説明

梱包資材と該梱包資材を用いた梱包体

【課題】開梱した梱包体からそこに収納されている機械部品1を取り出す作業をより迅速化することのできる梱包資材を提供する。
【解決手段】左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部2を有する機械部品1の複数本を梱包する梱包資材において、外装ケース20の底部に配置される緩衝性を備えた部品受け部材10を備え、部品受け部材10には、機械部品1を方向性を同じにして収納することのできる複数本の凹溝11が間隔をおいて互いに平行に、かつ収納した機械部品1の膨出部11が互いに干渉することがないように等しい距離だけ軸方向に次第に偏位するようにして形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機械部品の梱包資材とこの梱包資材を用いた梱包体に関し、特に、自動車のギアリンケージのように、左右非対称形状の長尺部材であり、少なくとも一部に径方向への膨出部を有する機械部品の複数本を梱包するのに好適な梱包資材とその梱包資材を用いた梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの分野で、製造部門から組み立て部門へ部材を梱包し輸送することが行われる。輸送中の振動等により輸送する部材に傷が付かないように、発泡樹脂成形品が緩衝材として多く用いられる。機械部品には多くの種類があり、その一つに、左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部を有する機械部品がある。多くの場合、その重心位置は長手方向の中央にはなく、左右方向のいずれか一方に偏位した位置にある。そのような機械部品の例として、自動車のギアリンケージ、ドライブシャフト、オートバイ用フロントフォーク等が挙げられる。
【0003】
通常、上記のような機械部品は、収納時での高いスペース効率を確保できること、および梱包体として左右の荷重バランスを保持できることの理由から、外装ケース内に供えられた緩衝性を備えた部品受け部材の上に、交互に180度反転させた姿勢で互いに平行にその複数本が収納され、梱包体とされている(特許文献1、特許文献2等参照)。
【0004】
【特許文献1】実開昭60−27086号公報
【特許文献2】特開2005−219791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、機械部品を交互に180度反転させた姿勢で収納した梱包体の場合、梱包された機械部品を組み立て作業ラインへ持ち込む際に、一つおきに部品を180度反転させる作業が必要であり、迅速な組み立て作業が求められるような作業現場では、考慮すべき作業負担となっている。
【0006】
本発明は、そのような要請に答えるものであり、開梱した梱包体からそこに収納されている機械部品を取り出す作業をより迅速化することのできる梱包資材を提供することを第1の課題とする。また、前記梱包資材によって機械部品が梱包された梱包体を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による梱包資材は、左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部を有する機械部品の複数本を梱包する梱包資材であって、前記梱包資材は、外装ケースと、外装ケースの底部に配置される緩衝性を備えた部品受け部材とを少なくとも備え、前記部品受け部材には、前記機械部品を方向性を同じにして収納することのできる複数本の凹溝が間隔をおいて互いに平行に、かつ収納した機械部品の前記膨出部が互いに干渉することがないように等しい距離だけ軸方向に次第に偏位するようにして形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記の梱包資材を用いる場合、複数本の機械部品はすべて方向性を同じにした姿勢で部品受け部材に収納されるので、開梱時での機械部品の取り出し作業は容易でありかつその作業は迅速に行うことができる。一方、部品受け部材に形成される複数本の凹溝は、収納した機械部品の膨出部が互いに干渉することがないように等しい距離だけ軸方向に次第に偏位するようにして形成されており、梱包体の左右方向のスペースは、同じ本数の上記機械部品を従来のように180度反転させて収納する場合あるいは同じ本数の上記機械部品を偏位させることなく互いに平行に配置する場合と比較して、幾分増加する。しかし、平行に隣接する凹溝間の距離は、同じ本数の上記機械部品を軸方向に偏位させることなく互いに平行に配置する場合と比較して、より狭く設定することができるので、梱包体の前後方向のスペース効率は、従来の180度反転させて収納する場合と同等程度に、確保される。すなわち、梱包体の左右方向のスペースを若干犠牲にするだけで、機械部品の取り出し作業の大幅なスピードアップが可能となる。
【0009】
本発明による梱包資材の他の態様において、前記部品受け部材は、前記凹溝の軸線方向で分割された複数個の構成部材からなっており、前記複数本の凹溝における機械部品の前記膨出部を収納する領域部分は同じ一つの構成部材内に位置していることを特徴とする。
【0010】
この態様では、部品受け部材を複数の構成部材に分割したことにより、機械部品の安定支持が確保されることを条件に、前記一部の構成部材を省略することが可能となる。それにより、部品受け部材を形成する材料の節約を図ることができると共に、構成部材を省略して形成されたスペースを利用して、機械部品の収納作業および取り出し作業を容易かつ迅速に行うことができるようになる。
【0011】
本発明は、さらに、外装ケースの底部に前記したいずれかの部品受け部材が配置され、前記部品受け部材に形成した凹溝群を利用して左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部を有する機械部品の複数本が方向性を同じとしかつ軸方向に少しずつ偏位した姿勢で収納されている構成を少なくとも備えることを特徴とする梱包体も開示する。
【0012】
本発明において、前記外装ケースは、金属製あるいは木製である、底部と側壁とを備えた任意の外装ケースであってよいが、好ましくは、矩形状の底部の四隅に支柱が起伏自在に取り付けてあり、起立した姿勢の支柱に対して側壁が脱着自在とされているような形態の金属製外装ケースであり、さらに好ましくは、底部の裏面にフォークリフトのフォーク挿入口が備えられた外装ケースである。
【0013】
本発明において、緩衝性を備えた部品受け部材は、所要の緩衝性と機械的強度を備えることを条件に任意の材料で作ることができる。好ましくは、成形性および軽量性の観点から発泡樹脂成形品であり、より好ましくは型内発泡成形品である。より好ましくは熱可塑性樹脂の発泡成形品であることが好ましい。熱可塑性樹脂には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等)、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリ乳酸系樹脂などが挙げられる。なかでも、ポリスチレンとポリエチレンとの複合樹脂を用いることが好ましい。発泡体の倍率は、梱包しようとする機械部品の重量や形状等を勘案して適宜設定すればよいが、緩衝性がよく、軽量で経済的である点から、好ましくは40〜60倍程度、より好ましくは50倍(0.020g/L)程度である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部を有する機械部品の複数本を梱包する梱包資材であって、スペース効率を確保しながら、梱包した機械部品の取り出し作業を容易かつ迅速に行うことのできる機械部品用梱包資材が得られる。また、その梱包資材によって上記形態の機械部品を梱包した梱包体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施の形態に基づき説明する。図1は本発明において梱包の対象となる機械部品の一例を示しており、図2はその機械部品を本発明による部品受け部材に収容した状態を示している。図3は図1に示す機械部品を本発明による他の態様の部品受け部材により収容した状態を示し、図4は図3に示した収容体を外装ケースに配置して梱包体とした場合の一例を断面で示している。
【0016】
図1に示すように、本発明において梱包の対象となる機械部品1は、左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部2を有する。この例において、軸3における長手方向の中心から図で左方に偏位した場所に前記膨出部2を備えており、軸3の右方端には第2の膨出部4を備えている。このような形態の機械部品1において、重心位置は、前記膨出部2の近傍にあるのが普通である。
【0017】
図2に示すように、前記機械部品1の複数本(図示のものでは、4本)が、緩衝性を備えた部品受け部材10内に、方向性を同じにした姿勢で、かつ前記膨出部2が互いに干渉しないように等しい距離だけ軸方向Pに次第に偏位した状態で、収容される。この例において、部品受け部材10は、発泡性ポリスチレンビーズの型内発泡成形品であり、発泡倍率は50倍程度である。
【0018】
この例において、部品受け部材10の裏面側は平坦面であり、表面側には、収容しようとする機械部品、すなわち図1に示した機械部品1の外郭形状に沿った形状の大径部12および13を持つ4本の凹溝11が、軸方向Pに所定距離aだけ偏位しかつ軸間距離cの間隔をおいて、互いに平行に形成されている。前記偏位距離aは、機械部品1の前記膨出部2の軸方向幅bよりもわずかに広い距離であり、前記軸間隔距離cは前記膨出部2の径方向の最大幅dよりも狭く、1/2dよりも広く設定されている。
【0019】
上記のように位置と寸法を設定して、部品受け部材10の表面側に4本の凹溝11を形成したことにより、部品受け部材10は、前記4本の機械部品1を方向性を同じにした姿勢で、かつ前記膨出部2が互いに干渉しないようにして、収容することができる。すなわち、軸方向に距離aだけ偏位させることなく機械部品1を部品受け部材内に収容する場合と比較して、部品受け部材10の軸方向の幅は、偏位距離a(この例では3a)の分だけ長くなるが、軸方向の直交する方向の幅は、前記膨出部2が軸方向の直交する方向に重なっている距離だけ、換言すれば、この例では(3d−3c)の距離だけ狭くすることができ、その幅は、機械部品1を交互に180度反転させた姿勢で互いに平行に収納する形態の部品受け部材の場合と等しくなる。
【0020】
このようにして機械部品1を収容した梱包資材が図示しない適宜の外装ケースに収納されて梱包体とされるが、機械部品1は同じ方向を向いて収容されるので、部品受け部材10への収容作業が容易であると共に、開梱時での機械部品1の取り出し作業も容易でありかつその作業を迅速に行うことができ、作業効率は大きく向上する。
【0021】
図3に示す部品受け部材10Aは、凹溝11の軸線方向Pで分割された複数個の構成部材10a〜10nからなっていること、各構成部材の間にはスペースS1,Snが設けてあること、さらに、前記複数本の凹溝11における機械部品1の膨出部2を収納する領域部分(大径部分12)は同じ一つの構成部材10b内に位置していること、の3点で図2に示した部品受け部材10と相違している。図3に示す例では、構成部材は3個からなり、スペースは2個有しているが、それらの数は任意であり、機械部品1の安定支持が確保されることを条件に、適数を選択すればよい。この態様の部品受け部材10Aでは、部品受け部材を形成する材料の節約を図ることができると共に、構成部材を省略して形成されたスペースS1,Snを利用して、機械部品1の収納作業および取り出し作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0022】
図4を用いて、本発明による梱包体Aを説明する。図4では、部品受け部材として図3に基づき説明した複数個の構成部材から部品受け部材10Aを用いているが、図2に示した一体物である部品受け部材10を用いる場合も同じである。図4において、20は外装ケースであり、底部21と、そこから立設する支柱22を備える。底部21にはフォークリフトのフォークが入り込む開口23が形成されている。なお、図示のものは外装ケースの一例であり、これに限らない。
【0023】
作業に当たり、外装ケース20の底部に部品受け部材10Aを配置する。必要に応じて、部品受け部材10Aの各構成部材10a,10b,10nの配置位置を安定させるために支持棒24を各構成部材間に挿入する。その後、手作業によりあるいは適宜の運搬具を用いて、機械部品1の適数を部品受け部材10Aに形成した凹溝11内に置き、図3に示した状態とする。この状態のものをそのまま梱包体Aとして、輸送等に供することもできる。
【0024】
必要に応じて、部品受け部材10Aに収納された機械部品1の全部または一部を上から覆うことのできる凹溝11Aおよび大径部12A,13Aを下面に備え、上面は平坦面である緩衝性を備えたカバー部材10Bを用い、それを部品受け部材10Aの上に配置する。この形で、梱包体Aとして輸送等に供することもできる。
【0025】
積載効率を高くするために、機械部品1を多段に積み上げて梱包体Aとすることもできる。その場合には、前記したカバー部材10Bの上に、再度部品受け部材10Aを置く。その状態が図4に示される。上段の部品受け部材10Aの凹溝11内に2段目の機械部品1を置き、必要な場合にはその上にカバー部材10Bを配置して、2段積みの梱包体Aとする。
【0026】
作業効率を挙げるために、カバー部材10Bの上に部品受け部材10Aが積層した形に一体成形した組み合わせ支持体を用いることもできる。この組み合わせ支持体では、部品受け部材10Aとカバー部材10Bとがそれぞれの凹溝11、11A,12,12A,13,13A群が外側面となるようにして上下方向に一体とされた形状である。すなわち、梱包に使用されるときに組み合わせ支持体の上面となる面には、受け部材10Aに形成された複数の凹溝11および大径部12,13が形成され、下面となる面には、カバー部材10Bに形成された複数の凹溝11Aおよび大径部12A,13Aが形成されている。このように受け部材とカバー部材とを一体に形成することにより、段積みするときの作業を簡素化することができる。その形状の組み合わせ支持体を厚み方向の中央部で2分割することにより、図示した部品受け部材10Aおよびカバー部材10Bを得ることができ、最下位に置く部品受け部材10Aおよび最上位に置くカバー部材10Bとして用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明において梱包の対象となる機械部品の一例を説明する図。
【図2】機械部品を本発明による部品受け部材に収容した状態を示す図。
【図3】機械部品を他の態様の部品受け部材に収容した状態を示す図。
【図4】図3に示した収容体を外装ケースに配置して梱包体とした場合の一例を断面で示す図。
【符号の説明】
【0028】
1…機械部品、2…径方向への膨出部、3…軸、10、10A…緩衝性を備えた部品受け部材、11…凹溝、12…凹溝の大径部、10a〜10n…部品受け部材の構成部材、10B…カバー部材、20…外装ケース、21…底部、22…支柱、23…開口、A…本発明による梱包体、a…各凹溝の軸方向の偏位距離、b…機械部品の膨出部の軸方向幅、c…各凹溝の軸間距離、d…機械部品の膨出部の径方向の最大幅、S1,Sn…構成部材間のスペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部を有する機械部品の複数本を梱包する梱包資材であって、
前記梱包資材は、外装ケースと、外装ケースの底部に配置される緩衝性を備えた部品受け部材とを少なくとも備え、
前記部品受け部材には、前記機械部品を方向性を同じにして収納することのできる複数本の凹溝が間隔をおいて互いに平行に、かつ収納した機械部品の前記膨出部が互いに干渉することがないように等しい距離だけ軸方向に次第に偏位するようにして形成されていることを特徴とする梱包資材。
【請求項2】
前記部品受け部材は、前記凹溝の軸線方向で分割された複数個の構成部材からなっており、前記複数本の凹溝における機械部品の前記膨出部を収納する領域部分は同じ一つの構成部材内に位置していることを特徴とする請求項1に記載の梱包資材。
【請求項3】
外装ケースの底部に請求項1または2に記載の部品受け部材が配置され、前記部品受け部材に形成した凹溝群を利用して左右非対称形状の長尺部材であり少なくとも一部に径方向への膨出部を有する機械部品の複数本が方向性を同じとしかつ軸方向に少しずつ偏位した姿勢で収納されている構成を少なくとも備えることを特徴とする梱包体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−76783(P2010−76783A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245491(P2008−245491)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】