説明

格子ユニット及び放射線画像撮影システム

【課題】格子の回転や傾斜を補正可能とする。
【解決手段】X線源とX線画像検出器との間に第1及び第2の格子が配置され、第2の格子は、格子ユニット30により構成されている。格子ユニット30は、複数のX線吸収部34が配列され、支持部材32により揺動自在に支持された矩形状の格子部33を備える。格子部33の第1〜第4の辺33a〜33dには、第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dが設けられている。第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dに対向するように、格子部33の周囲に第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36dが設けられている。第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dと格子面に直交する方向に第1〜第4の電極部37a〜37dが配置されている。電圧印加部38は、第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36dと第1〜第4の電極部37a〜37dの各部に電圧を印加することにより、格子部33の移動に加えて、回転や傾斜を補正する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線等の放射線を用いた放射線画像撮影用の格子ユニット及び放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線は、物体に入射したとき、相互作用により強度及び位相が変化する。X線の位相変化(角度変化)は、強度変化よりも大きいことが知られている。このX線の性質を利用し、被検体によるX線の位相変化に基づいて、X線吸収能が低い被検体から高コントラストの画像(以下、位相コントラスト画像と称する)を得るX線位相イメージングの研究が盛んに行われている。
【0003】
X線位相イメージングの一種として、透過型の回折格子によるタルボ干渉効果を用いたX線画像撮影システムが知られている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。このX線画像撮影システムは、X線源から見て、被検体の背後に第1の格子を配置し、第1の格子からタルボ干渉距離だけ下流に第2の格子を配置する。第2の格子の背後には、X線を検出して画像を生成するX線画像検出器が配置されている。第1及び第2の格子は、一方向に延伸されたX線吸収部及びX線透過部を、延伸方向に直交する配列方向に沿って交互に配列したものである。タルボ干渉距離とは、第1の格子を通過したX線が、タルボ干渉効果によって自己像を形成する距離である。タルボ干渉効果によって形成された自己像は、被検体とX線との相互作用により変調を受ける。
【0004】
上記X線画像撮影システムでは、第1の格子により生成される第1の周期パターン像(自己像)が第2の格子を通過することにより生成される第2の周期パターン像を検出することにより位相コントラスト画像が取得される。具体的には、第1の格子と第2の格子との一方を他方に対して、格子面と平行でかつ格子方向にほぼ垂直な方向に所定ピッチずつ格子配列の1周期分に渡って並進移動させながら、1ピッチ分移動するたびに第2の周期パターン像をX線画像検出器により検出する。X線画像検出器により得られる各画素値の上記並進移動に対する強度変化からX線の位相微分像が取得され、この位相微分像に基づいて位相コントラスト画像が得られる。この位相コントラスト画像の生成方法は、縞走査法と呼ばれ、レーザ光を用いた撮影装置においても知られている(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
X線画像撮影システムにおいて、第1の格子または第2の格子を併進移動させるための移動機構として、電圧を印加することにより変形する圧電アクチュエータを用いることが知られている(例えば、特許文献2参照)。しかし、上記並進移動では、サブマイクロメートル以下の高精度な移動制御が要されるため、圧電アクチュエータより精度の高い移動装置が求められている。そこで、高精度な移動装置として、特許文献3に記載された櫛歯型静電アクチュエータを用いることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4445397号公報
【特許文献2】特開2008−200361号公報
【特許文献3】特開平7−056096号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】C. David, et al., Applied Physics Letters, Vol.81, No.17, 2002年10月,3287頁
【非特許文献2】Hector Canabal, et al., Applied Optics, Vol.37, No.26, 1998年9月,6227頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、移動装置として特許文献3に記載の櫛歯型静電アクチュエータを用いた場合には、格子を並進移動させる際に格子に回転や傾斜が伴う可能性がある。格子に回転や傾斜が生じた場合には、第2の周期パターン像にモアレ縞が生じ、位相コントラスト画像の画質が劣化する恐れがある。このため、移動装置に格子の回転や傾斜を適宜補正する機能を組み込むことが望まれている。
【0009】
本発明の目的は、格子の回転や傾斜を補正可能とする移動装置を備えた放射線画像撮影用格子ユニット、及び放射線画像撮影システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の格子ユニットは、複数の放射線吸収部が配列された矩形状の格子部と、前記格子部を揺動自在に支持する支持部と、前記格子部の各辺に設けられた可動櫛歯状部と、前記各可動櫛歯状部に対向するように前記格子部の周囲に配置された固定櫛歯状部と、前記各固定櫛歯状部に電圧を印加することにより、前記固定櫛歯状部と前記可動櫛歯状部との間に静電気力を作用させ、前記格子部を格子面内で移動または回動させる電圧印加部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
なお、前記各可動櫛歯状部と格子面に直交する方向に対向する位置に配置された電極部を備え、前記電圧印加部は、前記各電極部に電圧を印加することにより、前記電極部と前記可動櫛歯状部との間に静電気力を作用させ、前記格子部を格子面に対して傾動させることが好ましい。
【0012】
また、前記支持部、前記固定櫛歯状部、前記電極部が固設された放射線透過性の基板を備えることが好ましい。
【0013】
また、前記放射線吸収部は、前記格子部の一辺に沿う第1の方向に延伸し、前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のピッチで配設されていることが好ましい。
【0014】
また、本発明の放射線画像撮影システムは、放射線源から放射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器とを備えた放射線画像撮影システムにおいて、前記第1及び第2の格子のいずれか一方が、請求項1から4いずれか1項に記載された格子ユニットにより構成されていることを特徴とする。
【0015】
なお、前記電圧印加部を制御し、前記格子部を1方向に段階的に移動させるとともに、前記格子部を移動させるたびに前記放射線源による放射線の照射と前記放射線画像検出器による画像データの生成を行なわせるシステム制御部と、前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づき、位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、を備えることが好ましい。
【0016】
また、前記システム制御部は、前記格子部の回転や傾斜を打ち消すために前記電圧印加部に印加させる電圧の設定値を保持していることが好ましい。この場合には、前記設定値を変更するための操作部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の格子ユニットは、格子部の各辺に設けられた可動櫛歯状部に対向するように格子部の周囲に固定櫛歯状部が配置され、各固定櫛歯状部に電圧を印加することにより、固定櫛歯状部と可動櫛歯状部との間に静電気力を作用させ、格子部を格子面内で移動または回動させるので、格子部の移動時に生じる回転を補正することができる。
【0018】
また、本発明の格子ユニットは、各可動櫛歯状部と格子面に直交する方向に対向する位置に電極部が配置されており、各電極部に電圧を印加することにより、電極部と可動櫛歯状部との間に静電気力を作用させ、格子部を格子面に対して傾動させるので、格子部の移動時に生じる傾斜を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】X線画像撮影システムの構成を示す模式図である。
【図2】格子ユニットの構成を示す平面図である。
【図3】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図4】格子部をx方向に移動させた例を示す平面図である。
【図5】格子部をx方向周りに回動させた例を示す平面図である。
【図6】格子部をxy面に対して傾動させた例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1において、X線撮影システム10は、X線源11、撮影部12、画像処理部13、コンソール14、及びシステム制御部15を備えている。X線源11は、回転陽極型のX線管と、X線の照射野を制限するコリメータとを有し、被検体Hに向けてX線を放射する。
【0021】
撮影部12は、X線画像検出器20、第1の格子21、及び第2の格子22からなる。第1の格子21及び第2の格子22は、格子面がX線源11から放射されるX線の光軸Aに直交するように、X線源11とX線画像検出器20との間に対向配置されている。
【0022】
第1の格子21は、光軸Aに沿うz方向に直交する面内の一方向であるy方向に延伸された複数のX線吸収部21a及びX線透過部21bを備えている。X線吸収部21a及びX線透過部21bは、z方向及びy方向に直交するx方向に沿って交互に配列されており、縞状の格子を構成している。X線吸収部21aは、金(Au)、白金(Pt)等のX線吸収性を有する金属からなる。X線透過部21bは、シリコン等のX線透過性を有する材質からなる。なお、X線透過部21bは、空隙であってもよい。
【0023】
第2の格子22は、後述する格子ユニット30(図2参照)により構成されている。格子ユニット30には、縞走査のための格子部33のx方向への移動に加えて、z方向周りの回動、及びxy面に対する傾動を可能とする移動装置が構成されている。
【0024】
X線源11と第1の格子21との間には、被検体Hが配置可能な間隔が設けられている。X線画像検出器20は、半導体回路により構成されたフラットパネル型検出器であり、第2の格子22の背後に、検出面がz方向に直交するように配置されている。
【0025】
コンソール14は、撮影条件、撮影モード、撮影開始指示等の入力、格子ユニット30の格子部33の位置調整のための設定操作等を可能とする操作部14aや、撮影により得られた画像や設定画面を表示する表示部14bを備える。システム制御部15は、操作部14aの入力信号に応じて、X線撮影システム10の各部を統括的に制御する。
【0026】
画像処理部13は、X線画像検出器20により生成される複数の画像データを用い、特許第4445397号公報等に記載の処理方法に基づいて位相微分像を生成し、この位相微分像を積分処理することにより位相コントラスト画像を生成する。この位相コントラスト画像は、表示部14bに表示される。
【0027】
図2及び図3において、格子ユニット30は、X線透過性を有する矩形平板状の基板31と、この基板31の四隅に設けられた支柱31aに連結された支持部材32より揺動自在に支持された矩形状の外形を有する格子部33とを備える。支持部材32は、バネや弾性樹脂等のフレキシブル部材からなり、格子部33の四隅に連結されている。
【0028】
格子部33は、y方向に延伸し、x方向に所定のピッチで配列された複数のX線吸収部34が形成されている。X線吸収部34は、Au、Pt等のX線吸収性を有する金属からなる。本実施形態では、隣り合うX線吸収部34の間を空隙としているが、X線透過材を介装してもよい。
【0029】
格子部33の第1〜第4の辺33a〜33dには、それぞれ、Au等の導電性部材により形成された第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dが設けられている。基板31上には、格子部33の第1〜第4の辺33a〜33dに対向するように、Au等の導電性部材により形成された第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36dが設けられている。第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36dは、それぞれ第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dと近接しており、静電気力を介して係合される。
【0030】
また、基板31上には、第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dにz方向に対向する位置に、Au等の導電性部材により形成された第1〜第4の電極部37a〜37dが設けられている。第1〜第4の電極部37a〜37dは、第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dのそれぞれと近接しており、静電気力を介して係合される。
【0031】
さらに、格子ユニット30は、第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36dと、第1〜第4の電極部37a〜37dとのそれぞれに電圧を印加して、第1〜第4の可動櫛歯状部35a〜35dとの間に電界を生じさせる電圧印加部38を備える。この電圧印加部38は、システム制御部15からの制御に基づいて電圧を発生し、各部に印加する。格子部33は、第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36d及び第1〜第4の電極部37a〜37dに印加された電圧に応じて、x方向への移動、z方向周りの回動、及びxy面に対する傾動を行なう。第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36d、第1〜第4の電極部37a〜37d、及び電圧印加部38は、格子部33の移動装置を構成している。
【0032】
格子部33をx方向に移動させるには、例えば、図4に示すように、電圧印加部38により、第1の固定櫛歯状部36aに負の電圧を印加するとともに、第2〜第4の固定櫛歯状部36b〜36dにグランド電圧を印加する。図示は省略しているが、このとき、第1〜第4の電極部37a〜37dにはグランド電圧が印加される。
【0033】
格子部33のx方向への移動量は、第1の固定櫛歯状部36aに印加される電圧の2乗に比例する静電気力と、支持部材32の弾性定数とに関係する。格子部33のx方向への移動は、縞走査法に基づき、第1の格子21に対して格子部33を相対走査させる際に実行される。システム制御部15は、電圧印加部38を制御し、第1の固定櫛歯状部36aに印加する電圧値を変化させることにより、格子部33をx方向に段階的に移動させる。
【0034】
格子部33をx方向周りに回動させるには、例えば、図5に示すように、電圧印加部38により、第1及び第4の固定櫛歯状部36a,36dに負の電圧を印加するとともに、第2及び第3の固定櫛歯状部36b,36cにグランド電圧を印加する。図示は省略しているが、このとき、第1〜第4の電極部37a〜37dにはグランド電圧が印加される。
【0035】
格子部33のx方向周りへの回動は、上記相対走査の際に生じる格子部33の回転を打ち消すように実行される。システム制御部15は、電圧印加部38を制御し、第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36dに格子部33の回転を打ち消すように電圧を印加しながら、第1の固定櫛歯状部36aへの印加電圧を変化させることで、格子部33の回転を打ち消しつつ、格子部33をx方向に移動させることができる。
【0036】
格子部33をxy面に対して傾動させるには、例えば、図6に示すように、電圧印加部38により、第3の電極部37cに負の電圧を印加するとともに、第4の電極部37dにグランド電圧を印加する。図示は省略しているが、このとき、第1及び第2の電極部37a,37bにはグランド電圧が印加される。これにより、格子部33には、x方向周りの回転が生じ、xy平面に対して傾動する。第1〜第4の電極部37a〜37dへの印加電圧を制御することにより、格子部33を所望の方向に傾動させることができる。
【0037】
格子部33のxy面に対する傾動は、上記相対走査の際に生じる格子部33の傾斜を打ち消すように実行される。システム制御部15は、電圧印加部38を制御し、第1〜第4の電極部37a〜37dに格子部33の傾斜を打ち消すように電圧を印加しながら、第1の固定櫛歯状部36aへの印加電圧を変化させることで、格子部33の傾斜を打ち消しつつ、格子部33をx方向に移動させることができる。このとき、第1〜第4の固定櫛歯状部36a〜36dに格子部33の回転を打ち消す電圧を印加することで、格子部33の傾斜と回転との両方を打ち消すことができる。
【0038】
以下に、X線画像撮影システム10の作用について説明する。格子部33の回転及び傾斜を打ち消すための電圧の設定値は、システム制御部15にプリセットされているが、ユーザは、キャリブレーションモードにおいて操作部14aから設定操作を行うことにより、該設定値を更新することができる。キャリブレーションモードでは、被検体Hを配置せずに撮影が行われる。
【0039】
操作部14aから撮影指示が入力されると、格子部33の移動は行なわれず、格子部33が固定されたまま、X線源11により一度のX線照射が行われ、第1及び第2の格子21,22を通過したX線がX線画像検出器20により検出される。
【0040】
このとき、第1の格子21により生成された第1の周期パターン像が、第2の格子22を構成する格子ユニット30の格子部33に投影され、格子部33により第2の周期パターン像が生成される。第1の周期パターン像が格子部33の線吸収部34のパターンと一致すれば、第2の周期パターン像にはモアレ縞は生じないが、一致していない場合には、第1の周期パターン像に対する格子部33の回転や傾斜に応じたモアレ縞が生じる。キャリブレーションモードでは、X線画像検出器20により生成される画像データに基づき画像処理部13で吸収画像が生成され、表示部14bに表示される。
【0041】
ユーザは、表示部14bに表示される吸収画像を観察することでモアレ縞の有無を確認することができる。ユーザにより、モアレ縞の有無の確認が行なわれ、モアレ縞が生じている場合には、操作部14aを操作して、格子部33の回転及び傾斜を打ち消すための電圧の設定値の入力が行われる。操作部14aから設定値の入力が行なわれると、システム制御部15にプリセットされた設定値が更新される。
【0042】
次いで、ユーザにより、操作部14aを操作して、撮影モードが、キャリブレーションモードから本撮影モードに切り替えられる。本撮影モードでは、X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置して撮影が行われる。
【0043】
操作部14aから撮影指示が入力されると、格子部33の傾斜及び回転が打ち消されたまま、格子部33がx方向に所定のピッチずつ移動される。1ピッチ分移動するたびに、X線源11によりX線照射が行なわれ、X線画像検出器20によりX線の検出が行われる。なお、格子部33の移動ピッチは、格子部33のx方向への格子ピッチを等分割(例えば、5分割)した値である。
【0044】
このとき、X線源11から放射されたX線は、被検体Hを通過することにより位相差が生じる。このX線が第1の格子21を通過することにより、被検体Hの屈折率と透過光路長とから決定される被検体Hの透過位相情報を反映した第1の周期パターン像が生成され、格子部33に投影される。なお、第1の周期パターン像は、特許第4445397号公報に記載のようにタルボ干渉効果により生成されたものであってもよいし、中国特許出願公開第101532969号明細書に記載のように幾何光学的に生成されたものであってもよい。第1の格子21でタルボ干渉効果が生じるか否かは、X線の波長と格子ピッチとの関係に依存する。タルボ干渉効果が生じない場合には、幾何光学的に第1の周期パターン像が生成される。
【0045】
第1の周期パターン像は、格子部33により部分的に遮蔽されることにより強度変調され、第2の周期パターン像となり、X線画像検出器20により検出される。X線画像検出器20により生成された複数の画像データは、画像処理部13に入力され、位相微分像が生成された後、x方向に沿った積分処理が施されることにより位相コントラスト画像が生成される。この位相コントラスト画像は、表示部14bに表示される。
【0046】
なお、上記実施形態では、第1及び第2の格子21,22のうち、第2の格子22を格子ユニット30により構成しているが、第2の格子22に代えて、第1の格子21を格子ユニット30により構成してもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、X線源11が単一焦点であるが、X線源11の射出側に、焦点を分散化させるための線源格子(マルチスリット)を設けてもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、位相微分像を積分処理したもの(X線の位相シフト分布に対応)を位相コントラスト画像としているが、位相微分像を位相コントラスト画像としてもよい。
【0049】
さらに、上記実施形態では、被検体HをX線源11と第1の格子21との間に配置しているが、被検体Hを第1の格子21と第2の格子22との間に配置してもよい。
【0050】
以上説明した実施形態は、医療診断用の放射線画像撮影システムのほか、工業用や、非破壊検査等のその他の放射線撮影システムに適用することが可能である。また、本発明は、放射線として、X線以外にガンマ線等を用いることも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 X線画像撮影システム
14 コンソール
21 第1の格子
21a X線吸収部
21b X線透過部
22 第2の格子
30 格子ユニット
31 基板
31a 支柱
32 支持部材
33 格子部
33a〜33d 第1〜第4の辺
34 X線吸収部
35a〜35d 第1〜第4の可動櫛歯状部
36a〜36d 第1〜第4の固定櫛歯状部
37a〜37d 第1〜第4の電極部
38 電圧印加部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射線吸収部が配列された矩形状の格子部と、
前記格子部を揺動自在に支持する支持部と、
前記格子部の各辺に設けられた可動櫛歯状部と、
前記各可動櫛歯状部に対向するように前記格子部の周囲に配置された固定櫛歯状部と、
前記各固定櫛歯状部に電圧を印加することにより、前記固定櫛歯状部と前記可動櫛歯状部との間に静電気力を作用させ、前記格子部を格子面内で移動または回動させる電圧印加部と、
を備えることを特徴とする格子ユニット。
【請求項2】
前記各可動櫛歯状部と格子面に直交する方向に対向する位置に配置された電極部を備え、
前記電圧印加部は、前記各電極部に電圧を印加することにより、前記電極部と前記可動櫛歯状部との間に静電気力を作用させ、前記格子部を格子面に対して傾動させることを特徴とする請求項1に記載の格子ユニット。
【請求項3】
前記支持部、前記固定櫛歯状部、前記電極部が固設された放射線透過性の基板を備えることを特徴とする請求項2に記載の格子ユニット。
【請求項4】
前記放射線吸収部は、前記格子部の一辺に沿う第1の方向に延伸し、前記第1の方向に直交する第2の方向に所定のピッチで配設されていることを特徴とする請求項1から3いずれか1項に記載の格子ユニット。
【請求項5】
放射線源から放射された放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成する放射線画像検出器とを備えた放射線画像撮影システムにおいて、
前記第1及び第2の格子のいずれか一方が、請求項1から4いずれか1項に記載された格子ユニットにより構成されていることを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項6】
前記電圧印加部を制御し、前記格子部を1方向に段階的に移動させるとともに、前記格子部を移動させるたびに前記放射線源による放射線の照射と前記放射線画像検出器による画像データの生成を行なわせるシステム制御部と、
前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づき、位相コントラスト画像を生成する画像処理部と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記システム制御部は、前記格子部の回転や傾斜を打ち消すために前記電圧印加部に印加させる電圧の設定値を保持していることを特徴とする請求項6に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項8】
前記設定値を変更するための操作部を備えることを特徴とする請求項7に記載の放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−150001(P2012−150001A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−8838(P2011−8838)
【出願日】平成23年1月19日(2011.1.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】