説明

根管治療システム

【課題】歯牙の根管にエンジンリーマを深く入れすぎることを防止可能な根管治療システムを提供する。
【解決手段】本システム1は、歯牙の根管に挿入されるエンジンリーマ11と、該エンジンリーマ11を回転駆動する駆動源と、根管32の根尖と前記エンジンリーマ11の先端との間の距離を電気的に検出する検出手段51と、を備える。そして、検出手段51によって検出された前記距離が所定の基準値に達した時点で、前記エンジンリーマ11の回転駆動が自動的に停止されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科医療に関し、特には、歯牙の根管にエンジンリーマを深く入れすぎることを防止可能な根管治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば炎症を起こした歯牙の歯髄炎の治療としては、炎症を起こしている歯の根管にエンジンリーマを挿入して歯髄等を除去することが行われている。この治療の際、歯髄等の除去を完璧に行おうとしてエンジンリーマを深く入れすぎると、該リーマが根尖を通り抜けて歯槽骨を削ってしまう可能性がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1には、エンジンリーマの先端が根管の奥に達した時点を知らせる根管長測定器が開示されている。
【特許文献1】特開平6−181938号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の構成では、エンジンリーマの先端が根管奥へと達したことを音で知らせるものが一般的であるため、例えば、医師がエンジンリーマの駆動を停止させるタイミングが遅れると根管にエンジンリーマが深く入りすぎる可能性があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、歯牙の根管にエンジンリーマを深く入れすぎることを防止可能な根管治療システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の根管治療システムは、
歯牙の根管に挿入されるエンジンリーマと、
該エンジンリーマを回転駆動する駆動源と、
前記根管の根尖と前記エンジンリーマの先端との間の距離を電気的に検出する検出手段と、
を備える根管治療システムであって、
前記検出手段によって検出された前記距離が所定の基準値に達した時点で、前記エンジンリーマの回転駆動が自動的に停止される。
【0006】
このような構成によれば、エンジンリーマの先端が根管内の所定位置まで達した時点でエンジンリーマが自動的に停止されるため、根管にエンジンリーマを深く入れすぎることを防止することができ、安全な根管治療が可能となる。
【0007】
また、本発明の他のシステムでは、前記距離がインピーダンスの変化に基づいて検出される。
また、前記検出手段が前記根尖と前記エンジンリーマの先端との間の距離をアラーム音で知らせるものであって、さらに、前記アラーム音を検出する手段を備え、該手段が前記アラーム音を検出した場合に、前記エンジンリーマの回転駆動が自動的に停止されるものであってもよい。
また、エンジンリーマの駆動を自動的に停止させるための、前記距離の前記所定の基準値が調整可能であることが好ましい。
また、前記検出手段によって検出された前記距離の情報を、無線により、前記エンジンリーマの回転駆動を自動的に停止させる手段に送信するインターフェイス手段をさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
上述したように、本発明によれば、歯牙の根管にエンジンリーマを深く入れすぎることを防止可能な根管治療システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態の根管治療システムを模式的に示す図である。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の根管治療システム1は、歯牙31の根管32に挿入されるエンジンリーマ11と、該エンジンリーマを回転駆動する駆動源(不図示)と、該駆動源等の動作を制御する制御部18と、根尖とエンジンリーマ先端との間の距離を電気的に検出する検出手段51と、を備えている。
【0011】
エンジンリーマ11はキリ状に形成されており、その基端がハンドピース15によって保持されている。ハンドピース15内には、エンジンリーマ11を回転駆動させる駆動源(不図示)が内蔵されている。エンジンリーマ11は測定電極を兼ねており、検出手段51の一要素としても機能する。
【0012】
検出手段51は、一例として、表示メータを有するユニット52と、該ユニット52から延び出した2本のコード55a、55bと、を有している。コード55aの先端には、患者の口唇に引っ掛けられる対極53が取り付けられている。対極53は、一例として略J字型に形成されている。他方のコード55bの端部は、エンジンリーマ11に電気的に接続されている。このような構成により、対極53、コード55a、ユニット52、コード55b、エンジンリーマ11、歯牙31、生体内および口唇等を経る閉ループが形成され、インピーダンスの変化に基づいて、根尖とエンジンリーマ先端との間の距離が電気的に検出される。なお、本実施形態のシステム1においては、エンジンリーマ11とハンドピース15との間を絶縁するための絶縁構造(不図示)が設けられている。
【0013】
図示は省略するが、ユニット52には、不図示のアラーム手段(例えばブザー等)が設けられていてもよい。具体的には、根管32に対するエンジンリーマ11の挿入量が深くなるにつれて、アラーム音のパターンが変わるように構成されている。一例として、深くなるにつれて“ピッ”“ピッ”、“ピッピッピッ”、“ピー”のように変化するもの(すなわち、深くなるにつれてアラーム音間の間隔が徐々に短くなり、エンジンリーマ先端が根尖に達したときにその間隔がゼロとなりアラーム音が鳴り続けるようなもの)であってもよい。
【0014】
本実施形態のシステム1はまた、ユニット52と制御部18との間で無線通信を行うためのインターフェイス手段61を備えている。インターフェイス手段61は、ユニット52側に設けられた送受信ユニット61aと、ハンドピースの制御部18側に設けられた送受信ユニット61bとを有している。
【0015】
次に、上記のように構成された本実施形態のシステム1の使用方法を説明する。なお、以下に説明する使用方法はあくまで一例であり、使用方法はこれに限定されるものではない。
【0016】
医師は、歯牙31の根管32を治療するに際して先ず対極53を患者の口唇に引っ掛け、次いで、ハンドピース15を操作してエンジンリーマ11先端を根管32内に挿入していく。エンジンリーマ11を根管32に挿入していくにつれてインピーダンスは小さくなる。検出手段51は、エンジンリーマ11と対極53との間を流れる電流値の変化により、エンジンリーマ11の先端が根管32内奥の所定位置まで達したことを検出し、エンジンリーマ11の先端が所定位置まで達した時点で、エンジンリーマ11の回転駆動を停止させるための信号を送受信ユニット61aからユニット61bへと送る。この信号を受けて、制御部18は駆動源の動作を停止させ、これによりエンジンリーマ11の回転が自動的に停止する。
【0017】
このような構成によれば、医師が根管32を治療する際、エンジンリーマ11の先端が根管32内の所定位置まで達した時点で、エンジンリーマ11の回転が自動的に停止されるため、根管にエンジンリーマを深く入れすぎることが防止される。従来の構成のように、アラーム音の変化を聞いて医師がエンジンリーマ11を停止させる構成の場合、例えば、医師の判断が遅れエンジンリーマ11を停止させるタイミングが遅れると根管にエンジンリーマを深く入れすぎる可能性があったが、本実施形態の構成によればそのようなことが防止される。
【0018】
また、本実施形態では、エンジンリーマ11の駆動を停止させるための信号が無線により送られるため、有線の場合と比較してコードの煩雑な引回し等も不要となる。
【0019】
上記構成において、エンジンリーマ11の先端が根管32内の所定位置まで達したかどうかは、例えば、ユニット52に、エンジンリーマ11の挿入量の示すアラーム音を検出する手段が設けられており、該手段が前記アラームを検出した場合に、前記エンジンリーマの回転駆動が自動的に停止されるように構成することもできる。
【0020】
ここで、「アラームを検出した場合」としては、例えば、最初のアラーム音である“ピッ”“ピッ”を検出した場合であってもよいし、次のアラーム音である“ピッピッピッ”を検出した場合、もしくは、最後のアラーム音ある“ピー”を検出した場合であってもよい。また、このようなアラーム音は検出手段51の機種やメーカごとによって異なるため、種々の検出手段に対応すべく、アラーム音の種々のパターンがシステム1(ユニット52)内に記憶されていてもよい。この場合、医師は、例えば、これから使用する検出手段51のメーカや機種名を入力することで、それぞれの検出手段51に応じた、良好な根管治療を行うことができる。
【0021】
また、エンジンリーマ11の先端がどの程度の深さまでに達したらエンジンリーマが停止されるかが調整可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、根尖位置のみならず、根尖位置の手前の所定位置で、エンジンリーマ11の駆動を停止することができる。
【0022】
以上、本発明の一形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではなく適宜変更可能である。
例えば、ユニット52と、それから延び出したコード55a、55bと、インターフェイス手段61と、を備えるシステムが、従来公知の根管治療システム(エンジンリーマ11やその駆動源、および制御部18等を含む)に外付けされる構成であってもよい。この場合でも、検出手段51によって検出されたエンジンリーマ11の挿入量が所定の基準値に達した時点で、エンジンリーマ11を停止するために信号がインターフェイス手段61を介して制御部18に送られ、エンジンリーマ11の回転駆動が自動的に停止される。
【0023】
なお、無線通信を行うインターフェイス手段61の代わりに、有線通信を行うインターフェイス手段を利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態の根管治療システムを模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 根管治療システム
11 エンジンリーマ
15 ハンドピース
18 制御部
51 検出手段
52 ユニット
53 対極
55a、55b コード
61 インターフェイス手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯牙の根管に挿入されるエンジンリーマと、
該エンジンリーマを回転駆動する駆動源と、
前記根管の根尖と前記エンジンリーマの先端との間の距離を電気的に検出する検出手段と、
を備える根管治療システムであって、
前記検出手段によって検出された前記距離が所定の基準値に達した時点で、前記エンジンリーマの回転駆動が自動的に停止される、根管治療システム。
【請求項2】
前記距離がインピーダンスの変化に基づいて検出される、請求項1に記載の根管治療システム。
【請求項3】
前記検出手段が前記根尖と前記エンジンリーマの先端との間の距離をアラーム音で知らせるものであって、
さらに、
前記アラーム音を検出する手段を備え、
該手段が前記アラーム音を検出した場合に、前記エンジンリーマの回転駆動が自動的に停止される、請求項1または2に記載の根管治療システム。
【請求項4】
エンジンリーマの駆動を自動的に停止させるための、前記距離の前記所定の基準値が調整可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の根管治療システム。
【請求項5】
前記検出手段によって検出された前記距離の情報を、無線により、前記エンジンリーマの回転駆動を自動的に停止させる手段に送信するインターフェイス手段をさらに備える、請求項1〜4のいずれか1項に記載の根管治療システム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−68905(P2010−68905A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−237665(P2008−237665)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【特許番号】特許第4323554号(P4323554)
【特許公報発行日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(500061110)有限会社アイデーエム (2)
【Fターム(参考)】