説明

梯子昇降補助装置

【課題】梯子昇降時の足腰負担を軽減することができる簡易な梯子昇降補助装置を提供する。
【解決手段】梯子を昇降する人Pの体重の少なくとも一部を支えて足腰にかかる負担を軽減するための梯子昇降補助装置10であって、人Pを上方へ引き上げる方向に付勢するバランサー12を備えるようにする。人Pには装着型ハーネス14を装着させ、バランサー12は、この装着型ハーネス14とワイヤー16を介して人Pを引き上げる方向に付勢する。この装置10は、人Pの急な落下を防止するストッパーも備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梯子の昇降負荷を軽減するための梯子昇降補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建設現場で使用するタワークレーンのマスト内には昇降用の梯子が設けてあり、オペレータは工事期間中、この梯子を自力で上り下りして操縦室と地上との間を行き来していた。マスト内は狭く、かつ、梯子の延長も長いことから、この梯子の上り下りは大変な労力を要するものであった。
【0003】
こうした梯子の昇降負荷を軽減する従来の技術としては、チェーン等を回転することで梯子桟を上下に動かすようにした循環式の梯子が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−205046号公報
【特許文献2】特開平9−122261号公報
【特許文献3】特開2002−115476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の従来の特許文献1等の循環式の梯子は、梯子自体が駆動することから、構造が複雑になるとともに、既存の梯子には適用し難いものであった。このため、梯子昇降時の足腰負担を軽減することができる簡易な装置の開発が求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、梯子昇降時の足腰負担を軽減することができる簡易な梯子昇降補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の請求項1に係る梯子昇降補助装置は、梯子を昇降する人の体重の少なくとも一部を支えて足腰にかかる負担を軽減するための梯子昇降補助装置であって、梯子を昇降する人を上方へ引き上げる方向に付勢するバランサーを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る梯子昇降補助装置は、上述した請求項1において、梯子を昇降する人の急な落下を防止するストッパーをさらに備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る梯子昇降補助装置は、上述した請求項1または2において、梯子を昇降する人が装着するための装着型ハーネスをさらに備え、前記バランサーは、この装着型ハーネスを介して人を引き上げる方向に付勢することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る梯子昇降補助装置は、上述した請求項1〜3のいずれか一つにおいて、前記バランサーは、梯子を昇降する人を吊る索条を巻き取る方向にバネで付勢されたドラムと、予め設定したトルクを常時維持することによって、索条が無負荷状態の時に索条の急な巻き取りを防止するトルク調整機構と、索条の巻き取り方向にのみクラッチを係合してトルク調整機構を有効状態とするワンウェイクラッチと、索条に過大な張力が加わったことを検出する過大張力検出機構と、過大張力検出機構の検出に基づいてドラムの回転を停止させるブレーキ機構とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、梯子を昇降する人の体重の少なくとも一部を支えて足腰にかかる負担を軽減するための梯子昇降補助装置であって、梯子を昇降する人を上方へ引き上げる方向に付勢するバランサーを備えたので、バランサーが体重の一部を負担することで人の昇降動作をアシストする。このため、梯子昇降時の足腰負担を軽減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明に係る梯子昇降補助装置の実施例を示す図である。
【図2】図2は、体重アシスト機構(バランサー)の側面図である。
【図3】図3は、体重アシスト機構(バランサー)の正面図である。
【図4】図4は、過大張力検出機構の変形状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る梯子昇降補助装置の実施の形態をタワークレーンのマスト内梯子に適用する場合を例にとり、図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、タワークレーンのマスト4内の梯子2を、装着型ハーネス14を装着したオペレータPが昇降している。本発明に係る梯子昇降補助装置10は、梯子2の上部に体重アシスト機構12(バランサー)を備えており、装着型ハーネス14に接続したワイヤー16(索条)を介してオペレータPを上方へ引き上げる方向に付勢している。体重アシスト機構12でオペレータPの体重の少なくとも一部を支えることで、オペレータPの足腰にかかる負担を軽減する。
【0015】
装着型ハーネス14は、装着し易く、上半身全体を支えて局所的に力が掛からないベスト型などの形態のものを用いている。装着型ハーネス14は、昇降後に梯子2の上下端に配置した装着型ハーネス固定部材18に収納することができる。
【0016】
図2および図3に示すように、体重アシスト機構12(バランサー)は、定荷重バネ20と、ワイヤードラム22と、トルク調整機構24と、ワンウェイクラッチ26と、過大張力検出機構28と、ディスクブレーキ機構30(ストッパー)とから構成されている。
【0017】
定荷重バネ20は、常に一定の張力を発生させることができる巻きバネの一種であり、ワイヤードラム22の回転力を一定にするような仕様のバネを用いている。このバネ20は必要に応じて複数段使用することができ、本実施例では2段配置した場合を例示している。
【0018】
ワイヤードラム22は、オペレータPを吊るワイヤー16を巻き付けるドラムで、回転方向R(図3)に回転可能である。このワイヤードラム22は、バネ20によってワイヤー16の巻き取り方向に付勢されている。この付勢力は、オペレータPの体重の8割程度を負担するような大きさに調整してもよい。こうすることで、宇宙飛行士が月面で動き回るような見かけ上の重力が1/6程度の昇降環境を作り出すこともできる。
【0019】
トルク調整機構24は、機械式で構成され、予め設定したトルクを常時維持することができる機構である。ワイヤー16が無負荷状態となった場合に、急にワイヤーが巻き上げられるのを防止する役割を果たすものである。
【0020】
ワンウェイクラッチ26は、ワイヤー16の巻き取り方向にのみクラッチを係合して、トルク調整機構24を有効状態として作動させる一方、逆方向にはクラッチを切り離してトルク調整機構24を無効状態(フリー)として作動させるものである。このワンウェイクラッチ26により、ワイヤー16の巻上げ時のみトルク調整機構24が有効となる。
【0021】
過大張力検出機構28は、ワイヤー16に過大な張力が加わったことを検出する機構であり、油圧ブレーキ回路34の一方向絞り弁36を介してディスクブレーキ機構30を作動させるためのものである。過大張力検出機構28は、自由端にワイヤー係合部28cを有するバネ部28aと本体28bとからなり、アキュムレータ32を備える。ワイヤー係合部28cは、ワイヤードラム22とワイヤーガイド38との間に配置されている。
【0022】
バネ部28aは、通常時は図4(a)に示すような形態をしているが、ワイヤー16に過大な張力が加わると、図4(b)に示すように、ワイヤー16からの押圧力Qによってワイヤー係合部28cが押されて収縮変形し、これにより過大な張力が検出される。
【0023】
ディスクブレーキ機構30は、過大張力検出機構28の張力検出に基づいてワイヤードラム22の回転を停止させ、オペレータPの転落を防止するストッパーの役割を果たす油圧制御式のブレーキ機構である。このディスクブレーキ機構30は、ワイヤードラム22と連結したディスク部30bと、ディスク部30bの縁を両面から挟む可動式のパッド部30aとからなり、ブレーキは一度掛かるとその状態を保持するようにしてある。
【0024】
オペレータPの下降時や落下などでワイヤー16に急激な張力が加わった場合には、過大張力検出機構28を介して油圧ブレーキ回路34の一方向絞り弁36が作動してブレーキが掛けられ、ワイヤードラム22の回転が止まり、ワイヤー16の繰り出しが停止する。
【0025】
このように、本発明によれば、体重アシスト機構12(バランサー)による昇降負荷の軽減機能と、ストッパーによる昇降時の安全機能とを兼ね備えており、オペレータPの昇降時の体重移動をアシストすることにより、足腰への負担が軽減されると同時に、万が一墜落などの事故が発生した場合でも、ストッパーの作用により急激な落下を防げるので、オペレータPの安全を守ることができる。また、従来のチェーン等による循環式の梯子に比べて簡易な構成であることから、既存の梯子に容易に適用することができる。
【0026】
上記の実施の形態においては、タワークレーンのマスト内梯子に適用する場合について説明したが、これに限るものではなく、一般的な梯子をはじめとしてさまざまな昇降用梯子に適用することが可能である。
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、梯子を昇降する人の体重の少なくとも一部を支えて足腰にかかる負担を軽減するための梯子昇降補助装置であって、梯子を昇降する人を上方へ引き上げる方向に付勢するバランサーを備えたので、バランサーが体重の一部を負担することで人の昇降動作をアシストする。このため、梯子昇降時の足腰負担を軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明に係る梯子昇降補助装置は、梯子昇降時の足腰負担を軽減するのに有用であり、特に、タワークレーンのマストなどに備わる延長が長い梯子を昇降する際の昇降動作を軽減するのに適している。
【符号の説明】
【0029】
2 梯子
4 マスト
10 梯子昇降補助装置
12 体重アシスト機構(バランサー)
14 装着型ハーネス
16 ワイヤー(索条)
18 装着型ハーネス固定部材
20 定荷重バネ
22 ワイヤードラム(ドラム)
24 トルク調整機構
26 ワンウェイクラッチ
28 過大張力検出機構
30 ディスクブレーキ機構(ストッパー)
32 アキュムレータ
34 油圧ブレーキ回路
36 一方向絞り弁
38 ワイヤーガイド
P オペレータ(梯子を昇降する人)
Q 押圧力
R ワイヤードラムの回転方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梯子を昇降する人の体重の少なくとも一部を支えて足腰にかかる負担を軽減するための梯子昇降補助装置であって、梯子を昇降する人を上方へ引き上げる方向に付勢するバランサーを備えたことを特徴とする梯子昇降補助装置。
【請求項2】
梯子を昇降する人の急な落下を防止するストッパーをさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の梯子昇降補助装置。
【請求項3】
梯子を昇降する人が装着するための装着型ハーネスをさらに備え、前記バランサーは、この装着型ハーネスを介して人を引き上げる方向に付勢することを特徴とする請求項1または2に記載の梯子昇降補助装置。
【請求項4】
前記バランサーは、梯子を昇降する人を吊る索条を巻き取る方向にバネで付勢されたドラムと、予め設定したトルクを常時維持することによって、索条が無負荷状態の時に索条の急な巻き取りを防止するトルク調整機構と、索条の巻き取り方向にのみクラッチを係合してトルク調整機構を有効状態とするワンウェイクラッチと、索条に過大な張力が加わったことを検出する過大張力検出機構と、過大張力検出機構の検出に基づいてドラムの回転を停止させるブレーキ機構とからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の梯子昇降補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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