説明

梳き鋏

【課題】毛髪の毛束感を容易に演出するため、効率よく正確に毛束を創作できる梳き鋏を提供することである。
【解決手段】櫛歯状の受け刃である鋏部材1aにおいて、5ミリ以上の刃幅を有する櫛刃2aと5ミリ以上の幅で櫛刃を有しない欠損部分3aを交互に配列することにより櫛刃2aで切断される部分と欠損部分3aにて切断されない部分とがはっきりと区別され、3aにて切断されずに残った毛髪によりしっかりとした毛束が創作でき、熟練度にかかわらず正確な幅で毛束が創作でき、かつ一度の切断で同時に多数の毛束を創作できるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理美容用の梳き鋏に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より理美容用として使用されている梳き鋏においては、刃を有する部分の長さが6センチ前後のものがほとんどである。梳き鋏はこの6センチの刃付け部分の長さのなかでカットするものであるが、この6センチの長さの中に20本から50本程度の櫛刃が並列されて櫛歯状に形成されている。
【0003】
近年のヘアースタイルでは、梳き鋏を使用して軽さを表現する技術が主流であり、軽さを表現する技術のひとつとして毛髪の束を作って毛束感を出し、この毛束感により毛髪の動きを表現する方法が多用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
毛束感を出すには多数の毛髪を束にする必要があるが、そのためには頭髪全体あるいは毛束を出そうとする部分において、毛髪が梳かれる部分と梳かれない部分とにはっきりと区別させる必要がある。この区別がはっきりすればするほど梳かれずに残った部分がしっかりとした毛束になるのである。しかし従来より使用されている梳き鋏においては上述のように、6センチの長さの中に20本から50本の櫛刃が並列するため細かく梳かれてしまい、しっかりとした毛束が創作できない難点があった。
【0005】
このように梳き鋏では細かく梳かれてしまうために、梳き鋏を使用せず櫛歯状部分を有しない通常の鋏にて毛束を創作する技術が用いられている。これは図3のように櫛歯状の刃を有しない鋏の先端部分を使用して、毛髪を確実に切断する部分6cと全く切断しない部分5cとを、お互い細かくなりすぎない任意の幅によりひとつひとつ並列しながら作り上げていくものであり、全く切断しない部分が毛束7cとなる。しかしこの方法の場合、切断する部分6cと切断しない部分5cとをひとつひとつ交互に配列しながら作り上げていくため、膨大な作業時間がかかり非常に非効率である。また切断する部分と切断されない部分の幅は技術者の経験と技術に負うところが大きく、精度良く一定の間隔で正確な毛束を創作するには優れたカット技術を有する熟練者でないと困難である。そこで、本発明は櫛歯状部分を有しない鋏を用いてひとつひとつ時間をかけて毛束を創作するのでなく、効率的で簡単に精度良く毛束を創作できる梳き鋏を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の梳き鋏は、櫛歯状鋏部材に5ミリ以上の刃幅を有する櫛刃と5ミリ以上の幅で櫛刃を有しない欠損部分を有する部分とを交互に設ける構成を採用した。
【0007】
すなわち、5ミリ以上の刃幅の櫛刃と5ミリ以上の欠損部分を交互に配列して設けることにより梳かれる部分と梳かれない部分とがはっきり区別され、細かく梳かれることなしに梳かれなかった部分がしっかりした毛束となり、精度良く創作できるものである。また櫛刃と欠損部分とが交互に配列されているため一度の切断で同時に多数の毛束が創作され、効率のよい作業が行える。
【0008】
前記梳き鋏において、鋏を開閉するときに櫛歯状鋏部材の櫛刃を有しない欠損部分にガイドの役目として数本の櫛刃を設けることにより、鋏の開閉の調子を向上させ滑らかさを出すことができる。つまり構造上、櫛刃と櫛刃の間隔が広がるために、鋏を閉じる際において切断刃の刃先と櫛刃の刃先の角との衝撃が大きくなったり、ガタガタといった接触音が大きくなったりする。また切断刃刃先が櫛刃刃先の角に引っ掛かってしまい鋏を最後まで閉じることができなくなる可能性がある。これを解決するために櫛歯状鋏部材の欠損部分に数本の櫛刃を切断刃のガイドの役目として設け、鋏の開閉を滑らかにするものである。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明の梳き鋏は毛髪が梳かれる部分と梳かれない部分とにはっきりと区別され、細かく梳かれないために梳かれずに残った毛髪によりしっかりとした毛束を精度良く創作でき、一度の切断で同時に多数の毛束を効率よく並列して創作できる。
【0010】
鋏を開閉するときに櫛歯状鋏部材の櫛刃を有しない欠損部分において、対向する切断刃が接する際のガイドの役目として数本の櫛刃を設けることにより、鋏の開閉の調子を向上させ、滑らかさを出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この梳き鋏は受け刃である櫛刃を有する櫛歯状鋏部材1aと切断刃を有する鋏部材1bとを支点ネジ2で開閉自在に枢着し、鋏部材1aは5ミリ以上の刃幅を有する櫛刃2aと5ミリ以上の幅で櫛刃を有しない欠損部分3aを交互に配列させたものである。
【0012】
図2(a)で示すように、本発明の梳き鋏は櫛歯状の鋏部材1aにおいて5ミリ以上の刃幅を有する櫛刃2aと5ミリ以上の幅で櫛刃を有しない欠損部分3aとを交互に配列して設けることにより毛髪は5ミリ以上の幅で確実に切断される部分と5ミリ以上の幅で切断されない部分とにはっきりと区別されるために欠損部分3aにて梳かれずに残った部分でしっかりとした毛束を創作することが可能である。また欠損部分3aが多数設けてあることにより、一度の切断で並列された多数の毛束を同時に創作できる。
【0013】
図2(b)は開いた鋏を閉じる直前の状態であるが、櫛歯状の鋏部材1aの櫛刃を設けない欠損部分3aに切断刃1bのガイドの役目としての数本の櫛刃4aを設けたものであり、この数本の櫛刃4aを欠損部分3aに設けることにより、切断刃1bは櫛刃4aと櫛刃2aに接しながら鋏先端方向へ向かうため鋏を調子良く滑らかに閉じることができる。
【0014】
図2(c)は櫛刃を有する鋏部材1aの5ミリ以上の刃幅を有する櫛刃2aに形の変化をつけたものである。この2aの形状は毛髪の切断と毛束の創作に支障にならない範囲で自由な形状にすることができる。
【0015】
上述した実施形態では両鋏部材の一方を平刃型の切断刃にしたが、この切断刃を櫛歯状の切断刃にし、切断刃、櫛刃とも櫛歯状にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】 本発明の実施形態を示す梳き鋏の正面図
【図2】 (a)、(c)は鋏部材を閉じた状態の模式図(b)は開いた状態の鋏部材が閉じる直前の模式図
【図3】 櫛刃を有しない鋏にて並列された毛束を創作する説明図
【符号の説明】
【0017】
1a、1b 鋏部材
2 支点ネジ
2a 5ミリ以上の刃幅の櫛刃
3a 欠損部分
4a ガイドの役目としての櫛刃
5c 切断しない頭髪の部分
6c 切断する頭髪の部分
7c 毛束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
櫛歯状の受け刃を有する鋏部材と刃付けをした切断刃を有する鋏部材とを支点ネジによって開閉自在に枢着された理美容用梳き鋏において、櫛歯状鋏部材に5ミリ以上の刃幅を有する櫛刃と5ミリ以上の幅で櫛刃を有しない欠損部分とを交互に有する理美容用梳き鋏。
【請求項2】
請求項1の梳き鋏において、櫛歯状鋏部材の櫛刃を有しない欠損部分に、鋏を開閉するときの調子を向上させ滑らかさを出すための数本の櫛刃を設けた理美容用梳き鋏。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−187578(P2006−187578A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−28226(P2005−28226)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(500063309)有限会社山中 (2)
【Fターム(参考)】