梯子転倒防止装置
【課題】梯子の任意の位置に簡単に取り付けられ、回動部材の回動範囲及び停止位置の制限がなく、対象物の適用範囲が広い梯子転倒防止装置を提供する。
【解決手段】梯子転倒防止装置1は支持体3と回動部材4を備える。支持体3は断面略C形の外装体7とこれに螺着する締付けボルト8を備え、回動部材4は棒状部材の基部に締付けボルト8の後端に固着する円筒体9を回転可能に保持すると共にこれに接触するラチェット機構10を内設する。ラチェット機構10を締付方向にロックすれば回動部材4の揺動のみで支持体3の締付が達成される。回動部材4に接続する当接面5を屋根上面6に当接する場合には空転方向にて回動するようラチェット機構10を適宜切換える。
【解決手段】梯子転倒防止装置1は支持体3と回動部材4を備える。支持体3は断面略C形の外装体7とこれに螺着する締付けボルト8を備え、回動部材4は棒状部材の基部に締付けボルト8の後端に固着する円筒体9を回転可能に保持すると共にこれに接触するラチェット機構10を内設する。ラチェット機構10を締付方向にロックすれば回動部材4の揺動のみで支持体3の締付が達成される。回動部材4に接続する当接面5を屋根上面6に当接する場合には空転方向にて回動するようラチェット機構10を適宜切換える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、梯子転倒防止装置に関し、特に建物の屋根に立て掛ける梯子の安定性向上を目的とする梯子転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根上で作業をする場合、あるいは建物の外壁に付帯する設備工事等を行う場合には、一般に梯子を使用しているが、屋根の軒先に梯子を立て掛けると、当接箇所が梯子支柱と軒先の点接触となるため横滑りを起こし易かった。
【0003】
このため、梯子の横滑り、縦滑りを含む転倒事故を防止するための梯子転倒防止装置が種々提案されており、例えば下記に示すような従来技術があった。
【特許文献1】特開平2003−184468号公報
【特許文献2】特開平2003−262082号公報
【特許文献3】特開平2008−69619号公報これら従来の梯子転倒防止装置は、何れも梯子の支柱に支持体を取り付け、この支持体に対して支柱に沿って回動し得る回動部材を取り付け、その先端に設ける当接部を屋根等に押し当てて梯子の転倒事故を防止する装置であった。
【0004】
例えば特許文献1に記載される梯子の滑り防止装置は、梯子支柱に断面コ字形の支持体を取り付け、その内部に回動部材の基端部を収容し、この回動部材の先端部には当接部材を回動可能に取り付けていた。支持体を取り付ける支柱側面には、複数の貫通孔が穿設されており、その一の貫通孔には回動部材基端部に設ける回動軸を移動自在に挿通する一方、他の孔には複数のビスを夫々貫通し、支柱内面に設けるナットによって支持体を支柱に固定する構成であった。
【0005】
又この従来の滑り防止装置の回動部材は、回動軸にロック手段を設け、支柱と平行な格納状態、これから略90°回動した使用状態とに固定的に回動及び停止がなされる構成であった。ロック手段は、これを解除することで回動可能となすものであったが、その回動範囲は略90°に限定されており、停止位置もその限界値即ち使用時及び格納時の2タイプに限定されていた。
【0006】
特許文献2に記載される梯子転倒防止具は、支持体を梯子支柱の上下方向任意の位置に着脱自在に取り付け、この支持体の先端部に回動部材及び当接部材を取り付けていた。この梯子転倒防止具の支持体は、開閉可能な断面略ロ状の板材部分を備え、その内部に支柱を収容した後、板材に螺着するネジを廻すことで固定又は取り外す構成であった。
【0007】
又、回動部材は歯車状の回転板と天秤状の爪からなるロック部材を付設し、弾性部材で一回転方向に付勢されている回動部材の可動アームを任意の位置で固定していた。可動アームの先端は上方に屈曲しており、その上端に設ける当接部を建物の突出物等に押圧する構成であった。
【0008】
特許文献3に記載される転倒防止装置は、梯子支柱に装着する支持体と、この支持体の上部側及び下部側に夫々傾動可能に取り付ける押えアーム及び受承アームからなる回動部材を有し、これら回動部材は屋根等の設置対象物を上下方向から挟持するように固止可能に構成されていた。
【0009】
この従来の梯子転倒防止装置における支持体は、断面L字形状の板材と、L字形状の締め付けボルトをもって支柱を包囲し、ナットを締め付けることで支柱の任意の位置に固定するものであった。
【0010】
又回動部材は、その傾動範囲を所望の範囲に規制されると共に、適宜位置で支持体に固止されるもので、このため支持体板材には弧状の案内長孔を形成すると共に押えアーム及び受承アームの対応する位置には直線状の案内長孔を貫設し、これに締付けボルトを挿通していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載される梯子の滑り防止装置の取り付けは、支柱側面に複数の貫通孔が穿設された位置に限定されるため、その取付位置が固定的であり任意の位置に移動することはできなかった。更にこの滑り防止装置の回動部材は、その回動範囲が略90°に限定されると共に、停止位置も限定されていたため、梯子を立て掛ける対象物の形状、高さ等が限られてしまう欠点があった。
【0012】
又特許文献2及び特許文献3に記載される従来の梯子転倒防止装置は、支柱の任意の位置に支持体を取り付けることはできたが、共に支持体の固定・解除手段と回動部材の固定・解除手段が別々であったため、梯子を安定的に設置するための作業工程及び固定された梯子を取り外すための作業工程、更には転倒防止装置を梯子から取り外す作業工程等が煩雑になる欠点があった。
【0013】
この発明は、従来の梯子転倒防止装置が有する上記の問題点を解消すべくなされたものであり、梯子支柱の任意の位置に簡単に取り付けられ、回動部材の回動範囲及び停止位置の制限がなく、梯子を立て掛ける対象物の適用範囲が広く、梯子の設置・取外し作業及び梯子に対する取付・取外し作業が簡易な梯子転倒防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明の梯子転倒防止装置は、梯子の支柱に取り付ける支持体と、この支持体に回動可能に取り付ける回動部材を備え、回動部材に接続する当接部を梯子設置対象物に当接する梯子転倒防止装置において、前記支持体は、開口部を設け前記支柱を離脱可能に収容する外装体と、この外装体の面板に螺着する締付けボルトと、この締付けボルトの先端に取り付けられ前記開口部周縁の枠部分との間で前記支柱を挟持する皿板を有し、前記回動部材は、前方に当接部を有する棒状部材であって、その後方基部に前記締付けボルトの後端に連結する円筒体を回転可能に保持し、前記基部にはこの円筒体の回転方向を規制するラチェット機構を内設することを特徴とするものである。
【0015】
外装体は支柱を外方より半ば包囲する形状で、内方の開口部の開口幅は支柱幅よりも狭くして開口部周縁の枠部分と支柱が重なるようにする。
【0016】
棒状部材はその側面を屋根などの平面的な設置対象物に面接触すると共にその先端を外壁等に当接して梯子の起立を支持する。回動部材の後方基部はやや扁平な形状でその中心に円筒体を保持する。
【0017】
回動部材と円筒体はラチェット機構を介して連結しており、円筒体に連結する締付けボルトがフリー状態の時は両者は一体的に回転する。即ち回動部材を一方向に回転すると締付けボルトは捻じ込まれ、他方向に回転すると緩むことになる。
【0018】
皿板が支柱側面に当接して締付けボルトに締付け荷重が作用する時、ラチェット機構の回転方向切換手段がロック状態の場合には同一回転方向で更に捻じ込まれ外装体が固定される。なお、逆方向は空転となるので回動部材を回転しなくとも揺動のみで捻じ込みが達成される。
【0019】
外装体の取付位置を微調整したり取り外す場合には、ラチェット機構の切換手段を逆方向に移し、回動部材を揺動して締付けボルトを緩める。
【0020】
回動部材を設置対象物に当接させる際には、空転方向にて棒状部材を接触させるよう切換手段の回転方向を適宜選択する。この場合ラチェット機構は当接面方向に対して空転可能な状態であるが対象物があるため回動部材は回動しない。
【0021】
設置対象物から離隔する回転方向であっても、それが外装体の締付方向である場合には、これも回動部材が移動する恐れはない。一方離隔する方向が外装体の弛緩方向の場合には、回動部材に同方向の回動荷重を作用させれば移動可能であるが、棒状部材は設置対象物に当接した状態であるので意識的に同方向の荷重を作用させない限り移動する恐れはない。
【0022】
請求項2記載の梯子転倒防止装置のラチェット機構は、前記円筒体外周周設のラチェット歯に噛合する爪付アームと、この爪付アームを天秤状に枢支する枢軸と、前記当接部側より爪付アーム側面に形成する切換面を選択的に押圧する球体付弾性部材を有し、前記爪付アームには、揺動停止ピンを付設することを特徴とするものである。
【0023】
爪付アームは両端に係止爪を突設し、同アームを揺動させることにより一方の係止爪をラチェット歯に噛み合わせる。その噛合形状は円筒体の一回転方向に対してはロック、他の回転方向に対しては空転とする状態を実現するもので同アームの揺動によりその方向を切り換える。
【0024】
この揺動は略山形に形成する切換面の斜面に対して当接する球体がその頂点を乗り越えることで停止する。爪付アームの一部は常に回動部材の外部に出現しており切換作業を可能とする。
【0025】
揺動停止ピンは爪付アームに対して接離可能な構造で、接触状態では同アームの空転方向の揺動も停止する。離隔した状態では空転方向の揺動はもちろん回転方向切換の揺動も可能とする。
【0026】
請求項3記載の梯子転倒防止装置の揺動停止ピンは、前記回動部材の基部外面に対して接離可能に取り付けるコ状の線材であって、前記基部外面に穿設する挿通孔にこの線材の平行な直線部を遊挿し、その直線部先端を前記爪付アームに形成する複数の係止孔に対して選択的に挿入し得ることを特徴とするものである。
【0027】
基部外面には線材を移動可能に保持するホルダーを備える。このホルダーはピン押込み状態と引上げ状態とを夫々維持し得る構成とする。係止孔は爪付アームの回転方向切換に伴う揺動に合わせ、何れの位置でもピンが挿入可能な場所を設定する。
【発明の効果】
【0028】
この発明の梯子転倒防止装置は、梯子の支柱に取り付ける支持体を外装体と締付けボルト及び皿板で構成し、この締付けボルトに連結する円筒体をラチェット機構で回転可能に保持する回動部材を備えるので、回動部材の回転若しくは揺動のみで梯子支柱の任意の位置に簡単に取り付けられる。
【0029】
又、ラチェット機構の空転を利用することで回動部材の回動範囲に制限がなくなる。更にラチェット機構の回転方向切換を利用することで任意の回転角度で停止することが可能となる。このため梯子を立て掛ける対象物の適用範囲が広くなる。
【0030】
支持体の締付・弛緩作業の際には、ラチェット機構により回動部材を揺動すれば目的が達成できるので支持体取付位置の変更も容易であり、梯子に対する転倒防止装置の取付・取外し作業も簡易になる。
【0031】
又ラチェット機構の空転を利用することで回動部材である棒状部材の当接部を梯子設置対象物に容易に当接することができ、梯子の設置・取外し作業が簡易になる。
【0032】
請求項2記載の梯子転倒防止装置のラチェット機構は、ラチェット歯に噛合する爪付アームに揺動停止ピンを付設するので爪付アームの揺動が阻止され、回動部材の移動が無くなり、設置対象物から離隔する恐れが無くなる。
【0033】
請求項3記載の梯子転倒防止装置の揺動停止ピンは、回動部材の基部外面に対して接離可能に取り付けるコ状の線材であるので、簡易な構成で確実に爪付アームの揺動を停止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は梯子に装着して屋根の上面に当接する梯子転倒防止装置の斜視図、図2は梯子に装着する梯子転倒防止装置の正面図である。
【0035】
梯子転倒防止装置1は、梯子2の支柱2aに取り付ける支持体3と、この支持体3に回動可能に取り付ける回動部材4を備え、回動部材4に接続する当接部5を梯子設置対象物である屋根上面6に当接する。この当接部5には屋根上面6等の接触面に対する滑り止め材として、あるいはクッション材として表面にゴムシートを巻き付けてもよい。支持体3は、板材を断面略C形に折曲加工して形成する外装体7と、この外装体7の外方の面板7aに螺着する締付けボルト8を備える。
【0036】
回動部材4は、棒状部材の梯子側後方基部に円筒体9を回転可能に保持し、その底面9aを締付けボルト8の後端に固着する。
【0037】
支持体及び回動部材の詳細を図3及び図4に基づき説明する。図3は梯子転倒防止装置における梯子取付部を拡大した正面図、図4は図3のIV−IV断面を示す断面図である。回動部材4の後方基部はやや扁平な形状でその中心に円筒体9を保持すると共にこれに接触するラチェット機構10を内設する。
【0038】
円筒体9は回動部材4の基部に貫通形成する円形開口部4aに収納されており、その外周面にはラチェット機構10と噛合するラチェット歯9bを周設する。ラチェット機構10は、円形開口部4aと直交する方向に貫通形成される横孔4bに収納され、ラチェット歯9bに掛止する爪付アーム11と、この爪付アーム11を天秤状に枢支する枢軸12とを有する。
【0039】
爪付アーム11は略弧状の平板で、横孔4b内で揺動し得るよう支持され、その少なくとも一側端は横孔4bから外部に突出する。平板のラチェット歯9bに対向する側面の両端には係止爪11a,11bを突設し、同アーム11を揺動させることにより何れか一方の係止爪をラチェット歯9bに噛み合わせる。
【0040】
爪付アーム11を枢支する枢軸12側の側面中央には略山形の切換面11cを形成し、その一斜面に対して球体13を当接する。この球体13は横孔4bより穿設する凹部4cから出没可能に設置されており、凹部4c内にはコイルスプリング14が収容されている。
【0041】
横孔4bから外部に突出する平板の一側端を円筒体側に押し下げると、切換面11cは球体13を凹部4c内に押込みながら切換面11cの頂点を乗り越える。この時球体13はコイルスプリング14の弾性力で今度は他の斜面側を押圧するようになり、何れか他方の係止爪をラチェット歯9bに噛み合わせる。この場合には平板の他の側端が横孔4bから外部に突出する。
【0042】
円筒体9は噛み合わさった係止爪11a,11bの方向に相対的に回動しようとする(図3では右回転)とロックされるが、他の回転方向に対しては係止爪がスライドするので空転状態となる。
【0043】
円筒体9は図4に示すようにラチェット歯9bの外方に溝部9cを形成し、これを円形開口部4aの一端に設ける凸状ガイド4dと係合させる。又ラチェット歯9bの他の外方にはC形リング9dを嵌装する。これにより円筒体9の円形開口部4aからの抜け出しを防止する。
【0044】
この円筒体9の底面9aに固着する締付けボルト8は、外装体7の面板7a内面に固着するナット8aに螺着し、その先端には皿板15を枢支する。皿板15は回動及び揺動自在に取り付ける。
【0045】
外装体7は梯子2の支柱2aを外方より半ば包囲する形状で、内方には開口部7bを設ける。この開口部7bの開口幅は支柱2aの幅よりも狭くして、開口部周縁の枠部分7cと支柱2aが重なるようにする。
【0046】
梯子転倒防止装置1を使用する際は、支柱2aの上部から外装体7を差込み、これをスライドさせながら梯子設置対象物の高さに合わせ梯子2の支柱2aの適宜高さに支持体3取り付ける。なお、支持体3は締付けボルト8を外部に突出した状態で、外装体7の開口部7bを支柱2aに平行に沿わせ、これを廻しながら装着し、又支柱2aから取り外すことができるように外装体7の奥行及び開口幅を適宜設定するものでもよい。
【0047】
次に締付けボルト8を捻じ込み、皿板15を支柱2aに当接する。締付けボルト8がフリーの時は回動部材4を一方向に回転して捻じ込むが、皿板15が支柱2a側面に当接して締付けボルト8に締付け荷重が作用するようになるとラチェット機構10が作動する。
【0048】
従ってこの時点でラチェット機構10の爪付アーム11を操作して締付方向にロックすれば回動部材4を一方向に回転しなくとも揺動のみで締付が達成される。この後梯子2を設置対象物に立て掛けるが、立て掛けた後でも回動部材4の操作が可能な場合には当初は軽く締め付けた状態とし、設置時に本締めを行うのが望ましい。
【0049】
図1及び図2に示すように回動部材4に接続する当接部5を屋根上面6に当接して安定を図る場合には、両支柱2a,2aに取り付ける回動部材4,4を予め上方に回動した状態で立て掛け、必要な場合には外装体7の取付位置を微調整した後、回動部材4,4を屋根上面6に当接させる。
【0050】
この時、空転方向にて棒状部材を接触させるよう爪付アーム11の切換えを適宜選択する。例えば図2に示すラチェット機構10はボルト締付方向(図2では右回り方向)に屋根上面6があるのでこの方向が空転状態となるよう切換える。一方図1の奥側にある回動部材4はボルト締付時に空転する方向に屋根上面6が位置するので、締付状態のまま回動部材4を空転して当接する。
【0051】
このように回動部材4の当接部5は設置対象物である屋根上面6に対して離隔する回転方向が、一般に一方は外装体7の締付方向、他方は弛緩方向となる。弛緩方向であっても意識的に同方向に荷重を作用させない限り当接部5が移動する恐れはない。
【0052】
このラチェット機構にストッパを設け、設置時の安定性を増した梯子転倒防止装置の実施形態を図5及び図6に基づき説明する。図5は別の実施形態の梯子転倒防止装置における梯子取付部を拡大した正面図、図6は図5のVI−VI断面を示す断面図である。なお、図5及び図6において図1乃至図4で説明した部材と同様な構成・作用を有する部材については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0053】
梯子転倒防止装置101のラチェット機構110は、爪付アーム111に揺動停止手段16を付設する。揺動停止手段16は回動部材4の基部外面にピン17と、これを保持するホルダー18を備える。ピン17はコ状の線材であって、基部外面に穿設する2箇所の挿通孔4e,4eに線材の平行な直線部を遊挿し、その直線部先端を爪付アーム111に形成する複数の係止孔111dに対して選択的に挿入する。
【0054】
ここで係止孔111dは爪付アーム111の回転方向切換に伴う揺動に合わせて、何れの搖動停止位置でもピン17が挿入可能な場所を設定する。図5においては下側に位置する直線部が係止孔に挿入されており、上側に位置する直線部は爪付アーム111の枢軸12側の側面に当接している。ピン17が係止孔111dに挿入されると爪付アーム111の切換え操作はもちろん、空転方向の揺動も停止される。
【0055】
ホルダー18は弾性を備える板材を折り曲げ加工して回動部材4の基部外面に固着するもので、ピン17の押込み状態と引上げ状態とを夫々維持し得る構成である。ピン17を引き上げた状態(図6の二点鎖線で示す位置)では空転方向の揺動はもちろん回転方向切換の揺動もできる。
【0056】
回転方向を切換えた後再度ピンを挿入した実施形態を図7に示す。図7は図6のVII−VII断面で回転方向を切換えた状態を示す断面図である。この場合下側に位置するピン17の直線部が爪付アーム111の側面に当接し、上側に位置する直線部が係止孔111dに挿入されている。
【0057】
以上説明した実施形態では係止孔111dを2箇所としているが、爪付アーム111が何れの搖動停止位置にあってもピン17の挿入が可能であれば4箇所設けるものでもよい。
【0058】
梯子転倒防止装置101は、常時梯子2の支柱2aに取り付けておき、梯子2の運搬中に回動部材4が空転しないようピン17を係止孔111dに挿入しておく。
【0059】
次に梯子転倒防止装置が適用される様々な設置対象物を図8乃至図11に示す。図8はパラペット19を立設する建物に対して梯子2を立て掛ける場合で、支柱2aと回動部材4とでパラペット19を挟み込んで梯子2の横滑り、縦滑り、転倒を防止する。回動部材4の回動停止位置が任意に定められるので安定的に挟み込める。
【0060】
図9は陸屋根20に対して設置するケース、図10は切妻屋根21の勾配部に対して設置するケース、図11は軒先の雨樋22を挟んで設置するケースを夫々示す。支持体3は梯子2支柱2aの任意の場所に移動することができるので、その設置高さを種々変えることで設置対象物を上下から挟み込むことができる。
【0061】
屋根の下方から回動部材4を当接する場合には、先端部が建物の外壁等立ち上がり部に当接するよう立て掛ける場所を選ぶ。このように回動部材4で梯子2の起立を確保すると雨樋22に荷重がかからないので軒雨樋の形状を保護することができ建物を傷めることがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明の梯子転倒防止装置は、任意の梯子に対して、任意の数設置することができ、又支持体に接続する円筒体とこれを保持する回動部材は取り外し可能とすることもでき、一般に工具として使用されるラチェットレンチを適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】屋根の上面に当接する梯子転倒防止装置の斜視図である。
【図2】梯子に装着する梯子転倒防止装置の正面図である。
【図3】梯子転倒防止装置の梯子取付部の拡大正面図である。
【図4】図3のIV−IV断面を示す断面図である。
【図5】別の実施形態の梯子転倒防止装置の梯子取付部の拡大正面図である。
【図6】図5のVI−VI断面を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII断面で回転方向を切換えた状態の断面図である。
【図8】パラペットに立て掛ける梯子転倒防止装置の正面図である。
【図9】陸屋根に立て掛ける梯子転倒防止装置の正面図である。
【図10】切妻屋根の勾配部に立て掛ける梯子転倒防止装置の正面図である。
【図11】軒先の雨樋を挟んで設置する梯子転倒防止装置の正面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 梯子転倒防止装置
2 梯子
2a 支柱
3 支持体
4 回動部材
5 当接部
6 屋根上面
7 外装体
8 締付けボルト
10 ラチェット機構
【技術分野】
【0001】
この発明は、梯子転倒防止装置に関し、特に建物の屋根に立て掛ける梯子の安定性向上を目的とする梯子転倒防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の屋根上で作業をする場合、あるいは建物の外壁に付帯する設備工事等を行う場合には、一般に梯子を使用しているが、屋根の軒先に梯子を立て掛けると、当接箇所が梯子支柱と軒先の点接触となるため横滑りを起こし易かった。
【0003】
このため、梯子の横滑り、縦滑りを含む転倒事故を防止するための梯子転倒防止装置が種々提案されており、例えば下記に示すような従来技術があった。
【特許文献1】特開平2003−184468号公報
【特許文献2】特開平2003−262082号公報
【特許文献3】特開平2008−69619号公報これら従来の梯子転倒防止装置は、何れも梯子の支柱に支持体を取り付け、この支持体に対して支柱に沿って回動し得る回動部材を取り付け、その先端に設ける当接部を屋根等に押し当てて梯子の転倒事故を防止する装置であった。
【0004】
例えば特許文献1に記載される梯子の滑り防止装置は、梯子支柱に断面コ字形の支持体を取り付け、その内部に回動部材の基端部を収容し、この回動部材の先端部には当接部材を回動可能に取り付けていた。支持体を取り付ける支柱側面には、複数の貫通孔が穿設されており、その一の貫通孔には回動部材基端部に設ける回動軸を移動自在に挿通する一方、他の孔には複数のビスを夫々貫通し、支柱内面に設けるナットによって支持体を支柱に固定する構成であった。
【0005】
又この従来の滑り防止装置の回動部材は、回動軸にロック手段を設け、支柱と平行な格納状態、これから略90°回動した使用状態とに固定的に回動及び停止がなされる構成であった。ロック手段は、これを解除することで回動可能となすものであったが、その回動範囲は略90°に限定されており、停止位置もその限界値即ち使用時及び格納時の2タイプに限定されていた。
【0006】
特許文献2に記載される梯子転倒防止具は、支持体を梯子支柱の上下方向任意の位置に着脱自在に取り付け、この支持体の先端部に回動部材及び当接部材を取り付けていた。この梯子転倒防止具の支持体は、開閉可能な断面略ロ状の板材部分を備え、その内部に支柱を収容した後、板材に螺着するネジを廻すことで固定又は取り外す構成であった。
【0007】
又、回動部材は歯車状の回転板と天秤状の爪からなるロック部材を付設し、弾性部材で一回転方向に付勢されている回動部材の可動アームを任意の位置で固定していた。可動アームの先端は上方に屈曲しており、その上端に設ける当接部を建物の突出物等に押圧する構成であった。
【0008】
特許文献3に記載される転倒防止装置は、梯子支柱に装着する支持体と、この支持体の上部側及び下部側に夫々傾動可能に取り付ける押えアーム及び受承アームからなる回動部材を有し、これら回動部材は屋根等の設置対象物を上下方向から挟持するように固止可能に構成されていた。
【0009】
この従来の梯子転倒防止装置における支持体は、断面L字形状の板材と、L字形状の締め付けボルトをもって支柱を包囲し、ナットを締め付けることで支柱の任意の位置に固定するものであった。
【0010】
又回動部材は、その傾動範囲を所望の範囲に規制されると共に、適宜位置で支持体に固止されるもので、このため支持体板材には弧状の案内長孔を形成すると共に押えアーム及び受承アームの対応する位置には直線状の案内長孔を貫設し、これに締付けボルトを挿通していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、特許文献1に記載される梯子の滑り防止装置の取り付けは、支柱側面に複数の貫通孔が穿設された位置に限定されるため、その取付位置が固定的であり任意の位置に移動することはできなかった。更にこの滑り防止装置の回動部材は、その回動範囲が略90°に限定されると共に、停止位置も限定されていたため、梯子を立て掛ける対象物の形状、高さ等が限られてしまう欠点があった。
【0012】
又特許文献2及び特許文献3に記載される従来の梯子転倒防止装置は、支柱の任意の位置に支持体を取り付けることはできたが、共に支持体の固定・解除手段と回動部材の固定・解除手段が別々であったため、梯子を安定的に設置するための作業工程及び固定された梯子を取り外すための作業工程、更には転倒防止装置を梯子から取り外す作業工程等が煩雑になる欠点があった。
【0013】
この発明は、従来の梯子転倒防止装置が有する上記の問題点を解消すべくなされたものであり、梯子支柱の任意の位置に簡単に取り付けられ、回動部材の回動範囲及び停止位置の制限がなく、梯子を立て掛ける対象物の適用範囲が広く、梯子の設置・取外し作業及び梯子に対する取付・取外し作業が簡易な梯子転倒防止装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、この発明の梯子転倒防止装置は、梯子の支柱に取り付ける支持体と、この支持体に回動可能に取り付ける回動部材を備え、回動部材に接続する当接部を梯子設置対象物に当接する梯子転倒防止装置において、前記支持体は、開口部を設け前記支柱を離脱可能に収容する外装体と、この外装体の面板に螺着する締付けボルトと、この締付けボルトの先端に取り付けられ前記開口部周縁の枠部分との間で前記支柱を挟持する皿板を有し、前記回動部材は、前方に当接部を有する棒状部材であって、その後方基部に前記締付けボルトの後端に連結する円筒体を回転可能に保持し、前記基部にはこの円筒体の回転方向を規制するラチェット機構を内設することを特徴とするものである。
【0015】
外装体は支柱を外方より半ば包囲する形状で、内方の開口部の開口幅は支柱幅よりも狭くして開口部周縁の枠部分と支柱が重なるようにする。
【0016】
棒状部材はその側面を屋根などの平面的な設置対象物に面接触すると共にその先端を外壁等に当接して梯子の起立を支持する。回動部材の後方基部はやや扁平な形状でその中心に円筒体を保持する。
【0017】
回動部材と円筒体はラチェット機構を介して連結しており、円筒体に連結する締付けボルトがフリー状態の時は両者は一体的に回転する。即ち回動部材を一方向に回転すると締付けボルトは捻じ込まれ、他方向に回転すると緩むことになる。
【0018】
皿板が支柱側面に当接して締付けボルトに締付け荷重が作用する時、ラチェット機構の回転方向切換手段がロック状態の場合には同一回転方向で更に捻じ込まれ外装体が固定される。なお、逆方向は空転となるので回動部材を回転しなくとも揺動のみで捻じ込みが達成される。
【0019】
外装体の取付位置を微調整したり取り外す場合には、ラチェット機構の切換手段を逆方向に移し、回動部材を揺動して締付けボルトを緩める。
【0020】
回動部材を設置対象物に当接させる際には、空転方向にて棒状部材を接触させるよう切換手段の回転方向を適宜選択する。この場合ラチェット機構は当接面方向に対して空転可能な状態であるが対象物があるため回動部材は回動しない。
【0021】
設置対象物から離隔する回転方向であっても、それが外装体の締付方向である場合には、これも回動部材が移動する恐れはない。一方離隔する方向が外装体の弛緩方向の場合には、回動部材に同方向の回動荷重を作用させれば移動可能であるが、棒状部材は設置対象物に当接した状態であるので意識的に同方向の荷重を作用させない限り移動する恐れはない。
【0022】
請求項2記載の梯子転倒防止装置のラチェット機構は、前記円筒体外周周設のラチェット歯に噛合する爪付アームと、この爪付アームを天秤状に枢支する枢軸と、前記当接部側より爪付アーム側面に形成する切換面を選択的に押圧する球体付弾性部材を有し、前記爪付アームには、揺動停止ピンを付設することを特徴とするものである。
【0023】
爪付アームは両端に係止爪を突設し、同アームを揺動させることにより一方の係止爪をラチェット歯に噛み合わせる。その噛合形状は円筒体の一回転方向に対してはロック、他の回転方向に対しては空転とする状態を実現するもので同アームの揺動によりその方向を切り換える。
【0024】
この揺動は略山形に形成する切換面の斜面に対して当接する球体がその頂点を乗り越えることで停止する。爪付アームの一部は常に回動部材の外部に出現しており切換作業を可能とする。
【0025】
揺動停止ピンは爪付アームに対して接離可能な構造で、接触状態では同アームの空転方向の揺動も停止する。離隔した状態では空転方向の揺動はもちろん回転方向切換の揺動も可能とする。
【0026】
請求項3記載の梯子転倒防止装置の揺動停止ピンは、前記回動部材の基部外面に対して接離可能に取り付けるコ状の線材であって、前記基部外面に穿設する挿通孔にこの線材の平行な直線部を遊挿し、その直線部先端を前記爪付アームに形成する複数の係止孔に対して選択的に挿入し得ることを特徴とするものである。
【0027】
基部外面には線材を移動可能に保持するホルダーを備える。このホルダーはピン押込み状態と引上げ状態とを夫々維持し得る構成とする。係止孔は爪付アームの回転方向切換に伴う揺動に合わせ、何れの位置でもピンが挿入可能な場所を設定する。
【発明の効果】
【0028】
この発明の梯子転倒防止装置は、梯子の支柱に取り付ける支持体を外装体と締付けボルト及び皿板で構成し、この締付けボルトに連結する円筒体をラチェット機構で回転可能に保持する回動部材を備えるので、回動部材の回転若しくは揺動のみで梯子支柱の任意の位置に簡単に取り付けられる。
【0029】
又、ラチェット機構の空転を利用することで回動部材の回動範囲に制限がなくなる。更にラチェット機構の回転方向切換を利用することで任意の回転角度で停止することが可能となる。このため梯子を立て掛ける対象物の適用範囲が広くなる。
【0030】
支持体の締付・弛緩作業の際には、ラチェット機構により回動部材を揺動すれば目的が達成できるので支持体取付位置の変更も容易であり、梯子に対する転倒防止装置の取付・取外し作業も簡易になる。
【0031】
又ラチェット機構の空転を利用することで回動部材である棒状部材の当接部を梯子設置対象物に容易に当接することができ、梯子の設置・取外し作業が簡易になる。
【0032】
請求項2記載の梯子転倒防止装置のラチェット機構は、ラチェット歯に噛合する爪付アームに揺動停止ピンを付設するので爪付アームの揺動が阻止され、回動部材の移動が無くなり、設置対象物から離隔する恐れが無くなる。
【0033】
請求項3記載の梯子転倒防止装置の揺動停止ピンは、回動部材の基部外面に対して接離可能に取り付けるコ状の線材であるので、簡易な構成で確実に爪付アームの揺動を停止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
次にこの発明の実施の形態を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は梯子に装着して屋根の上面に当接する梯子転倒防止装置の斜視図、図2は梯子に装着する梯子転倒防止装置の正面図である。
【0035】
梯子転倒防止装置1は、梯子2の支柱2aに取り付ける支持体3と、この支持体3に回動可能に取り付ける回動部材4を備え、回動部材4に接続する当接部5を梯子設置対象物である屋根上面6に当接する。この当接部5には屋根上面6等の接触面に対する滑り止め材として、あるいはクッション材として表面にゴムシートを巻き付けてもよい。支持体3は、板材を断面略C形に折曲加工して形成する外装体7と、この外装体7の外方の面板7aに螺着する締付けボルト8を備える。
【0036】
回動部材4は、棒状部材の梯子側後方基部に円筒体9を回転可能に保持し、その底面9aを締付けボルト8の後端に固着する。
【0037】
支持体及び回動部材の詳細を図3及び図4に基づき説明する。図3は梯子転倒防止装置における梯子取付部を拡大した正面図、図4は図3のIV−IV断面を示す断面図である。回動部材4の後方基部はやや扁平な形状でその中心に円筒体9を保持すると共にこれに接触するラチェット機構10を内設する。
【0038】
円筒体9は回動部材4の基部に貫通形成する円形開口部4aに収納されており、その外周面にはラチェット機構10と噛合するラチェット歯9bを周設する。ラチェット機構10は、円形開口部4aと直交する方向に貫通形成される横孔4bに収納され、ラチェット歯9bに掛止する爪付アーム11と、この爪付アーム11を天秤状に枢支する枢軸12とを有する。
【0039】
爪付アーム11は略弧状の平板で、横孔4b内で揺動し得るよう支持され、その少なくとも一側端は横孔4bから外部に突出する。平板のラチェット歯9bに対向する側面の両端には係止爪11a,11bを突設し、同アーム11を揺動させることにより何れか一方の係止爪をラチェット歯9bに噛み合わせる。
【0040】
爪付アーム11を枢支する枢軸12側の側面中央には略山形の切換面11cを形成し、その一斜面に対して球体13を当接する。この球体13は横孔4bより穿設する凹部4cから出没可能に設置されており、凹部4c内にはコイルスプリング14が収容されている。
【0041】
横孔4bから外部に突出する平板の一側端を円筒体側に押し下げると、切換面11cは球体13を凹部4c内に押込みながら切換面11cの頂点を乗り越える。この時球体13はコイルスプリング14の弾性力で今度は他の斜面側を押圧するようになり、何れか他方の係止爪をラチェット歯9bに噛み合わせる。この場合には平板の他の側端が横孔4bから外部に突出する。
【0042】
円筒体9は噛み合わさった係止爪11a,11bの方向に相対的に回動しようとする(図3では右回転)とロックされるが、他の回転方向に対しては係止爪がスライドするので空転状態となる。
【0043】
円筒体9は図4に示すようにラチェット歯9bの外方に溝部9cを形成し、これを円形開口部4aの一端に設ける凸状ガイド4dと係合させる。又ラチェット歯9bの他の外方にはC形リング9dを嵌装する。これにより円筒体9の円形開口部4aからの抜け出しを防止する。
【0044】
この円筒体9の底面9aに固着する締付けボルト8は、外装体7の面板7a内面に固着するナット8aに螺着し、その先端には皿板15を枢支する。皿板15は回動及び揺動自在に取り付ける。
【0045】
外装体7は梯子2の支柱2aを外方より半ば包囲する形状で、内方には開口部7bを設ける。この開口部7bの開口幅は支柱2aの幅よりも狭くして、開口部周縁の枠部分7cと支柱2aが重なるようにする。
【0046】
梯子転倒防止装置1を使用する際は、支柱2aの上部から外装体7を差込み、これをスライドさせながら梯子設置対象物の高さに合わせ梯子2の支柱2aの適宜高さに支持体3取り付ける。なお、支持体3は締付けボルト8を外部に突出した状態で、外装体7の開口部7bを支柱2aに平行に沿わせ、これを廻しながら装着し、又支柱2aから取り外すことができるように外装体7の奥行及び開口幅を適宜設定するものでもよい。
【0047】
次に締付けボルト8を捻じ込み、皿板15を支柱2aに当接する。締付けボルト8がフリーの時は回動部材4を一方向に回転して捻じ込むが、皿板15が支柱2a側面に当接して締付けボルト8に締付け荷重が作用するようになるとラチェット機構10が作動する。
【0048】
従ってこの時点でラチェット機構10の爪付アーム11を操作して締付方向にロックすれば回動部材4を一方向に回転しなくとも揺動のみで締付が達成される。この後梯子2を設置対象物に立て掛けるが、立て掛けた後でも回動部材4の操作が可能な場合には当初は軽く締め付けた状態とし、設置時に本締めを行うのが望ましい。
【0049】
図1及び図2に示すように回動部材4に接続する当接部5を屋根上面6に当接して安定を図る場合には、両支柱2a,2aに取り付ける回動部材4,4を予め上方に回動した状態で立て掛け、必要な場合には外装体7の取付位置を微調整した後、回動部材4,4を屋根上面6に当接させる。
【0050】
この時、空転方向にて棒状部材を接触させるよう爪付アーム11の切換えを適宜選択する。例えば図2に示すラチェット機構10はボルト締付方向(図2では右回り方向)に屋根上面6があるのでこの方向が空転状態となるよう切換える。一方図1の奥側にある回動部材4はボルト締付時に空転する方向に屋根上面6が位置するので、締付状態のまま回動部材4を空転して当接する。
【0051】
このように回動部材4の当接部5は設置対象物である屋根上面6に対して離隔する回転方向が、一般に一方は外装体7の締付方向、他方は弛緩方向となる。弛緩方向であっても意識的に同方向に荷重を作用させない限り当接部5が移動する恐れはない。
【0052】
このラチェット機構にストッパを設け、設置時の安定性を増した梯子転倒防止装置の実施形態を図5及び図6に基づき説明する。図5は別の実施形態の梯子転倒防止装置における梯子取付部を拡大した正面図、図6は図5のVI−VI断面を示す断面図である。なお、図5及び図6において図1乃至図4で説明した部材と同様な構成・作用を有する部材については、同一の符号を付して詳しい説明は省略する。
【0053】
梯子転倒防止装置101のラチェット機構110は、爪付アーム111に揺動停止手段16を付設する。揺動停止手段16は回動部材4の基部外面にピン17と、これを保持するホルダー18を備える。ピン17はコ状の線材であって、基部外面に穿設する2箇所の挿通孔4e,4eに線材の平行な直線部を遊挿し、その直線部先端を爪付アーム111に形成する複数の係止孔111dに対して選択的に挿入する。
【0054】
ここで係止孔111dは爪付アーム111の回転方向切換に伴う揺動に合わせて、何れの搖動停止位置でもピン17が挿入可能な場所を設定する。図5においては下側に位置する直線部が係止孔に挿入されており、上側に位置する直線部は爪付アーム111の枢軸12側の側面に当接している。ピン17が係止孔111dに挿入されると爪付アーム111の切換え操作はもちろん、空転方向の揺動も停止される。
【0055】
ホルダー18は弾性を備える板材を折り曲げ加工して回動部材4の基部外面に固着するもので、ピン17の押込み状態と引上げ状態とを夫々維持し得る構成である。ピン17を引き上げた状態(図6の二点鎖線で示す位置)では空転方向の揺動はもちろん回転方向切換の揺動もできる。
【0056】
回転方向を切換えた後再度ピンを挿入した実施形態を図7に示す。図7は図6のVII−VII断面で回転方向を切換えた状態を示す断面図である。この場合下側に位置するピン17の直線部が爪付アーム111の側面に当接し、上側に位置する直線部が係止孔111dに挿入されている。
【0057】
以上説明した実施形態では係止孔111dを2箇所としているが、爪付アーム111が何れの搖動停止位置にあってもピン17の挿入が可能であれば4箇所設けるものでもよい。
【0058】
梯子転倒防止装置101は、常時梯子2の支柱2aに取り付けておき、梯子2の運搬中に回動部材4が空転しないようピン17を係止孔111dに挿入しておく。
【0059】
次に梯子転倒防止装置が適用される様々な設置対象物を図8乃至図11に示す。図8はパラペット19を立設する建物に対して梯子2を立て掛ける場合で、支柱2aと回動部材4とでパラペット19を挟み込んで梯子2の横滑り、縦滑り、転倒を防止する。回動部材4の回動停止位置が任意に定められるので安定的に挟み込める。
【0060】
図9は陸屋根20に対して設置するケース、図10は切妻屋根21の勾配部に対して設置するケース、図11は軒先の雨樋22を挟んで設置するケースを夫々示す。支持体3は梯子2支柱2aの任意の場所に移動することができるので、その設置高さを種々変えることで設置対象物を上下から挟み込むことができる。
【0061】
屋根の下方から回動部材4を当接する場合には、先端部が建物の外壁等立ち上がり部に当接するよう立て掛ける場所を選ぶ。このように回動部材4で梯子2の起立を確保すると雨樋22に荷重がかからないので軒雨樋の形状を保護することができ建物を傷めることがなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
この発明の梯子転倒防止装置は、任意の梯子に対して、任意の数設置することができ、又支持体に接続する円筒体とこれを保持する回動部材は取り外し可能とすることもでき、一般に工具として使用されるラチェットレンチを適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】屋根の上面に当接する梯子転倒防止装置の斜視図である。
【図2】梯子に装着する梯子転倒防止装置の正面図である。
【図3】梯子転倒防止装置の梯子取付部の拡大正面図である。
【図4】図3のIV−IV断面を示す断面図である。
【図5】別の実施形態の梯子転倒防止装置の梯子取付部の拡大正面図である。
【図6】図5のVI−VI断面を示す断面図である。
【図7】図6のVII−VII断面で回転方向を切換えた状態の断面図である。
【図8】パラペットに立て掛ける梯子転倒防止装置の正面図である。
【図9】陸屋根に立て掛ける梯子転倒防止装置の正面図である。
【図10】切妻屋根の勾配部に立て掛ける梯子転倒防止装置の正面図である。
【図11】軒先の雨樋を挟んで設置する梯子転倒防止装置の正面図である。
【符号の説明】
【0064】
1 梯子転倒防止装置
2 梯子
2a 支柱
3 支持体
4 回動部材
5 当接部
6 屋根上面
7 外装体
8 締付けボルト
10 ラチェット機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
梯子の支柱に取り付ける支持体と、この支持体に回動可能に取り付ける回動部材を備え、回動部材に接続する当接部を梯子設置対象物に当接する梯子転倒防止装置において、前記支持体は、開口部を設け前記支柱を離脱可能に収容する外装体と、この外装体の面板に螺着する締付けボルトと、この締付けボルトの先端に取り付けられ前記開口部周縁の枠部分との間で前記支柱を挟持する皿板を有し、前記回動部材は、前方に当接部を有する棒状部材であって、その後方基部に前記締付けボルトの後端に連結する円筒体を回転可能に保持し、前記基部にはこの円筒体の回転方向を規制するラチェット機構を内設することを特徴とする梯子転倒防止装置。
【請求項2】
前記ラチェット機構は、前記円筒体外周周設のラチェット歯に噛合する爪付アームと、この爪付アームを天秤状に枢支する枢軸と、前記当接部側より爪付アーム側面に形成する切換面を選択的に押圧する球体付弾性部材を有し、前記爪付アームには、揺動停止ピンを付設することを特徴とする請求項1記載の梯子転倒防止装置。
【請求項3】
前記揺動停止ピンは、前記回動部材の基部外面に対して接離可能に取り付けるコ状の線材であって、前記基部外面に穿設する挿通孔にこの線材の平行な直線部を遊挿し、その直線部先端を前記爪付アームに形成する複数の係止孔に対して選択的に挿入し得ることを特徴とする請求項2記載の梯子転倒防止装置。
【請求項1】
梯子の支柱に取り付ける支持体と、この支持体に回動可能に取り付ける回動部材を備え、回動部材に接続する当接部を梯子設置対象物に当接する梯子転倒防止装置において、前記支持体は、開口部を設け前記支柱を離脱可能に収容する外装体と、この外装体の面板に螺着する締付けボルトと、この締付けボルトの先端に取り付けられ前記開口部周縁の枠部分との間で前記支柱を挟持する皿板を有し、前記回動部材は、前方に当接部を有する棒状部材であって、その後方基部に前記締付けボルトの後端に連結する円筒体を回転可能に保持し、前記基部にはこの円筒体の回転方向を規制するラチェット機構を内設することを特徴とする梯子転倒防止装置。
【請求項2】
前記ラチェット機構は、前記円筒体外周周設のラチェット歯に噛合する爪付アームと、この爪付アームを天秤状に枢支する枢軸と、前記当接部側より爪付アーム側面に形成する切換面を選択的に押圧する球体付弾性部材を有し、前記爪付アームには、揺動停止ピンを付設することを特徴とする請求項1記載の梯子転倒防止装置。
【請求項3】
前記揺動停止ピンは、前記回動部材の基部外面に対して接離可能に取り付けるコ状の線材であって、前記基部外面に穿設する挿通孔にこの線材の平行な直線部を遊挿し、その直線部先端を前記爪付アームに形成する複数の係止孔に対して選択的に挿入し得ることを特徴とする請求項2記載の梯子転倒防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−18988(P2010−18988A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−179798(P2008−179798)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(500041927)有限会社サンコー建築店 (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(500041927)有限会社サンコー建築店 (16)
【Fターム(参考)】
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