増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及びc)検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を包含するDNA配列の存在を検出する方法を提供する。
【0014】
本発明は更に、a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNA増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、b)標識されたポリリン酸の存在を検出すること、の工程を包含するDNA配列の存在を検出する方法を提供する。
【0015】
更に提供されるものは、(a)ポリリン酸鎖内にリン酸基4つ以上を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸増殖反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸を検出すること、の工程を包含する核酸配列の存在の検出方法である。
【0016】
更に提供されるものは、(a)マンガン塩及び1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸増殖反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸を検出すること、の工程を包含する核酸配列の存在の検出方法である。
【0017】
更に提供されるものは、(a)マンガン塩及びポリリン酸鎖内にリン酸基4つ以上を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸増殖反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸を検出すること、の工程を包含する核酸配列の存在の検出方法である。
【0018】
更に本発明は、(a)ポリリン酸鎖内にリン酸基4つ以上を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸増殖反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及び(c)検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を包含する核酸配列の存在の検出方法に関する。
【0019】
本発明の別の特徴は(a)核酸増幅反応を実施すること、ここで反応は末端リン酸標識ヌクレオチドを含むものであり、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて核酸の量に実質的に比例した量の検出可能な副生成物物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種を測定すること、及び(d)既知の標準物質を用いて測定値を比較することにより核酸の量を測定すること、の工程を包含する核酸配列を定量する方法に関する。
【0020】
更にまた、本発明は、(a)マンガン塩及びポリリン酸鎖内にリン酸基4つ以上を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸増殖反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及び(c)検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を包含する核酸配列の存在を検出する方法に関する。
【0021】
本発明の更に別の特徴は(a)マンガン塩の存在下に核酸増幅反応を実施すること、ここで反応は末端リン酸標識ヌクレオチドを含むものであり、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて核酸の量に実質的に比例した量の検出可能な副生成物物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種を測定すること、及び(d)既知の標準物質を用いて測定値を比較することにより核酸の量を測定すること、の工程を包含する核酸を定量する方法に関する。
【0022】
本発明は更に、(a)マンガン塩及び末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNAポリメラーゼ反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させてDNA配列の量に実質的に比例した量の検出可能な副生成物物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種を測定すること、及び(d)既知の標準物質を用いて測定値を比較することによりDNAの量を測定すること、の工程を包含するDNA配列を定量する方法に関する。
【0023】
本発明は更に、(a)マンガン塩及び末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNA増幅反応を実施すること、その反応はDNA配列の量に実質的に比例した量の標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸を測定すること、及び(c)既知の標準物質を用いて測定値を比較することによりDNAの量を測定すること、の工程を包含するDNA配列を定量する方法に関する。
【0024】
本発明の別の特徴は核酸配列中の単一のヌクレオチドの同一性を決定するための方法に関し、これは、(a)1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、対立遺伝子特異的プライマーの存在下に核酸増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種の存在を検出すること、及び(d)取り込まれたヌクレオシドを同定すること、の工程を包含する。
【0025】
本発明の別の特徴は核酸配列中の単一のヌクレオチドの同一性を決定するための方法に関し、これは、(a)1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、対立遺伝子特異的プライマー及びマンガン塩の存在下に核酸増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種の存在を検出すること、及び(d)取り込まれたヌクレオシドを同定すること、の工程を包含する。
【0026】
更に提供されるものは、核酸配列中の単一のヌクレオチドの同一性を決定するための方法に関し、これは、(a)ポリリン酸鎖内にリン酸基4つ以上を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、(c)該検出可能な物質種の存在を検出すること、及び(d)取り込まれたヌクレオシドを同定すること、の工程を包含する。
【0027】
更に提供されるものは、核酸配列中の単一のヌクレオチドの同一性を決定するための方法に関し、これは、(a)マンガン塩及びポリリン酸鎖内にリン酸基4つ以上を有する1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下に核酸増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、(c)該検出可能な物質種の存在を検出すること、及び(d)取り込まれたヌクレオシドを同定すること、の工程を包含する。
【0028】
本発明は更に、酵素試験におけるバックグラウンドシグナル発生を低減するために、金属塩、例えばマンガン、マグネシウム、亜鉛、カルシウム又はコバルトの塩の存在下の末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸と組合せて、末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸安定化剤、例えばポリオール(グリセロール、スレイトール等)、ポリエーテル、例えば環状ポリエーテル、ポリエチレングリコール、有機又は無機の塩、例えば硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、有機スルホネート等の存在下に核酸配列を増幅する方法を提供する。
【0029】
本発明は更に、核酸検出キットを包含し、ここでそのキットは下記成分:
(a)下記式:
【0030】
【化1】

【0031】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル、アルキルホスホネート又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基、ハロアルキル基又はアミノ基を含む標識であり、P−Lはホスホリル化標識であり、そしてPとLとの間のリンカーを含んでよい]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、及び、
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ、
を包含する。
【0032】
本発明は更に、核酸定量キットを包含し、ここでそのキットは下記成分:
(a)下記式:
【0033】
【化2】

【0034】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル、アルキルフォスフォネート又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基、ハロアルキル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であり、そしてPとLとの間のリンカーを含んでよい]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、及び
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ。
【0035】
本発明はさらに核酸検出又は定量キットを包含し、ここでそのキットは下記成分
(a)下記式:
【0036】
【化3】

【0037】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であり、これは好ましくはリン酸が除去された場合に独立して検出可能となる]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ、
(c)ホスファターゼ、
(d)安定化剤、及び、
(e)マンガン塩を含有する反応緩衝物質、
を包含する。
【0038】
本発明は更に、核酸検出又は定量キットを包含し、ここでそのキットは下記成分:
(a)下記式:
【0039】
【化4】

【0040】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であリ、これは好ましくはリン酸が除去された場合に独立して検出可能となる]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ、及び、
(c)ホスファターゼ、
を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1は異なるポリメラーゼによる末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を用いた標的配列のPCR増幅を示すゲルである。
【0042】
図2は異なる標識又は塩基による末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を用いたpUCp53DNAのPCR増幅を示す。
【0043】
図3は異なる標識又は塩基による末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を用いたpUC18DNAのPCR増幅を示す。
【0044】
図4は硫酸アンモニウムによるdT4P−DDAOの安定化を示す。
【0045】
図5は種々の有機及び無機の塩によるdT4P−DDAOの安定化を示す。
【0046】
図6は安定化剤存在下の末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸によるPCR増幅を示す。
【0047】
図7はABI7900装置上における末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸による定量的PCR増幅を示す。
【0048】
図8は末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を用いた定量的PCRの間に生成したPCR産物を示す。
【0049】
図9は末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸及びPhi29DNAポリメラーゼを用いた染色体DNAの線状増幅を示す。
【0050】
図10は増殖の初期段階に生成した産物の量がインプットDNAの量に直接比例していることを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
「ヌクレオシド」という用語は本明細書においては、プリン、デアザプリン、ピリミジン又は糖又は糖誘導体に連結された修飾された塩基を包含する化合物である。
【0052】
「ヌクレオチド」という用語は本明細書においては、ヌクレオシドのリン酸エステルを指し、ここでエステル化部位は典型的にはペントース糖のC−5部位に連結したヒドロキシル基に相当する。
【0053】
「オリゴヌクレオチド」という用語はデオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド等を含むヌクレオチド又はその誘導体の線状オリゴマーを包含する。明細書全体を通じて、オリゴヌクレオチドを文字の列により示す場合は、常時、ヌクレオチドは左から右に5′→3′の順序にあり、ここで、特段の記載が無い限り、Aはデオキシアデノシンを示し、Cはデオキシシチジンを示し、Gはデオキシグアノシンを示し、そして、Tはチミジンを示す。
【0054】
「プライマー」という用語は独特の核酸配列に特異的な態様においてアニーリングし、その独特の配列の増幅を可能にする線状オリゴヌクレオチドを指す。
【0055】
「標的核酸配列」及び類似の表現は、その配列同一性又はヌクレオシドの順序又は位置が本発明の方法の1つ以上により決定される核酸を指す。
【0056】
本発明は核酸ポリメラーゼ活性を介してRNA又はDNAの合成をモニタリングするために試験を使用する、試料中のポリヌクレオチドの検出方法に関する。RNA及びDNAポリメラーゼは成長中のオリゴヌクレオチド鎖の3′ヒドロキシルへのヌクレオシド三リン酸(NTP)又はデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP)からのヌクレオシドモノリン酸の転移を介してオリゴヌクレオチドを合成する。この反応を駆動する力は無水物結合の切断と無機ピロリン酸の同時形成である。本発明はヌクレオチドの末端リン酸の構造的修飾がポリメラーゼ反応において機能するその能力を低減させないという知見を利用している。オリゴヌクレオチド合成反応はヌクレオチドのα−及びβ−ホスホリル基のみにおける直接の変化を包含し、これにより末端リン酸位置における修飾を有するヌクレオチドが核酸ポリメラーゼ反応のための基質として価値あるものとなっている。
【0057】
特定の実施形態においては、ポリメラーゼはDNAポリメラーゼ、例えばDNAポリメラーゼI、II又はIII又はDNAポリメラーゼα、β、γ、又は末端デオキシンウクレオチジルトランスフェラーゼ又はテロメラーゼである。別の実施形態においては、適当なポリメラーゼは、例えばDNA依存性RNAポリメラーゼ、プライマーゼ、又はRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)である。
【0058】
本発明により提供される方法はヌクレオシドポリリン酸、例えばヌクレオシドポリリン酸、デオキシヌクレオシドポリリン酸を利用しており、これは末端リン酸に連結した電子化学標識、質量タブ又は比色染料、ケミルミネセント又は蛍光の標識を有する。核酸ポリメラーゼがこの類縁体を基質として使用する場合は、標識はホスホリル転移の無機ポリリン酸副生成物上に存在することになる。この標識は直接読み取るか、又は、好ましい場合においては、標識は酵素活性化可能であり、そして、リン酸の除去後に読み取ることができる。後者の場合においては、ホスファターゼを介したホスホリル転移のポリリン酸産物の切断によりそこに結合した標識における検出可能な変化がもたらされる。RNA及びDNAポリメラーゼは修飾された末端ホスホリル基を有するヌクレオチドを認識することはできるが、本発明者等はこの原料がホスファターゼに関する鋳型ではないことを明らかにしている。以下に示すスキームは本発明の方法における幾つかの該当する分子、即ち末端リン酸標識ヌクレオチド、標識ポリリン酸副生成物及び酵素活性化標識を示している。
【0059】
【化5】

【0060】
上記したスキームにおいて、nは1以上、R1はOH、そしてR2はH又はOHであり、Bはヌクレオシド塩基又は修飾複素環塩基であり、XはO、S、CH2又はNH、YはO、S又はBH3であり、そして、Lは発色原、蛍光発生、ケミルミネセント分子、質量タグ又は電子化学タグであってよいホスファターゼ活性化可能な標識である。質量タグは質量の相違により他の成分から容易に識別できる質量スペクトル分析に適する小分子量の部分である。電子化学タグは容易に酸化又は還元可能な物質種である。nが1である場合に比べて、nが2以上である場合、このヌクレオチドはポリメラーゼの基質として極めて良好であることが見いだされている。従って、好ましい実施形態においては、nは2、3又は4であり、X及びYはOであり、Bはヌクレオシド塩基であり、そして、Lは発色原、蛍光発生又はケミルミネセントの分子であってよい標識である。
【0061】
本明細書に記載する核酸配列の存在を検出する方法の1つの実施形態においては、工程は、(a)核酸増幅反応を実施すること、ここで反応は末端リン酸標識ヌクレオチドに加えてホスファターゼに対して実質的に非反応性の1種以上のヌクレオチドを含み、ここでポリメラーゼ反応は標識ポリリン酸を形成するものであること、(b)標識ポリリン酸をリン酸エステルの加水分解に適するホスファターゼと反応させ、そして検出可能な物質種を生成させること、及びc)適当な手段により検出可能な物質種の存在を検出すること、を包含する。この実施形態において、核酸ポリメラーゼ反応のために使用する鋳型はヘテロポリマー又はホモポリマーの鋳型であって良い。末端リン酸標識ヌクレオチドとは、明細書全体を通じて、成長中のヌクレオチド鎖内へのヌクレオシドモノリン酸の取り込みの後に同時に放出された標識されたポリリン酸を直接読み取ってよいか、又は、酵素活性化標識の場合は、ホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成してよいことを意味する。ホスファターゼに対して実質的に非反応性である反応に包含される他のヌクレオチドは、例えば、標識されたヌクレオチドから生成した検出可能な物質種の検出のために使用される方法により検出可能な物質種の生成をもたらさない部分により末端リン酸においてブロックしてよい。この特定の実施形態における検出のための核酸は、RNA、天然又は合成のオリゴヌクレオチド、ミトコンドリア又は染色体DNAを包含してよい。
【0062】
本明細書に記載する核酸配列の存在を検出する方法の1つの実施形態においては、工程は、(a)Mn塩の存在下に核酸増幅反応を実施すること、ここで反応は末端リン酸標識ヌクレオチドに加えてホスファターゼに対して実質的に非反応性の1種以上のヌクレオチドを含み、ここでポリメラーゼ反応は標識ポリリン酸を形成するものであること、(b)標識ポリリン酸をリン酸エステルの加水分解に適するホスファターゼと反応させ、そして検出可能な物質種を生成させること、及びc)適当な手段により検出可能な物質種の存在を検出すること、を包含する。
【0063】
本発明は更に(a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNA増幅反応を実施すること、ここでその反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及び(c)該検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を含むDNA配列の存在を検出する方法を提供する。検出のためのDNA配列は細胞から単離されたDNA,化学的に処理されたDNA,例えば重亜硫酸処理メチル化DNA又は当該分野で知られた方法に従って化学的又は酵素的に合成されたDNAを包含する。このような方法はPCR、及び、参照により本明細書に組み込まれるDNA Structure Part A:Synthesis and Physical analysis of DNA,Lilley,D.M.J.and Dahlberg,J.E.(Eds.),Methods Enzymol.,211,Academic Press,Inc.,New York(1992)に記載されているものを包含する。DNA配列は更に染色体DNA及び天然及び合成のオリゴヌクレオチドを含有してよい。DNAはまた2本鎖又は1本鎖のいずれかであってよい。
【0064】
本発明は更に(a)Mn塩及び末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNA増幅反応を実施すること、ここでその反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて検出可能な物質種を生成すること、及び(c)該検出可能な物質種の存在を検出すること、の工程を含むDNA配列の存在を検出する方法を提供する。
【0065】
本発明の方法は更にポリメラーゼ反応において1つ以上の別の検出試薬を含む工程を包含してよい。別の検出試薬は検出可能な物質種とは検出可能に異なる応答が可能であってよい。例えば別の検出試薬は抗体であってよい。
【0066】
ポリメラーゼ反応における基質として添加するための適当なヌクレオチドはヌクレオシドポリリン酸、例えばデオキシリボヌクレオシドポリリン酸、リボヌクレオシドポリリン酸及びこれ等の類縁体を包含する。特に望ましいものは、ポリリン酸鎖内に3、4又は5リン酸基を含むヌクレオチドであり、ここで末端リン酸は標識されている。
【0067】
ホスホリル転移の標識ポリリン酸副生成物はホスファターゼ処理を用いることなく検出しても良いことは本発明で意図されている範囲内である。例えば、天然又は修飾されたヌクレオシド塩基、特にグアニンは、蛍光マーカーのクエンチングを誘発できる。従って、末端リン酸標識ヌクレオチドにおいては、標識は塩基により部分的にクエンチングされる。ヌクレオシドモノリン酸の取り込みにより、ポリリン酸副生成物の標識はその増強された蛍光により検出してよい。或は、蛍光、比色、ケミルミネセンス又は電子化学的検出による同定よりも前に、クロマトグラフィー又は他の分離方法により標識ポリリン酸生成物を物理的に分離することも可能である。更にまた、質量スペクトルは質量の相違により生成物を検出するために使用される。
【0068】
本発明の方法は1種以上のDNA又はRNAポリメラーゼの存在下にポリメラーゼ反応を実施することを包含する。適当な核酸ポリメラーゼはまたプライマーゼ、テロメラーゼ、末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ及び逆転写酵素を包含する。核酸鋳型はまたポリメラーゼ反応が起こるために必要であり、ポリメラーゼ反応溶液に添加してよい。本発明の検出方法における工程(a)、(b)及び(c)の全ては単一の均質な反応混合物を用いて同時に行うか、逐次的に行なわれる。
【0069】
本発明において有用な増幅方法は例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、鎖置換増幅(SDA)又は核酸配列系増幅(NASBA)を包含する。例えば、標的分子が核酸ポリマー、例えばDNAである場合は、これはDNA分子へのガンマ−リン酸標識ヌクレオチド塩基、例えばアデニン、チミン、シトシン、グアニン又は他の窒素複素環塩基のPCR取り込みにより検出してよい。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法はSaiki et al.,Science Vol.239,p.487,1988,Mullis et al.,米国特許4,683,195及びSambrook, J. et al.,(eds),Molecular Cloning, second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1980),Ausubel,F.M.et al.,(Eds.),Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,NY(1999),Wu,R.(Ed.),Recombinant DNA Methodology II,Methods in Zumulogy,Academic Press,Inc.,NY,(1995)に記載されている。PCRを使用しながら、検出の標的分子、例えばDNAを、PCR試薬及び適切なプライマーの入った反応容器に直接添加することにより、これを増幅する。典型的には、プライマーは標的核酸の少なくとも一部分に対し配列が相補であるものを選択する。
【0070】
本発明の工程(a)を実施するために適する核酸増幅反応は更に核酸配列の増幅の種々のRCA法を包含してよい。例えば、参照により本明細書に組み込まれるLizardi Paul Mへの米国特許5,854,033号に開示されているものが有用である。ポリメラーゼ反応はまた核酸配列系増幅(NASBA)も包含し、ここではシステムはDNAではなくRNAの増幅を包含し、増幅は等温であり、1つの温度(41℃)で起こる。NASBAによる標的RNAの増幅は、試料標的RNAに対して指向されたオリゴヌクレオチドプライマーと共に3種の酵素、即ち逆転写酵素、RNAseH及びT7RNAポリメラーゼの強調活性が関わるものである。これ等の酵素は4工程、即ち、伸長、分解、DNA合成及び環状RNA増幅において、標的の1本鎖RNAの指数的増幅を触媒する。
【0071】
RT−PCR、RCA及びNASBAの方法は一般的には増幅産物の定量により初期量の標的核酸を間接的に測定することを必要とする。増幅産物は典型的にはまずアガロースゲル上の電気泳動により原料から分離して増幅が良好に行えたことを確認し、次に、核酸に関わる従来の検出系、例えば蛍光標識の検出、酵素結合検出系、抗体媒介標識検出及び放射性標識の検出のいずれかを用いて定量する。これとは対照的に、本発明の方法はポリメラーゼ反応の産物をこれ等の産物の検出が可能となるよりも前に原料から分離する必要性をなくしている。例えば、本発明においては、レポーター分子(蛍光、ケミルミネセント又は発色団)又は他の有用な分子を、リン酸結合によりマスキングされている特定の条件下においては検出不可能である態様で、ヌクレオチドに結合させる。しかしながら、成長中のオリゴヌクレオチド鎖へのヌクレオチドの取り込み及び反応のホスファターゼ処理の後に、標識をこれ等の条件下で検出する。例えば1,3−ジクロロ−9,9−ジメチル−アクリジン−2−オン(DDAO)の3重環構造の側鎖上のヒドロキシル基がヌクレオチドの末端リン酸位に結合している場合は、DDAOは659nmでは蛍光を発さない。ヌクレオシドモノリン酸がDNAに取り込まれた後には、他の生成物、即ちDDAOポリリン酸(659nmではやはり蛍光を発さない)がホスファターゼの基質である。脱ホスホリル化してDDAOを形成した後には、染料部分は659nmで蛍光を発するようになり、従って検出可能となる。ポリリン酸産物の特異的な分析はポリメラーゼ反応溶液中で実施することができ、原料からの反応産物の分離を省略できる。このスキームによりポリメラーゼ反応の間に形成された核酸の検出、そして場合により定量が、スペクトル分析のような日常的装置を用いて可能となる。
【0072】
上記した方法において、増幅反応工程は更に、検出可能な標識に標識ポリリン酸副生成物を変換するホスファターゼの存在下にポリメラーゼ反応を実施することを包含する。このため、検出可能な物質種の形成の連続的モニタリングを可能にする核酸配列の存在を検出するための好都合な試験法が確立される。これは単一の試験管内で実施できる均質な試験フォーマットを示す。
【0073】
上記した試験方法の1つのフォーマットは、例えば検出可能な物質種を生成することができる末端リン酸標識ヌクレオチドの単一の型の存在下に増幅反応を実施することを包含する。例えば1つについて染料標識ATPを使用し、残りの3つは染料ではない部分を保有し、該部分はホスファターゼに対して非反応性のヌクレオチドを構成する。本実施例において、該部分は該染料を検出するために使用される条件下では検出可能ではない。
【0074】
別の試験フォーマットにおいては、増幅反応は各々の方が独特に検出されえる物質種を生成するような末端リン酸標識ヌクレオチドの1つ以上の型の存在下において実施してよい。例えば、試験はまず、ホスホリル転移の無機ポリリン酸副生成物から酵素的に遊離された場合に第1の波長で光を発する第1の標識と会合している第1のヌクレオチド(例えばアデノシンポリリン酸)及び第2の波長において光を発する第2の標識と会合している第2のヌクレオチド(例えばグアノシンポリリン酸)を包含してよい。望ましくは、第1及び第2の波長の発光の重複は、殆ど無いか皆無とする。その後、ヌクレオチド配列情報に基づいた複数の同時試験を、ポリリン酸から放出された特定の標識に基づいて誘導することができる。
【0075】
上記した核酸配列の存在を検出する方法の1つの特徴において、末端リン酸標識ヌクレオチドは下記構造:
【0076】
【化6】

【0077】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であリ、これは好ましくはリン酸が除去された場合に独立して検出可能となる]により表してよい。
【0078】
別の特徴において、Lはアルキルホスホネートを形成するために適するハロアルキル基を含んでよい。この特徴において、標識リン酸又は標識ポリリン酸は検出可能な物質種である。
【0079】
特定の実施形態においては、式Iの糖部分はリボシル、2′−デオキシリボシル、2′−アルコキシリボシル、2′−アミノリボシル、2′−フルオロリボシル及び他の修飾された糖から選択してよいが、ただし、その修飾は更に核酸鎖が伸長することを妨げない。例えば糖部分の3′位は、導入されるヌクレオシドモノリン酸がこの位置に結合できるように、ヒドロキシル基を有さなければならない。
【0080】
更にまた、式Iにおいて、塩基は、ウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン、2,6−ジアミノプリン又はその類縁体を包含する。
【0081】
末端リン酸標識ヌクレオチドの末端リン酸位置において結合している標識は、1,2−ジオキセタンケミルミネセント化合物、蛍光発生染料、発色原染料、質量タグ及び電子化学タグからなる群から選択される。これにより、発色、蛍光発生、ケミルミネセンス、質量タグ、電子化学検出又はその組合せの何れかの存在により検出可能な物質種が検出可能となる。
【0082】
更に、ドナー染料とアクセプター染料をコンジュゲートすることにより作成したエネルギー転移染料もまた本発明において有用である。
【0083】
末端リン酸基に直接、又は、リンカーを介して結合してよい標識の例を以下の表1〜2に示す。末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸の一部の例を表3に示す。
【0084】
【表1】

【0085】
【表2】

【0086】
【表3】

【0087】
【表4】

【0088】
【表5】

【0089】
【表6】

【0090】
【表7】

【0091】
【表8】

【0092】
【表9】

【0093】
式Iにおけるホスホリル化標識が蛍光発生部分である場合は、これは以下のもの(全てホスホモノエステルとして示す)、即ち:商品名ELF97(Molecular Probes,Inc.)で販売されている2−(5′−クロロ−2′−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4−(3H)−キナゾリノン、フルオレセインジホスフェート(4アンモニウム塩)、フルオレセイン3′(6′)−O−アルキル−6′(3′)−リン酸、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)リン酸(ジアンモニウム塩)、4−メチルウンベリフェリルリン酸(遊離の酸)、レソルフィンリン酸、4−トリフルオロメチルウンベリフェリルリン酸、ウンベリフェリルリン酸、3−シアノウンベリフェリルリン酸、9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イルリン酸、6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルリン酸及びその誘導体から選択される。これ等の染料の構造は以下に示す通りである。
2−(5′−クロロ−2′−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4(3H)−キナゾリノン
【0094】
【化7】

【0095】
【化8】

【0096】
【化9】

【0097】
上記式Iのホスホリル化標識部分が発色原部分である場合は、それは以下のもの、即ち:5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸、3−インドキシルリン酸、p−ニトロフェニルリン酸及びその誘導体から選択される。これ等の発色原染料の構造を以下にホスホモノエステルとして示す。
【0098】
【化10】

【0099】
末端リン酸位置における部分は更にケミルミネセント化合物であってよく、この場合、ホスファターゼ活性化1,2−ジオキセタン化合物であることが望ましい。1,2−ジオキセタン化合物は例えば、商品名CDP−Star(Tropix,Inc.,Bedford,MA)で販売されている2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2′−(5−クロロ)トリシクロ[3,3,1−13,7]−デカン]−1−イル)−1−フェニルリン酸、商品名CSPD(Tropix)で販売されているクロロアダマンタ−2′−イリデンメトキシフェノキシホスホリル化ジオキセタン、及び、商品名AMPPD(Tropix)で販売されている3−(2′−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3″−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタンを包含する。これ等の市販のジオキセタン化合物の構造は米国特許5,582,980、5,112,960及び4,978,614にそれぞれ開示されており、これ等は参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
上記した方法は更に核酸配列を定量する工程を包含してよい。関連する特徴において、検出可能な物質種は増幅された核酸配列の量に実質的に比例する量で生成される。核酸配列を定量する工程は望ましくは既知のスペクトルを有する検出可能な物質種により発生するスペクトルの比較により行われる。
【0101】
本発明は更に、酵素試験におけるバックグラウンドシグナル発生を低減するために、金属塩、例えばマンガン、マグネシウム、亜鉛、カルシウム又はコバルトの塩の存在下の末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸と組合せて、末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸安定化剤、例えばポリオール(グリセロール、スレイトール等)、ポリエーテル、例えば環状ポリエーテル、ポリエチレングリコール、有機又は無機の塩、例えば硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、有機スルホネート等の存在下に核酸配列を増幅する方法を提供する。マンガンの存在下の核酸重合反応の間、従来技術においては弱いキレート化剤のような添加剤が使用されている。しかしながらその目的はマンガンにより生じるヌクレオチドの誤取り込みの比率を低減することであった。図6に示す通り、添加剤の非存在下であっても、ポリメラーゼによる末端リン酸標識ヌクレオチドの誤取り込みは起こっていない。従って、本発明において添加剤を添加する目的は、単に、バックグラウンドを低下させるために金属塩により誘発される末端リン酸標識ヌクレオチドの非酵素的加水分解を低減することである。
【0102】
1つの実施形態においては、本発明は(a)核酸増幅反応を実施すること、その増幅反応は末端リン酸標識ヌクレオチドの反応を包含し、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすこと、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて定量すべき核酸の量に実質的に比例する量の検出可能な副生成物物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種を検出すること、及び(d)既知の標準物質を用いて測定値を比較することにより核酸の量を測定すること、の工程を含む核酸を定量する方法を提供する。核酸の定量方法のこの実施形態においては、定量すべき核酸はRNAであってよい。核酸は更に天然又は合成のオリゴヌクレオチド、染色体DNA又はDNAであってよい。
【0103】
別の実施形態においては、本発明は(a)マンガン塩の存在下に核酸増幅反応を実施すること、その増幅反応は末端リン酸標識ヌクレオチドの反応を包含し、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすこと、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて定量すべき核酸の量に実質的に比例する量の検出可能な副生成物物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種を検出すること、及び(d)既知の標準物質を用いて測定値を比較することにより核酸の量を測定すること、の工程を含む核酸を定量する方法を提供する。
【0104】
本発明は更に(a)末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNA増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて定量すべきDNA配列の量に実質的に比例した量の検出可能な副生成物物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種を測定すること、及び(d)既知の標準物質を用いて測定値を比較することによりDNAの量を測定すること、の工程を含むDNA配列を定量する方法を提供する。本実施形態においては、定量のためのDNA配列は天然又は合成のオリゴヌクレオチド、又は、染色体DNAを包含する細胞から単離されたDNAを包含する。
【0105】
本発明は更に(a)マンガン塩及び末端リン酸標識ヌクレオチドの存在下にDNA増幅反応を実施すること、その反応は標識されたポリリン酸の生成をもたらすものであること、(b)標識されたポリリン酸をホスファターゼと反応させて定量すべきDNA配列の量に実質的に比例した量の検出可能な副生成物物質種を生成すること、(c)検出可能な物質種を測定すること、及び(d)既知の標準物質を用いて測定値を比較することによりDNAの量を測定すること、の工程を含むDNA配列を定量する方法を提供する。
【0106】
上記した核酸配列を定量するこれ等の方法の各々において、ポリメラーゼ反応工程は更にホスファターゼの存在下にポリメラーゼ反応を実施することを包含する。明細書において上述した通り、これは核酸ポリメラーゼ活性のリアルタイムモニタリング、即ち、定量のための標的核酸配列のリアルタイムの検出を可能とする。
【0107】
本明細書に記載した核酸配列を定量する方法のために有用な末端リン酸標識ヌクレオチドは以下に示す式Iで表される。酵素活性化標識は検出可能な物質種が精製するような態様に標識と天然又は修飾ヌクレオチドの末端リン酸との間のリン酸エステル連結部を変化させるホスファターゼの酵素活性を介して検出可能となる。検出可能な物質種は比色、蛍光発生、ケミルミネセンス、質量の相違又は電子化学的ポテンシャルの何れか1つ又は組合せの存在により検出される。既に記載した通り、酵素活性化標識は1,2−ジオキセタンケミルミネセント化合物、蛍光染料、発色原染料、質量タグ又は電子化学タグ又はこれ等の組合せであってよい。適当な標識は上記したものと同様である。
【0108】
本発明の別の特徴は下記成分:
(a)下記式:
【0109】
【化11】

【0110】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル、アルキルホスホネート又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基、ハロアルキル基又はアミノ基を含む標識であり、P−Lはホスホリル化標識であり、そしてPとLとの間のリンカーを含んでよい]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、及び、
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ、
を包含する核酸検出キットに関する。
【0111】
本発明の別の特徴は下記成分:
(a)下記式:
【0112】
【化12】

【0113】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル、アルキルホスホネート又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基、ハロアルキル基又はアミノ基を含む標識であり、P−Lはホスホリル化標識であり、そしてPとLとの間のリンカーを含んでよい]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ、及び、
(c)マンガン塩を含有する反応緩衝液、
を含む核酸検出キットに関する。
【0114】
本発明の別の特徴は下記成分:
(a)下記式:
【0115】
【化13】

【0116】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル、アルキルホスホネート又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基、ハロアルキル基又はアミノ基を含む標識であり、P−Lはホスホリル化標識であり、そしてPとLとの間のリンカーを含んでよい]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ、
(c)マンガン塩を含有する反応緩衝液、及び、
(d)安定化剤、
を含む核酸検出キットに関する。
【0117】
本発明の別の特徴は下記成分:
(a)下記式:
【0118】
【化14】

【0119】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であリ、そしてPとLとの間のリンカーを含んでよい]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、及び、
(b)1種以上の核酸ポリメラーゼ、
(c)ホスファターゼ、
を含む核酸検出キットに関する。
【0120】
本発明の別の特徴は下記成分:
(a)下記式:
【0121】
【化15】

【0122】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であリ、これは好ましくはリン酸が除去された場合に独立して検出可能となる]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、
(b)熱安定性1種以上の核酸ポリメラーゼ、
(c)ホスファターゼ、及び、
(d)マンガン塩を含有する反応緩衝液、
を含む核酸検出キットに関する。
【0123】
本発明の別の特徴は下記成分:
(a)下記式:
【0124】
【化16】

【0125】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であリ、これは好ましくはリン酸が除去された場合に独立して検出可能となる]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、
(b)熱安定性1種以上の核酸ポリメラーゼ、
(c)ホスファターゼ、
(d)マンガン塩を含有する反応緩衝液、及び、
(e)安定化剤、
を含む核酸検出キットに関する。
【0126】
本発明の別の特徴は下記成分:
(a)下記式:
【0127】
【化17】

【0128】
[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識であリ、これは好ましくはリン酸が除去された場合に独立して検出可能となる]の1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、
(b)熱安定性1種以上の核酸ポリメラーゼ、及び、
(c)ホスファターゼ、
を含む核酸検出キットに関する。
【0129】
キットに含まれる末端リン酸標識ヌクレオチドにおける糖部分は例えばリボシル、2′−デオキシリボシル、2′−アルコキシリボシル、2′−アミノリボシル、2′−フルオロリボシル及び他の修飾された糖を包含する。
【0130】
塩基は例えばウラシル、チミン、シトシン、5−メチルシトシン、グアニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン及び2,6−デアミノプリン及びその類縁体を包含する。
【0131】
更にまた、上記した通り、酵素活性化標識は1,2−ジオキセタンケミルミネセント化合物、蛍光染料、発色原染料、質量タグ、電子化学タグ又はこれ等の組合せであってよい。ヌクレオチドの末端リン酸位置におけるコンジュゲーションのための適当な化合物は上記したものと同様である。
【0132】
以下の実施例は特定の好ましい実施形態を説明するものであって、全ての実施形態を説明するものではない。
【実施例1】
【0133】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシチミジン−5′−四リン酸(dT4P−DDAO)及び関連化合物の製造
TTPのTEA塩10μモルを蒸発乾固させた。残留物に対し、トリブチルアミン40μモル及び乾燥ピリジン5mlを添加した。溶液を再度蒸発乾固させた。乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)3mlと共に2回共蒸発させた後、残留物を乾燥DMF200μlに再溶解し、アルゴンでフラッシュし、蓋をした。シリンジを用いて、乾燥DMF100μl中に溶解したカルボニルジイミダゾール(CDI)50μモル(8mg)を添加した。フラスコを周囲温度で4時間攪拌した。
【0134】
上記反応が進行している間、DDAOリン酸35mg(83μミリモル)及びトリブチルアジン166μミリモルを乾燥DMF中に溶解した。DDAOリン酸を蒸発乾固させ、その後乾燥DMFと共に3回共蒸発させた。残留物を乾燥DMF300μlに溶解した。
【0135】
4時間の反応時間の後、無水メタノール3.2μlをTTP−CDI反応物に添加した。反応物を30分間攪拌した。この混合物に対し、DDAOリン酸溶液を添加し、混合物を18時間周囲温度で攪拌した。逆相HPLC(Xterra4.6x100カラム、0.1MTEAA/アセトニトリル)で反応を確認した。蒸発により反応物の容量を200μlまで減少させ、反応を80時間進行させた。
【0136】
80時間後、0.1MTEAB15mlを添加して反応を停止した。希釈した混合物を19x100XterraRPカラムに適用し、0.1MTEAB中のアセトニトリルの勾配で溶離した。純粋なDDAOT4Pを含有する画分を蒸発乾固し、エタノールと2回共蒸発させた。残留物をMilliQ水で希釈再調製した。収率:1.10μモル、11%、455nmにおけるHPLC純度>98%、MS:M−1=850.07(計算値:849.95)。
【0137】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシグアニシン−5′−四リン酸(dG4P−DDAO)及びδ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシシチジン−5′−四リン酸(dC4P−DDAO)及びδ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシアデノシン−5′−四リン酸(dA4P−DDAO)はDDAOリン酸3.5等量を8.3等量の代わりに使用した以外は上記した通り製造した。C18精製の後、試料をMonoQ10/10カラムを用いたイオン交換により精製した。
【0138】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシグアノシン−5′−四リン酸(dG4P−DDAO):収率0.57μモル、5.7%、455nmにおけるHPLC純度99%、MS:M−1=875.03(計算値:874.96)。
【0139】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシシチジン−5′−四リン酸(dC4P−DDAO):収率0.24μモル、2.4%、455nmにおけるHPLC純度99%、MS:M−1=835.03(計算値:834.95)。
【0140】
δ−9H(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)−デオキシアデノシン−5′−四リン酸(dA4P−DDAO):収率0.38μモル、3.8%、455nmにおけるHPLC純度99%、MS:M−1=859.07(計算値:858.97)。
【0141】
【化18】

【実施例2】
【0142】
末端リン酸標識ヌクレオチドポリリン酸を用いた標的配列のPCR増幅
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物(20μl)を20mMトリス塩酸′pH8.75)、10mMKCL、10mM(NHSO、2mMMgSO、1mg/mlウシ血清アルブミン及び0.1%(v/v)トリトンX−100の組成とした。ヌクレオチドの終濃度は各々20μMとし、各反応にはDNAポリメラーゼ2.5単位を使用した。初期鋳型DNA(1〜5ng)はpUC18又はpUCp53(Amersham Biosciences)の何れかとした。プライマーの配列及びpUCp53の増幅されたセグメントの配列を表4に示す。プライマーの初期量は各々2pmolとし、そして記載したDNAポリメラーゼ2.5単位を使用した。反応は90℃30秒、55℃60秒、そして72℃300秒を15サーマルサイクル行った。大部分のPCR反応は終濃度0.08〜0.2mMでMnClも含有させた。反応産物は1.6%アガロースゲルにロードした。ゲルをSYBRGold(Molecular Probes)を用いて製造元の説明書に従って染色し、そして、Typhoon蛍光スキャナー(Amersham Biosciences)を用いて532nmで走査した。ゲルサイズマーカーは100bpラダー(Amersham Biosciences)とした。
【0143】
これ等の実験に使用したDNAポリメラーゼはTaqDNAポリメラーゼ、Thermo Sequenase DNAポリメラーゼ(Amersham Biosciences)、Tba exo−DNAポリメラーゼ(Thermococcus barosii由来、米国特許5602011、D141A及びE143Aアミノ酸置換を有するもの、米国特許5882904)、PfuDNAポリメラーゼ(Stratagene)、KOD XL DNAポリメラーゼ(Novagen)及びDeep Vent DNAポリメラーゼ(New England BioLabs)を含むものであった。
【0144】
【表10】

【0145】
図1は数種のDNAポリメラーゼ及び正常ヌクレオチド(レーン10〜12)又はdATP、dGTP、dCTP及び□−DDDAOdT四リン酸(DDAO−dT4P)の混合物の何れかを用いたPCRの結果を示す。この実験については、TaqDNAポリメラーゼ(レーン1〜3、12)、Thermo Sequence(Amersham Biosciences)DNAポリメラーゼ(レーン7〜9、11)又はTbaexo−DNAポリメラーゼ(レーン4〜6、10)を使用した。MnCl濃度はレーン1、4、7及び10〜12において分解された反応については0mM、レーン2、5及び8は0.2mM、レーン3、6及び9では0.4mMであった。全ての試料につき鋳型DNAはpUCp53とし、プライマーはP53SNP22C−51F及びP53SNP22G131Rとした。図に示す通り、PCR産物の大部分の量は正常ヌクレオチドを用い3種全てのポリメラーゼにより作成されたが、DDAO−dT4PがdTTPを置き換えた場合にはTbaexo−ポリメラーゼによる場合のみであり、そのPCR収率は0.2〜0.4mMMnClの存在下では5倍以上増大している。同様の実験(示さず)において、生成物の収率は僅か0.04mMMnClそして1.0mMMnClもの存在下においても増大した。正常dNTPを使用する場合はMnClは必要ではなく、そして実際、MnClはこれ等のPCR増幅の収率を低下させる(データ示さず)という点は興味深い。更にまた、PCR産物はPfuDNAポリメラーゼ及びKODXLDNAポリメラーゼによっても、同じ条件下で作成される。同じく興味深い点として、一部のポリメラーゼが増幅産物の生成ができないことは、Tbaexo−DNAポリメラーゼ及び他のポリメラーゼによる良好な増幅はリン酸修飾ヌクレオチドの単純な分解により達成されたわけではないことを示唆している。
【実施例3】
【0146】
蛍光によるPCR産物の検出
エビアルカリホスファターゼ(Amersham Biosciences)0.1単位を図1のレーン2及び5に示した反応の産物に添加し、30分間37℃でインキュベートした。次にFarCYte蛍光プレートリーダー(Amersham Biosciences)を用いて励起650nm及び発光670nmで蛍光を測定した。Taqポリメラーゼ(検出可能なPCR産物の生成は僅かであるか皆無である)の反応産物は5500蛍光単位の読取値を示した。Tbaexo−DNAポリメラーゼの反応産物は31,000蛍光単位の読取値を示した。このことは、遊離DDAO蛍光を検出する単純な蛍光の読取値を用いて良好なPCR増幅を検出できることを示している。
【実施例4】
【0147】
別のヌクレオチド、鋳型及びプライマーによるPCR
図2は同じプライマーによる図1と同じ鋳型の増幅産物を示す。図3は21フォワードプライマー及び28リバースプライマー(表1)を用いたpUC18DNAの増幅産物を示す。両方の図において、レーン1にロードした増幅反応は正常dNTPを用いてMnClの非存在下に実施した。2のマークのレーンではdTTPをdT4P−DDAOと置き換え、反応には0.2mMMnClを添加した。3のマークのレーンでは、dGTPをdG4P−DDAOと置き換え、4のマークのレーンでは、dGTPをdG4P−Meクマリンと置き換え、ここでも0.2mMMnClを使用した。全ての増幅で良好に期待されたサイズの産物が生成し、増幅は修飾ヌクレオチドにおける塩基又は染料の部分とは無関係であることが示唆された。
【実施例5】
【0148】
末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸の非酵素的加水分解に対する添加剤の作用
50mMHepes、pH8.0、5mMMgCl、0.5mMMnCl、0.01%Tween−20、1μmddT4P−EtFl、100nMプライマー/鋳型、0.0036単位/μlSAPを含有する試料70μlを、5%グリセロールの存在下又は非存在下に、10回反復して95℃30秒及び50℃3分のサイクルに付した。形成した遊離の染料の量を蛍光計で確認した。グリセロールの非存在下においては、形成した染料の濃度は151nMであったのに対し、グリセロールの存在下では僅か19nMであった(マンガン非存在下において観察された数値8nMに近似)。明らかに高温においてはグリセロールはマンガンにより誘発される分解の量を低減する。
【実施例6】
【0149】
MnClの存在下における末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸の非酵素的加水分解に対する添加剤としての硫酸アンモニウムの作用
0.5mMMnCl、1μmdT4P−DDAO及び10mM塩(図4参照)を含有する20μlの25mMトリス塩酸pH9.0を60分間95℃で加熱した。各反応混合物4μlをHepes中BAP溶液(0.005単位BAP/μl)16μlと混合し60分間37℃でインキュベートした。試料をTecanウルトラレトリーダー上で読み取った。非加熱試料及びMnCl未添加非加熱試料を対照として使用した。100%分解試料としてのヘビ毒ホスホジエステラーゼ加水分解試料からの蛍光計数値を用いて蛍光計数値生データを%分解に変換した。図4は明らかに、硫酸アンモニウムの添加はdT4P−DDAOを顕著に安定化することを示している。一部の安定化作用はまた、スルフェートイオン(MgSO)及びアンモニウムイオン(NHCl)の存在下にも観察された。
【実施例7】
【0150】
MnClの存在下における末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸の非酵素的加水分解に対する添加剤としての他の塩の作用
0.5mMMnCl、1μmdT4P−DDAO及び10又は25mMの無機又は有機の塩(図5参照)を含有する20μlの25mMのHepespH8.1を60分間95℃で加熱した。各反応混合物4μlを上記した通りBAPで処理し、そしてTecanウルトラレトリーダーで読み取った。MnCl添加の非加熱試料(水レーン)及びHepesとMnCl未添加の加熱試料を対照として使用した。蛍光計数値は上記した通り%分解に変換した。図5のデータは明らかに、硫酸アンモニウム、ホスホノアセテート、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム及びバナジウム酸ナトリウムがヌクレオチドを安定化させることを示している。一方、プロパンスルフェートによる安定化は最小限であった。
【実施例8】
【0151】
ヌクレオチド安定化添加剤の存在下における末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を用いたPCR増幅
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物(20μl)には25mMHepes(pH8.1),10mMKCl、2mMMgSO、0.25mMMgCl、1mg/mlウシ血清アルブミン、0.01%(v/v)Tween−20及び10〜25mM塩を図6の通り含有させた。各試料にはまた、20μmのdA4P−Me、dT4P−Me、dC4P−Me各々、200μmdG4P−FlEt、0.006単位/μlBAP、T.baポリメラーゼ2単位、0.1μm40M13フォワードプライマー、0.1μm28M13リバースプライマー及び0.2nM13DNAを添加した。末端リン酸標識ヌクレオチドのほかに、末端メチルブロッキングdNTPを正常dNTPの代わりに使用することによりBAP(ホスファターゼ)による分解を防止した。後者は、ポリメラーゼによりDNAにヌクレオチドが取り込まれた後に染料ポリリン酸からのシグナルの発生のために必要とされる。反応は90℃30秒、55℃30秒及び65℃300秒の35サーマルサイクルで行った。反応産物は1.6%アガロースゲルにロードした。ゲルをSYBRGold(Molecular Probes)を用いて製造元の説明書に従って染色し、そして、Typhoon蛍光スキャナー(Amersham Biosciences)を用いて532nmで走査した。ゲルサイズマーカーは100bpラダー(Amersham Biosciences)とした。
【0152】
図6に示す通り、PCR産物は硫酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム及びタングステン酸ナトリウムの存在下、並びに、何れの安定化剤の非存在下においても分離された。メタバナジウム酸ナトリウム又はホスホノアセテートの存在下では産物は形成されなかった。硫酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム及びタングステン酸ナトリウムが末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を安定化させるのみならず、DNA増幅も可能にすることを考慮すると、これ等の塩は定量的な増幅方法における使用のために極めて有用である。
【実施例9】
【0153】
末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を用いた定量的PCR
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)混合物(20μl)には25mMトリス塩酸(pH9.0),10mMKCl、2mMMgSO、0.25mMMgCl、1mg/mlウシ血清アルブミン、0.01%(v/v)Tween−20を含有させた。各試料にはまた、20μmのdA4P−Me、dT4P−Me、dC4P−Me各々、200μmdG4P−FlEt、0.005単位/μlBAP、pfu(A486Y突然変異有り)ポリメラーゼ2単位、0.1μm40M13フォワードプライマー、0.1μm28M13リバースプライマー及び1.2x10−1.2x10コピーのM13DNAを添加した。末端リン酸標識ヌクレオチドのほかに、残余のヌクレオチドは末端リン酸上のメチル基でブロックすることによりBAPによる分解を防止した。反応はABI7900装置上で90℃30秒、55℃30秒及び65℃300秒の50サーマルサイクルで行った。各反応につき蛍光計数値が特定の閾値(増幅産物の所定量に相当)に達した時点におけるサイクル数をインプットM13DNAコピー量に対してプロットすることにより得られた直線(図7)は方法は所定の試料中の標的DNAコピー数の定量のために使用できることを示している。
【0154】
反応産物はまた1.6%アガロースゲルにロードした。ゲルをSYBRGold(Molecular Probes)を用いて製造元の説明書に従って染色し、そして、Typhoon蛍光スキャナー(Amersham Biosciences)を用いて532nmで走査したところ、PCR産物の形成が示された(図8)。ゲルサイズマーカーは100bpラダー(Amersham Biosciences)とした。
【実施例10】
【0155】
末端リン酸標識/ブロックヌクレオシドポリリン酸を用いたローリングサークル増幅(RCA)によるDNA増幅
種々の量の変性サケ精子染色体DNAを、5mM硫酸アンモニウム、75mMNaCl、5mMMgCl、1mMMnSO4、0.01%ツイーン−20、400ngPhi29DNAポリメラーゼ、40μmヌクレアーゼ耐性ランダム6量体、0.03単位のBAP及び各々50μmのdA4P−Me、dG4P−Me、dC4P−Me及びdT4P−DDAOを含有する25mMトリス:ホウ酸塩緩衝液、pH8.0中に投入した。反応はTecan蛍光プレートリーダー中30℃でインキュベートし、DDAOについて旨適化した励起及び発光の波長において5分おきに読み取った。蛍光計数値の生データを時間の関数としてプロットした。
【0156】
図9は明らかに、インプットDNAの非存在下においてシグナルが発生しないことを示している。DNA量が増大するに従って、蛍光の量、即ち生成した産物の量が増大する。更にまた、各反応の増幅の直線期(20〜40分)の傾きをDNAインプットの関数としてプロットすると(図10)、インプットDNA量と産物形成速度との間に直線相関が観察され、この方法がDNAを定量するために使用できることを示している。
【0157】
本発明の特定の所望の実施形態を上記の通り記載したが、これを通して本発明の意図する範囲を逸脱することなく変更が行える。本発明の真の範囲は添付する請求項に記載する通りである。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸鋳型、プライマー、核酸ポリメラーゼ及び1以上のヌクレオシドポリリン酸のポリメラーゼ反応を包含する核酸増幅のための方法において、1種以上の末端標識ヌクレオシドポリリン酸の存在下に該ポリメラーゼ反応を実施することを含む進歩。
【請求項2】
増幅をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、鎖置換増幅(SDA)又は核酸配列系増幅(NASBA)により行う請求項1記載の方法。
【請求項3】
該核酸ポリメラーゼがDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼ、プライマーゼ、テロメラーゼ又はこれ等の組合せからなる群から選択される請求項1記載の方法。
【請求項4】
該DNAポリメラーゼが古細菌ポリメラーゼである請求項3記載の方法。
【請求項5】
該DNAポリメラーゼがテルモコッカス・バロシDNAポリメラーゼ、テルモコッカス・リトラリスDNAポリメラーゼ、テルモコッカス・コダカレンシスNAポリメラーゼ、ピロコッカス・フリオシスDNAポリメラーゼ、ピロコッカスGB−DNAポリメラーゼ、Phi29DNAポリメラーゼ又はこれ等のポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ欠乏変異体から選択される請求項3記載の方法。
【請求項6】
増幅をマンガン塩の存在下に実施する請求項1記載の方法。
【請求項7】
増幅を非酵素的加水分解に対して末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸を安定化させる安定化剤の存在下に実施する請求項1記載の方法。
【請求項8】
該安定化剤が有機添加物、無機添加物又は両方の混合物である請求項7記載の方法。
【請求項9】
該有機添加剤が有機塩である請求項8記載の方法。
【請求項10】
該無機添加剤が無機塩である請求項8記載の方法。
【請求項11】
該無機塩が硫酸塩、モリブテン酸塩、タングステン酸塩又はこれ等の組合せから選択される請求項10記載の方法。
【請求項12】
増幅を異なる標識を有する末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸2つ以上の存在下に実施する請求項1記載の方法。
【請求項13】
該末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸がポリリン酸鎖中にリン酸基4つ以上を含む請求項1記載の方法。
【請求項14】
該末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸が下記式:
【化1】

[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル、アルキルホスホネート又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基、ハロアルキル基又はアミノ基を含む標識であり、P−Lはホスホリル化標識である]で示される請求項1記載の方法。
【請求項15】
該末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸がPとLとの間にリンカーを含む請求項14記載の方法。
【請求項16】
該等部分がリボシル、2′−デオキシリボシル、2′−アルコキシリボシル、2′−アジドリボシル、2′−アミノリボシル、2′−フルオロリボシル、2′−メルカプトリボキシル、2′−アルキルチオリボシル、炭素環、非環式及び他の修飾された糖類からなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項17】
該塩基がウラシル、チミン、シトシン、グラニン、7−デアザグアニン、ヒポキサンチン、7−デアザヒポキサンチン、アデニン、7−デアザアデニン、2,6−デアミノプリン及びその類縁体からなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項18】
該ホスホリル化標識が酵素活性化可能な標識であり、そして、ケミルミネセント化合物、蛍光発生染料、発色原染料、質量タグ、電子化学タグ及びそれらの組合せからなる群から選択される請求項14記載の方法。
【請求項19】
該酵素活性化標識が2−(5′−クロロ−2′−ホスホリルオキシフェニル)−6−クロロ−4−(3H)−キナゾリノン、フルオレセインジホスフェート、フルオレセイン3′(6′)−O−アルキル−6′(3′)−リン酸、9H−(1,3−ジクロロ−9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イル)リン酸、4−メチルウンベリフェリルリン酸、レゾルフィンリン酸、4−トリフルオロメチルウンベリフェリルリン酸、ウンベリフェリルリン酸、3−シアノウンベリフェリルリン酸、9,9−ジメチルアクリジン−2−オン−7−イルリン酸、6,8−ジフルオロ−4−メチルウンベリフェリルリン酸及びその誘導体からなる群から選択される蛍光発生部分である請求項18記載の方法。
【請求項20】
該酵素活性化可能な標識が5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルリン酸、3−インドキシルリン酸、p−ニトロフェニルリン酸及びその誘導体からなる群から選択される発色原部分である請求項18記載の方法。
【請求項21】
該ケミルミネセント化合物がアルカリホスファターゼ活性化1,2−ジオキセタン化合物である請求項18記載の方法。
【請求項22】
該1,2−ジオキセタン化合物が2−クロロ−5−(4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2‘−(5−クロロ−)トリシクロ[3,3,1−13,7]−デカン]−1−イル)−1−フェニルリン酸、クロロアダマント−2′−イリデンメトキシフェノキシホスホリル化ジオキセタン、3−(2′−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3″−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン及びその誘導体からなる群から選択される請求項21記載の方法。
【請求項23】
下記工程:
(a)核酸増幅反応を実施することにより標識されたポリリン酸を生成すること、ここで該反応は1種以上の末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸及び核酸ポリメラーゼを包含するものであること、及び、
(b)該標識ポリリン酸を検出すること、
を含む資料中の核酸配列の存在を検出する方法。
【請求項24】
該検出工程が(a)該標識ポリリン酸をホスファターゼで処理することにより検出可能な物質種を生成すること、及び(b)該検出可能な物質種を検出することを包含する請求項23記載の方法。
【請求項25】
該処理工程及び該実施工程を同時に行う請求項24記載の方法。
【請求項26】
検出工程を該検出可能な物質種の生成とリアルタイムで該検出工程を実施する請求項25記載の方法。
【請求項27】
該核酸ポリメラーゼがDNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、テロメラーゼ、プライマーゼ又は末端ヌクレオチジルトランスフェラーゼからなる群から選択される請求項23記載の方法。
【請求項28】
該ホスファターゼがアルカリホスファターゼ又は酸ホスファターゼである請求項24記載の方法。
【請求項29】
該アルカリホスファターゼがE.coliアルカリホスファターゼ、ウシ腸アルカリホスファターゼ、エビアルカリホスファターゼ及びRhodothermus marinusアルカリホスファターゼからなる群から選択される請求項25記載の方法。
【請求項30】
標識されたポリリン酸の量を測定することにより資料中の該核酸を定量する工程を更に含む請求項23記載の方法。
【請求項31】
PCR、RCA、SDA又はNASBAにより増幅を行う請求項23記載の方法。
【請求項32】
該実施工程をPCRにより行い、そして該反応が更に対立遺伝子特異的プライマーを包含する請求項23記載の方法。
【請求項33】
該末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸が下記式:
【化2】

[式中、Pはリン酸(PO3)及びその誘導体であり、nは2以上であり、Yは酸素又はイオウ原子であり、Bは窒素含有複素環塩基であり、Sは糖部分であり、Lは天然又は修飾されたヌクレオチドの末端リン酸においてリン酸エステル、チオエステル又はホスホロアミデート連結部を形成するために適するヒドロキシル基、スルフィドリル基又はアミノ基を含む酵素活性化可能な標識であり、P−Lはホスホリル化標識である]で示される請求項23記載の方法。
【請求項34】
該末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸がPとLとの間にリンカーを含む請求項33記載の方法。
【請求項35】
下記成分:
(a)1種以上の末端リン酸標識ヌクレオチド、及び、
(b)ポリメラーゼ、
を含む核酸標的を増幅又は定量するためのキット。
【請求項36】
ホスファターゼを更に含む請求項35記載のキット。
【請求項37】
末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸安定化剤を更に含む請求項35記載のキット。
【請求項38】
更にマンガン塩を含む請求項35記載のキット。
【請求項39】
ランダム配列プライマーのセットを含む請求項35記載のキット。
【請求項40】
プライマーが4〜10ヌクレオチドの長さである請求項39記載のキット。
【請求項41】
プライマーが6量体である請求項39記載のキット。
【請求項42】
プライマーがヌクレアーゼ耐性である請求項39記載のキット。

【公表番号】特表2006−513705(P2006−513705A)
【公表日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568296(P2004−568296)
【出願日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/027287
【国際公開番号】WO2004/072304
【国際公開日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【出願人】(598041463)アマシャム・バイオサイエンス・コーポレイション (43)
【氏名又は名称原語表記】Amersham Biosciences Corp
【住所又は居所原語表記】800 Centennial Avenue, P.O.Box 1327,Piscataway,New Jersey 08855−1327,United States of America
【Fターム(参考)】