説明

梱包箱、梱包材、タグID読取方法、タグID送信プログラム

【課題】アンテナに正対しないRFIDタグを検出可能にした梱包箱を提供する。
【解決手段】梱包箱21は、上面Uと底面Lと側面Sとを備える本体210と、第1及び第2の信号導体22及び23と、RFIDタグ3とを備える。第1の信号導体22は、本体210の第1領域R1に設けられる。第2の信号導体23は、本体210の第2領域R2に設けられる。RFIDタグ3は、第3領域R3において第1及び第2の信号導体22及び23と電気的に絶縁された状態で側面Sに貼付され、その第1の電極が第1の信号導体22と接続され、その第2の電極が第2の信号導体23と接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包箱、梱包材、タグID読取方法、タグID送信プログラムに関し、特に、アンテナに正対しないRFIDタグを検出可能にした梱包箱、梱包材、タグID読取方法、タグID送信プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFIDタグは、読取装置から発信された電波を受信すると、これに応じて、自己のIDを読取装置に返信する。これを利用して、RFIDタグを貼り付けた製品や梱包箱が管理される。
【0003】
例えば、電波により非接触に通信するICタグを箱体の外面に付設すると共に、電波を反射する反射手段を箱体の内面に設ける梱包箱が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−224972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
RFIDタグを使用する場合、読取装置のアンテナとRFIDタグとの間で電波を送受信するので、RFIDタグはアンテナに対し正対する事が望ましい。しかし、製品を梱包した梱包箱を搬送する際、種々の理由から、必ずしもRFIDタグがアンテナに正対するとは限らない。
【0005】
また、読取装置のアンテナとRFIDタグとの間又はその近傍に、電波を吸収(又は反射)する物質(電波吸収体又は電波反射体)が存在する場合、RFIDタグがアンテナの電波から遮断され、読取装置からの信号を検出することができない。
【0006】
特に、梱包箱の主たる素材であるダンボールは、水を吸いやすいので、その結果導体に近い性質、即ち、電波吸収体の特性を示すことがある。このため、雨に濡れた場合や湿度が高い場合等には電波吸収体として働き、アンテナとRFIDタグとの間の通信が不安定となる要因となる。
【0007】
本発明は、アンテナに正対しないRFIDタグを検出可能にした梱包箱を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、アンテナに正対しないRFIDタグを検出可能にした梱包箱の組立に用いられる梱包材を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、アンテナに正対しないRFIDタグを検出可能にしたタグID読取方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、アンテナに正対しないRFIDタグを検出可能にしたタグID送信プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この梱包箱は、上面と底面と側面とを備える本体と、第1及び第2の信号導体と、RFIDタグとを備える。第1の信号導体は、前記本体の外面の第1領域に設けられる。第2の信号導体は、前記本体の外面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁される。RFIDタグは、前記側面の外面の第3領域において前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で当該側面に貼付され、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続される。
【0012】
好ましくは、この梱包箱の一実施態様において、前記RFIDタグは、更に、接続回路と、メモリ回路と、アンテナ回路と、タグID共有回路とを備える。接続回路は、前記第1及び第2の電極を介して前記第1及び第2の信号導体と接続される。メモリ回路は、少なくとも当該RFIDタグのタグIDを含む1又は複数のタグIDを格納する。アンテナ回路は、読取装置との間で送受信を行う。タグID共有回路は、前記メモリ回路に格納された前記1又は複数のタグIDを前記アンテナ回路を介して前記読取装置に送信させる。
【0013】
好ましくは、この梱包箱の一実施態様において、前記メモリ回路に格納された前記1又は複数のタグIDは、前記第1及び第2の信号導体を介して接続された他のRFIDタグのタグIDを含む。
【0014】
この梱包材は、本体と、第1の信号導体と、第2の信号導体と、第3領域とを備える。本体は、当該梱包材を梱包箱に組立てた場合に、前記梱包箱の上面と底面と側面となるべき面を備える。第1の信号導体は、当該梱包材を前記梱包箱に組立てた場合に、前記梱包箱の外面となるべき面の第1領域に設けられる。第2の信号導体は、前記外面となるべき面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁される。第3領域は、当該梱包材を前記梱包箱に組立てた場合に、当該梱包箱の前記側面の外面となるべき面に設けられた領域であって、前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続されたRFIDタグを貼付可能とされる。
【0015】
このタグID読取方法は、梱包箱を複数積み重ねた集合体における、複数のRFIDタグから読取装置によってタグIDを読み取るタグID読取方法である。前記梱包箱は、上面と底面と側面とを備える本体と、前記本体の外面の第1領域に設けられた第1の信号導体と、前記本体の外面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁された第2の信号導体と、前記側面の外面の第3領域において前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で当該側面に貼付され、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続されるRFIDタグとを備える。このタグID読取方法においては、前記複数の梱包箱の中で前記第1及び第2の電極が相互に接触する梱包箱のRFIDタグが、タグIDの送受信を行い、前記複数のRFIDタグの中で他のRFIDタグからタグIDを受信したRFIDタグが、受信したタグIDを保持し、前記読取装置と通信可能なRFIDタグが、少なくとも当該RFIDタグのタグIDを含む1又は複数のタグIDを前記読取装置に送信する。
【0016】
このタグID送信プログラムは、梱包箱を複数積み重ねた集合体において、前記RFIDタグが読取装置にタグIDを送信するタグID送信プログラムである。前記梱包箱は、上面と底面と側面とを備える本体と、前記本体の外面の第1領域に設けられた第1の信号導体と、前記本体の外面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁された第2の信号導体と、前記側面の外面の第3領域において前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で当該側面に貼付され、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続されるRFIDタグとを備える。このタグID送信プログラムにおいては、前記RFIDタグが、前記複数の梱包箱の中で前記第1及び第2の電極が相互に接触する梱包箱のRFIDタグが存在する場合に、タグIDの送受信を行い、前記RFIDタグが、他のRFIDタグからタグIDを受信した場合に、受信したタグIDを保持し、前記RFIDタグが、前記読取装置と通信可能な場合に、少なくとも当該RFIDタグのタグIDを含む1又は複数のタグIDを前記読取装置に送信する。
【発明の効果】
【0017】
この梱包箱によれば、ある梱包箱に貼付されたRFIDタグは、他の梱包箱に貼付されたRFIDタグと、これらの梱包箱の第1及び第2の信号導体が相互に接触することにより、電気的に接続される。これにより、アンテナに正対できないRFIDタグから正対している他のRFIDタグにタグID等の情報を送信することができ、当該他のRFIDタグから読取装置にタグID等の情報を送信することができる。この結果、製品を梱包した梱包箱を搬送する際、RFIDタグがアンテナに正対していない場合であっても、タグID等の情報を読み取ることができる。また、読取装置のアンテナとRFIDタグとの間又はその近傍に電波吸収体(又は電波反射体)が存在する場合であっても、タグID等の情報を読み取ることができる。特に、梱包箱の主たる素材であるダンボールが水を吸って電波吸収体の特性を示す場合であっても、読取装置とRFIDタグとの間の通信を安定に行うことができる。
【0018】
この梱包箱の一実施態様によれば、RFIDタグに、接続回路とメモリ回路とアンテナ回路とタグID共有回路とが設けられる。これにより、あるRFIDタグのメモリ回路に、自己のタグIDの他に、他のRFIDタグのタグIDを格納することができる。
【0019】
この梱包箱の一実施態様によれば、あるRFIDタグが、他のRFIDタグのタグIDを含む。これにより、あるRFIDタグから他のRFIDタグのタグIDを読取装置に送信することができる。
【0020】
この梱包材によれば、これを組み立てることにより、前述の梱包箱を容易に得ることができ、隣接する梱包箱の第1及び第2の信号導体が相互に接触するようにすることができる。これにより、ある梱包箱に貼付されたRFIDタグと他の梱包箱に貼付されたRFIDタグとを電気的に接続することができ、前述のように、RFIDタグがアンテナに正対していない場合であっても、また、読取装置とRFIDタグとの間又はその近傍に電波吸収体(又は電波反射体)が存在する場合であっても、タグID等の情報を読み取ることができる。
【0021】
このタグID読取方法及びこのタグID送信プログラムによれば、前述の梱包箱を複数の積み重ねた集合体として用いることにより、隣接する梱包箱の第1及び第2の信号導体が相互に接触するようにすることができる。これにより、ある梱包箱に貼付されたRFIDタグと他の梱包箱に貼付されたRFIDタグとを電気的に接続して、複数のRFIDタグの間でタグID等の情報を送受信することができる。この結果、前述のように、RFIDタグがアンテナに正対していない場合であっても、また、読取装置とRFIDタグとの間又はその近傍に電波吸収体(又は電波反射体)が存在する場合であっても、タグID等の情報を読み取ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
図1は、本発明の一例によるタグID読取方法が実現されるタグID読取システムの構成と、梱包箱を積み重ねた状態を示す。
【0023】
タグID読取システムは、制御装置として動作するパーソナルコンピュータ(PC)11、接続装置(HUB)12、RFIDリーダライタ(読取/書込装置、以下、単に読取装置ということもある)13、複数のアンテナ14、移動体15を備える。RFIDリーダライタ13は、HUB12を介して、パーソナルコンピュータ11に接続され、また、複数のアンテナ14を備える。複数のアンテナ14は、例えば1個の移動体15に取り付けられる。
【0024】
図1の例において、読取装置13による読み取りの対象とされるのは、梱包箱21を複数積み重ねた梱包箱の集合体20、具体的には集合体20に含まれる複数のRFIDタグ3である。集合体20は、梱包箱21を積み重ねた状態で、パレット16上に載置される。図1の例では、パレット16は導電性とされ、例えば金属板からなる。移動体15は、図1に矢印で示すように、例えばオペレータにより、又は、ガイドレール等に沿って自動的に、パレット16の周囲の一部を移動させられる。
【0025】
RFIDリーダライタ13は、複数のアンテナ14から予め定められた信号を送信(出力)する。アンテナ14からの信号を受信したRFIDタグ3は、応答として、予め定められた応答信号をアンテナ14に対して送信する。応答信号は、当該RFIDタグ3が格納する1又は複数のタグIDを含む。これにより、RFIDタグ3の格納するタグIDがRFIDリーダライタ13により読み取られる。応答信号を受信したRFIDリーダライタ13は、受信した応答信号をHUB12を介してパーソナルコンピュータ11に送信する。応答信号を受信したパーソナルコンピュータ11は、予め定められた信号処理を行うことにより、RFIDタグ3が貼付された梱包箱21を検出することができる。
【0026】
図1の例において、集合体20は、複数の同一形状の梱包箱21からなる。図1では、集合体20は12個の梱包箱21からなるものとする。12個の同一形状の梱包箱21は、それぞれの同一面が同一方向を向くように、複数段に積み重ねられる。図1の例では、梱包箱21は2段に積み重ねられる。RFIDタグ3は、梱包箱21のある側面Sに貼付されている。図1の例では、RFIDタグ3が貼付された梱包箱21の面、あるいは集合体20の面を「前面」と称する。この場合、4個の梱包箱21の前面に貼付されたRFIDタグ3は、移動体15を移動させることにより、いずれかのアンテナ14と正対する。即ち、前面のRFIDタグ3とアンテナ14との間には障害物がなく、RFID3からアンテナ14を見通すことができる。従って、前面のRFIDタグ3は、アンテナ14を介して、RFIDリーダライタ13との間で通信を行うことができる。これにより、RFIDリーダライタ13は、前面の4個のRFIDタグ3から、当該タグIDを読み取ることができる。4個の梱包箱21の前面に貼付された4個のRFIDタグ3それぞれのタグIDは、当該RFIDタグ3から直接RFIDリーダライタ13により、読み取られる。
【0027】
これに対して、残りの8個の梱包箱21に貼付されたRFIDタグ3は、他の梱包箱21の存在により、いずれのアンテナ14も見通すことができない、言い換えればアンテナと正対できない位置に貼付されている。従って、RFIDリーダライタ13は、当該8個のRFIDタグ3のタグIDを当該RFIDタグ3から直接読み取ることはできない。しかし、図1の例では、当該8個のRFIDタグ3のタグIDは、後述するように、前面に貼付された4個のRFIDタグ3から、間接的に読み取られる。
【0028】
なお、図1に示す集合体20において、各々の梱包箱21は、図示の都合上、その細部をやや省略して示している(図3、図9、図10、図12において同じ)。
【0029】
図2は、本実施例による梱包箱21を形成する梱包材21Aの展開図を示す。図3は本実施例による梱包箱21の外観を示す。
【0030】
図2において、梱包材21Aの本体210は、梱包材21Aを梱包箱21に組立てた場合に、梱包箱21の上面となるべき面U(U1〜U4)と、底面となるべき面L(L1〜L4)と、側面となるべき面S(S1〜S4)を備える。なお、以下の説明において、上面となるべき面Uを単に上面Uという。他の面についても同様である。
【0031】
梱包材21Aは、当該梱包材21Aを梱包箱21に組立てるために、側面Sとの糊代S0を備える。糊代S0には導体及び絶縁膜が形成されないので、梱包材21Aの本体210が露出する。
【0032】
本体210は、電気的に絶縁性を備える材質、例えばダンボール、プラスチック等からなる。梱包材21Aの本体210には、第1の信号導体22及び第2の信号導体23が形成される。
【0033】
第1の信号導体22は、第1(+)の電極又は配線(以下、単に電極と言う)として用いられ、当該梱包材21Aを梱包箱21に組立てた場合に、梱包箱21の外面となるべき面(以下、単に外面という)の第1領域R1に設けられる。図1の例では、第1の信号導体22は梱包箱21の側面Sに設けられる。第1の信号導体22が設けられた領域が第1領域R1であり、第1領域R1は側面Sの大部分を占める。
【0034】
第2の信号導体23は、第2(−)の電極として用いられ、外面の第2領域R2に設けられ、第1の信号導体22と電気的に絶縁される。第2の信号導体23は、梱包箱21の上面U及び底面Lの双方に設けられる。第2の信号導体23が設けられた領域が第2領域R2であり、第2領域R2は上面U及び底面Lの大部分を占める。
【0035】
第1の信号導体22及び第2の信号導体23は、電気絶縁性を有する本体210の外面に塗布された導電性のインキの乾燥皮膜からなる。導電性インキは、乾燥皮膜が導電性を示すインキであって、フィラーとして、金、銀、銅、ニッケル又は導電性カーボン粉末等を含み、バインダーとして、ガラスフリット、ポリアミド、エポキシ、ポリエステル等の絶縁体を含む。
【0036】
梱包材21Aの本体210は、図2に点線で示すように、第3領域R3を備える。第3領域R3は、梱包材21Aを梱包箱21に組立てた場合における、梱包箱21の側面S2の外面に設けられる。即ち、第3領域R3は、側面S2の一部において、第1の信号導体22の一部を切り欠いた領域に設けられる。第3領域R3は、図3及び図4を参照して後述するように、RFIDタグ3を貼付するための領域である。第3領域R3は、RFIDタグ3の貼付のために、接続導体27と絶縁領域28とを含む。
【0037】
接続導体27は、梱包箱21の第2領域R2である底面L2に設けられた第2の信号導体23を延長したものであり、第2の信号導体23と連続した領域である。接続導体27は、底面L2の第2の信号導体23から側面S2に突出するように設けられる。これにより、絶縁領域28を挟むように、第1の信号導体22と接続導体27とが側面S2に設けられる。
【0038】
絶縁領域28は、RFIDタグ3を貼付するための領域であり、この上に接着剤等を用いてRFIDタグ3が貼り付けられる。絶縁領域28は、本体210に塗布された電気絶縁性のインキの乾燥皮膜からなる。電気絶縁性インキは、乾燥皮膜が電気絶縁性を示すインキであって、例えば通常の樹脂塗料からなる。第1の信号導体22及び第2の信号導体23の塗布及び乾燥の後に、絶縁領域28を構成するインキが梱包材21Aに塗布され、乾燥される。なお、絶縁領域28は、電気絶縁性のインキを塗布することなく、単に本体210が露出するように形成しても良い。
【0039】
梱包材21Aは、梱包箱21の側面S2となる外面に、第4領域R4を備える。第4領域R4は、側面S2の一部において、第1の信号導体22の一部を切り欠いた領域に設けられる。第4領域R4は、梱包箱21の上面U及び底面Lの各々に形成された第2の信号導体23を接続する接続導体25を設けるための領域である。接続導体25は、第1の信号導体22及び第2の信号導体23と同様にして、図2に示すように、本体210上に形成される。
【0040】
第4領域R4は、その全体が絶縁膜からなる絶縁カバー26により覆われる。即ち、絶縁カバー26が設けられた領域が第4領域R4である。接続導体25は、梱包箱21の側面S2の外面において、絶縁カバー26により覆われる。第1の信号導体22と第2の信号導体23との間は、本体210に塗布された絶縁性のインキからなる絶縁カバー26により、電気的に絶縁される。絶縁カバー26は、接続導体25の塗布及び乾燥の後に、絶縁領域28と同様にして、図2に示すように、梱包材21A上に形成される。
【0041】
梱包材21Aの本体210は、第1の信号導体22と第2の信号導体23との間に、言い換えれば第1領域R1と第2領域R2との間に、第5領域R5を備える。第5領域R5は、第1の信号導体22及び第2の信号導体23を電気的に絶縁するための領域である。このために、第5領域R5には、絶縁体24が設けられる。即ち、絶縁体24が設けられた領域が第5領域R5である。第1の信号導体22と第2の信号導体23との間は、絶縁体24により電気的に絶縁される。絶縁体24は、例えば絶縁カバー26と同様にして、図2に示すように、梱包材21A上に形成される。
【0042】
以上のように、図2及び図3の梱包箱21においては、2個の信号導体22及び23が、梱包箱21を底面Lを下にして置いた状態で、いわば上下方向に2分割した各々の領域に設けられる。即ち、梱包箱21の上面U及び下面Lに信号導体23が設けられ、側面Sに信号導体22が設けられる。そして、このように信号導体を分割した結果、RFIDタグ3の貼付のために第3の領域R3が梱包箱21に設けられる。また、梱包箱21の上面U及び下面Lの信号導体23接続のために、梱包箱21に第4の領域R4が設けられ、信号導体22と信号導体23との絶縁のために第5の領域R5が梱包箱21に設けられる。
【0043】
図3の梱包箱21は以下のようにして組み立てられる。図2の梱包材21Aの糊代S0が、反対の端部の側面S4の内側に、例えば糊付けにより固定される。更に、この状態で、底面L1及びL3が予め定められた方向に、つまり内側に折り曲げられ、底面L2及びL4も内側に折り曲げられ、これら4面がホチキス等で相互に固定される。RFIDタグ3は、例えば梱包材21Aを梱包箱21に組立てた後に、梱包箱21の第3領域R3に貼付される。これにより、上面Uが開口した状態の梱包箱21が得られる。
【0044】
この状態で、梱包箱21の内部に製品が収納される。この後、上面U1及びU3が予め定められた方向に、つまり内側に折り曲げられ、上面L2及びL4も内側に折り曲げられ、これら4面がホチキス等で相互に固定される。これにより、製品が梱包され、図3に示した状態の梱包箱21が得られる。
【0045】
図3において、梱包箱21の本体210は、直方体又は、正方体の形状を有し、上面Uと底面Lと側面Sとを備える。なお、底面Lは、図3には現れない。側面Sの外面の一部分である第1領域R1に第1の信号導体22が表れ、上面U及び底面Lの外面である第2領域R2に第2の信号導体23が表れる。上面U及び底面Lの第2の信号導体23は、側面S2の外面の他の一部分である第4領域R4に形成された接続導体25により、相互に接続される。接続導体25は、側面S2の第4領域R4において、絶縁カバー26で覆われる。
【0046】
側面S2の外面の更に他の一部分である第3領域R3には、RFIDタグ3が、第1の信号導体22及び第2の信号導体23と電気的に絶縁された状態で、当該側面S2に貼付される。なお、図4を参照して後述するように、梱包箱21に貼付されたRFIDタグ3の第1の電極が第1の信号導体22と接続され、第2の電極が接続導体27、言い換えれば第2の信号導体23と接続される。
【0047】
図3に示す状態の梱包箱21が、図1に示すように、導電性パレット16上に積み重ねられる。また、互いに隣接する梱包箱21の側面Sが相互に密着するように、梱包箱21が導電性パレット16上に配置される。これにより、隣接する梱包箱21の側面Sが相互に電気的に接続される。
【0048】
以上により、少なくとも導電性パレット16上に積み重ねられた上段の6個の梱包箱21において、ある梱包箱21の第1の信号導体22が、隣接する他の梱包箱21の第1の信号導体22に電気的に接続される。従って、上段の6個の梱包箱21の第1の信号導体22が相互に電気的に接続される。下段の6個の梱包箱21についても同様である。
【0049】
また、上下に重なる2個の梱包箱21において、下段の梱包箱21の上面Uの第2の信号導体23と、上段の梱包箱21の底面Lの第2の信号導体23とが、相互に電気的に接続される。従って、上下に重なる2個の梱包箱21が相互に電気的に接続される。この結果、導電性パレット16に積み重ねられた第2の信号導体23は、最終的には、導電性パレット16により、全て電気的に接続される。
【0050】
なお、この時、図1に示すように、接着テープ41により隣接する梱包箱21の側面S同士を接着し、接着テープ42により上面U同士を接着してもよい。これにより、積み重ねた梱包箱21の間の電気的な接続をより確実なものにすることができる。
【0051】
更に、この時、接着テープ41及び42として、導電性テープを用いることができる。導電性テープを用いることにより、互いに隣接する梱包箱21の側面Sに設けられた第1の信号導体22同士が電気的に接続され、また、上段の梱包箱21の上面Uに形成された第2の信号導体23同士が電気的に接続される。なお、この場合、接着テープ41はRFIDタグ3の無い梱包箱21の側面Sを1又は複数の箇所で接着し、接着テープ42は梱包箱21の上面Uを、図1に示すように2方向に接着する。この結果、少なくとも1個のRFIDタグ3がアンテナ14と正対すれば、後述するように、アンテナ14と正対したRFIDタグ3から、12個の梱包箱21に貼付された12個のRFIDタグ3のタグIDを読み出すことができる。
【0052】
図4は、本実施例によるタグID読取方法に用いられるRFIDタグ3を示す。RFIDタグ3は、図4に示すように、第1の電極33及び第2の電極34を備える。第1の電極33は、第1の方向に延びるように設けられ、その先端部で第1の信号導体22に接続される。第2の電極34は、第1の方向とは逆方向である第2の方向に延びるように設けられ、その先端部で接続導体27に接続される。これにより、第2の電極34は第2の信号導体23に接続される。
【0053】
このために、側面S2の外面における第3領域R3は、更に、3分割される。即ち、図4及び図2に示すように、第3領域R3の中央部に、RFIDタグ3の貼付領域である絶縁領域28が設けられる。絶縁領域28を挟んで左右に対称な位置に、第1の信号導体22と接続導体27つまり第2の信号導体23とが設けられる。
【0054】
なお、図4に示すように、RFIDタグ3の第1の電極33及び第2の電極34は、RFIDタグ3の処理回路31に接続される。処理回路31には、RFIDタグ3のチップの周縁を周回するように設けられるアンテナ32が接続される。
【0055】
図5は、主として、本実施例のタグID読取方法に用いられるRFIDタグ3と、RFIDタグ3を含む梱包箱21の回路構成の一例を示す。RFIDタグ3の処理回路31は、接続回路311と、メモリ回路312と、タグID共有回路313と、アンテナ回路314とを備える。
【0056】
なお、以下の説明において、例えば、タグIDが1言い換えればID=1であるRFIDタグ3をRFIDタグ3−1と表すことがある。また、例えば、RFIDタグ3−1が貼付された梱包箱21を梱包箱21−1と表すことがある。更に、例えば、RFIDタグ3−1のアンテナ回路314等をアンテナ回路314−1等と表すことがある。他のRFIDタグ3、他の梱包箱21、他のアンテナ回路314等についても同様である。
【0057】
接続回路311は、第1の電極33及び第2の電極34を介して、第1の信号導体22及び第2の信号導体23と接続される。ある梱包箱21は、他の梱包箱21と第1の信号導体22あるいは第2の信号導体23とによって、電気的に接続されている。これにより、任意の梱包箱21に貼付されたRFIDタグ3の接続回路311は、他の梱包箱21に貼付された他のRFIDタグ3の接続回路311と接続され、他のRFIDタグ3との間でタグIDの送受信を行う。この結果、接続回路311は、他のRFIDタグ3の接続回路311から、1又は複数のタグIDを受信し、あるいは他のRFIDタグ3の接続回路311に対してタグIDを送信する。接続回路311は、他のRFIDタグ3から受信した1又は複数のタグIDを、所定の期間保持する。
【0058】
メモリ回路312は、当該RFIDタグ3に予め割り当てられたタグIDを保持する。タグIDは一意に識別される。また、接続回路311は、他のRFIDタグ3から受信した1又は複数のタグIDをメモリ回路312に格納する。従って、メモリ回路312に格納されたタグIDは、第1の信号導体22及び第2の信号導体23を介して接続された他のRFIDタグ3のタグIDを含む。
【0059】
アンテナ回路314は、アンテナ32を備え、読取装置13との間で無線により情報の送受信を行う。タグID共有回路313は、メモリ回路312に格納された1又は複数のタグIDをアンテナ回路314に送出し、読取装置13へ送信させる。
【0060】
なお、通常の状態では、全ての梱包箱21に貼付された各RFIDタグ3が、互いに電気的に接続され、且つ相互に情報を送受信することができる。しかし、図5に示すように、例えば、RFIDタグ3のタグIDが1である言い換えればRFIDタグ3−1が貼付された梱包箱21−1は、RFIDタグ3のタグIDが2である他の梱包箱21−2と電気的に接続されるが、RFIDタグ3のタグIDが3である他の梱包箱21−3とは電気的に接続されない場合がある。これは例えば、梱包箱21−3に設けられた第1の信号導体22が、梱包箱21−2に設けられた第1の信号導体22と非接触の状態となってしまうことにより生じる。なお、第2の信号導体23は、パレット16により相互に電気的に接続された状態となる。また、第1の信号導体22及び第2の信号導体23は、低電圧の作動信号の伝送路として用いられる。これにより、接続回路311が送出する微小な信号も送受信することができる。
【0061】
図6及び図7は、図1のタグID読取システムが実行するタグID読取処理フローを示す。
【0062】
タグIDの読取開始に先立って、図1に示すように、オペレータにより、梱包箱21が導電性パレット16上に複数積み重ねられ、集合体20とされる。この状態で、複数のRFIDタグ3から読取装置13によってタグIDが読み取られる。
【0063】
図6において、パーソナルコンピュータ11は、オペレータにより読取開始の指示が入力されると(ステップS11)、HUB12を介して、読取装置13にRFIDタグ3からのタグIDの読取を指示し(ステップS12)、待ち状態となる。この後、パーソナルコンピュータ11は、読取装置13からの応答としてのタグIDを受信する。このようにして、複数の梱包箱21の中で第1の電極33及び第2の電極34が相互に接触する梱包箱21のRFIDタグ3が、タグIDの送受信を行う。パーソナルコンピュータ11は、読取装置13から受信した、読取装置13が読み取ったタグIDをメモリ回路312に蓄積する(ステップS13)。
【0064】
ステップS13の蓄積処理において、パーソナルコンピュータ11は、読取装置13から受信したタグIDの中で、すでに受信したタグIDと重複するタグIDを廃棄する。また、パーソナルコンピュータ11は、読取装置13から受信したタグIDの中で、すでに受信したタグIDと重複しないタグID、つまりはじめて受信したタグIDを、読取開始から終了までの間、メモリに保持する。
【0065】
この後、パーソナルコンピュータ11は、RFIDタグ3の読み取りが終了したか否かを調べる(ステップS14)。RFIDタグ3の読み取りは、例えば予め定められた時間間隔で、予め定められた回数、例えば8回だけステップS12を実行することにより、終了する。また、例えば全てのタグIDがメモリに蓄積された場合に、RFIDタグ3の読取を終了とするようにしても良い。読み取りが終了しない場合、ステップS12以下の処理を繰り返す。読み取りが終了した場合、パーソナルコンピュータ11は、タグIDの取得先として、当該タグIDに対応するRFIDタグ3又は梱包箱21を、例えば表示装置に表示出力する(ステップS15)。
【0066】
一方、読取装置13は、ステップS12においてパーソナルコンピュータ11からタグIDの読取が指示されると、これに応じて、複数のアンテナ14から読取用の電波を送信して(ステップS21)、待ち状態となる。これにより、読取装置13と通信可能なRFIDタグ3が、少なくとも当該RFIDタグ3のタグIDを含む1又は複数のタグIDを読取装置13に送信する。例えば、RFIDタグ3−1は、当該RFIDタグ3−1のタグID=1と、後述する図7の処理によって得たタグID=2とを、読取装置13に送信する。この後、読取装置13は、RFIDタグ3からの応答としてのタグIDを受信すると、その都度読み取ったタグIDを、HUB12を介して、パーソナルコンピュータ11へ送信する(ステップS22)。
【0067】
例えば、ID=1〜3のRFIDタグ3が存在するとする。この場合において、1回目の読取でID=1のタグIDを受信し、2回目〜4回目の読取でいずれもID=1及びID=2のタグIDを受信し、5回目〜6回目の読取でいずれもID=1〜ID=3のタグIDを受信し、7回目〜8回目の読取でいずれもID=3のタグIDを受信したとする。
【0068】
この受信結果に応じて、1回目の読取で受信したID=1のタグID、2回目の読取で受信したID=2のタグID、及び、5回目の読取で受信したID=3のタグIDが、パーソナルコンピュータ11に蓄積される。一方、2回目〜6回目の読取で受信したID=1のタグIDは、1回目の読取で受信したタグIDと重複するので廃棄される。同様に、3回目〜6回目の読取で受信したID=2のタグID、及び、6回目〜8回目の読取で受信したID=3のタグIDも、重複するタグIDとして廃棄される。これにより、読取の結果として、ID=1〜3のタグIDが得られる。
【0069】
図7において、タグIDが1であるRFIDタグ3−1のアンテナ回路314−1が、アンテナ32−1を介して、読取装置13からの読取用の電波を受信すると(ステップS31)、タグID共有回路313−1は、マルチドロップ接続におけるマスタであることのマスタ宣言を生成する(ステップS32)。そして、マスタ宣言をしたタグID共有回路313−1は、接続回路311−1を介してマスタ宣言と共に、スレーブID情報の要求を他のRFIDタグ3に対して送信し(ステップS33)、メモリ回路312−1から自己のタグIDであるID=1を読み出して保持し(ステップS34)、待ち状態となる。
【0070】
ここで、図5に示すように、RFIDタグ3−1が貼付された梱包箱21−1は、タグID=2のRFIDタグ3−2が貼付された梱包箱21−2と電気的に接続されており、タグID=3のRFIDタグ3−3が貼付された梱包箱21−3とは電気的に接続されていないとする。また、RFIDタグ3−1が貼付された梱包箱21−1及びRFIDタグ3−3が貼付された梱包箱21−3は、読取装置13からの読取用の電波を受信できる状態であるとし、RFIDタグ3−2が貼付された梱包箱21−2は読取装置13からの読取用の電波を受信できない状態であるとする。
【0071】
この後、RFIDタグ3−1において、接続回路311−1が他のRFIDタグ3−2からスレーブID情報、即ち、当該RFIDタグ3−2のタグID=2を受信すると(ステップS35)、タグID共有回路313−1は、受信したタグID(ID=2)を保持する(ステップS36)。そして、タグID共有回路313−1は、保持したタグID(ID=1〜2)を、読取用の電波に対する応答として、アンテナ回路314−1を介して、読取装置13に送信する(ステップS37)。
【0072】
前述のように、他のRFIDタグ3−2のアンテナ回路314−2は、読取装置13からの読取用の電波を受信できない。従って、図7に点線で示すように、ステップS44で読取用の電波を受信することも、ステップS45でマスタ宣言を生成することもできない。
【0073】
この状態で、RFIDタグ3−2の接続回路311−2が、RFIDタグ3−1からのマスタ宣言及びスレーブID情報の要求を受信する(ステップS41)。これに応じて、RFIDタグ3−2のタグID共有回路313−2は、メモリ回路312−2から自己のタグID(ID=2)を読み出して、Δtだけ返信処理を遅延させた上で(ステップS42)、前記要求に対する応答言い換えればスレーブID情報として、読み出した自己のタグIDを、接続回路311−2を介して、RFIDタグ3−1に返信する(ステップS43)。
【0074】
なお、Δtは、遅延時間であり、乱数を用いて定められる。このために、タグID共有回路313は乱数発生回路を備える。これにより、複数のRFIDタグ3からの応答が同じ時刻に重なることを防止することができる。
【0075】
この後、RFIDタグ3−2が、読取装置13からの読取用の電波を受信できる状態になると、読取電波を受信し(ステップS44)、マスタ宣言を送信する場合がある(ステップS45)。しかし、既にRFIDタグ3−1がマスタ宣言を送信した後であるので、当該マスタ宣言を受信したRFIDタグ3−2以外のRFIDタグ3においては、RFIDタグ3−2のマスタ宣言は無視される。
【0076】
更に、他のRFIDタグ3−3が、ステップS31〜S34と同様に、読取装置13からの読取用の電波を受信すると(ステップS51)、RFIDタグ3−3はマスタ宣言を生成して(ステップS52)、マスタ宣言及びスレーブID情報の要求を他のRFIDタグ3に送信し(ステップS53)、自己のタグID(ID=3)を読み出して保持し(ステップS54)、待ち状態となる。
【0077】
しかし、RFIDタグ3−3が、いずれのRFIDタグ3にも電気的に接続されていないので、接続回路311−3は、いずれのRFIDタグ3からもスレーブID情報を受信しない(ステップS55)。そのため、タグID共有回路313−3は、他のRFIDタグ3のタグIDを保持することなく(ステップS56)、保持した自身のタグIDであるID=3のみを、読取用の電波に対する応答として、アンテナ回路314−3を介して、読取装置13に送信する(ステップS57)。
【0078】
図8は、図1のタグID読取システムが実行するタグID読取処理フローの他の一例を示す。この例では、パーソナルコンピュータ11が図6に示すステップS11〜S15と同様の処理を実行し、読取装置13が図6に示すステップS21〜S22と同様の処理を実行する。これに応じて、RFIDタグ3が、図7に代えて、図8に示す処理を実行する。なお、タグID=1のRFIDタグ3−1〜タグID=3のRFIDタグ3−3相互の接続状態、及び読取用の電波の受信可否状態は、図7と同様であるとする。
【0079】
図8において、RFIDタグ3−1のアンテナ回路314−1がステップS31と同様にして読取装置13から読取用の電波を受信すると(ステップS61)、タグID共有回路313−1がステップS33と同様にしてID情報の要求を他のRFIDタグ3に対して送信する(ステップS62)。
【0080】
この後、接続回路311−1が、ステップS35と同様にして他のRFIDタグ3―2からID情報、即ち、当該RFIDタグ3−2のタグID=2を受信する。後述するステップS71と同様にして、RFIDタグ3−1の接続回路311−1が他のRFIDタグ3からのID情報の要求を受信すると、タグID共有回路313−1がメモリ回路312−1から自己のタグIDを読み出して、これを他のRFIDタグ3に返信する(ステップS63)。 この後、タグID共有回路313−1が、ステップS36と同様にしてRFIDタグ3−2から受信したタグID(ID=2)を保持し(ステップS64)、ステップS34と同様にしてメモリ回路312−1から自己のタグID(ID=1)を読み出して保持し(ステップS65)、ステップS37と同様にして保持したタグID(ID=1〜2)を読取装置13に送信する(ステップS66)。
【0081】
他のRFIDタグ3−2のアンテナ回路314−2は、読取装置13からの読取用の電波を受信できない。従って、ステップ75にて読取装置13からの読取用の電波を受信することも、ステップ76にてマスタ宣言を生成することもできない。
【0082】
この状態で、RFIDタグ3−2の接続回路311−2が、RFIDタグ3−1からのID情報の要求を受信すると、タグID共有回路313−2は、メモリ回路312−2から自己のタグID(ID=2)を読み出して、ステップS42と同様にしてΔtだけ返信処理を遅延させた上で、前記要求に対する応答(ID情報)として、タグID(ID=2)を、接続回路311−2を介して、RFIDタグ3−1に返信する(ステップS71)。
【0083】
この後、RFIDタグ3−2において、仮に他のRFIDタグ3からタグIDを受信した場合には、ステップS64〜S66と同様にして、タグID共有回路313−2が、他のRFIDタグ3から受信したタグIDを保持し(ステップS72)、メモリ回路312−2から自己のタグID(ID=2)を読み出して保持し(ステップS73)、保持したタグIDを読取装置13に送信する(ステップS74)。
【0084】
なお、この後、RFIDタグ3−2が読取装置13からの読取用の電波を受信できる状態になると、読取電波を受信し(ステップS75)、ID情報の要求を送信する場合がある(ステップS76)。しかし、既にRFIDタグ3−1がID情報の要求を送信した後であるので、RFIDタグ3−2からのID情報の要求は他のRIFDタグ3によって無視される。
【0085】
更に、他のRFIDタグ3−3が、ステップS61〜S66と同様にして、ステップS81〜S86を実行する。しかし、RFIDタグ3−3が、いずれのRFIDタグ3にも接続されていない。従って、接続回路311−3は、いずれのRFIDタグ3からもID情報を受信せず(ステップS83)、タグID共有回路313−3は、他RFIDタグ3のタグIDを保持することなく(ステップS84)、保持した自身のタグIDのみを、読取用の電波に対する応答として、アンテナ回路314−3を介して、読取装置13に送信する(ステップS86)。
【0086】
図9は、タグID読取方法の他の一例と、これに用いられる梱包箱の他の一例とを示す。
【0087】
図9の例は、図2及び図3に示す構造を備える梱包箱21を、小箱(又は内箱)21Bとして使用する例である。この例では、複数例えば2個の小箱21Bが、1個の大箱(又は外箱)21B’に入れられる。図9の例は例えば、1個の製品が2個の部品からなる場合等に適用することができる。
【0088】
この状態では、読取装置13は、外箱21B‘内に収納された小箱21Bに貼付されたRFIDタグ3のタグIDを直接読み出すことができない可能性がある。そこで、大箱21B’として、図2及び図3の梱包箱21と類似の構造を備える梱包箱を用いる。
【0089】
大箱21B’は、その外面に、図2及び図3に示す構造を備え、かつ、その内面に、図2及び図3に示す構造を備える。但し、大箱21B’の内面にはRFIDタグ3は貼付されない。この点を除いて、大箱21B’は、その外面及び内面に全く同一の構造を備える。つまり、大箱21B’の外面及び内面は鏡面の関係とされる。その上で、大箱21B’の外面及び内面に形成された第1の信号導体22、及び第2の信号導体23が相互に電気的に接続される。この接続は、図示しないが、導電製テープ又は金属製のはとめ等により行われる。
【0090】
これにより、小箱21Bを大箱21B’に収納した場合において、各々の側面が相互に接触して第1の信号導体22同士が電気的に接続され、各々の上面及び底面が相互に接触して、それぞれの第2の信号導体23が電気的に接続される。
【0091】
この結果、図9に示すように、複数、図9の例では4個の大箱21B’が積み重ねられた場合、図1の梱包箱21を積み重ねた場合と同様にして、小箱21BのRFIDタグ3のタグIDを読み出すことができる。この場合において、大箱21B’に一旦梱包した小箱21を外に取り出す必要を無くすことができるので、極めて便利である。
【0092】
図10は、タグID読取方法の更に他の一例と、これに用いられる梱包箱の更に他の一例とを示す。図11は、図10の梱包箱を構成する梱包材の展開図を示す。
【0093】
この例は、図2及び図3に示す構造を備える梱包箱21に代えて、より簡易な構造の梱包箱21C及びその梱包材21C’を用いた例である。即ち、梱包箱21Cにおいては、RFIDタグ3の2個の電極33及び34を接続する2個の信号導体22及び23が、梱包箱21Cを底面Lを下にして置いた場合におけるいわば左右方向に2分割した各々の領域に設けられる。即ち、図10及び図11に示すように、梱包箱21Cの一方例えば左側の領域に信号導体22が設けられ、他方例えば右側の領域に信号導体23が設けられる。このような分割の結果、図2、図3に示された各々の梱包箱21に形成された第2の信号導体23を接続するための第4の領域R4を不要とすることができる。
【0094】
なお、2個の信号導体22及び23を絶縁するための絶縁領域24(第5の領域R5)は、図10および図11の例では梱包箱21Cの中央に、底面Lを下にして置いた場合において縦方向に設けられる。第5の領域R5は、梱包箱21C左右に設けられる信号導体22及び23の境界に設けられる。これにより、梱包箱21Cを左右2等分する。また、RFIDタグ3の貼付のための第3の領域R3は、第5の領域R5上にこれを跨ぐように設けられる。RFIDタグ3の貼付のための絶縁領域28は、絶縁領域24と一体に設けられる。なお、図2、図3の梱包箱21に形成されていた接続導体27は省略される。
【0095】
以上により、第4の領域R4を省略して梱包箱21Cの構造を簡単にすることができ、また、図1における導電性のパレット16を不要とすることができる。即ち、図10におけるパレット16Bは導電性である必要が無い。また、図1における縦方向の導電性テープの貼り付けを省略することができる。
【0096】
なお、梱包箱21Cのサイズは統一される。また、隣接する梱包箱21Cにおいて、相互に接触する側面の極性を合わせる必要が有る。
【0097】
図12は、タグID読取方法の更に他の一例と、これに用いられる梱包箱の更に他の一例とを示す。図13は、図12の梱包箱を構成する梱包材の展開図を示す。
【0098】
この例は、図2及び図3に示す構造を備える梱包箱21に代えて、RFIDタグ3に対する給電手段を備える構造の梱包箱21D及びその梱包材21D’を用いた例である。即ち、梱包箱21Dにおいては、2個の信号導体22及び23と2個の給電導体291及び292とが、梱包箱21Dを底面Lを下にして置いた場合におけるいわば左右方向に4分割した各々の領域に設けられる。即ち、図12及び図13に示すように、梱包箱21Dには、図示左から順に、給電導体291(+)、信号導体23、信号導体22、給電導体292(−)が設けられる。梱包箱21Dに貼付されるRFIDタグ3は、給電導体291と給電導体292とに接続される。以上により、RFIDタグ3に給電することができる。
【0099】
なお、2個の信号導体22及び23の絶縁のための絶縁領域24(第5の領域R5)は、梱包箱21Dの中央に、底面Lを下にして置いた場合において縦方向に設けられる。第5の領域R5は、左右の信号導体22及び23の境界に設けられる。また、2個の給電導体291及び292と、信号導体22、23との絶縁のための絶縁領域24’は、梱包箱21Dに前記縦方向に設けられる。RFIDタグ3の貼付のための第3の領域R3は、領域24及び24’上にこれを跨ぐように設けられる。RFIDタグ3の貼付のための絶縁領域28は、絶縁領域24と一体に設けられる。接続導体27は省略される。
【0100】
以上により、読取装置13からの電波を遮蔽されて受信できない梱包箱21DのRFIDタグ3に給電して、当該梱包箱21DからもそのタグIDを確実に読み取ることができる。
【0101】
なお、梱包箱21Dのサイズは統一される。また、隣接する梱包箱21Dにおいて、相互に接触する側面の極性を合わせる必要が有る。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】タグID読取方法とこれに用いられる梱包箱の一例とを示す図である。
【図2】梱包箱を構成する梱包材の展開図である。
【図3】組み立てられた梱包箱の斜視図である。
【図4】FRIDタグの取り付けの説明図である。
【図5】FRIDタグの構成の一例を示す図である。
【図6】FRIDタグの読取処理フローである。
【図7】FRIDタグの読取処理フローである。
【図8】FRIDタグの読取処理フローの他の一例である。
【図9】タグID読取方法とこれに用いられる梱包箱の他の一例とを示す図である。
【図10】タグID読取方法とこれに用いられる梱包箱の更に他の一例とを示す図である。
【図11】図10の梱包箱を構成する梱包材の展開図である。
【図12】タグID読取方法とこれに用いられる梱包箱の更に他の一例とを示す図である。
【図13】図12の梱包箱を構成する梱包材の展開図である。
【符号の説明】
【0103】
11 パーソナルコンピュータ(PC)
12 接続装置(HUB)
13 RFIDリーダライタ
14 アンテナ
15 移動体
16 パレット
20 集合体
21 梱包箱
22 第1の信号導体
23 第2の信号導体
25 接続導体
26 絶縁カバー
L(L1〜L4) 底面
S(S1〜S4) 側面
U(U1〜U4) 上面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と底面と側面とを備える本体と、
前記本体の外面の第1領域に設けられた第1の信号導体と、
前記本体の外面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁された第2の信号導体と、
前記側面の外面の第3領域において前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で当該側面に貼付され、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続されるRFIDタグとを備える
ことを特徴とする梱包箱。
【請求項2】
前記RFIDタグは、更に、
前記第1及び第2の電極を介して前記第1及び第2の信号導体と接続された接続回路と、
少なくとも当該RFIDタグのタグIDを含む1又は複数のタグIDを格納するメモリ回路と、
読取装置との間で送受信を行うアンテナ回路と、
前記メモリ回路に格納された前記1又は複数のタグIDを前記アンテナ回路を介して前記読取装置に送信させるタグID共有回路とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の梱包箱。
【請求項3】
前記メモリ回路に格納された前記1又は複数のタグIDは、前記第1及び第2の信号導体を介して接続された他のRFIDタグのタグIDを含む
ことを特徴とする請求項2に記載の梱包箱。
【請求項4】
当該梱包材を梱包箱に組立てた場合に、前記梱包箱の上面と底面と側面となるべき面を備える本体と、
当該梱包材を前記梱包箱に組立てた場合に、前記梱包箱の外面となるべき面の第1領域に設けられた第1の信号導体と、
前記外面となるべき面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁された第2の信号導体と、
当該梱包材を前記梱包箱に組立てた場合に、当該梱包箱の前記側面の外面となるべき面に設けられた領域であって、前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続されたRFIDタグを貼付可能とされた第3領域とを備える
ことを特徴とする梱包材。
【請求項5】
上面と底面と側面とを備える本体と、前記本体の外面の第1領域に設けられた第1の信号導体と、前記本体の外面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁された第2の信号導体と、前記側面の外面の第3領域において前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で当該側面に貼付され、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続されるRFIDタグとを備える梱包箱を複数積み重ねた集合体における、複数のRFIDタグから読取装置によってタグIDを読み取るタグID読取方法であって、
前記複数の梱包箱の中で前記第1及び第2の電極が相互に接触する梱包箱のRFIDタグが、タグIDの送受信を行い、
前記複数のRFIDタグの中で他のRFIDタグからタグIDを受信したRFIDタグが、受信したタグIDを保持し、
前記読取装置と通信可能なRFIDタグが、少なくとも当該RFIDタグのタグIDを含む1又は複数のタグIDを前記読取装置に送信する
ことを特徴とするタグID読取方法。
【請求項6】
上面と底面と側面とを備える本体と、前記本体の外面の第1領域に設けられた第1の信号導体と、前記本体の外面の第2領域に設けられ、前記第1の信号導体と電気的に絶縁された第2の信号導体と、前記側面の外面の第3領域において前記第1及び第2の信号導体と電気的に絶縁された状態で当該側面に貼付され、第1の電極が前記第1の信号導体と接続され、第2の電極が前記第2の信号導体と接続されるRFIDタグとを備える梱包箱を複数積み重ねた集合体において、前記RFIDタグが読取装置にタグIDを送信するタグID送信プログラムであって、
前記RFIDタグが、前記複数の梱包箱の中で前記第1及び第2の電極が相互に接触する梱包箱のRFIDタグが存在する場合に、タグIDの送受信を行い、
前記RFIDタグが、他のRFIDタグからタグIDを受信した場合に、受信したタグIDを保持し、
前記RFIDタグが、前記読取装置と通信可能な場合に、少なくとも当該RFIDタグのタグIDを含む1又は複数のタグIDを前記読取装置に送信する
ことを特徴とするタグID送信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−227298(P2009−227298A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−73551(P2008−73551)
【出願日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】