説明

梱包体及び熱可塑性樹脂フィルムの製造方法

【課題】ビスフェノールモノエステル系化合物の梱包開封が原因となるフィルム成形時のフィッシュアイゲルの発生を抑える梱包体及び熱可塑性樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物を、熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包する。前記化合物を袋体から取り出し、熱可塑性樹脂に配合した後、この配合組成物を製膜する熱可塑性樹脂フィルムとする。


(式中、RおよびRは、炭素数1〜5のアルキル基を表し、R、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、水素原子またはメチル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の化合物の梱包等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂を用いてフィルムを製造する場合、加工安定性を向上させ、また着色等を防止するために、酸化防止剤や安定剤を熱可塑性樹脂に配合することは広く行われていた。熱可塑性樹脂に配合される酸化防止剤としては、各種のフェノール系、リン系、イオウ系などの化合物がこれまで用いられている。この中でも、下記式(1)で表されるビスフェノールモノエステル系化合物が優れた加工安定性を示すことは本出願人によって見出され既に提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【化2】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
【特許文献1】特開平1-168643号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記式(1)の化合物は紙袋に梱包された状態で輸送・保存されており、製造現場では、前記化合物が梱包された紙袋を作業者がカッター等で開封し、前記化合物を熱可塑性樹脂に配合していた。
【0005】
前記式(1)の化合物が梱包された紙袋を、非熟練者が荒雑にカッター等で開封した場合、前記化合物を樹脂に配合して製膜して樹脂フィルムを製造すると、樹脂フィルムにフィッシュアイゲル(Fish Eye Gel)が発生する場合があり、樹脂フィルムの性能が著しく低下するという問題があった。
【0006】
樹脂フィルムにおけるフィッシュアイゲルの発生を抑えることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況下、本発明者は、前記式(1)で表される化合物の梱包体について鋭意検討した結果、本発明に至った。すなわち、本発明に係る梱包体は、前記式(1)で表される化合物を、熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包してなることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記袋体の膜厚としては50〜200μmの範囲が好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包された式(1)で表される化合物を、前記袋体から取り出し、前記熱可塑性樹脂と同一又は異なる熱可塑性樹脂に配合した後、この配合組成物を製膜することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、第1の熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包された式(1)で表される化合物を、袋体に梱包された状態のまま、第1の熱可塑性樹脂と同一の第2の熱可塑性樹脂に配合した後、この配合組成物を製膜することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法が提供される。
【0011】
前記式(1)の化合物の配合量としては、第1の熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲が好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る梱包体では、前記式(1)で表される化合物を、熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包するので、作業者が荒雑に袋体をカッター等で開封して、前記化合物を熱可塑性樹脂に配合し製膜して樹脂フィルムとした場合でも、フィッシュアイゲルの発生が抑えられる。
【0013】
また、本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法では、第1の熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包した前記式(1)で表される化合物を、第1の熱可塑性樹脂と同じ第2の熱可塑性樹脂に、梱包した状態のまま配合するので、袋体から前記化合物を取り出す手間が省け、作業効率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、本発明に係る梱包体について説明する。本発明に係る梱包体の大きな特徴は、前記式(1)で表される化合物を、熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包してなることにある。本発明者は、前記式(1)で表される化合物を充填された紙袋を使用者が荒雑にカッター等で開封した場合、フィッシュアイゲルをより多く発生させることを見出した。本発明は、従来の紙袋と異なって、熱可塑性樹脂を主成分とする袋体を使用しているので、製造現場において作業者が袋体を乱雑に開封しても、前記式(1)で表される化合物を添加した樹脂を用いて製膜を行ったときに、フィッシュアイゲルの発生が抑制される。
【0015】
本発明の梱包体としては、例えば、四角形状で一辺が開口部とされた袋体に前記化合物を充填した後、前記開口部をヒートシール等によって封止したものが例示される。本発明で使用する袋体の形状に特に限定はなく、四角形状の他、円柱状などであってももちろん構わないが、四角形の封筒形や、まち付き封筒形が好ましく用いられる。袋体の製造方法も特に限定はなく、例えば、熱可塑性樹脂とその他の添加剤等を混合し、さらに加熱下において混練して、均一組成の樹脂組成物を得た後、インフレーション成型法、Tダイ成型法などによってフィルム状に成形し、ヒートプレス、切断等の製袋工程を経て製造する方法が挙げられる。
【0016】
本発明で使用する袋体の膜厚としては50〜200μmの範囲が好ましい。袋体の膜厚が50μm以上であると、強度が強く、袋体の破れや輸送中などの袋体の破損が抑制される傾向があることから好ましい。一方、袋体の膜厚が200μm以下であると、カッターでの開封が容易となり取扱い性に優れる傾向があることから好ましい。より好ましい袋体の膜厚は130〜190μmの範囲である。また、袋体の強度は、最大応力が、30〜50MPa程度、最大変位が、350〜500mm程度が好ましい。最大応力が30MPa以上、最大変位が350mm以上では、梱包体の輸送時に破袋するおそれが低下する傾向があることから好ましい。最大応力が50MPa以下、最大変位が500mm以下であると、袋体の厚みを厚くしたり、補強のため補強材を添加したりするなど対応を取る必要がないことから好ましい。
【0017】
本発明で使用する、袋体の主成分である熱可塑性樹脂としては、従来公知のものが使用できる。例えば、ポリオレフィン類、ポリスチレン類、ポリエステル類などが挙げられる。ポリオレフィン類の中で好適なものとしては、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン)などが挙げられる。また、ポリスチレン類の中で好適なものとしては、ハイインパクトポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体などが挙げられる。
【0018】
前記の熱可塑性樹脂には、添加剤として、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、造核剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、充填剤、顔料、可塑剤、難燃剤、アンチブロッキング剤、界面活性剤、加工助剤、発泡剤、乳化剤、光沢剤、ステアリン酸カルシウム、ハイドロタルサイトが添加されていても構わない。
【0019】
本発明の袋体には、紙袋等の紙が重ね合わせないことが好ましく、また、紙袋等の紙が貼合されていないことが好ましい。特に、開口部近傍に紙が存在しないことが好ましい。
【0020】
一方、前記式(1)の化合物のRおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基などが挙げられる。特に、Rは、3級炭素を有するアルキル基、すなわちtert−ブチル基またはtert−ペンチル基であるのが好ましい。Rは、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であるのが好ましい。Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が挙げられ、中でも水素原子又はメチル基が特に好ましい。Rは、水素原子またはメチル基を表す。
【0021】
前記式(1)の化合物の具体例としては、2,4−ジ−t−(ペンチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル メタクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル アクリレート、2,4−ジ−t−ブチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニル メタクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エチル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピル〕−4−メチルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−プロピルフェニル)エチル〕−4−プロピルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−イソプロピルフェニル)エチル〕−4−イソプロピルフェニル アクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェニル アクリレートなどが挙げられる。この中でも、優れた加工安定化効果を熱可塑性ポリマーにもたらすことが出来るため、2,4−ジ−t−ペンチル−6−〔1−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−t−ブチル−6−〔1−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェニル アクリレートが好適である。
【0022】
前記式(1)の化合物は、例えば、下記式(2)で表されるビスフェノールと、下記式(3)で表されるカルボン酸系化合物との反応によって製造することができる。さらには、この反応によって製造された式(1)の化合物を、反応後に、例えば特開平4−327558号公報に開示された精製方法、すなわち、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類から選ばれる第1の溶媒と、炭素数1〜8のアルコール類および炭素数2〜3の脂肪族ニトリル類から選ばれる第2の溶媒との混合溶媒中での晶析によって精製するのが好ましい。
【0023】
【化3】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0024】
【化4】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
【0025】
前記精製に用いられる第1の溶媒である炭素数6〜12の芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、シメン、クロルベンゼンなどが挙げられる。これらを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、トルエンまたはキシレンが好ましく用いられ、キシレンが特に好ましい。
【0026】
前記精製に用いられる第2の溶媒である炭素数1〜8のアルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノールなどを挙げることができる。また炭素数2〜3の脂肪族ニトリル類としては、アセトニトリル、プロピオニトリルが挙げられる。これらのアルコール類および脂肪族ニトリル類は、上記中から選ばれるいずれかを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
前記式(1)の化合物は、市販のものを用いても勿論よく、市販品としては、スミライザーGS(F)、スミライザーGS、スミライザーGM、スミライザーGM(F)(以上、いずれも住友化学製)などが好適に使用できる。
【0028】
また、前記式(1)の化合物の形状としては、通常、粉末状、顆粒状、ペレット状、フレーク状などいずれの形状であっても構わない。
【0029】
次に、本発明に係る熱可塑性樹脂フィルムの製造方法について説明する。まず、第1の熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包された、前記式(1)で表される化合物を袋体から取り出す。前記化合物の袋体からの取り出し方法に限定はなく、従来と同様にカッター等によって開封してもよい。
【0030】
次に、取り出した前記化合物を第2の熱可塑性樹脂に配合する。ここで、前記化合物を配合する第2の熱可塑性樹脂は、袋体の主成分である第1の熱可塑性樹脂と同一又は異っていてもよい。なお、前記化合物を配合する第2の熱可塑性樹脂が、袋体の主成分である第1の熱可塑性樹脂と同一である場合は、前記化合物を袋体から取り出すことなく、袋体に梱包された状態のまま第2の熱可塑性樹脂に配合してもよい。これにより、前記化合物を袋体から取り出す手間が省けて作業効率が向上する。
【0031】
前記化合物を配合する第2の熱可塑性樹脂は特に特定されない。例えば、ポリプロピレンホモポリマー、プロピレン/エチレン共重合ポリマー、プロピレン/エチレン/α−オレフィン三元共重合ポリマーなどのポリプロピレン系樹脂、たとえば高密度ポリエチレン(HD−PE)、低密度ポリエチレン(LD−PE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン/ビニルアセテート共重合ポリマー、エチレン/アクリル酸エステル共重合ポリマー、エチレン/ビニルアルコール共重合樹脂、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/MMA共重合ポリマーなどのポリエチレン系樹脂、例えば、芳香族ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン共重合ポリマー、スチレン/ブタジエン共重合ポリマー、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン三元共重合ポリマー、ハイインパクトポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(α−メチルスチレン)等のポリスチレン系樹脂類、例えば、ポリクロロプレン、塩素化ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、メタクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール、グラフト化ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、シリコーン樹脂、1,2−ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体などが挙げられ、中でも成型加工性の良さから、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましい。
【0032】
ここで、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレンに由来する構造単位を含有するポリオレフィンを意味し、具体的には、結晶性プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体などが挙げられる。
【0033】
本発明において前記化合物を配合する熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、ポリプロピレン系樹脂の1種類を単独で使用あるいは2種以上を混合して使用してもよい。
【0034】
α−オレフィンとしては、通常、炭素原子数4〜12のα−オレフィンが挙げられる。例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられ、さらに好ましくは1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンである。
【0035】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−1−オクテンランダム共重合体などが挙げられる。
【0036】
プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体などが挙げられる。
【0037】
プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体における主にプロピレンからなる共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分などが挙げられ、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−オクテン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−オクテン共重合体成分などが挙げられる。なお、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分におけるエチレン及び/又は炭素原子数4〜12のα−オレフィンの含有量は、通常、0.01〜20重量%である。
【0038】
また、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又はα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)ブロック共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)ブロック共重合体などが挙げられる。
【0039】
また本発明において前記化合物を配合する第2の熱可塑性樹脂としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合、好ましくは、結晶性プロピレン単独重合体、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又は炭素原子数4〜12のα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体である。さらに好ましくは、プロピレン単独重合体成分または主にプロピレンからなる共重合体成分と、プロピレンとエチレン及び/又は炭素原子数4〜12のα−オレフィンの共重合体成分からなるポリプロピレン系ブロック共重合体である。
【0040】
式(1)で示される化合物の配合量としては、第2の熱可塑性樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲が好ましい。前記化合物の配合量が0.01重量部未満であると、加工安定化効果が不十分となる傾向にある一方、前記化合物の配合量が5重量部を超えると、製膜後のフィルムの表面に前記化合物が現れるブリード現象が起こりやすくなるからである。前記化合物のより好ましい配合量は0.01〜2重量部の範囲である。
【0041】
前記化合物を第2の熱可塑性樹脂に配合する方法としては特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、容器回転式混合機や攪拌式混合機などの混合機を用いる方法、あるいはシクロヘキサンなどの溶剤に前記化合物を溶解させた溶液を、溶液重合終了後の熱可塑性樹脂の溶液に添加し脱溶媒する方法などが挙げられる。
【0042】
第2の熱可塑性樹脂には、前記化合物の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来公知の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、前述のものとおなじものがここでも例示される。
【0043】
次に、第2の熱可塑性樹脂に前記化合物を配合した配合組成物を製膜する。製膜法としては、インフレーション法やTダイ法のような溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法など従来公知のいずれの方法を用いてもよい。なかでも、インフレーション法やTダイ法のような溶融押出法が好ましい。
【0044】
製膜された熱可塑性樹脂フィルムの厚みとしては、通常、5〜200μmの範囲であり、好ましくは10〜150μmの範囲である。
【0045】
以上のようにして製造された熱可塑性樹脂フィルムは、例えば、食品や日用雑貨などの包装用フィルム、電子部品包装用フィルム、医療器具包装用フィルム、マスキングフィルム等として好適に使用できる。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0047】
(熱可塑性樹脂の袋体の作成)
インフレーション製膜機で筒状に製膜された低密度ポリエチレン製フィルムの下端を自動ヒートシーラーでヒートシールし、上端を自動カッターでカットした封筒上の袋体を調製した。この袋体のサイズは、横幅48cm×縦80cm×膜厚180μmであった。強度は、JIS K 7113にしたがって測定した。使用したダンベルは、2号試験片。引っ張り速度は、50mm/min。標線間距離は、25mm。チャック間距離は、80mmであった。縦方向の最大応力は、40〜44MPaであり、最大点変位は、420〜440mmであった。横方向の測定結果は、最大応力が、40〜46MPa、最大点変位が450〜480mmであった。
【0048】
(実施例1)
ビスフェノールモノエステル系化合物A(「スミライザーGS」住友化学社製)20kgを自動充填機を用いて、低密度ポリエチレン製の袋体(縦80cm×横48cm×膜厚180μm、)に充填した後、袋体の充填口をヒートシールして梱包体を作製した。
そして次に、作製した梱包体をカッターナイフで開封し、低密度ポリエチレン100重量部に対して0.5重量部のビスフェノールモノエステル系化合物Aを、低密度ポリエチレンに配合し乾式混合し、直径30mm単軸押出し機を用い、170℃で押出してポリエチレンペレットを得た。次いで、このポリエチレンペレットを直径40mmのインフレーション製膜機に投入し、膜厚30μmのポリエチレンフィルムを作製した。製膜時において、フィッシュアイカウンターを用いフィッシュアイゲルを測定した結果、166個/m(ゲルサイズ:0.2mm以上)であった。
【0049】
(実施例2)
実施例1のビスフェノールモノエステル系化合物Aの0.5重量部に代えて、ビスフェノールモノエステル系化合物B(「スミライザーGM」住友化学社製)を0.5重量部配合した以外は、実施例1と同様の操作を行って膜厚30μmのポリエチレンフィルムを作製した。そして、実施例1と同様にして、フィッシュアイゲルを測定した結果、159個/m(ゲルサイズ:0.2mm以上)であった。
【0050】
(実施例3)
実施例2のビスフェノールモノエステル系化合物Bを0.1重量部とした以外は、実施例2と同様に行って、膜厚30μmのポリエチレンフィルムを作成した。そして、実施例1と同様にして、フィッシュアイゲルを測定した結果、144個/m2(ゲルサイズ:0.2mm以上)であった。
【0051】
(比較例1)
ポリエチレン製の袋体の代わりに、3層のクラフト紙の紙袋を使用した以外は、実施例1と同様の方法で、梱包体を作製した。
そして、作製した梱包体をカッターナイフで開封し、低密度ポリエチレン100重量部に対して0.5重量部のビスフェノールモノエステル系化合物Aを、低密度ポリエチレンに配合し乾式混合し、実施例1と同様にして、膜厚30μmのポリエチレンフィルムを作製し、フィッシュアイゲルを測定した結果、299個/m(ゲルサイズ:0.2mm以上)であった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明に係る梱包体及び梱包方法では、作業者が荒雑に袋体をカッター等で開封しても、従来のような紙粉が生じることがなく、前記化合物を配合した熱可塑性樹脂を製膜して樹脂フィルムとした場合に、フィッシュアイゲルの発生が抑えられ有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物を、熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包してなることを特徴とする梱包体。
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基を表し、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Rは、水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項2】
前記袋体の膜厚が50〜200μmの範囲である請求項1記載の梱包体。
【請求項3】
第1の熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包された請求項1記載の式(1)で表される化合物を、前記袋体から取り出し、第1の熱可塑性樹脂と同一又は異なる第2の熱可塑性樹脂に配合した後、この配合組成物を製膜することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項4】
第1の熱可塑性樹脂を主成分とする袋体に梱包された請求項1記載の式(1)で表される化合物を、袋体に梱包された状態のまま、第1の熱可塑性樹脂と同一の第2の熱可塑性樹脂に配合した後、この配合組成物を製膜することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記化合物の配合量が、第2の熱可塑性樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部の範囲である請求項3又は4に記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−7002(P2010−7002A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−169820(P2008−169820)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】