説明

核酸配列決定システムおよび方法

自動または半自動で核酸を配列決定するための技術が開示される。多くの核酸部位のサンプルアレイを複数のサイクルで処理し、配列決定対象となる材料にヌクレオチドを付加し、部位に付加されたヌクレオチドを検出し、ブロック化剤およびタグの、付加されたヌクレオチドをブロック解除して、最後に付加されたヌクレオチドを同定する。このシステムの複数のパラメータを監視して、サンプルの配列決定時に問題が生じた場合に、この問題の診断および補正ができるようにする。配列決定時に品質制御ルーチンを実施して、サンプルの品質ならびに、収集したデータの品質を判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2007年1月26日に発明の名称「Image Data Efficient Genetic Sequencing Method and System」で出願された米国仮特許出願第60/897,646号(その内容全体を本明細書に援用する)ならびに、2007年1月26日に発明の名称「Nucleic Acid Sequencing System and Method」で出願された米国仮特許出願第60/897,647号(その内容全体を本明細書に援用する)の優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、広義には遺伝子配列決定の分野に関する。特に、本発明は、遺伝子フラグメントのアレイを用いて遺伝物質の自動配列決定を可能にするための改善された技術に関する。
【0003】
診断用途や他の用途での将来性が見込まれる遺伝子配列決定が、次第に遺伝子研究の重要な分野となってきている。通常、遺伝子配列決定は、RNAまたはDNAのフラグメントなどの核酸でのヌクレオチドの順番を決定することからなる。一般に分析は比較的短い配列でなされ、そこで得られる配列情報をさまざまなバイオインフォマティクス方法に使用して、フラグメントの取得元となったさらに長い遺伝物質の配列を高信頼度で決定するようフラグメントを基準配列と整列配置させるかあるいはフラグメント同士を論理的にフィットさせることができる。特徴的なフラグメントをコンピュータによって自動で調べる方法が開発されており、最近ではゲノムマッピングや個体間の遺伝的ばらつきの分析、遺伝子およびその機能の同定などに利用されている。しかしながら、既存の技術は極めて時間がかかるものであり、これによって得られるゲノム情報も当然ながらコスト高なものになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記以外にも多数の配列決定技術が現時点で調査・開発中である。これには、遺伝物質の複数のフラグメントにおけるヌクレオチドの順序を並列検出できるよう操作可能な遺伝物質のマイクロアレイを使用することも含まれる。アレイは一般に、基質上に形成または堆積された多くの部位を含む。通常はヌクレオチド単体またはヌクレオチド(オリゴヌクレオチド)の鎖である別の物質を導入し、配列決定対象となる遺伝物質のテンプレートと結合できるようにするか結合を促進することで、配列依存的な方法でテンプレートを選択的にマークする。その後、これらの部位を画像化して配列情報を集めるようにしてもよい。現行の特定の技術では、たとえば、画像データの分析によって決定される特定の部位に結合されるヌクレオチドの分析を可能にする蛍光タグまたは染料で、各ヌクレオチドタイプにタグが付くようになっている。
【0005】
このような技術は、スループットを大幅に改善し、配列決定にかかるコストを削減する上で有望であるが、配列決定に関与する分析工程のスピードと信頼性をさらに高めることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、特に器具類および分析方法に関して核酸配列決定分野の大幅な改善を提供するものである。この技術は、所望の配列決定法であればどのような方法で使用してもよく、一般にはDNAおよびRNA(cDNAを含む)の配列決定に最も有用である。この技術は、一般に核酸アレイでの場合のように個々の部位を複数含む、基質上に支持されるサンプルのヌクレオチド配列の分析に立脚している。さらに、この技術は、合成時解読(SBS)、ライゲーションによる解読、パイロシークエンス法とも呼ばれることの多い技術などを含む多種多様な配列決定法または技術と併用可能である。本技術を用いると、スループットを改善し、最終的には配列決定コストを抑えて、さらに高度に自動化または高品質の配列決定がなされることが見いだされているか、あるいはそうなると考えられる。
【0007】
したがって、本発明は、(a)アレイのヌクレオチド配列を決定できるシステムによって、複数の核酸を有するアレイに対する配列決定プロシージャのサイクルを開始するステップと、(b)システムのパラメータを評価するステップと、(c)このパラメータに基づいてアレイに対する配列決定プロシージャを変更するステップと、(d)このアレイに対する配列決定プロシージャの別のサイクルを実施するステップとを含み得る、複数の核酸を配列決定する方法を提供するものである。
【0008】
本発明はさらに、(a)自動核酸配列決定作業を実施するステップと、(b)この作業に基づいてデータを生成するステップと、(c)このデータに基づいてサンプルの品質を評価するステップとを含む、複数の核酸を配列決定する方法を提供するものである。
【0009】
また、(a)アレイのヌクレオチド配列を決定できるシステムによって、複数の核酸を有するアレイに対する配列決定プロシージャのサイクルを実施するステップと、(b)アレイの部位に存在するヌクレオチドを示す複数のシグナルを検出するステップと、(c)シグナルを評価してアレイの品質を判断するステップと、(d)この品質に基づいてアレイに対する配列決定プロシージャを変更するステップとを含む、複数の核酸を配列決定する方法も得られる。
【0010】
複数の核酸を配列決定する方法が、(a)アレイに対する核酸配列決定プロシージャを実施するシステムでアレイまたは核酸にプロセス流体を導入するステップと、(b)このシステムを介して、アレイの配列決定プロシージャの少なくとも1つのサイクルを実施するステップとを含み得るものであり、プロセス流体をアレイに導入する前に加熱または冷却する。
【0011】
複数の核酸を配列決定する方法が、(a)アレイのヌクレオチド配列を決定できるシステムによって、複数の核酸を含むアレイに対する配列決定プロシージャのサイクルを実施するステップと、(b)アレイの部位に存在するヌクレオチドを示す複数のシグナルを検出するステップと、(c)ステップ(a)および(b)を繰り返すステップとを含み得るものであり、ステップ(a)と(b)のスケジューリングを一時的に切り離す。
【0012】
複数の核酸を配列決定する方法が、(a)アレイのヌクレオチド配列を決定できるシステムによって、複数の核酸を有するアレイに対する配列決定プロシージャのサイクルを実施するステップと、(b)アレイを画像化して画像データを生成するステップと、(c)配列内におけるアレイの核酸の位置に存在するヌクレオチド種を示す配列データを画像データから誘導するステップと、(d)ステップ(a)、(b)、(c)を繰り返すステップと、(e)配列データを維持し、アレイでの配列決定プロシージャの完了前に、配列データの取得元となった画像データの少なくとも一部を削除するステップとを含み得るものである。
【0013】
また、本発明は、複数の核酸の配列決定をするためのシステムも提供するものである。このシステムは、タグ付きヌクレオチドをアレイの部位に付加するよう構成された複数のプロセシングステーションと、部位の核酸配列を検出し、これを表すデータを生成するプロセシングステーションが散在する複数の検出ステーションとを含み得るものである。
【0014】
また、アッセイ反応プロトコールを容易にするための流体工学ハンドリングシステムと、配列決定データを取得するための画像化システムと、配列決定システムの動作時にシステムパラメータを測定するよう構成された診断コンポーネントと、多段分析の結果に基づいて配列決定システムの品質を評価するよう構成された品質評価回路と、診断コンポーネントまたは品質評価回路が収集したデータに基づいて配列決定システムの動作条件を変更するよう構成された制御回路とを含む、複数の核酸の配列決定をするためのシステムも得られる。
【0015】
全図を通して同様の構成要素には同様の符号を付した添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで、本発明のこれらの特徴および他の特徴、態様および利点について、より一層理解できよう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本技術の態様を取り入れている配列決定システムの概要図である。
【図2】本技術の態様を実装しているマルチステーション配列決定システムの概要図である。
【図3】図1または図2のシステムと連動してアレイにおける個々の部位での配列の検出に使用できる模範的な画像化システムの概要図である。
【図4】システムで使用できる配列決定法の一例として、SBS技術による前図でのシステムにおける配列決定を線図で表したものである。
【図5】本技術の態様による配列決定およびサンプル品質を制御するための模範的なロジックを示すフローチャートである。
【図6】試験対象となるサンプルの品質を判断するためなどの、本技術の一態様による初期配列決定サイクル品質制御法の模範的なロジックを示すフローチャートである。
【図7】本技術による塩基またはヌクレオチド付加の品質を制御するための模範的なロジックを示すフローチャートである。
【図8】本技術の態様によるブロック解除品質制御のための模範的なロジックを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで図面に移り、まずは図1を参照すると、サンプル14の遺伝物質の配列を判断するよう設計されたシーケンサ12を含む形で、配列決定システム10の線図が示されている。シーケンサは、多種多様な方法で、なおかつ現ステージで企図されている実施形態での場合のような標識ヌクレオチドを用いるプライマー伸長法による配列決定をはじめとする多種多様な技術ならびに、ライゲーションまたはパイロシークエンス法による配列決定などの他の配列決定技術に基づいて、機能し得るものである。通常、下記においてより詳細に説明するように、シーケンサ12は反応サイクルおよび画像化サイクルでサンプルを徐々に移動して、サンプルの個々の部位でヌクレオチドをテンプレートに結合させてオリゴヌクレオチドを徐々に構築する。一般的な構成では、サンプルはサンプル調製システム16で調製されることになる。このプロセスは、支持体でDNAまたはRNAのフラグメントを増幅して、DNAまたはRNAフラグメントの多くの部位(その配列は配列決定プロセスで判断される)を作製することを含むものであってもよい。配列決定に適した増幅後核酸の部位を生成するための模範的な方法として、ローリングサークル増幅(RCA)(Lizardi et al.,Nat.Genet.19:225−232(1998))、ブリッジPCR(Adams and Kron,Method for Performing Amplification of Nucleic Acid with Two Primers Bound to a Single Solid Support、Mosaic Technologies,Inc.(Winter Hill、MA);Whitehead Institute for Biomedical Research,Cambridge,MA,(1997);Adessi et al.,Nucl.Acids Res.28:E87(2000);Pemov et al.,Nucl.Acids Res.33:e11(2005);または米国特許第5,641,658号明細書)、ポロニー生成(Mitra et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:5926−5931(2003);Mitra et al.,Anal.Biochem.320:55−65(2003))またはエマルションを活用したビーズでのクローン増幅(Dressman et al.、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:8817−8822(2003))またはビーズベースのアダプタライブラリへのライゲーション(Brenner et al.,Nat.Biotechnol.18:630−634(2000);Brenner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97:1665−1670(2000));Reinartz,et al.,Brief Funct.Genomic Proteomic 1:95−104(2002))があげられるが、これに限定されるものではない。サンプル調製システム16では一般に、部位のアレイの形を取る場合もあるサンプルを、処理および画像化用のサンプル容器内に配置する。
【0018】
シーケンサ12は、流体工学制御/送達システム18と、検出システム20とを含む。流体工学制御/送達システム18は、全体を参照符号22で示すように複数のプロセス流体を受け入れて、全体を参照符号24で示すプロセスにおいてサンプルのサンプル容器で循環させる。当業者であれば明らかであろうように、プロセス流体は、個々の配列決定ステージごとに違ったものとなる。たとえば、標識ヌクレオチドを用いるSBSでは、サンプルに導入されるプロセス流体は、一般的な4つのDNAタイプのタグ付きヌクレオチドおよびポリメラーゼを含むことになり、各ヌクレオチドが、独特の蛍光タグとこれに結合したブロック化剤を含む。蛍光タグは、アレイの個々の部位においてテンプレート核酸にハイブリダイズされるプローブに、どのヌクレオチドが最後に付加されたかを検出システム20で検出できるようにするものであり、ブロック化剤は、ひとつの部位で1サイクルあたり2つ以上のヌクレオチドが付加されるのを防止するものである。ライゲーションによる配列決定などの他のプロセスでは、このステージでのプロセス流体に、独特な蛍光タグが結合したクエリプローブを含む。同様に、クエリプローブは、アンカープライマーへのクエリプローブのライゲーションを可能にする構成で各部位にてテンプレートに結合し、各部位でのテンプレートの配列決定用の検出システム20によって検出できるものである。
【0019】
配列決定サイクルの他のフェーズで、プロセス流体22は、他の流体と、ヌクレオチドから伸長ブロックを除去するか、ヌクレオチドリンカーを切断するか、あるいはライゲートしたオリゴヌクレオチドから塩基を除去して伸長可能な新たなプローブ末端を放出するための試薬などの試薬を含むことになる。たとえば、サンプルのアレイでの個々の部位で反応が起こると、タグ付きヌクレオチドを含む初期のプロセス流体が1回または複数回のフラッシング操作でサンプルから洗い流される。このようにすれば、検出システム20での光学的イメージングなどによってサンプルを検出できる。続いて、流体工学制御/送達システム18によって試薬を加え、最後に付加されたヌクレオチドをブロック解除し、各々から蛍光タグを除去する。その後、流体工学制御/送達システム18では一般に、サンプルを再度洗浄し、このサンプルが以後の配列決定サイクル用に調製されることになる。本明細書で説明する方法および装置にて使用可能な模範的な流体・検出構成が、国際公開第07/123744号パンフレットに記載されている。通常、このような配列決定は、配列決定で導かれるデータの品質が収率の累積損失によって低下するか、あるいは予め定められたサイクル数を終えるまで継続できるものである(詳細については後述する)。
【0020】
プロセスにおけるサンプル24の品質ならびに、システムから導き出されるデータの品質、さらにはサンプルの処理に用いられるさまざまなパラメータを、品質/プロセス制御システム26で制御する。品質/プロセス制御システム26は一般に、流体工学制御/送達システム18および検出システム20内のセンサおよび他の処理システムと通信する、1つまたは複数のプログラムされたプロセッサまたは汎用コンピュータあるいはアプリケーション特有のコンピュータを含むことになる。たとえば、配列決定実施時の機器の動作パラメータを変更できるフィードバックループの一部としてなど、高度な品質およびプロセス制御に、詳細については後述する多数のプロセスパラメータを利用してもよい。
【0021】
シーケンサ12は、システム制御/オペレータインタフェース28とも通信し、最終的には後処理システム30とも通信する。ここで再度、システム制御/オペレータインタフェース28は一般に、プロセスパラメータ、獲得したデータ、システム設定などを監視するよう設計された汎用コンピュータあるいはアプリケーション特有のコンピュータを含むことになる。オペレータインタフェースについては、ローカルで実行されるプログラムで生成してもよいし、シーケンサ12内で実行されるプログラムで生成してもよい。通常これらは、シーケンサのシステムまたはサブシステムの動作状態、取得したデータの品質などを可視表示できるものである。システム制御/オペレータインタフェース28はまた、人間のオペレータとシステムとの間を橋渡しして、オペレータが動作を調整あるいは配列決定を開始および中断したり、システムハードウェアまたはソフトウェアで望ましい場合もある他のインタラクションを実施できるようにするものでもある。たとえば、システム制御/オペレータインタフェース28は、人間のオペレータからの入力なしで、配列決定プロシージャで実施されることになるステップを自動で開始および/または修正することができる。これに代わってあるいはこれに追加して、配列決定プロシージャで実施されることになるステップに関する推奨事項をシステム制御/オペレータインタフェース28で生成し、この推奨事項を人間のオペレータに分かるように表示するようにしてもよい。このモードでは、もちろん、配列決定プロシージャの開始および/または修正ステップの前に人間のオペレータが入力を行うことができる。また、システム制御/オペレータインタフェース28は、シーケンサ12によって自動で実施されることになる配列決定プロシージャで人間のオペレータが特定のステップを選択できるようにする一方で、他のステップの開始および/または修正前に人間のオペレータからの入力を求めるオプションを提供するものであってもよい。いずれにしても、自動モードとオペレータが関与するモードの両方を使えるようにしておくことで、配列決定プロシージャ実施時の柔軟性が高まることがある。また、自動でのインタラクションと人間が制御するインタラクションとを組み合わせることで、人間のオペレータから集めた入力に基づく適応型の機械学習によって新たな配列決定プロシージャおよびアルゴリズムを生成および修正できるシステムがさらに可能になることもある。
【0022】
また、後処理システム30は一般に、画素化した画像データの形であってもよい検出された情報を受信し、この画像データから配列データを導き出す、プログラムされたコンピュータを1台または複数台含む。後処理システム30は、配列決定が進行する際に(特定の色または強度をコードする画像データの分析によるなどの方法で)個々の部位に結合するヌクレオチドに結合した染料の色を区別し、個々の部位の位置におけるヌクレオチド配列のログを記録する画像認識アルゴリズムを含むものであってもよい。こうして徐々に、後処理システム30はサンプルアレイの個々の部位についての配列リストを構築し、これをさらに処理して、さまざまなバイオインフォマティクスアルゴリズムによって、材料の伸長した長さ分の遺伝情報を確立することができる。
【0023】
配列決定システム10は、個々のサンプルを取り扱うように構成したものであってもよいし、図2に概略的に示す方法でスループットがさらに高くなるよう設計されてもよい。図2は、試薬および他の流体の送達用、さらには徐々に構築されるヌクレオチド配列の検出用に、複数のステーションが設けられたマルチステーションシーケンサ32を示す。図示の実施形態では、シーケンサ32は、架台上などの平面上に配置された一連のステーションを含むものであってもよいし、複数の面に配置された一連のステーションを含むものであってもよい。サンプルをシーケンサに挿入できるようにする目的で、一般には挿入/抜出ステーション34が設けられることになる。このステーションは、さまざまな別のステーションにて自動で実施される配列決定作業のプロセスフローで、人間のオペレータまたはロボットがサンプルを装置に挿入し、このサンプルをロッジできるよう物理的に構成されることになる。挿入/抜出ステーション34から以降は、機械的な搬送システム(図示せず)が他のステーション間でサンプル24を移動させて処理する機能を果たすことになる。
【0024】
図2に示す実施形態では、別のステーションに、流体ステーション36、検出ステーション38、ブロック解除ステーション40を含むことになるが、必要なステップのプロセスおよびシーケンス次第では、これらのステーションに他のステーションを含むかまたは散在させるようにしてもよい。たとえば、流体ステーション36は、配列決定が進む際に個々のヌクレオチドの結合を可能にするなど、試薬および他のプロセス流体をサンプル24に導入する機能を果たすことになる。流体ステーション36はまた、サンプルからの試薬の洗浄またはフラッシングも可能にするものである。これに代わってあるいはこれに追加して、サンプルを支持するステージを、システム内でのその位置とは関係なくサンプルから液体(液体の試薬を含む)の除去が可能なように構成することもできる。たとえば、このステージに、サンプルがいずれかのステーションにあるとき、あるいはサンプルがステーション間にあるときですら、サンプルから液体を除去できるよう稼働されるバルブ式真空ラインを含むことが可能である。有用な真空システムが、たとえば、本明細書に援用する係属中の米国特許出願第11/521,574号明細書に記載されている。
【0025】
検出ステーション38は、配列決定が進む際にサンプルの個々の部位に付加される特定のヌクレオチドを検出するよう設計された、光学機器、電気機器または他の機器などの所望の検出回路を含むものであってもよい。このような検出用の模範的な光学システムについては、図3を参照して後述する。ブロック解除ステーション40は、特にSBSシステムで、2つ以上のヌクレオチドが一度に結合するのを防ぐ保護分子を除去するのに用いられる試薬を送達する目的で採用できるものである。また、ブロック解除ステーション40を使用して、配列決定が進む際にヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドから蛍光染料および同様の分子を切断してもよい。
【0026】
通常、サンプル24は、シーケンサ32によって、矢印42で概略的に示すような流れが進行する方向に進むことができる。これは、シーケンサでのサンプルの通常の流れに対応するものであってもよい。ただし、全体を参照符号44で示すように、ステーション内でサンプルを逆流させることもできる。このような逆流は、サンプルの再画像化、試薬の再導入、再フラッシングまたは先行するステーションで実施可能なほぼどのような作業でも可能にする上で望ましいことがある。また、図1のシステムなどでのシステムでのサンプルの進行を、一時的に切り離してもよい点にも注意されたい。すなわち、すべてのサンプルを同じサイクル数だけステーションに通す必要はないし、同じサイクルですべてのサンプルを多サイクルプロセスに出入りさせる必要もない。
【0027】
サンプルを処理から外して再処理してもよく、特に1つまたは複数の作業が最適な形または所望の形で実施されていないことを流体工学制御システム18または品質/プロセス制御システム26で検出した場合に、このような処理のスケジューリングをリアルタイムに変更してもよい。サンプルをプロセスから外すまたは相当な時間にわたって処理を中断する実施形態では、サンプルを保管状態におくことが可能である。サンプルを保管状態におくことには、サンプルの環境またはサンプルの組成を変えて、生体分子試薬、バイオポリマーまたはサンプルの他の成分を安定させることを含み得る。サンプル環境を変えるための模範的な方法としては、温度を下げてサンプルの構成成分を安定させる、不活性ガスを加えてサンプルの構成成分の酸化を抑える、光源から離してサンプルの構成成分の光脱色または光劣化を抑えることあげられるが、これに限定されるものではない。サンプル組成物を変化させるための模範的な方法として、酸化防止剤、グリセロールなどの安定化用の溶媒を加える、酵素を安定させるレベルまでpHを変化させる、あるいは、他の構成成分を分解または変化させる構成成分を除去することがあげられるが、これに限定されるものではない。また、サンプルを処理から外す前に配列決定プロシージャにおける特定のステップを実施してもよい。たとえば、サンプルを処理から外すべきであると判断された場合、このサンプルを保管する前に洗浄できるよう、サンプルを流体工学制御/送達システム18に送ってもよい。繰り返すが、これらのステップを利用してサンプルからの情報が失われないようにすることができる。
【0028】
さらに、特定の予め定められたイベントが発生した場合に、いつでもシーケンサ12によって配列決定作業を中断できる。これらのイベントとしては、望ましくない温度、湿度、振動または迷光などの許容できない環境要因;不適切な試薬送達またはハイブリダイゼーション;サンプル温度の許容できない変化;許容できないサンプル部位数/品質/分布;信号対雑音比の悪化;不十分な画像データなどがあげられるが、これに限定されるものではない。このようなイベントが発生したからといって、必ずしも配列決定作業の中断が必要になるわけではない点に注意されたい。むしろ、このようなイベントは、配列決定作業を継続すべきであるか否かを判断する上で品質/プロセス制御システム26によって重み付けされる要因であり得る。たとえば、特定のサイクルの画像をリアルタイムに分析し、そのチャネルのシグナルが低いことが示された場合、露光時間を長くして画像を再露光したり、特定の化学処理を繰り返すことが可能である。画像にフローセルの気泡が認められる場合、試薬の量を増やして機器を自動でフラッシュし、気泡を除去した上で画像を記録しなおせばよい。流体工学上の問題で1サイクルでの特定のチャネルについて画像にシグナルが全くない場合は、機器ではその特定のチャネルに対する走査と試薬の送達を自動で中止し、分析時間と試薬の消費量を節約することが可能である。
【0029】
上記では、このシステムをサンプルの物理的な移動によって異なるステーションとの間をサンプルがインタフェースするシステムに関して例示したが、本明細書に記載の原理は、サンプルの移動を必要としない他の手段で各ステーションでのステップを実現するシステムにも適用可能であることが理解できよう。たとえば、ステーションにある試薬を、さまざまな試薬の入ったリザーバに接続された流体システムによってサンプルまで送達することが可能である。同様に、1つまたは複数の試薬ステーションと流体連通状態にあるサンプルを検出するよう光学系を構成することが可能である。よって、検出ステップについては、本明細書に記載の特定の試薬の送達前、送達時、送達後に実施することが可能である。よって、1つまたは複数の処理ステップを打ち切ることでサンプルを処理から効果的に外すことができ、必ずしもサンプルを装置内のその位置から物理的に除去することなく、これを流体送達または光学検出することができる。
【0030】
図1のシステムでの場合と同様に、流体工学制御システム18および品質/プロセス制御システム26にさまざまなステーションが連結され、これらの作業の制御ならびに、両方のサンプルやさまざまなプロセシングステーションで実施される作業の品質の制御ができるようになっている。さらに、図1のシステムでの場合と同様に、シーケンサのさまざまなステーションがシステム制御/オペレータインタフェース28に連結され、収集されるデータは最終的には後処理システム30に送られる。そこでは、検出ステーション38によって生成される一般に画像データである検出済みのデータから、配列データが導かれる。
【0031】
本発明のシステムを使用すれば、複数の異なるサンプルで核酸を連続的に配列決定することが可能である。本発明のシステムは、ある配置でのサンプルと、配列決定ステップを実施するための配置のステーションとを含むように構成可能なものである。サンプルの配置状態にあるサンプルを、互いに決まった順序および決まった間隔でおくことが可能である。たとえば、ある配置での核酸アレイを円形架台の外側の縁に沿っておくことが可能である。同様に、ステーションを互いに決まった順序および決まった間隔でおくことも可能である。たとえば、ステーションを、外周がサンプルアレイの配置構成のレイアウトに対応する円形の配置構成でおくことができる。配列決定プロトコールで異なる操作を実施するようステーション各々を構成することが可能である。ステーションで各反応部位の反応スキームの所望のステップが実施されるよう2つの配置構成(すなわち、サンプルアレイとステーション)を互いに相対的に移動させることが可能である。ステーションの相対位置ならびに相対移動のスケジュールについては、サンプルアレイがステーション全体のセットと相互作用するサイクルを完了したら、単一の配列決定反応サイクルが完了するように、配列決定反応スキームにおける反応ステップの順序および時間と相関させることができる。たとえば、ステーションの順番、ステーション間の間隔、アレイの通過速度が、完全な配列決定反応サイクルの試薬送達および反応時間に対応する場合に、単一ヌクレオチドを加えることで、アレイ上の核酸標的にハイブリダイズされるプライマー各々を伸長させ、検出してブロック解除することが可能である。
【0032】
上述し、なおかつ詳細については後述する構成によれば、個々のサンプルアレイで達成される各ラップ(または円形架台を用いる実施形態では完全回転)を、アレイ上の標的核酸各々についての単一ヌクレオチドの判断に対応させることができる(すなわち、配列決定ランの各サイクルで実施される取り込み、画像化、切断、ブロック解除のステップを含む)。さらに、システムに存在するいくつかのサンプルアレイ(たとえば円形架台上など)が、システム全体で同様の繰り返しラップに沿って同時に移動することで、システムでの連続した配列決定がなされる。本発明のシステムまたは方法を使用して、配列決定サイクルの第1の反応ステップに基づいて、インキュベーション時に第1のサンプルアレイに試薬を能動的に送達またはそこから除去することが可能であり、あるいはサイクルの他の反応ステップが、第2のサンプルアレイのために実施される。よって、ある特定の時間にサンプルアレイが配列決定サイクルの異なるステップに供されている場合ですらも、複数のサンプルアレイで同時に反応が起こるよう、サンプルアレイの配置構成との空間関係および時間関係において一組のステーションを構成し、これによって連続かつ同時の配列決定を実施できるようにすることが可能である。このような円形システムの利点は、化学と画像化時間とが不釣り合いである場合に自明である。操作に短時間しか必要ない小さなフローセルであれば、機器がデータの取得に使う時間を最適化するために多数のフローセルでの実施を並列に行えることは都合がよい。画像化時間と化学時間とが等しい場合、単一のフローセルでサンプルの配列決定をしているシステムは、画像化サイクルのときの半分の時間で化学サイクルを実施し、よって、2つのフローセルを処理できるシステムでは、一方を化学サイクルに、他方を画像化サイクルに用いることができよう。画像化時間が化学時間の十分の一である場合、データを連続的に取得しながら化学プロセスのさまざまなステージでシステムに10のフローセルを持たせることが可能である。
【0033】
本発明の実施形態は、システムで第3のサンプルアレイで核酸の配列決定を連続的に行いながら第1のサンプルアレイと第2のサンプルアレイを交換できるよう構成されるシステムを提供するものである。よって、他のサンプルアレイでの配列決定反応を中断することなく、システムに対して第1のサンプルアレイを個別に追加または除去することが可能であり、これによって、一組のサンプルアレイに対する連続配列決定の利点が得られる。さらに別の利点として、システム全体で個々のサンプルアレイで異なる数のラップを完了でき、他の部位での反応が邪魔されないような独立した形でシステムに対してサンプルアレイを足し引きすることが可能であるため、異なる長さでの配列決定を、システムで連続的かつ同時に実施できることがあげられる。
【0034】
図3は、現段階で企図された光学システムによるアレイの部位に付加されたヌクレオチドを検出するよう設計された模範的な検出ステーション38を示す。上述したように、物理的に異なる位置にある装置の2つまたはそれよりも多いステーションにサンプルを移動することが可能であり、あるいは、必ずしも異なる位置に移動されるわけではない1つまたは複数のステーションと連通したサンプルで1つまたは複数のステップを実施することが可能である。よって、特定のステーションに関する本明細書での説明は、サンプルがステーション間で移動するか否か、ステーションがサンプルを移動させるか、あるいはステーションとサンプルとが互いに静止状態にあるか否かを問わず、多種多様な構成でのステーションに関するものであると理解されたい。図3に示す実施形態では、1つまたは複数の光源46によって、状態調節光学系48に入射される光線を得る。光源46は、1つまたは複数のレーザを含むものであってもよく、一般に異なる対応波長で蛍光を発する染料の検出には複数のレーザが使用される。光源は、状態調節光学系でのビームの濾波および成形のための状態調節光学系48にビームを入射させるものであってもよい。たとえば、現段階で企図される実施形態では、状態調節光学系48は、複数のレーザからのビームを組み合わせ、焦点調節光学系50に運ばれる略線形の放射線を生成する。このレーザモジュールはさらに、各レーザの出力を記録する測定要素を含むものであってもよい。出力の測定については、それぞれの画像で均一の曝露エネルギ、よって均一なシグナルを得るために、画像を記録する時間の長さを制御するためのフィードバックメカニズムとして使用できるものである。測定要素でレーザモジュールの故障が検出された場合、機器では「保持用バッファ(holding buffer)」を用いてサンプルをフラッシュし、レーザの障害を補正できるまでサンプルを保存することが可能である。
【0035】
サンプル24は、サンプルを三次元で適宜位置決めでき、かつ、サンプルアレイでの部位の進行的な画像化のためにサンプルを配置できるサンプル位置決めシステム52で位置決めされる。現段階で企図される実施形態では、配列決定の対象となる個々の部位が位置するアレイの1つまたは複数の表面に、焦点調節光学系50によって共焦点的に放射を送る。フォーカスされたビームの光の波長によって、各部位でヌクレオチドに結合した染料の蛍光がゆえに放射のレトロビームがサンプルから戻ってくる。
【0036】
続いて、ビームの異なる波長を分離し、これらの分離されたビームを1つまたは複数のカメラ56に送るようビームを濾波できるレトロビーム光学系54を介して、レトロビームが戻ってくる。カメラ56は、装置内の位置に衝突するフォトンに基づいて画素化された画像データを生成する電荷結合素子などをはじめとして、どのような好適な技術に基づくものであってもよい。カメラは画像データを生成し、この画像データが画像処理回路58に送られる。通常、処理回路58は、アナログデジタル変換、スケーリング、フィルタリング、サンプルの特定位置における複数の部位を適宜かつ正確に画像化するための複数のフレームでのデータの関連付けなどのさまざまな作業を実施することができる。画像処理回路58は、画像データを格納するものであってもよく、最終的にはこの画像データを後処理システム30に送ることになる。そして、そこで画像データから配列データを導き出すことができる。検出ステーションで使用可能な、特に有用な検出装置としては、たとえば、米国特許出願公開第2007/0114362号明細書(米国特許出願第11/286,309号明細書)および国際公開第07/123744号パンフレット(各々を本明細書に援用する)に記載されているものなどがあげられる。
【0037】
図4は、本発明のヌクレオチド再捕捉および再利用技術から利益を得られるオリゴヌクレオチドの合成技術による配列決定での一般的な反応サイクルを示す。通常、図4にまとめた合成作業は、多くの部位62および64が形成されるサポート60を含むサンプル24で実施できる。各サンプル24の調製時、このような多くの部位を形成でき、その各々が全体を参照符号66で示すような遺伝物質の独特なフラグメントを有する。これらのフラグメントは、配列決定対象となるDNAまたはRNAのテンプレートを構成するものであってもよい。フラグメントは、従来技術において周知の方法を用いて生物学的起源から単離可能である。増幅方法を利用する実施形態では、フラグメントが、生物学的起源から単離されるDNAまたはRNAの単位複製配列であってもよい。各テンプレートは、合成プロセスで相補的(complimentary)ヌクレオチド(またはその類似体)に対して独特に結合する多数のマーまたは塩基68を含む。配列決定プロセスは、アンカープライマー70をテンプレート各々に結合させることから開始される。このアンカープライマーは、テンプレート配列の部分のこれらと結合する相補的塩基72を含む。全体を参照符号74で示すテンプレートの残りの部分は、その配列決定対象となる部分を構成する。配列決定対象となる部分の長さ76は可変であり、現段階で企図される実施形態では、25から40塩基まで延在あるいは、50、75,または100塩基と多く延在することもある。
【0038】
配列決定が進むにつれて、導入される処理流には4つの一般的なDNAヌクレオチドがすべて含まれることになり、参照符号78で示されるように、このうち1つがテンプレートで次に得られる塩基と対向する位置でプライマーを付加することになる。付加されたヌクレオチドは、テンプレートに対して相補的な塩基80ならびに蛍光タグ82およびブロッキング分子84を含むことになる。当業者であれば明らかなように、本明細書で使用する場合、図示のプロセスでの「ヌクレオチド」という用語は一般に、DNA分子の構成元となった単位を含む。本技術に基づいてどのようなヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを再捕捉・再利用してもよいが、多くの実用的な用途では、これらにデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)を含み、各々が単一の窒素塩基(アデニン、グアニン、シトシンまたはチミン)を有する。全体を参照符号86で示すように、ポリメラーゼの活性がゆえに相補的ヌクレオチドがプライマーに付加される。図4において全体を参照符号88、90および92で示すように、テンプレートと結合している特定のひとつ以外の他のヌクレオチドも、プロセス流体に存在することになる。テンプレートと結合していないヌクレオチドは、後でフラッシング作業の際にサンプルから洗い流され、上述したような再捕捉および再利用対象となる廃液流で排出される。
【0039】
オリゴヌクレオチド配列の分析に利用される上述したタイプの配列決定システムは、自動かつ多数の方法で調節されるものであってもよい。本技術は、このようなシステムの多数のパラメータの自動検出と、このようなパラメータに基づく配列決定プロセスの制御とを提供するものである。本発明によって実施される性能および品質の制御は通常、1つまたは多くのサンプルアレイでの正常な配列決定作業を可能にするものであってもよく、サンプルアレイの性能または品質、流体工学制御/送達システムの性能、検出システムの性能またはこれらのサブコンポーネントまたはサブシステムを有する、検出された対象に応じてこれを変化させてもよい。品質または性能の例外または異例が検出された場合は、詳細については後述するように、改善策をとってシステム性能や特定の配列決定サイクルステップの再配列または再実行(ヌクレオチド付加、画像化、ブロック解除など)を補正してもよいし、あるいは配列決定を一緒に中断させてもよい。配列決定は時間と材料の投資を表すため、失敗することが分かっているか、少なくとも消費される時間と材料を保証するのに十分な値ではない結果を生むことが分かっている合成手順の継続を避けるステップを取りつつ可能であれば配列決定を継続するのに改善策がうまくいく場合もある。よって、改善策は高信頼度の配列決定データが得られる尤度を増すものである。
【0040】
図5は、この方法に基づいて配列決定作業を実施および制御するための模範的なロジックを表している。全体を参照符号94で示す配列決定作業は、ステップ96で示されるように、サンプルアレイを配列決定システムにロードすることから始まる。上述したように、さまざまなアレイ構成の場合と同様に多数の異なる方法を採用できる。現段階で企図される実施形態では、たとえば、多くの遺伝的に異なる部位からなるアレイを利用し、各部位が配列決定対象となる多くの同一のオリゴヌクレオチド、テンプレートまたはフラグメントによって実装される。アレイをサンプル容器にロードし、試薬および他のプロセス流体をサンプルに導入し、反応(塩基付加およびブロック解除)、フラッシングなどのためにサンプル容器全体に回すことができるように流体工学制御/送達システムと連結してもよい。
【0041】
本発明で用いるアレイは、異なる反応部位のような1つまたは複数の基質に存在する異なる反応部位を、その相対位置に応じて分けることのできるどのような集まりであってもよい。一般に、核酸などの単一種のバイオポリマー、を個々の反応部位それぞれに結合する。しかしながら、特定種のバイオポリマーの複数のコピーを特定の反応部位に結合してもよい。全体としてのアレイは一般に、複数の異なる部位に結合された複数の異なるバイオポリマーを含むことになる。同一基質のアドレス指定可能な異なる位置に反応部位を位置させることもできる。あるいは、ビーズなどの各々が異なる反応部位を持つ別の基質をアレイに含むことも可能である。
【0042】
図5のステップ98では、塩基またはヌクレオチド(またはライゲーションによる配列決定またはハイブリダイゼーションによる配列決定などのプロセスの場合はオリゴヌクレオチド)を、採用する特定の配列決定法に基づいてアレイの部位に付加する。たとえば、ポリメラーゼまたはリガーゼなどの酵素を含む、このステップで使用する他の生体分子試薬も送達可能である。たとえば、SBSでは、ポリメラーゼと4つの一般的なヌクレオチドタイプ(各々がブロック化剤と独特な蛍光染料を含む)をサンプルアレイに導入し、各部位のオリゴヌクレオチドテンプレートと反応させる。ステップ98には、所望の反応に合った十分な時間が経過した後、ポリメラーゼおよびヌクレオチドサンプルのフラッシングも含む。ステップ100では、部位と最後に結合されたヌクレオチドが検出される。上述したように、この検出は多種多様な方法で実施でき、現段階で企図される実施形態では光学検出が好まれる。同じく上述したように、検出ステップには、アレイ上の部位を徐々に走査して、個々の部位を同定し、最終的には各部位で一番最後に結合されたヌクレオチドを同定するために処理される画像データを生成することも含み得る。
【0043】
ステップ102では、現行のサイクルが初期の配列決定サイクルであるか否かを論理で判断する。上述したように、配列決定は、塩基付加、検出およびブロック解除の多数の同様のサイクルを含み得るものであり、25から40またはそれよりも多いこのようなサイクルが現段階で企図される。現行のサイクルが初期サイクルである場合、ステップ104に示すように初期サイクル品質制御ルーチンを実施する。このルーチンは、詳細については図6を参照して後述するようなアレイの1つまたは複数の品質を判断するよう構成できるものである。初期のサイクル品質制御ルーチンは、配列決定システムでなされることになる補正を引き起こし得る、あるいは、個々のサンプルアレイを取り扱うような方法で変化を引き起こし得ることに注意されたい。すなわち、特定のステップを再実施してもよいし、後述するような初期のサイクル品質制御に基づいてシステムを変化させてもよい。
【0044】
配列決定が以下のルーチン104を継続すると仮定すると、論理はステップ106に進み、配列決定の塩基付加ステップの品質を評価するためのルーチンが実施される。塩基付加品質制御ルーチン106の現段階で企図される詳細については、図7を参照して後述する。通常、しかしながら、塩基付加品質制御ルーチンは、配列決定システムのパラメータを評価して、システムの動作設定に変化をさせるべきであるか否か、あるいは、同一または異なる条件で配列決定を継続できるまたは継続すべきであるか否かを判断する。初期のサイクル品質制御104の場合と同様に、塩基付加品質制御ルーチン106が、特定の配列決定ステップの再実施あるいは、配列決定プロセス全体の中止につながることもある。
【0045】
別の実施形態では、ステップ100の後かつステップ102の前にステップ106を実施することができる。この順序は、ステップ106に関与するクエリとステップ104がサンプルおよびシステムの特徴または量を評価する場合に有用な情報を与えると都合がよい場合がある。さらに、図6〜図8の詳細については後述するように、図5のさまざまなQCステップで例示した異なるクエリおよびステップを、本明細書にて具体例をあげた異なる順序で実施することも可能であるし、2回以上多種多様な組み合わせで繰り返し、特定の合成技術または合成システムに合わせることも可能である。
【0046】
ステップ108では、現行のサイクルが配列決定の最後のサイクルであるか否かを判断することを論理が求める。このステップではいくつかのシナリオを想定できる。たとえば、配列決定システムをプログラムして、予め定められたサイクルだけ実施するようにしてもよく、この場合は予め定められたサイクル数に達したら配列決定が終了する。あるいは、システムが集めた特定のデータの品質を評価し、所望の品質のデータが依然として回収対象であるか否かを判断してもよい。すなわち、下記で概要を説明するように、段階で企図される品質制御ルーチンにおいて、信号対雑音比を評価して塩基付加作業および画像化作業で、個々の部位に付加されるヌクレオチドのタイプを適宜区別できるか否かを判断してもよい。このような付加がなされるか、画像品質または個々の部位に結合したヌクレオチドを区別する機能が望ましくないレベルにあるとき、現行のサイクルが特定のサンプルアレイの配列決定の最後のサイクルである旨をシステムで示してもよい。もちろん、他の配列決定終了シナリオを実施してもよい。現行のサイクルが最後のサイクルであると判断された場合、ステップ110に示すように終了ランプログラムを実施してもよい。通常、このようなプログラムは、画像データの処理、データのエクスポート、サンプルアレイ容器をシステムから取り出すための人間のオペレータまたはロボットへの通知などを含むことができる。
【0047】
現行のサイクルが最後の配列決定サイクルであると判断されなかった場合、論理はステップ112に進んで、各部位で最後に付加されたヌクレオチドからブロック化剤および蛍光染料を取り除いてもよい。ステップ114では、部位または廃液流の廃棄物を別の品質制御のために検出してもよい。たとえば、ステップ114での部位または廃棄物の別の画像化を利用して、各部位で(または後述するような制御部位で)染料が蛍光を発し続けているか否かを判断することで部位が適宜ブロック解除されたか否かを判断してもよい。あるいは、廃棄物の検出から、特定の波長での蛍光であるか放射を吸収するブロック化剤が廃液流中に十分なレベルで存在するか否かを判断し、所望のレベルのブロック解除が起こったことを示してもよい。このような検出が所望のものではない場合、ステップ114は任意であり、プロセスから削除しても構わない。ステップ116では、ブロック解除作業を評価するための品質制御ルーチンが実施される。現在企図されるブロック解除品質制御ルーチンの詳細については、図8を参照して後述する。ステップ116の後、論理はステップ98に戻り、以後の配列決定サイクルのために別の塩基を付加することができる。
【0048】
図5に示し、上述したような配列決定作業を実施および制御するための論理は、単なる模範例である。この論理は特定の配列決定技術の文脈で例示したものである。この論理を修正して、異なる配列決定技術に対応できることは理解できよう。たとえば、ブロック化群のないヌクレオチドを用いるパイロシークエンス技術が実施されることが多い。よって、パイロシークエンス法を実施するための論理には、図5にて112、114および116で示されるステップなどのブロック解除に関するステップを含む必要がない。別の例として、パイロシークエンス技術では一般に、関連のピロリン酸塩の検出に二次酵素を利用し、このような酵素としては、たとえば、スルフリラーゼおよびルシフェラーゼがあげられる。パイロシークエンス法を実施するための論理には、二次酵素の付加または除去に関する別のステップを含むことが可能である。さらに、パイロシークエンス方法で用いるQCステップは、二次酵素の活性の照会と、クエリから得られた情報への応答に関するステップを含むことが可能である。論理に対して、検出または核酸修飾に用いられる酵素などの二次試薬の使用を含む他の配列決定技術を実施するために同様の修正を施すことが可能である。たとえば、ライゲーションによる配列決定サイクルは、検出後かつ新たなサイクルの開始前に、制限エンドヌクレアーゼまたは核酸鎖の化学切断を利用して、ライゲートしたプローブの部分を除去するステップを含むが、これに対し切断剤(制限エンドヌクレアーゼまたは化学的切断剤など)の付加および除去あるいは、切断剤の活性に関するQCの評価についてのステップを含む論理でカバーすることができる。
【0049】
配列決定プロセス全体を通して、多数の個々のシステムパラメータを監視し、クローズドループまたはオープンループ式に調節してもよい。繰り返すが、このような監視および制御の目的は、効率的な反応および検出プロセスによって自動または半自動での配列決定ができるようにするためである。現段階で企図される実施形態では、たとえば、システム診断パラメータが、サンプルまたはサンプル容器の温度、試薬温度、器具類のさまざまな位置での温度、試薬容積および流量、光源出力(特にレーザ光源)、フローセル下流のpHレベル、湿度、振動、オゾンの存在、画像強度、焦点品質などを含み得る。別のパラメータとして、試薬ポンプ圧力、リザーバに残った試薬のレベル、検出チャンバ(フローセルなど)での気泡の存在、画像化データと配列データの両方のために利用できるコンピュータ保存スペースを含むものであってもよい。さらに、これらの継続中および定期的なチェックに加えて、サンプル挿入および抜出ステーション(図2参照)での扉または他のアクセルパネルの開放、流体のオーバーフローなど、通常とは違うプロセスの進みが検出されることがある。配列決定プロセスの継続が各サイクルで収集されるデータにつながらないとシステムで判断した場合、システムは、配列決定ランの終了またはフローセルに対する試薬のフラッシュを自動で判定してサンプルを保存し、データの収集が再開できるまでサンプルを保存する安全な状態に入ることができる。特定の実施形態では、システムはオペレータにエラーを示し、任意に、是正措置を示すことができる。これに代わってあるいはこれに追加して、システムは、自動でエラーを診断および応答することができる。このように、オペレータの介入または自動補正によって合成ステップを再開し、データ収集を継続することが可能である。
【0050】
このようなパラメータを監視および制御するためのトランスデューサおよび回路は通常、他のプロセスシステムで入手可能なものと同様であればよい。たとえば、サンプル、容器、試薬および機器温度の監視には、どのような形態の好適な温度トランスデューサを用いてもよい。好適なフローメータを用いて、試薬の容積と流れを監視してもよい。従来の圧力トランスデューサを用いて、試薬ポンプ圧力、背圧などを検出してもよい。このようなパラメータの検出に基づくクローズドループ制御またはオープンループオペレータ通知用の論理回路に、アナログまたはデジタル回路(プログラムされたコンピュータなど)を含むようにしてもよい。現段階で企図される実施形態では、たとえば、図1および図2を参照して上述した品質/プロセス制御システムで、これらの機能を実施することができる。当業者であれば自明であろうように、コンピュータ制御を用いる場合にさまざまなトランスデューサから生成される信号を、通常の動作範囲、故障リミット、アラームリミットなどと比較可能なデジタル値に変換する。可能であれば、クローズドループ制御を用いて、温度、容積、電力レベル、流量、圧力などを許容可能な範囲内に維持し、配列決定を継続できるようにしてもよい。アラームまたは障害リミットに達したら、制御ルーチンの作業に、例外またはエラーログを立ててイベントをエラーログに格納し、特定の配列決定ステップの間、一定時間などのシーケンサの性能および作業を後で評価できるようにすることを含むと好ましい。
【0051】
このようなパラメータのクローズドループ制御は、配列決定プロセスを強化する目的で実施できるものである。たとえば、現段階で企図される実施形態では、流体工学制御/送達システム18に、所望の温度の試薬および他の流体を提供して、アレイでのサンプルとの反応を増進および促進することができる加熱器または冷却器を含むようにしてもよい。たとえば、配列決定プロセスの特定の部分の間にサンプルの温度を上昇させるための加熱器を設けてもよく、このような温度をプロセス流体に合わせて調節してもよい。この目的で、加熱器、冷却器、熱交換器などの熱移動装置を利用できる。配列決定作業における個々のステップの標的パラメータに基づいて他のクローズドループ制御を実施してもよい。当業者であれば、このようなパラメータを組み合わせて、配列決定システムが正しく動作している時、配列決定を進めることができる時、あるいは、このような1つまたは複数のパラメータが配列決定を継続できない程度に正常な範囲から外れた時を判断できることは理解できよう。このような場合、配列決定システムがその所望のパラメータ内で動作できるようになるまで、少なくとも一定の時間サンプルを保存しておけばよい。
【0052】
図6は、配列決定の初期サイクルの品質制御ルーチンに含まれていてもよい模範的な論理を示す。初期サイクルの品質制御ルーチン104は、サンプルおよびサンプルアレイの特徴または品質を調べて、高品質かつ十分な配列決定データを得られるか否か判断するよう設計できるものである。現段階で企図される実施形態では、たとえば、ステップ118で示すようなクエリからルーチンを開始し、アレイで検出可能な部位が少なすぎるか否かを判断することができる。このステップでは、一定時間で収集可能なデータの量とアレイの処理に必要な材料に関してアレイの配列決定を経済的にする部位の許容可能な範囲または数を参照してもよい。ステップ118でなされるクエリは一般に、図5を参照して概説したステップ100での検出に基づくものである。単なる一例として、現段階で企図される実施形態では、配列決定を実施できる許容可能な数の部位は、約1千万部位/cm2あるいは約5百万部位/cm2から1億部位/cm2の範囲であるが、開発中の技術によって大半の場合はこの範囲の上限が10億部位/cm2あるいはそれよりも多くまで増えることになろう。アレイでの部位(たとえばビーズ)の密度についても、許容可能な部位数が、たとえば35%から100%(100%すなわちフルキャパシティとは、部位が均等に分散し、隣接する部位を区別するのに十分な距離があいている理想的な場合に基づくものである)のキャパシティで示されるようなキャパシティ率に関して評価可能である。ビーズまたは他の部位の位置については、個々の部位間を周知の分離法で一定間隔にした均等な分布であってもよいし、たとえば、増幅クラスタのアレイまたは表面のビーズのランダムアレイなどのランダム分布であってもよい。
【0053】
検出される部位あるいは初期サイクルで実施される画像化または検出作業で認識できる部位が少なすぎる場合、制御をステップ120に流し、そこで流体送達または検出システムから、あるいは両方のシステムまたは他のシーケンサのシステムで、クエリを作るようにしてもよい。通常、特定密度の部位またはクラスタが望まれることになる。このような部位の検出される数が少ないか、所望の値よりは少ない場合、これを部位の数で示すようにしてもよいし、多数の「暗い」画素(部位の存在を明らかには示さない画素など)がシーリングの上にあると判断することで示すようにしてもよい。このような発生は、流体送達システムまたは検出システムのパラメータあるいはその両方ならびに、シーケンサの他のパラメータによるものであり得る。たとえば、検出される部位がないのは、アレイサンプルに対する標識ヌクレオチドの不適切な送達または画像化システムの不適切な焦点化による場合がある。ステップ120で実施されるクエリでは、上述したタイプの動作パラメータを調べ、適切な動作が可能であるか否かを判断することができる。このような判断の後、システム設定の変更をおこなってもよく、必要であれば、ステップ122で示すように再焦点化および再画像化のためにサンプルを戻してもよい。同様に、ステップ98での生体分子試薬の再送達のためにシステムを戻してもよい。
【0054】
本説明全体を通して、特に本説明で概説する品質制御ルーチン全体について、1つまたは複数の応答を実施してもよく、適切であればこのような応答をどのような論理で実施してもよいことに注意されたい。たとえば、送達および検出システムならびに、上述した再焦点化/再画像ルーチンのクエリについて、これらをどのようなシーケンスで平行して実施してもよい。さらに、実施されるこれらのルーチンおよび他のルーチンについて、本説明は限定的なものとはみなされない。収集するパラメータデータ、使用する配列決定技術、システムの動作時または得られた配列決定データにおける異常の考えられる原因次第では、他のルーチンも実施できる。同様に、いくつかのルーチンを他のルーチンの前に実施すると都合がよいことがある。たとえば、補正されたわずかな異常を示すシステムの動作パラメータのクイックチェックを、ステップ122(サンプルが検出ステーションまたは画像化ステーションから移動していると仮定)で呼ばれるような画像化ステーションに戻る逆行的なサンプルの再利用より一層効率的にすることができる。最後に、特定のステップでは、図6、図7および図8で右側に伸びる矢印で示すように、明らかに特定の配列決定動作の繰り返し、特定の配列決定動作の変更あるいは、特定のサンプルの配列決定の中断を求めていることに注意されたい。本明細書で説明するさまざまな応答ルーチンに続いて、サンプルが前の作業に戻されたにもかかわらず配列決定が進むように、アクションにつながる条件が修正されたか否かの判断がなされるとみなしてもよい。
【0055】
サンプルに部位が少なすぎるか否かを判断することに加え、参照符号124で概略的に示すように、サンプルの品質を調べる初期サイクル品質制御ルーチンで、部位が多すぎるかどうか、あるいは不均等な部位分布が存在するか否かを判断してもよい。特定のサンプル調製技術では、部位の過剰または互いに距離が近すぎる部位が生じることがあるため、特定のサンプルにおける部位数または相対密度すなわちアレイにおける1つまたは複数の領域での部位の密集に対して所望のリミットがあるとよい。このステップで照会可能なサンプル品質を示す他の指標としては、部位の大きさ、形状または形態があげられる。一般に、部位は想定された大きさ、形状または形態を持ち、偏差は特定の問題があることを示すものとなり得る。たとえば、部位が高密度になりすぎている場合、部位の大きな画分が互いに重なり合い、重なった部位が、見かけ上の大きさが単一の離散部位で想定される大きさよりも大きい単一部位のように見える。同様に、重なっている部位は、一般に2つの部位が重なると単一の砂時計状に現れる円形部位の場合は、単一の部位に想定される見かけ上の形状とは異なることで同定可能である。1つまたは複数の部位での十分な増幅または1つまたは複数の部位での過剰増幅など、部位の大きさ、形状または形態の他の逸脱も、アレイをシステムにロードする前に起こるアレイ調製時の問題の指標となり得る。図5のステップ100で収集したデータの評価時に、部位が多すぎるか望ましくない部位分布が存在すると判断された場合、応答にはいくつかの方法が想定される。ステップ126では、たとえば、流体送達および検出システムを、上記ステップ120を参照して説明したものと同様の方法で再度照会する。さらに、ステップ124での判断に至ることができる不適切または信頼性の低い画像データが検出データによって得られたことが示された場合は特に、画像化システムを再焦点化してもよい。再焦点化および再画像化ステップ128は、上記ステップ122で実施したものと本質的に同様であればよく、画像化ステーションから移動しているのであればサンプルを画像化ステーションに戻すことを必要とする場合がある。
【0056】
部位が多すぎるまたは部位の分布が不均等であることに対するもうひとつの応答として、処理時における特定領域または部位のマスキングと、このような領域からの画像データの無視があげられる。ステップ130で示されるマスキング応答は通常、特定の部位に対応する特定の位置が第1の値によって指定され、分析対象となる部位が第2の値で指定される、画素化された画像用のデジタルマスクの開発を含む。このようなバイナリーマスクは通常、このような位置のデータが分析および配列決定用に処理されない以後の配列決定サイクルでのマスク画素の位置の比較を可能にするルックアップテーブルとして格納されている。しかしながら、サンプルをさらに処理することが経済的ではないか望ましくない場合には、このようなマスキングを、サンプルアレイの多すぎる部位や大きな領域を、配列決定から除外することにつなげることも可能である。ステップ132では、マスキングが少なすぎる部位につながるか否かを判断すると望ましいことがある。ステップ118同様、この照会が本質的に、デジタルマスキングの前に残りの部位数によって、収集可能なデータ量に関して配列決定が価値のあるものとすること判断することからなる場合もある。ステップ130のマスキング後に配列決定に利用できる部位数が少なすぎる場合、特定の部位を高信頼度で配列決定可能か否かを判断するなどの目的で、ステップ134で示すようにマスクを再評価してもよい。よって、マスクを変化させることができ、配列決定を進めることができる。配列決定に利用できる部位が少なすぎる場合は、配列決定全体を中断する。
【0057】
配列決定作業で処理される画像データの量は、多くなりやすく、時にどうしようもなく多くなる。効率的にデータを収集し、体系化し、管理しないかぎり、データ分析はそれ自体がいくぶん厄介なものとなり得る。よって、有用なデータが保存され、さらに処理できるよう準備される一方で、有用ではない確率の高いデータについては破棄するようにデータを処理すると都合がよいことがある。よって、マスキングならびに他の画像処理ユーティリティの使用をコーディネートして、価値のある配列決定データという全体としてのゴールに達するようにしてもよい。この点を考慮して、収集される画像データをさまざまな方法で処理できることに注意されたい。たとえば、試験サンプル上のエリアを画像化対象として選択し、他のエリアを迂回対象として選択してもよい。このタイプの選択的画像化を行う場合、データの取り扱いのためにいくつかの異なるオプションを利用できる。一実施形態において、関心の対象であるエリアとしてフラグの付いたエリアのみの画像データを収集することができ、他のエリアの画像データは収集しないようにしてもよく、あるいは、収集はするが保持または分析対象にはしないようにしてもよい。別の実施形態では、サンプルの全エリアの画像データを収集できるが、データを異なる位置に保存することができる。たとえば、関心の対象であるエリアとしてフラグの付いた画像データを、配列決定分析に用いられる第1のデータベースに格納でき、他の画像データを第2のデータベースに格納できる。また、特定の画像化だけをログ記録するか、あるいは全画像化をログ記録するがログをさまざまな位置に保存するといった具合に、画像データ収集のログ記録を同様の手順で行うことができる。さらに、画像データの選択的処理が、化学パラメータ、環境パラメータなどを含むがこれに限定されるものではない、配列決定作業で収集したパラメータに基づくものであってもよい。したがって、通常、上述したマスキング方法を含むがこれに限定されるものではないさまざまなプロセスに基づく、さまざまな選択的処理スキームで画像データを取り扱うことができる。
【0058】
ステップ126、128、130または134で示す応答またはクエリ132に対する応答のうちのいずれかで配列決定を進めることができる場合、図5を参照して概説したように、初期サイクル品質制御ルーチンを終了でき、配列決定を継続することができる。
【0059】
図7は、上記にて図5を参照して概説した塩基付加品質制御ルーチン106を実施するための模範的な論理を示す。このルーチンは、配列決定のさまざまなステージで実施できるものであるが、各配列決定サイクルでのアレイの画像化後であるが画像データを配列データの判断に用いる前に実施されることが多い。このルーチンは本質的に、検出プロセスが望んだとおり進んでいるか、あるいはシーケンサのパラメータを調節して画像化および検出を改善すべきであるか否かを判断するよう設計されている。サンプルでなされる検出の品質が最終的に配列決定データの品質に影響することになるため、高品質の画像を戻すと望ましいことがあり、各配列決定サイクルごとにこのような塩基付加品質制御ルーチンを実施するともっとも有用なことがある。さらに、上述したように、このルーチンは、配列決定を継続すべきか否かまたは現時点または前の配列決定サイクルを、配列決定データを保持または評価すべき最後の信頼できるサイクルとみなすべきか否かを判断する上での検討事項のうちの少なくとも1つとなり得るものである。
【0060】
図7に示す実施形態では、全体としての画像品質が許容可能であるか否かを初期クエリ136で判断する。たとえば、アレイの長さ方向と幅方向全体に鮮明な画像、特に一貫して鮮明な画像が望まれる場合、焦点が甘いなどの要因が許容できないほどぼやけた画像につながることがある。画像品質の評価は多数の形態を取り得る。現段階で企図される実施形態では、たとえば、焦点スコアは各画像によるものである。焦点スコアは、画像の鮮明さ、画像の特定の特徴またはマスクの鮮明さ、画像に目視で確認される想定内の構造、画像で検出可能な強度または色の勾配などに基づくものであってもよい。この画像品質は、アレイの全体または一部の画像に基づくものとすることが可能である。アレイの一部のみを評価することの利点のひとつに、全体の画像を得るのに時間を費やす前に、品質判断用の画像を短時間で得られるということがある。画像品質が許容できないものであると判明した場合、これに応答してステップ138および140または他の好適なステップを実施してもよい。ステップ138および140は、図6を参照して上述したステップ120および122に、ほぼ対応するものであってもよい。すなわち、流体送達および/または検出システムを評価して、その動作パラメータが許容可能な範囲にあるか否かを判断することができ、あるいは、画像化システムが画像化ステーションから外れた場合に、これを再焦点化してサンプルを画像化用に戻すことができる。
【0061】
監視できる画像品質のもうひとつの態様として、サンプル内の気泡の存在がある。気泡が検出されると、画像データまたはデータの一部が以後の処理に適さなくなる場合がある。たとえば、画像データにぼやけた領域あるいは検出された色が区別できない領域があるように見えることがある。さらに、気泡の存在が特定のサンプルにおける潜在的な問題を表していることもある。たとえば、気泡が原因でヌクレオチドのサンプルへの結合が妨害されることがある。気泡の存在については、流体チャネル内で、フォトダイオードあるいは、空気と液体との屈折率の差に応答してダイオードで受信する信号の変化を監視するよう構成されたものなどの他の検出装置によって監視することができる。気泡が検出されたら、好適な応答ステップをいくつ実施してもよい。たとえば、状況によってはサンプルを特定の流体工学ステーションに戻して塩基付加ステップを再度実施することが当然なものとなり得る。チャネルの上から下まで液体ではなく空気で一杯になった場合、焦点深度を自動で調節して「乾燥」画像の焦点を元に戻すことが可能であり、あるいは、空気の気泡を除去するためにチャネルに流す液体の量を増やしてもよい。もうひとつの考えられる応答として、特定領域または部位をマスキングし、気泡を含むと判断された領域または部位の画像データを無視することがあげられる。さらに別の応答として、適切な画像化ができないほど気泡によって不利益が生じると判断された場合に、サンプルでの配列決定作業を中断することがあげられる。
【0062】
ステップ136と同様のクエリならびに、ステップ138および140で概説したような応答も、図6を参照して概説した初期サイクル品質制御ルーチンの一部であってもよいことに注意されたい。すなわち、流体送達システムまたは検出システムがうまく機能しないことでサンプルの品質制御が犠牲になる可能性がある。このような場合、ステップ138および140で意図したようなルーチンを実施して、信頼できる情報に基づいてサンプルの品質評価が進むようにしてもよい。必要であれば、配列決定システムのパラメータを調節してもよく、サンプルを再画像化してもよく、さらには改善された入力データをもとにしてサンプルの品質を再評価してもよい。
【0063】
上述したように、特定タイプの品質制御が容易になるようサンプルアレイを設計してもよい。たとえば、周知のヌクレオチド配列を有するアレイに制御クラスタまたは部位を含むようにしてもよい。このような周知の配列は、たとえば、4つの一般的なDNAヌクレオチドの繰り返し配列であってもよい。あるいは、このような制御部位が、単一ヌクレオチドタイプのホモポリマー配列を含むものであってもよい。ルーチン106での品質制御は、配列情報が望まれる組成が分からない部位と平行して実施される連続的な配列決定および画像化ステップでのこのような制御に想定される結果に依存するものであってもよい。続いて、ステップ142に示すように、このような制御部位の評価をし、想定される塩基の付加が検出されたか否かを判断することができる。このような制御部位の配列は周知であるため、このような評価によって、たとえば、塩基が付加されなかった、間違った塩基が付加された、あるいは低収率での塩基カップリングが検出された(制御部位で想定される特徴的な染料色の強度が弱いか別の色で曖昧になっている)といったことを判断することができる。含むことのできるもうひとつのタイプの制御に、直接取り付けられる標識部分を有する部位がある。たとえば、蛍光標識を用いる配列決定向けの実施形態では、配列決定化学(ハイブリダイゼーションおよびヌクレオチド付加の効率など)の他の態様とは独立した検出品質の制御として機能するよう直接取り付けられる(すなわち、ハイブリダイズされたオリゴヌクレオチド経由ではない)蛍光標識を部位に含むことが可能である。
【0064】
塩基の付加に失敗した場合は、これを所望の閾値未満である画像データの単一の強度で示せばよい。間違った塩基が付加された場合は、これを想定した色とは異なる色の信号が画像データで検出される(制御部位でなど)ことで示せばよい。低収率の塩基カップリングに対する指標は、上述したように、塩基が付加されなかった場合の試験と同様に想定されるよりも低い信号強度としてもよい。想定される強度は、すべてのサイクルで変化せずに残る特定の閾値レベルであり得る。あるいは、各ステップでの収率の許容可能なロスに基づくか、たとえば信号対雑音(S/N)比に関して後述するような1つまたは複数の前のサイクルで検出された信号から判断される、経験的に判断した収率のロスに基づいて、各サイクルで閾値レベルを抑えることができる。
【0065】
制御部位の画像化に問題があるとクエリ142で判断した場合に、配列決定、画像データまたは配列データを改善する上で、いくつかの応答を想定することができる。たとえば、ステップ144に示すように、動作パラメータが許容可能な範囲内にあるか否かを流体送達および検出システムで判断するようシステムで照会してもよい。このステップの代わりまたはこのステップに加えて、ステップ146で示すように塩基付加プロセスを繰り返してもよい。通常、ステップ146では、上述した再画像化ステップと同様に、塩基を付加するためにサンプルを流体工学ステーションに戻すことを必要とする場合がある。
【0066】
また、いくつかのパラメータを使用して、画像化および配列決定作業の監視を助けるようにしてもよい。本開示全体のさまざまな場面で説明したように、これには、化学に関するパラメータ(試薬送達の評価など)、基準に関するパラメータ(制御クラスタなど)、サンプル部位のパラメータ(部位の品質、分布、形状、数など)、温度パラメータ(流体温度、アレイ温度、機器温度など)を含み得る。しかしながら、配列決定作業がいかにうまく進行するかを解明する上で他の多くのパラメータが有用であると分かることもある。たとえば、さまざまな環境パラメータを監視して、配列決定作業に外部要因がいかに影響しているかについての入力を得ることができる。これらの環境パラメータとしては、湿度、外部電源、温度、振動などがあげられるが、これに限定されるものではない。また、フローセル下流のpHレベルを監視すると有用であると分かることもある。そのようにすることで、塩基付加、ブロック、ブロック解除、洗浄のステップがいかに効果的に進行しているかに関する洞察が得られることがある。また、個々のサンプル部位間で生じるフェージング(phasing)を監視すると望ましいこともある。たとえば、サンプル部位における配列の個々のコピーが、ヌクレオチドが結合しないサイクルを経験することがある。結果として、伸長した種の長さが不均一な部位が生じる。各サイクルで短縮されるコピーの数が増えると、最後にはサイクルごとに伸長する部位のコピーの画分が減少する。これによって、フェーズ外のコピーを有する部位と、S/N比の知覚できるほどの低下が生じる。最後には、配列決定データが信頼できないものとなるレベルまでS/N比が落ちる状況に至ることがある。フェージングの問題を有する部位のレベルが高いフローセルを早い段階で検出することで、たとえば配列決定用の試薬を変更したり、機器の流体工学をチェックするなどして、サンプルが完全に失われないよう対策を講じることが可能になる。これに代わってあるいはこれに追加して、フェーズ外の部位が望ましくない数で含まれるサンプルへの試薬送達の停止を判断することができる。これによって、サンプルの無駄を減らせるという利点が得られる。早期のフェージング問題をトラッキングすることで、予測した原因に従ってオペレータによるかまたは自動で変更を施すことに応答可能な機器の機能を判断する根拠が得られる。
【0067】
塩基付加品質制御ルーチンで実施できるさらなるクエリをステップ148に示すが、これは、S/N比が許容可能なリミット内にあるか否かを判断することからなるものであればよい。上述したように、通常は個々の部位についての蛍光染料の色の検出結果は、配列データを判断する上での根拠となり得るものであり、信頼できる配列データを得る上でこのような色を正確に検出する機能が重要な場合がある。S/N比がよくない状態については、たとえば、個々の部位または制御部位の強度または色を、前のサイクルでの同様の部位のS/N比と比較して判断できる。一連の配列決定サイクルでのヌクレオチドカップリングの収率についての統計的に許容可能な低下であるがゆえに、S/N比の通常の低下を想定すべきである旨を想定できることがある。特に、追加のサイクルで配列決定を進めるべきであるか否かの判断あるいは、配列データまたは画像データを分析すべきであるか否かまたは現行のサイクルで保存すべきであるか否かの判断については、S/N比の低下またはこの比の客観的な限界を基準に判断してもよい。S/N比が異常にまたは壊滅的に低下した場合、配列決定化学および検出のサイクルをさらに実施する前に機器での走査バッファなどの試薬の変更といったいくつかの応答の準備が整っている場合がある。S/N比の低下を分析することに代えて、あるいはこれに加えて、廃液流中のブロック解除剤からの信号の低下が起こることもある点に注意されたい。
【0068】
配列決定の終了に加えて、ステップ148で検出される、S/N比の減少に対する応答としては、システムがその正常なパラメータ内で動作しているか否か、あるいはさらに配列決定を実施できるよう調節するべきであるか否かを判断するなどの目的で、ステップ150で示すように流体送達および検出システムを照会することがあげられる。これに代えてあるいはこれに加えて、さらに高い露光レベルにする(光源のパワー出力を高くするなど)、検出アルゴリズムにおける感度を高める、あるいはS/N比を改善できるであろう他のパラメータを変更して、サンプルを再画像化してもよい(ステップ152)。たとえば、露光時間を長くして、特定の画像により多くのフォトンを収集できるようにしてもよい。また、部位をより一層正確に検出できる走査率などの画像化パラメータを変更したり、解像度を高めるなどすると望ましいことがある。変更可能な他のパラメータとしては、ヌクレオチド付加の条件がある。たとえば、S/N比が低下すると、以後のサイクルについては各々、インキュベーション時間を長くするか試薬濃度を高めて実施して、ヌクレオチド付加反応を完了しやすくすることができる。S/N比をこのようにして許容可能なレベルまで改善できたら、配列決定を継続してもよい。
【0069】
図8は、上記にて図5を参照して概要を説明した品質制御ルーチン116のブロック解除のための現段階で企図される論理を示す。通常、このルーチンは、以後の配列決定サイクルで他のヌクレオチドを付加できるように個々の部位で最後に付加されたヌクレオチドから染料およびブロック解除剤が適宜除去されているか否かを判断し、前に付加されたヌクレオチドの染料が以後に付加されるヌクレオチドの画像化を邪魔しないよう設計される。上記と同様に、ブロック解除が適宜なされたか否かを判断するためにいくつかのクエリが整っている。ステップ154では、たとえば、ブロック解除後に作られた画像が分析に適しているか否かを照会する。図7でステップ136について上述したように、いくつかの要因によって、得られる画像の鮮明さまたは詳細が不十分になり得る。図7の応答138および140と同様の方法で、流体送達および検出システムを照会でき、ステップ156および158でそれぞれ示すように、ブロック解除後のサンプルの画像化に用いられる画像化システムを再焦点化してサンプルを再画像化することができる。しかしながら、当業者であれば明らかであろうように、ステップ156で調べた流体送達システムは、ブロック解除剤および蛍光染料を切断するための試薬が、通常のリミット内かまたは所望の方法で動作しているか否かを判断するよう評価されることになる。
【0070】
ステップ156および158の応答で条件が適宜回復したら、以後のクエリ160を実施してもよい。ステップ160は基本的に、図7を参照して上記にて概説したステップ148と同様である。すなわち、システムでは、ブロック解除の適切な分析ができるほどにS/N比が十分に高いか否かを判断することができる。この比が十分に高くないか、許容可能な範囲内にない場合は、ステップ162および164で示すように、流体送達および検出システムに再度照会をかけて、画像化の設定を変更してブロック解除後のサンプルを再画像化することを応答に含むようにしてもよい。
【0071】
模範的なルーチン116における別のクエリは、ステップ166で示すように、ブロック解除剤が十分に除去されているか否かを判断することを含むものであってもよい。このような評価については、2つの試験が現段階で企図され、これは一方または両方の試験で実施できるものである。通常、第1の試験は、上述したタイプの制御部位の評価に基づくものとしてもよい。このような部位を画像化して、想定された色の変化(本質的に画像から部位が消失するなど)が起こっているか否かを判断することができる。制御部位は効果的なブロック解除がなされたことを示すものではなく、ステップ168で示すようにブロック解除作業を繰り返してもよい。ここでも、ブロック解除作業を繰り返すには、サンプルをブロック解除ステーションに戻す必要があることもある。必要であれば、ブロック解除がなされたか否かを照会するよう、制御部位以外の部位を画像化することも可能である。
【0072】
ブロック解除のもうひとつの試験に、ブロック解除ステップ後の廃棄物または廃液流中のブロック解除剤の評価がある。当業者であれば明らかであろうように、ブロック化剤は染料に結合することがあるが、この染料はブロック化剤がヌクレオチドから除去されると活性になって蛍光を発することができる。ブロック化剤は、特定の波長での吸収を頼りに廃液中で検出可能でもあり得る。たとえば、廃液流向けのインライン検出器を用いて廃流を試験し、廃流中に十分なブロック化剤が検出されるか否かを判断してもよい。不十分なブロック化剤が検出された場合は、考えられる応答として、ステップ170および172で示されるように、ブロック解除反応に用いられたプロセス流体の流体送達システムの性能パラメータを照会するおよび/またはブロック解除作業を繰り返すことがある。使用する配列決定化学に応じて、付加されたヌクレオチドの単一部分が、伸長を防ぐブロック化群とヌクレオチド付加を検出するための標識の両方として機能することがあり、あるいは、付加されたヌクレオチドが、別の標識およびブロック化部分を持つこともあり得る。ブロック化群の除去を判断することに関して本明細書に記載の方法は、標識部分および/またはブロック化部分の除去を別々または一緒に判断するための方法の一例にすぎない。たとえば、別の標識およびブロック化部分を用いる実施形態では、ブロック化群の検出に関して上記で例示したものと同様の方法を用いて、これらの部分を除去し、廃液で別々または一緒に検出することが可能である。
【0073】
図6、図7および図8にまとめたステップすべてにおいて、実施した動作のログと講じた対応策のログを保持しておくと好ましいことに注意されたい。これらのログを個々のサンプルと関連させてもよいし、配列決定システムの適切な性能を評価するためのタイムスタンプを付してもよい。配列決定作業には、1人または複数人のオペレータが参加するまたは参加でき、オペレータに対する可視または可聴のアラームによる通知の仕組みを設けて、配列決定システムでの1つまたは複数のサンプルへの注意または1つまたは複数のステーションへの注意が整うようにしてもよい。
【0074】
また、配列決定ステップの実質的な空間的切り離しと品質制御ルーチンで講じる対応策は、本発明に従って存在し得るものである点に注意されたい。すなわち、複数のサンプルおよびサンプル容器を処理するよう配列決定システムを構築できるが、システムではこれらを特定の順序で処理する必要はなく、同一速度で処理する必要すらない。サンプルの品質、プロセスパラメータ、さまざまな品質制御ステップおよびルーチンの出力に基づいて、たとえば、配列決定ステーションおよび配列決定ステップで特定のサンプルに同じ度合いの退行フロー(regressive flow)を施してもよい。特定の場合、特定の時間はサンプルをシステムからよけておくか除外し、サンプルまたはシステムの一方または両方を評価してもよい。システムの制御回路は、好ましくは、サンプルがシーケンスから外れるか否か、さまざまな時間に取り込まれるか否かとは関係なく、またはサンプルがさまざまな反応、画像化、評価などに長めまたは短めの時間を要するか否かとも関係なく、個々のサンプルと実施される配列決定を追跡するよう設計される。このような時間的切り離しは、サンプルに対する自動または半自動での並列配列決定の効率的な作業と高スループットを促進する上で重要な特徴となる場合がある。
【0075】
以上、本発明の特定の特徴について図示し説明したが、当業者であれば多くの改変および変更を施し得るであろう。したがって、添付の特許請求の範囲が、このような改変および変更をすべて本発明の真の趣旨に包含されるものとしてカバーすることを意図している旨を理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の核酸を配列決定する方法であって、
(a)アレイのヌクレオチド配列を決定できるシステムによって、複数の核酸を有するアレイに対する配列決定プロシージャのサイクルを開始するステップと、
(b)複数の配列決定サイクルでの信号対雑音比の悪化に関連する、前記システムのパラメータを評価するステップと、
(c)前記パラメータに基づいて前記アレイに対する前記配列決定プロシージャを変更するステップと、
(d)前記アレイに対する前記配列決定プロシージャの別のサイクルを実施するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記パラメータが、前記アレイのサンプル部位間のフェージングに関するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータが、前記アレイの制御クラスタの品質に関するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータが、前記アレイの配列決定に用いられる試薬に関するものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータが、前記試薬の容積を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータが、前記アレイの配列決定に用いられる光学画像化システムのパラメータを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)が、前記アレイへのヌクレオチドの導入を繰り返すことを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c)が、試薬送達システムの動作を評価することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ステップ(c)が、前記アレイを再画像化することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アレイが、露光時間を長くするか画像化システムの感度を高くして再画像化される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(c)が、画像化データを配列決定に使用する前記アレイの特定のエリアを選択することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
ステップ(d)が、前記アレイの前記選択したエリアのみの画像化データを収集することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(d)が、前記アレイの全エリアの画像化データを収集することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
配列決定用として選択されない前記アレイのエリアの前記画像化データが保管される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップ(c)が、前記配列決定プロシージャを中断することを含み、ステップ(d)が実施されない、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
ステップ(b)および(c)が、コンピュータシステムが生成した分析結果に基づいて人間のオペレータによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)および(c)が、コンピュータシステムによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
複数の核酸を配列決定する方法であって、
(a)自動核酸配列決定作業を実施するステップと、
(b)前記作業に基づいてデータを生成するステップと、
(c)前記データに基づいてサンプルの品質を評価するステップと
を含む、方法。
【請求項19】
複数の核酸を配列決定する方法であって、
(a)アレイのヌクレオチド配列を決定できるシステムによって、複数の核酸を含むアレイに対する配列決定プロシージャのサイクルを実施するステップと、
(b)前記アレイの部位に存在するヌクレオチドを示す複数のシグナルを検出するステップと、
(c)前記シグナルを評価して前記アレイの品質を判断するステップと、
(d)前記品質に基づいて前記アレイに対する前記配列決定プロシージャを変更するステップと
を含む、方法。
【請求項20】
複数の核酸の配列決定をするためのシステムであって、
アッセイ反応プロトコールを容易にするための流体工学ハンドリングシステムと、
配列決定データを取得するための画像化システムと、
前記配列決定システムの動作時にシステムパラメータを測定するよう構成された診断コンポーネントと、
多段分析の結果に基づいて前記配列決定システムの品質を評価するよう構成された品質評価回路と、
前記診断コンポーネントまたは前記品質評価回路が収集したデータに基づいて前記配列決定システムの動作条件を変更するよう構成された制御回路と
を含む、システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−516285(P2010−516285A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547454(P2009−547454)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/052198
【国際公開番号】WO2008/092150
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(500358711)イルミナ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】