説明

框戸の戸面及び框戸の戸面の製造方法

【課題】材料コストを軽減でき、かつ、意匠性に優れた框戸の戸面、及び、当該戸面の製造方法を提供する。
【解決手段】矩形状の中央部面と当該中央部面を取り囲む周部面とを備え、上記中央部面が上記周部面に対して段差を有した凹面により形成された框戸1の戸面2において、上記周部面4を形成する左右一対の面(左面5;右面6)又は上記周部面4を形成する上下一対の面(上面7;下面8)のうちの一方の一対の面と、これら一方の一対の面を繋ぐように当該一方の一対の面間に形成された中間凹面9とが、同一の板材20により形成され、上記周部面4を形成する他方の一対の面が、上記中間凹面9の両端側に取付けられた周部面形成部材10により形成され、上記中央部面3が、両端側に周部面形成部材10を備えた中間凹面9により形成されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料コストを軽減できて意匠性に優れた框戸の戸面などに関する。
【背景技術】
【0002】
框戸は、戸の表面や戸の裏面を形成する戸面が、矩形状の中央部面と当該中央部面を取り囲む周部面とに区切られた構成を備える(例えば、特許文献1及び2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−318598号公報
【特許文献2】特開平11−182147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中央部面が周部面に対して段差を有した凹面により構成される戸面を製造する場合、一枚の金属板のような板材を折り曲げ加工して一枚の板面に矩形状の凹部を形成することは不可能であるため、一枚の板材を折り曲げ加工することによっては、周部面と中央部面とを有した戸面を製造することはできない。
そこで、従来、中央部面が周部面に対して段差を有した凹面により構成される戸面を形成する場合は、例えば、特許文献2に示すように、一枚の矩形状の板材の中央に中央部面の大きさに対応した開口を形成した周部面形成用板材と、周部面形成用板材の開口を塞ぐ中央部面形成用板材とを重ね合わせるようにしていた。この場合、中央部面と周部面とを形成するために2枚の板材が必要となり、また、周部面形成用板材の開口を形成するために取り除いた部分が無駄となるといったことから、材料コストの面で不経済であるという問題点があった。
また、表面に木目がプリントされた周部面形成用板材を用いて木目を有した周部面を構成する場合、周部面の木目の方向が全て同一方向となってしまうので、上下の周部面と左右の周部面との境界ラインがあいまいになってしまい、框戸の戸面としての意匠性に欠けるといった問題点もあった。
本発明は、材料コストを軽減でき、かつ、意匠性に優れた框戸の戸面、及び、当該戸面の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る框戸の戸面は、矩形状の中央部面と当該中央部面を取り囲む周部面とを備え、上記中央部面が上記周部面に対して段差を有した凹面により形成された框戸の戸面において、上記周部面を形成する左右一対の面又は上記周部面を形成する上下一対の面のうちの一方の一対の面と、これら一方の一対の面を繋ぐように当該一方の一対の面間に形成された中間凹面とが、同一の板材により形成され、上記周部面を形成する他方の一対の面が、上記中間凹面の両端側に取付けられた周部面形成部材により形成され、上記中央部面が、両端側に周部面形成部材を備えた中間凹面により形成されたので、材料コストを軽減でき、かつ、意匠性に優れた框戸の戸面を提供できる。
本発明に係る框戸の戸面の製造方法は、矩形状の中央部面と当該中央部面を取り囲む周部面とを備え、上記中央部面が上記周部面に対して段差を有した凹面により形成された框戸の戸面の製造方法において、一枚の金属板材を折り曲げ加工して、上記周部面を形成する左右一対の面又は上記周部面を形成する上下一対の面のうちの一方の一対の面と、これら一方の一対の面を繋ぐように当該一方の一対の面間に形成された中間凹面とを形成し、上記中間凹面の両端側に周部面形成部材を取付けることにより上記周部面を形成する他方の一対の面を形成し、両端側に周部面形成部材を備えた中間凹面により上記中央部面を形成したので、材料コストを軽減でき、かつ、意匠性に優れた框戸の戸面を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】框戸の構成を示す分解斜視図。
【図2】(a)は図1のA−A断面図(戸面の左右の端部形状は省略した)、(b)は図1のB−B断面図(戸面の上下の端部形状は省略した)。
【図3】戸面の製造方法を示す図。
【図4】戸面の製造方法を示す図。
【図5】(a)は框戸の平面図、(b)は凹面と周部面形成部材との関係を示す詳細断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1に示すように、框戸1は、表の戸面2及び裏の戸面2Bのうちの少なくともいずれか一方の戸面である例えば戸面2が、矩形状の中央部面3と当該中央部面3を取り囲む周部面4とを備え、中央部面3が周部面4に対して段差を有した凹面により形成される。中央部面3を取り囲む矩形枠状の周部面4は、左面5、右面6、上面7、下面8とに区画される。
【0008】
戸面2は、周部面4を形成する左右一対の面5;6又は周部面4を形成する上下一対の面7;8のうちの一方の一対の面としての例えば左右一対の左面5及び右面6と、これら左右一対の左面5と右面6とを繋ぐように当該左面5と右面6との間に形成された中間凹面9とが、一枚の板材により形成され、周部面4を形成する他方の一対の面である上下一対の上面7及び下面8が、中間凹面9の両端側における左右一対の左面5と右面6との間を塞ぐように中間凹面9の両端側の凹面9a;9b(図4参照)に取付けられた周部面形成部材10により形成され、中央部面3が、両端側に周部面形成部材10を備えた中間凹面9により形成された構成である。
【0009】
次に戸面の製造方法を説明する。周部面4を形成する面のうちの一方の一対の面である左右一対の左面5及び右面6と、これら左面5と右面6とを繋ぐようにこれら左面5と右面6との間に形成された中間凹面9とが、一枚の板材20を曲げ加工することにより形成される。即ち、戸面2を形成可能な大きさの一枚の板材を、専用の曲げ治具や曲げ機械を用いて曲げ加工することにより、戸面2の周部面4のうちの一方の一対の面を形成する左面5及び右面6と、後に中央部面3となる中間凹面9とが形成される。
【0010】
まず、図3(a)に示すように、一枚の板材20を左面5の端縁11となる部分で直角に曲げ、さらに、図3(b)に示すように、左面5に対して直角に曲げられた板材部分12を中央部面3の左端縁13となる部分で直角に曲げて後に中間凹面9となる段差面14を形成することにより、左面5と段差面14とが左面5と段差面14とに直交する左壁15を介して互いに平行となるように形成される。
同様に、図3(c)に示すように、一枚の板材20を右面6の端縁16となる部分で直角に曲げ、さらに、図3(d)に示すように、右面6に対して直角に曲げられた板材部分17を中央部面3の右端縁18となる部分で直角に曲げて中間凹面9を形成することにより、右面6と中間凹面9とが右面6と中間凹面9とに直交する右壁19を介して互いに平行となるように形成される。
【0011】
上記一枚の板材20としては、例えば、板厚0.5mm程度の軽量鋼板のような金属板の表面に木目が印刷された化粧板(例えば、化粧鋼板)や化粧フィルムを貼り付けたものを用い、当該板材20を上述のように曲げ加工することで、表面に木目を有した、左面5及び右面6と、後に中央部面3となる中間凹面9とが形成される。
【0012】
そして、図4(a);(b)に示すように、中間凹面9の長手方向の両端側である中間凹面9の上端側の凹面9a及び下端側の凹面9bに、それぞれ、周部面形成部材10を取付けることにより、当該周部面形成部材10の表面で、周部面4を形成する他方の一対の面となる上面7及び下面8を形成する。
周部面形成部材10としては、例えば、直方体形状の基材(アルミフラットバー、木材、MDF材など)の表面に、木目が印刷された化粧板(例えば、化粧鋼板)や化粧フィルムなどを貼り付けたものを用いる。これにより表面に木目を有した周部面形成部材10の木目表面が周部面4のうちの他方の一対の面となる上面7及び下面8を形成する。周部面形成部材10は、例えば、中間凹面9を形成する凹部の深さ寸法D(上記左壁15や右壁19の高さ寸法)よりも厚さ寸法tが小さく、かつ、中間凹面9の幅寸法W1に対応した左右幅寸法W2及び左面5の幅寸法W3と略同じ上下幅寸法Hを有したものを用いる。周部面形成部材10は、例えば、裏面30と中間凹面9とが接触した状態となるように接着剤あるいは中間凹面9の裏面側から止め付けられる止めねじなどの固着手段によって中間凹面9に固着される。この際、周部面形成部材10の左端面31が左壁15と接触して、かつ、周部面形成部材10の右端面32が右壁19と接触するように、周部面形成部材10の左右幅寸法W2が設定される。
【0013】
さらに上下両端側に周部面形成部材10を備えた中間凹面9により中央部面3が形成される。
【0014】
以上により、一枚の板材により左面5、右面6、中間凹面9が形成され、中間凹面9の両端側である上端側の凹面9a及び下端側の凹面9bにそれぞれ取付けられた周部面形成部材10の木目表面により上面7及び下面8が形成される。よって、左面5、右面6、上面7、下面8により形成された矩形枠状の周部面4と、周部面4に取り囲まれて周部面4と段差を有した凹面により形成された矩形状の中央部面3とを備えた戸面2が形成される。
【0015】
尚、表の戸面2の左面5は、左端部、上端部、下端部が、裏側に直角に折り曲げられ、表の戸面2の右面6は、上端部、下端部が、裏側に直角に折り曲げられ、右端部が裏側に折り返されて形成される。裏の戸面2Bは、表の戸面2の左面5の左端部と対応する左端部、上端部、下端部が、裏側に直角に折り曲げられ、表の戸面2の右面6の右端部と対応する右端部が、裏側に折り返されて形成される。表の戸面2の右面6に対応する裏の戸面2Bの右面の横幅寸法は、表の戸面2の右面6の横幅寸法よりも短く形成される。つまり、表の戸面2の右面6は、右側縁が、裏の戸面2Bの右面の右側縁よりも右側に突出するような寸法に形成された突出部40を備える。この突出部40は、目板と呼ばれる。
裏側に直角に折り曲げられた表の戸面2の左端部の端面、上端部の端面、下端部の端面と裏側に直角に折り曲げられた裏の戸面2Bの左端部の端面、上端部の端面、下端部の端面とが、互いに接合される。そして、表の戸面2の右面6の裏面と裏の戸面2Bの右面の裏面との間を塞ぐように、断面コ字状に形成された端面材41を取付ける。端面同士の接合や、裏面と端面材41との接合は、接着剤や止ねじなどを用いる。
また、表の戸面2の裏面と裏の戸面2Bの裏面との間の内部空間には、図外の断熱材や、戸面を補強する図外の桟などが設けられて框戸1が構成される。また、図5(b)に示すように、周部面形成部材10も断面ロ字形状に形成され、その内部空間にも補強桟42が設けられる。周部面形成部材10は、中間凹面9の上端面43や下端面44を覆う突出部45を備えた形状に形成される。
以上により、本願特有の戸面2を備えた框戸1が得られる。
【0016】
本形態によれば、従来のように、一枚の板材の中央部をくりぬいて開口部を形成するような材料の無駄をなくすことができるので、戸面2の製造における材料コストを低減できる。また、周部面4のうちの一対の一方の面と、周部面4のうちの一対の他方の面とを、別材料で形成するので、周部面4のうちの一対の一方の面の木目の方向と周部面4のうちの一対の他方の面の木目の方向とを違わせることができて、上下の周部面4(上面7と下面8)と左右の周部面4(左面5と右面6)との境界ライン21(図1参照)が鮮明となり、意匠性に優れた框戸1の戸面2を提供できる。
【0017】
周部面4を形成する上下一対の上面7及び下面8と、これら上面7と下面8とを繋ぐように当該上面7と下面8との間に形成された中間凹面9とが、一枚の板材により形成され、周部面4を形成する左右一対の左面5及び右面6が、中間凹面9の両端側における上下一対の上面7と下面8との間を塞ぐように中間凹面9の両端側の凹面に取付けられた周部面形成部材10により形成され、中央部面3が、両端側に周部面形成部材10を備えた中間凹面9により形成された構成の戸面2としてもよい。
【0018】
周部面形成部材10は、厚さ寸法tが、中間凹面9を形成する凹部の深さ寸法D(上記左壁15や右壁19の高さ寸法)と同じのもの、あるいは、中間凹面9を形成する凹部の深さ寸法D(上記左壁15や右壁19の高さ寸法)よりも大きいものを使用してもよい。このようにしても、上下の周部面4(上面7と下面8)と左右の周部面4(左面5と右面6)とが別部材なので、境界ライン21(図1参照)は鮮明となり、意匠性に優れた框戸1の戸面2を提供できる。
【0019】
裏の戸面2Bは、図1に示すように、平面に形成しても良いし、表の戸面2と同じ構成としてもよい。
【0020】
周部面4を形成する面のうちの一方の一対の面と中間凹面9とを形成するための一枚の板材は、折り曲げ加工によって破壊、破断しない材料であれば、金属板の他に、合成樹脂板、木質板などを使用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の框戸の戸面は、開閉扉、引き違い戸、嵌め戸、欄間戸に適用可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 框戸、2 戸面、3 中央部面、4 周部面、9 中間凹面、
10 周部面形成部材、20 一枚の板材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の中央部面と当該中央部面を取り囲む周部面とを備え、上記中央部面が上記周部面に対して段差を有した凹面により形成された框戸の戸面において、
上記周部面を形成する左右一対の面又は上記周部面を形成する上下一対の面のうちの一方の一対の面と、これら一方の一対の面を繋ぐように当該一方の一対の面間に形成された中間凹面とが、同一の板材により形成され、
上記周部面を形成する他方の一対の面が、上記中間凹面の両端側に取付けられた周部面形成部材により形成され、
上記中央部面が、両端側に周部面形成部材を備えた中間凹面により形成されたことを特徴とする框戸の戸面。
【請求項2】
矩形状の中央部面と当該中央部面を取り囲む周部面とを備え、上記中央部面が上記周部面に対して段差を有した凹面により形成された框戸の戸面の製造方法において、
一枚の金属板材を折り曲げ加工して、上記周部面を形成する左右一対の面又は上記周部面を形成する上下一対の面のうちの一方の一対の面と、これら一方の一対の面を繋ぐように当該一方の一対の面間に形成された中間凹面とを形成し、
上記中間凹面の両端側に周部面形成部材を取付けることにより上記周部面を形成する他方の一対の面を形成し、
両端側に周部面形成部材を備えた中間凹面により上記中央部面を形成したことを特徴とする框戸の戸面の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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