桟橋下面コンクリート自動はつり装置
【課題】 桟橋下面のコンクリートを高い自由度によって正確にはつり取ることができ、桟橋の強度を損なわせることがなく、制約の多い桟橋下面をその全長に亘って効率良くはつることができる桟橋下面コンクリート自動はつり装置を提供する。
【解決手段】
桟橋下面コンクリート自動はつり装置を、桟橋下面の長手方向に掛け渡された走行レールE上を移動する移動足場1と、移動足場1上の桟橋の長手方向と平行な第一レール1a上を移動可能な下部スライド台車2と、下部スライド台車2の桟橋の幅方向と平行な第二レール2a上を移動可能な上部スライド台車3と、上部スライド台車3上に設置された昇降自在な上下方向移動台4と、高圧水噴射用のノズルガン5が装着されたアーム6と、少なくとも移動足場1及び各台車2,3とをそれぞれ駆動させる各油圧モータを予めプログラムされた指示に従って制御する制御部8とから構成する。
【解決手段】
桟橋下面コンクリート自動はつり装置を、桟橋下面の長手方向に掛け渡された走行レールE上を移動する移動足場1と、移動足場1上の桟橋の長手方向と平行な第一レール1a上を移動可能な下部スライド台車2と、下部スライド台車2の桟橋の幅方向と平行な第二レール2a上を移動可能な上部スライド台車3と、上部スライド台車3上に設置された昇降自在な上下方向移動台4と、高圧水噴射用のノズルガン5が装着されたアーム6と、少なくとも移動足場1及び各台車2,3とをそれぞれ駆動させる各油圧モータを予めプログラムされた指示に従って制御する制御部8とから構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁等が張り出した複雑な形状をなしている桟橋下面のコンクリートを高い自由度によって正確にはつり取ることができ、補修範囲外の健全なコンクリートにクラックを生じさせたり鉄筋を損傷させたりして桟橋の強度を損なわせることがなく、制約の多い桟橋下面をその全長に亘って効率良くはつることができる桟橋下面コンクリート自動はつり装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海上に建設される桟橋の多くは、海底に打ち据えられた基礎杭等の支柱に床版等の上部工が敷設された構造となっていて、床版には鉄筋コンクリートを用いたRC床版が最もよく用いられており、このようなコンクリート部分は海水や海風による塩害を受け易く、特に桟橋の下面は海面に近く塩害による劣化が激しいため補修工事が不可欠となっている。
【0003】
この桟橋下面の補修工事は海面上で行わなければならないため非常に困難で、実際の桟橋下面の補修工事では、桟橋の基礎杭や梁等に固定された足場を桟橋下の海面上に作り、この足場上で作業員がチッピングハンマー等の打撃工具を使用してはつり作業を行っている。その際、作業員ははつり作業の中でも最も労力を要する上向きのはつり作業を行わなければならず、また足場は作業員が桟橋下面をはつり易いように桟橋の下面に近い位置に設けられており、またコンクリートくず等の廃物が海に飛散しないように密閉されたような状態となっているため、作業員はこの狭い作業空間で高い濃度の粉塵等にさらされ、また激しい騒音や振動の中で作業しなければならないため劣悪な作業環境となっており、その自動化が強く求められている。しかしながら、桟橋の下面は梁等が張り出していて一定の形状を成していない上に、桟橋下面のはつり作業では、床版の下面だけでなく、床版の下面より海面側に張り出していて最も塩害を受ける梁の下面や側面もはつる必要があり、更には基礎杭等を避けながらはつらなければならないために、人手による正確なはつり作業が必要となり、その自動化は非常に困難なものとなっている。
【0004】
このようなはつり作業の自動化の問題に対して、トンネル内を走行する架台と、前記架台上に設けられ、トンネル内周断面に概略沿った形状である逆U字状のガイドフレームと、前記ガイドフレームに沿って移動してトンネル内周のコンクリート壁面を切削するハンマーとからなり、前記ハンマーは前記ガイドフレーム上を移動可能に取り付けられた揺動可能なスイングアームの一端に取り付けられ、前記スイングアームの他端にはバランスウエイトが設けられているコンクリートはつり機がある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このコンクリートはつり機はトンネル全長に亘ってその内周面全体を自動的にはつることができるものの、トンネルのような断面形状が一定のものにしか適用できないので、形状が複雑な桟橋の下面のはつり作業には全く利用できない。更にそのはつり作業ではコンクリートをハンマーによってはつり取るため、その衝撃力によって補修範囲外の健全なコンクリート部分に微細なクラックが生じたり、鉄筋が損傷したりして桟橋の強度が損なわれるという欠点がある。
【0005】
また、複雑な形状の構造物にも対応できるものとしては、ウォータージェットを噴射するノズルと、橋の支承部に近接して配置され、先端部にノズルが装着され、旋回、揺動軸を含めて少なくとも3軸以上の自由度を有するノズル駆動系と、ノズルに高圧力水を供給する高圧力水源とを含むことを特徴とする橋の支承部のはつり装置がある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、このはつり装置は先端部のノズル駆動系の自由度が高いだけであるから、はつり装置近傍に位置する構造物のモルタルやコンクリートしかはつることができず、橋の支承部をはつる際にも各支承部毎に固定しなければならないから作業効率が悪く、ましてや桟橋の下面をその全長に亘ってはつることは非常に困難である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−116932号公報
【特許文献2】特開平10−60825号公報 (請求項6)
【0007】
また上記各特許文献に記載された発明は周囲に広い空間が存在する場所で使用されるはつり装置であり、その形状や構造、あるいは装置の設置や移動などに殆ど制約がないが、桟橋の下方で使用する装置の場合には、作業空間が狭いためにその形状や構造が限られ、またはつり装置の重量等にも大きな制約を受け、更に陸上に比べてやや不安定な足場上での作業であるために装置の設置や移動が難しく正確なはつり作業が困難な上に、廃水や廃物が海に落ちないように十分な対策が必要となるなど様々な問題があり、陸上で使用されるはつり装置をそのまま使用することはできないのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の問題に鑑み、梁等が張り出した複雑な形状をなしている桟橋下面のコンクリートを高い自由度によって正確にはつり取ることができ、補修範囲外の健全なコンクリートにクラックを生じさせたり鉄筋を損傷させたりして桟橋の強度を損なわせることがなく、制約の多い桟橋下面をその全長に亘って効率良くはつることができる桟橋下面コンクリート自動はつり装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来のように桟橋の下方に桟橋の略全長に亘って足場を組む代わりに、桟橋の基礎杭及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レールを敷設しておき、この走行レール上に移動可能に桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁間の長さより長い移動足場を設置すれば、桟橋の全長に亘って足場を設けなくとも作業場所毎に順次移動させるだけで容易にはつり作業を行うことができ、またこの移動足場の上面に桟橋の長手方向と平行な第一レールを敷設し、この第一レール上に移動可能な下部スライド台車を設ければ、大きい移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向に正確な移動ができ、更にこの下部スライド台車の上面に桟橋の幅方向と平行な第二レールを敷設し、この第二レール上に移動可能な上部スライド台車を設ければ、移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向だけでなく桟橋の幅方向にも正確な移動ができ、またこの上部スライド台車上に上下方向移動手段により昇降自在な上下方向移動台を設置すれば、場所によって高さの異なる桟橋下面に対しても対応させることができ、更にこの上下方向移動台に上部スライド台車の上面と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガンの仰角が調節可能なアームを設ければ、桟橋下面の狭い隙間や空間にもノズルガンを挿入してはつることができ、また少なくとも移動足場と下部スライド台車と上部スライド台車とをそれぞれ駆動させるための油圧モータと、予めプログラムされた指示に従って各油圧モータをそれぞれ制御してノズルガンの位置を順次変更するための制御部とを設ければ、下部スライド台車と上部スライド台車とを駆動してノズルガンの動きを制御することにより桟橋下面のコンクリートのはつり作業を自動的に行えることを究明して本発明を完成したのである。
【0010】
即ち本発明は、桟橋の基礎杭及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レール上を移動して、桟橋下面のコンクリートをはつるための桟橋下面コンクリート自動はつり装置であって、該走行レール上を移動可能であり桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁間の長さより長く上面に桟橋の長手方向と平行な第一レールが設置されていてはつり作業中は該走行レール上に停止している移動足場と、該第一レール上を移動可能であり上面に桟橋の幅方向と平行な第二レールが設置されている下部スライド台車と、該第二レール上を移動可能な上部スライド台車と、該上部スライド台車上に設置された上下方向移動手段により昇降自在な上下方向移動台と、該上下方向移動台上に設置されていて該上部スライド台車の上面と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガンの仰角が調節可能なアームと、少なくとも前記移動足場と前記下部スライド台車と該上部スライド台車とをそれぞれ駆動させるための油圧モータと、予めプログラムされた指示に従って該油圧モータをそれぞれ制御して該ノズルガンの位置を順次変更するための制御部とを備えていることを特徴とする桟橋下面コンクリート自動はつり装置である。
【0011】
また、移動足場の桟橋の長手方向と平行な両側部にそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁より外側まで突出して梁の下方に位置する折り畳み式足場を設け、展開された折り畳み式足場を含む移動足場が、その上面に敷設される防水シートと、展開された折り畳み式足場を含む移動足場の周辺部に立設された枠体に装着される防水シートとによって周囲と隔離可能であれば、梁の下方に位置する折り畳み式足場も含めて移動足場には防水シートが装着されていて周囲から隔離されるので、床版の下面だけでなく梁の側面や下面のはつり作業においても廃水及び廃物がこの防水シート上に落ちるので確実に回収することができて好ましく、
第二レールの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車に着脱自在に固定される、上面及び該上部スライド台車側の側面が開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁の下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックスを更に備えていれば、飛散し易いはつり取られたコンクリートや廃水を上面及び上部スライド台車側の側面が開口している飛散防止ボックス内に直ちに集めて飛散防止ボックスの上部スライド台車側の側面から移動足場の中央部へと引き入れることができて好ましく、
移動足場が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝を有すると共に排水溝の両側の上面が排水溝に向けて傾斜しており、排水溝の他端に設けられた集水部に流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプを更に備えていれば、はつり作業に使用された廃水を順次陸上へと送り出すことができ作業効率が向上して好ましく、
油圧モータに油を供給する油圧ポンプが移動足場上に設置されていれば、陸上から長い距離に亘って油を引き入れなくてもよいので安全であるばかりでなくタイムラグも起こり難いので各種の移動が確実にできるだけでなく微調整も容易にできて好ましく、
制御部が移動足場上に設置されていれば、移動足場上で確認しながら各種の操作ができて好ましいのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置は、桟橋の基礎杭及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レール上を移動して、桟橋下面のコンクリートをはつるための桟橋下面コンクリート自動はつり装置であり、走行レール上を移動可能でありはつり作業中は走行レール上に停止している移動足場を備えているから、桟橋の全長に亘って足場を設けなくとも作業場所毎に順次移動させるだけで容易にはつり作業を行うことができ、また作業場所を移動させる際も各種の作業器材を載置したまま移動させることができるから作業前の準備が容易で効率良くはつり作業を行うことができ、更に桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁間の長さより長い移動足場の上面に設置された桟橋の長手方向と平行な第一レール上を移動可能な下部スライド台車を備えているから、大きい移動足場を桟橋の長手方向に移動させなくても、移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向に正確な移動ができ、また4本の基礎杭によって区切られる定形の領域内のはつり作業、即ち4本の基礎杭によって仕切られた床版と、向かい合う1組の桟橋の長手方向と平行な梁と、向かい合う1組の桟橋の幅方向と平行な梁とをはつる作業を繰り返すことによって、桟橋下面をその全長に亘って完全にはつることができ、下部スライド台車の桟橋の幅方向と平行な第二レール上を移動可能な上部スライド台車を備えているから、移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向だけでなく桟橋の幅方向にも正確な移動ができ、また上部スライド台車上に設置された上下方向移動手段により昇降自在な上下方向移動台を備えているから、上下方向の移動が可能となり場所によって高さの異なる桟橋下面に対しても対応させることができ、更に上下方向移動台上に設置されていて上部スライド台車の上面と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用ノズルガンの仰角が調節可能なアームを備えているから、ノズルガンを様々な方向に向けることができるだけでなく、ノズルガンが装着されたアームをスライド等させることによって桟橋下面の狭い隙間や空間のはつり作業も容易にでき、また少なくとも移動足場と下部スライド台車と上部スライド台車とをそれぞれ駆動させるための油圧モータと、予めプログラムされた指示に従って油圧モータをそれぞれ制御してノズルガンの位置を順次変更するための制御部とを備えているから、ノズルガンの動きを制御することにより桟橋下面のコンクリートのはつり作業が自動的にできるのである。
【0013】
また、移動足場の桟橋の長手方向と平行な両側部にそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁より外側まで突出して梁の下方に位置する折り畳み式足場を設け、展開された折り畳み式足場を含む移動足場が、その上面に敷設される防水シートと、展開された折り畳み式足場を含む移動足場の周辺部に立設された枠体に装着される防水シートとによって周囲と隔離可能である場合には、展開された折り畳み式足場を含む移動足場及びその周辺部に立設された枠体に防水シートを装着することで、桟橋の床版の下面だけでなく梁の側面や下面のはつり作業においても廃水及び廃物を海に落とすことなく確実に回収することができると共に移動足場の移動時には折り畳むことで邪魔にならず使用することができ、また桟橋の幅方向と平行な第二レールの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車に着脱自在に固定される、上面及び上部スライド台車側の側面が開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁の下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックスを更に備えている場合には、桟橋の長手方向と平行な梁は移動足場より桟橋の幅方向に海面側に突出した位置にあるからはつり作業もし難く廃水や廃物が飛散し易いが、上面及び上部スライド台車側の側面が開口している飛散防止ボックスを使用することによって、はつり取られたコンクリートや廃水を飛散防止ボックス内に直ちに集め、飛散防止ボックスの上部スライド台車側の側面から移動足場の中央部へと引き入れることができ、更に移動足場が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝を有すると共に排水溝の両側の上面が排水溝に向けて傾斜しており、排水溝の他端に設けられた集水部に流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプを更に備えている場合には、はつり作業に使用された廃水を順次陸上へと送り出すことができ作業効率が向上させることができ、また油圧モータに油を供給する油圧ポンプが移動足場上に設置されている場合には、陸上から長い距離に亘って油を引き入れなくてもよいので安全であり、またタイムラグも起こり難いので各種の移動を確実に行わせることができるだけでなく微調整も容易にでき、更に制御部が移動足場上に設置されている場合には、移動足場上で確認しながら各種の操作ができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置について詳細に説明する。
図1は本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の1実施例が桟橋の下方に設置された状態を示す平断面説明図、図2は図1の正断面説明図、図3は図1の右側面断面説明図、図4は図1において移動足場上の防水シート,下部スライド台車,上部スライド台車及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図、図5は図1において上部スライド台車,上下方向移動台及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図、図6は下部スライド台車を示す正断面説明図、図7は図1の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材とを示す拡大正面説明図、図8は図1において桟橋の床版下面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図、図9は図1において桟橋の長手方向と平行な梁の側面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図、図10は図9の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図、図11は飛散防止ボックスを備えた本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の他の実施例が桟橋の長手方向と平行な梁の下面をはつる位置に設置された状態を示す平断面説明図、図12は図11の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図である。
【0015】
図面中、Aは桟橋の基礎杭、Bは桟橋の長手方向と平行な梁、Cは桟橋の幅方向に平行な梁、Dは桟橋の基礎杭A及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁Bに桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工、Eはこのブラケット支保工D上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レールである。従来の桟橋下面のはつり作業では桟橋全長に亘って足場を敷設する必要があったが、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の場合には、走行レールEをブラケット支保工D上に掛け渡すだけであるから早期にはつり作業を開始できる。
【0016】
1は走行レールE上を移動可能であり桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁C,C間の長さより長く上面1bに桟橋の長手方向と平行な第一レール1aが設置されていてはつり作業中は走行レールE上に停止している移動足場である。この移動足場1は、例えば図4の如く、台車上に金属板等を敷き詰めて足場を形成し、この足場上に桟橋の長手方向と平行な第一レール1aを設置しただけの簡単な構造でよく、また台車には油圧モータ7aが装着されていて桟橋の長手方向に移動自在となっている。
【0017】
また移動足場1の桟橋の長手方向と平行な両側部1c,1cにそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁Bより外側まで突出して梁Bの下方に位置する折り畳み式足場1dを設け、展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1は、その上面1bに敷設される防水シート1fと、展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の周辺部に立設された枠体1eに装着される防水シート1fとによって周囲と隔離可能である場合には、展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の上面1b及びその周辺部に立設された枠体1eに防水シート1fを装着することで、桟橋の床版の下面だけでなく桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面や下面のはつり作業においても廃水及び廃物を海に落とすことなく確実に回収することができ、また移動足場1の移動時には折り畳むことで邪魔にならず使用することができて好ましい。更に移動足場1が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝1gを有すると共に排水溝1gの両側の上面1bが排水溝1gに向けて傾斜しており、排水溝1gの他端に設けられた集水部1hに流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプ10を更に備えていれば、はつり作業に使用された廃水を順次陸上へと送り出すことができ作業効率が向上させることができて好ましい。
【0018】
2は移動足場1の第一レール1a上を移動可能であり上面2bに桟橋の幅方向と平行な第二レール2aが設置されている下部スライド台車であり、この下部スライド台車2も図5の如く台車上に金属板等を敷き詰め、この上面2bに第二レール2aを設置した構造とすればよく、この台車にも油圧モータ7bが装着されていて、下部スライド台車3は第一レール1a上を桟橋の長手方向に移動自在となっている。また後述する上部スライド台車3がこの下部スライド台車2の第二レール2a上を桟橋の幅方向に移動するので、下部スライド台車2の幅方向の長さを移動足場1の幅方向と略同じ長さにすることによって上部スライド台車3が十分に移動できるようにするとよい。
【0019】
3は第二レール2a上を移動可能な上部スライド台車であり、この上部スライド台車3には油圧モータ7cが装着されていて第二レール2a上を桟橋の幅方向に移動自在となっている。またこの上部スライド台車3上には上下方向移動手段4aにより昇降自在な上下方向移動台4が設置されている。
【0020】
6は上下方向移動台4上に設置されていて上部スライド台車3の上面3aと平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガン5の仰角が調節可能なアームである。このアーム6は自由度が高いので、ノズルガン5を様々な方向に向けることができるのである。
【0021】
7は移動足場1と下部スライド台車2と上部スライド台車3とをそれぞれ駆動させるための油圧モータ7a,7b,7cに油を供給する油圧ポンプである。本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置では、はつり作業に水を使用するので、移動足場1,下部スライド台車2及び上部スライド台車3を駆動させるために漏電の危険性がある電気を使用することは安全上好ましくないので、油圧モータ7a,7b,7cを使用するのである。なお油圧ポンプ7が移動足場1上に設置されていれば、陸上から長い距離に亘って油を引き入れなくてもよいので安全であり、またタイムラグも起こり難いので各種の移動が確実にできるだけでなく微調整も容易にできて好ましい。なお油圧ポンプ7を移動足場1上に設置する際には防水カバーを被せたり、移動足場1に枠体1eが設けられている態様の場合には移動足場1上の枠体1e外に設置したりすれば、はつり作業によって生じた廃水や廃物から油圧ポンプ7を保護することができてよい。
【0022】
8は予めプログラムされた指示に従って油圧モータ7a,7b,7cをそれぞれ制御してノズルガン5の位置を順次変更するための制御部である。この制御部8は油圧モータ7a,7b,7cをそれぞれ制御して、はつり作業前に移動足場1を所定位置に移動させたり、はつり作業中は下部スライド台車2及び上部スライド台車3の速度や移動距離を制御して、ノズルガン5の位置を順次変更させるのである。また、この制御部8が移動足場1上に設置されていれば、移動足場1上で確認しながら各種の操作ができて好ましい。なお制御部8には電気を使用するから廃水等で濡れると故障の原因となるので、防水カバーを被せたり、移動足場1に枠体1eが設けられている態様の場合には移動足場1上の枠体1e外に設置したりするとよい。
【0023】
9は第二レール2aの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車2に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車3に着脱自在に固定される、上面9a及び上部スライド台車3側の側面9bが開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁Bの下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックスである。桟橋の長手方向と平行な梁Bは移動台車1の桟橋の長手方向と平行な側部より桟橋の幅方向に突出しているため、上面9a及び上部スライド台車3側の側面9bが開口しているこの飛散防止ボックス9を使用すれば、はつり取られたコンクリートや廃水を海中に落下させずに直ちに集めて移動足場1の枠体1e内の中央部へと引き入れることができて好ましい。
【0024】
このような構成を有する本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を実際に使用するには、先ず、桟橋の基礎杭A及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁Bに桟橋の幅方向内側に向けてブラケット支保工Dを取り付け、更に桟橋の長手方向と平行に走行レールEをこのブラケット支保工D上に掛け渡して、この走行レールE上に本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を載置する。本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を実際に使用するにはこのような準備作業が必要となるが、従来の作業ではブラケット支保工Dを取り付けた後に、桟橋の全長に亘って足場を組まなければならないばかりでなく、はつり作業後にはその足場を全て取り外す必要があり、このような足場の組立や解体等の大がかりな作業を海面上で行わなければならないので、はつり作業を素早く開始することが困難であった。これに対して、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置では走行レールEを敷設するだけであるからはつり作業を素早く開始することができ、またその撤去作業も容易にできるのである。
【0025】
本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置で使用される移動足場1は、図4の如く桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁C,C間の長さより長い台車上に金属板等が敷き詰められていて、上面1bに桟橋の長手方向と平行な第一レール1aが設置されている。なお移動足場1の上面1bに防水シート1fを敷設する場合には、1枚の大きな防水シート1fを敷設するのではなく、第一レール1a等を避けるようにして数枚の防水シート1fを隙間なく敷設するのである。
【0026】
また移動足場1の桟橋の長手方向と平行な両側部1c,1cにそれぞれ折り畳み式足場1dを設け、更に移動足場1の周辺部に枠体1eを立設させる場合には、各折り畳み式足場1dや枠体1eにも防水シート1fを隙間なく敷設することによって、少なくとも移動足場1の枠体1e内を完全に防水することができる。このように防水をして桟橋の床版の下方に移動足場1の枠体1eを位置させれば、床版下面のはつり作業で生じた廃水及び廃物を確実に回収することができ、更にこれまではつり作業が難しくその廃水や廃物の回収も困難であった桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面や下面に対しても、防水シート1fが敷設された折り畳み式足場1dを使用することで廃水及び廃物を海に落下させることなく確実に回収することができるのである。
【0027】
またこの移動足場1は、廃水や廃物を確実に回収できるように、その幅方向の長さは移動足場1と基礎杭Aとの間に大きな隙間が生じない程度であることが好ましい。また、移動足場1の桟橋の長手方向の長さについては、作業効率を向上させるために長い方がより好ましいが、長すぎると移動足場1が重くなりすぎてブラケット支保工Dや掛け渡された走行レールEで支えきれなくなったり、桟橋の下方への設置が困難になるため、状況に応じて適宜決定する必要がある。なお、移動足場1の桟橋の長手方向の長さを十分確保できないような場合であっても、各図の如く少なくとも隣接する2本の桟橋の幅方向と平行な梁C,Cを枠体1eの上方に位置させることができるような長さであれば、移動足場1を停止させた状態で、4本の基礎杭Aによって区切られる定形の領域、即ち4本の基礎杭Aによって仕切られた床版と、向かい合う1組の桟橋の長手方向と平行な梁B,Bと、向かい合う1組の桟橋の幅方向と平行な梁C,Cとをはつることができるので、4本の基礎杭Aによって区切られる定形の領域毎に同様のはつり作業を繰り返すことによって、桟橋下面をその全長に亘って完全にはつることができ、また簡単且つ僅かなプログラムによって自動化が図れて好ましいのである。
【0028】
また走行レールEはブラケット支保工D上に掛け渡されているだけであるから、ブラケット支保工Dから離れた走行レールEの部位に長時間に亘って移動足場1の大きな重量がかかると、走行レールEに撓みが生じたり、走行レールEが破損したりする場合がある。そのため、図3に示すようにはつり作業のために移動足場1を停止させた際に、移動足場1の車輪がブラケット支保工Dの近傍に位置するように車輪を設けて、ブラケット支保工Dから離れた走行レールEの部位に移動足場1の重量が長時間に亘ってかからないようにすれば、走行レールEの撓みや破損が生じ難く、また移動足場1を安定させることができるのではつり作業に誤差が生じ難くて好ましい。
【0029】
また移動足場1は軽量化の観点から、足場を構成する金属板としてアルミ板を用いたり、折り畳み式足場1dとしてエキスパンドメタルを用いたりするとよい。また、はつり作業中に陸上から送られてノズルガンから噴射された水が、廃水として移動足場1に溜まると、移動足場1が重くなりブラケット支保工Dや走行レールEに大きな負担がかかるので、移動足場1に桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝1gを設けると共に、排水溝1gの両側の上面を排水溝1gに向けて傾斜させて、移動足場1の上面1bに撒き散らされた廃水を迅速に集め、更に図4に示すように排水溝1gの他端に設けられた集水部1hから排水ポンプ10によって陸上へと送り出すようにするとよい。
【0030】
更に移動足場1の車輪に取り付けられた油圧モータ7aは、下部スライド台車2や上部スライド台車3等が載置された移動足場1を動かさなければならないので、非常に大きな力が必要となるが、移動足場1は下部スライド台車2や上部スライド台車3とは異なり、はつり作業中は停止していて作業場所を移る際に動かすだけであるから、必ずしも迅速に動かす必要はないので、極端に大きなモータを使用しなくてもよい。
【0031】
次に下部スライド台車2や上部スライド台車3は、移動足場1上全体を自由に移動できると好ましいが、移動足場1上に枠体1eが立設されているような場合には、その枠体1e内を自由に移動できればよい。また移動足場1を防水シート1fで覆う場合も、下部スライド台車2や上部スライド台車3に降りかかった廃水等はそのまま防水シート1fで覆われた移動足場1内に落ちるので、下部スライド台車2や上部スライド台車3に対しては防水のための特別な手段を講じる必要はない。
【0032】
ここで、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を使用したはつり作業について詳述する。
先ず、移動足場1の車輪に取り付けられた油圧モータ7aを制御部8によって制御して、移動足場1を図1の如き所定の位置まで移動させる。次に、上部スライド台車3上に設置された上下方向移動台4をノズルガン5を桟橋の床版下面に近付けるために上下方向移動手段4aにより図7に示すように上方へと伸ばし、またノズルガン5をアーム6の先端部でその仰角を調整して上方に向ける。上部スライド台車3上の各部材をこのようにセットして固定した状態ではつり作業を開始するのである。
どのようにはつるかは、桟橋の形状等によって異なるが、図1の如き桟橋の場合には、桟橋の床版下面を左右半面づつ分けてはつり作業を行う。例えば、図1の上部スライド台車3を図1の左側に移動させ、また下部スライド台車2を図1の上方に移動させて図8の如き状態にしてからはつり作業を開始して、下部スライド台車2を図1の下方へと移動させながら浅いはつり作業を行う。そして上部スライド台車3を図1の右側に僅かに移動させてから、下部スライド台車2を図1の下方から上方へと移動させて浅くはつり、このような操作を桟橋の床版下面の左半面に対して数回繰り返して行う。このように浅いはつりを数回繰り返すことによって、はつり過ぎによる桟橋の床版下面の鉄筋の損傷を防止できるのである。次に、アーム6を上部スライド台車3の上面3aと平行に180度回動させて、桟橋の床版下面の右半面についても同様なはつり作業を行うことで桟橋の床版下面全体のはつり作業ができるのである。
【0033】
また、桟橋の長手方向と平行な梁Bや幅方向と平行な梁Cの側面をはつる場合には、図10の如く、上部スライド台車3上に設置された上下方向移動台4の高さを各側面の高さに合わせて適宜調節し、またノズルガン5を水平にしてはつり作業を開始するのである。
先ず桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面をはつる場合について詳述すれば、例えば図9の如く、上部スライド台車3を図1の左側に移動させて設置して、下部スライド台車2のみを図1の上方から下方又は下方から上方へ向けて移動させてはつり作業を行う。その後は順次上下方向移動台4の高さを上下方向移動手段4aにより変えながら同様なはつり作業を行うことで桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面全体をはつることができるのである。その際、上下方向移動台4の高さの上下方向移動手段4aによる変更は、はつり作業の状態を確認しながら手動で行うとよいが、上下方向移動台4の上下方向移動手段4aに高さ調節機構を設けて制御部8等によって自動制御してもよい。
次に桟橋の幅方向と平行な梁Cの側面をはつる場合について詳述すれば、図9の状態からアーム6を90度回動させ更に下部スライド台車2をその側面に近付けるように移動させて設置し、上部スライド台車3のみを左右方向に移動させてはつり作業を行えば、桟橋の幅方向と平行な梁Cの側面についても同様なはつり作業ができるのである。
【0034】
そして、桟橋の長手方向と平行な梁Bの下面をはつる場合には、図11の如く、移動足場1の桟橋の長手方向と平行な両側部1c,1cにそれぞれ設けられた折り畳み式足場1dを外部に向けて展開して桟橋の長手方向と平行な梁Bより外側まで突出させて梁Bの下方に位置させる。そして展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の上面1bに防水シート1fを敷設し、更に展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の周辺部に立設された枠体1eにも防水シート1fを装着すれば、桟橋の長手方向と平行な梁Bをはつった場合でも廃水や廃物を容易に回収することができるのである。
更に廃水や廃物の飛散を防止してより確実に回収するためには、図11の如く、上面9a及び上部スライド台車3側の側面9bが開口した平面視コ字状の飛散防止ボックス9を下部スライド台車2の第二レール2aの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車2に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車3に固定すればよい。また図12に示すように、この飛散防止ボックス9の開口した上部スライド台車3側の側面9bから、ノズルガン5が装着されたアーム6を挿入した状態ではつり作業を行えば、廃水や廃物の飛散防止効果がより一層向上するのである。なお、桟橋の幅方向と平行な梁Cの下面をはつる場合には、その下方に移動足場1を位置させることができるので、飛散防止ボックス9を利用しなくても、廃水や廃物を確実に回収することができるのである。
【0035】
以上のはつり作業では、移動足場1,下部スライド台車2及び上部スライド台車3をそれぞれ駆動させるための油圧モータ7a,7b,7cを、制御部8によって予めプログラムされた指示に従ってそれぞれ制御してノズルガン5の位置を順次変更することによって自動化されている。移動足場1,下部スライド台車2及び上部スライド台車3の移動はそれほど高い精度を求められるものではないので、制御部8による制御が比較的容易にできる。
これに対して、上下方向移動台4の昇降や、アーム6の回動及びスライドや、ノズルガン5の仰角については、比較的高い精度で制御する必要があり、桟橋下面の形状が複雑な場合には、これらの調節ははつり作業前に手動で行う方がよい。しかしながら、桟橋下面の形状が比較的単純な場合には、上下方向移動台4,アーム6及びノズルガン5についても油圧モータ等を使用して制御することで、制御部8によって装置全体を完全に制御することも可能である。
【0036】
また上述したように、桟橋のはつり作業では補修範囲外の健全なコンクリート部分に微細なクラックが生じたり、鉄筋が損傷したりすることによって桟橋の強度が損なわれることが大きな問題となっている。これに対して本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置は、高圧水を利用しているので水圧を調整することによって浅いはつりが可能であるから、過度な衝撃が加わらないのでクラックが生じ難く、またはつり取られた状況を確認しながら、同一箇所に対して何度も浅いはつりを行うことによってはつり過ぎによる鉄筋の損傷を防止できるのである。このような手間のかかる繰り返し作業を、人力で行うと膨大な時間がかかり、また過酷な労働となるためこれまでは不可能であったが、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置によってそれが可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の1実施例が桟橋の下方に設置された状態を示す平断面説明図である。
【図2】図1の正断面説明図である。
【図3】図1の右側面断面説明図である。
【図4】図1において移動足場上の防水シート,下部スライド台車,上部スライド台車及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図である。
【図5】図1において上部スライド台車,上下方向移動台及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図である。
【図6】下部スライド台車を示す正断面説明図である。
【図7】図1の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材とを示す拡大正面説明図である。
【図8】図1において桟橋の床版下面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図である。
【図9】図1において桟橋の長手方向と平行な梁の側面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図である。
【図10】図9の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図である。
【図11】飛散防止ボックスを備えた本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の他の実施例が桟橋の長手方向と平行な梁の下面をはつる位置に設置された状態を示す平断面説明図である。
【図12】図11の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 移動足場
1a 第一レール
1b 上面
1c 側部
1d 折り畳み式足場
1e 枠体
1f 防水シート
1g 排水溝
1h 集水部
2 下部スライド台車
2a 第二レール
2b 上面
3 上部スライド台車
3a 上面
4 上下方向移動台
4a 上下方向移動手段
5 ノズルガン
6 アーム
7 油圧ポンプ
7a 移動足場用の油圧モータ
7b 下部スライド台車用の油圧モータ
7c 上部スライド台車用の油圧モータ
8 制御部
9 飛散防止ボックス
9a 上面
9b 側面
10 排水ポンプ
A 基礎杭
B 桟橋の長手方向に平行な梁
C 桟橋の幅方向に平行な梁
D ブラケット支保工
E 走行レール
【技術分野】
【0001】
本発明は、梁等が張り出した複雑な形状をなしている桟橋下面のコンクリートを高い自由度によって正確にはつり取ることができ、補修範囲外の健全なコンクリートにクラックを生じさせたり鉄筋を損傷させたりして桟橋の強度を損なわせることがなく、制約の多い桟橋下面をその全長に亘って効率良くはつることができる桟橋下面コンクリート自動はつり装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海上に建設される桟橋の多くは、海底に打ち据えられた基礎杭等の支柱に床版等の上部工が敷設された構造となっていて、床版には鉄筋コンクリートを用いたRC床版が最もよく用いられており、このようなコンクリート部分は海水や海風による塩害を受け易く、特に桟橋の下面は海面に近く塩害による劣化が激しいため補修工事が不可欠となっている。
【0003】
この桟橋下面の補修工事は海面上で行わなければならないため非常に困難で、実際の桟橋下面の補修工事では、桟橋の基礎杭や梁等に固定された足場を桟橋下の海面上に作り、この足場上で作業員がチッピングハンマー等の打撃工具を使用してはつり作業を行っている。その際、作業員ははつり作業の中でも最も労力を要する上向きのはつり作業を行わなければならず、また足場は作業員が桟橋下面をはつり易いように桟橋の下面に近い位置に設けられており、またコンクリートくず等の廃物が海に飛散しないように密閉されたような状態となっているため、作業員はこの狭い作業空間で高い濃度の粉塵等にさらされ、また激しい騒音や振動の中で作業しなければならないため劣悪な作業環境となっており、その自動化が強く求められている。しかしながら、桟橋の下面は梁等が張り出していて一定の形状を成していない上に、桟橋下面のはつり作業では、床版の下面だけでなく、床版の下面より海面側に張り出していて最も塩害を受ける梁の下面や側面もはつる必要があり、更には基礎杭等を避けながらはつらなければならないために、人手による正確なはつり作業が必要となり、その自動化は非常に困難なものとなっている。
【0004】
このようなはつり作業の自動化の問題に対して、トンネル内を走行する架台と、前記架台上に設けられ、トンネル内周断面に概略沿った形状である逆U字状のガイドフレームと、前記ガイドフレームに沿って移動してトンネル内周のコンクリート壁面を切削するハンマーとからなり、前記ハンマーは前記ガイドフレーム上を移動可能に取り付けられた揺動可能なスイングアームの一端に取り付けられ、前記スイングアームの他端にはバランスウエイトが設けられているコンクリートはつり機がある(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、このコンクリートはつり機はトンネル全長に亘ってその内周面全体を自動的にはつることができるものの、トンネルのような断面形状が一定のものにしか適用できないので、形状が複雑な桟橋の下面のはつり作業には全く利用できない。更にそのはつり作業ではコンクリートをハンマーによってはつり取るため、その衝撃力によって補修範囲外の健全なコンクリート部分に微細なクラックが生じたり、鉄筋が損傷したりして桟橋の強度が損なわれるという欠点がある。
【0005】
また、複雑な形状の構造物にも対応できるものとしては、ウォータージェットを噴射するノズルと、橋の支承部に近接して配置され、先端部にノズルが装着され、旋回、揺動軸を含めて少なくとも3軸以上の自由度を有するノズル駆動系と、ノズルに高圧力水を供給する高圧力水源とを含むことを特徴とする橋の支承部のはつり装置がある(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、このはつり装置は先端部のノズル駆動系の自由度が高いだけであるから、はつり装置近傍に位置する構造物のモルタルやコンクリートしかはつることができず、橋の支承部をはつる際にも各支承部毎に固定しなければならないから作業効率が悪く、ましてや桟橋の下面をその全長に亘ってはつることは非常に困難である。
【0006】
【特許文献1】特開平6−116932号公報
【特許文献2】特開平10−60825号公報 (請求項6)
【0007】
また上記各特許文献に記載された発明は周囲に広い空間が存在する場所で使用されるはつり装置であり、その形状や構造、あるいは装置の設置や移動などに殆ど制約がないが、桟橋の下方で使用する装置の場合には、作業空間が狭いためにその形状や構造が限られ、またはつり装置の重量等にも大きな制約を受け、更に陸上に比べてやや不安定な足場上での作業であるために装置の設置や移動が難しく正確なはつり作業が困難な上に、廃水や廃物が海に落ちないように十分な対策が必要となるなど様々な問題があり、陸上で使用されるはつり装置をそのまま使用することはできないのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記の問題に鑑み、梁等が張り出した複雑な形状をなしている桟橋下面のコンクリートを高い自由度によって正確にはつり取ることができ、補修範囲外の健全なコンクリートにクラックを生じさせたり鉄筋を損傷させたりして桟橋の強度を損なわせることがなく、制約の多い桟橋下面をその全長に亘って効率良くはつることができる桟橋下面コンクリート自動はつり装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、従来のように桟橋の下方に桟橋の略全長に亘って足場を組む代わりに、桟橋の基礎杭及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レールを敷設しておき、この走行レール上に移動可能に桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁間の長さより長い移動足場を設置すれば、桟橋の全長に亘って足場を設けなくとも作業場所毎に順次移動させるだけで容易にはつり作業を行うことができ、またこの移動足場の上面に桟橋の長手方向と平行な第一レールを敷設し、この第一レール上に移動可能な下部スライド台車を設ければ、大きい移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向に正確な移動ができ、更にこの下部スライド台車の上面に桟橋の幅方向と平行な第二レールを敷設し、この第二レール上に移動可能な上部スライド台車を設ければ、移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向だけでなく桟橋の幅方向にも正確な移動ができ、またこの上部スライド台車上に上下方向移動手段により昇降自在な上下方向移動台を設置すれば、場所によって高さの異なる桟橋下面に対しても対応させることができ、更にこの上下方向移動台に上部スライド台車の上面と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガンの仰角が調節可能なアームを設ければ、桟橋下面の狭い隙間や空間にもノズルガンを挿入してはつることができ、また少なくとも移動足場と下部スライド台車と上部スライド台車とをそれぞれ駆動させるための油圧モータと、予めプログラムされた指示に従って各油圧モータをそれぞれ制御してノズルガンの位置を順次変更するための制御部とを設ければ、下部スライド台車と上部スライド台車とを駆動してノズルガンの動きを制御することにより桟橋下面のコンクリートのはつり作業を自動的に行えることを究明して本発明を完成したのである。
【0010】
即ち本発明は、桟橋の基礎杭及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レール上を移動して、桟橋下面のコンクリートをはつるための桟橋下面コンクリート自動はつり装置であって、該走行レール上を移動可能であり桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁間の長さより長く上面に桟橋の長手方向と平行な第一レールが設置されていてはつり作業中は該走行レール上に停止している移動足場と、該第一レール上を移動可能であり上面に桟橋の幅方向と平行な第二レールが設置されている下部スライド台車と、該第二レール上を移動可能な上部スライド台車と、該上部スライド台車上に設置された上下方向移動手段により昇降自在な上下方向移動台と、該上下方向移動台上に設置されていて該上部スライド台車の上面と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガンの仰角が調節可能なアームと、少なくとも前記移動足場と前記下部スライド台車と該上部スライド台車とをそれぞれ駆動させるための油圧モータと、予めプログラムされた指示に従って該油圧モータをそれぞれ制御して該ノズルガンの位置を順次変更するための制御部とを備えていることを特徴とする桟橋下面コンクリート自動はつり装置である。
【0011】
また、移動足場の桟橋の長手方向と平行な両側部にそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁より外側まで突出して梁の下方に位置する折り畳み式足場を設け、展開された折り畳み式足場を含む移動足場が、その上面に敷設される防水シートと、展開された折り畳み式足場を含む移動足場の周辺部に立設された枠体に装着される防水シートとによって周囲と隔離可能であれば、梁の下方に位置する折り畳み式足場も含めて移動足場には防水シートが装着されていて周囲から隔離されるので、床版の下面だけでなく梁の側面や下面のはつり作業においても廃水及び廃物がこの防水シート上に落ちるので確実に回収することができて好ましく、
第二レールの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車に着脱自在に固定される、上面及び該上部スライド台車側の側面が開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁の下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックスを更に備えていれば、飛散し易いはつり取られたコンクリートや廃水を上面及び上部スライド台車側の側面が開口している飛散防止ボックス内に直ちに集めて飛散防止ボックスの上部スライド台車側の側面から移動足場の中央部へと引き入れることができて好ましく、
移動足場が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝を有すると共に排水溝の両側の上面が排水溝に向けて傾斜しており、排水溝の他端に設けられた集水部に流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプを更に備えていれば、はつり作業に使用された廃水を順次陸上へと送り出すことができ作業効率が向上して好ましく、
油圧モータに油を供給する油圧ポンプが移動足場上に設置されていれば、陸上から長い距離に亘って油を引き入れなくてもよいので安全であるばかりでなくタイムラグも起こり難いので各種の移動が確実にできるだけでなく微調整も容易にできて好ましく、
制御部が移動足場上に設置されていれば、移動足場上で確認しながら各種の操作ができて好ましいのである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置は、桟橋の基礎杭及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レール上を移動して、桟橋下面のコンクリートをはつるための桟橋下面コンクリート自動はつり装置であり、走行レール上を移動可能でありはつり作業中は走行レール上に停止している移動足場を備えているから、桟橋の全長に亘って足場を設けなくとも作業場所毎に順次移動させるだけで容易にはつり作業を行うことができ、また作業場所を移動させる際も各種の作業器材を載置したまま移動させることができるから作業前の準備が容易で効率良くはつり作業を行うことができ、更に桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁間の長さより長い移動足場の上面に設置された桟橋の長手方向と平行な第一レール上を移動可能な下部スライド台車を備えているから、大きい移動足場を桟橋の長手方向に移動させなくても、移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向に正確な移動ができ、また4本の基礎杭によって区切られる定形の領域内のはつり作業、即ち4本の基礎杭によって仕切られた床版と、向かい合う1組の桟橋の長手方向と平行な梁と、向かい合う1組の桟橋の幅方向と平行な梁とをはつる作業を繰り返すことによって、桟橋下面をその全長に亘って完全にはつることができ、下部スライド台車の桟橋の幅方向と平行な第二レール上を移動可能な上部スライド台車を備えているから、移動足場を停止させた状態で桟橋の長手方向だけでなく桟橋の幅方向にも正確な移動ができ、また上部スライド台車上に設置された上下方向移動手段により昇降自在な上下方向移動台を備えているから、上下方向の移動が可能となり場所によって高さの異なる桟橋下面に対しても対応させることができ、更に上下方向移動台上に設置されていて上部スライド台車の上面と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用ノズルガンの仰角が調節可能なアームを備えているから、ノズルガンを様々な方向に向けることができるだけでなく、ノズルガンが装着されたアームをスライド等させることによって桟橋下面の狭い隙間や空間のはつり作業も容易にでき、また少なくとも移動足場と下部スライド台車と上部スライド台車とをそれぞれ駆動させるための油圧モータと、予めプログラムされた指示に従って油圧モータをそれぞれ制御してノズルガンの位置を順次変更するための制御部とを備えているから、ノズルガンの動きを制御することにより桟橋下面のコンクリートのはつり作業が自動的にできるのである。
【0013】
また、移動足場の桟橋の長手方向と平行な両側部にそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁より外側まで突出して梁の下方に位置する折り畳み式足場を設け、展開された折り畳み式足場を含む移動足場が、その上面に敷設される防水シートと、展開された折り畳み式足場を含む移動足場の周辺部に立設された枠体に装着される防水シートとによって周囲と隔離可能である場合には、展開された折り畳み式足場を含む移動足場及びその周辺部に立設された枠体に防水シートを装着することで、桟橋の床版の下面だけでなく梁の側面や下面のはつり作業においても廃水及び廃物を海に落とすことなく確実に回収することができると共に移動足場の移動時には折り畳むことで邪魔にならず使用することができ、また桟橋の幅方向と平行な第二レールの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車に着脱自在に固定される、上面及び上部スライド台車側の側面が開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁の下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックスを更に備えている場合には、桟橋の長手方向と平行な梁は移動足場より桟橋の幅方向に海面側に突出した位置にあるからはつり作業もし難く廃水や廃物が飛散し易いが、上面及び上部スライド台車側の側面が開口している飛散防止ボックスを使用することによって、はつり取られたコンクリートや廃水を飛散防止ボックス内に直ちに集め、飛散防止ボックスの上部スライド台車側の側面から移動足場の中央部へと引き入れることができ、更に移動足場が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝を有すると共に排水溝の両側の上面が排水溝に向けて傾斜しており、排水溝の他端に設けられた集水部に流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプを更に備えている場合には、はつり作業に使用された廃水を順次陸上へと送り出すことができ作業効率が向上させることができ、また油圧モータに油を供給する油圧ポンプが移動足場上に設置されている場合には、陸上から長い距離に亘って油を引き入れなくてもよいので安全であり、またタイムラグも起こり難いので各種の移動を確実に行わせることができるだけでなく微調整も容易にでき、更に制御部が移動足場上に設置されている場合には、移動足場上で確認しながら各種の操作ができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置について詳細に説明する。
図1は本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の1実施例が桟橋の下方に設置された状態を示す平断面説明図、図2は図1の正断面説明図、図3は図1の右側面断面説明図、図4は図1において移動足場上の防水シート,下部スライド台車,上部スライド台車及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図、図5は図1において上部スライド台車,上下方向移動台及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図、図6は下部スライド台車を示す正断面説明図、図7は図1の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材とを示す拡大正面説明図、図8は図1において桟橋の床版下面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図、図9は図1において桟橋の長手方向と平行な梁の側面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図、図10は図9の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図、図11は飛散防止ボックスを備えた本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の他の実施例が桟橋の長手方向と平行な梁の下面をはつる位置に設置された状態を示す平断面説明図、図12は図11の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図である。
【0015】
図面中、Aは桟橋の基礎杭、Bは桟橋の長手方向と平行な梁、Cは桟橋の幅方向に平行な梁、Dは桟橋の基礎杭A及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁Bに桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工、Eはこのブラケット支保工D上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レールである。従来の桟橋下面のはつり作業では桟橋全長に亘って足場を敷設する必要があったが、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の場合には、走行レールEをブラケット支保工D上に掛け渡すだけであるから早期にはつり作業を開始できる。
【0016】
1は走行レールE上を移動可能であり桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁C,C間の長さより長く上面1bに桟橋の長手方向と平行な第一レール1aが設置されていてはつり作業中は走行レールE上に停止している移動足場である。この移動足場1は、例えば図4の如く、台車上に金属板等を敷き詰めて足場を形成し、この足場上に桟橋の長手方向と平行な第一レール1aを設置しただけの簡単な構造でよく、また台車には油圧モータ7aが装着されていて桟橋の長手方向に移動自在となっている。
【0017】
また移動足場1の桟橋の長手方向と平行な両側部1c,1cにそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁Bより外側まで突出して梁Bの下方に位置する折り畳み式足場1dを設け、展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1は、その上面1bに敷設される防水シート1fと、展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の周辺部に立設された枠体1eに装着される防水シート1fとによって周囲と隔離可能である場合には、展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の上面1b及びその周辺部に立設された枠体1eに防水シート1fを装着することで、桟橋の床版の下面だけでなく桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面や下面のはつり作業においても廃水及び廃物を海に落とすことなく確実に回収することができ、また移動足場1の移動時には折り畳むことで邪魔にならず使用することができて好ましい。更に移動足場1が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝1gを有すると共に排水溝1gの両側の上面1bが排水溝1gに向けて傾斜しており、排水溝1gの他端に設けられた集水部1hに流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプ10を更に備えていれば、はつり作業に使用された廃水を順次陸上へと送り出すことができ作業効率が向上させることができて好ましい。
【0018】
2は移動足場1の第一レール1a上を移動可能であり上面2bに桟橋の幅方向と平行な第二レール2aが設置されている下部スライド台車であり、この下部スライド台車2も図5の如く台車上に金属板等を敷き詰め、この上面2bに第二レール2aを設置した構造とすればよく、この台車にも油圧モータ7bが装着されていて、下部スライド台車3は第一レール1a上を桟橋の長手方向に移動自在となっている。また後述する上部スライド台車3がこの下部スライド台車2の第二レール2a上を桟橋の幅方向に移動するので、下部スライド台車2の幅方向の長さを移動足場1の幅方向と略同じ長さにすることによって上部スライド台車3が十分に移動できるようにするとよい。
【0019】
3は第二レール2a上を移動可能な上部スライド台車であり、この上部スライド台車3には油圧モータ7cが装着されていて第二レール2a上を桟橋の幅方向に移動自在となっている。またこの上部スライド台車3上には上下方向移動手段4aにより昇降自在な上下方向移動台4が設置されている。
【0020】
6は上下方向移動台4上に設置されていて上部スライド台車3の上面3aと平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガン5の仰角が調節可能なアームである。このアーム6は自由度が高いので、ノズルガン5を様々な方向に向けることができるのである。
【0021】
7は移動足場1と下部スライド台車2と上部スライド台車3とをそれぞれ駆動させるための油圧モータ7a,7b,7cに油を供給する油圧ポンプである。本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置では、はつり作業に水を使用するので、移動足場1,下部スライド台車2及び上部スライド台車3を駆動させるために漏電の危険性がある電気を使用することは安全上好ましくないので、油圧モータ7a,7b,7cを使用するのである。なお油圧ポンプ7が移動足場1上に設置されていれば、陸上から長い距離に亘って油を引き入れなくてもよいので安全であり、またタイムラグも起こり難いので各種の移動が確実にできるだけでなく微調整も容易にできて好ましい。なお油圧ポンプ7を移動足場1上に設置する際には防水カバーを被せたり、移動足場1に枠体1eが設けられている態様の場合には移動足場1上の枠体1e外に設置したりすれば、はつり作業によって生じた廃水や廃物から油圧ポンプ7を保護することができてよい。
【0022】
8は予めプログラムされた指示に従って油圧モータ7a,7b,7cをそれぞれ制御してノズルガン5の位置を順次変更するための制御部である。この制御部8は油圧モータ7a,7b,7cをそれぞれ制御して、はつり作業前に移動足場1を所定位置に移動させたり、はつり作業中は下部スライド台車2及び上部スライド台車3の速度や移動距離を制御して、ノズルガン5の位置を順次変更させるのである。また、この制御部8が移動足場1上に設置されていれば、移動足場1上で確認しながら各種の操作ができて好ましい。なお制御部8には電気を使用するから廃水等で濡れると故障の原因となるので、防水カバーを被せたり、移動足場1に枠体1eが設けられている態様の場合には移動足場1上の枠体1e外に設置したりするとよい。
【0023】
9は第二レール2aの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車2に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車3に着脱自在に固定される、上面9a及び上部スライド台車3側の側面9bが開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁Bの下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックスである。桟橋の長手方向と平行な梁Bは移動台車1の桟橋の長手方向と平行な側部より桟橋の幅方向に突出しているため、上面9a及び上部スライド台車3側の側面9bが開口しているこの飛散防止ボックス9を使用すれば、はつり取られたコンクリートや廃水を海中に落下させずに直ちに集めて移動足場1の枠体1e内の中央部へと引き入れることができて好ましい。
【0024】
このような構成を有する本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を実際に使用するには、先ず、桟橋の基礎杭A及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁Bに桟橋の幅方向内側に向けてブラケット支保工Dを取り付け、更に桟橋の長手方向と平行に走行レールEをこのブラケット支保工D上に掛け渡して、この走行レールE上に本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を載置する。本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を実際に使用するにはこのような準備作業が必要となるが、従来の作業ではブラケット支保工Dを取り付けた後に、桟橋の全長に亘って足場を組まなければならないばかりでなく、はつり作業後にはその足場を全て取り外す必要があり、このような足場の組立や解体等の大がかりな作業を海面上で行わなければならないので、はつり作業を素早く開始することが困難であった。これに対して、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置では走行レールEを敷設するだけであるからはつり作業を素早く開始することができ、またその撤去作業も容易にできるのである。
【0025】
本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置で使用される移動足場1は、図4の如く桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁C,C間の長さより長い台車上に金属板等が敷き詰められていて、上面1bに桟橋の長手方向と平行な第一レール1aが設置されている。なお移動足場1の上面1bに防水シート1fを敷設する場合には、1枚の大きな防水シート1fを敷設するのではなく、第一レール1a等を避けるようにして数枚の防水シート1fを隙間なく敷設するのである。
【0026】
また移動足場1の桟橋の長手方向と平行な両側部1c,1cにそれぞれ折り畳み式足場1dを設け、更に移動足場1の周辺部に枠体1eを立設させる場合には、各折り畳み式足場1dや枠体1eにも防水シート1fを隙間なく敷設することによって、少なくとも移動足場1の枠体1e内を完全に防水することができる。このように防水をして桟橋の床版の下方に移動足場1の枠体1eを位置させれば、床版下面のはつり作業で生じた廃水及び廃物を確実に回収することができ、更にこれまではつり作業が難しくその廃水や廃物の回収も困難であった桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面や下面に対しても、防水シート1fが敷設された折り畳み式足場1dを使用することで廃水及び廃物を海に落下させることなく確実に回収することができるのである。
【0027】
またこの移動足場1は、廃水や廃物を確実に回収できるように、その幅方向の長さは移動足場1と基礎杭Aとの間に大きな隙間が生じない程度であることが好ましい。また、移動足場1の桟橋の長手方向の長さについては、作業効率を向上させるために長い方がより好ましいが、長すぎると移動足場1が重くなりすぎてブラケット支保工Dや掛け渡された走行レールEで支えきれなくなったり、桟橋の下方への設置が困難になるため、状況に応じて適宜決定する必要がある。なお、移動足場1の桟橋の長手方向の長さを十分確保できないような場合であっても、各図の如く少なくとも隣接する2本の桟橋の幅方向と平行な梁C,Cを枠体1eの上方に位置させることができるような長さであれば、移動足場1を停止させた状態で、4本の基礎杭Aによって区切られる定形の領域、即ち4本の基礎杭Aによって仕切られた床版と、向かい合う1組の桟橋の長手方向と平行な梁B,Bと、向かい合う1組の桟橋の幅方向と平行な梁C,Cとをはつることができるので、4本の基礎杭Aによって区切られる定形の領域毎に同様のはつり作業を繰り返すことによって、桟橋下面をその全長に亘って完全にはつることができ、また簡単且つ僅かなプログラムによって自動化が図れて好ましいのである。
【0028】
また走行レールEはブラケット支保工D上に掛け渡されているだけであるから、ブラケット支保工Dから離れた走行レールEの部位に長時間に亘って移動足場1の大きな重量がかかると、走行レールEに撓みが生じたり、走行レールEが破損したりする場合がある。そのため、図3に示すようにはつり作業のために移動足場1を停止させた際に、移動足場1の車輪がブラケット支保工Dの近傍に位置するように車輪を設けて、ブラケット支保工Dから離れた走行レールEの部位に移動足場1の重量が長時間に亘ってかからないようにすれば、走行レールEの撓みや破損が生じ難く、また移動足場1を安定させることができるのではつり作業に誤差が生じ難くて好ましい。
【0029】
また移動足場1は軽量化の観点から、足場を構成する金属板としてアルミ板を用いたり、折り畳み式足場1dとしてエキスパンドメタルを用いたりするとよい。また、はつり作業中に陸上から送られてノズルガンから噴射された水が、廃水として移動足場1に溜まると、移動足場1が重くなりブラケット支保工Dや走行レールEに大きな負担がかかるので、移動足場1に桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝1gを設けると共に、排水溝1gの両側の上面を排水溝1gに向けて傾斜させて、移動足場1の上面1bに撒き散らされた廃水を迅速に集め、更に図4に示すように排水溝1gの他端に設けられた集水部1hから排水ポンプ10によって陸上へと送り出すようにするとよい。
【0030】
更に移動足場1の車輪に取り付けられた油圧モータ7aは、下部スライド台車2や上部スライド台車3等が載置された移動足場1を動かさなければならないので、非常に大きな力が必要となるが、移動足場1は下部スライド台車2や上部スライド台車3とは異なり、はつり作業中は停止していて作業場所を移る際に動かすだけであるから、必ずしも迅速に動かす必要はないので、極端に大きなモータを使用しなくてもよい。
【0031】
次に下部スライド台車2や上部スライド台車3は、移動足場1上全体を自由に移動できると好ましいが、移動足場1上に枠体1eが立設されているような場合には、その枠体1e内を自由に移動できればよい。また移動足場1を防水シート1fで覆う場合も、下部スライド台車2や上部スライド台車3に降りかかった廃水等はそのまま防水シート1fで覆われた移動足場1内に落ちるので、下部スライド台車2や上部スライド台車3に対しては防水のための特別な手段を講じる必要はない。
【0032】
ここで、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置を使用したはつり作業について詳述する。
先ず、移動足場1の車輪に取り付けられた油圧モータ7aを制御部8によって制御して、移動足場1を図1の如き所定の位置まで移動させる。次に、上部スライド台車3上に設置された上下方向移動台4をノズルガン5を桟橋の床版下面に近付けるために上下方向移動手段4aにより図7に示すように上方へと伸ばし、またノズルガン5をアーム6の先端部でその仰角を調整して上方に向ける。上部スライド台車3上の各部材をこのようにセットして固定した状態ではつり作業を開始するのである。
どのようにはつるかは、桟橋の形状等によって異なるが、図1の如き桟橋の場合には、桟橋の床版下面を左右半面づつ分けてはつり作業を行う。例えば、図1の上部スライド台車3を図1の左側に移動させ、また下部スライド台車2を図1の上方に移動させて図8の如き状態にしてからはつり作業を開始して、下部スライド台車2を図1の下方へと移動させながら浅いはつり作業を行う。そして上部スライド台車3を図1の右側に僅かに移動させてから、下部スライド台車2を図1の下方から上方へと移動させて浅くはつり、このような操作を桟橋の床版下面の左半面に対して数回繰り返して行う。このように浅いはつりを数回繰り返すことによって、はつり過ぎによる桟橋の床版下面の鉄筋の損傷を防止できるのである。次に、アーム6を上部スライド台車3の上面3aと平行に180度回動させて、桟橋の床版下面の右半面についても同様なはつり作業を行うことで桟橋の床版下面全体のはつり作業ができるのである。
【0033】
また、桟橋の長手方向と平行な梁Bや幅方向と平行な梁Cの側面をはつる場合には、図10の如く、上部スライド台車3上に設置された上下方向移動台4の高さを各側面の高さに合わせて適宜調節し、またノズルガン5を水平にしてはつり作業を開始するのである。
先ず桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面をはつる場合について詳述すれば、例えば図9の如く、上部スライド台車3を図1の左側に移動させて設置して、下部スライド台車2のみを図1の上方から下方又は下方から上方へ向けて移動させてはつり作業を行う。その後は順次上下方向移動台4の高さを上下方向移動手段4aにより変えながら同様なはつり作業を行うことで桟橋の長手方向と平行な梁Bの側面全体をはつることができるのである。その際、上下方向移動台4の高さの上下方向移動手段4aによる変更は、はつり作業の状態を確認しながら手動で行うとよいが、上下方向移動台4の上下方向移動手段4aに高さ調節機構を設けて制御部8等によって自動制御してもよい。
次に桟橋の幅方向と平行な梁Cの側面をはつる場合について詳述すれば、図9の状態からアーム6を90度回動させ更に下部スライド台車2をその側面に近付けるように移動させて設置し、上部スライド台車3のみを左右方向に移動させてはつり作業を行えば、桟橋の幅方向と平行な梁Cの側面についても同様なはつり作業ができるのである。
【0034】
そして、桟橋の長手方向と平行な梁Bの下面をはつる場合には、図11の如く、移動足場1の桟橋の長手方向と平行な両側部1c,1cにそれぞれ設けられた折り畳み式足場1dを外部に向けて展開して桟橋の長手方向と平行な梁Bより外側まで突出させて梁Bの下方に位置させる。そして展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の上面1bに防水シート1fを敷設し、更に展開された折り畳み式足場1dを含む移動足場1の周辺部に立設された枠体1eにも防水シート1fを装着すれば、桟橋の長手方向と平行な梁Bをはつった場合でも廃水や廃物を容易に回収することができるのである。
更に廃水や廃物の飛散を防止してより確実に回収するためには、図11の如く、上面9a及び上部スライド台車3側の側面9bが開口した平面視コ字状の飛散防止ボックス9を下部スライド台車2の第二レール2aの延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車2に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車3に固定すればよい。また図12に示すように、この飛散防止ボックス9の開口した上部スライド台車3側の側面9bから、ノズルガン5が装着されたアーム6を挿入した状態ではつり作業を行えば、廃水や廃物の飛散防止効果がより一層向上するのである。なお、桟橋の幅方向と平行な梁Cの下面をはつる場合には、その下方に移動足場1を位置させることができるので、飛散防止ボックス9を利用しなくても、廃水や廃物を確実に回収することができるのである。
【0035】
以上のはつり作業では、移動足場1,下部スライド台車2及び上部スライド台車3をそれぞれ駆動させるための油圧モータ7a,7b,7cを、制御部8によって予めプログラムされた指示に従ってそれぞれ制御してノズルガン5の位置を順次変更することによって自動化されている。移動足場1,下部スライド台車2及び上部スライド台車3の移動はそれほど高い精度を求められるものではないので、制御部8による制御が比較的容易にできる。
これに対して、上下方向移動台4の昇降や、アーム6の回動及びスライドや、ノズルガン5の仰角については、比較的高い精度で制御する必要があり、桟橋下面の形状が複雑な場合には、これらの調節ははつり作業前に手動で行う方がよい。しかしながら、桟橋下面の形状が比較的単純な場合には、上下方向移動台4,アーム6及びノズルガン5についても油圧モータ等を使用して制御することで、制御部8によって装置全体を完全に制御することも可能である。
【0036】
また上述したように、桟橋のはつり作業では補修範囲外の健全なコンクリート部分に微細なクラックが生じたり、鉄筋が損傷したりすることによって桟橋の強度が損なわれることが大きな問題となっている。これに対して本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置は、高圧水を利用しているので水圧を調整することによって浅いはつりが可能であるから、過度な衝撃が加わらないのでクラックが生じ難く、またはつり取られた状況を確認しながら、同一箇所に対して何度も浅いはつりを行うことによってはつり過ぎによる鉄筋の損傷を防止できるのである。このような手間のかかる繰り返し作業を、人力で行うと膨大な時間がかかり、また過酷な労働となるためこれまでは不可能であったが、本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置によってそれが可能となったのである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の1実施例が桟橋の下方に設置された状態を示す平断面説明図である。
【図2】図1の正断面説明図である。
【図3】図1の右側面断面説明図である。
【図4】図1において移動足場上の防水シート,下部スライド台車,上部スライド台車及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図である。
【図5】図1において上部スライド台車,上下方向移動台及び上部スライド台車上の部材を取り除いた状態を示す平断面説明図である。
【図6】下部スライド台車を示す正断面説明図である。
【図7】図1の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材とを示す拡大正面説明図である。
【図8】図1において桟橋の床版下面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図である。
【図9】図1において桟橋の長手方向と平行な梁の側面をはつるために下部スライド台車及び上部スライド台車を移動させた様子を示す平断面説明図である。
【図10】図9の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図である。
【図11】飛散防止ボックスを備えた本発明に係る桟橋下面コンクリート自動はつり装置の他の実施例が桟橋の長手方向と平行な梁の下面をはつる位置に設置された状態を示す平断面説明図である。
【図12】図11の上部スライド台車と上部スライド台車上の部材との状態を示す拡大正面説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 移動足場
1a 第一レール
1b 上面
1c 側部
1d 折り畳み式足場
1e 枠体
1f 防水シート
1g 排水溝
1h 集水部
2 下部スライド台車
2a 第二レール
2b 上面
3 上部スライド台車
3a 上面
4 上下方向移動台
4a 上下方向移動手段
5 ノズルガン
6 アーム
7 油圧ポンプ
7a 移動足場用の油圧モータ
7b 下部スライド台車用の油圧モータ
7c 上部スライド台車用の油圧モータ
8 制御部
9 飛散防止ボックス
9a 上面
9b 側面
10 排水ポンプ
A 基礎杭
B 桟橋の長手方向に平行な梁
C 桟橋の幅方向に平行な梁
D ブラケット支保工
E 走行レール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桟橋の基礎杭(A)及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁(B)に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工(D)上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レール(E)上を移動して、桟橋下面のコンクリートをはつるための桟橋下面コンクリート自動はつり装置であって、
該走行レール(E)上を移動可能であり桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁(C,C)間の長さより長く上面(1b)に桟橋の長手方向と平行な第一レール(1a)が設置されていてはつり作業中は該走行レール(E)上に停止している移動足場(1)と、該第一レール(1a)上を移動可能であり上面(2b)に桟橋の幅方向と平行な第二レール(2a)が設置されている下部スライド台車(2)と、該第二レール(2a)上を移動可能な上部スライド台車(3)と、該上部スライド台車(3)上に設置された上下方向移動手段(4a)により昇降自在な上下方向移動台(4)と、該上下方向移動台(4)上に設置されていて該上部スライド台車(3)の上面(3a)と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガン(5)の仰角が調節可能なアーム(6)と、少なくとも前記移動足場(1)と前記下部スライド台車(2)と該上部スライド台車(3)とをそれぞれ駆動させるための油圧モータ(7a,7b,7c)と、予めプログラムされた指示に従って該油圧モータ(7a,7b,7c)をそれぞれ制御して該ノズルガン(5)の位置を順次変更するための制御部(8)とを備えていることを特徴とする桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項2】
移動足場(1)の桟橋の長手方向と平行な両側部(1c,1c)にそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁(B)より外側まで突出して該梁(B)の下方に位置する折り畳み式足場(1d)が設けられており、展開された該折り畳み式足場(1d)を含む該移動足場(1)は、その上面(1b)に敷設される防水シート(1f)と、展開された該折り畳み式足場(1d)を含む該移動足場(1)の周辺部に立設された枠体(1e)に装着される防水シート(1f)とによって周囲と隔離可能である請求項1に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項3】
第二レール(2a)の延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車(2)に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車(3)に着脱自在に固定される、上面(9a)及び該上部スライド台車(3)側の側面(9b)が開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁(B)の下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックス(9)を更に備えている請求項1又は2に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項4】
移動足場(1)が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝(1g)を有すると共に該排水溝(1g)の両側の上面(1b)が該排水溝(1g)に向けて傾斜しており、該排水溝(1g)の他端に設けられた集水部(1h)に流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプ(10)を更に備えている請求項1から3までのいずれか1項に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項5】
油圧モータ(7a,7b,7c)に油を供給する油圧ポンプ(7)が移動足場(1)上に設置されている請求項1から4までのいずれか1項に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項6】
制御部(8)が移動足場(1)上に設置されている請求項1から5までのいずれか1項に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項1】
桟橋の基礎杭(A)及び/又は桟橋の長手方向と平行な梁(B)に桟橋の幅方向内側に向けて取り付けられたブラケット支保工(D)上に桟橋の長手方向に掛け渡された走行レール(E)上を移動して、桟橋下面のコンクリートをはつるための桟橋下面コンクリート自動はつり装置であって、
該走行レール(E)上を移動可能であり桟橋の長手方向に隣接する桟橋の幅方向と平行な梁(C,C)間の長さより長く上面(1b)に桟橋の長手方向と平行な第一レール(1a)が設置されていてはつり作業中は該走行レール(E)上に停止している移動足場(1)と、該第一レール(1a)上を移動可能であり上面(2b)に桟橋の幅方向と平行な第二レール(2a)が設置されている下部スライド台車(2)と、該第二レール(2a)上を移動可能な上部スライド台車(3)と、該上部スライド台車(3)上に設置された上下方向移動手段(4a)により昇降自在な上下方向移動台(4)と、該上下方向移動台(4)上に設置されていて該上部スライド台車(3)の上面(3a)と平行に回動及びスライド自在でその先端部に装着された高圧水噴射用のノズルガン(5)の仰角が調節可能なアーム(6)と、少なくとも前記移動足場(1)と前記下部スライド台車(2)と該上部スライド台車(3)とをそれぞれ駆動させるための油圧モータ(7a,7b,7c)と、予めプログラムされた指示に従って該油圧モータ(7a,7b,7c)をそれぞれ制御して該ノズルガン(5)の位置を順次変更するための制御部(8)とを備えていることを特徴とする桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項2】
移動足場(1)の桟橋の長手方向と平行な両側部(1c,1c)にそれぞれ外部に向けて展開することによって桟橋の長手方向と平行な梁(B)より外側まで突出して該梁(B)の下方に位置する折り畳み式足場(1d)が設けられており、展開された該折り畳み式足場(1d)を含む該移動足場(1)は、その上面(1b)に敷設される防水シート(1f)と、展開された該折り畳み式足場(1d)を含む該移動足場(1)の周辺部に立設された枠体(1e)に装着される防水シート(1f)とによって周囲と隔離可能である請求項1に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項3】
第二レール(2a)の延長線上に突出した状態となるように下部スライド台車(2)に又は桟橋の幅方向の延長線上に突出した状態となるように上部スライド台車(3)に着脱自在に固定される、上面(9a)及び該上部スライド台車(3)側の側面(9b)が開口した平面視コ字状であって桟橋の長手方向と平行な梁(B)の下面及び側面をはつる際に生じる廃水及び廃物の飛散を防止するための飛散防止ボックス(9)を更に備えている請求項1又は2に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項4】
移動足場(1)が、桟橋の長手方向に凹設された一端が閉鎖された排水溝(1g)を有すると共に該排水溝(1g)の両側の上面(1b)が該排水溝(1g)に向けて傾斜しており、該排水溝(1g)の他端に設けられた集水部(1h)に流れ込んだ廃水を陸上へと送り出す排水ポンプ(10)を更に備えている請求項1から3までのいずれか1項に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項5】
油圧モータ(7a,7b,7c)に油を供給する油圧ポンプ(7)が移動足場(1)上に設置されている請求項1から4までのいずれか1項に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【請求項6】
制御部(8)が移動足場(1)上に設置されている請求項1から5までのいずれか1項に記載の桟橋下面コンクリート自動はつり装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−348595(P2006−348595A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−176338(P2005−176338)
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(000182030)若築建設株式会社 (39)
【Fターム(参考)】
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