核酸検出用キット
【課題】簡便かつ高感度に標的核酸を検出することができる核酸検出用キットを提供する。
【解決手段】下記式(1)等で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含む核酸検出用キットである。
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【解決手段】下記式(1)等で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含む核酸検出用キットである。
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
何らかの標識が施されたRNAプローブなどの核酸プローブを用い、細胞レベルにおけるDNAやRNAの発現パターンを検出、可視化することによって、生命現象に関する数多くの疑問点を解明することが可能となる。細胞レベルでの遺伝子発現パターンを可視化するこのような手法をin situ ハイブリダイゼーション(in situ hybridization:ISH)と言うが、この際に使用されるプローブの標識法は大別して、「放射性同位体標識法」、「蛍光抗体標識法」、「酵素抗体標識法」に分類される。歴史的には、放射性同位体を取り込ませた核酸プローブが先に確立したが、近年その取り扱いが制限されてきたこともあって、放射性同位体元素を用いない蛍光抗体標識法や酵素抗体標識法が注目されている。
【0003】
これらの手法は、核酸プローブ作製時に抗原やビオチンでラベル化しておき、それらを標的核酸にハイブリダイズした後、酵素もしくは蛍光物質によって標識された抗体やアビジンを用いて免疫染色法により検出するといった手法である。感度という観点から見ると、酵素反応によるシグナル増幅効果が得られる酵素抗体標識法が優れており、現在最も広く使用されている。
【0004】
酵素抗体標識法を利用した核酸プローブとしては、例えば、ジゴキシゲニン(DIG)などの抗体認識部位で修飾したヌクレオチド誘導体を複数個ランダムに導入した抗原マルチラベル化核酸プローブが知られている。この抗原マルチラベル化核酸プローブと標的核酸とのin situ ハイブリダイゼーションの後、抗体認識部位を認識する酵素標識化抗体との抗原−抗体反応を行い、酵素アルカリホスファターゼとのハイブリッドによる発色反応を利用して検出を行う。しかしながら、酵素標識された抗体が非常に高価であること、抗原−抗体反応に伴う操作の煩雑化や非特異吸着などによるバックグラウンドの増加など、幾つかの問題を有している。
【0005】
一方、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基または第一級アミンを有するペプチドまたはタンパク質へ、アニオン性であり、かつTGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基を有する外来分子を部位特異的に連結する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−54658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡便かつ高感度に標的核酸を検出することができる核酸検出用キットである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含む核酸検出用キットである。
【化1】
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化2】
(式(2)中、A1およびA2のうち少なくとも1つは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基で残りは水素原子を表し、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化3】
(式(3)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化4】
(式(4)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【0009】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記式(1)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が、下記式(5)で示される化合物であることが好ましい。
【化5】
(式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(C2H4O)n−または−(C3H6O)n−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基であり、Bは水素原子またはヒドロキシル基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。)
【0010】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記Xはエテニレン基、Yはメチレン基であり、Zはベンジルオキシ基であることが好ましい。
【0011】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記グルタミン(Gln)残基は、FYPLQMR、YPLQMR、PLQMR、FYPLQMG、YPLQMG、YPLQM、PLQMG、FYPLQG、YPLQGまたはPLQGのアミノ酸配列中に存在することが好ましい。
【0012】
また、前記核酸検出用キットにおいて、トランスグルタミナーゼ(TGase)を含むことが好ましい。
【0013】
また、前記核酸検出用キットにおいて、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物を含むことが好ましい。
【0014】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記リシン(Lys)残基が、MTGに認識されるアミノ酸配列中に存在することが好ましい。
【0015】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記標識部分が、酵素および蛍光色素のうち少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記酵素が、超好熱菌由来の酵素であることが好ましい。
【0017】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記Bが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つ、前記Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、簡便かつ高感度に標的核酸を検出することができる核酸検出用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸の構造の一例(Z−QG−UTP)を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける酵素マルチラベル化核酸プローブの調製方法を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける標的核酸の検出方法の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸の一例であるZ−QG−UTPの合成方法の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施例1において、Z−QG−UTPを合成した後、逆相HPLC(表1のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例1において合成したZ−QG−UTPのMALDI TOF−MS分析の結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例1において合成したZ−QG−dUTPのMALDI TOF−MS分析の結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例1において、Z−QG−dUTPを合成した後、逆相HPLC(表2のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例1において、aminoallyl−dUTPの逆相HPLC(表2のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図10】(a)本発明の実施例1における核酸検出用キットを用いたドットブロットの結果を示す図である。(b)本発明の比較例1におけるドットブロットの結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例2における核酸検出用キットを用いたドットブロットの結果を示す図である。
【図12】本発明の実施例3における核酸検出用キットによるマルチラベル化核酸プローブの精製品および未精製品を用いたドットブロットの結果を示す図である。
【図13】本発明の実施例4において、Ac−PLQMR−dUTPを合成した後、逆相HPLC(表6のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図14】本発明の実施例4において、aminoallyl−dUTPの逆相HPLC(表6のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図15】本発明の実施例4において合成したAc−PLQMR−dUTPのMALDI TOF−MS分析の結果を示す図である。
【図16】本発明の実施例4において合成したAc−PLQMR−dUTPを用いてDNAを調製した際のアガロースゲル電気泳動装置にて電気泳動を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の実施の形態に係る核酸検出用キットは、下記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含む。式(1),(2),(3)または(4)において、A、A1またはA2は、リシン(Lys)残基またはグルタミン(Gln)残基以外のアミノ酸残基を含んでいてもよい。
【化6】
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化7】
(式(2)中、A1およびA2のうち少なくとも1つは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基で残りは水素原子を表し、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化8】
(式(3)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化9】
(式(4)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【0022】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、トランスグルタミナーゼ(TGase)を含んでもよい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットは、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物を含んでもよい。さらに、本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸においてBが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つを含んでもよく、Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0023】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸と、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含む酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸含有溶液を含むものであってもよい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットは、トランスグルタミナーゼ(TGase)と、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含むトランスグルタミナーゼ含有溶液を含んでもよい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットは、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物と、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含む標識化合物含有溶液を含んでもよい。さらに、本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸においてBが水素原子の場合には、dATPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdATP含有溶液、dCTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdCTP含有溶液、dGTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdGTP含有溶液、dTTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdTTP含有溶液のうち少なくとも1つを含んでもよく、Bがヒドロキシル基の場合には、ATPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むATP含有溶液、CTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むCTP含有溶液、GTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むGTP含有溶液、UTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むUTP含有溶液のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0024】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸と、Bが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つと、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含むヌクレオシド三リン酸含有溶液を含んでもよく、Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つと、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含むヌクレオシド三リン酸含有溶液を含むものであってもよい。
【0025】
本発明者らは、核酸プローブに複数の酵素を共有結合的に導入する手法として、微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)などのトランスグルタミナーゼ(TGase)が有する部位特異的なタンパク質修飾能に着目した。TGaseはアシル転移反応を触媒する酵素であり、例えば、タンパク質中の特定のGln残基(Q)のγ−カルボキシアミド基と、Lys残基(K)のε−アミノ基や各種一級アミンとの共有結合を触媒する酵素である。このTGaseを用いて、複数の標識酵素などの標識部分を導入したマルチラベル化核酸プローブの創製を行うことができる。
【0026】
具体的には、例えば、図1に示す、ウリジン三リン酸(uridine triphosphate:UTP)に、TGaseが認識するGln(MTG認識Gln)を有するZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体であるZ−QG−UTPを、図2に示すように、核酸プローブとなるRNAを調製する際に取り込ませることによって、TGase認識Glnが複数箇所導入されたZ−QG RNAを調製する。その後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識LysなどのTGase認識Lysを導入した標識酵素などの標識化合物を結合させることによって、RNAと標識酵素などの標識部分が1:n(nは2以上の整数)であるマルチラベル化核酸プローブを創製することができる。
【0027】
このマルチラベル化核酸プローブは、ターゲットとなる標的核酸にハイブリダイズした後、直ちに検出反応を行うことができるため、既存の手法と比較して、操作の大幅な簡素化、バックグラウンドの低下、バルク酵素である微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)を用いることによるコストの抑制などが見込まれる。
【0028】
なお、図2において、核酸プローブにおけるGln残基と、標識化合物におけるLys残基とは逆であってもよい。すなわち、TGaseが認識するLys(MTG認識Lys)を有するヌクレオシド三リン酸誘導体を、核酸プローブとなるRNAを調製する際に取り込ませることによって、TGase認識Lysが複数箇所導入された核酸プローブを調製する。その後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnを導入した標識化合物を結合させることによって、RNAと標識部分が1:n(nは2以上の整数)であるマルチラベル化核酸プローブを創製してもよい。
【0029】
また、図3に示すように、Z−QG RNAなどの核酸プローブをターゲットとなる標的核酸にハイブリダイズした後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識LysなどのTGase認識Lysを導入した標識酵素などの標識化合物を結合させてもよい。RNAと標識酵素などの標識部分が1:n(nは2以上の整数)となり、このように導入した標識部分の検出反応を行うことにより、既存の手法と比較して、操作の大幅な簡素化、バックグラウンドの低下、バルク酵素である微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)を用いることによるコストの抑制などが見込まれる。
【0030】
なお、図3において、核酸プローブにおけるGln残基と、標識化合物におけるLys残基とは逆であってもよい。すなわち、TGaseが認識するLys(MTG認識Lys)を有するヌクレオシド三リン酸誘導体を合成し、核酸プローブとなるRNAを調製する際に取り込ませることによって、TGase認識Lysが複数箇所導入された核酸プローブを調製する。その後、核酸プローブをターゲットとなる標的核酸にハイブリダイズした後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnを導入した標識化合物を結合させてもよい。
【0031】
本実施形態に係る核酸検出用キットを用いて、QG基を導入した核酸とN末端にK残基等を有する酵素を、MTGを用いて結合させることにより、容易に酵素標識核酸を得ることができる。また、DNA、RNAの両方に標識することができる。酵素標識した核酸プローブは、フィルターハイブリダイゼーションやISHなどの核酸検出アッセイに用いることができる。
【0032】
<酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸>
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれる酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、TGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する上記式(1),(2),(3)または(4)で示されるヌクレオシド三リン酸である。上記式(1),(2),(3)または(4)で示されるヌクレオシド三リン酸は、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、ウリジン三リン酸(uridine triphosphate:UTP)誘導体、アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)誘導体、グアノシン三リン酸(guanosine triphosphate:GTP)誘導体、シチジン三リン酸(cytidine triphosphate:CTP)誘導体、デオキシウリジン三リン酸(deoxyuridine triphosphate:dUTP)誘導体、デオキシアデノシン三リン酸(deoxyadenosine triphosphate:dATP)誘導体、デオキシグアノシン三リン酸(deoxyguanosine triphosphate:dGTP)誘導体、デオキシシチジン三リン酸(deoxycytidine triphosphate:dCTP)誘導体である。本実施形態に係る酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸において、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンは、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシンの部分に直接または置換基を介して結合されている。
【0033】
これらの酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、UTP、ATP、GTP、CTP、dUTP、dATP、dGTP、dCTPまたはそれらの各種誘導体から得ることができる。
【0034】
また、これらの酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、ウリジン、ウリジンの一リン酸(UMP)および二リン酸(UDP)、アデノシン、アデノシンの一リン酸(AMP)および二リン酸(ADP)、グアノシン、グアノシンの一リン酸(GMP)および二リン酸(GDP)、シチジン、シチジンの一リン酸(CMP)および二リン酸(CDP)、デオキシウリジン、デオキシウリジンの一リン酸(dUMP)および二リン酸(dUDP)、デオキシアデノシン、デオキシアデノシンの一リン酸(dAMP)および二リン酸(dADP)、デオキシグアノシン、デオキシグアノシンの一リン酸(dGMP)および二リン酸(dGDP)、デオキシシチジン、デオキシシチジンの一リン酸(dCMP)および二リン酸(dCDP)ならびにそれらの各種誘導体から得てもよい。
【0035】
例えば、ウリジン、アデノシン、グアノシン、シチジン、デオキシウリジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジンのリン酸化酵素などによるリン酸化(例えば、生物工学会誌,85(9),p397−399(2007)、Journal of Bioscience and Bioengineering,87(6),p.732−738(1999)など参照)や、プロトンスポンジ存在下でのオキシ塩化リンなどによるリン酸化(例えば、Tetrahedron Letters,29(36),p.4525−4528(1988)など参照)などによって、それらの三リン酸体を得ることができる。
【0036】
上記式(1)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、下記式(5)で示される、TGaseが認識可能なGln残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有するTGase基質修飾ヌクレオチド三リン酸であることが好ましい。
【化10】
【0037】
式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜48のアルキレン基、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などの炭素数2〜48のアルケニレン基などが挙げられる。これらのうち、X,Yは、それぞれ独立して炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基、炭素数1〜48のアルコキシ基であることが好ましく、Xはエテニレン基、Yはメチレン基であることがより好ましい。X,Yはさらにエテニレン基、オキシアルキレン基、例えば−(C2H4O)n−または−(C3H6O)n−(nは繰り返し数でありn=2,4,8,12,24)基などで置換されていてもよい。
【0038】
Zで表される置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜48のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基などの炭素数1〜48のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜48のアリール基、フェニルオキシ基などの炭素数6〜48のアリールオキシ基、ベンジル基などの炭素数7〜48のアリールアルキル基、ベンジルオキシ基などの炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、Zは、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基であることが好ましく、Zはベンジルオキシ基であることがより好ましい。Zはさらにジニトロフェニル基、L−3,4−ジヒドロキシフェニル基などで置換されていてもよい。また、上述したYで表される置換との組み合わせで、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。Bは水素原子またはヒドロキシル基である。
【0039】
Xを適宜選択することにより、Z−QGとUTPとを連結するリンカー部位の構造を最適化し、例えば柔軟なリンカー部位を導入することで、酵素などのアクセスを向上することができる。また、Y,Zを適宜選択することにより、基質ペプチド配列を最適化し、例えば酵素などの親和性を向上することができる。
【0040】
微生物由来TGase(MTG)を用いる場合、MTGが認識可能なGln残基は、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン(Z−QG)として存在することが好ましい。Z−QGは、ジゴキシゲニン(DIG)などよりも分子サイズが小さいため好ましい。式(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸において、Bがヒドロキシル基、Xがエテニレン基、Yがメチレン基、Zがベンジルオキシ基であるヌクレオチド誘導体が、UTPにZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体Z−QG−UTPである。Bが水素原子、Xがエテニレン基、Yがメチレン基、Zがベンジルオキシ基であるヌクレオチド誘導体が、dUTPにZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体Z−QG−dUTPである。また、酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸中には、TGaseが認識可能なLys残基または第一級アミンが共存しないようなものを選択することが好ましい。共存する場合には、TGaseにより、自己架橋する可能性があり、目的のマルチラベル化核酸プローブの収率に好ましくない影響を与える場合があるからである。
【0041】
また、微生物由来TGaseの良基質として、LLQG(配列番号:1)、LAQG(配列番号:2)、LGQG(配列番号:3)、PLAQSH(配列番号:4)、FERQHMDS(配列番号:5)、もしくはTEQKLISEEDL(配列番号:6)のアミノ酸配列からなるペプチド、またはGLGQGGG(配列番号:7)、GFGQGGG(配列番号:8)、GVGQGGG(配列番号:9)、もしくはGGLQGGG(配列番号:10)のアミノ酸配列からなるペプチドが知られている。また、guinea pig liver由来のTGaseの良基質として、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルフェニルアラニン(Z−QF)、またはEAQQIVM(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチド、またはGGGQLGG(配列番号:12)、GGGQVGG(配列番号:13)、GGGQRGG(配列番号:14)、GQQQLG(配列番号:15)、PNPQLPF(配列番号:16)もしくはPKPQQFM(配列番号:17)のアミノ酸配列からなるペプチドが知られている。TGaseが認識可能なGln残基は、用いるTGaseの種類に応じ、このようなペプチドとして存在してもよい。
【0042】
また、TGaseが認識可能なGln残基は、FYPLQMR(配列番号:27)、YPLQMR(配列番号:28)、PLQMR(配列番号:29)、FYPLQMG(配列番号:30)、YPLQMG(配列番号:31)、YPLQM(配列番号:32)、PLQMG(配列番号:33)、FYPLQG(配列番号:34)、YPLQG(配列番号:35)またはPLQG(配列番号:36)のアミノ酸配列からなるペプチドとして存在してもよい。これにより、TGaseによる架橋反応の反応性が高くなる。
【0043】
なお、N末端がグリシン(G)である基質ペプチドは、N末端アミノ基がTGaseの基質になりうるため、自己架橋による副産物が生じうる。したがって、N末端がグリシン(G)である基質ペプチドについては、N末端アミノ基の水素を適切な基で置換することによりTGaseの基質とはならないように保護して、所望の連結を行うことができるようにするとよい。なお、本明細書において「N末端保護」というときは、特別な場合を除き、このような意味で用いている。そして、N末端保護の手段により、反応性が異なることが知られている。詳細には、ほ乳類由来TGaseに関して、GQQQLGのN末端アセチル化による保護(すなわち、Ac−GQQQLG)、またN末端アミノ酸をDOPA(L−3,4−dihydroxyphenylalanine)にする(すなわち、DOPA−GQQQLG)と反応性が向上することが知られている。このような保護の例を、本実施形態においても利用することができる。
【0044】
Z−QG−UTPの調製方法を図4に示す。これは、本実施形態に係る酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸の調製方法の一例であって、これに限定されるものではない。
【0045】
まず、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン(Z−QG)にN−ヒドロキシスクシンイミド(N−hydroxysuccinimide:NHS)基などを導入し、活性化しておく(NHS化Z−QG)。そして、アミノアリルUTPなどの末端をアミノ化した置換基を有するUTPと、NHS化Z−QGとを縮合することにより、Z−QG−UTPを得ることができる。
【0046】
また、C末端のカルボキシル基を活性エステル化する上述の方法に加えて、TGaseが認識可能なGln残基を有するペプチドをUTPに導入する方法として、アミノ基と反応性の高い官能基をペプチドに導入する方法がある。例えば、アルデヒド化、アシルアジド化、スルフォニルクロライド化、エポキシ化、イソシアネート化、またはイソチオシアネート化した基質ペプチドを調製できれば、これをアミノ化UTPと反応させることにより、TGaseが認識可能なGln残基を有するUTPを調製することができる。ただし、これらの反応性官能基は、基質ペプチドにおいてTGase認識に影響がない部分に導入する必要がある。したがって、上述のように、Gln残基とは離れたC末端のカルボキシル基を活性化する方法は、この目的において最も優れたものの一つである。
【0047】
また、例えば、PLQMRのアミノ酸配列からなるペプチドをdUTPに導入したAc−PLQMR−dUTPは、例えば、アルデヒド化、アシルアジド化、スルフォニルクロライド化、エポキシ化、イソシアネート化、またはイソチオシアネート化した基質ペプチドにN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基などを導入し、活性化しておき、アミノアリルdUTPなどの末端をアミノ化した置換基を有するdUTPと縮合することによって、得ることができる。
【0048】
Z−QG−UTP等の精製は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ゲル濾過クロマトグラフィ(GPC)などにより行うことができる。また、Z−QG−UTP等の同定は、MALDI TOF−MS、NMR、IRなどにより行うことができる。また、HPLCにより、生成物の確認および収率を求めることができる。
【0049】
<TGase基質マルチラベル化核酸>
本実施形態に係る核酸検出キットを用いて調製することができるTGase基質マルチラベル化核酸は、構成単位として、上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されているTGase基質マルチラベル化核酸であり、核酸部分が、検出対象である標的核酸の標的分子特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するものである。
【0050】
核酸には、DNA、PNAおよびRNAが含まれる。核酸の配列および長さには特に制限はない。長さに関しては、例えば少なくとも20mer程度であればよい。
【0051】
例えば、本実施形態に係る核酸検出キットに含まれるZ−QG−UTPを基質として、RNAポリメラーゼ活性のある酵素を用いて複数のZ−QG−UTPを取り込ませて、TGase認識Glnが複数箇所に導入され、所望の配列を有するTGase基質マルチラベル化核酸プローブZ−QG RNA(図2)を調製することができる。
【0052】
<マルチラベル化核酸プローブ>
本実施形態に係るマルチラベル化核酸プローブは、上記核酸プローブにおける構成単位である酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸のグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンのうち少なくとも2つに、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有し標識部分を含む標識化合物を結合して構成することができる。マルチラベル化核酸プローブは、例えば、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnが複数箇所に導入された核酸プローブZ−QG RNAに、TGase認識Lysを導入した標識酵素などを結合させることによって、RNAと標識酵素などの標識部分が1:nであるマルチラベル化核酸プローブを創製することができる(図2)。
【0053】
RNAと標識酵素などの標識部分との比率nは、2以上であれば特に制限はなく、適宜調整することができるが、nが大きいほど検出感度が高くなり好ましい。ただし、nが大きすぎると、標的核酸とのハイブリダイゼーションの効率が低下する場合がある。
【0054】
また、例えば、以下の方法により、異なる標識酵素、異なる蛍光色素などの異なる標識部分を有する複数のマルチラベル化核酸プローブを調製することができる。
(1)TGaseの由来を変える。
(2)TGaseの基質特異性を変える。
【0055】
(1)の方法では、例えば、用いるTGaseの種類に応じて、異なる基質ペプチドで修飾されたUTPなどを調製すればよい。
【0056】
(2)の方法では、例えば、TGaseに、タンパク質工学的にアミノ酸変異を導入して基質特異性を変えればよい。例えば、MTGを大腸菌で調製し(例えば、Christian K. Marx,Thomas C. Hertel and Markus Pietzsch,Enzyme and Microbial Technology,Volume 40,Issue 6,2 May 2007,p.1543−1550,”Soluble expression of a pro−transglutaminase from Streptomyces mobaraensis in Escherichia coli”参照)、さらに変異体ライブラリーを作って耐熱性の向上したMTGを取得することができる(例えば、Christian K. Marx,Thomas C. Hertel and Markus Pietzsch,Journal of Biotechnology,Volume 136,Issues 3−4,10 September 2008,p.156−162,”Random mutagenesis of a recombinant microbial transglutaminase for the generation of thermostable and heat−sensitive variants”参照)。
【0057】
本明細書において、「TGaseにより結合する」というときは、特別な場合を除き、得られる連結部は、Lys残基とGln残基とが、ε(γ−グルタミル)リシン結合を形成することにより構成されている。
【0058】
本実施形態においては、TGaseが認識可能なLys残基は、第一級アミンであってもよい。本明細書では、Lys残基を例に説明するが、その説明は、特別な場合を除き、第一級アミンにも当てはまる。
【0059】
リシン(Lys)残基または第一級アミンを有し標識部分を含む標識化合物としては、特に制限はない。
【0060】
標識部分としては、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な標識(例えば、磁性ナノ粒子)、熱的に検出可能な標識(例えば、温度応答性高分子)、電気的に検出可能な標識(例えば、フェロセン部位を有する高分子)などが挙げられ、検出感度、取り扱い性などの点から、酵素および蛍光色素のうち少なくとも1つが好ましい。
【0061】
蛍光色素としては、選択された波長の紫外光、可視光などの放射線による照射に応答して蛍光または燐光を発する物質であればよく、特に制限はないが、例えば、蛍光色素としてフルオレセイン、ローダミン、ダンシル、カルボシアニン誘導体など、あるいは蛍光タンパク質として緑色蛍光タンパク質とその変異体などが挙げられる。
【0062】
放射性同位体としては、例えば、重水素(2H)、三重水素(3H)、10B、11B、13C、15N、18Oなどが挙げられる。
【0063】
TGaseに対し、Lys残基(または第一級アミン)供与体となる基質は、Gln残基供与体となる基質に比較して構造的な制約が少ないと考えられる。したがって、修飾しようとする標識酵素が、TGaseが認識可能なLys残基を元来有している場合もあり、TGaseが認識可能なLys残基を含むタグを酵素に付加する場合もある。
【0064】
TGaseが認識可能なLys残基(K)は、MKHKGS(配列番号:18)、MRHKGS(配列番号:24)、MRRKGS(配列番号:25)、MHRKGS(配列番号:26)のアミノ酸配列を有するペプチドとして存在してもよい。このようなTGaseが認識可能なLys残基を含むペプチドによるタグ化は、標識酵素を、タンパク質の所望の部位、例えばC末端またはN末端に連結する目的で用いることができる。TGaseが認識可能なLys残基を含む他のペプチドまたはそのアミノ酸配列の例としては、改変型S−peptide(GSGMKETAAARFERAHMDSGS(配列番号:19))、MGGSTKHKIPGGS(配列番号:20)、N末端グリシン(N−terminal GGG、N−terminal GGGGG(配列番号:21))、N末端MKHKGSと対象タンパク質間のリンカー部位を伸ばしたMKHKGGGSGGGSGS(配列番号:22)などが挙げられる。
【0065】
C末端またはN末端にTGaseが認識可能なLys残基を含むペプチドを付加した標識酵素は、遺伝子工学的な手法を用いて、組換えタンパク質として調製することができる。C末端またはN末端にTGaseの基質ペプチドタグが導入された当該組換えタンパク質の精製は、それぞれN末端またはC末端に付加した精製用ペプチドタグ(例えば、(His)6−tag(ヘキサヒスチジンタグ))を利用し(TGaseの反応性の低下を回避するために、基質ペプチドタグを入れた末端とは異なる末端に精製用ペプチドタグを入れるようにデザインするとよい。)、ゲル濾過クロマトグラフィなどにより行うことができ、またアミノ酸配列の確認は当該タンパク質をコードするプラスミドベクターの遺伝子配列をDNAシーケンサにて確認するか、N末端に導入された基質ペプチドについてはN末端分析により直接同定することができる。タンパク質の精製の確認は、SDS−PAGEなどで行うことができる。
【0066】
標識酵素としては、発色反応、化学発光などを利用して検出を行うことができる性質を有するものであればよく特に制限はない。例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、ならびにP450およびそれらの変異体などが挙げられる。これらのうち、高い触媒活性と安定性の観点から、アルカリホスファターゼあるいはペルオキシダーゼが好ましい。ペプチドタグが容易に導入可能との観点からは、遺伝子工学的に製造可能なタンパク質が好ましい。
【0067】
酵素マルチラベル化核酸プローブと標的核酸の間でより厳密に塩基配列特異的な二本鎖形成を行うためには、比較的高温(例えば、70℃以上)の条件下で行うことがあるため、常温菌由来の酵素を利用すると活性の損失が懸念される。そこで、標的酵素としては、超好熱菌Pyrococcus furiosus由来アルカリホスファターゼ(PfuAP)が好ましい。
【0068】
超好熱菌由来の酵素は、一般的に有機溶媒や熱に対して高い安定性を示すことが知られているため好ましく(例えば、H.Atomi,Current Opinion in Chemical Biology,9,p.166−173(2005)参照)、さらに、大腸菌を宿主とした大量調製が比較的容易に行うことができる点においても好ましい。大腸菌を宿主として耐熱性酵素を調製する場合、細胞破砕液を高温処理(例えば、80℃で30分温置)することで、大腸菌由来の共雑タンパク質のほとんどを沈殿させ、粗精製を容易に行うことができる。
【0069】
超好熱菌は一般の生物がほとんど生育できない極限環境で生育することができる微生物であるため、超好熱菌由来のタンパク質は非常に高い耐熱性を有している。さらに、熱に対する耐性だけでなく、一般的に、変性剤、有機溶媒、pHなどに対する耐性も常温菌由来酵素に比べて極めて高いことから、PfuAPを使用することによって、酵素の失活を伴わない厳密な二本鎖形成を達成することができると考えられる。
【0070】
本実施形態に係る酵素マルチラベル化核酸プローブの好ましい態様の一つは、PfuAPとZ−QG RNAとの複合体またはPfuAPとZ−QG DNAとの複合体である。このような複合体は、安定な酵素であるPfuAPと、安定な分子であるRNAまたはDNAが、アミド結合という安定な共有結合で連結されているため、複合体全体としても安定性であるというメリットがある。
【0071】
また、酵素マルチラベル化核酸プローブにおいて、酵素が有機溶媒や熱に対して安定な酵素であってもよい。このような安定性の高い酵素は、自然界からのスクリーニング(例えば、化学と工業,vol.61(No.6),p.571−575(2008)、内山拓,宮崎健太郎,バイオサイエンスとインダストリー,vol.66(No.5),p.234−239(2008)、道久則之,バイオサイエンスとインダストリー,vol.66(No.12),p.667−670(2008))や、タンパク質工学的手法により安定性を高める技術(例えば、荻野博康,BIO INDUSTRY,vol.25(No.7),p.16−23(2008)、宮崎健太郎,BIO INDUSTRY,vol.25(No.7),p.52−58(2008))により得ることができる。これらの手法により、常温菌由来の酵素であっても、有機溶媒耐性や耐熱性を有する酵素へと変換することができる。
【0072】
蛍光色素部分を導入した、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識化合物は、例えば、カルボキシル基にジアミンを導入する方法で調製することができる(例えば、G.T.Hermanson(1996),Bioconjugate Techniques,Chapter 1,Section 4.3,p.100−104,Academic Press,San Diego.を参照)。
【0073】
トランスグルタミナーゼ(TGase)としては、種々のものを用いることができる。現在、TGaseとして、哺乳類(guinea pig、ヒト)、無脊椎動物(昆虫、カブトガニ、ウニ)、植物、菌類、原生生物(粘菌)由来のものが知られており、またヒトの場合については、8種類のアイソザイムが見つかっている。本実施形態において用いることのできるTGaseの好ましい例は、安定性、ハンドリングの容易さ、バルク生産が可能などの点から微生物由来微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)である。
【0074】
本実施形態においてMTGを用いた場合、予想されているMTGの触媒反応から、Lys残基を有する標識酵素などの標識部分を含む標識化合物とZ−QG RNAとの連結反応は、MTG活性中心であるシステイン(Cys)残基の、Z−QG RNAのGlnへの求核置換反応によるアシル−酵素複合体の形成と、続いて起こる標識化合物のLysによるアシル−酵素複合体への求核置換反応によるMTGの脱離、の2段階で進行すると予想される。
【0075】
本実施形態の核酸検出用キットにおいては、TGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有するZ−QG RNAに対する、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識化合物のモル濃度比は、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上である。なお、本明細書で単に「濃度比」というときは、特別な場合を除き、モル濃度による比を指す。例えば、Z−QG RNAに対するNK14−PfuAPのモル濃度比は、[NK14−PfuAP]/[Z−QG RNA]と表すこともできる。
【0076】
[NK14−PfuAPの調製]
NK14−PfuAPとは、MKHKGGGSGGGSGSの配列を有するアミノ酸14残基からなる付加配列を遺伝子工学的にPfuAPのN末端に、精製用タグをC末端に導入したものである。PfuAPの発現ベクターは香川大学櫻庭春彦教授より委譲頂いた。PCRによりPfuAPをコードする領域を増幅する際、それぞれのタグが導入されるようにタンパク質発現用ベクターpET22に組換え、大腸菌BL21株を形質転換した。アンピシリンを含むLB培地にて前培養、本培養を経て、得られた形質転換体を遠心分離により収菌し、25mM TBSで2回洗浄した。得られた菌体を凍結・融解させた後、超音波処理により細胞を粉砕し、遠心分離により可溶性画分を回収した。超高熱菌由来のPfuAPは高温条件下でも安定であるので、得られた無細胞抽出液を80℃で30分処理し、他のタンパク質を沈殿させることによって粗精製を行った。粗精製後、遠心分離・フィルター濾過によって上澄みを回収し、His−tagカラムによって精製した。精製後、限外濾過による濃縮を行い、PD−10カラムを用いて溶媒を10mM Tris−HCl(pH8.0)へと置換し、実験に供するまで凍結保存した。
【0077】
また、NK14−PfuAPの大腸菌での発現量の向上のため、大腸菌のコドン使用頻度に合わせて塩基配列が改変されたNK14−PfuAPの発現ベクター(アクセッション番号:AB479383、配列番号:23)を用いてもよい。この発現ベクターは、Codon Devices社(http://www.codondevices.com)に受託合成して得た。NK14−PfuAPをコードする遺伝子領域の両端に適切な制限酵素サイトを導入しておき、これらを利用することでタンパク質発現用ベクターpET22に組換え、得られたNK14−PfuAP発現ベクターにより大腸菌BL21株を形質転換した。アンピシリンを含むLB培地にて前培養、本培養を経て、得られた形質転換体を遠心分離により収菌し、25mM TBSで2回洗浄した。得られた菌体を凍結・融解させた後、超音波処理により細胞を粉砕し、遠心分離により可溶性画分を回収した。超高熱菌由来のPfuAPは高温条件下でも安定であるので、得られた無細胞抽出液を80℃で30分処理し、他のタンパク質を沈殿させることによって粗精製を行った。粗精製後、遠心分離・フィルター濾過によって上澄みを回収し、His−tagカラムによって精製した。精製後、限外濾過による濃縮を行い、PD−10カラムを用いて溶媒を10mM Tris−HCl(pH8.0)へと置換し、実験に供するまで凍結保存した。
【0078】
TGaseとしてMTGを用いて連結反応を行う場合には、上述のようにモル濃度比が適切な範囲となるようにすることに加えて、pH5.0〜8.0、温度4〜50℃(例えば、室温(例えば、18℃〜22℃))の条件で行うことが好ましい。このようにすれば、12時間以内、好ましくは6時間以内、より好ましくは3時間以内に、充分に高い反応率が達成可能である。
【0079】
このような高い反応率が達成できる方法により得られたマルチラベル化核酸プローブ溶液には、未反応の核酸プローブ(例えば、遊離のZ−QG RNA)がほとんど存在せず、以下で詳述する、標的核酸の検出にそのまま用いたとしても、マルチラベル化核酸プローブと未反応分子との競合が実質的に生じないか、生じたとしても目的とする検出の結果には実質的な影響を与えないほど少ないと考えられる。したがって、マルチラベル化核酸プローブ溶液を精製することなく、直接検出へと利用できるメリットがある。
【0080】
本実施形態に係る核酸検出用キットを用いた酵素マルチラベル化核酸プローブの形成方法は、従来法に比較して、以下の特徴およびメリットを有する。
・対象となる標識酵素は、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する酵素、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を導入することができるあらゆる酵素を包含する。また、インテインのような大きなタンパク質性タグを必要としない。
・酵素の修飾部位は、C末端に限定されない。TGase活性なLys残基またはGln残基が存在するか、そのようなLys残基またはGln残基を有するタグを導入することができる部位であれば、修飾可能である。
・C末端、N末端に加え、loop領域のようなタンパク質構造中の揺らぎの大きな部位も修飾対象となりうる。
・結合する核酸の塩基配列および長さには、特に制限がない。
【0081】
<標的核酸の検出方法>
本実施形態に係る核酸検出用キットを用いた標的核酸の検出方法は、構成単位として例えば上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されている核酸である核酸プローブにおけるグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンのうち少なくとも2つに、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識酵素などの標識化合物が結合されて構成されているマルチラベル化核酸プローブであって、標識部分が容易に検出可能な性質を有し、かつ核酸部分が標的核酸に特異的に結合可能な塩基配列を有するものであるマルチラベル化核酸プローブを調製し、マルチラベル化核酸プローブと対象物中に存在する標的核酸とを核酸部分により特異的に結合させ、結合しているマルチラベル化核酸プローブを、酵素部分などの標識部分により検出する工程を含む。
【0082】
本実施形態に係る標的核酸の検出方法は、標的核酸の定性、定量、識別、染色、局在化の調査などの目的で用いることができる。
【0083】
この方法においては、上記マルチラベル化核酸プローブが用いられるが、核酸部分は、標的核酸に特異的に結合可能な核酸配列を有するものとする。酵素部分などの標識部分は、容易に検出可能な性質を有するものである。この方法において、標的核酸を含む標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物(ATP)、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルスなどでありうる。検出対象は、(i)DNA転写膜、または(ii)細胞もしくは個体組織切片などである。
【0084】
検出対象が(i)の場合、標的核酸は、PCRにより増幅されたDNAまたはゲノム断片DNAなどであり、(ii)の場合、標的核酸は、細胞または個体組織中に含まれる核酸(mRNAまたはDNA)などである。本方法は、従来法、例えばジゴキシゲニン(DIG)標識化プローブを用いる方法に比較して、種々の点で優れている。例えば、DIG法では、核酸プローブのDIG修飾および標識化された抗DIG抗体が必要であり、それに伴う煩雑な洗浄操作が必要となるが、本実施形態に係る核酸検出用キットを用いて得たマルチラベル化核酸プローブを用いれば、DIG標識化プローブおよび標識化抗DIG抗体が不要になるため、試薬、手間および時間を大幅に削減することが可能となる。また、1つの認識部位(核酸)に対して複数のシグナル増幅部位(酵素など)を配置しているため、検出感度の向上が可能になる。
【0085】
この方法においては、標的核酸に、マルチラベル化核酸プローブを供し、標的核酸とマルチラベル化核酸プローブの標的核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせるが、このハイブリダイズのための条件は、当業者であれば、用いる核酸部分の長さ、塩基配列などに応じて、適宜設計することができる。
【0086】
本実施形態に係る標的核酸の検出方法において、異なる標識酵素、異なる蛍光色素などの異なる標識部分を有する複数のマルチラベル化核酸プローブを準備して、同時に複数の標的核酸を検出してもよい。
【0087】
また、本実施形態において、標的核酸の検出方法は、
(a)基材表面に固定化された核酸、
(b)固定化された固定化核酸の全部または一部に相補的な配列(固定化核酸相補的配列)、および標的核酸に特異的に結合可能な配列(標的核酸特異的配列)を有するアプタマ核酸、
(c)構成単位として上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されている核酸である核酸プローブにおけるグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンのうち少なくとも2つに、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識酵素などの標識化合物が結合されて構成されているマルチラベル化核酸プローブであって、標識部分が容易に検出可能な性質を有し、及び/又は核酸部分がアプタマ核酸の標的核酸特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するものであるマルチラベル化核酸プローブ、
を調製し、
(A)固定化核酸に、アプタマ核酸を供し、固定化核酸とアプタマ核酸の固定化核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせることにより、アプタマ核酸を固定化し、
(B)固定化された固定化アプタマ核酸に、標的核酸を含む標的分子を含む可能性のある試料を供し、標的分子が存在する場合には標的核酸とアプタマ核酸の標的核酸分子特異的配列を有する部分とを結合させ、かつ上記マルチラベル化核酸プローブを供し、標的分子が存在しない場合にはマルチラベル化核酸プローブの核酸部分とアプタマ核酸とをハイブリダイズさせることにより、タンパク質を固定化し、
(C)固定化された酵素部分の有無またはその量を酵素の性質に基づいて検出することにより、試料中の標的分子を検出する工程を含む。
【0088】
この方法における基材表面への核酸の固定化のためには、従来技術、例えばDNAマイクロアレイなどを調製する際に用いられる技術を適用することができる。「基材」は、ガラス、シリコンなどのプラスチック製の、チップ、ビーズ、ウェル、プレートなどの形態とすることができ、核酸は、従来技術を用いて、基材表面に非共有結合(静電結合)的に、または共有結合で固定することができる。あらかじめ調製した核酸を基材に固定化してもよく、基材上で直接核酸を合成してもよい。簡便には、アビジンなどで被覆された市販のプレートを用い、ビオチン化した所望のDNAを固定することができる。
【0089】
この方法ではさらに、固定化核酸の全部または一部に相補的な配列(固定化核酸相補的配列)、および標的分子を含まれる標的核酸に特異性的に結合可能な配列(標的核酸特異的配列)を有する核酸(アプタマ核酸)が用いられる。標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルスなどでありうる。標的核酸特異的配列を有する部分は、従来技術、例えばSELEX(試験管内人工進化法)工程を用いることにより産生することができ、また標的分子に対して非常に高い標的親和性及び特異性を有するものとすることができる。標的核酸特異的配列を有する部分は、修飾ヌクレオチドで構成されていてもよい。
【0090】
この方法においては、上記マルチラベル化核酸プローブが用いられるが、核酸部分は、アプタマ核酸の標的核酸特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するものとする。酵素部分などの標識部分は、容易に検出可能な性質を有するものである。この方法において、標的核酸を含む標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物(ATP)、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルスなどでありうる。検出対象は、(i)DNA転写膜、または(ii)細胞もしくは個体組織切片などである。
【0091】
この方法においては、固定化核酸に、アプタマ核酸を供し、固定化核酸とアプタマ核酸の固定化核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせることにより、アプタマ核酸を固定化するが、このハイブリダイズのための条件は、当業者であれば、用いる核酸部分の長さ、塩基配列などに応じて、適宜設計することができる。
【0092】
また、この方法においては、次いで固定化アプタマ核酸に、標的分子を含む可能性のある試料を供し、標的分子が存在する場合には標的分子とアプタマ核酸の標的核酸特異的配列を有する部分とを結合させ、さらにマルチラベル化核酸プローブを供し、標的分子が存在しない場合にはマルチラベル化核酸プローブの核酸部分とアプタマ核酸とをハイブリダイズさせる。試料は、細胞もしくは組織抽出液、体液などでありうる。
【0093】
さらにこの方法においては、固定化された酵素部分の有無またはその量を酵素の性質に基づいて検出することにより、試料中の標的分子を検出することができる。
【0094】
アプタマ核酸においては、固定化核酸相補的配列を有する部分と、標的核酸特異的配列を有する部分とは、重複してもよく、連続してもよく、また適当なスペーサを介して両者が存在するように設計することができる。標的核酸特異的配列を有する部分(アプタマ領域)が分子認識のためにある立体構造をとることを考慮すると、該部分は、固定化核酸相補的配列を有する部分とは少なくとも重複しないようにするのがよい。
【0095】
アプタマ核酸は、固定化核酸相補的配列および標的核酸特異的配列以外に、所望の場合にはマルチラベル化核酸プローブと適切にハイブリダイズするための配列をさらに含んでいてもよい。マルチラベル化核酸プローブの核酸部分は、アプタマ核酸の標的分子特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するが、この特異的配列の全部または一部に相補的な配列からなる領域が長い(標的核酸特異的配列と重複が多い)と、かえってアプタマ核酸とはハイブリダイズできない場合が生じうる。また短い(重複が少ない)と、標的分子が存在し、アプタマ核酸と結合している場合にも、マルチラベル化核酸プローブとアプタマ核酸とがハイブリダイズしてしまう場合が生じうる。当業者であれば、このようなことを考慮して、固定化核酸、アプタマ核酸、マルチラベル化核酸プローブの核酸部分を、適宜設計することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る標的核酸の検出方法は、核酸部分が標的核酸に特異的に結合可能な塩基配列を有するものである、構成単位として、例えば上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されている核酸である核酸プローブと、対象物中に存在する標的核酸とを核酸部分により特異的に結合させた後、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、核酸プローブにおけるグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンと、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有し標識部分を含む標識化合物のリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基とを反応させて、容易に検出可能な性質を有する複数の標識部分を導入し、結合している核酸プローブを、標識部分により検出する工程を含む(図3参照)。
【0097】
この方法においては、上記核酸プローブが用いられるが、核酸部分は、標的核酸に特異的に結合可能な核酸配列を有するものとする。また、標識部分は、容易に検出可能な性質を有するものである。
【0098】
本方法は、従来法、例えばジゴキシゲニン(DIG)標識化プローブを用いる方法に比較して、種々の点で優れている。例えば、DIG法では、核酸プローブのDIG修飾および標識化された抗DIG抗体が必要であり、それに伴う煩雑な洗浄操作が必要となるが、本実施形態に係る核酸プローブを用いれば、DIG標識化プローブおよび標識化抗DIG抗体が不要になるため、試薬、手間および時間を大幅に削減することが可能となる。また、1つの認識部位(核酸)に対して複数のシグナル増幅部位(標識部分)を配置することにより、検出感度の向上が可能になる。
【0099】
例えば、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnが複数箇所に導入された核酸プローブZ−QG RNAに、TGase認識Lysを導入した酵素、蛍光色素などの標識化合物を結合させる。
【0100】
本実施形態に係る核酸検出用キットの構成の一例は、例えば、下記(1)〜(3)の各セットを含むものである。
(1)dATPと溶媒とを含むdATP含有溶液、dCTPと溶媒とを含むdCTP含有溶液、dGTPと溶媒とを含むdGTP含有溶液、dTTPと溶媒とを含むdTTP含有溶液、Z−QG−dUTPと溶媒とを含むZ−QG−dUTP含有溶液のZ−QG DNAラベリングセット(Z−QG デオキシリボヌクレオチドセット)。各溶液の濃度は、例えば、1mM〜100mMである。dTTPとZ−QG−dUTPとは適切な比率(例えば、モル比で6:4)で混合されていてもよい。
(2)ATPと溶媒とを含むATP含有溶液、CTPと溶媒とを含むCTP含有溶液、GTPと溶媒とを含むGTP含有溶液、UTPと溶媒とを含むUTP含有溶液、Z−QG−UTPと溶媒とを含むZ−QG−UTP含有溶液のZ−QG RNAラベリングセット(Z−QG リボヌクレオチドセット)。各溶液の濃度は、例えば、1mM〜100mMである。UTPとZ−QG−UTPとは適切な比率(例えば、モル比で6:4)で混合されていてもよい。
(3)標識部分としてNK14−PfuAP等の超好熱菌由来の標識酵素等を含む標識化合物と溶媒とを含む標識化合物含有溶液、MTGと溶媒とを含むMTG含有溶液、反応バッファ、コントロール用DNA(Z−QG標識済DNA)、コントロール用RNA(Z−QG標識済RNA)の標識セット。
【0101】
本実施形態に係る核酸検出用キットの構成の他の例は、例えば、下記(1)〜(3)の各セットを含むものである。
(1)dATPとdCTPとdGTPとdTTPとZ−QG−dUTPと溶媒とを含むZ−QG−dUTP含有溶液のZ−QG DNAラベリング混合物セット(Z−QG デオキシリボヌクレオチドミックス)。各成分の濃度は、例えば、1mM〜100mMであり、PCRに用いやすい2mMまたは汎用性が高い100mMである。
(2)ATPとCTPとGTPとUTPとZ−QG−UTPと溶媒とを含むZ−QG−UTP含有溶液のZ−QG RNAラベリング混合物セット(Z−QG リボヌクレオチドミックス)。各溶液の濃度は、例えば、1mM〜100mMであり、RNA合成に用いやすい20mMである。
(3)標識部分としてNK14−PfuAP等の超好熱菌由来の標識酵素等を含む標識化合物とMTGと反応バッファと溶媒とを含む標識化合物/MTG含有溶液、コントロール用DNA(Z−QG標識済DNA)、コントロール用RNA(Z−QG標識済RNA)の標識セット。NK14−PfuAPおよびMTGは、反応に適した終濃度の例えば2倍の濃度とし、Z−QG核酸と例えばモル比で1:1で混合することにより反応させる。
【0102】
溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらのうち、安定性等の点から水が好ましい。また、水としては、蒸留水、イオン交換水等の純水、超純水等が用いられる。
【0103】
本実施形態に係る核酸検出用キットにおける各溶液のpHは、例えば、pH4〜10の範囲であり、pH5〜8の範囲が好ましい。pHがこの範囲外の場合は、MTGによるラベル化効率が低下する場合がある。
【0104】
pH調整剤としては、アルカリ性から酸性の溶液または緩衝溶液等が挙げられる。pH調整用の溶液または緩衝溶液としては、例えば、塩酸、炭酸、酢酸、リン酸、ホウ酸水溶液、酢酸ナトリウム緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液、コハク酸緩衝液、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸緩衝液、モノフタル酸カリウム緩衝液、2−(N−モルノホリノ)エタンスルホン酸緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、炭酸水素ナトリウム緩衝液、イミダゾール緩衝液、クエン酸ナトリウム緩衝液、マロン酸緩衝液、乳酸緩衝液、N−メチルジエタノールアミン、ヒスチジン緩衝液、ピリジン酢酸緩衝液、酢酸トリエタノールアミン緩衝液、3−モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液(MOPSバッファ:3−Morpholinopropanesulfonic acid buffer)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。これらのうち、トリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液が好ましい。
【0105】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、検出感度を向上させるために、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、コバルトイオン(Co2+)、亜鉛イオン(Zn2+)等の2価の陽イオンを含んでもよく、2価の陽イオンと溶媒とを含む陽イオン含有溶液を含んでもよい。これらのうち、系内で凝集や沈殿が生じにくい等の点からマグネシウムイオン(Mg2+)が好ましい。2価の陽イオンは、TGaseによるラベル化反応のときに添加してもよいし、酵素の発色反応等のときに添加してもよい。
【0106】
本実施形態に係る核酸検出用キットにおいて、検出感度を向上させるために、核酸プローブと標識化合物との比率が1:2(モル比)以上となるようにすることが好ましい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットにおいて、検出感度を向上させるために、ラベル化反応のときの標識化合物と2価の陽イオンとの比率(モル比)は、1:1〜1:300の範囲であることが好ましい。また、酵素の発色反応のときの発色液中のマグネシウムイオン等の2価の陽イオンの濃度が、50mM〜100mMの範囲になるようにすることが好ましい。
【0107】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、その他に例えば、反応で残存したZ−QG−dUTP、Z−QG−UTP等を除去するカラム、試薬等を含むZ−QG精製セット;反応で残存した標識化合物等を除去してマルチラベル化核酸プローブを精製するためのカラム、試薬等を含む標識化合物精製セット;標識核酸に適したブロッキング剤を含む標識核酸用ブロッキング剤セット;標識核酸に適したハイブリダイゼーション溶液を含む標識核酸用ハイブリダイゼーション溶液セット等を含んでもよい。
【0108】
マルチラベル化核酸プローブを精製するカラムとしては、ゲルろ過クロマトグラフィ方式のものが好ましい。これによりバックグラウンドが低減される。核酸の精製方法として一般的な手法としては、例えば、フェノール抽出によるタンパク質の除去、エタノール沈殿やイソプロパノール沈殿等のアルコール沈殿、電気泳動後にゲルを切り出してシリカカラム等を用いて精製、限外ろ過膜による精製等が挙げられる。しかし、フェノール抽出やアルコール沈殿はマルチラベル化核酸プローブがタンパク質との複合体を形成しているために困難であり、MTG反応液等の中の核酸濃度がng/mLオーダーと低い場合にはアルコールを用いても沈殿しにくく、シリカ樹脂や限外ろ過膜を用いてもマルチラベル化核酸プローブの回収が困難である。
【0109】
ゲルろ過方式の精製において、直鎖状核酸がゲルを素通りし、球状タンパク質がゲル中へ保持されるような条件がよい。すなわち、ゲルろ過方式のカラムとしては、ゲルの孔サイズが直鎖状核酸より小さく、球状タンパク質より大きいこと(例えば、10−500.2/nm程度)が好ましい。また、標識化合物除去のために十分なカラム容量であること(例えば、0.200−1mL)が好ましい。カラム容量が小さすぎると、保持できなかった標識化合物が溶出してくる場合があり、カラム容量が大きいときには反応液が希釈されてしまう場合がある。
【0110】
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれるZ−QG DNAラベリングセットは、例えば、Taqポリメラーゼ等を用いたPCR時に、dNTPの代わりに用いてPCR産物にZ−QG−dNTPを取込ませることにより、Z−QG核酸プローブを調製するのに用いられる。また、例えば、Terminal transferaseにより核酸プローブの3’端を伸長させさる際に、dNTPの代わりに用いてZ−QG−dNTPを取込ませることにより、Z−QG核酸プローブを調製するのに用いられる。その他、例えば、核酸修飾酵素などにより通常のdNTPの代わりに用いてZ−QG−dNTPを取込ませることにより、Z−QG核酸を調製するのに用いられる。
【0111】
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれるZ−QG RNAラベリングセットは、例えば、DNAを鋳型として、RNAポリメラーゼによりインビトロ転写反応を行う際に、NTPの代わりに用いて、Z−QG−NTPが取込まれたRNAを合成するのに用いられる。
【0112】
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれる標識セットは、例えば、Z−QG DNAラベリングセット、Z−QG RNAラベリングセットを用いて調製したZ−QG標識核酸に、標識化合物を結合させる際に用いられる。また、Z−QG標識核酸に標識化合物を結合させることにより、任意の配列を持った核酸を検出するマルチラベル化核酸プローブとして用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
(実施例1)
<Z−QG−UTPの合成・精製>
Z−QG−UTPの合成スキームは、図4に示す通りである。まず100mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、100mM N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、50mM Z−QGを、室温(調製した日は27.0℃)でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)4mL中で20時間反応させることにより、NHS化Z−QG(50mM)を調製した(この段階で500μLずつに分注し、−80℃で保存)。その後、25mMのNHS化Z−QGと5mMの5−(3−aminoallyl)−UTP(以下、aminoallyl−UTPと略記、SIGMA社製)とを、100mM ホウ酸緩衝液(pH8.8)とDMFの混合溶媒(v/v=1/1)0.32mL中において25℃で12時間反応させた。反応終了後、サンプルを超純水(Milli−Q)で10倍希釈し、HPLC(日本分光製)(高速液体クロマトグラフ・ポンプ:TRI ROTAR−V型、バリアブル・ループ・インジェクタ:VL−613型、紫外可視分光検出器:UVIDEC−100−IV型)によって精製を行った。HPLCの測定条件は表1の通りとした。生成物の同定は、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置であるMALDI TOF−MS(島津製作所製 AXIMA(登録商標)−CFR Plus)によって行った。なお、サンプル調製手順は、まず、試料1μLをMALDI用試料プレートの上に滴下し、次にその上から、マトリックス溶液;2,5−ジヒドロキ安息香酸(DHB)の10mg/ml溶液(超純水)を滴下し、その後、風乾して、得られた試料プレートをMALDI TOF−MS装置のイオン源内に導入して計測した。
【0115】
Z−QG−UTPを合成した後、表1に示す条件で逆相HPLCを行った際の結果を図5に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
そこで、保持時間18.8分のピークを回収してMALDI TOF−MS分析を行った(図6参照)。その結果、856.89のピークが確認され、理論分子量の857.13と良く一致した結果が得られたため、Z−QG−UTPの合成が示された。
【0118】
<Z−QG−dUTPの合成・精製>
まず、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)4mL中にて、100mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、100mM N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、50mM Z−QGを、室温(調製した日は18〜22℃程度)で20時間反応させることによって、NHS化Z−QG(50mM)を調製した。一方、50mM 5−(3−aminoallyl)−dUTP(以下、aminoallyl−dUTPと略記、SIGMA社製)を含む10mM Tris−HCl(pH7.5)溶液(Ambion製)16μLと200mM ホウ酸緩衝液(pH8.8)40μL、滅菌水16μLとを混合し、10mM aminoallyl−dUTP溶液を80μL調製した。この溶液に対して、上記で調製したNHS化Z−QG溶液を80μL添加し、25℃で一晩反応させた。反応終了後、サンプルを超純水で10倍希釈し、HPLC(日本分光製、高速液体クロマトグラフ・ポンプ:TRI ROTAR−V型、バリアブル・ループ・インジェクタ:VL−613型、紫外可視分光検出器:UVIDEC−100−IV型)によって、表2に示す条件で精製を行った。生成物の同定はMALDI TOF−MS(BRUKER DALTONICS製、autoflex III)によって行った。結果を図7に示す。この際、3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)をマトリックスとして使用した。
【0119】
【表2】
【0120】
Z−QG−dUTPを合成した後、逆相HPLCを行った際の結果を図8に示す。aminoallyl−dUTPの場合(図9参照)と比較して、疎水側に新たなピークが出現しており、このピークがZ−QG−dUTPであると推測された。そこで、保持時間19.1分のピークを回収してMALDI TOF−MS分析を行った。その結果、図7に示すように、841.46のピークが確認され、理論分子量の842.13と良く一致した結果が得られたため、Z−QG−dUTPの合成が示された。
【0121】
<NK14−PfuAPの調製>
遺伝子工学的手法により、N末端にMTGが認識するKを含んだペプチドタグ(MKHK(GGGS)2GS)を導入したNK14−PfuAPを調製した。
【0122】
<各溶液の調製>
表3(下記(1)),表4(下記(2)),表5(下記(3))に示す組成で、以下の溶液を調製した。
(1)dATPと溶媒とを含むdATP含有溶液
dCTPと溶媒とを含むdCTP含有溶液
dGTPと溶媒とを含むdGTP含有溶液
dTTPと溶媒とを含むdTTP含有溶液
Z−QG−dUTPと溶媒とを含むZ−QG−dUTP含有溶液
(2)ATPと溶媒とを含むATP含有溶液
CTPと溶媒とを含むCTP含有溶液
GTPと溶媒とを含むGTP含有溶液
UTPと溶媒とを含むUTP含有溶液
Z−QG−UTPと溶媒とを含むZ−QG−UTP含有溶液
(3)NK14−PfuAPと溶媒とを含むNK14−PfuAP含有溶液
MTGと溶媒とを含むMTG含有溶液
反応バッファ
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
<マルチラベル化核酸プローブの調製>
まず、マウス由来のSonic hedgehog(Shh)をコードする遺伝子中の約300bpをPCR増幅するプライマを設計した。次に、PCR反応液の全dTTPのうちの40%をZ−QG−dUTPに置き換えて反応液を調製してPCRを行うことによって、Z−QG 40%DNAを得た。Z−QG 40%DNAに95℃、5分間の熱変性を施し、Z−QG 40%DNA 25ng/μL、NK14−PfuAP 0.2mg/mL、MTG 5.0Unit/mLの条件で、37℃で3時間反応を行い、Z−QG 40%マルチラベル化核酸プローブを調製した。
【0127】
<メンブランの作製>
Nybond N+(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のプロトコールに準じてメンブランを作製した。アプライ前にDNAを95℃、5分で熱変性した。メンブランを80℃で2時間ベーキングした。
【0128】
<プレハイブリダイゼーション>
AlkPhos Direct(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のキットに付随するハイブリダイゼーションバッファを用いて、プレハイブリダイゼーション(55℃、1時間)を行った。
【0129】
<ハイブリダイゼーション>
AlkPhos Direct(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のキットに付随するハイブリダイゼーションバッファを用いて、ハイブリダイゼーション(55℃、O/N、プローブ濃度10ng/mL)を行った。Wash BufferIでメンブランを洗浄(55℃、10分間×2回)した。Wash BufferIIでメンブランを洗浄(室温、5分間×2回)した。
【0130】
<検出>
発光基質をメンブラン上に1mL滴下し、ハイブリバックにくるんでインキュベート(室温、5分間)した。化学発光装置(化学発光装置(BIO RAD社製、ChemiDoc XRS+))にセットし、1時間露光した。発光基質として、Immun−Star(商標) Chemiluminescent Protein Detection Kit(BIO RAD社製)添付の発光基質を用いた。結果を図10(a)に示す。
【0131】
(比較例1)
AlkPhos Direct(商標、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のキットに付随する試薬にて調製したプローブを用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。結果を図10(b)に示す。
【0132】
(実施例2)
NK14−PfuAPの濃度を変え、検出を行った。結果を図11に示す。
【0133】
Z−QG 40%DNA濃度 10ng/uL、PfuAP濃度 4mg/mL以上(モル比でZ−QG:PfuAP=1:30以上)でラベル化したプローブにて、発色法にて0.1pgの検出感度を達成した。
【0134】
(実施例3)
実施例1と同様にしてZ−QG 40%マルチラベル化核酸プローブを調製し、反応液を以下の手順で精製し、未精製のもの、1回精製したものについて、実施例1と同様にしてハイブリダイゼーション、検出を行った。結果を図12に示す。
【0135】
<精製の手順>
MicroSpin S−400 HR Columns(GEヘルスケアバイオサイエンス社製、27−5140−01)の下を折り、フタを開けて、カラムに添付されている2mLチューブにセットして735×gで1分間遠心処理した。カラムを新しい1.5mLチューブにセットし、MTG反応液100μLをゲル上部に置いて735×gで4分間遠心処理した。溶出したマルチラベル化核酸プローブ溶液を4℃で保存した。核酸の溶出量はおよそ50%、未反応のタンパク質の溶出量はおよそ10%未満であった。
【0136】
<核酸濃度の定量>
1×TEバッファ(pH8.0)にて、SYBR Green II(タカラバイオ社製、F0523)を10,000倍に希釈した。PCRまたはRun−off転写反応により得られた核酸を精製し、0,1,3,10ng/μLの水溶液を10μLずつ調製した。この核酸を熱変性後、SYBR Green II溶液990μLに添加して蛍光強度を測定し(励起波長/蛍光波長:480nm/520nm)、検量線を作成した。SYBR Green II溶液990μLにプローブ精製溶液を10μL添加し、蛍光を測定して検量線から濃度を算出した。タンパク質濃度はBCA法により定量した。
【0137】
図12からわかるように、マルチラベル化核酸プローブをゲルろ過方式のカラムで精製することにより、バックグラウンドが低減された。
【0138】
(実施例4)
<Ac−PLQMR−dUTPの合成>
まず、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)150μL中にて、50mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、50mM N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、25mM Ac−PLQMRを、4℃で16時間反応させることによって、NHS化PLQMR(25mM)を調製した。一方、20mM 5−(3−aminoallyl)−dUTP(aminoallyl−dUTP、SIGMA社製)を含む100mM ホウ酸緩衝液(pH8.8)の溶液100μLに対して、上記で調製したNHS化PLQMR溶液を100μL添加し、25℃で12時間反応させた。反応終了後、サンプルを超純水で10倍希釈し、HPLC(日本分光製、高速液体クロマトグラフ・ポンプ:TRI ROTAR−V型、バリアブル・ループ・インジェクタ:VL−613型、紫外可視分光検出器:UVIDEC−100−IV型)によって、表6に示す条件で精製を行った。生成物の同定はMALDI TOF−MS(BRUKER DALTONICS製、autoflex III)によって行った。この際、3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)をマトリックスとして使用した。
【0139】
【表6】
【0140】
Ac−PLQMR−dUTPを合成した後、逆相HPLCを行った際の結果を図13に示す。aminoallyl−dUTPの場合(図14参照)と比較して、疎水側に新たなピークが出現しており、このピークがAc−PLQMR−dUTPであると推測された。そこで、保持時間10.9分のピークを回収してMALDI TOF−MS分析を行った。その結果、図15に示すように、1193.26のピークが確認され、理論分子量と良く一致した結果が得られたため、Ac−PLQMR−dUTPの合成が示された。
【0141】
<各溶液の調製>
表7に示す組成で、以下の溶液を調製した。
dATPと溶媒とを含むdATP含有溶液
dCTPと溶媒とを含むdCTP含有溶液
dGTPと溶媒とを含むdGTP含有溶液
dTTPと溶媒とを含むdTTP含有溶液
Ac−PLQMR−dUTPと溶媒とを含むAc−PLQMR−dUTP含有溶液
【0142】
【表7】
【0143】
<マルチラベル化核酸プローブの調製>
まず、マウス由来のSonic hedgehog(Shh)をコードする遺伝子中の約300bpをPCR増幅するプライマを設計した。次に、PCR反応液の全dTTPのうちの80%をAc−PLQMR−dUTPに置き換えて反応液を調製してPCR(表8参照、94℃×2min+(94℃×20sec,54℃×20sec,72℃×30sec)×40サイクル)を行うことによって、Ac−PLQMR 80%DNAを得た。結果を図16に示す。
【0144】
【表8】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸検出用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
何らかの標識が施されたRNAプローブなどの核酸プローブを用い、細胞レベルにおけるDNAやRNAの発現パターンを検出、可視化することによって、生命現象に関する数多くの疑問点を解明することが可能となる。細胞レベルでの遺伝子発現パターンを可視化するこのような手法をin situ ハイブリダイゼーション(in situ hybridization:ISH)と言うが、この際に使用されるプローブの標識法は大別して、「放射性同位体標識法」、「蛍光抗体標識法」、「酵素抗体標識法」に分類される。歴史的には、放射性同位体を取り込ませた核酸プローブが先に確立したが、近年その取り扱いが制限されてきたこともあって、放射性同位体元素を用いない蛍光抗体標識法や酵素抗体標識法が注目されている。
【0003】
これらの手法は、核酸プローブ作製時に抗原やビオチンでラベル化しておき、それらを標的核酸にハイブリダイズした後、酵素もしくは蛍光物質によって標識された抗体やアビジンを用いて免疫染色法により検出するといった手法である。感度という観点から見ると、酵素反応によるシグナル増幅効果が得られる酵素抗体標識法が優れており、現在最も広く使用されている。
【0004】
酵素抗体標識法を利用した核酸プローブとしては、例えば、ジゴキシゲニン(DIG)などの抗体認識部位で修飾したヌクレオチド誘導体を複数個ランダムに導入した抗原マルチラベル化核酸プローブが知られている。この抗原マルチラベル化核酸プローブと標的核酸とのin situ ハイブリダイゼーションの後、抗体認識部位を認識する酵素標識化抗体との抗原−抗体反応を行い、酵素アルカリホスファターゼとのハイブリッドによる発色反応を利用して検出を行う。しかしながら、酵素標識された抗体が非常に高価であること、抗原−抗体反応に伴う操作の煩雑化や非特異吸着などによるバックグラウンドの増加など、幾つかの問題を有している。
【0005】
一方、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基または第一級アミンを有するペプチドまたはタンパク質へ、アニオン性であり、かつTGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基を有する外来分子を部位特異的に連結する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−54658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、簡便かつ高感度に標的核酸を検出することができる核酸検出用キットである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、下記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含む核酸検出用キットである。
【化1】
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化2】
(式(2)中、A1およびA2のうち少なくとも1つは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基で残りは水素原子を表し、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化3】
(式(3)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化4】
(式(4)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【0009】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記式(1)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が、下記式(5)で示される化合物であることが好ましい。
【化5】
(式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(C2H4O)n−または−(C3H6O)n−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基であり、Bは水素原子またはヒドロキシル基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。)
【0010】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記Xはエテニレン基、Yはメチレン基であり、Zはベンジルオキシ基であることが好ましい。
【0011】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記グルタミン(Gln)残基は、FYPLQMR、YPLQMR、PLQMR、FYPLQMG、YPLQMG、YPLQM、PLQMG、FYPLQG、YPLQGまたはPLQGのアミノ酸配列中に存在することが好ましい。
【0012】
また、前記核酸検出用キットにおいて、トランスグルタミナーゼ(TGase)を含むことが好ましい。
【0013】
また、前記核酸検出用キットにおいて、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物を含むことが好ましい。
【0014】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記リシン(Lys)残基が、MTGに認識されるアミノ酸配列中に存在することが好ましい。
【0015】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記標識部分が、酵素および蛍光色素のうち少なくとも1つであることが好ましい。
【0016】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記酵素が、超好熱菌由来の酵素であることが好ましい。
【0017】
また、前記核酸検出用キットにおいて、前記Bが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つ、前記Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、簡便かつ高感度に標的核酸を検出することができる核酸検出用キットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸の構造の一例(Z−QG−UTP)を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける酵素マルチラベル化核酸プローブの調製方法を示す概略図である。
【図3】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける標的核酸の検出方法の一例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施形態に係る核酸検出用キットにおける酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸の一例であるZ−QG−UTPの合成方法の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施例1において、Z−QG−UTPを合成した後、逆相HPLC(表1のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図6】本発明の実施例1において合成したZ−QG−UTPのMALDI TOF−MS分析の結果を示す図である。
【図7】本発明の実施例1において合成したZ−QG−dUTPのMALDI TOF−MS分析の結果を示す図である。
【図8】本発明の実施例1において、Z−QG−dUTPを合成した後、逆相HPLC(表2のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例1において、aminoallyl−dUTPの逆相HPLC(表2のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図10】(a)本発明の実施例1における核酸検出用キットを用いたドットブロットの結果を示す図である。(b)本発明の比較例1におけるドットブロットの結果を示す図である。
【図11】本発明の実施例2における核酸検出用キットを用いたドットブロットの結果を示す図である。
【図12】本発明の実施例3における核酸検出用キットによるマルチラベル化核酸プローブの精製品および未精製品を用いたドットブロットの結果を示す図である。
【図13】本発明の実施例4において、Ac−PLQMR−dUTPを合成した後、逆相HPLC(表6のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図14】本発明の実施例4において、aminoallyl−dUTPの逆相HPLC(表6のHPLC測定条件)を行った際の結果を示す図である。
【図15】本発明の実施例4において合成したAc−PLQMR−dUTPのMALDI TOF−MS分析の結果を示す図である。
【図16】本発明の実施例4において合成したAc−PLQMR−dUTPを用いてDNAを調製した際のアガロースゲル電気泳動装置にて電気泳動を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0021】
本発明の実施の形態に係る核酸検出用キットは、下記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含む。式(1),(2),(3)または(4)において、A、A1またはA2は、リシン(Lys)残基またはグルタミン(Gln)残基以外のアミノ酸残基を含んでいてもよい。
【化6】
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化7】
(式(2)中、A1およびA2のうち少なくとも1つは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基で残りは水素原子を表し、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化8】
(式(3)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化9】
(式(4)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【0022】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、トランスグルタミナーゼ(TGase)を含んでもよい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットは、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物を含んでもよい。さらに、本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸においてBが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つを含んでもよく、Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0023】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸と、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含む酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸含有溶液を含むものであってもよい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットは、トランスグルタミナーゼ(TGase)と、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含むトランスグルタミナーゼ含有溶液を含んでもよい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットは、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物と、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含む標識化合物含有溶液を含んでもよい。さらに、本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸においてBが水素原子の場合には、dATPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdATP含有溶液、dCTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdCTP含有溶液、dGTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdGTP含有溶液、dTTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むdTTP含有溶液のうち少なくとも1つを含んでもよく、Bがヒドロキシル基の場合には、ATPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むATP含有溶液、CTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むCTP含有溶液、GTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むGTP含有溶液、UTPと溶媒と必要に応じてpH調整剤とを含むUTP含有溶液のうち少なくとも1つを含んでもよい。
【0024】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、上記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸と、Bが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つと、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含むヌクレオシド三リン酸含有溶液を含んでもよく、Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つと、溶媒と、必要に応じてpH調整剤とを含むヌクレオシド三リン酸含有溶液を含むものであってもよい。
【0025】
本発明者らは、核酸プローブに複数の酵素を共有結合的に導入する手法として、微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)などのトランスグルタミナーゼ(TGase)が有する部位特異的なタンパク質修飾能に着目した。TGaseはアシル転移反応を触媒する酵素であり、例えば、タンパク質中の特定のGln残基(Q)のγ−カルボキシアミド基と、Lys残基(K)のε−アミノ基や各種一級アミンとの共有結合を触媒する酵素である。このTGaseを用いて、複数の標識酵素などの標識部分を導入したマルチラベル化核酸プローブの創製を行うことができる。
【0026】
具体的には、例えば、図1に示す、ウリジン三リン酸(uridine triphosphate:UTP)に、TGaseが認識するGln(MTG認識Gln)を有するZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体であるZ−QG−UTPを、図2に示すように、核酸プローブとなるRNAを調製する際に取り込ませることによって、TGase認識Glnが複数箇所導入されたZ−QG RNAを調製する。その後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識LysなどのTGase認識Lysを導入した標識酵素などの標識化合物を結合させることによって、RNAと標識酵素などの標識部分が1:n(nは2以上の整数)であるマルチラベル化核酸プローブを創製することができる。
【0027】
このマルチラベル化核酸プローブは、ターゲットとなる標的核酸にハイブリダイズした後、直ちに検出反応を行うことができるため、既存の手法と比較して、操作の大幅な簡素化、バックグラウンドの低下、バルク酵素である微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)を用いることによるコストの抑制などが見込まれる。
【0028】
なお、図2において、核酸プローブにおけるGln残基と、標識化合物におけるLys残基とは逆であってもよい。すなわち、TGaseが認識するLys(MTG認識Lys)を有するヌクレオシド三リン酸誘導体を、核酸プローブとなるRNAを調製する際に取り込ませることによって、TGase認識Lysが複数箇所導入された核酸プローブを調製する。その後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnを導入した標識化合物を結合させることによって、RNAと標識部分が1:n(nは2以上の整数)であるマルチラベル化核酸プローブを創製してもよい。
【0029】
また、図3に示すように、Z−QG RNAなどの核酸プローブをターゲットとなる標的核酸にハイブリダイズした後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識LysなどのTGase認識Lysを導入した標識酵素などの標識化合物を結合させてもよい。RNAと標識酵素などの標識部分が1:n(nは2以上の整数)となり、このように導入した標識部分の検出反応を行うことにより、既存の手法と比較して、操作の大幅な簡素化、バックグラウンドの低下、バルク酵素である微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)を用いることによるコストの抑制などが見込まれる。
【0030】
なお、図3において、核酸プローブにおけるGln残基と、標識化合物におけるLys残基とは逆であってもよい。すなわち、TGaseが認識するLys(MTG認識Lys)を有するヌクレオシド三リン酸誘導体を合成し、核酸プローブとなるRNAを調製する際に取り込ませることによって、TGase認識Lysが複数箇所導入された核酸プローブを調製する。その後、核酸プローブをターゲットとなる標的核酸にハイブリダイズした後、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnを導入した標識化合物を結合させてもよい。
【0031】
本実施形態に係る核酸検出用キットを用いて、QG基を導入した核酸とN末端にK残基等を有する酵素を、MTGを用いて結合させることにより、容易に酵素標識核酸を得ることができる。また、DNA、RNAの両方に標識することができる。酵素標識した核酸プローブは、フィルターハイブリダイゼーションやISHなどの核酸検出アッセイに用いることができる。
【0032】
<酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸>
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれる酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、TGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する上記式(1),(2),(3)または(4)で示されるヌクレオシド三リン酸である。上記式(1),(2),(3)または(4)で示されるヌクレオシド三リン酸は、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、ウリジン三リン酸(uridine triphosphate:UTP)誘導体、アデノシン三リン酸(adenosine triphosphate:ATP)誘導体、グアノシン三リン酸(guanosine triphosphate:GTP)誘導体、シチジン三リン酸(cytidine triphosphate:CTP)誘導体、デオキシウリジン三リン酸(deoxyuridine triphosphate:dUTP)誘導体、デオキシアデノシン三リン酸(deoxyadenosine triphosphate:dATP)誘導体、デオキシグアノシン三リン酸(deoxyguanosine triphosphate:dGTP)誘導体、デオキシシチジン三リン酸(deoxycytidine triphosphate:dCTP)誘導体である。本実施形態に係る酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸において、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンは、ウラシル、アデニン、グアニン、シトシンの部分に直接または置換基を介して結合されている。
【0033】
これらの酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、UTP、ATP、GTP、CTP、dUTP、dATP、dGTP、dCTPまたはそれらの各種誘導体から得ることができる。
【0034】
また、これらの酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、ウリジン、ウリジンの一リン酸(UMP)および二リン酸(UDP)、アデノシン、アデノシンの一リン酸(AMP)および二リン酸(ADP)、グアノシン、グアノシンの一リン酸(GMP)および二リン酸(GDP)、シチジン、シチジンの一リン酸(CMP)および二リン酸(CDP)、デオキシウリジン、デオキシウリジンの一リン酸(dUMP)および二リン酸(dUDP)、デオキシアデノシン、デオキシアデノシンの一リン酸(dAMP)および二リン酸(dADP)、デオキシグアノシン、デオキシグアノシンの一リン酸(dGMP)および二リン酸(dGDP)、デオキシシチジン、デオキシシチジンの一リン酸(dCMP)および二リン酸(dCDP)ならびにそれらの各種誘導体から得てもよい。
【0035】
例えば、ウリジン、アデノシン、グアノシン、シチジン、デオキシウリジン、デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシシチジンのリン酸化酵素などによるリン酸化(例えば、生物工学会誌,85(9),p397−399(2007)、Journal of Bioscience and Bioengineering,87(6),p.732−738(1999)など参照)や、プロトンスポンジ存在下でのオキシ塩化リンなどによるリン酸化(例えば、Tetrahedron Letters,29(36),p.4525−4528(1988)など参照)などによって、それらの三リン酸体を得ることができる。
【0036】
上記式(1)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸は、下記式(5)で示される、TGaseが認識可能なGln残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有するTGase基質修飾ヌクレオチド三リン酸であることが好ましい。
【化10】
【0037】
式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などの炭素数1〜48のアルキレン基、エテニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基などの炭素数2〜48のアルケニレン基などが挙げられる。これらのうち、X,Yは、それぞれ独立して炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基、炭素数1〜48のアルコキシ基であることが好ましく、Xはエテニレン基、Yはメチレン基であることがより好ましい。X,Yはさらにエテニレン基、オキシアルキレン基、例えば−(C2H4O)n−または−(C3H6O)n−(nは繰り返し数でありn=2,4,8,12,24)基などで置換されていてもよい。
【0038】
Zで表される置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などの炭素数1〜48のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロピオキシ基などの炭素数1〜48のアルコキシ基、フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜48のアリール基、フェニルオキシ基などの炭素数6〜48のアリールオキシ基、ベンジル基などの炭素数7〜48のアリールアルキル基、ベンジルオキシ基などの炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基などが挙げられる。これらのうち、Zは、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基であることが好ましく、Zはベンジルオキシ基であることがより好ましい。Zはさらにジニトロフェニル基、L−3,4−ジヒドロキシフェニル基などで置換されていてもよい。また、上述したYで表される置換との組み合わせで、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。Bは水素原子またはヒドロキシル基である。
【0039】
Xを適宜選択することにより、Z−QGとUTPとを連結するリンカー部位の構造を最適化し、例えば柔軟なリンカー部位を導入することで、酵素などのアクセスを向上することができる。また、Y,Zを適宜選択することにより、基質ペプチド配列を最適化し、例えば酵素などの親和性を向上することができる。
【0040】
微生物由来TGase(MTG)を用いる場合、MTGが認識可能なGln残基は、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン(Z−QG)として存在することが好ましい。Z−QGは、ジゴキシゲニン(DIG)などよりも分子サイズが小さいため好ましい。式(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸において、Bがヒドロキシル基、Xがエテニレン基、Yがメチレン基、Zがベンジルオキシ基であるヌクレオチド誘導体が、UTPにZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体Z−QG−UTPである。Bが水素原子、Xがエテニレン基、Yがメチレン基、Zがベンジルオキシ基であるヌクレオチド誘導体が、dUTPにZ−QGを結合させたヌクレオチド誘導体Z−QG−dUTPである。また、酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸中には、TGaseが認識可能なLys残基または第一級アミンが共存しないようなものを選択することが好ましい。共存する場合には、TGaseにより、自己架橋する可能性があり、目的のマルチラベル化核酸プローブの収率に好ましくない影響を与える場合があるからである。
【0041】
また、微生物由来TGaseの良基質として、LLQG(配列番号:1)、LAQG(配列番号:2)、LGQG(配列番号:3)、PLAQSH(配列番号:4)、FERQHMDS(配列番号:5)、もしくはTEQKLISEEDL(配列番号:6)のアミノ酸配列からなるペプチド、またはGLGQGGG(配列番号:7)、GFGQGGG(配列番号:8)、GVGQGGG(配列番号:9)、もしくはGGLQGGG(配列番号:10)のアミノ酸配列からなるペプチドが知られている。また、guinea pig liver由来のTGaseの良基質として、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルフェニルアラニン(Z−QF)、またはEAQQIVM(配列番号:11)のアミノ酸配列からなるペプチド、またはGGGQLGG(配列番号:12)、GGGQVGG(配列番号:13)、GGGQRGG(配列番号:14)、GQQQLG(配列番号:15)、PNPQLPF(配列番号:16)もしくはPKPQQFM(配列番号:17)のアミノ酸配列からなるペプチドが知られている。TGaseが認識可能なGln残基は、用いるTGaseの種類に応じ、このようなペプチドとして存在してもよい。
【0042】
また、TGaseが認識可能なGln残基は、FYPLQMR(配列番号:27)、YPLQMR(配列番号:28)、PLQMR(配列番号:29)、FYPLQMG(配列番号:30)、YPLQMG(配列番号:31)、YPLQM(配列番号:32)、PLQMG(配列番号:33)、FYPLQG(配列番号:34)、YPLQG(配列番号:35)またはPLQG(配列番号:36)のアミノ酸配列からなるペプチドとして存在してもよい。これにより、TGaseによる架橋反応の反応性が高くなる。
【0043】
なお、N末端がグリシン(G)である基質ペプチドは、N末端アミノ基がTGaseの基質になりうるため、自己架橋による副産物が生じうる。したがって、N末端がグリシン(G)である基質ペプチドについては、N末端アミノ基の水素を適切な基で置換することによりTGaseの基質とはならないように保護して、所望の連結を行うことができるようにするとよい。なお、本明細書において「N末端保護」というときは、特別な場合を除き、このような意味で用いている。そして、N末端保護の手段により、反応性が異なることが知られている。詳細には、ほ乳類由来TGaseに関して、GQQQLGのN末端アセチル化による保護(すなわち、Ac−GQQQLG)、またN末端アミノ酸をDOPA(L−3,4−dihydroxyphenylalanine)にする(すなわち、DOPA−GQQQLG)と反応性が向上することが知られている。このような保護の例を、本実施形態においても利用することができる。
【0044】
Z−QG−UTPの調製方法を図4に示す。これは、本実施形態に係る酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸の調製方法の一例であって、これに限定されるものではない。
【0045】
まず、ベンジルオキシカルボニル−L−グルタミルグリシン(Z−QG)にN−ヒドロキシスクシンイミド(N−hydroxysuccinimide:NHS)基などを導入し、活性化しておく(NHS化Z−QG)。そして、アミノアリルUTPなどの末端をアミノ化した置換基を有するUTPと、NHS化Z−QGとを縮合することにより、Z−QG−UTPを得ることができる。
【0046】
また、C末端のカルボキシル基を活性エステル化する上述の方法に加えて、TGaseが認識可能なGln残基を有するペプチドをUTPに導入する方法として、アミノ基と反応性の高い官能基をペプチドに導入する方法がある。例えば、アルデヒド化、アシルアジド化、スルフォニルクロライド化、エポキシ化、イソシアネート化、またはイソチオシアネート化した基質ペプチドを調製できれば、これをアミノ化UTPと反応させることにより、TGaseが認識可能なGln残基を有するUTPを調製することができる。ただし、これらの反応性官能基は、基質ペプチドにおいてTGase認識に影響がない部分に導入する必要がある。したがって、上述のように、Gln残基とは離れたC末端のカルボキシル基を活性化する方法は、この目的において最も優れたものの一つである。
【0047】
また、例えば、PLQMRのアミノ酸配列からなるペプチドをdUTPに導入したAc−PLQMR−dUTPは、例えば、アルデヒド化、アシルアジド化、スルフォニルクロライド化、エポキシ化、イソシアネート化、またはイソチオシアネート化した基質ペプチドにN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)基などを導入し、活性化しておき、アミノアリルdUTPなどの末端をアミノ化した置換基を有するdUTPと縮合することによって、得ることができる。
【0048】
Z−QG−UTP等の精製は、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)、ゲル濾過クロマトグラフィ(GPC)などにより行うことができる。また、Z−QG−UTP等の同定は、MALDI TOF−MS、NMR、IRなどにより行うことができる。また、HPLCにより、生成物の確認および収率を求めることができる。
【0049】
<TGase基質マルチラベル化核酸>
本実施形態に係る核酸検出キットを用いて調製することができるTGase基質マルチラベル化核酸は、構成単位として、上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されているTGase基質マルチラベル化核酸であり、核酸部分が、検出対象である標的核酸の標的分子特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するものである。
【0050】
核酸には、DNA、PNAおよびRNAが含まれる。核酸の配列および長さには特に制限はない。長さに関しては、例えば少なくとも20mer程度であればよい。
【0051】
例えば、本実施形態に係る核酸検出キットに含まれるZ−QG−UTPを基質として、RNAポリメラーゼ活性のある酵素を用いて複数のZ−QG−UTPを取り込ませて、TGase認識Glnが複数箇所に導入され、所望の配列を有するTGase基質マルチラベル化核酸プローブZ−QG RNA(図2)を調製することができる。
【0052】
<マルチラベル化核酸プローブ>
本実施形態に係るマルチラベル化核酸プローブは、上記核酸プローブにおける構成単位である酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸のグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンのうち少なくとも2つに、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有し標識部分を含む標識化合物を結合して構成することができる。マルチラベル化核酸プローブは、例えば、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnが複数箇所に導入された核酸プローブZ−QG RNAに、TGase認識Lysを導入した標識酵素などを結合させることによって、RNAと標識酵素などの標識部分が1:nであるマルチラベル化核酸プローブを創製することができる(図2)。
【0053】
RNAと標識酵素などの標識部分との比率nは、2以上であれば特に制限はなく、適宜調整することができるが、nが大きいほど検出感度が高くなり好ましい。ただし、nが大きすぎると、標的核酸とのハイブリダイゼーションの効率が低下する場合がある。
【0054】
また、例えば、以下の方法により、異なる標識酵素、異なる蛍光色素などの異なる標識部分を有する複数のマルチラベル化核酸プローブを調製することができる。
(1)TGaseの由来を変える。
(2)TGaseの基質特異性を変える。
【0055】
(1)の方法では、例えば、用いるTGaseの種類に応じて、異なる基質ペプチドで修飾されたUTPなどを調製すればよい。
【0056】
(2)の方法では、例えば、TGaseに、タンパク質工学的にアミノ酸変異を導入して基質特異性を変えればよい。例えば、MTGを大腸菌で調製し(例えば、Christian K. Marx,Thomas C. Hertel and Markus Pietzsch,Enzyme and Microbial Technology,Volume 40,Issue 6,2 May 2007,p.1543−1550,”Soluble expression of a pro−transglutaminase from Streptomyces mobaraensis in Escherichia coli”参照)、さらに変異体ライブラリーを作って耐熱性の向上したMTGを取得することができる(例えば、Christian K. Marx,Thomas C. Hertel and Markus Pietzsch,Journal of Biotechnology,Volume 136,Issues 3−4,10 September 2008,p.156−162,”Random mutagenesis of a recombinant microbial transglutaminase for the generation of thermostable and heat−sensitive variants”参照)。
【0057】
本明細書において、「TGaseにより結合する」というときは、特別な場合を除き、得られる連結部は、Lys残基とGln残基とが、ε(γ−グルタミル)リシン結合を形成することにより構成されている。
【0058】
本実施形態においては、TGaseが認識可能なLys残基は、第一級アミンであってもよい。本明細書では、Lys残基を例に説明するが、その説明は、特別な場合を除き、第一級アミンにも当てはまる。
【0059】
リシン(Lys)残基または第一級アミンを有し標識部分を含む標識化合物としては、特に制限はない。
【0060】
標識部分としては、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な標識(例えば、磁性ナノ粒子)、熱的に検出可能な標識(例えば、温度応答性高分子)、電気的に検出可能な標識(例えば、フェロセン部位を有する高分子)などが挙げられ、検出感度、取り扱い性などの点から、酵素および蛍光色素のうち少なくとも1つが好ましい。
【0061】
蛍光色素としては、選択された波長の紫外光、可視光などの放射線による照射に応答して蛍光または燐光を発する物質であればよく、特に制限はないが、例えば、蛍光色素としてフルオレセイン、ローダミン、ダンシル、カルボシアニン誘導体など、あるいは蛍光タンパク質として緑色蛍光タンパク質とその変異体などが挙げられる。
【0062】
放射性同位体としては、例えば、重水素(2H)、三重水素(3H)、10B、11B、13C、15N、18Oなどが挙げられる。
【0063】
TGaseに対し、Lys残基(または第一級アミン)供与体となる基質は、Gln残基供与体となる基質に比較して構造的な制約が少ないと考えられる。したがって、修飾しようとする標識酵素が、TGaseが認識可能なLys残基を元来有している場合もあり、TGaseが認識可能なLys残基を含むタグを酵素に付加する場合もある。
【0064】
TGaseが認識可能なLys残基(K)は、MKHKGS(配列番号:18)、MRHKGS(配列番号:24)、MRRKGS(配列番号:25)、MHRKGS(配列番号:26)のアミノ酸配列を有するペプチドとして存在してもよい。このようなTGaseが認識可能なLys残基を含むペプチドによるタグ化は、標識酵素を、タンパク質の所望の部位、例えばC末端またはN末端に連結する目的で用いることができる。TGaseが認識可能なLys残基を含む他のペプチドまたはそのアミノ酸配列の例としては、改変型S−peptide(GSGMKETAAARFERAHMDSGS(配列番号:19))、MGGSTKHKIPGGS(配列番号:20)、N末端グリシン(N−terminal GGG、N−terminal GGGGG(配列番号:21))、N末端MKHKGSと対象タンパク質間のリンカー部位を伸ばしたMKHKGGGSGGGSGS(配列番号:22)などが挙げられる。
【0065】
C末端またはN末端にTGaseが認識可能なLys残基を含むペプチドを付加した標識酵素は、遺伝子工学的な手法を用いて、組換えタンパク質として調製することができる。C末端またはN末端にTGaseの基質ペプチドタグが導入された当該組換えタンパク質の精製は、それぞれN末端またはC末端に付加した精製用ペプチドタグ(例えば、(His)6−tag(ヘキサヒスチジンタグ))を利用し(TGaseの反応性の低下を回避するために、基質ペプチドタグを入れた末端とは異なる末端に精製用ペプチドタグを入れるようにデザインするとよい。)、ゲル濾過クロマトグラフィなどにより行うことができ、またアミノ酸配列の確認は当該タンパク質をコードするプラスミドベクターの遺伝子配列をDNAシーケンサにて確認するか、N末端に導入された基質ペプチドについてはN末端分析により直接同定することができる。タンパク質の精製の確認は、SDS−PAGEなどで行うことができる。
【0066】
標識酵素としては、発色反応、化学発光などを利用して検出を行うことができる性質を有するものであればよく特に制限はない。例えば、アルカリホスファターゼ(AP)、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、ペルオキシダーゼ、ならびにP450およびそれらの変異体などが挙げられる。これらのうち、高い触媒活性と安定性の観点から、アルカリホスファターゼあるいはペルオキシダーゼが好ましい。ペプチドタグが容易に導入可能との観点からは、遺伝子工学的に製造可能なタンパク質が好ましい。
【0067】
酵素マルチラベル化核酸プローブと標的核酸の間でより厳密に塩基配列特異的な二本鎖形成を行うためには、比較的高温(例えば、70℃以上)の条件下で行うことがあるため、常温菌由来の酵素を利用すると活性の損失が懸念される。そこで、標的酵素としては、超好熱菌Pyrococcus furiosus由来アルカリホスファターゼ(PfuAP)が好ましい。
【0068】
超好熱菌由来の酵素は、一般的に有機溶媒や熱に対して高い安定性を示すことが知られているため好ましく(例えば、H.Atomi,Current Opinion in Chemical Biology,9,p.166−173(2005)参照)、さらに、大腸菌を宿主とした大量調製が比較的容易に行うことができる点においても好ましい。大腸菌を宿主として耐熱性酵素を調製する場合、細胞破砕液を高温処理(例えば、80℃で30分温置)することで、大腸菌由来の共雑タンパク質のほとんどを沈殿させ、粗精製を容易に行うことができる。
【0069】
超好熱菌は一般の生物がほとんど生育できない極限環境で生育することができる微生物であるため、超好熱菌由来のタンパク質は非常に高い耐熱性を有している。さらに、熱に対する耐性だけでなく、一般的に、変性剤、有機溶媒、pHなどに対する耐性も常温菌由来酵素に比べて極めて高いことから、PfuAPを使用することによって、酵素の失活を伴わない厳密な二本鎖形成を達成することができると考えられる。
【0070】
本実施形態に係る酵素マルチラベル化核酸プローブの好ましい態様の一つは、PfuAPとZ−QG RNAとの複合体またはPfuAPとZ−QG DNAとの複合体である。このような複合体は、安定な酵素であるPfuAPと、安定な分子であるRNAまたはDNAが、アミド結合という安定な共有結合で連結されているため、複合体全体としても安定性であるというメリットがある。
【0071】
また、酵素マルチラベル化核酸プローブにおいて、酵素が有機溶媒や熱に対して安定な酵素であってもよい。このような安定性の高い酵素は、自然界からのスクリーニング(例えば、化学と工業,vol.61(No.6),p.571−575(2008)、内山拓,宮崎健太郎,バイオサイエンスとインダストリー,vol.66(No.5),p.234−239(2008)、道久則之,バイオサイエンスとインダストリー,vol.66(No.12),p.667−670(2008))や、タンパク質工学的手法により安定性を高める技術(例えば、荻野博康,BIO INDUSTRY,vol.25(No.7),p.16−23(2008)、宮崎健太郎,BIO INDUSTRY,vol.25(No.7),p.52−58(2008))により得ることができる。これらの手法により、常温菌由来の酵素であっても、有機溶媒耐性や耐熱性を有する酵素へと変換することができる。
【0072】
蛍光色素部分を導入した、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識化合物は、例えば、カルボキシル基にジアミンを導入する方法で調製することができる(例えば、G.T.Hermanson(1996),Bioconjugate Techniques,Chapter 1,Section 4.3,p.100−104,Academic Press,San Diego.を参照)。
【0073】
トランスグルタミナーゼ(TGase)としては、種々のものを用いることができる。現在、TGaseとして、哺乳類(guinea pig、ヒト)、無脊椎動物(昆虫、カブトガニ、ウニ)、植物、菌類、原生生物(粘菌)由来のものが知られており、またヒトの場合については、8種類のアイソザイムが見つかっている。本実施形態において用いることのできるTGaseの好ましい例は、安定性、ハンドリングの容易さ、バルク生産が可能などの点から微生物由来微生物由来トランスグルタミナーゼ(MTG)である。
【0074】
本実施形態においてMTGを用いた場合、予想されているMTGの触媒反応から、Lys残基を有する標識酵素などの標識部分を含む標識化合物とZ−QG RNAとの連結反応は、MTG活性中心であるシステイン(Cys)残基の、Z−QG RNAのGlnへの求核置換反応によるアシル−酵素複合体の形成と、続いて起こる標識化合物のLysによるアシル−酵素複合体への求核置換反応によるMTGの脱離、の2段階で進行すると予想される。
【0075】
本実施形態の核酸検出用キットにおいては、TGaseが認識可能なグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有するZ−QG RNAに対する、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識化合物のモル濃度比は、好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上である。なお、本明細書で単に「濃度比」というときは、特別な場合を除き、モル濃度による比を指す。例えば、Z−QG RNAに対するNK14−PfuAPのモル濃度比は、[NK14−PfuAP]/[Z−QG RNA]と表すこともできる。
【0076】
[NK14−PfuAPの調製]
NK14−PfuAPとは、MKHKGGGSGGGSGSの配列を有するアミノ酸14残基からなる付加配列を遺伝子工学的にPfuAPのN末端に、精製用タグをC末端に導入したものである。PfuAPの発現ベクターは香川大学櫻庭春彦教授より委譲頂いた。PCRによりPfuAPをコードする領域を増幅する際、それぞれのタグが導入されるようにタンパク質発現用ベクターpET22に組換え、大腸菌BL21株を形質転換した。アンピシリンを含むLB培地にて前培養、本培養を経て、得られた形質転換体を遠心分離により収菌し、25mM TBSで2回洗浄した。得られた菌体を凍結・融解させた後、超音波処理により細胞を粉砕し、遠心分離により可溶性画分を回収した。超高熱菌由来のPfuAPは高温条件下でも安定であるので、得られた無細胞抽出液を80℃で30分処理し、他のタンパク質を沈殿させることによって粗精製を行った。粗精製後、遠心分離・フィルター濾過によって上澄みを回収し、His−tagカラムによって精製した。精製後、限外濾過による濃縮を行い、PD−10カラムを用いて溶媒を10mM Tris−HCl(pH8.0)へと置換し、実験に供するまで凍結保存した。
【0077】
また、NK14−PfuAPの大腸菌での発現量の向上のため、大腸菌のコドン使用頻度に合わせて塩基配列が改変されたNK14−PfuAPの発現ベクター(アクセッション番号:AB479383、配列番号:23)を用いてもよい。この発現ベクターは、Codon Devices社(http://www.codondevices.com)に受託合成して得た。NK14−PfuAPをコードする遺伝子領域の両端に適切な制限酵素サイトを導入しておき、これらを利用することでタンパク質発現用ベクターpET22に組換え、得られたNK14−PfuAP発現ベクターにより大腸菌BL21株を形質転換した。アンピシリンを含むLB培地にて前培養、本培養を経て、得られた形質転換体を遠心分離により収菌し、25mM TBSで2回洗浄した。得られた菌体を凍結・融解させた後、超音波処理により細胞を粉砕し、遠心分離により可溶性画分を回収した。超高熱菌由来のPfuAPは高温条件下でも安定であるので、得られた無細胞抽出液を80℃で30分処理し、他のタンパク質を沈殿させることによって粗精製を行った。粗精製後、遠心分離・フィルター濾過によって上澄みを回収し、His−tagカラムによって精製した。精製後、限外濾過による濃縮を行い、PD−10カラムを用いて溶媒を10mM Tris−HCl(pH8.0)へと置換し、実験に供するまで凍結保存した。
【0078】
TGaseとしてMTGを用いて連結反応を行う場合には、上述のようにモル濃度比が適切な範囲となるようにすることに加えて、pH5.0〜8.0、温度4〜50℃(例えば、室温(例えば、18℃〜22℃))の条件で行うことが好ましい。このようにすれば、12時間以内、好ましくは6時間以内、より好ましくは3時間以内に、充分に高い反応率が達成可能である。
【0079】
このような高い反応率が達成できる方法により得られたマルチラベル化核酸プローブ溶液には、未反応の核酸プローブ(例えば、遊離のZ−QG RNA)がほとんど存在せず、以下で詳述する、標的核酸の検出にそのまま用いたとしても、マルチラベル化核酸プローブと未反応分子との競合が実質的に生じないか、生じたとしても目的とする検出の結果には実質的な影響を与えないほど少ないと考えられる。したがって、マルチラベル化核酸プローブ溶液を精製することなく、直接検出へと利用できるメリットがある。
【0080】
本実施形態に係る核酸検出用キットを用いた酵素マルチラベル化核酸プローブの形成方法は、従来法に比較して、以下の特徴およびメリットを有する。
・対象となる標識酵素は、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する酵素、TGaseが認識可能なリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を導入することができるあらゆる酵素を包含する。また、インテインのような大きなタンパク質性タグを必要としない。
・酵素の修飾部位は、C末端に限定されない。TGase活性なLys残基またはGln残基が存在するか、そのようなLys残基またはGln残基を有するタグを導入することができる部位であれば、修飾可能である。
・C末端、N末端に加え、loop領域のようなタンパク質構造中の揺らぎの大きな部位も修飾対象となりうる。
・結合する核酸の塩基配列および長さには、特に制限がない。
【0081】
<標的核酸の検出方法>
本実施形態に係る核酸検出用キットを用いた標的核酸の検出方法は、構成単位として例えば上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されている核酸である核酸プローブにおけるグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンのうち少なくとも2つに、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識酵素などの標識化合物が結合されて構成されているマルチラベル化核酸プローブであって、標識部分が容易に検出可能な性質を有し、かつ核酸部分が標的核酸に特異的に結合可能な塩基配列を有するものであるマルチラベル化核酸プローブを調製し、マルチラベル化核酸プローブと対象物中に存在する標的核酸とを核酸部分により特異的に結合させ、結合しているマルチラベル化核酸プローブを、酵素部分などの標識部分により検出する工程を含む。
【0082】
本実施形態に係る標的核酸の検出方法は、標的核酸の定性、定量、識別、染色、局在化の調査などの目的で用いることができる。
【0083】
この方法においては、上記マルチラベル化核酸プローブが用いられるが、核酸部分は、標的核酸に特異的に結合可能な核酸配列を有するものとする。酵素部分などの標識部分は、容易に検出可能な性質を有するものである。この方法において、標的核酸を含む標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物(ATP)、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルスなどでありうる。検出対象は、(i)DNA転写膜、または(ii)細胞もしくは個体組織切片などである。
【0084】
検出対象が(i)の場合、標的核酸は、PCRにより増幅されたDNAまたはゲノム断片DNAなどであり、(ii)の場合、標的核酸は、細胞または個体組織中に含まれる核酸(mRNAまたはDNA)などである。本方法は、従来法、例えばジゴキシゲニン(DIG)標識化プローブを用いる方法に比較して、種々の点で優れている。例えば、DIG法では、核酸プローブのDIG修飾および標識化された抗DIG抗体が必要であり、それに伴う煩雑な洗浄操作が必要となるが、本実施形態に係る核酸検出用キットを用いて得たマルチラベル化核酸プローブを用いれば、DIG標識化プローブおよび標識化抗DIG抗体が不要になるため、試薬、手間および時間を大幅に削減することが可能となる。また、1つの認識部位(核酸)に対して複数のシグナル増幅部位(酵素など)を配置しているため、検出感度の向上が可能になる。
【0085】
この方法においては、標的核酸に、マルチラベル化核酸プローブを供し、標的核酸とマルチラベル化核酸プローブの標的核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせるが、このハイブリダイズのための条件は、当業者であれば、用いる核酸部分の長さ、塩基配列などに応じて、適宜設計することができる。
【0086】
本実施形態に係る標的核酸の検出方法において、異なる標識酵素、異なる蛍光色素などの異なる標識部分を有する複数のマルチラベル化核酸プローブを準備して、同時に複数の標的核酸を検出してもよい。
【0087】
また、本実施形態において、標的核酸の検出方法は、
(a)基材表面に固定化された核酸、
(b)固定化された固定化核酸の全部または一部に相補的な配列(固定化核酸相補的配列)、および標的核酸に特異的に結合可能な配列(標的核酸特異的配列)を有するアプタマ核酸、
(c)構成単位として上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されている核酸である核酸プローブにおけるグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンのうち少なくとも2つに、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する標識酵素などの標識化合物が結合されて構成されているマルチラベル化核酸プローブであって、標識部分が容易に検出可能な性質を有し、及び/又は核酸部分がアプタマ核酸の標的核酸特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するものであるマルチラベル化核酸プローブ、
を調製し、
(A)固定化核酸に、アプタマ核酸を供し、固定化核酸とアプタマ核酸の固定化核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせることにより、アプタマ核酸を固定化し、
(B)固定化された固定化アプタマ核酸に、標的核酸を含む標的分子を含む可能性のある試料を供し、標的分子が存在する場合には標的核酸とアプタマ核酸の標的核酸分子特異的配列を有する部分とを結合させ、かつ上記マルチラベル化核酸プローブを供し、標的分子が存在しない場合にはマルチラベル化核酸プローブの核酸部分とアプタマ核酸とをハイブリダイズさせることにより、タンパク質を固定化し、
(C)固定化された酵素部分の有無またはその量を酵素の性質に基づいて検出することにより、試料中の標的分子を検出する工程を含む。
【0088】
この方法における基材表面への核酸の固定化のためには、従来技術、例えばDNAマイクロアレイなどを調製する際に用いられる技術を適用することができる。「基材」は、ガラス、シリコンなどのプラスチック製の、チップ、ビーズ、ウェル、プレートなどの形態とすることができ、核酸は、従来技術を用いて、基材表面に非共有結合(静電結合)的に、または共有結合で固定することができる。あらかじめ調製した核酸を基材に固定化してもよく、基材上で直接核酸を合成してもよい。簡便には、アビジンなどで被覆された市販のプレートを用い、ビオチン化した所望のDNAを固定することができる。
【0089】
この方法ではさらに、固定化核酸の全部または一部に相補的な配列(固定化核酸相補的配列)、および標的分子を含まれる標的核酸に特異性的に結合可能な配列(標的核酸特異的配列)を有する核酸(アプタマ核酸)が用いられる。標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルスなどでありうる。標的核酸特異的配列を有する部分は、従来技術、例えばSELEX(試験管内人工進化法)工程を用いることにより産生することができ、また標的分子に対して非常に高い標的親和性及び特異性を有するものとすることができる。標的核酸特異的配列を有する部分は、修飾ヌクレオチドで構成されていてもよい。
【0090】
この方法においては、上記マルチラベル化核酸プローブが用いられるが、核酸部分は、アプタマ核酸の標的核酸特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するものとする。酵素部分などの標識部分は、容易に検出可能な性質を有するものである。この方法において、標的核酸を含む標的分子は、核酸、比較的低分子の有機化合物(ATP)、タンパク質、ペプチド、金属イオン、複雑な構造を持つ多量体、ウイルスなどでありうる。検出対象は、(i)DNA転写膜、または(ii)細胞もしくは個体組織切片などである。
【0091】
この方法においては、固定化核酸に、アプタマ核酸を供し、固定化核酸とアプタマ核酸の固定化核酸相補的配列を有する部分とをハイブリダイズさせることにより、アプタマ核酸を固定化するが、このハイブリダイズのための条件は、当業者であれば、用いる核酸部分の長さ、塩基配列などに応じて、適宜設計することができる。
【0092】
また、この方法においては、次いで固定化アプタマ核酸に、標的分子を含む可能性のある試料を供し、標的分子が存在する場合には標的分子とアプタマ核酸の標的核酸特異的配列を有する部分とを結合させ、さらにマルチラベル化核酸プローブを供し、標的分子が存在しない場合にはマルチラベル化核酸プローブの核酸部分とアプタマ核酸とをハイブリダイズさせる。試料は、細胞もしくは組織抽出液、体液などでありうる。
【0093】
さらにこの方法においては、固定化された酵素部分の有無またはその量を酵素の性質に基づいて検出することにより、試料中の標的分子を検出することができる。
【0094】
アプタマ核酸においては、固定化核酸相補的配列を有する部分と、標的核酸特異的配列を有する部分とは、重複してもよく、連続してもよく、また適当なスペーサを介して両者が存在するように設計することができる。標的核酸特異的配列を有する部分(アプタマ領域)が分子認識のためにある立体構造をとることを考慮すると、該部分は、固定化核酸相補的配列を有する部分とは少なくとも重複しないようにするのがよい。
【0095】
アプタマ核酸は、固定化核酸相補的配列および標的核酸特異的配列以外に、所望の場合にはマルチラベル化核酸プローブと適切にハイブリダイズするための配列をさらに含んでいてもよい。マルチラベル化核酸プローブの核酸部分は、アプタマ核酸の標的分子特異的配列の全部または一部に相補的な配列を有するが、この特異的配列の全部または一部に相補的な配列からなる領域が長い(標的核酸特異的配列と重複が多い)と、かえってアプタマ核酸とはハイブリダイズできない場合が生じうる。また短い(重複が少ない)と、標的分子が存在し、アプタマ核酸と結合している場合にも、マルチラベル化核酸プローブとアプタマ核酸とがハイブリダイズしてしまう場合が生じうる。当業者であれば、このようなことを考慮して、固定化核酸、アプタマ核酸、マルチラベル化核酸プローブの核酸部分を、適宜設計することができる。
【0096】
また、本実施形態に係る標的核酸の検出方法は、核酸部分が標的核酸に特異的に結合可能な塩基配列を有するものである、構成単位として、例えば上記式(1)〜(5)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が複数個導入されている核酸である核酸プローブと、対象物中に存在する標的核酸とを核酸部分により特異的に結合させた後、トランスグルタミナーゼ(TGase)を用いて、核酸プローブにおけるグルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンと、リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有し標識部分を含む標識化合物のリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基とを反応させて、容易に検出可能な性質を有する複数の標識部分を導入し、結合している核酸プローブを、標識部分により検出する工程を含む(図3参照)。
【0097】
この方法においては、上記核酸プローブが用いられるが、核酸部分は、標的核酸に特異的に結合可能な核酸配列を有するものとする。また、標識部分は、容易に検出可能な性質を有するものである。
【0098】
本方法は、従来法、例えばジゴキシゲニン(DIG)標識化プローブを用いる方法に比較して、種々の点で優れている。例えば、DIG法では、核酸プローブのDIG修飾および標識化された抗DIG抗体が必要であり、それに伴う煩雑な洗浄操作が必要となるが、本実施形態に係る核酸プローブを用いれば、DIG標識化プローブおよび標識化抗DIG抗体が不要になるため、試薬、手間および時間を大幅に削減することが可能となる。また、1つの認識部位(核酸)に対して複数のシグナル増幅部位(標識部分)を配置することにより、検出感度の向上が可能になる。
【0099】
例えば、MTGなどのTGaseを用いて、MTG認識GlnなどのTGase認識Glnが複数箇所に導入された核酸プローブZ−QG RNAに、TGase認識Lysを導入した酵素、蛍光色素などの標識化合物を結合させる。
【0100】
本実施形態に係る核酸検出用キットの構成の一例は、例えば、下記(1)〜(3)の各セットを含むものである。
(1)dATPと溶媒とを含むdATP含有溶液、dCTPと溶媒とを含むdCTP含有溶液、dGTPと溶媒とを含むdGTP含有溶液、dTTPと溶媒とを含むdTTP含有溶液、Z−QG−dUTPと溶媒とを含むZ−QG−dUTP含有溶液のZ−QG DNAラベリングセット(Z−QG デオキシリボヌクレオチドセット)。各溶液の濃度は、例えば、1mM〜100mMである。dTTPとZ−QG−dUTPとは適切な比率(例えば、モル比で6:4)で混合されていてもよい。
(2)ATPと溶媒とを含むATP含有溶液、CTPと溶媒とを含むCTP含有溶液、GTPと溶媒とを含むGTP含有溶液、UTPと溶媒とを含むUTP含有溶液、Z−QG−UTPと溶媒とを含むZ−QG−UTP含有溶液のZ−QG RNAラベリングセット(Z−QG リボヌクレオチドセット)。各溶液の濃度は、例えば、1mM〜100mMである。UTPとZ−QG−UTPとは適切な比率(例えば、モル比で6:4)で混合されていてもよい。
(3)標識部分としてNK14−PfuAP等の超好熱菌由来の標識酵素等を含む標識化合物と溶媒とを含む標識化合物含有溶液、MTGと溶媒とを含むMTG含有溶液、反応バッファ、コントロール用DNA(Z−QG標識済DNA)、コントロール用RNA(Z−QG標識済RNA)の標識セット。
【0101】
本実施形態に係る核酸検出用キットの構成の他の例は、例えば、下記(1)〜(3)の各セットを含むものである。
(1)dATPとdCTPとdGTPとdTTPとZ−QG−dUTPと溶媒とを含むZ−QG−dUTP含有溶液のZ−QG DNAラベリング混合物セット(Z−QG デオキシリボヌクレオチドミックス)。各成分の濃度は、例えば、1mM〜100mMであり、PCRに用いやすい2mMまたは汎用性が高い100mMである。
(2)ATPとCTPとGTPとUTPとZ−QG−UTPと溶媒とを含むZ−QG−UTP含有溶液のZ−QG RNAラベリング混合物セット(Z−QG リボヌクレオチドミックス)。各溶液の濃度は、例えば、1mM〜100mMであり、RNA合成に用いやすい20mMである。
(3)標識部分としてNK14−PfuAP等の超好熱菌由来の標識酵素等を含む標識化合物とMTGと反応バッファと溶媒とを含む標識化合物/MTG含有溶液、コントロール用DNA(Z−QG標識済DNA)、コントロール用RNA(Z−QG標識済RNA)の標識セット。NK14−PfuAPおよびMTGは、反応に適した終濃度の例えば2倍の濃度とし、Z−QG核酸と例えばモル比で1:1で混合することにより反応させる。
【0102】
溶媒としては、例えば、水や、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらのうち、安定性等の点から水が好ましい。また、水としては、蒸留水、イオン交換水等の純水、超純水等が用いられる。
【0103】
本実施形態に係る核酸検出用キットにおける各溶液のpHは、例えば、pH4〜10の範囲であり、pH5〜8の範囲が好ましい。pHがこの範囲外の場合は、MTGによるラベル化効率が低下する場合がある。
【0104】
pH調整剤としては、アルカリ性から酸性の溶液または緩衝溶液等が挙げられる。pH調整用の溶液または緩衝溶液としては、例えば、塩酸、炭酸、酢酸、リン酸、ホウ酸水溶液、酢酸ナトリウム緩衝液、トリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液、コハク酸緩衝液、2−ヒドロキシ−1,2,3−プロパントリカルボン酸緩衝液、モノフタル酸カリウム緩衝液、2−(N−モルノホリノ)エタンスルホン酸緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液、リン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液、炭酸水素ナトリウム緩衝液、イミダゾール緩衝液、クエン酸ナトリウム緩衝液、マロン酸緩衝液、乳酸緩衝液、N−メチルジエタノールアミン、ヒスチジン緩衝液、ピリジン酢酸緩衝液、酢酸トリエタノールアミン緩衝液、3−モルホリノプロパンスルホン酸緩衝液(MOPSバッファ:3−Morpholinopropanesulfonic acid buffer)等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。これらのうち、トリスヒドロキシメチルアミノメタン緩衝液、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸緩衝液が好ましい。
【0105】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、検出感度を向上させるために、マグネシウムイオン(Mg2+)、カルシウムイオン(Ca2+)、コバルトイオン(Co2+)、亜鉛イオン(Zn2+)等の2価の陽イオンを含んでもよく、2価の陽イオンと溶媒とを含む陽イオン含有溶液を含んでもよい。これらのうち、系内で凝集や沈殿が生じにくい等の点からマグネシウムイオン(Mg2+)が好ましい。2価の陽イオンは、TGaseによるラベル化反応のときに添加してもよいし、酵素の発色反応等のときに添加してもよい。
【0106】
本実施形態に係る核酸検出用キットにおいて、検出感度を向上させるために、核酸プローブと標識化合物との比率が1:2(モル比)以上となるようにすることが好ましい。また、本実施形態に係る核酸検出用キットにおいて、検出感度を向上させるために、ラベル化反応のときの標識化合物と2価の陽イオンとの比率(モル比)は、1:1〜1:300の範囲であることが好ましい。また、酵素の発色反応のときの発色液中のマグネシウムイオン等の2価の陽イオンの濃度が、50mM〜100mMの範囲になるようにすることが好ましい。
【0107】
本実施形態に係る核酸検出用キットは、その他に例えば、反応で残存したZ−QG−dUTP、Z−QG−UTP等を除去するカラム、試薬等を含むZ−QG精製セット;反応で残存した標識化合物等を除去してマルチラベル化核酸プローブを精製するためのカラム、試薬等を含む標識化合物精製セット;標識核酸に適したブロッキング剤を含む標識核酸用ブロッキング剤セット;標識核酸に適したハイブリダイゼーション溶液を含む標識核酸用ハイブリダイゼーション溶液セット等を含んでもよい。
【0108】
マルチラベル化核酸プローブを精製するカラムとしては、ゲルろ過クロマトグラフィ方式のものが好ましい。これによりバックグラウンドが低減される。核酸の精製方法として一般的な手法としては、例えば、フェノール抽出によるタンパク質の除去、エタノール沈殿やイソプロパノール沈殿等のアルコール沈殿、電気泳動後にゲルを切り出してシリカカラム等を用いて精製、限外ろ過膜による精製等が挙げられる。しかし、フェノール抽出やアルコール沈殿はマルチラベル化核酸プローブがタンパク質との複合体を形成しているために困難であり、MTG反応液等の中の核酸濃度がng/mLオーダーと低い場合にはアルコールを用いても沈殿しにくく、シリカ樹脂や限外ろ過膜を用いてもマルチラベル化核酸プローブの回収が困難である。
【0109】
ゲルろ過方式の精製において、直鎖状核酸がゲルを素通りし、球状タンパク質がゲル中へ保持されるような条件がよい。すなわち、ゲルろ過方式のカラムとしては、ゲルの孔サイズが直鎖状核酸より小さく、球状タンパク質より大きいこと(例えば、10−500.2/nm程度)が好ましい。また、標識化合物除去のために十分なカラム容量であること(例えば、0.200−1mL)が好ましい。カラム容量が小さすぎると、保持できなかった標識化合物が溶出してくる場合があり、カラム容量が大きいときには反応液が希釈されてしまう場合がある。
【0110】
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれるZ−QG DNAラベリングセットは、例えば、Taqポリメラーゼ等を用いたPCR時に、dNTPの代わりに用いてPCR産物にZ−QG−dNTPを取込ませることにより、Z−QG核酸プローブを調製するのに用いられる。また、例えば、Terminal transferaseにより核酸プローブの3’端を伸長させさる際に、dNTPの代わりに用いてZ−QG−dNTPを取込ませることにより、Z−QG核酸プローブを調製するのに用いられる。その他、例えば、核酸修飾酵素などにより通常のdNTPの代わりに用いてZ−QG−dNTPを取込ませることにより、Z−QG核酸を調製するのに用いられる。
【0111】
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれるZ−QG RNAラベリングセットは、例えば、DNAを鋳型として、RNAポリメラーゼによりインビトロ転写反応を行う際に、NTPの代わりに用いて、Z−QG−NTPが取込まれたRNAを合成するのに用いられる。
【0112】
本実施形態に係る核酸検出用キットに含まれる標識セットは、例えば、Z−QG DNAラベリングセット、Z−QG RNAラベリングセットを用いて調製したZ−QG標識核酸に、標識化合物を結合させる際に用いられる。また、Z−QG標識核酸に標識化合物を結合させることにより、任意の配列を持った核酸を検出するマルチラベル化核酸プローブとして用いることができる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0114】
(実施例1)
<Z−QG−UTPの合成・精製>
Z−QG−UTPの合成スキームは、図4に示す通りである。まず100mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、100mM N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、50mM Z−QGを、室温(調製した日は27.0℃)でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)4mL中で20時間反応させることにより、NHS化Z−QG(50mM)を調製した(この段階で500μLずつに分注し、−80℃で保存)。その後、25mMのNHS化Z−QGと5mMの5−(3−aminoallyl)−UTP(以下、aminoallyl−UTPと略記、SIGMA社製)とを、100mM ホウ酸緩衝液(pH8.8)とDMFの混合溶媒(v/v=1/1)0.32mL中において25℃で12時間反応させた。反応終了後、サンプルを超純水(Milli−Q)で10倍希釈し、HPLC(日本分光製)(高速液体クロマトグラフ・ポンプ:TRI ROTAR−V型、バリアブル・ループ・インジェクタ:VL−613型、紫外可視分光検出器:UVIDEC−100−IV型)によって精製を行った。HPLCの測定条件は表1の通りとした。生成物の同定は、レーザーイオン化飛行時間型質量分析装置であるMALDI TOF−MS(島津製作所製 AXIMA(登録商標)−CFR Plus)によって行った。なお、サンプル調製手順は、まず、試料1μLをMALDI用試料プレートの上に滴下し、次にその上から、マトリックス溶液;2,5−ジヒドロキ安息香酸(DHB)の10mg/ml溶液(超純水)を滴下し、その後、風乾して、得られた試料プレートをMALDI TOF−MS装置のイオン源内に導入して計測した。
【0115】
Z−QG−UTPを合成した後、表1に示す条件で逆相HPLCを行った際の結果を図5に示す。
【0116】
【表1】
【0117】
そこで、保持時間18.8分のピークを回収してMALDI TOF−MS分析を行った(図6参照)。その結果、856.89のピークが確認され、理論分子量の857.13と良く一致した結果が得られたため、Z−QG−UTPの合成が示された。
【0118】
<Z−QG−dUTPの合成・精製>
まず、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)4mL中にて、100mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、100mM N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、50mM Z−QGを、室温(調製した日は18〜22℃程度)で20時間反応させることによって、NHS化Z−QG(50mM)を調製した。一方、50mM 5−(3−aminoallyl)−dUTP(以下、aminoallyl−dUTPと略記、SIGMA社製)を含む10mM Tris−HCl(pH7.5)溶液(Ambion製)16μLと200mM ホウ酸緩衝液(pH8.8)40μL、滅菌水16μLとを混合し、10mM aminoallyl−dUTP溶液を80μL調製した。この溶液に対して、上記で調製したNHS化Z−QG溶液を80μL添加し、25℃で一晩反応させた。反応終了後、サンプルを超純水で10倍希釈し、HPLC(日本分光製、高速液体クロマトグラフ・ポンプ:TRI ROTAR−V型、バリアブル・ループ・インジェクタ:VL−613型、紫外可視分光検出器:UVIDEC−100−IV型)によって、表2に示す条件で精製を行った。生成物の同定はMALDI TOF−MS(BRUKER DALTONICS製、autoflex III)によって行った。結果を図7に示す。この際、3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)をマトリックスとして使用した。
【0119】
【表2】
【0120】
Z−QG−dUTPを合成した後、逆相HPLCを行った際の結果を図8に示す。aminoallyl−dUTPの場合(図9参照)と比較して、疎水側に新たなピークが出現しており、このピークがZ−QG−dUTPであると推測された。そこで、保持時間19.1分のピークを回収してMALDI TOF−MS分析を行った。その結果、図7に示すように、841.46のピークが確認され、理論分子量の842.13と良く一致した結果が得られたため、Z−QG−dUTPの合成が示された。
【0121】
<NK14−PfuAPの調製>
遺伝子工学的手法により、N末端にMTGが認識するKを含んだペプチドタグ(MKHK(GGGS)2GS)を導入したNK14−PfuAPを調製した。
【0122】
<各溶液の調製>
表3(下記(1)),表4(下記(2)),表5(下記(3))に示す組成で、以下の溶液を調製した。
(1)dATPと溶媒とを含むdATP含有溶液
dCTPと溶媒とを含むdCTP含有溶液
dGTPと溶媒とを含むdGTP含有溶液
dTTPと溶媒とを含むdTTP含有溶液
Z−QG−dUTPと溶媒とを含むZ−QG−dUTP含有溶液
(2)ATPと溶媒とを含むATP含有溶液
CTPと溶媒とを含むCTP含有溶液
GTPと溶媒とを含むGTP含有溶液
UTPと溶媒とを含むUTP含有溶液
Z−QG−UTPと溶媒とを含むZ−QG−UTP含有溶液
(3)NK14−PfuAPと溶媒とを含むNK14−PfuAP含有溶液
MTGと溶媒とを含むMTG含有溶液
反応バッファ
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
【表5】
【0126】
<マルチラベル化核酸プローブの調製>
まず、マウス由来のSonic hedgehog(Shh)をコードする遺伝子中の約300bpをPCR増幅するプライマを設計した。次に、PCR反応液の全dTTPのうちの40%をZ−QG−dUTPに置き換えて反応液を調製してPCRを行うことによって、Z−QG 40%DNAを得た。Z−QG 40%DNAに95℃、5分間の熱変性を施し、Z−QG 40%DNA 25ng/μL、NK14−PfuAP 0.2mg/mL、MTG 5.0Unit/mLの条件で、37℃で3時間反応を行い、Z−QG 40%マルチラベル化核酸プローブを調製した。
【0127】
<メンブランの作製>
Nybond N+(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のプロトコールに準じてメンブランを作製した。アプライ前にDNAを95℃、5分で熱変性した。メンブランを80℃で2時間ベーキングした。
【0128】
<プレハイブリダイゼーション>
AlkPhos Direct(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のキットに付随するハイブリダイゼーションバッファを用いて、プレハイブリダイゼーション(55℃、1時間)を行った。
【0129】
<ハイブリダイゼーション>
AlkPhos Direct(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のキットに付随するハイブリダイゼーションバッファを用いて、ハイブリダイゼーション(55℃、O/N、プローブ濃度10ng/mL)を行った。Wash BufferIでメンブランを洗浄(55℃、10分間×2回)した。Wash BufferIIでメンブランを洗浄(室温、5分間×2回)した。
【0130】
<検出>
発光基質をメンブラン上に1mL滴下し、ハイブリバックにくるんでインキュベート(室温、5分間)した。化学発光装置(化学発光装置(BIO RAD社製、ChemiDoc XRS+))にセットし、1時間露光した。発光基質として、Immun−Star(商標) Chemiluminescent Protein Detection Kit(BIO RAD社製)添付の発光基質を用いた。結果を図10(a)に示す。
【0131】
(比較例1)
AlkPhos Direct(商標、GEヘルスケアバイオサイエンス社製)のキットに付随する試薬にて調製したプローブを用いた以外は、実施例1と同様にして評価した。結果を図10(b)に示す。
【0132】
(実施例2)
NK14−PfuAPの濃度を変え、検出を行った。結果を図11に示す。
【0133】
Z−QG 40%DNA濃度 10ng/uL、PfuAP濃度 4mg/mL以上(モル比でZ−QG:PfuAP=1:30以上)でラベル化したプローブにて、発色法にて0.1pgの検出感度を達成した。
【0134】
(実施例3)
実施例1と同様にしてZ−QG 40%マルチラベル化核酸プローブを調製し、反応液を以下の手順で精製し、未精製のもの、1回精製したものについて、実施例1と同様にしてハイブリダイゼーション、検出を行った。結果を図12に示す。
【0135】
<精製の手順>
MicroSpin S−400 HR Columns(GEヘルスケアバイオサイエンス社製、27−5140−01)の下を折り、フタを開けて、カラムに添付されている2mLチューブにセットして735×gで1分間遠心処理した。カラムを新しい1.5mLチューブにセットし、MTG反応液100μLをゲル上部に置いて735×gで4分間遠心処理した。溶出したマルチラベル化核酸プローブ溶液を4℃で保存した。核酸の溶出量はおよそ50%、未反応のタンパク質の溶出量はおよそ10%未満であった。
【0136】
<核酸濃度の定量>
1×TEバッファ(pH8.0)にて、SYBR Green II(タカラバイオ社製、F0523)を10,000倍に希釈した。PCRまたはRun−off転写反応により得られた核酸を精製し、0,1,3,10ng/μLの水溶液を10μLずつ調製した。この核酸を熱変性後、SYBR Green II溶液990μLに添加して蛍光強度を測定し(励起波長/蛍光波長:480nm/520nm)、検量線を作成した。SYBR Green II溶液990μLにプローブ精製溶液を10μL添加し、蛍光を測定して検量線から濃度を算出した。タンパク質濃度はBCA法により定量した。
【0137】
図12からわかるように、マルチラベル化核酸プローブをゲルろ過方式のカラムで精製することにより、バックグラウンドが低減された。
【0138】
(実施例4)
<Ac−PLQMR−dUTPの合成>
まず、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)150μL中にて、50mM N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、50mM N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、25mM Ac−PLQMRを、4℃で16時間反応させることによって、NHS化PLQMR(25mM)を調製した。一方、20mM 5−(3−aminoallyl)−dUTP(aminoallyl−dUTP、SIGMA社製)を含む100mM ホウ酸緩衝液(pH8.8)の溶液100μLに対して、上記で調製したNHS化PLQMR溶液を100μL添加し、25℃で12時間反応させた。反応終了後、サンプルを超純水で10倍希釈し、HPLC(日本分光製、高速液体クロマトグラフ・ポンプ:TRI ROTAR−V型、バリアブル・ループ・インジェクタ:VL−613型、紫外可視分光検出器:UVIDEC−100−IV型)によって、表6に示す条件で精製を行った。生成物の同定はMALDI TOF−MS(BRUKER DALTONICS製、autoflex III)によって行った。この際、3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)をマトリックスとして使用した。
【0139】
【表6】
【0140】
Ac−PLQMR−dUTPを合成した後、逆相HPLCを行った際の結果を図13に示す。aminoallyl−dUTPの場合(図14参照)と比較して、疎水側に新たなピークが出現しており、このピークがAc−PLQMR−dUTPであると推測された。そこで、保持時間10.9分のピークを回収してMALDI TOF−MS分析を行った。その結果、図15に示すように、1193.26のピークが確認され、理論分子量と良く一致した結果が得られたため、Ac−PLQMR−dUTPの合成が示された。
【0141】
<各溶液の調製>
表7に示す組成で、以下の溶液を調製した。
dATPと溶媒とを含むdATP含有溶液
dCTPと溶媒とを含むdCTP含有溶液
dGTPと溶媒とを含むdGTP含有溶液
dTTPと溶媒とを含むdTTP含有溶液
Ac−PLQMR−dUTPと溶媒とを含むAc−PLQMR−dUTP含有溶液
【0142】
【表7】
【0143】
<マルチラベル化核酸プローブの調製>
まず、マウス由来のSonic hedgehog(Shh)をコードする遺伝子中の約300bpをPCR増幅するプライマを設計した。次に、PCR反応液の全dTTPのうちの80%をAc−PLQMR−dUTPに置き換えて反応液を調製してPCR(表8参照、94℃×2min+(94℃×20sec,54℃×20sec,72℃×30sec)×40サイクル)を行うことによって、Ac−PLQMR 80%DNAを得た。結果を図16に示す。
【0144】
【表8】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【化1】
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化2】
(式(2)中、A1およびA2のうち少なくとも1つは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基で残りは水素原子を表し、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化3】
(式(3)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化4】
(式(4)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の核酸検出用キットであって、
前記式(1)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が、下記式(5)で示される化合物であることを特徴とする核酸検出用キット。
【化5】
(式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(C2H4O)n−または−(C3H6O)n−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基であり、Bは水素原子またはヒドロキシル基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。)
【請求項3】
請求項2に記載の核酸検出用キットであって、
前記Xはエテニレン基、Yはメチレン基であり、Zはベンジルオキシ基であることを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項4】
請求項1に記載の核酸検出用キットであって、
前記グルタミン(Gln)残基は、FYPLQMR、YPLQMR、PLQMR、FYPLQMG、YPLQMG、YPLQM、PLQMG、FYPLQG、YPLQGまたはPLQGのアミノ酸配列中に存在することを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
トランスグルタミナーゼ(TGase)を含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物を含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸検出用キットであって、
前記リシン(Lys)残基が、MTGに認識されるアミノ酸配列中に存在することを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項8】
請求項6または7に記載の核酸検出用キットであって、
前記標識部分が、酵素および蛍光色素のうち少なくとも1つであることを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
前記酵素が、超好熱菌由来の酵素であることを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
前記Bが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つ、前記Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項1】
下記式(1),(2),(3)または(4)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸を含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【化1】
(式(1)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化2】
(式(2)中、A1およびA2のうち少なくとも1つは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基で残りは水素原子を表し、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化3】
(式(3)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【化4】
(式(4)中、Aは、グルタミン(Gln)残基またはリシン(Lys)残基もしくは第一級アミンを有する、直鎖、分岐、環状の飽和または不飽和のアルキル基、アミノアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基のうち少なくとも1つを含む置換基、Bは水素原子またはヒドロキシル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の核酸検出用キットであって、
前記式(1)で示される酵素基質修飾ヌクレオシド三リン酸が、下記式(5)で示される化合物であることを特徴とする核酸検出用キット。
【化5】
(式(5)中、XおよびYは、それぞれ独立して、エテニレン基、−(C2H4O)n−または−(C3H6O)n−(ここで、n=2,4,8,12,24)基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキレン基または炭素数2〜48のアルケニレン基であり、Zは、ジニトロフェニル基またはL−3,4−ジヒドロキシフェニル基で置換されていてもよい、炭素数1〜48のアルキル基、炭素数1〜48のアルコキシ基、炭素数6〜48のアリール基、炭素数6〜48のアリールオキシ基、炭素数7〜48のアリールアルキル基または炭素数7〜48のアリールアルキルオキシ基であり、Bは水素原子またはヒドロキシル基である。また、Y,Zは独立してLys以外のアミノ酸により少なくとも一方が置換されていてもよい。)
【請求項3】
請求項2に記載の核酸検出用キットであって、
前記Xはエテニレン基、Yはメチレン基であり、Zはベンジルオキシ基であることを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項4】
請求項1に記載の核酸検出用キットであって、
前記グルタミン(Gln)残基は、FYPLQMR、YPLQMR、PLQMR、FYPLQMG、YPLQMG、YPLQM、PLQMG、FYPLQG、YPLQGまたはPLQGのアミノ酸配列中に存在することを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
トランスグルタミナーゼ(TGase)を含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項6】
請求項1〜5いずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
リシン(Lys)残基もしくは第一級アミンまたはグルタミン(Gln)残基を有する、酵素、蛍光色素、放射性同位体を含む化合物、磁気的に検出可能な化合物、熱的に検出可能な化合物および電気的に検出可能な化合物のうち少なくとも1つである標識部分を含む標識化合物を含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸検出用キットであって、
前記リシン(Lys)残基が、MTGに認識されるアミノ酸配列中に存在することを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項8】
請求項6または7に記載の核酸検出用キットであって、
前記標識部分が、酵素および蛍光色素のうち少なくとも1つであることを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
前記酵素が、超好熱菌由来の酵素であることを特徴とする核酸検出用キット。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の核酸検出用キットであって、
前記Bが水素原子の場合には、dATP、dCTP、dGTP、dTTPのうち少なくとも1つ、前記Bがヒドロキシル基の場合には、ATP、CTP、GTP、UTPのうち少なくとも1つを含むことを特徴とする核酸検出用キット。
【図1】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図4】
【図2】
【図3】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−169878(P2011−169878A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49631(P2010−49631)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人科学技術振興機構 地域イノベーション創出総合支援事業、重点地域研究開発推進プログラム(育成研究)、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(独立行政法人科学技術振興機構 地域イノベーション創出総合支援事業、重点地域研究開発推進プログラム(育成研究)、産業技術力強化法第19条の適用を受けるもの)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【出願人】(304020292)国立大学法人徳島大学 (307)
【出願人】(390029791)日立アロカメディカル株式会社 (899)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]